PandoraPartyProject

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シーズンテーマノベル『それは愛しく、あたたかな』

それは愛しく、あたたかな

 一つだけ、約束しよう。
 どれだけ変化が訪れたって、決して錆び付くことも薄れることのないことを。
 伝える事の出来ないたった一言だけは、『あなた』を縛る呪いになってしまうから。
 今は口には出来ないけれど。それでも、手だけは握っていよう。

 ――世界は目まぐるしく顔色を変えて行く。解けた光の下に佇む暗雲は大口を開き全てを飲み干した。怒涛の闇は全てを欲するように腕を伸ばした。
 無辜なる混沌たる世界が求める救世主に成り得たのかは分からない。それでも、ただ。
 ……『あなた』だけを護っていけるように、と。
 それだけを願っていた。

シーズンテーマノベル『それは愛しく、あたたかな』

リリファ・ローレンツ(p3n000042)
「ほら、月原さん。シーツが皺になりますから!
 えっ、畳み方分かんないんですか? ユリーカさんに怒られますよ~?」
月原・亮(p3n000006)
「はあ? 出来るし。リリファこそ、サボんなって!
 ……ほら、さっさと片付けて買い出し行くぜ。ユリーカにドヤされる!」
シーズンテーマノベル『それは愛しく、あたたかな』
商品 説明
対応商品一覧
  • 1人テーマノベル
  • 2人テーマノベル
  • 3人テーマノベル
  • 4人テーマノベル
  • 5人テーマノベル
発注可能クリエイター
  • ゲームマスター
  • ノベルマスター

基本価格 100RC~

商品概要

 本商品は『キーワード』を指定して発注するSSとなります。
 シナリオコンテンツでは描ききれないお客様のストーリーを『キーワード』を添えてゲームマスター、ノベルマスターに発注することができます。

 『キーワード』がいずれか一つは含まれていれば内容はどの様なものでも構いません。
 季節もキーワードさえ含まれていれば無視しても構いません。
 また、発注時にキーワードを必ず指定する必要もありません。

 今回のキーワード:『変化』『約束

日程

・受付:01/16~2/16の8:00
・締切:3/15
・公開:順次公開

プレゼント

本商品の受注が確定したキャラクターには『称号』が配布されます。
本商品の受注が確定したキャラクターには後日、記念アイテムを配布いたします。
※本キャンペーンでは発注した分だけ配布されます。(SSを二つ発注した場合、二つアイテムが配布されます)

景品詳細
アイテム 性能
ただの一歩 種別:アクセサリ
レアリティ:ハイクオリティ
補正値性能:-
フレーバー:「これからどうする?」と君が問う。そうだな、じゃあ、先ずは進もうか。使用時、パンドラ+1回復。
称号 内容
指切りげんまん 種別:称号スキル(※称号スキルとしての配布は、後日となります)
フレーバー:大切な何かを護ろうという勇気と、決意。約束をしましょう。無事に生きて返ると――ローレットから、あなたに。小さな約束です。
サンプルSS:『それは愛しく、あたたかな』
(NPC: リリファ・ローレンツ(p3n000042) 月原・亮(p3n000006)

 からりと晴れ上がった空は、崩れゆく世界の欠片なんてまるで素知らぬふりをして。鳥の囀る声は祝福の陽射しに悠々自適に踊り出す。
 甘く薫った洗剤の、ふわりと揺らぐ果実の気配に少し顔を埋めてからタオルを滑るように腕へと落とす。洗濯当番なんて揶揄うように言ってみたけれど、皆での共同生活は家族が増えたようで何処か面映ゆい。
 そうやって過ごして随分なときが経った。六年。幼さだって何処かに置き去りに伸びた背丈も傷だらけになった掌も、大人と呼ぶには遠かったはずの道のりは自分たちの感情だけを置き去りに過ぎ去った。
「リリファ」
 呼ばれリリファは振り返る。随分と変わったのは彼だって同じだった。屈託なく笑う所も、照れれば鼻下を擦る癖も――ほら、子供っぽく手を振るところも変わっていないのに。
「はい、どうしました? 月原さん」
 あの日に置き去りにした幼さは、もう途方もない旅に出て彼に別れを告げたのだ。
「シーツ回収してきた」
「有り難うございます! ユリーカさんに渡しに行かなきゃいけませんね」
 バスケットに折り畳んだタオルを抱え上げようとしたリリファに「それ、俺が持つよ」と亮は声を掛けた。シーツを畳んでくれと言って居るのかと「下手ですもんね」と揶揄う声音が弾む。
 そうやって。過ごしてきた。六年間のモラトリアム。
 現実なんて遠く置き去りにしたような感覚は二人とも『異世界からやってきた』から覚えたものだっただろう。
「おりゃ」
「わ、汚れたらどうするんですか!」
 途端、頭上に落ちた真白の気配。視界を覆ったそれが頭からすっぽりと被せられた物と知る。
 シーツが汚れてしまうと睨め付けるように見上げれば、彼は何時ものように笑うのだ。何ら考えてやいない様な幼く咲いて、声を上げる。
「花嫁のヴェールみたい」
「はー? お嫁さんごっことかしたい年頃なんですか? 子供ですねえ」
「リリファってそういう夢とか無かったのかよ」
 はたと見遣れば彼の紅色が伺う。鼻の下を擦って、照れ隠し。そんな仕草一つで感情が読み取れるようになってしまった自分にリリファは白旗を振る。
「どうでしょう。夢を見られるような生活じゃ無かったのもありますけれど」
「そっか。俺の居た世界だったら幼稚園児の頃の夢はプリンセスとか、お嫁さんとかが多かったなあ、今は違うのかも」
「へえ、でもプリンセスとかって」
「うん、居ない世界。だから、夢に見るんだ」
 白いシーツを掴んだままの亮を眺めてからリリファは「得難いと、夢に見ますもんね」と呟いた。
 平穏無事な生活も、手にすることの出来なかった筈の愛情や友情も。夢にまで見た世界は混沌(ここ)でなければ識る事も無かったから。
「私も、色んな夢を見ました。お嫁さんだって、ここなら夢に見るのかもしれませんね」
「まあ、リリファはモテないからさ。俺がその夢を今すぐ叶えてやった次第だよ。気が利くだろ?」
「寧ろ、気が利きすぎて腹が立ちました。えい」
 腹に拳を叩き入れれば痛みなんて感じてなどしない癖に呻いた振りをする。お決まりなやりとりを繰返してリリファは顔を上げた。
 あなたが纏った薫り立つ石鹸とお日様の香り。優しい気配。当たり前の様に、続いていって欲しいと願う日々。
「それじゃあ、全部平和になったら約束してくださいよ。色んな夢が在るのでその中の一つを叶えるとか」
「例えば?」
「大きすぎるパフェが食べたいですね。あ、あと、旅行がしたいです」
「そんなもん?」
「色々ありますよ! お洋服も欲しいですし、オペラ見て見たいし、遊園地で豪遊とか。
 それから、お嫁さんは……違うのかも知れません。家族と平和に過ごす日々があればいいなーとか」
「……そっか。うん、じゃあ色々と叶えようぜ」
「色々ですか? ははーん、良いですよ。まあ、月原さんもモテませんからねえ!」
 重ねて返した揶揄いに彼は笑った。吹いた風の冷たさなんて忘れてしまう陽射しの下で彼は笑うのだ。
 うるせえ。ばあか、と。

 何時になったって、何があったって、この日を忘れることなどないだろう。
 風のように軽やかで、陽射しのようにあたたかで、小鳥のように未来を謳う。おままごとのような、小さな誓いの儀式。
 指切りに照れ隠しをしたあなたが笑う。リリファはぱちりと瞬いた。睫が揺らぎ、影を作る。
(これから沢山の変化がある。世界も、私達だって。そうでしょう、月原さん。私達、旅人じゃないですか――)
 いつかの日に、彼は言った。『平和になったらリリファの世界で姉ちゃんを探す?』なんて。
 ずっと一緒に居てくれるような心地の良い微睡みの言葉は約束に含んでなんてやらない。
(期待なんてしてやらないんですから)
 変わってしまった、私達。
 それでも――それは、愛しく、あたたかなあなたのせいだ。

(キーワード:約束を使用しています)(SS執筆:夏あかね

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