PandoraPartyProject

SS詳細

こんぺいとうとベリー

登場人物一覧

ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)
黄昏夢廸
フラーゴラ・トラモント(p3p008825)
星月を掬うひと

 道を行くランドウェラ。目指すは行きつけの菓子屋。お目当てはもちろんこんぺいとうだ。
 菓子屋の目の前で目に入ったのはふわふわの髪や尻尾。ぴんと立った白い耳。見覚えのある獣種の女の子を見つけた。
「あ、フラーゴラだ」
「ランドウェラさん……!」
 フラーゴラのほうもすぐに気付き返事をする。
「久しぶり……!勇者選挙の時以来からちゃんと喋れてなかったね」
「他の依頼でも一緒だったみたいだけど、大人数の依頼だったからなあ。無理もない」
 それで、とランドウェラは目配せをする。
「今日は買い物かな?」
「うんそう。こんぺいとうを買いに」
「奇遇だね。僕もだ」
 二人で笑い合う。しかしフラーゴラは悲しそうな表情になる。

「……本当はこんぺいとうを作りたくてお菓子屋さんにレシピを聞きに来たの。でも特別な調理器具がいるのと時間もかかるって聞いて諦めた所」
「こんぺいとうはフラーゴラが食べたいのかい?」
「ううん。飾り付けに使って……出来たものは好きな人にあげようと思ってたの」
 好きな人。そう聞いてランドウェラの視界にラズベリーの色が混じる。以前も見たなと感じる。甘酸っぱい色。
「おお! 恋してるんだね! 好きな人は前言ってた人かい?」
「えへ……えへ、えへ」
 フラーゴラがぽーっと赤くなる。どうやら当たりのようだ。
「恋、恋かあ。恋ってどんな感じ?」
「ど、どんな感じ? えーっと。むずむず〜ってして、きゅ〜って感じ!」
 とフラーゴラが言った所で伝わっていないなと感じ
「あ、えっと! 悩んだりする時もあるけど、楽しいよってこと!」
「そっか。そっか、そっかあ!」
 フラーゴラはもじもじしている。ランドウェラは素直にかわいいと思った。儚げにも感じるのに……どこか力強い。色んな色が見える。桜色にブルーベリーの色。
 ランドウェラに恋や愛はよくわからない。自分にも何か変化が起きそうで首を突っ込んでみたい。

──となるとだ。
「フラーゴラは特別なこんぺいとうをあげたいのかい?」
「……? 質問の意味がよくわからないけど……うん!!」
 即答してくれると思った。それを見てランドウェラは笑って。
「僕にいい考えがある。こんぺいとうを採取して来るんだ」



「ギギイィッ!」
 コウモリにしてはやや大き過ぎるモンスターがランドウェラに襲いかかる。コウモリの体当たりを避け、ランドウェラが雷撃を放つ。直撃を受けたコウモリの様子に変化が起きる。続けて魔力の糸を切り出し、コウモリは血を流して地面に落ちた。
「ランドウェラさん!」
「大丈夫!」
 フラーゴラが癒しの秘術をランドウェラにかざす。
「こ、こんな所に本当にこんぺいとうあるの……?!」
 今いる場所はお菓子屋さん、ではなく洞窟だ。薄暗く、ほんのり湿っていて、モンスターもわんさか出る。
「あるよ。ほら」
 とランドウェラの指差した先に小さな星の花が咲いている。
「! わぁ……。本当にこんぺいとうが咲いてる……!」
「とまあ来るのが大変な所だから滅多に来ないんだけど……。フラーゴラを見ていたら思い出してね」
「ありがとうランドウェラさん!」
「お礼はまずはここを乗り切ってからかな!」
 依然モンスターはたくさんいる。ある程度数を減らさないと落ち着いて採取出来ないだろう。
 ランドウェラは再び雷撃を繰り出す。と同時に波状の攻撃も追い討つ。強撃にコウモリはたまらず吹き飛ぶ。ランドウェラの横に回ったコウモリからの一撃。すかさず間にフラーゴラが入り攻撃を受け止める。
「フラーゴラ!」
「これくらい……へっちゃら! 好きな人のためだもん。むん!」
 フラーゴラの無事を確認し、安堵するランドウェラ。そしてフラーゴラは力強い。
「じゃあもうひと頑張りだね!」



「お肉屋さん始めたって本当だったんだなあ」
「うん! これもまあ好きな人のためなんだけど……」
「何で?」
 肉屋と好きな人がイコールで結ばれない。
「えっとえっと! あの人、ダンジョンで倒したモンスター生かじりするって言うから美味しいもの食べて欲しくて……」
「なるほどそれで肉屋」
 ぽんと手を打つランドウェラ。
「と、今日はキッチンに用があって!」

 そして肉屋のキッチンにて。
「じゃん! 今日のお礼だよ」
 赤や紫、ピンク色のこんぺいとうを飾ったケーキ。ベリーソースが美味しそうだ。
「これ食べていいのかい? 好きな人にやるんじゃないの?」
「試食は必要でしょ? それに取れたこんぺいとういっぱいあるし」
 フラーゴラがざら、と音を鳴らす。小さめの麻袋にはいっぱいのこんぺいとうが。
「じゃあ遠慮なく頂こうかな?」
「うん! 召し上がれ! ワタシもたーべよ」
 キッチンの片隅でこんぺいとうとベリーのケーキを堪能する二人。その味は甘酸っぱくて。


PAGETOPPAGEBOTTOM