PandoraPartyProject

SS詳細

レッツゴーABYSS!

登場人物一覧

ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)
黄昏夢廸
ヴェルミリオ=スケルトン=ファロの関係者
→ イラスト
ヴェルミリオ=スケルトン=ファロ(p3p010147)
陽気な骸骨兵


 アドベンチャラーバレー!
 其処は“ギルドマスター”DMによって作られたテーマパークである!
 精霊と触れ合うかのようなファンタジックなアトラクションから、モンスター退治などの本格的なものまで! 様々な“冒険”をテーマにしたアトラクションが君を待っている!
 君たちはこの『アドベンチャラーバレー』に訪れた『冒険者』だ。まずはギルドに行って、依頼を受けると良い。クリアした依頼のぶんだけ等級はあがっていって、遊べるアトラクションが変化していくというやり込み要素もあるぞ!

 アドベンチャラーバレーの奥地で“ギルドマスター”DMは笑う。

「さて、今日はどのような冒険者が扉を叩くのかな……?」



「毎度おなじみスケさんですぞー! おおお、これが案をDMにブン投げたアドベンチャラーバレー(プレオープン)……!! 右を向いても左を向いても冒険! 素晴らしいですな!」

 突然だが、ヴェルミリオは感動していた。
 というのもこのアドベンチャラーバレー、実はヴェルミリオが発案者なのだ。偶然知り合ったDMにこの話をしたところ意気投合し、彼に管理を任せている。
 自分が想像したものが現実になる……という思いがけない経験に、ヴェルミリオは瞳を輝かせていた。

「おおー……で、何が遊べるのですかな? スケさんは等級Eなので、ふむふむ、ふむふむ……」
「ねえ、其処の人」
「むーん。ドラゴンの巣と精霊の要塞! これは迷う!」
「其処の人!」
「む?」

 あれっ、まさか自分?
 ヴェルミリオが振り返ると、其処には男性が一人いた。周囲を見ても連れはいないようだから、彼もおひとり様のようだ。

「スケさんですかな?」
「そう。あのさ、僕、霧の塔に行こうと思ってるんだ」
「おー! 霧の塔! ありましたな、中央のアトラクションですな!」
「そうそう。で、其の塔のABYSSモードってのが難しいらしくて、やりがいがありそうだけど……一人じゃ難しいトラップとか出たら嫌だし」

 素直に一人でクリアできるか不安だって良いなよ、ランドウェラ。
 しかし彼は強情であった。そしてヴェルミリオは優しかった。

「一緒に行かない?」
「勿論! 喜んでご一緒させて頂きますぞ~! あ、ちなみにお名前は?」
「僕はランドウェラ。君は……スケさん?」
「うむ! スケさんで良いですぞ! よーし、では霧の塔(ABYSSモード)へと……チャレンジ! ですぞ~!」

 というわけで、二人は自己責任で挑戦する旨の誓約書を書いたのだった。
 だってABYSSだし。



「ほう、これが霧の塔……」

 二人は霧に包まれて全容が見えない不思議な塔のようなものを見上げていた。あちこちにこの不思議な霧は満ちていて、どうやら辿り着かなければ霧は晴れてくれないらしい。制作協力はDMである。彼、霧の精霊種なので。

「取り敢えず入ってみよう。扉は一つのようだし……」

 そう言って横のコンソールで難易度をABYSSに設定し、扉を開けたランドウェラ。
 二人が入った瞬間、足元にびいん、と糸のようなものが張った感覚があった。

「うわ!?」
「おおお!?」

 真正面から飛んでくる矢、矢、矢!!
 雨のように降り注ぐ其れ等を慌てて横に回避して避けた二人だが、今度は床が上に下にと動き出した!

「ら、ランドウェラ殿ー!! 動いてますぞ、床が動いてますぞー!!」
「こっちもだ!! しかも結構速いな!? ――あ!!」
「あ!?」
「これ、上下を利用して飛び移るんじゃないか!? ほら、あの明らかに階段がない第二層っぽいところ!」
「おおお、成る程! ランドウェラ殿、流石ですな! ではスケさんの方が近いので、お先にいきますぞ……それっ!」

 スケさんは軽いのでジャンプが得意なのですぞ!
 ぴょんと第二層へ飛び移ったヴェルミリオは、ランドウェラに声をかけてまつ。
 ちなみにこのABYSSモードは通常の霧の塔の攻略――上にのぼっていくのとは違い、下へと降りていく構造になっている。
 案外、降りる事の方が難しいのさ。なんて誰が言ったのだか。

 そうしてランドウェラも無事に第二層に飛び移り、今度は狭い足場を下っていく。

「せ、狭いですぞ~……! スケさんは大柄なのでなかなか怖いですぞ!」
「スケさん、大丈夫? 今のところ足場はしっかりしてるけど……」

 とか言ったな? フラグだ。
 突然ランドウェラの足場が崩れ落ちる! バランスを崩した彼を助けようとヴェルミリオは咄嗟に手を伸ばし、ランドウェラを――捕まえた!

「あ、危なかったあ~~!!」
「ありがとう、スケさん……! 大丈夫? 引き上げられる?」
「勿論ですぞ! 大丈夫大丈夫。此処からは気を付けていきましょうぞ」

 言葉通り、ひょいとランドウェラを引き上げたヴェルミリオ。二人で狭い足場を降りていく。空気が段々冷えていくのを感じる。

「この寒さ……ABYSSという感じがしますな!」
「そうだね……一番下はどんな景色が待っているんだろう」

 とはいえイレギュラーズの二人。
 足場から降り立つと、其の後、なんとか転がる岩を回避し、なんとか霧の迷路を抜け、なんとか重量ギミックを解いたりパズルを解いたり眠っているドラゴンの横をそ~っと通ったり……



 そうして――
 冒険慣れしている二人は最奥に降り立った。

「……此処には何もないね」
「そうですな。道がありますぞ! 進んでみましょう」

 ウキウキと進んでいくヴェルミリオと、慎重に進むランドウェラ。
 二人を待っていたのは、この世のものと思えない幻想的な景色だった。

 白い霧がまるで雲のように上空を揺蕩っている。
 巨大なクリスタルが林立し、或いは破片のようなものが発光しながら浮遊して、ヴェルミリオとランドウェラの顔を映し出している。大地にはうっすらと霧が張り、まるで霧の合間にある洞窟に来たかのようだった。

「フフフ……ようこそ、2人の勇気ある者よ……」

 そうして声が響き渡ったかと思うと、霧がするりと動き、人の形を作り出す。そう、“ギルドマスター”DMだ。

「おお、DM! では此処が……」
「そう、此処がABYSS――奈落の底。気に入って頂けたかな?」
「“ギルドマスター”DM……長いな……」
「フフ、長いなら短くしてもいい……」
「じゃあマスDで。流行ってるらしいよ、こういう略称の仕方。それにしても……綺麗だね、此処」

 ランドウェラは周囲を見回す。きらきらと氷の結晶めいて輝くクリスタルの破片たち。其の光を受ける巨大クリスタルたち。そして周囲を彩る神秘的な霧。

「うん。上から見た時よりきっと綺麗だ」
「そう言って頂けると光栄だ。深淵ならではの美しさを堪能して頂けたかな――では」
「では?」

 二人は首を傾げる。
 そんな二人にマスDは一枚ずつ紙と筆記用具を手渡した。

「プレオープン中なので、アンケートに答えて頂きたい。クク……答えるとこのクリスタルの欠片を貰えるぞ……」
「……。えー、なんか風情が台無し……」
「良いではありませんか! 勿論スケさんは楽しかったと書きますぞ!」

 こうして、即席パーティによる奈落行きの旅は微妙な空気で幕を閉じたのだった。


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