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空っぽの冠
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ベルゼーが夢枕に立ったのだと、琉珂に告げた時に彼女は「本当!?」と眸を煌めかせた。
疑うこともなく真っ向から喜び勇んで問い掛ける彼女は矢張りベルゼーの愛し子なのだろう。彼が我が子同然に育て上げた里長は本当に純真で人を疑うことも知らないのだ。
キラキラと輝きを帯びた若草色の眸をベルゼー・グラトニオスという男は萌ゆる草原の色だと称した。その鮮やかな眸が憧憬を込めて見上げてくれる様は愛おしいのだと。
結い上げた桃色の髪がふんわりと揺れる。芽吹く花の美しさをその髪に見たというベルゼーは本当に子の娘を溺愛していたのだろう。
我が子同然であった。琉珂とベルゼーの間に血の繋がりは無いが、親子と呼ぶに相応しい仲であったのだろう。
そんな子供に彼が夢枕に立ったのだと告げれば「どうして私の所に来なかったの?」などと糾弾される可能性だってあった。それを考慮した上で話しかけるタイミングを計ったのだが――どうやら心配は要らなかったようだ。
彼女は「オジサマは何を言って居たの?」とずいずいと迫り来る。ゲオルグも想像していなかったほどの圧の強さだ。眩い眸は真っ直ぐに、ただ、疑うことさえ知らないかのようだった。
成程、ベルゼーが彼女を心配する理由は良く分かる。この真っ直ぐな性格とは脚を掬われやすい。特に、覇竜領域という閉じた世界であれば天真爛漫な
(ベルゼーとしては覇竜領域は前人未踏の儘に終って欲しかったのだろう。
此程に琉珂が天真爛漫で、ひたむきな性格をしていれば、この性格を矯正することも難しいだろうからな)
幼い頃から天真爛漫であったことは想像に易い。寧ろ、領域内で話を聞けば琉珂の母である琉維も彼女にそっくりだったという。非常に天真爛漫で竜種であれども恐れる事は無く、何処へだって走って行ってしまうような明るいひだまりのような人だった。
ベルゼーの傍に居た竜種達も琉維とは懇意にしていたと聞く。琉珂の手にしていた武器の巨大な裁ち鋏も母の形見であったというのだから、琉珂は母親に似ていたのだろう。
外見的要素は全て父譲りだと話されていることも聞いた。ベルゼーが溺愛していたという琉珂の父親・珠伯。そんな彼等の愛娘は本当にすくすくと育ったわけである。
「……疑わないのか?」
「どうして? 疑う必要ってあるかしら。寧ろゲオルグさんが私に嘘を吐く理由なんて何処にもないでしょう。
だから、疑わないわ。寧ろ、それを教えてくれたって事は何か大事なことを言われたんじゃない? 例えばオジサマが隠して出し忘れたお菓子の位置とか」
「……いや」
「ま、まさか、オジサマがへそくりとかしていたの……!? クーポン券とか!?」
「いや、それも違う」
「そうよね。オジサマって練達の文化にはあまり染まってなかったと思うし、クーポン券とかは持って居なさそう。
はあ、びっくりした。もしも隠してて出し忘れたお菓子があったなら、虫が湧いてしまう前に確認しておかなくっちゃならなかったもの」
ビックリしたと大仰な様子で告げる琉珂にゲオルグは本当ニ天真爛漫に真っ直ぐに
これではベルゼーも安心して眠りにつけない。ベルゼーが琉珂に身に着けさせたかったのはカリスマ性だろう。誰もを惹き付ける強い光になるべきだ、と。
そして、それ以上に琉珂には足下を掬われぬように周囲を固めるようにと促したかったのだろう。里長とならねばならないのは確定的に明らかだ。琉珂の性格も極端な言葉を使えば
ベルゼーはその辺りを上手く用意してやれなかったと考えて居たのだろう。琉珂という娘の傍にもっと居られると考えて居たようにも思える。
(それが、上手くはいかなかった。事は性急に進んだのだろうな)
ゲオルグはじいと琉珂を見て考え込んだ。ベルゼーが琉珂の傍に居る事の出来た時間は短かった。途方もない年数を過ごしてきただろうベルゼーは琉珂の一生くらいは見守れると考えて居たか、ああ、しかし、それでは琉珂が子を成して次代の里長を見なくてはならない。ベルゼーはそうやってフリアノンに寄り添い続けてきたのだろうから。
「……ゲオルグさん?」
「すまない。考え事をしていた。ベルゼーから言われたのは、菓子を作って欲しいと言う話だった。
夢の中では何かに急き立てられることはなく食事を楽しめたらしい。何か、琉珂と菓子を作ってそれにベルゼーと名を付けて欲しいとも言われた。
俺はチョコレートなどが良いのではないかと想っている。グラオ・クローネでは灰色の王冠と呼ばれ、感謝を伝えるものとして知られているだろう」
「ええ。知っているわ。私も皆に貰った事があるもの」
美味しいのよね、と嬉しそうに笑う琉珂にゲオルグは「それをベルゼーの名を付けた新しいチョコにしたいと考えるのだが、どうだろうか」と問うた。
「ええ、素敵だと思う。けど、そんなに新しい物って出来るかしら? ほぼほぼレシピって出来上がっていそうだし、新しいチョコレートなんて……。
ま、まさか、研究するの? 私とゲオルグさんで新しいチョコレートメニューの考案まで頑張るという事かしら……!?」
「いや、琉珂にとってもそれは大変だろうから大丈夫だ。
出来れば簡単なチョコレート菓子から練習していき、その過程で見付けることが出来れば良いのではないかと考えて居る」
「そっか。そうよね……世界も滅びそうだし……」
その辺りは関係するのだろうかとゲオルグは首を捻ったが、さて置いて。琉珂は覇竜領域を守る為に近郊に存在するラサへの出兵を進言するだろう。
里長代行と、珱の血筋の者さえフリアノンに残していれば琉珂本人が出兵しても何も問題は無いはずだ。琉珂も指を咥えてみては居られないだろう。危険時には身を張って全てを救う尽力をするはずだ。
「ねえ、ゲオルグさん、完成品をゲットするのは戦いが終った後でも良い?」
「勿論だ。しかし、そうなるにも時間があるだろう。どうするんだ?」
「少し、約束のつもりなの。オジサマにね。私がちゃんと世界を救ってくることが出来たならオジサマの名前の付いた菓子をお供えに行くって。
どうかしら。オジサマから答えを聞くことは出来ないから、この約束は代理としてアナタが承認して欲しいの。
あっ、勿論、それは待てないとか、危ないから止めなさいって事だったら考え直すわ。本当に、私が里の外に行くことを皆が止めるから……」
何処か愚痴っぽくなってしまったと呟いてから琉珂は頬を抑えて息を吐いた。本来ならば未知を既知とするために、道なき道を走っていくような娘であったのあろう。
好奇心は旺盛で、それが故に外からやってきたイレギュラーズ達を簡単に里に受け入れた過去まで有る。その後、イレギュラーズとなった彼女は真っ直ぐに外に飛び出したのだ。
そんな彼女だからこそ里長代行たちは「里長が外に飛び出して死地へと向かうのは間違いだ」と口を揃えるのだろう。
琉珂自身は『つまらないけれど、分かって居る。それが里長というものだもの』との事ではあるが――とどのつまりは彼女も我慢なんてしてられないのだ。何せ、イレギュラーズなのだから。
「危険だと言われても行くだろう?」
「行って良いのかしら」
「俺には決定権はないさ。琉珂のしたいようにするといい」
「……皆がね戦いに行くのに私だけ指を咥えて里で安全です~って待ってるなんてイヤなの。
勿論、里の中に居れば、誰も彼もが助けてくれるわけじゃないし、何なら、里を護る為に私も頑張らなくっちゃならないのでしょうけれど……違うの。
そうじゃなくって、何て言えば良いのかしら。私もイレギュラーズとして戦いたいの。里長としての立場があるのは分かって居る。けれど――」
「けれど?」
「けれど……そう、多分、屹度。オジサマだったらいってらっしゃいって背中を押してくれるわ。
それがオジサマを越えた私のするべき事だもの。冠位魔種だったベルゼーを倒したことに後悔はないから、その代り、世界を救わなくっちゃ、オジサマが浮かばれないわ」
琉珂は困ったように笑った。なんたって、ベルゼーを殺す決断をしたのは自分なのだ。だからこそ、彼が守りたかったと願っていた覇竜領域を守る『ついで』に世界を救いたいのだという。
「構わないと思う。ベルゼーも認めるだろうし、待ってくれるだろう」
「そうよね。お腹空かせても待っていてくれるわよね。……で、えっと、練習って言うのは……」
「墓標に備えて料理が逃げ出してしまった場合はどうしようもなくなるだろうから、『ベルゼー』という菓子に良く似合う材料を探しながら、料理に動かないようにと言い聞かせねばならない」
ゲオルグは自身の発言が本当に胡乱である事は理解していた。そもそも、料理は逃げ出さないのだが、逃げ出してしまう可能性があるというのだから問題だ。
特に、琉珂という娘の料理は何故かたったか走り去ってしまう。琉珂自身もそれを是としているのか名前を付けて可愛がるのだから動く事の出来る料理としては生存を認められたようなものではないか。
それでは墓標に供えたところで料理が逃げ出してしまう。それでは意味が無くなってしまうではないか。
琉珂は神妙な顔をし、「確かに」と呟いた。ゲオルグは彼女の奇妙な料理が覇竜領域の材料を使ったが故であるとも識っている。
だからといって、覇竜領域の材料を使わないという選択肢はない。何せ、ベルゼーと名付ける菓子を作るのだ。ベルゼーの名の付いた菓子であるというのに、覇竜領域の材料が一つも入っていないのは可笑しいのでは無かろうか。
「覇竜領域の材料で比較的安全そうで食用に出来て、尚且つ、動き出さないものを探そう。時間があるときで構わない。
こんな時勢だ、何時戦いに出なくてはならなくなるかも分からないからな。のんびりと探していけば良い。
戦いが終った後ならば時間もたんまりあるだろうからな。ベルゼーには平和になった記念品だとか言って渡せば良いだろう」
「本当ね。オジサマに記念品だと渡せば屹度喜んでくれるわ。ふふ、それってとっても良いわね。楽しみになっちゃう!」
嬉しそうに頬を緩める琉珂にゲオルグは頷いた。しかし、動き出さない材料とは何なのか――ゲオルグには分からないままであった。
その辺りは覇竜領域の住民達が詳しいだろうか。どちらかと言えば食べる事の出来る奇妙な草や動物などに詳しい者の方が多いだろう。覇竜領域の植生は独特だ。それ故に、モンスターなども特異なものが多く居る。
琉珂が選び取る材料の活きが良すぎるのは原因だが、大概はきちんと調理すれば動く事は無いらしい。不思議な魔素でも吸い込んで、料理が二足歩行して走り出してしまっているのかも知れないが、通常はそうならないというのだから先ずは安心できるだろう。
「……琉珂の料理がよく動くのは敢てそう言う食材を選んでいたのか?」
「最初はそうだったのかも。オジサマが不味いって言い出す料理を作りたかったんだけど、段々、美味しいって言うから興味が出てきて……
そう言う変な食材ばっかり選ぶ様になったのよね。こう、動き出す理由は火が通ると筋肉が活性化するだとか、魔力的回路が刺激されるだとか、そういうものらしいのだけれど」
悩ましげな琉珂にゲオルグは成程、と頷いた。琉珂自身の料理センスもぶっ飛んでいるのだが、食材選びを正せば『レシピにないけれどアレンジにぶち込んじゃえ』がなくなって安心できる材料になる可能性は十分にあるだろう。
問題点があるとすればゲオルグには安全な食材の判別がつかない事、そして、琉珂自身は動いても特段問題を感じていなかったため食べてみれば大丈夫だと考えて居る点である。
「墓前から逃げ出すのは問題だから出来れば逃げないようにしたいけれど、覇竜領域の食材を使わなくっちゃオジサマの名前の付いたお菓子にはならないもんね。
あと、そうねえ……私的にはサクサクのチョコレートが良いわ。サクサクだったら食べて居る感じがしてオジサマのお腹もいっぱいになるかも知れないもの」
「サクサクか、何らかの食用の花びらをフレークと見立ててチョコレートを付けるか? いや、それだとあまり芸が無いか」
「そもそも、チョコレートに似通った代替品みたいなものは覇竜で作れないのかしら? だって、主役が外の者ものだと鳥渡寂しいわよね」
「ああ、そうだな。大体の材料は覇竜領域で探す様にしよう。その方がベルゼーも喜ぶだろう。彼にとってはこの覇竜領域は家のようなものであっただろうから」
「ええっ、きっとね!」
琉珂は嬉しそうに笑みを浮かべた。今ならばピュニシオンの森に入り込んでも危険性が高すぎるわけではない。竜種達と固有関係が結べていると言うよりも、共闘した竜種とはある程度の顔見知りとなった事で危険を斥けてくれる程度の気遣いはしてくれている様子であった。
特にラドネスチタ――ラドンは自らの領域周辺の危険分子は退くように指示をしていた。ピュニシオン自身に棲まうモンスター達は以前よりも活発ではないようだ。
ならば森の中で何かを探すのも手だろう。木の実など覇竜領域でのみ見られるものを出来るだけ探して、それを菓子の材料にするのである。
食用の花びらもそれなりに良さそうなものを領域内で紹介を受けた。調理手順も里の者達がある程度教えてくれるという。
ベルゼーの夢を見たらしい。その名前の付いた菓子を作って欲しいのだと言っていたという。そんな夢でしか無い事を、信じて活動してくれる。それはどれ程に喜ばしいものであろうか。
ゲオルグは「琉珂」と呼んだ。木の実を採取しながら「これ食べれるのかしら」と芋虫を掴み上げていた琉珂がくるりと振り返る。
「どうかしたの?」
「……いや、フリアノンの者達は、夢を信じてくれるのだな、と思って」
「当たり前よ。私が言ったのよ」
「そうだが……」
夢見がちで純真な娘が、不思議なことを言っていると言うだけで終ってしまう可能性だってあっただろう。
だが、食材について調べたり、その加工の方法を考えたり、至れり尽くせりの状況なのだ。それも、当たり前の様にその夢を信じての行動である。
ゲオルグは「琉珂は、ベルゼーと親しかった。それにイレギュラーズだ。俺を疑うことはないと想うが」と前置きをした。
「だが、里の人間は違うだろう? 最初、イレギュラーズが覇竜領域に来た時に我々が集落に入ることを反対した者だって居た」
「そうね。それは私達の集落がそれだけ余所の人間に対して適応し辛い環境だったからよ。
オジサマと社会見学と言って、外に出たことがあるわ。ラサのネフェルスト。オアシスの中に佇んだ夢の都よ。
あそこに行って、どれだけ集落が狭いのかを思い知ったの。覇竜領域という場所は、脅威の只中だわ。だからこそ外の人間は来ることが無かった。
私達は竜種と何となくの共存をしながら、亜竜達に怯えながら暮らしてきていた。……それでもね、外に焦がれていなかったわけでは無かったの」
ベルゼーが一部の人間にだけ話してくれる外の世界の話は、憧れだった。どれ程に素晴らしい場所なのだろうと誰もが口々に話す事だってあった。
時折、ベルゼーに相談を持ちかけて外に出ていく亜竜種達も居たが、誰もが出自を隠していた。覇竜領域から出て来たという事は口にはし辛かったからだ。
「外の人間に対して忌避感があったわけじゃないの。ただ、私達は外を知らなかった。だから、アナタたちが踏み入れることを拒絶しただけだった。
あと……ほら、オジサマのことで嘘を吐く人間は余り居ないと思っているのよ、みんな。だって、イレギュラーズだってオジサマを大切にしてくれた。
だからこそ、信頼しているの。嘘なんて吐かないだろうから、オジサマが離したって云う事全てをね、里の皆はきっちりと熟したいって願うのよ」
「……そうか」
「そうよ。それだけオジサマが愛されていたって事なのよ。
本当に、オジサマがいてこその場所だったの。私みたいなね、世襲の里長じゃ、そうはなれない」
琉珂は俯いた。ゲオルグは息を呑む。彼女は確かに世襲制で継ぐことの決められた里長だ。故に、幼い身の上で里を背負うことになった。
その事は確かに違いは無い。彼女がそうやって集落を背負うことをベルゼーは心配そうにしていたのだから。
「オジサマがくれたのは里長は琉珂であるという確かな事よ。彼がそう言ったなら、皆そうだなと認識するわ。
琉珂を育て上げるとオジサマが言って下さったから、それならばオジサマに任せていれば問題は無いと皆は認識出来たの」
「琉珂……」
「オジサマがいなければ、私は屹度里長になんてなれちゃいないの。だからね、偽物の冠を被せられている気分だわ。
私は箱入り娘というわけではないだろうし、お姫様なんて柄じゃない。ただ、野を駆けずり回っているだけの人間だったの」
「……ああ」
「だから、ゲオルグさん。こう言っちゃなんだけれどね、オジサマの夢を見てくれて嬉しかったの。
私が挫けないように次の目的が出来る。どれだけ勉強したって、今の私じゃオジサマの理想にする里長になんてなれやしないって苦しかったから」
琉珂は菓子作りでも里が一つになってくれさえすればそこから見えるものがあるはずなのだと感じていた。
ずっと里長という立場がプレッシャーでしか無かったけれど、ベルゼーと名の付く菓子を作るだなんて――そんな愉快な事を任されるとなれば里は皆一丸になってくれるはずだ。
その連携を固めて心を一つにすれば、琉珂という娘が改めて里長として立ち上がることが出来る。日々の勉強に加えてベルゼーのように振る舞って、里の未来を繋いでいけると考えたのだ。
「えへへ、何だか暗いことばっかり言ってごめんなさいね」
「いや、大丈夫だ。ベルゼーの代わりになるかは分からないが相談には乗ろう」
「ふふー、お父さんが出来た気分。存分に頼っちゃおうかしら。私ね、ベルゼーオジサマの義理の娘みたいなものだったから。
ゲオルグさんの娘気分になるとお得ね。お父さんが沢山居るような心地で、とっても幸せになるはずだわ」
嬉しそうに笑った琉珂にゲオルグは「そうか」と頷いた。彼女には本当の父は居ない。亡くなったのだ。父代りも亡くなった。
だからこそ、甘えるように頼ってもいい大人が少なかったのだろう。そうやって心境を吐露して、前を向くために相談をしてくれる――聞き役だけでいいのだろう――のは琉珂からの信頼の証だと考えられる。
「私とゲオルグさん、とっても仲良しさんになったと思わない?
もしかしたら、オジサマは私とゲオルグさんを仲良しにするために菓子作りを提案したのかも知れないわ!」
「……そう、なのだろうか……」
「ええ、ええ、屹度そうよ。だってね、オジサマのお菓子を作るなんてとっても大変な事だもの。まず、動かない。それから、美味しい。あと、可愛いのが必要よ!」
「ああ、そうだな。折角なら」
「その為には時間がとっても掛かるもの。戦いを終えて、それから、もっと沢山の時間を掛けてお菓子を作り始めて……。
それが今後の約束になるならば、私頑張るわ。生き残るし世界を守るし、そんな簡単な目標一つあればよかったの。だから、ふふ、よろしくね」
目指すは『ベルゼー』という名前のお菓子作り。その為には沢山の困難もあるだろう。
ひとつ、ひとつ、乗り越えてゆこう。それが彼の望みであるはずだから――
- 空っぽの冠完了
- GM名夏あかね
- 種別SS
- 納品日2024年03月11日
- テーマ『それは愛しく、あたたかな』
・ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)
・珱・琉珂(p3n000246)