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ロジャーズとアーノルドの話~断章主義~

登場人物一覧

アーノルド(p3n000354)
銀の瞳の遂行者
ロジャーズ=L=ナイア(p3p000569)
同一奇譚

 貴様、くたばったのなら、灰になったのならば、思い出になったらどうだ。如何かするとちょくちょく私へ干渉して鑑賞して。趣味の悪さにかけて私は一家言あったのだ。しかして私を越える最悪が居ようとは。嗚呼、確かに一頁にしたのは私で、一頁になったのは貴様の遺志だったがな。罪を犯したことの無い者だけが石を投げよと、宣った野郎を撲殺せねばなるまい。吐物、吐き散らかしたところで憂鬱。貴様の残した傷。無いはずの胸が痛むのは貴様を思い返してしまうからだ。馬鹿馬鹿しい口惜しい、業腹だ。煮え繰り返っている。はらわた。そんなものも、私には無かったはずだ。戯れに身を飾るだけの肉塊でしか無かったはず、いあ! 混乱した昏乱した、胡乱な日暮れ時、よくもやってくれたな。よくもまあ、私を、人間にしてくれたな。葛藤。私の自己同一性は何を担保にしていた? 何も無いが故の自由、其れこそが至高との思考。貴様によって歪んだのだ、私が、私の有りようが。貴様によって変化した、この有りさま、ザマ、異化にしてくれたのだ? 無貌を誇ったこの身が無謀にもぼてくりまわされている。吹雪も氷雪も今では我がはらから、奇譚断章、断章取義も唯々ところ。私は物語でどばどばと流れ込む文字量を受け入れるしか無い。阿吽、実に腹立たしい。結局のところ、貴様のいない日々をどう過ごせば良いのか解らずにいるのだ。出会う前と出会った後で、分岐した何か。私。存在論。宇宙の果てのレストランで落ち合う気でもいたのか? そんな能天気で、貴様、私をこねくりまわして、おんなのこにしてのけたのか。恋とかいうものをチラつかせて自覚させたのか? 漣でしかなかったものを、大荒れにしてくれたのか? 貴様がまっすぐに、まあすぐに、私を選んだ理由は、もはやどうでもよい。貴様が私を選んだ事実だけが残っている。誠意とかいうものを、貴様は見世たつもりなのだろうが、その結果が此れだ。笑わせる。貴様のお涙頂戴に付き合ってやったのだ。今度は貴様が私へ付き合う番だ。ソレこそが誠意とかいうものだろう。
 私は世界を滅ぼす。その時は隣に居ろ。約束だ。貴様が押し付けたのだ。私の言の葉を封じてまで。責任を取れ。
 私は滅べない。世界が滅ぶまで、貴様がかけた呪いだ。溶けることも融けることもない呪縛だ。ならば私が世界を滅ぼすより無いではないか。私が存在する限り、貴様に安楽などという腑抜けを提供するつもりはない。とことんまで使い潰してくれるからその気でいろ。貴様が愚かな只の人間でしかないと、気づいていて見限らなかった暗転、流転、輪廻転生とかいうものを私は信じない。浄土まで行って魅せようか。補陀落を魚鱗で埋め尽くしてやろうか。大海で一人、風に流される筏のように、大言壮語したところで、ぽかり白い息を吐く。喪失したなどとは考えまい。貴様は私の断片になったのだから、貴様は私に組み敷かれたのだから、貴様は私に溶け込んだのだから。終末まで引きずって行ってやろう。永遠とかいうものを、貴様は望んでいたようだが、所詮ふりでしかなかったのだろう? あの時、あの言葉を交わさなければ、貴様もまた違う道を辿っていたか? それこそ私が納得するような、悪役ぶりを観せてくれたか? 遂行者がどうの理想郷がどうの、とってつけたポジショントークはよせ。反吐が出る。貴様もまたルストに翻弄されていただけの凡人に過ぎなかったのだ。平々凡々な人生を送っていて、少しばかり歯車がかみあっただけの、只の善人め。善人なおもって往生を遂ぐ、いわんや? 短い生涯に花火を上げて、貴様は満足したかも知れないが、私は違うのだ。うえている、かつえている、割愛する渇愛。それもこれもすべて、貴様のせいなのだと、ここにはっきりと宣言しておこう。貴様という一頁の上へ書き殴ってやろう。一人遊びだと嘲笑うがいい。かまうものか。腹はくくった。無いはずのはらわたがあるのだ、腹ぐらい生ぜしめるのは簡単なことだ。なんならへその尾の痕まで作ってやろうか? そうとも、貴様のせいで、私が定義されていく。私が形作られていく。不愉快極まりないことに、私は其れを良しとした。良しとしてしまった。観測を続けるつもりなのだろう。貴様。私を。ゆらぎの中に揺蕩っていた姿を、この世へ引きずり出すのだろう。笑っているな貴様。嘲笑ではない。それはわかる。うれしげな顔をしているな、さては。それだけはわかる。笑っていろ。その銀のすなおなまなざしで私だけを見つめていろ。私へ感情を、感傷を齎したのは、貴様だ、アーノルド。気の迷いだ。気の迷いのせいで『こう』されたのだ。……私は混沌を滅ぼさなければならない。

 抑鬱状態からの躁、パニック、強迫観念。いわゆる狂気。絶対的に気が触れた旅人。ウォーカー。それで貴様、私のことをどう思っているのだと虚空に聞けば、何処からともなく返ってくる、大好きだよ君が。


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