シナリオ詳細
ローレット・トレーニングV
オープニング
●穏やかな日々に
「天義での大きな戦いお疲れ様だったのです!」
ローレットの受付。いつもの所のいつもの席に、『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が座って、笑っている。
一時は命の危機に晒された彼女がいつも通りにそこに居るというのは穏やかな日常が帰ってきたとさえ感じられた。
「サマーフェスティバルも終わって何時ものローレットなのです。
あ、けど、今日はボクにとっては特別な日かもしれないのですよ」
にこ、と笑うユリーカ。緑色の瞳を細めて、受付カウンターから身を乗り出す。
小さな背丈の彼女がぐん、と両腕でその身を持ち上げて「何かわかりますか?」と問い掛ける其れを周囲の情報屋達は面白そうに眺めていた。
「亮さんやアルテナさんは分かりますよね?」
「え? そりゃあなあ」
「ええ、分からない方が不思議よね。特に月原くんなんてそうじゃないかしら」
特異運命座標――『男子高校生』月原・亮(p3n000006)と『冒険者』アルテナ・フォルテ (p3n000007)が目を合わせて笑う。
そう。
亮やアルテナにとっては運命を変えた日で。
混沌世界の空中神殿に特異運命座標が『大量召喚』されてから早くも二年――
旅人である亮にとっては元の世界からの転移を。人間種であるアルテナにとっては聞き親しんでいた英雄への道を。
そして、ローレットの設立者にして偉大なる情報屋であったエウレカ・ユリカの忘れ形見ユリーカ・ユリカにとっては『父が何時か言っていた奇蹟』の日。
「この世界に『大いなる可能性』が芽生えた記念の日! なのです!」
だから――今日をお祝いしたい。
君達にユリーカはそう笑った。
●むかしのはなし
彼女の名前はユリーカ・ユリカ。ローレットの看板娘にして、情報屋だ。
その苗字『ユリカ』で察する者もいるだろうが、偉大なる情報屋エウレカ・ユリカの一人娘だ。
ローレットの現オーナー『蒼剣』レオン・ドナーツ・バルトロメイ(p3n000002)とはタッグを組み多数の冒険を潜り抜けたというエウレカは若い彼をサポートする形で共にローレットを立ち上げた。
その際にはユリーカの母たる冒険者と共に三人(と一人娘)のこじんまりとしたギルドであったそうだが――
エウレカは言っていた。
――レオン、ユリーカ。いつかの日、この世界に特異運命座標が大量に召喚される。
――そうしたら、この世界の何かが変わる。それって素晴らしいと思わないかい?
レオンは「アイツが喜ぶんじゃねーの」とぶっきらぼうに返しただけだったが、ユリーカにとってはそれは夢のような話であった。
大好きなパパとママと、そして『お兄ちゃん』と、夢を見る。奇跡の様な、世界の変わる瞬間を。
……そう思って居た彼女に突然訪れた両親との死別。
父代わりとして、兄として、ユリーカと共にローレットを運営するレオンは彼女が『大量召喚の日』をどれ程待ち望んでいたか知っている。
巨大な冒険者ギルドとなっても、ユリーカにとっては大切なパパとママが居た思い出の場所で。
レオンとは志が違っていたとしても――彼女は、言うのだ。「パパが言っていた日なのです」と。
「ボクはこの『奇跡』を忘れません。ボクは、パパとママの夢を目にしたのです。
パパとママは言ってました。世界が変わるんだ、って。ボクはそれが見たいのです」
だから君と夢を見よう。
世界が変わるその日の為に。
●それで――?
具体的にお祝いとはパーティーでもするのかとユリーカに問い掛けた特異運命座標たち。
ユリーカはきゅぴーんと(ちょっぴりアホっぽく)ドヤ顔をして「ふふん」と鼻を鳴らした。
「トレーニングなのです」
は?
「この日を忘れず、そして常に努力を惜しまない!
あ、勿論大食いもアリだと思うのですよ。ボク頑張ってパーティーの準備をしましたし!
勿論、パーティーの準備を手伝ってくれるのも大有りなのです。やっぱり、鍛錬の後はご飯が美味しいのです!」
ローレットとして貸し出される施設で筋トレやらトレーニングを楽しんだり。
ローレットでユリーカがお祝いしたいというそれをお手伝いしたり。
飾り付けを邪魔しつつ、摘まみ食いをしたり。
トレーニング終わりに食事で精を付けたり!
なんだって、鍛錬だ。
「楽しい一日にしようなのです! なーんだってしてもいいですよ!
だって、今日はボクにとっても特別な日なのです。
今日をおめでとう! そして、皆が来てくれてありがとう! とってもとっても、嬉しいのですよ!」
- ローレット・トレーニングV完了
- GM名Re:version
- 種別イベント
- 難易度EASY
- 冒険終了日時2019年08月15日 23時56分
- 参加人数845/∞人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 845 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(845人)
リプレイ
●はじめに
『二周年おめでとうございます』
そうやってこっそりとアピールしたミュリエル。フードの下はどんな感じだろうか。
「私は今日……この祝いの場に集った者×1kmのランニングをするぞ!!」
ラノールはそう言った。
せかっくの大規模召喚に――彼は!
「これなら何となく人数の多さを活かした感じが出ていいのではないか!
よし! 頑張るぞ!! さぁ、参加人数は!?」
聞いて驚くな! 845人だ。さあ、私と一緒に走りだそう!
●
ギルド・ローレット。
本日も晴天なり。ユリーカ・ユリカにとっての輝かしい『希望の日』にやる事と言えば鍛錬だ!
さて、何をしようかと思い悩むはシェリーや誠二。素直に言えば行動指針(ぷれいんぐがない)のなら、今から考えればいいだけさ!
「さて、さて。トレーニングね……なんだか、食事を取る場所の用意は万全の様ですし。ふふ、特訓にも身が入るというものね」
佐那は皴世相に小さく笑う。その言葉に菖蒲が堂々と頷き脳内でシミュレーション。
男性「この料理美味しいね! 誰が作ったの?」
菖蒲「わたしです!」
男性「なんて理想なんだ、結婚しよう!」
菖蒲「はい!」
――なんてことがあるかもしれない。
「イレギュラーズ……ユリーカが言う大いなる可能性があったからこそ、おれっちたちグリムアザーズがローレットに合流できたな!」
リックはうんうんと大きく頷いた。
「あら。私達がイレギュラーズとして喚ばれた日から、もう二年になるんですねぇ。
時が経つのは中々早いもので……ふふ、感傷に浸るなんて私らしくないですね?」
ハイドはくすくすと笑う。気紛れに相手取り、鍛錬に行こうというハイドの背中をフェリシアはぱちりと瞬き見遣った。
「ここに来るのも久しぶり、ですが……沢山の方が、いらっしゃる……のです、ね
わたしは、何をしましょう、か……みなさんの様子を眺めるだけでも、お勉強になります……でしょう、か……?」
誰かの戦いを見るのも十分に勉強のひとつだ。
「へぇ……人が多くて賑やかなのね、ココも」
まだ召喚されたばかりの楪にとっても慣れないものばかりだ。風葉やモース、レーカ、アマダスの姿を見ながらも楪は首を捻った。
「この先どうするべきかしらね。戦ったことない私に、戦えだなんて……」
それも、これから未来を始める一歩だ。
「さて、この物語が始まって二年ですか。早いのか、まだまだなのかは人それぞれでしょうけど……うん、足りないですね。感動的で刺激的な物語をもっと欲しいです」
愛らしい顔をして四音は中々に刺激的な発言を繰り返す。
「こんにちは、こんばんは! それからおはようございます!」
何だか動画配信者の様な明るく元気な挨拶を繰りだしたユーリィ。何もないと思って居た? 何もない訳がないのです! ローレット・トレーニングなのですから!
「私は新参者故に、力を渇望する。故に祭りよりも鍛練に励ませて貰おうか」
堂々たるアンウォルフ。勿論です。戦士たるものやはり訓練は大事ですよ。
シルヴィアや縁も何時もの通りローレットで依頼を確認するコルクボードを眺めている。
レイ、津々流、クリス、シフォリィ、橙子と言った面々も今日は何をしようかと悩まし気だ。
София、遥や烏丸もよければ何をするか考えてみればいいのだ。
「『大いなる可能性』が芽生えた記念の日、な。俺もお祝い事は好きだ。だって、焼き肉とか豪華な物が食えるだろ?」
そうなのです。槐の言葉に昴も頷き手伝いとトレーニングをしようとやる気を漲らせた。
訓練をしてご飯を食べる! それだけでも立派な行動指針なのです。
何も分からないなら、書かなければいい――? 否、折角の記念日(おまつり)です。
きっと、アリシス様なんて神の手(らいたー)を試しているに違いはありません。
「うう~ん……ここに行った方が良いと言われて来たのだけれども…今日はお祭りかしら?」
首を傾げたジョーカー。そう、全ての冒険の始まりは此処からです!
空中庭園に訪れて、まずはここ、ローレットへと向かいましょう。アシシラの傍らで、アンゼルがふむと小さく呟く。
「これが先輩方が言ってた件のトレーニング……か。私もこれを期に鍛え直し、前線復帰を夢見ても良いのだろうか」
努力は怠るべからずと臨時キャンプとして一から自身らの体を鍛え直す事にしたパトリシアやロードリック。ティモシーやバリーもその一員だ。
パーシー、フランク、アレクシスとマーヴィンも加われば臨時キャンプは賑やかな面々で満ちている。
遥華やバンティ、ヴァイパーも良ければこのキャンプに参加してみてはどうだろうか? 神託の少女に説明されただけでは理解の及ばぬ自身の状況を見詰め直せるかもしれない。
「最近呼ばれたもので、よくわかっていないのですけれど。体を鍛えていたらよろしいのですね?」
だいたいそれで今回の催しが説明できてしまうのだからイサベルの理解力には感服だ。
「あー……例のローレット恒例のトレーニングか。
めんどくせー……とか言ってられねぇよなァ。生きるか死ぬかの戦場に突っ込まれる未来もあるンだろ?」
達哉のぼやきに否定はできぬ。
「ぼ、ボク……凄い新参者なのですが……恐れ多くも先輩の皆さんに混じってもだ、だ、だ大丈夫なのでしょうか……?」
「死にたくないなら頑張るしかねェぞ」
達哉の言葉にアドネはこくこくと頷いた。強くならなければ何もできない。デボレアも含め、一生懸命頑張っていただきましょう!
「とれーにんぐ? ぱーてぃー?」
お目目をぐるぐるしたナディア。特異運命座標は兎に角忙しい! 頑張るしかないのです!
楽しいパーティーに臨む前にさては鍛錬だとナディアは両手に力を込める。
「最近までトレジャーの旅にばかり出てローレットには関わってこなかったんだが……」
特異運命座標達の為にパーティーをするのかと降は雑用係に立候補した。
「座って待っておれば宴会が始まると思ったのであるが、待ち続けるのもそれはそれで何というか落ち着かぬ。
かと言って料理など手伝えば足を引っ張るのは目に見えている。なにせ余は由緒正しき貴族! 宴の準備などできるはずもないだろう!」
エンヤス様はそう言った。勿論ですとも。エンヤス様にご足労戴くだなんて――!
「さて、2周年だそうだな。
わたしにはまばたきのような時間でしかないが、小さき者にとってはめでたいことであろう。よって、祝福したいと思う。それに、個々の物語を記録し閲覧できるようになったというではないか。ショートストーリーとかいうやつだ」
淡々と告げるラクタ。興味深き物語を閲覧して是非に、この世界を楽しんでほしい。
これがいい機会であると黒羽が考えるは『必殺』を有効活用できる手段であった。
「とにかく速く飛べるようにトレーニングッス! それ、いつもやってるじゃないかって思ってるッスか? 日々の積み重ねが大事っていうじゃないッスか!!!!!」
リョーコは買い出しは任せろとバッと飛び上がった。
「行くッスよ―――――空がアタシを呼んでいるッスー!!!」
●
「パーティー?そ っか、天義の事件、終わったんだね……
でも、わたしは美味しいごはんが食べれるから来たの。天義が残ったのは、嬉しい……けど、それだけだもん」
そう言ってアクアは料理に瞳を輝かせる。きゅるるとお腹が大きい音を立てた。
マキナやプラックの前には様々な料理が並んでいる。紅やサレリア、プリスの前に設置されているケーキ台などには色とりどりの――特異運命座標達が用意したものも含まれる――ケーキが並んでいた。
エルウィンやカナデが普段見るローレットとは様変わりした様子であるのも頷ける。パーティー会場にするべく、飾り付け隊もいたからだ。
「本当はトリオで回れるかと思ってたですが……まあ、お仕事があるのは仕方がないのです。探せばきっと、何処かで料理でも作ってると思うのですが……わざわざ邪魔する事もないです」
あまり騒がしいのは好きじゃないというアトゥリ。担当にも優しくないのです、というその言葉に全夏あかねが涙しましたが、それはさておき――
「ところで、前々から気になってたんだけど、アトゥリちゃんって幻想種なのに私達獣種みたいな耳がついてるんだよねぇ。
どうなってるんだろうって……ギフトのせいっていうのは前に聞いたけどね?」
「……そして、スーちゃん。そのワキワキした手はなんなのです?
前にも説明した通り、この猫耳はギフトで…敏感めなのでそれ以上の詳しい解説は拒否したいといいますか」
脱走するアトゥリ。それを追い掛けるスー。脱兎の如く、と言う言葉の似合うアトゥリを逃がすものかとスーは只、走った。
「大規模召喚があった日、ね。
私は去年の末に召喚された身だからその日の事は知るよしもないのだけれど、その日はきっと今日みたいに……いえ、今日以上に多くの人であふれていたのでしょうね。
そして、それが待ち望んでいた日だというのなら……おめでとう、ユリーカ」
「有難うなのですよ、ルチアさん!」
にんまりと笑ったユリーカは手にクラッカーを以てルチアに勢いよく発射した。
「 何してもいいのよね!? ユリーカちゃんのほっぺたのばしてもちもちして遊ぶのもよさそうだけど!
何かしておかないとなーんかダメよねぇ……なんだって、鍛錬だ!」
「あわわ、もちもちはだめなのですよぉ」
慌てるユリーカに秋奈は「飾り付けでもするわね」と鼻歌を交らせ歩き出す。
「トレーニングに呼ばれるのも慣れてきた所だけど、今回は特に人数が多いわねぇ。
まあ、雪山や砂漠でやれって言われるよりはマシかしら。今回はお祭りらしいし、適当に色々と見て回ろうかしら?」
キャンプよりもこうした日常風景の方がマシだとミスティルは肩を竦める。
「野菜とかは避けて、こう、な? 魚とか魚とか、あとは偶に肉。いや別に猫だから好物とかそういう訳では」
並んだ料理に手を伸ばしながらリュンクスがどれにしようかと迷えば、其処にネージュが「ほら」と皿を差し出す。
「 いやまさか、こんな場で食べられない物は出てこないだろう。多分……。俺もひと段落ついたら、何か食べさせてもらおうかな」
ネージュは調理担当から受け取っては配られる料理から野菜を避けて魚を頬張るリュンクス。
「食べるのです。お腹一杯食べるんです……だって仕方ないでしょう! こんないい匂いをさせる場が近くにあって訓練なんてそんなの集中できるわけないじゃないですかうわなんですかこれお代わりお願いします」
早口でそう言ったカンナ。お腹がすくのは仕方がない事なのです。
「出されたもの片っ端から食べる………ですぅ~。
それによって心身ともに鍛える……ですぅ~」
パサライト13世おこたのなかからずるずると顔を出した。何だって出て来たものをもぐもぐと食べるという勢いなのだろう。黒焦げのもあるがきっとパサライト13世ならば大丈夫……だ。
「全人類皆幼女か少年になればいい。
時よ止まれ……発展途上の、あの未熟さ、無垢な瞳。
まだ何者にも染まっていない初心な……」
勢いのいいリドツキの傍らで、翔一郎は眼鏡をクイッとした。
「あぁ、特殊性癖の方ですか業が深いえ否定的意見は持っていませんよ幼体とか幼形成熟個体は興味深いですし。所謂ロリババアというのは幼形成熟個体の一変種と捉え――」
リドツキと翔一郎の間に火花が散った。
「パーティですね。パーティ。楽しいですね。にぎやかですね。
……お前場違いなんだよとか思われてないかしら。心配です」
フォルテシアはネガティブなのが特徴だが、今日という日は止めておこうとふるふると首を振る。
「トレーニングとはいったい何だったのか!!
嗚呼、ユリーカ。今回はどんな感じだ? まあ、いつものんびりしているが……皆が忙しい時だからこその贅沢ってあるじゃあないか。
それはそうと唐突にこちらの世界に呼ばれて家族と離れ離れになった人どう思う?」
「うわあああ、ランドウェラさんの右腕が頑張った感じで動いてるのです!」
そう言いながら、家族と離れ離れはさみしいとユリーカは言った。
●
『ん、またトレーニングなの。怪我人が出ない事を祈るの。もし怪我した人がいたらLoveが治療するの』
優しいMeltingの言葉を聞きながらエリカはどうしようかなとローレットの中を見回る。何をするかを迷っているのはガーグムドばかりではない。
天十里やシュウェムー、アルベルトも今日という日をどう過ごすかを考えているだろう。
「さて、私は基礎トレーニングを重ねるとしましょう。………ロレトレでは私毎回これのような気がしますね???」
そう言ったリリアーヌ。そういう単純訓練も良い事だろう。悩まし気な面々も良ければ熱中症には気を付けつつ、こうした訓練をしてみるのは如何だろうか?
狭霧やリカナ、クリムに友重などの面々、アクアの悩まし気な顔を見ながらリースリットもどうしましょうと首を傾げる。それに合わせてこてんと首を傾げたティミ。
アインスやアラク、トカムにウルマを見遣りながら悩まし気なゼフィラ。彼女なら何かの探求をするのも向いているかもしれない。
「素振り、素振り、素振りです! えい、やー、とー!」
レリアの声を聴きながらシエルは首を傾ぐ。巫女は訓練で汗をかきたくないし、と小さく呟いた。
「ただし、準備の邪魔をするいけない子にはお仕置き、よ?」
「ふふ、そうですね。花でも飾ってみましょうか。どのような花の香りでもいいですしね」
柔らかに微笑むサン。その香りにぱちぱちと瞬いたのはジルージャだろうか。
シルヴィアの傍らで心地よい香りのジルージャが取り合えずティーカップを手にしている。
愉しそうなことに誘われてやってきたフィーネ。スフィエル――もふもふ達と共に彼女は周囲を見回している。
職こそ美徳であるアーネリィや周囲を見回す燐花をちらと見てから静かに息を潜めたクローネ。
エドワードや白雪、ミヤツキはローレットのカウンターの椅子に座っていた。
それを眺める渓やユーディット、美鳳。そうした面々にも情報を伝える伝令役として立ち回る、そして伝令役として必要なのは脚力であると屍は考える。
(ならば答えは一つ。走り込み。それにつきます。幸いなことに、この猛暑。暑さに耐えつつ、己のコンディションを調整し、最短かつ最高率で目的地へとたどり着く――)
願ってもないチャンスだと胸を躍らせ、いざと出発することを決定した屍。
ルートを決定して走りだすその背中をアーバレスタ、モエギ、イヴ、怨寿は見送った。
冬佳の傍らでパーシャはさあ、ご覧ください、と胸を張った。
「ふだんは包丁を使うんですが、今回は……おいで、ウルサ・マヨル!
私も召剣士の端くれですし、日々訓練……ですよね? ウルサ・マヨルがお野菜を切ってくれている間に、ちょっとしたスープを作ります。夏にぴったりの冷製スープなんかどうでしょう!」
「ほう……」
こうして召喚士て料理するのも立派な訓練だろう。
「大きな戦い、そして大きな祭りの後だ。皆には栄養付けて貰わないとね!」
そう言いながらどらは真っ黒こげの料理を量産していた。その心は――胃腸のトレーニングも担当する! という事だった。
クロノやガーベラはそれを食せるだろうか。庶民派ではあるがガーベラは貴族だ。胃腸の具合がやや心配である。
ショゴスは忍び足で近寄った。何だってとりあえずは口に入れる。それが、どらの真っ黒こげの料理であろうともだ。
幾度かつまみ食いして叱られてもショゴスは止まらない。そこに食べる者があるからだ。
「なるほど、お祝いを兼ねた鍛錬を行うと。施設も貸し出していただけると。ここは――筋トレですね!」
勢いのいいアニーヤ。限界まで筋肉をいじめるというその勢いは良し!
「トレーニングじゃ! わしが今からやるのは『ヒップリフト』と呼ばれるものじゃな。
別段道具もいらんし自宅でも気軽に出来るからオススメじゃぞ!」
瑞穂がうんしょ、と立ち上がる。確りとやり方をレクチャーしてくれる瑞穂の言葉に従えばそのトレーニングも簡単にできそうだ。
「えっ。……筋トレ!? いや確かに今回の趣旨はトレーニングだけど……筋トレするの!?
…い、いやほら、あたし獣種だし。適度に外を走り回ってたら勝手にフィジカルはついてきたというか」
ごにょごにょと言うニア。アニーヤの言葉に従って、幾つか覚えて帰ろうかと実践に移す。
「皆で筋トレするんだお? ウチも今日の日課がてら混ざるんだぬ。
いつもてけとーにやってるだけだから色んなやり方があっておもしれーんだお!!」
にこにこと笑うニルの隣で、ひとりこそこそと移動する影がある。
「おや、おやおや? 皆様お揃いで何を……え、筋トレでありますか?
いやぁ残念でありますな、何を隠そうわたくし非常に非力でして!!」
逃げようとするErectum 。だが、ここで逃がさないのが特異運命座標なのだ。
●
「やっとまともな所でトレーニングをするのかと思ったら……人、多すぎじゃない!?
なんでこうイレギュラーズって極端なの!?!?」
リズは叫んだ。別に一人でも寂しくはないのだが、誰かいないかなと見回した。本当に別に寂しくはないのだ。
グレンや戸子の向こう、リズの探すお姉様の姿は見えない。
誰かが大量召喚があるだろうと告げたというそれを醒鳴は不思議な事だなと小さく告げた。
喧騒の中で食事に舌鼓を打ちながら、誰か詳しい者はいないだろうかと周囲を見回す。
「今回は初回に倣って素振りといくッスよ。先の決戦前に新調したわけだし、しっかり慣らしとかないとッス」
手にした鮫牙棒を振るうシグリット。それを見ながら下呂左衛門はパーティーと訓練がごっちゃになっている混沌食う時間もローレットらしいなと感じていた。
「パーティー会場? しかして同時にトレーニング会場? 賑やかなのはいつものイレギュラーズといったところでござろうか」
そう口にして、鍛錬に励む。理由はちょっぴりお腹周りがぷにぷにしてきたからだ。
「トレーニングとか知らねーのです。
自宅警備員は自宅を警備するのが仕事なのであって……ふむ?
会場の設営はどうなってるです? ちょっと計画書見せてください。食事の量は足りてますか?」
SpiegelⅡは自宅警備をすると言いながら混沌極めるパーティー会場の設営へと身を乗り出したのだった。
それを見ながら、そういうのもありかなとルカは本を手にする。
「ボクは……汗をかいて訓練とかは…ちょっと…いいや。
大人しく本を読んでいるよ……ほら、知識を増やすのもさ、訓練の内でしょう?
そもそも体が強くないし……体力づくりをするための体力が無い……?」
それではこの夏の暑さでは訓練する前に倒れてしまうかもしれない……。
「この混沌に来てから全然活動していなかったけれど……少しは何かしておかないといけないね。
そんなわけで2周年というこのめでたい日にトレーニングをしようと思う
私はそう、枕だね。トレーニングにも休養は必要、そして休養には睡眠が大事」
枕という魅惑の響き。寝たい。実に寝たい。最高じゃないですか、枕。
その様子を眺めてクロジンデは「うわー、すごいひと」とぼやいた。
「大罪討伐で史上初の快挙ってことで宣伝効果があって集まったのかなー? 管理する側としては仕事が増えるばかりだよー」
クロジンデ。元ローレットの受付嬢。彼女は集まった人数とその面々を覚えるべく必死になっていた。
「おっさんアイドルユニット『ダンディ☆プリンス』として、パーティーを盛り上げるのだ」
そう言ったゲオルグにショウは成程、と頷いた。少しくらいノリで羽目を外してもいいだろうとポップで明るい歌とダンスを披露する。
(手乗りサイズでふわっふわなその見た目は紛う事なくキュート&プリティ。
ダンディ&プリティの二つの要素で魅力増し増し間違いなし――!)
守りたい人が居たカレンはそう呟いてその様子を眺めている。こういったトレーニングは依頼に行かぬ彼女の身にはありがたい。
もう、護りたいと願う人が傍に居ないから。体が訛る事なきようにとそっと立ち上がった。
意識を移転に集中して雪之丞は只静かに息を吐く。彼女に取って、藤原という男は何処までも目で追う目標だった。
護れる強さに憧れ、護る姿に焦がれ、護る者があることに嫉妬した。
まだ、本来の姿を見せる覚悟がない――だから、今は剣を振るうのみだ。
「ナルホドなるほど成程ね! そういや我々の成す事すべてがパンドラ! 即ち私や私達が紅茶を飲んだり淹れたり振る舞ったりする事で、世界の救済にまた一歩近づくってコトね!?」
成程。ラァトは紅茶が世界を救うと信じていた。それに水城はくすくす笑う。
歌でも歌おうかという彼女。億劫だと言うがまだ20代前半なのである。
「Improvisation……与えられたお題に合わせて、台本や打ち合わせのない芝居をその場で作り上げる即興演劇の事だ。
この一年、色々な依頼を受けてみて俺が感じたのは、ただ武器を持って戦う事だけがイレギュラーズの仕事じゃあないって事。その内容が真であれ偽であれ、説得するためのアドリブ力を磨く事は、間違いなく俺達の財産になる」
晴明はチップはこの箱に、と取り出すが――それにウィンク一つで付け加えた。
「Gがないならパンツでもいいんだぜ?」
良くないのです。それを支援するという春樹。2.5次元を参考にいろいろできるだろうかと姉ケ崎先生はまじめに考え中だ。
その様子を眺めながらベルナルドは確かに、と頷いた。説得と言うのも必要な技能だ。そうした中で演劇をするというのも必要不可欠だろう。
観客にとシャルロットと夢唯、アテネ、ヴァトーを呼び早速の公演だ。
役割は『十三きゅん』の十三。もはやそれはどういう役割なのかと十三は悩む。ショタ枠なのだろうか――ある意味、地獄ではないか。
●ケイト・ブリューゲルの『奇妙』な陳述
「あの、その、訓練する気はあるわよ? ただ、ちょっと友達だとか居ないし
……かといって仲良い人達へ混ざっていって『えっ、なんなのこいつ』みたいな腫物扱いされるのも嫌じゃない?
……えっ?だからぼっちじゃないって。訓練にスイトックなだけ!
えっ、人数が多いから1人参加は描写されない? プレイングを埋めても厳しい?
何を言ってるの? 訳が分からな……ああ! ごめんなさい! 1人にしないで!
ううっ、もう、助けてくださいっ! 神様、仏様、シャルロッテ隊長に陛下ー!」
くしゅん、と王宮で響く一つのくしゃみ。
「どうかしましたか? 陛下。まさか……」
「いやあ、かき氷をたくさん食べるのはするべきじゃないねえ」
●
「天義で見事魔種は討たれ、此度の騒動も終止符が打たれた。
あぁ、それ自体はとても喜ばしい事だ。だが……だからこそ奴の存在が気がかりだ……一体、今どこにいるっ……!」
そう竜祢は呟いた。それを心配そうに眺めるアニーはどうしたの? と声をかける。
「珍しいわね。あんたが悪だくみもせずに大人しくしてるなんて……何かあったの?
話しなさいよ。長い付き合いなんだから、あんたが楽しそうなときはロクでもないことが起きるし、あんたが真面目な時はロクでもない上にヤバいことが起きるか、既に起きている。それくらいは察してるから」
それが付き合いの長さと言うものなのだろうか。霊亀が混沌に来ていると囁く辰祢にアニーは神妙な顔をして見せた。
トゥヨウはささやかな露店を開き宝石を磨いている。精緻にかつ素早く作業を行うトレーニングになるというそれは特異運命座標達の目を引いた。
「切断機? いえいえ……危険ですから、原石はある程度小さくしていきましょう。
ああ、ルーペとライトでお客さま自身で見てもらうのもいいかもしれませんね」
露店をちらりとみてからテレンスは鍛錬へと向かう。
(今回もやって来ましたか。では、また腕を磨かなければなりませんね。
……どうやら、深緑でも良くない影が蠢いてるようですからね)
ラサ、幻想、深緑の3つを股にかけて起こる事件。気にならないとは言えないだろう。
「はいはい!! オレは食べる!! めっちゃくっちゃ食べるぞ!
せっかくの御馳走やお祭り、見逃す手は無いな。
用意する人も必要だけど、それを楽しむ人がいなくっちゃあ勿体ねーじゃん!」
それもまた鍛錬なのだという様に洸汰が挙手しテーブルへと走り寄っていくのをカリーナは追い掛けた。
「なんだかよくわからないけど、賑やかなパーティじゃない!
こういう時こそ、盛り上げていかなくちゃいけないわよね。
というわけで賑やかなところで歌って踊るわよ! せっかくの催し物だもの! ここで乗らなきゃ損ってモノよね!」
トレーニングだと聞いていたけれど、とチックは首を傾げた。ユリーカがお祝いしたいというならばその手伝いをしたいと名乗り出れば、ユリーカは皆さんと一緒に楽しみたいのです! と微笑みチックを手招く。
「何かご飯を食べましょう? おいしいものがいいのです」
「ん……、わかった……」
食事が並んでるのを見ながらルウは両手を打ち合わせるうまい酒にうまい料理。最高ではないか!
「強い肉体を作るためにはまずは材料が必要だ!
体の材料といえば食べモン! 食べモンといえば肉!! あと野菜!」
食事かあとリリーはぱちりと瞬く。
「んー……こんかいはリリーがつよくなるというより、レブンのうごきをつよくしたいなっ。
まだあらいところがあるし、こうなったらはしりこみ? するしかないねっ」
リリーはレブンにのっかりながらぐるぐると回る。食事も大事だけど鍛錬もして身に着けなければ。ああ、これはこれで目が回るのだ。
その様子に悩まし気なステラ。技術を使わなければギフトがあっても中々鈍ると考える。走り回るリリーを不思議そうに見ている住民たちにポジティブな印象を植え付ける。それこそ、彼にとってのギフトを使う練習だろう。
「すんごい勢いで筋トレする。適正な回数?超回復?、なんだそれは……」
凱の悩みにこたえる事無くレイランはその様子を眺めていた。
マルクはただ、走っていた。
(――実は先日、失恋しました。まあ、もとより届かない恋だってことは、分かっていた。
諦めるための告白だったと、自覚した上で思いを告げた。頭では分かっているし、心が乱れ焦がれている、って訳ではない……。
それでも……不意に寂しさがこみ上げる事がある)
だからこそ、ただ、走り続ける。いずれは癒えていく傷も今は治療が必要だ。
●
「零くんふぁいとー! がんばれがんばれ~!!
タオルや冷たい飲み物も用意しておかなきゃ! 適度な休憩は大事だもんね!」
応援し続けるアニー。その声を聴きながら零は必死に頑張る。フランスパンを弾丸にして必死に攻撃を高める中――
「ご褒美……だと……? ………や、ってやるとも……!」
そしてその努力が実り、アニーと零は顔を見合わせ「やった!」と手を打ち合わせた。
ユリーカと呼んでナインは彼女を肩車していた。
「記念日というのは重要ではある。
無味乾燥な日々でも、ああそういえばこんな日だったかと、心に多少の潤いは与えてはくれるから」
「ナインさん! あっちにいくのです!」
指さすユリーカにナインは了解したと頷く。肩車してふとももの柔らかな感触と言うのも中々に良いものだ。
「あなたが飾り付けを頑張ってくれたおかげでボクも楽しく作業できたよ。ありがとう。よかったら、このあと一緒にご飯食べませんか?」
その言葉にユリーカははいなのですとパーティーに誘った。少しでも一緒に居られたらという願いは確かに叶っているのだろう。
「ふむ……とはいえ、私が出来そうな仕事などあるのか……? いや、出来ないから訓練なのか…なるほど……むぅ……」
何をするべきかと悩まし気なリジアに「なんでも楽しいのですよ!」と声かけるユリーカ。そう言われるのも難しいものだ。
「セシリアがパーティーの準備を手伝うと言ってたから私もその手伝いをするかしら」
そう言葉にしたユウにセシリアは微笑んだ。
「ふふ、料理皆喜んでくれるかな~ユウもお手伝いありがとうね、さてさて作って行くとしますか!」
やっぱりお祝い事だ。全力で素敵なものを作りたいというセシリアにユウは簡単な事なら手伝うわと微笑み――つまみ食いを撃退していた。
「戦火に巻き込まれた人々に真っ先に必要な物は温かい食事。
効率よく配膳が行える様になる為に、この機会に修練を積みましょう」
カイルの配膳を見ながらイースリーは食事作成のサポートに回りますと頭を下げた。
水分ミネラルの補給や調理場の熱中症指数をチェックするイースリー。
「わたし食べる係する。がんばる。すごいたべまくる。おいしい」
おいしいらしい。せっせとセティアに布巾を渡した蜻蛉。
「ねえねえ、おねえさんにんじんあるー?」
「沢山あるんよ。ほら、どうぞ」
蜻蛉にニンジンを貰ったオカカはおいしい―と言うが、そのオカカに魔の手が迫る――
シェリルやポワニャールはその一部始終を見ていた。オカカはおいしそうな食材と判断されかけていたのだった。
御残しは許しまへんでの気持ちで稔と虚はもりもりと食べ続けた。もう食べれないとなれば走りだしどこかへと消えていく――そしてまた食べるのだ。
「いろいろたべる。おいしい。みんながつくったものたべる。やばい、おなかやばいマン。爆発する?」
します。
「ああ、うちもいただきますよって、おおきに。祝い事するんは、いつの日もどんな時でも、楽しいもんです」
微笑む蜻蛉は来年もこうやって過ごせたらと目を細めた。
「よし、俺は好物のチョコレートにする。いつものだけど、これ食べてるときが一番落ちつくし……今日はそれにコーヒー、ブラックで」
甘いものと渋いものが交互だと美味しいとシラスはそう言った。
「わぁ……いただきます!」
おなかやばいマン、セティアの隣で焔珠は料理を食べながら頬を緩めていた。お腹いっぱいになるまで食べれるなんて幸せだ。
「パーティなのです。はい、つまりひまわりの出番なのです。
気象衛星でありお天気キャスター的役割を持つスペシャルなAIである所のひまわりなのですが、当然人々と対話するのがお仕事なのです」
「なるほど」
「聞いているのですか?」
気象衛星ひまわりの言葉にセティアは「えもい」とだけ返した。えもい。
「よし、料理を作ろう」
そうルーキスは告げた。
「……ふえ? こう何時ものトレーニングではなくて……料理ですにゃ?」
首を傾げる鈴音にルーキスは頷く。
「炊き出しスタイルにでもすりゃもっと楽なんじゃないかねコレ。なんでわざわざレストラン……」
頬を掻いたルナールにルーキスは「いいだろ?」と振り向く。これこそが稼ぎ時だというのだろうか。
「鈴音ちゃーんお皿早くー! マリスとテラは温度管理徹底、一つの鍋も焦がさないこと。ルナールは只管完成した料理の配膳だー!」
司令官ルーキスの声にマリス・テラと鈴音は了解とポーズを一つ。
「数が異常では?」
『本気で手が足りてねぇんだな、ひひひ忙しいねぇ』
マリスはどんどん持ってきてともぐもぐ食べ続けるコゼットの前へと配膳を続ける。
「あまいのは、すき。からいのは、まあまあ。すっぱいのは、そこそこ。にがいのは、きらい……!」
「重い料理は一皿づつで構いません。置いた時のレイアウトも自然に研究して覚えるものです」
配膳係の彼者誰はしゃんとそう告げる。
●瀬川 商業㈱のメンテナンス
1.事業計画
弊社は施設や備品、その他参加者が必要とする物品の調達を行うものである。
2.背景
これは800人以上の大人数が参加するイベントであるが、想定外の人数との情報があり、予定した物資では数量が大幅に不足することが懸念された。
そこで弊社も業務経験を活かし、イベントの円滑な運営を支援することを決定した。
3.具体策
会場を巡り視察あるいは聞き取りにて、破損した施設や備品あるいは参加者の持ち物等を拾い上げ、代替品への差し替えおよび代理購入を行う。
無機疎通にて年式・型番などは概ね推定可能であるため、弊社の持つ商業知識及び商売繁盛にて、早急に小売りと連絡し在庫の確保および輸送の手配を行う。
●
「さてと。久方ぶりに訓練といっても、動き回るのは戦士の役目で狼の役目ではないからなあ」
そう言ってグリムペインは大量の本を読んでいた。知見を増やしコネを作る。
それこそが単純明快に彼にとっての戦闘力増加の道筋だ。
アメジスト、アクアマリン、ガーネット、エメラルド、ダイヤモンドは手を繋ぎくるくると回る。仄かな光が周囲を包み込んでいた。
その様子を見ながら真白と朔夜、クラウディア、セイがほうと小さく息を吐く。
「んにゃ? おじさんどちら様だっけ?」
首を傾げた姫喬。ジョージは昔の自身とつながりがあるのだと聞いて、彼女はにんまりと笑った。
ならば、組手なども彼なら出来る。そう確信してジョージに姫喬は構える。
「それじゃあたしも、最近練習中だからそっちで付き合ってもらおうかな!」
今までの訓練とは違い、大規模な戦闘訓練でないのは不思議な心持ちだとシャスラは息を吐いた。
(けれど……何かを成し遂げた後や、ずっと思い描いていた夢をもう一度確認できるのはとても喜ばしいことだ。そして、それに自分が一翼を担っていることはなお喜ばしい)
鍛錬に挑む者たちにも勿論、と水分補給を勧めるシャスラ。キースやラヴィニアや雪乃はそれに小さく礼を言う。
イレギュラーズは健康的だとヤタガラスは医療知識を広める講義の準備に勤しんだ。
リナやクロの傍で突然びょーんと飛び出したクーアは「呑むのです!!!!!!!!!!!」と叫んだ。
「当然ながら全速力。しかしてメイドですので、というかひとですので、よく味わって楽しむのです」
グルメマンガ的リアクションパワーを全力投入しながら炊き出しをするコリーヌと『正宗くん2号』を眺める。
「楽しみなのです!」
「うんうん。頑張れ!『正宗くん2号』」
「ナンテコッタ……」
料理には時間が――かかりそうだ。
ラビィとアベルは密談を行っている。木を隠すなら森の中。声を隠すなら雑踏の中だ。二人の会話が何なのか……それはこの雑踏に吸い込まれて消えてしまっただろう。
「ふむ、今回は祝勝会も兼ねたトレーニングか。だが、私がやることはいつもの如く祈るのみ。
トレーニングで死傷者が出ることなく、祝勝会もトラブルなく無事に終わることを……ね」
祈るナイジェル。その様子を眺めるはセリアだ。フィジカル面を鍛え直さなければとやる気は十分なのである。
その傍らでヨシツネは静かに瞑想を続けている。記憶の中に或る普段とは違う存在――ベアトリーチェ・レ・ラーテ。その強大さに飲まれぬように力を手に入れると彼は心に誓う。
トレーニングの時期なのかと周囲を見回した妖樹。何時も通り皆を観察するように周囲を見回した。
「トレーニング……なるほど。ならば私は銃の鍛錬をさせてもらおうか」
シエスは銃を構え的を狙う。その隣で絵里は空想のお友達とトレーニングしていた。
「私知ってます。これをやるとEXPやSPが増えるんでよね?
違うです? そうですか。むー、じゃあ特訓がんばろーかー皆ー。たくさん首狩るれんしゅーれんしゅー。あっはー、やっぱりたのしーなー。お友達と遊ぶのってー」
虚空を切り裂いているが彼女にはしっかりとお友達が見えているのである。
「せっかくのパーティーだ、飲んで食って歌って騒ごうじゃねえか! おーい、誰か一緒に一杯どうだー?」
そう呼んだアーサーにコップの片づけをしていたミーシャは執事服で「お料理必要かな?」と首を傾ぐ。
「はぁい! いちばん! 京千鳥! のみまぁーす!!! っぷっはぁ! いいですねぇ、経費で飲めるって!」
何処までも素直な千鳥。ミーシャはニコニコとしながら目の前に料理を差し出した。
メイドでもいいが執事の方が動きやすいというミーシャ。執事らしいふるまいのがいいかな、と小さく笑みを溢す。
「おにぎり。からあげ。かつおぶし。もぐもぐ。
くっ、量が多い。多すぎるにゃ。これはますます頑張って食べないといけないにゃー!」
ミーシャに運ばれた食材をたらふく食べながらシュリエは朝ごはんを抜く苦行は辛かったと告げた。
クロサイトの傍を通り抜け、何か手伝う事はあるかしらとフィーゼは悩まし気に首を傾げる。
「やること? ありますよ! 即ち、つまみ食いです。ありがたくいただきましょう。うまーい!」
オリーブは料理にお酒。全てが無料だというだけで心が躍ると笑みを溢した。
●
「ボクの魔術は魔力と、精霊との親和、そして想像力が力の源。
日々それぞれ鍛錬を怠っちゃいけないのさ」
フィールは周囲をきょろりと見回した。一人で鍛錬を行う世界はフィールに向かって付与を付ける。
それを眺めるカナエやムサシの隣で右も左も分からないというラースは兎に角基礎の訓練をしようと決めていた。
「……」
鍛錬、鍛錬、鍛錬、鍛錬、鍛錬。カジリは騒がしくっていやだと言う様に肩を竦めたが――ちょっぴり羨ましいのだ。
「コギト、折角だ。二人で見て回ろうか」
そう誘ったホルンにコギトは頷いた。
「ねえ、義父さん。この世界、みんな(呪い)の声に溢れているよ」
いつ見ても不思議だとコギトが瞬けば、ホルンは折角だと義娘を手招いた。
「一つ歌おうか――」
薔薇の精霊より賜った技を練習するとエストレーリャはやる気を漲らせる。
(腕を磨いて、魔種に出会っても負けないくらい強くなって、友だちになってくれた人を、守れるように……もう、誰も奪われたり、させないように)
強い決意と共に自身の技を鍛え上げんとエストレーリャは努力する。
「特訓、特訓ですよお。
未だ力は十全でなく、大地を均す力もまた不全。であればこそ、他の皆々様のお手伝いをしつつ、自分の鍛練になることをしましょうねえ」
そう言ったグランツァー。精霊の力を許に、何かを構築することこそ必要だと努力続ける。
「平時出来ないような死合が出来るかと思いましたが……ツレないモノですね」
無量は小さく呟いた。石を投げ捨ててどこか拗ねた様に無量は呟く。
「何処かに月に一度、私を殺しに来て下さる様な方は居ないのでしょうか」
カラーボールを持っての模擬戦。レジーナとミニュイは共に戦い続ける。
「ただ投げ合うだけじゃつまらないし、賭けをしない?
負けたら一回だけ相手の言うことをなんでもきく、てものね。これなら少しは真剣味が出るでしょう」
そう笑ったレジーナにミニュイは緩く頷いた。
「それにしても、賭けか。いつも妙な事を思いつくね。
……負けたくないから、危なくなったら高度を取っちゃおう。ずるくない。鳥は飛ぶもの」
ミニュイの言葉にレジーナは「まあ」と瞬いた。
●
「ふふ! 今日は素敵な素敵なパーティー、ね!」
ジェーリーが幸せそうに笑みを浮かべる。敢えて言うならばこれは休むトレーニングだ。
「悩んじゃいますね? むむむ」
そう首を捻ったアイラ。これから敵もますます強くなるだろうと考えて、今を大事にしようと思うアイラだった。
「ね? 自分をおばあちゃんって呼んでって言う子も珍しいけれど。
ジェーリーはそれが嬉しいらしいから……呼んであげて?」
柔らかに声をかけたルシにジェーリーは笑みを溢す。
「こうしてわいわい出来る日が私に来るなんて、ね……感慨深いものがある、わ」
咲はぼんやりとローレットでグラスを揺らす。
「私ってば、未だにどうやって戦ったものか決めかねているんですよねえいえ、元々は戦う気はありませんでしたの。後方から皆様の勇ましくいやらし……ゲフンゲフン、御姿を眺めさせて頂ければなあ、ぐらいの気持ちで。ええ」
結構本音が出ている。
「……でも、ちょっと張り合いたくなってしまったんですよねえ。それがね、かなり無謀な相手なんです。その、幻想最強の騎士のザーズウォルカ…………さん、に」
フィッツバルディ公から賜った鎧ってだけで妬ましさで咲は狂ってしまいそうだ。
「トレーニングね! それなら私は尻尾を鍛えるわ」
部位だった。フィリアは尻尾をぶんぶんと振っている。見てみて、と自慢げであるのも可愛らしい。
メルトアイや樹里はそのフィリアの尾の動きを眺めている。
「あっちこっち見テ 回ろうっカナ 見分を深める! のだー。キ・キ・キ!」
ばさばさと空を飛ぶミミ。その様子を眺める鍔姫はぱちりと瞬く。
イリスや悠凪、シルフォイデアをテーブルへと誘ったメートヒェン。パーティーの準備と言えば自分の出番だと取り皿を差し出した。
メイドの誇りをかけて確りと準備は万端なのである。
「パーティの準備をお手伝いするわ。
皆、鍛錬をして疲れていたり、そのあとのことを楽しみにしたりしていそうだもの。実際、私だってこのあと皆さんとお話するのが楽しみだわ!」
楽し気なヴァイスは瞳を輝かせる。野菜も食べて頂戴ね、と柔らかに彼女は微笑んで見せた。
スフレチーズケーキに柄久多屋の酒。VeMP 49の元へと気配遮断しながらゲオルクが料理を運ぶ。
「夏だけどあっついODN……おでんを提供するよぉ? ウチのギフトのお陰で、引いてる屋台からウチが念じたODNが煮出てくるわけでねぇ? 材料不足にはならないよぉ? むしろ材料がいらないよぉ?」
御田はむしろ、一家に一人いて欲しいレベルだ。時々食べたくなるよね、ODN。いいいよね。ODN。
「おー、リナリナ、食べる係! 一番食べる人、一番強い人!
いっぱい食べる、強くなるヒケツ! おー! まさにトレーニング!」
それは素晴らしい意見だ。一番食べる人が一番強い。リナリナは勢いよく肉を喰らう。
「昔の人、言っていたっ! 『肉シミを越えた者が真の強者』っ!!」
●
こやっとした狐耶。
「トレーニング、ええトレーニングですね。母様も言ってました、日々のトレーニングが自らの心身をキープし、いつでも最高のパフォーマンスを発揮する礎となると」
そして、最高のパフォーマンスから繰り出る暴力は全てを解決するのだと……彼女の母は末恐ろしい。
「つまりあたしは食べまくる。そう、パーティーだから。
飲みまくってもいい。だってパーティーだから」
そう言いながら今後は友達を作ろうと誓うエレンシア。
「トレーニングということで昔読んだ本を参考にトレーニング。まずは壁に向かって腕立てを……要は自重トレーニングを頑張ります。体幹とか鍛えるのです!」
智子のやる気は十分だ。壁に向かって腕立てをする中でも炎天下の太陽がじりじりとこちらを見ている。
「初めて参加するのですが、行動指針を固める場所が分かりにくかったですね」
花仙の悩まし気な言葉は今後の参考にさせていただきます――という事で、クラリスやノエルは鮮やかな太陽を眺めている。
リアンやアミーリアの傍で周辺を見回るダーク=アイ。やはり、この暑さだ誰かが倒れて居ないかもしっかりと気にしておくべきだろう。
「トレーニングですね。ええ、日々の鍛練はとても大事なものです。
私めは処刑人などという生業を行っておりますが、それもまた鍛錬が必要なものです。
未熟な刃は罪人にいらぬ苦痛を与えてしまいますが故に――主に正確さと筋力、その双方が必要になるわけでございます」
愛らしいのに残酷な刃を振るうのがパティだ。斧を只管に素振りし続ける。
「ふーん。両親とか、お祝い事とか、そういうの田中いいと思うでゴザル。
ユリーカちゃんのためお手伝いを辞さない我。濡れ手で粟! あわよくばレベルアップ!」
あわよくばレベルアップして欲しいデスレイン。超絶美少女魔王忍者(情報過多)に給仕されるなんてとてもとても嬉しい事だ。
「さて、皆様のお世話をするのは私の本分。張り切ってパーティの準備からパーティー中の皆様のお世話まで、全てお任せくださいませ。トレーニング中の皆様への水分補給のお手伝い等、何なりとお申しつけくださいね」
メイドことアンジェリーナはこれこそ自身の大舞台だという様ににこりと微笑んでいる。
「ご主人様と一緒に料理の準備をしちゃうよー!」
そう笑ったクランベル。ご主人様――リチャードはサクッとつまめるものをと料理をするクランベルの背を眺めていた。
「彼女には万人向けの料理を中心にお願いするとして、私はお酒を嗜む方向けに何かつまみになりそうなものを中心に。
……実を言うと私も酒飲みでしてね、この手の肴を作るのは得意なんですよ」
酒の関係はリチャードにと分担するそれを見ながら、フレイは「いいじゃねぇか」と頷いた。和食ならばお手伝いを、との名乗り出たリシリアが料理をせっせと運べばフレイは「彩は良いな」と頷く。
「味の採点? あーー……うむ、安心しろ。俺様が採点するのだからどこに出しても問題ないはずだ。星5つだ。ガハハ!」
フレイの好みにはピッタリのようだ。ニコたサバーシャにもお膳が運ばれていく。
「パーティーを、楽しむよ……せっかくの、いい機会だから。いい加減……こういう場所にも、慣れないと」
そう言いながらアイリスは淑女の礼を一つ。
「えぇと……パーティーの振る舞いって、こんなでいいのかな。助けてヨハナぁ……自信ないよぅ」
魔種はここにはいないのだが――アイリスにとっては大切なお友達。助けてくれるといいね……。
(先の天義での戦――魔種との死闘は記憶に新しい。と、言っても直接相見えたのはローレット、特異運命座標の精鋭達……)
道を拓くことに尽力したことに悔いはないとすずなは掌に力を込めた。
(――まだ、今の私では至らない、その境地。それでも、命を削る死闘であり、ギリギリの綱渡りであったと。
原初の魔種とは、それ程のものなのか。未だ見果てぬ先ではあるが――少なくとも、当面の目標は見えた)
顔を上げる。先ずは毎日の鍛錬あるのみ。ここで草臥れていては原初の魔種には届かぬだろう。
●
「ふーん、パーティーねぇ……。
アタシも元の世界じゃ出てたわよ、ちゃんと。でもアタシの出てた様なお貴族様用のパーティーとは趣旨が違うのね。まぁ、この雰囲気も悪くないわ」
そう呟くリディア。人間観察だって立派な訓練だろうと頬杖をついて行き交う人々をその眼で追う。
「……ずっとまともに参加できなかったからな。今回がいい機会だ。存分に特訓させてもらおう。
……ま、まぁ、最悪他の人の動きを見るだけでも訓練になるだろうし最悪一人で走り込みとか筋トレとかをすれば……。いや、そんなに弱気ではダメだ! もっと積極的に他の人に話しをかけて一緒にトレーニングを…いや、無理だ! 私にはハードルが高すぎる…!」
そう惑い続けるAdelheid。大丈夫だよ、声をかけてみよう。そういう軍人お姉さんも色々需要があると思うのです!
眺めるリディアの傍らでナハトラーベがむしゃむしゃとご飯を食べていた。
ちょこんと座り黙々と、そしてもぐもぐと、唐揚げ、フライドチキン、竜田揚げ、とんかつ……全部肉料理を食べ続けている。
――主の好き嫌いには手を焼いてるんです羽だけどと言わんが如く、一片の黒羽が舞い落ちたのだった。
(……あの子らしき人物がこの世界で目撃されたなんて情報は、まだ無い。
あの子がこの世界に来る可能性など、存在しないのかもしれない。けど、それでも……私の希望は、もうそれしかない。その時が来た時に、あの子を守れるように……力は、必要だものね)
そう呟いてジュディスは射撃訓練に臨んだ。その背を眺めながら――いつものポーズで――エリザベスは口にする。
「勝利に驕らず、自らを高める事を忘れない。素晴らしい心掛けですわね。皆様の高尚な魂にあやかろうと、わたくしも隅っこの方で術力を高めるべく精神集中の練習などしたく存じます。無機物にどこまで効果があるのかは謎ですけれども。
……しかしながら、わたくしなぞ凡庸な無機物。この胸に去来するのは雑念ばかり。800人を超えたこの人数を、GM様はどうさばかれるのでしょう……そして全員描写はあるのか、全員描写しちゃった場合、リプレイはどれほどばかりの長さになるのか、アップ時の負荷にサーバーは耐え切れるのか……そのような事ばかりを考えてしまいますわ」
私もサーバーが耐えられるのかが凄く心配ですがエリザベスさんならきっとガーンとした顔で「サーバー! 此処で死んだらどうなるの!」と叫んでくれると信じています。
「きょ、う……は、人が……沢山、です……少し……不安が、あります……ね……
パー……ティ……参加、出来て……よかった……です。ステ、ファン……さん、の……お陰……です……! どこを……見て、回り……ます……?」
ブランシュの言葉にステファンは笑みを浮かべる。人の少ない所から色々見てみようかと歩き出す。
「あ、あそこ行ってもいい? デザートって奥が深いよね。
フルーツの色合いやケーキの形の造形に色々考えさせられるものがあってね…っと描けた」
ステファンにブランシュは自分も描くのだとそう伝えた。これを機に絵を描くのが好きになってくれたらいいな、とそう願う。
あちらこちらを見て回りながらシャルシェレットはけが人には回復をしようと気を配っていた。
それは実験体37号も同じであった。元の世界で実験され続け自由もなかった実験体37号にとってはこうして混沌世界で戦えることが幸せだ。
「強くなって皆を守れるように! そして、強い敵を倒す為に! だから、これは、ワタシが成長する為の、いい機会。
だから、一杯特訓するよ! 特訓して、特訓して、もっともっと強くなるよ! ……でも、特訓。何をすればいいんだろう?」
トレーニング、と聞くとメルナはどうしようかと悩まし気だ。お兄ちゃんのようになるためにはどうするか。まずはそこから考えるのだと彼女は思案モードに入る。
●
ゴリョウはガンガン料理を作成していた。食べる係に名乗り出る面々には余すことなく料理を。
酒宴で飲み食いするものにはツマミやカクテルを。寛治の提供する種類に合うツマミもいいとゴリョウは準備し続ける。
その手伝いに威降は優しや果物の皮むきと下拵えを続けていた。
折角だから何か作ればとゴリョウが声かければ威降は祖母直伝レシピの麻婆豆腐を作ろうと悩まし気に呟く。
ミラは野菜を頑張って下拵えするのだと皮むきをするがまだまだ苦手な事は多いようだ。
「大丈夫?」
「は、はい……! がんばります!」
女子会には菓子類や火爆肥腸。ふと、ゴリョウが見下ろせばユリーカが「クレープ食べたいのです!」と笑みを浮かべていた。
「ぶはははっ! 一丁上がり! さぁ温かいうちに食わせてやってくれ!」
「それじゃあ『貸本喫茶ひつじ雲』出張版ってことで、僕のお店で提供している珈琲や紅茶、暑い季節にピッタリのコットンキャンディ入りのソーダを作って皆に提供させて貰おうかな!」
料理に合わせてと冥利は甘いソーダを作成する。勿論普段お店に来てくれる特異運命座標にはサービスも欠かさない。
その料理を手にしながらことほぎは美味い美味いと舌鼓を打つ。
トレーニングしてる面々を見ながら、反転という現象があることからも身内も仮想敵なのだろうと情報収集は欠かさない。
「お祝い事は楽しいよね〜。トレーニングも大事だけどご飯がいっぱい食べれるなら私としては嬉しいかな〜
大食いなら特に苦労せずともできるからね〜勝負する人がいるなら受けて立つよ〜」
アイリスはハラペコのお腹にいっぱいいっぱいに食べ物を詰め込んだ。ゴリョウから敵称されるものはどれも美味しい。
「トレーニングかぁ……ダルいなぁ。……なーんてことは今回はなし! なんせパーティだもんね!」
そう言ったミディ。つまみ食いしていると――その背後から何かが迫る。
そう、ちょっぴりヤバいものに手を出すとすぐに何かが起こるのがローレットの七不思議だ。
「やる気が出ないとかじゃないヨー。ホントウダヨー。
ママに連絡? マジ勘弁して下さい。いや本当に。この通り」
フィリアやフェルビナク、ゴドフリート、ライフリーブはパーティー会場の中でのんびりとしている。
「かなりの量の料理が必要になるし、これは料理人としての腕の見せ所だね!!」
やる気十分のリーリア。ステーキやハンバーグ、スープにサラダとガッツリ目の美味しい物やパンケーキやお洒落なクラッカー料理、パフェやシャーベット。おつまみになるモノだね、チジミやお刺身、ローストビーフに特製鯛茶漬けと至れり尽くせりの仕様である。
アレイス、フェルティスの傍を通り抜けたガヴィは「まあ」とリーリアの作成した料理に瞬いた。
「こちらはお魚……魚料理が良さそうです、私が海種だからでしょうか。
シンプルで素材の味を活かすものがいいです。それにお米があればとても美味しそう」
そういえば、とガヴィは寿司を作ってみようかとせっせと料理を始める。
クレセア、エレイン、アリルの鼻先を擽る酢飯の匂いは何とも心地よい。
「美味しいご飯……うん、楽しみ。ひたすら、色んな食材を切る、よ。
……何となく、反射神経?みたいな所が鍛えられてる気がする……ね?
こう、食材によって切り方も違うから判断力も……うん、結構いい修行になってる……かも?」
ノアの言葉に樹理がくすくすと笑う。食材をセレクトする役割を担った彼女は体調管理にもなるからと必要な栄養などの為に厨房を訪れていた。
「適切なトレーニングには適切な休憩と栄養も必要だよ。差し入れのドリンクを作りに来たけれど、こういう時に知識が役立つのは嬉しいね」
感情探知を使用して空腹や喉の渇き、疲労を感じている面々を捜索するモルセラ。
「ん……食べるだけでいいトレーニングがあるって聞いてやってきた。
この為に1食抜いてきたからいくらでも食べられる。任せて、食べつくす…我が名はリペア・グラディウス……『暴食』とは私の為にある。それじゃあ、いただきます…グラトニー…今回はそこで待機……ね」
もぐもぐと食べ勧めるリペアをブライトやリヴィエラが眺めている。それに華燗はうんうんと頷いた。
「まあ、まあ、トレーニングですのね。皆様みなぎっておりますわ。素敵ですわ、愉しそうですわ。ふつつかなわたくしも頑張りますわ」
シャドーボクシングにいそしむ彼女を眺めながら透やフリードは穏やかに過ごす。
(私は……召喚系や……支援の……スキルが……多い……ので……今回も……集中力を……鍛えなきゃ……何事にも……動じず……何者にも……惑わされず……)
そう、静かに考える幽魅。その傍らにひょこりと顔を出したアリシャはにやと笑う。
「いつぞやのお姉さんやないですかぁ~! ご無沙汰ですぅ!
今回もおひとり様で修行でっか? んじゃまぁ僕も一緒にやりましょうかね~
……てぇ、今回も! 無視ですかい!いやー、その一貫したスタイルは感服しますわ!
ほならわいも、お姉さんと一緒に精神統一といきましょ。…………っだぁーーー!無理! 黙るの無理ですわぁ! すんません!」
――対する幽魅は「また見つかっちゃったよぉ……」と怯えていたのだった。
「この飾りはここでいいかい? ……ああ、もう少し右な、了解!」
そう笑った織にユリーカは頷く。その手伝いをしながらセレネは周囲を見回した。
「こっちのお色とこの色の組み合わせはどうでしょう? ……とても合うと思うのです」
手伝いが終わってから陰でこっそりと昼寝をする織の傍に寄ってセレネは座る。彼がその姿を認識したのは次に目覚めたときだろう。
●
「数々の大きな戦いを経て、冠位魔種まで撃破した今!
積み重なったこれまでの想い、これからの決意。日々の感謝、告白、愚痴、主張etc……そういったものをこの宴の場を借りて大声で叫ぶ企画! ですわ!」
タント様はそう仰った。
「天から降るは愛の光、地に満ちるは愛の輝き。人の抱くは愛の心!
この世に悪の潜む隙は無し!愛を忘れた悪にねじ――」
以下数分間の長台詞の魔法少女インフィニティハート、愛の名乗り口上なのである。
「―――! ――――!!!!」
サイレント大声の榛斗。逆にこれもありっちゃありな気がします。
「アタシは何にしようかしら〜? やっぱりこれよね〜。
い くわよ〜〜……お金が! 欲しいーーーーっ!!」
実に欲求に素直なベルベッドの叫びが聞こえる。アメリアは成程、と大きく頷いた。
「……ほう。面白そうな事をやっているようだ。声量には自信があるのでな。
だが、叫ぶだけでは芸もないし、トレーニングとしては非効率だ。そうだな、一曲掛けてもいいんじゃないか?
当然、題目は魔法少女だ。どうせなら、この場に集った全員に響かせるくらいでやってやろう。聞いているか、魔法少女!」
イリスはそう言って胸を張った。歌声をどこまでも届けると声を張り続ける。
魔法少女である季楽鈴はその声を聴いていた。魔法少女だよと微笑むが魔法は使えず只管に剣を振るっていた。
「コォォォォッケコッッッッッッコォォォォォォォオッォオォ!!!! プロテインタイムだぁぁぁぁぁぁ!!!」
クックの大声はボディビル大会並みに皆を囃し立てている。凄まじい熱量である。
「オーホッホッホ! 何やら大声で叫ぶ大会があるみたいですわね! 飛び入り参加で乱入させてもらいますわ!
あら失礼、うふふ、最近になってようやく私の肖像画がつきましてあまりにも出来が良いものですからテンション爆上げでしたの。ありがとう! 岬絵師様! 後でFL送って感謝の気持ちを必ず伝えますわ!」
是非、そうしてください。リアナ様(ドリル)。
「元居た世界じゃもう飽き飽きしちまってよォ!こっちの世界に飛ばされて来てからはちったぁ力が抜けちまったような気がするが……この新たなる世界で、一から俺様は最強を目指して見せるぜェ!!! ガァッハッハッハッハ!!!!」
やる気十分のガングの大声は確かに響き渡っている。
「みんなともっと仲良くなりたいーーーーい!」
そう叫んだアメリア。皆と仲良くなれたら嬉しいと全力で声を張り上げる。
「まずは普段の主義主張。自然を大切にしましょう!」
リディアは優し気にそう主張した――が、ここからが本題だ。
「私はロリエルフでもぺたんこでもありません! 発展途上なんです! まだ成長するんです!あんまり子ども扱いしないで欲しいです! 以上です」
はい。ぺたん湖のお水を飲もうねぇ……。泣き出しそうなリディアはそっと俯いてしまった。
「私は今回、この場を借りて……あ……愛の告白を……しようと思う!!! では――」
Aliciaは個人的な愛を叫んだ。名を叫ぶ序でに、パンツを握りしめてリーゼロッテにも愛を叫んだが――きっとそれでは愛よりも殺意が……。
「イザベラ女王陛下! お慕いしてますーーーー!!!!」
何時もの女王ラブをしっかりと叫ぶ史之。女王が幸せであれば、それでいい。けど、海洋の依頼に行きたくても行けないこの想い、届いてくれ――!
何でも叫んでいいとネーヴェは聞いていた。お料理を頑張りたいけれど卵を満足に割れないし、火事にもなりかけたり……。
「どなたか、わたくしに、お料理を教えて下さいませーーーーっ!!」
悲痛なる少女の叫びであった。可愛いネーヴェが無事にお料理を完遂できるのを見守って居たい。
「お父様の馬鹿ー!!!!! 召喚されたからには、私絶対家には戻りませんから!
ディアナの事は死んだと思って諦めてくださいねーーーーーーーーーーーーーーーー!!! ばーーーーーーーーーーーーーーーーーーか!!!」
クール警備少女化と思いきや突然の家出宣言である。ディアナはそう叫びふん、とそっぽを向いた。その決意、素晴らしいと思います。
「……我が推したるすぴかちゃんを最近見ていると辛い。こうなんだろう……すぴかちゃんを見てると胸を締め付けられるような一緒に居て凄く嬉しんだが同時に心臓の鼓動が早まり頬が赤くなる。ともかくこのままではすぴかちゃんのファンとして活動に支障をきたしてしまう。誰かいい解決方法を知らないだろうか?」
大声と言うよりも悩み相談になっているのは問題ではあるが――しかしそれはファンとしての正しい在り方かもしれない。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛!!!!!」
予想よりやばいオッターの叫びをお聞きいただきました。
そんなオッターの背後から時が止まったかのようなスピードで飛び出したRoad=Roller。
「ロードローラーだッ!!!」
すさまじい勢いでギューンと去って行ってしまった。
「タント様がギフトを使ったら称えるポーズで全力コール! 勿論誰より大声で!! FC会長だもん!」
シャルレィスはやる気にみなぎっていた。そして、にゃんこさんが大好きだと未成年(?)の主張を繰り出す。
「シュテはーーー!! これから、もーーー!! みーーーんな、だーーーーーい、すきーーーーー!!!!」
博愛の心を震わせ、シュテルンが叫んだその響き。タント様もご満足だろう。
「それじゃあ、歌うよ! ♪イ゙↑レ゙ギュ゙ラ゙↓ズがん゙ばる゙ぞ↑↑」
皆さんは知っていただろうか? フラン・ヴィラネルの内面特徴は迷惑なリサイタルだ。
大声大会で披露していいものではない。森の中で歌えば鳥が落ちる。成程、そういう響きだ。
「あはは……やっぱりすごい歌だなぁ……」
シリルは頬を掻く。歌姫(シュテルン)に教わった方がいいのではと言い掛けるがきっとフランは自身の歌声は素晴らしいと思って居る。黙っておこう。
「――なんでローレットってこんなに変な依頼ばっかりなんですか!!!?
何時も女の子に間違われるんです!! 必死に頑張ってたのにひどいじゃないですかああ!!!! げほっげほっ」
かわいいものね、シリルきゅん。
頷くアルメリア。フランの歌声に凄いわとアルメリアは瞬き――故郷の事を叫んだ。
「暴れ回って牛を生きたまま食いちぎるスイカの化け物はまだいいわ!!
完全にモンスターじゃなくてただの野菜扱いだったけど!!! 走り回る雑草とか!! まぁこれもいいけど!!
着ぐるみ着てガバッガバな判定基準で自分を獣種と言い張らないといけない集落って何!? なんで深緑にそんなイカれた集落ができたのよォーーーーーっ!!!」
清廉なる美しき深緑。そう信じて送り出したら何だかやばい集落がぽつぽつ出来上がっていた。
「ボクは!!!! 身長が2メートルくらいになって!!!!
片手でかぼちゃがかち割れて!!!! 指先一つで地を裂くような筋肉ムキムキのいけてる男になりたいです!!!! 目指すは第二のガイウス様デス!!!!!」
そう叫ぶリュカシス。今の姿とは掛け離れるが、憧れるのは仕方ない。ガイウス様は絶対的チャンプだ。
「俺は本当はクールで無表情なキャラやったんやーーー!!
気づけば入る依頼もコメディ・ギャグ・オマンザイ!! 欧米か!!
新しい年は絶対に! 絶対に! シリアスでやってやるけんのうーーーーー!!!!!!!」
その叫び声がシリアスじゃないけんのう! ラクリマの悲痛なる叫びが響き渡っている。
「いつもありがとうございますっ、だいすきですよシンジュゥさまーーーーーー!!」
最初から叫ぶことが決まっていたというツクモはすんなりと声を発した。緊張しているツクモだが、頬を赤らめて、一生懸命発言だ。
「ぉ、ゎ、わ、私もっ、ツクモさん大好きですーーー!!!!!」
叫んでしまったとシンジュゥの頬がかぁと赤らんだ。緊張しすぎて私って言っちゃいました、と慌てるシンジュゥにツクモは小さく笑った。
「ボクが一番かわいいと思います!!!」
大声で叫んだエナ。優勝は間違いなく可愛いエナちゃんだという自身は満載だ。
「なんだか! 最近! キャラぶれしてる気がするー! 本来のボクって何だーっ!」
主人公キャラって結構ブレブレしますものね。公の叫びは悲痛なる響きがある。
「今年こそ結婚相手みるけるぞーーーーーーーーぉぉぉ!!!!!!」
クリロの声が響く。
「えーと、布教……でしたっけかー。
そーですねー教義でも読んどきますかねー……あとはテキトーに私のイーゼラー教に対する想いでも続ければいいですかねー」
ピリムの言葉にセレスチアルは頷いた。緊張するセレスチアルにピリムは何となく口にしながら飽きた様に適当な言葉を並べ立てる。
「 どうしよう……落ち着くのだ、こういう時は筋肉さんに語りかけて再度挑戦……さいど……サイドチェストォォォ!!!」
ネメアーの大声大会での一幕である。それに対してヴェルフェゴアさん、何か言ってあげてください。
イーゼラー様のすばらしさを伝えるためにヴェルフェゴアは教義を読み上げなさいと伝えているが……どうやら忘れちゃった様である。
お耳がキーンとするようなスピーカーボムで届いたサイドチェストの声にモザイクとマリリンもきょとんとしているではないか。
「オホホホホ!! このブリジットちゃんの美声をお聞きなさい!」
声高に布教し、教義を叫ぶのはお仕事じゃないけれど――とブリジットちゃんは云うが、言葉にしたのは自身の美声への自慢であった。
「皆様の心に満ちたその想い、そのきらめきでもって! この混沌世界が! とびっきり素敵な大団円を迎えられますよう!
改めましてっ、これからも頑張って参りますわよーーーー!!!!!」
指パッチン!
\きらめけ!/
\ぼくらの!/
\\\タント様!///
●
さあ、トレーニングだとニルギリは周囲を見回した。
ラグとロキ、シーナ、ニルギリの4人での訓練に百獣の王になるべくとラグは両手に力を込める。
いない……ならば、とロキの尊敬する人の声を真似て。
「おいロキ、どこ行ったんだ?」
シーナはたくあんを世に広めるトレーニングを使用としていたが……ロキが何所かに行ったとそっと、TENGIを会場に置き、山口さんに見張らせる。
ラグはお菓子が此処にあるよーとロキを探している――が、お菓子なんて沢山あるもんとロキは周囲を見回してTENGIをゲット!……頭に何かがゴツンと当たったのだった。
「前回の時と言い、シオン! てめぇ本当にトレーニングする気ねぇな!!
何氷彗働かせて自分は優雅に過ごしてんだよ!!」
びしっと指さしたリアにシオンは首を振った。
「夏だし氷彗にかき氷を作ってもらってそれを早く食べる……!!」
そう口にしたシオン。氷彗が作ってくれたかき氷をアオイとリアと共に食べるのだ。べしべしと背を叩いて「食べてー」とシオンはアピールしている。
「これを一番多く食えればいいんだろ! んなら全力でやってやる!!
―――ぐうっ……頭いって……それにしても、腹壊さねえかなこれ」
かき氷を勢いよくがっついたアオイ。頭がキーンとしている感じがする。その様子に氷彗がぱちりと瞬いた。
「……二人も食べるんだね……なら、もっと早く作らなきゃいけないね……ふぅ……もっと……もっと速く作らなきゃ……!!」
訓練? なら司令官であるリンネの役割は、そう、指示だ。
「いや、自分で動くってわけじゃないけれどね? ほら、アゴで使うとかそういうの。
戦術指揮の訓練みたいなものでしょ、こういうのって。違う? 違うな!」
けれど効率的なのは良いのだ。あっちこっちに指示をする彼女は小さいながらも立派な司令官である。
「さ、一杯どうだい?」
グラスを揺らしたセルウスにリンネは「おいしージュースを! 司令塔の好みを把握するのも大事でしょ?」と冗談めかす。
「それなら」
リンネの視線が棚と棚の間に向けられる。そこに見えるは白い影――「ピェッ!?」
リインに気づき、リンネの視線に従うかの如くシャンゼリゼがリインの手を引いた。
「リインに聞いてよ。好みなら分かってるからさ」
どうやら役割を振られたようだ……。
「……もっと強ければ、もっと動けていたら助けれたかもしれない」
『過ぎた事だ。力が及ばなかったのは仕方ないだろう』
「そうだけど……もしも、なんて事を考えちゃうよ」
『ならその後悔を忘れぬ様にこれからやっていくしか無いだろう』
「……それもそうだね」
そう、ティアは静かに目を細める。ミルクがぷるんぷるんと跳ねる其れを眺めながらティアは静かに息を吐いた。
「吾輩は人造精霊ゆえ通常の飲み食いは行わないし標的機ゆえ戦勝の宴に参陣したことはなかったであるな。ゆえに初めて参加をさせてもらうとするぞ。
宴の雰囲気。それが満たし酔わすものであるとよいであるな」
マスターデコイとミラーカが淡々と周囲を見回し宴の雰囲気に心を躍らせた。
「ユリーカさんと一緒に2周年を祝いましょう。
月の宴を開いて賑やかに楽しくバカ騒ぎして過ごしたいわ。集まって下さった皆さんを巻き込んで皆で気持ちよく遊びましょう」
そう笑った舞。司会進行役は舞と真の二人だ。
「え、ええと……ここが、何かお祝いする場所、でいいのかな?
俺は何もしてないけど、せっかくのお祭り騒ぎなら参加しなきゃ損でしょ! マグロあるかな、マグロ?」
イヴァシーはきょとんとしながら周囲を見回した。その様子に目を細めながらヨタカが手にしたのはヴァイオリン。京司の奇術に人を惹きつけるような、魅了するような音色を奏でて見せると弾き鳴らす。
「最後に大技、瞬きしないで。3、2、1……空へ!」
華が空に咲く。京司の奇術とヨタカの音色が交わった。
「『雪中花蝶』の目を、心を奪う奇術、『旅人』他ユリーカ達の揃えた拵えた舞台。
別世界はすでに向こうにあり、その一歩へ踏み出せる可能性を皆様はもう持ってらっしゃいますわ――ご覧あれ! 『月の宴』を!
平和を勝ち得たパーティ、一部始終を! 御覧じろ! 人の生み出す究極を!
余韻まま枕する、たったひとたびのチャンスを!」
堂々とそう告げた瑠璃篭。その言葉に拍手が響く。
「今日と言う日に……感謝の……気持ちを……ヴァイオリンに乗せて……贈ろう」
「せっかくのお祝いです。宴に花を添えるのもまた、士気の向上に大きな力添えをするでしょう」
夜色のドレスを見に纏ったLumiliaは英雄と呼ぶに相応しいローレットと、そして特異運命座標達向けて幸福を謳う様に笛を鳴らした。
「演目は……。サックスアンサンブルにしようか。無論一人で。……寂しくないぞぉ。」
そんなことを言いながらスィフィーの音色もヨタカやLumiliaに重なっていく。
「この世界には最近召喚されたばかりだし、大勢が一堂に集う場はこの世界を知るにあたって悪くない。私は人を楽しませるような特技はないからもっぱら見ているだけになるね」
そう笑ってエリルはディーナと共にぼんやりと美しい音色に聞き惚れる。
「でもここにはきっと、わたしよりもずっと素敵な人々がたくさん集うでしょうから……その技術、しっかりと目で盗ませていただきたいと思います……」
技術を盗むのもまた鍛錬であるとレイはその様子をほう、と眺める。
「戦うだけが演習でもないしね……楽しまないとっていうのは、同感だよ」
ジプシーの様に緩やかな踊りをする征斗。美しい音色に溢れたこの場所で踊るのもまた一興だ。
「ついでにボクのギフトで、観覧の皆様にはおぉ~いしィ~お菓子をプレゼント! さぁ、キミはなにを食べたいィ~? ホイッ!」
音楽鑑賞のついでにどうだろうかとギフトが『ホイッ』とお菓子をプレゼント。受け取るアナスタシアと大和、シエラが小さくぺこりと礼をした。
鞠の弾む様な音を奏でながら咲耶は祝いの席に華を添えるべく羽目も外して三味線を披露する。
「少々の失敗はご愛嬌、踊る者も演奏する者もテンションをめいっぱい上げて宴を盛り上げて行く事にいたそうか」
その音色に誘われるように薔薇姉妹は踊りだす。
「うふふ、みんなに姉さま達のすごさを見せつけてやるの! さぁさ、黒薔薇姉さま、歌って? 姉さまのお歌で、白薔薇姉さまと私が踊るから!」
鞠弾む様な歌声で黒薔薇が歌い出せば白薔薇と紅薔薇が舞い踊る。
幻想的な声音を響かす黒薔薇は恥ずかしいわねと静かに囁き、頬を赤らめるが歌は只、伸びやかに広がっていく。
「うふふ、いかがでしたでしょうか? 皆様に楽しんで頂けたなら、幸いですわ」
堂々と微笑んだ白薔薇。パーフェクトで可憐でかわいい。姉妹の踊りにそれだけ心躍らせたのだろう。沙愛那とエルフリーデから喝采の拍手が聞こえる。
「腕がたくさんあるのを活かすのです。団体一名様の一人ちんどん屋なのです」
白が奏でた愉快な音色を聞きながら、ピュアエルや虚之香が視線で追いかけた。
●
「俺は料理出来ん……なんつーか、料理したら、モザイク必須のこの世の物じゃねぇのが出来上がるし。PPP(ponpon pain Project)にならない為にも、な」
レイチェルとシグはレストの手伝いに回ると屋台の裏方へと足を進めた。
「自身が倒れては全てが無駄になるゆえにな。それに自分が売っている物の味を知った方が、売りやすいのではないかね?」
冷麺は涼しく、この季節にも丁度いい。シグのその言葉にレイチェルは大きく頷いた。
「ふわふわのかき氷はいかがかしら~? 可愛い猫ちゃんとも遊べるわよ~」
売り上げはどちらが上かしらね~? と笑ったレスト。『氷屋★可愛い猫ちゃんと遊べます』は誰が見たって魅力的ではないか。
「ローレットでお祭りですね! ここは一発頑張っちゃいましょうか!
あ、厨房あいてますか? あいてたら貸してくださいね? 宿からだとちょっと遠いので……さて、かぼちゃを一丁、調味料を一丁、生クリームにすり鉢にざるにうんぬんかんぬん!」
企業秘密でうんぬんかんぬんした利香。作るかぼちゃスープは絶品そのものだ。いひひと笑う利香は「さあ、召し上がってくださいね!」とウィンクひとつ。
「『大量に作り、より大勢の胃袋を満たす』事と見ました!
じゃんじゃんばりばり、いわゆる主食となる「ご飯、麺類、パン」を作っていきたいと思います! どれかと言えば、ご飯と麺類がいいかもですね!」
夕は手際よくさっささっさと料理を続ける。文明の利器は勿論必須の品だ。
「ご飯作るの練習大事ってパパも言ってたし、僕も練習だー!! パパとママびっくりさせるぞ!」
やる気十分のノーラ。今から必死にお勉強して作れるようになればパパとママも褒めてくれるだろう。
「料理を運んだり空いた皿を片づけたりするよ!
はいはーい、オツマミ新しいの作って来たですよ~っと、なのですっ」
プロ的な所作のミミは給仕を続けている。
「800人ものパーティーか……つまり配膳などの仕事も重要になるな。
バイキングみたいに取れるタイプでも料理の補充が必要になるし、食器は無限にあるわけじゃないしな」
ウェールは満腹になる為にと準備を始める。
メカピバラと共にアクセルは給仕として目立ち、運搬性能で料理を運び、空いた皿を片付ける。
その中でもアンファングは人手が足りないとウェールに引きずり出されて『皿洗いの鬼』になっていた。食器はいくらあっても足りない。只管無心に洗い続けるのみだ。
「レーさんとグリュックは配膳担当っきゅ!」
ウェイター服から顔を出したレーゲン。グリュックがカートを押して配膳を続けている。
こんなこともあろうかと! と箸やスプーン、フォークの備蓄は十分だ。
「クククッ……我が名はパーフェクト・サーヴァント! 我がこのパーティー会場に現れた以上、参加者はみな幸福に包まれるであろう……。と、中二病なかっこいいポーズをしながら言い終わったらまじめに仕事をするぞ。ちゃんとやらないとニャー先輩に蹴られるからな」
「肉球キックで注意するのにゃ!」
ふんすふんすとするニャー。安全運転でカートで食事を運ぶニャーに注意されながら、パーフェクトはフェアリやジオドリクに料理を運ぶ。
「ひゃっほー宴会っすー! 宴会っすよね無礼講っすよね! うおー食べるっすめっちゃ飲むっすウマッこれウッマっ」
フェアリの体サイズでは『ハムだけでも座布団』だ。
「何しろあたしはちびっこい妖精、ハム一切れでも余裕で座布団サイズっすからね!
へるぷみー! っす!」
その声にアクセルとウェールは給仕として手伝いに名乗り出た。
お茶も良ければどうぞ、と美味しいお茶を入れるニャー。至れり尽くせりもふもふウェイターズだ。
「ボクはねー見たことないもの、いっぱい食べたいな!
色んな世界から色んな人達が来てて、色んな料理ばっかりだもん
美味しいものも珍しいこともいっぱいで、毎日すっごく楽しいよ!」
美咲と共に給仕をするヒィロ。何が食べたいかな、と口にしながら運ぶ料理はどれも美味しそうだ。
「ヒィロさんは、新しいものに多く触れてみたいのね。
世界中を巡っていくであろう、私たちイレギュラーズには重要な気持ちね!
私も、新しいものに触れるのは楽しいよ。加えるなら……一度触れたものの『その上』を知るのが好きかな?」
そう笑う美咲。結構カンドーものなのよという言葉にヒィロは素敵だねと微笑んだ。
「えっ、ナットウ? 異世界の食事? それは少々お断りした――」
絆楔が驚いたような顔で、給仕たちを見た。修練であるのは確かだが、そんな腐った――あ、だめです!
「飲み物は要りません、ギフトによって生成された飲料水を持っていますので。
……飲んで見ますか? ………何でできているかですか? 聞かない方が精神的にいいと思います」
そう言ったフィーアに絆楔は優しい笑顔で首を横に振った。
「…おなかすいた。いっぱい、食べよう。焼きそば」
セリカの言葉にフィーアはどうぞどうぞ、とそわそわと料理を勧めている。
「日頃頑張るボク自身をキレイキレイしないとっす。ブラシで汚れを取りワックスと布巾で気持ち良くツヤツヤテカテカになるっす」
やはりそういう気づかいも大事だ。レッドがユリーカもどうっすか? と首を傾げれば、ユリーカは「わあ、じゃあボクの万年筆(もらった)もお願いするのです!」と彼女は瞳を輝かせる。
(とりあえず、木刀の素振りをできる限りしておくのです……百、千、万、億……手がいたい……)
おにぎりの努力に感涙してしまう。億まで数える方が――しんどい! よ!
炎天下の中でスクワットを続けるP・P・P。それを眺めるは十三号。ローレットの仕事は多岐にわたる以上そうした努力も必要なのだろう。
一方の黒騎士も懸命に大剣を振り続けていた。その様子を見詰めてぱちりと瞬く薫子。
「よければパーティー用に料理を……といっても、ラサや深緑の家庭料理ですが。
用意しましたので、気が向いたらいらっしゃってくださいね」
「ほえーっ。なんじゃか仰々しいのう。のーんびりしとればいいんじゃよのーんびりとな! パーティーとやらが面白そうじゃのうわしも混ぜてー」
モルンに薫子は喜んで、と微笑んだ。
「諸君! ゴッドである! ミラクルだなんだと言われがちなビッグウェーブ!
されどそこに至るはユー達、ヒーローズ&エンジェルズの行いの結果である!
突然のラッキーやゴッドハンドに見えようと、それを招きそのハンドに掴んだのはユー達であることを忘れるでないぞ!」
有難い豪斗のお言葉が響いている。ゴッドはドヤッとしながら手を伸ばす。
「故に、ゴッドは此度も諸君らへゴッドブレスを届けよう!
そのパゥワーと共にゴッドがある事を示すために! すべてのフレンズが光あるものであることを示すために! さあ、ゴッドのシャインを受けよ!
サマーシャインも強くユー達を照らしているが、ゴッドもまたそれ以上のラヴ、アガペ! そういったものを背負ってここに在る! ゴッドは肯定する! 諸君らの選択は正しく在ったのだと!」
豪斗の輝かんばかりの言葉を聞きながらコレットは自宅からせっせと準備した防具を身に着けた。慣れない防具を身に着けての訓練と言うのもこれからは必要になるという判断だ。
(エウレカ・ユリカ……この先、嫌な形で出会わず済んでほしいと祈るばかりだな)
そう呟くアカツキ。ユリーカの父親、死人となればそれは『センシティブな事』が想像に易かったが、果たして――
天裂の前で組手の相手を探すアカツキ。淡々と訓練に励むウィリアムは静かに息を吐く。
「やれるようになりたい事は幾らでもある。そのためにまずは……体力作りだな」
筋トレも走り込みも嫌いだが、今度ばかりはまじめにやらねばと少しずつでもいい。その体に力がつくようにと努力をし続ける。
その傍らで森の奥で瞑想をするローラントは只、静かに目を伏せた。
「再び嵐が近づいている……
だが、彼らならきっと乗り越えられるだろう……
頑張れ、若き戦士たちよ……」
●
「私、魔種についてもっと詳しく知りたいんだよね。
彼らがなんなのか、何時からいるのか、本当に仲良くできないのか……」
そう言って本のページをめくるアレクシア。御伽噺や昔の依頼。そう言ったものに何かないだろうかと出来る限り目で追っていく。
「ハイちゅーもーく。嘴じいじのたのしい保健の授業はっじまっるよー」
嘴は今までの冒険で得た知識を披露し、そして共有することで特異運命座標達の役に立とうと考えていた。
「天義の大きな戦いで初めて魔種と戦ったけど……思えば、話に聞いた事があるくらいで、どの様な敵なのかよく知らなかったって思うんだ。
きっとこれからも何度も相対する相手の事だから、もっと知っておかないと…!」
やる気を漲らせるシャルティエ。不倶戴天の仇、滅びのアークを貯める魔種であろうとも天義では味方に付いたこともあるという事例に触れてどこか複雑そうに眉を潜める。
「芒さんは殺人を必要としている訳だけど、姿かたちが千差万別なこの混沌において、相手が人間であるのかを判断するのは難しいよね。
完全に動物の姿を取る獣種。完全に魚の姿を取る海洋種
完全に鳥の姿を取る飛行種、純種から堕ちて見た目は怪物的になる魔種。
……そもそも生命体の形すらとっていない旅人」
芒はそこにどう倫理観を問うべきかと悩まし気に呟いた。
「ふむ……新参者の俺としてはこの世界について知らぬことも多い。
故にこの勉強会の末席に座らせていただき、先達のイレギュラーズの皆の様々な話をや考察を聞くとしよう」
コルウィンが望むは勉強会。魔種と言う反転したことで理不尽な力を手に入れるその事象に興味があるのだとリュグナーは悩まし気にそう呟いた。
「そも、魔種とは何なのか――我々はまだ、対峙している敵の情報の一部すら知っていないのではないか?」
その言葉にミザリーはぱちりと瞬いた。まだまだローレットに来たばかりであるミザリーにとってはこれまでの冒険も知らぬ話だ。
「世界の滅びを求める様に『罪』と『罰』によって堕落した者が魔種だと思う。
自分の在りよう、在りたい形に従わない、他と迎合する為に自分を裏切る。
……罪、という定義なんだとこの者は思う。そして罰というのはその結果」
難しいけれど、と己の考えを話すロゼット。まだまだ知らぬというねねこは「何か闇堕ちした人ってイメージしかないのです」と首を捻った。紙とペンを用意して彼女は気になることを書き溜めていく。
「私も万能って訳じゃないからね。足りないものを補うのは知識と経験だよっ」
そう笑ったアリア。歴史書やら参考書に問わず、漫画でもなんでもいい。知識とはそこから得られるのだ。
「こんなにたくさん集まっているなら、今日は色々な話が聞けそうだと思って。
……様々な国の事。魔種の事。きな臭い人の話に不穏の種。
祝いの空気に水を差したくはないけれど、ここは次々と何かが起こる世界だからね……。情報共有や他者の考察を聞いておいて、損はないと思うんだ」
文の言葉にリュグナーが大きく頷く。その傍らでアトはペリカを呼んでいた。
「こんな場所に呼んでもらえるとは思ってなかっただわさ。嬉しいもんだねぃ」
「いやいや、迷宮と言えばあなたですし。最近進んだ階層に少なくとも『この混沌に似つかわしくない世界』があったことについても聞きたかったしね」
アトの言葉にきょとりとしたペリカは「練達の坊主たちの中では常識的らしいねぃ」と首を捻った――迷宮だから慣れてしまってるのかそう言った事象にも彼女は『好意的』だ。
「成程……? ただの難解なダンジョンにしても異様に統一性、目的意識が見えず
そのくせ明らかな人の手やオーバーテクノロジーと呼ばれる技術もあるな」
「そうだねぃ」
ラルフに頷いたペリカ。勉強会は白熱の討論が交わされている。
「よその世界には面白い鍛錬方法があるのね。
命を神様に委ねることで覚悟を磨く……ということかしら?一度死んだ身ではあるけれど、いまいちど「生」を感じられるかもしれないわね。……実弾でないのは残念だけれど」
そう囁くメリンダ。実弾であれば色々問題なのだが、彼女が実弾でドーンとされればまた違う顔を見せてくれることなのだろう。具体的に言えば開眼。
「ぬうっ! あれは肝練り……! 伝説の戦士サツマハヤト共が行ったというあの鍛錬によく似ている……!
そうか……美少女にも似たような文化があったか。なるほど、収斂進化という奴か……
えっ? 違う? いやそんなことはないだろう……多分……わからん……生物学は苦手で……」
ジョセフは戦場で送すことなくと生の実感の為に実弾を期待したが……ペイント弾であることにショックを受けながら挑んだ。
「ねーりねーりねりねがひひっ、練れば練るほど色が変わってこうやってつけて……
美味い!!! なのじゃー♪」
デイジーは肝練りとは何かを理解してはいなかった。つまりは肝試しロシアンルーレットなのだそうだ。
「今後のためにも拙者的にはこういう度胸試しで胆力を鍛えたりしておきたいでござる!
とは言え、まだまだ未熟ものな拙者としてはクルクル回る火縄銃に内心ガクブルなのでござる、あわわわ! グアーッ! サヨナラ!」
勢いがよろしい100点! パティリアがぱたーんとした。
「ヴッ……ま、まだ理想の王子様に出会えてないのに……
風みだす 花よりも なお私はまた 恋の名残を 如何にとかせん」
辞世の句まで用意しているいろは。可愛い子がいっぱいいると近寄ったらこんなバイオレンスでスリリングな遊びに巻き込まれるだなんて。
「クハッ、まさか今更吾を倒す者が現れようとはなぁ……。
曇りなき 美少女魂 掲げ立て 朽ちぬずに落ち往く 白百合の花」
あ、やっぱり美少女は辞世の句が必要なんですか? 百合子は自身の準備した催しで盛大に(嘘だと思わしき)血を吐いた。
「一度は裏切られた私が、今度は義の為、忠の為に散れるのならば本望です……それでは皆様、御機嫌よう」
被害が大きすぎる。アルムは目を伏せて、なかなか得難い経験をして居ると静かに息を吐いた。
●
アニエルや舞花やリヴリーの前にある食卓に並んだ料理はどれも美味しそうなものだ。
「実は私、お料理……と呼べるようなものは出来ないのです。
混沌に来るまでは物を食べる必要が御座いませんでしたし、そもそも料理人も居ない家庭に行くなんて想定されていなかったのでございます。でも、今は口から物を食べる必要があって、料理は私が作ってもよい。それならば、私は学んでみたい。美味しい料理はどうやって作るのかしら?」
そう、首を傾げた礼拝。エリーナや弥恵と言った面々を視線で追いかけてから、できるかしら、と礼拝は再度首を傾いだ。
「……私、訓練って柄じゃないからなぁ。だったらきっと、パーティーの準備に回った方が良いよね」
料理の手伝いにとみそ汁や肉じゃがを用意する零。
「まず何作ろうかなぁ……よし、パスタにしよっか!」
悩まし気に作るステラ。痛めたベーコンと茄子、トマトに水と塩を加えてローリエを入れて煮詰めてパスタを作成していく。
新人なら炊き出しから、というのも中々基礎に似合って素晴らしいではないか。クリスティアンは「お待ちどうさん」とウィンクをしながら食事を運ぶ。
「柘榴ちゃん……どこ行っちゃったんだろう。
楽しそうな事やってるって、私を置いて飛び出して行っちゃうんだから……」
困り顔の琥珀。柘榴はと言えばハンマーで只管相手をぶったたくのだと心を躍らせているのだが……
折角だ。料理を運んだり食べ終わった皿を下げるなりして炊き出し訓練に参加してお香ではないか。
恋人の為に素敵な料理を作りたい。なんていう可愛い食材ノリアさん。
「わたしは、ゴリョウさんの恋人ではなくて、一兵卒として、参加しますの」
ノリアの傍らではグレイシアとルアナがお菓子作りに励んでいる。
「さて、生地はこれ位か……ルアナ、型抜きを頼めるだろうか」
「はい! お店からいろいろ持ってきたから、どんどん作っていくね」
型抜きをしながらお腹がきゅるきゅるとなったルアナ。お手伝いに回るノリアがあらあらと小さく笑う。
「サンドイッチだ。並ぶ料理は多くとも、手軽に食べられる物はいくらあっても困らんだろう」
ついでにこっそり、と差し出されたツナサンド。なんだかんだ言って、オジサマは幼女に甘いのです。
「あっ……お手伝いばかりで、ゴリョウさんへの手料理を、作れませんでしたの!」
それはまた次回に持ち越しですね。
「ズバリ、作るモノはお鍋です! 纏めて沢山作れますし、夏だからって冷たい物ばかり食べていたらお腹壊しちゃいますから!」
トマトベースのお鍋を創るル・ナンナにさつきがきょとりと瞬いた。
「他にも色々食べるものもありますから!」
彼はシャクティ。幸運を呼ぶカーバンクル様――? え、フグじゃ……
「俺はフグじゃねぇ! 俺は食材じゃねぇから!!」
「チガウのデス?」
オジョ・ウ・サンが首を傾げた。確かに調べた知識ならばフグは食材だ。
「オジョウサン、アッチでも、コッチでも色々タベて来タデス!
ケド、『料る』の、コッチに来るマデしらナかっタデス!」
諦めずに完遂できるつよき思いと、弱火でコトコト煮込む力、そして食材適正でバッチリ食事を準備中だ。
「じゃあこれはあそこの集団に持って行くな。おかわり要請されたんだが、まだ料理残ってるか?」
「マダマダありマス!」
鍋でぐつぐつしているオジョ・ウ・サンに誠吾はOKと頷いた。芽衣は大きなピザを創るから待ってね、と誠吾に向き直る。
「皆食材は大丈夫? 馬車もあるし足りなければ補充にいくから」
「私は大丈夫です……一先ずはお弁当みたいな感じなんですが……卵焼きと、ポテトサラダにハンバーグ。あとウインナーも炒めて……たまごサラダも作りましょうか」
家庭的な料理って食べたくなりますよね。佐里は唇を尖らせ悩まし気にレシピを考案していく。
「炊き出しでも手伝ったろかー。うち商人やし、モノの調達はまかしとき。ざっくり」
「ありがとうございます」
佐里に文は堂々と頷く。商売のチャンスでもあるという彼女はせっせと準備を続けている。
「トレーニングの体を癒すのも、トレーニングするも、豆腐作りと豆腐料理作りでしょっ!!! うぉらぁあああああ!!!!! 僕は、僕の豆腐でみんなを幸せなトレーニングへと誘うんだぁああいいいい!!!!!
もちろんっパーティー用の豆腐料理もじゃんじゃか作るよっ!! 豆腐がいっぱいの記念日なんて最高だと思わない???!!!」
――Silk=Tofuちゃんの勢いは最高によかった。
「……やっぱカレーか? 夏だし。んむ、そうしよう。
肉は何がいい? 牛か豚か鳥か……面倒だから、三種ともぶっこむか。
野菜もきっちりとな。そこ、野菜はいやだとか言うんじゃねーぞ。隠し味にリンゴなんかも加えよう。
……なに、コーヒー牛乳? それマジで隠し味として使えるのか?」
カレーにコーヒー牛乳。イーディスにとっては馴染みない事だがこれが案外おいしいのだそうだ。
その様子を上空でぼんやり眺めたミーナ。見回りを兼ねているそうだが、こういう日だからと遊ぶ皆を眺めながら働いたってバチは当たらないだろうと静かに息を吐く。
●
折角だからトマトやピーマンを使ったドライカレーや冷やし中華がいいかもしれないと響子は料理を続けていた。
焼き料理、蒸し料理、揚げ料理、和洋折衷何でもござれ! だという彼女は胸を張り料理を続ける。
「鯨飲馬食しているグループもあるでしょうから、そういったところには食事を絶やさないように」
どういった料理が良いのかとユゥリアリアはリサーチしながら豪勢なものをと考える。
「ふむふむ、ほほう、炊き出しですか。
私がまだ郷里にあった頃、時折、お手伝いしたものです」
ユゥリアリアの隣からひょこりと顔を出した統がぱちりと瞬く。
「見た事のない食材もあり、なかなか楽しめそうです。
必要とあらば、家畜を〆る事も得意です、ご存分にお使いくださいませ」
「それじゃあ、手伝って頂きましょうかー」
ユゥリアリアに統は任されたと胸を張った。
「……いつかBar Phantomにも人がたくさん来る日が来るかもしれませんメェ……その時のために私はシェイカーを振り続けますメェ………延々と兎に角振りますメェ……」
ムーはバーテンダーとか影であるべきだと只管にシェイカーを振り続ける。
「おつかれさま」
ちょっぴり腰の痛いムーにノワは笑顔を作ってそう言った。大きな戦いで皆、疲労しているだろうから、折角の訓練ではノワは声をかける事に決めていた。
「大変な戦いの後なのに、皆元気……強いね、皆。私はまだぐったりだよ……」
ぐったりとしたネムに刀はその傍らで只管に刀を振り続けた。
集中の訓練を、と言うネムとは対照的に兎に角刀を振り続ける刀。
「よっしゃあー高速詠唱の訓練、はっじめるよー。
なまむぎなまごめなまたまご! とうきょうとっきょきょかきょく!」
以上、鈴音ちゃんの楽しい高速詠唱訓練でした。
「盛況ですねぇ……」
そう呟く美由紀。驚いてばかりはいられないからと今から鍛錬へ向かおうか。
「やあやあ、おめでたい日なんだって?かの『大召喚の日』から丁度2年とか」
精霊種であるアドルフにとっても歓喜の日であったと告げ、オーソドックスでも尚、目を引くカードで手品を披露する。旅芸人の真似だというそれを見詰めるエリクシアがぱちりと瞬いた。
黒歴史ノート――失礼、ドロシーは呪文の断片の名前を考えようと手帳に様々な文字列を並べる。
逆巻け……吹き荒べ……貫け……その叡智を以て――「……いや違うから、中二病とかじゃないから。違うって!」
楽しみ――ですねえ?
過去の報告書を只管読み漁る兼続。回復手はリソースが必要だがそれが自身には足りて居ないと兼続は考えていた。先ずは己のとるべき最適解の為――そっと開いた報告書に並んでいた名前の主が目の前に立って居た。
「我が来てからは一年……といったところか。色々あったが……」
エリシアは傍らのイージアをちらりと見る。
「同じく1年、最初はローレットから依頼されたサーカス団での戦でしたね」
うんうんと頷いたイージア。二人ともに2年という月日はまだ体感していない。
「さて、せっかくの宴だ。楽しまねば勿体なかろうて」
「うん。宴はまだまだ続きますし、最後まで楽しもう!」
差し出されたエリシアの手を握る。これから先もどうか、共に在ればと願うようにイージアは微笑んだ。
●
「ふう……今回の騒動も本当に大変だった。毎度のこととは言え、命あってのなんとやら……。しかしこうしてまた朋友と共に剣を振るったり、食卓を囲めるのは幸せな事だねぇ。賑やかでいい事、いい事」
穏やかにそう言ったてふ。イマドキの若い子たちの中に混ざらんといそいそと歩き出す。
「はー。飽きた飽きたー。おなかすいたー。生き血飲みたーい。生肉食べたーい」
魔王様は飽きてしまっていたため、とりあえず銀へとぐんぐんと近づいた。
黒金の云う生肉とは――
サーロインステーキをと言う銀。マシュマロやワインを用意して黒金の心をできる限り支えてやろうという気概を感じる。
「人肉食べたい……。
私だってアルラウネのサラダ出たら泣くもん。でもねえ私が一番好きな食べ物は人肉なのよ。人肉食べたい食べたい! 祝いの席で! 幸せな気持ちを共有しながらローストヒューマン食べたい!」
それはやばい。ロザリエルである。その言葉にギョッとしながらも庶民とはそういう者なのかとウェンダール家が一番やりファルケ様は咳払いをした。
「ふん、この俺がパーティーで騒ぐ? ……庶民に合わせるのは癪だが、乗ってやろうでは無いか」
そういうの素晴らしと思います。初めてでも肉を食えと戦人たる極意を彼は皆に教えている。折角なのでレインやシルヴィアも一口如何だろうか?
「ふふふ……ようやく混沌でのお酒が飲める年齢になったのですよ!」
出身世界とは違うが故に酒を禁じられていたヘイゼル。折角だ。呑んだことのない『美味い酒』に舌鼓を打とうではないか。
飲み比べ? 勿論、このためのローレット・トレーニング(どこを鍛えるのか)だ。
パーティーの準備を手伝いながら桜花は歌を歌い楽し気に周囲を見回した。
「ふーむ、せっかくのお祝いですし、ユリーカさんのお手伝いでもいたしましょうかね。ひっひっひ」
そう笑いエマはパパッと飾り付けの準備をしながら……つまみ食いをした。
「ローレット2周年に、乾杯。かなり遅れちゃったけどユリーカちゃんの誕生日を祝って、乾杯」
そう笑ったミシャにユリーカはありがとうございますとにんまりと微笑んだ。
その様子に首を傾げながらココロはメイドとして「お茶は如何ですか」とちょっぴり失敗したお茶を差し出した。笑顔で、ごまかすことこそが美少女の嗜みである。
花や星を飾るエルナはこの日が特異運命座標達のはじまりだったのだとおもえばどこか嬉しく思うと目を細める。
ティーナやジョン、レヴィナ、ノーティガルの手を借りながらローレットの中をパーティー会場へと変化させていく。
「飲むぜ。死ぬまで飲むぜ。
トレーニングになってねえって? バカヤロウ、おれらは肝臓鍛えに来てんだよ最近は油ものがちとキツ……いや、なんでもねえ」
年齢的なアレ――ですかね。グドルフはパンドラを使用してもいいからという勢いで酒を煽った。
「汗をかいたあとに飲むキンキンの麦酒は最高だなぁ、オイ!」
ルカはご機嫌に酒を飲む。ローレットと言えば勇者の集まりだとは考えていたが、酒をこうして楽しめるなら一番だ。
「グフフ……このような場で酒盛りとは、実にけしからんのう。
じゃが綺麗事だけでは世には憚れぬ、特にあの魔種などという常識外を相手にするのであれば尚更じゃろう。
清濁併せ飲むその強かさこそが重要なのじゃ。その点実に前途有望なヤングマンたちじゃ、ワシもひとつ混ぜてもらおうかの」
大二がにたにたと笑う。トレーニングは偽装文書でスキップ済だ。さあ、酒宴へと向かおうじゃないか。
「酒、か」
そうつぶやいたラニット。酒宴に参加すれば傍から見れば水にしか見えない其れが大変美味に感じてしまうではないか。
「いやぁビールが楽しみですね~!!」
ウィズィはにやりと笑う。大ジョッキをイッキするなんて憧れの憧れではないか。
いざ――3口で「ふいー」と声を上げたウィズ。まだまだそっちの方の鍛錬は足りないようだ。
「さあさあ、皆様! 持参いたしましたのはこの、わたくしの出身、サン・リ・ブラン女子修道院の裏に“偶然絞ったまま放置してしまった”葡萄ジュースですわ!」
聖職者が飲んでいいのか? そう聞かれればシスター・テレジアはにんまり笑う。
聖職者たるもの他人の行為を無碍にしてはならないのだ。神もそう仰ってる。有難く! 頂きます!
「飲む為にトレーニングするのか、飲むのがトレーニングなのか……」
そう呟く義弘にテレジアは「どちらでもいいですわーぷはー!」とおめめを¥マークに死乍ら微笑んでいる。
「まあ、そうだな。カタギの皆さんに迷惑かけるんじゃねえぜ?」
「これもトレーニング。なるほどな。殴られても大丈夫なように酒で鍛えるか」
匂いで唎酒をしながらもカナタは酒を手に酔いの回った頭で義弘へと近寄った。
「おい、モフってもいいんだぞ?」
これが、新手の絡み酒である。その様子にコルヴェットはくすくすと笑う。
「……これだけ色々な人が集まるというのも、凄いものよね。
その一員というのも、にわかに信じられないのだけど。でも、嫌いじゃないわ」
勿論、彼女はグラスを傾けてこういうのだ「酔い過ぎたらもう……絡んじゃうんだから」と。
●ハイデマリーちゃんの鉄帝体操
まずは動的柔軟!
関節部などをまわすように動かし体をほぐしましょう
ひっぷれいずさいどべんど、だんべるかーるはんまーかーる
ぷっしゅあっぷべんちぷれす、れっぐかーるはっくりふと
ばっくぷれすさいどれいず。べんとおーばーらっとぷるだうん
さあ、体をだいぶ酷使しましたでしょうか?
じゃあさらにフル装備で全身で40k近くの重さを体感しながらサバイバル訓練です
体操ですよ。ジョギングです。マラソンじゃないよ
体がきつい? 負荷をかけてるのであたりまえです。
――泣き言をいって同情をさそいたいのか? 貴様の恋人はその武器だけだ。
貴様らうじむしから人間になりたいか? では、体操を続ける。
最初と語尾にマムをつけろやろうども!
●
「ふんっ、今回は枷をつけての訓練にしておくかのぅ」
そう宣言しアンタレスは鍛錬に励む――が、実際は良い汗をかいて良い気持ちになれば酒盛りも盛り上がるという気持ちだ。
「エクストリームアイロン掛け……」
そうつぶやく庚。カルトにご説明いただかなければ難しい競技だ。
「アイロンがけですぞー! ええと、変なところでアイロンがけすればいいのかな。旅人の人ってどこでそういう発想するんでしょうね。興味深いです」
そう笑ったニネミア。衣類の皴を伸ばすことは理解できるが――庚にとっても難しい競技ではあるようだ。
「めええええ、な、なんですかっ! 変なところでアイロンがけするなんて、いっ、意味がわかりませんよォ……!」
慌てるアニュス。仕方ないのでアイロンかけを頑張るしかないようだ。
「何なんだよ、突然チマタでウワサのイケメンカリスマ美容師カモメ様を呼び出しといてアイロンがけだぁ?」
チマタで噂のイケメンカリスマ美容師カモメさまもやりますよやりますよと空は飛行種のものだと高く飛び上がる。
「んおー、皆でな、すごい所でアイロンがけするって企画なんよ。うけんね」
確かに面白い。机の下でアイロンかけをするカルトはギフトで呼び出したイカれたフレンズに蹴られないようにとお願いをしていた。
それを眺めるスズ、桔梗と鉄進。傍らでは異様な競技が始まっていた。
「ははははっ! 最高に『ハンマーズハイ!』ってやつだ! お前もハンマーマンだ!」
そう叫んだハロルド。使用済みのざんげハンマーがこんなことになるだなんて。
ハロルドをチラッ、と見た後にルチアは凄いなと言わんばかりに瞬いた。
「……。そうか、ハンマーで殴り合うのか。シンプルな訓練内容で助かる。難しいのは苦手だ」
無心に剣を振るヴァンのようにハンマーを振り続ける人々。それを眺めるティエルやリヒトも驚きの連続だろうか。
「破壊された部位は再生し、新たなる衝撃に愉悦を探す。ああ。朦朧とする意識の中で恍惚じみた整理しよう数多の脳味噌は私の揺さぶりでハンマァは忘却への衝動………」
そう冒涜的なるオラボナが静かに呟いた。キツネやココナッツはその様子を眺めている。
「イレギュラーズのトレーニングだから厳しいくらいがいいのかもだけど、リゼちゃんは痛いのキライだし?ハンマーバトルそのものは絶対に見学だからねっと。みんなすごいね、リゼちゃんあんな重そうな武器もてないよねー」
リーゼロッテはむりだよーと首を振る。
「うおおぉッ! ひたすら相手をぶったたけばいいなんて、最高じゃない!
手加減はしないわよ! うぉりゃーっ! 拳で殴りたいわ!」
――柘榴が勢いよく暴力に走っていた。
「アリガトウゴザイマッ!! ン"ギモ"チ"ィ"ィ"!!」
叫んだソリッド。武器も防具もスキルもいらねぇと叫ぶ。さあ、殴れ! 好みでしっかり受け止めると手を伸ばす!
リリーは正直、夏の暑さとトレーニングに謂われもない逆切れをしていた。ハンマーに怒りを込めて振り下ろす(その動作だけならばOKらしい)。
「……お金貰えるしね……はぁ……」
その前をヴァレーリヤはにやにやとしながら進んでいた。
「ふっふっふ、純粋な殴り合いであればオールドワンの独壇場!
私、少しも負ける気がしなくってよ! ホラホラ、道をお開けなさい! どおおおおりゃあああああ!!」
※彼女は聖職者です。真ん中へ飛び込めば孤立無援。そんなことで負けるヴァレーリヤではなくってよ!
ラヴィエルは凄い勢いでチュチュチュと叫んでいた。何なのかは言わないが白黒つけるためには色々PPP倫に引っ掛かりそうなのである。
仕方がないので妄想力で補って欲しい。はい。チュチュチュチュ。
「……しっかしすごい量のハンマーだね、これ……」
愕然としたチャロロ。スキル研究の為にどれ程の犠牲(ハンマー)を払ったのだろうか。
「使い終わったざんげハンマーにここまで使用用途があるとは驚きです。流石ハロルド様ですね」
穏やかな調子のディアナ。彼女の様な可愛らしい天然な聖女様に褒められると何だか素敵な気がしてしまう。
「ウオオオオオオオオオオ!」
雄たけびと共にチャロロに殴りかかるマグナ。慌ててハンマーで応戦するチャロロ。世は戦国時代だ。
ちなみにここで使用されているハンマーはサイズが作成したハンマーである。詳しくはエスプリをチェックして欲しい。
「ざんげちゃんの ハンマーをかりて なぐりあえばいいのね?
さきにたおれたほうが まけ。そういうことでいいのね?」
可愛い笑みでポムグラニットが首を傾げるほどに此処は魔窟でした。
「おいおい、フラッと異世界に遊びに来てみりゃあ……なんだこの魔境はァ?
化物みてーに強え奴らがうじゃうじゃいやがる……流石の俺も今の状態であいつらと手合わせなんつーのはしたかねえなあ」
しかもエクストリームアイロン掛けにハンマーで殴るなどもしているとなればニコラスものんびりはしてられない。先ずは! そう、腹ごしらえだ。
「グルルル……」
口をぐぱりと明けたアルペストゥス。頑強な歯で咀嚼するが、見知らぬものを摂取する際には口内で原子分解をなんたかんたら。つまるところは雑食なのでお腹空いてます。
「食事とは、作る、食べる、洗うのエンドレスワルツ。
つまり食べる過程を無視はできないのよ……あ、このお肉好きな味付けだわ」
素晴らしく詩的にそう言ったアクア。〆はラーメンを期待して、運ばれる料理に舌鼓を打とう。
「食事に専念出来るようお世話する係が必要ですね? つまりメイドの出番です」
アクアのエンドレスワルツを手助けするヘルモルト。給仕こそメイドの務めと言うのは成程、と頷けるものだ。
すみっこで食べられないようにと静かにしているベーク。ちら、とマリネの視線が其方に向けられる。その視線を通り過ぎる様にフォークとナイフを手にしたタルトがベークへと迫っていた。
「胃を鍛えるのちょー大事だし、知んないの? リヴはちっちゃい頃に良くお腹壊したしね!」
「……そう、だけど。あれは……リネが、色々。食べさせようとするから、だし」
オリヴァーが困った様に呟くが、マリネはあれもこれもと差し出し続ける。
「……飯。食えると聞いて。腹減ったんだ。飯をくれ」
腹を空かせたルクト。それに目を合わせてもつがにんまりと笑った。
「あら。あらあらあら? 此処は私の出番ですね。いいでしょう。私の調理で愛しの皆さんを卒倒させてあげましょう!」
質より量。肉料理をどうぞ、ともつが並々差し出し続ける。
「食べる。うん、とても大切な役割だね、ボクわかるよ!」
ソアはホールケーキをホールの儘で食べたかったのだと瞳を輝かせた。ある意味でそれは全人類の夢かもしれなかった。
「あ、これ美味しい……もうちょっと、もうちょっとだけ……」
綾花はもぐもぐと食べ続け、飲食の余興にとコインを取り出した。
「……さて、『表』なら女神、『裏』なら死神。どちらの神が微笑んでくれますか?」
チャリンとコインが宙を舞う。
●
「凄いですよ酔醒さん! ローレットのいろんな人たちが来ていて、色んな武器が集まっています!
もっと近くで観察したいところですけど……今日は私たちも訓練でしたね。
輝世は瞳を輝かせる彼女の手にした武器――酔醒は「いつまでも相棒の方が俺っちに振り回されてるようじゃ困るぜ?」と冗談めかす。
武器自慢に臨むキドーはへっへっへと笑いを浮かべる。
「どうだい? 俺、そして俺の『時に燻されし祈』と手合わせしねえかい?
コイツは俺に相応しい逸品だ。魔力を込めれば素直に応える。お前の武器には負けねえさ!」
「良いだろう、貴様の……時に燻されし祈、我が魂晶槍、アシュレイの輝きを持って競おうではないか。貴様のそのナイフもまるで芸術品のようで、しかし強い力を感じる…………ふふ、素直か。私のこの槍はじゃじゃ馬でな、力を込めると暴れ出す……早々に倒れてくれるなよ」
に、とアレックスは小さく笑った。
「はぁっ……!」
二人を眺めながら明日はただひたすらに大太刀を振るっていた。居合から横薙ぎの一閃へ。
「暑気払いだ! 徹底的に飲むぞ!
すきっぱらに酒を入れるのは宜しく無いからな。ガンガン食えよ! そして飲むのだ!」
そう言いながら汰磨羈は酒のつまみになるものを調達しに歩く。
「トレーニングですひと汗流した後は、これに限りますわね。
はて、ちゃんとトレーニングしてたかって? 勿論してましたとも!
わたくし、存在感の薄い隠者ですから目立たなかっただけですわ。ふふ、本当ですのよ?」
カルマリーゼは三升くらいしか飲めませんけれど、と小さく笑みを溢し、酒を煽った。汰磨羈が持ってきたものはどれもが絶品だ。
「たくさん修行をしたあとは。
そう、お酒です。思う存分飲んで疲れをいやすのです。こんなこともあろうかと、中々に希少なものを取り揃えておきました。一人で飲むのも、大勢で飲むのも楽しいものです。さあ、さあ……どうですか。いっぱい。ささ。どうぞ」
さあさあと進めるミディーセラ。その勢いやよし、だ。
「イレギュラーズは身体が資本! ということで、自主トレ後は肝臓のトレーニング!
……はぁ、他人のお金で飲むお酒って格別よねぇ。毎週こんなトレーニングないかしらぁ?」
ローレット一の酒豪目指してアーリアは酒を煽り続けた。
一晃や風燕の隣でパタパタとうちわであおいだオーガスト。シキはその姿を探しているが……オーガストはどうやら一人で散歩に向かってしまった様だ。
月を仰いだシキ。それと同じ月を仰ぐオーガスト。皆、見るものは同じだろう。
「ヒャッハー! たーまやー! ですぞー!」
そう叫ぶベンジャミン。2周年と言ってもまだまだ新米、その実感はなくても今は楽しむときなのだ。
「トレーニングですねぇーあたしぃ、徴収の練習がしたいですぅ」
ちょっぴりヤバ目な発言をするコキミはベリアやシエルと擦れ違う。
言いくるめやインスタントキャリア、収奪を使ってコキミはこれからちょっとヤバい練習に進むのだ。
「え、絵を書く事も……わたし達ティントマンサーにとっては……トレーニングに……えと、なりませんでしょうかっ!」
そう言ったシャラにグレモリーは柔らかに頷いた。絵と言うのは人の心を映す。
色彩の感覚も鍛錬で磨いていけばきっと素晴らしい画家になれることだろう。
「さて、今回も頑張って力をつけましょう。次の戦いも近そうだしね」
そうやってやる気を見せたてぃりーはサザーランド流格闘砲術を極めるべく撃ち抜く正確さを磨いていた。
ダリアが声を上げている。ジェイクはその時、痛感していた。
魔種との戦いを経て自身には体力が足りないのだと実感する。彼とダリアは一心同体なのだそうだ――どうして……。
「食後には体を虐めるように運動をしよう。すべての栄養を筋肉に変える必要があるからな」
傍らのダリアが凄い声を上げている。
ド、ドウシテ……。
●
差出人名義:セフィラ
お便り『御機嫌よう、ユリーカさん。
私のフィジカルはマイナス2でHP1だから、多分今あなたがこれを読んでいる現在、私は救護スペースのベッドの上で死の淵に瀕しているでしょう。お見舞い、よろしくね。私は果物が好きよ。甘酸っぱい果実が特に好きよ。大好きよ』
「ビエエエエエエ」
ユリーカが泣いていた。
「ユリーカちゃん、こんにちは。今日も可愛いわね。大規模召還からもう2年も経ったんですって? ところでお手紙書いたのもトレーニングに入るのかしら?」
きっとはいるのです、とユリーカは静かに返した。
その傍らで政宗がユリーカに質問したいと声をかける。
「ユリーカちゃんのパパってローレットの立ち上げに関わった事のある人らしいけど、どんな人だったんだ? ママについても色々教えて欲しいな! 例えば、ユリーカちゃんはどっち似なのかとかさ」
「パパはすごいすごい情報屋さんなのです! だから、僕もビックになれると思うのです。あと、ボクはー……パパ似、ですかね?」
首を傾げる、そのあたりはレオンに聞いた方がよさそうだ。
「例えば、犯罪国家や邪神を崇める国家や、蛮族(ゴブリン、オークなど)のみで栄えている国家のようなものもあったりするんだろうか?」
そう問い掛けるは水晶の様な物体だ。ユリーカは「あるにはあると思いますよ?」と首を傾いだ。
「大なり小なり、この世界は奇妙なのです。なのでボクらが知らない場所がないとは言えないのですよ」
「新たなお便りである。
我こそは悪の秘密結社『XXX』総統である! 名前は秘密である!
御機嫌よう、ユリーカ! なんか最近影が薄いような気がするが大丈夫であるか?
ところで最近「怪盗・百合烏賊」の名を見掛けないのだが?
見掛けないのだが? 見 掛 け な い の だ が ?
あー、また活躍を見たいなー、怪盗百合烏賊の活躍を見たいなー」
猟兵とスタニスラウスの前をたぢたぢのユリーカが通り過ぎていく。
「PN:魔王になりたい永遠のじゅうななさい
さて今回送らせてもらう質問は『あまり顔を見せてくれない恋人とどうしたらイチャイチャ出来ますか?』です。割と深刻です!! 人生経験豊富そうな総統とか!ぜひ教えてください!!!」
「だそうなのです」
総統はライムの言葉に少し頭を痛めたようだった。
「PN:眠れる邪神ちゃん。
ギルオス君にしつもんです。ギルオス君は毎日たくさんのぱんつが闇市から発掘され、親切なイレギュラーズに返して貰っていますが、何故そんなにも大量のぱんつが流出しているのですか?」
――それはみんな気になります!
●
「どうした創殿、手が止まっているぞ! どんどん来い! ……む、ローレットの新人か?」
手合わせをしているエリシルはふと、手を止めた創に首を捻った。
「ん、新人さん?ローレット・トレーニングは初めてかい?」
柔らかに告げた創にロミルダはこくこくと頷いた。二年の節目を迎えた先輩に何処か緊張した調子だ。
「はぅっ、あの、すみません急に! トレーニングに参加するの初めてなんですが、つい見とれて……」
「ふむ、この鍛練は初めてか。ならば、先達として胸を貸そうか。組手といこう」
さあ、と突如頭数に入れられて――いざ、戦闘開始だ。
「こんな時こそストイックにトレーニングに励むって素晴らしい事だと思いますの。
わたくしも施設をお借りして筋トレに挑戦ですわ! 目指せ腹筋6LDK!」
リリルの腹筋が割れたらちょっぴり泣いてしまうかもしれない。
その様子を眺めるティア。その傍らでエルスティーネは全員集合ならばディルクもいないだろうかと周囲を見回した。折角だからと街に出ればきっと出会えて――きっと、言葉を交わす事が出来るだろう。
「へぇ、ローレットってこんなイベントもあるんだ。
じゃあ、一杯トレーニングしようかな。お師さまに少しでも近づけるようにオレも頑張らないと」
やる気満々のファレル。演舞するファレルの隣で何をしようかとトーラが首を傾いだ。
「特段戦ったわけでも、何か支援してたわけでもないのよね」
唇を尖らせるトーラの隣で愛無はトレーニングこそ日々の積み重ねだと口にした。
「しかして、問題は何をするかということだ。なるべくならば、実戦に役立つモノを鍛錬するのがよいだろうが。自由度がすぎるというのも問題だ。何でもよいと言われれば、迷ってしまうのが人間というものだろう」
ギフトの精度を高めるべく愛無は努力を続けていた。
「それにしてもみんな、本当に楽しそうで……僕もこれから、この一員になるんだね」
お姉さん、お嬢さんと声をかけてもラピスは特異運命座標達が外見では年齢を察することができないのだとぱちりと瞬いて笑った。
「皆様に楽しんで頂けるようにと誠心誠意頑張らさせて頂こうと思います。
こういう事でも修練に繋がりますし、一石二鳥というものです」
うんうんと頷く沙月。メリエッタやシオの前で彼女は誠心誠意楽しんでもらえるようにと舞い踊る。
「それじゃあ、大罪討伐と皆の無事、そうでなくてもこの出会いに……乾杯!」
イーリンが紅茶を掲げる。女子会を主催すると言っても女子会って……何をすればいいのだろう?
「女子会、女子会♪ 女の子同士のトークは喋る方も聞くだけでも楽しいデスねぇ♪」
愉し気な美弥妃の声が響く。
リアナルはぷんすことしていた。パンツを奪われて、それを確認した――のだが……。
「な ん で 乙 女 の ぱ ん つ よ り 安 い ん だ ! ?」
乙女なのに、とお怒りのリナアルに誰も何も言えないのだ……。
「今回のために作ってきました。これが、わたしの女子力です」
どん、と手料理を披露するレイリー。シュバイネハクセにアイスバイン、ヴァイスブルストに合うエールとアップルタイザーも準備済みだ。
「なにせ、こういう催しに関して我(アタシ)の商会は大きなアドバンテージがあるからね」
武器商人はいちごのミルフィーユ、スイカのゼリー、マンゴーラッシー、バナナクレープ、桃のレアチーズケーキを大量に持ち込んでいた。
お得意様のお願いとなれば断る事も無い。さあさ、心往くまで召し上がっておくれ。
(女性とは、女子力とは……母性に満ちた、行方不明となった母のようになるために)
そうぼんやりと考えながら沙雪は凍らせたお茶を砕き、暑い夏だからと差し出した。
「せっかくの祝いの席、だ。思う存分、舌鼓を打つと、しよう。
ところで、女子力というのは、どういったもの、だ? ユリーカは、しっているだろうか?」
エクスマリアより突然の話題にユリーカは「ボクみたいなことを言うのですよ!」と残念(?)な事を口にした。
質のいいチーズをテーブルに置きながらエクスマリアは首を捻る事しかしない。
「わたしも、お菓子持ってきました! 冷たくてぷるぷるの……ゼリーです!
えへへ、わたしゼリー大好きなんですよね。そちらの食べ物を頂いていいですか?」
共食いかと思ったがその言葉は控えておこう。
「最近作ったハーブティーでな、お肌への効果と味を両立させるのにめっちゃ苦労したんじゃよー」
クラウジアはハーブティーを淹れながら正にミートな宴に瞳を輝かせた。
「けど今日はそんなのもないしとにかく飲む! 飲む! 飲む! 酒は最高だー!!」
勢いのいいカナデ。色々な事もあったが、とにかくおいしいものを食べて楽しむのが一番だ。
ストレスたまってただろうなあ、と大きな戦いのあとに煽る酒は中々に美味い。
「女子会と言うたら、恋バナじゃろう? 儂、割と生き方がちょー惰性で、しかも魔法生物じゃし伴侶とかちぃとも考えもせんかったのう。なんで今さら考えてもさっぱりじゃ。多分好いた相手が好みなんじゃろ」
女子会と言えば伝統の恋バナであるとクラウジアはにんまり笑う。
それにシャルは「みんなの恋のお話、すごい興味があるし。私も……恋がしたい」と頬を赤らませた。
「わたしは自分の背を支えてくれる人がいいな。そのうえで、護りたいと思える人だ。か弱くも強すぎもしない、難しい塩梅だと自分でも思う」
そう告げたレイリーにジュリーは海の様な人ですとてへっと笑って見せた。
「す、好きな男性は……お、大きくてたくましくて優しい人がいいです。あと、キラキラしてる人が、うぅ」
恥ずかしそうに頷いたレニンスカヤ。視線が右往左往と動き回っている。
「不幸の連発でもメンタルが削れない男性デスねぇ♪」
くすくすと笑った美弥妃。確かに彼女は不運で幸運なのだ。
「そうねぇ……理想の恋人は優しい人がいいわ。私がオイタをしても笑って許してくれるような」
そう笑ったイーリン。ミルヴィが懼れる様に呟いた言葉にぱちりと瞬き「ダイエットって?」と首を傾げた。
「お茶はペパーミントティー! ダイエットにいいんだそー♪
ペパーミントティー飲んだらちょっとダンスしよっ。まずゆっくり柔軟から、いっちにーいっちにー♪ センパイもアタシとワンツー♪ワンツー♪」
「ねえ、ダイエットって?」
ミルヴィにイーリンは「ねえ!」と慌てた様に問い掛けたのだった。
●
「吾輩は猫である。名前は陰陽丸!
最近ローレットに来ましたが、本日はパーティーだとか。素敵ですね! 素敵ですが、ボクはまだ頑張っていないので隅っこで見守る事にします。皆が楽しそうにしているとボクも楽しくて、でもまぶたが、重く………」
陰陽丸はぽかぽか陽気でおやすみなさい。騒がしいローレットでもとりあえず丸くなれば寝れるのです。
「むにゃむにゃ……。トレーニングなんてめんどくさいにゃ……。
こころはのんびり眠っていたいんにゃよ? にゃにゃにゃ……寝心地がいいとこ探すのにゃ……」
勿論こころもおやすみなさいだ。眠る事も立派な訓練……なのだとは、思う。
「わたし最近ずっと胃が痛くてさあ。コーヒー飲むのやめようかな……。
睡眠時間短いと悪くなるってのもあるらしいな。なんにでも関係するよな睡眠。6時間くらい寝ないと徹夜してるのと大差ねえんだっけ?」
そう呟いたルーティエ。人生と言うのは中々過酷なのである。
「アウローラちゃんの歌をみんな聴いてー!」
トレーニングよりも歌う事の方が大好きなアウローラ。訓練をしている皆にもこの楽しく元気いっぱいのこの歌よ、届けと彼女は歌い続ける。
ニエルは今手にしている情報を並べる。滅びのアーク。狂気と理性――それが感情に起因するものか否か。
(……どこまで行っても鼬ごっこだ。第二、第三の強欲が出てきてもおかしくはない)
そう思えば、ここで押さえるのが先決だろうか。
「久しぶりに顔を出してみればトレーニングですか……。
ふむ、そういうことであれば何かしらお役に立てることもありそうですね」
オフェリアはパーティーの事を考えながら、周囲を見回した。パーティーを楽しむ事が出来ない暁蕾は静かに息を吐く。
(記憶を失った状態で混沌に召喚され、困っていた私にこの世界で生きていく知識や占いを教えてくれたライラ……)
魔種の情報を集めなければいけない。反転を元に戻せるのか――?
「あ! ツクヨミさん! このドレス見て下さーい! とっても素敵なものを選んで頂いたのです!」
そう笑ったフルールにツクヨミは素敵だ、と彼女に手を差し伸べた。
「……? どうした、いつものように隣に来ないのか? 私はお前と共にパーティーを楽しみたいんだ。さあ」
何時もより格好いいとどきまぎしたままそっとフルールは彼の手を握った。
●
「あらあら、皆さんお疲れ様です。たくさん頑張ったかしら、励んだかしら?
ふふ、寛いでいただいて構いませんよ♪ 私のお膝にかもーん♪ ……ふふ、大丈夫大丈夫。急に来ても気にしません。どうぞゆるりとなさってください」
にんまりと笑ったフルール。此処が癒しの膝枕コーナーです。
「今、世間では謎のトレーニングブームでも来てんのか?
まぁトレーニングと言えねぇ様な内容も多々混じってんが、この世界は相変わらず変わってんなぁ」
双方を書いた信政は姿を猫に代えてフルールの許へと歩いていく。にゃーごにゃーごと鳴いている為、何を言っているかは分からない……。
「別にスケベな気持ちで膝に寝転がった訳では無いのですぞ。事故です、事故なのですぞ!!
植物の研究が一段落して原っぱに寝転がったつもりだったのです。まさかそこに女性がいるとは…私の集中力恐るべし……」
五月雨の言い訳(?)のような言葉をフルールは気にはしない。
「ん、んん……!? 僕はトレーニングにきたはずなのに何でフルールさんを膝に乗せてるんでしょう……?
そ、その……落ち着きませんよ……! はっ、これはきっとメンタルトレーニングなのですねっ……!? あわわわわ……!!」
その空気に思わず呼ばれてしまったかのようなヨハン。膝枕に皆揃って夢中なのである。
●
「パーリーやんな、ピーポーやんな、1人より2人で遊ぶ方がええな!」
一人より皆でと楽しむブーケ。同種で楽しく遊ぼうと買い物にとヴェッラを誘った。
「おや、久しぶりじゃの、ブーケ殿」
そうひらりと手を振ったヴェッラ。その様子を見ながら夕陽はふふ、と小さく笑った。
「俺達が召喚されて、ローレットに集まってもう2年になるんやねぇ。
それでこげんとお祭りムードなんやろか、ふふ、俺もなんだか楽しくなります」
モダンガァルの皆さんを眺める夕陽の隣でこるりはヴェッラに微笑んだ。
「都会怖いし家帰りたい私に生き方を教えて呉れた麗しのヴェッラおねー様!
タピオカの飲み方には作法があってね、こうやって……こうして……こうじゃ!
パーティでタピれたらすっごくバエると思うの、買い出しに行かれるならご一緒しまーす!」
こるりはにまりと笑う。そのヴェッラの腕にはこまという猫が抱かれていた。
「ね、ねえ、その猫……僕の友達なんだ。君が助けてくれたんだよね。
そ、その、助けてくれて……あ、あり……ってもう行ってる?!」
慌てて追いかけるルフナ。お礼を言わないとと急いで走りだす。
「……一期一会の出会い、ぱーてぃの盛り上がり。この空気が楽しうて、だからまた参加出来たらと思うのじゃ」
缶が駆らんと転がった。ヴィクターは練習とは積み重ねであると威力や命中を確認するように一手一手を試していた。
(む……まだ駄目か。どこを改良したら引っかからないものなのか)
限界まで酒を飲む。酒は毒だ。抵抗力を付けるためにもミンナで飲もう!
「って、名目にしたらレオンがお酒おごってくれないかな? ダメ?」
ところがどっこいイグナートの前には沢山の酒が並んでいる。
●
「……ふむ、生存会議ですか。我々が今後どう生き残っていくかを話し合うのですね?」
クーデンは神妙そうな顔でそう呟いた。製造者のキャパシティによってこうして生き残る為にと考えねばならぬ者たちが増えるのだとでも言う様に彼は目を細める。
生まれたばかり。まだ、写真すら撮っていないのだとナイラは静かに告げた。
「空中庭園に召喚されて『特別』になった。それなのに……俺ってつまりネトゲで言う所の『サブPC』なんじゃ……」
愕然としたようにそう言った彰人。その言葉に火燐がハッとしたように顔を上げる。
「サブキャラ……?? いいえ、まだ私の自画像が来てないだけ! 私がメインヒロインなんだから!!」
火燐はそう叫んだ。
「え? 設定? ……たしかにまだだけど! レベル? メインと同じぐらいだからいいでしょ! 装備欄を見ないで! こら! メインと違うんだから!」
叫ぶ彼女の隣でエダルトはむ、と唇を尖らせた。設定もそうだが、やはりこの世界の事を知るのも必要ではあると彼は淡々と告げる。
「そろそろ私の出番だなあ。私は久しぶりに女性キャラとして真っ当に動かされる予定だったのだ」
けれど、すぐ飽きたり疲れるのは悪い癖だぞとヴェーゼは天へとそう拗ねた様に言った。
「ご主人様ったら『ライムは危険だから私に何かあった時の為に頼む』って言ってはくれますけど!」
闇市に行って来いとパシられるだけだとライムは非常に拗ねていた。
「表舞台に出たい、というワケではないのだ。唯、私にも、その…な…今まで重ねてきた武技やら何やらを発揮する機会が欲しいというのは、偽らざる本音だ」
そう言ったヴィルヘルミナ。それは確かに……必要リソースかもしれない。
「私はラルフの副官的使用人の筈だったのですが、すっかり彼の同じような集まりの便利回復担当になってしまいましたね……実は私本来は竜種に仕える一族の末裔という結構すごい設定なのですが……」
ぷんすこと怒るハイネ。どこかでラルフオジサンがくしゃみした気がします。
「わたしが近付くのを怖がる人も、わたしが通った後で泣き崩れる人を見るのもとっても辛かったのです……が、あっという間に1年経ってしまったのですわ! もう色んな事が起こっていてちんぷんかんぷんになってしまいましたわ」
気づかないうちにザヴィーは時間が過ぎていたらしい。反応をブチ上げるために弟子入りも辞さないとやる気は十分だ。
「私ってドジなんですぅ。メイドやってるんですけどぉ、毎日何かしら失敗したりぃエッチなハプニングが起きたりでぇ困ってるんですぅ」
ぷう、とミルフィーナが頬を膨らましている。それは……そういう属性なのだと思う。
私、お仕事で失敗しないように生活していくにはどうしたらよいのでしょうかぁ?
「我こそが混沌のドワーフという誇りがあった。あの男……ファンドマネージャを名乗るあやつが現れるまでは、の」
ゲンリーは堂々と言った。ファンドマネージャ……もういっそ、自身で自身をファンドすればいいんじゃないですかね……ほら、嘘の日なんかに美少女ドワーフとして……。
「……あれ、おかしいな、メインよりレベル高いんですけど僕ってサブ扱いなんですか? やれやれ」
そう呟いた姫百合。メタな話? はい、ロレトレ自体がわりとメタトークバッチリだとは思います!
「あたしもこの世界にきてずいぶん経つけど…現状の問題は命中と回避が足りないこと、それとファンブルもできれば下げたいのよさ」
リルカはふむ、と唇を尖らせた。ギフトは大事ですね。良ければ何かを考えてみてください。
「みんなも結構苦労してるのね……私はまだ特にステータスをどう成長させるかは決めていないのよね。回復に特化も考えたけど、しっくり来ないのよ」
悩まし気なルサルカ。生存会議と言うよりももはやステータス方向性相談室だ。
「とかくまぁ尖ったビルドだとアイテムのお溢れを貰いやすい――って話はあるよな」
トウゴはそう呟く。けれど、それで何かをゲットしても昇格が待っている訳でもないのが悩みどころだ。
「不思議、なんだか似た匂いの人達が居る気がするわね。
特異運命座標といっても様々。ゆっくり花開くこともあると思ってるわ」
穏やかに告げた彩華。私もそう信じています。個性が大切、ゆるゆると活動してくれればとても嬉しいというものだ。
「そうだ。『あいつは入りそうにないけど俺なら入れる』って感じのシナリオなら俺らにも目があるわけで」
ヨシトは堂々と言った。メインに勝るならそういうキャラクター性を身に着ける事が重要だと彼が声を大にすれば『サブキャラ』達はうんうんと頷く。
「なぜかわかる気がする。なぜか。なぜか活動記録にトレーニングが連続で並んでる辺りとか特に」
舞妃蓮は何があっても第一線に追いつくのは誰でも可能だと口にした。相手を選べば、という注釈がつくのは仕方がない話なのだ。
「暴力キャラとして産み落とされてみろよ。んじゃ日常として俺をどー使うかってーと俺ぁサイコパスだから街角デビューすらつれえって判定なんだろ。今はただの引きこもりよ……」
そう言ったガルハ。それは……その……優しい心処方箋で出しときますね。
「僕、見ての通り機械弄りが大好きでクラスもばっちりなんだけど……戦闘からっきしだったんだよね。
ゴブリンもスライムも倒せるわけないよ! オールドワンだからって体力あると思うなよー!」
それは否定できない。戦わぬものに戦う力が備わっている筈もないのだ……。
「どうしたらいいんだろう。友達ができない。恥ずかしくて声をかけたくてもかけられないの。
……でも原因は分かっているわ。どれもこれも無口なせいなの。アドリブがきかない頭でっかちとなんて誰も話したくないよね」
悩まし気なレイ。み猫はにゃあんか悲壮感と小さく呟いた。
レイは……もう皆友達だと思うので、大丈夫だよ。
「うちは戦う、っちゅうよりも、そうでない所で活躍でけたら嬉しいわあ。
人様の心を動かしたりとか、安心してもろたりとか、そういう技能が欲しいかにゃあ」
み猫の希望も素晴らしいものだ。戦う時はそれなりに、というバランスというのも必要なのだろう。
「議題『ギャグキャラ』になるには。でも、面白いことが言えないからいつの間にか縁の下の力持ちにすらなれない感じに……これは(中の人)のギャグセンスが破滅的なせいなのです! どうしたらギャグセンスが上がるのか鍛錬の仕方を教えていただきたいのです!」
中の人のギャグセンスは頑張るしかないですね! でも、きっと誰かに響くはずです。
「非戦スキルをたくさん習得する方向で訓練して、戦闘で補えない部分を補えるように動けるようにしているよ。
そうすれば、強い人たちの中に混ざっても足を引っ張ったりせずに効率的に動けると思って。人が出来ない、しにくい役割を持てるようになればお鉢が回ってくることも増えるんじゃ……ないかなぁ?」
建設的な言葉を口にしたヨルン。確かに、非戦スキルは大きな強みだろう。
「――すまん、寝てた」
リオン! だからですよ!
「いろいろあって、4ヶ月くらい? 実戦のブランクが!
4ヶ月ってゆーのはあんまり実感ないけど、体がなまってるのは感じるー」
フェスタは『生存会議』の面々にも兎に角、戦闘訓練だ! とやる気を漲らせた。
「暫く勝手にやらせてもらっていた間に、他の連中は順調に成果を出していたらしい。
何かの危機を救うって使命を抱えた……いや、抱えさせられたやつっていうのは、どこの世界でも並々ならない力を発揮するものなんだな」
そう、呟くシェンシー。フェスタの誘いに勿論だとやる気を漲らせる。
「あ、でも聞いてください! 私デビュー戦でマスターがのんびりしていてトラブル起こって肝心のプレイング時間が三分無かったんですよ! 信じられます? ひどすぎるでしょう!」
ぷんすことした真弓。それに対してクリストフはふむ、と小さく呟いた。
「殉教者を活かそうというコンセプトの時点でサブにしかなり得ないというですね。低HPで反動付きスキルを使って速やかに爆発四散する」
「ふむ……コンセプトか。実は我もな、『脳は主のクローン』という関係者としてうってつけだった設定なのだ……何故我を関係者にしなかったのか、機械に飢えていたあの男がロボット枠として我を採用してそこそこ重用してくれるので他の者達と比べれば勝っているのだがな」
そう呟いたシュタイン。関係者も一人の人間。これから幅が広がるはずなのです。
「ん~……。僕は、僕のこの可愛いスイートフェイスで、幻想種だから実は齢(ピー)歳のショタ爺! ……らしんだけど?
なんかよく分かんないよねぇ。そんなこと言われても僕は僕だし……」
外見で年齢様々なのは確かな事だ。ショーンはむうと唇を尖らせる。
「正直さぁ、俺の番辺りでそろそろ辛くなってきてね? 俺ぁさ、偵察要員として抜擢されたわけよ、で、自分でもけっこー活躍してる自信はあるぜ。戦闘じゃポンコツだけどな、ハハッ」
そう笑ったバルザック。イルミナリティは部隊(どうはいご)の為のタグになってることをどうか笑っておくれ――!
「俺は高FB高火力、その上回避マイナスの固定砲台になろうとしてたんすけどね……。
ああ、でも魔法少女ってクラスがあったのは嬉しいっす。この世界に来て良かったなって……少女には見えないって? そりゃ」
葵は魔法少女だ。可愛い声音で魔法少女になって見せる。でも、何時か仲間が欲しいのです。
「我らもここに呼ばれるとは今回は本当にネタと時間がなかったのですかね……
ええ私は彼らの隊長格であるので未だに顔が無いのですよ! いつもいつも十人近くの指揮をしているので私は私の人格を出せないし本当にひどい話です……」
悲し気なアインザーム。自身の成長ルートを司令官から別のものへと変えたいという希望が主様に届くと良いね……!
「自分、死にたくないんで……いや本当に、荒事とか怖いですし、だけど最近物騒ですし
冠位なんて化け物が来たそうじゃないですか、嫌ですよホント、関わったら死ぬじゃないですか! という訳で今以上の気配の断ち方、逃走術とかを磨きたいです、はい」
此処から逃走することにもたけて居そうなクリファセフィラ。話の前に逃走するのもOKな気がしてしまう。
「己もな、本来は獣人の武闘家として爽やかに強敵との戦闘を楽しむ予定がなぜかこの胡散臭い一団に組み込まれてしまったな」
そういうグランディスに太極は「ワシも不満はあるんじゃい!」とぷんすこと立ち上がった。皆、何かしらの不満を抱えているのだ。
そっと立ち上がったユルリッヒ。
「生き残るためには筋肉が必要だ。
そして鍛え上げられた身体を持てば影が薄いこともある程度緩和されるはずだ。
筋肉は一つのステータスだからな。とにかく何か一つ、己の武器を持つこと」
~世界は筋肉は救う Fin.~
「俺はたまには遊んでもいいと思うぞ、羽目外し過ぎなきゃな! お前達お通夜見たいだぞ、しっかりしないか!」
そういうマキーニの声が遠く――遠く感じる。
●
「さあ……ここからが本番!
1号機を点火してぶっ飛んで垂直方向へとにかく高く高く!! エネルギーを使い切り上昇が止まった瞬間2号機を点火! それを4号機まで繰り返す!! 5号機は着地時に衝撃を相殺するために取っておくよ
……いいの…? 本当にそれで良いの? 4号機まで使った……まだ5号機がある
なあ私……私はもっと、空へ近付けるだろ!!!!!!」
ハッピー・クラッカー先生の次回作にご期待ください―――☆
「大規模召喚から2年らしいけれど、私達はまだ半年と少し経ったくらいね。
たった半年だけれど本当に色々な事があったわね……」
そう言った小夜にフィーネは頷いた。
「召喚されて間もなく砂蠍との戦いがあったりとんでもない所に来てしまったと思ったりもしたけれど、貴女と出会えて一緒にシャイネンナハトを過ごしたりお花見に行ったり、皆でお泊りしたり、とても楽しかったわね。だから今はこの世界に呼ばれてよかったと思っているわ」
そう、柔らかに言う小夜にフィーネは頬を膨らませる。
「私もこの世界に来られてよかったと思います。
私は、元の世界に居場所があったかと言われると……正直、自信は無いですけど。
……私の方こそ。これからも……ずっと一緒に居られたらと。そう、思います」
そう言って、キッと睨みつける。その表情に小夜はくすくすと笑って。
「でも! 本当に、いつも心配してるんですからね! 物騒な人斬りと斬りあったとか、魔種と戦ったとか、冠位魔種に挑んだとか……報告書を読んでる私が卒倒しそうでした!」
ごめんなさいね、とそっとその手を握った。
「ぅぅ……人が多いのは苦手です」
肩を竦めたアルヴァ。驟雨の後ろに隠れてしまったアルヴァに驟雨はにこりと笑う。
「これも一つのトレーニングになるだろう。苦手苦手とばかり言っていては仕事も出来んぞ?」
「うう……わざわざオイラを連れ出す必要なんてなかったじゃないですか……。驟雨さん1人で来れば良かったのに……」
「なあに。一人で行くのが少々気の引けた私に目をつけられただけだ――観念して楽しむんだな!」
そう言われてしまうと楽しむしかない――料理を口にして、交流をして。
「また今度……一緒に……。や、やっぱりなんでもありません!」
ほら、楽しかっただろう?
●
ヴォルペの上に立って、フリウはバランスを取っている。『おいたん』の鍛錬に全力領力なのである。
「必死で耐える姿のなんと楽しいことだろう!」
ユメの言葉にヴォルペは曖昧な表情を見せた。アオはぱちりと瞬く。猫を乗せて、ギフトでいろいろ乗せて……
「おいたんにはやっぱり幽霊を乗せるのがいいと思う」
腕立て伏せに負荷をかけ続ける様子は何だか、その……恐ろしい。
「どうしておにーさんをいぢめる時だけ結託するの!?」
――そう叫んだヴォルペの声だけがその場には木霊していた。
「みんなで一緒にトレーニング! なの!
ジェックさん、ここに練達製のみずでっぽう? があるの! これで射撃戦の訓練、一緒にしてほしいのー!」
尾を揺らした鳴。いっぱい汗を流して水鉄砲でいざ戦闘開始だ。
「コレ気持ちいいよ! 当たってミ! ホラ!」
ジェックが水を発射して笑う。でも、水で濡れたらえっちだから着替えよう!
「ミアちゃんと的あてしょーぶをします! 混沌に来てから2年目……ルルもあれからだいぶ成長したのです!」
胸を張ったルルリア。ついでにトリーネも撃ち抜いて晩御飯にするという猟奇的な発言はミアにはまだ聞こえて居ない。
「カウント……? もちろんミアのが上……なの。ルルに負けるわけない……の!」
「ハッ! カウント……ほ、ほら……勝ち負けはちょっと……ね? ご、ごめんなさーい! こけー!」
やはりトレーニングといえば物攻。
トレーニングといえばパワー。トレーニングといえば筋力膂力破壊力。
なので、ナーガことなーちゃんはずるずると岩を引き摺っていた。ナーちゃん流トレーニングはやはり強靭な肉体が無ければこなせない。
「特異運命座標として呼ばれ、数日……訓練というならば丁度いい、ですね。
……と言っても、知り合いもそんなにいないし……まぁ仕方ないです、施設は色々あるようなのでそちらを使いましょう」
燐音の言葉に葵は連携訓練に誘った。協力するノエミ。今後依頼で共になった時の為にとノエミが務めるは盾。
庇うだけではない。敵の隙を作り出すのも重要なポジションだ。
「お、二人共いい感じじゃないスか?
もう一回! 今度はメンバーの動きを意識してみるっスよ」
その様子を眺めながらワモンはほうほうと頷いた。自身の得意を伸ばすのも大事だ。
「MADACO弾は弾力性のある真蛸を撃つスキルで相手を捕縛したいときに便利だぞ! 真蛸は在庫いっぱいだから撃ち放題だしな!
IWASHIボムは爆発するイワシ弾で敵をまとめて攻撃できるスキルだぜ! ただ、イワシ弾は在庫の関係で一度の戦闘で使える回数は限られてるぞ!」
すげーだろといわれても、どちらかといえば美味しそうなのである。
「す、きる。すきる! おねーさん、たち、のみたい!!」
舞香は瞳をきらりと輝かせた。舞香にも憧れるスキルは沢山ある。
「僕自身は、お仕事の郵便屋さんに関連するスキルが多いかな?
手紙にヴェノムクラウドを仕込んだポイゾニックメールとかね。これは、イレギュラーズになってから学んだ罠設置技術も応用してるんだ!」
郵便屋さんであるニーニアはそう言った自身の技術を応用してるのだと笑みを溢す。
「えっと、ねー。まいか、つく、るーな、らー。いっぱいこーげき、できる、のに、する!!」
それに成程と頷いて大地は自身のスキルを紐解かんとする。
「例えば、睡蓮。摘もうとした者を池に引きずり込む妖精、そういった逸話からつけた技だ。待雪草……これはスノードロップの別の呼名だ。この花は良い意味も悪い意味も持っていて、味方には希望を、敵には不幸を……そういう意味で使ってみてる」
「呪印を受け入れてくださった方から、情報や伝言を受信。承諾による権限取得と、呪印の認証で経路を構築のがギフトです。心配させているようですし検証してみましょうね」
「うんうんなるほど。原理はボクにはよく理解できないけど、いつも使ってるギフトの応用だから、珠緒さんの身に新たな負荷がかかったりするわけじゃない、みたいね。
その血も、普通の血じゃないってことはわかったけど………でもやっぱり、好きな人の吐血姿はぞっとしないわね」
蛍の言葉に珠緒は肩を竦める。珠緒は自身のギフトやスキルを紐解く様に淡々と告げた。
●
「僕はこの先どうやってロストレインを灌ぐかかだけを考えなければ。
むむ……ぷはっ、まあ、考えすぎてもいけないな」
呟くカイトの隣をおにごっこをする面々と謎に女装もコスプレも満載の面々が通り過ぎる。
「敵は目の前、いざ、尋常に勝負ですよーー!!」
素叫んだアラン。ちなみに今はシエラのコスプレをしていた。緑を基調とした帽子とフリフリドレスで大剣を振り翳す。後で写真ください。
レオパルになりきるノアルカイム。格好良く戦うぞ! と意気込んでノアルカイムは飛び込んだ。
「よーしいくぞ、食らえ大根ソード! 天誅ー!」
その声に応えるはポテト――ではなく『ポテトロッテ・アーベントロート』だ。
黒のドレスに銀のウィッグ。華麗に苛烈に彼女は戦いにんまりと笑う。
「私の薔薇を奪うのはどなたかしら?」
「私は防御が最大の攻撃だ!」
青い長ロングドレスを着てウィッグを付け、花を頭に飾る。
胸にも大きなパッドを詰めこむ――あ、それ位のサイズだと認識してるんですね――リゲルはヒラヒラとドレスを揺らした。
「さて、行こうか――詰めが甘いな、こっちだ」
エディになりきるグレイル。レザーあーまーとマフラーを揺らして二本のナイフで距離を詰める。術で補助をしながら戦闘を続けるグレイルの前に堂々と立つ一つの影。
「……俺は白い稲妻のリゲル!!」
シエラの言葉にポテト(リゲル)が固まった。
「ポテト、ここにいたのか! どうだい?新しく生まれ変わった俺に惚れ直してしまったかい?」
「そんな感じ……か?」
リゲルが振り仰げば暗殺令嬢(ポテト)が首を振る。
「大人しくTENGI☆されちまいなぁ!!!!」
「今日こそ、ぎゃ、ぎゃふんと仰って、はわ、違う、言えっ!こっ、こらー!!」
混乱のメルトリリス。ちなみに太陽勇者アランリリスだ。
「こここここっち見んなこらっ、見せものじゃ、ない、のですっ、あっ、無いぞっ、おらっ」
「メルトリリス!? こら! そんな言葉遣いどこで覚えて来たんだ!?」
お兄ちゃんはお怒りである。メルトリリスは慌ててこそこそとコスプレ特異運命座標達の後ろへと隠れる。
「負けないよー! 鉢巻き沢山取っちゃうんだから!」
白いドレスに白い髪。シマエナガになり切った気分のルチアーノはひらひらと動き回る。
その一つ一つが元気いっぱいで、ルチアーノはこんな中でも自身が闇ならポーは光だねといつもの如くルーク&ポーカップルの『愛』の描写を忘れなかった。
「ふふっ、面白いね。鉢巻は僕が全部いただくよ」
ノースポールが考えるルチアーノはスマートに動き続ける――が。
(ルークが私のまねっこしてる……! 可愛い!! ここに練達製の映像記録装置があれば……!)
誰だって恋人が自分の真似をしてるならうれしくてたまらないだろう。
一方のエリザベートはしっかりと恋人ユーリエになりきるイメトレをしていた。
(ユーリエらしくユーリエのように……私がとっても好きで愛して愛おしくて大好きで)
「エリちゃん♡ エリちゃん♡ エリちゃん♡ エリちゃん♡
エリちゃん♡ エリちゃん♡ エリちゃん♡ エリちゃん♡
エリちゃん♡ エリちゃん♡ エリちゃん♡ エリちゃん♡」
エリザベートの様子に瞬くユーリエ。彼女は今はシエラになり切って居る為反応はしてはならない。
「そう! ここでみんなにビーフジャーキー! みんなの笑顔がマブシイ! ――サンダーボルトハンドスピードォォ!!」
勢いはすごかった。
●
「この暑い中にな、ボクみたいなタイプが屋外でのトレーニングをするのは命に係りかねんな……」
そう呟くシャルロッテは仮設作戦本部を設置する。涼しいその場所に水や食事を運ぶメイドとバトラーたち。コロナやブルー、No.9、萌黄も此処で涼むのがいいだろう。
レオンハルト、サンズイ、ユールや緑、桜華へとピムリコはタオルや飲み物を配る。
怪我はないだろうかとみて回るアクセルも手術や医療知識を使用することを欠かさない。
右へ左へ。そうやって歩き回れば、これもまたいい運動だ。
「汗水垂らすのって趣味じゃないわぁ……でも折角の珍しい機会らしいし……そうね、人間観察をしましょうか」
ことりと首を傾げた夢魔の栞。人を見る目を養うのも大事だと彼女はにんまりと笑う。
ハレの日があってこそだとステラは認識していた。食べすぎにも注意しながらもステラは具合の悪い者はいないかとみて回る。
レミアは「大仕事だったものね……」と小さく呟いた。どこぞのアウラウネと同じく人肉食べたい勢の彼女はひとまずはと筋トレをし続ける。
その様子を遠巻きに眺めながらウォルは賑やかなのも悪いことばかりじゃないと小さく呟いた。変な人が多いのは――まあ、ローレットなので仕方がない。
「やりましたね! この世界に来て早々にハッピーイベントです!
パーティー! 飲んで食べるアレです! つまりは出会いのチャンス!……いえ、それはないですね。落ち着きましょう」
神那は色々あるからとレッツ飲食! 美味しいものは良い事だ。
「えと、その……普段このような場所に1人では来たことがない、ので……緊張して……うぅっ……ちょっと隅っこにいたい……」
緊張した調子の清。これも試練だ、全力で頑張っていただかねばならないのだ。
グウィルギの隣で珪化樹はうんうんと頷いた。
「こりゃいい機会だべ。幻想さ居る精霊にも呼び掛けてパーティを一緒に楽しんで、参加してもらいてぇべな!」
それはきっと大盛り上がりだろう。精霊たちを見る事が出来る者たちにとってはまたとない事だろう。
「旅人の皆さんが大規模召喚されてから2年になるのですにゃ?」
首を傾げる紗恵にアリシアは頷いた。もう2年。長いのか短いのか。
「私達後発組は1年、か」
アリシアと比べればセフィは後輩なのだと小さく呟く。
「本格的に動き始めたのは去年の今頃。制約によって力を取り戻すまで色々大変だったのよね」
ゲームもいいが買い出しも必要だという話にセフィは飛んで行ってこようと立ち上がった。
(――まだまだ、私も強くならなければ)
心にしっかりと思いを秘めながら栞はボードゲームを見ていると仲間達を見送る。
その言葉を聞きながら依狐はくい、くい、と諸先輩の裾を引っ張った。
「エコー、街散歩したい、ついてく」
げほげほと噎せながらボードゲームの手に悩んだ颯太。エラとの対戦は中々に骨が折れる。
「買い出し組は行ってらっしゃい。何か有ったらこっちは任せな」
「何かありましたらこの子伝いに見ていますね」
ファミリアーの小鳥を指さしたエラ。颯太とのボードゲームはまだまだ続きそうだ。
「まだまだ、私も強くならなければ」
また友人と別離が無いようにと胸に秘めた栞はボードゲームを眺めて目を細める。
●
「さて、これは皆さんご存知トランプを使ったゲームです。
ランダムに伏せた札の中から2枚選んで、同じ数字を出したらトランプを取得できます」
そう、アルプスは云った。ババ抜きではなく神経衰弱。ババと言えば――ロリババア……ウッ頭が……。
「……本当に普通に神経衰弱をするんだよね? いや、いいんだ」
遼人の中では飛んでも人間大集合な事があって本当に神経衰弱なのかが悩ましい所だったそうだ。
「しんけいすいじゃく? なにそれ、神経を衰弱させるくらいつらい遊び……?」
ルルゥの言葉を其の儘とらえるとなかなかにやばい遊びなのだが、アルプスがルールをしっかり教えて呉れればルルゥもきっとそんな『ヤバい遊び』だとは思わないだろう。
「武術の訓練とかイレギュラーズになる前にたくさんしたもんねーお祖父ちゃんうるさかったからなあ……でもここにはお祖父ちゃんもいないしー」
もしもスピネルのおじいちゃんが此処にいたならばきっとお叱りしただろう状況ではあるのだが……
「……とても盛況みたいね。ただ…私は騒がしいのは余り得意ではない……そう思っていたけれど偶にはこう言うのもいいのかもしれないわね。」
柩はイカサマはせず正々堂々と戦うわ、と小さく告げた。小細工なんてない、真っ向勝負の真剣勝負だ。
「カードの枚数って決まってるから人数によっては順番が回ってくるまでにだいぶカードが減ってたり……?」
ルールを少し心配したひつぎ。動体視力と記憶力を鍛えられるトレーニングになると告げたひつぎにアルプスは堂々と頷いた。
「はー、トレーニング? トレーニングになるのこれ?」
その時、マナみは思いついた。瞬間記憶を使えばいい。面倒だし、と呟いた彼女。
大丈夫だ、瞬間記憶に資料検索。そういう非戦スキルの応用も立派なトレーニングだと自身に言い聞かせる。
「周りは騒がしいからこそ、こういう静かに集中力を研ぎ澄ます勝負をするのがいいのかもね。という訳で、やろうか……僕が思うに、これは耐久力がモノをいう勝負だろう」
悠は口元に手を当てて、にぃと小さく笑った。睡眠不要のモードは切ってきたが、負けたときがすこしばかり気がかりではある。
「なんでアタイは一回もとれないんだ!?
たしかあっちにハートの7があったはずなのに!! めくったらぜんぜん違うのだったぞ!?」
自信満々の悠とは対照的にモモカは絶望していた。どうしてもカードの位置が覚えられないのだ。
「成程、カードゲームかい? 余興には良いんじゃないかな」
イケメンはグッドルッキングをよく見て貰えるからこそこういうゲームがいいとウィンクをする。
「しかし…フーッ、ハートのクイーン……やはりトランプも俺に見惚れてしまったようだな……罪を背負ってしまっているからね……イケメンっていう、原罪をさ。
それじゃ2枚目のカードを引こうか。……フーッ、ダイヤのキング。
男女分け隔てなく魅了してしまう俺を許してくれ給えよ……今回はカードを戻さないといけないが、またいつの日にか迎えにあがるからね」
その様子を眺めるミリヤムやチェルシー、スチュアートにもイケメンはウィンクを放った。
「手番によるが、記憶力の勝負だな……いやトレーニングだったな。
ともあれ、反応が高ければ勝てるわけじゃない、やりようはある。まぁ、初手は運次第だが……さて、どんな流れになるかね」
ヤナギが手元を見遣る。ロゼッタや小雷などゲームを眺める面々も存在していた。
いろいろな訓練を見て回った方が身に為るだろうと小雷は考えていた。成程、ローレットトレーニングを『見て回る』勉学の場にしたという事だろう。
「んんー? カードを揃えればいいの? 簡単じゃん。きおくりょくは……多分大丈夫だと思う……けど」
そう言っていた依は手元でもなかなか神経衰弱のカードが揃わぬことに次第にイライラとして来てしまう。
「…………ンガーーーーッ! こんなんできるわけないじゃん! もういいっ!」
脱兎のごとく御云う言葉がぴったりだ。尾でカードをぺしり。依は走り出してしまう。
「これも何かのトレーニングになるかもしれない。上に行くためには今までと違うアプローチが必要なこともある。何より人との勝負事だものね。真剣に勝利を目指すわ」
カードを眺めながらアンナはむ、と唇を尖らせた。トーナメント戦である以上、勝利するのは中々に楽しい。
「一人神経衰弱をして培った技術を発揮するわ! え? 友達…………い、いるわよ! 普通に! 余計なお世話!」
ぷんすことしたリーゼロッテ。記憶力と勘がきっとこのカードだと決まっているとリーゼロッテが間違えたカードを引いて「魔術的な作用が働いたわ!」と立ち上がる。
「……うん? 透視は反則? うむうむ、ワカッテオルゾー」
中々に白熱する神経衰弱にルアは静かに首を振った。
●
その日、スティア・エイル・ヴァークライトは学んだ。魔法を使うのがダメなのだと。
けれど流れるプールはちょっと物足りないから魔力を込めて――……
「へぇ~い♪ そこ行く麗しきご婦人僕と一緒に一夏のアバンチュー ん……?」
爽やかに声をかけた夏子。その声にクラリーチェとエンヴィは視線を向けて首を傾げる。
いきなり夏子が何かに引っ張られた様に落ちていったからだ。
「こうやって、クラリーチェさんと一緒にプールを眺めてるだけでも……あら? 何かしら…」
その時、エンヴィの穏やかな気持ちは確かに揺らいでいた。流れる水は赤く染まり――
クラリーチェは愕然とした。スプラッタ的な光景は(PPP倫)で(PPP倫)である。
「まさかとは思いますが、スティアさん……。サメ呼んで来たりしてませんよね?」
特殊サメ召喚士スティアが呼んだとでもいうのか。アンジュは仁王立ちしてびしりと鮫を指さす。
「練達シャーク…馬鹿な! なんで美少女じゃなぐぅがああぁーー!」
夏子の悲痛な叫びにアンジュは唇を噛み締めた。
「ゆるせぬ……サメめ……ぜったいにゆるさめえ!! いわしをただのさかなと思ったら大間違いなんだよ。ああああ、いたいいたいたいさめはだいたいいたいいたい」
イッ、イワシ――!
クリストファーにとってスティアと言えば鮫。鮫と言えばスティア。
\サメだー!/
慌てた声を出した綾女。鮫なんてプールに出るわけじゃないのに……。
「プールにサメなんているわけ無いわよ? サメのウォーカーでも出たんじゃ……ほんとにサメだわ」
「……なるほど。やべぇな!」
いざとなれば女性陣の盾になるというクリストファーも凄惨な光景には口を噤む。
「わーー! あ、サクラちゃん……あれ、クラリーチェさんまで。
どうしたの怖い顔して? サメは呼ぼうとはしてないよ。うんうん、じゃあそういうことで!」
「あ、いた! またサメ呼び出したでしょ! あれほどダメって言ってるのに!
逃げようとしないの! もうスティアちゃんはトレーニング中の魔法禁止だよ!」
がしりとサクラに捕まえられる。私は悪くないよおとスティアの悲痛なる叫びが上がった。
「うおー! 拙者、泳ぎは得意ですぞー!」
奇妙なことが行われていた。サメ映画の如くサメを相手取るルル家。
「サメ即斬です! サメ映画賞を受賞した拙者のサメ倒しさばきを見るのがいいのです!」
サメ映画賞だもん! 此処で負けては水着の評価もすたるという勢いでルル家はいざ、鮫!
「いやいやいや何でサメ!? 俺はただ、遠泳で体力付けたいだけだっつーの! 御呼びじゃねぇんだよおおおおおおお!?」
全力で逃げる要。映画の中の話だろと叫ぶ要の悲痛な声音が響き渡る――!
●
「レオンに模擬戦を申し込んでみるニャ。たのもー!」
ばーんと扉を開いたニャンジェリカにレオンは「また今度ネ」と流す様な言葉を発した……のだが。
「実はヨハナ、パーティとトレーニングを両立した遊びを思いつきましてっ!
このビラを幻想中にばら撒いたんですよっ!」
「は?」
ヨハナちゃんの笑顔にレオンが思わず気の抜けた声を出した。
『レオンと鬼ごっこ!
日暮れまでに捕えた者には賞品進呈!
レオンがなんでもひとつ願いを聞いてくれるぞ!メイビー』
「さぁ始まりましたローレットの首魁レオン・ドナーツ・バルトロメイと面白おかしくトレーニングしようという時間が始まりました、どうでしょうか解説の――」
カイトがちらと横を見ればそこで雪風が首をぶんぶんと振っており、リリファが曖昧な顔をしていた。
「はい! 解説の月原・亮です!」
とりあえずカイトに亮が乗った。勢いの良さに突き飛ばされた忍。
「ありがとうございます!!!」
大きな声での返事に亮とカイトが顔を見合わせた。何もないです! そういう趣味の方なんです!
「レオンさんを追いかける鬼ごっこ、ですか。これは中々に面白そうですね。あの方の実力は、結構気になっていましたし」
ファミリアーを伴いながら鶫は空からの索敵を担っていた。レオンは自身らより強い殻本気でぶん殴っても大丈夫だとェクセレリァスは認識していた。
テレパスを使用して情報を共有し、後は本気で殴る! これはムムルやナキも驚きだろう。
「ふむ……確かに面白そうな内容だ……
あのレオンと、か……まぁそうだな連隊のトレーニングには最適だろう……」
真面目に考えてくれるルツ。さて、政宗との連係プレーがスタートした。
常に胃の痛みと戦っているヒカゲちゃん。アクロバティックに戦っているというがメンタルの弱さで今の段階でも胃がキリキリなのである。
「はははっ♪ 実に楽しいねぇレオン君!」
心躍らせるノワ。兎の耳がゆらゆらと揺れている。なるべく無傷で捕まえたいというがレオンは相当の速さでどこかに隠れてしまった。
「さてさてローレットのマスターなレオンさん。
いくら強いって言っても、さすがにこの人数で追いかければ大丈夫でしょー! ……って、これ良い感じの前振りになってない? 大丈夫?」
それが『フラグかもしれない』とティスルは何となく思った。ローレットも今や脅威ともいえる程に力を付けてきているのだ。
「ふむ、レオンとの全力鬼ごっこで持久力と速さの鍛錬か……反応であればオレも自信はある。混ぜてもらおうか」
紫電は成程、と言う様に首を傾ぐ。全力で追いかけまわすと天駆脚を駆使してダッシュした。
「っふ、おもしろい。俺も参加しよう。相手はあの蒼剣、迷いなく銃弾を撃ち込ませてもらおう。ああ、俺は捕まえる気は無い…あくまで皆の補助に徹しよう」
ワルドがにやりと笑う。銃を手にし、補助の為にと走りだす。
「レオン様には華蓮お義母様が大変お世話になっていると聞いております。
ええ、本当に口のお上手なご様子、手の早いご様子、伺っておりますとも」
幻のにっこりは何か意味がありそうだ。もしも華蓮に何かあれば幻が全力で追いかけて来る事だろう。
「ハハハハ! なんでも捕まえればレオン氏が何でも言う事を聞いてくれるって言うじゃないか! 参加しない手はないね!」
馬を駆るクリスティアン。その姿もサマになっていというところだ。
「レオンさんとおっかけっこだー!(>ヮ<) たのしそう! やろうやろう!
それにレオンさんいつもいそがしそうだから、みんなであそんだら、いい気分てんかんになるよ!(´▽`)」
「ハイハイ、可愛いね」
適当なレオンの返しにQ.U.U.A.は「知ってる!」と顔文字でアピールした。
「なんかよくわからんがヨハナが【鬼ごっこ(HARD)】とか言う催しをすると聞いたのだが!! 優勝したらいいものがあるとかきいたぞ! 我の大勝利だ! これで勝利し我が魔王軍の知名度を向上し……ゆくゆくは世界全てを統一するのだ!!目指せ平和な世界だ!!」
そう言ってホロウは盛大に転んだ。
「ローレットのオーナーさんを追い掛けるッか?
面白そうッス! やるッス! 反応速度は低いッスけど、反射神経なら高いッスよ~!」
やる気十分の鹿ノ子。どこからどこまでも隈なく探すのだと彼女は走り出す。
「レオン? カイ知らんニャン」
――何という事でしょう、ルールが一部破綻している。誰か分からないからとりあえずカイは全員を捕まえるようだ。
はー、最高かよというギフトを所有するマグダレーナ。正直、鬼ごっこをして居るよりも其方のギフトに興味がそそられる。だって、俺おまである。自分の好きなものを見れば何となくしゃべり続けて今日考えられるってなにそれ奇跡? 最高かよー。
「レオンと遊べるし、ルツとの連携の練習にもなるしね!」
ヨハナが撒いたビラを手にして鬼ごっこに参加する政宗。ルツとも連携を取るいい練習になると笑う政宗はレオンを捕まえたならば冒険譚を聞いてみたいと胸躍らせた。
「HAHAHA、ダァァァアイ(訳:死ねぇええええ)!!!」
けれど、そうやって気分を躍らせてる場合でもないかもしれない。貴道が鬼ごっこと言うよりゴリラの捕獲作業の勢いで追いかけてきてるのだ。
チラリゴケは素晴らしい水でシュッシュッとされるためにレオンを追い掛けていた。ギルドバスターならなんだかすごい水を持ってる気がチラリゴケにはしていたのだ。
馬と言えば早い。ラダは耳を澄ませて的確に相手を探していた。
「どこまで食いつけるか分からないが……それでも蒼剣の力の一端は見たいものだ。
しかし、腰は大丈夫かな。医者呼ぶか? むしろ運ぶか?」
おじさんなんです。許してあげてください!
「確かに……あいつ、腰がいてえんだよな。どこかに隠れてるかもしれないぜ?」
サンディはそうつぶやく。レオンの方がローレットの内部については詳しいはずだ。
自身も囚われの身であったことがある以上何となく、囚われる(かくれる)場所は分かってる気がする。
「これも鍛錬と思えば……むぅ」
捕まえるのも中々に難しいと義光は首を捻った。それほどの勢いで追いかけているんだぞ、特異運命座標!
「なあ、ここって入っていい所かどうか、知ってるか?」
鬼ごっこを眺めながらカーツが首を傾げれば、サンディは多分と小さく呟いた。
書庫の中には大量の報告書が眠っている。何時か、其処に名前が並ぶのだろうかとカーツは胸を躍らせた。
「しかし、レオンさんも大変ですよね。トレーニングのためとはいえ、何人に狙われているのやら…」
そう呟いたシュラ。ラナーダの援護を受けてレオンを追い掛ける。
「って、ええ!? シュラさんこれ追いかけっこだよ!? なんで戦闘スキル使ってるの!?」
慌てるラナーダをよそにシュラは全力で走る。そんな様子にラナーダもヤケだと走り出した。
暗黒微笑を浮かべたTHUNDERは景明と共にレオンを追っていた。
「お願いは簡単です。私達二人に鍛練をつけるか、私達二人に速くて強い師匠を紹介するか……宴の費用と鬼ごっこの被害の賠償をギルマスが自腹で負担するか、選ばせてあげます」
暗黒微笑である。懐かしささえも覚える単語だ。それに合わせた景明。「挟撃でござい!」とTHUNDERに声をかける。
風の様に走ってくそれを眺めるタツミとクレア。鬼ごっこは白熱しているのである。
「えへへ♪ 鬼ごっことか楽しそう! 私も鬼やりたいな~。皆で楽しく遊ぶなんて生まれて初めてだよ~」
言葉は可愛らしいが、勢いはすごいビーナスであった。ちょっと何か漏れ出ていますよ!
「レオン殿ならたぶん避けれる。きっと避けれる。最終的に腰をいわしそうだけど。
きっと氷柱の並木を必死にスラロームするレオン殿が見れる。きっと、たぶん、めいびー」
そんなことを言いながらアルクも蒐集者の氷檻を放った。レリックのパンツ。そうですね、そんな……美少女のパンツじゃなくていいんですか……?
「ふはははははははははははー! Hades03を手に入れた拙者はむてきぃ!」
異様な勢いで与一はレオンを狙撃すべく虎視眈々と狙っていた。
猛烈なる勢いで様々なものを捕まえるカイ。カイトは「俺は食材じゃないぞ!」と慌てた様に言った。
「よーし、追いかけっこだな! 猛禽類のちからを見せてやる!」
これから追い掛けるのだという様に父親よりも強いであろうギルドマスターを追い縋る。
「もしもレオンの奴を捕まえたら一杯酒を奢って貰うように頼むぜ。色々話をしたい事とかあるんでな」
シュバルツの話したいこととは何か。割と怖い気もするがレオンは(腰を痛めつつ)逃げおおせていた。
「えへっ……レオンお兄ちゃん特訓だなんて嬉しいな。
お兄ちゃんは、どこまで逃げてもいいんだよ? だって私、尾行は得意だから。
どこまでだってついていってあげるよ? 後ろを振り向いたら、いつでも私がいるから。安心してね、お兄ちゃん」
イ=モウトの呪いを帯びた声がレオンの背中に付きまとう――
その声を聞きながらもエルは涙を浮かべていた。だって、捕まってくれない……。
こんなにも全力で追いかけているのに、全然レオンは捕まってくれないのだ。
お姉ちゃんと呼んでもらうために龍は只は知り続けた。全生物の姉である彼女はレオンにもお姉ちゃんと呼んでもらうためにと全力ダッシュしている。
すさまじい勢いで通り過ぎていく面々を眺めながらうさことジャスパーはぱちりと瞬いた。
「渋くてダンディィィィなレオォォォン! 俺が力いっぱい抱き締めてあげるぞォォォォ!」
多分私がレオンでも逃げている。そんな勢いでリンダスは走っていた。マッスルマッスルだ。
「ごほごほ……かなり探したぜ……レオン・ドナーツ・バルトロメイ……隠れるの上手すぎじゃねぇ? 迷子になるかと思った。
『レオン・ドナーツ・バルトロメイと鬼ごっこ! 日暮れまでに捕まえたらトレーニング参加者全員にレオンが大奮発だぞ!』って風の噂で聞いたんでまぁアシストでもしようかなって」
そう笑ったペッカートはスピーカーボムで声を大にしてレオンを発見したぞ! と声を上げた。
「左翼と正面は壁を形成! 右翼と背面はカウント10後に3秒置きで突っ込んで!!」
アルテミアはアーリーデイズを使用しながら強襲を駆ける。抹消面から追い掛けたって駄目だ。こういう時戦術というのは大いに役に立つ。
「ええい流石はギルドマスターと言った所か? こうも上手く追撃を逃れるとは……!
だが戦いは数よ。物量戦で押しつぶせばいずれは追いつけよう」
唸るライハ。その言葉に幻が大きく頷く。
「チクショウ何が最近腰が!! 全然話が違うじゃねー!?」
ロリババアのカレンやティンダロスも追加してマカライトはレオンを追い縋った。
「さて、レオンを捕まえれば良いんじゃったかな? わらわは鬼ごっこ目的じゃからな…結乃と同じお願いにしておくのじゃ」
そう言って手を繋いで華鈴と結乃はレオンを追い掛ける。
「いいの? 二人分のお願いなんだね!」
結乃は瞳を輝かせた。レオンさんに美味しいものを食べさせてもらおうとやる気は十分なのである。
「こーらー、無理しちゃダメなのだわよ、強くなりたいのであれば、体を壊さないようにするのは大切よ!」
追い掛けるのはいいけれど! とママ適性をしっかりと発揮する華蓮。ママみが凄いのだ……。
「はァいレオン、随分忙しないわねェ? 折角のお祝いなのにツレないわ、私にも付き合ってちょうだい。いっぱいサービスしちゃうわよ」
「またね」
「……何かから逃げてるの? それって……私みたいなのからかしら?
ごめんなさいね、だってアナタ相手に正攻法って難しいと思って。だって私、か弱い女だもの」
にこりと笑ったリノにレオンはつくづく女に弱いのだという様に肩を竦める。
一方で、鬼ごっこに強制参加させられるレオンの執務室にドラマは居た。
酒とつまみを持ち込んでのんびりとレオンの執務机に向かっていると……
(…………少し、レオン君の匂いがします。
……何故だか分かりませんが、落ち着いて……少しだけ、眠く…………)
うとうととしたドラマ。――To be continued
●
フォリアスやキリカ、ヴィマラに風牙は「よろしくおねがいしまーす!」と大きな声であいさつ一つ。
皆が見て居ない所へとアランはこそこそと隠れて筋トレに励んだ。
(大量召喚の日……僕達が、この世界に呼ばれた日。
……あの日から、僕はまた、たくさんの人を斬って、斬って……強くなりました)
シキは目を伏せる。精神を統一し、武器としてよみがえらせてくれた『あの人』の為に只、鍛錬を続ける。
(今の僕に、必要なのは……最初の一撃で、確実に相手の急所を斬り裂く……判断力と、瞬発力。身に着けてみせます――待っていて下さいね、ご主人様)
レイヴンはただただ無心で空を駆けた――もっと、もっと、もっと、速く。鋭く。
「..……ああ、帰ってきたのだな。空に」
まだ、足りないのだ。亜竜種ですら、飛行種を凌駕する翼を持っている。
「…...願わくば、私も…...」
故に、駆ける。駆ける。駆ける。竜や、汝の心や何処に。
「ドーナツには何故穴が存在するのか? その謎を解明するため、セララ特派員は聞き込みを開始した!」
……情報を集めること数時間、ついにセララ特派員は有力な情報に辿り着いた!
「ドー」は、ケーキやパンを作るときの材料になる小麦粉をよくねったもののことであり、「ナツ」というのは、ボルト・ナットの「ナット」のことらしい。
ゼシュテルドーナッツの歴史を紐解くのにも繋がっていく。つまり、その、なんだ。
ドーナツが美味しい。
「無料で食い物配ってるってマジ? ありがてぇわ〜〜助かる〜寿命一週間伸びたかも〜〜!
俺は今日最高の気分だから、皆にオメデトウって言って回るわ。んでよ、タッパーに食い物こらさと詰め込んでお持ち帰りするぜ」
そう笑う詩業。なんてこったい、とでも言いたい気持ちなのだが、食事を手に入れれるならそうやって笑みを浮かべるのも当たり前なのかもしれない。
「里にいるはずの私が何でここに、という所でしょうか! ――実は私も召喚されてしまったのですよ、シャハル!」
そう笑ったハンナ。ウィリアムの戸惑いはすごい。見た目以上に生きて来た彼にとってこれまでもない程に困惑していた。
「……え、召喚された? という事は特異運命座標か。そうか……。
こんな所まで来るとは、君は本当に大した妹だよ。でもあまり無理をしないようにね」
不屈のど根性であっても注意してと囁く兄に妹はそっと笑う。
「……シャハル・ケシェットに大樹と『ウィリアム』の加護がありますように」
周囲をきょろきょろと見回したシャウラは頬を掻く。
「今回はトレーニングじゃなくて……なんだこれ?祝賀会?にしては皆やる事バラバラじゃね?」
「トレーニング、という名目の祝賀会というか、お祭り騒ぎっぽいね」
スピカは淡々と答えて空の上に帰りたいと小さく呟いた。
「シャウラ。懐かしいものを見つけたよ」
ふわふわとして柔らかい菓子を口に含んで二人は目を合わす。ああ、故郷が恋しいのだ。
まずはと汐はポチにおつかいをさせようとメモを持たせた。背びれに引っ掛け進むのをそっと眺め続ける。
「それではポチや行っておいで。上手にできたら今日のご飯はちょっと奮発してあげよう」
ポチのお散歩スタートです。
「フフフ、まさかトレーニングでデートする事になるとは思いませんでした。死聖お兄ちゃんとデート……きゃあ! 素敵!」
由奈は死聖にそっと寄り添いながら傍らの聖奈に視線を送った。
「やあ、まさかトレーニングで内容を『デート』なんて提案するなんて流石師匠! 目の付け所が違うのです!」
二人の間に火花が散っているのを見ながら死聖はにこりと笑った。
「由奈も聖奈も、僕の最愛の妹と弟子が言い争う姿を見るのは悲しくなっちゃうな
二人には仲良くして貰いたいのだけど…僕の我儘を聞いては、貰えないかい?」
お兄ちゃんが言うなら――そんな気持ちで収束する。
「で・す・が! 絶対にお兄ちゃんの恋人は私だけだってわからせてやりますからね!」
トレーニングな内容はあるかとリアムは考えていたが傍らには朝姫が立って居る。
「えっとね、一応言っておくけどリアムさん……僕男だからね?
まあ、僕は男でもバッチ来い! だけど流石の彼女持ちとはね。じゃあ、リアムさんの彼女のプレゼント選んじゃおうか?」
「……だから彼女は居ないと言っているだろう……それに、今はお前と共に居る。
贈るとすれば、それはお前に、だ。すまない店員、この指輪をコイツに」
きょとりとしたあと、朝姫は柔らかに笑った。
「今まではトレーニング……という名目だったけどもはやこれはトレーニングですら無い気がするわね?
ふふ、でも良いわ。今日は鈴鹿ちゃんに最後まで付き合ってあげる、からねん」
笑った輪廻の言葉に鈴鹿はぱちりと瞬いた。
「とりあえず、買い物に繰り出すの! えへへ……輪廻姉様と買い物デート♪」
ご機嫌の鈴鹿。購入したペアリングは離れ離れにならないという証に一つ。
普段であれば明るく陽気なムスティスラーフは今日という日は只、静かだった。
大規模召喚の日――それは彼にとっては息子と孫の命日だった。
大規模召喚の日は……息子と孫の命日だった。
(僕の残された時間でどれだけ楽しめるかはわからない――だけど僕の命を繋いでくれた息子の為に。
そして召喚で救いの手をくれた混沌の為に――僕は生きよう)
もちろん死ぬつもりは無いけど、死ぬ覚悟ならあるとそう決めて。
「ふんふんふーん♪ こっちの世界にも似たような性質の素材があってよかったよ。
流石に予備の布までは持ってなかったしねっと、うん! 出来た! 見て見てお母様!上手く出来た――」
そこまで言って焔は母は此処に居ないのだと自身の装備をぎゅ、と握る。二年たってもまだ慣れないものは慣れない。
「ジャパニーズ・サケの名酒『ヘブンズ・ドア』の作り手、亡くなられたそうですね」
そう呟いた寛治に行人は頷いた。
「その場にとどまらない魚が居ないように、変わらない物は無いさ。でもね……寛治」
酒を造り続ける事もまた、アーティストなのだと行人はそう言って二人で杯を掲げる。
幻想国内の美しい教会と言えばイレーヌが居る大聖堂だろうか。ゆっくりと歩を進めたコーデリアは目を伏せる。
(亡くなられた方の冥福を、そしてこれからの天義の……何より世界の行く末を。
きっとまだ幾多もの大きな困難が待ち構えているでしょうが、私は……私達は、きっと乗り越えてみせますので――神よ、どうか見守っていてくださいませ)
●さいごに
がしゃがしゃと食器を洗い続けるアンジェラ。誰かに命じられても本能的に働かねばと考えてしまう以上はそれには逆らえぬと只管に食器を洗い続ける。
「と、いうわけで後片付けをします」
イレギュラーズが行ったイベントはイレギュラーズがきちんと終わらせるのだという。
ごみを拾い集めながら伽藍洞になったローレットを眺めてクロバは肩を竦める。
何か考え付けばいい。幸福そうな誰かを護る新しいことでも。
――なんせ、俺は幸福に生きれる奴を守る兵か剣でいい。そう、決めたからからな。
どうもー橘ッス。大規模召喚から二周年おめでとうございまーす。
さておき、今後はどうなる事やら……?
――次回、PandoraPartyProject「幻想の魔、騒乱再び」
次回も絶対見てくれよな! ッスなぁ
成否
大成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
2周年ありがとうございます!
折角の2周年ですので、白紙の方も含めて全員描写させていただきました。
(抜けがありましたらお教えください! 頑張りましたが、ご迷惑おかけします!)
MVPは私が一番笑った方へ差し上げます。
称号もたくさん! ローレットの皆さんの努力(そこぢから)が凄かったので夏もがんばりました。
これからもどうぞ、PPPをよろしくお願いします!
※以下、YAMIDEITEIの補足です※
何と二周年にして大成功確定の次の第二余禄を達成でした。
達成される予定の無い第二余禄を達成した結果、夏あかねSDが『全員描写』するという暴挙に到った訳ですね。
お客様の底力を感じつつ
人数ボーナス845につき42点
プレイングボーナスを47点の大盛りでお送りします。
シナリオ、お疲れ様でした。
GMコメント
Re:versionです。(今回書くのは夏あかねです)
特別な企画を出す時だけお邪魔する第5弾です。
以下詳細です。
●任務達成条件
・真面目(?)に面白く(?)トレーニングしましょう。
・パーティーの準備もしましょう
・パーティーも楽しんじゃいましょう!
●成功度について
難易度Easyの経験値・ゴールド獲得は保証されます。
一定のルールの中で参加人数に応じて獲得経験値が増加します。
それとは別に400人を超えた場合、大成功します。(余録です)
まかり間違って800人を超えた場合、更に何か起きます。(想定外です)
尚、プレイング素敵だった場合『全体に』別枠加算される場合があります。
又、称号が付与される場合があります。
●プレイングについて
下記ルールを守り、内容は基本的にお好きにどうぞ。
【ペア・グループ参加】
どなたかとペアで参加する場合は相手の名前とIDを記載してください。できればフルネーム+IDがあるとマッチングがスムーズになります。
『レオン・ドナーツ・バルトロメイ(p3n000002)』くらいまでなら読み取れますが、それ以上略されてしまうと最悪迷子になるのでご注意ください。
三人以上のお楽しみの場合は(できればお名前もあって欲しいですが)【アランズブートキャンプ】みたいなグループ名でもOKとします。これも表記ゆれがあったりすると迷子になりかねないのでくれぐれもご注意くださいませ。
●重要な注意
このシナリオは『夏あかねSD』が執筆担当いたします。
このシナリオで行われるのはスポット的なリプレイ描写となります。
通常のイベントシナリオのような描写密度は基本的にありません。
また全員描写も原則行いません(本当に)
代わりにリソース獲得効率を通常のイベントシナリオの三倍以上としています。
二周年だよ!全員集合!大きな戦いも終わったのでこれを機にトレーニング!
この機会に宜しければ是非ご参加下さいませ。
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