シナリオ詳細
ローレット・トレーニングXIII
オープニング
●六度目の夏
酷暑と言わしめる気候にユリーカ・ユリカはローレットの受付に溶けるように寝そべりながら「うぐうぐ」と呟いた。
「暑いのです~~~~」
「かき氷食べるかい?」
「食べます~~~~~」
伸びたユリーカへとかき氷を差し出すショウは困った顔をして居る。プルーはと言えば、ユリーカに代り高い位置に何かを飾り付けていた。
「あ、ありがとうなのです」
「いいえ?」
振り向いたプルーが美しく微笑む。掲げられた横断幕には『大規模召喚より六度目の夏!』と書いてあった。
――つまり、大規模召喚が行なわれたあの夏から六度目。イレギュラーズを労り思う存分、飲食をしようというお祭りなのである。
「と、言いながらローレットトレーニングとトレーニングも兼ねているのです!
戦士の休息は大事ですが、それもトレーニングの一環だと何かで読んだのです!
レオンは何時も腰が痛いのでずっと休んでいるですが、『俺の本気は待ってろ』とずっと前に言っていたです」
「何時行ってたの?」
「……ボクが13歳くらいの時……」
ショウとプルーは顔を見合わせてから笑った。
2023年も折り返した。そんな暑い夏がやってきたのだ。
年明け頃に、ローレットトレーニングを行なった際には鉄帝を遅う未曾有の事態と大寒波に対して何れだけ対抗できるのかという話まで出て来た。
六つに別たれた道が集結し、寒々しい冬を終らせた時にはすっかりと春めいた気候が北方の地にも流れ込んだのだ。
一息吐いたかと思いきや、冬頃から紅血晶と呼ばれる商品が横行するラサには吸血鬼と名乗った者の姿が見られた。
彼等が刻む烙印がイレギュラーズの体に変化を及ぼしたのは記憶に未だ新しい。狂気の旅人の気配を退けても未だに烙印後遺症を有する者は多く居た。
そして――前人未踏の地であった覇竜領域に踏み入ったのもこの頃だ。春の風を受けながら鬱蒼と茂った木々を掻き分けて辿り着いたのは美しい花の園であった。
竜と人の共存を目指したのだというヘスペリデスでは様々なモンスターだけではない、あの伝説とも呼ばれた竜種と相対したのである。
竜と心を汲み交すのは難しいが、その傍でイレギュラーズは走り抜けた。冠位暴食をも遂に退け――平穏がもたらされたのである。
だが、蠢く冠位傲慢の影は天義に迫っていることだろう。
そうした事項に備え、鍛錬するも良し、しばしの休息を楽しむも良し、だ。
「よぉ、パーティーの準備は?」
「ふふん、招待状もバーンと出したのですよ!」
自慢げなユリーカに「良くやった」とレオンが頭を撫でた。レオン達の名を呼び捨て気さくに話しかけるユリーカは幼少期から彼等と共に在った。
冒険者の母と伝説とも謳われた情報屋の父を喪ってからは兄代わり(父という勿れ!)のレオンに育てて貰ったのだ。
それ故に、妹(娘)の喜ばしい成長にレオンは頭をぽんぽんと撫で遣ったわけだが――
「ボクももう大人なのですよ」
「はいはい」
「あら」
「おや」
ショウとプルーは顔を見合わせた。妹の親離れといった様子だと二人は可笑しくなったのだ。それだけの時が過ぎたとも言える。
ローレットでパーティーをしたいと言ったのはユリーカの発案だった。その為にお土産を用意してはどうかと口にしたのはレオンである。
始めは驚いていたプルーとショウではあったが、彼の心境にも何か変化があったのだろうと直ぐに手配した。
屹度、幻想王国では何時も通り国王陛下がパーティーを開いてくれるだろう。鉄帝国だってライブをしているはずだ。
ラサでもファレンはイレギュラーズに対して随分と気易い。パーティーならば幾らでもしようと準備をも整えてくれるはずである。
海洋はといえばシレンツィオでの海遊びやクルーズが人気だ。竜宮もイレギュラーズのパーティーならばと受け入れてくれている。
ユリーカは練達こそが至高だと言う。冷暖房完備のあの国は、心地良く過ごす事が出来るからだ。
再現性東京は夏らしい気候を保っているためその恩恵を得られないが、夏めいたイベントが盛りだくさんだという。
そして、カムイグラでも相変わらず夏祭りをしているが、ユリーカは霞帝が夏祭りに抜け出して中務卿が大騒ぎしているという情報もキャッチした。双子巫女はそれぞれの道を歩み出した最中だ。
深緑は穏やかな時間が流れているが、妖精郷は相も変わらず「呑むの~~~!! グイグイッ!!」
覇竜はと言えば、フリアノンで何時も通りの日常を過ごそうと努力している様子が垣間見られた。
「何処に行っても大丈夫なのですよ。
なんだってオールオッケーなトレーニングの開幕なのですよ! もし行き先に迷ったらローレットにも来て下さいね!」
「まあ、そういうことで」
レオンが手をひらりと振ればユリーカはにんまりと微笑んだ。
「さあ、何をしますか?! 参考に教えて貰っても!?」
- ローレット・トレーニングXIII完了
- GM名Re:version
- 種別イベント
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年08月18日 22時46分
- 参加人数721/∞人
- 相談10日
- 参加費50RC
参加者 : 721 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(721人)
リプレイ
●ローレットI
「……6年か……随分と……濃密な6年であったな……」
ぽつりと呟いた『騎兵隊一番翼』レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)は過去を想起する。懐かしむほどの年数ではないような気がしても、それでも途方もない時間を過ごしてきたものだとも感じられた。
「……ところで、『ないない』するのは結構だが……ローレット、破産しないだろうな?
いざという時の融資の話なら受け付けているぞ」
「だ、大丈夫……なのですよ!? これでも敏腕天才美少女情報屋、帳簿の中身もゲットなのです!」
信用して良い物かとレイヴンは笑顔を貼り付けているユリーカを凝視していたのであった。
「いえいえ、ないないしたからこそのパーティーですよ! 食べ放題! 飲み放題! いいですね!
なんでもバリバリ食べますよ! あ、いえいえお酒は要らないです」
給仕を行なうカルアに首を振ったのは『こそどろ』エマ(p3p000257)。20歳になるまで酒に憧れていたが飲んでみるとジュースの方が美味しく感じられたのだ。
もっと盛り上がってね、と『いねむりどらごん』カルア・キルシュテン(p3n000040)はのんびりとした口調でそう言った。
「みんなが喜んでくれたら、それでもいい……。
だからコーヒー飲んで、頑張ってお食事会のお手伝い、するね。
大丈夫、まぶたは半開きだけど料理運ぶくらいは問題ない、むしろおまかせ……?」
――少し眠たげだが瞼はまだご挨拶をしていない。とことん皆に付き合ってあげると今日のカルアもやる気は十分なのだ。
「ふふ。休息もまた訓練とも言いますし。パーティにてこの良き日を楽しませて頂きましょう」
のんびりとするカルアと同じように穏やかに過ごすのは『カーマインの抱擁』鶫 四音(p3p000375)であった。
「いや、まあ正直身体の半分が吹き飛んだ時の、こうパンドラ的な?
傷が癒えていませんので、回復に努めないとまじやばなんですよねー。
うふふふふ、死にそうです。私よりもっとやばい方も居るみたいですけど。死に急がれないと言いのですが」
そうやって、傷を癒やす時間も大切だと穏やかに過ごす四音の傍では忙しなく『お料理しましょ』嶺渡・蘇芳(p3p000520)が走り回っている。
「ガッハッハいやぁ酒が旨い旨い、依頼として酒が飲めるのはそうあるもんじゃ……いやそれなりにあるな」
ふと思い直してから『あの子の生きる未来』バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)はなくなった腕をそっとさすった。
「しかしまあ、ファーストデイもといローレットが本格的に始動してから6年か、早いもんだ」
その半分以上は放浪の旅をしていたが、バクルドも様々な事件を目にしてきた。練達から始まった竜騒動も漸く一区切り、だ。
「その前に急拵えでも戦える腕を見繕わねぇとな、それ以前に放浪するにも不便で敵わねえ」
さて、そうした事に関して得意な者は何処に居たか――
「タダ酒振舞ってるって小耳に挟んだ! 酒くれ酒」
酒瓶を何本かひっつかみ、おつまみの皿を手にしてから『悪しき魔女』極楽院 ことほぎ(p3p002087)は「それはオレのだぞ」と声を掛ける。なるべく高そうな品であれば喜ばしい。
「まー輸入品とか、その国に自由に行けるオレらなら行った方が安いんだろうが。タダだしな!」
あれやこれやと口にしたのは交易するなり購入しに行くナリすればローザミスティカへの贈答用にもなる筈だ。
「ローレットが金を出してるみてーだが、こんなトコに品を出すんなら宣伝も兼ねてんだろ?
タダなんだし、まーそれぐらい協力してやるよ。こっちの利益にもなるしな。さて、あの人が気に入りそうなのは――」
案外口が肥えていそうだと美貌の薔薇を思い出してからことほぎはくつくつと笑って見せた。
今回は賑やかな場所で過ごそうと『あなたの世界』八田 悠(p3p000687)はのんびりとローレットのパーティーを眺めて居た。
「友達、と言っていいのかはわからないけど、交流のあった人の顔を二人分も、もう見ることができなくなっちゃったからね。
この機で、できるだけ多くの仲間の顔を目に収めておきたくなったんだ」
時が流れれば、喪われるものもある。それを大切に抱き締めておくだけでは進めないから。
今は、思う存分に楽しむのだ。生きる為に食べて、眠って、騒いで、思う存分に『トレーニング』をしよう。
「ご飯を使った料理もあるみたい……良かった!」
米を好む『稲穂の精霊種』トレット(p3p011272)へ小麦を好んでいる『小麦の精霊種』ロレット(p3p011271)は「パンが沢山だよ!」と嬉しそうに微笑む。
とことことパーティー会場をお散歩している『ふわもこ白猫』ふわもこ しろねこ(p3p011256)は「ここはとてもにぎやかにゃ!」と周囲を見回した。
ごろごろとして、ファミリアーの猫たちと穏やかに過ごす。世界猫の日もきっとこれで幸せいっぱいになるのだ。
のんびりごろごろ、思う存分にその時間を楽しむのである。
「私が召喚されてからもう6年も経つのだね。いやぁ、なんともまぁ早いものだ。
今日はユリーカが折角準備してくれていることだし、私もパーティーを楽しませてもらおうかな」
穏やかな調子で『特異運命座標』ジークフリート(p3p001713)はパーティーに参加していた。『寝落ち』用に昼寝スペースが用意されているのも有り難い。
そもそも、ジークフリート自身も『枕』みたいな存在ではあるのだが、それはそれなのである。
眠る者も居れば食べる者も居る。個性豊かなローレットを眺めて居たピエール(p3p011251)はまだまだ混沌世界の文化には馴染んでいない。豚の頭を持った自分でも、この世界では美味くやって行けそうだとほっと胸を撫で下ろした。
「大規模召喚6周年……と言われましても、カムイグラから来たばかりであると、どうにも」
外の世界には慣れては居ないがこれを気にローレットを識る事が出来ればと先人の知恵に従って『新たな可能性』档 漉礼(p3p011254)はローレットへと訪れていた。
「召喚から数日の身からすれば、どの方も大先輩です。
これまでの依頼や、立ち回りのコツ、初心者にオススメの依頼や、面白いアイテムなど、聞くべき話はいくらでもあります。これを機に少しでも、相手にも顔と名前を覚えて貰えたら嬉しいですね」
そんな漉礼にユリーカは「なんでも聞いて欲しいのですよ」と胸を張った。
「やぁ、わたしはノア。
希望を乗せた船を駆る者──が、名前の元らしいが、ただのオジサンだねぇ。すっかり。
歳を取らない呪いのお陰で、外見は若々しいままなのだが…やはり、精神は劣化するものだ。
既に前線を退いてからは長いが…折角の祝祭ならば、わたしも混ぜて貰っても良いかい?
君達みたいな若人と呑み明かすのも悪くはないものだね」
「勿論なのです」
ユリーカがどうぞどうぞと呼んだのはノア(p3p011267)だった。息抜きも大事だと微笑むノアにユリーカはにんまりと微笑んで――背後の気配に振り返った。
「ユリーカちゃ~~~ん、ファニー達と一緒にペンギン着ぐるみでお祝いしよ~~~〒
あのねぇ、暑くないよう尻尾付近に練達の小型両面扇風機が付いてるよん§
し・か・も、背中に翼を出せる穴もあるよ!」
可愛らしい着ぐるみ姿でやってきた『ハピネスデザイナー』ファニアス(p3p009405)の傍には『永遠の少女』ルミエール・ローズブレイド(p3p002902)の姿もあった。
「以前一緒にツチノコの着ぐるみを着た事を覚えてるかしら?
今日はペンギンの着ぐるみを着ましょう? ファニーちゃんと三人でペンギンになるの♪」
ファニーお手製の着ぐるみで暑くも寒くもない快適なペンギンライフを送れるのだ。
「ちゃんとパーティーを楽しめるよう、手も出せるようにした着ぐるみだからいっぱいお料理食べれるんだから◆
それにしても我ながら可愛く出来たよ♭満足、満足~~♪
みんなで色んなお料理食べたり、遊んだり冒険して、楽しい日々だったよね%」
「ユリーカちゃんは天使だから、どんな姿になっても可愛いわ? だから着てくれるでしょう? ね、ね、ね?」
「ボクは飛べる方の飛行種なのですよ?」
「えっ、嫌なの? こんなに貴女が好きなのに! 私悲しいわ! えーんえーん!」
嘘泣きをするルミエールに見事に騙されたペンギンユリーカは「騙されたのですー!」と叫んだのだった。
覇竜は最近まで閉鎖的だった。それ故に『大規模召喚』とは物語の上の知識だと『不屈の太陽』ジェラルド・ヴォルタ(p3p010356)は言う。
「大召喚ってヤツからもう6年ってんだなぁ……そら先輩特異運命座標も強くなってるワケだ」
「もう6年にもなるのね。そうよね私ももう16歳だもの。少しは大人のレディになれたかしら」
朗らかに笑った『籠の中の雲雀』アルエット(p3n000009)にジェラルドは勿論だと頷いてから「楽しもうぜ」と声を掛けた。
「最近の先輩特異運命座標の動きで脅威に近づいてる感じはあっけど。
……俺はアンタの手伝いをまずしたいと思ってる。
特異運命座標らくねーだろうけどな? 早くアンタが気になる情報が出るといいな」
「私のお手伝い? ジェラルドさんは優しいのね。ありがとうなの!
私もジェラルドさんがピンチの時は駆けつけるわ。だって大切なお友達だもの」
柔らかに笑ったアルエットを前にしてジェラルドは「それから」と珍しくスーツを着用した自身を示す。
「……さて、これは似合ってるのかね?」
「背も高いからすごくすらっとしてて、格好いいお兄さんね!
じゃあ格好いいお兄さんエスコートをお願いします! なんて、ふふ……楽しいね」
彼女が楽しいと笑うだけで、それだけでジェラルドは嬉しいのだ。
『なんとなく全力で』柿沼 亜紗那(p3p011241)は「うわあ凄い人、人、人……」と圧倒されていた。
「その分、その他大勢を決め込めるから気楽に行けそうなものよね。うん、気持ちを切り替えて……!」
「やあこんにちは、ローレットは初めてかな……いや? 俺は何も聞いてないよ」
今の聞いて居たと慌てた亜紗那に『最果てに至る邪眼』刻見 雲雀(p3p010272)は首を振った。
「ともかく。依頼しにきたって感じじゃあなさそうだね。新人さんかな?
タイミングが良い時にきたね、丁度今お祝いパーティをやってるから……あー、でも必要最低限の場所は先に知っといた方がいいよね。先に案内するよ、それからパーティ会場に行こうか」
「ええ、是非とも案内をしてくださると嬉しいな。
そういえば自己紹介がまだだったわ。私は亜紗那、柿沼・亜紗那よ」
自己紹介を終えてからエスコートをしてくれる雲雀に亜紗那は「この声を聴いて引かずに逆に声をかけてきた? これは脈あり!?」と呟いていたのであった。
●ローレットII
ひっそりとパーティー会場を抜け出して抜き足差し足忍び足――
その頬には食事が詰め込まれている。『赤々靴』レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)は「ユリーカひとりのないないだけでは力不足かもしれないし、こうしてローレット資金をないないしに行くのもトレーニングの一環となるであろうっす」と囁いたが……。
その背後に影を感じてびくりと肩を動かした。いやいやまさか、レオンは此処には居ないはずで――
レッドの叫び声が響き渡り瞼を押し上げたのは『黒鉄と座す』リオン=ギアクロム=ステイシス(p3p000526)であった。
「んぐぅ……ないないを張り切ったのは良いかもしれない……が、これ、ユリーカが最終的にお尻とかそこらへんの痛覚がないない、するん、じゃ……」
レオンはお仕置きをしたのだろうか。眠たげにうとうととしているリオンは寝惚けながらもパーティー会場の成り行きを見守って居た。
「うむ。ぱぱにも良い酒を用意しておけば、怒られない、筈……恐らく」
ぽつりと呟いた『金の軌跡』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)。
「……ないないされ続けて早6年だけど金庫が尽きる気配はないのよね。
実はないないされてちょうどいい予算だったりするのかしら。なんてね」
くすりと笑みを浮かべた『剣の麗姫』アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)。ユリーカは「そこは秘密なのです」と胸を張る。
「そう? まあいいわ。さて、私の特訓だけれどハンマーイメージトレーニング。
先月は1度も叩かれていないもの。
お陰で夢でハンマーを受けたり、道を歩いてたら後ろからハンマーされる幻覚に襲われたりしているわ。
この辺りで感覚を取り戻す必要がある……何故なら最終決戦まで時間がない予感があるから」
アンナはローレットの事務机にこれまでの実績を並べてから睨めっこ。仲間の喧噪は程良いBGMなのだ。
「こんなに豪華なパーティ、ありなんですね。さすがローレットです。
二人っきりでご飯を食べるのも好きですけど、たまにはこんなにぎやかにご飯食べるのもいいですね」
にこりと微笑んだ『夜鏡』水月・鏡禍(p3p008354)へと『高貴な責務』ルチア・アフラニア(p3p006865)は「あとで高額請求が来たりしないわよね」と呟いた。
「あはは、大丈夫だと思いますよ。ルチアさんはこっちのおかずは食べましたか?
せっかくなのでちょっとずつ全部持ってきたんですよ。よかったら、はいどーぞ。食べさせてあげますね」
「とても、甘やかされている気がするのだけれども……? あと、こうやって食べさせられ続けると雛鳥みたいで恥ずかしいのだけれども」
気恥ずかしいけれど、と呟いた後はルチアは「貴方にもなにか食べさせてあげるわ――と言っても断るでしょうけど」と揶揄うように眼を細めた。
「ここはお酌でもしてあげるわ。貴方の故郷だと、よくあるのでしょう。お酒も飲める年になったことだし、遠慮せずお飲みなさいな」
「え、僕ですか? 僕は別にいいんですけど……
お酒も飲んでいいらしいですけど飲んだことないんですけど……」
――結果として慣れない酒に酔い潰れる鏡禍なのであった。
領地で過ごすのも楽しい事ではあるが、家族でパーティーに参加も悪くは無い。『物語領の兄慕う少女』コメート・エアツェールング(p3p010936)を連れてローレットにやってきた『物語領の猫好き青年』メテオール・エアツェールング(p3p010934)は自身達を見る人影に「こんにちは」と声を掛けた。
その人影というのは普段は猫の姿をしている『ペット』の『物語領の愛らしい子猫』ミニマール・エアツェールング(p3p010937)である。
「どうしました? 同じテーブルで一緒に食べますか?」
「せっかくですし、一緒に食べましょう! 賑わう方が楽しいですわ!」
共に戦ったと言えどもまだまだ人の姿をとれることは秘密なのだが――
「こうやって一緒に食べるの、憧れてたから」
ルブ妬いたミニマールは自身が『飼い猫』だとばれやしないかと二人を眺めた。
「賑やかで楽しい……ミニマールも連れてくれば良かったかもしれませんね」
「そうですわね、ミニマールも連れてくれば……癒されますわね!」
目の前に居る――けれど、ぎくりとはしてからミニマールは「飼い猫さんいいですにゃあ」と誤魔化すように笑ったのだった。
「パーティー?とやらに参加よ!
さぁ! 食べるわよ! ついでに飲み物も頂いちゃいましょ」
にんまりと微笑んだ『特異運命座標』フェイツイ(p3p010993)。大喰らいの彼は鉄の胃袋で料理を平らげていく。
「誰か飲み比べしましょうよ! さぁて、あたしと勝負する奴はいないかー!?」
『あいの為に』ライ・リューゲ・マンソンジュ(p3p008702)は小さく頷いた。
「はい、今日も神にかんぱーい! ええ、ええ、神もこの美味い酒にテンションぶち上がっていらっしゃいます」
知らんけど。神様の声は聞いたことはないが酒を飲めるのであれば神様だって万々歳だ。高そうなものから胃袋に突っ込み続けるのが勝利の退ける。
「コミャニケーヒョンを通じて鍛へ……」
けれど直ぐにヨパラッタのはご愛敬である。神様だって屹度見守ってくれてるはずだ。知らんけど。
兎束 詩乃舞(p3p009624)はそんなライ達へとウェイターとして飲み物や食べ物を配り歩く。
「まぁいざトレーニングって言われても困るわよね~。そもそも必要な事は常にやってるか必要に時にやれるようにしてるものよ。
つまり今回やるべき事は常にはやってないそして必要ではない……娯楽って訳」
『炎熱百計』猪市 きゐこ(p3p010262)はそう呟いてから「のまのまいえーいよ!」と拳を振り上げた。「私が注いだ酒が飲めぬかーぐいぐいー!」と。きゐこは酒を飲みながら初めて貌を合せたイレギュラーズにも声を掛ける。
折角だからと沢山食べたかった『銀の花の聖女』銀花(p3p010701)はきゐこに山盛りポテトの皿を差し出され「ありがとうございます!」とにんまりと微笑んだ。
「祭りィ!!!! 制覇するっきゃないっしょ!」
『黒き流星』月季(p3p010632)はパーティーの食事を片っ端から食べ歩く。楽しめるときに思う存分に楽しむのだ。
「当機はユーリカ様のご名に従いますので、何なりとお申し付けくださいませ」
戦踏姫 補助23型特 鶴翼(p3p010927)のようにユリーカに意見を求める者も居れば『天翔る』グレイシア・ラ・ヴォルラース(p3p008910)や『民誘う勇猛』オジヴァン・ノクト・パトリアエ(p3p002653)のようにユリーカ達と共に食事を楽しむ者も居る。
壁際で楽しげな様子を眺めて居るのは『屍喰らい』芳野 桜(p3p011041)や『運び手』线(p3p011013)である。
线は皆幸せそうだなあとぼんやりと食事を口にしていた。その輪へと踏込むのは少しだけおっかなかったのだ。
●ローレットIII
(エトはおめかししてくるかな……それも楽しみの一つだな)
『想星紡ぎ』ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)は柔らかな笑みを浮かべる。
その言葉の通りに、慣れないヒールを履いてやってきた『想星紡ぎ』エト・アステリズム(p3p004324)はむくれ面だった。
歩きづらいったらありゃしない。それでも――彼の前なのだ。
「にしても6年か……思えば遠くへ来たもんだ。エトと出逢ったのは召喚されて間もない時期だったか。
星の姫、なんて肩書き、気にならないわけは無かったよな。思えばこれもひとつの運命、だな」
「ずうっとずうっと昔のことなのに、今だってありありと思い出せるよ。
真っ暗な夜の街角で、星あかりみたいに輝いてたウィルくんのこと!
惹かれるのも、こうして結ばれたのも運命だったのかなあ……なんちゃって。えへへ」
運命という言葉に心は躍る。仕事を頑張ってきたウィリアムのことをずっとずっと見てきた。
「でもでも、積もるお話だってあるでしょう? 行ってきてだいじょうぶ!
あ、……でも。女の人と居るのは、だめだよ? ふたりきりなんて特に! わかった?」
「大丈夫だよ」
ウィリアムは余所見なんてしないと揶揄うように笑いかけた。
「6周年。おめでとうございます。
──ですから私も、日輪の従者という二つ名に恥じぬよう、本気でご奉仕をさせて戴きますね」
会場に必要なものあれば直ぐに用意し、直ぐにでも渡すというメイドの嗜みを『日輪の従者』フレデリカ=K=ガーヴェ(p3p010580)は胸にやってきた。
「6周年…皆さんが紡いできてくださった大切な時間……。
わたしもご一緒できて光栄ですわ! さあ、Fantasia songでお祝いしましょう!」
『骸骨姫』フローレンス ポー(p3p010733)はうっとりと微笑んだ。ロードクロサイトの角がきらりと輝いている。
「ろっくしゅうね~~ん! おめっとざーーーーっす!!」
『かけだしのエイリアン』ことはる(p3p010563)は「ろくねんはながいでっすね」と頷いた。呂律が回っていないような気が。
「え? よってないれっすよ? まだぱーりぃははじまったばかりなのでっす!」
「ことはるちゃん? 触手伸ばしすぎたらダメだよ! あっ、すみません! ほら、こっちにしまって!」
慌てる『特異運命座標』ラピード・アンストーム(p3p007741)に振り向いた『陽気な骸骨兵』ヴェルミリオ=スケルトン=ファロ(p3p010147)が「何かが近付いてきてますぞーーーー!?」と叫ぶ。
はりきって『ないない』する前に何かが接近してきているのだ。
「よってないれっすよ~~」
「もう、ことはるちゃん! お酒は飲んでものまれるな! だよ! めっ! メルバさんも笑ってないで手を貸して~」
ラピードが注意をすれば『自称パッショニスタ』メルバ・サジタリウス・サーペンタリウス(p3p007737)は楽しげに笑いかけた。
「スケさん楽しい事になってるね!? あはは!! アタシもー!! いえーーいっ! みんな、パッションかんじてるー?」
ナイスパッションで皆でこの瞬間を思い切り楽しむのだ。
「ローレットでパーティーをするようです。料理も用意されています。その為の資金も提供されています」
『イエスマスター』リンドウ(p3p002222)はこてりと首を傾げた。
「……マスターがそれを知ったお陰で何時もよりやる気になっています」
目の前では潤沢な資金で用意された料理が並んでいるのだ。『死と共に歩く者』辰巳・紫苑(p3p000764)は俄然やる気が十分だ。
「沢山ないないしたらしいけど、もっとないないしたいと思わない? ユリィカァ?」
「はっ、悪魔の誘いなのです!?」
慌てるユリーカに紫苑がにんまりと笑う。所作を気をつけながら食事を食べ続ける。
悪魔の誘いを行なう紫苑の元へとリンドウがそそくさと食事を配り歩いている。料理だけではなくジュースを持って行く。
紫苑のためのあたらなレシピ開拓のためにリンドウも食事を続けて居た――が、テーブルの上はそろそろ空っぽだ。
「これはあくまで助言ですが。資金がまだ残っているなら、追加料理頼んだ方が良いと思います」
「た、大変なのです、あ、あわわわ」
ユリーカを更に焦らせたのは料理をもぐもぐと食べ続ける『不死呪』アオゾラ・フルーフ・エーヴィヒカイト(p3p009438)の存在だ。
『特異運命座標』_(p3p009830)はせっせと飲食物を運んできてくれるが果たして足りるのかどうか――
慌てるユリーカに『特異運命座標』テア・アナスタシス(p3p010620)は「お任せ下さい!」と声を掛けた。
「本日はユーリカ様のためにいっぱいお手伝いいたしますなのです。
ユーリカ様の手足となって働きますので、お片付けから雑事までいろいろとお任せなのです。じゃんじゃんこき使ってくださいなのです」
胸を張ったテアにユリーカがホット胸を撫で下ろした刹那、『純真無垢』メリッサ エンフィールド(p3p010291)の「うわー。今回もすごい豪華なパーティーをやっていますね!」という声が聞こえてきた。
「流石ユリーカさんです、いつもどうやって資金を集めてるんでしょうか?」
ギクッとユリーカの肩が跳ねた。ないないしちゃったのだ。ないない……。
「私ももう新人からは卒業してると思いますが、まだまだ未熟な身です、先輩たちから聞いた話を糧にもっと活躍できるように頑張りますよ!」
「ところで、『ないない』とは……如何なる意味なのだ?」
問うた『光明戦姫』ヴァル・ド・ルクス(p3p010734)にユリーカがぎくりと更に肩を跳ねさせた。
「思う存分に楽しませて貰おうと思ったのだが、ユリーカ嬢のご厚意には『ないない』が付き物なのだろう? ないないとは?」
「え、えーと……」
メリッサは「やっぱりないないですか?」と首を傾げる。
「六周年やっほいローレットトレーニング! ユリーカちゃんのないないやったー! ただの宴会は美味しいね!」
『新米P-Tuber』天雷 紅璃(p3p008467)はにっこりと微笑んだ。「ないない(がんがん)」と『想光を紡ぐ』マグタレーナ・マトカ・マハロヴァ(p3p009452)は呟いた。
「ないないとは?」
「な、ないないとは……えへへ……?」
ユリーカが視線を逸らせて行く。奇を衒わずパーティーを素直に楽しもうと考えて居たマグタレーナに突如襲い来る『ないない』の真実とは――!?
「……本当に大丈夫なのか? また怒られるんじゃねぇのか? まぁ、その、怒られるのは俺じゃねぇみたいだから、知らぬが仏するけどよ……」
『出奔系神子』レンジス・エルロイド(p3p007481)はそっと視線を逸らした。背後からレオンの気配がする気がする――
「レオンさん、行くのだわ?」
「そう、まあね」
ギルドオーナーだからと告げる『蒼剣の秘書』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)の背中を追掛ける。
何時も通りであると言う立場を魅せ付けるためにやってきたのだ。レオンの三歩後ろを歩く秘書は自分のことだと、彼の傍に居る自分をアプローチする。……それから『ないない』の処理だって秘書の重要な仕事なのだ。
ホーリーナイトベルを手にした華蓮に「何か食べる?」と聞いたその人は何時ものように楽しげな笑顔を浮かべていた。
「もう結婚して三年でしたっけ、四年でしたっけ。
ラピスは変わらないところのほうが多いでしょうか?」
そっと『瑠璃の光』ラピス・ディアグレイス(p3p007373)の手を握り締めた『生命の蝶』アイラ・ディアグレイス(p3p006523)を見遣ってからラピスは小さく笑う。
「僕は元々変わらない種族だったから当たり前だけど……それでも、君のお陰で変わりつつある。
それにしてもアイラは本当に綺麗だね。視線を集めちゃわないか心配だけど」
「そうやって、すぐ自慢しようとするところとか! もー!
ボクだって大人のお姉さんになったんですから。ほら、はたちになりましたし?」
「……自慢? そう言う意図も、もしかしたらあるかも。僕の最愛の妻、だからね。
そう言えば二十歳か、お酒も飲める年齢だね。でも飲みすぎちゃ駄目だよ?」
折角のおめでたい日だから。お酒を飲もうと誘ったアイラへとラピスは微笑んだ。しゅわしゅわとしたスパークリングワインは『ワイン』という名前だけでカッコイイ気がして。
「ふふ」
「あっ、笑わないで下さいよ」
それじゃ、これからの二人に――乾杯。
「それにしたって6周年……もうそんなに経ったのねぇ。なんだかあっという間だわ」
『ベルディグリの傍ら』ジルーシャ・グレイ(p3p002246)はくすりと微笑んだ。プルー・ビビットカラー(p3n000004)は「ええ、そうね」と頷く。
乾杯をしてから、此れまでの事を振り返る。オーロラのカーテンに花火、マニキュアを塗って、ドレスを選んで――沢山の思い出を積み重ねてきた。
「肝試しとかね」
「……え? あ、あの時のアタシの姿は……もう、忘れて頂戴な!」
くすくすと笑ったプルーが髪を耳にかければ、贈り物の耳飾りがちらりと見えた。
「……大好きよ、プルーちゃん」
その横顔に見蕩れて、つい呟いた言葉にプルーが眼を瞠った。ああ、突然だったかも知れないけれど。
「何となく、伝えたくなったの。酔っちゃったのかしらね、アタシ」
――目の前には突然の巨大うさぎ。何故うさぎが出て来たのかの細かい部分はさて置いて。
「ジャイアントバニー略してJB――うっ頭が。
ていうかこのうさぎ怖いよ!
なんか血まみれのハンマー持ってるしイヤッハァアアとか奇声あげてるよ!?」
『ノームの愛娘』フラン・ヴィラネル(p3p006816)はその悍ましさに慄いていた。一体全体、この生き物は何なのか。
「JBってなんですか? ジャバウォック?
兎……? 兎狩りがトレーニングになるか疑問ですが、鷹狩が健康に良かったりもするしそういう意味では良いんでしょうか?」
何故か居合わせてしまった『涙と罪を分かつ』夢見 ルル家(p3p000016)は「豊穣ではそういう文化もありましたし、拙者もね、まあ、何かしなきゃね」という簡単なテンションでやってきたが――
「イヤッハァアアアアアアア!!!!!!!」
血まみれのハンマーを振り下ろすJB! 恐怖の象徴!
「なんかこれ前にも見たことある気がするわー!?
兎狩りって兎を狩るんじゃなくて兎に狩られる方なのね!?」
『黒靴のバレリーヌ』ヴィリス(p3p009671)はその時ばかりは大袈裟なほどに声を上げた。此処で大人しくしていると狩られてしまうのだ。
「なんか前にもこんなことあったような気が……。
いえ、これほど巨大で恐ろしそうな動物に遭遇したのはとらぁくんだけですし気のせいでしょうか。
とりあえず、他にも挑む方がいるみたいですしいい感じにぶつかってあとは流れで誰かを生け贄にして乗り切りましょう」
作戦内容:他人を生け贄にしよう。
『明けの明星』小金井・正純(p3p008000)はぶつぶつと呟いてからそっと『慈悪の天秤』コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)の背を押した。「え?」とコルネリアは呟き振り返る。
「っ、なにがジャイアントバニーだ!
いまさら野獣ごときに負けることなんてあるはずないでしょ!!
何も怖がるこたぁない、かかってきやがれ!」
「ウワァーーーーーーララララララララルゥゥ」
「こわい!!!!!!!!!!
叫びながら血まみれハンマー持って追いかけてくるのこわい!!!!!!
ちょっとタイム、アンタなんとかしなさいよ。なんか似てるし」
思わずコルネリアは仰け反った。JBのテンションはMAXだ。恐怖のうさぎが手をぐるぐるとさせながらハンマーを握り追掛けてくる。
「違うますあれは知らないウサギです。わたしタイムとは何の関係もありません。
だって!
この”天真爛漫””質実堅実””八面玲瓏”と名高いわたしと、動くもの全てを破壊するあのウサギが似てるなんてウソでしょ!?
”可愛い”しか共通点ないじゃん!!!」
「えっタイムちゃんこれが可愛いって正気?」
「えっ あれ かわ かわいいよね……?」
フランと『この手を貴女に』タイム(p3p007854)の中で見解が分れてしまったか。
「またやべぇウサギが出てきたな……これってタイムちゃん絡みのやつだっけ?
えっ? 何?
”天魔覆滅””筋骨隆々””八紘一宇”? 確かにその四文字熟語的には名高さを感じるぜ……」
「ちーがーいーまーすー」
「イヤッハアアアアアア」
ぐりんと振り返ったのはタイムとJB。その両方が『Go To HeLL!』伊達 千尋(p3p007569)を標的に定める。
「ウワーッ! ごめん冗談だって!
なんでウサギ側にいるんすかタイムちゃん! いやタイムさん!
アッ、そうだ! 有事の際に使うシェルターがどこかに……あった!
すまねぇコルネリア。このシェルターはコルネリア禁止なんだ」
「ああーー!? なんだか思ったよりバリバリの殺意を纏ってるやばい生物ですね!
つまらない奴や無礼者を容赦なく殺す! そういう意気を感じます! コ、コルネリア殿――!?」
正純の盾、千尋との『導線』上に居たが為にあえなく轢き殺される!
「いやー! コルネリアはもうやられてるし全員自分だけ助かろうと必死過ぎて怖いのよー!
とはいえ逃げ足にも自信があるわ。だって私はプリマだもの。自前の足ではないのだけれどね!」
自虐していたら「ハァ?」と言いながら駆け寄ってくるJB。
「ぎょわー!? 来た―――ってあれ……? 『わかってるオマエはこちら側だ』みたいな顔しないでよ!」
タイムが何故か寝返ってフランは「もうJBなんてこりごりだよー!」と叫んだのであった。
●幻想I
『Star[K]night』ファニー(p3p010255)の治める領地ステラリウムは美しい星空を見ることが出来る。
その地で、『レインボウママ』プエリーリス(p3p010932)と共にのんびりとした時間を過ごすのだ。
領地の管理も重要な仕事だ。ソニア・ウィーピング・ウィロー(p3p009677)は湖の畔の領地の管理を続けて居る。
『白き寓話』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)にとっては大規模召喚はそれほど特別な一日ではない。
皆が楽しげに声を弾ませるならばヴァイスは庭園の手入れをし普段通りのことをしながら英気を養いたいと考えた。
(戦わなくて済むならその方がいいのでしょうけれどね……)
自宅で休養――もとい、睡眠トレーニングに勤しむのは『『幻狼』灰色狼』ジェイク・夜乃(p3p001103)である。
休めるときに確り休むのもプロの仕事。昨日までは生きるか死ぬかの綱渡りをしてきたのだ。この状態で体を酷使してしまえば本当に死が近い。
「だから、俺は別にサボっているわけじゃない。だいたい現代人は働きすぎなんだよ、まあ、俺も含めてな。
いわばこれは休むことに慣れていないこの俺が、必要な休息を取るためのトレーニングだ……とか言っているうちに眠くなってきたぜ」
そのままジェイクはうとうとと夢の中へ誘われていくのであった。
自宅でのんびりと過ごしているのは『雨宿りの雨宮利香』リカ・サキュバス(p3p001254)。と、言っても自宅とは『雨宿り』であり、長期宿泊者以外を受け入れないと言っただけなのだが。
「駄弁るだけの何もしない日ってのもいいわね……怠惰ぶちのめした手前怠惰に浸るのって罪悪感すごいけどね……」
「御主人様、お疲れ様です」
『グリーンスライムサキュバス』ライム マスカット(p3p005059)は膝にごろりと転がったリカににんまりと笑った。
「あースライム膝枕最高……あんたそれで精気集めてきなさいよ……」
「他の人に? 絶対嫌ですよ、精気吸うくらいなら全身ごと食べちゃうのが私じゃないですか。
この身体は御主人様ファッションです。私そこだけはゆずりません!」
「……ねえ、これからきっともっと戦いは激しくなるわよね……これからも生きてられるかしら……」
「……はい、はい、御主人様は大丈夫ですよ。二回も御主人様を失うのだけは耐えられません」
呟いたライムに「その目、怖いわよ」とリカは揶揄うように笑った。ああ、だって、死ぬ気なんてないのだもの。
「ショウ、時間作ってくれてうれしいにゃ!」
パーティーから抜け出して二人で幻想の街を散歩する。『少年猫又』杜里 ちぐさ(p3p010035)のオーダーに『黒猫の』ショウ(p3n000005)は「まあ、パーティーも疲れるしね」と笑った。
「あっちのカフェに行くにゃ。ショウが気に入りそうなちょっとお洒落な場所にゃ」
「へえ、楽しみだな」
冷たい飲み物を飲んで通りを見ながらのんびりと話す、その時間がちぐさにとっては何よりも幸せなのだ。
「今でも世界中で色んなことが起きてるのに、平和な感じにゃ。幻想にはローレット本部があるからかにゃ?」
ショウは「どうだろうね」と囁いた。いつか、何かが起こる可能性はある。
ちぐさはそんなショウの言葉に、不安を漠然と抱いてから「ぎゅってしてもいいかにゃ」とか細い声で囁いた。
「おいで」と彼が言うだけで安心できるのだ。
今日も屹度仕事に追われているんだろうなとローレットをこっそりと覗き込んだ『暖かな記憶』ハリエット(p3p009025)はやっぱりと世話しなさそうなギルオス・ホリス(p3n000016)に声を掛けた。
「パーティー会場の近くに行ったら出店がたくさん出てたから、あれこれ買ってきたんだ。休憩がてら食事にしない?」
「わぁ色々買ってきてくれたのかい? すまないねありがとう――」
今日はトレーニングの日だったかと頷いてからギルオスは肩を竦めた。
休憩しながらもハリエットはギルオスが手にしていた資料をまじまじと眺める。
「ざっと資料を見てみたんだけど、これとこれは私、纏めることができるよ。食べたら一緒に片付けちゃおう」
「……ははは、初めて会った時は僕が奢る側だったのに、今度は逆転しちゃったね。
……ハリエットとも出会って随分経つなぁ。彼女の成長は目を見張るばかりだ。
ハリエットが情報屋として一人前になる日もきっと遠くないだろうね」
ギルオスが眼を細めて微笑めば、ハリエットは目尻を赤くして「ギルオスさんのお陰だよ」と呟いた。
読み書きも覚束なかった自分が、こうやって情報屋のように働いている。それが何処までも不思議なのだ。
「いつか隣で仕事をしてくれるかな」
「……うん」
私も変わったな、とぽつりと呟いた。何時か、彼の隣を走り抜ける日が楽しみで仕方が無かった。
そうやって穏やかに過ごすのも良い。例えば、『ふわもこーず』ふわもこ すこてぃ(p3p011273)や『ふわもこーず』ふわもこ らぐどーる(p3p011274)は寝心地の良さそうな草原を探していた。
ヴィーグリーズの丘で『ふわもこーず』ふわもこ はーと(p3p011275)と『ふわもこーず』ふわもこ すぺーど(p3p011276)は程良く「ぬくぬく」で「すずしい」場所を見付ける。
『ふわもこーず』ふわもこ ぺるしゃ(p3p011281)がくあと小さく欠伸を漏せば『ふわもこーず』ふわもこ だいや(p3p011277)は尾を揺らがせた。
「ここの猫になるにゃー」
「ここってどこにゃ?」
ぱちくりと瞬いた『ふわもこーず』ふわもこ くろーばー(p3p011278)に『ふわもこーず』ふわもこ しゃむ(p3p011279)は「ヴィーグリーズってところにゃ-」と応える。
おだんごのように集まる『ふわもこーず』ふわもこ ひまらやん(p3p011280)と『ふわもこーず』ふわもこ べんがる(p3p011282)はうとうとと眠りについて。
「こんな素敵な世界に召喚されて、ふわもこーずは幸せにゃ……」
『ふわもこーず・とっぷ』ふわもこ ねこのひ(p3p011283)はぽつりと呟くのであった。
「楽しそうな所だね~♪」
幻想エール醸造所ガイドを手にしていた『サキュバスライム?』ネクタル・S・ライム(p3p006674)はうきうき気分で見て回る。
自身が飲むわけではない。手土産に丁度良いとショウの手帳でモルト蒸留所の情報を確認していたのだ。
「うんうん、綺麗な水を使っているから、美味しいお酒が出来るんだね~」
――あ、勿論領収書はローレットで。
「この時期になるとそろそろカジノでも冷房をかけるはずなんだけど結構渋るから困るのよね、たまには行かなきゃ。
あら、カジノから出てきたあのお客さん……みょーにバテてるわね。まさか……」
『Joker』城火 綾花(p3p007140)は勢い良くカジノに飛び込んだ。むわっとした空気が室内から漂ってくる。
「どうしたの! まさかまだ渋ってたのかしら!? はぁー案の定……あーもうダメよ。
あたし達は衣装の関係上少しは涼しいからって、お客様はそうじゃないのよ。
それに、こういうのを我慢した所でロクな事がないのよ。大事なのはお客様第一! 分かったかしらみんな。
あたしも手伝うから冷房早くつけて、室内の温度が下がるまでカジノも少しだけクローズに!」
手伝うはずが、暫くは営業停止のようだ。
●幻想II
「ここも猫が色々いるのにゃ。日差しがあったかい場所があるならお昼寝したいにゃ」
王都メフ・メフィートを散歩中の『ふわもこ黒猫』ふわもこ くろねこ(p3p011257)は猫を見ると幸せになるだろうと考えて居た。けれど、くろねこは『黒いから不吉』と言われてしまう事だってある。
「……それでも、猫は人を癒やすのにゃ」
混沌世界の猫も人も、皆皆幸せになって欲しいとそう願った。
「トレーニングって名目でドンチャンするのも13回目……13回目?
随分と回数重ねてたな……五年の月日は伊達じゃない訳か。ま、いつも通り自由にさせて貰うか」
そう呟いてから久々に暇潰し用の本が尽きたのだと古書店廻りを楽しんで居るのは『黒鎖の傭兵』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)である。
それなりに旧い歴史書が見つかれば御の字ではあるが、最近の情勢を見れば得るものは少ないだろうか。だが、諦めずに見て回れば何か愉快な本が見つかるかも知れない。
全ての喧噪から離れてのんびりと自宅で過ごしていた『盲御前』白薊 小夜(p3p006668)はふうと息を吐く。
(……何故かしら。最近、ふと昔のことを思い出してしまうわ。
囚われていた幼かった弟を、何も出来ないまま置いて行ってしまった遠い昔の心残りを)
それが何故なのかはまだ、分からないけれど――
ここしばらくは向かう事が出来ていなかったと『白銀の戦乙女』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)は両親の墓へと足を運んだ。
『下姉様』曰く、豊穣にはお彼岸という文化があるらしい。ならば、この時に顔を見せるべきだとシフォリィも考えたのだ。向かえばいくつかの花が供えられている、一つ、二つ、……四つ。
「お兄様達……?」
そっと覗き込めば花の一つに『時期が来たらシフォリィが片付ける』と記載されていた。
「……やはり血は争えませんね」
ふ、と笑みを浮かべてからシフォリィは膝を付いて眼を伏せて、祈りを捧げた。
(……お父様、お母様。貴方達は私が生まれるずっと前にこんな素晴らしい世界を知っていた事羨ましく思います。
まだこの世界は平和には遠いですけれど。私達は、貴方達が敷いた平和への道を、掴んでみせます)
でぇとの邪魔も何だから、と。『愛を知らぬ者』恋屍・愛無(p3p007296)は独りエルレサの墓にやってきた。
「お盆というのはあの世とこの世が交わって死者が帰ってくる日らしいが。
君も戻ってくるのだろうか。それなら花の一つも備えておかねば、それこそ無粋というモノだろう。れでぃーのえすこーとは確りこなさなければな」
エルレサは父親と一緒なのだろうか。実験にしろ既に死んでいそうだから被験者にはこまらんだろうと小さく笑う。
「……しかし、あの世というのはどんな所なのだろうな。まぁ、エルレサ君が帰ってきたら聞いてみたらいいか。
ついでに足りない物があったら聞いておこう。今度、墓に備えておけるように」
もしも、彼女に会えたならば何と云おうかとふと考えたのだ。
「6年……そうか、もう6年か……時が経つのは、早いもんだな」
新生・砂蠍の一件からは五年近くの時が経過するのだと『真打』紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)は思い浮かべてから自身の心の整理のためにも墓へとやってきた。
多くの仲間達が散っていったのだと改めて胸に抱く。
「混沌に呼ばれて6年。初めての死者が出て5年……もう、そんな時期なのか。
5人の冠位を討ち果たし、竜殺しまで成し遂げ、ついには終焉へと手が届きそうなほどにまで戦ってきた
……全ての決戦の時は、近い。……空の彼方で見ているか、奏。オレたちは遂にここまで来たぞ」
●幻想III
アーベントロート邸へと訪れていた『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)は主である『暗殺令嬢』リーゼロッテ・アーベントロート(p3n000039)の手をそっと取った。
「アーベントロート派筆頭のイレギュラーズが、かのメテオスラークを討ち果たして帰還したんです。このくらいのご褒美はあっても良いではないですか」
「あら、欲しがりではなくって?」
揶揄う声音に。膝枕を求める寛治はそうでしょうかと素知らぬふりをした。
「メテオスラークといえば、過去に彼と戦った『暴風』の話をご存知ですか?」
彼はメテオスラークとの戦いで空に命を散らし、想い人を地上に残す事になったのだとか。
昔話を聞いていた寛治は眼鏡を外し、前髪を下ろしてからそと彼女の頬に触れる。
「俺は、そうはならなかったよ、リズ」
泣いて喜んでくれとまでは言わないが、少し位――そう囁けばその薔薇は小さく笑った。
『レジーナ・カームバンクル』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)は「お嬢様」とリーゼロッテへと声を掛けた。
「お嬢様は……またお義父様(パウル)に会える、と聞きましたらどうしますか? 会いたいと思いますか?」
ぴくり、とリーゼロッテの指先が動いた。彼女が何かを答える前にレジーナは首を振る。
「いえ、愚問でしたね。あの時、この手でトドメを我(わたし)は刺しました。
その感触は今でも残っています。その我(わたし)がこんな事を言うのは……忘れてください。お嬢様の気分を害するつもりは無かったですので」
リーゼロッテの紅色の眸がまじまじとレジーナを見ている。その鮮やかな薔薇色の眸を見詰めてからレジーナは囁いた。
「兎にも角にも、如何なる事になろうとも、我(わたし)はお嬢様の味方であり続けます。
それは決して忘れないでくださいね。
我(わたし)は本気ですよ? この身が砕けちろうとも、この意志は常にお嬢様と共にありますからね」
「このくにの偉い人がパーティーするって聞いたニャ!
にゃら芳も行かないとニャ~。猫ってのはえらい人にモフモフされちゃうもんだニャ!」
『(自称)ぬくもりの精霊種』芳(p3p010860)はてこてこと王城へとやってきた。テーブルに載って暴れたりなんてことはないマナーを十分に理解した偉い猫ちゃんなのだ。
それでもバルコニーで腹ごなしをしているとついつい眠ってしまうのも、やっぱり猫ちゃんなのである。
フォルデルマン三世のパーティーに出席した『淑女』ナディア・ランベアト(p3p007383)は貴族社会の見学だと胸を高鳴らせる。
「わぁ、やはり華やかです! 幻想も聞いた話によると色々あるとの事ですが、全部嘘みたいですね。
華やかだからこそ、闇があるのかもしれませんが。今はこのパーティを楽しみましょう」
混沌世界に召喚されたことでデビュタントはまだのナディア。もしも、その日が来たならば斯うした場の主人公になるのだ。何事も勉強と経験だ。
「フォルデルマン三世……今日も元気で陽気だよなあ」
「マ、あいつが曇るとしたラ……余程の何かがあった時ぐらいじゃネ?」
揶揄うような言葉を重ねた『彼岸と此岸の魔術師』赤羽・大地(p3p004151)――大地と赤羽。
「これ、ずっと大事にうちに飾ってあるんですよ」
「そうダ、フォルデルマン三世殿。折角なら2023年版のサインもくれヨ」
「おい赤羽! 不遜が過ぎるだろ!!」
意気揚々と色紙を欲するフォルデルマンに「陛下、まだご挨拶回りがありますでしょう」と花の騎士が叱るような声を出す。
怒るシャルロッテに『魔法騎士』セララ(p3p000273)はくすくすと笑った。
「何時も通りだね、フォルデルマン」
「ああ、セララか」
何時も通りの気易さでフォルデルマンは振り返った。
「最近は何してるの? ちゃんと勉強してる?
パーティも良いけど、そればっかりじゃ駄目なんだからねっ」
「勿論だ。それなりに――そう、それなりに!」
「……じゃあ、シャルロッテとの関係はどう?
ちゃんとシャルロッテにもかまってあげないとだよ。二人でおでかけするとかね」
フォルデルマンはきょとんとした後、「叱られる前に誘ってみるべきかな?」と囁いた。
セララは「それじゃあだめだよ」と肩を竦めて笑ったのだった。
●鉄帝I
「わたくしがこの世界に来て初めて『誰かの為に何かをしたい』と思ったのもここ鉄帝でしたわね。
さて、物思いに耽っていましたがそろそろ暑さでどうにかなりそうですわ~!!
元からどうかしてるとかいうのは置いといて!!! そこの貴女なんとかしてくださいな!!!」
ぐりんと振り向いたのは『自称・豪農お嬢様』フロラ・イーリス・ハスクヴァーナ(p3p010730)であった。
「ボクの半身である鎌を人質(?)に取られてるからついてくるしかなかったけど、この人間にしては珍しくセンチな顔になってるな……いや暑さで5秒も持たなかった。流石に忍耐力無さすぎでしょ……いやなんとかしてくれって言われてもさあ……」
ぐったりとして応えたのは『落ちどころの悪い隕石』メテオリット(p3p011268)である。
1分後には気を失いそうなフローラに取りあえずメテオリットはその間にとんずらしようかな、とぼやいたのであった。
「……なんだかんだ、ここでの争いが、イレギュラーズとしてのあたしの始まりなわけで。
暇になるとここに戻ってきてしまいますねえ。ん、からあげおいし。いい血はいいおにくから」
からあげをもぐもぐと食べ続ける『瀉血する灼血の魔女』ルトヴィリア・シュルフツ(p3p010843)の元へと駆け寄ってから『鳴動する幼大山』弥多々良 つづら(p3p010846)は「こら! ダメ魔女め!」と指差した。
「復興の修繕確認をして居るかと思えば……何皿食べとるんだお前は!? おさらのたわぁが出来とるではないか!?」
「……小鬼、騒ぎ立てるのはいいですが。
程々にしておきなさいね?自分の服装理解しなさいね? いやほんとに」
もごもごと食べ続けるルトヴィリアにつづらは「さあ、移動するぞダメ魔女め! 血湧き肉躍るころっせおの熱量には、人を勇気づける熱さがあるのだからな!」とさらりとスルーしてからずりずりとその体を引き摺っていったのであった。
「随分と荒れ果ててしまったが、元より厳しい環境。
この屈強なる肉体と鋼の精神を以てして……必ずこの国は復興の時を迎えるであろう。余も故郷の復興に尽力する心算である!!!」
随分荒れてしまったが、これからだとアンゼル・アウグスト(p3p007412)は決意する。
『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合華(p3p011239)がやってきたのは『美少女道場建設地』などの近くにあるヴィーザルの領地群だ。
「私は美少女という種族ですけれど、資料を整理して作業の工程表を作ったり地味な作業の方が得意なんですよ
……というと、こちら(混沌)の方には奇妙に聞こえるようですね」
美少女という種族でありながら百合華は『姉妹』とはやや違った性質を有している。
(あの難民たちが全て家に帰えれたら……
このヴィーザルの地に安らかな時が流れるようになったのなら……貴女は喜んでくれるかしら?)
そんなことを思いながら簡単なマニュアルを作り小さく息を吐き出した。
久方振りに訪れたギア・バジリカでは復興作業が行なわれている。『双影の魔法(砲)戦士』マリオン・エイム(p3p010866)は「何か手伝えることはあるかな?」と問うた。
「人民軍はあれから、どうなったんだろうね? やっぱり冬が過ぎたら皆、元の場所へと帰って行ったのかな?
農家の人なら、荒れた畑の手入れとかしないとだし仕方ないのかな。
それでもアミナ達が積み上げた、革命の意思は民衆に浸透してるよね。……浸透してるのかな?」
元通りの生活を取り戻すために。皆が皆、手を取り合っているはずだ。探せばアミナの姿を見付けることも出来るだろうか。
寒々しい冬であってもこれからが幸せであることだけを只、願うのだ。
「何? 雰囲気が変わった?」
『死神の足音』ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)は革命派に所属していた男に声を掛けられて振り向いた。
あれから数ヶ月経って『後光の乙女』と呼ばれていた娘は、随分と姿が変化したものだ。
「気づいただけだ。やるべき事を為すためにな。後光の乙女はもう死んだ。ここにいるのは、ただの革命支持者だ。
そうさ。俺は革命を為すために未だ存在している亡霊だ。
この国が直り次第、理想を果たさねば。……全てを強くしなければ。俺たちは、弱者は存在してはならない」
この世界を強くするために――ブランシュは静かにその決意を語った。
「アーカーシュ? ってところが過ごしやすそうにゃー!」
『ふわもこ三毛猫』ふわもこ みけねこ(p3p011258)は自然豊かな浮島にやってきた。
面白いところだと感じたのは、知らない生き物や愉快な草花が存在して居るからだ。
とことこと散歩をしながら良いお昼寝スポットを探し求める。
「仲良しの猫と一緒にのんびりしたりお昼寝するの、好きなのにゃ」
だからこそ、のんびりとした時間を探すのだ。
●鉄帝II
「うどーん、うどーん、うどんはいらんかねー」
『うどん100杯頼みます』御子神・天狐(p3p009798)は鉄帝でうどんを売り歩いていた。
復興は力仕事だ。ならば、力うどん! そう、それを売り捌いて『美味しく復興』である。
「戦乱の集結からおよそ半年。まだまだ復興の必要な所もあるじゃろう。
フローズヴィトニルが去ったとはいえ、この国の冬は厳しい。
冬が来る前にやらんといかんことは、山程あるじゃろうよ」
元より北側に位置するこの国は、様々な資源が乏しい。故に、『鋼鉄の谷の』ゲンリー(p3p001310)は青青とした草木の茂る季節の内に家の普請、暖炉や暖房器具の整備、除雪用具の備えを行なおうと考えたのだ。
「ワシはドワーフじゃからな。斧で敵を叩き切るのも仕事じゃが、こういった職人作業もまたワシらの仕事じゃ。
蒸気機関とやらも、現物があるなら構造から原理を推察して修理するくらいならできるじゃろう」
復興作業に勤しんでいる『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)も同じように冬支度を『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)と共に行って居た。
「少しでも早く、より豊かに復興して皆の元の暮らしを取り戻し、飢えを少しでも減らしたいね!」
「ええ! マリィ、申し訳ないのだけれど、この箱の向こう側を持って頂いてもよろしくて?
行きますわよ、せーーのっ!」
「まかせて! こっち側でいいのかな? オッケーだよ!
左手だけでしか持てないから安定性に気を付けて! いっせーのーで! むん!」
箱を共に運びながらヴァレーリヤは「漸く一段落ですわね」と微笑んだ。
「ちょっと疲れましたわね。そろそろお昼にしませんこと?
今日のサンドウィッチは、いつもとちょっと具材が違いますの。食べたらきっとビックリしますわよ!」
「少し疲れたけどまだまだ元気さ! でもお昼はいいかも! お腹空いちゃった!
へぇ! それは楽しみ! と言っても君の料理が美味しくなかったことなんて一度たりともないけれどね!
でも君がそう言うならきっとびっくりしちゃうんだろうな!」
にんまりと笑ったマリアにヴァレーリヤは「ギアバジリカを綺麗に見られる場所に案内しますわね」と『左手』を引いた。
祝祭の気配を感じながらも『61分目の針』ルブラット・メルクライン(p3p009557)は医師の仕事を全うしていた。
何時も通りではあるが、パーティーを楽しむ気分にならないのだから仕方が無いのだ。
(……わざわざ考えたこともなかったが、私は案外『医師』という職業が、好き、なのかもしれないな。
初めての患者に感謝を述べられて、もう十年近く経つのか。
瀉血を愛しているのは一週間も経たず自覚したのに、ずいぶん時間が掛かったものだ)
それでは何時も通りに『復興の手伝い』に向かい、沢山血を抜こうではないか。
「オディール、こっちよ」
『優しき水竜を想う』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)は冬の鉄帝で出会ったオディールとももう半年一緒に居るのだと気付いてから「時間が経つのって早いわよねぇ」と微笑んだ。
「もう半年したらオディールと出会って一年になるのだから、今からもうハッピーバースデーの準備とか考えておかないとね。……せっかくならフロースヴィトニルの眠るあの土地で」
――ウォンブラングの地に『山吹の孫娘』ンクルス・クー(p3p007660)は絶っていた。
おばあちゃんと呼ぶブリギットの封印や村を綺麗にしておきたいと掃除をするために訪れたのだ。
小綺麗な様子なのは、もしかすると誰かが掃除に訪れているのかも知れない。
「おばあちゃん、聞いて欲しいんだ。今までのことだけど……そうだなぁ……冠位暴食を皆が倒した話をしようかな。
……冠位ですら完璧ではないけど呼び声に抗えた。冠位自体も数が減ってる。
きっとおばあちゃんともすぐに会えるよ。私頑張るね」
いつかおばあちゃんと呼んで抱き締めて貰う未来の為に、ンクルスは行ってきますとその場を後にして。
銀の森へと戻ってきた『ウォーシャーク』リック・ウィッド(p3p007033)は『氷の女王』エリス・マスカレイド(p3n000293)の姿を見付けてから「エリスさま!」と呼んだ。
「フローズヴィトニルの事件が本格化したのって前のローレット・トレーニングの直後だっけか。
エリス様の驚くべき出自が明かされてビックリしたな……」
「驚かされましたね」
「でもよ、大変だったフローズヴィトニルは解決できたし、最近の覇竜だって……少なくともベルゼーの心は救えたと信じるぜ」
色んな事があったのだと、告げてからエリスに断ってから森の精霊達を『指示する』練習をする。そすうして感覚を鍛え上げるのだ。
――ずっと、ずっと、遠くを眺めた。
『トリック・アンド・トリート!』マリカ・ハウ(p3p009233)は忌まわしき深緑をその遠い地より眺めた。
ふとマリカは我に返ってからどうして深緑を憎むのか、いつから幻想種を疎むようになったのかと思いやった。
それでも、考えたところで意味は無かった。答えはどうせ忘却の彼方だ。
狂っちゃおうにハロウィンに勤しみ、『お友達』を作りたがるのかは分かって居る。そうしなくては孤独と不安で押しつぶされてしまうからだ。
こんなに胸が苦しいのも、独り黄昏れていたからに違いない。
何かに胸を焦がすくらいなら、別の何かに縋って苦しみから逃れたい。
――今日もハロウィン、明日もハロウィン。トリックとトリートが自分を癒せる唯一の薬なのだから。
●鉄帝III
「さて、何をするかな。復興最中だし、うちの領地は放置気味だし。
そろそろ副官に怒られそうだ、けど……様子は見に来なくていい、って怒られたんだったか。
お飾りというのも大変だな。自分で言っていてアレだが」
ぶつぶつと呟いていた『蒼き燕』夜式・十七号(p3p008363)は思いついた。
「……ラド・バウでも見に行こうか。出し物の手伝いをするのもいいし、なによりこれでもB級の端くれ。多少は興行に貢献するのもいいか。一戦誰かと仕合って、それから考えてみるとしよう。トレーニングは……労働、ということでな」
同じようにラド・バウに向かおうと考えたのは『毒亜竜脅し』カナメ(p3p007960)だった。
「うー……つい最近豊穣で辛い思いしたばっかりに、頭がもやもやするー……。
そんな時は何も考えずに楽しい事を考えるに限るね♪ 今日はラド・バウでとにかく! 色んな人と戦いまくるよ!」
カナメが得意にするのは痛みを受け止めることだ。ヘトヘトに疲れて、嫌なことを忘れる程に新しい痛みを刻みつけて貰う為にといざ出発。
そんなラド・バウではチャリティーバトルが繰り広げられている。
試合を行なう事で売上金を鉄帝国復興へと充てるという提案をした『覇竜相撲闘士』オラン・ジェット(p3p009057)は「こういうのが鉄帝らしくていいだろ?」と笑った。
「バトルも出来て一石二鳥、いや三鳥か? 俺頭いい!」
ラド・バウ派として活動してきたオランは久方振りのラド・バウの空気をすうと吸い込んだ。戦った後は勿論パルスのライブを見ることが出来る。
「戦うばかりが能の自分でも復興の一助になれるのです、やれる事を全力でやりましょう。
闘士を含む方々との戦いを披露し、それに伴う売り上げを寄付するとの事。
イレギュラーズが頼りになると示す必要もあります。手は抜けません」
大きく頷いたのは『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)だ。大きな事故がないように殺さないことを徹底してのバトルになるだろう。
何時もよりも多くの寄付を募るために盛り上げることが肝要だ。敵を倒す、ではなく魅せ付ける戦いを意識せねばならない。
「ふっふっふ……CT100超えなこの絶対行動の名を欲しいままにする私の目がある場所でバトルを開くなど、無謀な事をしましたねぇ!
さぁ、実力の差に後悔するがごぼぉおおおおおおお゛ッ!!?」
『消費期限10秒系女子高生』出オチちゃん(p3p010131)は叫んだ。ひよわなボディを有する出オチちゃんこと『佐々木あいな』は現れた瞬間に地へと横たわった。
そんな様子をビール片手に眺めて居たのは『竜拳』郷田 貴道(p3p000401)だ。
「……チッ、やっぱりダメだな、性に合わねえや。ここんところ無茶が多かったから、自重しようとも思ったが……つまらねえや。オイ、ミーも混ぜやがれ! HAHAHA!!」
勢い良く、飛び込み参戦をする貴道も楽しみだというように唇を吊り上げた。
「はぁん、ジェットくんってばおもしろいこと考えるじゃん。ここはいっちょあたしも便乗して盛り上げていくか!」
『蛮族令嬢』長谷部 朋子(p3p008321)はにいと唇を吊り上げた。界隈のコネクションもある。プロデュースのツテも準備済だ。
「えー、派遣会社ルンペルシュティルツ!派遣会社ルンペルシュティルツでございます!!
弊社の宣伝も兼ねてラド・バウで派手に暴れてくるぜ。もちろん、チャリティの寄付もさせて頂こうと!」
先の戦争では少しでも名は売れただろうが、『派遣会社ルンペルシュティルツ』のスタッフは傭兵でも殺し屋でもない。
斯うした機会にコツコツと知名度を上げていかねばならないのだと『社長!』キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)は見応え重視で戦う事に決めて居た。
呼び出された邪妖精達は「報酬は?」「またツケ払い?」と聞いてくるが、その辺りは一旦スルーだ。
「私立鹿王絶滅学園ー!第58代応援団長ー! 剛情寺隼人ー!!
初依頼かつ、殴り合う事をしない為、この復興バトルを全力で応援させていただきます!!
そーれ壱、弍、参!! これがこの国の復興となる事をーー!! 誠に願う次第でありまーす!!
頑張れーー!! 頑張れーー!! 鉄帝!!」
応援団長として声を張り上げる『特異運命座標』剛情寺 隼人(p3p011284)にオランが手を振った。
(俺は戦うしか脳が無いからな……こういう場が相応しいだろう)
『切り裂きジル』ジルベール(p3p010473)は相手がイレギュラーズならば本気でやっても大丈夫だという安心感を胸にアリーナへと降りた。
時間が掛かる決め技を放つならばその間にも相手の出方を瞬時に理解することが必須技能だ。その様子を実況解説するのは『巨星の娘』紅花 牡丹(p3p010983)。
「バトルが凄すぎて何やってるか分かんなくて置いてけぼりとかねえように解説してやるよ!」
そのステージ技術とプロデュース能力、トークがステージをより盛り上げる。練達特性の録音機器を利用すればラド・バウの『チャリティーバトル』を更に様々な人の眼に止めることも出来る筈だ。それらの売上も復興資金に充てれば良いか。
そうしたバトルを支える裏方の役割も『聖なるかな?』アザー・T・S・ドリフト(p3p008499)だ。闘士には向いていないかも知れないとアザーは考えるが、サポート役も重要な存在だ。
「皆さん、頑張ってくださいねー!」
回復魔法で万全な状態を保ち、チャリティーバトルを盛り上げるのも立派な仕事の一つなのだ。
同じく参加者の治療を担う『救い手』ヨシト・エイツ(p3p006813)。治療費もそれなりの金額だそれらを排除できるのであれば、売上金を復興に回せるという事だろう。
「……しかし治った端から即再参加しに行くところは流石の鉄帝脳ってやつだねぇ。
ま、そんな国を嫌いになれねぇ俺もやっぱり鉄帝の人間なんだろうな。
さ、兎にも角にもお仕事の時間だ! オラァ! 怪我人はどこだ! 手と声上げて表明しやがれ喧嘩馬鹿どもぉ!」
にぃと唇を吊り上げてからヨシトは叫んだ。何事も心配せずにどんと戦いに行けば良いのだ。
『侠骨の拳』亘理 義弘(p3p000398)は仕事では勝つための戦いばかり、何も考えずに真っ向からぶつかり合うのは良いと頷いた。
「古来より人間は自分より強い奴、上手い奴の真似をして
研鑽してきたもんだ。なら、今、どこまでやれているか、客に観て貰おうじゃねぇか」
終ったならば仕事終わりの一杯を楽しもう。目一杯に盛り上げて、心の底から楽しい戦いを。
「つーわけで力自慢、暇人、荒くれ野郎共どんとこい!
どうせ律儀に復興作業なんざしてらんねぇって顔ばかり、だったらその腕っ節で賞金稼いで派手にお大尽してやりな!
そうすりゃ有象無象がありがたがって、復興記念碑のド真ん中にアンタたちの名前をデカデカと刻んでくれるってもんさ!
名と顔を売ってこその闘士だろう? もちろんあたしも容赦はしない! センターほしけりゃ堂々と殴り合おうぜ!!」
朋子が吠える。その声音に「イイ!」と叫んだのは『黒顎拳士』アンドリュー・アームストロング(p3n000213)であった。
「なに? 戦えばいいのか? わかったぞ! ふん! 俺の筋肉を見ろ! そうだ、この上腕二頭筋が格好いいだろう!」
「いやさ、そうじゃなくってさ」
お目付役(?)の『雨夜の映し身』カイト(p3p007128)は肩を竦めてアンドリューの背後から姿を見せた。
「いやな、実は興行どうすっかなーと思ってたトコなのよ。
こないだは実況役やってたけども、今回は――そう、此方側。アンドリュー程じゃないが俺もまぁ、闘士の端くれだしなぁ」
アンドリューの肩を叩いてからカイトが唇をついと吊り上げた。
「紳士淑女の皆様、少しばかりお付き合い頂きましょうか。
この世の暇を少しだけ切り取り、舞台の如き演目(バトル)の開演です……ってな?」
「ああ!!! 筋肉だな!!!!!!」
筋肉を隠しては居るが新スーツは「イイ!」出来なのだ。『宇宙の保安官』ムサシ・セルブライト(p3p010126)はこれを慣熟訓練とするためにやってきた。
「従来スーツもかなり性能が良いものでありましたがダメージの蓄積などもあり……。
激化する闘いの中でスーツも進化するわけであります。
この宇宙保安官ムサシ! 今宵ばかりは……自分の力、全力で試させていただくでありますっ!」
『影編み』リースヒース(p3p009207)は「ならば来ると良い」と頷いた。
バトルと言えばやられ役が必要だ。魅せる為には出来る限り長く戦うのが必須技能なのだ。ならば、耐えることを得意とするリースヒースが敢て謎の甲冑剣士としてその姿を見せるのだ。
「――さあ、来るが良い!」
●鉄帝IV
パルス・パッションのライブは飛び入り参加が許される。『電子の海の精霊』アウローラ=エレットローネ(p3p007207)にも当然のように声が掛けられた。
『死神小鬼』アヤメ・フリージア(p3p008574)は復興も順調そうだと確認してから義姉である『いつか貴方に届く弾丸』ミズキ・フリージア(p3p008540)をパルスのライブに誘った。
「私もパルスさんのライブ、余り行った事がないから楽しみですね。
いやだって……ゲブラーさんの試合があるなら、そっち優先しちゃいますし」
分かる。
ミズキの説明を受けながらアヤメはパルスのライブを楽しむ。音楽が好きであること、それからライブを余り体験したことがないアヤメはその喧噪に身を置いてみたかったのだ。
「召喚される前は冥界で静かでしたしね……鉄帝ではバトルばかりで、ミズキ義姉さんも鍛えていますし……。
そんな場所で鳴らされる音楽は、ライブはどんなものかなって……! 楽しみで……!」
「今日はアヤメと一緒に来られて良かったです!」
キラキラとする義妹の笑顔にミズキは頬を緩めた。
何時ものようにパルスのライブに参加しているのは『扇動者たらん』海紅玉 彼方(p3p008804)だ。
「コーレスいくよー! いつもと違うけど頑張ってねー!」
にんまりと微笑んで、歌い方にも気をつける。ダンスや振り付けもしっかりしながらも普段と違う彼方をアピールするのだ。
「最強で無敵のアイドルは―?」
『カナタちゃーん!!』
「じゃあ、いつものボクはー?」
「ぱっるすちゃああああああああああああああああああああああああああああああん!!!!!!!!!!!!!」
絶叫する『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)。
「はぁ、今日もさいっこうのライブだったなぁ……。
こうやってまたパルスちゃんのライブが普通にやれるようになってるなら、鉄帝で頑張って戦った甲斐があったよ!」
パルスちゃんという大好きなその人を護る為に努力してきた焔である。
「それにしても、やっぱりパルスちゃんは凄いなぁ。
バルナバスはやっつけたけど、まだまだ復興途中で大変な時期なのに、ここにいる人達は皆楽しそうな笑顔になっちゃってるんだもん。
こんな風に皆を元気にするなんて、パルスちゃんにしか出来ないことだよね!」
彼女のために、まだまだ頑張れることはある。頑張れ、焔ちゃん! 何時だって見守って居るよ!
鉄帝国も冠位憤怒による侵攻が終ったばかりだ。復興を行なう手は足りていない。時任・兼続(p3p006107)や『黒撃』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)のように復興支援に尽力するイレギュラーズの姿がある。
「バイル閣下。オレは何をしたらイイ? まだ暴れてる国内の不穏分子をぶっ飛ばす?
最近アヤシイ動きのある国境付近の偵察でも行く? 手が回らない地方の治安維持のために魔物狩りでもしようか?」
「いいや」
宰相は首を振って山積みになった書類に眉を顰めた。
「書類仕事……? そういうのはテキザイにテキショしてもらうって事で……いや、出来るよ?
そこそこ書類仕事も出来るんだけれどメンド……じゃなくて、オレの力を活かすにはもうちょっと別の方向で使った方がイイんじゃないかなと思うんだ!」
特段下心なんて無いけれど、と南部戦線へと顔を出した『破竜一番槍』観音打 至東(p3p008495)。
バァーンと扉を勢い良く開いた至東のお目当てはザーバ・ザンザそのひとだ。
「ほーらローレットの面子が色々集まってなにかしようとしてますのでここは現行の秘書的な人が対応すべきではないでしょうか!? ないでしょうかッ!
……ふふー♪ あ、このみねうち書類仕事ができるわけではーありませんのでー、それをふまえて何なりとお申し付けくださいね、ザーバ君。れっつハードワーク!」
では早速と、何故か訓練に連れ出されるのであった。
ずんずんとザーバの傍に近づいたのはエリーンこと『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)である。
「はーい、南部戦線に遊びに来たわよー。元気にしてる?
ザーバも逃げないわよね? あんた私の特別感情依頼をずっと保留して……おっとなんでもないわ。今は第四の壁なんて活性化してないしね」
カメラ目線でウィンクをしてからイーリンはザーバを見遣った。何時も通りの将軍はイーリンの話に耳を傾ける。
「んでまぁ、騎兵隊はそこでズバッと冠位の胃袋の中でも皆が戻ってこれるように死守して。無事勝利したっていうのがこの前の覇竜での顛末よ」
武勇伝を聞きながらザーバは夏が過ぎゆくことを感じていた。もうすぐこの地にはもう一度冬が来る。冬に最も近い北国で無事、その季節を乗り越えることをイーリンは願った。
領地に溜った事務仕事を片付けている――ふりをしてごろごろとしている『疾風迅狼』日車・迅(p3p007500)。
鳳自治区で過ごすのは嫌いではないが書類の追加は困るのだ。
「僕はもう仕事をしませんよ。しませんったらしません。
だからそんなに勢いよく入ってこられても……岩が邪魔で開墾できない?
ああ、この前の長雨で……それは仕方ないですね。まあ座ってばかりでは鈍りますし、ちょうど良かったです!」
――さあ、此の儘脱出だ!
「――鳳圏も戦火からは離れたのか。
自治区という形ではあるが、一先ずの平穏を享受できていることは、喜ばしいことです」
『殲術機械兵器』敷島・戒機(p3p007663)は鳳圏の様子を眺めてから、それ以外の地での復興支援にも尽力せねばと強く決意する。
「さてと、僕は鳳自治区に行って兵達の訓練をしようかな。
バルナバスを退けたばかりではあるけれど、今度は何やら遂行者とやらが色んな国を侵略しようと暗躍しているみたいだしね。
いつ何が起こっても、自分達の身を守れるように備えておくことはきっと大切なことだよ」
戦乱が収まったばかり。穏やかな日々を過ごしたいがそれはまだお預けなのだろうと『老兵は死せず』時任 零時(p3p007579)は敵へと対抗する手段を身に着けるために訓練を続けて居た。
「ハイ。仕事です。
おっかしーな。この時期僕は休暇貰って竜宮にでもバカンスに行ってる予定だったんだけど。
よくわからん連中が南部に攻め込んでくるわ各地の状況分析だのとても休暇取れた状態じゃない」
がくりとテーブルに頭を擦りつけたのは『戦勝の指し手』シェンリー・アリーアル(p3p010784)であった。
「全く、仕事に缶詰めだから会いたい人にも会えない。
こうして豆の缶詰め食いながら仕事してるし。缶詰めだけに……笑えないんだよ僕。渾身のボケをかましたんだがな」
いつになれば心の底から笑えるようになるのだろうと考えながら南部戦線の復興へと尽力し続けるのであった。
『麗帝』ヴェルス・ヴェルク・ヴェンゲルズ(p3n000076)を前にして、『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)は言う。
「私には、何が足りませんか?」
そうは問いながらも、バトルバカの『彼』に文句を付けながら、自分だってそうなのだから何が足りないのかも分かって居る。
全て足りない。
今迄は軍団を率いる強さを磨いて来た。個の武を軽視していたわけではない、けれど今更乍らに色々足りないことを突き付け続けられたように感じたのだ。
あの白百合の生き様に感極まった己の中には己への怒りばかりがふつふつと湧上がる。
「そろそろ立てるようになりました。一本、お願い致します」
「……はいはい」
肩を竦めたヴェルスにエッダは構えた。弱音なんて描いてやらない。弱きも見せやしない。
――戦う時の己は、実に『可愛げがない』のだ。
●天義I
『夜闇の聖騎士』フラヴィア・ペレグリーノ(p3n000318)はうきうきとした様子で傍らの『氷雪剣舞』セシル・アーネット(p3p010940)を見遣った。
(お友達と遊ぶのってどんな感じなのかな……)
そんなフラヴィアをしっかりとしたエスコートをすると決めて居るのはセシル。
「フラヴィアちゃん見て! 美味しそうなクレープのお店があるよ!」
「ほんとだ! 美味しそうだね……うぅん、私は何にしようかな……?」
「どれがいいかな? フラヴィアちゃんは好きなものある?僕はチョコとカスタードのやつにするよ」
いちごやケーキ。クレープの中身は様々で、ついついフラヴィアは迷ってしまう。
「ええっと、じゃあ……私はこのバニラアイスと苺と生クリームがはいってるやつにしようかな?」
二人で商品を手に取ってベンチでのんびりと食べて居る最中にふと、フラヴィアが手を伸ばした。
「セシル君、じっとして……ここ、付いてるから……うん、これで大丈夫」
「あ、ありがとうフラヴィアちゃん」
その仕草が少し気恥ずかしくてセシルはふにゃりと笑みを浮かべたのだった。
聖奠騎士団でトレーニングを行なうのだと『聖奠聖騎士』サクラ(p3p005004)は張り切っている。
「前回はアウラスカルトちゃんにめちゃくちゃにして貰って強敵との戦いを学んだよね!
今回はしっかりと基本的な戦術なんかの訓練をしておこう! 天義は明確に冠位傲慢の侵攻を受けているからね」
「うんうん! 皆で強くならないとね。前回みたいに強敵がいないから物足りないかな?」
問い掛けた『聖女頌歌』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)に『凜なる刃』イル・フロッタ(p3n000094)がぶんぶんと首を振った。
「ぜ、全然そんなことはないぞ?」
『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)はくすくすと笑う。イルがリンツァトルテ・コンフィズリーを捕まえてきてくれるはずだと期待して視線を送れば――「それも訓練が必要かもしれない」と訓練前に一悶着だったわけだが。
「剣技のトレーニングか」
「そうなんだ。リンツさんが聖剣を、私が聖刀を使いこなせればもっと楽になるんだけど……なかなか難しいね。
以前は奇跡によって力を引き出せたけどいつも奇跡に頼るわけにはいかないし、ところでイルちゃんとは最近どう?」
リンツァトルテは「イルも頑張っているが」と不思議そうな顔をしたが――
「いや、騎士としてどうっていう事じゃなくて……うーん、これは前途多難だね」
アーリアがくすくすと笑ってからイルを肘で突いた。そうなのだ、先輩は何時も前途多難なのである。
「よし、それは兎も角! 剣の練習だよ! 私だってヴァークライトの血を引いてるから少しくらいは才能があるはず!」
「そういえばスティアのお父様も騎士だったな」
「そうそう!」
「なら私は後衛からの搦め手ね。前にスティアちゃん、サクラちゃんがいる中で放置させておくと面倒な後衛をどう扱うか、は戦場の中でもあり得ることだから」
全員で連携をすることが必要だ。アーリアは神託の乙女でも未来を見ることが叶うわけでもない。だからこそ、もっと強く、高めていかねばならないとそう自覚している。
大切な人を護るために――スティアは「頑張ろうね」とイルへと微笑んだ。
――立ち止まる暇などない。今この瞬間にも、遂行者は暗手を伸ばしているのだから。
『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)は只管に剣を振るった。
口惜しい。力があれば。渇望しているのは。ああ、皮肉な事に『かつての私(アラン・スミシー)』と同じなのだ。
弱き己が、這いつくばって惨めに生きてきた己が。幾つもの絶望を撥ね退けた勇者達の隣に立ち並ぶ為には、遅すぎる努力だと知っていたとしても。
『全盛期』を過ぎた肉体を奮い立たせるには朽ちた怒りだけでは足りないと分かっていたとしても、だ。
──しかし、もう、それ以上は無い。己にはもう、それしか無い。枯れた井戸に水が湧く事は二度と無いように。
それ以上にないからこそ、ただ、剣を振り続けることだけにした。
こんなご時世だとしても、だ。アネモネと過ごしたいと『鳥籠の画家』ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)は願った。
ただ彼女を前にして素直に『お前に逢いに来た』などとは口が裂けても言う事は出来やしない。つい、絵を描きに来たついでだと外方を向いた。
「まあ」
アネモネがゆったりと笑う。機嫌を損ねすぎないように話ながら絵のモデルになって貰う。ラフを仕上げながら彼女の事を聞けばさも詰らなさそうな顔をして居た。
「ベアトリーチェの影が天義でちらつく度に、逃したお前さんは苦しい立場になってるだろう。何かあったらすぐに助けを求めに来い。必ず助けに来るからな」
やや目を見開いたアネモネがうっすらと笑うその意味は――『言う様になって』ということだろうか?
(お祝い事で人々の心に癒やしは必要なのかな――)
『星の瞬き』シュテルン(p3p006791)は独り言ちる。記憶の奥底にある焦げるような感覚、届くことのないもどかしさ。
届いてはいけないのだろうと、思う。届いたらならば『私』は――
シュテルンは唄を歌った。誰かを守りたいと願ったり癒やしたいと思うのは此れが最後かも知れないから。
心の奥底で煮えたぎった感覚は。
(『かみさま』はきっと知る由もないだろうけれど、たらればの絶えない物語だった。
どんなに何も知らないフリをしても、決して動かぬ心がある。ずっとずっと信じて疑わなかったものなのに。
嗚呼、嗚呼――本当に何も知らずに入れたなら。
どんなに良かっただろう。神様を思う心は悪を生むばかり……今は、そう……思います)
真白の都は美しく、とことと歩いている『ふわもこ雉猫』ふわもこ きじねこ(p3p011260)は「猫を撫でるにゃ?」と問うた。聖職者達は何処か驚いた顔をして居るが、涼やかな場所を案内してくれた。
(ここの人は猫好きかにゃ、犬等が好きかにゃ。
どちらでも好きな動物等に心癒されてほしいのにゃ。きじねこも頑張るにゃー)
●天義II
アドラステイアのことは気になっていた。『玉響』レイン・レイン(p3p010586)は幼子達はどの様に過ごしているのかと見に行ったのだ。
「色んなもの……持ってきたよ……今は暑い時期で……他の国ではお祭り……楽しい事をしてるみたい……。
だから……ここでも……お祭り……しない……?」
イル達、騎士団も協力してくれるだろう。料理を作って、皆で食べて、と。それだけでも季節を堪能することも出来よう。
「僕……かき氷作るね……自分でやりたい子はいる……?」
手持ち花火などでも、少しずつ。そうやって楽しみを増やしていくのだ。
孤児達の世話をしようと『アーリオ・オーリオ』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(p3p010347)は葡萄ジュースを用意していた。
「ああ、それとパスタ。 ええ、パスタなら沢山作れます。
食べましょうパスタ。 美味しいですよ。是非、是非、さぁ。
――神の食材であり万能の麺ですからね、きっと美味しいですよ」
ずいずいとパスタを勧めるアンジェリカ。孤児達は楽しげな様子だ。
菓子を孤児院に届けたロレイン(p3p006293)は「ふうん」と呟いた。
「行われたことをなかったことには出来ない、二度も信仰に裏切られた孤児たちが、せめて今度こそ幸せを手に出来るよう、祈るしかないわね」
孤児院はまだ出来たばかり。全てがしっかりと回っているとは言い切れない。『水月花の墓守』フリークライ(p3p008595)はその実情をまじまじと見詰めて各孤児院の世話を行なう為に訪れた。
「植物 苗等ギフトデ宿シテ来タ。家庭菜園 薬草 食料ヤ薬ノ足シニナルヨウニ。
世話 デキルダケ不要ノガ望マシイ。今日 オメデタイ日。記念日。
世界中 オ祭リ気分。ソノ賑ワイ 孤児院ニモ伝ワッテ ミンナ 楽シクナレルトイイナ」
フリークライの背中によじ登ろうとする孤児は「お祭りなの?」と問う。
「ン ソウ。 オ土産。ギフト 生ヤシテキタ 世界中 美味シイ果物。育ツノ待ツノハ時間カカルシネ」
「ありがとう!」
にっこりと笑った子供にフリークライはゆるやかに頷いて見せた。
「何をして欲しい?」と『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)は問う。弁当が美味しいと笑った子供にモカは視線を合わせた。
「この料理を作ったのは私じゃないよ。
これは私の店で働いている、君たちと同じ元アドラステイアの子供たちが作ってくれた料理だ。
もしここ以外の世界が見たくなったら、いつでも私を呼んでくれ。できる限り、力になろう」
「すごいね」
幼い子供にとって、その未来が素晴らしければ良いとモカは祈る。『決別せし過去』彼者誰(p3p004449)は「料理ですか、覚えたいですか?」と問う。
「覚えたい」
「そうですか。何か作りましょうか。教室を開いても良いですしね。
まあ、大体は何でも出来ますよ。なんたって執事ですから、お申し付けくださいまし、私に出来そうなこと」
そそくさと世話を行なうのは『働き人』アンジェラ(p3p007241)だ。
「私のような働き人であれば兎も角、生殖階級の方にとっての心的外傷の緩和というのは難しいものであり、アドラステイアにて兄弟や友人を手にかけたともなれば尚更でしょう。
それでも、時は多少なりとも傷を癒やしてはくれます……癒えるまで耐えきれるのであれば、ですが」
働き人の仕事は自然の営み。お節介だと拒絶されることはないだろうとアンジェラは認識している。八つ当たりだって甘んじて受けるつもりだ。それが『自身の在り方』なのだから。
自分にも何かできることはないだろうかと旅行をしていた『ヴァイス☆ドラッヘ』レイリー=シュタイン(p3p007270)は孤児達に向き直った。
「何かあれば言ってください、力仕事は得意ですし、歌などで元気つけることもできますわ」
穏やかに告げるレイリーは力仕事だけではない、子供のお世話やアイドルとしてのレクリエーション。
自分に出来る事があるならば、今は少しずつ積み重ねていきたいと、そう、思うのだ。
『何でも屋』ハビーブ・アッスルターン(p3p009802)は考える。多感な時期を殺し合いに費やした聖銃士が其れ等を取り上げられて普通の生活に戻れとは難しい。
「暴力で他者を屈服させる快感に目覚めた者が、慎ましい生活などに満足できる筈も無いのだ
ゆえに、牢に“保護”する以外に手のつけようがない彼らに更生の機会を与えたい」――とは名目だ。
ハビーブにとっての裏のクライアントであるラサの傭兵団やラド・バウ闘士の斡旋業者にならば彼等の暴力欲求を制御する術にも長けているはずだ。
「わしはそれを応援したいっ……!(人材の斡旋料で儲かるからな)」
本音が透けて見えた気がするが騎士は検討すると返した。
特異運命座標になってから『六度目の夏』がやってきた。『雨を識る』チック・シュテル(p3p000932)にとっては鉄帝国での長い戦いやラサでの烙印を経て、今も無事に過ごせていることが喜ばしい。
「……これから先、まだまだ試練が待ち受ける、してるとは思う。
今日紡いだ、楽しい思い出を胸に。燈火を絶やす、せず……進んで行こう」
ファルマコンの戦いで犠牲になった子ども達だって沢山居るだろう。だからこそ、孤児院で過ごす子ども達が居ることが、生きていてくれることが嬉しいのだ。
「もし、良ければ。孤児院の人達の『お手伝い』、したい。一緒に遊んだり……ご飯作る、したり。力に、なりたいんだ」
『アドラステイア』と呼ばれたアスピーダ・タラサはまだ変化の最中なのだろう。『ウィザード』マルク・シリング(p3p001309)はくるりと振り返る。
「この街が『アドラステイア』で無くなるまでずっと関わってきたからね。最近の様子が気になっていたんだ。
付き合ってくれてありがとう、ティナリスさん」
『青の尖晶』ティナリス・ド・グランヴィル(p3n000302)は小さく首を振った。この地には初めて訪れた。
「こちらこそ、連れてきてくれてありがとうございます。マルクさん」
ふと、マルクは『黒衣』についてティナリスに問うた。黒衣とは即ち騎士団の正装だ。
「各人の考えがあるという前提で。僕は元々、『黒衣』は天義ゆかりの人が纏うべきだと考えていてね。余所者の僕は着るつもりは無かったんだ」
それでも、神の国の手は世界中に伸びた。もはやマルクにとっても他人事では無いだろう。
「だからね、僕も黒衣を纏うことにしたよ……ティナリスさんは、国外の人が黒衣を纏う事をどう思う?」
「私はこの国の為に尽力してくれるのなら、誰が黒衣を纏おうと歓迎します。
国は関係ありません。なぜなら、四年前の夏に私達の国を助けてくれたのはローレットのイレギュラーズという英雄たちだったからです。
彼らは国に囚われず自分たちの正義の心に従い私達を助けてくれました。
マルクさん貴方もその一人です。だから、貴方達のような英雄にこそ黒衣は相応しいのだと私は思います」
「ロニ殿、先日はありがとう。今日は急に呼び立ててすまない。
俺はあまりにも天儀の事を知らない……関わったのは大部分、アドラステイア絡みでな。
故に、天儀というものをざっくりでも教えて貰えればと思って……以前ライアン殿に頼んだら、気がついたら下町グルメ巡りで一日終わっててな……おかしいな……」
『灰想繰切』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)が呟けば、『星の弾丸』ロニ・スタークラフト(p3n000317)は大丈夫だと頷いた。
「天儀はその主柱が宗教だろう? 俺には俺の信じる神がいる、故にあまり触れぬようにしていたんだ。
だが、知らねば知らずに尾を踏んだりもする……故に知っておくべきだろうと思い直した。ロニ殿やライアン殿とも上手くやっていきたいしな」
「俺も自分の知ってることしか知らないからな。
とりあえず、俺たちグランヴィル小隊はアーデルハイト神学校出身が多いな。ライアンもそうだしジュリアやニコラ、ケルルもそうだ」
皆良い奴ばっかりだとロニは笑う。下っ端である自身等は相部屋で過ごす。ロニはライアンと一緒に過ごしていた。
士官であるティナリスはパーセヴァル元隊長の部屋を使っているとそう告げる。
そんな日常を語る彼の声に耳を傾けながらアーマデルは「成程」と楽しげな青年を見守って居た。
●ローレットIV
『爆音クイックシルバー』ハッピー・クラッカー(p3p006706)はにんまりと笑ってローレットの外に居た。
「はい! やぁってきました、毎度おなじみ!ミ☆
『ハッピーフライハイ! 天まで届けイカロス越え!』のコーナーです!
聞いた事ねぇぞっていう第四の壁の向こうに居る皆様? 正解です、初めて言いました。毎回フライハイしてるのは本当だけどね」
ローレットの一番高い天井からハッピーは飛んでいく! 跳べ! 躍れ! 天高く!! 落ちても問題ない! ギャグキャラだから!
依頼書の一覧をまじまじと眺めて居た『死血の魔女』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)は小さく息を吐いた。
どうにも気乗りせず、こうして様々な依頼書の内容を確かめているのだ。
(普通の依頼、高難度の依頼…悪事をなす事を求められる依頼。
ローレットにはいろんな依頼が巡りこんでいて、その全てが論理的に正しい物ではないにも拘らず必要とされる。
私には、本当はこういった悪人向けの依頼が最適なんでしょう)
――ああ、『内側』で彼女が笑っている。分かって居る、彼女ならばうまくやるのだ。
血と後悔と罪を被るのは自分で良いのだとマリエッタは感じていた。それだ、誰かが救われるのであれば。
「はいどうも! P-Tuberのアリスです!
今回はギルドローレットで恒例の催し、ロレトレに潜入しております! 私もイレギュラーズだから参加する権利あるんだけどにゃ」
にんまりと笑った『P Tuber『アリス』』キャロ・ル・ヴィリケンズ(p3p007903)は早速ローレットの近状を聞きたいと美少女情報屋を名乗って居るユリーカの姿を探す。然うして、ローレットの実情や近業を皆に知ってもらうのが狙いだ。
「ユリーカさん! 招待有り難う。どんなの用意してくれたのか楽しみ。せっかくだし、一緒に食べよう」
「はいなのです!」
にっこりと笑ったユリーカに『点睛穿貫』囲 飛呂(p3p010030)は頷いた。ジュースを手にしてからふと、飛呂はユリーカを振り返る。
「今年はまだ無理だけど、来年なら俺もお酒飲めるようになってるから。今から楽しみ」
一緒に酒を飲む日が楽しみだ。そんな些細な約束でもこれからを進む糧になるのだと飛呂は知っているから。
「ほら、ユリーカ! 拒否権なんてものはアタシの辞書にはないんだから一緒に飲むわよ!」
『ハイテンションガール』郷田 京(p3p009529)はユリーカの肩をがしりと掴んだ。「ひええ」と呟くユリーカがばたばたと足を勢い良く動かし逃げだそうとするが叶わない。
「おーい、ユリーカ~! ユリーカ~!! なにお高く止まってんのよ、ほら! さっさと飲むわよ!!
あ、こら、逃げんじゃねーわよ! きれいなまんまで居られるなんて思わないでよー?
百年の恋も覚めるくらい騒がなきゃタダ酒に失礼ってもんでしょ! さあさあ、アンタもはしたなくなっちゃいなさいよー、うっへへ……!」
「た、助けて欲しいのですよー!?」
慣れない酒を飲みながらその様子を『はじめての日を終えて』リネット・マイヤーズ(p3p009760)はぼんやりと眺めて居る。
「おーっと酒は飲んでも飲まれるなでよろしく!! 俺? 酒癖最悪だから飲んでもソフトドリンクだぜ?」
「た、助けじゃないのです!?」
京の合図を受けて酒を供給し続ける『疾風の先導者』霧島・トウゴ(p3p007102)にユリーカは「えぐえぐ」と泣きながら手を伸ばしている。
『猛き者の意志』ゼファー(p3p007625)は微笑ましそうにユリーカを眺め、食事を口に。酒はマイペース(ユリーカの声は聞かない振り)で頂く事にしていた。
「ないないし過ぎてユリーカ先輩の明日が不安な今日この頃。
でも、大丈夫よ。先輩は強いから辛いお仕置きも屹度乗り越えられるわ?」
「その前に酔い潰されそうなのです!」
京に負けそうになって居るユリーカにゼファーが楽しげに笑う。
「こんな馬鹿騒ぎを去年も、其の前もやって、今年もこうしてやれているワケだけれど。
また一年後、こうして皆笑っていられるのかしら。なんて。
……少なくとも私は、またこんなバカをやりたいと思うけれどね」
ひりつくシリアスな日々はスパイスだけれど、それだけでは疲れてしまうから。こうして楽しめれば――
「あああ―――」
ユリーカの叫び声が響いている。ユリーカに「素晴らしい成果とこれからの成長に乾杯」と『極夜』ペッカート・D・パッツィーア(p3p005201)は笑った。
「経費で何でも食べられるってマジかぁ? なら最高に美味しいジャンクフードも置いてあるってことだよな?
それからケーキも。好きなだけ食べられるなんて最高だぜ。
パーティーがトレーニングだなんて聞いたことないけど、こんな楽しいトレーニングなら毎日のようにやってくれていいのにな」
「はい。予算はローレットが出すので」と『シンギュラリティ』ボディ・ダクレ(p3p008384)は頷いた。
「燈堂家で出る料理とはまた違った味、新鮮で舌鼓が止まりません。もう何でも口に入れちゃいましょう。
187人前ぐらいいきたい気持ちもありましたが、さてどれぐらい食べられることやら……」
悩ましげなボディはこれは鍛錬の機会。即ち食事を摂取することで、体を鍛えることに繋がるのに有効だと考えて居た。
食べたいだけだろうという言葉にはそうだと頷くが、それはそれで秘密のことなのだ。
ぱちくりと瞬いてから今日は神使にとっての大切な日なのだと『共に歩む道』隠岐奈 朝顔(p3p008750)は新たに認識し、食事の配膳手伝いなどを行って居た。
背の高い朝顔は視点が高い事を生かして探しものや困っている人を捜し、混雑整理や運搬を手伝い続ける。
「巨体である事は好きになれませんが……まぁそれはそれ。活かせる時には活かさないとですね」
そうして自分の出来る事をこなすことも楽しい一時だ。
勢い良く食事を続けるザ・ワールド(p3p010082)の傍では「なんだかよくわかんねーが、タダ飯が食えるって聞いてきたぜ!」と観月 槐(p3p005186)が笑った。
「うし、食って食って食いまくるぜ! その後、動きゃなんとかなるだろ?カロリーなんざ。
取り敢えず、肉!!! 野菜は……まぁ、ちょびっとは食う。それにしたってあれから6年経つんだなぁ……」
そう、此度は『大量召喚』からの経過日数を祝っての会なのだ。「お祝い、なのね」とアーシタ(p3p009509)は呟く。
「時間が一定の数蓄積したことへの喜び。時間の経過によっても存在が失われないことへの喜び。
お祝いをする時間が回るかたちなのは、星のある場所が回るかたちで変わっていくからかしら。
ええ、ええ、おいしいものが食べられるのはとてもいいことよ。お祝いはとてもいいことね」
祝いの席だというならば『消えない泥』マッダラー=マッド=マッダラー(p3p008376)はライブだと簡易ステージの上へと立った。
「come on!協奏馬!! come on!紳士淑女諸君!! 歌って踊っての祭りの席だ!!!大いに楽しもうじゃあないか!!
グラスが触れあい響く出会いの音色も! 酔いの席から飛び出す戯言も! 全てが祝いの声となる!!
一期一会の出会いだからこそ、この日を忘れず、そして現世の悩み全てを忘れて楽しむのが華よ!!」
歌声に耳を傾けながら『勝利の足音』リリアーヌ・リヴェラ(p3p006284)は「楽しいですね」と声を掛けた。
盛り上げてくれる才覚のある人間も重要だが、それに関心を傾けて盛り上がる側も必要なのだ。ここで顔を合せれば皆が仲間である。
リリアーヌの乾杯に応じたのは『大空の支配者』メリッカ・ヘクセス(p3p006565)や『aerial dragon』藤宮 美空(p3p010401)だ。
美空は一人の特異運命座標としてこのパーティーを目一杯楽しみながら、皆との会話に耳を傾ける。イレギュラーズとしてこれまで経験してきたことを聞くのはそれだけで心が躍るからだ。
『蒸気迫撃』リサ・ディーラング(p3p008016)も酒瓶を片手ににんまりと微笑んでいる。
「せっかくないない(隠語)してくれたしね。有り難く頂こう」
「はい。皆さんと話しながらのご飯は美味しいですねっ」
「今日は予算は気にせず、全力で酒を飲んで飯を食らっていくっすよー! ユリーカパイセンあざーす!
普段のトレーニングは仕事や趣味の延長で武器改造ばっかりだったっすし、本日は気晴らしも兼ねて飯を大量にかっ食らう! 酒も飲み干す! 今日の私はリサ・ディーラングじゃないっす。酔いどれリサっすよー!」
ジョブ代わりにがっつりめの肉、それからエールを一杯。夏の体に染み渡る味を堪能しながら魚料理と醸造酒。それから、それから――「ところで、ないないって?」
やはり気になってしまうのは『雨に舞う』秋霖・水愛(p3p010393)である。
「ユリーカさんの得意技なの? なんだかすごそうだねぇ、実際にこの目で見て見たいよ」
ギクッとユリーカの肩がまた揺らいだ。
「ユリーカさんのないないパワーはこんなにたくさん出せるんだね……
限定メニューもある!? ローレットの人脈ってやっぱり凄い……この縁に感謝だね」
いただきますの構えを作った『孔雀劫火』天城・幽我(p3p009407)は素直に感心していたがユリーカは後ろ暗い真実を隠すようににんまりと微笑んでいる。
「んー、面白そうなことしてると思ったら――やっぱりどこから出したのその予算?
あとで腰の痛そうな人が眉間にしわ寄せながら走ってこない?」
「だ、ダメですかね……?」
『電子の蒼海』鮫島 和真(p3p008994)は分からないと言わんばかりに首を振った。ユリーカが恐れ戦く。
んな彼女へと、安心して欲しいと『奢りで一杯』紲 酒鏡(p3p010453)が頷く。
「ギフトでお酒はいくらでも提供できるからねー、たくさんないないしてくれたっていっても、追加はあった方がいいかなー」
「わーい!」
ユリーカは自身から話が逸れた気がして万歳をした。アンウォルフ・バルドリック(p3p007392)はユリーカの『ないない』で用意された食事に、酒鏡が用意してくれるスパークリングワインを飲みながら穏やかな時を過ごす。
「さてはて、月日が流れるのもあっと言う間だ。若人達は先人に習い、後悔無きように生きるのだぞ?」
小さく頷いた『自分を失った精霊種』ナナ(p3p009497)はこのパーティーの風景を全て書き残しておきたいと願った。
「ずっと参加して思ってたんだ。隅で参加しているだけだったけど楽しくて。この風景を残せたら良いなって……」
本当は写真を撮るべきなのかもしれない。それでも、描くことがナナは好きなのだ。忙しなく動いている人々を見て、ざっくりと。思う存分その場を描く。
「やっぱり私は戦って何かを破壊するよりも、こうやって何かを生み出す事が好きだなぁ……」
料理を配りながら慌ただしく走り回るのは『亜竜種給仕』萊 連理(p3p010469)だった。効率よく稼げば、空いた時間を睡眠に当てることが出来る。そう、全ては穏やかな眠りのためにあるのだ。
それでも眠いから寝ている『繋げる夢』ニャムリ(p3p008365)もいる。めでたい席というのはいつだって良い物だと『伽藍堂の器』カランド(p3p009698)は喧噪を眺めて笑みを浮かべた。
「まぁいい、祝いの席ならば楽しむのも礼儀だろう、のんびりと、ささやかに、祝わせて貰うとしようか――」
と、言いながら暫くすると迷子になってしまったのはご愛敬。
「さーまずは肉! 次に魚! して次に肉! 魚! 遠慮なく血の通るものを喰らう!
胃の半分程度入ったなら、あとは甘味じゃ! 果物! 砂糖菓子!
未来的な何かしらの食い物……え、食えるんか? 方法、混ぜると色が変わって、うんまい!!!」
暴食に走る『勇猛なる狩人』ダリル(p3p009658)は海洋やラサに出掛けるよりも此処で思う存分に食事をした方が良いだろうと勢い良く食事を続けていく。
お母さんも手伝うと胸に手を当て穏やかに微笑んだ『紲一族のお母さん』紲 蝋梅(p3p010457)。
「お料理なら沢山振る舞うわ。ね? スミイカちゃん」
出て来たスミイカちゃんを突然捌き始めた蝋梅にユリーカは「あんなに親しげだったのに……」と呟いた。
「大丈夫よ。焼いても刺身でも美味しいわ? 子供達、どうぞ? スミイカ料理なら沢山作るから、お腹いっぱいになってね?」
記念すべき日だからと微笑んだ彼女にユリーカはかたかたと震え始めた。
●海洋I
蒼い空に白い雲。美しい海を眺めて尾を揺らす『ふわもこぶち猫』ふわもこ ぶちねこ(p3p011259)は「カニ……カニ……」と呟いた。
「カニカニカニカニカニにゃ」
思わず蟹を追掛けるぶちねこ。きっと魚も美味しくて、海産物を思うとお腹がきゅるりと鳴ってしまう。はやくおいしいを見付けたいのだ。
綺麗な海岸線をのんびりと散策しているのは『仕込みバッター』紫乃宮・奈々(p3p008028)だ。波が素足に擽ったい。
「海洋で僕に下手な絡み方してくるような相手はもうほとんどいませんしね……え、いませんよね……?
いやほんと、最近ちょっとずつ蓄積した疲れがですね……はい。のんびりしましょう。
竜宮でも行って、おいしい魚介でも食べて、あとは適当に休憩施設でも探してすごしましょう。僕も使えそうな奴を」
『泳げベーク君』ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)はのんびりとしている。そう、海洋ならば大丈夫だが観光客の多いシレンツィオだと――!?
クルージングに共に訪れた『真紅の幻想師』ルビー・アルカイネ(p3p011118)は「テオ兄様」と振り返る。
普段は余り構うことの出来ていない妹は流石に成人したと言えども寂しい思いをさせてしまっているだろう。『宵色の幻想師』テオ・アルカイネ(p3p011119)は「今日のような催しぐらい妹サービスだ」と頷いた。
「特異運命座標として目覚めるのはとても遅かった私達……。
今から脅威に立ち向かう事など出来ようものかと悩んだ事もありましたが、幸いだったのは、兄様と同じタイミングで特異運命座標になれた事でしょう。
どんなに不安が覆っても、きっと兄様と一緒なら乗り越えられる気がしてしまうから、兄妹と言うものは不思議な絆だなって思います」
「ああ。だがルビーがいるのならばこの世界の脅威を打ち消す為にも、それも吝かでは無い、致し方のない事なのだよ」
海を眺めながら二人は同じように口にした。幾分か幼さを滲ませて楽しげに笑うルビーに安心したようにテオは頷いた。
「母様や父様にもたくさんたくさん思い出話をしなくては! あとで兄様の分も含めてお土産を探さないとですね!」
「ああ、そうしようか」
海洋王国への里帰りにたんまりとお土産を用意した『天嬢武弓』フォルテシア=カティリス=レスティーユ(p3p000785)。
『揺蕩う黒の禍つ鳥』エレンシア=ウォルハリア=レスティーユ(p3p004881)は「土産多すぎだな!?」と目を見開いた。
「しかも毎回アタシが荷物持ちじゃねーか!」
「え? 少しは持て? うーん、そうは言われましても私力ないから……エレンちゃんは力持ちでしょ?
向こうに着いたらお菓子作ってあげますから、頑張って。ね?」
「……またそうやって菓子で釣る……アタシだっていつまでもガキじゃねーんだぞったく……」
くすくすと笑う姉にエレンシアは肩を竦めたのであった。
リゾート地でのんびりと過ごすP・P・P(p3p007113)の前をてこてこと通り過ぎていくのは『メカモスカ』ビスコッティ=CON=MOS(p3p010556)。
「今日も今日とてモスカ布教活動するぞ。
というてもなぁ。我活動日数も浅いし、仕事もこの前ようやく初めて出たばかりじゃし。
なんか、あれじゃな。寂しいぞ!!!!!」
でもビスコッティは強いから泣かないのだ。早朝にビーチに流れ着いたナマコを海に投げ捨てる仕事をしているビスコッティはえらいのだ。
ナウなヤングやアベックが来た時にナマコがキモいと叫んでいなくなったり怪我をする可能性を排除するのだ。
「ちゅーてもなー!」
やっぱり寂しいと叫んだビスコッティの声が木霊する。その声を船上から聞いていたのは『たかが一兵なれども』レオナ(p3p010430)だ。
海――それは広大で、数多なる命を育み喪う見果てぬ浪漫を求めた場所だ。
「いずれにしても、このような巨大な水場があるという事。……聞いてはいたものの、まさかここまでとはな」
レオナはこれを見に来れただけでも価値はあったと頷いた。並により不安定な足場も貴重な体験だ。へたに戦えば足場を喪うというのも経験しておいた方が良い。
「一度、この地での戦闘も経験せねばな。それをまた故郷に持ち帰り伝えねば……戦士としての経験は、語り継がねば」
『愛しき影と共に』カスミ・スリーシックス(p3p008029)は嘆息した。
「今日はイレギュラーズが沢山召喚された日らしいですね。
……私達も確か、そこら辺の近くで召喚されたはずです。あの時は貴方と命を共有していると知って絶望してましたね……」
カスミの傍には影がある。それは死の恐怖などの絶望よりも、希望が見え始めたことでやや薄れただろうか。
記念日だというのだから、記念にシレンツィオを廻る為に一念発起したのだ。様々な洋服を見て回り夏を満喫したいとカスミはふと『影』へと問う。
「海洋によく来ていますから、海洋に似合う青色や白色の洋服を数着欲しいな~……なんて思いまして。
えっと……清楚系の服が好きなんですが……似合いますか?」
影は勿論だと答えてくれたことだろう。
「豪華客船。即ちクルージングである」
堂々と『敗れた幻想の担い手』夢野 幸潮(p3p010573)は宣言した。
漣の音を聞きながら『定めし運命の守り手』若宮 芽衣子(p3p010879)は立っていた。
『崩れし理想の願い手』有原 卮濘(p3p010661)は「いやさ、なんで舟乗ってるだけで経験値入るの?」とぼやく。
「入るの。酒飲んでるだけで入るシナリオもあるし、ね。この世界ってそういう仕様だから──仕様がないの」
※これもローレットが斡旋した仕事だからです。
「は~……しっかし私も泳ぎたかったな~」
「私たちには水着ないからね。卮濘はその浴衣あるけど」
「ふふ~ん、いいでしょこれ。『浪漫と言う名の与太話』」
「それどっちかといえば祭り用だろ。海なら『諸夏吟遊』のほうが似合ってる」
「……そういうこと言うんだ。じゃあ──『とある世界の戦艦艤装』」
「流石に船そのものは卑怯だと思うんだよな我はな」
三人は淡々と会話を繰り返しながら、鮮やかな蒼い海に揺られているのであった。
「カヌレ、こっち」
カヌレ・ジェラート・コンテュール(p3n000127)を呼んだのは『穢翼の死神』ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)だった。
波に揺られながらのんびりと海の景色を楽しんで食事や酒を堪能するのだ。
「いつもお仕事お疲れ様、こう言う時ぐらいゆっくり羽伸ばしできたらいいと思ってお誘いしたよ。
……まぁ、好きじゃなかったらお誘いもしなかったけど」
「うふふ、わたくしも大切なお友達に斯うして誘って頂けて嬉しいですわ。
何をします? 何だって致しましょう! だって、こんなに晴れているのですから!」
「海の似合う嬢ちゃん、飲み物はいるかい?」
『幻蒼海龍』十夜 縁(p3p000099)は軽口を言いながら麦わら帽子を押さえる『蒼き夜の隣』十夜 蜻蛉(p3p002599)に声を掛けた。
「ええお天気にも恵まれて、お船の上の風が気持ちええわ。
ちょうど何か飲みたいて思とったとこです。おおきに」
差し出されたグラスをかちりと会わせてから喉を潤した。すっかり『蒼』に染まってしまった彼女を『嬢ちゃん』と呼んでしまったことにふと、「ああ、もうそうではなかった」と思い返す。
いつかの日に、こうして独りで酒を飲んだ。あの時はこれからに対して蜻蛉は不安ばかりを抱いていたのに。
今日は傍らに彼が居るのだ。
「どうかしたか?」
「なんでもないです。ただ、今日もとっても男前やと思たの」
――また、お前さんは、と呆れるのがお決まりだ。だが、縁はふと悪戯めいて笑って見せた。
「……そうかい」、お前さんも、今日も最高に綺麗だぜ」
敢て顔を見ずに告げれば、彼女の笑い声がした。ああ、この日々がずっと続いてくれれば良いのに。
オパール・ネラはコン=モスカの聖域だ。『海淵の祭司』クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)は『海淵の騎士』フェルディン・T・レオンハート(p3p000215)と共にその地へと訪れる。
「……如何ほど意味があるかはわからんがな。
何せ、堂々と中心に据えられたこの碑の下に“ヒト”など眠っておらんかったのだ」
そう呟くクレマァダの背中をフェルディンは見ていた。『彼女』の魂』がここにあるのかはわからない。
それでも原初と呼ばれたその人が祀られているのは確かなことなのだ。
――竜との戦いで仲間が死んだ。
その事実だけがクレマァダを包む。
(身の程を過ぎたものへの感情は己を亡ぼすのだとより確信したのだ。……本当じゃぞ。
共感などしておらん。愛など、そんな、そんなものの為に。そんなものの為に……)
そんなもの、と言い捨てることも出来着なかった。あの時救ってくれたことを己の身体が覚えているのだ。
フェルディンはクレマァダ越しに真っ向から見据えた。己が剣を向けたことに後悔はない。
それでも全力の波濤を打ち合ったときに感じた彼女の在り方に。その胸の内にあっただろう原動力に、敬意を捧げたかったのだ。
「そう……あの日、確かにボク達は死力を尽くして争った。
カタチは違えど、想いは同じ。あの時は、ボクの方が奇跡を起こせたというだけ。
でも、だからこそ――勝ち取った今を"彼女"と共に。大切に歩んでいくと、誓いましょう」
堂々と宣言したフェルディンにクレマァダはぐるりと振り返った。
「……うるさい!
堂々とそんなはじゅかしいことを言うでないわ!! 知らん知らんもう知らん!!」
●海洋II
お気に入りの水着を着用した『気紛れ変化の道化猫』ナイアルカナン・V・チェシャール(p3p011026)ははあと息を吐く。
「シレンツィオ・リゾート……良い所だね」
ドリンクを手に海を眺め、気が向けばぷかぷかと浮き輪で波間を漂うのだ。
「海洋はお魚もおいしいと聞いたから、お魚料理が食べられるお店にも行ってみたいな。
猫(ナイアル)は美味しいもの大好きだからね。嬉しいよ。混沌に召喚されて良かったと思う」
ホテルに戻るまではまだ時間がある。もう少し歩き回ってみても良いだろう。
ローレットの一員として『禁忌の双盾』阿瀬比 彗星(p3p009037)は『禁忌の双盾』阿瀬比 瑠璃(p3p009038)と伴に楽しむことに決めていた。
「あ、そういえば卵の殻? が飾られているらしいわね」
「…そういえば投票で何を飾るかお祭りをしていたんだっけ?
確か優勝したのが海洋で、何か偉大なモノの殻とか聞いた覚えがあるけど……。
瑠璃が見てみたいなら一緒に見に行こうか」
※コンテュール卿の卵の殻です。
瑠璃が望むのであれば彗星もその手を取る。リゾート地に飾られているのが貴族の出生時の卵というのはやや面白いことではあるが、そうしたものを見て回るのも楽しいだろう。
「豊穣に居る時はリゾート地に行くなんて思う事すらなかった。
神使になってから夢みたいな事が沢山起きているわ……昔よりも今が、未来がずっと明るいわ」
「豊穣で獄人は差別されていた。だから、リゾート地とか夢に思う事すら無かったね」
「これからも貴方と共に、彗星」
「こちらこそ、これからも共に生きよう。瑠璃」
折角水着を新調したのだから、と『料理人』テルル・ウェイレット(p3p008374)はお店にClausedの看板を下げてシレンツィオにまでやってきた。
三番街シロタイガー・ビーチの陽射しは厳しくも感じられるが、水着になればそれも心地良い。
腹まで波が来るように座り込み水の冷たさを感じた後はゆっくりと水中へと歩を進める。貝や魚を眺めるのもまた一興だ。
観光客向けの通りには水着姿でも買い物に行けるらしい。品質も良いお土産を手にしたいと、そんなことをふと、考えた。
「今回こそほんとに何もないバカンスだ―!!」
大体いつも雑用を頼まれる『恩義のために』レニンスカヤ・チュレンコフ・ウサビッチ(p3p006499)。今回はそうじゃ無いと思う存分に夏を謳歌する。
「やっぱり眩しい太陽と海って好きなんだ。だってとっても優しい感じがするからね!
ああ本当に、うさは思うよ。
誰かが守ってくれてるから、安心して夏を過ごせるんだぁ。
けど、その夏って、いっぱいの人が、いっぱい傷ついて。いっぱいいっぱい悲しんで。それで平和だーってなってるんだ」
波打ち際で、そう思う。悲しくなって欲しいとは誰も思っていない。笑ってて欲しいとそう願っていてくれた人達に、笑みを見せるのだ。そうでなくては報われないはずだから。
折角の休みなのだからこそ『玻璃の瞳』美咲・マクスウェル(p3p005192)は『瑠璃の刃』ヒィロ=エヒト(p3p002503)と思う存分に楽しみたかった。
「あちこちでパーティとかしてるみたいだけど、私らはいつも二人で楽しんでるしね。わざわざ休みに偉いさんに会うとかナイナイ!」
「あはは! こーんなに素敵なリゾート楽しめるんだもん、何度来てもいいよね!
めいっぱい遊んで、めいっぱい食べて、めいっぱい甘えて……ボクの人生ここに極まれり! なんて」
プライベートビーチを借りて、二人でお互いのために選んだ水着を着用し、何の憂いなく過ごすのだ。
嬉しそうなヒィロの笑顔を誰かに見せる謂れなんてない。今日はそういう一日なのだから。
「やっぱり休日はこうじゃないとね……このために生きてると言っていい!
私とヒィロの幸せな世界、誰にも間違いとか言わせないってのよ」
「ここで美咲さんとの幸せを胸いっぱい吸い込んでおけば。
きっとこれから先のどんな絶望だって、笑って立ち向かえるって思えるんだ」
手渡されたドリンクにヒィロは「有り難う!」と美咲へと飛び付いた。
こう言うタイミングだからこそ気を引き締めていかねばならないと『蒼海の守人』スクアーロ=ケトス=グランガチ(p3p001753)はパトロールに当たっている。
気が緩んで塵のポイ捨て。そんな甘えた根性が自然を汚すのだとスクアーロは継続は力なり、『海を守る』ことに注力して居た。
背負った籠に粗方詰め込んでからふうと息を吐く。夏の天気も変わりやすいが、今日は晴天だ。
「シケた海が悪いワケじゃあねェけど、やっぱり穏やかな波に燦々とした日光が夏の醍醐味だからなァ。もうちょっとやったら岩場で昼寝だな」
故郷の海でのんびりとして居るのは『医術士』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)だった。
もう溶けてしまいそうな勢いではある。
「しかし、あれやこれやと世界に問題は絶えず……。
わたしにはやらなければならないことがたくさん。その上にやりたいことが乗っかるから休みも取れません。
依頼の無い日は医学生として研修に行かなければならないし。ううーん」
自分を労らなければ力尽きる。医者の不養生ともいうからと、海にぷかぷかと浮かびながらココロは流れ流され、そのまま眠ってしまったのであった。
●海洋III
竜宮に訪れてから『女装バレは死活問題』トール=アシェンプテル(p3p010816)は「キャバクラって言うお店でしたっけ……」と呟いた。
『JMC 女子力部門 最優秀賞』佐藤・非正規雇用(p3p009377)は「キャバクラじゃねいよ」と首を振る。
女性が多いことでご機嫌な非正規雇用さんなのだ。
「来るのは初めて何ですけど……うわっ! バニーさんがいっぱい!? 沙耶さんとセレナさんまでバニーに!?」
『奪うは人心までも』結月 沙耶(p3p009126)と『夜守の魔女』セレナ・夜月(p3p010688)の姿を認め驚愕した。
「いらっしゃいませー♪ って……トール!? それに佐藤さん、ヴィルメイズさんまで!? た、ただのバイトよ、バイト!」
「い、いらっしゃいませ……」
声を震わせている沙耶は竜宮バニー(恥ずかしい)を着用して凄い恥ずかしいと呟いた。恥ずかしい、けれど、ここで止めるとは言えない。
「あぁバイトですか……びっくりした。とても似合っていて素敵です」
トールに見られて恥ずかしがるが、他の男性の視線からには沙耶パンチが飛び出しそうなのだ。
「……ちょっと、でもあんまりじろじろ見ないでよ! まったくもう、男ってやつは本当……」
外方を向いたセレナににんまりと笑った非正規雇用は気を良くしたように「奢りだ」と告げる。
「え~とメニューのここからここまでのお酒を全部お願いいたしますね~」
美しい海に美しい『未来を託す』ヴィルメイズ・サズ・ブロート(p3p010531)、まるで神話のような光景で手にしているのはマジックテープの財布である。
バリバリしながらバニー姿で肉体美を誇ったヴィルメイズは微笑んでいた。
「なんて美しい肉体美! 大人の余裕を感じさせる!
マジックテープの財布もミラーボールでバリバリ輝いて素敵です!!」
「お前! 俺より目立つんじゃないよ!! うるさい! 並べ! 団体行動を乱すな!!」
拍手をするトールに指差す非正規用。トールの注文は取りあえずは非正規雇用の奢りで、100万Goldの借用書を押し付けておこう。
お金を貸して欲しいとセレナに懇願する非正規雇用を無事に阻んでからトールは「駄目ですよ」と微笑んだ。
「ええ、そうよ。体で返すなら、そうね……ここでバニー着て働いたら良いんじゃないかしら?」
――セレナの圧が強かった。
竜宮で竜宮嬢――即ちバニーさんとなってストレス発散を行なうのは『春色の砲撃』ノア=サス=ネクリム(p3p009625)だ。
「いらっしゃいませ、本日のスペシャルバニーのノアです! 今日はみんなの視線を釘付けにしちゃうんだから!」
竜宮らしいスペシャルバニーのノアはセクシーで大胆な踊りを見せる。
何かに煮詰まったならばここに来るのが一番だ。竜宮はノアにとっては一番のレジャースポットなのだから。
「さぁて、これから1秒たりとも目を離しちゃダメよ、お客サマ?」
美しいポールダンスを披露して、ノアはウィンクをするのだった。
「たまの休みなんですよ。仕事が山積みの中での休みなんですよ。
全力ではっちゃけたっていいじゃないですか。おっさんだろうと夏は楽しむものなんですよ」
――と、言うわけで『酔狂者』バルガル・ミフィスト(p3p007978)は此処に居た。そう。竜宮だ。
「バニーの方々と楽しくお話を! 会話の中で酒とつまみに舌鼓をうち! 店外デートでまた違う店に通ったりして!
また明日には仕事が飛んでくる以上、今日は全力で楽しむ!
バニーの方々との思い出を糧に生きる為に! そしてこの一瞬を全力で楽しむために!
俺は今! 最高に幸せに生きている! FOOOO!!!」
最も生きている感じのする勢いの良さ――!
「あの。此処は何処ですかね? ま、まあ、竜宮は広いと聞いたので迷子になる予感はしていましたが、こうも早く道がわからなくなるとは思いませんでしたよ」
興味のあった竜宮にやっとのことでやってきた『同一奇譚』深々・おじぎ(p3p010429)。『多願』だったかと調べに来たがネオンサインが眩すぎるのだ。
「あ、其処の兎さん、道案内お願い出来ますか?
それにしても兎ばかりです。兎は足が速いと聞きますが、実際、如何なのでしょうね?」
首を傾げたおじぎはお腹が空きましたと呟いた。スナズリウオの刺身をどうかと進める『兎さん』に今は甘えることにしようか。
『憎悪の澱』アクア・フィーリス(p3p006784)は眠たげに目を擦った。
「熱い……溶けそう、どこにも行きたくない、の……だから、今日は自分の領地で、ゆっくりするの。
ついでに、お部屋の中だけど、水着も、着てみたり……気持ちいいー……。
涼しいお部屋で、海を眺めて……たまに通るお船に、手を振ってみたり……。
何にも、怒らなくていいから、何にも、当たらなくていい、落ち着く時間……だけど、それでも、わたしは……こんな世界、許すわけには……」
――そう、許さなかった。何故か沢山領地に逃げてきた人々。其れ等の対応に追われる執政官。
だが、アクアは「うぅーん、どうしよう……困るの、なんとかしてあげて、ね?」と首を傾いでから全てを執政官に丸投げしたのだった。
●海洋IV
「……待つウサ。ウサギの獣種……海……この2つの符号が意味するところは……。
これ海面の下にサメいるんじゃないウサか!?
ほら! 今そこにヒレのようなのが見えたウサ!」
ぐるんと振り向いたのは『特異運命座標』望春 ばに(p3p009739)であった。その視線の先にはしっかりとストレッチを行って居る『刑天(シンティエン)』雨紅(p3p008287)の姿がある。
「砂浜で走るものは聞いたことがありますが、水面も確かにトレーニングになりそうですね」
そう、此度は水上移動で水の上を走るのだ。疲れたならば水面でのんびりと浮いて海を楽しむことが出来る。
「足が見える方が宜しいんでしたね?」とパレオを外す雨紅に「勿論です」と頷いたのは『夜闇を奔る白』ピリム・リオト・エーディ(p3p007348)。
「夏ですねー、夏といえば海、海といえば水着、水着といえば脚!!!」
と、まあ、詰まりは脚が見たいのである。脚の観察をする『ついで』に、脚力を鍛える水面走りトレーニングを考案したのだ。
「走るのが無理なら泳ぐのも可としましょーか、走った方が脚が綺麗に見えるので可能なら走って頂きたいですがー」
「水面を! 走ると! 聞いて!」
勢い良く水面から飛び出した『跳躍する星』糸巻 パティリア(p3p007389)は瞳を輝かせた。
「拙者の得意分野での修行でござるな! いやぁ、こういう修業は大歓迎でござるよ!」
水着姿のパティリアは岩場を支えに海面を走り抜ける。パフォーマンスを思う存分に見せることが出来るのだ。(忍者らしからぬ目立ち方である)
「おっ、なんか面白そうなことやってんな。オレも交ぜてもらおうっと」
にんまりと笑った『彷徨う駿馬』奥州 一悟(p3p000194)は海の上って揺れるもんなと頷いた。この訓練の醍醐味だ。
「ふにゃふにゃのスポンジの上を走る方が近いかな……くそ、走るのむずいな……」
いまいちスピードは出せないが、それでも良い経験になる。熱中症にも気をつけるのがポイントだ。
「ぐぬぬ……あたしも負けてらんないウサ! 水上歩行も水中行動もないウサけど!
このアクロバットとこの反応とこのモード・スレイプニルとこの【移】スキルとあとなんやかやがあれば!
水面だってきっと走れる! いや絶対走るウサ! いくウサ! うおおお! ダーーッシュ―! ウサ!」
――軍事演習なんてやっていられるか! 俺は部屋に戻らせて貰うぞ!
『波濤の盾』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)は何時ものようにサボる為にやってきた、が、酒を飲んで熟睡していたエイヴァンはあれよあれよと言う間に樽に詰め込まれていた。
「……なんだこれは?」
どこぞのお嬢様の提案で、自身が訓練材料にされているのだ。安易にサボらせてたまるかというコンテュールの意地だ。
(いや、結局動けないのであればさぼっているのと同義なのでは?
それならまぁ、もう少し寝ていても問題はないだろう……)
その後エイヴァンがどうなるのかを彼はまだ知らないのであった……。
「とーちゃーん!
オイラも大人になってきたしよー、とーちゃんのような立派な海洋軍人になるためにも軍事訓練に参加するぜー!
最近色々きなくせー事も多いからよー、海洋の平和を守るためにも訓練がんばるぞー!」
えいえいおーと前鰭を上げた。『生イカが好き』ワモン・C・デルモンテ(p3p007195)は想像以上に訓練が厳しくて「くぅー!」と叫んでいた。
「だけどとーちゃんのような立派な海洋軍人になるためにゃこのくらいでへばっちゃいらんねーぜ!
もっとビシバシきたえてくれー! あ、とーちゃん、訓練で腹減ったから晩飯はイカたっぷり食いたいぞー!」
『紅風』天之空・ミーナ(p3p005003)は海洋軍人達に「久しぶり、でいいのかな?」と声を掛けた。
記憶を無くしてから来ていない。久しぶりなのか、そうじゃないのか。やや記憶が朧気だが、それは言う事ではないだろう。
「ほら、鉄帝動乱の時に援軍できてくれたでしょう?結構嬉しかった、んだから。改めてお礼をね」
肩を竦めたミーナは全てを覚えて射ないのは心苦しくとも『前の私』が記録に残しているから、伝えたいとそう考えたのだ。
「それで皆。きちんと訓練してる?サボってない? ……なんならまた、相手してあげようか?」
「よろしければ」と若い士官が声を上げた。ミーナは頷いてからするりと剣を引き抜いた。
潮風を受けながら『島風の伝令』島風型駆逐艦 一番艦 島風(p3p010746)は「武蔵姉と一緒 たのしみ」とワクワクとした様子でそう言った。
「碧い海……おちつく」
大和型戦艦 二番艦 武蔵(p3p010829)は「そうだな」と頷く。昨今では影の艦隊というものが迫ってくる現状を思い浮かべる。
「海洋王国の者と知見を共有したり、軍事訓練を行う事で見えるものもあるやもしれん。ということでだな、征くぞ島風!!」
「武蔵姉 海洋 どっちが強力?」
「確かに、海の上こそ我等が本領。武蔵も砲撃戦では負けぬつもりである」
「当方(わたし)は 速力 負けない」
その気持を大事に――二人はこれからの戦いに向けてトレーニングを続けるのだ。
「ゴミ拾いに来たわ!
きゃーっ! これがシレンツィオ・リゾート! 覇竜じゃ絶対ありえないような光景だわ!
息子達や孫達を連れてきたら喜ぶかしらね~~~~! ………あつい」
『紲の魔女』紲 冥穣(p3p010472)が声を弾ませる。想像以上の暑さでテンションが保てない気がすると息を吐いた。
この塵拾いが終ればBBQが待っている。その前に焼け死んでしまいそうになるのではと言う謎の危機感が冥穣を襲った。
サヨナキドリから派遣されて夏のビーチの塵拾いを担当す四人。『葡萄の沼の探求者』クアトロ・フォルマッジ(p3p009684)は「みんな、帽子と麦茶の用意は大丈夫 ?あら、冥穣さん精霊の力を貸してくれるの?とっても助かるわ」と麦わら帽子を被りながらくるりと振り向いた。
「浜辺は綺麗な方が気持ちがいいからな。真面目にやらせてもらいますか。
お貴族様も来るような場所だからな、基本的にはお行儀はいいだろうがみんながみんなそうってわけにもいかねえだろ」
『煙草のくゆるは』綾志 以蔵(p3p008975)は最近のシレンツィオは一般客も増えている事を知っている。彼が視線を送ればやる気十分の『苦い』カトルカール(p3p010944)の姿が見えた。
「もー! 浜辺は綺麗に! 常識だろ!? あっ、以蔵さんはちゃんと携帯灰皿使ってる。流石だなあ」
まあねと以蔵が煙草を仕舞い込む。サザエに魚に、肉、それから野菜。様々な料理を食べられるとやる気十分のカトルがBBQに向けてやる気を高めていった。
此れが終ればビールで一杯。観光地での酒盛りを思う存分に楽しむのだ。その為に今は我慢の時である。
何かが起こる前に思う存分酒を浴びる宣言をした『蛟』尹 瑠藍(p3p010402)に『欠け竜』スースァ(p3p010535)は頷いた。
「肝臓のトレーニングだよ!」
潮騒を聞きながら持ち寄った酒につまみ、それから翌日のための水弥薬を用意した。ヘスペリデスの植物で作ったらしい真・竜殺しやヴォードリエ・ワインも確り準備済みだ。
「よっしゃカンパイ、今日はトレーニングだ皆で肝臓をいじめ抜くぞ!」
「飲んで飲んで飲みまくりますわよ~~~!!
ガハハ!! 酒!! 飲まずにはいられない!!
あ、あそこにつまみがありますわ。違いましたわ焼き鳥でしたわ!!」
勢い良くアルフェーネワインを呷る『『蒼熾の魔導書』後継者』リドニア・アルフェーネ(p3p010574)。
その目線の先に居たのは漸く目を覚ました22歳の『空の王』カイト・シャルラハ(p3p000684)だった。
「軍事演習とかあるらしい。何のことだ? うぇーい! ラム酒は海賊のお酒らしいぜ、いやいや、船乗りだし、いいよなひっく」
ラム酒をストレートでちびちびと飲んでいると世界が回ってくる。後ほど、父が迎えに来るがそんなことも知ったことはないのだ。
肝臓のトレーニングとはイイ言葉だと頷いた『暗殺流儀』チェレンチィ(p3p008318)は練達で購入してきた焼酎や缶詰をテーブルに置いた。
「こういった飲み会は久々ですねえ」
こうした賑やかさも嫌いではない。ちびちびとマイペースに飲み続けるチェレンチィは周囲が死屍累々になりつつあることには気付いては居なかった。
「あ、やべ。酔いが回りすぎて滅茶苦茶なんか吐き気がしてきましたわ。
でも此処で天才閃きお嬢様なので良いことを考え付くのですわ。
そう、リバースしたらまた酒が飲めるという事。流石に海洋のきれいな海に捨てる事はしませんからその辺の路地裏が虹色になりますわ~~~~~!」
リッツパークが見える場所に『戮神・第四席』ウォリア(p3p001789)は立っていた。
休息もまたトレーニングであるとは言うが、それで大人しく休んでいられるほど悠長な姿勢を世界ハ許して呉れない。
黄龍に会いに行くこともブリギットの様子を見に行くことも出来た。
だが、二人に思いを馳せ、会いに行く機会は何れ巡ってくるはずだと思い直す。
(……なればこそ、今度こそは決して油断しないために、今は安らぎに背を向けて戦いを続けよう。
友との約束を胸に、如何なる敵をも討払ってみせる。
次こそは決して負けない――次こそは必ず、此の刃を届かせる)
抜き放った刃はぎらりと鈍い光を放った。戦いの時は、間近にある。
●練達I
とことこと練達でお昼寝スポットを探していた『ふわもこ虎猫(※名前間違えた)』ふわもこ きじねこ(p3p011261)は練達の街を歩いていたが――
「お昼寝スポットを探して……何にゃ? メカ? ロボット? にゃあああ暴走するにゃあああ!!」
此処はどうやら猫には厳しそうなのだ……ロボット達が歩き回る場所で早くお昼寝スポットを見付けなくては。
「……快適」
良いお昼寝スポットを見付けた『吸血姫』Solum Fee Memoria(p3p000056)はくああと小さく欠伸を振る。
建物の上で暖かな人工の太陽の光が心地良い。
『ネクロフィリア』物部・ねねこ(p3p007217)は『バシレウス』ザビーネ=ザビアボロス(p3n000333)と共に買い物をするのだと張り切っていた。
「さてザビーネさん服の好みとかは……。
あ、ストイシャさんやムラデンさんが用意してる物をいつも着てる……う~ん、二人とも良いセンスしてますね。
とはいえいつもと同じ服だと面白みもありませんし……」
上から下までまじまじとザビーネを確認していたねねこはにんまりと微笑んだ。
「よーし! いつも着ないような色々な服を試着してみましょう♪
ふふ~♪ 服も結構色々種類あってですね♪ 中々面白いと思いません?」
これから人の文化に触れていく事になる彼女が、思う存分に楽しめるようにと、それだけを願うのだ。
実家に帰省――と言いながらも帰る家は燃えて失われてしまっている。
執着しているわけではなく、これは『歩く禍焔』灰燼 火群(p3p010778)にとってただの墓参りなのだ。
「なんの墓参りだって? 誰の墓参りだって? さぁ? 聞いても面白くないんじゃない??
……けれど、俺には墓参りを義務的にでもしなきゃいけない相手がいる。それだけで十分でしょ?」
誰に言うわけでもなく、墓の名前も、誰が弔われているのかも分からぬ墓石を眺めてから火群は帰ろうと背を向ける。
死んだものは戻らない。だからこそ、火群も姿を眩ませた。
「んじゃ、トレーニングに精を出しまスかねー……なんスかその目は。いや言いたいことはわかりまスけど」
『おせっかい焼き』佐藤 美咲(p3p009818)をじいと見詰めたのは普久原・ほむら(p3n000159)だった。
「私の知り合いに鍛錬大好きなあの人いるでしょ?
奴が照れた顔をしながら花屋で向日葵を買ってまして……というわけでトレーニングの名目で尾行しまスよ」
「ジオルドさんひまわりを??? てれがおで???
さすがにくさ、あのガタイでひまわりは、しかもてれがお。ちょい若干興味ありますね、すごいあかんそう、くさ」
ほむらは好奇心に負けてしまった。美咲が男装をする代わりにほむらは女性的な格好を求められる。そう、カップルっぽい組み合わせの方が尾行の幅が広がるのだ!
――と、言うわけで。
「あ、このカップル限定パフェをお願いしまス。
ホイップマシマシ、コーンフレークマシ、チョコソースカラメで」
「え、まじそのパフェいくんですか?」
「いーじゃないでスか。どうせ私ら両方この先注文する機会ないんだし」
あーまあ、と頷いていたら――気付いたらパフェに圧倒されて撒かれてしまうのであった。
セフィロトはしんと静まり返っていた。『ジーニアスムーブ』リディア=フォン=ユーベルヴェーク(p3p005189)は日常を――そう、研究を行なうべき為に日々を過ごす者が多く居るのだ。
「折角だし、シャンパンでもあけましょうか? アタシ、一応、人より長生きしてるの。だからお酒呑めるのよね」
華やかな場所に行かないのは恥ずかしいからではないのだ。ただ、のんびりと過ごす。自由を謳歌するのも立派な時間でアル。
装備を調えながらも冷暖房完備とは実に素晴らしいことだと『ロクデナシ車椅子探偵』シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)は実感していた。
「もういっそ練達に引っ越そうかな、情報の収集も練達のアドバンテージは大きいしね。
まあ書庫(ギルド)があるから、滅多に戻ってこないわけだが」
シャルロッテは自身用にドール達をチューンして貰い、オートマタとリーダーを戦闘用に調整さえして貰えば一層綿密な指揮が出来るはずだと考える。
嗚呼、それ以上に涼しくて安心できるのだ。この涼やかさで夏を乗り越えたいところだ。
そんなシャルロッテと同じく冷房の恩恵を受けていたのは『蒐集氷精』アルク・テンペリオン(p3p007030)だ。
「練達は面白いものもそれなりにあるんだけど。
あんまり買うとアイス代とかがきびし……あ、でもなんか欲しいな。一緒にアイスとか買えばいいか、そうしよう……あー、涼しい……」
家電を蒐集してきたが、アイスクリームを食べながら氷精は思う存分に外に出たくはないという確固たる意志を固めるのだ。きっと、たぶん、めいびー。動きたくない姿勢であるのは確かだけれど。
『しゅみれぇたぁ』を試して欲しいと呼び出されたのは『豊穣神(馬)』エレン(p3p008059)であった。
「ROOに続く第二の体感型として?
データ取りの為にそういった獣種や旅人を中心に依頼している?
ううむ……どちらかというと馬としては輓馬に近いからサラでブレッドなデータは取れないと思うのだが……」
エレンは悩ましげだが、今来ている服は勝負服として設定されているから学生服に着替えろというのだ。
「授業を受けてパラメータを強化して下さい? これなんかそういうプレイなんじゃないのかって気がしてきたぞ。ちょっと興奮するな」
呟くエレンの傍で研究員が忙しなく動いているが――
「会長疲れた!! 練達の復興の手伝いからはじまって、静羅川とか綜結教会とかよくわかんない宗教の相手したりムカつく暴食おじさんの相手したりでもう何もしたくない」
『嘘つきな少女』楊枝 茄子子(p3p008356)は『何もしない』をしようと決めた。冷暖房完備のセフィロトは涼しい。最高だ。
「耳をすませば虫の声……とかよりはうぃんうぃんとかどごんどごんとか機械の音が聞こえてくる……うるせぇ。
でも寝るのもな~目を閉じると寝ちゃうな~会長目を閉じるとすぐ寝ちゃうからな~あ~、あくび。寝よ……」
「夏ですからね。巫女らしく怪異探索をしましょう。さて、タクシー幽霊というものはご存じですか?
端的に言えば、夜タクシーに乗せた『誰か』が実は幽霊だったという話です。遡れば江戸時代には既に話の原型はあったそうですよ」
淡々と告げるのは『ツクヨミ』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000668)であった。
語るツクヨミの言葉に耳を傾けながら『真竜鱗』オウェード=ランドマスター(p3p009184)は「そういえばツクヨミ殿はワシの仲間にどこか似ている気がするが……?」と首を傾げて。
「さて、タクシー幽霊を信じるか否かは個人に拠る所ですが夜妖に事の真贋など関係ありません。
この貯水池周辺で客を拾っていたタクシーが何台か行方不明になっている事件が発生しています。詳細は省きますが、状況から夜妖の可能性が高いそうです」
「まあともあれ、夜妖と言う奴は精神を鍛えるにも良い所じゃな!」
――そう、本当に夜妖なのであれば倒す事が出来る。けれど……?
●『タワー・オブ・シュペル』
久方振りにローレットに顔を出した『四季の奏者』鳶島 津々流(p3p000141)は「とれーにんぐの時期だったんだねえ」と頷いた。
「色んなところで色んな催し物があるようだけど……シュペルさんの所へ行く! っていう人がいるみたいだし、僕も行ってみよう。
前に塔に挑んだ時は会えなかったけど、今度こそ!
シュペルさんの、ええと、みどるねーむ? の謎が解けてから随分と経ってしまったけど、ご本人に確認するまで合っているかどうか分からないから……ちゃんと聞きに行きたくて」
――そのMは『毛布』のMだった! そんな風に認識した津々流は意気揚々とタワーに出発するのであった。
タワー・オブ・シュペルとシュペル・M・ウィリー(p3n000158)へ会うために姿を見せるイレギュラーズは幾人も居る。
「シュペルさんに会いに行けるかな?」
そう呟いてから眺めるが、どうにも中には入れてくれなさそうだ。『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)はバスケットを手に手を振った。
「お久しぶりーシュペルさーん! 元気してた? ヨゾラだよー!
領地で採れたり作ったパンとお菓子とジュースと猫おやつ! サンドイッチも作ってきたから一緒に食べるー?」
呼び掛けて見るが、シュペルはしんと静まり返っている。通常営業中だ。
扉ちゃんとはわかり合った経験のある『狙われた想い』メリーノ・アリテンシア(p3p010217)が勢いよく武器を振りかざした。
「しゅぺるちゃぁん! ロボちゃんに言ったからきいてたでしょ? ドーナツたべましょ。
ちゃんとシャンパンも持ってきたわぁ!
そろそろ近くまで行けるのかしら、次の扉ちゃんとわかりあえばいいかしら?
ねぇしゅぺるちゃん、わたし、アイスのラテがいいわぁ、ハチミツいれてね! 次のおやつは何が良いかしら?しゅぺるちゃん何がいい?」
ガンガンガンッ(強行突破しようとする音)
シュペルは反応しない――そう、まだ、まだ彼は我慢している。
「シュペル! シューペールー! 聞こえてんでしょ!
このあたしが折角来たんだから顔くらい出しなさいよ! ほら、お弁当も作ってきたんだから!」
こちらも遠慮無く進む『願いの先』リア・クォーツ(p3p004937)だ。調子の悪い自分の姿を見せたくなかったが、よく考えればシュペルの元には余り生物が居ない。寧ろ旋律が聞こえないから好都合だと元気よくやってきたのだ。
「あのさ、シュペル……色々ありがとね。
メテオスラークと戦っている時、ほんの少しだけアンタの音色が聴こえたの。
アンタの手を借りるのはあんま好きじゃないけど、まぁ一応お礼はいっておくわ! ――おい、聞いてんのか!」
ガンガンッ(メリーノが強行突破しようとする音)
「さぁ今日こそ頂上まで行かせてもらうぜ! 待ってろよシュペル!」
何時ものように攻略を目標とする『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)。ソロで挑戦している錬は安全策をとりすぎて同時にアタックしているイレギュラーズに遅れはとらないと(真面目に)トライしていた。
ガンガンッ(メリーノが扉を叩く音)
そう、錬は真面目にトライ中なのだ。
「束の間の休息に来たぜ、先生。まあ、日課だから別に良いだろうさ。
先生の塔でがむしゃらに鍛錬するのは、俺の休息の取り方でもあるからなァ。仕事じゃないし!
今日も塔のどこまで登れるかチャレンジだ。最高記録、更新したい所だな」
こちらも真面目に攻略を目指している『祝呪反魂』レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)。
自称・シュペル先生の弟子状態で終るつもりはないのだ。しっかりと認めさせるためにずんずんと進んで行く。
「これが塔?」
不思議そうな顔をしたのは『浮草』劉・雨泽(p3n000218)であった。その傍にはにんまりと笑っている『くれなゐに恋して』サマーァ・アル・アラク(p3n000320)の姿がある。
「すごいね! あ、雨泽。祝音とアタシの荷物持って」
お目付役でもある雨泽は小さく頷いた。
「お邪魔しまーす」
「お邪魔してます! 初めまして、シュペルさん!」
そろそろと挨拶をする雨泽とご挨拶をするサマーァ。元気よく挨拶するのはおじいちゃんに教えられたことだ。
トランプも持ってきた。彼が一人では寂しいと思ったからだ。雨泽は「菓子折とか持ってきた方が良かったかな」と呟く。
「シュペルさん、初めまして……祝音っていいます。みゃー」
ご挨拶をする『祈光のシュネー』祝音・猫乃見・来探(p3p009413)はリュックサックの御弁当でも摘まみながらのんびりと登っていこうと二人に提案した。
皆でワイワイと昇っていくのも屹度楽しい――が、扉が一枚(メリーノによって)破壊された時点で
「喧しい!!!!!」とこの塔の主の声が響いたのは、致し方がないことなのだ。
●練達II
『妖精騎士』セティア・レイス(p3p002263)は堂々と言い放つ。
「わたしセティア。エアコニストだよ。いっとくけどこれトレーニングだから、たぶん。
エアコニストは希望ヶ浜のエアコンきいてるとこに少し詳しいておもってる人だよ。
これエアコンがん冷えのとこでポテトチップスたべたりソシャゲしたりホットココアとか飲む会だから。だれ来てもだいじょぶ」
「まあ、エアコニストですか。練達(セフィロト)にはいろいろなお仕事があるのですね。
この暑い中で気温を自由に出来る冷暖房管理はすごい技術ですし、それの利用の専門家が居ると云うのもうなずける話なのです」
合点が言ったように『旅人自称者』ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)は家電量販店に訪れていた。
暑い中で敢て涼んでマッサージチェアを駆使するという。素晴らしい叡智の結晶が此処にある。
親雄 くるみ(p3p009317)は「ここが家電量販店ですか!」と驚いた。空調が効いていて涼しいのだ。
セティアの言う通りだ。『エアコンがん冷え』の空間で思う存分楽しむことが出来る夢のテーマパークそのものである。
『無尽虎爪』ソア(p3p007025)はにんまりと笑ってから「セティアさんがいるとローレット・トレーニングやってる感じするねー!」と頷いた。
「もっと温度下げちゃう。もちろん強風。ふっふー、涼しくなったかしら。あっ、この感じ。銀の森を思い出すの」
お店の空調を弄ってしまうソアを店員さんが襲ってくる可能性があるが、虎は此処では挫けない。
『あつまれ! けだものの森』でもやってのんびりと過ごすのだ。あれ、これって――「虎が居ない!」
「あと10連だけ……! これで最後にするから……!」
財布も鍛えてしまっているソアを見詰めながら『砂上に座す』一条 佐里(p3p007118)は「ゲームプレイをより素晴らしいものにするためにスマホの契約を迫ってきますよ」と囁いた。
「ですが、我々もトレーニング中。夏には、夏の力を最も蓄えたものが強くなる……当然の摂理ですね。
エアコンのガンガンかかってるフロアで、扇風機とサーキュレーターが回ってる一角はかなり強いですね……。
夏の力をひしひしと感じます……快適すぎて、ここから動けなくなるくらいの……すごい強大な……夏の力を……」
――凄く、永遠に呼び掛けられている気になる夏です。
扇風機とサーキュレーターで強風を浴びせられれば最早冬に近付いている。けれども佐里は臆することはないのだ。
「寛ぐなら……いや、ロレトレならセティアのところと決めている。希望ヶ浜は適当に店に入っても大体涼しいからすごい」
――今くつろぐって言った? 『竜剣』シラス(p3p004421)は堂々と告げた。
セティア曰くすずしい扇風機ゾーンと、アイスの自販機にジュースの自販機。マッサージチェアも使い放題なのだ。
待って、涼しい扇風機ゾーンに今何か居た。「うぃーん」。『未来を結ぶ』アルヤン 不連続面(p3p009220)だ。
「あとこれゲームのコーナーこれあそびほうだいだからじっさい。そっちはいったらだめスマホ契約の人襲ってくるから危険がちめに」
「まあ、貴女ほどのエアコニストが言うのですから、すごいトレーニングになるのでせう。
最初に申しました通りエアコニストと云う職業は初見ですが……このスマッホ? の契約を迫って来る方々は倒いして良い?」
ヘイゼルは不可思議そうな顔をして『スマッホの契約を迫ってくる者』を眺めて居たのであった。
「エアコンは正義」
語彙を喪うほどの熱さに『冠位狙撃者』ジェック・アーロン(p3p004755)は頷いた。セフィロトは『それっぽい夏』を演出しすぎだ。抗議するべきだろう。本来ならば適温を保てるはずだというのに。
「この大型家電量販店の中でも特にエアコンが効いてるのは……ココ。ベッドコーナー。
サイドテーブルにアイスココアを置いて寝転ぶのが最高。
ガチめに寝ちゃうと店員さんに襲い掛かられるけどちょっとくらいセーフだから。……………セーフだよね?」
店員さんの目を掻い潜り圧に耐えてのんびりと眠るのだ。そう、これだってトレーニング。トレーニングだから。
「っぱ練達だよなー、夏ならなー!」
シラスはそんなことを言いながらマッサージチェアへと腰掛ける。
「おっ……すっげ! すごいところグリグリくる! うお!」
突かれたからに心地良すぎる。此の儘マッサージチェアを思う存分に楽しんでから、エアコンがガンガン効いたこの場所でカップ麺を頂くのだと心に決めた。
『ノットプリズン』炎 練倒(p3p010353)は驚いた様子でエアコニスト達を眺めて居た。
「この家電製品とは実に凄いであるな
簡単に原理は理解したであるがこれには先人の血と汗と涙の結晶、つまり努力とインテリジェンスの積み重ねこそが正義であるな」
溶ける巨大蜥蜴になれてしまうインテリジェンス。これこそ、叡智の結晶なのだ。
「家電量販店……アス知ってるにゃ。。
最近の家電量販店は上の方か下の方にスーパーなマーケットや本屋さんとかあるお店もあるらしいにゃ。
アスのモフモフは黒毛で太陽がより熱々に感じるから、今日は本読みながら涼みたいですにゃ」
『お外はワクワクしますのにゃ』蔵音 アステール(p3p007937)は知っていた。購入前の本を試し読みできちゃう本屋さんにはカフェも併設されていることが多いのだ。
迷子センターは絵本などが多いだろうが、それらもアステールならば読むことが出来る――あ、保護者はいらっしゃいますか?
「アスはおうちが見つからない迷子だからセーフなはずですにゃ」
……本当かな?
「くっくっく……堕落の本音が聞こえるぞ」
いつもの通り『完璧な執事を目指す執事』パーフェクト・サーヴァント(p3p006389)はポーズを決めていた。
「甘露が無くなった、パンの代わりに食べる物が無くなった、純白の雪を浮かべたくなる褐色が冷めてしまった……。
そんな時こそ我の出番だ……我が堕落への誘いを拒絶し、内に秘めし力を開花できるか……見物だな」
そんなことを言いながらエアコニスト達は堕落をさせる品を調達できる世界にとっての脅威だと認識し――「コレに屈するべからず」と先んじてトレーニングに励むのだ。
そう暑いから涼んでいるのではない。必要不可欠な涼しさを謳歌し、それに対抗する術を身に着けているだけなのだ。
『散らぬ桃花』節樹 トウカ(p3p008730)ははあと息を吐いた。
「……このエアーコンディションナー? とやら、豊穣にも欲しいなー……。
マッサージチェアとやらも欲しい……風呂上がりにあああーーーとなりながら冷たい牛乳が飲みたい。
いいな、エアーなんとか……これ冬は温かくもできるんだろう?
炬燵とはまた違った良さを感じられそうだ……炬燵は火傷や事故が怖いからな……。
くっ……すまない、俺はも、う……ここまでのようだ……先に夢の国で待って、る……がくり。すぴー……ぐがー」
余りの素晴らしさにトウカの意識は奪われていく――
『永炎勇狼』ウェール=ナイトボート(p3p000561)は猫を『希うアザラシ』レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)に預けていた。
「きゅっきゅっきゅ……レーさんは気づいてしまったっきゅ。
この家電量販店においていくらでもいていい場所。店員に注意されない場所……それは此処、迷子お預かりセンターっきゅ!」
涼しい上に子供向けとは言え絵本やぬいぐるみがある(ただし店によってピンキリでアル)
「自販機で買ったアイスを食いながら人をダメにするソファで……
えっ、飲食持ち込み禁止っきゅ? 練達なのに人ダメソファないっきゅ……?」
困惑するレーゲンを迎えにやってきたのはウェールだった。『反省しろ75歳児』と叱るウェールの声が聞こえてくる。
「ちゃんと涼めるよな?
練達とかたまにとんでもない発明品やヤバいゴーレム関係の依頼が割と出てる印象なんだよな……大丈夫だよな……」
「それはなかったっきゅ、ワーイ、アイス」
ちゃんとアイスを購入してくれる辺りウェールは優しいのだ。
「怪飛翔体のェクセラディゥムだよ。よろしくね」
機械には詳しいのだと『天頂の翼』ェクセラディゥム・アルフェレス・ヴィルフェリゥム(p3p011270)は頷いた。
「やはり空調。空調は全てを解決する。やっぱ夏場は練達の街から出たくないね……冬もか」
その割に再現性東京は酷い気候を演出しているのだが。それは兎も角エアコンについての豆知識だって『トレーニング』だ。
「エアコンは空気から暑いと冷たいを分ける機械で、部屋を涼しくする代わりに外に熱を排出してるんだ。だから室外機から熱風が云々」
そんな説明を聞きながら人間の真似をしてごろごろと涼んでいるのは『頂点捕食者』ロロン・ラプス(p3p007992)だ。
●練達III
ここは再現性東京の希望ヶ浜学園。とある美術室である。
講師である『せんせー』ロジャーズ=L=ナイア(p3p000569)は『竜宮の少女』マール・ディーネー(p3n000281)と『竜宮の乙姫』メーア・ディーネー(p3n000282)を召集していた。
「貴様、貴様等! 特別授業の時間だ。各自、謂われた道具その他は用意した筈だが、嗚呼、勿論、道具は個々の好きなものを使えば宜しい。私が貴様等に貸し出せるのは……粘土と絵具だ」
「粘土だって」
「何かを作るの……?」
ぱちくりと瞬くマールとメーアに「如何にも」とオラボナは頷いた。
「マール、メーア、その他、互いの姿が反射する硝子製の作品は如何だ。
これは提案故に拒んでも問題はない。Nyahahahahahahaha!」
ロジャーズの指導を受けながら『新たな可能性』ミスト=センテトリー(p3p010054)は粘土で何を作るかと悩ましげにしていた。
「『己』を表現する……ならやはり俺の根源でもある海だろう。
まずは海の生き物から挑戦し、そこから海のジオラマにまで取り掛かってみるぞ……ああそうだ。『芸術』だ。『己』をもっとさらけ出せ」
粘土を造形しながらミストは細かく海の生物の造形を作り出す。そのイメージこそが己の存在を確固たるものにするのだろう。
「えへへ、ピリア学校は依頼でしかいったことがないから、じゅぎょー受けられるのうれしいの♪
ロジャーズさん、よろしくおねがいしますなの♪ うみちゃん、いっしょにがんばろうね!」
きらりと瞳を輝かせたのは『欠けない月』ピリア(p3p010939)であった。うみちゃんを粘土で作るピリアの傍では粘土でぺたぺたと画用紙に手を引っ付けるうみちゃんの姿がアル。
「粘土ってふしぎなの……ぺたぺた、かわいくなりますように~♪
なんだかちょっと、おかお大きくなっちゃったけど……あ、あしダンダンしないでほしいの~! ごめんなさいなの~!」
可愛くするのは必須なのだ。
そう、ロジャーズが夏期講習をするように、希望ヶ浜学園は夏休みだ。
と、言っても『優しき笑顔』山本 雄斗(p3p009723)は夏休みの宿題がなくなるわけではないことをよく知っていた。
「毎年夏休みは余裕ぶっこいてるにゃこだったんですけど今年は違います!
今年は……勉強……します……! 嫌だけど……! だって、勉強しないと進学できないって!」
心底嫌そうな顔をした『可愛いもの好き』しにゃこ(p3p008456)は参考書を手にしていた。
もう少し青春を先延ばしにしたい。だからこそ、進学したい。実家に帰るのもいやだから、勉強をしないといけないのだ。
「まずは数学! いや全然わからん!! 問題用紙食べちゃいましょうかね! むしゃむしゃ! 食べて学ぶ!
国語! 作者の気持ち全然わからん! もう駄目かも!」
食べて学べる専用のアイテムでも作って貰った方が良いのでは!?
夏休みでも保健室は通常営業中だ。熱中症の対応や怪我の対応。何時も通りの仕事をして過ごす『陽だまりの白』シルキィ(p3p008115)はやりがいもあると頷いた。
(……ここまで、本当に色々なことがあった。色々な出会いがあった。
結局、自分が何者なのかはよく分からないけれど……"この世界に来られてよかった"ってことはよく分かる。偶然に感謝しかないねぇ。
まだ、わたしにやるべきことは残っている……それはきっと、大仕事になる。
だからこそ、こういう日常のお仕事も大事にしなくちゃだよねぇ)
そう決意をしてから一念発起。まだまだ努力を続けなくてはならないのだ。
「覇竜から出て色んな国をまわる度にビックリしたけど、特に驚いたのが練達だよなぁ」
社会見学をしたいと申し出たら何と、同人イベントの売り子に抜擢された『ラッキージュート』ジュート=ラッキーバレット(p3p010359)。着用して居るのはスーツである。
「スーツでいいの? もっとメイド服とかバニーとか派手な服装のコスプレをさせられるのかと思ってた。
こんな地味な服装で本当にいいのか。びーえるの世界ってよく分からないんだぜ」
『姉ヶ崎先生』姉ヶ崎 春樹(p3p002879)は大丈夫だと頷いた。何せ今回のテーマはリーマンモノだ。『自由医師』御幣島 十三(p3p004425)と『鋼の咆哮』ヴァトー・スコルツェニー(p3p004924)をスタッフに引き入れて最高の作品が出来たと認識している。
「おまけにドラマCDを用意したのも良かったな」
大きく頷く春樹。攻めの部下役は演技慣れして居る『黒響族ヘッド』冬越 弾正(p3p007105)に、初々しい受けとして『あなたは差し出した』ハインツ=S=ヴォルコット(p3p002577)を添えたのだ。
「この布陣は鉄壁としか言いようがねぇ!」
ついでのように売り子も最強の布陣揃えて――あ、此れは次のネタになりそうだと春樹はそそくさとメモをとる。
(――聞いちまったんだ。大手にもなりゃその日一日だけで何百万Gも稼げちまうって!
こいつぁボロい商売だぜ。俺達には異世界からの刺客・姉ヶ崎てんてーがついてんだから!)
『甘い香りの紳士』朝長 晴明(p3p001866)はそんな甘いことを考えて居た。スーツのポケットに金をねじ込んだことを春樹は見逃すまい。
「ちぇー……」
金庫番を外された晴明は暇そうに唇を尖らせた。ドラマCDでは『受』に言い寄っている噛ませ役社長を任された。役と言えども社長は気分が良かったと笑みを浮かべる晴明へ「最後尾札」と『天届く懺悔』トカム=レプンカムイ(p3p002363)が声を掛ける。
「はーい皆押さないでくださーい、壁際にそってちゃんと整列してくださいねーっと」
偶にはこんな平和な仕事を引き受けるのも良いのだ。そんな列の中に『タロットも任せとけ』札貫 リヒト(p3p005002)を見付けてから「おーい、姉ヶ崎せんせー、ローレットのッ」と声を上げたトカムは蹴り上げられる。
「おい! 久しぶりでやんすとか挨拶してんじゃねぇ! 俺が誰かバレちまうだろうがぁっ!!
クソッ、わりのいい仕事って聞いてたんだ。確かに自給換算でいえば羽振りのいいクライアント様だと思うけどよぉ、何なんだこのドージンイベントってのは!」
どうやら買い物を任されていたらしい。慌てるリヒトの様子を眺めながらジュートは「暴れないで下さーい」と売り子が板に付いてきている。
(フッ。初心者のジュート殿が参加する上に、あの姉ヶ崎先生に教えを乞うと聞いていたから、もっときわどい事をやらされないか心配でついて来たが……杞憂だったようだな)
弾正は頷いた。ジュートも楽しげに作業を行なっている。練達の人々からすればサラリーマンは馴染みが深く在庫を抱える可能性をも考えて居た弾正は日常に近いからこそ売れに売れている様子に目を瞠ったのであった。
「あっちもこっちも熱狂しすぎてて耳がキンキンしますぅ……
私は哀しい。子孫が金にがめつすぎて売上金をピンハネしようとしている事に気づいてしまったのだから……。
でもそういう不幸な自分に酔っていたりもしますので、うっとりしながら金勘定を代打で任される事にします」
しくしくと涙を流す割にちょっとだけ幸せそうなクロサイト=F=キャラハン(p3p004306)。そんな様子を眺めながら完成された同人誌を見詰めていたハインツは「姉ヶ崎」と呼んだ。
「ところでこの登場人物、俺と弾正にビジュアルが似すぎてる気がするんだが、プライバシーとかそういう部分は大丈夫なのか姉ヶ崎。そのうち誰かから刺されても知らんぞ姉ヶ崎」
「ええ?」
にんまりとした春樹にハインツは気にしないなら良いと首を振る。
「まったくもー、何であんな数日もエナドリ飲んで無茶しちまったんだか……。いや、元はといえばヴァトーが悪い。
人間の感情を知りたいから同人活動とやらを手伝ってみたい、とか言うからさ。
手伝ってやるなんて気軽に言った俺も悪かっ……いや、ミリ単位も悪くないね!
おかげでこちとら徹夜続きでくたくたですよー……ロレトレ、過去一キツかったかもしんない……」
スペース裏でぐったりとしている十三はヴァトーにマッサージをされながら「何故怒っているんだ?」と不思議そうに首を傾いでいたのであった。
「今回の新刊はベルゼー本です!!!!!」
『夢女子』マグダレーナ・ティーメ(p3p007397)はどうどうと宣言した。
「ヘスペリデスでのことは報告書で知るのみなんだけど、こうね!!!
ものすごくビビッときたので! 一週間でやりました! ありがとう印刷会社!!!
許してヘスペリデスのドラゴン達! ……まぁこんな所にはこないからいいでしょ」
安心信頼辛い事が何も無い練達パロ。夢主は『ベルゼーおじさま』が大好きだ。しかし、おじさまは複雑な家庭環境(多分、跡取りがどうとかお家の責務がなんとか)と、年の差でうじうじしているのである。
「けれどね! 最後には自分の家族の事とか全部捨てて夢主ちゃんと新天地で幸せになるのよ!
うおおお!!! 史実!!! ほぼ史実!! 現実が私に力をくれる!」
そんな声を聞きながら『お前も愛を知らせてやろうか!』ナズナサス(p3p001053)はその場に立っていた。
「知っていますか。夏は戦場と等しき即売会がある事を。
愛を知る者としては、過酷な戦場とあろうとも行かねばならないのです。
理由など要らない。聖書(薄い本)がそこに沢山あるのだから……!」
それは仕方ないのだ。毎年恒例の聖書売り場にやってきたナズアンサス。去年よりも人が多く賑わっているように感じられる。ナズナサスに地雷はない。びびっと来たものを片っ端から購入するのだ。
「まぁ今年も色々な愛が……特に人化したドラゴンの話が増えていますね。
これもイレギュラーズの影響でしょうか? まぁ擬人化は何処も魅力的で人気ですものね! 増える事はとても良い事です!」
●練達IV
「珍しい建物がいっぱいあるし、どこに行ったら良いのかわからないのが問題かもしれない……おのれ、練達!」
ぐうたらスポットを探し歩いているのはクリスハイト・セフィーリア(p3p007781)だ。世界が焦臭くなってきているが何となく安全そうな気配を練達に感じたのだ。
疲れ切った体をリフレッシュさせるには睡眠学習というトレーニングがぴったりだとクリスハイトはそそくさと安全地帯を探して眠りに落ちるのであった。
自宅であるザ・タワークレティアンにて。『約束の瓊盾』星穹(p3p008330)と『約束の瓊剣』ヴェルグリーズ(p3p008566)はのんびりと過ごしていた。
子ども達は寝静まった。それから――
「ヴェルグリーズ。貴方は、私のことを知りたいと思いますか?」と星穹は囁いた。
彼女には過去の記憶がない。厳密に居れば忘却している。それに触れる機会が増えてきているのだ。だからこそ問うたのだろうとヴェルグリーズは星穹を眺め遣る。
「過去のことも、何も。まだわからないきっとこれからも、……恐ろしくて。
立ち止まってしまうことも、増えてしまうけれどそれでも、手を握っていてくれますか。
……ううん。握っていて、欲しいの貴方に、私のことを知っていて欲しい。だから、ついてきて、くれますか」
「俺はキミのことはなんだって知りたいし受け入れるつもりだよ、大事な相棒だからね。不安に思うならその手を握ってどこにだって一緒についていくよ」
ありがとう、と囁いた星穹は「あなたが思うより、ずっと、私にとってあなたはうんっと、とくべつなんです」と囁いた。
「ねえ。この間。……サプライズ、くれたでしょう? だから、私も。キス、して。……いい?」
「あぁ……この間の花火の時の……サプライズというか、そうしたいと思っただけなんだけど。
俺がそう思ってしたことなんだから……キミのそれを拒む理由は俺にはないかな」
――揶揄うように、声音が落ちてくる。
「再現性東京での懐かしの花火大会や夏祭りも捨て難いけど……」
『比翼連理・護』藤野 蛍(p3p003861)は唇を震わせてからちら、と傍らの『比翼連理・攻』桜咲 珠緒(p3p004426)を見た。
(今日は何といっても珠緒さんとの、けけけ結婚式の下調べなのよね。
これは人生最大の試練と言っても言い過ぎじゃないわ。全身全霊を込めてこのミッションに挑まなくちゃ……!)
心臓が高鳴っている。即ち結婚式に集中し、超絶重要打ち合わせに集中する珠緒は会場、衣装、立会の依頼等々。珠緒と蛍の二人為のためだからとより細かな気遣いを行なっていきたいと調べ続ける。
「はっ……。
式場で隣に立つウェディング姿の珠緒さんを想像しただけでヒートアップしちゃって、その後のあんまり記憶が無いわ……。た、珠緒さん! 式場の検討とか上手くいったのかしら!?」
「はい、蛍さん 打ち合わせは滞りなく。桜花水月と書面で控えもありますので、期日までじっくり詰めましょう」
今年の夏は暑すぎるとアドネ・アダラード(p3p007396)は冷暖房完備のセフィロトにやってきた。
「セフィロトだと……マッドハッターとかは居るかな?
前に来た時は彼と愉快なお茶会をしたんだ。今日はとっても良い日みたいだからさ。またお茶会をやってないかな?」
アリスの衣装を身に纏ってアドネも御茶会に参加だ。マッドハッターは何時如何なる時もお茶会をしている(そして怒られている)のだ。
『傾国邪拳士』弥狐沢 霧緒(p3p001786)は小さく笑みを零した。
「フォフォフォ……コココココ!
苦節数ヶ月……うまいことメーカーを抱き込んで作らせた。新カードゲーム『デュエルモンスター娘』
市場に紛れ込ませ……紆余曲折あったものの徐々に流行りだしておる!
カードバトルにはまり込む年頃の坊主をうまい事誑かしてなんかいい方向に持ってく!
奴隷確保☆逆光GENJI計画! 一部の隙も無い!
……ちょっと響きがホビーアニメの女幹部そのものなのは置いておくのじゃ」
最強デッキを手にしてチートカードで闇のゲームを仕掛ける事を目論んでいるのである。
(……何をしよう……と言っても……いつものように……僕は帰るんだけど…ね……)
『青混じる氷狼』グレイル・テンペスタ(p3p001964)はフローズヴィトニルについてのレポートを纏めていた。
「……このレポート……ちょっと出そうか迷ったけど……それだと……成果が無くなっちゃうから……
……でも……殆どは報告書になぞらえた情報だし……大丈夫……だよね……?」
魔術書を図書館で借りた後、『凍結』を再現すべく、研鑽を積む。獣式の新たな誕生のために努力は惜しまないのだ。
「6年、か。この混沌に喚ばれてもうそれだけ経ったのだな。
同時に動き始めた冠位魔種も残りはあとわずか……私達がここに喚ばれた理由が冠位魔種の撃破による世界の滅びを止めることなら、あと少しでそれは果たされるのだろうか」
『電ノ悪神』シャスラ(p3p003217)はセフィロトでの装備更新や改良を行なうことに決めていた。
研究者へのデータの提出と合わせ、出力などを出来うる限りの調整を行ない続ける。そうして、戦力を整えるのだ。
「うむ……冷気を操るのが元世界で得意だった反動からか……。
混沌で力を剥ぎ取られて『夏の暑さ』が此処まで過酷だった事にやっと理解が及んだぞ。
つまり無意識に自分好みの温度の冷気をヴェールの様に纏う事で体感温度を調整していたのだな……」
改めて自らの能力を察知した『零度戦姫』スティーリア・ツンドレアス・シャンデル(p3p009288)。だが時既に遅し――だろうか。
「……本日混沌外気温3○度!? 湿度ウン十%!?!? つまりアレか?
平熱の人体と同じ様な感じの空気に包まれていると言う事か!? ええいこんな日に外出するのはバカのやることだ!
しかし……ドームの中に入ってしまえばなんと快適な事か……す・ず・し~~~♪ 最高……♪」
もはやトレーニングが終っても暑さが薄れるまでこの場所から出たくはないと、そう考えたスティーリアなのであった。
「世間は夏休みだよねー。熱くてやってらんないから、
普段涼しさが欲しい時はパチンコ打ってたりするんだけどね」
からからと笑った『借金何度目ですか』九燈 煉(p3p009656)は「夏は夏でおっきなレースもないからなあ」と呟いた。
「競馬も気軽にできるしねー。
あとはそーだな、祭りの屋台てきとーに回りながらサッカーの試合予想とか立てればいいか。
競馬中継垂れ流しながら境内とか練り歩くのも乙だよねー」
どこから軍資金が出ているのかは秘密だ。後ろで借金取りらしき者が伸びているが、多分熱中症なのだ。そう、何も悪い事なんてしていない。
「いやはや流石に連日この暑さはしんどいしね、流石に夏バテしそうだしねぇ。
……それにそろそろこうやってルナール先生と歩いてみたかったし」
揶揄うように見上げた『月夜の蒼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)に『片翼の守護者』ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)は目尻を下げて微笑んだ。
「あぁ、ルーキスはそろそろ暑さにダウンしそうだなぁ。
ふっ、見慣れない物も多いだろう? ……特に電子機器の説明なら任せておけ」
彼の故郷にそっくりだというこの場所をルーキスは一度くらい堪能してみたかったのだ。
どうせならば故郷に連れて行ってやりたいがそうも行かないからこそ疑似体験だ。
「教師としてならよく来るけど、こうやって本当に息抜きで来るのは初めてだよね」
「うむ、仕事でしか来ないからな普段は」
苦い笑いを浮かべてから頭を撫でるルナールにルーキスは「こういうのも楽しいよね」と囁いた。
怪談喫茶ニレンカムイで『Enigma』エマ・ウィートラント(p3p005065)は何時も通りを過ごす。
いつもは喫茶店で働く三人に休日を上げるのだ。喜ぶ声を聞きながら小さく笑みを浮かべる。
「あの三人、本当の親子のようで微笑ましい限りで……くふふ、晩御飯はわっちが振る舞いんしょう。
わっちがいない間に何があったか。その時にでも聞かせてもらいんしょう」
――ただ、何時もの店員の行方を捜されたのは少し困った事なのだ。
猫の姿になった『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)が尾を揺らがせる。
クーラーの下でアイスティを飲みながらのんびりと過ごす『猫鬼憑き』綾敷・なじみ(p3n000168)は「行っておいでよ」とあざみの尻を叩いた。
「ここ最近は人として過ごす事が多すぎてな。そろそろ、鈍ったねこスキルを鍛え直したいのだ」
爪とぎにキャットタワー昇り、なじみに頼んでねこじゃらしをふりふりと振って貰う。
猫らしく動かずにどっしりと構えるあざみに「たまきちは動いてるのになあ~」となじみが頬を膨らませる。
「そうだぞ。あざみ、こうだ!
大丈夫だ、なじみ。これは立派なトレーニングだぞ。イイ感じに動いた後は猫用おやつの時間があるんだからな」
「おやつかあ」
あざみは「そんなのしなくてもくれるよね」と言いたげになじみを見上げている。
「たまきちにしかあげないからね」
「ええー!?」
じたじたと動いたあざみは拗ねたように丸くなって眠り始めたのであった。
「案外気に入ってるんですよね、美術館」
そんなことを言う澄原 水夜子(p3n000214)の世を追掛けて『無情なる御伽話』ミザリィ・メルヒェン(p3p010073)は初めての美術館にやってきた。
「読書ならたくさんしてきたのですが、美術品を直に見るのは初めてです。
自分は絵心がないので、画家の目に世界がどう映っているのか不思議でなりませんね……」
抽象画は特にイメージの受取りに困ってしまうとミザリィが眉を顰めれば水夜子は「人それぞれに委ねられると難しいですよね」と頷いた。
「……みゃーこには、私はどう映っていますか?
狼は、童話や絵本でもしばしば悪者の象徴として扱われます。みゃーこは、狼が……私のことが怖くないですか?」
「怖くなどありませんよ。言葉が通じ、私を私としてみてくれている。それ以上がありましょうか」
奥底に眠る暴食を見たときに彼女はどんな顔をするだろうか。僅かな不安を飲み込みながらミザリィは次の展示へと向かう水夜子の背中を追掛けた。
「僕の部屋、よかったら来ない?」
『綾敷さんのお友達』越智内 定(p3p009033)の誘いを受けてからなじみは「わかった」と二つ返事だった。
女の子を部屋に呼ぶ日が来るなんて。定は緊張していた。部屋は一応掃除をして置いた。それで嫌われる事は無い筈だ。
「あのさ、見てほしいものがあって」
「何だい? ……ふふ、君らしいね」
ノートパソコンを覗き込んだなじみは悪戯ッコのような笑みを浮かべていたが、ぱちくりと瞬いた後困ったように目を細めた。
これまでのなじみと、それから『いつもの』四人で遊んだときの写真のアルバムだ。
定にとっても記憶にない写真も多い。なじみにとっても、かもしれない。
それらにはパスワードが書けてある。まるで今の自分には触らせたくない思い出のように感じられたのだ。
「……以前の僕は、それだけ君が好きだったんだね。今だって、僕はそうなんだって言えるよ。
けどさ、言えるけれど、足りない物も多すぎる。だから、このアルバムに負けない位これから君と共に居たいと思ってる。これが今の僕の気持ち」
「私はさ、過去を取り戻したいとは思ったことないんだ。でも、その代わりに、それに負けないくらいの日々を君と過ごしたいよ」
四季折々、何をしようか。君が喜んでくれる様な大切な思い出を詰め込むように。
「さて、花火でも楽しみましょうか。
……訓練? あー、してますしてます。こう心の情動を促すことで精神的な強さを鍛えてるんですよ。
私達みたいなタイプって心が死んでますから。割とさくっと体の方も死に急いでしまうんですよね」
それっぽいことを言ってから誤魔化している『特異運命座標』ナイン(p3p002239)はぱちぱちと弾ける焔を眺めて居る。
多摩市には元の世界っぽい夏休みも良いかと思った、けれど皆、忙しなく動き回っているらしい。
『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)は独りで夏祭りを歩き回る。ラムネと焼き鳥を手にしながら土産を選んでぶらぶらと歩き回った。
「フランクフルトはたしかマスタードを大量に……こんなクッソ辛いに決まってるものよく美味そうに食うよな。後は焼きそばと……何スかこれ」
からりころりと下駄鳴らした『正しいことのために』イルミナ・ガードルーン(p3p001475)は「夏祭りの季節っすねえ」と呟いた。
「味自体は結構チープな感じではありますけどね。
お祭りで食べるチープでジャンクな味、これがまたサイコーなんスよね!
そして……定番の屋台の中に混じる流行り物!
おそらく今年しか食べられないであろうという儚さが美味しさにひとスパイス加えてますよね~!」
イルミナは屋台を廻りながら心を躍らしたのであった。
折角の夏休みだ。日常に『蓋』ができているというのは感動さえも出来る。
『『東京』生まれ』各務 柊也(p3p009121)は「にしても、あつい」とぼやいた。
「スポーツドリンクは手放せないし油断すると人間倒れるよねこれ。
セフィロトの方は空調効いてるらしいけど――この天気わざわざ再現してたりしないよね??
再現してるのだとしたら……どういうリソース配分なんだろうね。知りたくないけど。本当に」
さて、そんな練達でデスマシーンじろう君が何故か『黒狼の従者』リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)の背後についていた。
料理の勉強をしようと書店を教わったところ何故か一緒にやって来たのである。
「お元気でしたか?」
元気そうだ。デスマシーンじろう君が揺らいでいる。創作意欲を刺激してくれる本を探しに行く間は小さな人形となってリュティスの鞄に忍んでいたが、帰宅すると直ぐに人間サイズとなって料理を見守って居る。
――それを全て受け入れているリュティスの精神力も恐れ入るものだ。
ルアナと一緒に花火大会に行く為に『知識の蒐集者』グレイシア=オルトバーン(p3p000111)は待ち合わせをしていた。
「ふぁー……。喫茶店(おうち)に比べたらここは涼しいね。わたし夏の間ここにお引越ししたいよー!!」
「他の地域に比べると、此処は過ごしやすいからな……」
『絶望を砕く者』ルアナ・テルフォード(p3p000291)が汗を拭えばグレイシアは頷いた。空調設備の整った練達は夏らしい気候を演出しては居るがそれなりに過ごしやすいのだ。
「さて、そろそろ日も落ちて暑さも和らぐだろう……花火に出かけるとしよう」
「はーい! あ、ねぇねぇおじさま。浴衣にあってる? かわいい???」
白地に赤い帯。くるくると回ったルアナにグレイシアはまじまじと眺めてから「ふむ」と呟いた。
「あぁ、良く似合っている。……普段と違う装い故、あまり動き回らないように」
「えへへおじさまもいつも以上にかっこいいよ」
はあいと唇を尖らせて手を繋ぐ。からんころんと下駄が鳴り親子のように進むルアナはグレイシアを見上げた。
「浴衣姿に、格好良いも何も無さそうだが……下駄は転びやすい、気を付けて歩くように」
何時だって心配性の貴方――もしも、わたしがこの先に眠りっぱなしになっても、悲しまないでね?
●練達V
「テラおねーちゃん、パパとママからお小遣いを沢山貰ったの!」
にんまり笑顔の『銀の兎』ルルディ・グリムゲルデ(p3p010092)に『Schwert-elf』マリス・テラ(p3p002737)は頭を抱えた。
「おおあの万年新婚夫妻は。
小さい子供にお小遣いとはいえ結構な額を渡し過ぎでは? ……先行きが心配な私です」
たんまりとお小遣いを手にしているルルディは「ルル、屋台で美味しい物を食べたいけど……おねーちゃん美味しいの知ってる……?」と首を傾いだ。袖を掴んだ彼女の手を握り締めてから「ルルが食べられそうなもの」とテラは悩む。
『綿飴に人形焼、味の濃いもん以外なら大体イケるだろ』
「適当に歩くところから」
「あ! くまちゃんがいるの! テラおねーちゃんあれ取って欲しいの!」
キラキラとした眸でくまのぬいぐるみを求めるルルディにテラは息を吐いた。
「射線よし、角度よし、弾速よし」
『取れなかったら?』
「……直談判待ったなし!」
――無事にゲットできたのだ。ぬいぐるみをぎゅっと抱き締めて「ふふ、テラおねーちゃん凄い! はい、これはお礼!」とルルディは林檎飴を差し出した。
「もう二十歳だし制服使い回す年齢でもないからな、アタシも浴衣でいくよ……まあ、本当に最低限な紅の浴衣だけど」
――なんて言う『幻想ギャル』アデル・マルブランシュ(p3p009130)に『新たなるレシピを求めて』ミエル・プラリネ(p3p007431)はよくお似合いですよと微笑んだ。
新しい浴衣を買ったミエルは白地に桃色と紫の花を咲かせ、その髪にも小さな花束を飾っていた。
「フライドポテト、りんご飴、綿飴、食べたい物が沢山っ! キリッとしゅわしゅわでしょっぱい物と合うので大好きですぅ♪
目指せ、お屋台全盛派! ゲームができるお店もあるみたいですね!」
相変わらずの食い気なミエルを追掛けてアデルはこの街での生活にも慣れてきたものだと周りを見渡した。
「この子はなんですかぁ?」
「ああ、あれは金魚というらしい、採ったらちゃんと餌買って死ぬまで面倒見てやるんだぞー」
「キンギョさん……っていうんですね! ヒラヒラ尾鰭がドレスみたいでキレイですぅ! わたし、メイドですから。お世話は得意ですよ!」
家に迎え入れたのは尾びれの綺麗な紅色と、出目金だった。
「ふむふむ、再現性東京は夏休みでありますか。ちょろっと縁日を見学してくでありますぞ!」
意気揚々と登場するのは『夜善の協力者』ジョーイ・ガ・ジョイ(p3p008783)だ。
夏祭りは絶対に楽しい奴だと認識していた『必殺の銃弾』隠岐奈 夜顔(p3p008998)は女装をするには浴衣は心許ないと色々とアレンジをし、下駄鳴らし縁日を見て回っている。
焼きそばにりんご飴にベビーカステラ。何だって心は躍るが――
「……所でお祭りで食べる料理は何でこんなに美味いんだろうな?
家で似たような物……いや品質が高くても、何かが足りないんだよな~不思議な事に」
呟く夜顔のそばで満面の笑みを浮かべていたのは『多言数窮の積雪』ユイユ・アペティート(p3p009040)。夜顔と同じように様々な縁日の料理を楽しんで居るのだ。
「ハッ! 焼きとうもろこしのいい匂~い……これは是非とも食べなきゃね!
あとは、たこ焼きと焼きそばを花火見る時用に~……あ、かき氷は宇治金時でお願いします!」
花火だっていつの間にか好きになった。冷房の効いている場所を探しながらのんびりと花火を感じて歩いて行こうではないか。
大神・達哉(p3p007400)はと言えば射的の屋台に居た。前回はクレーンゲームで大量の戦利品を手に入れたが――
「……全っ然、掠りもしねぇ!!! クソっ!!!
親父さん、もう一回だ! もう一回チャレンジ! 1個は景品ゲットしてやるかんよ! 見てろよな!」
親父が悪い顔をしたのは、多分、きっと、気のせいなのだ。
「うおー! 花火大会いくぜぇ! ひよのパイセン!
みゃこちゃんたちみんな誘ってさー、みんなで花火終わった後もパァンってしたい! 新ジャンルの幕開けじゃね!?」
何時も通りの笑顔を見せた『音呂木の巫女見習い』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)に「宿題は?」と涼やかな声でひよのは問うた。
「うは!? パイセンのヤバたんオーラがマジヤバ状態!
うっし! ウチ、パイセンのあついパッションから逃げ切ってみせる!」
日頃の行いがちょっぴり悪かった秋奈の首根っこを捕まえてからひよのは「花丸さんも、ジョーイさんも映りましょう」と引き寄せた。
秋奈ちゃんショットに皆で映り込んでから花火まで皆で遊ぶのだ。水夜子にその写真を送りつけておけば急いで此処までやってくることだろう。
「っしゃあ! 私ちゃんが射的とかくじとか金魚すくいとか!
私ちゃんたちの夏祭りはこれからだ! ……打ち切りじゃあないんだよ!( ˘•ω•˘ )」
ジョーイは秋奈達との写真に写ってからテンションを上げて金魚掬いの屋台へと走り出す。
「ほー、このいかにもなラインナップの屋台、テンション上がるでありますなー。お、あそこに見えるは金魚すくい!
お祭り屋台の代名詞でありますな! 金魚をとっても飼う設備もないのについついやりたくなるのは謎でありますなー。
というわけで、店主! とりま1プレイやってくですぞー! ふっふっふ、吾輩こう見えても金魚すくいは初めてでありますからに!」
「あー……」
「ひよのさん?」
『堅牢彩華』笹木 花丸(p3p008689)はジョーイが惨敗する様子を眺めて居たひよのに首を傾げた。
「いいえ、何をしましょうか?」
「そうだね、海も行ったし花火大会も皆で行くでしょ? 夏祭りにも来たし今年も思いっきり夏を満喫してるーって感じだねっ!
後はキャンプとかバーベキューとか……? これからまだまだ忙しくなりそうだし皆で遊んでおくのも今の内かな」
「キャンプで星見とかどうでしょう」
「いいね!」
にんまりと笑ってからかき氷を買いに歩いて行く。この暑さだ、きいんと冷たいかき氷で涼むのも悪くは無いだろう。
屋台を廻りながら『うさぎガール』ミレイ フォルイン(p3p009632)はぱちくりと瞬いた。
かき氷の苺味を選んだのはそれ程種類を食べられないからだ。花火大会がこの後に行なわれると耳にしている。
「……隣に、子供が居たような気がしたのは、気のせいかしら。
何かを忘れてるのに、思い出すのが怖いのよね……。忘れたままが良い事って、あるのかしらね……?」
からん、と下駄の音がした。何かを忘れているようだけれども、旨く思い出せない。
ミレイは喧噪を独りで眺めて居た。
aPhoneを手にしていた『陽の宝物』星影 昼顔(p3p009259)は夏祭りの様子に「懐かしいな」と呟いた。
「母さんと小さい頃に行った覚えがあるな……。
召喚されても似た物を楽しめるから、現代日本風の場所に住んでて良かったよ」
イカの姿焼きやたこ焼きを買ってから人気の無い場所へと姿を隠した昼顔は花火までのんびりと過ごそうかと喧噪ばかりをまじまじと見ていた。
「……練達が大変な状況から結構経って、失ったモノは沢山あるけれどこうやって普段が戻ってきて良かった。
だからこそ……未来の事も考えないとなぁ。具体的には進路先だけど。
1人も楽しいけど……折角だからセチア氏も連絡してみようかな」
花音 セチアはきっと喜んでくれるだろう。
からんと下駄を鳴らして『彷徨いの巫』フィノアーシェ・M・ミラージュ(p3p010036)は屋台を廻る。
「花火……綺麗だな。再現性東京は練達のドームの中だがドームの中でも打ち上げられる花火、ということか。
夜の空に咲く花は星の煌めきが如く。彼方の星々まで届けよ花火の光……なんてな……たまやー」
やや気恥ずかしくなってから手にしていた綿飴を食む。焼きそばやラムネ、色々と楽しむことが出来るのも再現性東京の良い処だ。
「来年もまた夏祭りを楽しめるように……その為にも戦わねばな。さて、酒でも飲むか!」
折角ならばと夏祭りにやってきた。『特異運命座標』佐伯 昴(p3p005187)は縁日を見て回る。
たこ焼きに綿飴、林檎飴。カステラ焼きもあればうれしいと見回せばふと、射的を見付けた。
「オレも混沌に来てからは銃を扱うようになったからね。
確実に当てなきゃ……今までの訓練が足りないって事になっちゃいそうだ」
銃なんて触ったことはなかったけれど、どうやらこの6年で気付けばもっと遠くまで来たみたいだ。
●練達VI
練達でも夏祭りが行なわれている。「お祭りだー! へー! へー! へー!」と周囲を見回した『ドラゴニュート』紲 白虎(p3p010475)は「異世界だー!」ときらりと瞳を輝かせる。
「食べるだけじゃなくて、しっかり遊ぶぞー!」
希望ヶ浜でも、そうでなくても今日ばかりはコスプレと見做してくれるだろうか。沢山食べて、花火を見に行って、思う存分に故郷と違う風景を満喫するのだ。
「へぇ~、祭りか~」
楽しそうだなあと『紅の渡り鳥』紅 彗(p3p010611)はぽつりと呟く。故郷では銃撃戦が楽しみな所がありこれはこれで寂しいが平和を謳歌していると思えば納得も出来よう。
「焼きもろこしに、フランクフルト持って──仮面も被るか。懐かしい。
そんじゃあ射撃で遊ぶか。グランドクソエイムとか言われねえように全弾命中、狙ってやるよこれが本当の銃劇ってなーっ!」
射撃の屋台へと向き合って彗は思う存分に『故郷』を思い出すのであった。
「ばーちゃん! 一緒に夏祭りいこ。花火見よー!」
『晶竜封殺』火野・彩陽(p3p010663)は彼岸花の咲いた黒地の浴衣に身を包み『優しきおばあちゃん』アルチェロ=ナタリー=バレーヌ(p3p001584)を誘った。
「おばあちゃんを誘ってくれるのね。ありがとう坊や。
お祭りなんて初めてだから……エスコート、お願いしてもよろしくて?」
そっと手を差し出すアルチェロに彩陽は頷いた。可愛い孫を思うとアルチェロおばあちゃんの財布の紐はゆるゆるなのだ。
「かき氷に金魚すくいにくじ引きに……色々あるよ。ばあちゃん何がいい? 何からする?」
「ほら、彩陽。美味しいものをお食べなさい。あの子たちも美味しそうに食べているもの。きっと美味しいのだわ」
穏やかなアルチェロの声音に彩陽は嬉しそうに頷いた。思う存分に満喫しよう。
「晴陽、毎年恒例の祭りだとよ。ってことで息抜きに行こうぜ。
最近は一緒に出掛けることも多くなったが、それでも俺からすればまだまだ働き過ぎだ。まぁ働くことは悪くねぇ。だが遊ぶのも大事だぜ」
「成程、リフレッシュも必要な事ですね」
一理ありますと頷いた澄原 晴陽(p3n000216)に『決意の復讐者』國定 天川(p3p010201)はくつくつと笑った。
そんな理由がなくとも出掛けることは出来るだろうに、理由を探してしまうのが二人の関係性だ。喧噪を離れた位置から眺めたのは彼女が人混みに疲れてしまうことを避ける為だった。
「最近よく夏祭りには参加するが、たまには本筋から離れた所から楽しむのもいいだろう。
何か気になるものがあれば立ち寄ってみるのもいい。気になる催しがあったら言ってくれ。俺もそうする」
「お面を探しましょう。チベットスナギツネを」
意気揚々としている――ように見えた彼女の手を握り締めたのは、自然な仕草だった。それが当たり前の様になったのは変化なのだろうか。
おそろいの浴衣を着て、『おいしいで満たされて』ニル(p3p009185)と『揺り籠の妖精』テアドール(p3n000243)は夏祭りにやってきた。
「シレンツィオでのお出かけも楽しかったけど、近くのお出かけはテアドールのシリーズのみなさまにもたくさんたくさん『おいしい』お土産を買えますね。
りんご飴もわたがしも……持って帰れるのはうれしいです。ニルは金魚すくいもしてみたいです!」
「林檎飴も綿菓子もきっとシリーズは喜んでくれることでしょう。ニルは金魚好きですか?」
兄弟(シリーズ)の事を考えてくれることは嬉しい。金魚掬いを真剣な表情で行なうニルの横顔をテアドールはじいと見詰めていた。
金魚を袋に入れて手に提げて、二人で逸れないように手を繋ぐ。ぎゅっと話さないように繋げば『たのしい』と『おいしい』と『うれしい』が沢山、沢山溢れ出すのだ。
(テアドールも……ベスビアナイトも、同じきもちだったらいいなって思うのです)
そんなニルの気持ちは伝わっている。ずっと斯うしてニルと一緒に過ごせれば良いのに。大好きだと、テアドールは柔らかな声音でそう言った。
「たまにはこうして外の世界を見て歩くのも悪くはないだろう?
以前は戦っただけだしな。別に今回は自分のしたことを考えろとかそういうわけじゃない。人の人としての営みを君にも見てほしかった。ただそれだけだよ」
『薄明を見る者』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)が振り返れば、目の前には『薄明竜』クワルバルツ(p3n000327)が立っていた。
「どう? 凄いっしょクワちゃ、コレが我々人間の持ち味
良いっしょこれ~ 趣感じるっしょ~? コレが文化の真髄 文明ってヤツよ~」
にんまりと笑った『八百屋の息子』コラバポス 夏子(p3p000808)にクワルバルツは誰も彼もが忙しなく歩き回っているのだと目を瞠った。
「ふふ、ここではこういう浴衣という衣装を着るのも醍醐味だ。戦う時に鎧を着こむ様なものだな。
気になるのなら今度クワルバルツにも用意してやろう。お洒落というのも大事な人間の文化の一つだよ」
「人の発想は逞しいものだ……それこそが竜を打倒しえた者達の力の一端かもしれんな。
武のみに非ず。知恵も備わってこその勇者。人の食も衣も知った事ではない――そう思っていたが。今日と言う日は……あぁそうだな人の流儀に則ろうではないか」
クワルバルツが頷けば「いいねえ~」と夏子は笑う。
生き残る為でも、護る為の防衛手段でもない。これはタダの娯楽だ。夏を好む夏子にとっては無駄だと思えるようなそれが何よりも大切だ。
「どっちかと言えば僕ぁ保守派でね 維持とか今までを大事にしたい ってタイプ。
でもソレはこういう……色んな事を知ってるからかも知んないね。色んな事を見て経験して体験してみようよ 一緒にさ ね?」
「……ああ」
頷いたクワルバルツにブレンダは「クワルバルツ、あの的宛てで勝負をしよう」と声を掛けた。
「舐めるなよ、壊すばかりが竜ではないと見せてや――えぇい的が小さいッ! 当たらんぞ!」
地団駄を踏んだクワルバルツへと「あ、壊すのはなしだぞ」とブレンダは揶揄うように囁いた、
地上は人が多いからこっそりと目立たない空(ばしょ)へと向かった『天穹翔ける龍神』ェクセレリァス・アルケラシス・ヴィルフェリゥム(p3p005156)は『観測中』多次元世界 観測端末(p3p010858)の手を引いた。
「ほほー。私の故郷じゃあまり馴染みがないものだったけど、見事なもんだねぇ。やっぱり空から見るのはいいものだ。特等席気分だし」
それでも再現性東京では堂々とは飛べやしない。こっそりと花火を見るのも楽しいものだ。
「綺麗でしたね。この花火が毎年行われるのでしたら、来年もまた一緒に眺めましょう」
そう口にしてから観測端末は本当に来年も眺められるのだろうかと考えた。寿命は? 明日なのか明後日なのか、それとも永遠の時を生きるのか――自分のことなのに何も分からない、けれど。
「ですので、約束の指切りをしましょう」
「うん、来年か。いいよ」
望む限り共に居られるように。いつか力が戻ったら眷属にしてやろうか、なんて考えるェクセレリァスに観測端末が込めたのは約束という名の細やかなギアスだった。
『此岸ノ辺の双子巫女』そそぎ(p3n000178)に浴衣は持ってきているかと『よをつむぐもの』新道 風牙(p3p005012)は問い掛けた。
「よし、それ着て6時に駅前な!」
豊穣の文化に対して再現性東京は良く似た感覚で接している。きっと馴染みやすいだろう。
花火大会も派手だ。屹度楽しめるはずだと勉強を忘れて楽しもうとそそぎの手を引いた。
双子の姉と離れて、遠く異境の地にまでやってきた彼女を全力で応援している。寂しかったり辛かったりとすることもあるだろう。頑張って欲しいと彼女を応援する。
「さあ、今日は勉強を忘れて楽しむぞー! 屋台で好きなものを食え!
射的やヨーヨー掬い、色んなゲームで勝負だ!」
それが彼女の力になることを何よりも願っているのだ。
●ラサI
――『にぃと』をしていたら荷運びのバイトをしてこいと追い出されてしまった『赤き騎士の馬』滅導騎獣弐式 戦乱蹂躙疾駆 ヴァルレイン(p3p010842)。
「主は馬の扱いが荒いにも程がある。
軍馬に馬車馬をやれとは、全く―――相変わらず、思い詰めた時は一人になりたがる癖が抜けんようだ」
呟きながらもヴァルレインはラサの都ネフェルストにやってきて『闇市』に魅入られていた。
「……す、炭はあるか? 何……? こっちは鉄帝産で、こっちは最近入って来た覇竜産……ええい、どっちもくれ!」
拝啓、主様へ。破産しないように注意してあげて下さい。
そんなマーケットの中を歩き回るのは『砂に笑う筋肉』ファルケ・ウェンダール(p3p007385)である。
「ふははは……! 何やら非常に目出度い日だが! そんな日も訓練こそ至高!!!
砂漠故に過酷な地も多きこの傭兵の国で! 隆起する筋肉と光る汗を魅せようではないか……!!!」
ファルケは樽を背負って走り込みを行って居るが、「この樽を持ってって」と強かな商人がついでのように押し付けてくる。それはそれで構わない。荷が増えればそれだけ強靱な筋肉を鍛えられるのだ。
サンドバザールを右から左。往復しながら懸命に筋肉を! 鍛え上げるのだ!
観光がてらラサへとやってきた『華奢なる原石』フローラ・フローライト(p3p009875)は紅血晶による後遺症はそれらで残された吸血鬼の残党について注意を行って居た。
「あの事件の解決から数ヶ月。でもまだ吸血鬼の活動はあるかも知れない、ですしね。
……ラサのつよい日差しは今の私には余計につらいので、日傘も持参、ですっ」
もし、もしだ――自分の知る『あの人』の足跡が何処かにあったならば。そう考えずには居られなかったのだ。
賑やかなサンドバザールをのんびりと歩く。陽射しが厳しいがそれもまた砂漠の国らしいのだろう。『結切』古木・文(p3p001262)は汗を拭いながらサンドバザールの様子を眺めて居た。
こうして各国の様子を知ることだって立派なトレーニングであると識っている。
『金庫破り』サンディ・カルタ(p3p000438)は「ローレットトレーニングと言うが、もうどこもかしこも祭! 祭! 祭りだ! こういうのは便乗して楽しむのが一番!!」とは言いながらも一人、ラサへと向かっていた。
「ラーガの騒ぎがあって色々大変だったろ?
ああいうのを潰したり、そもそも乱戦があった時って、交易網が少なからずダメージを受けていて、ラサではそれは供給不足に直結する。
そういう時にさ、ちゃんとそういうのを見極めて自粛というか、余計なことをしないようにっての……。
遺跡の発掘なんて言う道楽の極みみたいなのを軸にしてる、俺んところの領民がちゃんとできてるかね?
誰が領主かもそろそろ忘れてるだろうし――」
そこまでの彼の言葉を聞いていたのはバルベラル特別区画のベンタバール・バルベラル。寧ろ、此方が領主だと思われているような気がしてサンディは「領主アピールだ!」と領地へと踏み入れたのであった。
最近は領地経営をサボっていた『悲嘆の呪いを知りし者』蓮杖 綾姫(p3p008658)。
「いいかげん決済の書類溜まってるんでやれ」と執政官に力強く言われ、パーティーに顔を出すことは出来ず山積みの書類と向き合うことになったのであった。
(……『彼』の郷里ではあるが。昨今はより沢山の『死』の足音が感じられるな。
何が原因かは推し量ることもままならないが……
せめて、少しの哀悼くらいはしておこうか。罪ある死より、罪なき者の死の方が多かっただろう、とは思うから、な)
『虚葬の死線』レヴォイド(p3p007613)は目を伏せた。死の足跡を残していく青年はただ、その地に幸いあれと願うだけなのだ。
――毎年、アカデミアのあったその場所へと『黒のミスティリオン』アリシス・シーアルジア(p3p000397)は踏み入れていた。
「……今年は、博士と決着をつけた後に一度行ったので、二回目ですね。
花の知識が無い、と言っていましたが……そう言いながら、思い浮かぶ花はあったのでしょうに。
6月は勿忘草の丁度いい時期だったのですよ、リュシアン」
それでも、勿忘草は彼にとって特別で選べなかったのだろうか。アリシスはそんなことを思い浮かべながら竜胆の花を地へと捧げるようにして置いた。
「2輪、片方はジナイーダへ。もう片方はブルーベル、貴女へ。
……花言葉的には、リュシアンにこそ似合う花かもしれませんね。
次の一回は……果たして、あるかどうか。
……どうなるかはまだ分かりませんが。彼が心残りを果たし終えれるよう、貴女達も見守って居てあげてください」
彼は、これからどうするのだろう。そう考えずには居られなかった。
●ラサII
「遺跡調査……? だる……」
思わず呟いた『硝子の檻を砕いて』ネリウム・オレアンダー(p3p009336)に『ふわふわ』えくれあ(p3p009062)は「楽しみだね!」とほほえんだ。
『元気なBBA』チヨ・ケンコーランド(p3p009158)が勢い良く一行の前へと滑り込んでくる。
「>>>>>> わ し じ ゃ よ ! ! ! <<<<<<
今日はラサの遺跡の一つに潜り込んでとある宝を回収に行くのじゃ!
ほっほっほ! ラサはわしの庭じゃ! チヨ婆に任せんしゃい!
何か魔物が出てもチヨ婆ちゃんの拳骨でゴツン! じゃ!!!」
――強そう。
チヨのお手伝いを楽しみにしてやって来たえくれあはふわふわ、たのしみ、ふわふわと楽しげだ。
だが――『雷龍』ユー・コンレイ(p3p010183)はぐったりとしていた。
「あ~『支部長研修』とかダル……って思ったが、今回はなかなか悪くねえじゃねえか。
目的の宝以外にも回収して懐にしまっちまえば……っておーい! 婆さん! 速すぎんだよ婆さん! 俺達を置いて突っ走るなって!
おああ……よく考えたらジェット婆さんにふわふわのお嬢ちゃんに問題児毒使い……あれー? これってもしかしなくても俺がストッパー?」
――新たな仕事に気付いたユーの未来は如何に……?
「まったくローレットの方に顔を出しに行かないのは正直申し訳ないとは思って居るが、それもこれも商売というものが悪いんだ」
『砂漠を駆ける』ラーディス=シュハ(p3p009201)は呟きながら一人で商売するにも限度があることに思い当たった。
ならば出来る限りのコネを必要とする。ラサでなにかコネといえば――
「ラサでも宴を行ないましょう」
ファレン・アル・パレスト(p3n000188)へと喜び勇んだのはフィオナ・イル・パレスト(p3n000189)だった。
その手伝いを行って居るのは『光彩の精霊』イヴ・ファルベ(p3n000206)だ。
その中にラーディスも混ざってしまえば良いのだ。邪険には扱われないだろうがビジネスパートナーになる為には努力が必要だろう。
月の王国の剣が落ち着いて間を置かずに遂行者が来て、それから――ようやっと落ち着いただろうかと『灼けつく太陽』ラダ・ジグリ(p3p000271)もパレスト邸に顔を出した。
「うちの商会からも幾らか酒や食事を出させてもらおう。
地元の料理も良いが、最近船を出せるようになったから豊穣の酒や食材もある。ラサの要人達が気に入ってくれるんなら良い宣伝にもなるだろうね」
「有り難いな」
「ああ、ファレン殿。色々あったがマーケットの方は変わらずの活況かな?
豊穣の品は気に入ってもらえただろうか。気になる物があれば用立てるからよろしく頼むよ。
ま、パレスト商会ともなれば競争相手の方かもしれんがね!」
「いや……寧ろ、斯うしたときに利用させて頂く事こそが重要でしょう?」
ラダは確かに、と繋がりを大事にする商人に頷いたのであった。
「わ、わ、ラサの知ってる有名人がいっぱいだ……!」
『星月を掬うひと』フラーゴラ・トラモント(p3p008825)はきらりと瞳を輝かせる。フィオナは「え? 有名? やったじゃん」と嬉しそうにフラーゴラの側に座る。
「ワタシも骨董品集めが高じて商人さんとのコネを大事にしてるから。
対価は払いますので面白い品あったら見せて欲しいナ~……なんて。あわわまだそういうのはやかったかな……!」
「え? イレギュラーズならいいんじゃないッスか? アニキに聞いておこうか」
気易いフィオナがにこにこと微笑みながら「ほら、ジュース」と差し出してくれる。グレープフルーツジュースを手渡されてほのぼのとしたのも束の間、気付けばフラーゴラは給仕係のように動き回ることになって居たのであった。
パドラ(p3n000322)は取りあえず挨拶しておこうかなと『祝福(グリュック)』エルス・ティーネ(p3p007325)へと向き直った。
――が、その前で『なぁごなぁご』ティエル(p3p004975)が「にゃーん」と笑う。
「さぁ、猫猫ゲームするにゃー」
「えっ、ちょ――」
慌てるエルスは「ダメよ、ダメ!」と首を振る。『赤犬』ディルク・レイス・エッフェンベルグ(p3n000071)の視線に気付いてから顔をさあと青ざめさせた。
「猫じゃないですからね!」
「で?」
「で、じゃなくって。もう……! 月の件も終ったばかり、こういう時こそ色々と騒ぎたいと考えたのに」
そうだ。この世界に来て沢山の事があった。エルスもそれを懐古し、自分らしく生きていきたいと考えたのだ。
(ああ、もう、余裕ぶって――私には課題だって有るのに。
まだまだ人の心は解りきっていないと思うから……まぁあの方の心の中なんて解る気もしないけれど)
そんなエルスを何時も通り玩具にするディルクが酒を呷る。
その傍らには『凶頭』ハウザー・ヤーク(p3n000093)の姿がある。『黒き流星』ルナ・ファ・ディール(p3p009526)は「よお」とハウザーへと挨拶する。
「月の王国からこっち、どうだよ。ちったぁスッキリしたか?
パドラっつったか。この間依頼であったぜ。元気そうじゃねぇか。そろそろ、凶のボスも本調子に戻ったらどうだ?」
ほら、と後方を見遣れば『砂漠の幻想種』イルナス・フィンナ(p3n000169)がもっと言ってやれと言った表情で眺めて居る。
パドラも今は背を伸ばして懸命に尽力しているようだ。
「まあなあ」
「俺ァ年中暇人だし、帰る場所なんざねぇ。
守りたいもんも1つくれぇで、そいつだって、俺が守らなきゃいけねぇほどやわでもネェ。
……ただ、そいつの商売の邪魔になる奴ァ、俺の手が届く範囲なら排除してやりてぇし、俺自身水が合うのはこの砂くせぇラサだからよ」
「へえ、いい話じゃねぇか」
「それによ、お気に入りのできた赤犬も、案外、どたんばで腑抜けちまうかもしれねぇしなぁ。頼むぜ、もう一人の大将」
ハウザーは「俺も腑抜けるかも知れない」と言い掛けたが娘の前で恥は必要ないことだ。
さて、と『与え続ける』倉庫マン(p3p009901)は立ち上がった。
「ちょうど茶葉を持ち合わせておりますので、飲酒なされない方向けにでも。もちろん飲酒する方でもご要望とあらば淹れましょう。それと掛け布団もありますので、倒れる程飲む方が居られれば介助を」
遠慮などしている場合がない場合は遠慮無くぶち込むと決めて居るのだ。それが求められるのであれば――
\\\倉 庫 バ ズ ー カ !!///
「……って、砂漠なのにゃ暑いのにゃ。涼しい日陰を探すのにゃー!
にくきゅう……に手袋とか靴は履いてるけど、火傷しないように気を付けてお散歩にゃ!」
慌てる『ふわもこ灰猫』ふわもこ はいねこ(p3p011262)をイヴは「こっちだと寝やすいよ」と誘った。
撫でても良いと告げるはいねこの頭を撫でてからイヴは「落ち着いて眠れると良いね」と囁いた。
●深緑I
木々が生い茂って自然豊かで――寝心地の良さそうなその場所で『ふわもこアメリカンショートヘア』ふわもこ あめしょ(p3p011263)は小さく欠伸をした。
(このへんにあめしょみたいな猫はいるのかにゃ……すやぁ……)
迷宮森林には様々な禁忌がある。あの巨樹に昇ることだって禁止されているのだ。
幻想種達の共同体、アルティオ=エルムはお昼寝には丁度良くて、あめしょは其の儘夢の中だ。
折角ならば空気が良い場所でリフレッシュをしたいと南雲・零(p3p007409)は迷宮森林へと足を踏み入れた。
「混沌で空気が良い場所はやっぱり深緑? ほら、やっぱり自然豊かだし。緑いっぱいだし。
だけど遭難は困るからさ、現地の人に道案内して貰おうと思うよ。んー、たまには良いよね。こんな息抜きも!」
幻想種に願い出れば古代遺跡などの散策コースに案内して貰えるだろう。それも良い休暇の過ごし方だ。
――ファルカウへと訪れて『雪花蝶』斉賀・京司(p3p004491)はその地に眠るクェイスに紹介したい人が居るのだとそう言った。
「あの後に色々とあってな、恋人と娘が出来たんだ。こっちの背の高いのが恋人の冥夜、可愛いのが娘のあかね」
ザントマンなどが『活動』して居た頃には近付かなかった深緑は京司にとっては成長の気になった場所なのだと『ホストクラブ・シャーマナイト店長』鵜来巣 冥夜(p3p008218)は頷いてからゆっくりと頭を下げた。
「初めまして、だな。京ちゃんは俺が全力で守る! だから安心して、ゆっくり休んで……いつか、語らいの時間を持たせてくれよ」
「あい! かわいいアカネです!」
『ゆめのひとかけら』アカネ(p3p010962)はにんまりと微笑んだ。ごあいさつはげんきに、というのが大事だとアカネはよく知っている。
「あんね、アカネともおともだちになってくれたら、うれしいなぁっておもうよ。
せんせぇのおはなし、たくさんしてもいい? あ、これはね、ないしょのおはなし!」
きらきらとした眸で語るアカネにそれから「あかね。おてて繋ぐだけでいいのか? ほら、高い高いだってしてやるぞ!」と微笑んだ冥夜に京司は微笑む。
(でも、たしかにあの瞬間、手を伸ばしたかった気持ちも。その手を取って貰えた歓びも――)
それは全て嘘じゃない。
「嘘じゃないから、鈴蘭のサムリングをプレゼントしたんだ。……あかねには、どんな花とアクセサリーを贈ることになるんだろうな」
冥夜から向けられた視線に揶揄うように笑ってから、彼の左手の薬指に贈る事は決まっているだろうとそう告げた。
「今年もこの季節が来たのね」
『約束の果てへ』セチア・リリー・スノードロップ(p3p009573)はファルカウを見上げた。
セチアにとっては馴染みはないが祝いの日だというのだから「貴方も付き合いなさいよ」と声を張る。
「冠位魔種は後、2人……彼らを倒せばボスは必ず出てくるはず。
ねぇクェイス。貴方とまた会える時が近づいているって思って良いのよね?
多分、そこまで行く時に困難が沢山待っていると思うけれど……。
約束したんだもの、目覚める時に必ずおはようを言いに行くって。その後に貴方と沢山したい事があるしね!」
くすりと笑ってからセチアはその気持ちを強くする。だから、待っていて欲しい。その為に駆け抜けていくのだから。
忙しない日々が続いていた。『優穏の聲』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)は暫く様子を見に来ることは出来なかったが冠位魔種の墓を用意していたのだ。
少しは花が咲いてくれていればと覗き込めば小さな芽がちらほらと存在して居る。
「ジーク。ねこたんと一緒にのんびりとした時間を過ごすとしようか」
カロンのためのサンドイッチを備え、のんびりと過ごす。
賑やかな時間も嫌いではない。だが、偶にはこんなふうに静かで穏やかな時間を過ごすのもいいものだろう。
ファルカウへと向かう事に決めた『虚ろたる影』アドルフ・ウェンダール(p3p007377)は己のルーツに近い要素を感じると、大樹に好感を覚えていた。
「緑豊かな大地で過ごす時間に幸せを感じるのだよ。今年の日差しは暑過ぎる位だが…鬱蒼と繁る木々が遮ってくれるだろうさ。
どうやら世間で今日は非常に目出度い日の様だね。
まるでこの地の木々も人々を祝福しているように感じる。否、きっと祝福してくれているのだろう。私はそう信じたいかな」
ざわざわと木々が擦れ合う音がする――ふと、顔を上げてからアドルフはそうだろうと微笑んだのであった。
剣の練習に付き合って欲しいと『奈落の虹』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)は『風のテルメンディル』ハンナ・シャロン(p3p007137)へと声を掛けた。
「はい。シャハル。剣の振り方くらいはシャハルも知っているとは思いますが、あとはどう動くかは実際に剣を交えてみるしかありません!」
ハンナは近接戦闘を得意としている。兄のシャハル(ウィリアム)とは真逆だ。それでも、共に在れば高め合える。
「――大丈夫ですか?」
「もうちょっとゆっくり振ってくれない?」
ただ、不慣れな事には変わりが無く。早すぎて見ることが出来ないとシャハルは取りあえずハンナを留めるために呪いを使った。
「あ、ちょっと! 呪いを掛けるのはズルですよ、シャハル!」
『ファルカウの巫女』リュミエ・フル・フォーレ(p3n000092)の姿を認めてから『真意の証明』クロバ・フユツキ(p3p000145)は「リュミエ」とその名を呼んだ。
ファルカウに近付くのは今の自分自身にはどうにも言葉に出来ないような状態ではあった。
「……土産話、手紙で伝えてるものもあるけど今日という日だ。直接自分で話に来た」
「姿はお見せ下さらないのですか?」
リュミエはその気配を感じてから振り向くことなく問うた。物陰に潜んだクロバが姿を見せないことに理由があると察したからだ。
「まあ、見栄くらい張りたいんだ」
姿が少し変わった程度といえばそうだがクロバにとってはファルカウやリュミエの傍は綺麗すぎる。これは一種の罰のようにも感じられた――分不相応な想いを抱いた傲慢なる男への。
(だが、赦されるなら今はこの時間を貴女と過ごさせてほしい。
……折角貴女が喜びそうな話をいくつか持ち帰ったのだ。そのくらいはしてもバチは当たらないだろう)
リュミエは静かに耳を傾けてくれる。ただ、それだけでも素晴らしい時間なのだ。
覇竜の決戦、遂行者の対応と故郷を離れていることの多かった『蒼剣の弟子』ドラマ・ゲツク(p3p000172)はこのタイミングで深緑の復興作業に尽力しようとまだ芽吹いたばかりの木々達の様子を見にやってきたのだ。
「そういえば遂行者の魔の手が、最近はこの深緑にも伸びてきているようなのですよねぇ。
……あの事件で大樹ファルカウは大幅に力を減らし、余所者の侵入を阻む迷宮森林の効力にも綻びが出来てしまっている現状、イレギュラーな事態に早急に対処出来るよう、何かしらの監視網を用意した方が良いでしょうか」
終焉獣が姿を見せたのであれば、それは遂行者だけの脅威ではないのかも知れない。
何らかの対策が出来ないかとリュミエに相談してみる方が良いだろうか。ドラマは灰燼と化した道を辿りながらファルカウを見上げふと、そんなことを考えて居た。
●深緑II
静謐の迷宮森林で『花に集う』シルフォイデア・エリスタリス(p3p000886)はただひとり静かに復興作業の手伝いを行って居た。
そうした作業の手伝いを行って居るのは『深緑魔法少女』リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)。
植樹、水やり、久方振りに森の中で植物に囲まれ過ごしているのはリディア自身も浄化されている気分になる。
「今回植えた木が大きく育つまでには何十年、何百年と掛かることでしょう。
可能ならばずっとこれらの木の成長を見守りたいものです」
そんな木々達と共に過ごしていれば穏やかな眠りに誘われる。木漏れ日の下、少し位居眠ったって森は許してくれることだろう。
賑やかなパーティーも良いが『呪い師』エリス(p3p007830)にとっては自信が領地を預る地である深緑の復興を手伝いたいと考えて居た。
荷を運び、木々のケアを行なうだけではない。困りごとがあれば先んじて声を聞きしっかりと対応して行くのだ。
長い時間が掛かるのだろうこの森の復興に少しずつでも手を差し出せることが何よりも喜ばしいのである。
『竜の狩人』ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)はぼんやりとファルカウを眺めていた。
一度は燃え上がり、それでも尚聳え立ったその樹は美しい。これまでの戦いとこれからの戦いに思いを馳せてミヅハは目を伏せた。
(いつかこの戦いも終わりが来るんだろうか。どんな結末を迎えるんだろうか。その場に俺は立ち会えるんだろうか、なんて――)
ナイーブな考えは捨ててからもう一つの戦う理由を思い出す。
「ま、こんなのは考えても仕方ないことなんだよな。俺にとって大事なのは『もう一つの戦い』だし」
さーて、次のデートはどこに誘おうかなぁ、と考えた青年の唇には笑みが浮かんでいた。
「たまには修行という事で動かずに、のんびりと動いたりするも吉、かのう」
『未だ遅くない英雄譚』バク=エルナンデス(p3p009253)は観光ついでの療養にやってきた。
緑豊かなこの地は元いた世界よりも自然豊かで浄化される気にさえなる。
「此処のファルカウに対する信仰についてもどういった物かもっと知れば神学者としても何かしらの学習にもなるじゃろうし、純粋に先を生きていた者としての智もご教授して下されると尚嬉しいのう」
幻想種達の知識を耳にして、未知を既知とすることも又とない機会だ。ファルカウに向かえばそうして話すことが出来るだろうか。
「キャンプするぜ!!」
『豪放磊落』呂・子墨(p3p010436)は堂々と宣言した。その傍では深緑の地には珍しい巨漢の白スーツこと『靡く白スーツ』コルウィン・ロンミィ(p3p007390)が絶っている。
「たまには自然の中でのんびりと過ごすのも悪くないと思ってな。
特に木枯らしのグリムアザースたる身としては緑に囲まれるってのはあまり経験したことがなかったしな」
「夏だ! キャンプだ! 食材調達はまかせろー!」
拳を振り上げた『大艦巨砲なピーターパン』メイ・ノファーマ(p3p009486)はにっこりと微笑んだ。
珈琲は子墨に任せるが他ならば任せて欲しいとメイは張り切りモードだ。
「木々のざわめきを聞き耳をすませば小鳥のさえずり。
ホットコーヒーを入れたりマシュマロ焼いたりでゆっくり静かな時間を過ごす。
これこそがキャンプの醍醐味だろ?」
「ああ。アウトドアスパイスを肉に掛けて楽しむのはどうだろうか。
ちなみに余談だが、俺が近くにいると少し涼しい風が吹いたりするぞ。木枯らしだしな。お得だな」
キャンプにはぴったりの三人が集まって楽しい一晩を過ごすのだ。
深緑で酒と言えば妖精郷だ。蜂蜜酒が美味であったからと『植物学者・家出中』フラウル・リソルド・ローエン(p3p010565)は浴びるように酒を飲み続ける。
近くでは妖精達も楽しげに常春で相変わらずのパーティーを楽しんで居るようだ。
嫁と酒盛り――と言われると不思議な気持ちだと『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)はちらりと傍らを見た。
「サイズサイズ、私何百歳だと思ってるのさあ、あの酔っぱらい妖精ほどじゃあないけどお酒は強い方だよ?」
『秋雫の妖精』メープル・ツリー(p3n000199)は揶揄う湯に傍らの彼を見遣る。
「……メープルと出会って結構たったな……うん、幸せな時間だったし、きっとこれからも幸せにしてもらえるんだな。
…これからもよろしくメープル、ずっと君を幸せにするよ」
「はいはい、キミが壊れるまではずっと一緒に居てあげるさあ、勿論その先もずっとね!」
アデプト・ジンや大迷宮、真・竜殺しを用意しているサイズを一瞥してからメープルはにんまりと笑った。酔ってメープルに寄り添うサイズをメープルは思う存分に甘やかすのだ。
「キミが望むならハグして、甘やかさせてあげて…なんでもね、愛してるよ、サイズ」
揶揄うように囁くメープルの声だけをサイズは聞いていた。
気がつけば何時だって『愛を知った者よ』グリーフ・ロス(p3p008615)はこの地に訪れる。
(深緑と言えば、直近では冠位怠惰の件が記憶に新しく。
新たな災禍があれば、古い出来事は、徐々に風化して、忘れられていくもの。
……けれどここはアルベドが、キトリニタスが眠った地)
グリーフは目を伏せた。
一人のアルベドが、愛を示し、命を絶った。一人のキトリニタスが、私に愛を語り、拳を交わた。
今もメモリの中で、優雅に笑う彼女に。揶揄うように語り笑う彼に。
答えることが出来る気がしたのだ。
『他人を愛することが怖いかい?』――えぇ、怖いです。
『他人に恋をするのが恐ろしい?』――えぇ、恐ろしいです。
その感情を知ってしまった。それが苦しく恐ろしいことに気付いて仕舞った。それでも、それが自分だけのものだと理解出来ているからこそグリーフは歩むことが出来るのだ。
●豊穣I
(……かつての、我が国に似ている。
違うは、此処は些か平和が過ぎる。だが、それ即ち国が乱世にならぬ統治。
もはやここには忍びの存在もいらないのだろう)
『その生を実感している限り、人なのだ』百合草 源之丞 忠継(p3p010950)は一人考えた。
平和を享受することには慣れやしないのだ。喜ばしいことなのに、それが自身の存在意義をなくしてしまう。
握り飯を食べながら故郷の味を楽しみ忠継は目を伏せた。
(いや……っそ無くても良いのだろう。その生を実感している限り、人なのだから)
てこてこと歩いてやってきた『ふわもこノルウェーにゃん』ふわもこ のるふぉー(p3p011264)にとって豊穣は何処か懐かしい空気がしていた。
「にゃ……暑いのにゃ、長毛種にこの時期はつらいのにゃ……」
四季のはっきりしている豊穣にのるふぉーは少し困った様子で身を縮める。それでも、どこかお気に入りの寝床がある筈だと探し求めるのだった。
義理とは言えど大切な両親の墓参りに向かう事に決めた『死澱』瀬能・詩織(p3p010861)は一人、豊穣へと訪れていた。
「追われる身とは言え一年振りにしか参りに来れない、親不孝な義娘を許して下さいませ。
この一年、色々とありましたが……御義父様、御義母様。驚かないで下さいね?」
一年前、私に想い人が出来たと、そう報告しまたが……その方と結ばれる事が叶いました。」
自身を愛してくれるその人のことを語れる限り、伝えるのだ。二人が安心してくれるように、と。
「次は何時参れますか、解りませんけれど……生きて居ましたらまた必ず。次は――」
そっと、言の葉を口にした。
酒を飲み散歩をし、唄を歌う。そんな穏やかな日常が『呪刀持ちの唄歌い』紅楼夢・紫月(p3p007611)にやってきた。
久方振りの故郷への里帰り。村での手合わせに、害獣を倒してと、充実した日々を『竜驤劍鬼』幻夢桜・獅門(p3p009000)は過ごしていた――が。
「あれ、お嬢は?」
幼馴染みがいなかった。婿捜しかと聞けば叩かれたが、京に向かったらしい。
(お嬢がねぇ……そんじゃ、その内会えるかもしれねぇな)
今日は豊穣にておもてなしで『実習』をしようと『闇之雲』武器商人(p3p001107)はそう笑った。
「観光をベースに観光名所や休憩する場所のチョイス、予約や手続きにそつがないか、観光中の我(アタシ)と命の世話は十分か、そんな観点で研修させてもらうよ。命は思いっきり楽しんでおくれね」
研修を受けるのは王者足る『王者の探究』カナデ・ラディオドンタ(p3p011240)そのひとだ。
サヨナキドリの竜宮支点の担当となったカナデはギルドマスターへと『おもてなし 」を行なうのだ。
「高天京にて、この地を担当されている命様と上に立つものとして多くのサービスを心得ているマスターをおもてなしすることで竜宮の激戦区を生き抜くためのおもてなし力を更に高めていこうという算段ですね」
「ああ」
頷くのは『金剛不壊の華』型破 命(p3p009483)だ。カナデとは仲良くなりたいとは考えてはいた。
(まあ――研修って名目だが今回は観光が主な目的で、それが満足いくものかってことで豊穣を担当してる己れが呼ばれたらしい。……やっべぇ。精通してるかって言われるとちょっと自信ねえな己れ)
目の前のカナデは観光案内を淀みなくすらすらと行って居る。その様子を見れば竜宮でだってうまくやっていけるだろう。
「我(アタシ)も我(アタシ)で今度、家族や眷属達と一緒に行くのに良さそうな場所があったら参考にさせてもらおうね」
これくらい出来て当然だと自慢げなカナデは「次に参りましょう」と二人を誘ったのだった。
「いとしの ゴリョウさんの お役に たてるよう 食材の仕入れを まなびますの」
『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)はふわふわと漂いながら豊穣の魚市場にやってきた。
「わたしは 空を およげますから お仕事の邪魔には ならないでしょう。
でも……魚市場には アナゴや ウナギの死体も!
見ているだけで おそろしいですけれど いつまでも ゴリョウさんに アナゴ禁止とは 言えませんから すこしずつ なれるよう がんばりますの……!」
震えながらもノリアは知識を蓄える。それが、ゴリョウの未来を開くのだと知っているからだ。
「内見? 家でも買うんですか? 航空猟兵・豊穣支部です?」
「豊穣に良さげな一軒家が欲しくてさ。ほら、そろそろそういうのを考えても良いんじゃないかなって」
『航空指揮』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)は本当は『航空猟兵』綾辻・愛奈(p3p010320)を求めていたがそんなことは言えず彼女の言葉に頷いた。
下見をしても構わないが愛奈に内装を任せると本棚だらけになると彼女は呟く。
「ほら、やっぱり畑があるのはいいよな。今暮らしてる拠点も良いけど、日当たり悪いしジメジメしてるし。
あ、愛奈、ちょっとそこの縁側に座ってみてよ。
何なら和服もレンタルできるだろうし、暫くゆっくりしてみないか?」
「ええ、ここなら日当たりもよいですし……畑があるのがいいですね、自給自足できるは兵站として大事です。
内装は…純和風、もとい豊穣風でこれもまた本拠点と趣が違って宜しい。
お風呂がこっち、客間がこちらで……ええ、いいじゃないですか」
縁側に腰掛けてから愛奈は少し悩ましげに呟いた。
「しかし。航空猟兵の支部にしては少々こじんまりですね。隊員の個室とかは……」
「ああいや、ええと、だからつまり航空猟兵の支部じゃなくて……」
「ええ、ない。んん??」
「俺だってマイホームに憧れるというかなんというか?
今はローレットの仕事で忙しいけれど、色々終わって平和になったら、きっと――」
「ああ……なるほど、アルヴァさんの個人宅。なるほどそれは失礼を」
それ以上の言葉を紡ぐことの出来なかったアルヴァに納得した愛奈はそれにしたって寝室が広いような気がすると首を傾いだのだった。
――神使になり夏を複数迎えるほどに時が経ちました。
多少の怪我はあれ今日まで生きることができるなんて奇跡です。
人に恵まれたおかげですね。素敵なご縁に導いてくださった感謝を。
『名しか綴れぬ』澄恋(p3p009412)は「神様、どうかこの世界に健やかな日々が続きますように」と心の中で祈る。
神社にて、澄恋は静かに祈りを捧げるのだ。どうしても厄災から遁れられぬのであれば愛する人に看取られたい。
(わたしの人生の中で、朽ちるときこそ一番幸せでありますように――)
すると、『名しか明かさぬ』すみれ(p3p009752)とすれ違った。足早にすれ違う澄恋を見送ってからすみれは目を伏せる。
(……この世界にももう随分慣れましたが、つまりそれだけ元の世界から離れているということ。父母や夫は今頃どうしているでしょうか……)
『愛されずに生れ育った女』と『愛されて生れ育った女』は互いに相反する願いを抱く。
(神様、どうか元の世界でまた健やかに暮らせますように。
それでも、どうしても戻れぬというのなら。あの女……澄恋より幸せでいたいです。
これまでもこれからも、私こそが愛でられる花でありますように――)
●豊穣II
――以前、『琥珀薫風』天香・遮那(p3n000179)に思い人がいるのかと問うた時に馬に蹴られそうになった事を『馬には蹴られぬ』不動 狂歌(p3p008820)は思い出す。
それでも豊穣を担う天香の当主だ。その彼を支える者に関しては気になる者だ。
「なぁ、遮那の婚姻相手とか想い人って知らない、把握してない?
仕方ないな、やっぱり直接聞いてみ……あー、用事思い出したから帰るわ、準備した菓子は勝手に食べてくれ」
側近達は何とも言えない顔をして居たが――ふと、何かの気配を感じてから狂歌はその場をそそくさと離れたのであった。
『心よ、友に届いているか』水天宮 妙見子(p3p010644)は「ムラデン! ようこそ豊穣へ!」と長旅を経てやってきた『レグルス』ムラデン(p3n000334)を手招いた。
「私が選んだ浴衣着てきたんですね、似合ってるじゃないですか!
妙見子ちゃんの目に狂いはなかったということで……ほら早く行きましょ! 人多いですしはぐれないようにしないと」
「は? 勿体ないから着ただけだけど」
そっぽ向くムラデンの手を引いて妙見子は「お土産欲しいんですよね? ザビーネ様なら何でも喜んでくれそうですが」と悩ましげに呟いた。
「……というかザビーネ様達のお土産だけじゃなくて貴方のお土産は買わないんですか?
これからまだまだ暑くなりますし扇子とかどうですか?
私こっちの赤いの買うのでムラデンは紫の……はい妙見子とお揃い! ふふったまにはこういうのもいいでしょ? ダメ?」
別に、と呟いた竜種の少年に妙見子は「素直じゃないんだから」と揶揄うように笑った。
豊穣の夏祭りをゆるく楽しもうと『希望の星』黒野 鶫(p3p008734)は歩く。
まさか鬼人種であれど同じように祭を楽しめるというのだ。この国も変化したのだろう。
「思う所は幾らでもあるが……まぁ、それはともかく、概ね良い事なのであろう。うむ、良い事じゃ!」
射的や甘味と思う存分に楽しめる今を一先ずは満喫しよう。
『怨讐鬼』艮 悪羅(p3p008937)も鶫と同じように『獄人迫害』の気配を失せさせた夏祭りの様子に驚いていた。
「獄人への迫害があったのもなんだか今は昔、みたいな感じになっちゃったし……。
全くローレット、いやさイレギュラーズの懐の広さには恐れ入るってやつだよウン。
だからってヤオヨロズ共も上層部とも仲良しこよし、なんて事は出来ないけどさ。
こういう場面だからこそ久しぶりに戻ってきた故郷の酒ってやつを味わうのも悪くないや」
そうは言いながらも屋台に入っていくのも居心地が悪い。適当に購入したら森の中で酒盛りし、花火を楽しもうかと考える。
「いやぁ、懐かしいねー、祭り」
『双つ呪の子』双樹(p3p008861)は不思議そうに周囲を見回した。色々と見て回りながら食べ歩きをするのが王道だろうか。
雰囲気を楽しむのだって祭の楽しみ方だ。
豊穣郷では夏祭りが行なわれている。『海妖』エーギル・フレーセイ(p3p011030)は折角ならば見に行きたいとその地へとやってきた。
「名前は忘れたんだけど浴衣を着て、夜に、灯りで飾った櫓を囲んで輪になって皆で踊るお祭りがあるって聞いたような聞かなかったような。えーと……多分海で聞いたんだね」
そうした人の文化や風習、知らない者を吸収することが大切だ。底に込められた想いまでは理解出来なくても、大衆と共に在れば色々と強くなれるはずなのだ。
似合いの浴衣を購入し、祭り屋台の品を食べる。これだって、立派なトレーニングの一つなのだから。
故郷でのんびりと過ごすことも悪くは無い。『修羅の如く』三鬼 昴(p3p010722)は豊穣へと踏み入れて、祭り囃子に耳を傾けた。
(思えば、召喚されイレギューズになって1年くらいか。
……鉄帝での動乱や覇竜の事件と色々あったが、こうして無事に日常を謳歌出来るような結果に終わってよかった)
天義がキナ臭くはあるが、イカ焼きやわたあめ、フランクフルトと出店を回り楽しむのもまた一興だ。
そうして祭の空気を味わって、堪能したならば神輿や山車を見に行くのも悪くは無いだろう。
「折角だ、二人で夏祭りでも行こう。我らが二人揃うと祭りというより酒盛りが正しい気もするが……気のせいだ」
そう呟いた『空之狐』雨乃宮・飛鳥(p3p007515)に明るい笑みを浮かべて見せたのは『天之狐』七々扇・雪乃(p3p007507)である。
「異国だと酒は神の血だっていうからね。酒が進むのは仕方ないことだと思います美味」
相変わらずの様子の雪乃は手頃なつまみをそこら辺の屋台で購入できると喜んでいた。祭り囃子も良い肴だ。
「そういえば、雪乃は酔うと俺の事を“ボクの飛鳥”って言うが……俺が雪乃のモノってことは……逆はどうなんだろうな?」
「んー? ははぁそれ聞いちゃう? 何のためにこーんなちっちゃい狐の頃から面倒を見たと思ってー?」
にぃと唇を吊り上げた雪乃は腰掛けていた飛鳥の膝の上にもそもそと乗り込んだ。
「ふはははは、飛鳥は一生ボクの面倒をみる運命なのだー」
「一蓮托生…召使的な意味じゃないのは解った……! 面倒見るのはずっと変わらない……って、そういう顏をするんじゃない」
見上げる彼女に、夏のせいで顔が熱いのだと飛鳥はふいと視線を逸らした。
「うーん、折角の夏休みだし色んな国に行きたい……覇竜は行った、鉄帝は行った、海洋も行ったし……。
豊穣、豊穣は行った事ないかも……? 行ってみよう!」
意気揚々とやってきた『おしゃべりしよう』彷徨 みける(p3p010041)はお気に入りの水着を着用し、豊穣の砂浜や海を眺めて居た。
神ヶ浜の海水浴場で思い切り泳いだら、その後は予約をした旅館でのんびりと過ごすのだ。
そんな楽しい旅行を思う存分に楽しめるのだから、休暇とは素晴らしいものである。
「黄龍!」
御所に居た彼女は『発展途上の娘』シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)に呼び掛けられてから「おお、息災か」と微笑んだ。
「うん。聞いて欲しいんだ。最近はね――」
覇竜でのこと、天義でのこと。それから『偲雪』のこと。
黄龍は耳を傾け楽しげにシキの言葉へと相打ちを返す。頷いてくれる神霊の傍でシキは頭をぐりぐりとその肩に寄せた。
「……ねぇ、黄龍。ちょっとだけ疲れちゃったな。私、精一杯走ってきたつもりだけど。
偲雪さんのことも救えなくて、最近は上手く体も動かなくて……こんなんで、誰かのこと助けられるのかな」
「シキよ、誰もが永遠に走り続けられるわけではないのだ」
体をそっと横へとやり膝の上へと誘ってから黄龍はシキの顔を覗き込む。
「眠りなさい、可愛い子。おまえは笑顔が似合う。けれど、吾にはそのように無理に笑う必要はあるまいよ」
「誘われてきたけど……この家で合ってるかな?」
『鬼菱ノ姫』希紗良(p3p008628)の故郷である鬼菱の里へと『紫煙揺らし』シガー・アッシュグレイ(p3p008560)はやってきた。
そろそろと覗き込めば割烹着姿の希沙良がにんまりと微笑んで「いらっしゃいませ!」と告げる。
「里で採れた山の幸をたんと召し上がっていただくべく、準備をしておりました。ささこちらへ」
「山菜や川魚の膳というのは良いねぇ。それじゃあ、お邪魔します」
そそくさと案内をする希沙良に従ってからシガーは紅葉切は村の祭壇に戻したこと、本来村から出るべきではないものなのだと言う事を伝えた。
「アッシュ殿に助けて頂いたことは里長に報告済でありますよ」
「俺は手伝いをしただけだから、助けたというとなんだか面映ゆいねぇ」
成程、村に音熟れてから幾つもの視線に晒され居たが、それは彼女が報告したことで浴びたものだったのか。
漸く納得してから、シガーはゆっくりと腰を落ち着けた。
●豊穣III
夏祭りに訪れていた『琥珀のとなり』鹿ノ子(p3p007279)は遮那と逸れないようにとその手をぎゅっと繋ぐ。
お揃いのブレスレットも最初は只のおまじないであったものが今は迚も大切なものへと変化したのだ。
「こうして其方と一緒に夏祭りに行くのは何度目かの。毎年楽しみになっておるな」
「そうですねぇ、最初の夏はご一緒できなかったかも? でも、今までたくさん色んなところへ行きましたね」
様々な思い出がある。初めて出会ったのも初夏のこと。それから年月を重ね、思い出を重ねて此処までやってきた。
「林檎飴は好きか? 私はこの甘さと中の林檎の酸味が好きでな」
「林檎飴ですか? すきですけど、いつもひとりでは食べきれなくて……」
同じだと遮那は頷いてから「半分たべてくれぬか?」と問い掛けた。
「……はい、是非。半分こですね!」
同じ時間を過ごし、同じ物を見て、同じものを食べる。その何気ない時間は心地良い。
「鹿ノ子の隣は心地よいからの」
「僕も、遮那さんの隣にずっと居たいです」
笑みを向ければ鹿ノ子もつられて微笑んだ。こうしてこれからも共に歩んで行きたいのだ。
お気に入りの浴衣を着てぽてぽてとやってきたのは『初めてのネコ探し』曉・銘恵(p3p010376)。
練達以外の国の夏祭りは初めてでとても楽しみなのだ。焼きそばや団子を購入する。綿飴も美味しく、様々な甘味が揃っていた。
「あ、豊穣にも猫っているんだ。三毛猫白猫黒猫キジ猫、どの子も可愛いね」
銘恵はにまりと微笑んだ。花火の音が苦手ならば早い時間に何処かに退避した方が良いだろうか。もふもふと一緒に過ごせるのであれば何よりも喜ばしい。
「焼きそば~、イカ焼き~、綿あめ、りんご飴ー!
焼きもろこし……かき氷もあるな! 飲み物は……なんぞトロピカルなもんが売っとるの!」
『ナチュラルボーン食いしん坊!』ニャンタル・ポルタ(p3p010190)は全て平らげた後に『秘密の場所』へと向かう事に決めて居た。
その場所で花火を思い切り楽しむのだ。
「おぉー、上がっとる上がっとる! 気の所為か、昔よりも派手な色になったのう。
火薬の配合を変えとるのか、この辺りが明るくなって、遠くへも見える様に工夫してるのやも知れぬな……散るのは勘弁じゃが……この世界の者達にとって、こうありたいとは思うのう……」
炎の子、『ファイアフォックス』胡桃・ツァンフオ(p3p008299)。暑い夏でもへっちゃらだ。
「どこへ行っても良かったのだけれども、なんとなく夏祭りの気分だったの。
この季節の縁日は行かないともったいないので~」
胡桃は縁日を廻る。たこ焼き、お好み焼き、綿菓子、どれも見るだけで喜ばしい。
「折角の記念のお祭り、折角の夏祭り――当然、参加しない訳にはいかないよね!
僕もイレギュラーズとして、豊穣で領地を得てる身として、最大限楽しんで参加しなきゃね!」
領民に屋台の特産品を宣伝してもらいながら『数多異世界の冒険者』カイン・レジスト(p3p008357)は祭の遊興に参加する。
カインの領地の特産品の酒は甘口で飲みやすい。口当たりも良いことから是非、賞味して貰いたい一品だ。
それだけではない、他の屋台を視察することも立派な領主の役割なのだ。決して遊んでいるわけではない。
共にクリスマスキャンプをした面々で夏祭りにやってきた『夜を裂く星』橋場・ステラ(p3p008617)。
その前を行く『八十八式重火砲型機動魔法少女』オニキス・ハート(p3p008639)は物珍しそうに周囲を見回した・
「屋台にも見た事ないメニューが色々ならんでる……これは、全部食べてみなければ」
どの屋台も賑やかで見ているだけで心が躍るのだ――けれど。
「ふむ、シュピの灰色の脳細胞に電流が走りました。
各々これこそが祭りの定番と至高のお祭りメニューを持ち寄るゲームを突発的に開催します」
『ゲーミングしゅぴちゃん』DexM001型 7810番機 SpiegelⅡ(p3p001649)――シュピーゲルのひらめきに「なんかすごそうななまえ!」と『うそつき』リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)は目を丸くした。
「Uhh……いくら相手が友だちとはいえ、これは負けられないね!
お祭りはぼくのハイセンスがビンビンするお店でいっぱいだけど、ぼくからのイチオシはリンゴあめ!」
宝石のようにきらきらしてて、てのひらから溢れそうなくらい大きな林檎は一口で食べきれないと分かって居ても齧り付きたくなる抗えない魅力がある。
「季節柄、まず思い浮かぶのはかき氷、アイスクリン、冷えた瓶ラムネといった冷たい物、ですが……。
しかし拙が推すのはたこ焼!
最近だと色々な味付けもありますし、熱い中で熱々のたこ焼を食べて冷たい飲み物を流し込むのは非常にアリだと思うのです!」
ステラの提案に其れも良いと頷いてからオニキスは焼きそばを差し出した。
「数々のお祭りを食べ歩いてきた私が選ぶならば……やはり焼きそば。
麺や具材選び、焼き方に味付け。屋台によって違う様々な味を楽しめる。
どれもおいしいけれど、ここは豊穣ということで醤油味で。鉄板の上で焼ける音。立ち上る食欲をそそる香り。つい手に取ってしまう魅力がある」
シュピーゲルは其れ等を眺めてから「シュピからは綿飴ですな。食べた事ないですが興味がありました。不思議な食べ物です」と頷いた。持ち寄ったものを皆で山分けするのだ。それもお祭りの醍醐味なのだ。
故郷の夏祭りをぶらりと見て歩くのは『恨み辛みも肴にかえて』トキノエ(p3p009181)だ。
射的で力試しをし、知り合いが喜びそうな人形と向き合ったが――
「……なんか当たりにくくねえか? おい、細工してんじゃねえだろうな?」
いいえと店員が慌てた様に首を振る。軽く突っかかってみたが当たらないのも楽しんでこそ、なのだろうか。
「ふぅ……やはりここは落ち着きますねぇ。
元居た世界の元いた国と似たようなところですし。この風情もとても懐かしく思えて」
どこか郷愁を感じて眼を細めた『サブマリン小太刀』京極・神那(p3p007138)は金魚掬いの屋台へと近付いて行く。
どれもこれもが楽しそうだが、ふと鼻先を擽ったのは『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)の『何でも焼き』の薫りだ。
「焼きそば、イカ焼き、たこ焼き、お好み焼きに焼きトウモロコシ、串焼きなど……ご予算に応じて焼いてやるぜ! 10Gとか渡して来たら千切りキャベツ焼いて渡してやるけどな! ぶはははッ!」
何だって調理してくれるゴリョウは休憩スペースから出て来た霞帝に「世話になったな」と笑いかけられてから頷いた。
『霞の旦那』は思う存分にゴリョウの屋台で休憩して言ったのだろう。嬉しそうに笑っているのだ。
●豊穣IV
「今日は非番ですけえ、夏祭りにでも行くことにしましょう。しかし、ものすごい人混みですの……」
そう呟いてからくるりと振り返った『黒蛇』物部 支佐手(p3p009422)は「偶には良い事を言うのぅ」と笑っていた『白蛇』神倉 五十琴姫(p3p009466)の姿を見失い慌てた様に周囲を見回した。
「おい琴、琴! どこ行ったんじゃ! 逸れてしもうたんじゃろうか」
「支佐! そなたの目は節穴か!? わしはここにおるじゃろうが!」
「……ん、なんじゃそこに居ったんか。小さ過ぎて分からんかったぞ」
「小さすぎるとはなんじゃ! 失礼なやつじゃのぅ! 背はまだ伸びる可能性もあるんじゃ!」
お怒りの五十琴姫に対して支佐手は「あーあー、怒るな怒るな! 金魚すくいでも型抜きでも、なんでも付きおうちゃるけえ、機嫌直しい」と声を掛けた。
すぐに機嫌をとるのは彼の悪癖だ――だが、異国の菓子から巡れるのであればそれはそれ。
「何でありゃ、この南蛮物の店でも……」
それにばかり夢中になるからダメだと五十琴姫は支佐手を引き摺って行くのであった。
リチェルカーレがてこてこと歩いて行く。
「わぁ! お祭りで人も屋台もいっぱいね! リチェ! 今日はたくさん楽しみましょうね!」
『リチェと一緒』キルシェ=キルシュ(p3p009805)はリチェルカーレをぎゅうと抱き締めてから苺飴やたこ焼きを分け合いながら歩いていた。
「リチェはどれが良いかしら? 豊穣ならではのお野菜とか果物あったら買って帰りましょうね!
あ、小物屋さんもあるわ! 色んなモチーフの小物があるのね。んー……これとこれ下さい!」
ワンポイントの刺繍の突いた色違いのハンカチは大好きなママとお友達に向けたプレゼントだ。
淡い赤の黒猫はママに、お友達には空色に兎。折角だからとキルシェは白地にサクラのハンカチを選んだ。
「めぇ……賀澄さまが……?
晴さまも、そんなお顔、なさらず……探すのをお手伝いします、ね」
『ちいさな決意』メイメイ・ルー(p3p004460)はそそくさと『中務卿』建葉・晴明(p3n000180)を着付けた後、祭へと向かった。今回は晴明の主である霞帝の探索だ。
「賀澄さまは、そのままでは目立ちますから……お面をつけていたりして?」
「有り得る」
あれでいて彼は何かと理解しているのだ。自身を探しに晴明がやってくることも、きっとメイメイが一緒であることも。
「はい、晴さま、これをどうぞ……美味しい、でしょう?」
差し出された苺飴を囓りながら「ああ」と晴明は頷いた。
「……実は、こうして晴さまとお祭りに行けるの、嬉しいなって……狡い事を、考えてしまいました。
晴さまは……きっと其れ処ではないですよ、ね」
晴明はぱちくりと瞬いてから「メイメイなら共に探してくれると思っていた」とあっけらかんとした様子でそう言った。
豊穣の夏祭りを歩き回っていた永新(p3p011269)は「楽しんで居るか?」と朗らかに声を掛けるひょっとこ面の男に頷いた。
「ん? 貴殿とは始めて顔を合わせるな。俺は永新、しがないゼノポルタ──鬼人種だ。
暫くはろーれっととやらで鍛錬をしていたのだが、久々に豊穣の地に戻った形だ。
この時期は……やはり、祭りの笛の音が恋しくなるんだよ。
中々悪くないだろう? 俺自身は上手く演奏出来ないのだが。
おおと、すまない。俺は目付きが悪くてな。別に気分を害した訳ではないよ。元々だ。
貴殿さえ良ければ、これも何かの縁があったのだろう。一緒に笛の音を楽しまないか?」
「ああ、勿論――」
頷いた男の背後から「賀澄様! 何処に行かれたのですか!」と声が響く。
『導きの双閃』ルーキス・ファウン(p3p008870)は「賀澄様!」と慌てて彼へと走り寄った。
「ああ、ルーキス」
「秘密の外出ってドキドキしますね――ではなくて!」
その様子に気付いたのは屋台をのんびり見て回っていた『歪角ノ夜叉』八重 慧(p3p008813)だ。
「……せめて護衛付けるとか、護衛ちゃんと付けてるの伝えてから出掛けた方が良いっすよ……」
慧自身も敬愛する主がいる。主が勝手に抜け出したらと考える度にめちゃくちゃ胃が痛むのだ。屹度、霞帝ほどになれば何人もが行方を捜していることだろう。
「ははは、いやはや」
「……何か探してるんすか?」
「慧よ、何か面白ものはあったか?」
自由すぎる国家君主に慧は肩を竦めたのだった。
●覇竜I
「さて、当方も我が生まれ故郷のフリアノンの地へと向かうとしようか。
何やら大事があった様だが…それに負けるフリアノンの民ではなかろう?」
戦いを終えたばかりのその地はその影をも感じさせぬほどの喧噪に溢れている。
暦(p3p011287)と同じように隼(p3p011286)や東(p3p011285)も故郷の祭りに協力し盛り上げるが為に亜竜集落『フリアノン』へと訪れた。
「久々の里帰りだねー。思っていたよりも外の世界は広くってサ。
気付いたら暫く帰ってなかったんだよねぇ。やっちゃった!!!
更には大きな事件も起きてたみたいだしー。ボク、びっくり!!!
……何はともあれ、故郷が木っ端微塵のミジンコも真っ青状態になってなくて良かったよー」
ふうと息を吐いてから汗を拭ったのは『藍染霹靂』藍 瑞冰(p3p010485)。何事もなかったように平和を謳歌しているフリアノンでも、傷は確かにあるのだろう。『救済の視座』リスェン・マチダ(p3p010493)は一人考え込む。
「きゅ~?」
肩の羽リスが首を傾げれば、リスェンは「何もありませんよ」と微笑んだ。羽リスとは最近遊べていない。思う存分に構い倒して遊び尽くそう。
折角の調査の機会だ。この周辺を探索し尽くすとサバイバル道具一式を手にした『狐です』長月・イナリ(p3p008096)は鉱物や様々な植生を調査し続ける。
「覇竜領域はまだまだ未開の場所が多そうだから経験値(新しい植生や鉱物の発見)が大量に稼げそうだわね♪」
これで大量経験値ゲットなのだ。危険地帯には踏込まないように注意をして新たな出会いを探し続ける。
てこてことフリアノンをお散歩中の『ふわもこアメリカンカール』ふわもこ かーる(p3p011266)と『ふわもこマンチカン(短足)』ふわもこ まんちかん(p3p011265)。
「かーる、先に行ってもいいにゃ」
「本当にゃ? わーいにゃ!」
尾をゆらゆらとさせて駆け抜けていくかーるはぴたりと足を止めた。まんちかんが追掛けてくるまで暫く休憩なのだ。
「やっぱり一緒に歩きたいのにゃ。かーるも合わせて歩くにゃー」
てこてこと歩いて行くかーるとまんちかんは二人で楽しげだ。皆でお昼寝をしてのんびりと過ごせば亜竜でありながら猫の姿をしたドラネコの姿が見えた。
「……ここの猫かにゃ?」
不思議な猫の姿にぱちくりと瞬くが、ドラネコ達もお昼寝がしたいのであれば一緒にのんびりするのだ。
大きな戦いを終えた後だ。フリアノンの様子を伺いに向かった『花冠臥竜』カサンドラ(p3p010386)や、こそこそと人間観察で『人と接する勉強』を趣味と兼ねて眺める優雨(p3p010426)の姿もある。
「ふりあのーん! 久し振りのふりあのーん!
覇竜の皆は元気かなー。かなー。 さあみんなわーっと楽しもう!」
お祭りとかしようと『あらぶるりゅう』リリア=リザイア(p3p010432)はにんまりと微笑んだ。
「なんかいろいろあったような気がするっスけど、この場で湿っぽい感じになるのは野暮ってもんっスね。
勿論、吐き出したいことはどんどん出していいとは思うっスけどね。とりあえず、飲んで食って今日は楽しませてもらうっス」
『青の疾風譚』ライオリット・ベンダバール(p3p010380)は心配そうに『亜竜姫』珱・琉珂(p3n000246)の取り出す『料理』を眺めて居た。
「結構、練習していたみたいっスから、少なくとも胃が破壊されるようなことはないはずっス
星を見に来たのに、オレが星になるわけにはいかないっスからね!」
「星見の為に用意したの! 味見してくれる?」
「……」
ライオリットはそっと、外を見た。屋台がある。あれにしようと告げればぱちくりと瞬いた後、琉珂は大きく頷いた。
「命懸けの戦いがあった直後だ、皆、心身ともに疲弊しているだろう。ならば、ほんの一息つける様、菓子類の屋台でも開こう」
荷台に調理スペースを作り菓子を作る『特異運命座標』陰房・一嘉(p3p010848)は設備の関係上、クッキー、タルト、クレープになると考えてカットフルーツや果物のコンポート、ドライフルーツを用意した。
「幾ら一嘉さんの筋肉が万能だとは言えども、一人で料理しながら接客もとなると物量が足りません……。
ですが私は一嘉さんに愛を説かれた身、内助の功にてお助けするのが私の役目というものです!」
愛想を振りまくのは己の役目だと『自然を想う心』エルシア・クレンオータ(p3p008209)は眸を煌めかせる。
「鉄帝の変な遺跡のせいで、接客技術が磨かれて仕舞いました……今こそそれを活かすべき時でしょう」
自身が仕事を楽しんでみせることで、職人気質の一嘉をより引き立てるのだと、尽力し続けるのだ。
「ほら、琉珂」
『運命砕き』ルカ・ガンビーノ(p3p007268)に琉珂は「ええ、師匠」とにんまりと微笑んだ。
「その武器も引き継いだばっかで慣れてねえだろ。余裕がある時に慣らしておこうぜ」
ルカは人に何かを教えることを得意としているわけではない。ならば組み手の相手になって琉珂自身に戦い方を見出させるのだ。
「師匠、言っておくけど優しくしてちょうだいね!」
「ほれ、もうちょっと頑張りな。しっかり頑張ったらあとでカレー作ってやるからよ。
ちょうど覇竜で香辛料も取れるところを見つけたから最高のカレーを作ってやれるぜ。
肉もゴロゴロ入れてやる。ほら、かかってこい『さとちょー』様」
「それなら頑張らなくっちゃ!」
甘やかしたりはしない。琉珂は里長として皆を守ると決めたのだから。
彼女を鍛え上げてやるのだと心に決めてルカは飛び掛かってくる直情的な琉珂をさらりと躱した。
(来たよ、勇。しばらく来れなくて悪かったな)
『騎士を名乗るもの』シルト・リースフェルト(p3p010711)は一人、故人を弔うために墓参りにやってきた。
東雲剣は、弟を思う。花を手に目を伏せて、今だけは『嘗ての自分』となってその場に佇むのだ。
ドラネコのソアを中心に何時も通り13匹のどら猫たちと一緒に過ごす『相賀の弟子』ユーフォニー(p3p010323)。
新たに開拓した交易路も完成間近だ。本格的に交易が始まる前にドラネコ配達便をしっかりと整えておかねばならない。
「領民のみなさんにも時々お手伝いしてもらったりしているから、その分過ごしやすい領地にするのも頑張らないと!
かわいさもふもふ、まごころこめて、いつも大切丁寧に今日の配達は……よし、確認も大丈夫」
帽子を被ってユーフォニーはいざ出発。
「それじゃソーちゃん、行こっか!」
――ぴんぽーん♪ ドラネコ配達便ですっ。お届け物にあがりました!
●覇竜II
「なるほど……ヘスペリデスで大決戦を行って居たんだな……」
情報収集を行って居た『異世界ヒーロー』ヒューバート・クリアブルーム(p3p010334)は覇竜領域の復興を行なうという亜竜種達と出会った。
「ここは俺に任せておけ! 決戦に行けなかったからこうしなければスッキリしないからな……
まずはどこに行くべきか? 単なる掃除でもいいし警備でも十分に出来るぞ!」
フリアノンの周辺の整備などを行ないたいと言う亜竜種達の説明を聞いていたヒューバートの隣を『たーのしー』美音部 絵里(p3p004291)が駆け抜けていく。
「トレーニング! なのです! ふふふ、これを言うのもついに最後になってしまったようですね。
それでは、最後にふさわしいスペシャルなトレーニングは……じゃじゃん! なのです。走り込みー!」
風のように『びゅーん』と走って行く絵里は楽しげだ。
「覇竜の空も、中々いいなぁ……ホント、リョクみたいなのと一緒に飛べるようになって、楽しいよっ。
にしても、今日だけは楽しめーって誰かから言われた気がするけど、最近何かあったっけ? ……まぁいっか」
『自在の名手』リリー・シャルラハ(p3p000955)は近頃の記憶が曖昧だ。一週間を繰返すように、何を行なったのかも覚えて居ない。
それでも身についているかのように生態調査を行なって、空から皆の様子を見て楽しむのだ。きっと、これも忘れてしまうのだろうけれど。
「あの大騒ぎが終わって、また何のことはない歩くタケノコ取りとかに行ける日々が取り戻せたのでしょうか」
フリアノンでも依頼を受けた経歴のある『かみぶくろのお医者さん』毒島 仁郎(p3p004872)にとっては日常が取り戻されたのかが気に掛かるのだ。
覇竜での決戦を終えてから、まだ時は経っていない。亜竜種達に話を聞きながら、何気なくその地の食材を口にし、一人歩きの真っ最中だ。
オジサマについて、『一護一会』イチゴ(p3p010687)は余り知らない。
それでも、喪ったものや悲しみが沢山あったことは理解していた。だとしても、覇竜領域は平和が戻ったのだ。
「フリアノンでパーティーをしましょう!
悲しい事も沢山あったと思いますが……それでも此処に可能性が生まれた事にお祝いを!」
一人で出来る事は限られていても、それでも一人でも多くの笑顔を生み出すことが出来たならば、それは屹度素敵な事なのだ。
「そうだよね……今日くらいは楽しんで遊ばないと、ダメだよね」
折角のフリアノンだ。今の状況がどうなっているのかを『赤い頭巾の魔砲狼』Я・E・D(p3p009532)は見て回ろうと考えた。
イレギュラーズが来た頃にはまだ無かった交易で得られた品が並んでいるだけで変化が分かる。
変わりゆく針生の姿を記録に残そうと様々な料理を口にした。覇竜グルメレポートの記事を書いてオススメ度を評価していくのだ。
「うん、これも美味しいから五点……ベルゼーさんは、どんな料理が好きだったのかなぁ」
彼ならば屹度、何でも好きだったと笑うのだ。そんな姿を思い浮かべればつい口元には笑みが浮かんでいた。
――音楽を通してフリアノンの人々との交流を。そう掲げた『君を護る黄金百合』フーガ・リリオ(p3p010595)は黄金の百合を手に皆の顔を見遣る。
「さあ、その場で耳を傾けるだけでも良い。もし楽器を持ってる人や歌を歌いたい人がいれば、是非、一緒に!
そしてもしよければ、フリアノンで流行っている曲があれば、是非教えてほしい!」
にっこりと微笑んだフーガは『里おじさま』が命を賭して守った人々がこれから生きていく道を明るく照らしたいと願っていた。響かせるのは明るい音色。どこでだって、明るく過ごしていけるように。
「あっ」
フーガの姿を見付けてから『貴方を護る紅薔薇』佐倉・望乃(p3p010720)はその音色に耳を傾けた。
空中神殿に招かれ、故郷を旅立ってから一年と少し。故郷の地を元気にするために自身の思い出を奏でるのだ。
フーガの音色に合わせて歌うのは恋の歌。これから先の苦難をもこの時の音楽が支えてくれるように。
「さあ、希望に溢れる音楽で、フリアノンをいっぱいにしちゃいましょう!」
にんまりと微笑んだ望乃。その音色を聞きながら『茨の棘』アレン・ローゼンバーグ(p3p010096)は「ああ、蝴蝶」と『毒蛾』姜 蝴蝶(p3p010704)へと呼び掛けた。
「フーガたちが演奏をしているね。僕らは演奏できないし、観客でいようか」
「アレンさんは何か演奏できそうなのですが、意外でした。歌うことはしないのですか」
楽器や歌は教え込まれたことがあれども観客の方が落ち着くという蝴蝶にアレンは「歌?」と呟いてから首を振った。
「残念ながら歌は苦手なんだよねえ。聴いている方が好きかな」
「そうですか、それもまた意外でした」
「……ねえ、蝴蝶の中で僕って完璧な人だったりする? 違うからね?」
可笑しそうに笑ったアレンは「ほら、また違う音色が聞こえるよ」と囁いた。フーガの音色に合わせてパフォーマンスを行なうのは『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)。自身の持ち得る技能を使って、より音楽を響かせるのだ。
「音楽は集団戦だし、みんなで補い合おうね!」
「はい。あんなことがあった後です。覇竜の皆さんを元気付けましょう」
海洋の唄を歌う『奉唱のウィスプ』クロエ・ブランシェット(p3p008486)はフリアノンの歌を教えて欲しいと亜竜種達へと声を掛けた。アクセルと共に耳を傾け、それを譜面に起こしていく。
「へえ、じゃあ次はそれにしようか」
「はい。合唱ですね。一人ひとりの音を繋げたらきっと素敵なメロディーになりますよね。音楽を通じて皆に笑顔の花が咲きますように……」
覇竜の動乱も大きかった。普通に楽しんで欲しいと告げた『洪水の蛇』成龍(p3p009884)はクロエの歌声にコーラスとして交じる。
覇竜の戦いは犠牲も多かった。だからこそ、明るく見送らねばならないと『最強のダチ』ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)は認識していた。
謳うのは覇竜の戦いを高らかに湛える叙事詩。明るく、勇壮に、これからの復興の活力になる歌声を響かせる。
「一人だけじゃない、皆の力で得た勝利だ。皆の力で奏でる曲も、また『らしい』だろう?」
『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)は「覇竜領域での演奏は初めてではないな」と見慣れた景色に頷いた。
R.O.Oで一度、現実のフリアノンで一度、アルティマでも一度。それだけの縁を繋げたことが喜ばしい。
「リズムの扱いならお任せあれ! 一人も良いが、皆で奏でる音楽の素晴らしさは何物にも代え難い。ぜひ楽しんでもらえればと思うよ」
『奏でる言の葉』柊木 涼花(p3p010038)は「セッションと聞いて!」と身を乗り出した。
アコースティックギターやコーラスが得意だ。どんなジャンルだって、涼花は対応してみせるとやる気を滲ませる。
もっともっと、誰かの音色に合わせてそれを響かせるように。音楽の一番楽しい事は皆で演奏することだ。
「さあ、皆さんも一緒に――歌いましょう?」
響く音色と共に、フーガは「行進しよう!」と声を掛けた。
「さながら隊列。マーチングバンドですな。これがなかなかに楽しい。拙者ウキウキですぞ」
楽しげに笑った成龍にうずうずとしていた小さな亜竜種が走り寄る。フリアノンに響く音色はまだ止むことは無い。
ヘスペリデスのことが気になる『新たな可能性』レイテ・コロン(p3p011010)はそれでも、その場にはまだ踏込むことは難しいかとラドンの罪域付近にまで訪れていた。
(クリスタラードにワンパンされた悔しさ、それをより鮮明に思い出すのにトレーニング場所に覇竜を選んだけだけど……うん、ちょっと早まったかも知れない。
でもボクは強くなりたい。一足飛びになんて無理なのは解ってるけど……。
それでもクリスタラードの一撃程じゃなくても、重い一撃を受け止め切って尚且立っていられる様なトレーニングを!)
悔しさをバネにして、これから先へと飛び込むのだ。
●覇竜III
「来てくれた皆有難う! 今日はよろしくな!」
にっこりと微笑んだのは『恋揺れる天華』零・K・メルヴィル(p3p000277)であった。その傍には『レグルス』ストイシャ(p3n000335)の姿がある。
「クリームパン……いや、イヌスラパンにアンパン、メロンパンにコッペパン。
作り方は異なるから順繰りに丁寧に教えていくぞー。パン作り……というか料理は色々奥が深いから、学べることは多いぜ」
ストイシャは材料と睨めっこをしている。粉がパンに。摩訶不思議である。
「俺は……えーと、味見係をやろうかな!俺そんなに器用じゃないから……上手く作れる自信ないし……
メロンパンにクリームパンを作るんだ? 楽しみだなぁ~! ふふふ」
『漂流者』アルム・カンフローレル(p3p007874)は混ぜるくらいなら手伝うよとストイシャへと声を掛けた。
これを混ぜる――ストイシャにとっては更に新境地だ。
「ストイシャも甘いパン食べさせたいなら……クリームパンとかどうだ?」
「いいかもね! あ、ストイシャさんはあんこって知ってる? 豆を甘く煮てペースト状にしたもので……まぁ、食べて貰った方が早いかな?」
一度、あんこを用意してみると『炎の守護者』チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)はにんまりと微笑んだ。生地のコネ方にだってコツが居る。ストイシャがパンを作るならば、そうしたコツなども出来る限りレクチャーをしてやりたいことだろう。
「あんこが用意できたら持っていくからさ、待っててよ」
『理想のにーちゃん』清水 洸汰(p3p000845)は「ハイハイ! レイ! オレコッペパン作りた~い!」と手を上げた。
「だってコッペパンは、シンプルにマーガリンとジャムを挟んでもヨシ!
ガッツリ焼きそばやコロッケをサンドしてもグー!
贅沢にホイップクリーム&フルーツを挟んでも美味しい。無限の可能性を秘めた万能パンだからな!」
「私は練達制の米粉で米粉パンを作ってみようかと思います。アレルギーに関しては聞き及んでいませんが万が一に備えて、と、練達への関心を深めたいと考えて居ます」
『遺言代行業』志屍 瑠璃(p3p000416)は敢て粉から変更してみるように感g萎えた。外食かごはん食が主体である瑠璃にとっても口馴染みが良い米粉はどのようなパンになるのか。だ
覇竜で米粉をどの様に入手するのかはもう少し考えた方が良いだろうか。
「よし、みんな作るパンは決まった?」
「よろしくお願いします! 零先生!」
きらりと瞳を輝かせた『お菓子の魔法使い』アリカ(p3p011038)は菓子パンという言葉に惹かれて遣ってきた。
お菓子の魔法使いを名乗る者として確りと知っておかねばならないのだ。
「クリームパンがいいですかねぇ……あっ、形はウサギさんがいいです! ウサスラはありですか!?
ストイシャさんもお菓子が好きなんですか?
あたし、秘宝種なので本当は食事しなくても生きていけるんですけど、お菓子を食べてから人生観が変わっちゃって!」
「作ってあげたくて……」
誰かのためというのも素晴らしいとアリカは嬉しそうに微笑む。
「この可愛いイヌスラパンの作り方が習得したいな! クリームパンの甘さは疲れた脳に染み渡ってくれるし、冒険や作業で疲れた脳によく効くよ!
見た目がキュートなのも良いよね。見た目でも癒やしを表現してくれてる。
これを自分で作れるようになりたい。新しく何かができるようになるのはトレーニングとして有意義だと思う」
『挫けぬ笑顔』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)が頷けばストイシャは『イヌスラパン』と睨めっこを始めた。
「可愛い形、です。Lilyはメロンパン大好き。作れるようにがんばるぞ、おー♪」
小さく手を上げた『ささやかな祈り』Lily Aileen Lane(p3p002187)はパン作りを教わりながら普通のメロンパンだけではなく生地にチョコチップを混ぜ込んだりと工夫する。
「フリアノン・プリンを中に入れた《プリンメロンパン》と、覇竜ブルーベリーを練り込んだ《ブルーベリーメロンパン》も作るの、です」
ストイシャは人の文化はあまり知らないだろうが身近な場所のものだと知れば喜んでくれるだろうかとちらりとストイシャを見詰める。
「ストイシャ様はザビーネ様のために、ですか?」
『羽化』ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)は穏やかに問い掛けた。
「僕もパンを作れるようになったら食べてもらいたい方がいます。喜んでいただけるようお互い頑張りましょう」
クリームパンのカスタードクリームの味は心を和らげる。努力しただけ、その想いは屹度伝わるはずなのだ。
星空の下で楽しもうとメイド服を着用した『未来を背負う者』劉・紫琳(p3p010462)は「ようこそいらっしゃいました」と微笑んだ。
「幻想に深緑、豊穣、勿論覇竜も。様々な国のお茶をご用意しました。琉珂様は何にしますか?」
「そうねえ、何がいいかしら?」
並んだ茶葉を眺める琉珂は楽しげだ。こうやって何でもない日に皆で集まって楽しむ。
そんな一日を楽しめることが紫琳にとっては何よりも楽しいのだ。こんな未来をこれからも作っていきたい。楽しげに笑う彼女の元で、彼女と共に――「ずーりん」と呼ぶ声に「はい」と紫琳は顔を上げた。
『紲家』紲 寿馨(p3p010459)の姿を見付けて、『紲家』紲・桜夜(p3p010454)はその背中について行く。
「料理を作ってきたよ。折角の星見だからね」
寿馨は平和が戻ったのだから食べたり飲んだりと楽しくしようと微笑んだ。家柄的に習った占いの訓練で星を『読む』事も出来ると寿馨は提案する。
「ねえ、読んで」と琉珂が懇願すれば寿馨は小さく頷いた。
「結果が良くても悪くてもどう受け取るかは自由だよ。アンタにとって何かの役に立てたら嬉しいな」
うきうきとする琉珂を一瞥してから、料理を口にした『いのちをだいじに』観月 四音(p3p008415)は小さく息を吐いた。
海洋に居る事が多かった四音だが、肉料理も好きだ。太らない程度に食事を楽しみ穏やかな時間を過ごそう。
「……こういうのを嵐の前の静けさ、と言うのでしょうか。
いえ、仮にそうだとしても……うん、頑張らないと、ですね」
束の間の平穏でも、それを思い切り楽しみたい。故郷の料理をきちんと味わっておきたいと願ったのは『未来を背負う者』朱華(p3p010458)だった。
「……琉珂? 料理をするのはいいけどちゃんと自分の料理の面倒は見なさいよ?
流石に宴会でまで琉珂の脱走した料理を追いかけ回したりはしてられないもの。
だからそんなにこっちを見てきてもダメよ、ダメ!」
「あのね、作ったんだけど……」
「もう!?」
犠牲者が出てしまったのだと恐れ戦いている朱華に「本当に言ってるの? リュカ」と『未来を背負う者』秦・鈴花(p3p010358)は振り返った。
その場で宴の料理を作る鈴花をサポートするのは『宝食姫』ユウェル・ベルク(p3p010361)だ。賢いユウェルちゃんは日頃からのお手伝いの成果を見せている。(琉珂と違って)賢いユウェルちゃんはりんごの皮だってむけちゃうのだ。
「色んなことがあったってお腹は空くし、美味しいものを食べれば元気になるの」
ワイン煮込みに、クラッカーにチーズや果物を載せた者を用意している鈴花は「リュカ」と呼んだ。
「ゆえは色々切るのを手伝ってね、リュカは……うん、お客様の相手をしましょ、ね! こっちはいいから!」
「え?」
「だからゆえどさくさ紛れにまた石を鍋に入れないの!!
あとまたなんかギエエって聞こえたけどリュカァ! 何入れようとしてんの!」
「えへへ」
「えへへじゃないわよ! ずーりん、シュカ! 捕まえなさい!」
確保される琉珂と「誤差だよ誤差!」と手をばたばたとするユウェル。
こんな何時も通りの日常が特別なのだ。食事はオジサマにだって備えてあげよう。
それから――
「花火しましょうよ。空に咲く花火もいいけど手持ち花火も良いものね。
来年も、その先も、皆でこうして集まれたらいいわね」
鮮やかな光で、その人を楽しませてあげよう。それがこれからを、大切に彩るはずだから。
●ローレットV
ローレット周りの走り込みをする『伝令役』比良坂・屍(p3p006231)は喧噪に耳を傾ける。
徳角・新次郎(p3p009533)や『一般人』三國・誠司(p3p008563)、獄門・大吾(p3p008710)のように頑張るものもいれば、『剣の精霊』ラグナロク(p3p010841)のようにトレーニングとは何をするべきかと考える者も居た。
「精神面での成長か? 座禅、瞑想、イメージトレーニング。うむ、これじゃな!
では早速、自宅に帰って布団の中で横になりながら瞑想じゃ!」
突然のおサボリ宣言だが布団の中での瞑想だって多分、立派なトレーニングなのだ。
「前のロレトレん時は地続きの国を全部徒歩で横断したんすよね、国毎に色んなお酒に出会えて良い一期一会の旅だったっす。
まだ半年とちょっとしか経ってないっすけど、また走って国をまわってみるっす、今回はどんなルートを辿ろうかって考えるのが楽しいっす」
靴紐を締め直してから『救急搬送班』ウルズ・ウィムフォクシー(p3p009291)はスタート地点から駆けだしていく。
「まだ見ぬお酒を目指して! いってきまーす!」
一人だからこそのんびりと過ごすというのも悪くは無い。『夕焼けに立つヒト』エーミール・アーベントロート(p3p009344)は喧噪を眺め笑みを浮かべる。
片っ端から味見をする『タコ助の母』岩倉・鈴音(p3p006119)は「わたしの胃袋が必要とされているね!」と幻想の街からケータリングを行なう業者にダメ出しを行って居る。
得意の日本舞踊を舞い終えた『月下美人』雪村 沙月(p3p007273)は集中力が研ぎ澄まされる感覚を感じ取ったのち、そそくさとパエリアへと向かった。予算はどこからなんて気にせずに、今はのんびり食事をするのが吉だ。
珍しい料理を探して口にしておくことでこれからの会話のネタになるだろう。パエリアは海の幸がふんだんに使われており如何にも沙月好みの品だ。
「にゃ、みーおもパン屋で焼いた色んなパンを提供しますにゃ」
サンドイッチも卵にハム、ツナマヨと様々な種類を『こねこね』頑張ってきた『ひだまり猫』もこねこ みーお(p3p009481)がミルクを手に乾杯する。足りなくなればこの場でお料理を作って、それからパンをこねこね。まだまだパーティーは続くのだ。
「とりあえずローレットで……えー、なに、宴会でもするかのう
ちょーっと活動が久々じゃし……うん、まあ、なんじゃ、やらんとの……
うーんこの夏休み終了間際に大量の宿題が残っている自体に直面した気分じゃのー」
さて、何から手を付けようかと悩ましげな『宝石の魔女』クラウジア=ジュエリア=ペトロヴァー(p3p006508)とは対照的に『やることは決まってるでしょう』と言う顔をした『ゴールデンラバール』矢都花 リリー(p3p006541)。
「ほら……トレーニングに決まってるっしょ……日陰物陰を探して休むトレーニング……
最近メチャ暑いしねぇ……ローレット中の金庫のダイヤルの上にバールを乗せるだけの簡単に見えて簡単じゃない仕事……まぁあたいのエキスパートな収奪力とエキスパートな闇の帳で楽勝だったけどねぇ……」
――おや? 雲行きが怪しいな……。
「正直な所、最近あまり働いていなかったのでたくさん飲み食いするのは少々気が引けるんですよね……」
ならば給仕の手伝いでもしようかと『いつかの歌声』ソニア・ウェスタ(p3p008193)は顔を出した。以前は給仕を雇う側だった。その頃の使用人は元気にしているだろうか。
用意されていく料理を少しずつ口にする『乱れ裂く退魔の刃』問夜・蜜葉(p3p008210)もその味を堪能している。
「いつもだと領地に引きこもって魔導兵装の開発だとか習熟訓練だとかやっているのだけどね。
今回はパーティーに来てみた。残る冠位魔種はあと二体……思えば随分と……感傷? いや、多分、気まぐれだね」
グラスを手にしていた『咎人狩り』ラムダ・アイリス(p3p008609)はやや目尻を緩めた。メモリーに余程の事でも無い限り此処で食事を食べられるのだ。
「――ということで何が言いたいか要約するとだね……。
訓練やら技術開発やらでブラック企業さながらだから技術者連中から逃げてきた!
後此処にあるメニューオール制覇して良いよね!」
「ああ、ガツガツ喰え! この僕が幾らでも作ってやる!」
何だかんだで料理を作り続ける『厨房指揮』シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)。イレギュラーズ達は斯うした機会に度々料理を提供する『側』になるものもいる。シューヴェルトはまだ見ぬ料理を求めてレパートリーを提供し続ける。食材からも拘れば一級品が揃うことだろう。
「おにくですね。ムシャムシャ。死ぬまでたべましょう。あ、死ぬまでは比喩なので大丈夫ですよ。
カルビは定番、塩タンは欠かせません。それから私が解体してきた『もつ』ですね! え? このホイップクリームは何か? ご主人様『の』ホイップクリームは至高ですよ!」
相変わらずの様子の『同一奇譚』襞々 もつ(p3p007352)はにんまりと笑う。
勢い良く滑り込んできた『殿』一条 夢心地(p3p008344)は「ユリーカよ!」と叫んだ。
「分かっておるか……今、まさに六周年であることを。
つまりはいついかなる瞬間でも、全身で『6』を表現できなければならぬ、ということよ」
「ええ!?」
「ただ突っ立ってるだけでは、どう見ても『1』でしかない。
身体の先端をくるんと丸め、はい! そこ! 『6』周年!!」
「『6』ってどうするのですか!?」
「ぬぅ~~ダメじゃダメじゃ。まるで『6』に見えぬ。
もっとこうくるん、とじゃな。激しくも滑らかな曲線を描くように身体を曲げよ」
「う、うぎぎぎ……」
懸命なる努力を見せるユリーカは苦しげに声を詰らせる。
「もう理解できたな、ユリーカよ。
そう『4』や『7』あるいは『8』は容易い……しかし瞬時に『6』となるのは普段からの訓練が必要。
つまりはそういうことじゃ。なーーーっはっはっは!」
どういうことなのですよ、と腰をぐきりとやったユリーカは叫んだ。
「フ、フ、フ……終わったーーー!!!
今回はお土産を用意って、会場が10か所にも分かれてるのに全会場で同じもの配るって無茶過ぎるだろー!」
梱包作業を徹夜で行なった『受付嬢』クロジンデ・エーベルヴァイン(p3p001736)。
何時も事務作業を行なってくれる受付嬢は満身創痍だ。今回も有り難う。良き働きでした。
「でももう終わった、終わったんだー今は宴を楽しんで終わったら爆睡しよー。
え、この会場のかたずけー? 別に参加者に手伝わせれば各人の作業量はチョイだろー。
え? なんか苦情が来てるー? は? お土産に包んだのないないしてきた物なのー!?」
その声に瞼を押し上げてから『雷竜再臨』トニトルス(p3p008489)はぐっと伸びをした。
「ンー。またも、よく寝た。いいや寝すぎか。いかんな、肉体の稼働限界が長くなると、時間にルーズになってしまう。
……身体に力が戻っていくのはわかる。この国の暗闘ぶりもなんとなくわからないではない。
そして、特に。竜……か。覇竜。冠位魔種。ふうむ」
関係ない話だとするのは簡単ではあるが良いことではないか。人にかかわらず辺境の地でぼんやりとするのも良いがたまには調べ物も良いだろうか。
「さて、きょうはローレット・ギルドで報告書でも読みふけってみようか」
――一区切りを付けるなら、此処だろうとローレットに顔を出して『北辰の道標』伏見 行人(p3p000858)はほがらかな様子でローレットの喧噪を眺めていた。
「――もうそんなに経つか。ちびっこ、ってもう言えなくなっちまったなあ、ユリーカを。
ある程度トシを食うと周りの成長で経った年月を実感する、っていうと年寄りくさくなるが、事実だから仕方がない。俺もトシを食う訳だよ。なんてな」
楽しげに笑うユリーカも、幼かったその時を忘れたように随分と大人びた。
その様子を眺めて居る青年にそっと弁当は差し出される。まだまだ、パーティーは続くだろう。
その喧噪から遁れるように、その場を後にする。
「さて、今度はどこへ行こうか?」
『6年』の節目に。これからもまだ、冒険は続いていくのだ。
成否
大成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
お疲れ様でした!
白紙の方以外の描写をさせて頂きました。
※当シナリオのファンレターは執筆者に届きませんので、何か誤植等が御座いましたら運営までお問い合わせ頂くか執筆GM(夏あかね)宛ファンレターにてご連絡ください。
※【お土産】につきましては後日追って配布させて頂きます。
GMコメント
Re:versionです。
六周年ありがとうございます!2023年も折り返し、PandoraPartyProjectも残る冠位魔種は二人!ラストまで走り抜けましょう。
元気いっぱい参ります。特別な企画を出すときだけお邪魔する第13弾です。
お土産もあるよ! 以下詳細です。
●任務達成条件
・真面目(?)に面白く(?)トレーニングしましょう。
・『大規模召喚』六周年をお祝いしましょう!
・楽しく過ごしましょう
●成功度について
難易度NORMALの経験値・ゴールド獲得は保証されます。
一定のルールの中で参加人数に応じて獲得経験値が増加します。
それとは別に700人を超えた場合、大成功します。
まかり間違って1000人を超えた場合は更に!?
●シナリオ参加おまけ
当シナリオでは参加者に景品(6周年お土産)が配られます。
・ユリーカのないないボックス(6周年お土産)
フレーバー:ふっふっふ。ないないしてきたのです! 中に何が入ってるか分からないですが、きっととてもイイものなのです!【使用するといずれかの効果をもったアイテム一つと交換する事が出来ます。「経験値+2000」「パンドラ回復+2」】
・ないない修行リスト(経験値+2000アイテム)
フレーバー:これをすればないないマスターなのです! 使用すると経験値+2000
・ないないポチ袋(パンドラ回復+2アイテム)
フレーバー:開けるといいもの入ってるのです! 使用するとパンドラ+2
●同行者指定について
1行目に【同行者指定(参加チームor同行者名前ID)】をお願い致します。
必ず上記をお守下さい。参加者多数が見込まれますために迷子になってしまいます。
●重要な注意
このシナリオは『夏あかねSD』が執筆担当いたします。
このシナリオで行われるのはスポット的なリプレイ描写となります。
通常のイベントシナリオのような描写密度は基本的にありません。
また全員描写も原則行いません(本当に)。
返却予定日につきましては数日程度運営都合で変更させて頂く可能性がございます。
代わりにリソース獲得効率を通常のイベントシナリオの三倍以上としています。
行動場所
以下の選択肢の中から行動する場所を選択して下さい。
【1】ローレット
何すればいいの!?なあなたにお勧め!
ユリーカ達とパーティーだ!お食事はローレットが予算で持ってくれました。
ないない(がんがん)。ないない(がんがん)。沢山ないないしておいたので安心して飲食して下さい。
【2】幻想
幻想王国で自由な場所に行けます。
※フォルデルマン三世陛下は何時もパーティーを開いてくれています。
※フィッツバルディ家につきましては『双竜宝冠』進行中です。情報は此方では得られません。
【3】鉄帝
鉄帝国及びヴィーサル地方で自由な場所に行けます。
※復興最中という雰囲気です。
※ラド・バウは通常営業中。パルスちゃんがライブなどをしてくれています。
【4】海洋
海洋王国及びシレンツィオで自由な場所に行けます。
※竜宮も可能です。
※海洋王国では軍事訓練なども為されているようです。
大型クルージングも楽しめます!
【5】天義
天義国内で自由な場所に行けます。
※『遂行者』達についての情報はここでは得られません。
※旧アドラステイアこと『アスピーダ・タラサ』は騎士団が孤児院を作り、なんとか孤児を保護しているようです。
【6】練達
練達(セフィロト)及び再現性東京で自由な場所へと行けます。
※再現性東京は夏休み中です。花火大会や現代日本的な夏祭りも行なわれています。
※セフィロトは冷暖房管理です非常に過ごしやすいでしょう。
【7】傭兵
ラサにて自由な場所へと行けます。
※終焉に対してのアプローチは不可能です。
※困ったときはファレンがパーティーを開いてくれます。
【8】深緑
アルティオ=エルムで自由な場所へと行けます。ただし、ファルカウは登れません。
※妖精郷もココに含みます。妖精郷は常春です。酒飲みなの!
※深緑では復興作業がのんびりと行なわれているようです。
【9】豊穣
カムイグラで自由な場所へ行けます。ただし、自凝島はNGです。
※自凝島へのアプローチは不可能です。
※和風国家らしく夏祭りなどが行なわれています。
【10】覇竜
亜竜集落フリアノンへと向かう事が出来ます。
※ヘスペリデスにつきましては立ち入ることは出来ません。
※本シナリオでは明るく元気に遊び回って頂けると嬉しいです。
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