PandoraPartyProject
シーズンテーマノベル『これからの話をしよう』

これからの話をしよう。
――それじゃ、これからの話をしよう。
そんな風に切り出したのは誰だっただろう。
暖炉に投げ入れられた薪を眺める時間も、暖かなマグカップに手を添える時間も。当り前に存在して居た変哲のないものだったのに。
それが随分とかけがえのないものとなってしまった。
風に揺れたシーツと、広がった蒼穹の涯の涯、どこかに繋がっているのだろうかと駆けて行く冒険者志望の子供達の背中を追掛ける。
この世界の他に「冒険の場所があるのだ」と意気揚々と語って誰かの言葉にだって耳を傾けよう。
「今日から何をする?」
まだ毎日は続いていくから。
おだやかに、へんてこに。困った事に、時々は手も焼くようなとびっきりな毎日が――!
PandoraPartyProject After Story's『これからの話をしよう』
「 おかえりなさい、なのです!
イレギュラーズさん! 今日は何をしますか?
……えへへ、こうやってお話出来るのもとっても嬉しいものですね!
ボクはお留守番係として皆さんの無事をちゃぁーんと待っていましたよ!
次のお仕事ですか? それとも美味しいパン屋さんの情報ですか?
任せて下さい。この敏腕情報屋ユリーカがばっちりお伝えしますよ!
イレギュラーズさんに、ずっとこうして言えると良いですね。それが一番のしあわせなのです」
PandoraPartyProject After Story's Novel「これからの話をしよう」
商品 | 説明 |
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対応商品一覧
発注可能クリエイター
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基本価格 100RC~ 商品概要
本商品は『キーワード』を指定して発注するSSとなります。 日程
・受付:2024年の『12/26』~2025年の『6/30』8:00 |
PandoraPartyProject After Story's Voice
商品 | 説明 |
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対応商品一覧
発注可能クリエイター
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基本価格 ピンナップ150RC~ 基本価格 リミックス100RC~ 日程
・受付:2024年の『12/26』~2025年の『6/30』8:00 |
PandoraPartyProject After Story's illustration
イラストタイプ | 説明 |
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アフターピンナップ
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基本価格 350RC~ 対応商品一覧
アトリエセキュリティ通常商品通りのセキュリティが適応されます。 日程
・受付:2024年の『12/26』~2025年の『6/30』8:00 |
サンプルSS:『これから、それから』
(NPC: リリファ・ローレンツ(p3n000042)& 月原・亮(p3n000006)
「これからどうしましょうか、月原さん」
足下の小石を蹴り飛ばしてからリリファは何気なくそう言った。てん、てん、と地を転がっていくそれを眺めて居た亮は「どう、かあ」と呟く。
「取りあえず、約束、しただろ? それをひとつ、ひとつ叶えていこうぜ。……なんだっけ。
大きいパフェを食べるんだっただろ。それから、旅行もするし、服も買い行く。あ、服は旅行用か? じゃあ先かもなあ。
んで、オペラみて、遊園地で豪遊しまくるんだろ。希望ヶ浜の遊園地のフリーパスで全部乗り回して、園内で飯食って、んで風船とか買おうぜ。
それから――……それから、家族で平和に過ごすんだろ。出来るじゃん、今の混沌ならさ」
「あれ? 覚えてたんですか。それ」
「覚えてた。色々叶えようぜって約束してたろ。
でも……家族……は、混沌には居ないだろ。だから、そう言う意味で最後はどうするか、だ」
次に小石を蹴り飛ばしたのは亮の方であったか。リリファは俯いた。てん、てん、と地を転がっていくそれが跳ねて小川に落ちていく。
沈んだ心地に張ったのは当り前に流れていた時間におしまいが来て仕舞うことに気付いたからだった。
――月原さん? 今、何て言いました?
――ほんっとお前はモテないし、可愛くねーし、乳もねーしさ! うわ、おまっ、ちょ、止めろ――!
心地良い時間だった。世界が危機に面していますだなんてお決まりの文句を耳にしたって「そうなんだ」と他人事に受け止められるような日常がそこにあった。
それでも、互いに特異運命座標で、異邦人で。この世界に根があった訳ではなかった。大人と呼ぶには遠かった自分達は六年を悠々と歩き抜いて、七年目にも傍に居た。
もう子供と呼べる年齢ではなくなってしまったからこそ、先を見据えるには良い機会だったのかも知れない。いつまでも幼い子供の様に笑い合って、軽口を交わし合って、時には寄る辺にしつづけるのももうお終いなのだろう。
「それは、帰る……って意味ですか?」
「家族っていうなら、それも手だよ。でも、リリファの帰る先に家族が居ないなら、困った事に願いが叶わない」
「月原さんは? 私の願い事はどうでもいいんで、月原さんはどうする予定でした?」
「どうでもよくないだろ。いや、なんでお前、いきなりどうでも良くなったんだよ。
ん? まあ、……さあ。うーん、帰る気はもうほとほと無くなったよな。つーか、俺の世界、魔法とか無いんだぜ?
そういうのってゲームだとか漫画の世界だよ。希望ヶ浜みたいな場所だった。それから俺が帰るか、どうかなんて……」
剣と魔法に憧れている年齢だってお終いだ。男子高校生であった自分は大人になった。隣に立っている彼女だって。
亮は深く息を吐き出してから「あ~あ」と間延びした声を漏らす。小川のせせらぎが心地良い。
時々、ユリーカの手伝いをサボって靴も投げ捨ててリリファと川遊びをした事を思い出す。その度にあの小さな情報屋は「仕方が無い人なのです!」と笑うのだ。
思い出せば、それが当り前に続いていくと思っていた自分が居て――「ダセェの」
「月原さん?」
「リリファさあ、帰るの止めようぜ。俺、帰らないから」
「え? 帰る気なかったですよ。だって、故郷って言ったってメッタメッタのギッタギタでしたし」
「メッタメッタのギッタギタだったら尚更帰らなくていいじゃん。あ、じゃあ、ダセェの俺だけだ」
「帰りたいって事ですか? いいですよ、時々遊びに行って良いですか? 前に言ってた美味しいハンバーガー食べに」
「希望ヶ浜で足りるじゃん。いいよ、そんな気軽に送り出そうとしなくってもさ。
俺、リリファにそーいう顔させたいわけじゃないんだよな。なんていうか……お前、結構困った顔するじゃん。
優しい振りとか似合わないぜ。リリファは。バカみたいにキレちらかしてる方がお前っぽい」
「あ?」
眉を吊り上げたリリファに亮は可笑しそうに笑ってから「だから、俺がダセェんだってば」とそう言った。
ゆっくりと向き合えば、リリファの視線がそっと持ち上がってくる。
青い、青い、海のような瞳だった。
「じゃ、願い叶えようぜ。家族と平和に過ごすってやつ」
「はい。ええ? はい?」
「だーかーらー! 俺とお前!」
「はあ~~~!? 月原さんと私は家族じゃないですけど~~~!? というか、そういうのって何か色々ありません!?
だからモテないんじゃないですか!? ぜぇったいそうですよ! モテないが此処に極まってますよ!」
「うるせー!」
亮がリリファの頬を掌で包み込む。じっと彼女を見下ろせば、リリファは「なんですか」ともごもごと言うのだ。
「ずっと一緒に居ようぜ、リリファ。そんで、家族になるんだよ。
まあ、お前みたいな狂暴でムキャってて変な黒いオーラでる貧乳、どうせ俺しかいないよ」
「はあ? 最後までダサいですね。だーさーいー。ださいー。モテないー!」
亮は周囲を確認する。小川のせせらぎと、心地良い風の気配。それから陽射しのようであたたかで、小鳥のように未来を謳う。
『あの日』交わした約束を繰返すように彼女へと笑うのだ。ここまで来るのに七年もかかった。言葉にするのも下手くそな二人だけれど。
それじゃあ、これからの話をしよう。明日はどうしよう、明後日は。毎日、毎日を君と過ごすために。
(キーワード:毎日を使用しています)(SS執筆:夏あかね)
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・佐藤 美咲(p3p009818)
・夢野 幸潮(p3p010573)
・結樹 ねいな(p3p011471)
※ おまけSS『運命の悪戯/A whisper』付き
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