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贖罪ではなく

登場人物一覧

イロン=マ=イデン(p3p008964)
善行の囚人

 イロン=マ=イデンは悩みの内にいた。
 イデンという存在はあらゆる罪を背負い、贖罪という善行を積み重ねることにあった。
 だが彼女が重ねてきた善行はパンドラとして、無垢なる混沌の終焉の回避に全て費やされてしまった。
 それは全ての世界を救った事に他ならず、あらゆる罪業がその善行に全く釣り合わない事を意味していた。
 もはや贖罪するものなど何も無い。「贖罪」を定義された秘宝種は皮肉にも業苦がない故に矛盾に苦しむこととなったのである。
 黒い服がボロボロに破れ、コアが澱みかけるまで壊れた機械の様に彷徨い続けたイデンを救ったものは神威神楽の小さな寺院であった。彼らは俗世を離れ質素な生活をし、ただ坐禅を組み無我の境地へと至るだけ。
 イデンが感銘を受けたのは施しを与えてくれた彼らの言葉だった。
 我らは善行や悟りを得るのではない、煩悩を捨て修行として座る行為そのものが、悟りの形であると。

 その言葉を聞いた時、イデンの心に一筋の光が差し込んだ。
 あらゆる価値観や文化に触れる内に何が善であり悪であるか幾度もわからなくなりながら、彼女なりの答えぜんこうを積み重ねた。そしてその結果積み重ねるべきものを失い苦しんだこの日々こそが真なる善行であり悟りの形だと。
 胸の内に刻まれていた罪悪感と言うものが溶けていく様にも思えた。
 話に聞いた悟りとは、この事だっただろうか。
「これこそが、ワタシの善行だったのです!」
 イデンは彼女なりの信念で選んだ白い僧衣を身に纏い、一人の修行僧として再び旅に出る。
 それは決して思考を破棄し盲信に染まったわけでも、まして完璧になったわけでもない。これからも彼女は矛盾めいた善悪の螺旋の内で悩み、選択し続けるだろう。
 だが善とは何か悩み抜き知ろうとし続ける姿勢そのものが、真なる善行であると彼女は信じた。
 善であらねばならないという自らの定義からくる矛盾ですら、今では透き通るような白の中にいた。
 彼女はもはや善行に縛られた囚人ではなく、自ら善くあろうとする善の形そのものなのだから。

「因果応報、勧善懲悪、善悪流転、日々是修行! なのです!」
 そんないつもの口癖も、心無しかどこか吹っ切れた様にも聞こえただろうか。
 彼女を悩ませていた頭痛も、今はない。
 さあ、今日も一日人々の悩みを解決しにいこう。或いは苦しんでいる他の世界へ、旅をしてみるのもいいだろうか……
 彼女の善行は、終わらない。

おまけSS『あとがき』

大変おまたせしまして申し訳ございません
今までありがとうございました。


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