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その翼は希望を乗せて

登場人物一覧

エステット=ロン=リリエンナ(p3p008270)
高邁のツバサ

 無辜なる混沌において、大いなる危機は去った。けれど、イレギュラーズの冒険は続く。たとえばそれは、エステット=ロン=リリエンナも変わることはない。
 憧れの先輩や勇士の活躍を目に焼きつけ、胸に刻みつけた彼女は、これからの毎日を充足した日々とするために、忙しく過ごしている。
「父上、母上、ただいま戻りましたの」
 両親の治める豪族の領地へ舞い戻れば、家族は皆かわいい娘を歓迎してくれた。けれどその歓迎に甘えることなく、自分に与えられた役割をしっかりとこなしていく。
 領地内の民のささやかな喧嘩の仲介に入ったり、立派な翼を最大限に利用して荷物を運んだり。ありがとう、と礼を口にされるたび、なんだか誇らしい気持ちになる。
「皆、久しぶりなのネ!」
 また、旅先で知り合った仲間達と懇談に集中すれば、この世界の現状も以前よりうんと理解できるようになっていた。
 情報交換はその国のおいしい地元の食事と共に重ねられ、ちょっと食べ過ぎてしまったかも、なんて思ってしまうこともある。
「……まぁ、その分働けば大丈夫なはず!」
 小柄な娘はそんな風に納得して、今日も懸命に鍛錬に勤しむ。
 そう、いつの日かまた、混乱の日々が来ることに備えた特訓を、一日たりとも忘れたことはない。
 ――日々の訓練は、糧に成る。

 時々、思いにふける。自分が役に立った冒険やギルドは少なかった。そして昔の――否、知り合ったイレギュラーズの中でも、近頃は姿を見かける仲間も減ってしまったように思う。
「わらわのことを探している者達も……いるのカモ?」
 もし、そうならば。もっと世界を見てまわりたい。誰に強制されるでもなく、この両翼は何処へでも自由に飛んでいけるのだから。
 少女は雲ひとつない、澄んだ青空を仰ぎ見る。しっかりと頷いたその眼差しはきらきらと輝いていた。
 背中に折りたたんだ両翼をひらき、エステットは大空へと飛び立っていく。
 静かに淡々と過ぎていく、けれど穏やかで豊かな毎日が、いつまでも続くことを信じて。


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