PandoraPartyProject

SS詳細

ハッピーエンドが好きなので

登場人物一覧

ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)
華蓮の大好きな人
郷田 貴道(p3p000401)
竜拳



 無辜なる混沌フーリッシュ・ケイオスに平穏が訪れて暫く立っていた。
 あの激しい決戦の痕跡はまだ消えきっていないし、逝く者を見送った者の傷もまだ癒えてはいないだろう。この世界においては戦いとは切っても切れないようなものだったが、こうして『世界を救う』役目をやりきった特異運命座標イレギュラーズ達の一部は幸せを掴んだものも多く見受けられたが、パートナーを失って失意に落ちた者も居れば、目標がなくなり燃え尽き症候群でやる気が出ない者も密やかに存在していたという。

「なんて、言ってる場合ではないですよ!」

 海洋ネオ・フロンティア海洋王国の一番大きな中央島……首都リッツパーク。
 そのホテルで握り拳を作りながら今の状況を噛み締めているのは『Lumière Stellaire』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)。彼女は明日、長年の夢を叶えようとしていた。海洋とて決戦による傷は浅くはない。決戦によって大きく荒らされた海に呑み込まれた民の数は、今も更新しているという。そんな悲しみが残る今だからこそだ、彼女曰く。

「やっと頷いてくれたんです……ぜっっったいに最高の日にするんですからっ!」

 長年の夢を叶えるその日のためならと普段からの手入れも入念になる。
 明日、彼女は結婚式を迎える。ずっと想いを寄せていた──『竜拳』郷田 貴道(p3p000401)、その人と。

 ココロの恋の始まりは至ってシンプルだった。特異運命座標イレギュラーズとして戦ってきたいくつもの戦いを乗り越えてきたが、中には行き詰まってしまった時もあった。そんな時に励ましてくれたのが始まりと彼女は今も思い出す。
 中でも第十三騎士団との戦いの時のことは今でも鮮明に思い出せる。

 背を優しく叩いてくれた逞しい手も。眩しいくらいに強気な彼の表情も。

「言ってやれよ、ほら!」
「はい! 今宵、わたしは無敵です。負けないから!」

(あなたがその闘志を貸してくれるから、私はここにいられるんです)
(あなたの強気はわたしに勇気をくれる、わたしを無敵にしてくれる――)

 恋する乙女はそうして強くなっていく事ができた。
 彼を追いかけて、隣に立ちたいとずっと焦がれてきた。

 ──そんな戦いの連続の日々の中でも、彼はココロのワガママにも付き合ってくれた。

 輝かしい夜のテーマパークでは二人でたくさんのアトラクションを巡った。
「ねぇ、今日はここで思い出を作りましょう?」
「今か? うーむ……」
 イルミネーションに彩られたパークの雰囲気に目を輝かせている彼女に、どう答えるか悩んでいただろう奥手な彼。
「もう、どうしたの? 早く行きましょう?」
「お、おお、そうだな」
 その際には彼の大きな腕を抱きしめたが、彼は振り払う素振りも見せず付き合ってくれた。

 その次の年の輝かしい夜は公園のベンチでプレゼントを渡した。
「ん……どうしたんだ?」
「……あの……えっと……これを、差し上げたくて……」
 真っ赤な服の懐から……緑に金色の線の包み紙に包まれたプレゼントを取り出す。
「えっと……一年間、いつもありがとうございました……これ……プレゼント、です」
 本当はもっと言いたいことがあったかもしれない。けれどあまりにも近い距離感に全部すっ飛んでしまっていたと思う。それでも大事にすると言って笑ってくれたことは今でも忘れられない。

 その次の輝かしい夜は最早劇的だった。
「あ、あの……」
「……」
「あのっ!」
「……」
 あの時の彼のおかしさは今でも覚えているが、それよりもお姫様抱っこされた衝撃の方で今も埋め尽くされている。何がどうなってあの結果に結びついたのかまだ彼に聞けていないココロだったが、思い出す度に嬉しさでどうでも良くなってしまう。
 あの彼にしてはらしくない出来事からんだと確信出来たのだから。

「さてと……明日は早いですからそろそろ寝ないと……なんですけど」
 眠れるかどうかをココロは不安に思う。いろんな事を思い出したら本当にいろんな事があった。こんな時に思い出すべきではなかったと反省する。こんなの思い出に浸って眠れなくなってしまうに決まっていたのに。
「で、でも気合で寝ます!寝不足で式に臨むわけにはいきませんから……!」

 ──一方。
「この俺が……こんな事になるなんて、な」
 物思いに耽けていたのはココロだけではなかったようだ。貴道も実感のない今の状況に夜を見上げている。
 彼女に好意を向けられたのはいつからだったか全く覚えていないが、気づけばいつも傍で戦っていたし彼女のワガママに付き合うのも悪くないと思っていた。

 戦う為に生きて戦った末に死ぬ、そうなるだろうとずっと思っていた。
 だが結果、あの決戦を生き残りこうして式の前夜にらしくもなく思い出に浸っている始末。過去の自分が未来の自分を見ることがあったとしたら信じられなかっただろうと可笑しくなる。
「さて、明日寝坊なんてしたら叱られちまうか」
 悪くないなんて思ってしまった自分を随分と絆されてしまったものだと他人事のように思う。出会った時はただの戦友や依頼仲間としか思っていなかったはずなのに。

 ──朝。
 リッツパーク周辺の小島でその準備は急ピッチで行われていた。ココロのプランニングで朝日をバックに行われる為、まだ薄暗い時間帯だった。
「おはようございます、貴道さん」
「……よう」
 いつも通り返そうとして振り返った彼はそれしか返せなかった。だがそれも無理もないと言ってほしい。眼の前には今までで一番綺麗なココロがそこに居たのだから。
「ふふ、見惚れてくれてます……?」
「見惚……くっ、う、うるせぇ……」
「ふふん、打ち合わせの時に何度か見せてましたよ?」
「あ、あれはただの試着だっただろ……」
「確かに?」
 ただ試しに着ている姿と、式に向けて色々と着飾って着ている姿とでは全く状況が違っていた。

「……綺麗、だ」
「えへへ!」

 やっぱり、好きな人にそう言われるのは嬉しいから。

 朝日が登ってくる。
 海洋でも指折りの朝日スポットであるこの小島のチャペルで、二人は向かい合う。
「わたしは、あなたがどんなに強くても無敵ではないことを知ってます。だから、あなたが倒れそうになったときは、私が支えますね」
「変わった女だ、本当に」

「強い男の人が好きです。でも、ここまで強い方と出会えるとまでは思っていませんでした」
 そう言ってココロは貴道の大きな手を包む。
「あなたが拳で未来を切り開いていけたから、わたしはまっすぐ未来に向かっていける。その拳を、包みこませてください」
 お願いしているような台詞だが、ココロは確信している。
「誰にも負けなくても、わたしのお願いには勝てないって、知ってますよ?」
 彼はこのワガママを受け入れてくれると微笑む。

「言葉は上手くないんだ、パフォーマンスなら得意だけどな。……飾らず伝えるってのは難しいもんだ」
「……俺の負けだ。ああ、付き合うさ。君が去るまで。ずっとな」
 千年近く生きるであろう彼にとっていつか来る彼女との別れ。彼の人生の中でも彼女との人生はほんの数十年、彼女に縛られるのも悪くないと思っている。

 だからきっと、この言葉を彼女に贈ることが出来るだろう。

「愛してる」

 誓いの口づけは彼らしくもなくそっと柔らかに。
 彼女を抱き上げてこの朝日に愛を誓うように。

 二人は今、未来を思う。

おまけSS『「……綺麗、だ」までにあったカットシーン』

「……貴道さんだって、白、似合ってますよ?」
「……そうか? 真っ白すぎてなんだかむず痒いと思ってたところなんだが」
 貴道もいつも選ばないであろう真っ白なタキシードで着飾っていた。自身は気の利いた言葉の一つもかけられなかったというのに彼女はすんなりそう微笑んでくるのでため息を付く。
「お前もその」
「その?」
「……」
「頑張って、貴道さん」
「うるせぇ!」
「ふふふ!」
 ココロはこうしたやり取りだけでも嬉しく思っている。思っているが……やっぱり聞きたいものは聞きたいから。


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