PandoraPartyProject

SS詳細

傍にいてくれたひと

登場人物一覧

ストイシャ(p3n000335)
レグルス
Lily Aileen Lane(p3p002187)
100点満点

 日々は過ぎ去っていく。
 毎日は過ぎ去っていく。
 営みはいつまでも続いていく。
 ――そういう世界に、なったのだから。
 ストイシャにしてみれば、Lilyという女の子がそばにいたのは、もう当たり前のようになっていただろうか。
 ともだち、としてお願いして、そのように過ごしてくれた。
 気づいたらそばにいてくれたし、きっとそうでないときもそばにいてくれたのだろう。
 そういう、ともだち。
 一緒に覇竜の大地を歩いて。
 同じ空の下でお互いを見つめた。
 月日は長く、でも明日も同じ日が続くのだと、そう信じられる、そんな日々。
 ……違うことを求めたのは、きっとLilyからだった、のだろう。
 見上げる覇竜領域の空は高い。青くて、澄んでいて、隣り合うお互いの心や、そういうものに近いように。
「……なんだか、終わったんだなぁって、実感するのです」
 と、Lilyはいった。ストイシャもまた、穏やかに笑って見せた。
「そうだね……」
 そういうストイシャの口調は、以前よりもずっと、流ちょうというか、自然だった。きっと、ムラデンやザビーネにそうするように。ふひひ、という、笑い方も少しだけ崩れて、なんだか以前よりも、柔らかく、親しみやすく笑うようになった。それが、自分にだけ向けられているのならば幸せだな、なんて、Lilyは少しだけ思ってしまう。
 ストイシャが、いろいろな人とふれあって、話し合って、わかり合って……その笑顔を、いろいろな方に向けてくれるのは、きっとLilyも喜ばしいところなのだろう。でも、それが、特別なものであって、自分にだけ向けていてほしいと思ってしまうことは、きっと、あるのだろう。
「リリーのおかげ、だね」
 ふふ、と笑う。水のように穏やかに、でも青空のように柔らかに。そんな笑顔を見れば、ドキッとしてしまうのは、きっと仕方がない。
「……これまで、長く……一緒に、過ごしてきました」
 だからこそ、Lilyは、少しだけ……いや、たくさんの勇気を出して、こう言うのだ。
「私ね、この世界が好きです。だから帰らない、そう決めたです」
 そう、Lilyはいった。この混沌に残る、と、そう決めたのだ。
 それは、ストイシャのそばにいたかった、ということもあるし――。
 大切な人が救った世界を、見ていたいということもあり――。
 <<パパ>>と<<ママ>>の娘として、二人の幸せを見届けたい思いもあった。
 三つの、大切なこと。でも、もしかしたら、一番大切だったのは。
「前にも言ったけどまた言うね。私はストイシャさんの事が大好き。世界で1番好きです」
 ……その言葉通りに。目の前で、うん、と頷く、青い竜のことであったのかも、しれない。
「……前にも、聞いた。ちゃんと。でも、わたしは……」
「お友達、って、いいました。
 ……でも、ホントウは。私は、お友達じゃない、もっと先の……好き、を、伝えたいです」
「それは」
 と、ストイシャがいった。わずかに、白い頬に、朱がさしていることに……Lilyは気づいていただろうか。
 きょうだいである、ムラデンのように。誰かのそばに、永遠に生きることを誓うような、そういうことを。
 きっと、Lilyは求めているのだと、ストイシャにもわかった。
「竜と人の寿命は違うから、きっと未来で悲しい思いをさせてしまう……、それは解っているです」
 いつかは、別れてしまうのだろう。それは、どうしても……起こりうること、なのだろう。
「それにこれは、大切にしたいストイシャさんと一緒に居たいという、私の我が儘なのも解っているのです」
 その上で、そばにいてほしいと願うのならば、それはきっと、我が儘だ。そう思う。本当に、相手の幸せを願うのならば、この気持ちを伏せて、ただの友達として、側にいるべきであったのではないだろうか。そう、己を責める日も、あった。
 でも。
 それでも――。
「だから、ストイシャさんが“友達で居たい”と言うならその気持ちを受け止めるのです。
 ……私はそこはちゃんと出来る女性なのです」
 嘘だな、と、自分でも思う。そんな風に、割り切ることはできない。できないから、今こうして、言ってしまうのだ。
 好きだと。
 愛していると。
 ずっと側にいてと。
 我が儘で、身勝手な、愛の告白を。
「でも。それでも。
 私は、ストイシャさんの道を一緒に歩みたい」
 まっすぐに。
 その、青い瞳を見つめて。
「他の人の様に……、特にたみこママみたいな甘々に出来る自信も無いです。
 だからと言って、ストイシャさんを幸せにしたいと言う気持ちなら1番だと思っています!」
 片膝を付くその姿は、本当に、プロポーズのようで。
 ああ、いや違うのだ。これはプロポーズに間違いないのだ。
 女の子同士で、なんて関係ない。そんなことは知ったことじゃない。
 ただ純粋な、好きという気持ち。愛しているという気持ち。
 傍にいて、幸せにしたい、幸せになりたい、と願う、そういう気持ちは――。
 何かをいいわけに、生涯にして、心に閉じ込めていていいものではない。
 だから――。
「だからこそ、ストイシャさんの本音を聞きたいです。
 ……共に歩いてくれませんか?」
 その言葉に。
 まっすぐな告白に――。
 ストイシャは、笑った。
「……これまで、いろんな人が傍にいてくれて。
 同じ方を見てくれて。
 手を取ってくれて。
 繋いでくれて――」
 そう言って、優しく。Lilyの手を、ストイシャは握る。
「ずっと考えて、た。
 私の気持ちが、誰かを傷つけないか、とか。
 ……受け入れてくれるのかな、とか。
 ずっと、ずっと。
 いろんな人に聞いて、いろんな人と話して。悩んで。苦しんで。ずっと考えて。でも」
 ぎゅっと握る、その手は。氷の竜故に、すこし冷たかったけれど。
「でも、たぶん。
 ずっと傍にいてくれたのも、居たいって願ってくれたのも、りりーだから」
 でもきっと、だからこそ、暖かいのだと、Lilyは感じた。
「……ムラデンみたくは、できないかもしれない、けど。
 いい、よ。
 傍に、いてほしい。りりーに。
 できるだけ、長く。ずっと……傍に」
 そう言って、ひざまずくLilyと目線を合わせて、ぎゅっ、と抱きしめた。
「……えと。き、きすとか、するのかな……?
 ほ、本だと、よんだこと、あるけど……。
 そ、その、ちゃんと、できるかな……?」
 慌てたようにストイシャに、Lilyはくすりと笑って見せた。
「それはきっと、おいおい……です」
 ふふ、と笑う。きっと。それが当たり前になる日々がすぐに来るのだろう。
 だって、抱きしめられた体温から、彼女がすごく、ドキドキとしていて、そして、その腕の暖かさから、離したくないのだという気持ちは、ずっと伝わっていたから。
「そうだ、私ね。覇竜に家を建てたんです!」
 努めて明るく振る舞う。でも、その頬には涙がこぼれて、言葉は震えていた。緊張と、喜びと、そういうものがあふれて、体を震わせてしまったから、ストイシャは、ぎゅっと、それを止めるみたいに、Lilyを抱きしめた。
「今度、お家に来て下さい、で、す……」
「……一緒に住む、お家?」
 ストイシャがそういうのへ、Lilyは目を丸くしして、ぱたぱたと涙をこぼした。
「……はい」
 そう言って、Lilyはストイシャの胸に、その顔を埋めた。
 空は青くて高くて、二人を祝福しているように信じられるものだった。


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