シナリオ詳細
ローレット・トレーニングII
オープニング
●海洋アイランドで鉄帝トレーニングだ!
「やっほー! 毎度お馴染みパルスちゃんだよん。闘技場でよく会うよね。みんな、海洋には慣れた?」
アナタ鉄帝の人だよねという視線と、水着になるとすごいんだなという視線を一身に受けて、パルス・パッションが世にも開放的なポーズをとった。
ここは天下のネオフロンティア海洋王国……の海域をゆく豪華客船の上だ。
とんでもない人数のイレギュラーズと、妙に屈強でゼシュテル感のある人々がまわりにはいる。
そんな環境で思い思いに過ごしていたイレギュラーズたちに、パルスは手をぐーぱーして見せた。
「魔種をやっつけたって噂、海洋にも鉄帝にもひろーく伝わってるよ。
……けど、そうなると想像しちゃうよね。次はどんなすごい敵とでくわすのかなって」
幻想で巻き起こったサーカスにまつわる事件。その裏と表で活躍したギルド・ローレット、そしてイレギュラーズたちの噂はあちこちに広まり、同時に新たな魔種に関する噂もちらほらと流れるようになった。
「強くなって誰かを倒したらもっと強い相手が現われる。
なーんて、よくあることっていうか……油断してるとすぐに足下をすくわれちゃうよね。
けどだいじょーぶ!」
将来が不安な時、何をすればいいか?
そんなことは誰もが知っている。大昔から決まっているのだ。
「そう、特訓(トレーニング)!」
両手を開き、身体ごと振り返る。
豪華客船の行く先に見えるは無人島。
否――鉄帝キャンプ島!
説明しよう!
鉄帝キャンプ島とは鉄帝闘士が楽しく健やかに自らを鍛えられるように整えられた訓練キャンプ場である!
トライアスロンし放題の舗装道路とビーチ!
あらゆる特訓に対応した屋内訓練施設!
忘れちゃいけない栄養満点の食堂!
その他諸々あれやこれや!
「ほんとは闘士仲間のみんなと特訓(バカンス)する予定だったんだよね。
いつもと違う空気と水で鍛えるのも楽しいでしょ?
それにイレギュラーズのみんなも招待したらどうかなって。
ネオフロンティア海洋王国のえらーい人に話して、イレギュラーズのみんなと一緒に特訓できる施設を無人島に作らせて貰ったの」
ぐっ、と拳を突き出して見せるパルス。
「好きな分野で好きなトレーニングを選んでね。
鉄帝オススメのインストラクターを紹介して、みっちり鍛えちゃうから!
それに……」
それにもし沢山のイレギュラーズが集まって互いに高めあったなら。
一体どれだけ効果的な特訓になることか。
夕日をバックに走る青春。
流れる汗と交わされる熱意。
そして生まれる特訓効果。
「皆でいっしょのトレーニングって、楽しいでしょ?」
彼女たちと一緒に南の島で――レッツ、ローレット・トレーニング!
(オープニング:黒筆墨汁)
- ローレット・トレーニングII完了
- GM名Re:version
- 種別イベント
- 難易度EASY
- 冒険終了日時2018年09月01日 21時05分
- 参加人数879/∞人
- 相談10日
- 参加費50RC
参加者 : 879 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(879人)
リプレイ
●鍛えれば? そう、強くなる!
「おはよー! みんな大好きパルスちゃんだよん。今日も一日張り切って――」
グーにした手を引き絞り、天空に向けて突き上げた。
「「地獄のブートキャンプだああああああ!!」」
鉄帝キャンプ島は地獄の様相。
走る者泳ぐ者その猛攻より逃げる者。戦う者殴られる者ただ筋トレに耽る者。
とにかく喰う者喰わぬ者。学ぶ者学ばざる者スポーツする者襲う者。
多種多様千差万別これまさに特訓地獄。
早速あちこちランダムかつダイジェストに見ていくこととしよう!
鼎とシャロンが互いのバトルスタイルをぶつけ合っている。
「今度は実戦形式だね。ふふ、傷物にされても構わないのにね?」
「ほらまた、そうやって僕をからかう」
射撃のため距離をとろうとするシャロンと急速に詰め寄る鼎。
互いの武器がぶつかり合う。
その横ではアニーとリディア、狐耶や昴といった面々が奇妙なポーズを維持していた。
「ヨガは体の隅々まで動かすので血流が良くなり、呼吸、瞑想などを組み合わせて心身共に健康を得ることができるらしいのです!」
「基礎的な魔術訓練から始めるとは言ったけど……」
「まあまあ、このほうが相乗効果になるかも」
皆が全身の筋をぷるぷる言わせてる中で狐耶だけビーチチェアでドリンクちゅるちゅるしていた。
「おまえ……!?」
「見ることは知ることで学ぶこと、という言葉もあります。私がいいました」
ほらあれなんかいいですよ、と指さす先。
侠とコーデリアが互いの特技を伸ばすべく実戦訓練をしていた。
「ゼシュテルの施設というのが些か不満ではありますが……撃っても大丈夫なのですか?」
「手加減しなくて良いぜ? こっちも手加減はしねえからな」
コーデリアは正確な射撃を、対して侠は武器で弾を弾く。
「さぁて、そんじゃ行くぜぇ!」
勿論タイマンだけが実戦じゃない。ミスティカもそこへ混ざって得意の魔術を連発していく。
「ランダムな相手と戦うのも、自分自身を見つめ直すにはいい機会なのかもしれないわね」
鉄帝インストラクターの誰かが『乱入歓迎』の立て札をしたせいか、そこへ次々と乱入者が現われる。
「適切な時に、適切な手を、適切な場へ、示す術。あくまで、戦法単位の……手札の有用な、切り方を、学びたく、思っています」
武器を構えて乱戦へ突入するスリー。
同じく何かを大量に服用してから飛び込むシクリッド。
「スキルを縛って戦闘訓練を行うことで自分の素の力を知り、そして伸ばす!ふっふっふ、自分にしちゃなかなか考えたもんッスね」
『燃やすのが得意な人だ』『炎上案件』『なるほど』 そこへ爆弾をひたすらに投げ込むズットッド。
一方でそれらの様子を観察することほぎ
「ん? 色々見てまわりゃ、対策練るのに参考になんだろーと思って!」
乱戦の中に飛び込みつつ互いにぶつかるルアとアマルナⅣ世。
「汝のその気持ち、無駄にはしまい。という事で、ゆくぞアマルナァァァァァァ!!」
「さあ来いルアチャン! 余は一発ぶん殴られただけで倒れるぞォォォ!!」
セレネとライセルも互いを標的にぶつかっていく。
「今日は手加減しないで下さい、真剣に訓練です!」
「仕方ない。おいで……」
乱戦具合はどんどん膨らみ、巨体で体当たりする者や魔法のガトリングを乱射する者。いびつななにかに変化する者などそれはもう大乱戦であった。
勿論けが人も山ほど出るが、治療の腕を上げるのもまた特訓。
ゲオルグは手袋をキュッとやった。
そばに、水着にパーカー麦わら帽子という格好の蜜姫と共にふらりと現われる。
「応急処置はしっかりしておかんとな。治療班があるらしいが手が回るのが遅くなるところも出てくるだろうからな」
「ひどいようならそのチームを呼ぶの」
かの言う治療班とは20名強が結集した治療チームである。
乱戦で目を回した人々の元へ駆けつけるアイリス、マリア、星玲奈、雪穂に瑞穂。
アイリスの設定したルートを歩き医療知識を使ってけが人を効率的に見つける試みをしているのだ。
「まるで死霊兵の大群に襲われたような有り様じゃのう」
「落ち着く感じの歌を歌ってリラックスできるようにすることも大切だと思うんだよね」
「一人でも多く治癒してみせましょうー! 迅速に、丁寧に、適切にー……!」
特にけが人が多く出そうな場所には拠点を置いて治療チームが待機するという徹底ぶりだ。これらのノウハウはきっと大規模な戦闘作戦で役立つことだろう。
拠点に運ばれてきたけが人を手当するアメリア、リディア。
「怪我人は出ないに越した事はないですが、怪我人が出てしまったら全力で治療します。私たちには命を守るという大事な使命があるのですから」
「ご無理をしちゃメッ、ですよ?(そうはいっても、ローレットの皆様は無理してしまうのでしょうね)」
同じくミシュリー、Gawも治療にあたった。
「治療に訪れた人の負傷度合いにもよりますが、よほどの重傷でなければ回復スキルよりも包帯や救急箱を使った手当てをしましょう」
「なるほどな」
Gawは覚えたことをノートに書いて、しっかりと次に活かす努力をしていた。
こんな具合で、治療班はいくつものチームに分かれて島のあちこちに散っていた。どこでどんなけが人が出るか分からないがゆえ、適切な配置スタイルだ。
「ほらほらシャーリー!きりきり走りなー?」
「ひぃ、ひぃ。ヨランダさん。急かさないでくださいよう」
あるところではヨランダとオーガストがけが人を運び、ルクスリア、パンケーキ、エリーナたちがその場で治療できる人々を治療していく。
「この世界の薬学とか医療本とか読んでみたいわね」
「腹が減ってはなんとか『ばくだん塩おにぎりin夏野菜の豚肉巻き』だ。治療も体力勝負だぞ!」
「さあ、次へ行きましょう」
パンケーキは食料等のバックアップ、エリーナはルートナビゲーターだ。治療は効率が命、なのかもしれない。
たまに急いで治療が必要な人が居るときは、チームパワーでの集中治療だ。
セリカ、ザ・ギフト、楓たちの即席グループもいい具合だった。
「沢山の人の治療を上手くこなせれるように、グループで連携していきましょ」
「はい、冷たいドリンクもあるよ~♪」
「珈琲もあるよ。ここに柑橘類のシロップを数滴いれて……」
治療はHP回復ばかりじゃない。スタミナ回復や健康維持、やる気の向上その他諸々もとっても大事だ。
そういった意味でも、リア、ニーニア、シャルシェレット、クリロ、ミシャたちのチームも優秀だ。
「郵便屋さんは、道を覚えるのと、運ぶのは得意なんだよ!」
けが人を見つけていい具合の方向感覚で運ぶニーニア。
運ばれたけが人に『慈愛のカルマート』を聞かせるリア。
「今回もわらわの華麗で美しい美脚を世の男どもに見せつけ活躍するのじゃ!!!」
「クリロ、ちょっと遊んでないで手伝ってくれるかな? ……仕方ないな」
「ぎゃー!」
電気ビリビリやってクリロを働かせるシャルシェレット。
「今の私の力なら前線に立つより癒すほうが合ってるかもね」
そしてけが人を馬車で運ばせたりするミシャ。
そんな具合で、治療班は島のあちこちでおこるハチャメチャな訓練の効果を下からぐいっと押し上げていたのだった。
一方、戦闘とは別の形で訓練をする者もいる。
Morguxとジークはめちゃくちゃ硬い食べ物をテーブルに並べていた。
「メタルキャベツ入り野菜炒め……歯が欠けそう。でも食いきれたらちゃんと鍛錬になりそうかな?」
「俺はメタルロールキャベツ。煮てこれなの? しかし、堅さの割に凄い美味いぞこれ!」
「戦闘開始直後に敵の中へダッシュして酒イッキ飲みが戦法としてありなのよぉ」
その横を『飲酒シャトルラン』する琴音。
そのまた横ではBrigaがひたすら一人組手を繰り返している。
「ガイウスゥ!! オレは、必ず、てめェに喰らいつく!」
「ほれ、ポチやビームを発射してみなさい。出せんか……やっぱりポチは今のままが一番いいのう」
一方、海辺でポチと遊びまくって絆を鍛える潮。
「ボクは、あまり激しい運動って、苦手。だから、自分のペースで頑張るよ」
忍び足と跳躍で足音を殺しての立体移動特訓をするミーシャ。 ルーミニスとクロバは岩めがけて剣をふり、剣術を学習しあっている。
「フンッ!! ふふふ、大きい剣でぶった切れば斬れない物なんてほぼないのよ!」
「力任せに叩き斬るのってそれ剣技じゃないような!」
「そのくらいアタシも余裕だけど!」
途中から岩を殴り始めるルーミニス。複雑な顔のクロバ。
かと思えば陽花は一人で真剣に棒倒しをしていた。
「砂山、大きくし過ぎちゃったかな。これだけでちょっと疲れたケド、気のせいきのせい……」
でもってどらはと言えば。
「いざいざ、単身、ヌシ討伐」
とか言ってひたすらに海遊び。
その横ではスウェンが只管に走り込みをしている。
「自分の資本はこの義足にあるッス」
訓練といっても多種多様。皆に混じって一通りやってみたパティは汗をぬぐった。
「しかし……正直いいますと、結構きついですね。はあ」
戦闘能力だけを鍛えれば世界の破壊を防げるわけじゃあないらしい。
「さてもう一通り流していきましょう、適度に休憩をはさみながら……」
●光と闇を模して
さて、あちこちで起きる訓練という名の乱闘や治療班の右往左往。その中心とも言うべき訓練が――リゲル=アークライト主導のもと行なわれていた。
「対魔種戦でも物怖じせぬ様『ローレット』と『魔種』二陣営に分かれ実戦訓練をする! というわけで……」
リゲルは剣を抜いてすごく悪い顔をした。
「俺は『強欲』の魔種リゲル=アークライト! 全ての独善的な正義を――薙ぎ倒す!」
「リゲルお兄ちゃん! 覚悟して下さい!」
「さあ、いくぞ! 空とテメェら緋色に染めてやる!」
襲いかかるルル家とカイト。
割り込んだポテトが身構える。
「リゲルを止める側も考えたが、折角だし今回は魔種側でリゲルを支えるか……。悪いなアランにノーラ!」 アランとノーラも負けじとポテトに飛びかかっていく。
「数が少なくとも負けやしねぇ!てめぇがぶっ潰れろやぁぁああ!!!」 「おじさん頑張れー!」
いわば演技を交えた対抗戦。個人ごとのつながりをある程度無視して無数の人々が混ざり合って衝突する。
魔種側のルウ、シグルーン、礼久、オウルニィト、アレクシエルが一斉に展開し……サイモン、シオン、鳴、モモカ、白たちが対抗して展開する。
「うぉー! 暑いぜ、そして熱いぜ! 盛り上げていくぜ!」
一歩引いた所ではオウルニィトが激戦から離れていたりクローネが見学していたりとやや穏やかだが、熾烈な所は熾烈だ。
モモカの鉄槌とアレクシエルのウォーハンマーがぶつかり、シグルーンと礼久のコンビネーションや鳴の陣営崩しが派手に交差する。
「さて、思う存分神秘の的にさせて貰おうか『ローレット』の諸君!」 ジェームズの魔術がほとばしり、幻の幻術が真正面からぶつかる。
「人を狂わせ人殺しさせるなんて許されない! だからこそ、この模擬戦で僕達はローレット側として絶対に負けるわけにはいきません。絶対勝利してみせます!」
「今の自分じゃまだまだ力不足だ! それに幻をいざって時に守れる強い男になりたいからな!」
幻を守るように立ち塞がるジェイク。
「ははっ、ローレットも大したことないねぇ! やっちまいな!」
その一方でみつき(女幹部演技中)率いる魔種チーム――シュバルツ、タルト、ロクスレイが一斉に襲いかかっていく。
「ほらほらどうした? お前らの実力はそんなもんか?」
「んふふ♪ お菓子の妖精をあまり舐めないことね!」
「ここは魔種らしく猛毒をばらまいてみますかね」
魔種っていうか悪者っぽい演技に徹する彼らとは逆に、ユーリエたちは正義感満点で挑んでいく。
「闇に負けない為に。そして…世界を笑顔にする為に私は闘う!」
「ユーリエと一緒にやればきっと楽しめるでしょうしね……」
「えりちゃん、いくよっ! 吸血鬼の力。いや、愛の力を見せ付けよう!」
ほとばしる二人の合体技。
あとに続くはシルヴィア、士郎、弥恵たちのローレットチーム。
「正義の御剣となりて、魔を滅する為に!」
「ワシの魔術でどこまでやれるかは分からんが……なに、全力を尽くして訓練に取り組むとも」
「月の舞姫、華拍子♪ 天爛乙女の参上です」 個々の戦力は個性や人間性によって膨らみ、そしてぶつかり合う。
そうすることで見える新たな己の可能性。余地。
アンシアは味方を引き連れ、隙を突くように敵陣営に切り込んでいく。
「組織戦に慣れるためにも、機会を増やすに越したことはないな」
「訓練とはいエ、本気でやらねぇと意味がねぇからナ。ガンガン行くゼ?」
対抗したのは大地だ。打てる限りの範囲攻撃で相手を薙ぎ払いにかかる。
集団対集団。なればカオスが起きるもの。
「さぁさぁ、こっちだこっち!」 「折角仮想敵を用意してくれているんだ。相手を魔種だと思い、全力で斬る……つもりでな」
マカライトとヨシツネがぶつかり合う。相手を翻弄するスタイルのマカライトと強烈な勢いで押し切るヨシツネの対決だ。
そこに左右から加わるのは魔種側のリゲル。ローレット側のコンラッド。
「無駄な足掻きはやめて、この世界諸共消えやがれ! イレギュラーズ! なんつって」 「私は氷の騎士神ハルザに仕えし神聖騎士、コンラッド=フォン=ジンネマン。いざ参られよ!」 敵を引きつけ壁となるコンラッドと、真正面からぶつかっていくリゲル。
「ふふ、こういう集団での模擬戦なんて、久しぶりですね。……少々、血が騒いできますね?」
さらには魔種側に彩乃。ローレット側に鶫が乱入。
「凍れる意志を此処に……謡て縛れ!」
鶫の正確な銃撃と彩乃の美しい魔術が交差していく。
「弥恵さんと相対する事が出来たら力試ししたい……かな」
つい先程乱戦に入った弥恵を探す彩乃。
その横では新たなぶつかり合いが発生していた。
銀と貴道による敵陣突入だ。
「逃げ惑えよ人間。不死者の恐ろしさを思い知るが良い! なんてな、フフ」 「HAHAHA、今日のミーはヒールだぜ!!」 なりふり構わず突っ込む二人のスタイルはローレット陣営の防衛を一部食い破る。
「来たぜ、ハーロルドー♪」
対するローレット側からはハロルド、ノースポール、タントがぶつかっていく。
「はははっ! おら、魔の存在は皆殺しだ! 派手に殺ろうじゃねぇか!」
どっちが悪役か分からない顔をして襲いかかるハロルド。
「オーッホッホッホッ!! 光あるところタント様あり!」
どこからともなくきらめけぼくらのタント様という声援(?)を浴びながら戦うタント。
一方でノースポールはきょろきょろとしていた。
「すごい数……ノーラさんもルークもどこだろう?」
と言うところに、闇堕ち感全開で突っ込んでくるルチアーノ。
最大効率を狙って銃を乱射する彼に、ノースポールが殴りかかる。
「お願い、ルーク……目を覚まして!」
「泣きそうになりながら怒っている表情も、とても可愛いね。もっと本気で殴りなよ」
と言った具合に、乱戦状態とはいえ目当てはあるもの。
クライムとヨルムンガンは双方に分かれてぶつかり合っていた。
「ははっ! もう我慢はしない。お前も何もかも、全部喰ってやる! 竜(わたし)を止めてみろォ!」
「あー……ヨル、少し位加減してくれると嬉しいぞ? デート(戦闘)は長いからな?」
フォーガもまた、見知ったビスを敵陣に見つけた。
「むむ。ビスさんがこういった企画に参加しているなんて珍しい……では、お手合わせ願いましょう!」
「ちょ、こっち来るなそんな捕食者な顔でうさぎ追ってくるなー!?」
ただの対抗戦ではなく対魔種想定訓練というだけあって、日々の覚悟を磨く者、自らの闇に向き合う者、日頃見知った相手に挑む者、そのとっかかりかたも多種多様であった。
「『闇を払い光を灯す無上の愛!魔法少女インフィニティハート、ここに見参!』……さて、行きましょうか」
そんな中でマイペースを崩さない愛。
魔種側のフローラによるパワフルな突撃に対抗して魔術をぶっ放していく。
「私の名はフローラ=エヴラール!ローレットの者共よ、私に倒されることを光栄に思いなさい!」 「ああ喜びが満ちる。今日この時を味わいつくさねば!」 一方でめいっぱい悪をシミュレートする史之。
得意のアクロバット戦法で対抗していく汰磨羈。
「徹底的に掻き回させて貰うからな。覚悟しろよ?」
クーアは激しい火を放ち、佳月は対抗して刀を走らせる。
「ただ一度の不用心から瞬く間に広まる火の不始末。これぞ人類最古の致命的失敗(フェイタル・エラー)なのです!」
「勇無き者は退くがいい。留まるならば、まともな死体が残るとは思わないことだ」
追い詰めるように恐怖を演出するアブステム。
「―――んじゃ、俺は『怠惰』の魔種ってとこかな?」
アオイもまた自分の中にある闇のようなものに向き合い、機械仕掛けの長杖を握る。 サクラやアマリリスやふわりも自分なりに魔種らしさを出して襲いかかっていく。
「私は天義……じゃなくて、えーっと魔種の騎士見習いサクラ! 勝負だローレットども! がおー!」
「我が剣の錆となれ―――消え失せろおぉぉお!!!!」
「(出来るだけ多くの人や時間、かく乱し続けられるよう頑張るのです)」
魔種がいかなるものか。それは未だハッキリは分からない。
しかし人々の狂乱や闇、吹き出る暴力性や傲慢さ、とめどない欲望や敵意が、この世界をめちゃくちゃにするであろうことは分かっている。
グレイルはしっかりと武器を握り、魔術を展開した。
「僕も、前よりも成長したこと……この場で見せなきゃ、だな……。全力で行くよ……!」
同じくアリスもまた、自らの魔力を解き放った。
「例え独善的だと言われても、私は私の想いを貫くだけだよっ! 皆の悲しみを少しでも取り除ける様に。だって、私の魔法少女としての力は、その為にあるんだからっ!」
人々は戦い続ける。
まるで儀式のごとく続く歴史を模すように、イレギュラーズたちは自らの力と覚悟と精神を磨いてゆくのだ。
●常在戦場
軍隊訓練用アスレチック。遠泳用マラソン用コース。屋内ジム。滝。すごいとがった岩山。
特訓と名の付くあらゆるロケーションが作られた鉄帝キャンプ島だが、ある集団はその『全て』を特訓の場とした。
のんびりと散歩するリノ。近くの茂みがざわめき、そして夏子が飛び出した。
「触りたいけどソレどころじゃないのも嬉しく思える時があれ!」 飛びかかった夏子は空中で反転。頭から落ちてリノに馬乗りにされた。
「やぁん、怖ぁい。お手柔らかにお願いしたいわ」 腕に光る『FT』の腕章。
彼らのルールはただ一つ。
キャンプ期間中いつでも襲撃してよいということ。
『イッヒヒヒ。そらそら次々くるから気張って避けろよ! あ、反撃は基本なしだからな!』 「それは聞いてない!」
結は次々と降ってくる砲弾から必死に逃げていた。
砲弾の主は鉄帝インストラクターたちである。鉄帝式『あちらのお客様からです』状態だ。
「ただやられるだけでは面白くないので返り討ちにしてやるのです! いひひひ」
防御を硬く再生を豊かにした利香が砲弾を跳ね返す。
「あーっ帽子だけは! お客様帽子だけはやめたってや! 顔出しNGやねん俺ー!」
ミドゥスが帽子を押さえて砲弾をかわす。
かと思えば湊が砲弾の雨に晒されながら同人誌を書き続けていた。
「拙者の鍛錬斬新ではwwwフォカヌポウwww――ほぶ!?」
砲弾に続いて飛び込んできたのは目を血走らせた鉄帝ファイターたち。
「存分にかかって来い。 だが木偶の坊をするとは言っていないぞ」 カノープスは身構え、襲いかかるファイターの群れへ対抗した。逃げる仲間たちの殿を勤めるかのごとき振る舞いだ。
そう、FTとは常在戦場の心を持つと同時に、不利な状況で味方や自身を守るすべを鍛えることができる訓練なのだ。
そんな様子を崖の上から眺めていた威降。
「うーん、勉強になるなあ……うわ!?」
同じくFTの腕章をつけていたがためにファイターたちが崖を登ってくる。
その中には菖蒲も混ざっていた。物陰からFTマンを狙って狙撃狙撃。
「ああでも婚活よりやっぱり銃活の方が楽しい! 婚活は26歳までお預けにしましょっと」
ファイターに追われた風迅は飛来する銃弾をかわしたり防いだりしながら只管にダッシュ。
「1対多はまだほとんど経験ないから、ここでしっかり対策、出来るようにしたいですっ!」 ヴァージニアもコートを脱いでファイターたちの攻撃に備えた。胸に揺れるFTのネックレス。
「おっと! このくらいなら平気だよ!」
たまたま一緒にいたチャロロも猛攻に対抗。飛来する矢を破壊する。
一方でFTチームの中には特定の相手に狙われている者もいる。
「だーれだ」
子供っぽく言っているが、肩からざっくり剣が食い込んでいる。
「そっちからアタックして貰えるとは光栄だな!」
対するグレンはそれが致命傷にならぬようにこらえ、剣を跳ね上げた。
振り返ってさらなる攻撃を弾く。
「いっぱい特訓していっぱい鉄帝のうまいもん食べるっす!」
その横では浩美が建物の屋上からスナイプ。
標的となったオラボナは変幻しながら攻撃を次々に受け止めていった。
「特異どもの祭りだ。此度は全力で壁と成る」
むろん攻撃するのは一人だけではない。猟兵がここぞとばかりに襲いかかる。
「こんにちは、――そしてくたばれェ!」
「好いぞ。好い。堪らない攻撃だ。寄越せ。寄越せ」
そこへなずなも加わりサンドバッグが如く攻撃を叩き込んでいく。
「俺も遊んで! ねえねえ、攻撃もっとしていい?」
「好し……!」
さすがと言うべきかローレットでも防衛に一家言ある者も多いこのFT訓練。
「回避を究めたい……ということで」
動きづらい砂浜をあえて選んだ冥利。
そこへ現われたジェーンが舞うように攻撃を仕掛けていく。
「とっても素敵だわ! ねえ素敵なあなた、どうかわたしと踊って下さらない?」 「皆とても楽しそうね!」
更に加わった焔珠が襲いかかる。
そのすぐそばでは義弘とアルムが大量の鉄帝ファイターやローレットの鬼たちに追いかけ回されていた。
「常に防御技術を落とさぬようニ……」
「さあ駆け抜けるよ!」
逃げ延びた先では輪華が烏丸とぶつかり合っている。
「あら、死神の毒は堪えるようね? 戦場にはもっと死神がうろついていると言うのに」
「これがシルクドマントゥールを倒した伝説の……! なかなかで御座るな!」
その一方では、ツギアが鉄帝のアマゾネスたちに追いかけ回されていた。
「『ふふふつかまえてごらーん』の略じゃねーのか! 話と違うじゃねえか! 俺やめる……ってワッペン外れねぇ畜生! こうなったらヤケだ!」
そんなツギアを茂みの中から狙撃するラダ。
「丁度よく、的になってくれるというのはありがたい」
「時間も機会も無駄にできない。来る日に備えて訓練しておこう。武器に頼りっぱなしはいけないし……これの扱いは精神力が大事だからね」
同じくクロが別の茂みから飛び出し、勢いよく襲いかかっていく。
FTにとって島のどこにも安全地帯などないのだ。
「わりと本気じゃないか!? 流石に逃げよう!!!」
レッドホットクリス号に跨がって逃げるクリスティアン。
その先では百合子が虎とか殺す姿勢で待ち構えていた。
「吾等美少女は基本的に獲れると思ったらその場で殴るのが作法みたいなとこあった……よいぞ、殴りかかってくるがよい!」
それこそ虎みたいなファイターのタックルを、真正面から拳で受ける百合子。
その左右ではサンズイと義弘が大量のファイター相手に真正面からぶつかっていた。
「お、いい引きじゃねぇか? この匂いは、間違いねぇ大物だ!!!」
「随分と大勢の奴らが参加するようだが、こういうのも悪くねえな」
「ぶはははっ! いいぞいいぞ!」
あちこちで巻き起こる騒動に大きな腹を抱えて笑うゴリョウ。
「よっしゃ皆、このままバトルロワイヤルに乱入だ! ボーナスオークそのた諸々の乱入だぜ!」
ゴリョウの飛び込んでいったバトルロワイヤル。
それはラルフの提案したポイント制サバイバルバトルロワイヤル、通称『鉄バト』だ。
「赤のエネミー、青の参加者、青のFT勢。彼らの腕章にはレベル値ぶんのポイントが書かれている。さらには島中の食料にもポイントを割り振っている。腕章を奪われれば脱落だ! 訓練終了期間までにより多くのポイント(腕章と食料)を集めた者が優勝! フィールドは島全域! サバイバルで生き残れ!」
「サバイバルバトルワイヤルとか燃えるよね!」
島を探索するシャルレィス。
が、すぐに腕章を奪われた現場を発見した。
「御免なさいね。だけど、これから戦う魔種はもっと狡猾かもしれないわよ」 暁蕾が嘘やだまし討ちで腕章や食料を奪うという狡猾な手段に出ていたのだ。
そう、腕力だけが全てじゃない。鉄バトはまさに世界での生き残り術を鍛える訓練なのだ。
「きゅーあちゃんはバトルはニガテ! だから、たべものコレクターでいくよ!」
一方でQ.U.U.A.のように戦闘をひたすら避けて食料を集め続ける者もいた。
「森で生活しているから狩猟は得意だよ!」 また、シューのように戦闘とは全く別の所でポイントを単独で増やす者もあった。
混沌世界は、さらにはイレギュラーズは戦闘力が全てではない。時には山でシカを狩ることが、屋敷でメイドをすることが、村おこしをすることが求められるのだ。
だがそんな彼らを狙うのが、魔の影たち。
今回でいえば、エネミー役だ。
ハイネはラルフのアシスタントとしてエネミーの連絡役となって動いていた。
「またやるのか。鍛錬とは毎日やらねば意味は無いからな定期的にこのような催しが欲しいものだ」
ハイネから参加者の居場所を知らされたグランディスが襲いかかる。
彼だけでは無い。太極、マキーニ、竜子と組んだエネミーチームだ。
「キヒヒ。仕方ないのう、今回も手伝ってやるかの」
「女のケツばっか追っかけてんじゃないよジジイ……」
「バトルロイヤルとは面白い! 付き合おう」
標的となったエクスマリアは対複数の戦闘方法を駆使して抵抗、離脱をはかる。基本的には森に潜むつもりのようだ。
参加者同士の奪い合いが成立するルールゆえ単独行動が多くなり、エネミーのチームに囲まれると非常に厄介だ。
「奇襲される側が余りに不利な事を考えれば、身を隠し漁夫の利を狙うのが最も有効とも言えるが……あまり姑息な手を使うだけでは、鍛錬にならんだろう」
一方でアカツキはある程度の情報を獲得してからあえて目立つところに陣取り、罠をしかけて待ち構えることにした。
「ローレットってハードすぎね?」
「この様な戯れで強くなろうとは……! 構わん、従おう」
バルザックとシュタインが即席チームを組んで挑む。射撃とバッシュのコンビネーション作戦だ。
「ローレットの活躍に感銘を受け、幸いにして彼らと轡を並べられたのは良いが大演習とは……これは面白い事になりそうです」
そこへ加わったアインザームがエネミーを統率して戦闘を続行。
アカツキはそれを一人で迎え撃った。
(かつで紛争地帯で生き抜いて来た経験とスキル冒険で無人島を制したいと思います)
クロウディアが普段通りの黒スーツ姿で森に紛れている。たまたま見つけたペアグループをひっそり観察していた。
フェスタと文のペアだ。
「ほら、コレとか食べられたりしない?」
「それなら大丈夫そうだね」
知識と体力のかけあわせ。二人で協力して食料を集める作戦だ。
そこへ、アリスターが突如として襲いかかってきた。闇の深い森に身を潜め、じっと獲物を待っていたのである。
「わっ!?」
咄嗟の対応をはかるフェスタたち。
そこへ食べ物の臭いにひかれてやってきたマオがうっかり参戦。
「それにしても強そうな人ばかりだねー。さーて、誰からいこうかなっと」
物音に反応したガンクまでもが飛び込んでくる。
「クハハッ!おもしれえ!ここはいっちょ勉強だな!」
「目指せ上位入賞なんだお!!」
「(サバイバルか……傭兵の頃はよくやってたなー)」
ここは漁夫の利パラダイスだとばかりにニルやメルも参戦し、場は只管にカオスと化していく。
そんな場は試合開始からすぐ、あちこちでおきていた。
夜の森の中。たまたま参加者との遭遇を免れなかった九鬼。いるであろう敵の気配を探り始める。
「(無人島でトレーニング。まるでバトル漫画やスポーツ漫画みたいです!)」
森での食料調達から流れてきたノエルが弓で狙いをつけ、隙を狙う。
「(これでも狩人、待つ事には成れていますから)」
そんなノエルをこっそり見つけた水卯がさらなる隙を狙う。
「(暗殺も忍者の本分ってね)」
狙うものと狙われるもの。そのおこぼれに預かるもの。
ここはゲームの戦場。生き残りを賭けたサバイバル。
この戦いの優勝者は……ヒミツだ!
●青い空と青い海
「今の俺の力は地に堕ちたに等しい。ならば、魔種との戦前に再び刃を研ぎ澄ますしかあるまい」
かつての力を取り戻すべく訓練にはげむ槐。
その横を、アニーがものすごい勢いで駆け抜けた。
「あいつのペースに付き合ってトレーニングなんてしていたら、命がいくつあっても足りない……!」
「いや、なるほど 逃げると言うのなら容赦はせんよ。そうさなぁ……捕まえたあかつきには、殺すとしようか……くくっ」
その後ろを猛烈に追いかける竜祢。
ちょっと振り返れば、リインとリンネがバーベル訓練をしていた。
「リンネっ、どう!! もうちょっとー!?」
というかリィンだけがバーベルでぷるぷるしていて、それをリンネが高台から胡坐組んで観察していた。
一方では『我の輝かんばかりの筋肉(美貌)は日々の研鑽の賜物である!』としてリリーがバーベルを持ち上げたままポーズをとっている。
訓練方法も人によって違うようようで、皆自分にあったやり方を模索していた。
勿論それは肉体改造に限った話ではない。
「踊りのトレーニングとかでもいいんですかね!? 私が踊ればきっとみんな元気になって戦闘力もあがるかもしれませんし!! 嘘です!」
とか言いながららむねがライトヒール振り回して踊っていた。
「おつかれさまです。おいしいお茶はいかがですか?」 Suviaがあちこちを回って紅茶を配っている。紅茶の腕、というより何百人への接客をパーフェクトに行ない続ける訓練だ。
その一方で、キドーがそっと酒場のドリンク割引券をトレーニング中の仲間たちのポケットにスリ入れるという訓練をしていた。
「ローレットトレーニング!とくれば!イレギュラーズが多く集まる!!となるなら!!!布教の時間ですわ!!!」
かと思えばヴェルフェゴアは布教活動に磨きをかけている。知り合いのいた模擬戦場やサバイバル中の森にも突撃する予定らしい。猛者すぎる。
「こけー!」
「ぴよー!」
そこへトリーネを頭に乗せた樹里がやってきた。ぴよぴよをひたすら呼んで呼んで呼びまくる訓練(?)である。
「さぁ、あったまってきたところでこけちゃん。早口言葉いってみましょうっ。いかなる戦場、過酷な状況であってもきちんと発声するというのはとても大切ですよ」
このように、戦闘ばかりがイレギュラーズではない。様々なシチュエーションで様々な技能を求められるがゆえ、己の個性を伸ばす必要があるのだ。ヒヨコ呼ぶのもそう。
その一方で、弱点の克服もしたいもの。
「水練をやろうと思うぜ。今のところ無いが、今後海に落とされないとも限らねぇからな」
「なら溺れないようにぃ、流されないようにぃ、ちゃんと見てなくちゃいけないよねぇ」
そこへどどんと現われるドラマ。
「実は私、産まれてこの方、一度も泳いだコトが無いのです」
特訓です! といってタライの水に顔をつけるドラマ。
七秒くらいでぷはあするドラマ。
隠れた所では、はぐるま姫がこっそり海泳ぎの特訓をしていた。
「頑張るわ。この小さなからだじゃあ、小さな波にも簡単にさらわれてしまいそうだもの」
とかいってると、すこし離れた海中にヨタカが沈んでいた。
「んぼぼぼぼぼ! この海、深いっ!!!」 「おいおいおい何溺れてるの!? 助けてじゃないよ!? 海泳いだことないの? そうだ、泳いだとこ見た事ないわ」
ざぱーと引き上げるRing。どうやらヨタカは泳ぎの訓練、Ringはそれに付き合って救助の訓練になってしまったのやもしれぬ。
一方で海を知らなかったのかシャーロットは海岸を楽しげに見て回っていた。
「なるほど、これが海……聞いた通り、塩辛い水です、不思議です!」
海に慣れぬ者、知らぬ者、泳ぎが苦手な者。みなそれぞれの穴を埋めるようにして特訓を重ねて行く。
一方でガチの水泳特訓をするアルクや牛王もいた。
「海中でお魚を捕りにいきましょうか。水泳の練習にもなるし、魚も捕れればご飯にもなれて一石二鳥です」
「目標は、そうだな、夕飯の食材を採って自分達で夕飯を作る事にしようか」
二人して岩から海へと飛び込んでいく。
「スパークリングの息抜きに……折角の無人島だし、延々と遠泳し続けるのもありか」
それを見たエイヴァンも一緒になって海へと飛び込んだ。
かと思えば、海岸で遥音とザッハニーアが水鉄砲での撃ち合いゲームを始めていた。
「ザウト君」
「負けたら料理だな。わかった……」
ただの水鉄砲遊びではない、なかなかにガチなバトルである。
と、こんな具合で……他にも連れだって泳ぎの訓練をする者、いっそ水遊びをする者、無謀におぼれる者たちがいた。
無人島ならではの、訓練風景である。
さて、そうはいっても戦闘訓練もしたいもの。
「小梢さんは壁、私はその後ろから撃つ練習でごぜーます」
「背後は任せましたよ、でも背後を撃つのはやめてください、あとでカレー大盛りです」
「一発までなら誤射です」
港に停泊した訓練用の模擬船で、小梢とマリナが防衛の連携訓練をしていた。
「実に面白い……存分に楽しめそうではないか」 仮の襲撃役として射撃を乱発してみせるローゼス。ここに限らずあちこちを見て回っているらしい。
一方港のテーブルでは蛍と珠緒が向き合って座っている。
「ヒーラーなら回復量ばっかり意識して来たけどこれでいいのかなって」
「確かに。後衛に要求されるのは、現場を俯瞰する広い視野と、即応する判断力です」
「なるほど」
「そこで、これを使って鍛えましょう」
どばーんと将棋盤を取り出し、タイマーをセット。
「持ち時間三秒を目指しましょう」
訓練方法は単純なものから複雑なものまで。
シンプルなものでいえば舞香やしだれの訓練だ。
「私が知ってる修行は滝行や素振りとかだね~。でも、せっかくの混沌でせっかくの鉄帝なんだから、鉄帝式の修行をしたいね~」
「み、んなぁ。がんばってーるーか、ら、がんーばーる!!!」
訓練方法はいたってシンプル。特製サンドバッグに攻撃をひたすら繰り返し、いっぱい食べて回復し、そしてまた攻撃を繰り返す。反復こそが近道なんだそうだ。
それは戦闘動作に限らない。
愛莉は絵の力を研ぎ澄ますべく、只管かいては積みかいては積みの反復を。
エルメスは幻影魔法をどんどん生み出す反復を。
こうして技を磨くのだ。
「魔女のエルメスさん! 何かアドバイスをください! い、悪戯したらダメですからねっ!」
「わたしも友人から教えてもらったのだけれど、ささやかな幸運が訪れるおまじないを教えましょう」
エルメス手の甲にキスをしてくすりと笑った。
さて。そろそろ触れるべきやもしれぬこの方々。
「シャイネン・ナハト以来だねパルスちゃん!!!」
「パルスちゃん!ファンですっ!一緒にトレーニングさせてくださいっ!」
「私はね、折角だから間違えなく強者なパルスちゃんともふもふ……じゃない、特訓をしたいんだ!!」
「『強さ』の秘訣ってなんなんっすか? 『弱い』と悩むボクの体に何かヒント欲しいっす!」
奏、焔、フルート、レッド……彼らが海岸のトレーニングフィールドで準備体操していたパルスに飛びかかった。文字通り。
彼らだけではない、アラヤや竜胆もまた、自らの武器を手にパルスへと襲いかかる。
「俺ぁ鉄帝の男だぜ。ならしょうがねえって、思わねえか?」
「いざ、尋常に――ってね!」
対するパルスはゆっくりと背伸びの運動――をしながら残像を残して全員分を回避。
身体の反らす運動――をしながら次の攻撃も回避しきってみせた。
そらしたまんまウィンクするパルス。
「ほらほら。パルスちゃんに直撃とったら一回デート(死闘)だよ。がんばってがんばって!」
「こ、これが強さ……強くなるには挑戦を繰り返せってことっすね!」
「ラド・バウのスターとタイマンはれる機会なんて滅多にねえ」
「うおー! デートー!」
レッドたちの挑戦は続く。
……という様子をひたすら実況するエリザベス。
「青い空! 輝く太陽!! ぶつかり合う筋肉!!! はたしてポロリはあるのか否か!? すていちゅーん!」
●走る俺たち
(走力じゃ敵わない。合図からどれだけタイムラグなしで駆け出せるか。勝機は……ここ!)
銃声と共に走り出すアクア。
(ビーチフラッグは頭脳戦だ! 走りなれない砂の上で足を空回りさせるより、最後は頭から飛んで旗をとった方がぜったい早いからな)
まったく同時に走り出す一悟。
クレア、シロ、玄兎もまた同時に走り出す。
(まぁ、どうせ、全力で汚れてもいいよね。トリマーさんくるし)
(いっしょうけんめい、ぐわー!って走るだけだよっ!)
(ハッ、水着の女子!?)
数人一斉。砂上の旗へと飛び込んで、派手に砂を巻き上げた。
「いいですか。これはビーチフラッグ訓練です。瞬発力と機動力、そして一瞬の戦略を鍛えます」
鳴り響くエンジン音。
ユゥリアリア、真、27、すずな……それぞれが銃声と共に走り出す。
「兎に角、反射神経、反応速度で勝負! ですわー」
「走るの、そんな得意ちゃうけど、ニーナがんばって走るな」
「勝ち目、薄そうな気配がビンビンしますけど、頑張ります……っ!」
「こなクソ!! 負けるかァー!!」
んがっ、といって後方からきたアルプスローダーにはねられる真。
フラッグかと思えばフラッグをキャッチしそこねて横滑りしていくバイク。
「あー!」
直後に滑り込んだユゥリアリアが飛び込んでフラッグをもぎ取った。
ご説明の通り、これはビーチフラッグ。
多種多様なイレギュラーズたちがランダムにコースへ入り、幾度も競争を行なうのだ。
次なるレースは芒、イースリー、紫電、トルハ、レン。
「三十六計は実際、逃げることに及ばないとかの人も言ってるんだよ」
「速さが物を言う場面は多いものです。厄介な状況となる前に、素早く目的を達成する。ケーキの苺は奪われる前に食べる。大切な事です」
「やるからには……全力だ。加減はしないぞ?」
「やはり肉体! 肉体の鍛練に限るぞ! 来世は農耕馬だな。フハハハハー!!」
「しがない下忍の頃に、似た様な瞬発力の鍛錬をよくやったものでござる」
忍者に馬に刀に人工知能に殺人鬼。異種格闘技戦もかくやという有様だがこれもほんの入り口。
「ビーチフラッグ、ね! 知ってる! 任せて!」
「ぼく、フラッグレースってご本でよんだだけで、はじめて!」
ロク、リピィー、クロエ、ジョセフ、リアたちはコースに入り、場の異様さににやりとした。
「いやあ、バイクや四足歩行動物形態の面々などなど、錚々たるメンバーだな! うふふふふ、ゾクゾクしてくる」
「反射神経や身のこなしという事ならば私に向いてるのは間違いがないな」
銃声と共に走り出した隣の走者に足払いを仕掛けるリア。
「ごめんなさーい。足癖が悪くって」 「ッアアもうスタートしてたァ!! まだ間に合――カニだ!」
即コースアウトするロク。別選手にしがみついて速度を稼ぐリピィー。
「フラッグ、もらったなのーっっ!」
ただのビーチフラッグじゃありえない。カオスなバトルが幾度も続いた。
●知を鍛えよ
「わたしたちはここまでに識った事を、必要としている人達に共有しよう。混沌で生き抜くための助けになる事を祈って『世界講義』を開講するよ!」
鉄帝キャンプ島講習ホール。レンジーを中心としたおよそ20人強のイレギュラーズたちが、それぞれの知識を持ち寄った。
レイルディア、リヴリー、コリーヌたちが受講テーブルへついている。
レイルディアのノートは知識でびっしりだ。
「なるほど、勉強になります」
「偶には語るのでなく、聞く側に回るのも悪くないわ」
「各地の情報を纏め、冊子に纏めて周知させる。講師役による教導もあり、と。冊子も沢山準備したよ」
壇上に立つのは何人かのイレギュラーズたち。イーサンもその一人だ。
「情報屋EEEのイーサンってモンっすわー。俺が役立てそうなチームがあったんでお邪魔させてもらいますですよーっと」
共有される情報も多種多様だ。
「じゃーん! 街のお買い得スポットリスト!」
例えばステラはライトだが生活するのに便利な情報だ。
ケイドはそんな情報も真面目にメモしていく。
(練達はこの世界のどこよりも科学技術が発展している。その技術を有していない世界の外で生活するのは初めてだし、不安も多い)
講習を聞きに来ているメンバーもまた多種多様だ。
メルディナ、キャンディ、Masha、シエル、ヤナギといった面々が受講席に並んでいる。
「よさげな店が一通り書いてある。便利だな。それに国ごとの特色も……」
(おはなしをたくさんきいて、ちしきをたくわえる!)
(正しい啓蒙活動に役立てましょう)
(ボクも色々と教えてもらって……あれっ、隣の人まぶたに目をかいて寝てる!)
受講する側の姿勢もやはり様々だ。ティバン、シエル、マスカット、ラナ、イーディスの受講席の様子も例外じゃない。
「来たばかりで右も左も良く判らない状態ですし、情報は何より大事ですからね」
「ふむふむ、へえ、いろんな国があるんですねえ。色々勉強になりました!」
「深緑以外の国なんて、全く興味なかったもんなぁ。今にして思うと、俺の故郷って相当に閉鎖的だったんだな。深緑の中でもかなりの引きこもりだったんじゃね?」
「もしかしたら俺がいた世界の事を知ってる奴ももしかしたらいるかもと思ったが……」
「私は元の世界のことでさえあまりよく知らないのだったわ。宮殿の外にはあまり出してもらえなかったから」
知識を吸収する者、世界を広げようとする者、そしてかつての世界の片鱗を垣間見る者。
(私は世界そのものが怖く、戦えぬ。故に、せめて世界についてご教授願いたい。特に引きこもっておった故に、現在の情勢は追い付いてない)
京司、レナード、ヘルマンたちも真剣に講義を聴いていた。
「あんま勉強ってなぁ得意じゃねぇけど、皆でワイワイやんのは楽しいよな。おやつ作ってきたぜ」
「せんせーさんよ。おやつにバナナは含まれんのか?」
「バナナを使ったおやつならあるぞ?」
「つまりバナナがおやつに含まれ……」
「甘いものとお茶まで用意してあるのね」 熱心に冊子に目を通していた氷彗が顔を上げる。
要と蛍も過去の依頼資料もろもろを読んでふしぎな顔をしていた。
「勉強なんてやりたくねーんだけど……やらないと、もっと面倒くさい事になるのも確かだし。で、このサーカス云々はガチな案件として要チェックするとして……なんだよ、この練達絡みって」
「てんぎ、てってい、げんそう……横文字の人名・地名も通称とセットだと覚えやすいですね」
こんな具合に、いまだ混沌慣れしていないイレギュラーズたちもこの世界の知識を共有していった。
一方隣の講習ホールでは別の座学訓練が行なわれていた。
「戦術の基本は『有利を奪う』『囲んで叩く』『退路を確保する』ゆ・か・たで覚える!」 赤い眼鏡を押さえて、イーリンは黒板から振り返った。
ここで行なわれているのは戦術研究だ。
手を上げるレイヴン。
「なるほど……でも先生。イレギュラーズは基本的に少数精鋭だから囲めませんが?」
「良い質問ね。こちらは大抵不利を抱えるわ。それを覆すために基本に忠実に。しかしそれで無理な時は奇策を用いる。『兵法は王道を以て是とし、奇策を以て王道を制する』よ!」 「まってくれ、それはつまり……」
「地形有利、戦力有利、展開有利……戦術上の有利はいろいろあるケド、情報有利もかなり大きなウエイトを占めていそウ」
「でも複数人で同時に攻撃すると、お互いの攻撃がぶつかったり、体が当たったりしません? どうすればいいのかな?」
藤次郎、イーフォ、ココロもそこに混じって戦術への理解を深めていた。
クレッシェントやM28が意見を出し合っていく。
「これまでに経験したのは少人数戦闘ばかりなので、特に学びたいのは集団戦―特に乱戦時の動き方や留意点、でしょうか」
「神秘的な攻撃や障壁を扱うものに対しての物理砲撃および機銃掃射による迎撃の有効性も試したいですね」
そこへ炎、リリー、ユーも加わった。
「俺は城壁や山岳地帯における防衛戦を考えたい」
「リリーがかんがえたいのは、『どうぶつさんにのりながら、ふたりよりおおいひとをあいてするとき』かなっ」
「効率よく相手を無力化する方法はどうだ。特に殺さないという制約がある場合の集団戦について……」
混沌は世界のルールによって様々なものが変容し、無数の世界のセンスが混ざり合っている。他世界からの旅人は勿論、現地現代人でさえ戦術の最を知らぬと言われていた。
「なに、難しいことではない。理論上、戦いとは相手の嫌がることをやり続けた方が勝つ。いかに相手の土俵から引きずり下ろし、いかに自分の土俵に引きずり込むか」
そう語るのは元。
レニンスカヤやオリーブ、カタラァナはそれを真剣にメモしていた。
「え、ええっと。生き残るすべを学ばなくては、です!」
「知識は正しい状況判断の基礎であり、疎かには出来ない」
「僕は理論には詳しくないから、是非教えて貰いたいな。主に前衛の人がどんなことを考えて動いているか、なんて」
講義を行なうのはイーリンだけではない。
「罠とは相手に働きかける仕掛け。落し穴などの他にも、策略や色仕掛けも罠の一つといえますわ」
ケイティやミルヴィも加わり、講義を更に豊かなものとした。
「新人でもやれる援護役。基本は『先に動く事』と『地味で他の人がやらない事』かな! 敵に立ちはだかったり移動の邪魔とか!」
彼らは連日語り合い、実践し、理解を深めてゆく。
……そのまた隣の小さな講習室にて。
「体力や戦術を鍛えるだけがトレーニングではありません。我々は時には王侯貴族達と相対し、円滑な関係を築いたり、さりげない会話の中から情報を集めたり、といった行動が求められることもあります。そのような場でも狼狽えること無く対応できるよう、食堂にてマナー講習に取り組みましょう」
寛治主催のマナー講習が行なわれていた。
その日の受講者はシラス、綾女、プラレチ、カタリヤ、メイメイ、アリエールといった面々だ。
「いやぁ、ほとんど人前で礼節だの食事だの舞踏会だの避けてたから、元いた世界のマナーも妖しいんだよねぇ」
「色々なところに潜りこ……いえ、取材させていただくにはとっても大事なことですものね?」
「えぇと……こう、だろうか……」
「うーん、決まったふるまいをすれば良いわけじゃないのね。『相手を気遣い楽しませる』か」
「自分が楽しいと思うようなことを、相手にも気遣えるように……」
「貴人の相手はそれなりに慣れてるつもりでも、あくまでお酒の場の話 。ここらできっちり学ぶのも悪くないわね。夜のお店のテクニック的なものは教えられるから私から教えるのもありかしら」
他とは一風変わった、しかし大事な訓練であった。
小さな講習室を挟んだ更に隣、多目的室。
マナを中心とした何人ものイレギュラーズが、おのおの非戦闘能力の向上を図っていた。
「最初はこんなに人が集まるとは思ってもみませんでしたが……本当に、ありがたいことです……」
説得用の資料作成やそれに伴った戦闘記録の整理をするマナ。
「資料……ん? 頭から煙が出そうだ、頭脳労働はオールドワンの分野ではない気がする」
一方。ルチアが頭からぷすぷすさせてる横で、ヨハンが資料の作成に加わっている。
「依頼で説得が必要になったケース、結果などを情報共有して今後に役立ててもらえるようにしましょーか! 盗賊とか冒険者さんとかあーだこーだ説得した事あるんですよ! ふふん!」
一見ただの資料整理にも見えるが、過去の資料をまとめることは深い理解につながるのだ。
「体を鍛えるのも大事だろう、だがしかし、俺は戦いたくない!」
という零もフランスパンをもりもり作りながら作業を手伝った。
「こういう風に色んな手段を身に付けておけば、これまで未開拓だった『大人しくて内気なかわいこちゃん』にも手が出せるようになるかもしれんのう♪」
「リゼちゃん全然わかんないんだけどそーいうのもお仕事だと大事だよね! 頭いい人はつよい! 頭悪い人は騙される! 間違いないね!」
隣ではリーゼロッテとミカエラがそれぞれベクトルの異なる色仕掛け的説得方法について色々と資料に書き加えていた。
橘零、葵、も資料の整理を手伝っている。
「まぁ、今回も裏方で作業させてもらうんっスけども、協力もして見ようかなぁと」
「あとは私自身の経験したことなども情報として提供できると良いですね」
「なるほど……今までこのような事があったと。とても興味深いですね」
ふと見ると、激しいテンションの人たちがいた。
「さぁ俺を説得してみろ!! このままでは俺は愛の妖精から夏の妖精になってホットホット!してしまうフゥッ! フゥイヤッ!!ヒ!」
「ラヴのエンジェルをフィールし、シンクロせよ! 純然たるゴッドマインドとオーラをシンクロさせ、さらなるエボリューションへと向かうのだ!」
豪斗とラヴィエルが謎の空間を作りながら戦闘以外の解決方法について熱くレクチャーしているようだ。
そんな場でレクチャーを受けたり研究したりしているのはアレクシア、イシュトカ、遼人たちだ。
「こういう時こそ我々の本当の実力が試されるのかもしれないね。……パス」
「私はどうしても頭使う感じのことが苦手なので、暗号の解読とか謎解きのコツとかそういう感じのことを得意な人から聞ければいいなって! ……パスで!」
「僕は元々ただの中学生だしね。戦いに寄らない訓練の方がいくらか気が楽かな。パスで!」
そんな具合に、今までちょっぴりバラけていた各々の経験が統合・整理されていくのだった。
これもまた、情報の鍛錬なのかもしれない。
●今日もどこかで戦いが
訓練のしかたは人それぞれ。ペースも人それぞれだ。
「ソフィラ、手を出してはならぬ。またやり直しになるじゃろうが」 「かみさま? 私、踏まれないくらいに髪が結われていれば……ああ、ダメだわ。気がすむまで弄られるわね……」
フィーネとソフィラがなんだか仲むつまじくしている一方で、シルフォイデアとイリスがなにやら盛り上がっていた。
「合体攻撃の開発よ!! こう、口に曲刀を咥えた私の尻尾を持ってシルフィがジャイアントスイングして全てを薙ぎ払う的な」
「姉様190cmある上に自分の身体を何だと思ってるんです? 島の方が聞いたら泣きますよ?」
そのまた一方では、輪廻と死聖が模擬戦闘を行なっている。
「しかしこの闘気を破らない限り、私を倒す事は出来ない。あなたにこれを打ち破れるかしら?」
「今後も秋空さんの様な特殊な守りを持つ敵も増えて来るだろう。ここで攻略の糸口を掴まなくちゃ、ね」
互いの理解を深めてみたり、いつも通りのやりとりをしてみたり。いっそただただゆったり時間を過ごしてみたりと様々だ。
「取れる時に充分な食事を可能な限り早く取るのも重要」
まずはご飯をしっかり食べておこうとするエイヴやナハトラーベもまたしかりだ。
黙って食べ続けるナハトラーベ。奥のキッチンでは桜が水着エプロンで料理を作りまくっていた。
「訓練もいいけどちゃんと食事もしないと倒れちゃうしね♪ 一杯訓練したら一杯食べる! それが一番なんだよ♪」 料理しているのは桜だけではない。
【医食同源】の名で訓練チームを組んだR.R.たちが料理を大量にこしらえていた。
「健全な精神と肉体は健全な食事が紡ぐ」
「いやあ、ラクして好き放題食って飲むなんてたまらねえなあ。ゲハハハハッ!」
「たくさん食べないと大きくなれないんですって。たくさん食べる人をみてるのも楽しいし……」
グドルフやナキたちは食べる専門だ。
彼らは頑張って沢山食べていくが、それを補ってムーやエステルたちが料理を大量にこしらえていく。
「食べ物は……健康によいもので御座いますメェ。勿論、カクテルにも……身体にいいものがあるんですメェ」
「暑さで胃が体の弱ってる人も居るです。酸っぱさと塩気とサラッといける感で勝負です」
一方。
「フフフ……『お兄ちゃん』に新しい料理を食べてもらいたくて料理の特訓を頑張ってみましたわ」
こちらの由奈も料理関連の訓練チームを組んでいた。なんか【闇料理】って書いてあるけど。
できあがった卵焼き(闇)に困惑する『お兄ちゃん』たち。
正しくはガーベラ、沙愛那、玲をはじめとする10人あまりの面々。
「こ、これは!? あまりにも焦げすぎてて原型を止めておらず、かつどんな焼き方をしたのかわからない程に異臭を放つ見てるだけで吐き気を催す邪悪な代物…ダークマター!!!」
「私やお母さんも料理は苦手だけど…ここまでひどくないよ! なんでこれが卵焼きなの!どう見ても『黒くうねってるナニカ』だよ!」
「だが、フードファイターに撤退の二文字はない。いただきます……むっ? 皆どうした?」
ふと見ると、周りの皆は泡を吹いて倒れていた。
アシュトンに至っては立ったまま気絶していた。
「『お兄ちゃんの愛』はたくさん詰まってるわ! 愛は最高の調味料よ!」
なんか料理とは別の技術を鍛えはじめた由奈であった。
そんな地獄絵図とは裏腹に。
「アラやだ、そんなに破けてちゃ大変でしょー?簡単でよければ直してあげちゃうわよ」 すみの方では恭介が訓練の流れで破れた服なんかをちょちょいと繕う仕立屋をやっていた。
勿論これも、立派な訓練である。イレギュラーズは往々にして料理を作りまくったりご飯を只管食べたり、いっそ酷い料理を作ったり、服をつくろったりせねばならぬ時がある。糸と針が人を救うこととて、沢山あるのだ。
●世界はバトルフィールド
空を穿つが如く。
アリソンは木々の枝と煙を突き抜けてまっすぐに飛ぶ。
あまね、リョーコ、マテリアが追いつき、上下左右へと並んだ。
「結構生きてきたけど、競技的に空でレースなんてやった事無かった気がするわね」
「前には、行かせないよっ……」 反転して格闘攻撃を放つあまね。リョーコはそれを防御して反撃に出た。
「ぬあーっ! そっちがその気なら致し方なしッス!」
双方を狙うようにものをぶつけて妨害をしかけるマテリア。
「ウィニングランはボクのものです!」
ぶつかりあった走者たちが作るわずかな隙を、身をコンパクトに畳んだエナがすり抜けた。
同じ隙を狙ったセラがトップ争いを始めるが、追走するティルが後方から射撃を仕掛けた。
「ふふん、今日の私は空の戦士なんだよ!」
回避行動。被弾。わずかにバランスを崩しつつも飛び続ける。
「昔程高く速くは飛べないにしても」
トップへ躍り出ようとするティルに体当たりをかけ、ェクセレリァスが上位争いを始める。
「ああ、やはり空はいいな」
混沌の者たちにとって土だけが足場ではない。
自力で空を飛ぶ者、自由に海を泳ぐ者。フィールドが陸海空へと広がるのなら、それだけ鍛えるべき内容も増えるもの。
「模擬戦だそうだが……かかっ、楽しくやるか」
揺れる船から手持ち大砲を打ちまくるオクト。
「ひょー、やっぱり海洋の海は良いなー! マジテンション上がる!」 小舟を漕いで進む洸汰の攻撃が砲撃に重なった。
対するジェーリーはクラゲ状態で応戦。北斗も洸汰に対抗して仕掛けた。
「ふふ、驚かせてしまったかしら? さぁ、楽しく鍛錬しましょう!」
海上での戦闘は陸や空とはまた違ったコツがある。
「たのもしい仲間がいるときは、わたしの、隙だらけさも、強みになりますの」
「さー、楽しむぞー」
地上から支援攻撃をするリーと、水面下から体当たりを仕掛けるノリア。
一方でルルゥが泳げない相手に飛びついて海中へと引きずり込む。
「深い深い、海の底においでよ。海の底も、きっと素敵な所だよ……なぁんて」
バトルフィールドの大半がどこになるかと言えば、やはり陸上だろう。
縁とシキが激烈にぶつかり合っていた。
「強さを知っておけばいざって時に護ってもらいやすいだろ? なんてな。お手柔らかに頼むぜ?」
「私も、僕も、もっと強くなれるように。あの人の刀で、あり続けられるように。だから、たくさん斬って、裂いて、戦って。流れる血も、悲鳴も、僕の糧にします」
審判役はジルーシャだ。危なくなった時点で止める役目でもあるらしい。
「はい、そこまで! お疲れ様、二人とも♪」
「一試合…お相手願うのじゃ。十夜殿」 入れ替わりに入ってきたのはヴェッラだった。緑に対して刀を振り込む。
そんな様子を眺めながら、ハイドもまた別の者と模擬戦を行なっていた。
「戦術や技量を磨く為、私も皆さんから学ばせて頂きましょうか」
「いや、僕観光客だからそんな強くは……えー、わかったよ」
そう言いながらも自分なりの泥臭い戦い方でぶつかっていくアト。
ある武道家によれば、自己と向き合う鍛錬は素振りが全てではないらしい。多くの人と武を交えることで自らの形を知り、理想を知り、よりよい鍛錬へとつながるのだという。
隣のフィールドではアルテミアとステファンも激しい格闘戦を繰り広げている。素早い連撃のアルテミアと魔術による格闘で応戦するステファンだ。
「まだまだ未熟者だから、積極的に行かせてもらうわよ!」
「(僕が学ぶべきなのは距離感……)」
その様子をブランシュはつぶさに見学していた。
「あぶなっ。てここで目をそらしては駄目、ですよね。見続けなくては」
激しい打撃音。審判を勤めていたクックが旗をあげる。 「コケェェェェェェェオォォォォォォ!!!!」
暮れる夕日。まとまって走る人々。
「浜をひたすら走るですよ。1に体力、2に体力、なのです」
ミミ、メイ、クァレたちは砂浜をひたすらに走り続けていた。
「そろそろメイも……えーと、いっぱい走れる様になって悪い人の首を獲れる様になる!」
「世界一速い電気くらげを目指すわたしに、まらんそとやらは避けて通れぬ道」
三人に、後ろから追いついてくる集団がある。タツミたちだ。
「いざって時は基礎体力がモノを言うから、疎かにはできねぇぜ。それに砂の上を走ることで、不整地での機敏な動作に効果が出るんじゃねぇか?」
「頑張って走るぞー! うおー、僕だって走れる!!」
背中のねじを回して貰ってやる気を出すルル。
フェアリも汗をぬぐってにぱっとした。
「水着で走るっすよ! 熱くなったら海に飛び込んで涼む! あたし頭良い!!!」
遅れているのか一周回って早いのか、魔王、ギルバート、ブレイヴェストたちもやや離れた後方を走っていた。
「さぁ、共にあの夕日に向かってダッシュしようではないか! なに? 前のトレーニングでも同じ事を言ってただと? 気にするな!」
「何事も、まずは基本体力がものを言います。基本体力がなければ、今後どのような成長を遂げたとしても困ることでしょう」
「…………」
ロボット感あふれるズッキャズッキャした走行音で気持ちに応えるブレイヴェスト。
その上を、パルファンが延々と飛行していた。これもまたマラソンである。
「アタシみたいな身体がでかい鳥は、羽ばたき続けるのがおそろしくしんどいのよ。だからスタミナをつけようと思ってねェ」
「とにかく走ればいいのかな?」
「あぁー、あっつい。かき氷食べたいなぁ」
ディジュラークやネームレスたちが追いついてくるのを振り返り、マルクが速度を上げる。
「インストラクターも言ってた。今回だけ頑張ったって体力がすぐに付くわけじゃない。大事なことは、トレーニングを継続すること……」
イレギュラーズたちは走り続ける。
今日だけではない、明日も明後日も、ある意味では永遠に、この混沌という世界で。
●一風変わった鍛錬法
「俺、最近全然動いてなかったしなあ。バカンス気分で訓練ってのも面白そうだ」
「ずっと引き篭もってたけど、それじゃあ生きていけないしね~」
トリフェーンとベルベットが森の中を探索していた。
彼らの鍛錬方法はずばり【宝探し】。
『インストラクターの方にお願いして、島中に亀と書かれたカラーボールを隠してもらうわぁ。時間内にいくつ探せるかを競いましょ~』
と言ったのはアーリア。彼女の提案した鍛錬はイレギュラーズがなにげによく要求される探索技術を鍛えるよい機会となった。
ミディーセラ、礼拝、大二も探索に加わっている。
海中を探るトリフェーンや動物に尋ねるベルベット。人形を使おうとするミディーセラなどやり方は様々。
その一方で、礼拝はインストラクターを御御足で誘惑して聞き出したり、大二は贈り物をしたり人を頼ったりと人望を使った探索を仕掛ける。
一見目鼻に頼った分野でも、こうも様々なやり方があるのだ。それを知るだけでも、意味ある鍛錬となるだろう。
いっぽーこちらは【アイオンTシャツ部】。
「これは自らの限界を知るためのトレーニング。人は、何もせずにどこまで居られるか」
竜也の呟きに、仲間たちは視線で応えた。
「訓練とは即ち、己が影と向き合う所業よ。影を踏み越えるか、影に呑まれるか。或いは、己自身を影となすか……」 「ふふ、平和なんて崩れ去り、そろそろ奴らも動き出す頃――ということか、フゥ」
「影に囚われ、迷宮へと閉じこめられる事が無いよう気を付けねばな」 ゲンリー、ノイン、グレイシアがアニメに出てくる黒幕会議みたいなことを言いながら賢者の顔をしていた。
クラリーチェ、ヘルモルト、アリシス、ウィリアムもまたその円に加わっている。
「最近毒を用いた攻撃を行う事が多いのですが、もっと威力のある毒を……」 (運動の得意なあの子も苦手なあの子も爽やかに汗ばむ様子はとても尊い。弾む肢体、ヘソチラに代表されるチラリズム……)
「折角の無人島を使った訓練施設、有効活用させていただくとしましょう」
「召喚術か、純魔術か。それとも別の神秘の道か……難しいよな」
全員、ふと顔を上げる。
おそろいのTシャツで。
そう、彼らは自称Fランサークル『アイオンの瞳』。
いっぽーそのころ、こっちもこっちで静かな時間をすごしていた。
【座禅修行】の看板を立てた七名あまりのイレギュラーズたち。
晴明、イザーク、十三、ヴァトーが静かに座を組んでいる。
「雑念はいってニヤニヤしたりしはじめたら、後ろから檜の棒で肩を叩くぞ」
その後ろをゆっくり歩き、目を光らせる春樹。本来の座禅修行と趣旨や仕様がことなるが、これはこれで意味がある。
「心地よい環境の中、自然といったいになって精神を統一する。今なら分かるぞ……心を無にするって事の意味が」
「……あっ、ちょうちょ! きれーなちょうちょが飛んでるよ! ねぇねぇ! いたっ! た、叩かれたー!」
「お前が来てるなんて聞いてないよヴァトー? っていうか俺の隣に座るんですかい」
「……そんな露骨に癒そうな目でこっちを見るな。むっ。電源を落としては精神修行にならないと?」
ベルナルド、トカムがそこに加わり、同じく座を組んだ。
「何もしないでいる時に限って創作意欲がわいてくるぜ。島の自然が俺に描けと訴えかけ――あ痛っ!」
「(兵を率いて戦っていたころを思い出す。敵の中の大将の気配を探す時のあの感覚だ。全ての気配を無に還す。集中集中。心頭滅却……)」
静かな時間は、まだまだ続く……。
広い鉄帝キャンプ島。少人数ながらかわった鍛錬をするチームも沢山あったので、ダイジェスト形式で紹介していこう。
まず【蒼羽教室】。ここではルーキスを教師に座学訓練が行なわれていた。
「さー今回は一緒に勉強しよう。マリスとテラは二人でズルしないこと」 「……書籍を読んだり、先生の話しを聞くだけのお仕事」 「あ、薬学の問題ですぅ! これなら鈴音もわかりますにゃ♪」 「この手の魔導書は大体読破したんだがなー。定期的に読み直しておかないと」 その隣の部屋では【旅人お勉強会】と称してリースリットが旅人たちに世界のあれこれを教えていた。
「先ずは幻想ことレガド・イルシオン。ここは――」
「右も左もわからないのでは話にならないですし、丁度良かった。本当に助かります」
「この世界に来てからそこそこ経ったけれど、国々の事とかは殆ど知らないままだものね」
そのまた隣の部屋では【魔術レッスン】。
政宗が武器商人や龍之介と共に魔術回路を作る練習をしていた。
「ふむ、神秘スキルへのきっかけが欲しいと。ならヘンヘンが得意ですよ」
「なに、茶菓子の為と思えば安いものさ。ヒヒッ」
「あれれ、もしかして僕の魔力がおやつ扱いされてます??」 野外の広場では【訓練救急隊】と称して雪、イリス、クロガネたちがかわった訓練をしていた。
「先の戦いから、私は個の力は微々たるものであると言う結論をもった。よって、全体の訓練を補助する事を我々の訓練とする事とした」 「安全保障はできない、とは言っても助け合うのは一つの形とも言えるし、状況把握、判断の特訓とも言えよう」
「倒れた奴をベースまで安全に運ぶのが私の仕事であり、訓練に繋がると言うわけだ。盾としての基礎事項の復習と言ってもいいだろう」
その先の砂浜ではTricky Starsたちが【ビーチバレー】で鍛えていた。
「初めてのビーチバレー。よぉし、頑張ります!」
「宜しく頼むゼ! ゼッテェ勝つ!」
「いぇーい!ナイスサーブ!! って感じで声出していこー!」
「長い砲身には、こういう使い方もあるんだ!!」 かと思えばヒナゲシたちが【エクストリーム散歩】で通りかかる。
「ルールはひたすらまっすぐ歩く! 歩みを止めないで、目の前の障害への対処は行き当たりばったりで何とかする! 歩みを止めたり、方向転換したりしたら負け!」
「さっそく砂に足を取られて頭ぶつけてもうた。よよよ」
「ああ、でも海洋のこの温暖な気候……故郷を思い出して懐かしいです。ご飯もおいしからしいし、夜が楽しみですね!」
「僕、一般人よりは体力も力もあるから。……多分だけど」
その先ではセーレンたちが【瓦割り】訓練をしていた。
「だんだん早くしていくので何かあったら声をかけてくれ。……行くぞ!」 「四方八方不規則に飛んでくる瓦を蹴戦でブッ壊ス! ふーん。これ瓦って言うんだな、結構硬くて筋力アップに丁度良いゼ。反射神経も鍛えられてグレートだナ!」
「さあ、この我に思う存分瓦を投げつけてくるがいい!」
瓦が飛ぶなら唐揚げだって飛ぶ。【猫狐】という立て札を立てたミアが唐揚げをなんかめっちゃ打ち出していた。
「食堂で弾切れ知らず。時々唐辛子混ぜるから、間違えたら死。唐揚げ調教開始、にゃ♪」
「ん~、ノイエちゃんもヒーラーで呼ばれたのかなぁ~?」
「ルルリアさんのお口が辛くなってしまったらミルクでお口の中を癒してさしあげるのです」
「そこです! ダイビングキャッチもぐもぐっ……ってからっ、こ、これ唐辛子じゃ――ぴゃあああああ!?」
かと思えば【大怪獣空中決戦】と書かれた土俵で雷霆とウォリアが真正面から殴り合っていた。
「変則的ではあるが、真っ向勝負は初めてか。終焉の騎士の全てを、この眼、この身に刻むが善い。代わりに我が戦獄を焼き付けてやろう」
『模擬なれど真剣、訓練なれど死力を尽くす――いざ、尋常に勝負!』
こうした小規模なグループ模擬戦はあちこちで行なわれていた。
ラノールとマルベートも【獣の模擬戦】というプレートを立ててぶつかり合う。
「ラノールと私、どちらも再生能力には長けていると来たものだ。実に素晴らしい。お互いに傷つけ喰らい合う事に、一切何の支障もないね?」
「ゆくぞマルベート殿、互いに全力で!」
【月夜二吼エル】の面々もツーオンツーの模擬戦を行なっている。
「魔眼の人と今度は同じ組で共闘、チーム暗黒魔導だねー」
「ククク……負けたら『レイチェル先生特製ドリンク』一気飲み、な?」
「まさか、ギルドの子と戦う日が来るだなんて、思いもしなかったわね」
「さて、我らが森の女王よ。――お前さんはこの魔剣に、何を望むかね?」 【蒼狼の牙】の名前で広場を借りたロズウェルと颯人。彼らもヴィエラをレフェリーにして模擬戦をしていた。
「行くぞ、全力を出せ。躊躇えば誰かが死ぬと思え」 「石ころにも石ころの意地はある。私はまだ生きている、私はまだ……足掻く事が出来る……!」
「これが終わったら私の訓練も付き合って貰うわよ?」
模擬戦ばかりでは勿論ない。
【モフモフパン屋(ピザ)】という札のついた仮設キッチンではウェールたちがひたすらパンとピザを作っていた。仮設とはいえ石窯完備である。
「一個のピザを六等分で六人前、百個のピザで六百人前だから……」
「アザラシの顔の豆大福クリーム餡パン等菓子パンを中心に作るキュ」
「せっかくだからフルーツピザなんてどうだろうと思って、果物をいくつか用意したんだ」
「できたパンやピザは糖分が必要なヒトたちに届けに飛ぶね」
届いたパンを受け取って行人たち【聖剣騎士団】たちは訓練を続ける。
「『必殺技の訓練。同チーム内のメンバーに必殺技を互いに繰り出し、受け合う』というものだ」
「聖剣騎士団の皆でトレーニング! 練習相手がいるといつもより気合いが入るよね」
「みんなで練習するのです!!! ふぁいとー! おー! なのです!!!」
「ぶひは邪魔だから、あっち行って」「ぶひ」
「なるほど、攻撃と防御をお互い交互に行うことで両方の力を高めるという事だね」
「セララをみっちりしごくであります。セララ限定でありますよ。なんでかって? どうしてでありましょうな」
「ララ団長派手そう。一度受けてみるのも乙なものにゃ! そいうわけで遠慮なく来るのにゃー! ばっちこーい!」
書類を見ると他にも登録されているチームは沢山あった。色々試行錯誤している【七曜堂】の面々や【鬼の半裸】と書かれた謎の砂浜追いかけっこや【薔薇散歩】という島中を散歩するチームや【本日はお日柄もよく】とあるフリートレーニングチーム。【兎と蜘蛛、時々パペット】という泳ぎ練習チームや、【olivinade】という空中訓練チーム。【にゃー】とだけ書いてある謎の蝋燭精神修行。【秘密結社XXX】はダークネスクイーンの巨大な砂像を必死に作っていた。
勿論これらも全体の一部。様々なイレギュラーズが独特のセンスで訓練を行ない、それらを鉄帝インストラクターたちが意味あるものに仕上げていく。そんなやりとりが島のあちこちで行なわれていた。
そんな島の片隅で。
「………………」
【遥か夏のカプリチオ御一行様】と書かれた看板を持って、フニクリは佇んでいた。
待ち人来たらず。だって誰にも言ってないから。
メーリングリストが送信されなかった同窓会みたいに、フニクリは太陽の下に立ち続けた。これもまた、鍛錬やもしれぬ。
一方砂浜に立つ千歳。眼前には丸太。
「俺はこの世界の自分とまずは向き合わないと行けないな。地道な努力もこれまでずっとやって来た事だ──俺の執着がこの世界で何処まで通用するのか、試してみようじゃないか」
剣を手に、初心に返って丸太に向き合う。
そして多くの者がそうするように、丸太へと剣を叩き付けた。
幻想を拠点にするローレットが、海洋の島で、鉄帝のブートキャンプ。
このグローバルなトレーニングは数日間続き、関わった皆の中に代えがたい経験をもたらした。
戦う者、走る者、泳ぐ者、飛ぶ者、あてどなく歩く者、性的魅力を鍛える者、交渉術を鍛える者、探す者学ぶ者語らう者、料理を作る者とにかく食べる者、武器を鍛える者自らを武器とする者……ただの筋肉トレーニングに留まらぬ多種多様なトレーニングは次第に彼らの中で共有され、互いにとって新たな発見として蓄積されていく。
今日の経験は確かなものとして彼らの中に積み重なり、必ずや将来の武器となるだろう。
世界の崩壊を回避する、その武器に。
成否
大成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
Re:version名義ですが、リプレイは墨筆墨汁GM執筆です。
あとがきのこの部分については判定者のYAMIDEITEIが書いています。
PandoraPartyProjectという作品は非常に『予測値を常在上回ってくる』特徴がありまして、これについては非常に有り難い限りなのです。
前回の785というとんでもない数から、流石に今回は前回超えは苦しいのではないかと思わなくもなかったのですが軽くクリアしてきたので、やはりこうとんでもなく。「うわあ、ドン引きする位リソース出ちゃうなあ」とか思いはしたのですが、冷静に考えたらこれは非常に嬉しいお話で、喰らえ経験値Goldボム!
本シナリオは、500参加者を超えたので『大成功』判定にします。
又、参加人数が879だったので人数ボーナスを44点獲得します。
更に詳細は伏せますが、プレイング判定により52点のボーナスを加算します。
Easy大成功+44+52で300点弱です。
ユリーカが解除前に返さないから!
シナリオ、お疲れ様でした。
以下は、黒筆墨汁書き過ぎ容疑……じゃないGMからのメッセージです。
走ることも飛ぶことも、戦うことも鍛錬なれば、書くこともまた鍛錬である。
此度黒筆墨汁に課せられた鍛錬は、ハードルの固定であった。
YAMIDEITEI氏が手がけた第一次ローレットトレーニングは300云十人を描写した大作。されど第二次第三次と続くやもしれぬ本シリーズがサービスチキンレースになってはならぬ。将来ラノベ一冊分の文章量に千人突っ込むプレッシャーが生まれてはならぬ。せめて誰もが、例えばお茶さんとかにも投げられる仕事にせねばならぬのだ。
かように熱烈な議論の末導き出されたのは『三万字で400人』というバランス。投げても後続のGMたちが死なぬバランス。
通常のイベシナと比べ蜂の巣がごとき詰めた文章になってはしまうが、そこは経験値特盛り称号付与数特盛りな仕様と併せることを蜜として――
此度に限らぬ未来脈々と続く皆様のご満足のため、このリプレイは仕上がっております。
どうぞ、お納めくださいませ。
GMコメント
Re:versionです。
特别な企画を出す時だけお邪魔する第二弾です。
以下詳細です。
●任務達成条件
・真面目(?)に面白く(?)トレーニングしましょう。
●成功度について
難易度Easyの経験値・ゴールド獲得は保証されます。
一定のルールの中で参加人数に応じて獲得経験値が増加します。
それとは別に500人を超えた場合、大成功します。(余録です)
まかり間違って1000人を超えた場合、更に何か起きます。(想定外です)
尚、プレイング素敵だった場合『全体に』別枠加算される場合があります。
又、称号が付与される場合があります。
●プレイングについて
下記ルールを守り、内容は基本的にお好きにどうぞ。
【ペア・グループ参加】
どなたかとペアで参加する場合は相手の名前とIDを記載してください。できればフルネーム+IDがあるとマッチングがスムーズになります。
『レオン・ドナーツ・バルトロメイ (p3n000002)』くらいまでなら読み取れますが、それ以上略されてしまうと最悪迷子になるのでご注意ください。
三人以上のお楽しみの場合は(できればお名前もあって欲しいですが)【アランズブートキャンプ】みたいなグループ名でもOKとします。これも表記ゆれがあったりすると迷子になりかねないのでくれぐれもご注意くださいませ。
●重要な注意
このシナリオは『黒筆墨汁GM』が執筆担当いたします。
このシナリオで行われるのはスポット的なリプレイ描写となります。
通常のイベントシナリオのような描写密度は基本的にありません。
また全員描写も原則行いません(本当に)
代わりにリソース獲得効率を通常のイベントシナリオの三倍以上としています。
前回のご好評を受けまして再度開催いたします。
又、恒常的に行う予定はありません。
この機会に宜しければ是非ご参加下さいませ。
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