シナリオ詳細
ローレット・トレーニングIV
オープニング
●赤犬からの招待
「よう、アルダハ遺跡での合同討伐はお疲れさん。イレギュラーズ」
ラサ傭兵商会連合。現在の頭目……と言える存在である『赤犬』ディルク・レイス・エッフェンベルグ(p3n000071)の招待を受けて首都ネフェルストにイレギュラーズ達は居た。
過日。ローレットはキング・スコルピオを討伐し、その残党らの集まっていたアルダハ遺跡での攻防も合同戦線により終結。ひとまずこれで蠍に関する一連の騒動に完全なる目途が立った……と言えるのだが。
「ま、長々とご挨拶――なんてのは柄じゃないんでな。
単刀直入に言うが、どうだ。今度は『合同訓練』をやってみねぇか?」
「合同訓練?」
ああ、とディルクは言葉を続ける。そもそも先のアルダハ遺跡攻防戦はなぜローレットにも話が来たのか? 理由は簡単、魔種がいたからである。
ラサは十分な武力を備えた国家、あるいは集団だ。残党程度彼らだけでも十分に勝算があった……が、魔種との戦闘経験が必ずしも多いとは限らない。予想外の反撃を受ける可能性も考えられ、故に魔種集団となっていたサーカスを潰した……一種の専門家であるローレットにも話が回ってきた訳だ。
そしてその目算通りローレットは魔種に対し十分な活躍をしてくれた。万々歳である。
「だけどよ、これで良し……で終わるのも困るんだよな。馬は馬方、蛇の道は蛇って言っても戦闘は任せろと『傭兵』の名を掲げてる連中が、魔種に対しての戦闘に不慣れが残る……てのは実際どうかは別としてイメージ的に良くねぇ」
だから魔種との戦闘経験があるローレットとの合同訓練を開催したいのだ。
無論イレギュラーズは魔種ではないので彼らと訓練をしたとてそれが直接魔種との戦闘経験に結び付く訳ではない。しかし奴らとの戦闘を得た者達が如何なる動きをするのか? 如何なる目で戦場を見据えているのか? その動きと共にあるだけでも意味はあるとし。
「勿論タダ働きって訳じゃねぇ。ここでお前達が大規模に参加してくれるならよ、それだけラサとローレットの繋がりをアピール出来るからな。ラサからの依頼ってのも斡旋しやすくなるし、遠回しになるが深緑への宣伝にも繋がるかもしれねぇ」
閉鎖的な国家、深緑。
たしか目の前にいるディルクは個人的な繋がりを持っているのだったか。成程、レオンとの間では既にそう言った半ば政治的、というか取引も行われていた訳だ。流石は傭兵国家。地獄の沙汰も金次第……故に、彼らから話を持ち掛ける時も無償話は無い。取引と言う言葉の重みを、彼らは知っている。
「傭兵団との実戦的訓練……以外にも砂漠の中でのトレーニング、サバイバル。まぁその辺り個人レベルで動いて自由にやってもらってもいいぜ。お題目は『訓練』だし、別に内容まで強制するつもりはねぇよ。なにせ……」
と、そこでディルクは言葉を濁すかの様に口を噤んだ。
言える訳があるまい。将来の魔種を見据えた訓練と言うのは嘘ではないが。
合同訓練に参加する傭兵団の中には――純粋に、噂のローレットと引き続き共闘してみたい。関わりを持ちたいと思っている者達が、決して少なくは無いなどと。
- ローレット・トレーニングIV完了
- GM名Re:version
- 種別イベント
- 難易度EASY
- 冒険終了日時2019年03月30日 00時55分
- 参加人数604/∞人
- 相談8日
- 参加費50RC
参加者 : 604 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(604人)
リプレイ
●合同訓練開催
ラサの地域は砂漠である。無論、知っている者は多いだろうが。
「懐かしいな。この砂の海も」
ラノールは言う。微かに沈む、土とは異なる砂の感触に記憶を辿りて。
向かうは『実践演習』だ。知古のいる『白牛の雄叫び』がどこぞにいればと思いながら、隣のエーリカへと視線を向ける。導かれる手。踏みしめる赤い砂。思わず丸くなりそうな目は初の到来を思わせて。
彼女は呼ぶのだ。風を。風よ。自由なる乙女たちよ、どうか、わたしに。
『ちからを貸して――』
彼と共に入れるだけの力をと。
「暑い……焼ける……しぬ……」
「無理はいけません、この辺で少し休憩しましょう」
ヨタカはベルと共にいた。激しい日差しと砂埃に満身創痍のヨタカ。
そんな彼を気遣って影のある地へと誘導するベル。訓練には参加したものの、やはりこの気候では激しい動作は厳しいモノだ。故に、ヨタカは奏でる。音楽を。皆の心の水に、成らんとすべく。
「ルツっ、今日だけは傷がつくのも厭わない所存だから!」
手加減したら怒るんだからね――っ! と言うは正宗だ。
大切な親友。かけがえのない友、ルツ。こんな機会であるからこそ全力で、と。
「そう言うのならば……出来得る限り励むとしよう」
一方で、ルツにとっては些かやり辛い気持ちもあるのだが、それは飲み込んで。
今後の為の経験になるのは分かる。だからと、ぶつかる物理と神秘。
――私との手合わせは役立てられただろうか?
「フフ、そういえばラサは『覇竜領域』が近かったわね……!」
ルーミニスが視線を向けた先は――覇竜領域・デザストルがあるであろう方角。
比較的近いのならば訪れた事のある傭兵もいるだろうか。もしいるのならば。
「手合わせしてみたいもんだな……手は抜いてやれないだろうが」
隣にいるクロバは二刀を携えて、冗談の様に。しかし確固とした思いを抱いて言の葉を。
龍すら屠ろう。必要ならば。約束を破らぬ力の証に――
「とれーにんぐ、だね! たのしくやる、よ!」
ナーガは往く。岩に。瓦礫に、己が力を乗せて――フルスロットル!
風と共に巻き上がるは砂だ。はぐるま姫の苦手なモノ。
なぜなら彼女の身は人形であるのだから。関節の中に入り込む砂など。
「ああ、全く、思った以上に取れ辛いわ……!」
砂歩きのコツ。ラサの者にでも尋ねてみようかと――上目遣い。
「……さて、セシリアどうする? 具体的な予定はないから貴方の手伝いをしてもいいわよ?」
「ん、それならユウ今回も協力お願いね! えっと、まずは脱水発生時の水分と……」
過酷な環境下での訓練。ならば怪我人が出るかもしれないとユウとセシリアは備えの準備を。脱水・熱中症……様々な事態は想定されるモノだ。ユウは飛行しながら体調不調者を探し、セシリアは癒しの術を整える。誰も怪我をしないのが一番ではあるのだが、さて――と。
見るだけでも得られるモノはある。が、まじまじと見るのも不審者じゃ、とヴェッラは思考を。
「……お歴々の鍛錬は気になるがのぉ」
まぁ。ばれないように、の技術を身に着ける必要があるかもしれぬと。
ユーリエとエリザベートは共に行動を。
二人は吸血鬼だ。片方は違うが、そこはギフ――否、愛ゆえの力で一時的に。愛は偉大だ。
「んー……傭兵の人はどこかな、ひにゃっ!? ひゃ!? え、えりちゃ!」
と、隙を突いて傭兵を探索するユーリエの身体を撫でまわす。
「訓練とか、特にやる気はなかったんですが――さて、さて」
エリザベートは言う。くすぐる度、一々可愛らしい反応だと。
もう少しこのまま意地悪し続けるとしよう。
魔種をむしゃむしゃした経験のあるヴェノムは語る。必要なのは『殺意』だと。
「必ず殺すっす。命を惜しんだ分だけ刃が曇るっす」
余計な想いは不要だと。無理なら逃げろと。
貫け己の意思を。退くも進むも刃の如く。ただ一振りの如く。
「訓練、訓練は大事だよな……いざと言う時動けなかったら困るしな、うん」
だから零は駆け抜ける――フランスパンを配りながら!
え、テロじゃないよ? ちゃんと水もどこからか借りてるよパンだけ配ったら鬼だよ!
「HAHAHA、たまには気合い入れないと鈍っちまうからなぁ!」
仲間が出来て友人も増えて恋人まで出来……何!? もげろ貴道ィ!!
もとい。自分を見つめ直し闘争本能を呼び起こすべく修行に励む。
引き出すは野生。苛め抜く己が肉体。彼はどこまで往くのか……!
「訓練には強固な盾が必要不可欠だ。されど我等『物語』は――」
出たなオラボナ君。禍々しき、由緒正しくはないおらぼなくんけーきを片手に。
彼は今日もNyahahahaと。
「召喚術とか慣れないからなあ、どれだけ召喚できるかやってみようかな」
この機会だと。セルウスが行うは召喚物のテストだ。
召喚物の数、持続時間……コントロールがどこまで出来るのか、やってみよう。
「ラサ傭兵商会連合との合同訓練……さて、用兵書の類があれば幸いですが」
古今東西様々な書物がある筈だとドラマは考察する。
可能ならば一日通して魔導書でも眺めたい所なのだが……それは流石に私事すぎるかと自問して。
「そうだ! ギルオス君を特訓してあげよう!」
意味が分からないよセララ! と抵抗するギルオスを強制連行。決して訓練が辛いから道連れにした訳ではない。軟弱な、奴をマッチョオスにするという素敵な目的の為……やめろぉ!
リュカシスは胸に抱く。何にも屈せぬ力の為に
「もっと体力を付けたいんだ……!」
そんな彼が挑むは『砂漠からの帰還筋トレ忍耐訓練』……正気か!? 砂漠の一角からスタートする彼の訓練。日没までの帰還を目標に――今ぞ彼の冒険が始まる……!
「……トレーニングなんて面倒、と思ってたけど」
こんな出会いがあるなら悪くは無いか――と死聖は言う。
目の前にいるのはクラリーチェだ。お互いに初対面。されど訓練の相手として息を合わせれば、存外に悪くない。軽快な動き、正確な魔力。互いに感嘆する相手の技量。
「御見事です。一人の訓練は寂しかったので、ご一緒出来て嬉しかったです」
されば去り際。軽く頭を下げた……瞬間。再開の誓いとして紡がれる手の甲への、口付け。
――さて。彼女の顔に驚きの色があらわれていたかは、さて、さて。さて。
「みんな頑張ってる……きっと、目的があるんだろうなー」
いいなー……と言うはアクアだ。しかし羨望しつつも彼女には――この世界が恨めしい。
ローレットに居れば何か見つかるのだろうか? 皆を見て回り、何かを探そう。
例えば己が炎が、小さくなろうとも。
魔法少女の定義、魔法少女の約束、魔法少女の恋愛、魔法少女の憂鬱……
ハイデマリーは勉学に励んでいた。何の? 魔法少女のだよ!
「そもそも魔法少女とは概念なのか職業なのか……」
ラサに流れているだろう数多の書物。その中に答えは無いだろうか――と。
「今日も今日とてトレーニング日和だね」
悠の視線は天へ。うん、快晴心地よき。真面目に頑張ろう――どう鍛えたモノか、悩みはするが。
もしかすると。もしかすると砂漠に鉱石があるやもしれぬとサイズは思う。
「……問題はあるなしではなく砂の中にある際か……」
砂の中にあったら掘り進めなければならない。重労働になりそうだと、憂鬱気味に。
「……ん、随分久しぶりの訓練依頼……だね」
チックは死霊使い技量の練習を。魔力を増幅し、技能を組み合わせて――放つ一閃。
「出会いや交流というのは良いものですね、新しい物語の切っ掛けにもなります」
四音は純粋に楽しみだ。新たに紡がれる物語達の誕生が。
求むはスーパーアイドル。目指すはらむね。
「しかしなぜアイドルを極める為に戦う必要があるのか……!」
理解に苦しむが世界の掟ならば従いましょう!
喉に砂が絡みながら、それでも彼女は天を目指す!
熱砂の上で円を描いて座り、そして欲望を縛り付ける。人、それを我慢比べと呼ぶ!!
円の中心にあるは上質な酒だ。いや、それだけではないあらゆる飲み物……命の水で溢れている。
「オアシスの雫、柄久多屋の酒、シャトー・チャレイヨォ……うっ、我慢我慢!」
「うん……うん……まだ、大丈夫だよ……まだ、ギ、まだ、まだ……!」
これは原罪の呼び声に匹敵する誘惑だとアーリアは呟き、氷彗は己がギフトにて日光の被害を和らげ耐え続ける。大丈夫か氷の精霊……! 誰も死ぬなよ!!
「フ……ふう……砂漠は、あつ……いや、全然暑くないさ。思ったよりは暑くない! あと二日は行けるね!」
ただちょっと意識が朦朧としているだけさクリスティアンはね!! あ、倒れるぞやばいやばい!
「うぅ……じっと待っているだけと言うのもなんとも……ああそうだ折角ならば皆様に自己紹介を。私はアニーヤ。この仔はアスラ……ええロリババアの一種なんですけどね。見た目にそぐわず勇敢なんですよ」
汗だくになりながらアニーヤは自己紹介を。初めての面子もいるのだ。未だ意識があるうちに言葉を紡がねばなるまい……!
「これも修行の為です頑張りましょう。これも修行の為、修行の為……」
しかしブツブツと孤月は己が気力を持ちこたえさせるために暗示の如く呟き続ける。師匠の様な、いや師匠を超えるスナイパーを目指す為……水の誘惑に屈する訳には……いや今なら師匠も見てないのでは……見てても追い払えば……!
「ただ酒飲めるんですか! やった――!! 我慢大会じゃないですか!! やだ――ッ!!」
こんな罠にハマってしまうとは思わなかったと千鳥は言う。もう修行とかどうでもいいやお酒を飲み干したい。この炎天下で酒と言う極楽をしゃぶりつくしたい!!
「煩いぞ! あと少しの辛抱だ! もう一度見ろ、この訓練を耐えた諸君に私は褒美を用意した! 諸君らの精神はこの程度か! 全く持って残念だ、夜鷹の新兵にも劣る軟弱さだ!」
しかしそう言った気持ちをカナデはまるでどこぞの教官の如き一喝で叱りつける。
我慢の先にこそ得るモノがあるのだと……しかし。
「ふはははは! 皆の衆ご苦労~! どうだ? こっちに来るがよいぞ? 我慢は体に毒じゃぞ? ほれほれ、ほ~れほ~れ……!」
一方で夕はこれ以上ないほどに煽りまくっていた。お酒は飲むふりだが。おつまみ用意したりとかその場で飲んでみたりとか……鬼畜か! いや小悪魔モードか言葉遣いすら変わっているぞ!!
吸血鬼の身にこの陽射しは厳しいモノだ。
「……とはいえ。修行で死にました、なんて事にはならない様に」
アリシアは備えている。水筒、それから輸血パック。万全こそ大事だと。
ローレットは魔種との戦闘経験が多い。ただし全ての者が経験している訳ではない。
「魔種か……奴らとは一度戦ったのう、カマっぽいタコとか言う濃いやつじゃったからよく覚えておる」
口火を切ったのは瑞穂だ。過去に戦った相手を思い出しながら言葉を綴って。
「魔種戦か……俺はこないだ一回やりあったけどな。一回だけで分かる。アレは相当に危なっかしい」
「そうね。私は二回戦ったことがあるけれど……両方負け戦だったわ」
続いてヤナギに小夜が言葉を。これで終わる筈がない。今後もやり合う事になる筈だ。
だからこそ皆で話し合う。この場で、次に奴らが現れた時どうするのか。どう倒すのか。
彼らの言をフィーネは聞いている。彼女は魔種と戦ったことは無い。だが、聞く事に意味はある。ゆっくりと話を聞いて、もしかしたらくるかもしれない『いずれ』に――思いを馳せて。
「……あたしも一回だけ戦ったけど、難儀な連中だよね、ホント」
ニアも同様。彼女は直接魔種、というよりはその取り巻きがメインだったようだが……直接魔種に当たった者の話は実に参考になる。ありがたく拝聴するとしよう。
「これを機に、魔種に対する知識を皆で深める事ができれば良いですね」
次がいつ来るとも知れぬからとリチャードは言を。
呼び声とは基本として狂気である。されど、必ずしも論理が通っていないとは限らない。
「今、一時間目を閉じていられなかった奴。魔種になるかもしれねぇぜ」
サンディは語る。如何なる状況であれど志を変えない事だ、と。
「ワタシの大切な金色砂のいたずら妖精――クララシュシュルカ」
ここはあなたのふるさとなのね、と。ポシェティケトは呟く。
彼女は紡ぐ。幸運の唄を――
魔種は滅さなければならない。そういう存在だ。
「やむを得なかった……それは確かにそうかもしれない」
それでもと、暁蕾は思考する。反転を防ぐ・治療する方法は無いのかと。
数多の情報を分析する場をここに。彼女は思考の前進を止めない――無念を晴らすべく。
「フッ――見せてもらおうか、かの傭兵国家の実力とやらを」
見通しの良い地に豪奢な椅子を設置して、竜也は場を俯瞰する。
団の動き、個の練度……見るべきは幾らでもある。意味深な笑みと共に、彼は天に座す如く。
「砂の上を歩くだけでも、結構体力を使うね……」
汗をかきながら、されど準備は怠らなかったヨゾラは呟く。
行うは環境下でのキャンプ訓練。マントを手放さず、日光への備えも同時に訓練へと勤しむ。
人を斬った。魔種を斬った。それでも足りぬ。求める血。
「……あの人を、守るために……もっと、必要とされ続ける為に……」
傭兵と手合わせを。シキの求む、未来の為に。
技術と言うのは盗むモノである。
「さて……高名な傭兵の方々にご教授頂くとしましょうか……!」
人当たりを良く物腰を低く。灰は己が技能を活用して――武具を振るう術を学ぶ。
砂漠は暑い。つまり。
「メイク全落ちじゃん! 死! 精神的な死が間近に!!」
「――まぁつまり代謝も良いって事だし、体を鍛えるにはもってこいじゃない?」
絶叫するかの如く嘆くいろは。だが訓練には良しとする政宗。
果たしてモチベをいろはは保てるのか――長い一日が始まりそうだ。
見取り稽古、をご存じだろうか。様は『見る』だけでも稽古という事なのだが。
「これはつまりそういう事だよ。訓練もせず趣味に勤しんでいる? はっはっは失敬な」
メートヒェンは予め用意しておいた釈明文を言葉に。場を絵に書き留めて趣味に没頭す。
「おいっちにーおいっちにー。ふぅ、ふぅ。どこまで行けばいいのかしら?」
おっ。皆さん鴨、もといトリーネがネギを背負って砂漠を歩いてますよ。
誰か鍋持ってませんか? 持ってる? やったぜ。
「戦闘訓練、か……成程。ならば『赤犬』にこそ挑むべきだな」
アカツキは思う。戦う相手には困らぬこの世だが、本来の自分の実力を忘れてしまいそうだと。
故に一番の実力者――『赤犬』を探す。彼ならば己が全霊を賭せると。
「ほう……ラサの傭兵団と合同訓練する機会が訪れるとはな。よい事だ」
ゲオルグは集まった傭兵、ローレットの面々を前に感嘆する。
さて如何にして己を磨いた事かと――思案しながら。
「魔種を見据えた訓練……ですか。それも合同。成程、中々面白そうですねぇ」
折角の機会だと、ハイドは鍛錬の相手を探す。出来ればラサの者と一戦をと。
砂塵が視界を。呼吸すら困難にする中でサンティールとウィリアムはいた。
二人が挑むは傭兵との実戦訓練――
「ぶわ――! くちに砂はいった! ぺっ、ぺッ!!」
しかし厳しい環境だ。サンティールは空を飛び、戦の姿勢を整える。
戦いは怖い。それでも、守りたいものを守るために。
「――ああ、援護は任せろ。思い切り暴れて来い、サティ!」
往くその姿をウィリアムが援護。何者にも縛られぬ彼女に――星の光を重ねて。
「こういうキツイ環境で戦うのも、経験っスかね」
この歩きにくい環境もなんとか慣れる事が出来れば、とシクリッドは思考して。
久方ぶりに動かす身体。背筋をくの字に、ミアは居た。
「……み、みぁああ!? ティアティア、それ、何連れてきてる……のっ!」
瞬間、大慌て。己が背、ティアが連れているのは――ミアに『変な事』をしたスライムであった。
「うん、全力でミアを追い掛けてあげて」
いい笑顔のティア。これならば全力で逃げる為に走るだろう。訓練訓練!
「……流石に魔種としてどう動くかなんて考えた事が無かったな」
文は言う。折角のこの機会、ならば『自らが魔種ならどう動くか』を考えてみようと。
彼らの思考。彼らの攻撃方法……考察の果てに見える景色とは――
「グフフ……砂漠と言えば石油=オイルマネーじゃ……訓練? そんな事より一攫千金よ!」
くっ、大二! 石油があるかはともかく、発掘方法はどうするつもりだ!!
多くの欲望。それを果たす為には戦う術が必要だが。
「未だにしっくり来ぬのだ……あぁそれでも悲しい事に」
働かねばリソースは増えぬとラクタは嘆く。
「ローレットのトレーニングと言えばそう! 皆様ご存知の通りパンツなのでございます! これは某高名なパンツァーが開発したものでして」
どういうことだエリザベス! 彼女は手持ちのパンツをトラップの如くあちこちに。その中で心の平静を保つ訓練を……やめろ! 某情報屋関係ぬぇえから!
――ゲンリーは振るっていた。ひたすらに斧を。ただ一心に。
この環境で振るう百、千、万……その先に到達しうる世界は如何なるモノか。
変わらぬ一振りをどこまで続ける事が出来るだろうか――と。
砂漠は過酷な環境だ。しかし『元の世』がそうでなかった者もいる。
「……私の場合、まずはこの環境に慣れる必要がありそうなのだよ」
マヌカの世は真逆。砂漠は極寒故の命を奪う場。
灼熱の中でのサバイバルを学ばなければならぬかと――天を見据えて。
地上は灼熱なれど地の底まではそうではない。地下の地下、底にいるはナハトラーベ。
「――」
葬儀屋の研修としてミイラのエンバーミング技術を視察する。おお、非常にまじめな訓練だ……! むっしゃむっしゃ。石棺の中にて喰らうフライドチキンが無ければ。
「ごーどく、んれーん!! が、ん、ばぁる!! ふぅ、ふぅ!!」
水が、足りない! 花が枯れちゃう! ――と悲痛な声と共に、それでもと水を配る舞香。
「――昔降り立った星も一面の場獏だったが、此処もソートーな砂漠ダナ!!」
「ハッハッハ姐さん、しかしこれならば砂風呂を楽しめるかと!!」
なんだその砂風呂ってのは!? と湊の言に疑問を投げるはヴァルゴだ。
始まろうとする砂風呂我慢対決。姐さんとキャッキャウフフタイムを楽しもうとしていた湊だが……あ、やばい。やばいぞこれぇ! 想像以上に灼熱! 果たして先にリタイアするはどっちか!!
「んーと……拳術と蹴術は、こう……えいっ! ……んー難しっ……カレンみたいに、いかない」
「ふむ。蹴りに関しては確かに、妾の様な服装の方がやりやすいのだろうのぅ」
シュテルンとカレン。訓練場の一角にて行うは近接格闘。
合気道の武術をカレンが教えるも、中々に難しいようだ。シュテルンはコツを掴もうと二度、三度。
いずれなるかな。彼女の如き動きを――身に付けんとして。
「はあぁああ……暑い上に訓練なんてめんどくせぇ……」
そんな愚痴を零すペッカートが見つけたのは傭兵団の者だ。
そうだこのままただ訓練をするよりも、と賭けを持ちかける。勝負の末、一杯奢るのはどちらとなるか――
音に聞こえしラサの傭兵。彼らは主賭して回避の技術が念頭に置かれているとか。
「何方か私と一緒に踊ってくれるかな。尤も、私とて負けるつもりはないが、な!」
貴重な機会。逃がし馳せぬとヴィルヘルミナは駆ける。
ことほぎは『見』に徹する。見るは他者の手の内、身のこなしから使う技術から。
「こっちだと無名だが……ま、それでも警戒するに越したことはねーだろ?」
善きも悪しきもここには無いが念の為と。彼女は訓練場を渡り歩く。
ローレット・トレーニングと言えば……多くの者らが集まる場。
「ならば! 布教の時間ですわ! 都合四度目の正直を今こそここに!!」
おおイーゼラー様! とテンション高めなのはヴェルフェゴアである。彼女は眼に着いた生贄を標的に派手に動く。全てはイーゼラーなる崇拝対象の為……皆逃げてー!
「レオンさんの元へ届ける資料を……皆の訓練の様子を書き留めないとだわ……!」
華蓮は皆の様子を見て回る。この訓練の様子、レオンも知りたいだろうから……
というレオンへの接触理由を作る為に。精密なる模写は生きているが如く。
ティリーが行うは組手。傭兵の一人と共に。倒さず、それでいて身体の使い方を覚える様に。瞑想し、集中力を高めるレン。そこから転じるは基礎のトレーニング。
「うえ〜……砂漠ってなんでこんなに砂だらけなの……ぺっぺっ。
もうやだ〜お風呂入りたぁ〜い……」
「我が王よ、貴方がやろうと言い出したのだぞ……せめて今少しばかり辛抱を」
帰ったら風呂が湧いている状態にはなっているから、演習は続けよう? な? と黒金を励ますは銀だ。人気のない隅の方で行う訓練。少しでも力を引き出す一端となれば――と。
メルナが望んだのは多数との戦い。強き暗示を目に宿し。
「……遠慮はいらないから、全力で来て。じゃないと大怪我するよ……!」
構えるは意思。兄ならば、と。兄の様に、と望む果てを目指して。
「集団による対空射撃……その意義と効率的射撃方法の教導を行おう」
他者を教導するのは久しぶりだが、とシャスラは言葉を。
「私は花、野に咲く小さな花……荒野の隅に落ちてる枯草……」
隠密の訓練だろうか? クリファセフィラは砂漠に咲く一つの花の如く気配を消し……逆に目立つのでは!
「――シオン。先に見える岩まで、競争といきませんか?」
負けた方は勝った方におやつを奢る、と。雪之丞はシオンへと言葉を紡げば。
「おやつ……! やるー……! ゆきのじょーと一緒に美味しいおやつ食べるー……!」
シオンもやる気だ。雪之丞は日焼けを気にしつつも薄着になり軽量化を。シオンは羽を広げて――さて。勝利の行方はどちらに傾く事か。
砂漠は死の大地に見えて『香り』や『精霊』と言った存在が根深い地域でもある。
「だから今回はインスピレーションを磨く時間にしたいのよ。トーヤも付き合っ――ちょっと、こんな中堂々とサボろうとしてるんじゃないわよ! ほら、お酒は没収!」
「おいおい、砂地に打ち上げられた可哀想な魚を苛めねぇでくれや。酒は水だぜ」
ジルーシャに取り上げられた酒を名残惜しそうに、縁は言う。
ああなんともはや。干乾びる前に喉を潤したいモノだ。
「――傭兵さんには今回ローレットの依頼を受ける様な立場を体験してもらうっきゅ」
レーゲンは依頼人兼同行者の様な役割だと告げて。そう、彼らにローレットが普段見ている視界と世界を感じてもらおうという訳だ。そこから得る者もあるだろうと。故に。
「ハッ。遅かったな……もう狂気は伝染させてもらったぞ!」
「う、ぐぐぅ……! ぐあああ! 邪魔をするな、ぶっ倒してやる!!」
ウェールとアクセルが敵側の役として待ち構えていた。正に悪役の、あるいは魔種の如く振る舞い雰囲気をも纏わせるのだ。さぁ時間がないぞと――煽りも付けて。
「はい、だーるまーさーんがー、転ん……だ!」
ブーケの一言。そう、まごう事無きだるまさんが転んだ――
「いやいやいやちょっと待て! 僕の見た目で子ども扱いしてない!? お前の二回りは年上……いや動いてない。動いてないって! 獣種の反射神経と動体視力は反則――!」
――で、あるが。それに付き合ったルフナは抗議の声を挙げる。砂漠地での重心移動の訓練の筈が全力を出し過ぎだと。対してブーケは一言。軽く笑みを含めながら言葉を紡ぐ。
久しぶりに遊ぶんも楽しいやろ? と。
「ほう……今回は砂漠とはな。昼は灼熱、夜は寒冷……いずれにせよ厳しい環境だ」
照りつける太陽光。しかしそれも今の内だけだとナイジェルは言う。
故に祈る。皆の無事を。鍛錬による不幸なかれと。
「魔種――と言うと呼び声よね。アレは危険だけれどこう返せばいいわ。『うっせぇ死ね!』」
如何なる状況であろうとも聞いてはならない。屈してはならないとリーゼロッテは語る。
かの盗賊王もそう啖呵を切ったのだ。よもや、諸君らに出来ようはずはないだろうと。
「ああこれこれ。人狼ゲームとか如何っすか? 判断力と観察力を養う事が出来るっすよ」
何より面白いっすとイーサンは傭兵団の者らを誘って。
「こーゆーのは欠けた部分より強みを伸ばす方がたのしい。わたし、しってる」
ポワニャールはSPDを投げつけ回復を促しながら訓練場を巡り歩く。
修行と言えば滝であろうとギルバートは言う。そう、滝に打たれるアレ! 正に修行のソレ!
「はーはっはっは! 滝! あったぞ滝!! ほらこのドバっと流れ落ちてる砂とか完全にこの地方特有の滝に違いな、あっやばいこれヤバい奴埋もれる奴アァ――ッ!!」
ギルバァ――トッ!!
強くなるには特訓あるのみ、ティルはその意味をしかと感じていた!
「……と言っても砂漠に放り出されても、何をすればいいんでしょうか……!?」
そうだ、天界で鍛えたあの技を練習しよう! 右ストレートから繰り出すあの技――こうご期待!
「魔種対策ですか、あまり上手くは説明できませんけれども、私は私の出来る事をやりたいと思います!」
言うはライムだ。テントを広げ水を用意し、皆が休める場所作りに専念する。
ローレットは魔種を幾度と撃破した。しかし。
「この前のメルカートは逃がしちゃったんだよね」
もっと力があれば逃がさずに済んだろうかと焔は言う。
篝火を灯して、その前に正座を。見据える炎の先に見出したい――『炎の真理』を、と。
砂漠は視界が悪い。故に昴はゴーグルを身に着けて。
「やぁ。キミもオレと同じ武器? じゃあ、良かったら一緒に訓練しよう。狙うはアレだ」
スナイパーとして同じ装備の者を見つけて。狙うは遠く。普段は違う環境に慣れるべく。
「さて、合同訓練を通して……何か得られるといいのですが」
流れ弾には気を付けて、エルナは負傷者の治癒を行っていく。
救護を通して、治癒術の基礎……あるいはコツ。それらを身に着けていければと。
さぁ今日もトレーニングのお時間ね、と呟くはジェーリーだ。隣にはルシもいて。
「そうだ! ねぇ、お空の戦い方をテーマにってどうかしら?」
「空での戦い……かい? ジェーリーがそれでいいならいいけど、って今すぐ戦うのかい!?」
翼の能力も落ちているルシは些か己を卑下する点がある。しかし訓練は実践あるのみ、とジェーリーに激励され――飛び立つルシ。訓練としての魔法を放つジェーリー。天は束縛せず、ただ輝くのみ。
「お、アンタらが俺の相手をしてくれるのか? なら――いざ勝負だ!!」
同様に槐もまた。傭兵団との実戦訓練に参加する。太刀筋を鋭く、今より上を目指して。
「そこのアンタ。まだ入り立てでしょ? アタシに付き合いなさい。いいから早く」
砂漠と言う環境、サバイバルにはうってつけだとリディアは新米傭兵らしき者の首根っこを掴んで引き摺って行く。本来はインドアの彼女。されど生き残る術の為にと。
照りつける灼熱。素晴らしきかな太陽光――
「危な 危うく武者鎧着込んでくるところだった……」
砂漠で金属鎧は死んでしまう、と醒鳴はため息一つ。さて、装備の具合を確かめるべく手合わせ相手でも探そうか。
「そこのおねーさん!! 僕の毛皮でトリミングしていかない!? ダメ!! わかりました!!」
ポチ!! 元気一杯!! 玉砕!! 撤退!! リトライ!!
「ど、どこか、日陰に……お日様の居ない所に……このままじゃ焼け死んじゃう……」
一方でリズは普通に死にかけていた。水、水が欲しい。冷たいプールを求めたい。
訓練場の一角。所在なさげに巡っているのは九鬼だ。
「訓練といっても、誰かと励むような事はあまりなかったので何をしていいやら……」
ツイてさえいればそれなりに戦える。手合わせ相手でもいないだろうかとおろおろ。
灼熱の砂漠の中に、音楽が流れる。それは軽快なリズムを伴っていた。
あれはなんだ? いや、言わずとも分かろう! そう!!
アランズ・ブートキャンプである!!
\\\Yeah!!!///
「Hey! お前ら準備は良いか? まずはウォームアップからだ……血液を全身の筋肉に送るんだ! おっと、喉が渇いたら我慢をするなよ? 水分補給は大事だ……はい! カウント、ワン・ツー!」
先導するはアラン。音楽に合わせ連動させる全身。それに続くは。
「ひ――! この内容ものすごいハードなんですけれど……! もう汗だくだくです……! 服も透けちゃってますし……!」
シフォリィだ。汗で透ける服。くっ、だが絶妙に見えない!
疲れながらもシェイプアップ! この時の為の体操着を来て努力を続ける。
「ひぇ、あ、あの。やっぱり自分は見てるだけで、はわわわ……いや、ええ! やっぱりやりますよぅ……! こ、これもシュバルツのため! ええ、気持ちを引き締めねば!」
ついでにお腹も! と励むはアマリリスだ。天義の外にはこのような文化もあるのですね……感銘を受けているが、待つんだ。これはきっとアラン文化だ。誤解してはいけない!
「さぁさどうしたそんなんじゃ痩せねぇぞ! 燃える魂・筋肉ギャラクシィ! まだまだ燃えせるぜ……体力も脂肪もよ! 頑張ってこうぜ!!」
そんな背後からアランに合わせて指導を手伝っていくのはプラックだ。参加している者達を追い込んでいくが、彼らの体調も見落とさない。いざと言う時の水分補給の準備は万全だ……!
「ん……んぬぬ……! こっの……! やってやらあああ!」
声に感化され汗だくのアオイが更なるスピードアップを。今回ばかりは魔術に頼る訳にはいかない。
「兄上の催し……ならば俺も参加するしかないだろう!」
「おっ! パパもやる気満々だし、僕も負けないぞー! おじさん主催のキャンプだー!」
そこへリゲルとノーラも参加。過酷な筋トレ。されど、だからこそ意味があるのだと。
この後は傭兵達へ素手での組手を挑んでみたいモノだ。正々堂々と騎士として高らかに。
「アラン君が何かやると聞いて賑やかし……おっと失敬。見物に来てみたんだが」
「ほう。アランのヤツ、中々に面白そうな事をやっているじゃないか」
その時、ノワに汰磨羈がやってきた。半分賑やかしに。半分野次馬で。
熱気は最高潮。音楽のボリュームは全開。迸る汗……やがて音楽が落ち着き始めれば終わりの合図だ。
ワン・ツー・スリ――
VICTORY!!!
「うーん流石ディルク氏! とても太っ腹だネ、ラサを取りまとめる頭目なだけある」
いやむしろそれ以上だネ! と称賛するはイーフォだ。すべきは模擬戦闘。可能ならばバランスのいいトータルファイター、自身と似たタイプの者がいればと貴重な一戦をこの場にて経験す。
「ラサ、ぼく、はじめて。暑くて、干からびそうだね……」
正直苦手、とルルゥは呟く。でもこんな時は『お茶』を飲むのがいいのだとか。
ねこたん印で、やきごてで焼いたお茶、これはロリババアで……あっ、お茶零しちゃった。ひぃ!
訓練場。そこでアイリスは辻呪殺を行っていた……辻呪殺?
「んー……やっぱり何か、もっと付与出来るようになりたいな……」
乱戦の最中撒き散らす負の数々。まだ己には成長の余地があると――思考して。
「全く、この国に来るのも初めでではありませんが……」
鉄帝とは別の方向で過酷な気候ですね、とコーデリアは言う。
仰ぐ天に祈るは民の安寧。天義も傭兵も変わりなし。この修練を通じて数多の脅威を払う力を――と、彼女は祈る。
「ふふ、あぁ……今からどれだけの弟や妹に会えるか楽しみで……ああ弟妹弟妹弟弟妹弟妹妹妹弟妹妹弟妹弟妹妹妹弟弟弟妹妹弟妹妹妹弟妹弟妹弟妹弟妹弟妹弟妹弟妹弟妹弟妹妹妹弟弟妹」
やばい、全ての姉を名乗る龍だ!! 取り押さえろ!!
「基礎訓練、基礎訓練ですよ。継続は力なり、です」
派手な必殺技・緻密な連携も重要な事だが、結局最後には最も積み重ねるべき基礎訓練の厚が物を言うのだとリリアーヌは思考している。決して他の皆がやっているような楽しそうな訓練なんてしたいなーなんて思ってもいませーん。
「こっちに堕ちて来て大分日が経ったけど、いつになったら還れるんだろうねー」
「いつ還れるかなんて僕にも分からないよ……はやく還りたい」
散策しているのはシャウラとスピカだ。想い馳せる過去の記憶。されどどう足掻いてもすぐには還れず。故に訓練だ。シャウラは完全にやる気がないようだが――しっかりと取り行う気のスピカを見て、少しだけだが付き合おうかと思考して。
傭兵たちは味方だ。しかしそれは今の所、の話であって将来は分からない。
「だからこそ――彼らを観察しておくとしよう」
訓練に乗じてシャルロッテが見るは傭兵側の動き。今後の戦略に取り込めれば、と視線を動かす。
「うひょあああー!! トレーニングじゃー!!」
イエース!! フルスロットル!! ハッピーはランニングと鉄アレイとランニングに勤しんでいた!! フルスロットルすぎて身体が動かなくなるのだが、それはもう少し先の話だぜイエーイ!!
「…………はっ? 砂漠でトレーニング……?」
無いっしょ……と低いテンションながらキレ気味なのはリリーだ。
ダルいねむいあついダルいその上自分はディープシー。終了まで貝殻に籠っておくとしよう。これは半分抗議である……! あ、勿論お金と経験値、危険手当は後でもらう。だってそれは権利だもの……!
「いやーうん……やっぱこんな所で訓練なんて無理よ」
ぶっ倒れそうだとミスティルは断言。この地での訓練は流石に無理だと!
「あぁ砂漠……素晴らしきかなこの絶景……むっ、す、砂嵐がこちらに!!」
ここにも一人、場を観察するグリモーがいた。
しかし何の因果か彼を砂嵐が直撃する。細かい粒子が彼の目に……痛い痛い!!
柴山さんグルメ――砂漠編。
敵を知り己を知れば百戦危うからず……故に今回、彼らの生きる環境を知悉する必要がある。砂漠のグルメを見せてもらうとしよう。さぁオアシスの果実をお腹一杯……あれ? 柴山さん、私欲が入ってません?
「せ、精神……統一を……して……集中力を……鍛えようと……」
幽魅が思った矢先、目の前に現れたのは――怖い人、もとい焛である
「もしもーし! おねぇさ~ん? 聞こえてますか――ぁ? 反応なし? うっそでしょ!?」
ちなみに焛に悪意は一切ない。もしかしたら耳が聞こえない人なのだろうかと純粋に思って、しかし分からないので声をかけ続けている次第である。幽魅も段々反応した方がいいのかなと思ってきている次第だが今更声をかけるのも……と。
ああこれぞ悪循環。さて、どちらが先に折れる事やら。
「さばくだー! ひろい! あつい! すながいっぱい! おっきなすなばみたい!」
あながちというかQ.U.U.A.の言は全然間違ってはいない。その通りである。
テンション全開。砂のお城を造ろうと駆け巡り。
「暑い……いや砂漠なんだから当たり前だが……あぁ~……」
「ああ、だが。これだけの砂がある。ならば砂の城を建てるしか、あるまい」
「えっ?」
その近くでリゲルのやる気がどんどん削れていた。暑すぎるぜ……という所でエクスマリアの提案が。砂の城を造る? いや確かに既にQ.U.U.A.が取り掛かっているが……いや砂漠まで来て砂遊び……むしろ面白そうだ。やる気も削がれていた所、丁度いい。小さいモノでも手慰みに――え、巨大なタイプ? マジ?
「――成程。この辺りの気候にはそんな性質があるのね」
モルセラは術指同士での交流を深めていた。こちらの気候、あちらの気候……話す事は幾らでもある。
「お兄ちゃんたち、大丈夫? 暑い砂漠の訓練、大変じゃない? これどうぞすぐ元気になると思うから! お・兄・ちゃ・ん?」
モウトは皆の応援を。劇薬入りのお弁当を用意して皆を元気にする用意は万端だ……え、ん? んっ? あ、これやばいぞ逃げろうわ先回りされ――!!
砂風呂、をご存じだろうか?
熱砂に埋まり汗を放出する事によって健康につなげる一種の――
「これも一つの修行じゃよ。ポチや、皆さんに砂をかけてあげなさい」
さ、さらりと建前を叩きだしてきたな潮よ……! その姿勢、嫌いじゃないぜ!
「う~んこれは中々……脱水症状には気を付けないといけないけどね」
「ふふふ、どうしたのかな傭兵の方々……まさかもうギブアップ?」
同時。ポチに砂を掛けられるはムスティスラーフとクロジンデだ。ムスティスラーフは水をしっかりと用意して、クロジンデはオアシスに依存するラサに負けじと砂風呂合戦。見た目で油断したな傭兵共……!
「ほう。温泉とかじゃない天然の砂風呂とにゃ面白そうなのにゃ!」
と、シュリエは砂風呂に参戦するが思ったより暑いぞこれ……! サボろうと思っていたのに予想外の苦行! 美容にいいとか話はあるが人形の身にはよく考えたら関係ない!
「おおう……こんな感じになるッスか……すごいポカポカするッスね……で、でもそろそろ……と、飛びたい……ッス……」
同様にリョーコもやばい。暑さと共に空中への欲求が、羽根を広げて風を感じたく……!
「さて。仲間の前故に……かっこ悪いのは見せられないのだがな」
シグは傭兵達との実戦訓練を行っていた。近付いくる気配、そこへ己が過冷却集電弾を撒き散らし。
「は~い、お手当てしましょうね~大丈夫、まだなんとかなるわ~」
傷ついた身体はレストが癒す。アルハダ遺跡……先日のミトラの一件を脳裏に思い起こしながらも、今はローレットの者達をと振り返り。
「……どうした。さぁ、何人でも掛かってきな――化物はくたばってねぇぞ?」
口端から吐き落とす血。言うはレイチェル。己を敵であると、化物であると称し――彼女は戦いの手を止めない。強い者と戦い、より強きを目指す為に。
俺は弱いぞと思っているが故に。
「戦神が一騎、茶屋ヶ坂アキナ! 有象無象が赦しても、私の緋剣は赦しはしないわ!」
峰が無いので面でブチ叩くぜ! 秋奈の一閃ここにあり。
「……ふむ。まぁここに来てナイフ投げの腕が訛ってしまった事は確かですし些か勘を取り戻すとしましょうか」
ジャックは指でナイフを弄ぶ。観客を幾人呼びつけて――さぁ華麗なる一時の始まりだと。
「踊り子風の衣装を身に纏うものの……踊りや歌は自信がありません。これでは月の精霊として失格でしょうかっ……!」
ルナはルナリアを撫でまわしながら悲痛な声を挙げる。一方で撫でまわされている猫――もといルナリアは彼女の言葉を全て理解しながら『只の猫』のフリを続けていた。月の精霊なのに踊りの類が苦手とは……人の姿で少し教えてもいいのだが。
「……ま、もう少しだけ傍に居てあげてもいいわね」
ルナには聞こえぬ様に。呟きまだまだ猫のままで――
「あぁ……ダルいなぁ……訓練? 面倒がないのがいいなぁ……」
ミディが行う訓練。面倒は嫌だと、日向ぼっこをすれば当然肌が焼け焦げて、夜になってから外に出れば極寒に身を凍らせて――結局として真面目に体を動かすより体に被害を出していた。ミディ――!!
荒涼の大地、鍛えられし傭兵。集まりしイレギュラーズ……
だがオッターはその輪に加わらない。夕暮れ時、高台の上に時刻を知らせるべく――
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」
大地の果てまで届こうかと言う絶叫が響き渡った。
なんだか精霊種キャンペーンとかいう超単語をどこかで聞いたらしいが
「まるで野菜か……? ならば私は大地と同化しておくから誰か水を撒いてくれ」
おーきくなーれーおーきくなーれ――いや、誰か撒こう? ヴェーゼはちょっと寂しい。
珪化樹には夢があった、それは。
「ラサっちゅうでっけえお国に精霊種をよろしくお願いすることだべ」
これから増えるであろう精霊種。この国の側にも馴染んでいこうと、モンスターの知識を披露して輪に加わってゆく――
「おれっちは出て来たばかり……だからどう動けばいいか、どう戦えばいいかラーニングだぜ!」
リックは意欲全開。見て学ぶ、ローレットのイレギュラーズの戦い方を――!!
「俺は選ばれたっつーけど、ほんとにこんなとこでやってけるんだか……」
周囲の熱気。傭兵団に認められたローレット。
それでもせっかくの機会だとジョンは思考。端から端まで走るついでに見学と行こう。
「うぅ、もう少し薄着にしてこれば良かったかも……?」
初めての砂漠。そして熱さに依狐はやられている。
「あいてのうごきをみて よける。うける。すきをつく――だれか、うんどうにつきあえ」
ガノークは魔種を知らない。故に行うは『運動』だ、と。
サメが砂漠に居る訳ないだろ――
そう嘲笑した傭兵団の一人が、サメに飲み込まれた。
「やっぱりぃぃぃぃわーんサメだぁ!! また出たぁあああ」
前回も雪山で出たサメ! ひょっとしてこの子私の事が好きなのでは? スティアの思考は段々飛んできた……って、現実逃避してる場合ではない! 奴め砂漠を泳いでやがる!!
「スティアちゃんまたサメを召喚して……帰ったらお仕置きだからね!! くっ、以前よりも強くなった私の攻撃を喰らえ――!!」
スティアに抗議しながらサクラが放つ一撃。
しかし! ダメ! このサメ、皮膚が固いのである! こんなのを召喚するとかもう苛烈なるお仕置きが必要だ。
「もしかして、と思ったらやっぱりサメ! これはもう偶然ではないですよね……スティアさん何してるんですか! 逃げる練習ならもっとうまく誘き寄せててください!!」
絶対スティアに取り憑いている。半ばリースリットは確信しながらサメの対処に勤しんで。
「……ほう、珍しいな。こんな砂漠の地にサメが居るとは……サメ?」
アレフが呑まれた――!! うわあああアレフ――!!
「あ、あの影は練達シャーク……馬鹿な! ここは雪山じゃ……水!? もしかして水を持ってたから!? 守……いや逃、ぐぅがああぁ――あああああ――ッ!!」
続けて水を飲んでいた夏子の元へと襲い掛かる。砂漠の中ならばサメは現れないだろうと油断して驕っていたばかりに……! いや夏子は絶対悪くないなこれ!!
「え、と? 気のせいかしらこんな砂漠にサメが……なんで追いかけて来るの!? 私は走るのそんなに得意じゃ……あッ」
続いて不運にも躓いて標的となったエンヴィを一口に。サメの内側が見えるぜ……誰か助けてぇ。
「これ以上はやらせない! とーい、空までとんでいけ――!!」
瞬間。サメの尻尾を掴んだルアナが空へとブン投げる。
が、そこは当然サメである。空中落下モードに切り替えたサメは風に乗って鳥の如くスムーズに地上へと滑空。さすればそこには。
「うわあああ親方! 親方ぁ! 空からサメがあ――ッ!!」
シャルレイスがいた。押し潰す。更にその勢いのまま前進を続けて。
「ほほう、これが噂に聞く、ローレット・トレーニングと共に現れる人喰鮫ですか……興味深いですね。美女とかカップルとか襲われてくれれば序盤の恐怖感の演出としてベタなんですが――」
続いて寛治とその後ろにいたカメラマン・ティーが飲み込まれた。巻き込まんといてぇ!
「うわああちょっと待つっす、サメって海の生物っす! 砂漠は泳がないっす!
初めてラサに来たっすけど、ココって実は海洋とかじゃ」
ラサ式重量盾を構えたジル。しかし決して触れてはならないサメへの正論を語ったからか、巧みに回り込まれ後ろからあーんと。駄目だよサメだよ? 砂漠ぐらい泳げる!
「やれやれ……私はなぜ砂漠にサメが、などと無粋な事はいいませんよ。冷静に考えてはいけません――雪山だろうと砂漠だろうと宇宙だろうと泳ぐのがサメですからね」
流石ヘルモルトだッ適応が速いぜ! どんなサメだろうが結局食材になるのだ問題ない!
「ううーん、何か世界結界にでも守られてて一部の特殊な設定を持ってないと倒せ無さそうなサメだね。スナザメ特攻のスキルとか持ってないしなぁ……」
「ぉぅ さ め ……響く悲鳴と大質量の落下音からして何かと思えば……!!」
「サメねぇ、宇宙サメの時は痛かったわ」
やがて騒ぎを聞きつけて千歳に美咲、アレクシエルも集まって来る。どうするんだよアレ……ひとまず解析などを試みてみるが、スから始まってァで名前が終わる子を狙っているのが分かったぐらいか……一体どこのスティアなんだ……
「いや……なんか思ってたのより数倍凶暴なんですけど……なんで砂の中泳いでるんですかね……」
つい一分ぐらい前は『サメ? 現れたらこの私に任せてくださいよ!』などと言っていたマリナだがもう逃げたい。船で。だめだここ砂漠だった!
「ひっさつアンジュちゃん式みずでっぽー! ぴゅぴゅ~……あ、だめだ聞いてないいわしバリア――!! いわしだから無敵、あいたいたいたい!! 無理無理無理ごめんなさ」
三枚におろす気満々だったアンジュだが駄目だったぜ! バリアも心も折れる音がする……!
「俺の名はクリストファー……山に引き続き砂漠でもサメに出会っちまった不幸な男だ……いや本当。お祓いとかしてもらった方がいいのかな」
「……ありゃサメかい!? こんな水っ気のない場所にいるたぁ根性あるじゃないか!!」
嘆くクリストファー。一方でサメの根性を称えるアーバレスタ。ヴァネッサ(子ロリババア)と共に肉弾戦を挑むぜ! いぇあ!
「砂漠でサメ退治――なんとも、この世界らしいと言いますか……よいしょっと」
それを援護するように鶫の構えた一撃がサメを狙う。
巻き起こる対消滅爆弾。平然と生き残るサメ。嘘ぉん。
「魚は好きだがサメは食べた事が無いな……まぁいい。この場で狩人がどちらなのかはっきりさせようではないか」
黒猫のクロエがサメを睨みつける。魚対猫。
忘れるな、お前は駆られる側だと――今、サメを滅すべく因縁の戦いが始まるッ!
でもなんか滅しても次の個体出てきそうだよね!
折角のラサの場である――傭兵団に対し、訓練として何かしらの勝負を挑む。
「悪くないだろう? 折角の合同訓練なんだ、こういう事は企画していかないとな」
ハロルドは言う。別に勝負自体は何でもいい、極端にはチェスの頭脳戦でもと。
とにもかくにも『傭兵団』との勝負。で、あればとゴドフリートは稽古相手にと。
「『面』を先に当てた方の勝ち、と言うのは如何であろうか」
稽古用の得物を用いた同条件武具・同条件勝利の訓練をと提案すれば。
「折角ラサの傭兵団が訓練に付き合ってくれるって言うなら……利用しない手はねぇな」
「名にし負うラサ傭兵団と共に訓練とは僥倖です! 此度は色々と学ばせて頂きたいと思います!」
シュバルツもこの機会にとラサの者達との手合わせを望み、ルル家は自身と同じ型の者を求む。よしんば、同じ型の者がいてもいなくても新たに手に入れた『殲滅兵装』の運用に慣れる事が出来れば――と思考しながら。
「ラサの傭兵か……依然、鉄帝の仕事で兵士崩れとやり合ったことはあるが」
正規の訓練を受けた戦士とはこれが初だと義弘は言葉を。
「あの蠍を一端壊滅に追い込んだのはラサという話だった筈……」
ラサの、恐らく全盛だった頃の蠍を叩き潰した集団。それらと手合わせできるとは――舞花にとっては願ったり叶ったりだ。蠍は壊滅したが、それでも危険な存在はまだいるのだから。例えば――そう、先日の『死牡丹』など。
「なるだけ身軽な相手が望ましいな。いれば、だが」
大地が望むは懐に入り込むのが得意な者。苦手な分野を克服するために。
場合によってはそろそろ接近者用の技能を磨くべきだろうかと――赤羽は考えもするが。
「ちょっと回避には自信、あるんだ……何人か攻撃してもらっても、いいかな?」
対してコゼットは集中攻撃される事をこそ望む。得意分野をさらに磨くために。
流石に十も二十もは躱せないが……ある程度の者達が協力してくれればと。
「さあ、どんどんかかってこーい! オレはまだまだいけるぞ――!」
洸汰は打ち込み稽古に励んでいた。固めた防御は早々崩れそうになく。
「回復役の後衛としての立ち回りを勉強させてください。よろしくおねがいします!」
次いでマルクだ。回復役は狙われやすい立場……故に、狙われながらも受けながらも仕事を果たす為の訓練を求む。例え眼前に悪魔がいようとも、一歩も引かない勇気の訓練をと。
「はっは――! 暫く森に籠ってたら面白い事になってるじゃねーの! 俺の二丁流、見て行きな!」
「よーし霊魂達いくっす! あの的に恨みをぶつけるっすよ!」
ロスクレイに浩美は傭兵達と射撃戦だ。銃撃戦で負ける訳にはいかぬとロスクレイ。
的当ての素早さと正確さを磨かんとする浩美――いずれも負けられぬと気概充分。
「魔種ってのは異常な力と異常な動きをするものにゴザル……つまり、そう! アンブッシュでゴザル!! 魔種が正々堂々殴ってくると思ったら間違いなのでゴザルよ――! キョエ――!!」
あ、あれはなんだ! 鳥か! UFOか! いや怪鳥音を発しながら天より襲い来るデスレインだ!! 彼女は盛大に――着地失敗、ぐぇっ。
瞬間、高台の上にもう一人。
取り出すはスマホ。扱うは変身アプリ。輝く光。纏う光筋――
ポーズを取ったフェスタは高らかに宣言する、変身ッ!
「――実戦じゃゆっくりしてられないと思うし、一度思いっきりやってみたかったの!」
ドヤ顔全開。こういう機会だからこそと! 各々望むべくの訓練に励む。
『F●●kin'Hot!!』
瞬間。おっと母国語が、と憎い程に輝く太陽の下で大声を上げたのはジェームズだ。なんで私はこんな砂漠でマラソンをしているのだろうか? なぜわざわざマラソンだったのだろうか? 謎は尽きないが走るんだジェームズ!
そう。訓練と言えばマラソンだ! 皆で汗を流すんだ!
「実際足腰、つまり下半身の訓練に最適だ。銃を狙って打つには、土台もしっかりさせないとな」
と、ジェイクは言う……ちょっと待ってなんで馬車を用意してロリババアのダリアを乗せて馬の代わりに馬車を引いてるの!? 嘘でしょ訓練にしてもやばいよぉ!!
「……ラサ出身ではあるがここまで多人数での砂漠行軍経験は無いからな」
貴重な経験ではあるとラダは言う。交易の歩みとも違う、砂漠の行軍――
さて突然の脱落者が出なければよいが。砂漠対策は完備に、行軍の後方に着くとしよう。
「体力はつけておかなくちゃ、ね……いざと言う時あと一歩が足りないだなんて影響しないように」
アクアも別に一歩も動かないような生活をしている訳ではない。だが毎日十分に体を動かしているか――と言われると話は別だ。故にこういう機会はありがたいと呟いて。
『俺達魔術系だけど、基礎体力ぐらいはつけておかないとな! ド派手に特訓だぜ!!』
ありがた迷惑だええいくそう。と、Starsは愚痴りながらもヤケでやる。一通りの準備運動を済ませてから完走を目標に。ところでゴールはどこだろう。
「砂地でのトレーニングと言えばやはり走り込みじゃな! ……ただ思うんじゃが、いくら何でも暑すぎるし、そもそもこのマラソンいつまで続くんじゃろうか?」
同時。よくよく思い出すとゴールの話をされていなかった気がする、と華鈴は段々と不安がこみ上げる。お、終わりは。終わり所はどこで見出せば……!?
「えっ? マラソンって足で走らなきゃ意味無いんすか、マジで! マジか!」
むしろマラソンをなんだと思っているのだフェアリ! 試しに飛行から歩行へと切り替えて走ってみたが……駄目だ秒で諦めた! そして秒で応援モードに切り替えた! 早い、早いぞ判断が!
「ふふ、足元を失礼します……! こういう時は猫の姿が便利ですね……!」
マラソンの最中、猫の姿でセレネが駆け抜ける。小さい体で各々の間を。
――しかしうっかりすれば踏まれてしまいそうだ。気を付け気を付けすり抜ける。
「はぁ……陽射しが強いのは海の上でもそうですがー周りを見回しても水がない、というのは、ちょっと憂鬱な気分になりますわねー」
メリルナートは些かだけげんなりと。だがボイコットするほどではなく。傭兵団から聞いた走り込みのコツを意識しながら砂漠を駆けて。
「ふぅ、ふぅ……頑張って体力をつけないと……! もう少し、もう少し……!」
アレクシアは走る。息を切らしながらも、無理をしないペースで。
彼女は体が弱い方だ。だが、それで迷惑はかけていられないと――克服すべく前を見据える。
「……普通の訓練にしていた方が良かったかも。これ、結構きついわ……」
後悔先に立たず。走り続けるアンナだが、段々と心が折れそうになってきた。
同時。砂ってこんなに走り辛いの? とセフィも辛げだ。彼女は先往く栞の後を続いているが、栞は栞で。
「今回『普段戦闘で身に付けている装備一式の状態でオアシス周囲をマラソン』はどうかと思いまして」
どうかしてると思います。確かにその重装備はとても訓練になりそうだが……!
「さーてなにもドンパツやるだけが能じゃねぇしな!」
そしてここにもフル装備のマラソンランナーが一人。ラーテだ。
「砂漠マラソンは初めてですがこれも良いトレーニングですね」
「ああ。だが、無理はするな、イージアよ。いつでも休んで良いのだからな」
身体を壊しては元も子も無しと、エリシアはイージアへと声を掛けながら共に往く。
芒は基本的に『訓練』をしない。厳密には人殺しをする為の訓練など変態と考えるからだ。
「殺しに一番必要なのは何時何処で狙うかなんだよ。ま、体力は重要だけどね」
故に殺しも戦いも一切関係ないこのマラソンに参加した。では地獄の砂漠での超距離へと行くとしよう。
「あぁ、前を走ってる人達が皆、二人に分身してみえる……」
いかんいかんニーニアに危険な兆候だ。配達員として著距離飛行は慣れていても、このような環境下のこのようなマラソンには流石に慣れていなかったか……!
「ハッ、ハッ……走ってる内に、なんだか楽しくなってきたかも!」
「フフッ、走りきったらポーに何かご褒美をあげ……わぁっ!」
二人で走っているのはノースポールとルチアーノだ――が、その時。ルチアーノの足がもつれて砂に転ぶ。体力を使い切っていたからだ。それでも弱音は吐かず、卑怯な手も付かず――ノースポールと共に在る為に。
駆けよる彼女、ご褒美はまた完走してからだねと二人して笑顔で再び駆け抜ける。
いきますよっ、ツクモさん!
頑張りましょう! えいおーです!
……シンジュゥとツクモは二人してそう激励し合ったのだが――
「ふ、普通の道で、ぜん、全然だ、めだったのに、さばく、で、はひ、走れるわけがありませ……ツクモさん、『俺』を、おいて先にうわああああ」
「し、シンジュゥさま――!!?」
シンジュゥの方が明らかに先に宜しくないレベルの息切れを起こしていた。その上滑って転んで。
「少し休みましょう! ちょっとくらいだったら平気ですよ――!」
ツクモが慌てて駆け寄る。ああ直射日光が眩しい……
前回のトレーニングでは身体を鍛えた。ならば次は?
「つぎは……そう、おもてなしの心です!」
メイドモードたるココロは四方八方を駆け巡る。水を、治療箱を、目的地を指差し。あちらこちらそちらこちらを猛ダッシュだ!
「まさか……砂漠でマラソン……とは……人生色々あるものですわね……」
お水が切れてたらどうなるんでしょうとヴァレーリヤは不安げだ。漏れてないよね?
「運動は大事ですもんね……精一杯頑張ります……!」
飲み物をしっかりと確保したシリル……されど足りるのかはちょっと不安だ。
「ん? 勝負? 負けた方がメシを奢り? 好きだね……いや俺は構わんが」
自らの持久力を知ってて言うのか――とリオネルは妹分のヒィロへと視線を。
負けん気が強いというかなんというか。
「団長さん、最後まで元気だった方が勝ちね! どっちも元気だったら……先に進んでた方!」
よーいどん! と、直後に砂に足を取られながらもヒィロは前を向く。大丈夫だろうか、へとへとにならないだろうか。勝負の行方は如何様に――か。
「マラソンなぁ……あん時は何Km走ったっけか……んっ? 待てそもそもどんだけ走るんだこれ?」
もしかして距離決めてねー奴かと要は気付くが、むしろ燃えてきた。師匠に嫌と言う程鍛えられた足腰の強さ……今こそ見せつける時! ただし水分補給はさせてくれ! 頼むから!
「こう見えてもわたし足速いんだよ! カタツムリより速い! その上もやしより持久力があるああああ砂漠トカゲだぁ! 待て砂漠トカゲ! とっ捕まえて食べてやる! 今日のおかずはトカゲ、お前だ!! みんな! トカゲだよ見てみて皆、あれ皆どこ? ここはどこ?」
ロク氏、順調に遭難!!
「特異点として召したは良いが己の弱さを感じるな……」
黒い外套を身にまとい、颯太は駆ける。まだ見ぬ未来を思い浮かべながら――あっ、すっ転んだ。おおっと、道中には干乾びているタヌキ、もとい文もいるぞ!
「さぁ、あともう少し……ゴールは近い、頑張ろうぜ! 相棒!」
そんなバテている者達に声を掛ける織。背中の羽は出さず頼らず。
皆と共に走り抜ける。声を掛け、一緒に付き添って。全ては気持ちと共に。
「フハハハハ、フッハ――! 走るのは得意だ任せろ走るぞ走るぞフハハハ!! フハ、ハ、ハハ……まだ、まだか? ええいこのトレーニングは終わったら私もガソリンで走れるようにお願いしよう!」
駆け抜ける馬! もといトルハ! しかしある地点で急速にダウン。長距離仕様ではないのです。しかしガソリンとは一体何のことを指したのか? そう、それは。
「今大会の狙いとしては……僕達イレギュラーズは砂漠地帯での活動経験が非常に乏しいと言わざるを得ません。故に日中の行軍を想定した、傭兵団との非戦闘マラソンを行う事で砂上に慣れて頂こう、というものであります」
その為皆さん、まずは完走を目指しましょう! とアルプスは言う。足並みは自身も揃えると。アクセルを開けるのは依頼で必要な時だけだと……! 前回か前々回か跳ねてませんでした?
「――よぉし者共集まったな! おめえらをキッチリ一つ上まで引っ張ってやるぜ!」
そして訓練場の一角、そこにいるのはグドルフ――と馴染みの傭兵達だ。太った体格のハンマー持ちの男や、毒入りのナイフを舐めてぶっ倒れている傭兵など……グドルフには知古の者がいる。彼らと共に演習を主導して。
「っかー! しっかたねえなー! 参加すっかー! 気乗りしないんだけどなー!
グドルフがな――!! 山賊のおっさんが寂しがるからな――!! かっ――!!」
テメェ何言ってやがる!! とグドルフはキドーに抗議を。冗談はともあれ、とこれで彼の所に参加するのも三回目か……今回は砂漠環境下のサバイバルにでも励もうかと思考しながら。
「ま、割と恒例になってきてるわけだが……そうだなぁアタシも鈍らないうちに鍛錬しておくかぁ」
「いやぁ今回も人が多いな! 多いとワクワクするぜ!」
続いてシルヴィアも。砂漠地帯での戦い方を覚えんと、傭兵達に教えを求めて。
アーサーも手合わせ相手を求めて訓練場へと足を踏み入れ。
「ふぁ~あぁ……っと、話はもう少し続きそうかな……」
「懐かしい……仕事で目標探しに何日も砂漠を彷徨いたっけ……うっ頭が」
グドルフの話をなんとか欠伸を噛み殺しながらリュンクスは聞いて。その隣、マカライトは突如訪れる頭痛に額を抑える。うう、遭難は良い思い出ではない……
「依頼は何個かこなしてきたけど……慣れてきた頃が一番肝心って言うし丁度いい機会かな」
「わしゃこうなるまで松の木の下でじっと座っとってたから、こんなん催しはえらい有難い事で」
シャルティエにハールーンもこれは良い機会だと訓練に励んで。
「まさか故郷で合同演習があるなんて、ねェ……
ま、どっちかと言ったら絶妙なタイミングを狙う流石ラサって所かしら?」
故郷の地を踏みしめて、リノは利益逃さぬ目聡いラサの思惑に感嘆す。
「うーん、熱い砂漠の中で聞こえる呪いの怨嗟の幻聴が……まるで原罪の呼び声みたいで抗うのに苦労しそうっすね」
呪い塗れの数多と共にレッドは装備品を傭兵達に提示……ひぃ! なんてアクセサリーの数々だ! 呪いのアイテムだけで充満させている……やめて近付けないで!!
「うっし、なんとか捕まえてみたぞ――ほら砂漠の食糧だ」
「食料になる生き物とかいるのか……ヘビ!? ヘビはダメなんだ!」
「毒蛇? ふぅーん、焼いて食べたら美味しかったりしますかね……ひひっ」
そうして始まるサバイバルや演習。マグナはサバイバル術として砂漠の生き物の捕獲をまずは。
さすれば蛇を恐れるモモカ。対して食せるのならば、と興味ありげなのはエマだ。
「まぁ、多分頭落として毒除ければ大丈夫なのかな。火を通せば無力化出来るだろう多分。
……どっちかと言うと問題は味だな。蛇とは一体どんな肉質なのか……」
「ああ、まぁ……グドルフ先生も言ってたけど蛇は頭落とせば大体食べられるよ……勿論混沌故の未知生物蛇とかでない限り、の話になるけれど」
そしてポテトが捉えた蛇を捌きながら数多の調味を施す。果たしてどれが合うのかと。タレがなければ塩でも振ってみる? と提案するのは威降だ。蛇によく似た未知の蛇出ないことを祈りながら。
「ほう? 蛇は頭をもいでとな? ふんッ!!
むっ! 成程血も良く出るし、水筒と弁当が同時に来たようなものであるな! いただきま」
豪快過ぎるぞ百合子ォ!! 素手で蛇を引きちぎる音が聞こえる。び、美少女……!
「蛇~~!! 蛇、蛇はちょっと……! グドルフおじさま~~!!」
街で花を売るだけではダメだと聞いて、サバイバルに参加したアニーだが……蛇をも食べる環境には流石にすぐさま慣れそうにはない。水や、サボテンと言った食料の確保で頑張るべきか……!
「――私が今まで遭遇した魔種は二体。取り逃がしているのだけど……特徴に見覚えは?」
綾女はラサの者達と話をしながら魔種の事を語る。
逃がしてしまった個体、情報を伝えるだけでも――存分に意味があろうと思考して。
「効率のいい、砂漠でのサバイバル技術……ラサの傭兵からこの機会に学びたいね!」
或いは格闘とナイフの組み合わせ技術を、と思うのは真だ。
召喚前の強い自分に……いや、むしろ召喚前よりも強くなることを目指して!
「オーホッホッホ! 砂漠! ならば私がする事はただ一つ――掘削ですわ!」
ラサを採掘しつくせとリアナの心が叫ぶ! 目指すぜ地下水脈一攫千金!! 見よこのドリルを!
しかしそんな砂だらけの地でも生きている植物もある。
水分の少ない地でも懸命に生きる命……リディアはその一つを見つけて。
「――頑張って生きてね」
伝える思い。どこまでも、真心を込めて。
「ふむ……イレギュラーズとなった今、既に身を投じている者達の戦い方を観るのは重要だろう」
「そうですね、見るという行為からも戦闘方法を学ぶことが出来ます。」
だからこそ今回の訓練は『見』に徹するとアマダスは呟いて。同様にランドルフも。
さればソフィアは己に変装を施して場を見て回る。魔種が身を変えて紛れ込むことが無いとは限らない……見る事も訓練、見破る事も訓練になるだろうと。
「ふむ。折角ならばラサ式の組技がどのようなものか学んでみたいですね」
響子は言う。傭兵団の者と組手を、彼らが如何様に動くか見てみたいと。
無論こちらは教わる身。挨拶の礼儀は忘れぬ様にと――務めながら。
「手加減は無用だよ、オイラも全力でいくから! チャンスは逃さないよ!」
「皆に負けないくらい頑張れば、鳴ももっと強くなれるはずなの――!」
「お手合わせ、よろしくお願い致します」
次いでチャロロと鳴、そして統も。加減抜き、全力を持って相手とぶつかって。
同時にそれを援護する形でブレイヴェストの射撃が行われる。ターゲット、撃破。
『手の込んだ手抜き』……人、それをサボりと言う。
「……いやいや待ってくださいよ。私はサボるなんて一言も言ってません。これは最小限の動きで最大限の効果を発揮する訓練で――」
戦う時に無駄な動きを省いて効率よくあれそれするのだと魔王は言を。
「過酷環境下でのサバイバル……というものに関しては、吾輩には無用のものであるな」
然らば演習の方に力を入れたい所存、とアイは言う。ただただ純粋な力がぶつかり合う場……そこでこそ困難に立ち向かい、悪意へ抵抗する力を得られるやもしれぬと。
戦いと言うのは何も地上でだけ行われるものではない。そう。
「さあさやってきましたロレトレ! 今回は傭兵との合同演習――かつ、空戦!!」
空を飛ぶ。飛行種たるティスルは空で立ち回り訓練を行っていた。
いや彼女だけではない。他にも空を飛んで戦っている者達がいる、例えば。
「魔種が空を飛ばないとは言えない。対処法は考えておくべきだろう。こういった機会を通してな」
「空なら俺の領域だな! ……って思ったけど他の奴も結構飛んでるな!」
こりゃ負けられねーな! とカイトは意気揚々。ェクセレリァスと共に派手に空中戦を行って。
「空からの攻撃精度も、確認したいですし、お互いの訓練になるのは、とても有意義です。
今日は、よろしくお願いします、ね?」
閠は傭兵にもローレットの皆にも丁寧に挨拶を。その後空へと飛び立ち、まずは攻撃の回避に慣れようとして。その後攻撃の練習へと移っていく。
「見てるノ? したいノ? 飛びたいの!!」
そんな中ミミはこちらを興味深そうに見ている輩を――空へと掻っ攫った。
空へ興味があるのか? 宜しいならば招待しよう! さぁ風を味わおう皆!
「魔種との対策に空中戦とか中々シャレてるじゃない! 滅多にない機会だし全力で行かせてもらうわ!」
「さて……また来てしまいましたね、ローレットトレーニング……ふふ、でも今回の私は一味違いますよ……! あ、でも接近戦はだめ! きゃ――! 来ないで――!!」
言うはエレンシアとフォルテシアだ。エレンシアは空で近接の技術を磨き、フォルテシアは不吉なる要素をばら撒く回復しないヒーラーとしての立ち回りを行っていた。一通り終われば下に降りてみようかと思案して。
「ぶはははっ、気持ち良く突っ込めると思ったか? させねぇよ!」
傭兵らとの訓練。その最前線にいるのはゴリョウと、その肩に乗るノリアだ。
互いに互いを援護して。ノリアの反撃で相手を傷つけ、その許容量を超えればゴリョウの防御能力が相手の攻撃を阻む。通じ合いしは心か――見事な連携だ。
「ラサの皆はおひさー! そして砂蠍の時はお疲れ様っ! 今日はしっかりやってこ!
……って、あ! アレ親父ンとこの人達じゃん!?」
訓練の最中、知り合いの集団を見つけるミルヴィ。ならば目標変更だ。狙うは父のラルフ。
全力攻撃で狙いを穿つ――!
「遂に始まりましたローレットトレーニング!
司会進行は司書さんがやるみたいですよー! わーわー! ひゅー! ひゅー!」
三角旗ふりふり。利香は傭兵の皆へと歓声を飛ばす……!
応援の声が飛ぶ事を悪く思う者などいない。歓声を受け、傭兵達も眼前の相手に全力を――尽くそうとしたところで歓声がいきなり攻撃に変わった。内側に潜り込んだ利香がいきなり敵へと転じたのだ……! ひ、ひどい! なんて酷い策略だ!!
「酷い? ご冗談を、いつ私が司会進行だけと言ったかしら?」
そちらが思いこんだだけだろう――思い込みと言うのが戦場においては致命に繋がるのだ。と、司会進行の様な体を取っていたイーリンも参戦する。半ば嫌がらせに近い策ではあるが、これはあくまで想定外の事態への対処訓練が主眼の為。傭兵らに持ちしは敬意だ。敬意があるからこそ全力で騙したのだ。そしてその動きに呼応して天十里も動く。
動きが乱れている者を狙って強襲。暗く輝く光の一閃――彼が狙って相手を穿つ。
「おーおー、イーリン達ったら悪辣なんだから」
「戦場で油断は禁物デスからねぇ、今回はちょっと特殊例デスけれどぉ」
そんな様子をレイヴンは天より、美弥妃は近くから見据える。しかし事が始まったのならば自分も動くべきかと思い、レイヴンは急降下。美弥妃は負の要素を撒き散らし――戦場への参戦する。同時。ウィートラントのマジックロープによる行動阻害も傭兵の動きを縛れば。
「おいで、おいで、みんなおいで――我と遊ぼう?」
天より降り注ぐ攻撃の中、武器商人はその最中にて平然と揺らいでいる。攻撃を受けても倒れることなく、幾度も幾度も立てるのだからと。――我(アタシ)はしぶといモノだから、と。されば武器商人と共にユーも連携する形で動く。魂還光刃……彼独自の光の刃にて相手を狙い。
「いっくよーみんな! 『すてるすあたっく』だ――!」
そんな中、リリーは動物達に紛れてその中から攻撃を行おうと試みて。
「おおっとっとと……一度始まると派手だな動きが……!」
「やれやれ、イーリン殿~今回はこっち側での参加でござるが、よろしく頼むでござるよ~」
オリーブは他参加者の行動に対して大騒ぎ。こっそりと傭兵側の布陣に混ざりながら。与一はイーリン達に挨拶の言を飛ばしながら――傭兵側の支援として射撃を放つ。混乱に対し、収束のアドバイスの声も飛ばして。
「わぁ……皆真面目だ……軽い嫌がらせしか考えてなかった……」
思わず目を閉じるランドウェラ。しかし己も今更引く訳にはいかない……近場の者に魔手対策の言と言う事で話しかけ――ている最中に衝撃波を見舞う。話して終わりな訳はないだろう?
「うーじゃす! あ、えっと。うぅう、嫌がらせとかできないのです……」
しかしレニンスカヤは素直だ。水とかパンとか渡しつつも、特に何か変なモノを仕込む様子はない。
しかし魔種との戦いは最悪を想定する必要がある。いっその事、非常に不利な条件を仮定してただ。
「――さぁ僕の居場所を見つけ出して捕まえる事が出来ますか?」
幻は告げる。これが実践ならば――と。
「さて、っとじゃあちょいとばかし、やらせてもらうかな」
そしてアトが準備するは少し離れた廃墟の中だ。こちらに来るであろう傭兵達を待ち構えて罠を施す。中がある程度見えるという事を利用して、あらゆる罠を施すのだ。
――何度となく言うが砂漠は過酷な環境だ。だからこそ精神鍛錬のし甲斐がある。しかしいたずらに根性論を振りかざしても意味がない。人類の、先人の偉大なる知恵を借りるのだ。そう。
「例えばこの酒場。屋根は暑さ寒さを克服して、充満する飲み物や料理も自然の克服の証。そして人との関りに最も欠かせないコミュニケーションを行う場として酒場は適切だと思う。つまり何が言いたいかと言うと――これ、がちめにぱない修行だから」
だから皆かんぱーい。とオレンジジュースを掲げて言うのはセティアだ――って、や、やりやがった! 理屈を付けて酒盛りタイムを開催した!! これどう見ても修行と言うか只の飲み会……ああ唐揚げにレモンを!!
「ははは……今回もタフな鍛錬になりそうだね……? あ。俺はエールを――って、ほら取ってあげるからこっちでレモンかけなよセティア」
「俺ミルクで……て誰だよもう唐揚げにレモンかけたの!! セティアか!!」
がちめにぱない修行に行人とシラスも参加だ。がちめにぱない人のがちめにぱない言に乗せられた訳ではない。なぜなら仲間達と一緒に初対面のラサの傭兵たちと語らうのは、がちめにぱない修行なのだから。
「ふむ……確かにセティアさんの仰ることも一理ありますね」
「マジな話、命がけのお仕事を行う上で重要となるのは、仲間との連携じゃからな! 初めて会う人だから云々と言って引き下がっているようでは、中々難しいと思うのじゃよ、うむ……うむ、そう考えると割とまともな精神痰なきがしてきたのぅ?」
そしてエリーナとルアもセティアに同調してこの場に参加を。精神鍛錬精神鍛錬!
「美味い! 外で頑張ってる皆を見ながら飲む酒は格別だなあ!! え、いやサボってる訳じゃあないんだ……これは砂漠と言う環境下でアルコールを摂取する耐性訓練だから」
「上手いことこじつけて楽をしおって……でも余、そういうの大好き」
冥利め、ぬかしおるわ! エンヤス公も完全にお酒入ってますねくそ、楽しそうだ!
「しかしラサのお酒も楽しみですね。皆様色々飲まれていますが……」
「……何か飲まれますかメェ……?」
周囲を伺うガヴィに、貴方をイメージしたオリジナルカクテルを作りますメェと言葉を繋ぐムー。ひたすらに振るうシェイカー作り出されるカクテル。ああ落ち着く……
そして酒を飲めば会話も弾むもの。咲耶もまたサボ……もとい交流を深めようとして。
「そう、あれは幻想の廃要塞での事……と、むむ!? この料理、酒に合うでござるな!」
なんでござるかこれ!? ラサの名物!? と目を輝かせる。
「……ふむ……酒場で飲んで騒ぐのが精神鍛錬になるのか……」
祭事の様なものか……とニーナは言を。いや違うと思います。でもとりあえずお酒を一口……あっ!
「にゃはー! 気分がいいのら~人の子らよ~!! 愛しいぞ~!」
お酒を飲んだら人格が変わった! 絡み酒だ逃げろ! 歌い始めたぞ!
「あー来年ならお酒飲めるんだけどなー今年はまだジュースだねーりんごがいいな」
「あはは……でも飲めても命にかかわるから無茶はほどほどにね?」
ステラの若干不満げな声。まぁ仕方ない来年まで待とう、という意にミシャは気を付けるように声を掛ければ。
\きらめけ!/
\ぼくらの!/
\\\タント様!///
「――は! ラサでの素晴らしき精神鍛錬に勤しみますわ――!!」
今日も眩しいぜタント様!! セティアと並んでオレンジジュースずびー。
「全く……セティアちゃんも、えらい風変わりな訓練を思いついたもんやねぇ」
まぁこれも訓練の内の一つやろうかと蜻蛉は言葉を呟いて。
砂漠の環境に脱水症状などが起こるはそう珍しい事ではない。だからこそ。
「今回は裏方として皆のフォローに回るとしよう……吾輩としてもその方がありがたいからな」
「ええと。皆と一緒に効率のいい支援とかお勉強できたらなって。よろしくなの」
救護班に回る者もいる。例えばグレイシアもその一人だ。皆を支援しようと思い駆けつけた結乃と共にテントにて。ここも意味は些か異なるが――忙しさでは戦場の一角である。
「皆さん元気に励んじゃってまあまあ」
「回復薬は経費で落ちるからおっけーなのです――あ、領収書はローレット宛てで」
ヨロシクなのです、とミミは言葉を告げ。皆の様子をサボ、もとい観察するのはオーガスト。前回、前々回と頑張ったのだ今回ぐらいはサボ、もとい観察に徹してもいいでしょう?
「荷物置き場は私の後ろで受付をしてから。飲料は救護受付の隣、その隣で食料提供を」
「さぁさぁ! しっかり休んで、しっかり訓練に励んでくれたまえ! ……なんてね!」
そして京司はテントへの誘導係を務め、レンジーもまた声を掛けて水分とミネラルの準備を整える。それから、昼と夜の寒暖差も怖いのが砂漠だ。後は毛布と暖房の用意もしておくべきだろうかと思案しながら。
『灰燼に遍く満ちる愛の白光! 魔法少女インフィニティハート、ここに見参!』
出た! 魔法少女の愛さんだ!! 彼女はその名の通り愛に満ちた心で倒れた者を救って……おいやめろ魔砲の構えを取るんじゃない! 確かにそっちは岩場とかの障害物があるけど、あっ――!!
「ったく元気だねぇ皆の衆。まぁそれでこそ救護のし甲斐もあるけどよ!」
口端を上げて、ヨシトは叫ぶ。待つだけが救護の責務に非ず。むしろ彼は積極的に、救護の必要がありそうな者の元へと駆け寄るのだ。ヴルノエも壺に水を入れて足腰を鍛えながら見回りをして。
「雪山の次は砂漠でのトレーニング……イレギュラーズって大変だねー、ほんと」
そして水を運んでいるのはフランもだ。水が入用の者はいませんかと声を発しながら砂漠を練り歩く。
「お疲れ様デス〜。ハイ、お水と一緒に塩も摂るんダヨ〜」
「まーったく、大規模なトレーニングをおっぱじめるって言われた時点で察していた事なんだけどさ……えらい無茶するヤツが多過ぎねーか、ほんと」
嘴は水と共に塩を皆に配り、イーディスは次々と訪れる救護者に顔をしかめる。
……いやまぁ事の意味は分かっているのだ。本気でなければ訓練にならない。ましてや相手が魔種と想定すれば。だからこそ度合いの酷い者から優先に己が責務を成していく。
「出来上がり……はい、いってらっしゃいませ」
同時。治療中に破損した武具の修理を行うはトゥヨウだ。
手に馴染んだ物の確かな再現を行おうと、手先に気を付け取り扱っていく。
「これが……砂漠……おおよそ生きるに適した環境とは思えないのですが……まぁとにかく合同訓練と言う事なら準備ばんた――ばんた――」
「ん? 準備万端? 珠緒さん――ってえぇぇええ!? 珠緒さん倒れてるわよ、きゅ、救護班――!!」
おおっと向こうでは熱中症でぶっ倒れつつある珠緒と蛍で騒がしい。
しかしこんな時の為の救護班だ……! テントー! テント――!
「……いやー若いっていいね……とてもあんな無茶出来そうにないよ」
テントを作り上げたカティアは砂漠の中で動く皆を見据える。砂漠で行軍など、いや、ほんと無理である!
しかしイースリーにはこの環境に喜びがあった。イースリーの世界にも荒野や砂漠が広がっており、それ自体が懐かしくあるが……その上でなんともはや『人類』がいる喜びに、心が満ちている。
「――その命を、健康をお守りします」
水分とミネラルを用意して、皆を救おう。
「トコロデ ゴシュジン コノ コナジョウノモノハ ナンデショウ」
「ああ、それ? 水に入れて溶かすと、いろんな味になるやつだよー」
正宗くん2号と共にコリーヌは適度に冷やした水を皆に提供。ノミニニクナリマセンカと正宗くんは不安げだが大丈夫大丈夫糖分も必要だ!
「よしよしミモザ、頑張ったら後で大好きなちぎれたベルトを一杯あげますからね」
もう少し頑張りましょう。と相棒のロリババアのミモザに告げるはラクリマだ。怪我人を運びながら、彼は回復技能を使用し続けている。あ、あ! 救助者のベルトが噛まれて!
――ローレットの力とは転機に在り。限られた状況での手札で如何に打破するか。
それに優れている……故に、傭兵諸君よ。
「大喜利大会をやりましょうッ!!」
どうしてそうなった! ヨハナ――! ヨハナ・ゲールマン・ハラタァ!! こら――! 傭兵達もノリノリで拍手喝采してるんじゃなーい! 後で怒られるぞ皆――!!
「無視しますね! では一問目は『闇市』……皆様は闇市の商人です。お客様に商品を売り込んでください。そうしたら私が『でもお高いんでしょ?』と訊くので、続けて返してください。お、早かったレナードさん」
「よし一番手だ! 見てってくれ、俺が売ってるのは幸運を呼ぶ壺だぜ!」
でもお高いんでしょ?
「そうだよ! 実は幸運を呼ぶなんて嘘! 本当は『ただの』壺なんだ!」
ほほー無料とかけましたか! 上手いね、座布団一枚! はい、ダークネスさん。
「こちらはどの様な強固な盾をも貫く槍。こちらはどの様な鋭利な槍をも防ぐ盾である!」
でもお高いんでしょう?
「実演にて試しを行った結果、貫かれた盾と折れた槍になってしまった! いや性能は本物だったのだがな――値が付かなくなってしまった!」
そら値が付かなくなるよ!! むっ、手を挙げてるそこのジョセフさん!
「さあさ、皆様ご覧あれ! こちらは力強く勇ましく生気漲る牡の軍馬4頭のセットにごさいます。罪人の四肢に綱を結わえ付け、引かせて走ればひと息に引き裂いてしまいそうな力強さで御座いましょう」
でもお高いんでしょう?
「いえいえご心配なく。『分割』払いにも対応しておりますので」
おお! 人も支払いも分割出来るとはサービスがいいねぇ! では最後に主人=公さん!
「どうだいお客さん、こちらの福袋! 10品セットで1品おまけがついてくるよ!」
でもお高いんでしょう?
「ローレットのお客さんは財布が空になるまで買っていくほどのお買い得品だよ!」
やめてあげて! 精神にダメージが入る人がいる!! で、では二問目に行きましょう!
二問目は『決着!』
ついに決着がつきました。皆様はなにが決着したかを教えてください。そうしたらですね『どっちが勝ったんだ?』と訊くので、続けて返してください。おっ、リュグナーさん。
「ついに海洋の二大勢力、ソルベ派とイザベラ派の紛争に決着がついたようだな」
どっちが勝ったんだ?
「どうやら名の三文字目に『べ』がついてる方が勝ったとの噂だ」
成程! って、やっぱりそれはどっちなんだよ! さ、繰子さん。
「野球好きとサッカー好きの双子の勝負! ついに決着が着きました!」
どっちが勝ったんだ?
「『タッチ』の差で、野球好きの双子の勝利です」
う~ん成程上手いね!! 山口さん座布団二枚挙げて。おっ元気が良いねエルさん!
「勝った……勝ったよう! ついに買ったよう!!」
どっちが勝ったんだ?
「え? カッターナイフを買って来ただけですが? 『かった』だけに……ですけどね」
山口さん、エルさんの座布団全部持って行って!! えぇ~じゃない! さ、二次 元さん!
「宗教家か商人、どっちがより胡散臭いか決まったのぅ」
ほう、どっちが勝ったんだ?
「実はどちらも勝っておらんのぢゃ。どちらも芝居が『かって』おるからのぅ!」
おぉ~綺麗に纏めたね……山口さん、さっきエルさんから取り上げた座布団二枚、元さんに差し上げてください。えぇ~じゃない!
「さっ! 多分そろそろ上の人達が来て怒られるタイミングだと思うので、この辺りでお開きです。そういう訳で司会進行役はこれでもかと魔種と殴り合ってます未来人ヨハナ・ゲールマン・ハラタでしたっ! それでは皆様また来週~!」
たんたかたかたか、たんた――うわ、テントに踏み込んできたぞ皆逃げろ逃げろ!
●報告書
――以上。ラサの首都、ネフェルストで起こった合同訓練の一幕である。
テントの一角で大喜利が発生したり、精神鍛錬と言う名の酒盛りが行われたり、真っ当な軍事演習からブートキャンプまで幅広い交流が行われたようだ。他にもボディ・ビルの集団が一角を陣取って素晴らしい筋肉の見せあいをして筋肉と筋肉の交流を深めたりしてたらしい。簡易ステージの上に立つBOHSやら武の濃さと言ったらもう凄まじかったらしいZE……
「たくっ。レオンも、すげぇ連中を寄こしたもんだ」
その報告書を一瞥して『赤犬』は微かに笑みを零す。
これだけの人数が参加してこれだけの交流を果たせたのならば当初の予定よりも随分と大きく繋がりをアピール出来るというモノだ。彼らにとっても、ラサの傭兵との関わりと演習経験は貴重なモノであったろう。
申し分あるまい。レオン、お前の送ってきた連中は――
「目論見以上だ。大成功って所だぜ――全くよ」
成否
大成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
Re:version名義ですが、リプレイは茶零四GM執筆です。
あとがきのこの部分については判定者のYAMIDEITEIが書いています。
毎度恒例ローレットトレーニングです。
返却直前にカンスト解除、更に経験値大幅アップ。
天使の所業と褒めて下さい。
本シナリオは、500参加者を超えたので『大成功』判定にします。
又、参加人数が604だったので人数ボーナスを30点獲得します。
更に詳細は伏せますが、プレイング判定により51点のボーナスを加算します。
Easy大成功+30+51で昨日より1割強マシ。うーんすごい!
以下、茶零四GMからの真・あとがきです。
第四回目のロレトレを担当しました茶零四(←つぎはおまえだ)です。
(←つぎはおまえだ)なんだろう……これ……なんだ……!? ともあれ第二回目のロレトレを担当された某黒筆墨汁GMがなぜかあとがきで私の名前を出すという寝耳に水案件がありまして、そうしたら第三回目の某澤見夜行GMも私の名前を出すというアチョー案件が過去にありました。あの二人やりやがったな!!
さりとて実際にロレトレの執筆となりましては光栄な限りです。これ程まで多くの方の素敵なプレイングに触れる事が出来ました。無論、リプレイにあたりましては全員描写はしておりませんが……そこはイベントシナリオ定義、並びにロレトレの特性故、何卒ご容赦頂ければ幸いと存じます。
それでは皆様、お疲れさまでした!
GMコメント
Re:versionです。
特別な企画を出す時だけお邪魔する第四弾です。
以下詳細です。
●任務達成条件
・真面目(?)に面白く(?)トレーニングしましょう。
●成功度について
難易度Easyの経験値・ゴールド獲得は保証されます。
一定のルールの中で参加人数に応じて獲得経験値が増加します。
それとは別に400人を超えた場合、大成功します。(余録です)
まかり間違って800人を超えた場合、更に何か起きます。(想定外です)
尚、プレイング素敵だった場合『全体に』別枠加算される場合があります。
又、称号が付与される場合があります。
●プレイングについて
下記ルールを守り、内容は基本的にお好きにどうぞ。
【ペア・グループ参加】
どなたかとペアで参加する場合は相手の名前とIDを記載してください。できればフルネーム+IDがあるとマッチングがスムーズになります。
『レオン・ドナーツ・バルトロメイ(p3n000002)』くらいまでなら読み取れますが、それ以上略されてしまうと最悪迷子になるのでご注意ください。
三人以上のお楽しみの場合は(できればお名前もあって欲しいですが)【アランズブートキャンプ】みたいなグループ名でもOKとします。これも表記ゆれがあったりすると迷子になりかねないのでくれぐれもご注意くださいませ。
●重要な注意
このシナリオは『茶零四GM』(←つぎはおまえだ)が執筆担当いたします。
このシナリオで行われるのはスポット的なリプレイ描写となります。
通常のイベントシナリオのような描写密度は基本的にありません。
また全員描写も原則行いません(本当に)
代わりにリソース獲得効率を通常のイベントシナリオの三倍以上としています。
グリムアザースを育てようキャンペーンという事で!
この機会に宜しければ是非ご参加下さいませ。
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