PandoraPartyProject

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シーズンテーマノベル『春の雨降る』

春の雨降る

 開花予報を逐一確認していたのは、一番綺麗な写真を撮りたかったからだった。
 満開の桜の下で、君に伝えたいことがあった。
 三年間着た制服ともこれでお別れだ。卒業証書の筒はぴかぴかしててとても綺麗で。
 何もかもが特別なようで、在り来たりな日常の一頁でしかない今日この頃。

「やあやあ、イレギュラーズ殿!」
 少し巫山戯た調子で、私は自慢するのだ。
「ええっと……オホンッ、オホン。
 な、なんと! 綾敷・なじみさんも、遂に四月から大学生になるんだぜ。
 大学受験、合格したんだね、おめでとうって私を褒めてくれたって構わないんだ」
 君が嬉しそうに笑ってくれるなら、私はそれだけで幸せなんだ。

 ねえ、ねえ、――今日、これから何をする?
 在り来たりな毎日だって良い。とっておきの特別な日だって良い。
 君の日常をひとつだけ、教えてはくれないだろうか。

シーズンテーマノベル『春の雨降る』

綾敷・なじみ
「今回のテーマは『開花』か『別れ』!
 どちらかの文字がノベルに入っていればどんな内容だって大丈夫なんだぜ?」
シーズンテーマノベル『春の雨降る』
商品 説明
対応商品一覧
  • 1人テーマノベル
  • 2人テーマノベル
  • 3人テーマノベル
  • 4人テーマノベル
  • 5人テーマノベル
発注可能クリエイター
  • ゲームマスター
  • ノベルマスター

基本価格 100RC~

商品概要

 本商品は『キーワード』を指定して発注するSSとなります。
 シナリオコンテンツでは描ききれないお客様のストーリーを『キーワード』を添えてゲームマスター、ノベルマスターに発注することができます。

 『キーワード』がいずれか一つは含まれていれば内容はどの様なものでも構いません。
 季節もキーワードさえ含まれていれば無視しても構いません。
 また、発注時にキーワードを必ず指定する必要もありません。

 今回のキーワード:『開花』『別れ

日程

・受付:3/12~4/10の8:00
・締切:5/15
・公開:順次公開

プレゼント

本商品の受注が確定したキャラクターには『称号』が配布されます。 本商品の受注が確定したキャラクターには後日、記念アイテムを配布いたします。
※一キャラクター一つまでとなります。

景品詳細
アイテム 性能
桜ひとひら 種別:アクセサリ
レアリティ:ハイクオリティ
補正値性能:-
フレーバー:春に降る花を宙で掴むことができたら願いが叶う……噂です。使用時、パンドラ+1回復。
(※本アイテムは一キャラクター一つまでとなります)

称号 内容
おもひいろ 種別:称号スキル(※称号スキルとしての配布は、後日となります)
フレーバー:吸血欲求などの強い衝動に抗い易くなると共に吸血鬼の気配を察知し易くなります。
サンプルSS:『烙印(NPC:イルナス・フィンナ(p3n000169)

 西の空に輝く長庚。流るる血潮の故郷たるは瑞色の気配。赫々たる焔の過ぎたりし後に残った灰燼の道は何時かは小草が茂るのだろう。
 その気配さえも遠離った砂の園にイルナス・フィンナは一人で立っていた。携えた弓だけが己の心を律し、落ち着かせてくれる。
 ラサ傭兵商会連合はイルナスのルーツにあたる深緑とは対照的な場所であった。なだらかな砂の海には植物たちの息吹も少なく、恵みのように存在するオアシスに密集するようにして人が押し寄せる。生きとし生ける物の生存本能は恵みの水の傍らになくてはならないと告げる様だった。
「『烙印』ですか」
 呟く女は強かにも商店の屋根を補強し営みを続ける商人達を眺めていた。晶竜と呼ばれたパッチワークの獣達の蹂躙が遠離って幾許も経ってやしない。
 人とはどうも、身に染み付いた日々の暮らしであればどの様な逆境でも準えることができるらしい。巡回をするイルナスも同じ。陽射しを避け陰に立ちながら弓の感触を確かめる。
 古宮カーマルーマに舞台は移ったと考えても構わないけれど、未だ警戒を解く事は難しい。
 いつ、人が死んだって文句は言えないような場所なのだから。
 嘆息し、腕を擦った。晶竜を連れて遣ってきた吸血鬼の痕跡を追掛けて、一人調査に赴いたイルナスはその腕を引き裂く血色の刃に傷を負わされた。
 思ったより深手だったのだろうか。応急処置程度だったかと包帯を解いてから女は愕然と己の腕を見下ろして。
 その刹那に、胸を押さえて身体を折り曲げた。
「ッ――」
 呼気よりも早く衝動が胸を締め付けた。喉が酷く乾き、餓えを覚えた獣の様に口腔に唾液が満たされた。
 眼前に立っていたのはレナヴィスカの乙女だった。共に砂の園で弓を携え、歩み続けた無二の友。
「イルナス団長?」
 振り返った彼女の眸は恐怖と驚愕に塗り固められていた。発作的な衝動を沈めるように膝を付く。砂が食込む感覚にが疎ましいが、気にしている暇もない。
 解けた包帯から漏れ出したのは血潮は無かった。そろそろと手を添えたのは脇腹だった。僅かに掠めたその場所には掠り傷。どくり、と高鳴る鼓動に衝動を堪えきれず漏れた涙は水晶の煌めきを湛えて。
「これは……」
 イルナスの唇は言葉にならぬ音を奏でた。
『烙印』
 毀れ落ちた、言葉と共に傷口から溢れ出た薔薇色をなぞり征く。
 おんなの掌が掴んだのは液体などではなく。――開花する証。嘲笑う吸血鬼の花は綻び落ちる。

(キーワード:開花を使用しています)(SS執筆:日下部あやめ

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