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Goblinfather's Life

登場人物一覧

キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!

 子育てをする雄ゴブリンなんていない。
 もちろん戦利品を巣穴に持ち帰る時には子が飢えない程度の分け前は与えるし、遊びをせがまれれば一緒に遊んだりもする……が、そいつは『子育て』と言うよりは『ペットの世話』だ。時に、騒ぐ我が子が腹に据えかねて殺す。それが父親ゴブリンってやつだ。
 けれども……キドーはそいつらとは違う。アドラステイアの子供たちをクズどもから助けるため必死になる奴が、我が子をぞんざいに扱ったりするか?
 だから、キドー・ルンペルシュティルツは世界一子育てをするゴブリンだった――少なくとも人々はそう考えるはずだ。

 はは、まさか。
 だったら、どうして今からすれば未来に当たるその日、キドーは息子にこう吐き捨てられることになる?
「どうしてアンタを父と呼ぶ必要がある?」
 ……と。

「そりゃあアンタは家族にいい生活をさせてくれた。俺が欲しかったものは大体手に入る裕福な暮らしをな。……で、それだけやれば父親か?」
「ハッ、愛情を寄越せなんて言うならとんだ甘ちゃんだぜ! 奪いたい時には奪い、与えたい時に与えるのがゴブリンってやつだ!」
 そう買い言葉を返しはしたものの、これでも愛情がないわけじゃない。考えてもみろよ……必死に部下たちの面倒を見て、会社を大きくして得た財産を、誰が好き好んでどうでもいい他人にくれてなどやるものか!

 が、そんな内心を吐露してやるつもりなど、キドーには毛頭存在しなかった。実の息子に殴られて、逆に思いきりぶん殴り返してやったとしても。
(いい加減、俺も歳かねぇ?)
 息子との殴り合いでまさかの敗北を喫し、床に倒れても、ゴブリンは反省も後悔も感じない。その気になれば息子は自分の机から鍵を奪って、全財産を持ち出して逃げてしまうかもしれない。……が、それすら構いやしない。

 不器用な男であることが、『三賊』に定められた宿命だってわけだ。自分も、夢を追って息子に嫌われたあの蛸野郎と同じ――そんな感想が頭をよぎる。
「だがよ。それの何が悪いってんだ?」
 もしも、その台詞が息子との別れの言葉になるのだとしても。そいつは、アイツが親なんぞに頼る必要のない、立派なゴブリンになったって意味だ。
 おそらくは、息子も自分と同じ道を往くことになる。あの蛸の息子だってそうだったんだから。
 だから、キドー・ルンペルシュティルツは世界一幸せ者のゴブリンだ……今はその事実を誇ろうじゃないか。


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