PandoraPartyProject

SS詳細

La Vie en rose

登場人物一覧

尹 瑠藍(p3p010402)


 尹 瑠藍 (p3p010402)のこれまでの人生というものは、散々なものだった。
 自由の少ない亜竜集落。その中でも更に自由が少なかった。怖いき物が跋扈している覇竜領域ではそれも仕方ない事だと知っている。けれども暗い水中では目立つからと、明るい色と鮮やかな尻尾を持って生まれてきた瑠藍に他の人たちよりも厳しくするのは間違っている。自分で望んで生まれてきた訳ではないからだ。
 ――そう思わない?
 今日も今日とて暗い水底で、話し相手になってくれる人も居ないからと大きな巻き貝に耳鰭を当てて問いかける。
 言葉なんて返ってこない事なんて知っている。寄せて返す音。それが波の音に似ている事は覇竜の人々は知らない。ただ嵐の日の水面のようだと、心をそれに浸すのだ。
 なのに! なのにである!
『そうだねぇ』
 其れから唐突に声が聞こえたものだから、瑠藍は吃驚した。
 ころんと後ろに転がって巻き貝を見て――そうしてその巻き貝は瑠藍の『親友』となった。
 親友は、沢山話を聞いてくれた。瑠藍の言葉を否定せず、認めてくれる。
 ――自由になりたい。
『なってしまえばいいんだよ』
 ――どうやって?
『それはね……』
 親友と話す度に変わっていっている事に瑠藍は気付かなかった。
 家族が何か言っていた気もするけど、その言葉は既に届いていなかった。

 妈妈 、大哥たち、ばいばい!
 私、自由になるわ!

 何か言っていたような気がしたけれど、瑠藍にはもう関係なかった。
 だっていつもガミガミうるさい口は、身体とさようなら!
 水に赤が広がって、視界からだってさようなら!
 瑠藍は何だかとても楽しくなって、人も里も全てを壊して故郷と別れた。
 これでもう、瑠藍を縛る枷はひとつもない。
 4つの脚は軽やかで、何処へにでも駆けていけた。

 それからの瑠藍の日常は、青ばかりの日々から一転した。
 赤い赤い、赫の日々。
 何処かに咲いていた、誰かが丁寧に手入れして育てた、赤い薔薇のような素晴らしい日々。
 初めて薔薇を目にした時は、何て綺麗なのだろうと思った。そうなりたいと思った。だから瑠藍は今『そう』している。
『楽しそうだね』
 親友も変わらず親友で居てくれる。
 楽しいわと返す瑠藍に、いつだって優しい声を掛けてくれる。

 ――嗚呼、なんて素晴らしい日々なのかしら!
 もっと早くにこうしていれば良かったわ!

 瑠藍は今日も楽しく檻の外で、赤を纏って過ごしている。


PAGETOPPAGEBOTTOM