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永遠の守護者は花と共に

登場人物一覧

尹 瑠藍(p3p010402)

 稀に見る好天に恵まれ、人々は各々好きな花を手に丘の上を目指した。
 安置された硝子の揺籠ゆりかごではいん瑠藍りゅうらんが様々な花に囲まれ眠っている。
 人々にとり瑠藍は英雄だった。
 は身近だった。種により傷病や心身を癒す良花もあれば、病をもたらし死に至らしめる悪花もあった。
 そして、宿木のように人に咲く花もある。
 宿主に選ばれ適合したものは花から強大な力を与えられた。適合者――瑠藍はそう呼ばれたひとりだ。
「ああ、英雄様……」
 彼女が命を賭して奪い返した街は、悪花と不適合者の成れの果てに支配されていた。
 難を逃れていた者が街へ戻ると、守人の銘を持つ刀を手にしたまま既に息絶えていた。その彼女の胸元から右頬にかけて、小さな蕾が侵食していた。蕾は膨らみ、花開けば美しい白の花を見る事ができただろう。
 後少しで開花に至る――はずだった。
 適合者であっても花開けば異形の魔物へ身を堕とす。
 そうならなかったことをも人々は喜んだ。
 人々を苦しめた魔物も悪花も駆逐され、街は良花のみが咲き誇っていた。
「ありがとう」
「これからも僕を守ってね」
「貴方様の加護をどうか」
 胸元と同じ白く小さな花を。
 たくさんの黄色の花。
 彼女の髪色や瞳に合わせた花。
 揺籠に眠る瑠藍に願いを込めて人々は花を手向ける。
 密閉する時も寂しくはなかった。
 彼女はこれから街の守護者として、人々と共に有るのだから。
 これから幾度も訪れる困難も、守護者と共にならば越えていけるはずだから。

 街を一望できる丘の上には、救世の英雄を祀っていた。
 硝子の揺籠では、数百年経った今でも褪せることのない花に囲まれてて守護者が眠っている。
 

 まるで植物標本ハーバリウムのようだなと、午睡から目覚めた揺籠はそう思った。
 欠伸を一つ。
 始終明るい雰囲気の夢だったが、死した者を永久に保存しようという考えはどうも薄気味が悪い。
 まるで見せ物のようでもあって。
 それにしても。
(私はうまく立ち回れなかったようね)
 街一つで力尽きるなんて夢の私は鍛練が足りない。
 どうせならば花が咲き誇る世界を見て回りたかったのに。
 仕方なく瑠藍は立ち上がると外出の準備を始める。
 春が訪れ、穏やかな陽射しが風と共に遊びに来る。
 こんな日なら夢ではなく現で楽しむべきだろう。
 いくつか花見に最適な場所とぴったりな酒を思案しながら、瑠藍はほころぶような笑みを浮かべたのだった。


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