PandoraPartyProject

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化わりゆく粧いに変わりゆく心/Make up,Grow up

登場人物一覧

トール=アシェンプテル(p3p010816)
つれないシンデレラ

・覚醒という言葉は人によって浮かぶものが違う

──チュンチュン、チュンチュン──

「ふ、ぁぁ……朝ですか……」

 心地よい鳥の囀りが耳を撫でて、暖かな木漏れ日が僕の顔を撫でる。漏れ出た欠伸を抑えながら壁にかけられた時計を確認。いつも通りの時間だ。身体を覆うキルトの中にまだ居たいという気持ちをグッと抑えて、ベッドの上から抜け出して洗面所の前に。

「おはようございます、僕」

 鏡に映る、"銀色・・"の髪をした僕。そうだ、昨日はウイッグをよく洗って櫛で流したあと乾かしておいたんだった。こうして今の僕の素顔をまじまじと見つめたのはいつぶりだろう。

「……ふふっ」

 昔はあの騎士様みたいにカッコよくなりたいって思っていたのに、僕の顔は子供の頃から変わらない。けれど、格好は付いてきた・・・・・・・・のかも。

「ひゃっ!?」

 と思ったら開いた蛇口からよく冷えた水が勢いよく飛び出してびっくり。けれど目覚ましにはいいのかも。掬って水を顔にかけて洗う。モチモチの柔らかい肌がが心地よい。

「さ、次は着替えないと」

 洗い終わった顔を拭ったら今度はクローゼットの前に。寝ている時に羽織る用のシャツを脱いでハンガーへ。これで姿見に写る僕は一糸纏わぬ姿に。

「見た目こそ男らしくはないけど……」

 かすかに膨らんだ胸から手を撫で下ろし、腹、そして腰をなぞっていく。触り心地の良い肌を押せば硬い筋肉の感触が押し返してくる。この無垢なる混沌にやってきて潜り抜けてきた死線が、僕を成長させたのかな。

「……っと、こんな事してちゃ遅れちゃう」

 衣装箱から黒いレースの下着と胸の詰め物をを取り出して、身につける。ショーツの中に片足ずつ足を通して引き上げたら、次は柔らかい詰め物を入れたブラに腕を通し、ホックを留めた。鏡の前に立って自分の姿をマジマジと見ていると、本当に女の子になったみたいで少し照れちゃうな。

「ええと、今日のシャツは……これだったっけ」

 次は外行き用のシャツを取り出して、袖を通したらボタンを留める。上から一つずつ留めていくうち胸のせいで見えなくなっちゃうけど、立派な胸を持ってる人ってこういう服を着るだけで一苦労なんだろうな。

「ネクタイを締めて、と」

 黒いネクタイを首に回して手早く済ませる。シャツを着ただけじゃわかりにくかったけど、その上にネクタイがとると胸の膨らみがくっきりと浮かぶ。やっぱりまだ恥ずかしいかも。

「あとは……」

 思い出のたくさん詰まった白い近衛騎士制服を着るだけ。最初は王女様に命令されて無理矢理やらされた"コレ"も、すっかり慣れちゃったな。身体にフィットするトップスは僕のボディラインをくっきりと強調するし。このミニスカートも丈が短くて…………ショーツが見えちゃいそうだけど。この姿を可愛いって言われ続けているうちに僕は僕のままでいいんだって思うようになった。

「すっかりもう慣れちゃったけど」
 
 最後にブーツを履いて、なんとなくターン。綺麗なオーロラ色のミニドレスがふんわりと浮いた。ウイッグをつけていない銀髪の僕がこうしているのってすごく珍しい。

「でももしこんな姿を誰かに見られたら……」

 男ってバレて不幸な目に会っギフトが発動しちゃうかも……うう、それは嫌だな。早くウイッグを取りに行こう。

「よ、い…しょっと」

 スタンドから慎重に持ち上げて、頭にゆっくりと被せて、少し押せば固定完了。ウイッグにかけられている魔法の力で激しく浮いても外れない。頭を振っても大丈夫。

「よし。あとは仕上げにお化粧をしなきゃ」

 手順を間違えないように右から使う順に並べられた化粧品。まずは日焼け止めから手に取って、顔に塗る。王女様が肌荒れは女の大敵だって口癖のように言っていたのを覚えてるいる。僕だって焼けたくはないから塗り漏れがないように慎重に。

「うまく塗れたかな…?」

 次はお化粧の下地を作っていく。チューブから出した下地を掌に乗せて、頬から広げて。下地は色がついているから分かりやすい。最初の頃は遅いからってよく折檻されたっけ……

「うう、思い出すだけで身体が震える……」

 震える手でファンデーションをつけたパフを取って、顔を撫でるように叩いてく。僕の肌が綺麗になっていくのをこうして見ているとなんだか嬉しくなってくる。

「最後にコレを……」

 そして左端に置いたパウダーをさらに上に塗ったら朝の身支度が完璧に整った。

「完成だわっしょーいっ!」

 上手くできたのが嬉しくなってつい叫んでみたり。庭園のどの花よりも美しいって褒められた僕の姿を維持し続けるにはこれからも頑張らないと。

「ふふっ、それじゃ行ってきます」

 服の上から剣帯をつけて、輝剣を提げて出発。今日はみんなとのお茶会だから遅れないように早足で向かおうか。

「王女様、僕は元気にやってますよ」

 ふと見上げた空の虹に、見覚えのある別れた人の顔が映った気がした。


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