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百花の王
登場人物一覧
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寒い冬を越えると、庭先が鮮やかになる。
牡丹の咲く時期は年に三度あるが、春牡丹の時節が一等好きだ。
若い頃から何度も死にそうな目にあって、泥水を啜って生きた。この生きにくい世の中で俺たち獄人が生きていくのは骨が折れる。足元を掬われる前に掬う、やられる前にやる、相手のことなぞ蹴落として当たり前、そんなこの世は
(何が俺様を変えた?)
転機は――ああ、そうだ。牡丹だ。
何度も死にそうになり、流石にもう駄目だと俺でさえ諦めそうになった時があった。
雪が降る日のことだった。既にひとつの組織を纏めていた俺は、慢心から足を掬われた。真白に俺が零した
次に、痛みで目が覚めた。もう何も感じなかった身体に痛覚が戻った。木の股からでも生まれたのであろう俺の身体は丈夫で、死ななかったらしい。医者らしき爺と若い女が何かをずっと叫んでいて、ぼやける視界に女の着物の牡丹がずっと咲いていた。後から聞いて解ったが、その女が俺を拾ったらしい。
いくつもの死線を抜けた。いつ失ってもいい命。
だが、もし助かるなら、牡丹を育ててみるのもいいかもしれない。そう、思った。
そうしてしぶとい俺は生き残り、暫く普段通りに生き、それから適当な後釜に会を押し付けた。今は所謂隠居暮らしと言うやつだ。……反対の声? あれば潰すに決まってンだろ。
――花王番付。それが今の俺の一等の愉しみだ。
牡丹
花なんぞ適当に育てれば適当に育つと思っていたが、変わり種を作るのは手間どころでは済まなかった。会合に顔を出し、情報を交換し、次に活かす。勿論手札は全て見せない。腹の探り合いは何処へ行っても変わらない。
昨年よりも良い牡丹を育てられた筈だが、開いてみるまで解らない。
「まさか俺様がなァ」
花を見守る日が来るとは、お天道様とて予想外だっただろう。
嗚呼、開花が待ち遠しい。
- 百花の王完了
- GM名壱花
- 種別SS/IF
- 納品日2023年04月17日
- テーマ『『春の雨降る』』
・焔心(p3n000304)
※ 耀 澄恋からの提案