シナリオ詳細
<Despair Blue>輝きのコン=モスカ
オープニング
●滅亡への救い手
『絶望の青』、死の領域より帰還したイレギュラーズが告げたのは彼らが海域で感じ続けた嫌な臭いに対する答えであった。
メッセンジャーとなったのは反転して魔種となった『蛸髭』オクト・クラケーン(p3p000658)。
彼を包み込んでいた死臭は幾人ものイレギュラーズを蝕み続けている。だからこそ、その理由が分かったことは好機とも言え、そしてある種の絶望に似た恐怖を与えたことだろう。
――そうだ……『死兆』だ。廃滅病は罹った者に、避け得ぬ死の宿命を与える呪詛だ――
男の声はいつだって楽し気であったではないか。
その報告を耳にして、女王イザベラ・パニ・アイスと貴族派筆頭ソルベ・ジェラート・コンテュールは直ぐ様に対応策を講じるがために『専門家』のもとへと向かった。
「こちらですぅ」
案内役としてルル・リェより火急のことと呼び出されたグラニィタ=カフェ=コレットは祭司長のもとへと案内すると彼女たちと、そしてイレギュラーズを誘った。
「本来なら拙僧がご案内するまででもないんですけれどねぇ……祭司長様も総主祭司様も『疫病』への対応に追われているみたいですぅ」
「うむ。サンブカスも協力してくれるのであればありがたい。
して、クレマァダはサンブカスの補佐に入っておるのかの?」
重く頷くグラニィタにイザベラは居住まいを正す。絶望の青に隣接するコン=モスカ領。主たる辺境伯たちは緩やかなる宗教観の許、信仰の徒として生活しているのだそうだ。
その祭司長――クレマァダ=コン=モスカは絶望の青に挑む冒険者や海賊に祝福を与え、また外より来たる災いを防ぐ武僧の長としての務めを幼い身でありながら担っている。
ソルベが目を付けたのは『絶望の青に挑む冒険者への祝福』というモスカの加護であった。
つまり、『モスカの加護』で廃滅病に少しの緩和が持たせられるのではないか、ということである。
「ついたですぅ」
小さく頭を下げたグラニィタに見送られ、イザベラは足早に扉を開く。
「クレマァダ、サンブカス!」
堂々とその名を呼んで、イザベラは慌てたように祭壇傍へと寄った。
「これは陛下。娘はあちらに」
聊か厳しい瞳に宿らせた光を潜ませた穏やかな笑みを張り付けてイザベラをいざなったサンブカス。理想主義にして現実主義であるサンブカス=コン=モスカは自体の把握を行ったうえで、此度の一件はモスカでの『秘術』である程度の対策ができると考えているのだろうか。
「廃滅の結界……ふむ、『廃滅病(アルバニア・シンドローム)』。
神聖なるモスカの聖域、そしてそこに住まう深海の神への愚弄。許せる所業か」
苛立ったように呟くクレマァダは海図を眺め、熟れた柘榴のように点在する無数の光を目で追いかける。壮麗な装束を纏っていた彼女は祈祷を終えたばかりなのだろう。その顔には疲れの色が滲んでいた。
「クレマァダ、陛下がお越しくださった」
「……陛下、そしてコンテュール卿も。『廃滅病』を受けたイレギュラーズの容体は?」
神妙な顔をしたクレマァダ。心配性である彼女の声音は固く、そして、『宿命』というものを何よりも理解した顔をしてイザベラとソルベへと問いかける。
「何、心配はいらぬそうじゃ。……日数が決まっているが故、な」
「ああ――」
クレマァダは深く息を吐いた。モスカの加護の厚きイレギュラーズ、その彼らに死が迫ってくるというのならば。
祈り捧げるだけでは足りぬのだ。
「廃滅病に対抗する――いいえ、『進行を少し遅らせる』事ならば出来ましょう。
それこそ我らがモスカの秘術にして加護。……しかし、コン=モスカ領内で祈りを捧げるだけではその脅威を退けることはできません。
加護を授けるがためにその力を強化する宝珠が必要なのです……イレギュラーズに助力を願うことは」
「宝珠は必要じゃが、……じゃが、イレギュラーズをこれ以上危険に晒すと!?」
淡々と言ったサンブカスにクレマァダは食って掛かる。
彼女とて理解はしている――現状を打開する方法はただ一つ。
絶望の青に存在するコン=モスカが『聖地』と定める絶望の青の海域内にある孤島――古代遺跡の中に眠る『宝珠』を出来うる限り確保し、それを媒介として祈祷に臨む事が必要なのだ。
「クレマァダ。気持ちはわかる。妾やコンテュール卿、そなたが往くこともできまい。ここはイレギュラーズに任せるしかなかろう……」
ソルベ・ジェラート・コンテュールはイレギュラーズたちに船舶と兵を貸し与えると宣言した。
「こちらも出来得る限りの支援をさせていただきます。
皆さんはコン=モスカの聖地が一つ、孤島のオパール・ネラの古代遺跡に挑み、宝珠を出来る限り多く確保してきてほしいのです」
オパール・ネラは絶望の青の入り口に位置し、その遺跡は深海洞窟へと繋がっているらしい。
その奥には祠が存在し、宝珠が至る所に点在しているそうだ。
もちろん、オパール・ネラの周辺には狂王種が存在し、古代遺跡の内部もゴーレムやトラップが仕掛けられている。
「くれぐれも注意して宝珠を確保してきてくださいね。……それでは、よろしくお願いします」
- <Despair Blue>輝きのコン=モスカ完了
- GM名夏あかね
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2020年02月26日 21時30分
- 参加人数336/∞人
- 相談3日
- 参加費50RC
参加者 : 336 人
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参加者一覧(336人)
リプレイ
●
廃滅病(アルバニア・シンドローム)――逃れ得ぬ死の運命。指を咥えその刻を待つ程に『運命蒐集(かのうせい)』の塊は甘くはない。海洋王国の首都リッツパークより離れ、絶望の青に隣接するコン=モスカ領にて、その病への『対抗手段』――そう呼べるほどに、協力ではなくあくまで緩和に留まるがそれだけでも朗報だ――として持ち上がったのがコン=モスカによる祈祷であった。
「逃れられぬ死の呪い、廃滅病(アルバニア・シンドローム)ですか」
神妙な顔をして、メロウはクレマァダ=コン=モスカ祭司長の指示に従い祭具を並べ、汚れを掃う様に磨いていく。
周辺のゴミを集めながらシルヴェストルは『人』並みの生活を送るための家事スキルでも生かす場所はあるはずだとゴミの分別を続けていく。
「放置していたゴミを踏んで蹲るほど痛い思いをしたり、躓いて転んで顔を打ったり……。ゴミを侮るなかれ、だよ」
勿論、カタラァナとは仲良くしているということもありレイヴンはクレマァダの力になりたいという。飛行種と海種という区別があるにはあるのだが――今はそれを口にするのも野暮と言うものだろう。
「何か手伝えることはあるかな?」
クレマァダは言葉では『必要ない』というがそれが心配性である所以であることをイレギュラーズは知っている。伺うようにそう言った雨月に事前に用意している祭具を磨いてくれとそっけなく言った。
「医学に知識があるのだろう」
「……うん。少しの怪我なら任せて」
これから仲間が向かうこととなるのは青き海――大海にして絶望の水溜まりなのだから。
●
広く澄み切った蒼は絶望の名にほど遠く――しかし、一歩でも踏み入れれば忽ち嵐と化すその領域に鏡華は刀を手に踏み入れた。モスカの聖域オパール・ネラへと向かう道中、船に同乗しての護衛として『死兆』退けるための一助とする。
(『死兆』がどれだけ恐ろしいか、私は実感出来ない。でも、この僅かながらの助力が、それを振り払う助けになれば――)
呼人はオパール・ネラへの道中に存在する生物が彼の『元の世界』とは大差ないのだとぼんやりと考えた。イカやタコ、イワシにサメ、クジラ。狂王種を狩って食ってはいけないというルールはないかと確認する彼に「食い方は解明されてないからやめておけ」と船乗りがからりと笑う。
「へえ、未知だらけかい。あんまり事情も知らないからね、頭数を力に道中を切り開こうかね!」
リズリーがいいと笑う。腕力には自信があるとその腕に力を込めて、オパール・ネラへ続く海域の安全を守り続ける。
「船の仕事は初めてなのだけど、どんな仕事があるのかも見せて貰えると嬉しいわ」
イナリは穏やかな笑みを浮かべて航海の道中支援を手伝い続ける。飛び跳ねた魚へと奇襲攻撃を仕掛けつつ、船内を安全に保つための支援も怠らない。
「海って思ったより危険がいっぱいですの……。
でもでも、海洋の飛行種貴族に名を連ねる者として、ここは頑張らねばですの!」
やる気十分のスノウスノウ。船に乗る仲間たちを支援するために狂王種に向けて空を駆る。海洋貴族としての責務を胸に、囮になり引き付けるとひらりひらりと宙を踊る。
「私は船を壊されないよう頑張るっす!」
やる気を漲らせたリサ。エンヤスの船の改造や修理要員として狂王種による攻撃に備えるのも重要だ。
船の心配がなければ『沈む』という不安もない。なるべく安全に仕事をこなせるのであれば最高であるとエンヤスは胸を張った。
「我が艇の装備は完璧である。操縦手、新田はやり手のマネージャーである!
メカニック、リサ! 護衛の義弘! 護衛のシュルフ! うむ、シュルフは護衛を終えたらコックとしての腕も振るってほしい」
一同エンヤスの元へと介したものは彼の絶対的な信頼の下でイレギュラーズをオパール・ネラの海底遺跡へと運び続ける。
「ええ。さながら我々は護衛艦。アイドルを支えるマネージャーの職務と同じ」
眼鏡をくい、と持ち上げてから操船技術を生かす寛治の傍らで義弘は迫りくる狂王種へと対応を続ける。
「乗り込んでくる奴もいるか」
「ええ……我が名はムー・シュルフ! 知らぬモノは聞け! 知るモノは慄け!
我が跡に狂王種の跡はなし! 狂王種の我と思わんモノよ! 我に挑め!」
堂々たる名乗り口上を述べて、ムーは自身は虚勢を張っているのだと震える。それでも、ここで食い止めねばなんとするか。宝珠を探し、彼は何度もモンスターをおびき寄せる。
「……死兆って怖いね……ボクも、何かでいるかな……」
オーロラはそう呟いた。狂王種の対応には一人でも手が多いほうがいいのは確かだ。
「廃滅病は怖いから……できるだけの事はしておきたい。少しでも希望があるなら、全力で取り掛かろう」
ドゥーはオパール・ネラへと向かう船の支援を続ける。生物なら全く異なることはないだろうが、あまり見ない性質のモンスターだらけなのだということがその目では鹿kりと見て取れた。
「死兆――それはまさに破滅と呼ぶべき存在だ。であれば、俺はそれを滅ぼす為に力を振るおう」
R.R.は無辜なる混沌の状況もよく分からないが――とR.R.は穏やかに息を吐いた。
本来的にはあまり戦闘は得意ではないとホロウは鮮やかな海を眺める。しかし、『旅人』である自分自身は召喚前ならば最強だった。そう思えば力も沸き立つというものだ。
「全力で支援しようではないか!!」
「はい! 廃滅病……こんなひどい呪いがあっていいわけがないです……!
絶対に誰も死なせない! どんな呪いだろうと、どんな敵だろうと僕たちが力を合わせればなんだってやれるんだ!」
統率をとるヨハンに従い、ハルアは索敵を続けていく。船に近づく敵あれば、銃で迎え撃ちながら、近寄り船より叩き落す。
「こっちは任せてよ! 遠距離特異な皆はどんどん撃ってー!」
「クフフフ、悲劇だわ! 面倒だわ! でもでも? 危ないお仕事なんてイヤだけど。
カタラァナの家族が困っているのよね? カタラァナの歌の代金分は働かないといけないわ!」
カロンはにゃははと笑いながら狂王種を叩き落す。狙われぬ様にと立ち位置気を付け、攻撃を続けるカロンの傍らでイトは船酔いしないようにと気を付けながら上空より狂王種を穿つ。
「しかし、海と言うのも中々慣れないな……」
「あたしゃ1年半くらい戦線から離れてたから、慣れてなのは一緒さね」
親友から教えてもらった銃術に、槍術。それを駆使して戦うとクィニーは銃の勘を取り戻すべく敵を狙う。
「よし、オッケー。そっちはどーよ、ホロウさん?」
「最強だから大丈夫だ!」
にい、と笑ってホロウにクィニーはくすくすと笑った。鶫は海を見まわしてから、波を立て、飛び込んでくる狂王種――イカにため息を吐く。
「シーフードがより取り見取り……ですが、狂王種であるのが残念です」
掃除をしようと淡々と攻撃を重ねる鶫の傍ら、夜を幾重にも重ねた拳銃を手にラヴは夢を撃つ。
「頼もしい味方と一緒だと、広い海も怖くないものね」
おしとやかなだけじゃないのよとふんわりとした金の髪を揺らす少女は小さく呟いた。迅牙は訓練の成果を披露しようとヨハンの募集に同意し、狂王種の迎撃にあたる。
「飛び跳ねてきたやつは蜂の巣にしてやるぜ!」
「この船の邪魔はさせないよ♪ 行く手をあけろー。開けないと撃ち貫くよ!」
桜はびしりと前を指さした。本船の上から行く手邪魔する存在を狙撃し、狙い、続けていく。
打倒されていく狂王種の数々が往く手を遮るっていることにウィリアムはため息を混じらせた。すでにイレギュラーズの中に廃滅病への感染者もおり、信仰を後れさせるのは必要不可欠だ。
「大事な儀式、何としても成功させないといけない……だから――邪魔をすると、沈めるよ」
「ええ。宝珠を集めるのは必要だもの。狂王種の妨害は結構キツいけれど、何もしないという選択肢は無いわ」
フィーネは仕事を請けた以上、きっちりとこなしてみせると狙いをつけて弓を爪弾く。
「ああ、私ってこう見えて義理堅いのよ?」
●
「ぞろぞろ出やがるじゃねえか、ファッキン狂王種どもめ! どいつもこいつも殴り飛ばしてやるから掛かってきな!」
貴道はそう言ってから、拳を構えて狂王種へと攻撃を重ね続ける。眼前に迫りくる巨体を押し返す様に水中でまっすぐに突き立てた一撃が大いなる波を作る。
「治療、まで行かずとも。緩和が見込めるならこれも医療行為の一環としておきましょう」
ステラは呪いには祝いを。道理だと頷いた。疫病と言われれば医者が見過ごすわけにも行くまい。
セルウスは明日は我が身だと感じながら遺跡へ向かうイレギュラーズ達の道中支援として最短航路の狂王種を相手取った。
「狂った王様の名を有する種か。我等『物語』の出番とは想像し難いが、果たして異物の危機と聞く。ならば往かねば『充ちる』星よNyahahahaha!!!」
オラボナはそう笑う。その巨躯を活かしての遠方確認を行いながら船に近づく狂王種を受け止める。極力相手を刺激しないように立ち回り、そして出来得る限りの被害軽減がこの海域では求められるのだ。
主人=公は死兆を受けたイレギュラーズ達のためにと、少しでも猶予が与えられるならばそれでいいと癒しを送りながら支援を続け往く。
「吾輩は標的機なのでな。得意ではない先頭よりもほかの事で役立つとするか」
マスターデコイは警備のための包囲網を引こうと死角を補うべく仲間たちと連携をしていく。
祈祷による災厄の軽減と言うのはよくある話だ。しかし、良くある話だといえど頼まれたのであれば引き受けるのがイレギュラーズ、そしてローレットだ。
レインコートで身を包みアリシアは周囲の霊魂より狂王種の情報を集め続ける。
「知り合いが死兆にかかっているのだもの……放ってはおけないわ」
「オイ、この儀式で呪いの進行が遅くなるってのはマジだろうな!?」
最強の自分を働かせるんだから、とグドルフは意気込んだ。海の掃除ついでにたっぷりと宝珠を手に入れてより軽減を大きくしたいというのは気持ちの上だ。こうした行為は、海の上の蛸髭にだって――
「海の反射で日光がつらく感じますね……ああ、やはりユーリエがいないとだめですね。
まあ、たまには仕事をしないとって感じではありますが。退屈で。それでも、はあ……」
エリザベートは小さく呟いた。只管に広範囲に阻害する痛みを巻き散らす。そうしながら進む彼女のため息は潮風に乗った。
「イカ、タコ、イワシ、鮫、鯨……なんだ。全部美味しく食べられる生き物じゃないか」
そう思えば、都合がいいのだとマルベートは狂王種を『無差別』に襲う。ひらりと踊る様に、シンプルに狩りを楽しめば心も踊るというものだ。
「コラバポス夏子! コラバポス夏子です!! 覚えてってくださいね!!!」
マルベートへと襲い掛かったタコを退けながら夏子は叫ぶ。そして、その後ろ、コン=モスカに協力し船を出した海洋貴族の女性に気づいて夏子はウィンク一つ。
「宝珠よりも御婦人の方が輝いて見えるさ」
一段落着いたら海洋で水着デートをしたい! その気持ちで彼は駆ける。
「海洋ででぃすぺあーぶるーがはいめつびょーであるばにあでさあ大変! って聞いたから、お手伝いに来たよ!」
クランベルは堂々とそう言った。大変だから『お友達の仲間はフレンズ理論』で助っ人招集。
「今回は私がリーダーだ!」
「……にぎやかなのは良いことだね。ま、とはいえ今回のあたしは操船要員だからね」
期待はしないで、とニアはクランベルへと告げる。船を壊されたら拙いと思えばこそ足元が落ち着かないというものだ。
「ううううう……な、なんで、よりによって!! 海の上なのです!? 私は! 船が! 苦手!!! なのです!!!!」
うぐぐとアトゥリは唸った。陸地や森に帰りたくて仕方がないというのに。不安をいっぱいにさせながら神鳴りを放り込む。
「廃滅病……というのも何としても退けねばいけませんね。話を聞くだけでもどれほどの被害が出るか……」
あまり考えたくないとフィーネはふるりと首を振る。微力でも手伝いたいとささやくその声音は僅かに震え、できる限りと支援を彼女は続けていく。
戦うことは得意じゃないからと華蓮は皆をベストコンディションに保つが為に謳い、鼓舞し、そして万全に行ける土壌を作る。
「疲れた人はこちらに来て! すぐに元気になるのだわよ!」
サポートする華蓮の元で鼓舞された仲間をオパール・ネラへと運ぶのはモルテ。
「まァ、戦いもするガ、船も操るレる。故に今回はドチラもするとシヨう。元いた世界デハ地獄の川を舟で渡ってイタからな」
運搬を全般に大海を行こうとするその眼前には狂王種が姿を見せる。それを好機とエレンシアは楽し気に飛び込んだ。
「探索よかこっちのほうが性に合ってるしな! 邪魔なんざさせねぇぜ!」
●
船を無事に目的地まで辿り着かせる為に洸汰はばっちり警備を任せてくれと敵へと猛抗議。
ブルーノートを抱きしめて、進路を阻む敵に対して返り討ちにしてやると洸汰はやる気を漲らせる。
絶賛発症中のイリス・アトラクトスですとシルフォイデアへとイリスは冗談めかして言った。
「……命を縮めると分かって尚、それでも行くのですね?」
「まあ、確かい私と言う美少女を喪うことは海洋王国全体の損失なわけで……。
うーん、まあ、なんていうか。うまくは言えないんだけど、ずっと探してたものがようやく見つかる様な予感、的な?」
視線を右往左往させながらイリスはそう言った。シルフォイデアは答えが分かり切った事を聞いてしまうくらいには心配しているのだと小さく伝えた。
「死兆の正体は……その、厄介な病気みたいだが、俺は食中毒と鼻カゼぐらいしかなった事がないからよくわからん……」
難しいことは賢い人々に任せてとにかく殴るのだとルウはその拳に力を籠める。怪力が取り柄だ。船へと乗り上げた狂王種を投げ捨ててルウはにいと笑う。
「目まぐるしく働いたから、きっとこの後に飲む紅茶は美味しくなると思うっす。
そのときはまた、ゆっくりお話したいっす!」
今はこの海に存在する狂王種への対応が第一なのだとジルが告げればヴィクトールは緩やかに頷いた。これが終わったらのんびりと紅茶を飲みたいと頷きながら、狂王種を退ける。
「行きはよいよい帰りは恐いでは困りますから、帰りもしっかりと支援して、紅茶を飲みましょうね」
いざとなれば自身が標的になるとしグルーんは冗談めかした。海に落ちてもサポートは抜群だとウィンクした彼女ははっとしたように顔を上げ――
「か、カオスシードだって泳ぎがうまい人はいるよ! だから大丈夫、だよね……?」
「うんうん。かおすしーどでもそういうひとはいるとおもう」
狂王種(ブルータイラント)を見つめながらリリーは鴎のファミリーと観察を行う。生態を観察しながら、瞳を輝かせては不思議そうに首を傾げた。
「嫉妬の疫病よりも、昏き青よりも、ひとの末路は焔の赤に鎖されてあるべし。結局私のやることは、海の上でも変わらないのです」
燃える焔が美しいことをクーアは知っている。その豊満な体を縮めてから利香は「ゴミ掃除は趣味じゃないんですけどねー……」と呟いた。
「調理されたい奴からかかってきなさい! クーア、分かっていますね? ミディアム位でお願いします!」
「狂王種は食べない方がいいと思うのです……」
食べれないのだろうかと言う気持ちになりつつ利香が杭ビルをとがらせる。その近く、ブルーノートディスペアーにも書かれていないのだと茫と文は考えた。何時かイカ墨をとろうと習得した小型船と航海術が今こそ生きる時なのだ。
「仲間の危機とあらば馳せ参じるも美少女の務め!」
堂々と、百合子はそう言った。遊撃手として美少女は『美少女注入』し続ける。相互扶助で助け合い。それこそが大事なことなのである。
「ふんふん、今日も声がいい感じだわ。さあて、ドンドンいくわよー」
『お掃除する』とアレクシエルは楽し気に。前線をどーんと攻撃し続ける。邪魔にならないようにとお外でのお掃除は帰路を守るためにも大事な仕事だ。
「狂王種だとか魔種だとか私にはもはや関係ねぇ。私お大切なものに手を出したからにはきっちり落とし前付けてもらうからな!」
ミーナはそう叫んだ。狂王種に対して至近距離でぶつけた魔力にその苛立ちが込められる。
「小娘だと思って甘く見てたら痛い目に遭わせてやるわ」
に、と笑ったティリーは気を引き締め狂王種へ向けて無数の弾丸を放つ。相手を蜂の巣にするかの如きその一撃が雨のように降り積もる。
「狂王種というのは、動物たちが原罪の呼び声の力で反転してしまった姿なのでしょうか。
私は生き物については全然専門外だからわかりません……けど、こんなのひどすぎます。きっとそのいわしたちも――」
パーシャは震える声で、鰯を思った。可愛くて大好きな鰯がこの海のせいでおかしくなっているのだと思えばアンジュは許すことができないと唇を尖らせた。
「デビルいわしにいわし語が伝わればいいんだけど……いわし大戦争? こんなの、ひどいよ」
「アンジュ……。好きなものを冒涜される……それほどまで辛いこともないから」
気持ちは汲んであげるとみるくはデビルいわしへを葬るべく攻撃を続けた。
シャルロッテは天候を確認する。絶望の青の天気はうつろいやすい。把握しておく事でより安全な航海をすることができるだろう。
「さて、道中の支援をしておこう。風向きに転向、航海には重要な情報だ」
うなづいてエリスは宝珠を探しながら帰路を確保するための狂王種の対応を続けていた。
●
「私自身、いつ死兆に囚われるかわからないし、わざわざ知った顔を見捨てる趣味もないからね。
これを使いこなせば、絶望の青を攻略するのに役立つだろう」
狂王種の知識を生かし、ゼフィラは戦い続ける。オクトから見せられた知識を全て自分のものとして昇華するべく、彼女は仲間たちに敵の知識を授け続けた。
「仲間のピンチ、しかもよりにもよって魔種の呪いなんかが原因とあらば見過ごせるわけがないッス!」
海洋の生まれとしてシクリッドは役に立って魅せると狂王種を相手取る。タフネスがイマイチだというならば、それをカバーする戦い方をすればいい。
Adelheidは立派な騎士となるためには通らねばならぬ道なのだと物語の騎士となるべく剣を抜く。
彼女が集めた敵を死繰りっとが殴りつけるのを続けながら、道を切り開き続ける。
「まー僕の一番の取り得は戦闘だからね。ぱぱぱーっと襲ってくるやつを倒していくとしよっか」
天十里は船の防衛を優先しながら飛び交う敵を受け止める。アクロバティックに飛び跳ね、魅せるような戦いを見せたのは励ますためでもある。
「……最近は陸よりも海の上にいる時間の方が多くなってる気がするわ」
アンナはそう呟いた。地面が恋しくなる辺り、海の女にはなれそうにないけれど、と彼女は肩をすくめる。
宝珠を探す者たちの支援を行いながら、敵を全て呼びつける。踊る様に、切り裂けば潮の香りが鼻先を擽った。
「死兆を退けらんなかったら、アイツもコイツも死んじまうんだろ?
商人として顔を広げてきただけに、知ってる顔も結構いてな。やっぱり助けになりたいって思う訳だ。ビジネスチャンスの損失にもなるし、なんとかしてやらねぇと!」
晴明の言葉に頷いたのはヴァトー。しかし、彼が意外に思えったのは管理番号「EA2B0013」――こと、十三がわざわざ助力を乞うてきたことだった。
(求められるのはうれしいが、本人に言うと怒られるだろうな)
そう視線を送るヴァトーから視線を逸らす。この世界に医療だけでは治せないものだってある。けれど、目の前の命を救いたいと願うのは間違いではないはずだと十三は『我儘』を口にした。
「救いたいんだ」
「ええ、ええ。死を迎え逃れられぬ呪詛と言うのは悲しいもの。しかし、それがなくとも私たちは滅びの運命の前に在る。嗚呼、それは何たる悲劇! 哀しい……ですが、悲嘆に暮れているだけでは終われません」
クロサイトはそう言った。一つずつでも目の前の事を解決していきたいのだと襲い来る者を打ち払う。
潮風の中であればインスピレーションも冴えわたるとベルナルドは特異運命座標のいのちの為だと刻限が迫るまで、為せることをすべく空を駆けた。
「『廃滅病』に対抗するために必要なモノが絶望の青にあるというなら、行かない訳にはいかないわ。
この手が少しでも救いの希望となるのなら、ね」
絶望の青の海域の中に存在する。そう思えばこそ、強敵が存在するのをアルテミアは理解の上だ。襲い来る狂王種に負ける事無く――対応し続けなければならない。
届けるものが手が視であろうと、人であろうときっちりとあて先まで。それこそが郵便屋さんなのだとニーニアは宙を駆けた。
「目的地までの支援、全力でやらせてもらうよ。それが郵便屋さんの信条だからね」
新しいものを手に入れれば、その価値で様々な犠牲が出るのも人類の歴史。愛するのはそうした人間たちであることをイースリーは知っていた。
「――ああでも、それでもやはり、誰も犠牲にならないことを私は望みます」
よりよい明日になるが為。イースリーはそう願う。
「大変な時ってきーて飛んで戻ってきたケド……カタラァナの家の人かぁ……」
何としても儀式を成功させないととミルヴィは前へと飛び出した。手にした獲物を握りしめ踊る様に海獣を翻弄する。
「さあ、踊ろ? こんなにきれいなステージ、もったいないじゃナイ?」
●
「頑張った奴が呪いだかなんだかで命を落とすなんておかしいだろ。絶対に何とかしてやりたい……頑張ろうな!」
ゲンセイは只管に狂王種を相手取る。船舶に乗り込む生き物全て退けんとやる気を見せる。
フローリカは孤立しないように注意しながた立ち回る。不意打ちを突かれぬ様にと攻撃を重ねていく。
(まだまだこの世界では未熟者の域だからな……。怪我をするのはまだしも、元の世界に還るまでは晴明を喪うわけにはいかないさ)
確実とは言えずとも対抗手段が講じられるということはいい意味で予想外であったとルル家は笑う。死兆にかかった仲間――主に自分の事だ――の為にも精いっぱい頑張らねばならないのだ。そうしないと玉の輿どころじゃなくて冥府に嫁入りなのだから。
「……サメやエイは狂王種っていう感じがするけれど……。
イワシの狂王種も居るのは、こう、違和感があるわ…」
エンヴィはナマコやウミウシもいるのかしら、と小さく呟く。クラリーチェも「イワシですものね」とぼんやりと呟いた。しかし、侮ることなかれ、と言うのもイワシである。
「話をすれば早速あの辺……いますね。禍々しいものが……」
あまり食卓に上がりそうにない生物だとエンヴィとクラリーチェは顔を見合わせる。
「さいきん、新しく召喚された方が、多いみたいですの……
そういった方々に、不安なく戦っていただけなかったら……わたしは、先輩として、胸を張っていられませんの!」
ノリアはつるんとしたゼラチン質のしっぽを波間に輝かせて隙だらけになってみせた。狂王種の目を惹きつけて只管に狂王種の行く手を阻む。
船を操縦しながらエイヴァンは狂王種へとその船事アタックする。ひるんだ強大なる敵を退けるために彼は進みゆく。
「遺跡に向かう皆を万全に支援したいからここで力の限り防衛するよ!」
やる気を漲らせるチャロロにモモカは大きく頷いた。「どろぶね……おーぶね……? みずぶねに乗ったつもりでいろ!」と水の精としてびしりと指さすモモカに行人は頷いた。
蒸留酒を3瓶、角砂糖を小さな袋に詰めて、あとは綺麗な水を個人的に用意する。そうして水の精霊へとお願いを一つ。精霊たちへのお礼は角砂糖だ。
「さあて、ワッカ。手伝ってはくれないかい?」
鮮やかな海を眺めつつベークはため息を吐いた。その体から感じる死の気配は紛れもなく廃滅病そのものだ。
「まぁ、この身をむしばむ呪いに関しては。イレギュラーズのなかでは僕が一番『マズい』んですよねぇ、現状」
危うく消費期限であるし、美味しく召し上がっていただけない(※召し上がられたくない)状態になってしまうのだ。
眠たげなきどーの傍らでセララがびしりとポーズを決める。
「魔法騎士セララ参上! 護衛ならボクにお任せ!」
空を飛び、そして、誰かの助けての声を聞きつけてセララスペシャルでアタック一発! 何事も形から。何事もしっかりとこなすのが大事なのだ。
「海~、海~。パパ! じゃなかった、アランさま。遊んでました、す、すみません」
怒らないで、とメルトリリスはしょんぼり気味。暫くロストレイン家より出してもらえなかった聖女ジャンヌは読書ばかりで疲れたのだという。
「つまり、おこなのです」
「おこって言うな」
呆れ顔のアランは船旅にも飽きてきたのだと肩を竦める。迫りくる死を退け魔種(クソ)を燃やすのも勇者の使命だとアランはメルトリリスと共に狂王種を退ける。
「狂王種っつーのも中々愉快なもんが多いっスね。
小せぇのからやたらデカイのまでいてバラエティ豊富っつーか」
海の生物ならばなんだって危険生物に早変わりと言うことだろうかと葵はぼんやりと見遣った。どれも危険な事には変わりはないのだが――周辺の警備はとても大事だと言うことをより考えさせる。
「死を招く病とは恐ろしいですね。病とは元来そういう危険を含んだものではありますが……意図的に起こせるとは魔種というのはすごいんですねえ」
それも妄執によるものだと思えば非常に四音の好みのお話ではないか。にんまりと微笑んで警備のために癒しを送りくすりと笑う。
「アルバニア・シンドローム……すごい、怖いね……でも、わたしよりかかってる人のほうが、ずっと怖いと思うの……」
だからこそ少しでも力になりたいとアクアは警備を続けた。あまりに遠くにはいけないけれど、近場なら何とかなるはずだと時間稼ぎを続け往く。
●
「あらあらあら、新鮮な海産物がこんなに沢山。
待っていてくださいまし、ヴェルフェゴアお姉様! とても美味しいシーフードをご馳走して差し上げますわ!」
にっこりと笑い手当たり次第に、と狂王種へと手を付けるアンゼリカ。さて、それが食べれるのかは定かではないが今それを彼女に伝えるのも野暮だろう。
「……俺も廃滅病にやられちゃったか。せめて新天地をイザベラ女王陛下へ捧げたい」
あの遥かなる大海を。史之は『辺にこそ死なめ長閑には死なじ』と口にして睦月の苛立ちをひ知りと感じる。
「ねえ、しーちゃん、また僕を置いてくの? 許さないから。それにイザベラって人が何って!?」
後で詳しく聞かせてと苛立った睦月に史之は「支援が到着した!」と告げる。
「殴るイズジャスティス、OK!? しのにいあんなだっけ!?」
まあいいやと日向は切り込み隊長として飛び込んだ。『春雷の』日向が行けばそれを肩を竦めて千尋はため息を吐く。
「史之、おまえの趣味の悪さは知っていたが……何があってここまでこじらせたのだ」
千尋が見下ろしたのはグレイスフルイザベラ号。もう何も言うまいと彼女はふるりと首を振った。
「廃滅病……それが、“絶望の青”に踏み入った人を絶望させるための呪いなのね――でも、それがどうしたの?」
特異運命座標は世界を滅亡から救う可能性を持つ唯一無二。ならば呪いなんかに負けないとジルーシャは笑みを見せた。
「イカ、タコ、イワシ、サメ、クジラ、やばい。魚類。クジラはしらないけど。
いっとくけどわたし、がちみにぱないぽこぱんきめるから。剣で。これはまじだから」
セティアは驚愕した。魚類のサイズ感じゃない鯨が現れたのだ。そもそも鯨は何類なのかと悩む事だってある。
「でも、わたしのなかでは魚類だから。おまえの敗因は魚類になる。魚類はたべものだからしょくもつれんさでだいしぜんのおきてでおまえは負け」
すごい理論があるのだとちら、と見た後、セレネは首を傾げ斃された鯨の傍に転がる宝珠を拾い上げる。
「……こんなところにいたんですね? 海から上がったらきれいに磨いてもらいましょう」
この宝珠が皆の助けになるのならば。胸に抱いて目を伏せる。誰かの大切な人が守れるのだ、この宝珠で。
「オレ、クジラってみたことないんだよね。たしか食えるんだよね? ウマイの?」
巨大な鯨を眺めてからイグナートは小さく笑った。クジラを目当てなのだという彼はコン=モスカ領から出立する際にもクジラについての情報を詰めていた。
「イカでもタコでもイワシでも魚介類なんてすべてからくボク達のお中に収まるべし!」
「ええ。そうね……。なんでも食材に見えるのは古郷の食文化のせい――でもないのかな」
美咲は自身と同じように食材に見えているヒィロを見た後に小さく笑った。油断せずに確実に仕留め続けるのだと斃し続ける。
「……マグロとか欲しいかも」
オパール・ネラへ向かう道すがら、美しい青を眺めてティスルは船の手配をしてもらったなら生かさなくちゃと前を向く。
「廃滅病にちょっとでも抵抗できるなら、やらない理由は無いでしょ? ってわけで皆がオパール・ネラにたどり着けるよう護衛するよ!」
顔を見せた狂王種を目の前に、氷彗は穏やかな航路を探してほしいと精霊たちに頼んだ。出来得る限り『そういう場所』を見つけられたならば体力を温存して進んでいける筈だ。
「はあ……宝珠拾いか……メンドいなぁ……そんなに大事なら宝珠なら一か所に集めとけばいいのにねぇ……」
ぼそぼそと呟きながら、リリーは視線がかち合った狂王種に「はあ?」と苛立ちを伝え続ける。
「さて、仕事だ。餅は餅屋。慣れているものに指示を仰げばそれで事足りるだろう。さて、ここからが本番だ!」
出来るだけ攻撃を受けぬように立ち回り、攻撃タイミングを狂わし続ける。視線を奪う様にして立ち回るマリアは船への攻撃を遮る様に身を投じた。
「何にせよ、冠位が関わっている以上、決戦は特異点のみで打倒することは難しいだろう。
その時に良い船と良い船乗りは必要になるだろう。特異点のケアもだが。彼らの無事も考えねばなるまい」
呪いを打破するべく、様々なことに思考を巡らせねばならないと愛無はそう言った。敵の布陣や法則性をチェックし、熟していかねばならないのだ。
「いえ、その。珠を磨いていたら落として割りそうだからとかそんなんじゃないですよ?
本当ですよ? 私か弱いメイドですもの、そんな力ある訳ないじゃないですかー」
やだなあとシュラは肩をすくめる。近くに現れた狂王種に対してシュラは攻撃を重ねていく。眼前に迫る蛸たちに彼女は容赦なく一撃を放った。
「無茶してんなよ!」
ライディスは敵の群れの中で孤立せぬ様にと船を救うが為に攻撃を重ね続ける。儀式に関しての詳しいことは分からないが必要だといえば手を貸さずにはいられないのだ。
「アルバニアは必ず討ちます、しかしその前に打つ手があるならば……仲間を失うなど! 御免被る!」
堂々と言ったカンベエ。ここで散るつもりはなく、そして誰かを散らせるわけにも行かぬと声を張り上げ、敵を引き付ける。
さあ、海へ落とせるものなら落として見せよ。これ以上は『甘くはない』と彼は笑う。
●
「廃滅病に、狂王種ね。面白いわ。呪いが返ったらなんて顔をするのかしら?」
くすくすと笑った02。巨大な生き物が小さく小さく刻まれたならどんな顔をするのか――そう思えば心は踊りだす。
「さあ、楽しく愉快に斬り合いましょう?」
難しいことは分からないけれど、イカ、タコ、サメ、クジラ。海の生物(狂)を何とかしないととソアは張り切って見せる。
「死兆! 廃滅病! うわあ、なんだかもう聞くだけで恐い言葉だね!」
なんだかやっつけるのもかわいそう、と思いながら『人に悪さ』をするのなら容赦もおけぬと雷が落ちる。
「海は広いーなー! 大きい! ……ってはしゃいでる場合じゃなかと、苦しんでいる人達の為にも呪術軽減頑張らないと!」
依狐は見渡す限りの海を眺めた。広く輝く海を眺めて、なんとかせねばとやる気を見せる。
絆楔にとっては噂でしか聞かぬ誰かは、きっと誰かの大切な人だ。そう思えばこそ、『かけがえのない誰か』の為に一期一会を胸に救うが為の手を伸ばす。
「慈悲は誰の為でもなく、自身のために振るうものです。倒れるまで、粘りますよ」
蛸の足がずん、と伸びる。切り裂いてハンナは「大きいですが、食べられないのでしょうか?」と首を傾いだ。巨大なその図体を切り裂けば、その傍を船が抜けていく。
剣を振るい、救うがためにと無量は情け容赦は見せなかった。ひらりとその裾を揺らし、跳ね上がる。
「流石に敵も察しているのか、数が多いですね。遅れを取らぬようにしましょう」
そばから飛び出したワモンは「海の平和はオイラがまもーる!」と海中を先行する。
飛び出す敵を無量がそして索敵を担当するワモンがアシカクラッシャーアタックにてタコを撃退していく。
「ちぃとばかし休んでる時に面倒な事になってやがるな? こっからは俺も助けに入るぜ」
ローレットの仲間が死にそうだとなれば、見殺しにするのも目覚めが悪いとルカは海上の敵を倒し続ける。新鮮な海鮮は美味しい――とはいうが、流石に食べる気にはならないとルカは肩を竦めた。
――飛行ユニット接続。テスト……感応速度誤差0.2秒。修正。動作確認。……問題なし、燃料良し。
「B.E.O1、『ハンター』出撃。 交戦開始」
ルクトは海上を行く船の護衛にあたる。援護が必要ならばいつだって駆けつけてみせると防衛任務に彼は当たった。
「カノエはひとりぼっちではありません! ともすればこちらにいらっしゃる皆様ひとりひとりがカノエの大切なお友達。そして仲間」
自己陶酔している場合じゃないと庚は首を振った。誰かのために、そう考えれば『チクチク』攻撃するのだって悪くはないのだ。
「ふーむ、私が一番やりやすいのは戦場ですね」
きりはそう呟いて、適材適所と獲物の『威力拝見』と笑みを零した。ざぶんと、顔を出したそれを受け止め、傷を惑が癒していく。
くるりと体の武器を反転させてから、一気にサメを切り裂けばその体は昏き海へと落ちていく。
「天が呼ぶ地が呼ぶ青が呼ぶッ! 仲間を救えと祈りが響くッ!
ローレットの仲間の命がかかってるって!? そんなの、協力しない訳にはいかないぜ!!」
それが勇者なのだとアリューズは船も皆も守り抜くと『ドカン』と一発威力十分の一撃を放った。
触れてはならないものに触れれば呪われるといわれればセレマはロマンチックだと口をした。
「呪いを解くのはボクのような美少年の起こす奇跡さ。キミたちは運がいいね。ボクのような美少年と一緒にいられんだから、ね」
体調すぐれぬものがいたならば、晴久は対応してみせると声をかけるが――その外見からだろうか、視線がちらちらと痛いのだ。
「ん? 私? いや、怪しいものではありません、他の皆さんと同じ協力者ですよ。いや、本当に……」
辻ヒーラーとして惑は努力を続ける。海の上、煌めく宝珠を手にしては、確保をお願いしたいと願い癒しを送る。
「わてが斃れさせんから、安心して戦ってな!」
●
「『死兆』、か…敵の意地悪さを物語るが如くに厄介な代物だね」
宝珠を出来る限り集めるために。海底遺跡へ踏み込んで、ヨゾラは息を飲んだ。その美しさは聖域と呼ぶにふさわしく。黒曜の煌めきと共に、海底へとイレギュラーズを誘っている。
絶望の青に挑み続ける人たちへの影響を少しでも緩和したい。その思いはきっと、この場にいるイレギュラーズ誰もが同じだ。
「……罹った相手を死に追い込む病……か……その進行を遅らせることができる儀式に……宝珠が必要なんだよね……?」
グレイルはそう呟く。より効率的に働くように一つでも多くをこのコン=モスカの聖域オパール・ネラで集めなければならないのだ。
「よう、さっそくおいでなすったか」
海底遺跡。ロマンチックで仕方がないが――これから罹る仲間達のためにと一悟はゴーレムを相手取る。
ゴーレムは何らかの術式で動いているのか、じわりじわりとその体を揺らし続けるのみだ。
「死兆――死んじゃう呪いなんて怖いね……」
魁真はそう呟いた。聞き耳を立て、トラップへの対処を罠対処しながらじわじわと進み続ける。
ゴーレムとの戦闘はなるべく避け、最短ルートを進んで宝珠の確保へと進む。
「ええ!?」
愕然としたローズは廃滅病の前では萌え対象(すてきなひと)も死んでしまうのだと愕然とした。それは万死に値することではないか。健やかなる時も、病める時も、萌えに生きる淑女としては死活問題だ。
「そうですね。世界を救う為、頑張っている皆さんを放ってはおけません……!」
カスミはやる気を見せて罠対処を続けていく。悲し気なローズも萌え(あい)のために一念発起だ。
「なんだか遺跡探索を楽しんでる方もいるんですね……?」
きょろりと見回すカスミにリルカは「神秘的なところだわね」と呟く。オパール・ネラは美しくも、恐ろしい場所であった。地道にマッピングしていこうとライトを手にしたリルカは遺跡探索を共にする仲間たちを振り返り宝珠はどんな大きさなのだろうと瞬いた。
「よーし、この大ベテランのサンディ様が遺跡探索を教えてやるからしっかり……あれ? なーんだ、精鋭ぞろいじゃねーか」
にぃと笑ったサンディ。精鋭揃いなのだから次に求めるのは遺跡でより多くの宝珠をゲットすることだ。
神様がどのような姿であるのかも気になる。祠を探すがために『監督』としていざ一歩。
「宝珠……どんなのだろー? 祠もみたーい! とゆーわけで頑張るぞー!」
ゴーレムの探知や罠は仲間たちに一任して宝珠をより多く確保するためにシキは尽力する。
祠があるということは何か祀られているのだろうかと首を傾げるが、コン=モスカの聖域と言うならば神を祀る場所があるのも頷ける。
「早く強くなってオリヴィアと肩を並べられるようになりたいし頑張ろう。贈った指輪を約束から本物にしたい」
礼久はそう呟いた。宝珠を集めて儀式を行えば多くの加護を得られる。この祠の宝珠を多用したことで何か起こらないかの警戒も怠らぬ様にと彼は周囲を見回した。
「海底遺跡、聖域……そこでの宝珠の探索だなんて、冒険者としてこれ以上ないわくわくでいっぱいだよ!」
それが死兆を受けた仲間のためになるのならば全力で挑むしかないとシャルレィスは捜索し、リルカが言った通り壁の間にきらりと輝く何かを見つける。
「これ――」
「わあー、これが宝珠なのですわねー」
ぱちりと瞬くユゥリアリア。周辺の警戒を怠らず、海底湖等の存在の事も考えて、儀式に纏わる情報やより強化する可能性がないかと調べ続ける。
「ふむ。不謹慎かもしれんが……わくわくしてくるな、これは」
汰磨羈は仲間の死角をフォローしながらの索敵を担当する。曰く、周辺にはゴーレムが存在しているのだそうだ。
飛び出したゴーレムに対してラルフは錬成した反物質粒子を光線として発射する。その輝きに眩む様に揺れたゴーレムにミシャは「この辺りは守護者が多いのね」と呟いた。
「ああ、ならばこの先に進むのがいいだろう」
「ええ、同感だわ。隠し扉なんて存在していたりしないかしら?」
玄鴉は前を行く二人の背中をまじまじと見遣る。ファミリアーを使用して積極的な探索を行うレジーナは超方向感覚を生かしての遺跡内の効率化を目指す。
「我(わたし)は支援を行うわ。警戒は密に! 気を抜いたその瞬間が死だと認識しなさい!」
「罠は漢気で行きましょうそうしましょう……え? だめ?」
「ダメだわ」
SpiegelⅡはレジーナにそう言われて首を傾げてから頷いた。鉄壁の守りだと自負するSpiegelⅡだがニートなので体力の面では勘弁してほしいのだった。
(いや……イレギュラーズって女性が多い気がする……それにしたって、なあ……)
今はレジーナに雇われているのだが――肩身が狭い気がして玄鴉はため息を吐いた。
「―――――」
唐揚げを口に放り込んでからナハトラーベは宙を踊る。鼻がいい彼女にとっては中々に死臭漂う絶望の青は苦しいのだが、唐揚げがあれば話は違う……と言うことだろうか。
「キッチュ・コリンズの一件以来か。急造だが…オレも多少は成長している――フフ、楽しみだ」
そう笑ったウォリアにアーリアは「ふふ、私だって強くなったところを見せちゃうんだから!」とウィンク一つ。
飛び込んできたゴーレムへとウォリアが距離を詰める。その背後より、たっぷり酔わせてあげるとアーリアがウィンク一つ。
「さあ、今よぉ、ウォリアくん!」
危険がいっぱいそうで、だからこそ遺跡の探索なんてしたことがなくてすごく楽しみで。実験体37号は頑張るとやる気を漲らせる。長丁場になりそうだ――だからこそ温存しながら精霊さんと頑張るのだ。
「皆の為にできることは少ないけど、少しでもあるなら。私なりに力を尽くさなくっちゃ。お兄ちゃんもきっと、そうやって頑張るはず」
メルナはそうやる気を出した。実験体37号が宝珠を集める中、ゴーレムを相手取りメルナは飛び込んでいく。
「なんや、廃滅病? ちゅう磯臭いところでかかってしまう病気があるんやって。
……え。ホントは魔種の呪いなん。ルフやん博識やねえ」
「生きて戻るのって得意でしょ。さっさといこ」
ブーケはルフナの言葉にくすりと笑う。動き回るゴーレムを牽制し距離をとる。目的はあくまで宝珠集めだ。
ゴーレムもいるしじめじめしてるし、こんな所は似合わないとルフナは宝珠を服の裾で拭って集める。
ずずんと迫るゴーレムに対してハルラは飛び込んだ。戦う必要があるというならば情けも容赦も必要はない。
宝探しが得意なイレギュラーズ達が集中できるようにとゴーレムの前へと積極的に飛び込んでゆく。
●
「やーやー、ヴァイセンブルク家の一人クリスだよ。マイシスターマリー、一緒に行こうか。
……で、ところでさー、魔法少女って何? ねぇねぇ、聞いたぞ。かわいいフリフリの衣装着て同年代のお友達ができたんだって?」
クリスティーナのその言葉にハイデマリーの空気が凍る。魔法少女が父にばれたならば姉にも――というのは当たり前だろうか。
「……あ――姉上は何を言っているでありますか?」
廃滅病には罹りたくないけれど、とウェールはレーゲンも危険かもしれないからと手掛かりを探すために海底遺跡内の探索を続ける。
「廃滅病かあ……怖いね……他人事じゃないのもあるし……」
アクセルはちびスライム探偵さんと共に宝珠を探す。一番奥にあるという祠に宝珠がたくさんあれば嬉しいけれどとずんずんと進む足を止めることがないのはイレギュラーズである以上、この海域に蔓延する病は隣り合わせだからだ。
「迷惑をかけないようにがんばりますにゃ」
緊張したようにアステールはそう言った。帰り道を覚えておくために、ザックに拾い集めた宝珠を入れながら記憶を続けていく。
「くっくっく……遺跡探索か。我が全てを見通す魔眼が役に立つだろう…………」
そういったパーフェクト・サーヴァント。透視を魔眼と言った方が効果が増幅されそうだとその口調を続けていく。
(隠し部屋なんかあるんですかねー。はっ、テレポートで壁の中だったり……?)
その様子を眺めながらニャーは皆間借りしてる廃屋敷に入った事や住んでるから屋敷間借り隊という名を付けたことは自身乍らセンスがいいと胸を張る。
「みんなの分の宝珠も運搬性能でいっぱいもって頑張るにゃ」
「……とりあえずニャーさんや。愚痴が掛かれた日記とはいえ武器なんだから破るのはやめような?」
困り顔のアンファングにニャーが首を傾げる。周辺環境を傷つけないためにと言う気づかいはばっちりだ。
死兆は怖いけれど、とレーゲンは保護者のウェールやグルッグもいるなら安心だと宝珠を持ち帰るために無理せず進む。
「罠っぽいものやモンスターが来たら知らせるっきゅ!」
歩く音はただ静かに。見下ろした水面の中に光る宝珠を見つけては蜻蛉は唇噤む。
「こうしてると、あれだ。いつだったか、嬢ちゃんとやった“星の子”探しを思い出さねぇかい?」
「……よお憶えてる、懐かしいわ。お空に帰してあげた……綺麗やった」
縁の言葉に蜻蛉は目を細めた。彼より感じるのは水の香ではない死の気配。それがどこか寂しくて。
呪いの病は放っておけば死んでしまうから。こうなってよかったと思っていると目を逸らして向き合えなかった者を見られると縁が呟けば蜻蛉は掌に堕ちた宝珠を眺めてからバカ、と唇でだけ形を作った。
「冠位の魔種による呪いとは、厄介な物だ」
「ひゃあ!」
びくんとしたルアナにグレイシアは「何かあるのか」と見下ろした。ルアナの勇者の勘がその場所に罠があることを察知したのだが――
「ほ、ほかのだれかが踏んだら困るよね!? 印おいておこ……」
『わな』と書かれた札を傍に置いて。とりあえずは気づいてくれればと考えて二人は奥へと進んでいく。
「わな……? ふむ……儀式にはたくさんの宝珠が必要、と。
それならば探し手も多い方がいいよねえ。ということで、僕もお手伝いを」
穏やかに津々流はそう言った。広い遺跡探索は人手を必要としている。自然知識や植物疎通に精霊操作を駆使しては植物たちにどこへ向かうべきかを教えてほしいと声かける。
「植物たちも廃滅病には怯えているみたいだ」
「そうでせうか……オクトさんからの情報ですと絶望の青を進もうとすると必ず直面する脅威のようですから、対策は講じていきませんとね」
その病を吹き飛ばす手段。そして、アルバニアと呼ばれる強大なる敵への対処。茫と考えながらヘイゼルはふらふらと歩き続ける。
「こう見えて私海洋にずーーーっといるんだからね!?」
そう言ったマリリンはお手伝いしますから、と船で叫んだ。「何でもします! 本当に! 何でもしますから!」
その声を聴いて振り向いたデボレア。せっかくだからと船の警備にあたり宙より周囲を見回していく。
「こないにえらいおっきな水溜まりの上を進むんこわいなぁ。
どこを見ても水、水、水……深緑みたいな深い森は樹海なんて言わはりますけど、こんなんやったら傭兵の砂漠みたいやわぁ」
そう呟いた清音。冷たい海に棲む魚をも見通すためにと弓を穿ち、そして敵を屠り続ける。
「一之太刀はお任せください。
死兆たる災い、病。それら悉く、斬り祓って、露と晴らしてみせましょう」
ゴーレムを切り裂いて、紗夜は静かに見据える。数え三百超える切っ先は絶望を切り裂くと彼女は信じ、刃を振るった。
霊魂たちに誘われユースティアはゆっくりと最奥を目指す。道へと付けた目印はここを誰かが通った後だろうか。
索敵が為に周囲を見回し、飛び込むゴーレムへと剣戟と魔力を伴い撃退を行い続ける。
張り切り屋の小鳥――ヨタカを見やってから武器商人はくすりと笑う。古代遺跡にも興味を惹かれ心も踊るというものだ。
懸命に宝珠を探すヨタカをサポートしながら武器商人は彼の心が限界地点まで来ていることを悟る。
「宝珠だ……恐かった……もう、誰の死も恐れずに済むんだ……」
「ン、頑張ったね。きっと良い方に事が進むさ。さ、もう少し探してみようか」
●
廃滅病の進行を抑えるためと言えども宝探しと言われれば心が躍るのは仕方がない。一人なら不安になるかもしれないけれど――傍らにはいつもの通りの旦那様。なんと心強いのかとポテトは笑みを浮かべる。
「必ず宝珠を持ち帰ろう!」
「ああ。必ず」
頷くポテトにリゲルは正月の深緑でのトレーニングが功を為したと笑みを浮かべる。最奥までのサバイバルは古代遺跡のダンジョンアタックで経験したことでもあるのだ。
エマは本領発揮してみせる。忍び込むなら単独行動が最適だ。忍び足でそろりそろりと歩きながらトラップの痕跡を探し続ける。
「ふんふん、古代遺跡ですか。忍び込んで宝珠を取って来いと。
ひっひっひ、いいでしょういいでしょう。そういうのは比較的得意分野です」
感染の可能性があるのは誰だって同じだ。女王にはイレギュラーズに任せてよかったといわれたいとラダは小さく呟いた。遺跡内部の地図を作成することはモスカの許可も得ている。
「話を聞く限り、挑むのは今回初ではないはずだが……詳細がないのは聖域だからだろうか」
もしも分からないならば歩けばいい。大いなる者として、道を切り開くのがこのデイジーだ。
「ダンジョンアタックなのじゃー。宝珠を集めて儀式を大成功させるのじゃー」
「死兆もだけど、『宝珠』ってのも気になるな」
洞窟に秘宝、冒険だとわくわくしてくるのだとカイトは自然知識を用いて自然物と宝珠の違いを観察する。遺跡内には様々な宝飾類も存在するが聖なる気配を放つ宝珠はその中でも一際輝いて見えるのだ。
「さて……カタラァナのリサイタル。バックダンサーも悪くはないわ。
地味な私たちにはピッタリよ。ね、ウィズィ?」
ウィンク一つ。小さく笑って、捜索をする司書、イーリンはか弱いのだから護衛をお願いと恋人へと声かける。
「そーね。皆の為に踊るのも悪くないさ」
ウィンクを返してウィズィは何時もの如く、『君』への思いを武器とする。お宝さがしならばこのメンバーにお任せと豪語するのはこれまでの経験からだ。
「ダンジョンか。ダンジョン探索と言えば、そりゃあまあ僕の出番だろう?
うん。先頭は僕が務める。通路では僕の足跡以外を踏むなよ?」
冒険知識を生かして、伝説の3メートル棒で足場を確かめるアトは『観光客』として慣れた様子で遺跡を進む。
「ダンジョン探索はそれなりにこなしていますからね! 任せてください! ……欲を言えば死体があるといいのですが」
聖域ならば存在しないのかとねねこは小さく呟く。変わった死体があればお持ち帰りしたい――けれど、魔種の呪いは病とは少し違うのだろうか。解明に時間がかかるのはそれほどに難しい事象であるからに他ならない。
「さて、強制的な余命宣告の呪いと言うのもえげつないものだな。本当に、厄介ごとばかり押し付ける奴らだ」
紫電はそう呟いた。か弱い女性陣に被害を与えるわけにはいかない。ならばゴーレムを倒して見せようと紫電はひらりと前線へと躍り出た。
「我が旗を見よ!」
罠に気を付け、そして往くべきを進むのだとベルフラウは仲間を鼓舞し、ゴーレムを引き付ける。床のスイッチに触れかけて危ないと一瞬足を引いたのはご愛敬だ。
「死兆ですか……本当に嫌な響きですね。レッドさんが一人で行くというのも心配です。
女性はいつも男より前に出ちゃいけないって相場が決まってるです。いいです?」
そう言ったアルヴァにレッドは目を丸くしてから「ありがとうっす」と頷いた。
「危険も承知の上っす。アルヴァさんと僕で皆を守り切ろうっすよ」
調査にあたったイレギュラーズ達をマルクは回復を続けてサポートする。手狭な通路での戦闘でも敵だけを打ち抜くためにとマルクは癒しを続ける。
「気力は充填できるから、回復は厚めに展開できるよ。安心して」
頷いたダーク=アイ。人を救済するのが自身の役目であるという自負の許で長くダンジョンに潜り続ける。
祠を目指し、人々を救済するが為――何千、何億年と終わらぬ試練を、死ねぬ体を滅ぼすための――という場合でもないとダーク=アイは静かに目を伏せる。
「孤島というからには、あー……よしよし。ちょっと探し物があるんだけど」
精霊に声をかけて、ルーキスは宝珠がどこにあるかと見回した。男の子の浪漫が眠る無人島対策。浪漫イコール宝珠ではなさそうだとルナールは小さく笑う。
「全部持って帰ったら怒られそうだが……。こういう時はランタンがあればロマンティックなんだろうか?」
「わはー、見て。分かり易い障害」
飛び出したゴーレムにルーキスとルナールが構える。その傍ら、宝珠の探索を行っているマテリアはトラップが多いのだと見回した。
(八面体だったらボクが宝珠と間違えられるのかもしれないな……?)
●
鼻が役立てばいいが、とカナタは祠を目指す。祈りが力になることは知っている。お供え物も用意して、いざ、最奥を目指してぐんぐんと進んだ。
洞窟の奥はどうなっているか。それこそ、未知の空間なのだ
道がなければ道を作る。道に障害物があれば取り除くのが働き人である本能だとアンジェラはずんずん進む。
島までの間は船の掃除くらいだが、洞窟内ならば出番はあると『お掃除』を続けていく。
「折角です、最深部まで踏破してみるとしましょうか。……本当に辿り着くかはともかく、潜る目標としては悪くないでしょう」
穏やかにそういったアリシスに冬佳は頷いた。聖域への立ち入りを許してくれるというのはありがたく、実際に探索するのはイレギュラーズに他ならないが『大勢を聖域へと立ち入りを認める』と言うのはコン=モスカの歴史でも中々にないだろう。
「ご厚意に応える為にも、一つでも多くの……宝珠、でしたか。それを集めねばなりませんね」
冬佳に頷いた舞花はゴーレムが侵入者用の守衛なのだろうかと壊れたそれを見遣ってから小さく呟いた。古き時代から設置されていたのであろうそれは随分とくたびれてはいるが魔的な力で動き続けている。
「まあ、探し物をして探索する以上、奥に進まざる得ないのは確か……到達領域が広がればそれだけ多くの宝珠を入手できるようになるはず……か」
「ええ……。探索は慎重に。この深海の海底洞窟が聖地聖域であるならば、或いはこの遺跡と洞窟がモスカの教えの在り方に関係するのかもしれませんね」
独自の宗教観を持つのだと聞いているとリースリットは呟いた。深海住まう大いなる神へ祈りをささげるというのならば、その神の膝元に存在する宝珠を求める――と言うことか。
「死兆を何とかする為に、私に出来る事をやらないと!」
フェスタはやる気を漲らせ、たくさん宝珠を見つけないとと周囲を見回した。トラップが温度視覚で判別できた。それ以外にも様々なトラップが存在していることがその目で、捜索で見て取れる。
必ず救いたい人がいる。それは愛しい相手ならば尚更だ。幻は下衆にジェイクを殺されて堪るものかと口にした。
「僕があんな下衆を許しません」
「ああ。魔種の思惑で死んでたまるか。幻との未来をこの手で掴んでやるぜ!」
ハムスターを斥候として使用しながら遺跡内部を二人で進む。宝珠を少しでも多く確保して未来を掴みたいという気持ちは同じだ。
カンテラを持っての探索サポートを行いながらフィオナは遺跡の内部を進んでゆく。
そして、目の前には簡易的な補給地点たるゴリョウの『オークの休憩所』が存在した。見つければラッキーだと彼はおにぎりと麦茶を用意する。
セーフゾーンの確保としてできる限りの宝珠の確保に走れば、そこは一番の『地点』となる。宝珠を一手に集め運搬するもの、そして、また探索に行くものと一種のセーブポイント状態だ。
人を殺したりとしなくて良いとなれば精神的には気楽だとヒカゲは柔らかに息をついた。と言っても危険であることには変わりはない。気を抜かずに行きたいとヒカゲは周囲を見回す。
「罠への対処と索敵を行いながら。うん、我ながらダンジョンアタックには向いていそうだ」
病を破壊することができないのならば、リジアは『言われたことを実行する』しかないと認識していた。
宝珠に触れれば破壊してしまうかもしれないからと彼女が担当するのはトラップの破壊だ。
「……しかし、種類があると少し気分が高揚……いや、やりごたえというのか……破壊できるだけ破壊するか……」
リジアの傍らでダークネスクイーンは仁王立ちして笑みを浮かべた。そう、ここに儀式に使用する宝珠があるのだ。
「さあ往くぞ!我に着いて来るが良い! 遠からぬ者は音に聞け!近くば寄って目にも見よ!
我こそは悪の秘密結社『XXX』が総統! ダークネスクイーンでああああああああぁぁぁぁぁぁ……」
「……」
リジアが破壊する前のトラップに見事にホールインワンしたダークネスクイーンはそのまま落ちていったのだった。
「成程。……ううん。海を目指す同法が減ってしまっては大問題でごぜーますからね。気合入れていきまっしょい」
マリナは冒険スキルを活かして宝珠を『バリバリ』集め続ける。集めて持ちきれない分はゴリョウの元へと一旦運び、奥へ奥へと進んでいく。深海洞窟へと潜り、集めた宝珠の数は数知れず、だ。
「何故ワシがこのチームに……ワシはスキルリセットなぞしておらんぞ。
突っ込み役か? 突っ込み役なのか? 普段突っ込み役をやっておるハロルドが暴走しておるからか?」
士郎が額を抑えてハロルドは笑う。堂々と胸を張る。クラス:ハンマーマンとして!
「勿 論 俺 も ざ ん げ ハ ン マ ー し て き た!」
胸を張ったハロルドにお願いされたレナードことパン屋さん。強さはからっきしだぜ、と笑った彼にハロルドが頼んだのはいわゆる『初心者向けの優しいざんげちゃん』にハンマーでどつかれることだった。
「ええ……んなこと思いついても普通やらねぇぞ……」
●
「よくわからないけれど それがあれば おともだちが たすかるのね?」
ポムグラニットは首を傾いだ。助けたい、けれど、索敵なんて言う『難しい』事はできない。なら、突き進むのみだとぐんぐんと足を進め続ける。
順路や地図なんて意識はしない。突き進んで、突き進んで兎に角宝珠を手にしたいのだと決意は強い
危なさそうだからなるべく入りたくはないけれどとメリーは入口よりじいと見つめる。先行したファミリアーが進む中、トラップやゴーレムに気を配り中の様子をしっかりと把握し続ける。
「オォ……皆様、どうか、私に構わず先へ。私のようなものでも、盾くらいにはなれるでしょう」
ビジュは宝珠を集めつつ、万が一の事を考えてゴリョウの元へとそれを預け続ける。
先往く味方の被害を抑え、出来る限りの宝珠を集めることこそが最優先事項だ。
トラップを避けながら進むグレンは防御固めて罠にかかれば装甲で防ぐというわけにはいかなさそうだと調べ続ける。人為的なトラップと口にして彼がじいと見たのは苔の生え方や水の流れだった。
「……つっても、自然知識はないからな。有識者に違和感について聞いてみるか」
音の反射を確認しながら鈴音は海底での士気をアゲアゲにすべく演奏を続けていく。
「宝珠って光ってそうだな。みつけたら片っ端からかき集めるネ。宝珠キター(゚∀゚ 三 ゚∀゚)」
突然の罠をよけ宝珠を探すべくきょろきょろと見る鈴音の傍で咲耶は自分自身も絶望の青の海には潜ったのだとどこか居心地の悪さを感じていた。
「とほほ、仕方ない。拙者も少々真剣にやることと致そうか……」
確実に死に追いやる病と言うのは呪いと呼ぶべきなのだろうと竜祢はくつくつと笑った。輝きを失わぬ様にと宝珠を集める竜祢はゴーレムと相対する。
「暗視発動! ホージュ探し開始!」
リナリナは楽し気に走り始める。宝珠だって、発見場所と似たパターンに存在しているはずだと宝珠を探せば、ひとつ、ふたつと転がりだした。
「オズはあまり探索向きじゃあないけどねぇ。オズは魔法使い(物理)だから!」
皆のお手伝いをするとゴーレムを相手取りナイフを使っての多段牽制を続けていく。魔法とは科学であるとオズは楽し気に攻撃を与え続けた。
「OK! 探索は任せろ! こう見えて結構得意系ですよ私は!」
ラップでも歌っとけと楽し気にハッピーはリリック刻む。ビートに乗ってる場合じゃあかったと宝珠に向かって文字通り一直線。だって幽霊だもん!
「正義の海賊に掛れば、お宝を見つけるのはわけないんだからなっ」
ふんすと卵丸はそう言った。沈んだ場所へとその身を投じて、深海洞窟をぐんぐんと進みゆく。何処か、存在するだろうかと奥へ潜れば、きらりと輝くものが存在した。
「ピクニックだね、分かるとも!」
リウィルディアの言葉にアリアはくすりと笑った。宝珠集めももちろん重要だが、楽しみながらの探索だって悪くはない。
「……あ、このサンドイッチおいしいよ!」
アリアは楽し気に笑った彼女に弁当を食べながら進むのも楽しいものだとリウィルディアはバスケットに宝珠を入れてくすりと笑う。
「くっそ……死兆……糞親父の話が本当ならみんながヤベェじゃねぇか。
それに親父も……なんとか治す方法……最低でも肩代わりの方法を探さないと……」
プラックは最奥まで進んだ。そこに何か情報があれば、とそう願えども一つの宝玉が飾られているだけだ。コン=モスカにとってそれが大事であることは分かる。ここが聖域であることもわかる。
その病は、アルバニア・シンドローム。かの魔種によるもの。ここでは対処はできないか、ぎり、とプラックは唇を噛み締めた。
●
「廃滅病の進行を遅らせる手段が見つかったというのは良い知らせですね。
儀式に協力するために頑張るとしましょうか。苦しんでる仲間のため、そして明日の我が身でもありますからね」
沙月はあまり人が立ち寄らなさそうな場所を、と意識して重点的に探し続ける。宝珠が岩陰に落ちているのを見つけ、そっと懐へとしまい込んだ。
「やっぱり隅っことか狭い道とかには何か隠されてそうッスよね!?」
幸運に任せて鹿ノ子は探すのだと周囲をきょろりと見回した。ランプで照らせば光を返す宝珠がひとつ。
その調子で見つければ背後にずずんと迫る影がひとつ。ゴーレムを見遣り、そちらの方が得意だと彼女は微笑んだ。
トラップ! うーん、パワーでなんとか! ゴーレム! うーん、崋山の刀でパワーでなんとか!!
秋奈は勢いでぐんぐん進む。鼻歌交え探索しながら暗がりだって見える見えるとずんずん進む。
「戻れない! ……なら壁をぶっ壊して……はやっちゃだめだよね? ちぇー」
それを眺めて舞妃蓮は長丁場になることもあるだろう、と持久戦に自信があると探索を続けていく。
「アリスだ。よくわからんが私も行こう。なんとかなるだろう」
癒しを与え、ゴーレムとの戦いを出来る限り支え続ける。廃滅病に立ち向かわねばならないとガヴィは宝珠探しのお手伝い。
「ええ、きっと何とかなるはずです。大丈夫、うまくいきますから……」
励ます様にそう言ったガヴィ。あの海を越えることは海洋王国の悲願で、しかし、その海に踏み入れれば体に蝕むものがある。
ならば、治さねばならぬのだ。どうしても――なんとしても、だ。
「一大事とはいえ遺跡と聞くと探索したくなる性分だからな」
そう言って颯太は周囲を見回した。ランタンを手に宝珠を探し、きらりと光りを返した宝珠を拾い上げる。
それは磨けば聖なる気配を纏うだろう。聖域の中に存在するものひとつひとつをしっかりと手にしながら彼は進んだ。
オパール・ネラの遺跡探索と言われて文人は興味はあるが――一筋縄ではいかない雰囲気を感じていた。
冒険の心得をもとに警戒しながら探索を進める。危険はもとより承知済み。死することは避けようと傷つくことはおそれはしないのが軍人としての確固たる意志である。
同じ仕事を熟した仲間が『死兆』を受けたと思えばこれ位はお手伝いしたいとセリアはやる気を漲らせる。
「宝珠っていうのを探せばいいんだよね? それ以外にも何かあるのかな」
聖域と呼ばれるくらいだ金目のものもあるのかも……と歩き出して、目の前のゴーレムを見つければ、それと接敵する前に遠ざける。
「うおー、こわすことならまかせろーなのです。ゴーレムだろうがトラップだろうが私の魔砲で一撃なのですよ」
絵里はそう言った。遺跡を壊すな、と言われたらしょんぼりと肩を竦めるだけなのだ。ダンジョンアタックってゲームを思い出してなんだかワクワクするのですと楽し気に足を進めていく。
「私である」
アニエルはそう言った。かような事態であるならば尽力するほかにないと彼女は探索を続けていく。ゴーレムをばこんばこんと壊し続ける絵里を眺め、トラップを看破しながらアニエルが宝珠を拾い集める。
「惑う心を正道に導く愛の炎の導火線! 魔法少女インフィニティハート、ここに見参!」
常の如くポーズを決めてから、真顔になった愛。魔種の考えつきそうな下劣な行いを許しては置けないと愛の力で宝珠を集め続ける。
「なかなかどうして面白い」
『だろー?』
「お陰で筆が進む。よし、今度はあれだな!王道の中の王道、冒険物の劇にしてみるか」
『そうだね。まぁ、今は目の前に敵が居るからさ?ちょっとそのメモ一旦閉じ……もしもし聞いてます!?』
会話を重ねるのはTricky・Stars――虚と稔の二人だ。風の向きや仲間の足跡、そして自分がつけた目印を頼りに進んでいく。
「うっわー……どこまでも続いてそうですねー……? えへへ! 湿っぽい所は大好きです!
ご主人様が折角頑張ってくれましたし私も頑張りますか!」
ライムはファミリアーを先行させながら迅速に進み続ける。罠が多い以上、注意も重要なオーダーだ。
「廃滅病……七罪の能力というのは本当に格が違うな。
制限か……結界を張った生物が大陸に進出することはない、のか?」
レオンハルトは七罪とは戦う運命だと小さく呟いた。このまま指を咥えて待っているわけにも行かないのだ。
「オーッホッホッホッ!!
わたくしの発光とジェック様の視力があれば見通せないものなどございませんわー!」
いつも通り楽し気にぴかりと光ったタントにジェックは楽し気に頷いた。早速探検隊スタートだ。
「アタシは暗いトコも見えるし目もイイ方だし、タントもヒカってるし、視界は問題ナサそう。
大丈夫、タントのトコまではイカせないヨ。ソノ代わり、ふふ、応援はマカせたからね?」
心底信頼しているからこそ、心の底から応援一発。ファイト、ファイトなのである。
「トレジャーハンターじゃないけど、こういうのは嫌いじゃないし、ね……」
アイゼルネはそう呟いてから気配を消して進みゆく。ゴーレムはできる限り無視をして目的の宝珠を手に入れたいのだ。
「冠位魔種の呪い、廃滅病か。ベアトリーチェの時に比べれば随分迂遠なやり方だね。
――とは言ってもこれはまだ月光人形みたいなものか。相まみえた時、あの暗黒の海みたいな何かがきっとあるんだろうな」
サクラは勝てるかな、と呟いた。その掌の上で宝珠は煌めいている。心の曇りを払う様に指先でこすってから、きっと、と口にした。
きっと――勝てるはず。
●
集まった宝珠を磨きながらシルキィはポシェットから取り出したマイふきんで一生懸命に拭いていく。
裁縫スキルを駆使して作ったふきんは彼女の思いが込められているからか、宝珠をより美しく輝かせた。
供物を見回してから蘇芳はその鮮度が落ちぬ様にと気を配る。ふぐ提灯を飾り物として作成し、祭殿に並べ立てた。
「死兆……廃滅病……なんて恐ろしい呪いなのでしょう。で、でも、少しでも退けられる力になれるのでしたら……!」
メイメイは宝珠をぴかぴかに磨く。どうか、皆の大切な人を救ってくれるようにと祈りを込めて。
「芒さんは別に人の情が無いとかじゃあないんだよ。他人と分かり合えることなんてない、って知っているだけで……だから知り合いが大変だとなったら助力をすることには、やぶさかではないんだよ」
芒はそう言った。専門外の事は一般人にはできないからと儀式の準備をさせてほしいと彼女は言った。神道にはそれなりに詳しいと準備を怠ることなく進めていく。
「うん、綺麗になった。次のを持ってきてくれるかな?」
宝珠を磨きながらルシオは振り返る。「宝珠? これを磨けばいいんだな……どうだ!」と胸を張ったソロア。
しかし、拭いてから握るとまた指紋がついてしまうことに四苦八苦。
「ん、まだここが曇ってる気がする……。よし、これだけ磨けば綺麗に……んんん、曇ってる?」
それも中々に工夫が必要そうなのだ。周囲をきょろりと見回した鈴々吉。ネガティブは今日もちょっぴり胸の奥。
(頭領に、仲間の皆が手伝う……大切な儀式の準備? おれもやりたい……!
おれ、頑張る……から。だ、大丈夫。不運になんて負けない)
やる気溢れる鈴々吉と同じように角灯は皆で頑張るというのならばとても嬉しいと宝珠を運ぶ。
朝香は宝珠をきゅっきゅと磨き続ける。大量のおにぎりを持ってきているからあとで休憩に食べようと愛情たっぷり握り飯を手に朝香は笑う。
鬼灯は部下たちとの儀式の手伝いだと供物を運ぶ。それを手伝うのは彼の『嫁殿』だった。
『みんなとお仕事楽しいわ! ね、鬼灯くん!』
「ああ、そうだな。嫁殿」
楽し気な『嫁殿』を見れば鬼灯もテンションも上がり手伝いにも力が満ちる。
「Hello! 次はここに置くよ! 本職は小包とお手紙だけなんだけどね! 出血大Service!
死兆って凄く危なーいんだろう? きっと不安な人も多いよね! でも僕が来たからにはNo problem!」
荷物を運びながらにんまりと笑うハロー。そうした明るい言葉が誰かを勇気づけるというものだ。
宝珠磨きや整理の手伝いをし続けるアルメリアは延々と、延々と宝珠を無心に磨いた。
(これも修行よ、霊験あらたかなマジックアイテムに触れ続け、集中力と神秘の力を高めつつ、ひたすら磨くのよ……)
その様子に嘴は頷く。魔種だって治したいと思うのは『お医者さん魂』によるものだ。絶対に治したいと決意する。しかし、医学が通用しないモノにはどうしたらいいのかと悩まし気になるのも仕方がない。
「変な病気、あたしの力じゃ治せないのがすっごく悔しい……!」
フランはそう言って唇を噛んだ。クレマァダの儀式に体力や気力を使うならばそれを支えて今は『治すため』の猶予が欲しい。そう願うのは誰もが同じだ。
「皆必死に戦っているのに……そんな変な呪いのせいで戦いにくくなる上、死が近づいてくるなんて……」
Erstineとて他人事ではない。それは誰かの為であり、自分の為でもある。まだ、死ぬわけにはいかないのだ。
生きて、ラサに戻らないといけない。その決意を胸に儀式の手伝いに向かうのだ。
●
「ふふふ、前準備は抜かりなくじゃ」
一大事なのだから焦らず慎重に、タオルや皿の準備はばっちりだというアカツキはくるりと振り返り、リンディスに「重たそうな荷物じゃなー?」と首を傾ぐ。
「私とアカツキさんで両側持つので、真ん中お願いしていいでしょうか! 一番重いところですが」
「わかった! の辺の重いのはオレがやるから! 君らそっちの壊れやすそうなの持ってって!!」
最初はと言えば雑用を任されるだなんて、とため息だらけではあったが風牙は徹底的に頑張るしかないとやる気を漲らせリンディスとアカツキには軽い荷物を、重たいものは自分で、と荷物を運び続ける。
「風ちゃん、そっち、頼むのじゃー」
「風ちゃん!?」
マイペースなアカツキに翻弄されながら風牙が「そんな可愛い名前で呼ぶな!」とすねる――が、「そういえば儀式って、火を焚いたりしますよね。どこかに必要ならアカツキさんの出番ではないでしょうか!」というリンディスの言葉に「待て待て」と大騒ぎするのだった。
「死兆、廃滅病かぁ……うー、ここにお父様がいてくれたら、呪いだけを焼き祓ってくれたのに。
それか、ボクにこっちの世界でもそれが出来るだけの力があれば……」
イレギュラーズは大体炎に魅入られている人間が何人かいるのかもしれない。例えば先ほどのアカツキ、そして焔だ。
炎神の血を引く彼女にとって、そうしたことを考えるのは間違いではない。災厄を退けるが為の聖なる炎を灯したいと焔は願った。
「ほわぁ、儀式に使う宝玉がたくさん……!
前線に立っている皆様が頑張ってくださった分、ヘイディは頑張らないといけませんね!」
冷水できれいにするのも中々に難しいが、一つつるりと美しい姿となればテンションも高揚していく。だんだんとのめり込んでいく気がして作業をヘイディは止めることはない。
「……今の所、まだ死を取り除く術は、見つかってないのですよね……。
これはただの延命措置と――それでも、一分一秒でも生きて、尚も困難へと立ち向かおうとする方々を、私は、出来る限り尊重したいのです!」
ミィの決意に頷いたのはエルジェマリア。祭事に関しての知識はあったとしてもこういう場では慣れもないと緊張を滲ませる。
「手順を教えていただいても? いえ、あの、確かに当時は使用人たちに頼っておりましたけれど、わたくしも不器用ではございませんのよ? 本当でしてよ?」
だから、自身で頑張りたいと。まっすぐに見て、エルジュマリアも儀式の用意を続けていた。
絶望の青に挑む限りはついて回る病。その進行を遅らせられるのは朗報だとスティアはコン=モスカの儀式に対しての説明を受ける。ヒーラーである自身ができることがあればと笑みを浮かべた彼女に「それではお手伝いをお願いしたいのですぅ」とグラニィタは柔らかな笑みを零す。
「ええと、宝珠を磨いたわ。クレマァダさん……グラニィタさんも。これでいいかしら?」
ナズナサスは死の遠くへ連れていく力になってほしいと祈りを込めながら宝珠を拭き続ける。
「諸君! ゴッドである!
此度は死兆……デスのコーリングに悩むフレンズの為、ゴッドもパゥワーを貸そう!」
豪斗は『ゴッド』として声をかけた。フレンズと呼びたいがファーストコンタクトをしていない――フレンドリーにトークをするためにはまずはよく知って貰うことが必要なのだと神もよく理解していた。
「廃滅病は恐ろしい存在ですが……皆で力を合わせればきっと大丈夫」
そう信じれば初季は手を止めることはない。儀式のやり方をしっかりと学べば個人的興味を超えて何かの役に立つかもしれないと供物を並べ続ける。
足元歩んだ猫を見てからウサーシャは『七つの大罪』と口にした。
「恐ろしい終末がみんなの命を奪う前に――われも何か出来る事は居ななって。いざ、罪に抗すべし!」
クレマァダに言われた通り、と必死に準備を続けていく。きっと皆の願いが幸運を呼び寄せるはずだ。
●
「軍にいた頃もこういう単純作業をしていましたので、それほど苦では無いですね」
儀式の手伝いをと、宝珠を磨いた迅はそう笑った。前線で暴れるのは少しお休みだ。
何より、儀式と言うものがどういうもの出るのかが少し気になってしまったというのが本音かもしれない。
運搬を手伝いながらヘルツは歩く。手伝いが必要ないといわれても手伝いたいとニコラスはクレマァダへと言った。
「……俺もな、お前らと一緒なんだよ。……あいつらの力になりたいんだ。ローレットの仲間を助けてぇんだよ」
その決意ははっきりとしたものだ。ニコラスの厚い思いはまっすぐに届くことだろう。
神職の身として出居る限り頑張らねばと寿は宝珠を拭き続ける。
(へぇ、寿ちゃん頑張ってんじゃん……)
後方兄貴面なのである。千尋はそれを眺めながら「なあ……イイ子だろ? あの子」と囁いた。
「あ、替えの布が……もしや伊達さんが用意してくださったのですか? ありがとうございます」
狂王種を見ていたいけれど、とけれど、手段がないのだとシャッファはぼんやりと呟いた。
「きれいにしましょうね、ぴっかぴかになって…たくさんの祈りをきいくれますように」
雛乃は傍らの相棒の『あおちゃん』にどうでしょうか、と差し出した。大好きなお姉ちゃんも海でがんばっているから――自分自身も誰かの役に立てるように努力しなければならないのだ。
一個一個きゅっきゅと綺麗に撫でるように白紅は拭き続ける。宝珠を磨きながらイレギュラーズの差し入れを『食べる係』として頑張る白紅。
「お疲れさま、どう準備は万端?」
「うむ。妾達でしっかりと進んでおる。イレギュラーズはその辺で菓子でも食ってればよいのじゃ」
「まったく、素直じゃないわねー。私は素直に伝えるわ。ありがとう、私たちを助けてくれて」
そう言われればクレマァダもふん、とそっぽを向いてしまう。ああ、素直じゃない、けれど彼女は悪い相手ではないのだ。
「神事も魔術も、根本的に差は無いと思ってる。――供物(しょくばい)に祈祷(まりょく)を込めて奇跡(ちから)を願う、ってな」
だからクレマァダの指示に従うとウィリアムはそう言った。並べられていく宝珠が煌めくそれがウィリアムには海上の星座のように見える。この儀式が、この星々が死兆を振り払い希望へと繋がると思えばこそ、だ。
「星。そうだ。海図に煌めく柘榴の如き宝珠(ほし)。それに祈りを込めるのじゃ」
頷いたクレマァダへとムスティスラーフはにんまりと笑う。グラオ=クローネの季節となれば、せっかくなら甘いもので一段落としてほしいものだ。
「僕好みではサンブカスさんが好みです」
「はは、恐れ入ります」
穏やかなサンブカスを見やってからクレマァダは曖昧な表情を見せたのだった。
「我輩、ここの人たちのことをあまり知らないであるが。
力を貸してくれる人たちに我輩達も報いたいであるよな。頑張っていくのである!」
にっこりと笑ったボルカノは祭壇をきれいにすべく布巾で拭き供物を運ぶ。大きな体の有効活用なのである。
ボルカノが運び込んだ宝珠を手にしてマカライトは磨き続ける。相変わらずの理不尽と搦め手である敵の手口には胸糞悪く感じるが相手の目論見を崩す手筈となるのであれば是非もなく万全にと考えさせる。
「宝珠を磨いたり。供え物を並べたりするだけで少女と触れ合えるんですか?」
※個人の感想です。
ナインは一人で二人分の仕事はできますときゅ、きゅと宝珠を磨き続ける。
「……で、あとはこのビヴラにお任せ。これでも魔法使いなのよ。世界が違おうが……頑張るのだから!
勿論こちらの魔術体系にまだ詳しくないから、手伝いしながらも勉強なのよ。……よーし、頑張るのだわ!!」
やる気を見せてビヴラは仕事をこなしてみせると笑みを零す。魔法使いとして、儀式にはしっかりと支援をする構えだ。
「うーん、我ながら丁寧な仕事っぷりね。誰よりも輝いて――――っと、おっ、おっ、あぶな」
ツルツルになった宝珠を落としてしまいそうだと数子は慌てた。美しいそれは丹精込めてしっかりと拭いたのだが、落としては元も子もないのだ。
「んんっ、まだまだ磨きましょ」
磨くだけじゃない。ひとつひとつ丁寧に、祈りを込めて。皆の祈りが合わさればきっと多いある力になるのだとアニーは信じていた。きっと、それはクレマァダも同じだ。
「やるといったらとことん、です! わりと執念深いですよ、私達イレギュラーズは、ふふふっ。さぁどんどん宝珠を持ってきてください!」
内にこもっているだけではもう嫌なのだ。小さなことでもそれが自分にできることなれば――
「さ、それじゃ儀式のお手伝い頑張りましょっか! 珠緒さんはこういうの手馴れてたりする?
ボクはさっぱりだから、よかったらサポートに回らせてもらえないかな」
蛍にそう言われ、珠緒はうんと首を傾げた。珠緒が『桜咲』であった頃の経験としては、祭壇に捧げられる側だった――儀式と言うものに馴染みが深いのは確かであり、丁寧に作法に沿って場を整える大切さは人一倍分かっている。
「分かりました。珠緒と蛍さんでお役に立てるように務めましょう」
自身に染み付いた香は、碌な死に方をしないと伝えて来るかのようだった。死にかけては生き延びて、死にかけては生き延びて、そうしているうちに自分が特別だと、思わせられていたんだ。
「……シラス君?」
アレクシアを見てからシラスは首を振った。この時間を楽しみたい。彼女に臭いが映らぬ様にと傍に寄るのを控える自分がいることに感じている。
(……不安だよね。あんまり気にしてないって顔をしてるけど、不安なのは分かるよ)
アレクシアは笑った。大丈夫だよ、と。この呪いは解いて見せるから、きっと。だから、祈ろう。
●
儀式にかかわる資料を探し、供え物に対しての効率的な配置をモスカ伯に聞かなくとも、と懸命に準備を続けていく。ロロンは自身で供物を並べながらぼんやりと呟いた。
「仲間を助ける、という動機はボクにはよくわからない価値観だけど。死に至る呪いに抗するという叡智にはとても興味があるんだ」
叡智。そう、これは大いなる海を臨むモスカの叡智なのだ。手伝いたいとノックスは掃除知識を駆使しながらクレマァダをちらりと見遣る。言葉では疎ましいと態度で示すが、彼女を見ていれば悪い人ではないことをノックスは感じる。
「カナの知らないところで海に行ってるみんなが頑張ってるからね。廃滅病……蒼で偉い人に聞いてみようかな」
カナメは祭壇の供え物を瞬間記憶し、いろいろ運ぶのだとやる気を見せる。誰かと協力する事だって大事だ。箏勿はカナメの記憶を聞きながら荷運び係。
あまり海洋について詳しくないこともあり、こうした文化に触れられる事も大きな勉強になるというものだ。
「し、市長とはすごい大変なことになっているのです! 僕は愛と勇気を届ける魔法少女なのです」
男だけど――と言う言葉はとりあえず飲み込んで茉白は祭壇をリボンなどで愛らしくデコレーション。
楽し気で困難も何とかなるという気持ちで可愛らしく飾れば気持ちだってきっと上向くことだろう。
「……グル」
アルペストゥスはその様子をじいと見つめる。人が集まって慌ただしそうである。自身の羽毛の羽で撫でつけて掃除を手伝いながらもアルペストゥスは首を傾げる。
(あの道具は何? この食べ物はどうするの?)
きっと、宝珠が大切なものということはアルペストゥスにはよくわかる。フェリシアはこういうのは丁寧にゆっくりとすればいいのだとそっと宝珠を撫でつけた。
「お手伝い、どこまでできるか分かりません、が……頑張ります、ね」
ギフトを使って幸運にも正しい知識をひらめけば、宝珠の扱いにはより慎重になるというものだ。
「大規模な儀式術、モスカの秘術ですか。
廃滅の呪いに対抗する御業、と言うのは大変興味がそそられるのです。儀式のお手伝いをしながら、この儀式を記録に残すと致しましょう」
ドラマは土地に根付いた一族と言われれば自身の一族を思い出すと小さく息を吐く。宝珠を磨くのは術式をより行き届かせやすくするため――らしい。汚れをはらわねば呪詛も払えぬということだろうか。
供え物が必要らしいと零は考える。供えられるものと言えば――そう、フランスパンだ。
供物と言えば食べ物と言うのが彼の印象だからあながち間違ってはいない……のかもしれない。
足場の確認や祭壇の組み立てなど、リュカシスは力仕事があれば率先して行おうと声をかけ続ける。女性や華奢な者が多い中で鉄騎種としてリュカシスは全力でサポートを続けていく。
「綺麗にすればいいのね? おばさんにまかせてまかせて~」
魔法のハンカチで楽しくふきふき。レストは「みてみて~」とにんまりと笑みを浮かべる。クロジンデは儀式をどうやっているかを記憶しながらレストと共に宝珠磨き。
「俺の右眼は病を目視するンだがな……絶望の青で、ちょっと気になる物を見てな。
……狂王種にも病の影が見えたンだよ。あの狂王種自身も病に苦しんでた。死兆、いや、廃滅病は狂王種も蝕んでるかもしれねぇ」
クレマァダとサンブカスへとそう言ったレイチェルに、二人は顔を見合わせた後神妙に頷いた。魔種も逃れられぬ病はすべてを蝕む。むしろ、あの絶望――遥かなる青き大海――に広がる『苦難』は廃滅病そのものであり、そうした結界が広がっているのだろうとクレマァダは言った。
「狂王種も、魔種も誰もが逃れられぬ病なのだと聞いています。しかし……我らには『魔種アルバニア』を打倒すという魔種からのメッセージ以外に情報はないのです」
悔し気にそう言ったサンブカスにレイチェルはそうか、と小さく呟いた。
●
「残念ですけど、今のイルミナでは力不足ッスからね……。
こうして裏方のお手伝いを頑張って貢献するッス! なんとしてでも、死兆……廃滅病の進みを遅らせるッスよ! フランさん!」
「ええ。イルミナ、どんな時でも裏方が居てこそ物事が動くものですよ。ですから僕たちの働きもまた意味があるのです」
柔らかにそういったフランシスにイルミナは大きく頷いた。クレマァダへと僕たちの希望だと、そうしっかりと告げたフランシスにクレマァダはそっと視線を逸らす。
儀式を成功させるために、できる限りのことをしなくてはならないとリュティスは雑用は任せてくださいと微笑んだ。誠心誠意真心こめて対応させていただきますと告げる彼女にクレマァダは頷く。
「なんかあんま歓迎されてないみたいだけど、お手伝いに来ました。
……えぇ、クレマァダさんの旋律、怒ってる訳じゃなさそうだもの。邪魔しなければ、別に大丈夫かなって」
そう告げたリアにクレマァダは視線をさっと逸らす。カタラァナの身内と言うだけで興味はあるとリアはじいと眺めた。カタラァナが歌うのは不思議な旋律だ。それがコン=モスカで伝えられるものなのかと言うことが非常に興味深い。
「普段機械を扱うときのように丁寧に、丹念に磨いていくよ。ピッカピカにしてやるさ。……おっと、丁寧にやりすぎて時間かけすぎないようには注意だな」
じい、と宝珠を見つめていたアオイはいけないいけないと頭を振った。時間をかけすぎては他の宝珠がたまってしまう。
「皆の為にも集中……ここで焦ったら意味が無いですから」
イージアはそう口にしてから儀式の準備にどこか懐かしさを感じていた。
「偏屈者めが。人の厚意は素直に受け取るものですよ、聞き分けろ」
ぼそりと呟いてからシモンはてきぱきと準備を続けていく。レニンスカヤは全力で走り回る。
「うさぁ……うさはね、思うんだ。誰かを傷つけるのは良くないって。
だからね、うさは逃げるんだ。いつでも逃げられるようにするんだ」
だから、今日はとっても嬉しいのだとレニンスカヤは笑った。知らない人が傷ついても、それを治せる事がうれしくて、たまらない。
「流石に私もTPO? ってやつぐらいは理解してるから、大丈夫大丈夫! うるさくはしないしっ!
今回は静かに、真面目に、お手伝いするよ! 雑用でもなんでも指示をしてねっ?」
スーはそう笑った。にんまりと微笑んで踊りが役に立てばいいのにと、少しでもお手伝いを続けていく。
●
廃滅病。それが厄介なものであることを黒羽は知っていた。しかし、今、クレマァダがイレギュラーズ達の集めた宝珠をもとに儀式を執り行おうとしている。そうすることで希望をつなげられるのだと、何でもやらせてくれと彼は声かけた。
「宝珠磨きなら任せろーバリバリー!」
勢いのいいクリムは儀式の手伝いに尽力している。
「やややややーっ! こちらの方々がカタラァナさんのご家族さんですかっ!
へろーっ! じゅてーむっ! はじめましてごきげんようございますっ! カタラァナさんのお友達をさせていただいておりますヨハナ・ゲールマン・ハラタですっ! なんでもしますのでヨハナに仰せくださいなっ!」
ヨハナはにんまりと微笑んだ。掃除、片付け、供物に料理。家事全般でよく働きながらクレマァダにカタラァナとの思い出を語り続ける。
「で、カタラァナさんってどんな人ですか?」
「……知らん」
――照れているのかもしれない。
「クレマァダ。儀式までは少し時間があるだろう。イレギュラーズの危急の事態に、心を痛めていることは分かる。少し一息ついてはどうだ」
エクスマリアは珈琲を入れ、カタラァナの片割れであるクレマァダに敬意を払い、少しでも落ち着いて儀式に臨めるようにと配慮を一つ。
イレギュラーズの為にここまで力を尽くしてくれるだなんてと利一は少しでもクレマァダの手伝いをしたいと彼女の指示に従う。少しでも準備や儀式の応援を行いたいと申し出た彼にクレマァダは「これも女王陛下のご厚意なのじゃ」とふいと視線を逸らす。
「私たちも……頼りになる……って……思ってもらえるように……頑張らなきゃ……。
良ければ……コーンポタージュも……どうかな……? 少しでも……心と……身体が……安らげば……」
優しくそう声をかけた幽魅にクレマァダは「む」と小さく呟く。暖かな気配に心が落ち着き、ほっとしたのはきっと気のせいではない。
「どうぞ、沢山頼ってくださいね。私達は、その為にここにいます!」
イレギュラーズに対して厳しい態度をとるのも心配の裏返しだとノースポールは感じている。
此処に居るイレギュラーズの願いは皆同じ。一人一人では小さな力でも集まればきっと、と微笑んだ彼女にクレマァダは難しい顔をしてから頷いた。
深淵には恐ろしいものが潜む。それ故に深淵を覗いたかたわれと深淵を従えるかたわれとなったコン=モスカの跡取りの儀式をロゼットは学びたいと口にした。後学の為と言ったロゼットに大地も頷いた。
「ダメなことは教えてくレ。デも、大丈夫ダ。だっテ、破滅の運命をひっくり返すのガ、俺達イレギュラーズの役目なんだロ?」
に、と笑った大地は船旅の無事を祈ってくれる霊魂たちへ念を捧げた。
――絶望の青に敗れた貴方達を弔うために、その事実を知っても尚、多くの命を飲み込んだ海に挑まんとする皆を導くために、どうか祈りを捧げさせてほしい。
「お供え物、ですか。並べるだけならまだ、この世界で実力がない私たちでも出来ます」
「私、意外に腕力には自信あるもの?」
紫苑はちらり、とリンドウを見た。リンドウは頷き、供物のための料理を作る。クレマァダに供物に使用してもいい材料を聞いての作業を横で見ていた紫苑へとリンドウは顔を顰める。
「ノー、マスター。つまみ食いはご遠慮下さい」
「いやね、しないわ。少し、お腹が空いたってぐらいよ。えぇ」
軽食を用意しながらヴァイスは適切な休息も大事だとクレマァダへと言い含めた。彼女もこの儀式に対して思うところがあり、真剣なのは伝わってくる――けれど、倒れてしまっては元も子もないのだとヴァイスはクレマァダを気遣った。
祭壇に飾る花として白い百合を準備してオロディエンは「クレマァダちゃ……様」と花冠を差し出した。
紫や青の小さな花に芳香を放つ白い花の花冠には心を込めて――ステファノティスは清らかな祈りを、ヒソップは浄化を、ネモフィラには成功を。絶対にうまくいって欲しいと、そう、望みをかけて。
「クレマァダ」
「……カタラァナ」
かたわれに声をかけたカタラァナにクレマァダは唇を噛んだ。
運命と言う言葉があったならば、逃れられぬのだと悔やむのだろうか。
――定まった道から、気まぐれで飛び出した筈の『かたわれ』は、その命の理由の様に歌っている。
ふんぐるい むぐるうなふ くつるふ るる・りぇ うがふなぐる ふたぐん
ゆめみる ままに まちいたれ♪
「さあ、僕(クレマァダ)、一緒に歌おう。何も怖がることはないから」
本当にうまくいくのかな。お父様の言葉を信じてないわけではないけれど。
姉妹は、どちらもそう思った。
一方は停滞の罠よりもずっと、生を掴もうとする姿が美しいと高揚す。
もう一方は自身に重く伸し掛かる重責がその華奢な体を潰してしまいそうだと唇を震わせた。
「僕(クレマァダ)――大丈夫だよ」
磨かれた宝珠が並んでいる。星々が如く煌めくそれは海図の上に散らばった。
明かりの灯された祭壇は上空より見下ろせば、海を思わせる。煌めき思いの込められたそれは深海の星だ。
彼女らが崇める深海の神へ、守護り手へ。双子はひとつになるように手を取った。
「――――♪」
そして儀式は始まった。
成否
大成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
ご参加ありがとうございました、イレギュラーズ!
多数の皆さんの協力で儀式は無事に行うことができそうです。
※タグの書き方が間違っていた場合は申し訳ないのですが迷子さんになっている場合もあります。
出来る限りは探したのですが、そうならない場合は単独行動となってしまいますので今後はお気を付けください。
全員(白紙の方やそれに類する方)描写させていただきました。
抜け等がございましたらファンレターでお知らせください!
廃滅病を退けるが為――ありがとうございました!
GMコメント
夏あかねです。『死兆』を退けるがため――
●重要な備考
・当イベントシナリオは参加者数等により経験値ボーナスが加算されます。
・当イベントシナリオ参加者数(有効プレイング数)が多いほどに死兆に対して何らかの『良い』アクションが起こります。この良い効果は今後発症する人全てにも及びます。
●できること
【A】~【C】から1つセレクトしてプレイング冒頭にご記載ください。
また、グループ、誰かとという場合はIDの指定か【グループタグ】の指定を二行目に入れてください。
【A】孤島オパール・ネラへの道中支援
オパール・ネラの周囲には様々な狂王種が存在しています。イカやタコ、イワシにサメ、クジラなど。
そうした狂王種への対応を行うことや周辺の警備はこちら。
船での道中移動の支援などもあるといいかもしれませんね。
またオパール・ネラの周囲の海域にも宝珠はあるそうです。
【B】オパール・ネラの古代遺跡探索
孤島オパール・ネラです。入り口は陸にありますが、階段を下るにつれて深海洞窟につながっていきます。
様々なトラップやゴーレムが設置されており、一度入れば簡単には進めないし戻れやしないという雰囲気です。
最奥には祠が存在しています。
宝珠は様々な場所に点在しているために探索して確保してください。
【C】コン=モスカの儀式
コン=モスカ領にてクレマァダたちが行う儀式のお手伝いです。
手に入れた宝珠を磨いたり、祭壇に供え物を並べたり等など。
「手伝いなど必要はないのじゃ」とクレマァダは言いますが、イレギュラーズが嫌いなわけではなく意地っ張りなだけなのです。
どうぞ、よろしくお願い致します。
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