PandoraPartyProject

PandoraPartyProject

シーズンテーマノベル『世界で二番目に明るい日曜日』

世界で二番目に明るい日曜日

 はじける光に、目が眩む。
 澄んだ空は広く、青が濃く、風は乾いていた。
 渡り鳥の群れの、せっかちな歌声を、くぐるように少し歩く。
 並木は黄金の葉を抱き、革靴の底が踏む厚い落ち葉たちは、天然のベルベットのようだ。
 まだ昼を過ぎたばかりだというのに、日差しの具合は、どこか夕刻めいても感じられるか。
 歩き続けていると、視界の片隅に、ふと一匹のリスが姿を見せた。
 木の実を口いっぱいに詰め込んで、ミルクティー色の枝を駆けていく。
 そんな落葉の回廊は、木漏れ日さえ輝かんばかりに――

 市場へ久方ぶりの買い出しに赴けば、新しい小麦の麻袋が、うずたかく積まれていた。
 近くの露店からは、威勢の良い声がする。
 少し感傷的になっていたのだが、あまりの商魂たくましさに、なぜだか笑えてきた。
 おまけに炒った木の実や蒸かした芋の、香ばしい匂いが漂ってくるものだから、たまらない。
 そろそろ南瓜も並び始めている。冬に向けて貯蔵すれば、どんどん甘くなるだろう。
 夏摘みの紅茶は、遠く国境を越えて、もう店先に並んでいる。葡萄酒の新作には、あとまだもう少し。
 麦酒の樽を積み込んだ馬車がやってきたから、あわてて道をあける。
 ふいに顔をあげれば、開け放たれた窓辺で陽を浴びる猫と、読書を楽しむ夫人が見えた。
 道行く人々の装いには、羽織り物が一枚増えている。
 どれもやや深く、鈍く、重く――けれど華やかな色彩が、あふれ、こぼれ。

 ――夏は過ぎ去り、この街にも秋が訪れた。

シーズンテーマノベル『世界で二番目に明るい日曜日』

『光暁竜』パラスラディエ
「秋ですよ、秋!
 食欲の秋! 運動の秋! 芸術の秋! 読書の秋!!
 ぱーりないオータムナル yet!! いぇーえぶりばでぃ!! いぇーぴすぴーす!」
『金嶺竜』アウラスカルト
「我が二百五十余の生の中……季節など、気にしたこともなかった」
『光暁竜』パラスラディエ
「ほんとこの子は、誰に似て、なんて情緒のない……
 どうか皆さん、この子に秋というものを教えてあげてくださいな。
 そうですね――テーマは『紅葉』『実り』で!」
シーズンテーマノベル『世界で二番目に明るい日曜日』
商品 説明
対応商品一覧
  • 1人テーマノベル
  • 2人テーマノベル
  • 3人テーマノベル
  • 4人テーマノベル
  • 5人テーマノベル
発注可能クリエイター
  • ゲームマスター
  • ノベルマスター

基本価格 100RC~

商品概要

 本商品は『キーワード』を指定して発注するSSとなります。
 シナリオコンテンツでは描ききれないお客様のストーリーを『キーワード』を添えてゲームマスター、ノベルマスターに発注することができます。

 『キーワード』がいずれか一つは含まれていれば内容はどの様なものでも構いません。
 季節もキーワードさえ含まれていれば無視しても構いません。
 また、発注時にキーワードを必ず指定する必要もありません。

 今回のキーワード:『紅葉』『実り

日程

・受付:9/15~10/12の8:00
・締切:11/15
・公開:順次公開

プレゼント

本商品の受注が確定したキャラクターには『称号』が配布されます。
本商品の受注が確定したキャラクターには後日、記念アイテムを配布いたします。
※本キャンペーンでは発注した分だけ配布されます。(SSを二つ発注した場合、二つアイテムが配布されます)

景品詳細
アイテム 性能
Fizz'n pop falls 種別:アクセサリ
レアリティ:ハイクオリティ
補正値性能:-
フレーバー:赤や黄の葉。光のはじける不思議な落ち葉は、いたずら妖精からのプレゼント。使用時、パンドラ+1回復。
称号 内容
Autumnal grace 種別:称号スキル(※称号スキルとしての配布は、後日となります)
フレーバー:輝ける秋。黄金樹の祝福は、あなたのこれまでの積み重ねを徐々に結実へと導いているのでしょう。
サンプルSS:『Heaven on a Sunday』
(NPC:アウラスカルト(p3n000256)パラスラディエ(p3n000330)

 小さな家の、これまた小さな庭。
 黄金色に紅葉した楓から、きらきらと木漏れ日が降ってくる。
 そんな庭で。背のない、低く細いベンチにまたがり、少女が分厚い本を開いていた。
 両端にぺったりと指を添え、ときおり吹く涼風にページをめくられないように押えて。

「髪に葉っぱ、ついてますよ」
「ん」
「お隣、座ってもいいですか?」
「……構わんが」
「しっぽ、どけますね」
「ん」
 バスケットを抱えたリーティアが、愛娘アウラスカルトの隣へ腰掛けた。
 ゆっくりと毛糸を編み込んでいくのは、午後のほんの二時間。毎週、日曜日だけ。
 セーターは無理だけれど、手袋とマフラーなら、冬までに編み終えるだろう。

 本にかぶりつく娘は、ときどき尾を揺らし、耳がぴくりと跳ねる。
 背中ごしに覗き込めば、英雄が竜と戦う童話の、ちょうどクライマックスだった。
 いったい『どちら』に感情移入をしていることやら。
「なんだ、見るな」
 くすりと微笑んだのが、聞こえてしまったのか。
 アウラスカルトは頬を膨らませ、本を畳んでしまった。
「おやつは、なんだ」
「じゃあ、匂いで、当ててみて下さいな」
「いも」
「正解! そろそろスイートポテトが焼ける頃です。紅茶をいれましょうか」
「シレンツィアン・ラサのオータムナル。ミルクと砂糖はたっぷりがいい」
「注文が細かいですね。たまには自分でやったらいかがです?」
「いやだ」
「どうして?」
「……母のが、いいから」
 そっぽを向きながらぽつりとこぼす愛娘に微笑み、頭にそっと手のひらを乗せる。
 ふかふかとした、豊かな髪を撫でてやった。
「早く」
「はいはい」
 娘が手を引くものだから、つい駆け足気味に。
 母娘は温かな台所へと帰っていった。

 ティータイムを終えると、窓からかすかに風を感じた。
 清涼な冷気に、にわかな雨の気配を感じかけ――違う。もう秋なのだ。
 だから羽織り物を二枚取り、一枚を娘の肩に掛ける。
「ほら。こんな時間に眠ると、夜に眠れませんよ」
「んー」
「暗くなる前に、お買い物に出かけましょう。そろそろ干し物の特売なんです」
「めんどうくさい」
「じゃあお留守番ですね。あーあ、ついでに一冊だけ本を買ってあげたのに」
「それなら早く言え、話が違うではないか」
「違いませんし、知りません」
「待て、待て。違うから、待て」
「ほら。上着はちゃんと留めて、ブーツはちゃんと結んで、ああ、もう――」
 それは温かな実り、愛の形。

 ――夢を見たんです。
   いままでならば想像することさえかなわなかった、そんな秋の夢を。
   私、なんて幸せ者なんでしょうね。

(キーワード:紅葉、実りを使用しています)(SS執筆:pipi

PAGETOPPAGEBOTTOM