PandoraPartyProject

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腕の中のふたり

登場人物一覧

ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
祝呪反魂

「アルブレヒト、貴方に紹介したい人がいるのですが」
「ヨハネが俺に?」
 鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしたアルブレヒトはヨハネを見つめた。
 冷静で色恋沙汰なぞに興味も無いだろうヨハネが紹介した人が居るというのだ。
 アルブレヒトは単純にその女が気になった。恋人では無いにしろ懇意にしているのだろう。
 実際会ってみれば、美しく愛らしいその女をアルブレヒトは好きになった。
 女もヨハネではなくアルブレヒトを選んだのだ。
 友人と一人の女を取り合うのはよくある話しであろう。
 アルブレヒトが男として勝っていただけのことだ。
 ヨハネはアルブレヒトと彼女が幸せであれば構わないと身を引いてくれた。
「俺が責任を持って幸せにする」
「ええ、お願いしますねアルブレヒト」
 そんな風に誓い合った。友人の思いも全てひっくるめてアルブレヒトは女に愛情を注いだ。

 だから、子供が産まれるに当たって母体の生命を優先すると決めた。
 リスクの高い双子の出産だった。
 されど、女は子供を生かすことを望んだ。
 アルブレヒトとの子供は愛の結晶だからと。自分が死んでしまっても子供達がアルブレヒトに笑顔をくれるからと微笑んだのだ。
 だからアルブレヒトは危険な状態で生まれて来た子供達をヨハネに預けた。
 ヨハネならば、二人を必ず助けてくれると信じていたからだ。
 そのアルブレヒトの真剣な瞳を見つめヨハネは確りと頷いた。

 アルブレヒトを帰したあと、腕の中の双子を大事に抱えヨハネは口角を上げる。
「ようやくですねグレイス……」
 幾度となく繰り返してきた実験では成し得なかった「獅子王の血を持つ」赤髪蒼眼の子供。
 愛しき妻グレイスの依り代と成り得る存在が、今この腕の中にある。
「どれ程この時を待ちわびていたでしょう」
 ヨハネは震える程に歓喜した。宿願がようやく実りを得たのだ。
「双子だったことは誤算ですが、スペアが手に入ったと思えばむしろ嬉しいことです」
 ヨハネは赤毛の双子をぎゅうと抱きしめる。
 胸に湧き上がるのはグレイスへの愛情。
 この赤子を育てていけば、いつか必ずグレイスに再開することが出来るのだ。

「アルブレヒトから名前は貰ってます。ヨハンナとレイチェル。それが貴方達の名前ですよ。グレイスが戻るまで大切にしてくださいね」
 双子を愛おしげに抱きしめたヨハネは宿願の成就に酔いしれていた。


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