PandoraPartyProject

SS詳細

艶やかに、葉落ちれば

登場人物一覧

珱・琉珂(p3n000246)
里長
ヴィルメイズ・サズ・ブロート(p3p010531)
指切りげんまん

「ご機嫌よう~~~~!! 里長様、紅葉狩りに行きましょう~~~!」
「わあ、びっくりした! 紅葉を狩るのね。良いわよ、物理?」
「違います」
 にこやかな笑みを浮かべて遣ってきたヴィルメイズを前にしてから琉珂は拳をしゅっしゅと繰り出した。相変わらずの様子の里長にヴィルメイズも笑みを浮かべる。
 友人として、そして『フリアノンの里長』としての彼女を敬愛している。誰に対しても愛情深いヴィルメイズにとって琉珂とはそうした存在だ。
 父代わりであったベルゼーを亡くした琉珂と共にその墓参りに向かって、秋の実りを実感しようというのが今日の誘いなのである。
 何時も明るく屈託なく微笑む琉珂にとってもベルゼーとの別離は耐え難いものだった。詳細を聞いてから、彼の気遣いに心を躍らせてから琉珂は「有り難う、そうしましょうね。御弁当を持って行く?」と穏やかに笑みを浮かべた――が。
「御弁当は何方が作られますか?」
「私」
「それは違うイベントになってしまうのでは!? ここは美しい私に免じて頂いて何方かに調理頂きましょう。
 素晴らしい里長様と、この美しくて全世界が涙する私のセットでお願いすれば皆さんが作って下さいますよ」
 にこやかに告げたヴィルメイズに琉珂は頷いた。
 弁当を手にしてから先ずはベルゼーの墓に向かう。紅葉を一片手にしてから琉珂は「きれいでしょう」と微笑んだ。
「ええ、一番綺麗な葉を拾えて良かったですね!」
「秋の彩りをオジサマにも実感して欲しかったものね。……喜んでくれるかしら」
「屹度。もしかすると紅葉を菓子と間違えて仕舞われるやもしれませんが」
 揶揄う様子で告げるヴィルメイズに琉珂は「あ、お弁当をオジサマにとられちゃうかもしれないから撤退しましょう」と冗談を含めた。
 名残惜しそうではあったが、それでも『前を向く』事を決めた琉珂はベルゼーの墓に背を向けて紅葉の林へと向けて歩を進める。
 散策し、過ごしやすい場所で弁当を食べる約束をしていたのだ。勿論、弁当は琉珂の手が一切加わっていない。ヴィルメイズは「危うく弁当のモンスター討伐依頼になる所でしたね」と朗らかに微笑んだ。
 二段のお重の弁当を持たされていたのは、琉珂が楽しいピクニックを過ごして欲しいというフリアノンの里の者の気遣いなのだろう。
 樹の根本付近にちょこんと腰掛けてから「ここにしましょう」と琉珂は朗らかに微笑んだ。
 弁当を広げ、秋の彩りを眺めながら共に過ごす。
 ふと、琉珂はヴィルメイズを見遣ってから何かを思い出したように問うた。
「そういえば、ヴィルメイズさんって」
 ヴィルメイズは突然の問い掛けに顔を上げた。手羽先を握り締めていたが相変わらず画面は美しい。
「閻家という家柄について何か知っている?」
「……いいえ」
 実の所、ヴィルメイズとて気にはなっていた家門である。覇竜集落ウェスタの旧家である『閻』。その名はヴィルメイズも耳に為たのだ。

 ――それを知りたくば閻家について調べればよいが。そこの。名前は?

 果たして己に何が関係するのかは分からない。だが、閻・陽明がそう告げた以上は気に掛かるのも仕方が無い。
「ウェスタに少しだけ顔を出したのだけれど、閻家の当主候補に祝華さんって人が居るの。
 その人が、ちょっぴりヴィルメイズさんに似ている気がしたから……もしかしたら知り合いなのかなあって」
「祝華様ですか」
 名を聞いたことはない。だが、琉珂が似ているというならばひょっとして自らのルーツに何らかの関わりがあるのかも知れない。
 聞けばその人は美女なのだそうだ。琉珂曰くは華やぐ美貌の舞手であるという。その舞踊もヴィルメイズに関わりがあるのかと疑ったのだと彼女は言う。
「もし知らない人でも、仲良く出来れば嬉しいかなあっておもったの」
「そうですね。美しい私と知り合いになれたらその祝華様も喜ぶかも知れません」
「かも! でも祝華さんも自分のことを美しいって思ってるから美のバトルが始まっちゃうかも知れないわ。血で血を洗うような……」
「それは恐いですねぇ~」
 楽しそうに笑った琉珂は「卵焼きが食べたい」と身を乗り出した。弁当を食べ続ける里長の後頭部を眺めながらふと、思う。

 ――くくっ、なるほどのう。お主もまた我のあったかもしれぬ姿か。

 二本の角。琉珂は一対しか有さないがヴィルメイズには生まれついて二対。それにも何らかの理由があるのだろうか。
「どうかしたの?」
「いえ……里長様の角は可愛らしいなあと思いまして」
「これ、結構武器になるのよ」
 揶揄うように笑った琉珂にヴィルメイズは「刺してはなりませんよ! ああ、そんな~!」と牛のように突進する琉珂を受け止めてから笑っていた。
 もしもまた、『彼女』に出会うことがあれば――いや、祝華でも良いのか。己のルーツに触れる機会があれば、自らはどの様に振る舞えば良いのか。
 ヴィルメイズには今だ分からぬままであった。


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