PandoraPartyProject

SS詳細

小さい秋みぃつけた

登場人物一覧

劉・雨泽(p3n000218)
浮草
チック・シュテル(p3p000932)
赤翡翠


「今日のお題は秋。皆、秋を探してきて。一番秋っぽいって僕が思った子には賞品がありまーす!」
 はい、それじゃあ用意……スタート!
 両手を合わせてパンと乾いた音を鳴らせば、ワァキャァとレムレースたちが秋の山中に散っていく。一番は僕だ私だ、負けないぞ。キャッキャと弾むような声にチック・シュテル(p3p000932)が眉尻を下げれば、レムレースたちを見送った劉・雨泽 (p3n000218)が視線をよこしてくる。
「何を見つけてくると思う?」
「えっと、どんぐり……とか?」
「ありそうだね。チックは探しにいかないの?」
「おれは、皆が楽しければ、それで……」
 折角遊びに来たのに離れたくないとは言えず、少しだけ瞳を伏して左右の指を重ねた。
「雨泽は……?」
「僕はもう見つけたから」
 にっこりと口角を上げる雨泽を見て、チックは瞳を瞬かせた。何も手にしていないのに、いつの間に。
 楽しげに声を響かせるレムレースたちへ遠くへは行かないようにと声を掛け、ただのんびりと時間を過ごす。最近は慌ただしかったり気が気じゃないような事が起きたりもしたから、互いにこういう時間は必要だと思った。
 秋めいた涼し気な風が髪を揺らし、暑くもなく寒すぎもしない過ごしやすい季節。
 子どもたちの燥ぐ声、カサカサと風で囁くような木の葉の音、高い空を飛ぶトンビの鳴き声。
「チックは……」
 そんな音を聞いていた雨泽がふと何事かを紡ごうとし、唇を閉ざした。
 チックは不思議に思って彼を見上げ、けれども『もしかして』の気持ちが湧き上がってくる。ややあって落とされた言葉は矢張り、チックが予想していたものだった。
「……俺の目の事、気付いていた……よね?」
「……ごめん、ね」
 ううんと白髪が揺らされた。言いづらい事も、解っている。
 目が何度も痛んで、睫毛がよく入るのかと鏡を見て、違和感を覚えた。罅のような、蜘蛛の巣のような線が入っていて、自分の虹彩はこうだったろうか、と首を傾げた。けれども、普段から虹彩の観察などしないから解らなかった。
 更に最近、アレ? と思うようになった。目尻に紅を載せる時、いつもは閉じた瞼に指で引くのに、その日は新しい筆と紅を使いたくなって鏡に顔を近付けた。蜘蛛の巣のような虹彩に線が増えていて、ハッとした。明らかに何かがおかしい。目の痛みも、不調も、気落ちも、きっと原因があるのだろう。
「悩ませてごめんね」
 言葉にはしないが、弟の事のみに気を回した方がいいと思うのに、きっと彼は自分を気にしてしまうのだろう。
(俺が特別だからとかじゃなく、チックは優しいから)
 他の人にだってきっと彼はそうすると思うから、時折離れたくて仕方が無くなる。身を削ってでも他者を救おうとする彼の側に居ては、彼に余計な負担が増えるだけだ。
「ううん、大丈夫」
「……大丈夫ではないよね」
「雨泽が居てくれるから……平気」
 心配は、してしまう。気だって揉んでしまう。弟の事もどうしたって考えるし、海洋に遊びに行った日の雨泽の表情だって何度も思い出す。あんな表情、二度とさせたくない。
 雨泽を見上げて瞳を見た。虹彩はやはり異変が起きているものの、今の彼は『自然体』だ。度々見上げてそこに笑顔があるか確認してきたチックは、その笑顔が無理をしているものではないか、作ったものではないか――少しだけ作り笑顔に気付けるようになったから、解る。
(……雨泽にはずっと、笑顔でいてほしい)
 作り笑顔ではなく喜びや幸せに溢れた、彼が美味しいものを口にする時にするような、本物の。
(帰ったら……アップルパイ焼こう、かな)
 きっと雨泽は焼き上がるのも楽しみに待ってくれるし、美味しい匂いがしだすと「まだ?」って何度も聞きに来るのだろう。そんな姿を想像するだけで胸が温かくなる心地が不思議で自然に微笑んでいると、雨泽が少しだけ不思議そうな表情をした。
「ねえ雨泽、帰ったら……」
「あき、みつけたよ!」
 木の葉たちを歌わせて、様々な『秋』を手にしたお化けの子たちが駆けてくる。そちらへと視線を向けておかえりなさいと迎えると、子どもたちはそれぞれの『戦利品』を掲げて見せてくれた。
「ぼくはね、きのみ」
「わたしはおおきなはっぱ!」
「皆、よく見つけたね」
「そういえば……見つける、した……言っていた、よね?」
「うん、僕は――」
 雨泽の手が、チックへと伸びる。
「ほら、ここに」
「ほんとうだ。あきみっけ!」
「え?」
 雨泽の手が僅かにチックの頭に触れ、離れていく。
「君の髪に赤が映えていて、僕とお揃いみたいだったよ」
 手には小さな紅葉もみじ。ひらひらと口元で振って笑う雨泽の瞳は猫のよう。
「これが僕の秋」
 悪戯に紅葉へと唇を落とす様に、チックの瞳はまぁるくなった。
「おにいちゃんもあき!」
「ねー!」

 ――色付く頬は、誰のせい?





 ……因みに。
 優勝は全員だったし、優勝した皆でおやつパーティもした。


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