PandoraPartyProject

ギルドスレッド

Wiegenlied

【5】Gesang

【シリトヴの森】

レガド・イルシオン郊外。
東のそらが白みはじめ、鴉、次いで小鳥が歌い出す頃。
木々が、草花が、白露を帯びている。

白銀の枝葉を揺らす風に乗せて。
微かな歌声が、静寂の森に満ちていた。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆

1:1RP。
アイラとわたしの、或る日の一幕。
(薔薇のしずく、雨のいろ、風の歌声)
(あまい、あまいチョコレート、ぴかぴかの靴)
(お気に入り、お気に入り、たくさん、わたしのお気に入り)

(どこかで聞いたうた。旅芸人が紡いでいたそれを、自分のものになぞらえて)
(籠に満たす。あか、しろ、きいろ。花をたくさん、いろを、たくさん)

…………わあ!

(ふと。かさりと草を踏みしめる音に。か細い問いかけに)
(すっかり油断していたのだろう、素っ頓狂な声を上げて)
……、……。

(恐る恐る振り向いたその先。揺れる艶やかな黒髪、冬の色を抱いた瞳)
(少女が先日出会った同胞だと知れば、見る間に頬を喜色に染めて)

アイラ!

(慌てて立ち上がると、ぱたぱたとスカートに付いたみどりを払いながら)

こんにちは。
えへへ。ごめんね、へんなこえを出しちゃって。
だれもいないと思っていたから、びっくりしちゃった。

(彼女はお散歩の途中だろうかと、首を傾いで)
(よかったら此方に来ないかと、照れ混じりに手招いて見せた)
わ、わ、え、えっと……。

(驚かせてしまった。その事実に少し胸を痛めて)
(けれど、声が届いたから。だから後ずさりすることはなく)

…ぁ、れ?

(瞳のいろ、優しいこえ。よく似た少女を知っている)
(いや、違う。紛れもないあの子のものだ、と)
(驚きと喜びに目を開いて、目元は弧を描いて)
(それから遅れて、自分の名を呼ばれたことに気が付いて)
え、エーリカさん…!

(名前を呼び返す。あなたの名前を)

こ、こんにちは。
ううん、いいの。ボクも急に声をかけてしまったから。

(小さく首を振って。あなたのせいじゃない、と)
(手招きにしたがって、小走りでその近くに)

それにしても、こんなところが、あったなんて。
……この間は、見つけられなかった、なぁ。

(見渡せば、あふれんばかりの色彩に)
(思わず目を細めて、嬉しそうにつぶやいて)
(名を呼ばれること。自分の名を呼ばれることに、まだ)
(一瞬反応に遅れたけれど、きちんと彼女の名を呼ぶ事が出来た)

あっ。……い、いまは。おはようございます、だね。

(ひととあいさつを交わす事。練習をしているつもりではあるのだけれど、まだまだ不慣れだ)
(それでも。彼女が嬉しそうに笑ってくれるから、きっと”だいしっぱい”には至っていないのだろう)
(安堵の息を吐き、駆け寄る少女をぎこちないカーテシーで迎え)

こ、このあいさつ、ね。おともだちに、おしえてもらったの。

(上手にできているかな、なんてはにかみ乍ら)
わたし、おつかいの日から。ときどきここに来ているの。
おじいさんとおばあさん、足腰の調子はよくなったって言っていたけれど……それでも、森の奥はあぶないから。

(朝露を纏ってちからを蓄えた草花を。すこし分けてもらっているのだと語り、籠を掲げて見せた)

きょうはね、……ふふふ。
おばあさんに教えてもらった、おはなのジャムをつくろうと思って。

(こうして花を手折っている所だったのだと、みどりの絨毯に腰を下ろして)

アイラは、どうして?
ひとりでここまでくるのは、たいへんじゃなかった?

(”ヒト”は、自然を恐れるものなのだと聞き齧った事がある)
(彼女にとって。朝靄に包まれた森は脅威ではないのだろうかと、首傾けて問い)
(瞬きを繰り返して。そうか、今は朝だったと)
(少しの間空のいろを見て、いい天気だな、と呑気に考えて)

ふふ。そうでした、ね。
おはよう、ございます、エーリカさん。

(少女の披露してくれたカーテシーは、アイラにとっては憧れのもの)
(まるで絵本の中で見た“おひめさま”のようだ、と、感動した様子で見守り)

……!
おともだち、が? そうでしたか……!素敵な挨拶を、教えてくださったのですね……!
それに、ね。エーリカさん、おひめさまみたいで、ね……!
お花の祝福をうけた、おひめさま、の、よう……!

(凄いなぁ、と、とめどなく溢れる想いを言葉に変えようとするものの)
(まだ話すことは慣れないようで、拙いことばで、想いを伝えようと)
なる、ほど。
おじいさんや、おばあさんには、この森は、優しくないですもの、ね。

(納得した様子で小さく頷いて)
(籠の中の草花のなかにあのときと同じものがあることからも、納得してもう一度深く頷いた)

おはなで、ジャムを?
……ふしぎ。どんな味に、なるんだろう?

(自分も近くに腰をおろして、周りの草花に目を凝らし)
(どれが食べられるのかな?と、きょろきょろと辺りを見渡して)

……ボク?
ボクは、ね。前に、ここへ来た時に。
とても心地よかったのを、思い出して。
……だから、全然。大変なんかじゃ、なかったよ。

(煌めく木々が、朝霞に濡れる木葉が、風に揺れる花々が)
(ボクにとっては心地よいのだ、と、伝えるように、花を指で愛でて)
(お互い一拍ずれた『おはよう』が、なんだかおかしい)
(くすくす、ふふふ!)
(挨拶を交わし合うことが擽ったくて。ぎこちない、けれど確かな微笑み湛えて)

…………お、おひめ、さま?

(少女の賞賛、感嘆に。じわりじわりと頬染めて)
(ちょっぴり背伸びしすぎているかしらと視線を泳がせ)

わ、わたしも、まだ、じょうずじゃないの。
おひめさまはきっと、もっと……!

(もっと淑やかで。もっともっと、可憐で、うつくしくて――)
(口をついて出そうになった否定のことばを、嗚呼、けれど口にしたくはなくて)
(彼女が心から齎してくれたことのはを、否で塗り潰したくはなかった、から)

……えへへ。
じゃあ、……じゃあ、わたしは。
きょうだけ、精霊さんのおひめさま。

(こうやるんだよ、なんて。いっぱいの照れを滲ませ乍ら)
(それでも、羨望の眼差しを向けてくれた少女へ、足の折り方示して見せて)
うん。
森の中は歩きづらいところもあるし、おなかをすかせた動物がいることもあるから。

(彼らが森に親しく、慣れている事は十分承知だけれど)
(年老い、思うように体が動かせなくなった今では、思わぬ怪我をしてしまうかもしれないからと添え)

朝摘みのおはなをつかったジャムはね、とってもいいかおりがするの。
おはなによって味はちがうのだけれど……、ほら、そこのうすべにいろのおはな。
そのこは、甘酸っぱくていろのきれいなジャムになるんだよ。

(花の部分だけを捻るようにすれば、きれいに摘み取ることが出来る)
(やってみる?と、まだすこし余裕がありそうな籠を示し乍ら)

ふふ、そっか。
アイラにとっても、シリトヴの森が”すきなもの”のひとつになってくれていたなら、うれしいな。

(草花を慈しむ様子を見れば、彼女が自然に親しいものである事を知る)
(彼女の”当たり前”が嬉しくて。あかく染まった耳の先を跳ねさせ)

わ……わたしも。わたしも!
も、もり、とか。おはなが、すきなの。

(おともだち、をつくるには)
(すきなものをしること!と。精一杯の勇気を振り絞って同意を返した)

(喋る事が不得意なのは。どうやら娘も同じのようだった)
(確かに今、くすりと笑みを浮かべた少女の様子に)
(安心したように息を吐いた)
(少しばかり緊張していたようで、リラックスすることができたらしい)

……もっ、と?

(ぱちり、目を瞬かせ)
(自身の知らないおひめさまの姿を知っているのだろうか、と)

精霊さんの、おひめさま。
ふふふ、お姫様には、冠が必要、でしょうか?

(ここは花畑。きっと、花冠をつくることだって、できるはず)
(だから、周りの花に目を凝らして、もう満開を過ぎた花を手折る)
(花にも命はあるから、という、少女なりの気遣い)

ふむ、ふむ。
こ、こう、でしょうか……?

(不器用ながらに返してみせたカーテシー)
(バランスが取れなくて少し震えているのは、きっと見間違いなどではない)
そう、でしたか。
森の動物は、いたずらが好きな子も、いるから。

(おじいさんやおばあさんの変わりに草花を摘むあなたの姿が)
(優しいうたに、包まれていたのだろう、と思いを馳せ)

エーリカさん。ボクも、その、……おてつだい。
してもいい、かな。

(あのとき繋いだ縁が少女の胸のなかを擽って)
(薬屋夫婦のためにできること。それから)
(それから、エーリカさんのためにできることはないか、と)
(不安げにアイスブルーを揺らして、問いかけた)

うすべにいろ。うすべにいろ。

(いろを、反芻してなんども呟いて、忘れないように)
(辺りに溢れたいろのなかに咲く、薄紅の花をみつめて)

! このこも、ジャムに?
え、と。

(興味はあるようで、どうしようか少し考えて)
(それから、ゆっくりと口を開き)

…うん、やってみる、ね?

(緊張した面持ちで、花と向かい合い)
(片手は茎に、片手は花に添え)
(花に添えた手を、ゆっくりゆっくり、小さく捻れば)
(思っていたよりも簡単に、花はその手の中に落ちてきたようで)

で、でき、た……!!
とれ、とれちゃい、ました。
……これが、ジャムに。

(両手の中にある、薄紅の小さなそれを見つめて)
(それから、籠の中にそっと花を入れようと、籠の方へ身体を向けて)
……うん。きっと。 ボクね。思ったの。
きっと、シトリヴの森は、もう、すきなものの中に、入っていたの。
だから、ここに来ちゃったのかも、しれない。

(ふしぎだね、と恥ずかしそうに俯くのだが)
(視界の端に揺れる耳をみて、すこしずつ顔をあげて)
(その様子に、かわいいなぁ、とくすくす笑って)

そう、なの?

(瞳を大きく開いて)
(それから、嬉しそうにはにかみ笑いかけ)

……えへへ、うれしい。
おんなじ、だね。

(すきなものがおなじ、って、すごく嬉しいな、と、小さく呟けば)
(薄ら赤く染まる頬を、隠すことはせず)
(目の前にいる、優しい少女と)
(ともだちになりたい。と、思った)
(”おひめさま”。それは、そう)
(きらきらしていて、砂糖菓子のように甘やかで。ゆめのなかを揺蕩うような)
(けれど。生き物すべてが寝ぼけ眼の今この一時だけなら、きっと)
(ちょっぴりおかしな”おひめさま”になりきったって、誰も咎めはしないだろう)

か、かんむり?

(幻想の。王さまがかぶっていたような?)
(自分にはちょっぴり、眩すぎないかしらと首傾けて)

そう、そう。じょうず。
ふふ、アイラもこれで、おひめさまのなかまだね。

(もし。彼女が証人を望むなら――)

――ね、”みんな”。

(娘がそう、虚空に告げた瞬間)

(『くすくす』『うふふ』『そうね』『そうだわ!』)

(葉の陰から。風に踊る花弁の上から。木漏れ日のひかりの中から)
(ちいさなちいさなヒトのかたちに似た乙女たちが、彼方此方から顔を出した)
(どうやら彼女たちはふたりの様子をずっと伺っていたらしい)
…………うん!

(手伝いを、と。少女からの申し出に、眉下げたへたくそな笑顔で頷いて)
(『それじゃあ、さよなら』と。そそくさと逃げ帰ってしまわない勇気)
(歩み寄りたい、胸の奥から沸き立つ想いを無視せずに。きちんと、彼女と向き合って)

そのままだと枯れて、土に還って、めぐりゆくいのちだけれど……。
こうして森からいのちをもらって、くらしの”さいわい”をおすそ分けしてもらうの。
ジャムができたら。アイラにもあげたいな。

(春と秋にしか採れない味覚のひとつ)
(もしも彼女がそれを知らないなら、この彩を知ってもらえたらうれしいと添え)

……ほんとう?
それって、…………とっても。とっても、すてき。

(同じ森を愛し、慈しんで。草花に触れ、森の廻りとひとつになること)
(それを共有出来るだなんて。それって、なんだか。”とくべつ”!)

わ、わたしね。
あんまり……、……その、じぶんのすきなことを、しゃべったりすることが、なくて。
だから……ふふふ、アイラが、なんでもないことみたいに頷いてくれるから。

(うれしくて、と。熱持つ頬を両のてのひらで押さえ)
(草花をいくつか手折り、編み込み)
(少し長さを持ってきたところで、持ち上げて見せてみる)

これを、くるっと丸く、かんむりにする、の。
宝石にはまけるけど、お花だから、きっとかわいい。

(ふふん、と得意げに笑って)

そうでしょう、か?
……え?みんな?

(瞬間、溢れたその声に)

(わぁ、と感嘆の声を上げ)

(乙女たちのその姿に、見惚れるように頬を染め)
! うん、任せて……!

(表情を輝かせ、嬉しそうに頷いて)
(小さな手に拳を作って、がんばります!と)

……!!いい、ですか?
わぁぁ、ジャム、ほんと?
ど、どうしよう、すっごく嬉しい……!!

(嬉しそうに、にまにまと口角をあげて)
(わくわくとした様子で、待ってますね、と付け足せば)

えへへ、でしょ?
この森は素敵なこと、ボクにたくさん、教えてくれたから。

(同じことが共有できるよろこびを、しあわせを)
(その瞬間がとても愛おしいものになると、自分は知っているから)

……そ、そう?
だって。エーリカさんのすきと、ボクのすきが、同じだったもの。
ボク、それがとっても、嬉しくて。
……ぼ、ボク、喋りすぎてない?だいじょうぶ?

(その様子を嬉しそうに眺めながら)
(ふと、自分ばっかりになっていなかっただろうか、と、心配そうに顔を曇らせ)
(少女のゆびさきが、魔法を手繰るように器用に花を編んでいく。
 何時か見た機織りとはまた違う。みどりを編む。その所作に見惚れて、ほう、と感嘆の息漏らし)

アイラ、すごい。じょうず。
……で、でも、わたし、へんじゃないかな?

(なんて。気恥ずかしさを滲ませて、ちょっぴりの不安を零したけれど。
 彼女が頭を、と促してくれたなら、娘は恐る恐るこうべを垂れる事だろう)

もちろん。
アイラは……じゃあ、じゃあ。ちょうちょのおひめさま。

(以前彼女が自分に届けてくれた言の葉。その、奇跡のひとかけら。
 あのうつくしいひかりの蝶は、姫君の象徴にふさわしいのではないかと。
 少々興奮気味に身を乗り出し乍ら。あなたのまほうは、とてもきれいだと告げて)

……あなたはきっと、みんなをこわがらないから。

(だから。”みんな”も、ここにいてもいいかな。
 なんて、内緒話のように囁いた)

花にも、風にも、水にも……ぜんぶ、ぜんぶいのちが宿っていて。
わたしはみんなのちからを借りて、魔法をもたらすの。
うん、うん。もちろん。
あのね……、おはなのジャム、パンに塗るだけじゃないの。
お湯で溶くとね、はなびらが浮かぶお茶にもなっちゃうんだよ。

(楽しみ方は色々。甘酸っぱい風味と、仄かな花弁の食感を楽しむのだそうな。
 果物のジャムとはまた違う、華やかな香りを閉じ込めた。
 彼女の驚く顔が見たくて。わたしもたのしみ、なんて目を細めた)

一年中、冬のいろを閉じ込めたふしぎな森。
わたしも、この森がすき。
すこしつめたい朝の空気を、胸にいっぱい吸い込むと……すうっと、からだが軽くなる気がするの。

(息をすること。当たり前のこと。
 けれど、嘗てはそれさえ”上手に”出来なかった。
 だからだろうか。澄み切った空気を臓腑に満たすと、
 生きている実感がするのだ……と迄は、流石に口にしなかったけれど)

あんまり、ヒトとおしゃべりすることがなかったの。
でも……ふふ、勇気を出してよかった。
こうしてアイラと、おなじすきなものを分かち合えたんだもの。

(不安げに此方を伺う声に、ふるりとかぶりを振ってみせ)

もっとたくさん。たくさん、ききたいな。
あなたのこと。あなたのおはなし。
ううん。きっと、とってもよく似合うはず。
モノにはこころが宿ってる、の。
その籠にも、花達にも、このかんむりにも。
だからきっと、エーリカさんを、祝福して、くれると思うな。

(よし、と小さく呟けば)
(色とりどりの花のかんむりを、そっと頭にのせようと。
精霊さんのおひめさま、はいどうぞ。なんて声をかけながら)

わ、ちょうちょの…?とっても素敵。
ふふふ、きっとお空も、飛べちゃいますね。

(…ボクのまほうは、つめたくて、鋭くて。
だから、きれいじゃ、ないよ。と、行く宛のない想いをのせた蝶がうまれる)
(その蝶を目で追いながら。ありがとう、と寂しげに微笑み)

うん。ボクらの傍にいてくれると、うれしいかも。

(くすくす、楽しそうに笑って。大きく笑みを浮かべ、頷いた)

いのち。…彼らの、ちから。
あなたのまほうは、みんなから祝福されて、いるんだね。

(どんなモノにもいのちはあるというけれど。
自然からちからを受け取り、まほうにするという目の前の少女を。
凄いなぁ、と感嘆の声を漏らして見つめた)
そう、なの?
ジャム、すごいね。なんにでも、変身しちゃう。

(待ち遠しいね、とはにかんで)

ひんやりしたこの森は。……きっと、寂しいのかもしれないね。
だから、こんな素敵なお花畑や、薬草をうみだして、ヒトをよぶのかも。
すきだなって想い、伝わってると、いいな。

(ぐるり。少女たちと精霊たちがいるには、広すぎる花畑を見渡して。
うん、やっぱりこの森がすきだ、と確認するように風の音に耳を澄まし、目を伏せた)

ほんと?……そんなふうには、見えなくって、びっくりしちゃった。
ボクもね、沢山お話しするようになったのは、こっちの世界にきてから、なんだ。
だから、どうしてかな……親近感。
“すき”が“おなじ”ってだけでも、とってもうれしいのに、ますますしあわせ。

(おなじ思いならなおさら嬉しいな、と照れ混じりにこぼして)

……うん、ありがとう。えへへ。
じゃあ、えっと、そうだなぁ。
…なにかしりたいこと、ある?
(ものに宿るいのち)
(嘗て『あってはならないことだ』と。『誰にも言ってはいけないわ』と。
 唾棄すべき思想であると。悍ましい”魔女”のちからであると)
(ああ、けれど――今はそれが、こんなにも)

へ、…………へんじゃ、ないかな。

(自分では見えないけれど。頭に乗ったやわらかい感触にはにかんで。
 彼女の胸の内から零れ落ちたように生まれた蝶を。ひとひら、ゆびさきに招こうと。
 もしも蝶が娘のゆびさきに届いたなら。溢れたおと。意味を持ったことのはに、目を瞬かせ)

アイラは、……冬が、きらい?

(多くは語らず、そう問うた。蝶が触れなかったとしても。
 彼女が自身のちからに何らかの憂いを抱いているのではないかと、花のかんばせ伺って)

しゅく、ふく?
……そ、そうなの、かな。
えへへ。……そんなふうに言ってもらえると、うれしい。

(少女が快諾を示してくれたなら、きゃあ、と黄色い歓声を上げて精霊たちは思い思いに飛び回り始めた。
 花に腰掛け歌うもの。朝露で喉を潤すもの。興味深げに少女を観察するもの、様々だ)

よかった。
みんな、おしゃべりがだいすきだから。

(話し相手が増えたことを、きっと歓迎してくれている筈だと添えて)
すごいでしょう、いろんな食べ方を教えて貰ったの。
アイラは、ふだんはローレットに?

(自分は幻想の町外れに住んでいるから。
 もしもあなたが遠くの住まいなら、待ち合わせ場所を決めようと頷き)

冬は、眠りの季節だから。
いのちを育み、芽吹きのときをじっと待っている。
……だからかな。雪の葉の下に花を抱いて、いきものが訪れることを待っている。

(木々の声に耳を傾ける。彼らから、負の感情は流れてこなかった)

ふふ、みんな『うれしい』って。

(精霊たちを怖がらない彼女になら。彼らの声も、きっと、)

そうなの。……ヒトときちんとことばを交わせるようになったのは、大規模召喚の日を経てから。
それまではずうっとひとりでいたから、どうやって話したらいいのかわからなくって。

(今も練習中なのだと、眉下げ微笑み)

アイラは、混沌のそとからきたの?
それじゃあ、不安なことがたくさんあったでしょう。

(見慣れぬヒト。見慣れぬ景色。見慣れぬ風習、何もかもが。
 不便はないか、心細くはないかと首を傾いで)
うん。全然変じゃないよ。
とってもとっても、可愛い。

(嬉しそうな表情に、こちらも顔を綻ばせ)

…っ。

(ひらひら、ふわり)
(気まぐれにその指にとまったその蝶は。
ピキピキ、パリン――。と音を立て、消え去るだろう)
(もしも。もしもふと視線をあげた先。少女と目が合ったなら。
悲しさの色の混ざる表情で、笑みを浮かべ)

うん、……そう、だね。
ボクは、冬が嫌いです。……とても。
こんなこと、誰にも言ったことはないんだけれど。
……ごめんね。きっとボク、今すごく、悪い子だ。

(苦々しい顔で、肯定して)
(申し訳なさそうに、悪い子だ、とことばを零し)

きっと、そうだよ。
ボクはそう思う。

(笑みを浮かべ深く頷き)
(嬉しそうな彼女たちの様子を楽しそうに見守って)

わぁ、ほんと?
ボクもおしゃべりは、好きになれたから。
えへへ、そっか、そっか。

(目を細めて、噛みしめるように)
ふだんは……森の奥に。
ローレットにいるときもあるんだけど、森にいたほうが落ち着くの。

(待ち合わせはどこにしようか、と問いかけて)

…うん。安らかな、優しい眠りがあると、いいな。
冬は、ねむりの季節。
…そっか。そうなんだね。

(ことばを繰り返して、反芻して)
(自分の知らない冬のすがたを、羨むように)

ほんと?…そういえば。
エーリカさんは、木々のことばが、聞こえるの?

(声なきものたちの声を、伝えてくれるその行動に)
(ふと気が付いたようで。率直な疑問を言葉にし)

此方の人も召喚されたんだ、ね。
……ひとり。そう、でしたか。
でも、ボクと話していても、変なところはなくて、すごいね。
じょうずだと、思うよ?

(辛いことを思い出させたかな、と申し訳なさそうに視線を落とすのだが。
でも。今ことばを交わしているあなたの姿が、そんな風には思えない、と。
少しばかりの励ましと、心からの尊敬をのせて)

ボクを拾ってくれたヒトが、居てね。
そのヒトが、ことばや、文化や、いろいろなことを。
空っぽだったボクに教えてくれたから。
だから、だいじょうぶだよ。

(もうそのヒトは傍にはいないのだけれど、と小さく付け足して)
(かわいい、だなんて!)

…………えへへ。うれしいな。

(咄嗟に否定をのぼらせかけたけれど。それが失礼なことだと、学んできた
 言われたままを受け取ること。それもきっと、”おともだち”にはヒツヨウなこと!)

――――、

(彼女から齎された声なき声。こころのおとに、ぱちりと目を瞬かせた。
 ああ、これは、
 身に覚えのある”揺らぎ”。けれど、少女から視線を逸らす事はなく)

どうしてわるいこなの?
だれにだってにがてなことはあるもの。なんにもおかしくないよ。

(それに、)

奪うばかりが冬のすべてじゃない。
それを、わたしは知っているよ。

(いのちを留める氷。いのちを包み込む雪。触れればとてもつめたいけれど。
 それがとてもうつくしいものであることを、知っているのだと告げて)

わたしも。……わたしも、自分のちからのことを、長い間受け入れられなかったの。
みんなはずっとわたしのそばにいてくれたのに……。
ふふ、だからね。……アイラのきもち、ちょっぴりだけわかるの。
森に?わあ、すてき。
わたし、わたしも。みどりのそばにいると、こころが安らぐの。

(いっしょだね、なんて囁いて)
(それならローレットで落ち合うのも良いかもしれないと添えて)

そう、ねむりの季節。
からだを休めて、ちからを蓄えて。
いきものみんなが、芽吹きのときを。今か今かと待ちわびる、巡りのとき。

(だから、冬も大切な季節のひとつ。そう思うのだと、娘は微笑んだ)

……、……ぁ、……えと、
…………へ、へん、かな?

(この耳は。草木の音色を、動物たちの心音を、精霊たちの歌声を。
 全て拾って、ことのはとして受け止める。それが娘の、世界からの”贈り物”だった。
 おかしな子だと思われてしまわないだろうかと、目線を泳がせ)

そうなの。はじめはひとりでお買い物もできなくて……。
冒険者の酒場で、行商の用心棒をしたりしながら日銭を稼いでいたっけ。

(兎に角必死だった。生きることに、精一杯だった。
 『ガキにくれてやる仕事はねえよ』と、一蹴されることも少なくなかった。
 けれど。それを目前の少女に全て吐露する事は憚られたので、曖昧に微笑んで)

ほんとう?しらないせかいにひとりきりじゃあ、何をして良いかもわからないものね。
そのときアイラに手を差し伸べてくれたひとがいて、よかった。
……、……ごめん。きかれたくないこと、きいちゃった?

(もう、そのひとはそばにいないのだと。告げる少女のことのはに眉下げて)
ふふ、ほんとにおひめさまみたい。
よかった、気に入ってくれた。

(安心したように息を吐き。
同意を求めるように精霊たちに、ね?と声をかけて)

…そうなの?
氷も、雪も。命を奪うだけの、ちからじゃ、ないの……?

(あたたかい。あたたかい言葉。あたたかなやさしさ。
少女のこころにすうっと、とけて、染み込んでいくのをゆっくりと感じ取って)

ボク、ね。
ボクのちからも、からだも、この瞳も。
ぜんぶぜんぶ、嫌いだったの。

(でも。小さな手でスカートを握って、それから)

でも、ね。
ようやく。好きになれそう。
だから、ありがとう。

(微笑んで。心からの感謝を伝えたい、と)

……どんなちからでも。
愛されるべきだし、誇れるものだし。
それを知ることのなかったヒトが、いたのは。
少し、残念に思います。

(受け入れられなかった自分のちから。
混沌でも、少女の居た世界でもきっと、同じことはあるのだろうと。
悲しさの混じった声色で告げて)
うん、いっしょ。
えへへ、そっか。おんなじだ。

(そうだね、と言葉を交わして)

芽吹きを、待つ。
…うん。冬も。きっと、大切なきせつ、だね。

(冬が来るのが怖かった。
でも、今年はきっと、大丈夫だ、と。心のどこかで確信して)
(だから、同じように微笑み、頷いて)

ううん、へんじゃないよ。
ボクが、蝶を生むのとおなじ。
世界からのプレゼントだもの。
…ボクにはそれができないから、うらやましいなぁ。

(どうして?と言いたげに首を傾け)

そっか、お仕事を…。
えらいね。ちゃんと、自分のいきるために、自分で動いたんだね。
それができるって、とってもすごいし、えらいし。
ほめられるべきことだと、思うよ。

(自分が過ごしたことのない時間を重ねた目の前の少女に、尊敬の気持ちは積もるばかりで。
すごい、だとか、えらい、だとか。
そんな言葉でしか表現できないのが悔しそうな顔をして)

ううん。だいじょうぶ。
今はね。お話ししてくれるともだちもいるし。
おかえりって言ってくれるひとも、いるから。
だから、いなくなっちゃったのは寂しいけど、今の生活も、好きなんだ。

(それに、まだこの世界の何処かにいると思うの、と付け足して)
うれしい。
このかんむり、たからものにするね。

(おんなのすがたで居るようになってから、短く無い時間を過ごした。
 うつくしいものを、そうだと。素直に受け止め共感すること。嗚呼、何と幸福なことなのだろう!)

……じゃあ、……アイラにも。
おはな、おそろい。

(ぽつりと零した音。足元に咲く瑠璃色の花を、そうっと)
(叶うなら、彼女の髪に触れるか触れないかのところで、髪を飾るように挿し込もうと)
わたしはそうおもうの。
こおりは、たべものを腐らせないまま、春まで守ってくれる。
雪は。せかいをましろに染めて、ふたたび色付くための準備をしてくれる。

(だから。戦闘では苛烈な一面を際立たせるかもしれない。けれど、
 そうでない場所であるならば。
 やさしいちからの使い方だって、きっとある筈だと告げて)

しろと、ゆきと、ちょうちょ。
アイラのまほうはきれい。とっても。

(澄んだ冬の空気を纏った、清廉とした。
 だから、どうか俯かないでと。出来得る限りやわらかい声音で)

それにね……、……ふふふ。
さむい、さむい冬の日に。
あたたかいシチューをたべて、香草湯に肩まで浸かって。
おひさまをいっぱい浴びた毛布に包まるとね……。
”ふゆのにおい”で満たされて、いつのまにか眠ってしまうの。
そうするとね、やさしいゆめがみれるんだよ。

(枕元に、秋の間に作ったポプリを添えたら、尚のこと!
 しってた?なんて、ひそやかに)
…………、

(変じゃない、と。告げられたことのはに。
 困ったように眉下げて。それから、くしゃりと破顔した)

ありがとう。
わたし、特異運命座標に選ばれる前は、人間種のひとしかまわりにいなかったの。
だからかな。植物や動物と話せるのはおかしいことだって、みんなにこわがられてしまったの。

わたしも……生まれ持ったものを受け入れて貰えなかったことが、かなしかった。
でも……、みんなはきっと、”しらないもの”、”理解できないもの”が、こわかっただけだとおもうの。

(だから。過去を憂いはすれども、恨めしいと思ったことは無いのだと添えて)

ふふ、アイラってば。
あんまりたくさんほめたら、てれちゃう。

アイラのそばには、いっしょにわらってくれるひとがいるんだね。
それだけで、ひとはつよくなれるんだって聞いたことがあるの。
……いつか。このせかいのどこかで、また会えるといいね。

(あなたに、さちあれ。僅かだけれど、この祈りが彼女のちからになりますようにと)

…………わ、……わたしたち、も。……おともだちに、なれる……かな……?

(消え入りそうな声で。顔を上げた娘は、恐る恐る青いひとみを見つめ)
おそろい?

(こちらに向けて伸ばされた手に目を閉じて)
(ぱちり。目を開けば、視界の端に瑠璃色の花を捕らえたなら)

わぁ……!
ほんとだ、おそろいだ……!

(嬉しそうに顔をくしゃくしゃにして)
…ふゆのいろ。
ボクのしらない、優しい冬。

(頷き、そして反芻するようにことばを繰り返して)
(自分の知らない雪や氷のそのすがた。どうして知ることがなかったのだろう?
不思議そうに瞳を輝かせて)

…ありがとう。
ボクの魔法も、きっとよろこんでる。

(ありがとう。ちゃんと心から言える。幸せだな、とつぶやいて)

……!
しらなかった。とってもすてきな、過ごし方。
ふゆって…冬、って、すごいんだね。
ボクにもそんな冬が、来てくれるでしょうか。

(ふゆがきらい、と)
(発してしまった言の葉も蝶も、元には戻らないことを知っているから)
(不安げに眉根を寄せて)
そっか、人間種……

(ちらりと少女のもつ長耳に目を向ければ)
(自分の知らない苦悩があるのだろうな、と少し申し訳なさそうな表情に)

ヒトにとって。
未知は恐怖であり敵なのでしょう。
だから知りたいと思うのか、そうではないのか。
……エーリカさんとであった方は、後者だったんですね。

(自分だったのならきっとできない考え方だな、と感嘆の声を漏らし)
(すごいね。と。言葉にすることは躊躇われたので、また蝶を飛ばして)

ぼ、ボクってば、ついうっかり。
きをつけるね。

うん。きっと、ボクはそれだけでたくさんパワーをだせちゃいます。
ありがたいです。彼がそばにいてくれると、知らないことをたくさん知れます。
…はい。どこかで会えたら、きっと成長したすがたを、見てもらいたいのです。

(大きく頷いて。自分はまだ未熟だけれど、でも少しずつ前へ進めているはずだから)
(だから、ありがとうと微笑んで)


……。あの、ね。
ボク、もうお友達だと、思ってたんだけど……だめ、だった?

(目と目が合って。思わずそう返せば)
(やっちゃった、と言わんばかりに申し訳なさそうに頬を掻いて)
えへへ。アイラ、とってもにあってる。

(ふかい、ふかい、海のいろに似た。
 ふしぎ。彼女の艶やかな黒い髪は、冬のそらより澄んで見える)

さむくて、つめたくて、いたくて……。
もちろん、強く厳かな一面も持ち合わせているけれど。
わたしはすき。高く澄んでいて、うつくしいふゆがすき。
だから……アイラのまほうが、とってもとっても、すき。

(なんて。面と向かって言うのは、少々面映いものがあったけれど。
 悲しそうな彼女の顔を見たら、言わずにはいられなかったのだ)

もちろん、……もちろん!
星を数えたり、氷柱で音色を奏でたり。
たのしいことが、たくさん。たくさんやってくるよ。

……そのときは。いっしょにあそんでくれる?
そう、……そうだね。
”ちがうもの”が、みんなは怖かったんだとおもうの。
それを、なにかのせいにしなければ、不安に押し潰されてしまいそうなほど。
すごくかなしくて、こわかったけれど……。
でも、せかいには。たくさんのひとびとが、肩を並べていきていることを。
もう、しっているから。

(だから。だから、大丈夫なのだと。
 淡い蝶が触れたなら。擽ったそうに目を細めて、ありがとう、と囁いた)



(おともだち、と。彼女が告げてくれたことのはに、目をまあるく見開いて)

…………う、ううん。
だめじゃ、ない。だめじゃないよ。
えへへ。……おともだち、ふえちゃった。

(はにかみ混じり。両のてのひらを頬に添え乍ら)

導いてくれるひとが。手をとってくれるひとがいること。
それはとてもあたたかくて……前をみつめる勇気をもらえる、から。
アイラをたすけてくれたひとにまた会えたなら。
そのときはきっと、胸を張って笑い合えると思うの。

(なんて、そうだったら良いなと。友人として願ってしまうのだと微笑んで)
ほんと?……うれしい、ありがとう!

(髪に飾られた花に触れて、嬉しそうにはにかみ)

ふゆのいろをした、魔法……なの、かな。
そう言って貰えると、嬉しいな。ありがとう。
ボクも。……ボクも、エーリカさんの魔法がすきだよ。

(自分の魔法を肯定してくれたこと。
自分の知らない冬を教えてくれたこと。
世界はなんて優しいのだろうか?
幸せをたくさん受け取った少女は、幸せをお裾分けするように言の葉を重ねて)

うん、うん!一緒に、たくさん!
ボクは冬を、楽しい冬、を、しりません。
……だから。
エーリカさんに、たくさん教えてもらいたいな?


……うん。
ボクらも、違うひとで、違う種族だけど。
……おともだちになれたんだもん。
きっといつか、どんなひとも、種族もこえて、仲良くなれる日が来ると思うな。

(小さく頷いて。
そんな日が来ることを祈るように、空を眺めた)

うん、ボクら、おともだち。
……ボクも。ボクもおともだちがふえて、うれしい。
えへへ、しあわせ。

(その様子を見て微笑ましいとでもいいたげに、くすくすと笑って)

手を握ってくれるひとや、おともだちがいるだけで。
ボクはまだまだ、成長出来ると思うから。
……きっとそう、です。
信じます。そんな、未来を。

(小さく手で拳を作って握って)
(がんばります、とでも言いたげに、やる気に満ちた表情で)
魔法のみなもと。わたしたちのなかに、めぐるちから。
それはひとによって色彩をかえて、かたちにはならないけれど。
アイラがつかうちからなら。痛みばかりをあたえるものには、ならないとおもうの。

(なんて、ことのはを交わした数度で、そう感じただけなのだけれど。
 微笑む彼女が音を返してくれたなら。頬をばら色に染めて、気恥ずかしそうに)

ありがとう。
わたしも、”みんな”が分け与えてくれる、このちからが。
……いまは、いまは。胸を張って、すきだって言えるの。

(恐れられたちから。
 『魔女』だと罵られたちから。
 けれどそれが、誰かを傷付ける為のものではないことを、もう、知っているから)

うん、……うん!
わたしも、ふゆをもっとたのしく過ごせるまほうを知ったのは、さいきんのことなの。
アイラにも、たくさん。たくさん、わけてあげるね。
(彼らは恐れていた。
 神の御使いでないものを。
 木々の柵のそとから訪れるものを。
 自分たちとは違うものを。すべてを、)

……そう、そうだね。
わたしたちは、せかいにおちた奇跡のかけらなんだって、空中庭園で聞いたの。
だから……だから。わたしたちが、みんなのおてほんにならなくちゃ。

(自分たちが、種を違えようと手を取り合っていたならば。
 いつかは、いずれは。皆も、何をも恐れずに。
 等しくしあわせになってもらいたいのだとはにかんで)

おともだちができることって、とっても、とってもうれしいね。
それに……、……ね、わたしたち。

(いろが、おそろい!
 なんて、内緒話のように囁いて)

アイラの旅路に、みちゆきに。
たくさんのさいわいがありますように、……わたしからも、”みんな”からも。

(周りではしゃいでいた精霊たちのうち。
 花のいろを纏った乙女たちが、少女の頭上でぱっと花弁を咲かせ、振りまこうとしていた。
 雨のように。雪のように。たくさんのいろを、さいわいを)
あたえてしまった痛みのぶんだけ、癒せるような。
そんな魔法を、使いたいものです、ね。

(小さく頷いて。魔法のちからにおもいを馳せる。
目には見えないけれど、傍にあるような気がしたのだ)

みんな。

(自身の周りに存在するすべてを見渡して)

……うん。
きっとそれって、簡単だけど、とっても難しい。
だけど、とてもたいせつなこと。

えへへ、ありがとう。
おすそわけ、してくれたら、きっと。
もっともっと、冬を知ることができる気がするんだ。
おてほんに。
うん、きっと、なれるよ。
だって、おそろいの色をした、ボクらだから!

(髪のいろも、青く色づいた瞳のいろも。
おそろいだ、と同じように言葉を返して)

……わぁ!

(降り注ぐ花弁、次いで光り出す朝の光。
祝福だ。さいわいだ。魔法だ!
嗚呼、なんて幸せなんだろう!)
(色とりどりの花の雨に、手を伸ばして触れようと)
だいじょうぶ。アイラならきっと、できるよ。
だって……ほら。わたしにも、”まほう”をくれたもの。

(花を紡ぎ、花を廻らせる。やさしい冠。
 あなたがくれたもの。それは、こんなにもあたたかいのだと告げて)

そう、みんな。
踊る風の歌声を。巡る水のせせらぎを。
大地の鼓動を、いのちのともしびを。
目に見えるものだけがぜんぶじゃないって、……わたしはみんなに、おしえてもらったの。

(自分のちからを理解すること。受け入れること。
 それは人々との触れ合いで培ってくる事が出来た、娘なりの成長のしるしなのだと目を細め)

ゆきがふったら、まっしろなじめんにからだをのせたり。
降り始めた霜の音を聞いたり……そう、それから。
うんとさむいところでたくさんあそんだら、あたたかいおへやで、あたたかいスープを飲むの。
そうするとね……。

(ひそひそ、声を潜めて)

びっくりするくらいおいしくて、からだも、こころもぽかぽかになるの!
ふしぎ。
わたし、じぶんのいろがすきになれなかったのに。
……アイラとおそろいだって思ったら、なんだかすごく誇らしく感じるの。

(これって、”げんきん”かしら?なんて)

きょう、ここに来て。あなたに会えて、よかった。
わたしも……ふふ、みんなも。とってもうれしいの。

(だから。これは、ほんのささやかなお礼のつもり。
 彼女の指先が花弁に触れれば、咲き初めの甘やかな香りが弾けて溶ける。
 『どうか、わらって!』ことばは無くとも、伝えられるように)

ね、アイラ。よかったらだけれど……。
……あ、あさごはん。いっしょに、たべにいかない?

(おかげで、籠はすっかりいっぱいになったから、と。
 そろりと様子を伺って。緊張に身を固くしながら)
ふふふ、ありがとう。
これも“まほう”になれているの、ですね。
……そっかぁ。

(目を細めて、よかったと呟いて)

……。うん。
見えるものだけじゃない。
きっと、それはボクらのちからも、きもちも。
どれにも当てはまるのでしょうね。

(同意するように頷いて。深く、ゆっくりと)

わ、わわわ……!

(息をのんで。たとえるなら、魔法にかけられたように)

すてき、とっても、すてき……!
あぁ、どうしましょう……。
なんだかとても、待ち遠しくなってきちゃった。
そ、そうでしょうか。
……少し、くすぐったいですね。

(嬉しいのだけれど、恥ずかしい気もして。
 少し口をもごつかせて。それから、恥ずかし気に笑みを浮かべて、頬を掻いた)

……!

(溶けては香る、甘い花のにおいに包まれて。
 それから感じた、彼女の声なき声を聴いたように思われて)
(大きく頷いて。それから、“笑った”)

ボクも。エーリカさんと、ここで出会えて、よかった。

(同じようで違う色をした、青い瞳を見つめて)

い、いいの……?
もちろん、エーリカさんさえよければ、是非。

(朝ごはん。それも、友達と!)
(はじめての体験だ、とすこしそわそわした様子で告げて)
うん、そう。”おともだち”が使える、ひみつのまほう。
ひとつ、またひとつ。重ねていくたびふえていく、うれしいというきもち。

(だから。大丈夫。顔を上げて、と。告げずともはにかみ微笑む彼女の姿に微笑み返し)

せかいは、とても。とっても、ひろくて。
わたしたちでさえしらないことが、まだまだ、たくさん。たくさん、あるから。
わたしたちがちっぽけに思えるくらい、”ふしぎ”なものが見つかるよ。

(だからきっと。後ろめたく思うことも、嘆くこともないのだと添えて)

ふふふ!
やわらかいゆきにじぶんのかたちがのこるの、とってもたのしいんだよ。
スープのあたたかさも、燈りのまぶしさも。
たくさん、たくさん知っていこうね。

(それは自分も、一度知ってしまったら病みつきになってしまうほどのものなのだから!)
……えへへ、わたしも!

(自分で言ったはいいけれど、ちょっぴりずうずうしいかもしれない、なんて。
 すこし。ほんのすこうし、不安になってしまったのだと囁いて。
 けれど彼女は柔らかく笑ってくれたから。自分の、友人たちの齎す色彩を、喜んでくれたから)

ありがとう。
ことばをかわして、まほうをかけあって。
アイラがわらってくれたことが、とってもうれしい。

(ありがとう。もう一度、溢れんばかりの想いを込めて)

うん、もちろん。
きのうから煮込んでおいたスープがあるの。
……ふふ!さっそくひとつ、”ふゆのあしおと”が聞けるね。

(立ち上がり、花でいっぱいに満たされた籠を抱えて。
 彼女のことのはを是と受け取ったなら、緩やかに。少女を先導するように歩き始めた)


(――木漏れ日の中、小鳥たちの歌声を聴き乍ら歩む道。
 シリトヴの森と精霊たちは、ふたりの娘を優しく見守っていた)

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