シナリオ詳細
<真・覇竜侵食>もう交わらない交響曲
オープニング
●始まりの場所にて
亜竜集落イルナーク。
サンダードレイクの骨が未だ周囲の生物に威圧を放つその場所は今、亜竜種ではない「別のモノ」に占拠されていた。
蟻帝種(アンティノア)。
覇竜にて産声をあげた新たなる者達。
亜竜種を喰らいその身体的特徴と知識を得ることで急速成長した第一世代たちは、もはや自分達が亜竜種をアダマンアントに喰わせずとも、自分達だけで数を増やすことが出来ると知っていた。
雌雄の差があり、生殖機能もあるからだ。
彼等、蟻帝種・第一世代(アンティノア・ファースト)からは蟻帝種・第2世代(アンティノア・セカンド)とも呼べる、可能性に満ちた蟻帝種を産みだすことが出来る。
しかし他の生命体と変わらぬ方法で産まれる以上、第2世代(セカンド)には育成の時間が必要になる。
それでは間に合わない。
アンティノアクイーンであるサンゴは、気付いていた。
一刻も早く、一定以上の実力を持つ戦力を揃える必要があると。
そうしなければ、アンティノアは覇竜領域において安全に暮らしてはいけないと。
だからこそ、サンゴは自らの知識の中にある「占拠可能な堅固な拠点」であるイルナークを占拠した。
アダマンアントクイーンをも倒したイレギュラーズには、傍観を求める手紙も送った。
ほんの少しだ。ほんの少し、この覇竜で充分自然に起こりうる程度の犠牲を許容さえすれば、アンティノアは敵ではなくなる。
それは覇竜という厳しい場所においては、非常に良い取引として成立しうるはずだ。
しかし、しかしだ。
「……襲ってくるの、かしら」
なんとなく、サンゴはそんな予感がしていた。
イレギュラーズがこのイルナークに攻め入ってくる、そんな予感が。
「もし来るなら……磨り潰すわ。そして貴方達の死骸を第一世代の『素』にしてあげる。そうね、そうすれば……ある程度は安心。そんな気もするわ」
サンゴの身体からは、赤いオーラがゆらりと漏れ出す。
それはアンティノアクイーンとしての強大な力を象徴するかのようだった。
●サンゴからの手紙
私達は蟻帝種(アンティノア)。
生き残りの為、必要最低限の狩りを実施する。
どうか、邪魔をしないでほしい。
そうすればアンティノアクイーン・サンゴの名の下にイレギュラーズ、そしてデザストルの全ての亜竜種に対する無期限の中立を約束する。
こちらの都合と合致するなら協力もしよう。
だから、邪魔をしないでほしい。
もし邪魔をするようなら、話し合いの余地はなくなると考えてほしい。
どうか、賢明な判断を。
その手紙の内容は、フリアノンを含む三大集落へと知らされた。
イレギュラーズでも知らない者は居ないだろう。
サンゴ。あのイルナーク陥落の際に行方不明になった少女と同じ名前のアンティノアクイーン。
そう、イルナーク陥落の時。その後の調査の時。
その時には恐らく……もう。
蟻帝種・第一世代(アンティノア・ファースト)。そう名乗る者たちの姿は、覇竜の各地で確認されている。
行方不明になった人々と同じ姿と同じ知識を持つ、全く別の何か。
恐らくは行方不明になった人々をベースにして生まれた新種の何かであると推測はされていた。
つまり、それは1つの残酷な真実を示している。
「そっか。サンゴはもう……死んでたんだね」
【鉄心竜】黒鉄・奏音 (p3n000248)は感情の無い声で、そう呟く。
友人であった。けれど、もうサンゴには会えないのだ。
アンティノアクイーンを名乗るサンゴは「同じ姿と同じ知識」を持っているかもしれないが、全くの別人だ。
それが分かるからこそ、躊躇うことはない。
「……そうだね。それはもう、変わらない」
静李はそういうものだと、知っている。
本来は寂しがり屋であった彼女は何れだけ仲が良かろうと血が繋がろうと永久の別れが来ることを知っている。
だからこそ、これもまた「そういうものだ」と一歩引いた姿勢で見ることが出来た。
それでも……友人に寄り添うことをやめたというわけでは、なくて。
「ん……そうね。そして誰にもどうにも出来なかったの」
棕梠たちがイルナークに辿り着いた時には、もう「終わって」いた。
たとえもう1度やり直しが出来たとしても、何も変わりはしないだろう。
イルナークは滅びて、サンゴはアンティノアクイーンとなった。
だから……出来ることは、もう1つしかない。
「そうだね。ボクたちは……ボクたちに出来る事をしなくちゃ!」
●イレギュラーズの選択
当然ではあるが、アンティノアの要求を受け入れるわけにはいかない。
平和の為の生贄……といえば聞こえは多少いいかもしれないが、そんな理不尽を許容できるはずもない。
だから倒して、イルナークを再び取り戻す。
それがイレギュラーズの結論であった。
「幸いにも場所は分かっているし、行った事がある場所よ。これは大きな利点ね」
「とはいえ、イルナークは堅固な場所だ。厳しい戦いにはなるだろうな」
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)とベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)の言う通り、イルナークは1度調査に訪れた場所だ。その詳細はよく分かっているし、岩山をくり抜いた堅固な場所であることも分かっている。
「今後のことも考えれば無闇に壊すわけにもいかないよね」
「色々あったが、貴重な安全地帯ではあるしな」
笹木 花丸(p3p008689)とシラス(p3p004421)は頷きあうが、イルナークをやがて復興させるというのは三大集落の長達の願いでもあった。
亜竜集落イルナーク。滅びたとはいえその堅固さが変わるわけでもなく、このアダマンアント事件解決の後には復興も考えられていたのだ。
壊して修復できるものでもないので、可能な限り壊さないのが作戦の大事な部分になるだろうか。
「やるべきことはアンティノアクイーンの撃破。どれだけ進化してもアダマンアントがベースになっているのなら、それが1つの鍵になるはず……!」
ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)が決意するように呟き、全員がそれに頷く。
厳しい戦いになるだろう。
けれど、やらなければならない。見過ごすわけにはいかない以上、ぶつかるしか道は残されていないのだから。
●繋いだ縁が今此処に
フリアノンからイルナークまでのルート上に、一体のアダマンアントが待ち構えていた。
イレギュラーズがどんな選択をするか見ていたのだろうか。
「あちゃー……こりゃしまったねえ」
コラバポス 夏子(p3p000808)は目の前でギチギチと顎を鳴らしているアダマンアント相手に軽く冷や汗を流す。
様子見の偵察のつもりだったが、まさか向こうも同じことを考えていたとは。
万事休す。そんな言葉すら浮かんだ、その時。
アダマンアントを、何処かから飛んできた強力な熱線が撃ち抜いた。
一体何が。夏子の視線の先にいたのは……9つの尾を持つ巨大キツネ型モンスター。
爆炎焦土のナインテイル。
そう呼ばれるモンスターが今、夏子を助けたのだ。
「やぁ~デート誘ってくれた……よね? 迎えに来てくれたってことでいいの、かな?」
なんだか狐の顔でも分かるくらいにナインテイルが舌打ちしたが……どうやら今度の戦いで助けてくれるということだけは、確実なようだった。
- <真・覇竜侵食>もう交わらない交響曲Lv:30以上完了
- GM名天野ハザマ
- 種別決戦
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2022年07月08日 22時06分
- 参加人数204/∞人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 204 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(204人)
リプレイ
●今、再びのイルナークへ
「新たな命の誕生は祝いたいのですが、敵対者と位置付けられてしまいましたか……それでは蟻帝種討伐に動くと致しましょう」
「ひえぇ……そうですよね、敵対者なんですよね。凄く大変な事になってますよっ! 食べてその相手に成り代わる蟻とか……ともかく、色んな意味で危険過ぎるので戦うしか、ないんですね……っ。少しでも被害が少なくなればいいんですけど……」
「患者が多数出るって聞いたがひでぇ有様だぜ。すでに血と土埃の匂いで噎せかえりそうだ。これだから戦場は嫌いなんだよ……だが、患者が呼んでんならどこへだって行くぜ。正直な話、滅ぼすってのは俺からすれば過激とも思えるが……アイツらが生命を奪う事を許容しろってんなら話は別だ」
『星読み』セス・サーム(p3p010326)の呟きに『いのちをだいじに』観月 四音(p3p008415)と『医神の傲慢』松元 聖霊(p3p008208)が、そう気合を入れる。
「次から次へとキリがなかったっすけど……ついに決戦っすね。相手の言い分も分からなくはないっすけど納得も出来ないっす。こんな中途半端な気持ちじゃ前線じゃ足手まといになるだけっす。でも誰かが倒れるのも見過ごせないっす! だから! 一人でも多く無事に家に帰ってもらうっすよ!」
「――――広がる闇―其れはどこか宵闇にも似た―だが天を覆うは星に非ず岩の天井―吹き溜まるは夜風に非ず湿った土臭―異質な闇は、地下は既に蟻帝種のテリトリーだとよく示す―」
『No.696』暁 無黒(p3p009772)と『黒翼演舞』ナハトラーベ(p3p001615)はイルナークを見上げながらそう言い放つ。
傍らにあるのはゴリアテ。負傷者の運搬、更に前線復帰者の送迎……イルナーク前に設置した本部チームの役割は相応に重く、無黒の目にも緊張が見えている。
「蟻帝種……私、私達からすれば敵なんだよね。既に襲われてるし中立になる条件として更に私達を襲うんでしょう? 抵抗しない訳がないよね。その辺はあっちもわかってるだろうけど、そんな事、どうでもいい。やられたらやりかえす、やらないと殺される……と言っても私に実力がないのもわかってる。だから本部で怪我人の手当てをする」
「だよな。やるしかない。別の集落だから関係ない……なんて言う訳がないさ。自分なんかに何か出来るとは思ってない、けど故郷の危機に立ち上がらないで、いつ立つって言うんだよ……!」
少しだけ悔しそうに『ドラゴニュート』紲 白虎(p3p010475)と紲 煌氷(p3p010443)が言うが、仕方ないとも言えるだろう。
相手は数百にも及ぶアダマンアントと、それを統率するアンティノアクイーン。
真正面から何の策もなく勝てる相手ではないし……『働き人』アンジェラ(p3p007241)もまた、その恐ろしさを充分に理解していた。
(“働き人”の仕事が生殖階級の誰よりも危険な場所にある事は承知していますが、相手も私と似た真社会性知的種族の可能性があるのを警戒しなければなりません。女王は私の救援要請フェロモン感覚を騙して誘き寄せる能力を持っているかもしれません……ですが、本部にいればその危険は最小限に抑えられますから)
アリのそれに似た性質を持っているアンジェラだが、そう簡単に操られるつもりもない。
いざとなれば他のメンバーの盾になる気ですらあった。
「皆さんもよろしくお願いします」
「無理すんなとは言わねぇが死ぬ前には戻って来いよ!」
「勿論だ」
「やってやる……!」
綾辻・愛奈(p3p010320)と『救い手』ヨシト・エイツ(p3p006813)に亜竜種連合軍の面々も答えるが、各戦域の戦況を把握、戦況不利な戦域に対して求めていくことで本部のやるべきことも的確になされていくだろう。
勿論、ちりょう
「え…何この文字通りの蟻地獄。僕、虫嫌いなんだけど……ってもこんな所で死んでしまう方が最悪だよね。大丈夫、誰も死なせないように頑張るよ」
任せて。コレでも一応ヒーラーだから、治療は得意なんだ、と『陽の宝物』星影 昼顔(p3p009259)は仲間に言うが……その活躍が仲間の窮地を救う大事な役割だ。
「おんやまあ。かの長は随分と身勝手な事を申しておりんすねえ。イレギュラーズは、ローレットは亜竜種と友好関係にごぜーます。それを一時的に攫うにとどめるから見逃せ? 元々亜竜種相手に碌でもない事をしていたのに? いえ、良いのでごぜーます。それで彼女らが輝けるというのなら。でもね、亜竜種と蟻帝種と天秤にかけた時わっちは亜竜種を取りんす。蟻帝種の行く末が輝きが見れるとは思えない…」…くっふふ、もし輝けるというのならこの戦い、勝ち抜くぐらいの事はしてもらわないと」
「そう、彼らは彼らの信じた道を行くのだろう。俺は目の前の負傷者を癒すとも。美しく!」
『Enigma』エマ・ウィートラント(p3p005065)と『幻想の冒険者』アインス・レオ・ロクシナ(p3p010707)もそう言い合うが……本部の設営の準備は続々と進んでいく。
イルナークの中から攻め込んでこないところを見ると専守防衛の方針でもとっているのだろうか?
それは分からないが……何にせよ、攻撃班がしっかりと準備を整えるには充分な時間を得られそうだと『料理人』テルル・ウェイレット(p3p008374)はそんなことを思う。
「さて、先陣を行く方、共闘で舞う方、決戦の地に攻め入る方、それら皆様に対して僅かでも尽力できる様に。お力に添える事が出来れば」
とはいえ、やるべきことは変わらない。本部の地で回復役兼薬膳料理を振舞う料理人役として負傷を僅かにでも抑えようかと考え、色々と準備を開始していた。
「料理の方としましては混沌米を使用したお粥をご用意させて頂こうかと。消化に良し、怪我していても流し込みやすい様やや緩く作りましょう。その際で混沌で取れる薬味や薬草を細かく刻み、味を損なわぬ様注意して……」
その上空では、『亜竜祓い』アンリ・マレー(p3p010423)が警戒の為に空を舞っていた。
テントを張るのを手伝ってもいたが……いざ戦闘となれば戦う気でもあった。
(大した力はないけど支援と爆撃出来るしね。電撃使う相手がいないからあんまりだけど盾とかも少しはなれるとおもう)
そう、いざとなればこの本部も戦いの現場になるだろう。
(わたしは争いごとが嫌いです。敵であれ味方であれ、誰も傷ついてほしくないです。だから本当は戦いは避けたいです)
『救済の視座』リスェン・マチダ(p3p010493)も1人のドラゴニアとして戦わんが為、小さく拳を握る。
「でも、どんな理由があれ平和を乱すこと、身勝手な理由で侵略することは許せませんから。わたしの大好きな覇竜と覇竜の人たちのために戦います」
「ええ。アンティノアたちに奪われた集落イルナーク。なんとしても奪還しなければ、更なる脅威が……私はここで前に出て戦う方たちの支援を行います」
そんなリスェンに頷き『舞い降りる六花』風花 雪莉(p3p010449)もしっかりと前を見据える。
「絶対負けられないこの戦い、少しでも力となれるように微力を尽くします。ですので皆さん、どうか無事に帰ってきてくださいね」
「その為にも負傷者のみなさまのお手当て精一杯がんばらせていただきます。ケガをされた方には特製ブレンドティーをおすすめさせていただく予定ですの」
「本来おいらは衛兵だが……戦争兵士ほど強くはない。人の命を助ける仕事を手伝うのに集中するぜ。けど……願わくばみんな無事に生きてくれ。そのためならおいらも全力を惜しまないぜ」
『子連れ紅茶マイスター』Suvia=Westbury(p3p000114と『黄金の旋律』フーガ・リリオ(p3p010595)もそう気合を入れて。
「僕も……手伝うよ。みゃー」
『祈光のシュネー』祝音・猫乃見・来探(p3p009413)もまた、そう気合を入れて本部を設営していく。
「万一、蟻が来たら皆を……特に亜竜種の人達を守るよ。もう誰も蟻帝種なんかにさせないから……!」
「そうだな。考えたくはないが、ここが戦場になったときの備えは考えなくてはな」
『ベンデグースの赤竜』シャールカーニ・レーカ(p3p010392)の呟きは、本部の面々の懸念でもあるだろう。
此処が戦場になる確率はそれなり以上にあり、シャールカーニは「回復はできないが、護衛の真似事ならできるだろう」などと考えていた。
「拙者も怪我人の運搬の準備はバッチリでござるよ!」
『跳躍する星』糸巻 パティリア(p3p007389)もギフトである海星綱や忍び足を併用した立体機動を活用し負傷した味方を運搬するつもりだ。
シャールカーニにせよパティリアにせよ、負傷対応は実際の回復役だけではないということをよく分かっている。パティリアの高い反応力もこれから始まろうという戦いで仲間たちを的確に運搬できるはずだ。
「蟻さんの事件には今まで関わりがありませんでしたが決戦と云うことでしたら支援致しますのです。癒し手として動くのは元々必要に駆られての補助的なものでしたが最近は限界を感じてきましたので癒し手として動くのは今回が最後となるでせうね……では、最後とは云えいつも通りに、ゆるりと参りませうか」
『旅人自称者』ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)もそう言い放って。
「さぁて……故郷である覇竜のピンチだ。一先ず俺は壁にでもなっておけばオーケーってとこかい? ま、故郷を守れるならなんでもいいさ。例え違う集落の事だろうが同胞が絡んでんのは変わらねぇ……さ、やってやろうぜ!」
「騒ぎと聞いて駆けつけてみれば……此処まで事態が深刻だとは。微力でありますが、助力に参りました。斬って活路を拓きます!」
『二花の栞』ジェラルド・ヴォルタ(p3p010356)と『ぬくもり』ボディ・ダクレ(p3p008384)も、それぞれの武装を確認する。
そう、今まさに準備は終わり……激しい戦いが、始まろうとしていた。
●先陣を駆けよ
「彼らも生きてるだけ。罰する気持ちで戦いたくはない……ただ人々が無事であるように。行くよ皆!」
抜剣隊の前衛リーダーを務める『夜に一条』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)が星辰の黎明イシュラークを煌かせながら叫ぶ。
先行部隊として道の探索と進撃、最深部に向けて侵攻、中層最深部に繋がる一番大きな通路を確保し橋頭保として維持。その為に真っ先にアダマンアントの群れに突っ込む危険な役目だ。
ミルヴィたち先陣を務める仲間の数は、およそ100人程。
そして、今まで助けた小集落の亜竜種、そして三大集落の亜竜種で構成された連合軍。
勿論彼等の実力はイレギュラーズ程高くはないが、士気は非常に高い。
対するアダマンアントの数は最低400。どう工夫しても真正面から勝てる戦力差ではない。数々の策を弄して、ようやく「生きる希望が出てくる」戦力差。
しかし、それでもやらなければならない。
だからこそ味方の孤立に用心し、範囲攻撃の飽和攻撃と確実な各個撃破を抜剣隊は行動方針としていた。アダマンアントを遥かに超える連携が出来なければ、それは死を意味する。
戦略眼で敵群の隙の多い箇所を見極めて侵攻し被害を抑える。言うだけなら簡単でやるのは難しいが……ミルヴィはやってみせるつもりだ。
「……ミルヴィに呼ばれたから来ただけだ。ねじふせる、ただそれだけ」
『灼滅斬禍』皇 刺幻(p3p007840)のスナイパーアイがアダマンアントの姿を捉え、AKAが放たれる。多数攻撃目標の乱舞を主軸とする故だが、撃てば当たるこの状況ではあるいはそれが一番かもしれない。
何故ならば、抜剣隊含む先陣部隊はアンティノアクイーンへの道を切り拓くのが目的だからだ。
「いやはや数の暴力だねこれは……かと言って数をそろえればいいってものじゃないけどね? 対群術式展開……狂気に墜ちて仲間同士でやりあってるんだね? さて、もう一仕事と征きますか……起きろ無明世界……狩りの時間だ」
対群精神感応攻撃術式「死月」を『咎狩り』ラムダ・アイリス(p3p008609)が展開し、魔導機刃『無明世界』を構え走る。
「連鎖行動で引っ張っちゃうわー! おねーさんコアフラーッシュ! 最前衛で光って戦場を照らしちゃいます!」
『超合金おねーさん』ガイアドニス(p3p010327)がそのレジェンダリーレアの身体を発光させながら味方が戦いやすい状況を作っていこうとする。
これで狙われるのも願ったり叶ったり。味方を導くのは超合金おねーさんとしての矜持なのか。
「先陣と言えばワシの役目じゃな……よし! これより大軍との勝負じゃ!」
『真竜鱗』オウェード=ランドマスター(p3p009184)はミルヴィをサポートしながらもレジストクラッシュを放ち各個撃破と反撃を中心とした戦法をとる。
「しかし奇襲ではなく完全に迎え撃つ構えとはな。この戦力差では納得じゃが……」
だが、いつ増援が現れ奇襲をかけてきてもおかしくないとオウェードは一切の油断をしない。
「我が名はアンバー! アンバー・タイラント! フリアノンの防人にして刃……御託を並べる気はありません……この地で生き残るのは私達ドラゴニアです!」
大薙刀『屠龍』を振り回す『亜竜祓い』アンバー・タイラント(p3p010470)の瞬天三段からの煉気破戒掌が叩き込まれていく。
「話は聞いていましたが……これは……どうにかしなきゃいけない気持ちの中に、どうやって生命の創りを変えたのか。それを気にする私がいて嫌になりますが……今は、この状況をどうにかしなきゃ、ですね」
「はい! 私たちも命を頂いて生きてます。蟻さんのこと完全に責められません。でも誰かがいなくなったり悲しむのは嫌です! だから絶対……ここは死守します!」
『炯眼のエメラルド』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)と『ためらいには勇気を』ユーフォニー(p3p010323)の言葉通り、今の状況をどうにかしなければ覇竜の罪なき人々が吞み込まれていく。だからこそマリエッタとユーフォニーは互いに連携するようにしてアダマンアントへと向かって。しかし勿論、アダマンアントは個々の実力でも数でもイレギュラーズを圧倒的に上回る。
「くっ……!」
アダマンアントに振り回され叩きつけられ、『蛮族令嬢』長谷部 朋子(p3p008321)は苦痛の声をあげて……それでも防御に集中するべく、即座に立ち上がる。
「敵ををあたしのほうへ引き付けてまとめることで、味方が処理しやすくなるって寸法よ! 負けるか!」
「そうです! この戦い、負ける訳にはいきません。皆の力を見せて下さい!」
『勇往邁進』リディア・T・レオンハート(p3p008325)も叫び、輝剣リーヴァテインを振るいレオンハートストライクを放つ。
「此度の戦は、どちらに正義も悪もなく、互いに生き残る為の生存競争。正しく、是非もなし……であればこの剣も、少しは迷いが無くなるというものですね……!」
リディアの言う通り、これは生存競争だ。だからこそ『一般人』三國・誠司(p3p008563)は敵の死体は集めて積み上げ障壁にするつもりであった。それだけではなく常に聞き耳で後ろや左右の足音、物音の変化を聞き敵からの奇襲を警戒し敵の来る方角、数は定期的に仲間に通達するつもり……なのだが。
「数が多い……!」
「なれば…我が虚刃流の“裏”を試すには丁度良い。切り甲斐のある獲物が多くて助かる。多勢に無勢とはこのことだが……故に貴様ら“を”我が刃としよう。いざ、尋常に勝負!」
『虚刃流開祖』源 頼々(p3p008328)がワールドエンド・ルナティックを放ち、少しでも奥へ向かう仲間たちの道を拓こうとする。
「敵の数が膨大なら無限に殴り続ければ良いだけのこと!」
「そういうことだな。お前達にも言い分はあるだろうが、これは種の存続を賭けた戦争だ。悪いがここで潰させてもらう」
「だな。おぉっと、ここから先は通行止めだ。悪ぃが諦めて帰ってくれや!」
『『幻狼』灰色狼』ジェイク・夜乃(p3p001103)がプラチナムインベルタを放ち、『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)がエンピリアルローサイトを発動する。
(そうだ、戦うしかない。魔剣グリーザハートに誓い、大切な人を守ってみせる……!)
「我 墓守。死者 奪ワレタ姿 存在 尊厳 死体 眠リ 返シテモラウ」
『剣に誓いを』ムエン・∞・ゲペラー(p3p010372)がブロッキングバッシュを放ち、『水月花の墓守』フリークライ(p3p008595)もクェーサーアナライズを発動するが……そう、アンティノア・ファーストの姿……此処にいるサンゴの姿は同じ名前を持っていた少女のもの。
しかし……それでもムエンは思うのだ。
(これは生存競争だ。覇竜ではよくある事。私は決して同胞殺しをしようとしているわけじゃない。けれど……既に、同胞だ、彼らは……!)
そう、思ってしまうのだ。正しいと分かっていても心揺らされる。
だからこそ……『雨夜の映し身』カイト(p3p007128)のように、ドライに切り捨てる思考もまた大切だ。
「いやふつーに考えてさ? 向こうが妥協案のつもりで言ってることに何の利益も無いんだよ。だからまぁ、向こうは『はじめから繁殖しか考えてない』ってことだな。蟻に期待する方が間違ってるが。たださぁ……改造技術ってのは、どっちかっていうと俺(サイボーグ)みたいな分野の話じゃねーの?」
それについては分からない。アンティノアクイーンが何を考えているか、1通の手紙からしか察することが出来ないからだ。
「この陣地が私達の希望の一つ! 決戦隊が帰還するまで決して抜かせない!」
後光で光源となりながらクェーサーアナライズを響かせる『挫けぬ笑顔』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)の姿は、まさにその象徴とも言えるだろう。
「駆け抜ける突撃陣形の真ん中を支えるとは、責任重大ね。今回は……今回も、誰も落とさせはしないわ」
『決死行の立役者』ルチア・アフラニア(p3p006865)に『悠遠の放浪者』バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)も「おう」と応える。
「人を蟻に変えてあまつさえ自分らが自立するまで犠牲を許容しろだぁ? 通らせるかよそんな道理、結局は滅ぶか滅ぼすかだ……全力全開で潰させてもらうぜ。さあ、迫り来る蟻共は掃滅して後に続く彼奴らの道を切り開くぞ」
構えるセイクリッドファングは覚悟の証か。
「中衛のワタシは皆を繋ぐ役目。しっかり働かせてもらうよ……! さあ皆、弾切れは心配しないで……! 存分に戦って!」
「はい!」
『星月を掬うひと』フラーゴラ・トラモント(p3p008825)の百花号令が発動し、『空の守護者』ハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク(p3p000497)がリコシェット・フルバーストを放つ。
「双方にメリットがあって、初めて共存は成立します。あなた達の訴えは、あまりにも一方的すぎる。罷り通すわけにはいきません!」
「……どうあっても分かりあえないって悲しいよね。一度ぐらいお話してみたかったけどそんな場合じゃないもんね。ボクはボクに出来る事をやろう!」
『友人/死神』フロイント ハイン(p3p010570)もまたクェーサーアナライズで仲間を援護していき、『今を写す撮影者』浮舟 帳(p3p010344)は敵の多い場所を狙って『糸切傀儡』を発動させることで戦線を支えていく。
「結局、捕食者の理論で平和主義を説かれても、仲間や知り合いの口から出ているさまを見れば、はいそうですかと聞く気にもならないでしょうに」
「結局はそういうことですね……!」
糸切傀儡を発動させる『遺言代行業』志屍 瑠璃(p3p000416)に『守護者』水月・鏡禍(p3p008354)は応えながらも、ルチアのことを想う。
(中衛にはルチアさんがいるから。どこまでできるかわからないけど、彼女を守り続けたいんです……!)
そうして戦う抜剣隊の面々だが、当然戦うのは彼女たちだけではない。
それだけではこの戦場に穴を開けるにはまだ足りていない。だからこそ。
「このまま全員で……というわけにはいかなそうですね。私達が引き受けます。皆さんは、どうぞお先に。心配はご無用です。あまりゆっくりしていると、私達が手柄を全て頂いてしまいますよ?」
「『此処は任せて先に行け!』か。言うは易く行うは難し、って奴ね……では、有言実行で頑張りましょうか!」
『砂漠の蛇』サルヴェナーズ・ザラスシュティ(p3p009720)と『狐です』長月・イナリ(p3p008096)の叫びが響き、アダマンアントと向かい合う。
「分からない、分からないけど……戦わないといけない気がしたから。私が死んで欲しいと思う者達だったら、止めなかったけど……でも……何だろう……止めないといけない気がしたから。だから…戦います、戦わないといけないから」
「生きるための最低限の狩り……か。アンタ等がそれを妥協案か最善案どちらで見ているか知らんが、こちとらもう「はいそうですか」で済ませられる話じゃなくなっちまってんだよ。大事にしたのはアンタ等だ、同情はしても容認は出来ねえ」
『ファイヤーブレス』スフィア(p3p010417)に『隻腕の射手』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)も頷き魔力宝珠『神風』を掲げる。
「やれやれ、台所の床下を開いて嫌なものを見た気分だ」
「そうだねギルティだね……アリとか女王とかいうのが他の全部支配して過重労働させる幻想以上のメテオフォール型王国じゃん……地面の下とか労働環境も最悪だしさぁ……根っこから労基案件な組織とかさっさと解体するしかないよねぇ……物理的清算の刑だよぉ…覚悟……」
『ゴールデンラバール』矢都花 リリー(p3p006541)もアダマンアントへ襲い掛かり、『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)も山賊の斧を振り回す。
「オエッ! ウジャウジャと気持ち悪ィなあ! しかしこのアリども、クソみてえに硬ェが、逆を言えばド派手に暴れてもイイんだろ? ストレス解消のい〜いサンドバックになってもらうとするか! よおし、てめえら、さっさとボス猿を叩いて来い! このアリどもはおれさまのオモチャなんだからよ!」
ブレイクリミットオーダーからのぶった斬りを豪快に放つグドルフだが、数でも負けている以上どうしても囲まれやすい。やすいが……。
「ボスまでの道は切り開く。マジカルアハトアハト、フルバースト……!」
『八十八式重火砲型機動魔法少女』オニキス・ハート(p3p008639)の破式魔砲が炸裂し、僅かな離脱の隙を作る。
「お前たちはここに住んでいた人たちや、それ以外にもたくさんの命を奪った。それだけで十分だよ。目標、アダマンアント。お前たちはここで破壊する」
「知識があるだけで見識が狭く、相手の都合を読み解けない奴はこうなる。覚えておけよ美少女。この世界ではこういう奴らから滅びていくんだ」
「実に耳が痛い話だ。こちら側のリソースが一時的に減るとしても将来的に同盟を結べるのであればとは思うからな。ああ、間違えた場合の末路としてこの者達を覚えておこう」
『性別:美少年』セレマ オード クロウリー(p3p007790)と『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)がそんなことを言い合うが……事実、分かり合えなかったからこそこの戦いがある。それは忘れてはならないことだろう。
「君達の言い分も分からない訳では無いよ。生きる為に最低限の狩りを行う、その為に邪魔をしないで欲しい。だがそれが許されるのは野生で生きる動物のみだよ。それに――狩ることを許せというなら、狩られる事も許容しなければならない。そして君達は選択を誤った、だから『狩られるんだ』――氷の狼の遠吠えを聴くがいい」
「その通りであります! 平和のための犠牲……? そんなもの、許容できるはずがない……いや……自分がさせない! お前達の野望は…自分が!宇宙保安官が打ち砕く!」
『氷狼の誓い』リーディア・ノイ・ヴォルク(p3p008298)のプラチナムインベルタに合わせ、『宇宙の保安官』ムサシ・セルブライト(p3p010126)がハイパーレーザーソードを叩き込む。
「犠牲を許容して中立を保とうとする、ですか……はなから犠牲の上に存在が成り立つワタクシ自身としては、彼女らを咎める事はできませんが……それでも、ワタクシにもイレギュラーズとしての矜持がございます。此処は抑えさせて頂きましょう」
『影を歩くもの』ヴァイオレット・ホロウウォーカー(p3p007470)の隣に立つのは『鋼鉄の谷の』ゲンリー(p3p001310)だ。
「竜の次は軍隊アリと戦争か!
ローレットにいると戦いの機会に恵まれるのう。では、死に場所を探しに行こうかの。死ぬには良い日じゃ。それは今日では無いとも言うがね。ああ、道を開くために、目の前の蟻を狩ればいいのじゃろう?」
「そういうことですね」
「心得た! しかしなんとも勇敢な蟻どもよ!これだけの数を、これだけの武器を、これだけの火力を恐れずに途切れること無く向かってくるわい。良き兵じゃ! 同じ死兵として、負けてはおれんのう! 鋼の谷の生き残り、ドワーフのゲンリー、押し通る!」
痛恨の大斧を構えるゲンリーに合わせ、『名無しの』ニコラス・コルゥ・ハイド(p3p007576)も奇襲を仕掛けていく。
「もしかしたらあなた達の種族が私達の仲間になる未来があったのかもしれません、でもそれには女王の指示に従う事そして女王の指示に従わない事ができないといけない、それが人間だから。どちらにせよあなた達は手詰まりですよ。それにどういった了見か知りませんが死者を冒涜する行為を許すわけがありません。迅速に絶滅させてあげましょう」
『夜妖<ヨル>を狩る者』金枝 繁茂(p3p008917)の言う通りだが……つまるところ、それもまた問題なのだ。犠牲無しに成り立つものがないとして、それを許容できるかは別なのだから。
「ふーん? よく分かんないけど、話し合いで何とかならないって事だよね。それよりも……カナ、あの蟻の群れにすっごい興味あるんだぁ♪ あは、どんな風に痛めつけてくれるのかなぁ……♥」
「覇竜の情勢に詳しくはないけれど、迷惑をかけようとしているのなら見過ごせないわね。厄介なお客さんも多数引き連れてやってくるもちょっと問題ね……全員揃って出禁にしちゃいましょうか」
『毒亜竜脅し』カナメ(p3p007960)と『Joker』城火 綾花(p3p007140)が視線で頷きあい、連携する。この戦いに安全な場所がない以上、即席のコンビであろうと組むのが賢い考えだからだ。
「このサイズの蟻がこれだけ集まると威圧感がとんでもないわね……ただ巨大な分、彼ら自身の身体で後続を通せんぼしてくれるかしら……足止めが重要ね。気を引き締めていきましょう」
『フロントライン・エレガンス』アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)は夢煌の水晶剣を構え黒兎呪舞を発動させ、『いわしプリンセス』アンジュ・サルディーネ(p3p006960)がいわしの加護を携えてその横を通っていく。
「ありがいっぱいじゃん。やば! ここのみんながやられたらけっこーやばいんでしょ?だからあえてこっちに来たけど……うーん失敗だったかな。みんなー! アンジュのこと守ってね!」
(ありだからいわしの事食べないと思うけど……まあ、万が一があるからね。生き物って進化するんだから。今のうち、その芽を摘んでおくのも大切だよね〜)
そんな中、『蒼き燕』夜式・十七号(p3p008363)は先陣チームではあるが単独で遊撃の役割を果たそうとしていた。
「集団戦こそ重要だろうに、結局単独行動で乗り込んでしまったのは少々申し訳なさがあるがーーそれはそれとして多いな! 続々やってくるようなのが救いか」
その手には夜式手甲城。硬くてタフなアダマンアントは殴ったくらいでは退かない。
「しかし、元集落であってもここはやや暗い。洞窟だからだが……あまりやりたくなかったものの、仕方ない! 輝けーッ! 【発光】! はあはあ……よし、かかってこい! 臨時の誘蛾灯だ! 蛾じゃないけど!」
発光する仲間は他にも居るが、あえて発光することで囮となるその戦術。
「さて、アドリブセッションというのも一つの華というもの。単独行動しているものがいたら手伝いに行くとしよう。視界が悪いなら何らかの光源を持っている味方のところに近づけばちょうどいい……珍しいところで逢ったな、かなぎ君。光っている理由は置いといて、同じクランの誼だ助太刀させてもらう。泥人形なりの戦い方を教えてやる、幸い洞窟の中だ、身体を構成する泥を補充するにはちょうどいいだろう」
そこに『死と泥の果より』マッダラー=マッド=マッダラー(p3p008376)が遊撃タンクとしての役目を果たすべく前に出て。
同じ遊撃の役割を自分に課した『蒼空』ルクト・ナード(p3p007354)もまた、それを最大限に利用する。
「………私は好きにやらせてもらう。一匹でも多く、留めて見せよう」
言いながら放つ粘着射出弾頭『AGBB』は、ただ仲間の援護の為に。
「うわぁ……何この敵の数……敵の本拠地だからって多くないですか!? と、私は今回は助っ人ですから先輩方が安心して各々の決着をつけれるように露払いはお任せ下さいね!」
「ああ、任せたよ。ううん、固い蟻とは……どうにも食欲をそそられない。そもそも固くて喰うにも困るか。たまには食欲を抑えて真面目に働くとしようかな。純然たる闘争に身を興じるのも悪くはないさ」
『真意の選択』隠岐奈 朝顔(p3p008750)に『饗宴の悪魔』マルベート・トゥールーズ(p3p000736)が応え、ハルメギドを放つ。
「あーあ……ホント、今更ながらこんな連中が当たり前見てえな顔して湧いて来るんだから嫌になっちまうよなここの集落もあっという間にやられちまったし、無常だねえ……ま、だからってクヨクヨしてるわけにもいかねえからな。フリアノンまで被害が出る前に、ここで叩かせてもらうぜ! アタシじゃ役者不足だから、女王サマの相手は他に任せるけどよ!」
「えーっと……良くわからないですけど私もお腹空いたので食べてもいいですか?ざっと400人くらい。えー? 駄目ですか? 私の最低限はそれくらいですからいいですよね? えへへ!」
『桜花絢爛』祭・藍世(p3p010536)のH・ブランディッシュが炸裂し、『グリーンスライムサキュバス』ライム マスカット(p3p005059)が援護するように攻撃を繰り出す。
「おー、たくさんアリが湧いてくるな。これが増援達か。こいつらを後ろに行かせなければ良いんだな。よっし、絶対にここを突破させないぞ。ワイバーンも頑張ろうな!」
「おうおう、まったく困ったもんだ。どんな理由をつけようが、人攫いを許すわけねえだろうよ。ま、その辺りの事は誰かが女王に伝えてくれるとして。俺はこっちだな。いやーめちゃくちゃ多いな。この数を足止めか……燃えてきたぜ!」
「ま、そんなわけで……ここはわしらにお任せを。ご安心下さい。蟻一匹通しやしませんけえ…おっと、そもそも敵は蟻でしたの。かっかっか! 御武運を。時は存分に稼いでみせます」
『紲家のペット枠』熾煇(p3p010425)、『竜驤劍鬼』幻夢桜・獅門(p3p009000)、『黒蛇』物部 支佐手(p3p009422)が即席のトリオを組んでアダマンアントを引き付け攻撃していく。
「さてと、私達の役割は決戦へ向かう者達の道を作ること。そして、アンティノア・クイーンを討つまでアダマンアント達を足止めすること……敵の数が膨大であることを考えればかなりの長期戦になることは間違いあるまい」
「何、所詮老骨たる身である。誰かを守れるならば、それで上等である。だからこそ、掛かって来い。平和を乱す蟲よ」
『天穹を翔ける銀狼』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)に『未だ遅くない英雄譚』バク=エルナンデス(p3p009253)が冷静沈着に頷きアダマンアントの攻撃を防御する。
すぐにゲオルグの熾天宝冠が発動しバクの傷を癒すが……そこに『竜穿刃』エレンシア=ウォルハリア=レスティーユ(p3p004881)が突っ込み戦鬼暴風陣を放つ。
「ははっ、こいつぁいい。ちょうどむしゃくしゃしてたんだ。てめぇらにどんな事情があろうが知ったこっちゃねぇ。クソ蟻どもすり潰してスッキリさせてもらうぜ! まあ、ツー訳で……てめぇら、ここは任せて先に行け!」
叫び、エレンシアは更に踏み込んでいく。
「アタシの機嫌が悪い時に戦うことになるなんざ運が悪かったな。纏めてぶっ潰してやらぁ!」
「はいはいはーい! マリリンちゃんも頑張っちゃうよー! 早くアリさんやっつけて、祝賀会といっちゃおうよ!」
『氷の輝き』マリリン・ラーン(p3p007380)が聖躰降臨を発動し、そんなマリリンを狙うアダマンアントを引き付けるように『影の女』エクレア(p3p009016)がネガティヴ・エフェクトを発動させる。
「ふぅん、君たちがアダマンアントかね。その性質と言い、生存能力も実に興味深い。まずは君達を鎮圧してから色々と調査させてもらおう。もちろん仕事はするさ。これより先に行かせるつもりはない。さあ、僕の興味を満たしておくれ!」
そしてaPhone<アデプト・フォン>を構えオールハンデッドを発動させるのは『新米P-Tuber』天雷 紅璃(p3p008467)だ。
「さーてこれだけいるとちょっと昆虫がダメな人は閲覧注意だね! それでも覇竜が滅茶苦茶になったら困るからね! みんなで力を合わせて行こうっと! 蟻帝種とやらも気になるけどここを通したら全てがおじゃんだからね。応援するからみんながんばれー!」
「へぇ、無限とも思えるアダマンアント相手に決戦なんて面白いわね。大丈夫、文字通りありんこ一匹この先通さないからヒーロー「ヴァイスドラッヘ」の出番よ」
その声援に応えるようにヴァイスドラッヘンフリューゲルを『不屈の白騎士』レイリー=シュタイン(p3p007270)は構え、ラ・レーテを構えた『最果てに至る邪眼』刻見 雲雀(p3p010272)もその気配を消失させる。
「ヴァイスドラッヘ只今参上! 残念、ここは通行止めよ!」
「やれやれ、物凄い数だね。先へ向かったみんなの下へは到底行かせられない。足止めさせてもらうよ。邪魔をするのはこちらの十八番なんでね……!」
「まあ、流石にこうなってみると、ね。ボクも、この集落はあの日に滅んでしまったという意見に賛成かな。ただの相容れない生態系だ」
『malstrøm』リュビア・イネスペラ(p3p010143)はそんな2人をサポートするように真正面から挑んでいく。
「
「アダマンアントね、笑っちゃうくらい多いんだが? まぁこの手の戦線を維持するのは僕の最も得意とする所でね。我が光輪の輝きを見せてやろう!」
「ここで俺達がどれだけ踏ん張れるかで戦いの趨勢が決まると思っていいだろう。気合入れてカチコむとするかね。仲間を助け、敵を倒し、生き残るのが今回の仕事だぜ。さあ、行こうじゃねえか」
『ブラック派遣』ヨハン=レーム(p3p001117)のコーパス・C・キャロルが響き渡り、『侠骨の拳』亘理 義弘(p3p000398)の八岐大蛇が炸裂する。だがやはりアダマンアントの数は脅威。全力で挑んで尚、少しずつルートを切り拓いていくのが精一杯だ。
「アダマンアント、とんでもない戦力……っ! 竜に比する虫となるともはや一種の災害だね、ここでなんとか断たないとだよ」
「負けるわけにはいかない。生命は等価だ。それに困っている者に――もうやられてしまった者もいる。そのような弱者を蹂躙する事など、到底認められるものではない!」
『ちびっ子鬼門守』鬼ヶ城 金剛(p3p008733)と『表裏一体、怪盗/報道部』結月 沙耶(p3p009126)は頷きあいながらアダマンアントに相対する。この先陣部隊では抜剣隊が最大チームであり、沙耶たちも同じ部隊である以上は連携を意識して動いていく。
「へいGM!隠しイベントの内容教えろー! 情報精度Cだろ! 何が起こるんだ!」
「キシャー!」
「ぐわー! 噛まれた!」
『自己否定』をキメた『敗れた幻想の担い手』夢野 幸潮(p3p010573)がアダマンアントに噛まれているが、そこに『数多異世界の冒険者』カイン・レジスト(p3p008357)がインタラプトを叩き込む。
「ヤバい新生物の発生はまぁまぁ経験があったけど、まさか亜竜種を喰らう程とはね。これは放置も看過も出来はしない。全力で討伐を目指さなきゃ、ね。もう少し穏当な生態をしてくれていたら良かったんだけどね……!」
「全く、実質的な贄の黙認を要求するとはの。それが彼らの生態故、致し方ないのであろうが、そうなれば……生存競争をするしかなくなるのぅ。鬼人種として思う所がないでもないが、それでも同胞をやらせる訳には行かぬ。当然――いくら強壮とは言え、戦でも負けてやる訳には行かぬな!」
『希望の星』黒野 鶫(p3p008734)も名乗り口上を響かせ、『合理的じゃない』佐藤 美咲(p3p009818)がサンクチュアリを発動させる。
「『時間があれば』もっと穏やかな方法を選ぶことができたのかもしれませんし、『時間があれば』蟻帝種も亜竜種の悲しみを知ることができたのかもしれませんがー……でも『もう遅い』というやつですね」
「その事情がないとしても……人を素体として作り替えるとは、何と恐ろしい種族でしょうか……彼女らを信じてみたくもありますけれど、かといって彼女らが作り出す悲劇を見過ごす事は出来ません。どうせ蟻達が吹けば皆が揃って飛ぶのです、吹けば飛ぶような私だからと怖気付く必要はありません……私が力を示す事さえ出来れば、きっと守って下さる方が現れるでしょうから」
囁く『自然を想う心』エルシア・クレンオータ(p3p008209)の横を、『輝きを目指して』ダリル(p3p009658)と『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)が駆け抜けていく。
「フハハハハハ! ダリル様のお通りだ! さぁそこの蟲共よ! そこのけ邪魔だ我が通る!」
「亜竜種を喰らって知性を得て、それでやるのが中立の申し出ってのは随分と……そう、虫が良いな? イルナークを始めとしてこれまで襲ってきた分まで熨斗付けてお返ししてやろうかねっと!」
そしてその背後からは『蒸気迫撃』リサ・ディーラング(p3p008016)がFinal Heavenを構える。
「ハッハー、ドン引きすらするほどの数っすね。ま、全部は無理でもちっとくらいは削ってやるってのが私の役目っすからね! とっとと逝けや蟻共が!」
「暗がりでくんずほぐれつ重傷がでないはずもなく。下層に行く者が治癒しないまま行かせないよ!」
そこに『特異運命座標』岩倉・鈴音(p3p006119)のミリアドハーモニクスが傷を癒していく。
「さて、と……ここは通しませんよ」
「何処も彼処も忙しないったらないのです……折角交流が出来た覇竜にこんなのがいたら大変なのです。本当適当に撃っても当たりそうな程の群れですけど、制圧のために頑張ってみるのです!」
『不屈の障壁』ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)の背後から『鋼鉄の冒険者』ココア・テッジ(p3p008442)がD・ペネトレイションを放てば、『鬼看守』セチア・リリー・スノードロップ(p3p009573)もアダマンアントへと突っ込んでいく。
「さぁ、貴方達に看守の精神力を見せてあげる!」
「ふむ……流石にキリがないが、チェックメイトに行く面子を信じるとしよう」
レジストクラッシュに合わせ『靡く白スーツ』コルウィン・ロンミィ(p3p007390)がプラチナムインベルタを放って。
「蟻帝種……亜竜種さん達を攫って無理矢理別物に変えて、実質殺した相手の姿や記憶を勝手に使う輩。個体はともかく存在として……僕はいやだよ、好めない。まぁ今回は蟻達対応に回るけどね僕! 僕等に任せて先に行けー!」
「蟻帝種……ねぇ。悪いけどどれ程友好を示そうともアダマンアントがやってきた所業を思えば絶対に受け入れられない。僕の一族も奴等の「贄」になったのかと思うと…今でも怒りでどうにかなりそうだ。だからこそ、ここで禍根を断つ……その為にも皆に後を任せたよ!」
『心優しきオニロ』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)のワールドエンド・ルナティックが発動し、『不死身の朱雀レッド』朱雀院・美南(p3p010615)の不死鳥☆彡アタックが炸裂する。
「生憎、ローレットの仲間にも亜竜種の子達が居るの。その子達の為を思うと、流石に見過ごしてはあげられないよね」
「本隊の方達の余力を温存する為にも、この露払い……頑張らなければいけませんね」
『森ガール』クルル・クラッセン(p3p009235)の牽制Ⅱが放たれれば、『月下美人』雪村 沙月(p3p007273)の水月が追撃のように放たれる。
「この前の防衛戦からさして時間も経ってないって話で、まだここまで戦力を残してるとはね……」
「起きてしまったことは変えられないとしても。この先の為に、できることをしようと思います」
『光鱗の姫』イリス・アトラクトス(p3p000883)と『花に集う』シルフォイデア・エリスタリス(p3p000886)は、互いに離れないようにカバーしあう。
「守られるばかりでなくとも、わたしは大丈夫なのです」
「それじゃあ一緒に、アダマンアントと我慢比べといきましょうか。覇竜領域ならこの位は慣れてるでしょうけど、抜かせないわよ」
この先陣チームで戦うコンビは他にもいる。『燻る微熱』小金井・正純(p3p008000)と『離れぬ意思』夢見 ルル家(p3p000016)の2人だ。
「さて、正直なところ全く把握出来てはいませんが、あのめちゃくちゃに湧いてくるアリの怪物をできる限り殴っていけば良いのですね。シンプルで分かりやすくて助かります」
「要するにシロアリ退治みたいなものでしょう! 少々頑丈のようですが! バンバン退治していきましょう!」
そんなことを言い合いながら戦場へと飛び込んだルル家たちもこの数の前では苦戦を余儀なくされるものの、互いに前衛で上手く連携していた。
「ルル家、こうやって一緒に戦うことはあまりありませんでしたが、ええ。頼りにしていますね。ふふ、なんか柄にもなく楽しくなってきました」
「遮那くんと一緒に戦った時以来でしょうか? 頼りにしておりますよ純ちゃん!」
そう、これはまさに命と命のぶつかり合い。だからこそ『闇之雲』武器商人(p3p001107)は思うのだ。
「なんともまァ、気の毒に。あの女王サマは初手から間違えてしまったようだ。生物的な戦略としては理解するが……人の知識は学んでも、人の機微を学べなかったのが手痛かったねぇ。なに、ヒトリゴトさ。これから死ぬモノには関係あるまい? ヒヒヒ……!」
破滅の呼び声を響かせる武器商人と同じく炎紅チームの一員である『赤々靴』レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)がワールドエンド・ルナティックを発動し、『戮神・第四席』ウォリア(p3p001789)が盾となるべく前に立つ。
「やる気に満ち溢れている彼の傍にいて感化されないわけがない。この場を埋め尽くし先を行かんとする蟻を抑え迎え討つ為に拵えた一時の暴威。今解き放たずとして何時とするっすか! そう、等しき苦しみ、奪った分奪われる苦しみを最期まで味わえっす」
「全てに等しき苦しみを、死すら赦さぬ苦しみを……生まれる時を間違えれば、生きる事もまた罪。故に___絶滅の刻だ!」
そんな中、5人で動く者達もいる。
「たかが蟻、されど蟻だねえ。そこら辺にわんさかいるよ」
「うん、蟻だな。間違いなく蟻。数の暴力とはよく言ったもんだが、面火力ならルーキスも負けてないからなぁ」
「どこまでまとめて焼けるかなー」
「ルルも頑張って皆を回復するよー!」
「ルルディさんと一緒にサポートしますね!」
ぐっと拳を握るルルディの横で虫が嫌いながらも『ふわふわにゃんこ』小鳥遊・鈴音(p3p005114)が気合を入れて。
「範囲に入らないでください」
『警告はしたぞー? あとはやっちまえ』
『Schwert-elf』マリス・テラ(p3p002737)のフルメタルボムが蒼翼の仲間を守るように炸裂していく。
そして、今まさに……先陣部隊の活躍により、アンティノアクイーンへの道が開こうとしていた。
「アダマンアントが暴れてる事件がこんなことになってるなんて……あっちの提案は合理的かもしれないけど、オイラ達はそれだけで動いてるわけじゃないものね」
「俺よりは人間に近い見た目があるのに、考えは人外か。一度痛い目に遭って、種の存続には共存するのが一番だと考え直してくれないかね」
『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649と『永炎勇狼』ウェール=ナイトボート(p3p000561)の言葉はまさにその通りだ。しかし、今はそれは叶わないだろう。
「誰も傷つかない明日が皆が幸せになれる未来がいずれ来ることを願いながら頑張るっきゅ! 言葉のキャッチボールができるのなら可能性はゼロではないのだから。でも言葉が通じないただの蟻さんは躊躇いなくぺしぺしっきゅ!」
「ああ、今はもう交わらないとしても、いつか交わる事を信じたいな。だから、今は俺達が守らなきゃいけないものを全力で守る為に戦う!」
だからこそ、『希うアザラシ』レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)と『散らぬ桃花』節樹 トウカ(p3p008730)もそう願いながら戦い……ついに、突破口が開き決戦部隊が突入していく。そしてその後に立ち塞がるは、『首神(首刈りお姉さん)』紅迅 斬華(p3p008460)と『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)の2人だ。
「さー! 皆様方♪ ここはお姉さんにお任せあれ♪ 皆様の勝利を首を刈ってお待ちしておりますね♪ ふふ~ん♪ 今日もギフトを絶好調でぶん回して首刈り祭りです!」
「重傷上等、パンドラを消し飛ばしてでも、ここは死守させてもらいます」
そう、此処から先にアダマンアントを通すわけにはいかない。
そして……同じように援軍を中に入れまいとする戦いは、イルナークの外でも発生していた。
●覇竜共闘
「コャー、袖振り合うも他生の縁とは言うものの、まさか助けにいただけるとは、なの。ここは一致団結の時なの」
「ゴオオオオオオオ!」
『ファイアフォックス』胡桃・ツァンフオ(p3p008299)を肩に載せたアトラスが大木の槍でアダマンアントを地面ごと突き刺し砕く。
「事ここに至り、女王討伐後の憂いを断つためにも蟻帝種が逃げる前に、有力な個体は仕留めておく必要があるの」
とはいえ、アンティノア・ファーストもアダマンアントも強力極まりない。
ないが……此処に来て以前助けたモンスターの協力を得られたのはまさに僥倖であった。
本来有り得ぬ覇竜の強力なモンスターとの一時的共闘。
「別に助けた訳じゃないですけど……カトブレパスのレパス君、呼んだら来てくれますかね? と思ってましたけど……せっかくだからしにゃを乗せてくれませんか!? 意思疎通しながら戦えて便利ですので! 別に楽したいからじゃないですよ!?」
そんなことを言う『可愛いもの好き』しにゃこ(p3p008456)を乗せたカトブレパスが走りながら石化光線を放ち、しにゃこがプラチナムインベルタを放つ。
ちなみに乗っているのはしにゃこだけではなく『雨宿りの』雨宮 利香(p3p001254)もである。
「殺して乗っ取りますで中立とか中立の定義から学び直した方がいいんじゃないです? 牛さんもそう思いますよねー? あ、蜂蜜は持ち合わせてないですがそれより美味しい蜜ならあげますからねえ、ふふ! しかしこのシチュ。私が魔王みたいじゃ…・・・まぁいいですけど」
確かに石化光線を放つカトブレパスに乗る利香はそうかもしれないが……しにゃこのおかげで魔王成分は中和されているかもしれない。
「さあ、固めて砕いてしまいましょう……クーアも何でか知らないけど凍らせる気満々ですし?」
エクス・カリバーを放つ利香の近くでは氷結墓標のウェンディゴの肩に乗った『猫守』クーア・ミューゼル(p3p003529)の姿があった。
全長20mのいるだけで吹雪を巻き起こすウェンディゴは巨大な氷の槍を放ち、アンティノアを凍らせる。
「何故アリがひとを攫っていたのかはだいたいわかりましたが……全く悪趣味な生物なのです……ところで彼、ウェンディゴでしたっけ? 確か隠遁を決め込んでいた気がするのですが。ここまで出てくるとは、内心よほど怒り心頭だったのです?」
そう、氷結墓標のウェンディゴは隠遁者だ。そんな彼が此処まで来て共闘してくれるというのは、二度はない凄まじい機会であるのは間違いない。
「ならばそれを全力で手助けするまでのこと。今回は趣向を変えて、ガンガン凍らせてやりましょう!」
ちなみにウェンディゴの反対の肩には『幸運の女神を探せ』ジュート=ラッキーバレット(p3p010359)が乗っていて、ファントムレイザーを放つ。
「新しい種族。新しい力。憧れねぇ訳じゃないけどさ、強くなる代わりに俺が俺でなくなるのはノーサンキュー! 女神サマが悲しむからな」
というよりも別人であるのだが……まあ、どちらにせよノーサンキューだろう。
それを代弁するように暴れ回るカトブレパスとウェンディゴは凄まじく強い。
「仲良くなった訳ではないであるか心配であったが来てくれたようで何よりである。新たな人種たる蟻帝種、一つ選択が違えば共存することも不可能ではなかったのではと考えるとやり切れぬ思いもあるであるが我らが同胞を無理矢理取り込むその所業はとても見過ごせぬ以上ここで雌雄を決せねばならぬである」
そんなことを言う『ノットプリズン』炎 練倒(p3p010353)の傍らにいるのは、カトブレパス同様に石化技を使うディザスターゴルゴーンだ。
災害の名の通り、こちらもまた通常人間と共闘などするはずもない、強大なモンスターだ。
無論、強いモンスターばかりというわけでもない。『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)などはデミワイバーンを呼び寄せ乗っていた。
しかしこちらもやはり通常であれば乗るなど不可能だろう。
「蟻帝種たちの気持ちも わかりますけれど食べるなら 反撃もあるのが 弱肉強食の掟。反撃されたくないのなら 懇願ではなく 蹂躙が 懇願をするくらいなら 今すぐ 和解が 必要でしたの でも……ここで かれらが 失敗すれば まだ まったくの不可能では ありませんでしょう ですので わたしが 弱肉強食の ありかたを 見せてさしあげますの」
つるんとしたゼラチン質のしっぽを見せつけて自分を餌にするノリアが作った隙にデミワイバーンが火のブレスを吐くが……それでも倒れないアダマンアントの群れを、『にじいろ一番星』ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)を乗せたファイアードレイクが凄まじい威力のファイアーブレスで一撃の下に消し飛ばす。
「何だか滅茶苦茶怒ってないのです……? もしかして2度も住処荒らされたから一族丸ごと滅ぼしに来たとかそういう感じですよ!? じゃなきゃ一人で巣穴直行なんて無謀でして! しかもそれで止められてちゃ……あっ、危ないのですよ!」
ルシアの破式魔砲が放たれ、そんなルシアを乗せたままファイアードレイクは暴れ回るが……火力の高い者同士が組み合わさって、蹂躙という言葉を体現したかのようになっている。
「ルシアのこと、覚えているのですよー? 忘れててもいいのです! 今は敵の敵として共闘するのでしてー!」
まあ、少なくとも味方とは思ってくれているだろう。でなければドレイク種の中でも特に暴れん坊のファイアードレイクがルシアを乗せるはずもないのだから。
そして勿論、戦闘力の高いモンスターばかりではない。
空を舞う一羽の鳥を、『赤い頭巾の断罪狼』Я・E・D(p3p009532)と『北辰の道標』伏見 行人(p3p000858)は呼び寄せていた。
万物快癒のカラドリウス。医鳥とすら呼ばれる回復のプロである。
「来てくれてありがとう!! カラドリウスさん。お願い、この地を護るために貴方の癒しの力を貸して欲しいんだ!!」
「君には関係のないことだと思う。けれども、どうか。君の隣人たちの為に力を貸して欲しい……!」
2人への答えは、広がっていく回復の波動。
「蟻帝種達、この戦いは種の生存をかけた戦いだよ。貴方達とわたし達、勝った方がこの先も生き続けていくんだ。だから絶対に負けない!!」
状況に気付き戻ってきた一部のアンティノア・ファーストとアダマンアントたち。
しかし、これを通せばいよいよ勝ち目がない。だからこそ共闘してくれるモンスターたちの力を借りて倒し切るしかない。
「知った顔だが、別人だ。頭では理解していても、実際に目にすると実感が薄れてしまうな……故にこそ、刃を鈍らせるわけにはいかない。これ以上同胞に被害が及ぶ前に。ここで、全て殺す」
そう決意を固めるのはジン(p3p010382)。デザストルオオクワガタと共闘し、知った顔の……しかし全くの別人であるアンティノアと切り結ぶ。
一方では、アトラスグレートカブトを呼び寄せた『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)とヒュージワームを呼び寄せた『正義の味方』皿倉 咲良(p3p009816)が連携し戦っていた。
「蟻帝種、か……あるいはあの女王蟻を討った時に、何か掴める糸口があったやもしれんが……今さら悔いても詮無いことだ。やるしかない」
「行方不明になっちゃった人と同じ姿の全くの別人、か……。辛いことだけど、だからこそしっかり止めないと。それに……勝手に襲ってきておいて都合が悪くなったら協力してほしいなんて、そんなムシのいい話ないよ」
そう、だからこそ2人はアンティノア・ファーストたちの前に立ち塞がるのだ。
「鳴神抜刀流、霧江詠蓮だ。俺達の目の黒いうちは、一歩たりとも入れぬと知れ!」
アトラスグレートカブトが敵をブロックしてくれている間に、ヒュージワームのレーザービームで敵を一掃するという作戦は見事に機能し、倒し切れない敵をルシアを乗せたファイアードレイクが一掃していく。
同様に駆けていくのは、スレイプニールに乗った『チャンスを活かして』シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)だ。
「ここでもまた大きな戦いが始まったようだな……とはいえ、ここでもしっかり戦わなくてはな。行くぞ! あの蟻たちを、僕たちの手で撃破するぞ!」
シューヴェルトの貴族騎士流蹴技『蒼脚・堕天』とスレイプニールの蹂躙機動。
2つの足技がアダマンアントを砕いていく。
「え、うそ。夏子さん偵察行ったまま戻ってないの? 心配して夏子さんを探しに来てみたら……」
(なぁにあの夏子さんと一緒の九尾の狐。どういうことなの?)
仲が良さそうなそうでもなさそうな……うーん? と、そんな複雑な感情を抱いていた『揺れずの聖域』タイム(p3p007854)だが……今は『イケるか?イケるな!イクぞぉーッ!』コラバポス 夏子(p3p000808)と共にナインテイルに乗って戦場を駆けている。
「ちょっと色気がないケド ま コレもデートかな?」
「夏子さんはああいってるけど九尾だからって女性とは限らない……よね? あ! もしかして誤解を解きに来たの? 実は男なんだぞーって。きっとそうよね!? こんなに勇猛果敢な戦いぶりなら絶対そうに違いないわ! ねえねえ!答えてよう~!」
楽観的な夏子と謎の焦燥感を覚えているタイムを乗せてナインテイルは舌打ちしていたが……ともかく、イルナークの外での戦いは順調であるようだった。
●そして、決戦へ
イルナーク中層階、「広場」。
様々なイベントが行われていたであろうその場所には今、59人のイレギュラーズ。
そして……アンティノア・ファーストたちの女王たるアンティノアクイーン・サンゴと。
2体のアダマンアント・ビショップの姿があった。
「そう、来たのね」
「アンタがサンゴか、ようやく会えたぜ。もう生きちゃいないとは分かっていたが、こんな形で顔を拝めるとは考えてなかったぜ」
『竜剣』シラス(p3p004421)は持っていたサンゴのペンダントを軽く放る。
それはサンゴの手の中に収まり……「これでやっと一つ仕事を終わらせられた心地だぜ」とシラスは呟く。
「サンゴが友に願った永遠は成せたかい、記憶はあるんだろう?」
「それを『私』に聞くの? 意地悪なのね、貴方」
サンゴは答えると、軽く剣を振るう。
「私はアンティノア・ファーストの女王。確かに『そのサンゴ』の知識はあるわ。でも、貴方の言うサンゴと私は別人。故に、こう答えるわ……その願いは、叶わなかった」
「……そうかい」
「一応、聞くわ。私達の力はもう充分分かったはず。そして貴方達とて、多数の危機を抱えている。私たちアンティノアと組みなさい、イレギュラーズ。そうすれば、貴方たちの望む安寧に大きく近づく」
「俺達はアンティノアの要求を受け入れる事は出来ない」
サンゴの呼びかけに『黒狼の勇者』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)はそう答える。
「それが例え覇竜で当たり前の様に起きる自然淘汰の様な物であったとしても、お前達のエゴだと言われようとも、俺達は亜竜種達を守る為に戦う!」
此処に来る前に、ベネディクトは3人の亜竜種の少女たちに声をかけてきた。
奏音、静李、棕梠。アダマンアントを巡る一連の事件、その最初の日を見た3人だ。
イルナークが襲われて幾月が過ぎた、あの場所で決戦が始まろうとしている
君達にはこの戦いを見届ける権利があるんじゃないか?
そう声をかけたのだ。そして3人は今、この場に立っている。
「サンゴ……ううん、サンゴにそっくりな君だけど。ボクはもう迷わないよ」
「この場に来た以上、私も戦う。それが、今私がやるべきことなんだ」
「ん……そういうことなの」
ベネディクト自身、今回の一連の事件とは強い悪縁で結ばれていたと言えるだろう。
だからこそ、此処で断ち切る決意を固める。
「今日、此処でお前達との縁を断つ!」
それが、戦いの合図。
「『同じ姿と同じ知識』を持っていたとしても、根本の考え方から変わってしまう時点でそれはもう別物だよ。本物のサンゴさんならこんな要求なんてしないだろうしね」
エクス・カリバーをサンゴへ放ちながら、『竜交』笹木 花丸(p3p008689)は叫ぶ。
「だからこそ貴方達のやろうとしてることは認められない。認める事なんて……出来ない。だから―決着をつけようっ!」
「そうね。決着をつけましょう……大丈夫、貴方達も『ファースト』にしてあげる。その肉体、知識……全て、余すことなく活用してあげる」
「そちらさんの言い分って、結局は『自分たちの為に犠牲になれ』ってことだよな」
『虹を心にかけて』秋月 誠吾(p3p007127)は不知火を抜き放ちながら、思考を纏める。
「最小だとかどうでもいい。数じゃない。一人喪われたなら、それはもう取り返せない命なんだ。だから、俺はそれを容認できない。容認できないから、戦うんだ」
「ま、誠吾もそう言ってるし……わりぃな。こっちも仕事でな……っと言いたいとこだが、私情だ。お前さん達には恨みはない。が、こっちにも守らなきゃならんもんがある。精々お互い悔いのないように全力でやり合おうや」
『求道の復讐者』國定 天川(p3p010201)も単分子小太刀『月影』と超振動小太刀『陽光』を構え、共にサンゴへと斬りかかる。
「そうね。互いに譲れないものがある。だから戦うのだものね」
サンゴが剣を振るえば衝撃波が発生し、周囲にいた全員を深々と斬り裂く。
「でも、私は強いわ……貴方達の誰よりも」
強い。恐らく単体生物としては、下手な魔種をも超える強さ。
これがアンティノア・ファーストの女王たる力なのか。
だが、それでも。
「聞こえがいいだけの、平和は……そんなの、平和なんかじゃ、ないの。わたしも、戦う、の……貴方達は、そのままにしたら、きっと……良くないの」
「そもそも生き残るだか最低限の狩りだか、こっちとしちゃどこまで信じていいか分かんないっスね。少なくとも、過去に脅威になった連中と仲良くやってこうってのが無理なハナシっス」
「だから……此処で、決着を!」
それでも恐れずに『憎悪の澱』アクア・フィーリス(p3p006784)はフルルーンブラスターを、『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)はデッドエンドワンを、そして『疾風迅狼』日車・迅(p3p007500)デッドリースカイを放つ。狙うはサンゴの側に控えているアダマンアント・ビショップだ。
サンゴを倒そうと思うのならば、あの如何にも回復要員じみたアダマンアントを倒さなければいけない。そう感じていたのだ。
いや、違う。そうしなければ倒せない。そう感じたのだ。それほどまでにサンゴは強いのだ。
「アンティノアクイーン・サンゴ……これからもあんなクラスの個体が生まれるかも知れないなんて、ぞっとしないね。サンゴが本当に約束を守る気だったとしても、これから生まれて来る個体がそうとは限らない。取り返しのつかない事になる前に倒させて貰うよ! さあ行こうスティアちゃん! 亜竜種の皆を守るために!」
「そうだね、サクラちゃん! 皆を守らないと!」
『聖奠聖騎士』サクラ(p3p005004)と『純白の聖乙女』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)は頷きあい、スティアが終焉の花を、サクラが三光梅舟を発動させる。
(人間を食べて別の個体を生み出すことができるって考えるだけでも恐ろしいよね。それぞれが自我を持っているだろうし、全て制御できるとも思えないよ。人間がそうだしね)
「それに誰かを犠牲にして平和を得るなんてことは許容できない! 私は悲しんでる人達を守る為に聖職者になったのだから! 私達は負ける訳にはいかないんだ! 未来を守る為にも!」
「貴方達が生きるのに必死なように、私達も必死なんだから!」
「そうね。私たちも生きるのに必死。分かっているのに分かり合えない……悲しいわね」
そしてそこに、『ドラゴンライダー』ウテナ・ナナ・ナイン(p3p010033)も攻撃を仕掛ける。
「やっと会えましたねサンゴさん!ㅤずっと探してたんですよっ!! でも、そうですか。別人なんですね。うちはそもそも会ったこともないですが、奏音さん達が探していた大切な人だってことは知ってます。だからせめて、盛大に弔ってあげましょう!!」
叫ぶとウテナはワイバーンのロスカに騎乗して空中から戦闘を仕掛けていく。
「ロスカ!」
「くぁ〜」
放つはレッドブレス。だが、サンゴは全く動じた様子もなくパリッという音を響かせる。
それを、あの日「決戦」に参加した者たちは知っている。
「女王電波か……!」
ベネディクトが叫ぶと同時にソレは放たれる。ウェスタ防衛戦の際にアダマンアントクイーンが放ったものよりも更に強力で不快な……真・女王電波。距離も向きも高低差すらも全く関係なく放たれるそれを受けながら、『元ニートの合法のじゃロリ亜竜娘』小鈴(p3p010431)は叫ぶ。
「ぬおーー。怖い、が、怖く無いのじゃ!! そんな電波なぞ、妾には効かん!! 妾はこの地を護るのじゃ!!」
「そう。守ればいい。私は私の同胞の安寧を守るわ」
「いいかげんにするのじゃ、女王!! この地に住まう亜竜の者として、もはやお主達を許すわけにはいかん。種としての生存をかけて、命がけでかかってくると良いのじゃ!!」
ルーンシールドとマギ・ペンタグラムを自分に付与する小鈴だが、サンゴから感じる威圧はあまりにも圧倒的だ。
「400体のアダマンアントに、女王アリ……こいつを倒さないと始まらねえな!」
「……こんな事してくれたんだもん、絶対に許す訳……ないよねっ!」
『ウォーシャーク』リック・ウィッド(p3p007033)が波濤の戦術を発動し、『自在の名手』リリー・シャルラハ(p3p000955)がセカンド・カースド・バレットを放つ。
「……私達だって、生きる為に獣を狩るよ。だから、全部分からないって事はない。そんな事、言って良いはずがない。だけど――それでもやっぱり、譲れない。だから私は、私達は負けられないって、貴女を倒すって力いっぱい、吠え立てるんだ……!」
「当然の権利よ。吠えなさい、それを望むなら。私はそれを踏み砕くわ」
『嶺上開花!』嶺 繧花(p3p010437)が外三光からのハンズオブグローリーを放って。
「……なるほどな。要は亜竜種をただでよこせと……うわべだけ聞けば聞こえはいいが、お前らのやってることはいわば他国を土足で踏み躙る行為だ」
『戦神護剣』紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)は、そうサンゴへ言い放つ。
「そもそも、亜竜種を、イルナークを犠牲にした時点で、貴様らは魔種と同等かそれ以下の怪物に成り果ててるんだよ。罪を償い、第2世代を保護してもらうなりで最初からこちら側に恭順を示せば、まだ何とか話し合いの余地はあったろうに。貴様らは最初から選択を間違えたんだ悪いが狩らせてもらう。亜竜種をこれ以上殺させるわけにはいかない……クイーン・サンゴを討滅する。この犠牲の螺旋を断ち切るためにも」
「恭順? 話し合い? 求めていないわ。私が提示したのは交換条件。それも貴方達が投げ捨てたわね」
「なるほど、そういう理屈か……!」
烬燦血迓を放つアレンツァーに続くように、『欠け竜』スースァ(p3p010535)がサンゴへと向かう。
「仮に提案受けたとして、今後、同じことが必要になる時が来ても『しない』と断言できるか? アンタらにとってアタシら亜竜種は、当然だが重視する必要なんて無いだろ。だから、大人しく喰われてなんかやらない」
「相互理解が足りないのね。私は約束は守るわ。そして私はアンティノアを完全に統率する。それが女王の責務……そして、貴方達は今日私達の同胞になる。つまりはそういうことよ。良かったわね、これでもう『犠牲』は出ないわ」
「まさにそれです」
『双名弓手』風花(p3p010364)は矢を放ち、サンゴを睨みつける。
「言葉を解する割に、随分と一方的な条件でした。こうなるのは必定。突きつける前に、もっと人間を学習すべきでしたね」
「どんな理由があっても先にわたしたちを襲っておいて中立もなにもあるもんか! わたしはわたしたちを守るためにおまえを倒す!」
『宝食姫』ユウェル・ベルク(p3p010361)も叫び、ハルバードを全力で振るって猪鹿蝶を繰り出す。
「アンティノアクイーン! これはあなたたちとわたしたちの生存競争だ! わたしたちは勝ってこのデザストルを守る!!!」
「そう、それが貴方達の理屈なのね」
「あなたたちも平和に暮らしていたいのかもしれないけどもう遅いんだ。今更もう手を出さないなんて言えないんだよ。わたしたち亜竜種はわたしたちの生きる場所を守るために戦うんだ!」
そんな中、『黒靴のバレリーヌ』ヴィリス(p3p009671)は輝きのマズルカを踊る。
「うーん、正直私からしてみればどうでもいいのよね。でも今更もう何もしないからそっちも何もしないでっていうのは虫が良すぎないかしら? あ、蟻だったわねごめんなさい。それは虫が良いはずだわ」
「諦めずに改善を目指すのが知性よ。そうでしょう?」
「相手を慮るのもまた知性よ」
それにしても知った顔を使うだなんて悪趣味だわ、と呟くヴィリスだが……アンティノア・ファーストを受け入れがたい理由にはそれも大きい部分があるだろう。
既存の誰かの身体と知識をベースに出来上がるアンティノア・ファーストは……それ自体が人によっては相当におぞましく映るだろうから。
「ここを制さなければ敗北は必至、負けられませんね」
だからこそ負けるわけにはいかないと、『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)は上質な長剣を握る。狙うはアダマンアント・ビショップ。サンゴを補助されることで面倒になるのは、もう証明済だからだ。
「お相手は平和主義になろうとしてたっぽいが、突然巣や仲間を食い千切られた挙句「もう少し食ったら安定するから我慢しろ」なんて言われて怒らねえわけねえだろうに……それに種族名乗ってるのは殊更不味いな。どう殺しても碌な結末にはならないな……」
『黒鎖の傭兵』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)はそう呟きながらもティンダロスType.Sに乗りアダマンアントビショップへと攻撃を仕掛け、『お姉様の鮫』花榮・しきみ(p3p008719)も魔砲を放つ。
「ええ、ええ、縁もゆかりもないといえば確かでせう。ですが見過ごすと言うのも中々気分が悪い事。少しばかりの嫌がらせ、受けてはいただけませんか? お姉さまが忙しそうで……私ったら、すこしやきもちを焼いているのです。貴女が攻めてこなければお姉さまだって私と一緒に過ごしてくれたかもしれないのに!」
「エゴ、ね。でも許すわ。きっと貴方は、良い第一世代になるもの」
弱肉強食。覇竜らしいその論理に、『ラド・バウB級闘士』シャルロッテ・ナックル(p3p009744)は闘争本能を武器に立ち向かう。
「ごきげんよう、ワタクシはシャルロッテ・ナックルと申しますわ! 弱肉強食は自然の摂理、ワタクシもそれは承知してましてよ。ですが…仲間の友人の犠牲を妥協できるまで大人ではありませんの! 歯ぁ食いしばってくださいまし、ワタクシの怒りの拳でその考えを打ち砕いてさしあげますわ!!」
「さて……中立を望むのならそれを叶えてやりたいが……少しばかり遅かったな。もう戻れないところまで来てしまった。君たちは静かに暮らしたいのであれば慎ましく狩りをして過ごすべきだった。つまり手を出す相手を間違えたのだ」
『導きの戦乙女』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)はウェントゥス・シニストラとフランマ・デクステラを握りサンゴへと走る。
「「悲しいな、もう女王を守る騎士もいないのか。であればこのまま押し切らせてもらう」
そうしてソニック・インベイジョンを叩き込めば、サンゴはフッと笑う。
「資材は有限よ。私を守る騎士など作るなら、その分を他の同胞に回した方が効率的だもの」
なるほど、それはサンゴの言う通りだろう。ナイトなどよりもビショップを置いた方が余程サンゴの助けになるし、アンティノアの護衛に回した方が戦力の増加になる。
だからこそ油断せず『亜竜祓い』レオナ(p3p010430)は燕六六六式を振るう。
「これを許容するのは覇竜に存在する者として以前に、戦士として到底見過ごせぬ。いざ尋常に」
「来るといいわ。返り討ちにしてあげる」
「然らば!」
アビスウォークにより少しでも情報を得ようとしたが、何も分からなかった。
ならばとレオナはルージュ・エ・ノワールを繰り出していく。
(狙うは少しでも解析に割いた弱点、首なり触角なり何でも狙う。狙い辛い部位であり、躱されようと弾かれるほどの硬さを持っていても振るう。只管に、執拗に、必ずや仕留める意気と共に……!)
「もう道は交わらないって本当に? ねぇ、サンゴ。私、貴女と話がしたいの」
「今更何の話があるというの?」
天使の歌を歌いながらも『紲一族のお母さん』紲 蝋梅(p3p010457)はサンゴに呼びかける。そして幸か不幸か……サンゴはそれに答える余裕を持ったままだった。
「覇竜は確かに弱肉強食かもしれない。けれど死して尚、私達を守ってくれる竜が居た。此処は強き者が弱き者を愛する場所でもあるわ……それはサンゴの知識には無かった?」
「そうね、此処も死するサンダードレイクに守られている。面白いわ。続けて?」
「亜竜種を浚うのは確かに許せない。せめて生前の許可を貰いなさい。でも……このまま蟻帝種が滅びるまで戦うのも私は、嫌。それに嘗て竜が亜竜種に寄り添ってくれたように今後は亜竜種を害さないならば私は、貴方達に寄り添いたいの。私が手を伸ばしたら。貴女は手を取ってくれる?」
そんな蝋梅の言葉に、サンゴは笑顔を向けて。
「素敵な提案だわ。でも貴方達はもう私の手を振り払った。だから私は貴方達を磨り潰して同胞を作る。そうしたら、同胞の貴方と手を取り合えるわ」
「戦いをやめる気はない……ってことか」
『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)はサンゴにそう投げかける。
「亜竜種を守るために蟻と蟻帝種を討伐する。そちらが狩りを止めるなら話し合おう。さて、どうだ?」
「そうね。貴方達を狩れば充分。そんな気がするわ」
「……亜竜種の里を滅ぼさず帝化処置もせず、蟻帝種同士で子を生むだけだったなら、俺達は貴女達を守ったかもしれない……残念だな。こっちも譲れないんだ」
「ま、そうなるか」
『暴風暴威』リズリー・クレイグ(p3p008130)はランドグリーズを構え、苦笑する。
「ブン殴っといて今更手ぇ出すなってのは筋が通らねえ話さね。しかもください、じゃなく、してやると来た。そりゃあ、お行儀のいい奴の多いドラゴニアだってキレるってもんさ」
「結局はソレよね。だから話も合わないのよ」
『青鋭の刃』エルス・ティーネ(p3p007325)がサンゴに襲い掛かり黒顎魔王を放てば、サンゴはエルスを睨みつける。
「さぁかかって来なさい……強かろうが劣勢だろうが私は挫けないわっ!」
そして『酔狂者』バルガル・ミフィスト(p3p007978)と『血吸い蜥蜴』クリム・T・マスクヴェール(p3p001831)もエルスにサンゴが気をとられている隙をついてバルガルはベラムスキーを振るい猪鹿蝶を、クリムは無銘を手に剣魔双撃を放つ。
「クイーンを本格的に相手にするのは他の方に任せて取り巻きを叩きに行きましょうか。楽しい戦の始まりです!」
「いやぁ普通の蟻よりも堅いという事ですからねぇ。ただ、此方は弱点を見極めるのは慣れておりまして。脚の関節に装甲に隠れた腹、歯を動かす顎にその首。付け狙う所は多数ございまして。なのでとっとと身動きできなくなるまで、その全てを刻んであげましょう」
そうして放たれる攻撃に合わせるように『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)はエゴールの呪腕を握る。
「カノンはあのクイーンの基になった子とトモダチだったんだね……じゃあ、勝たなきゃね。勝ってトモダチを弔ってやらなきゃ。じゃないとトモダチも浮かばれないし、カノンも前を向いて歩いて行けないもんね! オレはカノンのトモダチだからね! トモダチのトモダチのために頑張るのは当然だよ!」
叫び放つのは無影拳・穿孔礫花。そこに更に『青の疾風譚』ライオリット・ベンダバール(p3p010380)が神鳴神威を叩き込む。
「イルナークにこんな形で再び訪れることになるとは思っていなかったっス。取り戻さなくちゃいけないっスね……この集落も、亜竜種の未来も。勿論、人のことを言えないのはわかってるっス。亜竜種のために俺達はアダマンアント……そして蟻帝種のことを倒そうとしているっスからね。だからこそ、これを無駄な戦いじゃなく、お互いにとって意義のある戦いにしたいっス……そのために、俺はこの力を全力で振るうっス」
これは未来をかけた戦いだ。であからこそぶつかり合うし、だからこそライオリットも覚悟を決めた。それでいい。結局は、それしかないのだろうから。
だからこそ、『魔法騎士』セララ(p3p000273)も聖剣ラグナロクを強く握り振るうのだ。
「アンティノア・クイーンが自分達の種族を第一に考えるのは当然のことだよね。でも、まずは話し合いをしたかったな。そうすれば違う道があったかもしれないのに」
それでもセララは、僅かな一縷の望みを諦めはしない。
「ねぇ、クイーンさん。今からでも話し合いをする気は無いかな。戦闘になってしまったのは残念だけど、まだ共存できる可能性はあると思うんだ」
「貴方達が全面降伏するなら、あるかもしれないわ」
「そっか……なら仕方ないね!」
やはり倒すしかない。
セラフインストールで自己強化たセララは、セララフェニックスを放っていく。
ここぞという場面でギガセララブレイクも狙っていくつもりだが……まだそれを放つべき隙はサンゴには見当たらない。
だからこそセララは二振りの東村山を構える『殿』一条 夢心地(p3p008344)とスイッチする。
「万能型の闘士のようじゃが、麿が狙うのはあくまでその剣。拳でやられようが脚でやられようが何かしらの術を喰らおうが構わぬ。ただ蟻相手に剣で負ける事だけは、ありえぬ。蟻だけに」
「知っているわ。矜持、っていうのよね」
「然り。なれば此度の戦いが、人の矜持を示す為のものであることを宣言しよう。勝てるか否か、賢明か否か、妥当か否か。それら一切関係なく、人は刃を振るうのだと。それらの理解無くして、女王の言葉は我等に届かぬのだと。断絶の一刀にて、女王の攻め手のひとつを無力化できれば良し」
そうまで言ってから、夢心地はニッと笑う。
「はっは、ではそろそろ終わらせようかの」
芒に月から猪鹿蝶へと繋げる必殺の一刀を夢心地は放って。
「誰かに操られていたわけでは無かったけれど、それ以上に最悪な結末ね……えぇ、彼女を野放しにするのは奏音さん達にとってもあまり良くはないわ。ここで、その縁を断ちましょう」
『銀青の戦乙女』アルテミア・フィルティス(p3p001981)はロサ・サフィリスとプリゼペ・エグマリヌを振るい覇竜穿撃を放つ。
「生まれ変わった? 新生した? 冗談じゃないッ! 知識も、記憶も、その身体も、ただ奪っただけよ! 魂はその身体の本来の持ち主のモノじゃない、アナタ達はただ姿形を真似ただけの別人よ! これ以上、その子の友達を惑わすな――死者を冒涜するなッ!!」
「その通りよ。私達は生き残るために『記録』を纏い武装する。でも……貴方達と何が違うのかしら?」
そんなサンゴの返答は、繊細な者には刺さる言動だろう。しかし『音呂木の巫女見習い』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)には効かない。
「姿を模倣してる?知らないなあ! そんな心理戦、私には効かないんだなこれが!
私ちゃん、誰にもあった事が無いから」
「そう。貴方、面白いわね」
「ま、ちゃんサンゴの反応も良き良き。というわけでー……戦神が一騎、茶屋ヶ坂アキナ!貴様を抹消する!」
戦神ノ崩閃からの崋山の刀。攻撃に集中しながらも、秋奈は笑う。
「火力こそ正義! この戦神、この程度では斃れるつもりはないのだけど? そう、今日があんたたちの敗戦記念日じゃい! 冥府で本人に謝ってこい!」
そして敵はサンゴだけではない。アダマンアント・ビショップも未だ健在。
だからこそ『正義の味方』ルビー・アールオース(p3p009378)は自身のリミッターを外し、更なるスピードの高みへ到達しながらスーパーノヴァを放つ。
「覇竜のアダマンアントとの闘いは私は関わってないけど、ここで叩かないと亜竜種の里の皆が大変な事になるのは解ってる。里の人たちとは何度も交流したし名前だって覚えて貰えた。お互いの生存をかけてのぶつかり合い。だからこと引く訳にはいかないよね」
「そうだね、蟻帝種……果たしてどんな種族か、個人的には興味が尽きない。けれど、眼前の驚異を放置するつもりはないよ」
『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)のコーパス・C・キャロルが響き渡り、『聖なるかな?』アザー・T・S・ドリフト(p3p008499)もクェーサーアナライズを放つ。
「命の価値に優劣がある訳ではない――ないですが、それでも今の私は此方側です。必要最低限でも、それが許容できる物ではないのなら、最早戦うしかないのですね……それなら私は、少しでも被害が減る様力を尽くさせて貰いますよっ」
そんな中、『何でも屋』ハビーブ・アッスルターン(p3p009802)はもう1度交渉してみようと思い立つ。言葉が通じて、話も通じる。ならば交渉出来る可能性はゼロではない。
(新しい種族である彼女らは、交渉の遣り方を知らんのだろうな。相手に不利益を求めるのなら、それ以上の利益を与える必要があったのだ……! 無論、信用さえあるならば信用取引でも十分……だが、無ければ拒否されるのは当然の帰結……!)
「だがわしは、敢えてサンゴ君らにもう一度チャンスを提示しよう……つまり……降伏し、我が身を売って安寧の代金と賠償金に充てる覚悟はあるかね? 蟻帝種は各地に離散し、召使いか、時には罪人や奴隷扱いをされる羽目になるやも知れんが、有用性さえ示せれば命ばかりは繋がるだろう……! さぞかし屈辱ではあろうが、ここでわしの矢を浴びるよりはマシであろうよ。なに、覚悟さえ決めるなら、皆がそう悪くは扱わんだろうよ」
「あると思うのかしら?」
サンゴはハビーブにそう告げる。
「私は女王として、その類の未来を良しとしない。貴方達もそうであるからこそ、此処で戦っているのでしょう?」
「……なるほどな。確かに命だけあれば良いというものではない。やはり君達は初手を間違えたのだよ。それしか和解の道が残っていないのだからな」
「それは覇竜の外の感覚ね。嫌いではないわ……ええ、貴方も磨り潰して第一世代にしてあげる。思う存分その知啓を振るうといいわ」
そんなサンゴに『紫晶銃の司書竜』劉・紫琳(p3p010462)の対物ライフルDominator暴式からのクリティカルスナイプが放たれる。
「到底飲める要求ではありませんね。犠牲もそうですが、その中立が維持されるという保証もありません。現在もアンティノアによる里の襲撃は続いていますし、何より最初にイルナークを滅ぼし多くの命を奪った。今後も『必要となれば』再びそれを行う可能性は高いでしょう」
「今そこの男が言った信用の話かしら? けれどイルナークを犠牲に『私』は生まれた。知っているわ。こういうのを『必要な犠牲』と言うのよね」
それ自体を否定することは難しいだろう。
イルナークの襲撃によってアンティノア・ファーストは生まれた。
それによって、これほどの戦力をまとめ上げた。しかし、それは。
「蟻帝種……亜竜種を喰らって我が物とする種、ですか。生まれた種、また在り方が違えば共存の道もあったのかも知れませんが……今はこうして、戦うしかないのでしょうね」
コーパス・C・キャロルを響かせながら『夜咲紡ぎ』リンディス=クァドラータ(p3p007979)は呟く。
「その身は――もともと、他に大切な人がいた身です。だから、返してもらいましょう。皆さんがしっかりと、「さようなら」を言えるように」
そう、リンディスの言うように在り方の違いでしかない。
しかしそれが、こんなにも大きい。
だからこそ『紅炎の勇者』リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)は魔晶剣『緋炎』を振るう手を止めないのだ。
「究極的に言えば『起きた事実は変えられない』。『死者が戻ってくることはない』。だから、貴方達が求めるものが『和解と共生』だけであれば交渉の余地はあったと言っておきましょう。貴方達が生まれたのは、別に貴方達の責任ではない。私達が討ったアダマンアント達のせいだったのですから」
そこまでは、リースリットは理解できる。サンゴ自身、此処まで1つもごまかしはしていない。しかし、それでもだ。
「……貴方達は許容できるのですか? 自らと仲間の犠牲を。出来ないが故の『恫喝』でしょう。ならば答えは明白な筈。此方も同じだと言う事ですよ。既に多大な犠牲を一方的に払わされた。これ以上の他者都合による犠牲など、許容できないのです――終わりにしましょう。貴方達を、滅ぼします」
「その理屈を、許すわ。かかってきなさい。この続きは、貴方が第一世代になった後にもう1度聞くわ」
シルフィオンを真正面から受け止め、サンゴは斬撃による衝撃波の嵐を放つ。
強い。あまりに強すぎる。真正面からこちらを制圧しかねない、そんな強さ。
だからこそ『水天の巫女』水瀬 冬佳(p3p006383)は負けられないと天華命水を発動させ仲間の傷を癒していく。
(彼らは人のような形を手に入れても、同様の心を得ている訳では無いのでしょうね。少なくとも、高い知性と理性を獲得したとしても、その理屈には根底から違う法則を感じる。心が無い、という訳では無いのでしょう。ただ在り様が根本的に異なる……そんな気がする。より無機質なイメージが……或いは種というシステムにおける核たる『女王』故かもしれないけれど)
「……とはいえ。何にせよ、要求を受け入れる選択は無いという事実に変わりはない。道が交わらないのなら……戦って勝つしかない、のでしょう。お互い、生きる為に」
「生き残りのため、ね……手紙の内容自体、初めから交渉の余地の薄さを伺わせる……あんなものは交渉とは呼ばない。唯の要求でしょう。それも圧倒的強者が弱者に向けて一方的に宣言する類いの物。人でなくとも、戦う術を知っている上であのような内容を受け入れる生物は果たして存在するのかしらね? そもそも。初めから勝てる気で居るなんて、舐められたもの。真に生き延びたいのなら手段を誤りましたね。それが出来ないのなら、貴女達と共存の道は無い」
『氷月玲瓏』久住・舞花(p3p005056)はそう宣言し銀閃『神威』を放つ。
戦っていると分かるのは、サンゴはこのアダマンアントを巡る戦いの中で出会ったどの敵よりも「硬い」ということだった。あらゆる面で上位者であり絶対者なのだろう。
そんなことをマルク・シリング(p3p001309)は思う。
「命を差し出せば共存を認める、か……知能があり、人以外を糧として種が生存できるなら、その道を選ぶことだってできたはずなんだ。よってこれは、種の生存競争ではなく。相容れず譲れない価値観同士の引き起こした、戦争だ」
歪曲のテスタメントを放つマルクに、『黒狼の従者』リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)も頷く。
「命の選別ですか。そのようなものを許容する訳にはいきません。誰しも大切な者達がいるはずですから。それにイルナークが故郷の人達は帰りたいと思うのでしょうね……なれば戦う他ありません。想い出の地の奪還とこれ以上の犠牲を防ぐ為にも」
ベネディクトと連携しながら死天を放つその姿は、主従の絆此処に在れり、という風ではある。
(亜竜種を喰らって生まれた新種……遂に人に近い在り方まで獲得した。恐らく彼らはこの先『文明』と『技術』を身に付け始めるでしょう。更に言えば現状が変化の終わりとも思えない。何れの変化は現状の蟻の生態に即したシステムからの逸脱の可能性すら内包する
数が増えれば多様性は加速する。攻撃的排他的な変化が発生したら――ほぼ確実に起きると予測しますが、他種族全てにとっての脅威を生み出す未来すら既に見える)
『黒のミスティリオン』アリシス・シーアルジア(p3p000397)は戦いの中で、そう分析する。
「……面白いですが、危険な種族ですね。貴方達の未来の可能性に憐憫を。心を解するなら『あのような要求はあり得ない』……共存の可能性を、貴方達は自ら断ってしまったのですよ」
「心で救えるものがあるならそうするわ。けれど私にはそんな甘えは許されない。種を導く責任があるもの」
エンシス・フェブルアリウスを真正面から受け止めながらも、サンゴはそう答える。そこに、迷いはない。それはある意味で「心」なのだろうか? それとも「サンゴ」の知識がもたらす反応なのだろうか?
「アイツラのダチを助けようとしてたのに結局はこうなっちまった。自分が情けねえったらありゃしねえ……最後の決着をつけねえとな」
『よをつむぐもの』新道 風牙(p3p005012)はそう独りごちるが、仕方のない事だ。
始まった時にはもう、終わっていたのだから。どうにかできる問題ではない。
「お前が子供が出来て成長するまで守って欲しいっつーんなら、少なくとも俺は協力してたさ。だがな、『こっちは襲うけど、そっちは襲わないで下さい』なんつー条件は受け入れる訳もねえ」
これ以上お前の好き勝手にはさせねえ、と。そう宣言し嵐撃を使いながらサンゴの死角から攻撃しようとする。
「死んだやつらにしてやれる事なんて、弔ってやるぐらいだ。眼の前のコイツじゃなく、もう逝っちまったサンゴに贈る……! あばよサンゴ。こいつが俺なりのレクイエムだ!」
「そのレクイエム。貴方に贈り返すわ」
放つは真・女王電波。場を埋め尽くすソレは全員の脳をミキサーでかき回すような痛みと不快感を与えていく。そんな中、『煌雷竜』アルペストゥス(p3p000029)は闘志を失わず吠える。
「……グルルル……」
なかまといっしょは、良いこと。生存競争は、こばまない。だからこそ。
「ius vitae――necisque」
(生きるためだからね)
放つのはナイトメアバレット。絶対に退かない。そんな決意を込めて。
「―そういうこと。つくづく気に入らない連中ね、アダマンアント共は。いいえ、今回はそういう考えを持ってる女王……かしら?」
灼炎の剱を顕現させ振るいながら、『煉獄の剣』朱華(p3p010458)は敵意を露わにする。
「やられたらやり返す。今回だってそうよ。他に手段もあったろうにそうはしなかった。だから―覚悟は出来てんでしょうね? 「同じ姿と同じ知識」を持っていたとしてもあんた達は朱華達の……敵よっ!」
「縁も恨みもありゃしない相手ってのはやりにくいんだがな……死者を冒涜するなら、死神の仕事なんだよ、それは」
『蒼穹の戦神』天之空・ミーナ(p3p005003)のダイヤモンドダストが放たれ、ダーティピンポイントを『諦めない』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)が放つ。
「あの時、わずかな気配を感じたのはやはりサンゴその人だったのですね。今は、何かが変わったよう。こんな形で戦いたくはないのに。でも皆さんを傷つけるならその動きを止めます!」
「ああ、それに……話し合いの定義がズレにズレているようだな。断言しよう。貴様がぬかしたのは、利己的極まりない要求に恐喝を加えた、凄まじくふざけた代物だ。端っから話し合いになっていない。この状況は、他ならぬ貴様の愚見が招いたモノと知れ!」
『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)の絶照・勦牙無極がサンゴへと放たれ、『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)はついに訪れた好機を悟る。
「女王、一つだけ聞かせて。サンゴの末期の言葉は何?」
「さよなら、よ。私もまたこの言葉を貴方達に贈るわ」
「―そう、それを聞ければ十分よ。その首、貰い受けるわ……神がそれを望まれる」
一切容赦無く私の刃は女王の殻を解くのみ、と。落首山茶花を振るい。
「ブランシュ、征って!」
ここまでの戦いを終わらせるべく、『反撃の紅』ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)はブレイクリミットオーダーからのソニック・インベイジョンを発動させる。
「チャンスは一瞬。速く。疾く。誰よりもピリオドの向こうへ。全てを奪い返す『侵略』を開始する」
そう、この一手で奪い返す。
もう戻らないものは多すぎるけれど。
それでも、その一撃に残る全てを賭けて、駆ける。
それは、サンゴに確かにトドメを刺して。
「そう。見誤ったわ。私は、最初から貴方達を標的にするべきだった。そうすれば、いずれ来たる脅威にも対抗できたはず……」
サンゴの身体が、バチッとスパークして。真・女王電波とは違う何かが遠く広がっていく。
「同胞たちよ。この戦いは私達の負けよ……あとは、好きに生きなさい」
それはサンゴから女王としての、最後の指令だったのだろうか。
ココロは駆け寄りサンゴの手を握るが……すでに、その命の灯は消えかけている。
「精々、頑張ると、いいわ。貴方達は私達を踏み潰したのだから」
その言葉を最後に、サンゴの命の灯は消える。
「これで……終わった、のか」
ベネディクトの言葉にイーリンも「そうね」と頷く。
アンティノアクイーン・サンゴ。アダマンアントを統率するアンティノア・ファーストたちの女王を今日この日、確かに討ち取った。
階下ではアダマンアントたちが何処かに去る音が、そして先陣チームの仲間たちと連合軍の人々の勝利を喜ぶ声が聞こえてくる。
元々のアダマンアントの性質を思えば、再び大規模な侵攻を仕掛けてくる可能性は非常に低い。
一連の事件はこれで解決し……だからこそ、これで「終わり」なのだと断言できる。
各地に散ったアンティノアたちの問題も残ってはいるが、それはあくまで枝葉の話だ。
亜竜集落イルナークも取り戻し、これからは復興が始まっていくだろう。
あるいは、そこにまた駆り出されることもあるかもしれないが……。
ブランシュは広場の外周に設置されている窓から顔を出し、モンスター達と共闘している仲間たちへと叫ぶ。
「みんなー! ブランシュたちの勝利なのですよ!」
その言葉に仲間たちもモンスターたちも勝利の雄たけびをあげる。
アダマンアントたちとの長きに渡る一連の事件……『覇竜侵食』と後世に呼ばれるこの事件は、こうしてこの日、終わりを迎えたのであった。
成否
大成功
MVP
状態異常
あとがき
覇竜侵食、これにてフィナーレです!
これからはイルナークの復興が始まっていきますが、ひとまずアダマンアントを巡る大きな事件はこれにて終了です。
アンティノアの問題は残っていますし、もしかすると行方不明になった皆様の関係者は実はアンティノア・ファーストになっていた……なんてことも有り得るでしょう。
しかしそれもまた、別の話です。
皆様のおかげで本シリーズは大団円を迎え、覇竜に新たな歴史が刻まれました。
その立役者たる皆様に大きな感謝を。アフターアクションにて本事件の最初の切っ掛けを作ったベネディクトさんにも皆様、大きな拍手をお願いします。
それでは皆様、次の依頼にてお会いしましょう!
GMコメント
頑丈な岩山を削って作られた亜竜集落イルナーク。
そこは今、アンティノアたちの本拠地となっています。
……ですが今この瞬間、クイーンであるサンゴ以外の「第一世代」たちはイルナークの外に出ています。
勿論護衛にアダマンアントが居ますが、この機を逃せば勝てるチャンスは巡ってこないかもしれません。
そう、決戦です!
●フィールドデータ【亜竜集落イルナーク】
天辺にある巨大なサンダードレイクの骨の放つ威圧に守られた集落……でした。
未だサンダードレイクの骨の放つ威圧は健在ですが、サンゴはモノともしていません。
当然、その影響下にあるアダマンアントたちも同様です。
巨大な岩山をくり抜いて作られており、地上階層が居住区、地下階層が保管庫、そしてアダマンアントがイルナーク襲撃時に空けた大穴があります。
●プレイング書式について
下記のように記載してくださいますと、非常に助かります。
・1行目:パート名
・2行目:グループ名
・3行目:プレイング
●パートについて
下記の中から選びコピペしてくださいませ。
【決戦】
中層階の「広場」にいるアンティノアクイーン・サンゴと戦う「俺達は皆の想いを背負ってるんだ!」チームです。
非常に強力である為、重傷を負う可能性は高いでしょう。
このサンゴは亜竜種のサンゴの姿をベースにサンゴの知識を持つ「別人」です。
強さなども奏音の知るそれとは別格です。
なお、アンティノアクイーン・サンゴを撃破すると全てのアダマンアントは撤退します。
【先陣】
1階に陣取り、地下から増援として増えていくアダマンアントを相手取り【決戦】チームに「ここは任せて先に行け!」をやるチームです。
このチームの活躍により、【決戦】チームへの増援を防ぐことができます。
また、此処が崩れると全部崩れる、最重要パートです。
突撃してアダマンアントの軍勢相手に戦い、上の階へのルートを拓きましょう。
【決戦】チームが戦っている間、頑張って押さえないと【決戦】チームにアダマンアントの増援が追加されてしまいます。
かなり消耗が激しくなるのでやはり【重傷】の可能性があります。
【本部】
イルナークの外で後方支援などを担当します。
負傷した仲間を治療するための後衛テントを設置します。
この部隊が有効に働くことで味方の重傷度が下がり、戦況を有利に運ぶことが出来ます。
【共闘】(選択条件あり)
※『この選択肢は過去の覇竜侵食においてモンスターを助けた人のみ選択可能です』※
イルナークの外で本部を守り、周囲の警戒を行います。
クイーンの危機を察知し戻ってくるアンティノア・ファーストを撃退します。
なお、援軍として何処からか「貴方が過去に参加した<覇竜侵食>で共闘したモンスターの中で指定の1体」がやってきます。
モンスターは強力な「今回限りの援軍」となり、貴方を助けてくれるでしょう。
この部隊の活躍により他パートの安全度が高まり、戦況が有利になります。
またこのパートが失敗すると他パートの安全度が下がり、戦況が不利になります。
●敵データ(決戦チーム)
・アンティノアクイーン・サンゴ
蟻帝種・第一世代(アンティノア・ファースト)を統べる女王。
穏健派だが、それはあくまでアンティノアとしての論理によるもの。
攻め込んできた皆さんについては「殺して素材にしよう」程度の扱いになっています。
武器は持っている剣ですが、拳も足も出ますし遠距離攻撃も範囲攻撃も出来ます。
戦況に合わせたオールレンジファイターです。
なお、敵にダメージと共に混乱・麻痺・魅了・怒り効果を与える「真・女王電波」も使用可能です。
脳をかき回すような不快な痛みが特徴で、威力もかなりのものであるようです。
・アダマンアント・ビショップ×2
サンゴの側に控える小型のアダマンアント。
通常のアダマンアントよりも更に硬く、HP回復、AP回復、BS回復などの技を使うようです。
・(戦況によっては)アダマンアント×不明
【先陣】チームの戦況によっては階下より出現します。
嫌になる程硬い巨大アリ。攻撃方法は岩をも溶かす酸を弾丸のように飛ばす技と、強靭な顎による振り回し&叩きつけ攻撃です。
●敵データ(先陣チーム)
・アダマンアント×400(これに加え、地下からの増援)
嫌になる程硬い巨大アリ。攻撃方法は岩をも溶かす酸を弾丸のように飛ばす技と、強靭な顎による振り回し&叩きつけ攻撃です。
倒せる数ではありません。とんでもなく不利ですので、しっかり戦術と陣形を考えないと【決戦】チームを送り出す前に、あるいは送り出した後に磨り潰される恐れがあります。
●敵データ(共闘チーム)
・アンティノア・ファースト×不明
蟻帝種・第一世代。詳細は不明ですが、何処かで攫われた人々をベースにしています。
近距離攻撃、遠距離攻撃など様々な攻撃を使用します。
個体としてはかなり強力で、共闘するモンスターがいないと太刀打ちが難しいでしょう。
・アダマンアント×不明
女王電波を受け取り援軍としてやってくるアダマンアントです。
勿論通してはいけません。本部が危険に陥ります。
●友軍
・フリアノン3人娘
何者かの手により勝手にユニット名がつけられてた奏音、静李、棕梠の3人。
詳しい情報は「覇竜侵食」特設ページにて。
https://rev1.reversion.jp/page/ilnarkfall
・亜竜種連合軍
今まで助けた小集落の亜竜種、そして三大集落の亜竜種で構成された連合軍です。
武器や能力は様々ですが、果敢に戦います。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
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