シナリオ詳細
<鉄と血と>悪しき狼
完了
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オープニング
●『悪しき狼』
それは、ひたひたとやってくる。
おぞましき冬の知らせ。びゅうびゅうと風が吹けばその獣は氷の牙を突き立てるだろう。
扉をも蹴破り、獣は全てを蹂躙して去って行く。それは災いの象徴だった。
冬の狼は唯、腹を空かせていた。目に映る者全てを食べてしまうのだ。
月を喰らって、深い夜を作った。
太陽を喰らって、陽など遠ざけた。
そうして世界を深い深い冬に閉ざしてしまうのだ。
そんな狼は、手脚をもがれ、首を落とされて封じられた。
いまや、静かに眠るその狼が暗い夜には姿を見せる。
――だから、雪深い夜は一人で外に出てはいけないよ。悪い狼に食べられてしまうから。
「おばあさま、救いはないの?」
兎の耳を生やした少女が、血の繋がらぬ『祖母』に問うた。
ふかふかとしたベッドで子供にこの御伽噺を語り聞かせる風習がヴィーザルには旧くからあったのだ。
冬の夜は一人で出て行ってはいけない、フローズヴィトニルに食べられてしまうから。
そんな御伽噺が教訓として語られるのだ。耳を傾けた娘の頭を撫でながら『祖母』は笑う。
「いいえ、そんな狼にも少しだけ救いが合ったのでしょうね。狼を愛した人が居たのです。
その人の心が、狼の力と混ざって『狼の唯一の理解者』になった。その優しい心こそ、冬を終らせる春の魔法なのですよ」
アルア、と呼んだ『祖母』は腹をぽん、ぽんと叩きながら微笑む。
「春?」
眠気眼を擦った娘に『祖母』は――ブリギット・トール・ウォンブラング (p3n000291)は微笑んだ。
「ええ、春ですよ。冬の雪が溶ければヴィーザルにも春が訪れます。
春の訪れを告げる白花を見付けに行きましょう。だから、今日はお眠りなさい。アルア、わたくしの可愛い子供達」
死の神よ。スケッルスの槌よ。まだ振り下ろさないでおくれ。
空の盃に並々と注ぐその日が来たならば、この体など雷に打たれて朽ちても構わない。
革命派だけではない。出会った全てのイレギュラーズがブリギットにとっては優しく、可愛い子供達だった。
大切な命の数々。例え、『村の子供達だと誤認していた』だけであったとしても、愛着は本物だった。
無条件で愛した。無条件で護りたかった。ただ、子供達が――イレギュラーズが笑っていてくれるだけで良かったのだ。
「わたくしは、ただ、幸せになって欲しかっただけなのです。
だから……だからこそ、この『冬』を終らせなくては――例え、何が起きたって」
フギン=ムニン。
貴方がフローズヴィトニルでバルナバスの権能を喰らい寝首を掻くことが狙いならば。
……わたくしだって。
この命が朽ちて仕舞っても構わないのですから。
●フギン=ムニン
男はラサの出身である。言葉には出来ぬ薬品ばかりを扱っていた薬屋の跡継ぎとして産まれた。
だが、生活は切り詰めても足りない程。だからこそ、悪い薬に、悪い人間に、と縋るように手を伸ばしてしまったのだ。
ある時、母は幻想貴族の男に求められて合法ではない強い薬を調合して売りつけた。
薬を盛られたのは名のある貴族だったらしい。薬の出所を突き止められ、傭兵は青年の生家を蹂躙した。
命辛々、幾許かの薬を手に逃亡した男を拾ったのは『蠍座』の如き輝きを有した男だった。
男には力も無い。持っていたのは僅かな薬と薬学の知識、それから、ほんのちょっとの貴族とのコネだった。
――生きていたいのです。
懇願し、その膝に縋り付いた時、プライドなんてチンケなものは持ち合わせてやなかった。
男は詰まらなさそうに「勝手にしろ」と言った。興味も持たなかったのかも知れない。
彼に認められれば生活も楽になろう。その気持ちで彼の傍に居ただけだったというのに、情が移った。どうしようも無く魅せられた。
所詮は下層の、底辺の人間だ。恵まれてなんかいない。
だと言うのに、莫迦みたいな理想を、莫迦みたいに追掛けるその人が眩くて、堪らなかったのだ。
そんな理想の後を継ごうとした己だって莫迦者だ。何とでも云って笑えば良い。
だが――たった一つの命の使い方ぐらいどうしたっていいだろう。
バルナバスだって、どうでもいい。
鉄帝国だって、どうでもいい。
すべては、あの人が、眩きただ一つの蠍座の光が目指した『もの』を得たかっただけなのだ。
「いやあ、お涙頂戴だねえ」
手を叩いた『脱獄王』ドージェは寒々しい氷の城の中で笑っていた。
フローズヴィトニルの冬の力を伴い、急造されたこの場所は鉄帝帝都の郊外に位置している。
『アラクラン』の本拠とされたその場所の最奥で『フローズヴィトニル』の覚醒が始まろうとしていた。
そんな危険地帯に彼が居るのは単純明快、この場所に居ればイレギュラーズがやってくる。綺麗な目玉に、美しい腕、特別なパーツを持った者達を多く見、殺せば奪う事が出来るからだ。
「それで? 総帥はどうするんだったかなあ」
「あはは、ドージェがとぼけてる」
「絶対、言わせたいだけだよね」
手を叩いて笑っているのは魅咲と乱花と言う二人の魔種だった。少年のなりをしている二人は外交官ローズルに連れられ遣ってきた。
ただの賑やかしのつもりなのだろうが、魅咲はフギン=ムニンの理想の物語に興味を持った。
ただ、その飽くなき知識欲だけがこの場に二人を留まらせ、二人を戦いに駆り立てているのだ。
「……茶化していますか」
「「いいえ!」」
不機嫌そうに眉を吊り上げたフギンに乱花と魅咲が首を振る。クロックホルムが嘆息し、ローズルは笑った。
「――フローズヴィトニルの『覚醒』を」
生憎ながら欠片自体はイレギュラーズの手に渡ってしまった。だが、フローズヴィトニルの『首』たる主の封印はフギン=ムニンの手の内だ。
現在ではビーストテイマーとして高い能力を有していたクラウィス=カデナが『自身の使役生物』であった相棒の2匹の狼を引き換えに『フローズヴィトニル』とパスを繋いでいる状態になる。クラウィスの生命力と2匹の狼の力を引き換えにしながらフローズヴィトニルは無数の分霊を作りだし獲物(イレギュラーズ)を待っているのだ。
「クラウィスだけで足りなくなったらどうするの?」
「ええ、勿論。何だって餌にしましょう。そうしてその肉体が実体化し、覚醒にあと一歩となればフローズヴィトニルはこの場所を飛び出して行くはずです」
目的はバルナバスの権能たる太陽だ。それを喰らえばフローズヴィトニルは覚醒し、この国を冬に閉ざすだろう。
だが、制御は『要石』を有すれば容易だ。クラウィスが死したならば、次はエリス・マスカレイドを捉え、その力を要石にでも込めれば制御しきれるだろう。
……余波で幻想や天義、ラサ辺りは冬に飲まれるかも知れないが必要な犠牲だと認識しておくべきだろう。
猛吹雪に閉ざされた鉄帝で新たな王国を作り上げることこそがフギンの目的なのだから。
「そんなに上手くいきますでしょうか」
「さあ?」
「おや、珍しい。貴方ともあろう人が曖昧な答えを返すのですね」
ローズルは穏やかに微笑んだままフギンを眺めた。強い精神力を有する青年は悪辣で有ながら憤怒の声には靡かない。
ただ、愉快だからトコの場所に居座っている外交官にフギンは「少々、困ったことがありましてね」と肩を竦めた。
一つは、革命派を瓦解させるべく送り込んだブリギットの事だった。
『革命派の象徴』であったアミナを反転させ、派閥を分解させてイレギュラーズの余力を削る事が目的であったが、失敗に終わっている。
アミナは改めて人民軍と共に戦う決意をし、ブリギットなど『狂気』に蝕まれながらも僅かな正気を保っている。
あれだけ愛情の強い女だ。イレギュラーズの事を我が子のように思って居る。何をしでかすかは分からない。
もう一つはと言えばエリス・マスカレイドがイレギュラーズと好意的である事である。
どのみち彼女はフローズヴィトニルのためにこの場所にやってくるだろうが――さて、その時にイレギュラーズがその命を守り抜く可能性がある。
エリスならば何処で死んだとて、その気配をフローズヴィトニルが逃すわけがない。さっさと何処かで野垂れ死に糧にしたかったのだが銀の森のガードは強かった。
「……バルナバスが太陽を喰わせるわけがないというのは考えないのですか?」
「よい質問ですね、クロックホルム」
嘗ては幻想騎士であり、己の主人であった貴族に手酷い裏切りを受けた事で憤怒に寄り添った男は肩を竦める。
フギンは「あの男はその様な事を考えやしないでしょう」と静かに告げた。
どのみち、其れは最期だ。その前にあの太陽が全てを無に帰す可能性もある。その場合はフローズヴィトニルの氷で己達だけでも守り抜けば良いのだ。
「だからこそ、心配事の二つだけをどうにかするだけです。イレギュラーズはあの手この手でこの城の陥落を狙うでしょうからね」
「しつもーん! この城って、フローズヴィトニルが死んだら消え失せるんすか?」
「はい。乱花。その通りです」
ならば――護るべきは単純明快フローズヴィトニルなのだと魔種の少年達は笑った。
●氷の城にて
「……途轍もない気配です」
ふるり、と震えたのはエリス・マスカレイドであった。『氷の精霊女王』はわがままであっても連れて行って欲しいとこの場までやって来た。
城の周りは吹雪に包まれ、雪が聳えるように積もっている。
その一体だけが深い冬ののようであったのだ。春を忘れた『冬』の領域だ。
「この先にフローズヴィトニルがいます」
エリスは指差した。封じられ悪しき獣が腹を空かせて待っている。
「あれを封じなくては……わたしの、命に代えたって」
エリスは震える声で、そう言った。封じる為にはフローズヴィトニルの近くに行かねばならない。
エリス・マスカレイドは『善性』の欠片だ。フローズヴィトニルの中に存在したそれは分かたれ、力の管理者としての役割を担う。
外付け制御装置、と表現するのが正しいのだろう。彼女の強力なくしては封印を行なう事は出来まい。
――エリスは要石を破壊するように言っているが、フローズヴィトニルの再封印には要石が必要なのではなかろうか。
まさか、エリス自身が要石の代わりになるつもりなのでは……
その様な推測を行なった者も居た。その通りだとはエリスは答えやしないが『最悪の場合』はそうする事も出来る。
……その決断を出すには未だ遠い。その前に、この城を攻略し狼の前に辿り着かなくてはならない。
降り積もる雪が全てを閉ざす。
天は鳴くように光を走らせた。
春は、まだ遠い――
- <鉄と血と>悪しき狼Lv:50以上完了
- GM名夏あかね
- 種別ラリー
- 難易度VERYHARD
- 冒険終了日時2023年03月29日 21時30分
- 章数4章
- 総採用数573人
- 参加費50RC
第1章
第1章 第1節
『氷の精霊女王』エリス・マスカレイドが立っていたのは氷城の前であった。
広々としたエントランス内部を覗き込めば天衝種達の姿が見える。その周囲には氷の気配が纏わり付き、狼らしきものを形作って行く。
「あの狼は、フローズヴィトニルの力の欠片です。
……意思の疎通はできませんが、あれもフローズヴィトニルそのものであることには違いがないでしょう」
幾重にも産み出されてゆくそれらは大元であるフローズヴィトニルの力を削って行く事に直結して居るであろう。
エリスはそれらを撃破しながら場内を進んで行く事が今回の目的だと告げる。
「氷の精霊女王って髪も、氷っぽいんだなぁ」
「え――?」
くるりと振り向いたエリスの髪先がはらり、と落ちる。其れを掴んでいたのは『脱獄王』ドージェであった。
警戒するイレギュラーズに手を振った男は「そんな怒らないでよ」と揶揄うような笑みを浮かべている。
……成程、乱戦になるのならばその場で『獲物』を狩るつもりなのであろうか。
「あーあ、ドージェが先走ってる」
「オジサンのお守りはしたくないけど」
後ろから姿を見せたのは乱花と魅咲であった。個人的な事情を二人は語る事はしない。ただ、楽しそうだからという理由だけで此処に立っている『らしい』のだ。
「……彼等を退けて、すすまなくては、なりませんね」
エリスははあ、と小さく息を吐く。その傍ではアルア・ウォンブラングが弓をぎり、と引いて警戒を露わにしていた。
「イレギュラーズちゃんたち、目標は城門付近の掃討。
……それから、城の内部へと進軍すること、でしょう。
内部の様子は入らなくては、わかりませんから。落ち着いて参りましょう」
エリスはイレギュラーズ達へと振り向いてから緊張したように氷杖を握りしめた。
=== 現在位置 ===
・氷の城の入り口に当たります
・門番として『奔放の白刃』乱花と『狡知の幻霧』魅咲が待ち受けているようです。
また、漁夫の利を狙って『脱獄王』ドージェが時折姿を見せる可能性があります。
『氷狼の欠片達』、アラクラン兵士達(魔種、通常の兵士)、天衝種(アンチ・ヘイヴン)の姿もあります。
・氷狼の欠片達:フローズヴィトニルによって産み出された幻影です。非常に獰猛。牙や爪を駆使し攻撃します。詳細不明
・アラクランの兵士達:様々なスペックを有するユニットです。
・ヘイトクルー(機銃型):機銃のような幻影による怒り任せの射撃や掃射で物理中~遠距離攻撃してきます。
・ストリガー:燃えさかる爪を怒り任せに振るいます。至~近距離の単体や列への攻撃を行い、『火炎』系のBSを伴います。
・ヘァズ・フィラン:空を飛行し、弱者と思わしき者を集団で嬲ります。反応、機動力、EXAに優れ、牙には毒もある模様です。
・プレーグメイデン:怒り任せの衝撃波のような神秘中~超距離攻撃してきます。単体と範囲があり、『毒』系、『凍結』系、『狂気』のBSを伴います。威力は高くありませんが、厄介です。
===フローズヴィトニルに関して===
エリス・マスカレイド曰く、『首だけの顕現』です。
現在地は城の内部……は確かですが詳細なことは探知できていないようです。
===第一章援軍===
特記事項はなし。
第1章 第2節
凍て付く風が吹く。まるで、元からその場所に存在していたかのような存在感を有する氷の城を見上げた『夜守の魔女』セレナ・夜月(p3p010688)はごくり、と息を呑んだ。
「エリス……貴女を狙ってくる敵は多そうだわ」
「はい。セレナちゃん……きっと、私は一番利用価値のある『欠片』でしょうから」
緊張を滲ませるエリス・マスカレイドにセレナは頷いた。彼女が『要石』としての役割を担えるならば、制御の為にエリスを利用できると相手も考えるだろう。
「ねえ……フローズヴィトニルの再封印には『要石』が必要なんでしょう?
なら、それを取り戻すだけじゃないの。そうよね? それがあれば、エリスちゃん、アナタが命に代えて――なんてそんなこと絶対にしなくてよくなるんでしょう?」
確かめるように告げた『月香るウィスタリア』ジルーシャ・グレイ(p3p002246)にエリスはぎこちない笑みを返した。
その意味が分からないほどにジルーシャも鈍くはない。果たして、要石が今も封印の効果を担えているのかは分からない。けれど、遣ってみなくては意味が無い。
「エリスちゃん」
ジルーシャはそっとエリスの手を握りしめた。やわい、子供の様な掌だ。氷の精霊女王は幼い少女のなりをしている。だからこそ、つい子供に言い聞かせるように言ってしまうのだ。
「この冬が終わった先の未来で、アンタにも笑っていてほしいんだから。だから――アタシたちにも『一緒に戦わせて』ね、エリスちゃん」
「ジルーシャちゃん、ムリは」
「あら、ヤダ! アンタが言うのはナシよ? エリスちゃん」
微笑んだジルーシャの唇が吊り上がる。勝利に恋をするように、盲目的に乞うた気配が彼を包み込む。その指先が奏でる音色が精霊達を誘った。
「エリス、あなたは私が護ってみせるわ。だから安心して自分の役割を選んで、でもその身を犠牲にするのなら私は許さないから」
唇を尖らせてから『氷の女王を思う』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)は覚悟を決めた。『精霊』だというならば、傷付けたくは無かったが友人を傷付ける相手をオデットが赦すわけには行かない。
「氷狼だって、構わないわ! エリスを傷付けないで。
エリスがいなきゃフロースヴィトニルと会うことすらままならないものね。此処は任せて!」
迫り来るアラクランの兵士達。その傍から駆け抜けてきた氷狼を受け止めたのは 『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)。
前線に立った不完全なる『願望器』は自分自身を代償にするかの如く力を宿す。魔術紋が求めたのは何時だって己の覚悟だ。
「行こう」
「うん、頑張ろうね。みゃー」
星の軌跡を残すようにナハトスターブラスターが一点集中で放たれる。ヨゾラを支援する『祈光のシュネー』祝音・猫乃見・来探(p3p009413)の熱砂が吹雪の中に巻き起こる。執拗なる嵐の中から飛び出した氷狼をオデットは捨て身で受け止めた。
「オデットちゃん!」
「私は平気よ、イレギュラーズだもの」
にこりと笑ったオデットが直ぐに押し返せば破滅的魔力が放たれた。絶対的に傷付けることは赦しはせぬと言う『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)の固い意思。斯うした時に友人は何時だって捨て身なのだ。
(氷の城……閉ざすような冬……これは、妖精郷での冬の王戦を思い出す……)
サイズは唇を引き結び鎌(おのれ)を振り上げた。用途不明ユニットが接続されましたと声が響けど、構うことはない。
魔力を吐出し天衝種等を振り払え――無尽蔵に増える氷狼とて『押し込めば』魔種の元に一手を届かせられるはずだと路を開くべく鍛冶妖精は徹底的に支援に徹する。
(エリス……精霊女王が自己犠牲に走ろうとしている……これは夜の王戦を思い出す……。
ああ、心の冬白夜が魂を冷やす……ここで何かを得られたら……少しはこの冷えも収まるかな?)
悔しいばかりだった。エリスに投げて寄越したのは使い捨ての追加装甲。自分の身を守って欲しいと乞うたサイズにエリスは小さく頷いた。
(前に進まなきゃ、だけど敵が多い……。
周囲の敵を減らそう……敵の数は、少ない方が良い。そして……強い敵にも、やらせない)
ふるり、と小さく震えた祝音はきっと前線を睨め付けた。余力を持たせ、長期戦に備えるべくヨゾラと祝音は協力し合う。
『脱獄王』の姿は未だ無いか――それでも、警戒しエリスの身の回りを固めるべきだろうか。
「ふむふむ、とりあえず狼を倒しながら進めば良いんだね!
あんまりゆっくりもしてられないのが悲しい所だけど……まずは門番を倒して城内に侵入しないとだね」
成程分かりました、と言わんばかりに頷いた『聖女頌歌』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)はにこりと微笑んだ。
「アルアさん、エリスさん。気をつけてね」
「はい。がんばります」
アルア・ウォンブラングが小さく頷けばスティアはにこりと微笑んだ。この先にアルアの『おばあさま』が待っている。
「スティアちゃん、オデットちゃんやヨゾラちゃんを支えてあげて下さい」
「うん! 私とゲオルグさんに任せておいて」
エリスは『自身の父』に遭いに行こうとしている。あの悪しき狼はエリスにとっては父親で――絶対凍土の化身なのだから。
魔力の残滓は花の様に舞い踊る。雪花絢爛、フローズヴィトニルの権能の吹雪に混ざるスティアの魔力の残滓はちらつく六花の様に鮮やかに。
周辺に展開された聖域の下、スティアはただ、エリスとアルアを護るべく立っていた。
「……エリス。覚醒まで時間がない以上、要石を早急に破壊しなければいけないのはわかっている。だが、少しだけ待ってもらえないか」
「ゲオルグちゃん……?」
哀歌を謳い、号令を共に響かせる『優穏の聲』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)にエリスは不思議そうに瞬いた。
「……恐らく、クラウィスの使役していたネーロとビアンコをパスにしてフローズヴィトニルの力を制御しているだろうから。
破壊すればその存在が消えてしまうかもしれない。
……それに、私はフローズヴィトニルとの対話を諦めたくはない。その間は、私の命を削ることになっても構わない」
「そ、れは――」
自己犠牲をも厭わぬゲオルグの言葉にエリスは息を呑んだ。返答に困っているかのような彼女を見詰めてからジルーシャは「んもう! それはフローズヴィトニルの前に辿り着いてからよ!」と腕まくりをして見せた。
「そうだね。敵は一杯だから」
「……門番を退けて中に押し入らないと」
押し掛けるぞ、と言わんばかりのヨゾラと祝音にゲオルグは頷いた。扉を蹴破る勢いで氷の城に飛び込まねばならぬのだ。
なるべく早急にフローズヴィトニルのもとに辿り着くならば頓着せずに突き進めば良いだろうか。だが、この場の誰もがエリス・マスカレイドの身を心配していた。
フローズヴィトニルを唯一制御下に置ける可能性のある精霊女王。それを『モノ』と認識すれば喉から手が出るほどに欲しいものだろう。
「鉄帝国を終わりなき冬に閉ざさせるわけにはいかん。フギン=ムニンの企みを阻止し、必ずや春を得よう」
「……ああ」
常春の気配を求めるようにサイズは頷いた。眩き魔力の先にセレナは合せ、幻月の魔力を放つ。黒紫の光は狂気と終末を顕す凶兆。
月明かりの下に舞い散る花びらと共にスティアが「右!」と叫んだ。
「……数が多いね!」
ヨゾラは頷き退ける。まだ、戦闘は始まったばかり。此処から前線を押し上げるべく、イレギュラーズ達は進むのだ。
それでも――少しだけの気がかり。
「エリス!」
オデットは自身の手にしていたフローズヴィトニルの欠片が『フローズヴィトニル』そのものに何か影響を与えられるのでは無いかと考えた。
それは良くも悪くも、である。
先んじてオデットはエリスに問いたかったのだ。
「私から、フローズヴィトニルに声を掛けても良い?」
「……はい! オデットちゃん、欠片に集中して下さい。わたしが、『繋いで』みます」
オデットは頷いた。覚醒が近く、首のみの顕現をした悪しき狼。その心に直接問い掛けられるかは分からない。
それでも、自らの手に転がり込んできたその欠片位は、しあわせにしてやりたかった。
「……ねえ、フローズヴィトニル。聞こえる?
貴方に声が届くように、木漏れ日を届けてあげられるように。私はどんな精霊だって愛してる、愛する自信があるわ。
だからどうか、私に声に応えて」
あなたが――木漏れ日の下で笑っている未来を求めるように。
祈りながら欠片を握りしめたオデットの指先から光が漏れた。
目映さに思わず眼を眇める。エリスが何か気付いたように氷の気配をその身に纏った。
「エリス……?」
セレナの呼び掛けにエリスは小さく頷いた。氷が、徐々にオデットの掌に集まって行く。
「エリスちゃんったら!」
無茶をしないでと言ったのにと拗ねたジルーシャにエリスは小さく笑った。自分はあくまでも『パス』を繋ぐ手伝いをしただけだ、と。
「――オデットちゃん。フローズヴィトニルの力は……私が制御しています。
今ならばイレギュラーズちゃん達の眼となり手となってくれる事でしょう。大丈夫、その子は、わたし達の味方です」
オデットの傍に姿を現したのは小さな冬狼。遠吠えはか細く、子犬の如く小さなその狼は氷の息吹を吐出した。
成否
成功
状態異常
第1章 第3節
眩いばかりの氷の城を眺めてから『自然を想う心』エルシア・クレンオータ(p3p008209)は「本当に、氷で出来て居るのですね」と呟いた。
本来ならば人が住んでいたスラムであったこの場所は、動乱が始まり、住民を失ってからは化け物ばかりが蹂躙する区域にもなって居た。
エルシアが気になったのは氷の城の強度である。真逆、真逆の自身の攻撃で溶けてやしまわないか――などと考えたのだ。
「ええ、そんなことはないのかも知れませんが……」
温度を管理し、見定めるように『壁』へと一撃を放つ。それは外壁を僅かに溶かすが直ぐに修復されて行く。
「温度自体もそれ程下がっていない、やや傷を付けた程度でしょうか。
……全力で壁に穴を開ければ誰かが門番と戦っている隙をつけたり、とか」
意地悪なことを考えて居たエルシアの声を聞きながら『山吹の孫娘』ンクルス・クー(p3p007660)は一先ず前線へと飛び込むことにした。
(おばあちゃんが気にはなるけど……まずは正面突破だね! おばあちゃんもこの奥に居るだろうから……)
ンクルスにとっての気がかりはブリギット・トール・ウォンブラングその人だった。
彼女は『アラクラン』だ。彼女が姿を消したとて、身を寄せる場所か此処しか無かろう。ならば、この先に進むべきなのだ。
(屹度、おばあちゃんが何か仕掛けるとしたって、フギンの傍でだと思う。
なら……早く『門番』を倒して、広間を進んで……フローズヴィトニルとフギンの所に辿り着かなくっちゃ!)
ンクルスはストリガーを引き寄せる。激しい怒りを抱いていたアンデッド達は燃え盛る爪をンクルスへと振り上げるが、その火の気配はンクルスを苛むことはない。
「あっちも!」
同じくアンデッドでアルブレーグメイデンを睨め付けるンクルスは苛むものはなにもないのだと全てをその周囲へと引き寄せた。
その両手は想いのままなんだって出来る。誰かの手を掴むことだって、生きて返ることを願い、創造神に祈る事だって。
困難も苦境も鋼のシスターは気にする事は無かった。この声が、あの人に届くまで――
前線に立っていたンクルスに狙いを定めんとしたのは無数の兵士達だった。だが、『酔狂者』バルガル・ミフィスト(p3p007978)が直ぐに滑り込む。
運は己に味方する。ダイスを投げればクリティカルを引く『確率』など、己が引き寄せるべきなのだと青年は小振りのナイフを揺らがせ投擲した。
冠位魔種の符術で練られた鎖は強固だ。バルガルの手にもよく馴染む。
「事情は深くは知らずとも、放置すれば更に面倒になるのは目に見えてますのでねぇ。
――なので殺しましょう。全てとは言わずとも可能な限り。味方が進む道を、作りましょう」
臆すること亡く男は邪道の極みを、人を殺す為の一撃を投げ入れる。当たるも八卦、外れるもまた然り。
その奇襲の技術と、当たれば痛烈なる一撃を放つことが出来るバルガルの背後より降り注いだのは鋼の驟雨。
「何であれ馬鹿やらかそうって奴をぶっ飛ばせばいいって事っすよね! ――んだったら話は簡単だ! そこをどきやがれ!」
『蒸気迫撃』リサ・ディーラング(p3p008016)が担ぎ上げたのは魔導蒸気機関搭載の巨大火砲。
それこそが技術者の夢である。リサ・ディーラング専用のパワードスーツに接続されたそれは終末を告げるべく、標的を定め続けた。
「リソースがヤバう? 知ったことか! 少しでも敵を削り殺せ!」
数を揃えようがなんぼだ。全員『ぶっ飛ばせば』関係ない。味方の背中も脇腹も、刺されぬ為ならば四方八方、やたらめったらに弾丸を放つべし。
「そうすりゃ味方も良し私も良し。だからとっととくたばりやがれ!
こちとら死地な事知って飛び込んでいるんだ! 簡単に潰されると思うんじゃねぇぞ!」
「イレギュラーズをこの場で出来る限り『削れ』」
アラクランの兵士であろうか。淡々と指示をする鉄帝国軍人の男の声を聞き『ちいさな決意』メイメイ・ルー(p3p004460)はタクトをぎゅうと握りしめた。
「……春の訪れを、願って。わたしは、このとても強い、強い『冬』に、立ち向かわなくては」
どうか、お互いにご無事で、と建葉晴明 (p3n000180)の手をぎゅうと握りしめてからメイメイは決意する。豊穣から先んじてやってきた晴明はその掌を包み込むように握り直してから「無事で」と告げた。
「妙見子殿も宜しく頼む」
「エッ、ええ、もちろん。ふふ……こうやって戦場で共に戦うのは初めてですね、晴明様。
結構前線で頑張ってきたんですから……一緒に頑張らせてください。晴明様はメイメイ様と共に遠距離からの支援をお願い致します」
『北辰より来たる母神』水天宮 妙見子(p3p010644)寒ければ言って下さいと胸を張る。自慢げな妙見子に晴明は頷いた。
数多の国家滅亡と共に在ったという鉄扇を開く妙見子は目を伏せ、力を込め――その背に九つの尾を顕現させる。
「……それは……」
目を見開く晴明に妙見子はやや気恥ずかしそうに目を伏せた。それは破壊の衝動を見に降ろすのと同時、恋する乙女には余りにもままならぬ。
けれど――大切な人達を護る為ならば、その力も護るべきものへと昇華する事が出来るだろう。
「この北辰の化身たる"我"がお相手しよう、光栄に思うがいい」
前線で盾となる妙見子を支えるべくメイメイがタクトを振り下ろす。僅かな緊張、そして確かな願いのように冬の気配を遠ざけた春の護り。
「こうして、共に戦の場に出るのは久方ぶり、です、ね」
遠い昔のようだ、と告げるメイメイは怖いと思う事が無い己が少しばかり可笑しく感じられた。力が湧いてくる、戦う事を恐れてばかりの自分ではない。
「今、『我が国』からの援軍も此方に向かっている。屹度、あの方もいらっしゃることだろう。
ならば、メイメイ殿。四神の――瑞神『以外』の力を借り受けることが出来よう。あの方の御前にこの様な煩雑とした戦場は相応しくはない」
その眸が告げて居る。彼は己の主君がこの戦場に向かい、四神と共に打開する路を開かんと画策するであろうと信じているのだと。
「は、はい……! ならば、『霞帝』様の為に、露払いを、致しましょう」
「エッ」
どきり、と胸を高鳴らせた妙見子は「ええい、構って等居られませんね!」と叫んだ。
霞帝と聞いたか。四神と聞いたか。瑞神と聞いたか。祖国の主上(おかみ)が遣ってくるのだそうだ。『花嫁キャノン』澄恋(p3p009412)は「あら」とぱちくりと瞬いた。
か弱い乙女は『神使』と呼ばれる存在だ。祖国より因縁を抱いてきたあの男の炎は凡兵のものより苛烈であった。
それを思えば――
(この様な異郷であれど、豊穣郷は傍らにあるような気がしてなりませんね)
それが良いのか悪いのかは分からないが、あの国にある穏やかな冬が此処で感じられないならば燃やせば全てが解決なのだ。
「まあ、ストリガーと仰いますか。わたしも鬼血の爪で前衛を担うことが多くてお揃いですね。
か弱い乙女として脳筋揃いの鉄帝の皆様から戦の心得を知りたいと思っていたところです――神使への立ち居振る舞い、お手並み拝見といきましょう!」
全然か弱く無さそうな余裕を滲ませた澄恋がころころと笑う。雪と一緒に溶けてしまえ、その命。
溶けてしまうならば氷の狼も同じであれば良いと『氷狼の封印を求めし者』恋屍・愛無(p3p007296)は考えて居た
「伝承には何かしらの真実が含まれる物だが。狼の再封印か。
……単に使命感だのと言うよりは愛情と理解。其方のが鍵にはなりそうかとも思うが。僕には何方も縁が無いな。フローズヴィトニル。その存在に興味はある」
ぱちくりと瞬いた。どうにも思い人は民俗学がお好みだ。ならば、神話も好きそうだろうか。神話が好きなら『話題』が出来た。
(いや、しかし。僕は氷狼が少し羨ましい。かの狼には愛し寄り添ってくれる理解者がいたと言うことなのだから。
……感傷だな。何はともあれ土産話の一つも出来るだろう。話せば笑って呉れるだろう水夜子君のことだけ考えておけばいいだろうか)
ぼんやりとそんなことを考えながらも、氷狼とか何処に居るのかと目を凝らす。門番を越え、内部に入れば冷気を辿りフローズヴィトニルの場所に辿り着くことは出来るだろうか。
何にせよ、狼に心があると云うならば、それにも触れることも出来ようか。
分霊達を退け喰らう愛無は吹く凍て付く風を受けても尚、その足を止めることは無かった。
成否
成功
状態異常
第1章 第4節
「成程。急ぐ必要があると。
――であれば未熟な身なれども、一太刀浴びせる程度には働こう」
為せることを為すだけだと『亜竜祓い』レオナ(p3p010430)は『岩貫』の名を有する剣を握りしめた。それは長く、鈍く、軽いものである。
敵を一撃で屠るためでは亡く、確実に数を重ねるが為に特化する武器。宛ら、涓滴岩を穿つかの如く。
己で凌ぎきってからこそだとレオナは前線へと飛び込んだ。赤、そして、逃げ決めの黒が破滅の気配を宿す。風の如く、駆けるレオナの横面を狙わんとする兵士に向けて飛び込んだのは漆黒の気配を有する泥。
「かなしいのは、いやです」
アメトリンが飾られた短杖に魔力を宿した『陽だまりに佇んで』ニル(p3p009185)はコアとの間に循環する魔力の気配を感じ取る。肩の上ではココアがにゃあと鳴いた。
幾つもの出会いと別れがあると識っている。それでも、余りにも理不尽なる別れはニルには受け入れがたかった。
「こころがぎゅうってなります。いやだから……かなしいのを、なくしたい。ニルは、ここを通らなきゃ、いけないのです」
進むべき場所が決まっているからこそ。ニルはすう、と息を吸い込んだ。黄金色の煌めいたコアの魔力が杖へと集まっていく――襲い来るアンデッドモンスターに向けて放たれたのは零距離での超火力射撃。
「かなしいはなくすことができるから」
「そうだね。その為にボクが来た!」
地を蹴った。『セラフィム』のカードを掲げれば、それは『魔法騎士』セララ(p3p000273)の身体を包み込んでいく。
魔法少女の外套は真白に転じ、鮮やかな燐光が周囲へと舞い散った。
「輝く魔法とみんなの笑顔! 魔法騎士セララ、参上!
鉄帝を極寒の地になんてさせないよ。 フローズヴィトニルを阻止して冬を終わらせるんだから!」
全力全『壊』。魔力をその剣に乗せ、セララが放つはギガセララブレイク。
インストールされた雷が剣戟に纏い、真白き燐光と共にモンスターを穿つ。奥から顔を覗かせたのは魔種か。
「見付けた!」
だが、乱花や魅咲は「弾幕薄いぞ-」「ほら、来ちゃうぞ」とアラクランの兵士を囃し立てるばかりだ。
「やっぱり、最初に食い止める為に人員を増やしたの? 『残弾』が減ってしまうけれど」
揶揄うような声音で囁きながらも『剣の麗姫』アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)は更なる『残弾』を減らすべく敵の視線を奪う。
「さあ、来なさい。あなた達の怒りくらい、全ていなしてあげる」
天義貴族ミルフィーユの娘たるアンナはフローズヴィトニルを見過ごすことは出来なかった。不滅の布がシュルリと揺れる、ひらり、くるり、魔性の舞と共に『剣の麗姫』が舞い踊る。
「常冬なんて冗談ではないわね。
神託の破滅を待つまでもなく、周辺国含めて滅んでしまいそう。悪いけどずっと封印されていてもらいましょう」
「実質滅んでるみたいなもんだしなー。面白い!」
乱花がアンナに対して手を叩いて話しかけてくる。どうにも余裕綽々だが、それもいつまで続くことだろうか。
露払い役を城の中から出せば出すほどに相手は先細るだろう。しかし、彼等がそうする理由もアンナとセララには良く分かる。
『フローズヴィトニルの顕現』までの時間稼ぎだ。最初に出来る限りの駒を駆使し、押し止めることだけが彼等の目的なのだろう。
「使い捨ての駒とは酷い扱いだ。ああ……やはり見たことのある顔もいるな。久しぶりだな。また会えて嬉しいよ」
「ルブラットか」
アラクランの兵士へとフランクに声を掛けた『革命の医師』ルブラット・メルクライン(p3p009557)は眼前に立っていた男――『革命派』ではブリギットと共に活動して居た『ルース』へと手を振った。
「革命派を出るときに挨拶でもしてくれれば、お別れ会を開いてあげたのに……まあいい。野蛮な真似は控え、大人しく道を開けたまえ」
「申し訳ないが、お前達が為すことがあるように我々にも見たい物があるのでな」
「ルース、君が見たいものは?」
「伝承の獣の存在そのもの」
フローズヴィトニルが顕現したその瞬間を眼に焼き付けたいと願ったアラクランの兵士はこの国などどうでも良いのだと告げた。
ルースという青年の身の上話に耳を傾けながらもルブラットはモンスター達を去なす。天衝種の指示役をアラクランの兵士は担っているのだろう。
彼の故郷は南部に存在し、常に戦乱に見舞われていたらしい。しかし、力の亡かった彼は家族を失い、国土の拡大に『目の眩んだ』国を恨んでいたらしい。
「その主張は分かるが、この様なことをしていい理由にはならないさ」
ルブラットは静かに囁いてからミゼリコルディアの慈悲を光らせた。夜の帳が下りれば、その慈悲とて意味を変えて仕舞うだろうか。
セララが天衝種諸共、氷狼たちを打ち払う。頬を掠めた氷の刃が僅かな傷を作った。
「ところで、フローズヴィトニルってそこにいるだけで極寒の環境にしちゃうのかな? それを理解して自分から眠ってる……とか?」
「さあ、どうだろうな。……ただ、唯一分かるのは『だからこそエリスがいる』事かも知れない」
セララの問い掛けに『氷狼の封印を求めし者』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)は答えながらも傍らの精霊女王を見た。
何故か、堂々たる出陣を行なった『冬の王』オリオンと口論を繰り広げていたエリスだが今は不安そうな表情をしている。
「父狼のその心が、わたしそのものなのです。セララちゃん。
だからこそ……わたしが『封印を出来る』力を持っているのです」
「うん。でも、エリスが悲しい目に遭うのは嫌だよ。……その為にも、ボク達が未来を切り拓く!」
幼い少女が走り行く事を見過ごせなかったのだとゼラー・ゼウスは『腰が痛そう』な仕草を見せながらやって来た。
「ゼラーさん!?」
憧れの存在なのだというように『オフィーリアの祝福』イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)はゼラーを見遣る。
「ゼラーさんとの約束のためにも、此処が踏ん張りどころだよね!
それに、こんな時だけど、憧れの闘士さんと共闘できるなんて夢みたいだ。
……ゼラーさん、見ててね。ラド・バウで沢山の命を守り続けてきた貴方に誇れるよう、俺も、守るために戦い切ってみせるから!」
「若者にばかり任せていられんよ」
ゼラーと共に共闘する。それだけでイーハトーヴの心は躍った。うさぎさんの髪飾りを御守に握りしめたイーハトーヴはオフィーリアの『おまじない』を胸にやって来た。
「がんばって」だなんて、おしゃまさんが可愛く告げるのだから、彼女に勝利を捧げるべきだ。
糸を手繰り寄せ、周辺に展開していくイーハトーヴに続き、ゼラーが鋭く拳を打ち出した。
老体だと叫ぶゼラーの上空より降りて来たのはクラウストラ――深淵の気配である。
「さて、仕事をしようかな。キミ達をもてなす方法は幾つでも用意してるよ。障害は排除するまで、いつも通りにね」
「ルーキスちゃん、門番さん達を引きずり出さなくてはなりませんね」
「ああ、そうだね、エリスちゃん。張り切ってるみたいで何よりだ」
一緒に頑張ろうねと笑ったルーキスは折角の縁だと精霊女王の期待に応えるようにストリガー達を打ち払う。
エリスにばかり無理をさせれば精霊達に恨まれそうだとルーキスが笑う。
「さあまずは、フローズヴィトニルを拝みにいこうか」
「ええ、その為に共に参りましょう」
同じ名を有する娘――『呪い師』エリス(p3p007830)はエリスの護衛役に当たっていた。呪力を障壁に変えた力。『呪い師』が身に宿すのは大樹ファルカウの祝福である。
「こっちにもエリスがいますよ!」
ドージェだけではない。エリス・マスカレイドを要として狙う者は数多く居るだろう。
ならば、其れ等全てをエリスは打ち払うと決めて居た。仲間達を支えるべく吹き荒れるのは万物を抱擁する慈愛の息吹。
周囲に存在する魔素を陽だまりの如く己の身に受け入れて、エリスは氷の精霊女王を護るべく堂々と立ちはだかった。
気配がする。それは火事場泥棒のようにやってくる『脱獄王』のものだ。
成否
成功
状態異常
第1章 第5節
めざとく気配を察知したのは『Stargazer』ファニー(p3p010255)であった。一度近付いた気配が遠離る。
ファニーが察知した刹那に、直ぐ様に『ライカンスロープ』ミザリィ・メルヒェン(p3p010073)が合図を送りイレギュラーズが迎撃態勢を整えたことに気付いたのだろう。
「くれぐれも挟み撃ちなんざされたくねぇからな」
ドージェの情報を共有するファニーに『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)が「ありがとう!」と明るく礼を告げた。焔はエルスの傍で、防備を固めている――それから、少し怒っていた。
「ラド・バウを襲撃してきた時も、今回も! どうしてボクの大切なお友達のことをこんなに狙うの!
大丈夫だよエリスちゃん! ボクが絶対に守るから! 元々あの人にはパルスちゃんを狙った分のお仕置きをしなくちゃいけなかったしね」
パルス・パッションを狙い、そして次にはエルスの髪をも切り取った。勿論、珍しいパーツや強者の身体を『トロフィー』にして居る相手だからと言うのも分かるが納得できるもんどえはない。
「エリスちゃん、皆で護るからね!」
「ありがとうございます、焔ちゃん」
「エリス様ー……」
エリスの『御髪』に何てことを、と憤っていた『ウォーシャーク』リック・ウィッド(p3p007033)はエリスの決意を感じ取って悲しげに肩を落とす。
(……最後まで希望は捨てないし、たとえどうにもならなくてもエリス様の意志を尊重する! ちくしょう!)
彼女がいなくなれば銀の森の氷も溶けてしまうだろうか。いや、優しいエリスだ。その役割をオリオンにでも譲るのだろうか。
そんなことを考えながらもリックはエリスの側から離れ、進軍するファニー達を支えるべくリソースの供給役を担う。
戦っている仲間達の負担を出来る限り減らすが為に『脱獄王』ドージェには注意を払い続ける事に決めて居た。
「ちくしょう! どこから来やがる!」
「来るぜ」
ファニーが囁いた。ミザリィがファニーを支えるべくリソースを供給し、自身に近付いてくる相手に気付いてはエプロンドレスをひらりと揺らし避ける。
ミザリィは誰が相手でも攻撃はしないと決めて居た。少しばかりのおいたに手を叩くように弾くことはあれども、癒やし手の矜持として人を傷付けることは厭うていた。
その代りに最大限の回復の支援を行なうのだ。
ミザリィの支援を受けるファニーはグローブの下に存在する硬質なる気配を感じ取りながら、号令(タイトルコール)の如く、進軍し続ける。
「回復支援は任せたぜ、bruh.」
「当然。死なれては困りますから」
――さあ、道を空けよ。『愚者』の行進だ。
敵は無数に。数ある限りは襲いかかってくるのだろう。『外』で時間を稼がれるならば『社長!』キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)とて考えがある。
「海洋、豊穣……連合艦隊か。あそこには弊社のスタッフも乗っからせて貰ってる。そんなら援護に来る前に場を整えてやろうじゃあねェかよ!」
この戦争はルンペルシュティルツにとっての分水嶺だ。社長のキドー、そして連合艦隊に乗っかっているスタッフ達。
上手いこと貢献できりゃあ鉄帝、海洋、豊穣に纏めてデカく名が売れるのだ。
「弊社は『優良一般企業』! その評判が俺は兎も角スタッフの過去の悪行の上に被せられる程度になりゃあ、仕事も顧客も幅が拡がって俺が儲かる!
なんたって企業だぜ。建前でもカタギだ。実際は賊あがりの集まりでも、モノを言うのは世間『一般』の評判さ!」
「分かる分かる。俺ちゃんも、たださぁ、狩りの序でにトロフィーを貰ってただけだったんだぜ?」
「オワッ!?」
傍らにひょっこりと顔を出したドージェにキドーはククリを振り上げた。がちん、と固い音をさせドージェは手にしていた鎖を振り回す。
「あ、コレ拾ったんだよね。アラクランの兵士倒してただろ? その置き土産」
「敵も味方も関係なしかよ……!」
誰ぞの腕に巻き付いていた鎖を、そして人の身体のパーツさえも武器であると云いたげなドージェの襲来に、放たれたのは鋭き弾丸。
『天穿つ』ラダ・ジグリ(p3p000271)は空より飛翔してやってくるヘァズ・フィランを熱砂の如き制圧力で迎撃していたが、ドージェの襲来に直ぐさまKRONOS-Iの照準を変えたのだ。
「またずいぶん立派な城な城を作ったものだ。帝都と現皇帝への対抗意識がよく表れているんじゃないか?」
「分かる分かる。ギュルヴィってそういう所あるよね、カタチからっていうかさ」
からからと笑ったドージェの緊張感のなさにラダは妙な表情を浮かべた。一つ残らず鴉を撃ち落としていたラダにドージェは友人のように話しかけてくるのだ。
「初手でエリスに手をかけられたのにしなかったのは、余裕の表れか遊びかは分からないがいずれにせよ勝負をかけなかったことには感謝しておくよ」
「エリスちゃんを囮(ダシ)にすりゃ、俺ちゃんに構ってくれる奴が居ると思ってさ」
にんまりと笑うドージェに「だからってエリスちゃんの髪を切り取ったらダメだよ!」と焔がびしりと指差した。
カグツチに纏う炎が焔の怒りと共に滾る。圧倒的な速力と共にドージェを狙う焔の肩を、男はぽん、と叩いて跳ねた。
「この耳とかいいね」
焔の耳を摘まみ上げたドージェは「おっとー」と軽い語調で『時には花を』フラーゴラ・トラモント(p3p008825)の放った泥を避けた。
出口の見えない迷路。その岐路に立った娘は焔の耳から手を離したドージェの腕を目掛けて魔弾が放たれた。
「あっ! もう! ドージェさんエリスさんと焔さんに触らないで……! 乙女の髪や耳は親しい人にしか触らせないんだよ……!」
袖を掠めたそれ。次は必ず当てるとフラーゴラはミラクルキャンディをぺろりと舐める。
「でも、精霊女王は命懸けなんだろ? なら、記念に髪でも眼でも、腕でもくれても良くないか?」
そんなドージェの言葉に焔はエリスを振り向いた。彼女は、フローズヴィトニルの際封印をすると告げて居たか。
(要石を壊すって言ってたけど、エリスちゃんはその後どうするつもりなんだろう……さっきは命に代えたってなんて言ってたけど、大丈夫だよね……?
ドージェはボク達を不安にさせようとしているだけ……でも確かにエリスちゃんなら、自分を要石にして再封印もできるかもしれない。
……けど! ボクが、ボク達がそんなことにはさせない! 絶対に皆でちゃんと帰るんだ!
その為にもまず、エリスちゃんを守ってフローズヴィトニルのところまで行かないと!)
焔の決意も、フラーゴラが相手に定めたこともドージェにとっては『楽しい遊び』なのだろうか。
「ドージェさん……! だめだよ……!」
逃がさないと告げるフラーゴラに「熱烈ゥ」と男は囃し立てた。
「相変わらずだな」
余裕そうで腹が立つ。そうとは口に為ず『導きの戦乙女』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)は風の気配を纏った長剣を鋭く振り下ろした。
ドージェの頬にまずは一閃。前髪がふわりと揺れて黄金が覗く。
「あ、ブレンダちゃん」
「お探しのモノはこれだろう?」
ブレンダの『統率の黄金瞳』。それは彼女が許の世界で得ていた黄金色の魔導式。厄災をも齎すとされた人智及ばぬそれは混沌では輝きの違う眸として『受け入れ』られている。
だが、その瞳の気配をドージェはえらく気に入っていたのだ。前髪を上げ、眸を露わにしたブレンダの唇が吊り上がる。
「さぁ、思う存分一緒に踊ろうじゃないか。私ならいくらでも付き合うぞ?」
「じゃあ逃げも隠れもせずに本気出しちゃおうかな?」
男は石を拾い上げ、勢い良くブレンダへと投げる。弾いた片手刃。だが、続けざまにドージェが至近距離へと迫る。
黄金の瞳を狙う刃を辛々、受け止めてブレンダの唇がつい、と吊り上がった。
――ここに留まってくれるならば思う存分に戦おう。警戒を為ずに仲間が進めるのならばそれだけで儲けものだ。
成否
成功
第1章 第6節
乱戦状態に持ち込んだ意図は容易に推測出来る。
これが時間稼ぎであると云う意図も、此処で出来る限りイレギュラーズを食い止め『フローズヴィトニル』の覚醒を終えようとしている事も。
だ、と言うならば時間を掛けてはならないのだ。それこそが単純明快な勝ち筋の示し方である。『泥人形』マッダラー=マッド=マッダラー(p3p008376)は臆することなく防御を捨てて前進した。
耳を欹て、道を探す。出来る限り、敵対する者が少ない空間を進むのだ。各地でイレギュラーズが押し止めてくれている以上、僅かな隙まであれど抜け道を見つけ出すことは出来る。
「足を止めるな!! 前線を上げろ!! これが未来を刻む一歩だ!!! 終わらぬ冬を超え、春の足音をこの地に響かせろ!!!」
「おう!」
声を上げた『よをつむぐもの』新道 風牙(p3p005012)の両の眼は『門番』を気取っていた魔種にばかり向けられていた。
吼え、高い再生能力を駆使して進むマッダラーは己は泥人形だと胸を張る。有象無象に足を挫かれようとも何度も立ち上がり、その道を開くことだろう。
「進め、進め!」
マッダラーは自我を模索し、前人未踏の領域に至るが為に走る。
モンスター達を滅亡に誘うための術式を放ったマッダラーの傍を風のように走り抜けた風牙が「ハリエットさん!」と少女の名を呼んだ。
「そっちは任せた!
「任せて」
淡々と『暖かな記憶』ハリエット(p3p009025)は返す。
「私も新道さんも、やらなきゃいけないことがあるんだ」
ハリエットが姿勢を屈め、狙撃銃を構えた。後悔ばかりが胸を締め付ける。あの時、要石を破壊できていれば――何度も、何度も考えたものだ。
それでも、起きた事を変える事は出来ないのだ。出来るのはそれを乗り越えて未来をより良い者に誘うだけだ。
「邪魔をするな魔種ども! お前らと遊んでる暇は無ぇんだ! こちとらやらなきゃいけないことがいっぱいで忙しいんだよ!」
乱花も魅咲も、その顔と名前はよく覚えている。絶対に呼んでやるものか。彼等が此処で『遊び半分』で戦っているのだとしても、風牙は遊んで等やらない。
児戯に甘んじるならば、それを後悔させるだけだ。そんなやつらを『魔種』と呼ばずに何と呼ぶか。
「そもそも、ここに居続けたらてめえらも巻き込まれて死ぬんだぞ! わかってんのか!」
「風牙ちゃん。満足できたら死んでも良いんだけどさ。満足させてくれる?」
揶揄うような声音で乱花の剣がブレた。飛び込んだ風牙の槍が乱花のものとぶつかる。鈍い音だ。乱花の脚が僅かに縺れたことを見逃すまい。
「ッ、お前の言う満足なんて分かるかよ!」
「乱――」
姿勢を崩した乱花を支援しようとした魅咲の頬を掠めたのはハリエットの弾丸。
「貴方の相手は私だよ。……貴方達の『飼い主』はここにはいないんだね」
「生憎、『飼い主』は上司のおもりに忙しいらしくって。遊んで満足して終っても、逃げ帰っても良いってさ」
逃がしてくれるのかと問うた魅咲へは答えずにハリエットは鋭い一撃を放った。逃すまいと見据えた瞳、決意の表れと共にそれが魅咲の掌にすぅ、と吸い込まれたようにも見える。
「相変わらずの戦い方ね。一度会ったけれど、覚えて居るかしら?
私の名はヴァイスドラッヘ! 只今参上! 氷狼を止めに来たわ!」
それはドラゴンの翼をも思わせた白い大盾。『ヴァイスドラッヘ』レイリー=シュタイン(p3p007270)は真っ直ぐに乱花と魅咲を見詰めている。
「知ってる、レイリーちゃん」
「知ってる知ってる。アイドルでしょ」
指差す二人は双子のように息がぴったりと合っている。小さな咳払いをしたレイリーは足元で姿を現したフローズヴィトニルに「よろしくね」と囁いた。
狼には無理をしないで居て欲しいが、何処まで体力が持つのかは分からない。
「……何があるかは分からないから、頼りにさせてね」
わん、と小さく鳴いたそれが周辺の氷狼と大きく違うのはエリスの『制御』によるものなのだろうか。
「あの時から、一度思いっきり手合わせしてみたかったの。どう、一緒に踊らない?」
「熱烈だよね」
乱花の間合いへと飛び込んだレイリーの白いランスが変幻する刃にぶつかった。その刹那に乱花の太刀筋が僅かに見える。
その一撃は重くはない。だが、多段に重ねる鋭い攻撃こそが持ち味なのだと感じさせて。
「あらあら、こんな攻撃で私を殺せると思ってるの? 女一人殺せない、弱い剣なのね」
レイリーは敢て揶揄うように告げた。乱花が少しばかり苛立ったことが良く分かる。かちん、とした魔種に「怒ってる」と指差したのはぼんやりとしていたウォロク・ウォンバット(p3n000125)であった。
「ウォロクさん、マイケルくん。かけられる時間は多くはありません。速やかにフローズヴィトニルに辿り着かねば!」
「うん、任せて……トールは、ともだちだから」
協力するとマイケルも言っているとウォロクは周囲に魔力を纏う。『女装バレは死活問題』トール=アシェンプテル(p3p010816)は満面の笑みを浮かべた。
普段は駆使するポーカーフェイス。それを捨て去れば、少年のような表情を曝け出すトールが底には立っている。
強敵かつ時間の余裕のなさに余裕を失う人間。それを演技し、乱花や魅咲の注意を引くことこそがトールの狙いだ。
トールの有する防御力全てを力に変えて、乱花の元へと飛び込む。長い髪を揺らがせて、炎の欠片を胸に勇気と責務を遂行する少年は魅咲の刃を寸での所で受け止めた。
「乱花さん、知ってますか?」
「……何を?」
「――ウォンバットのお尻ってビックリするほど硬いんですよ」
冷静に微笑んだトールが身を捻る。勢い良く飛び込んできたのはマイケルの尻。
「ギエエエエエエエエエ!」
鋭い鳴き声に思わずぎょっとした乱花がマイケルを受け止め「くそ」と呻いた。トールやレイリー、風牙に夢中になっていたからこその盲点だ。
トールは事前にマイケルに「合図をしたら飛び込んで」と指示していたのだ。それなりに大きなウォンバットのヒップアタックを避けた乱花の視界に次に飛び込んだのは神々廻剱の『映し』である。
「さて……魅咲殿に乱花殿と言ったっけ。
門番である以上はキミ達を何とかしないと城の入り口の安全は確保出来ないということだね。ここは俺達の退路にもなる場所だ、安全確保は必須だ」
切り刻むように幾度も刀を振り上げる『桜舞の暉剣』ヴェルグリーズ(p3p008566)の眸がぎらり、と輝いた。乱花がマイケルを避けた途端に魅咲の支援攻撃が飛んできた時点で、二人のコンビネーションが優れていることは良く分かる。
だが、だからといって何を臆する必要があるか。ヴェルグリーズの周辺には無数の仲間達が存在し、勝利を掴む為に誰もが立ち向かっているのだ。
「何せ、俺達は一人二人程度ではないからね。『魔種二人』で止められるかな?」
「いざとなればトンズラさせてもらおうかな」
けらけらと笑った乱花の髪を切り裂くのは鋭き鎖鎌であった。エリス・マスカレイドに出陣を告げた『夜砕き』如月=紅牙=咲耶(p3p006128)は前線へとやってきたのだ。
「――女王の覚悟はしかと受け取りもうした。ならば拙者達もその覚悟に応えよう。紅牙・斬九郎、推して参る」
エリスとは日が浅い。だが、友が彼女を大切な人だという。友が彼女の命を心配しているというならばそれ以上の理由は必要あるまい。
咲耶が覗いた『バルナバス』の権能。それをこの地の悪しき狼が狙っているならば食い止めなくてはならぬという危機感は厭と言うほどにある。
「直ぐに引く、か。お主には全く罪の意識というものがござらぬな。『人を斬る』覚悟の無き剣如き何するものぞ。この程度のそよ風で拙者を落とせると思うなよ!」
「罪の意識なんて持ったって仕方が無いんだ。『斬九郎』ちゃん。知ってる?」
乱花は笑った。
「世の中って――儘ならないんだよ」
人間である以上、失う者は多い。乱花も魅咲も過去を語りたがらぬが、何かを喪ってきたのだろうか。
それを理解することは出来ず、そして、この場で留められていれば時間がただ、過ぎ去るのみ。『玉響』レイン・レイン(p3p010586)は感傷を捨て去るように白い日傘を開いた。
「フローズヴィトニルの姿……不謹慎だけど……全体像を見てみたい気持ちもある……
伝説の生き物……だし……不謹慎、だけど……今度は永遠に生まれてこない様にするなら……いいかな……?」
ぱちくりと瞬いたレインは二人の元に向かう仲間達の支援を行なっていた。戦える人が長く戦場に残り続けることは一番だ。
斯うした乱戦状態である以上は回復手は得難いものである。サポートを行ないながら、フローズヴィトニルの事を一人、静かに思った。
その獣はまだ『首』だけであるらしい。だが、『もう』と言うべきだろうか。少なくともこの城は『氷の狼』が顕現したことで作られたものなのだろうから。
成否
成功
状態異常
第1章 第7節
「いよいよフギンとの決戦、か。やっとだ、やっと。オレはこの時を待ってたんだ。
だがその前に、道を塞ぐ氷狼の欠片と門番達をどうにかしなければ……待ってろクソ鴉、直にそっちに行ってぶっ飛ばす」
呟く『紫閃一刃』紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)の表情は暗いものが宿されていた。その意味も単純だ――愛しい人が居る。その人の半身のようなものが犠牲になった事件がある。
「いやあ、紫電ちゃん」
するり、と刀を引き抜いた『音呂木の巫女見習い』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)の紅色の眸が怪しい色を灯した。
「行こうぜ? 脱獄王とかはみんなに任せるよ。なーに、キミたちにケリをつけてもらうと私ちゃんも助かるのだっ。
狙うはホームランだからねっ……騎兵隊も頼りにしているから、頼むぜ、大将!」
ひらひらと後方へと手を振った秋奈の狙いはギュルヴィ――いや、フギン=ムニンだ。手土産にフローヴィトニルというのはどうだろうか。
『あの時』の『あの娘』が属した新生砂蠍の面々ではないが、同じように彼が連れる兵士だ。あの日の再会のように秋奈は受け止めてから悪戯に笑った。
「みんな集まっちゃって、もしかしてここはフェス会場か?
こんなに歓迎を受けちゃったら……私だって、応えてあげなくちゃってね!」
軽口を弾ませる秋奈とは対照的に寡黙に唇を引き結びブレーグメイデンを切り裂く紫電。
一方はその明るさを武器に戦い、もう一方は決意のように刃を振るう。対照的で有ながら同じ目的のために突き進む者達だ。
「それぞれの戦力でまとまってそうだし、アラクラン兵士率が濃いとこ進んでいこうね。
待っててね! 待っててね! 待っててね! 待っててね! 待っててね! 待っててね!」
うきうきとした足取りの二人を眺めてから『竜は視た』ヴィルメイズ・サズ・ブロート(p3p010531)は「コレは恐ろしすぎでは?」と叫んだ。
「あっ月原様! アドラステイア以来でございますねぇ。おや、この美しい顔を忘れたとは言わせませんよ~~~。
危険な狼的サムシングを目覚めないように阻止するのですね?私は美しいだけでなく理解力が高いのですよ
おお、月原様……どうしてそんな冷たい目でこちらを……?」
「美しすぎて目眩がしただけだよ、ヴィルさん」
軽く返した『壱閃』月原・亮 (p3n000006)はヴィルメイズと友に氷狼の欠片と相対することに決めて居た。ヴィルメイズが後方からの射撃で狙うならば亮はヴィルメイズに向かってくる者を斬り伏せるのみだ。
「危険な狼的サムシングは今どの様な状況なのでしょうね?」
「首だけ顕現してるらしいぜ」
「生首……」
思わず想像してしまったヴィルメイズの傍をぐんぐんと進み、周辺に乱射を放つヘイトクルーを受け止めた『怪人暗黒騎士』耀 英司(p3p009524)があっけらかんと笑う。
「へぇ、月と太陽を喰らう狼ねぇ。
日本での相棒を思い出すな。ピンとした耳、凛々しい鼻……。くーっ、無性にモフりたくなってきたぜぇ! そうとキマりゃぁ、お邪魔虫にはご退場願わねぇとな?」
「相棒かっこよすぎじゃね?」
「分かります、分かります」
亮とヴィルメイズに頷かれた英司が「有り難うよ」と返し「カワイコちゃん」へと挨拶を行う。暗黒のエネルギーと雷に変身したお約束の瞬間。
やんややんやと盛り上げる二人の声を聞きながら英司は生命力を駆使し、一撃を投じ続ける。
「さあ、寝かしつけてやるよ!」
――ふあっくしゅん。後方から聞こえた嚔は『亜竜姫』珱・琉珂 (p3n000246)のものであった。
「おいおい、琉珂、カイロは持ったか? 凍傷は防げても寒さは防げねえから厚着しとけよ」
「ルカさんから貰ったから大丈――ブエッ……」
嚔を繰返す琉珂に『竜撃』ルカ・ガンビーノ(p3p007268)が肩を竦めた。動いているウチに熱くもなるだろうが彼女も年頃の娘だ。身体を冷やすのは良くないだろう。
「じゃあちょっと遊んでやるとするか。付き合えよ琉珂」
「ええ、勿論!」
にんまり笑顔の琉珂の頬をつんと突いた『宝食姫』ユウェル・ベルク(p3p010361)は「さとちょー、カイロ持ってるの?」と声を掛ける。
「リュカ! 狡い!」
「う~~、寒い寒い! さとちょー、いいな~」
「私のだもん!」
『秦の倉庫守』秦・鈴花(p3p010358)とユウェルに何時も通りの様子でやりとりをする琉珂へルカは小さく笑った。
戦場で普段の己を失わぬと言うこともまた立派な才能だ。特にこの場所は乱戦状態で四方八方に敵が居る。
「鈴花とユウェルも一緒だなんて心強いわ!」
「なんか、鉄帝、とっても大変みたいだし、わたしたちはわたしたちでもっと強くならなくちゃいけないし。
覇竜に何かあった時に、ベルゼーとまた会った時になんとかできるように!
だからここは一石にちょー! 修行も兼ねてお手伝いしに来ました!」
「春はあれでしょ、桜のくれーぷ、とかいちごのすふれ、の季節なんでしょ!?
いつまでも縮こまってられないし、動いたほうが暖かいのもあるしーーそうよねぇ、あのオジサマをぶん殴るためにももっと強くならないと!」
狙うはバルナバスではない。その先を見据える鈴花とユウェルに琉珂は「その通りよね!」とルカへと振り向く。
「お願いします師匠!」
「し、師匠かは分からないが……ちょっと遊んでやるとするか。付き合えよ琉珂」
ルカがアラクランの兵士に向けてずんずんと進み行く。琉珂に魔種と相対させた理由も、ベルゼーと向き合ったときのためだ。
呼び声には慣れておいた方が良い。琉珂はベルゼーと近すぎる。彼が彼女に危害を加えるとは思わないが、もしもの為にも予行練習は必要だ。
「攻めて攻めて攻めまくる! 砕かれたい子からどんどん来い!」
「そうよ、ボロボロの粉々になりたい奴から来なさい! 全員! 散りなさーい!」
前を走る亜竜三人娘と引率のルカ。彼女達が払除けるのは冬なのだという。『雲雀』サンティール・リアン(p3p000050)はすう、と息を吸い込んだ。
――絶対的な冬。それは、いのちのおわりそのもののようだった。
「冬は、痛くて、寒くて、怖くて。僕に出来ることはちっぽけかもしれないけれど……ううん、ちがう!
この鋒が皆の翼となろう。この一歩が皆の道になるんだ。
リカちゃん、頼りにしてるよ……僕のぜんぶ、きみに預ける!」
「ええ、……ふふ、まあ、そうだというなら。
はてさて、この戦場に私は不要と思いましたが…砂蠍、懐かしい名前を聞いたものです。
妙に懐かしい顔に懐かれてしまったものですし…その面拝むぐらいはしたいものですね?」
蠱惑的な笑みを浮かべた『雨宿りの雨宮利香』リカ・サキュバス(p3p001254)にサンティールは小さく頷いた。
彼女の命を預けられ卯というならばリカは答えるだけだ。魅惑の光を湛えた宝玉がきらりと輝いた。蛇の眸が彼岸花の紅色を宿す。
リカに合せて戦うのだとサンティールはひらりと空の欠片をレイピアへと変えた。魔法は身を守るもの。咲き誇る春の気配は奇襲攻撃を放つ。
身を翻したサンティールと友に手繰り寄せるリカは魔力の気配を身に纏い唇を吊り上げた。
「さあ、コッチへ――」
成否
成功
状態異常
第1章 第8節
「やれやれ、これまた大層なお迎えだ事で
知らん顔ばっかだが……その方がこっちは暴れられて気分がいいがな!
ま、知った顔が居たところで敵なら殴り飛ばすだけだが」
笑みを浮かべた『一ノ太刀』エレンシア=ウォルハリア=レスティーユ(p3p004881)は大太刀を引き抜いた。
黒き翼で宙を駆ける。スカートが大きく揺らぎ、引き抜いた大太刀を鋭く振り下ろしたのはアンデッドモンスター。
「我は『騎兵隊の一ノ太刀』! 先駆けるもの! へし折れるもんならやってみやがれ!」
堂々と名乗り上げたエレンシアの声。掲げられたのは道標、旗印。腰に下げたバスターソードは戦旗として騎戦の象徴となる。
「開門の鐘を鳴らしに行くわよ! 突撃準備!」
騎兵隊の出陣である。『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)がその身に纏ったのは『精霊ニエンテ』の加護。心優しき精霊の防御の力である。
イーリンが掲げた必須目標こそが全員生存。そして、エリス・マスカレイドの保護である。手渡されたファミリアーはエリスとの連絡用に置いていった。
指揮に徹するイーリンの傍らからずんずんと進むのは『闇之雲』武器商人(p3p001107)。吊り上がった唇に、楽しげな笑みは甘く破滅へ誘うよう――その眸がさらりと長い前髪から覗く。
「いやぁ、門番から魔種とは豪華なものだね。
だが悪しき狼なんて爆弾もあるし、手早く進撃を狙うとしようか!」
武器商人は堂々と進む。向かう先には魔種――だが、その先を遮るように無数にモンスターが放たれるのは『時間稼ぎ』だ。
この場でイレギュラーズを足止めしフローズヴィトニルの顕現を行う為。ならば、先に進めば戦力は先細っていくのだろうが、それを埋めるのがフローズヴィトニルの顕現というワケか。
「いやはや、相手も策に出ているのだろうけれどね、それを乗り越えて行くのも面白くはないかい?」
「えひひ……門周りの敵に当たっていくところからですね。わっかりました! とりあえず馬の骨さん(イーリン)についていく感じで突撃します!」
何時ものような気弱な笑みにも決心が乗る。『こそどろ』エマ(p3p000257)は駆け足でイーリンへとついて行く。
三次元的な空間機動はエマにとってのお得意の技でアル。小回りを生かし、味方の援護に回る――それこそがエマの得意とする戦法だ。
陰日向に存在する者の強さを味わう事、それこそがチームの戦法と呼ぶべきだろう。
武器商人が集めたモンスターへと影より一撃を投ず。いつの間にか突き刺さった刃はするりと引き抜かれ傷口だけを残すのだ。
「ガッハッハッハッハ!攻城戦は戦争の醍醐味ってな!
一切の後退もズレもなく進むぞ。何がどうとかはさておいてまず突き進むための道を、乗り込むための櫓をだ」
ずんずんと進む『蛇喰らい』バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)の唇が吊り上がる。生存優先、先ずは此処からだ。
前へ、前へと進む。誇りを胸に、そして己の行く先に立ちはだかる高き壁などはないと言うように。
「フギン――砂蠍は今でも覚えてるわ。あの時の借りを、此処で『神がそれを望まれる』!」
「ははあ、知り合いなんでスね」
頷いた『合理的じゃない』佐藤 美咲(p3p009818)にイーリンは「大した物じゃないわ」とさらりと言ってのけた。幻想での戦いはもう随分と昔の話である。
「この内戦、一番戦った敵は間違いなく寒さスね。あれでアーカーシュの行動計画がどれだけ狂ったか……。
でも、ま、島のオデット氏に隊のイーリンのオリオン氏に……皆、冬の狼に思うところがあるようで。
良いっスよ付き合いまス。デブは寒さに強いっスからね」
からからと笑った美咲の長手袋に包まれていた義手がぎしりと小さく音を立てた。だが、気にする事は無い。前を行くのは二十二式自動偵察機。
俊敏に地を駆ける女は複数の仲間たちへと合図を送る。
スピードは爆発させて、前線へと進む美咲と共に仲間達が前へと向かう。
「突破だ! ただひたすらに突き破るぞぉぁ!!」
号令の声を上げるバクルドは誰であれども横槍を入れる物は容赦しないと決めて居た。
突撃してくるのはヘイトクルー。その射撃が周囲に雨の如く降り荒む。だが、それを避けるだけでは背を撃たれるのだ。
「てめぇごときが水差すんじゃねえよ、疾くと死ね」
――邪魔するならば全てを薙ぎ払え。
「はっ、どうしたよ! そんな程度でアタシらの突撃が止まるとでも思ったか?もっと数持って来やがれってんだ!」
エレンシアの唇もつい、と吊り上がった。数が相手だというならば、此方も数で相手をしてやれば良い。
速力を生かす美咲は爆弾を起爆し、地形を荒らして敵を蹂躙する。後方から炸裂する音、そしてモンスターの叫声が混ざり合う。
的確に周辺の様子を確認し、耳を欹てていたのは『群鱗』只野・黒子(p3p008597)であった。
「ふむ、右です」
「分かったのだわ!」
頷いた『蒼剣の秘書』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)の祝詞が響く。稀久理媛神の加護を纏った巫女は言霊に答えた主神(かみさま)太刀に感謝をし、追い風を受けて前線へと走り続けた。
その白き翼が何のためにあるのかを華蓮は知っている。即ち、護る為だ。
「つまりこれが、蒼剣の秘書と恥じずに名乗る為に必要な戦い方……だわね」
「支援はお任せを」
黒子が背筋をぴん、と伸ばす。華蓮は大きく頷いた。最前線に立った仲間達を庇うことこそが華蓮に課せられたオーダーだ。
「幾らでも受けてあげるのだわ!! 皆は好き放題暴れるがよいのだわよ!!」
戦況を確認するファミリアーの声を聞きながらティンダロスに騎乗していた『黒鎖の傭兵』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)は不知火をするりと引き抜いた。
「さぁて大戦、稼ぎ時だ。ついでに悪い狼を拝みに行くか。……大層な冬将軍だ。狼だから様式はないだろうが」
フローズヴィトニル、その別名を『フェンリル』と呼ぶ事があるらしい。その冬将軍にも似た獰猛さを有するのはマカライトが鎖で編む巨大な狼だ。
氷狼たちをも呑み喰らう神狼の牙。辺りに現れ続けるモンスター達の足止めなど、此処では何も足枷にはなりやしない。
「魔種と悪しき狼は永遠の冬を望む。
でも残念だけど、それを決めるのは君達でも僕達でもないんだ――冬がいつ終わるかを決めるのは、世界なんだから」
春の恵みを求めるように『友人ハイン/死神』フロイント ハイン(p3p010570)は笑った。霊鳥の背より『白き収穫者』に刻まれた術式が慈悲なき魔力を降り注がせる。
道を開き、門番の元に誰かを届ける。露払いとは即ち、万全なる戦に臨むために必要な役割だ。
眼前の敵を打ち払う。強大なる気配など遠く遠くに追いやって、目指すのは乱花と魅咲である。
騎兵隊は連携し、その隊列を乱すことはない。ハインの身を包み込んだのはRegeneration(再生)の魔力。
そして続き、継戦の為の準備を整えては倒れぬ事を念頭に戦い続ける。
「マイネェエエエエム! イズ!! 鬼刑部梅久ァアアアアアア!!」
堂々と登場する梅久は馬を駆りやって来た。
「童女(わっぱ)!! 息災か!!!
何やら主上(おかみ)も此方に向かって居る模様!! なればこそ、『鬼刑部』がこの路を開くのみよ!!
この身を豊穣より離れ、見聞を広めよとの命を受けたが、よもやこれほどの大戦とは! 征くぞ黒百段、殿は我らが引き受けた!」
叫ぶ梅久に「相変わらずね」とイーリンが笑う。そう、豊穣郷より援軍が海洋の艦船でやってくるのだ。
ならば場を美しく整えて出迎えてやろうではないか。
「主上――霞帝が!?」
はっとした『散華閃刀』ルーキス・ファウン(p3p008870)の唇には笑みが浮かんだ。
ああ、そうだ。彼の仕えるべき相手がここまで四神を率いて遣ってくるというのだ。
(――ならば、この場を整え、主上の出陣に備えるのみ!)
ルーキスの刃が閃いた。瑠璃雛菊が乗せたのは無明の刃。地を蹴り、叩き込む。魔種への路を開き、そして城門を壊すが為に。
凍て付く気配など構うことはない。人斬りとなるからには、その場に慈悲も戸惑いもあってはならぬのだから!
成否
成功
状態異常
第1章 第9節
「よくもまあわらわらと……良いだろう、相手にとって不足はない。騎兵隊、鳴神抜刀流の霧江詠蓮だ! 押し通る!!」
『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)は矛として、前線を駆ける。騎兵隊には頼りになる『盾』が幾人も居る。
ならば戦陣を走る矛が必要だ。一人でも倒せばそのスペースが空く。陣取り合戦の要領で前線を押し上げ道となれば良い。
「仲間全員でこの防衛陣を突破するぞ!」
神の軍馬の如き圧倒的スピードで走り抜ける。一閃せよ。踏み込み、ただ剣を引き抜くだけであれど『鳴神抜刀流』は光るのだ。
雷の気配と共に、アンデッドを切り裂いた。呻き声など遠く、次の獲物を狙い澄ませる。
「あ、あれがフローズヴィトニルの力……!?
コレだけ大きな城が作れる存在が外に出てきたら大変なことになるであります……! 止めなくては!」
焦りを滲ませた『宇宙の保安官』ムサシ・セルブライト(p3p010126)が前線へと駆ける。美咲に追従し空を駆け抜けていくムサシは白銀のヒーロースーツを身に纏った。
「宇宙保安官、ムサシ・セルブライト見参ッ! この世界を好きなようにはさせない……!」
シェームの欠片が姿を変えマフラーとしてその身で揺らぐ。ムサシの決意を顕す炎は乱戦状態の戦場でも青年の意志に答えるように姿を変えた。
シェリフ・ライセンスを突きつけ、宇宙保安官は尊き生命の保全を最優先とする。
騎兵隊として、彼が担う役割こそ、進む道を開くことである。
「おんやまあ、毎度の事ながら、大事になっておりんすなあ。
……くふふ、人外どもが蔓延る魔鏡の行く末はどうなる事やら」
くつくつと喉を鳴らして笑ったのは『Enigma』エマ・ウィートラント(p3p005065)。穏やかな笑み、そして邂輝術式『クリュプトン』と名の付いた魔術回路に走る魔力。
眩い光をその身に宿しながらも熱砂の嵐と共に冬の鉄帝国を進むのみだ。凍て付く氷の城の周辺には未だモンスター達が恐れなど抱くことなく存在している。
本能的な生存を求める事が無いモンスター達は誰ぞに使役されているのだろうか。天衝種は怒りを有する者が多い。その怒りに支配されているからこそ、臆することがないと言うことか。
『ゲイム』だと笑う者が居ても構わない。アドリブ不可の台本の中で、何れだけ己が舞台で演じきれるか。
その為ならば『雨夜の映し身』カイト(p3p007128)は何ら恐れることはない。『有利な環境を構築する』為の舞台設営術、結界術とも言わしめるその技能を活かし青年が演出するのは死出の雨。
此程に凍て付く世界ならばそれに相応しいと氷と雨の災禍は留まることなく広がって行く。
「まぁ、俺も一応氷の術師ではあるんだが……太陽を呑み込める氷狼に興味がないかと言われたらそれは嘘になんな。
だけども、氷はそちらの専売特許じゃねぇとは、示してやるよ。少々派手な演出だがな?」
「氷! 成程……開かない扉は壊せば開くのです!
吹雪いて融けない氷は砕いてしまえばいいのでして!」
堂々と胸を張ったのは『開幕を告げる星』ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)。
蜜色の髪をふんわりと揺らした少女は前を見据えてトゥインクルハイロゥを煌めかせた。詠唱と共に文字が浮かび上がる。
その華奢な腕には似合わぬIrisPalette.2NDを担ぎ上げてからルシアの眸がきらりと輝いた。
「――どーーーん!」
その声と共に強烈なる魔力が放たれた。魔砲少女は臆することなどない。
「突き進むべき道は、殲光砲魔神が描く虹の軌跡の上でして!
氷狼も、兵士も、天衝種も!全部ぶっ潰せばそこが道ですよ!
前にあるもの全部壊すまで引く予定は無いのでして!! 門も門番も城壁でも!前を遮るならずどーんして道を作ればいいのですよ!」
道がなければ作れば良い。作るならば、一直線――そう、魔砲の軌道のように!
「さて、、魔力回路を焼き切れるまでブン回すとしようか。
ワタシ自身、此処までリソースに特化してからは初めての戦場でな……付き合ってもらうぞ」
淡々と告げる『騎兵隊一番翼』レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)は断頭台の刃の名を欲しいものにしている矢へと魔力を籠めた。
執行人の杖に番えれば、それは万物をも焼き尽くす鉄の星へと転じる。
「――回れ魔力、焼き尽くせ鉄の流星」
詠唱蜂起を行ない、幾度となく降らせ続ける眩き鉄。それは、流星の如く地へと叩きつけられ周辺のモンスター達を襲う。
レイヴン本人のリソースは甚大だ。だが、彼が一人で居るわけではない。騎兵隊はチームである。故に、支える神意の祝福が訪れるのだ。
神秘の盾は、恐怖を打ち払うべく存在している。病は未知なる悪魔だ。それをも恐れず突き進む医師の名を冠した刀を手にしていた『オンネリネンの子と共に』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)は医術士として仲間達を支え続ける。
赫塊の背を撫で、ほっと息を吐いた。傍らにはイーリンが居る。師を支える為にココロはその隣から離れぬように気を配っていた。
「……一度の負けで満足なさらないのであれば、もう一度負けていただくだけです。何度やっても騎兵隊にかなうはずはないと思いますが」
堂々たる言葉と共に、近付く者を打ち払う魔力はウルバニの剣に籠められた。
ただ、ココロが振るわなくとも、イーリンを護る者が居る。『紅矢の守護者』天之空・ミーナ(p3p005003)はその決意だけを胸にしていた。
ずっと、ずっと、彼女を護ると決めて居た。苛む者が居るならばその全てを受け止めてやろうとも考えて居たのだから。
砂駆と共に走り抜ける。死神の大鎌を振り下ろすミーナは『ミーナとして』編み出した技と共に、多重に残像を残し続けた。
死神は死を齎すだけえでゃない。命を全うし、死に行く全てを受け入れる存在だ。故に、皆を愛し、皆を護る責務が存在している。
紅の眸に乗せた決意は『騎兵隊』として己がこの戦場を越えるというものだった。
(――後方は大丈夫だ。ならば、前だ。前を見れば良い)
全体を確認する仲間達との情報共有。他のチームはエリスを護りながら『脱獄王』と相対しているらしい。
「来たれよ脱獄王とやら。腕を奪う? 目を? 脚か?
ああすまないな、我が存在は我が意志在る限り還らぬのだよ…第四の壁を超えた、メタキャラなので。
我を甚振る暇があるのなら──汝が背に迫る同胞の刃に観念するがいい。逃げんなよ?」
己の存在をそう呼ぶ『敗れた幻想の担い手』夢野 幸潮(p3p010573)は『隙の多いヒーラー』を演じていた。ならば、崩しやすいとミスリードに誘えることだろうか。
サポートやクトは戦場の要だ。モンスターの中でもその様に演じていればアラクランの兵士などが誘われてきてくれるはずである。
己の喉元にまででも誘うことが出来れば、それこそが僥倖だ。『最果てに至る邪眼』刻見 雲雀(p3p010272)のように死兆星を輝かせる者も居るだろう。
運命は流転する。何方が勝利するかなど、まだ決まったことではないが雲雀は己が自ら道を切り拓かねばならないと知っていた。
「明けない夜がないように春が訪れぬ冬もない、これ以上好きにさせるつもりはないよ」
淡々と告げる。そうだ、この冬に閉ざされれば春など来ることがない。それを知っているからこそ、此処が踏ん張り時なのである。
イーリンの指示が訪れるまで、モンスターの露払いに徹していた『修羅の如く』三鬼 昴(p3p010722)は拳を接近してきた兵士へと叩き込んだ。
手当たり次第ぶん殴って吹き飛ばす。破砕する。ドレイク・チャリオットは昴の鍛え上げた肉体を運び、『バルムンク』を以て敵を地へと沈め続ける。
「さぁ、死合おうか」
この先には魔種が居るらしい。二人、されど、門番に選ばれるからには強敵だ。火事場泥棒の『脱獄王』も遊び回っているそうだ。
此処で騎兵隊を始めとしたイレギュラーズの足を止め時間を稼ごうとフギン=ムニンは考えて居るのだろう。
さて、それが何時まで持つか。強敵がいれば居る程に昴の心は沸き立った。
修羅の如く、進むのみだ。
射線を確保する『八十八式重火砲型機動魔法少女』オニキス・ハート(p3p008639)の前に獲物を誘えば良いのだから。
「この国全てを雪に閉ざす狼……。復活なんてさせはしない。まずは門を突破して城内に突入しないとだね。砲撃開始、だよ」
静かに告げるオニキスはファミリアー達と、己の眼。その全てのリソースを『索敵』にウケながら、的善戦に向けて迫撃弾を放った。
状況に対して見極めることこそが戦況には必要不可欠だ。特に、天衝種の大量投入が行なわれる戦場では『全てを焼き払う』事が重要であろう。
「……クアドラプルバースト、シーケンス開始。……砲身4基展開。……ジェネレーター接続。
……魔力回路全基同調。……バレル固定。……超高圧縮魔力充填完了」
すう、とオニキスの眸が細められる。
「マジカル☆アハトアハト・クアドラプルバースト―――発射(フォイア)!」
成否
成功
状態異常
第1章 第10節
「フギン 死シタ王 想ウ――王ノ夢 継グ 追イカケル」
『水月花の墓守』フリークライ(p3p008595)はその背に美しい花を咲かせていた。不死なる者達の亡骸は土へと還り行く、その輪廻を眺めるように。
「本音言ウノナラ フリック 個人トシテ フギン 在リ方 嫌イジャナイ。
……タダ。コノ世界 我ガ主墓標デモアル。コチラモ護ラセテモラウ。フリック 願ウガママニ」
人が、その想いを遂行することはその人間の死に当たるのであろうか。
フリークライはフギン=ムニンの行動原理の根底に存在する『亡き王に捧ぐ』その一心だけを感じていた。
まるで存在意義のように己の在り方を是認してしまった男はその為だけにこの様にモンスターばかりを召喚するのだろう。
前行く『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)へとフリークライが送ったのは慈愛の息吹。誰もが倒れぬように、そして、苛むもの全てを除外するためにフリークライは立っていた。
前線で天衝種達と共に産み出されてくる氷狼の欠片を前にしていたゴリョウはライオットシールドを構えた。堂々たる立ち姿。力強く響く声音と鋭き眼光はその存在感をより発揮する。
『四大八方陣』を埋め込んだ大型の籠手。その掌から発射される結界が飛び込んできた氷狼へと放たれた。
「さあ! 存分に同士討ちをしていただこうか!」
堂々たるゴリョウが腹をばちりと叩いた。そうして道を切り拓け、ドージェを囲い――そして、次に狙うのは『門番』達だ。
「やべぇな…結構色んな奴ら居るじゃん。でもまぁ良い! 狼討伐上等だ! 師匠の修行に比べりゃまだまだマシってもんよ!
とはいえ脱獄王みたいな漁夫の利を狙う奴もいる……なら、俺は俺の持てる力全部使うまで!」
『恋揺れる天華』零・K・メルヴィル(p3p000277)はにいと笑った。こんな寒さだ。腹が減って暴れ回るのであればパンを食わせてやればいい!
多数のモノを見据える瞳に、各種の知識を頭に叩き込み、様々な技能を駆使し、全てを見通し覚える。
ただ、見るだけでも情報把握には役に立つ。
「あっち、道が開いているぜ! けど、直ぐに天衝種が来る。此の儘前線を押し上げろ!」
叫ぶ零は騎乗戦闘を駆使しながらずんずんと進む。全てを見据えれば『対策』だって用意だ。
「このまま進むぜ!」
レールガンのように高速射出された『パン』。遠巻きにその様子を眺めていた乱花が「パンが飛んでるぅ!」と楽しげな声を上げている。
そのパンが叩きつけられたのは行く手を塞いでいたアンデットであった。パンの飛ぶ位置を的確に把握していた『点睛穿貫』囲 飛呂(p3p010030)は、突如とした投擲(こうげき)に驚いたアンデッドへと弾丸を叩き込む。
P-BreakerⅡ用に調整された男装には蝕む鈍いと停滞を纏わせた。
「……寒いのは嫌いだ、命が削れてく気がする。
実際に亡くなった人も多いだろうし、このままじゃもっと増える――ならやることは決まってる」
蛇は寒くては動けない。凍て付く風に身を竦ませて。それでも見据える場所が一つあるのだと飛呂は零が『指した』その場所を狙い穿つ。
「此処だ!」
ただ、一弾を叩きつけろ。
突撃戦術と共に、狙撃銃の弾丸が飛び込んで行く。
『何をするか』など決まっていなくとも、後悔なんてしたくはなかった。もしも、『ここだ』と決め手があるならば乗らずして何とするか。
スコルピウスが叫ぶ。高い機動力を活かして『朝日が昇る』赤羽 旭日(p3p008879)が叩きつけた弾丸が無数に飛び込んだ。
数多の弾丸に弾き飛ばされるアンデッド。その怨嗟をも掻き消すように銃の叫びが木霊する。ならば、上空だ。飛翔し、そして一撃を投じるために飛び込んでくるのはヘァズ・フィランを見上げて『嘘つきな少女』楊枝 茄子子(p3p008356)の唇が吊り上がる。
か弱い少女の姿。その体に纏うのは複数の盾。
赦免の言霊よ。それは現実になど惑わされず『神秘(かみさま)』の言葉の通りに転じさせる。
展開された魔力障壁に、穏やかに、嫋やかに。武器の一つも持ちやしない『かわいいおんなのこ』を演じてみせる茄子子は臆病者の顔をして、
「あらあらだめですよ、見た目に惑わされては。ひとつ勉強になりましたね。ふふ」
――ただ、悪辣に笑みを浮かべる。
己の身ごと弾いてくれても構わない。そう告げるかのような茄子子の背中に頷いて『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)はロングソードを握り前線を見据えた。
この国で戦い続けてきたオリーブは冷静に『数を減らす』という戦法を見出した。
武こそが全てだと、それだけで駆け上がれる程に単純ではない。露払いとは即ち、憂いを払う事にある。
憂いなく強敵と戦う事が鉄帝流だというならば。後顧の憂いを立つのも戦士の役目。クロスボウを構え直す。そして放たれた掃射の雨の下を茄子子が楽しげにステップ踏んだ。
「悪いけど世界が、国が冬に包まれる、と言うのを承服する事は出来ないよね。
終わらない凍える冬は停滞では済まされない。止めないとだね! その為に……まずは、露払いから、だねっ」
凍て付く風に震える体。それでも構うことはないと門番の前の道を開くべく手にしたのは『異世界にぴったり』な一品。
『数多異世界の冒険者』カイン・レジスト(p3p008357)が手にしている一振りの片手剣。その掌によく馴染むそれは魔力を集める事にも長けている。
己の中に蒐集された魔力を只、叩きつける。放つのは最大出力の魔力だけ。
冬をも遠ざける春一番。その風を体現するように放たれたのは――眩き光、カインの有する魔力の奔流であった。
成否
成功
第1章 第11節
「んぎゃー寒い!」
叫んだ『ノームの愛娘』フラン・ヴィラネル(p3p006816)が外套をいそいそとその身に纏う。
悴むような寒さに「もう春なのに!」と叫んだ彼女に『黒狼の従者』リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)は用意して居たマフラーをそっと掛ける。
「この寒さは『悪しき狼(フローズヴィトニル)』の所為なんだよね……
『悪しき狼』とか大変だよ! でもでも、こっちは『黒狼』だもんね、ベネディクトさん!
久々の黒狼での出陣、どんな戦いだって勝てそうな気がする! どっちの狼が強いか、見せてあげよー! いっくよー!」
『黒狼』の凱旋――その宣言のようにフランが微笑みかければ、黒き狼の外套を身に纏っていた『騎士の矜持』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)は大きく頷いた。
「鉄帝国を救う、だなんて大それた事を宣言するわけではない。俺達に出来る事は限られている。
だからこそ、今というこの時に全力を注ごう。その切欠は蝶の羽ばたき、いや、狼の欠伸でだって為せることだ」
自身等はその切っ掛けを作り、穴をこじ開ける。それこそが『黒狼隊』がこの場に佇む理由だとベネディクトは目を伏せてから仲間達を見据えた。
「……集まってくれた者達に感謝する。黒狼隊として、少しばかり久しぶりの戦場だ」
「ええ、ご主人様がお呼びであれば」
その身は主の為にあるとリュティスが堂々と言い放つ。笑う『虹を心にかけて』秋月 誠吾(p3p007127)も剣をしっかりと握りしめた。
「――戦場を切り拓き、道を作り出す為にこの剣と槍を振るおう!」
ベネディクトの宣言に頷く誠吾は緊張しながらも頷いた。鉄帝国の動乱、その混乱に陥れている要因との戦いも大詰めだ。
政治的なことも魔種がどうだというのも、国盗りだって何もかも誠吾にとっての『現実』には繋がらない。
だが――唯一信じられる仲間との絆。笑うフランや前を行くベネディクトの背中。それだけが唯一の現実なのだ。
「……現実を守り、この国で苦しんでいるひとを助けるために、戦おうか」
「ええ。悪しき狼がいるのであれば刈り取らねばなりませんね。黒狼を名を汚すものは何人たりとも許す訳にはいきません」
己達が黒き狼である自負と共に言い放ったリュティスへと『独立島の司令』マルク・シリング(p3p001309)は穏やかに微笑んだ。
「いよいよ決戦だね。この国を取り戻すために積み上げた、その集大成を示す時だ。
それが簡単でない事は分かっているけれど、そんな困難をいくつも乗り越えてきたのが黒狼隊なのだから」
「あ、の……花丸さん。アーカーシュの指令の方もいらっしゃるのですか」
怯えた様子のアルア・ウォンブラングに「有名人だね」と『堅牢彩華』笹木 花丸(p3p008689)はマルクをからかった。
アルアは幾人ものイレギュラーズが護衛している。花丸は彼女を『おばあさま』の元に送り届ける為にも道を切り拓きにやって来たのだ。
「さぁて、山場みたいじゃねぇの。こういう時こそ稼ぎ時よ。悪い狼にゃ黒き狼も向かうってか?
雇われ傭兵として、貰ったもんの分は仕事しないとねぇ……こくろーたいの皆さん、よろしくぅ」
ひらひらと手を振って『慈悪の天秤』コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)が二丁拳銃を構える。真っ直ぐに見据えたヘァズ・フィラン――その鋭い視線を送ると同時に、撃ち落とす!
無数の弾丸を追掛けて前線を攪乱するように飛び込むのは花丸だった。
「イケイケドンドンっ! ――さあ、皆、行こう!」
戦う事に花丸は臆さない。それが誰かを救う一歩になるならば。弾みを付けて飛び込む位はやってのける。
それが笹木 花丸だ。門番への道を切り拓く。わらわらと飛び出してくる有象無象がいるならば、花丸が受け止めきれぬ敵影をコルネリアが打ち砕くだけ。
「弾幕でこじ開けられそうだ。相手も時間稼ぎが目的だから門番への到達を遅らせているのだろうね」
「門番を倒して、ダイナミックにお邪魔させて貰わないとっ!」
マルクが冷静に戦況を見据え、前線の仲間達を補佐するフランは拳を振り上げた。
「いけいけー! すっすめー!」
誰だって、その足を止めるものはない。フランが支えるその声に、答えるように振り下ろしたのはマルクの剣。
その身はアーカーシュの司令としてだけあるのではない。黒狼の一振りの剣として、その牙として――仲間達の進む道を切り拓く。
流石の連携だと褒めるコルネリアに自慢げに孵卵が笑う。
福音砲機は拳銃へと姿を変えて、生命力を一点集中し――放たれた。
眩き光。その光を双眸に映して誠吾は己も負けては居られないと騎士盾を手に外套を揺らがせる。
「中々数が多いな……」
呻いた誠吾の前をひらり、とエプロンドレスを揺れ動かしたリュティスが進む。
「それだけの余力があると見せかけているのでしょう。全ては『時間稼ぎ』なのですから。
それをも圧倒するほどの力で、さっさと進んでしまいましょう。ご主人様、参りましょうか」
主の道を塞ぐモノをリュティスは赦しはしなかった。久遠の護りを髪に揺らした娘は鮮やかな紅色の眸で全身を睨め付けてから姿勢を正す。
「ああ、まだまだ本格的な戦いはこれからになりそうだな。皆、大丈夫か。
狙うのは門番だけではない。『冬の狼』の終わりだ」
仲間達を見据えて、ベネディクトは鋭き牙を敵へと突き立てた。必殺の槍は天より降る神の鉄槌の如く。
大丈夫だと真っ正面から主を見据えたリュティスには一寸の乱れもなかった。何れだけ激しく動こうとも、弓兵は舞うようにしてそのナイフを突き立て、何事もなかったように従者(メイド)に戻るのだ。
「では、もうひと頑張りするとしよう――黒き狼の牙を受けよ!」
あんぐりと口を開いて敵をも呑み喰らう。『黒狼』は『悪しき狼になど臆することはないのだ。
成否
成功
第1章 第12節
「それじゃ、やりますか隊長。
フローズヴィトニルの欠片を託された者としてもあるけど、航空猟兵がいないと始まらない訳で!」
にんまりと微笑んだ『後光の乙女』ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)の傍には小さな狼が立っていた。
フローズヴィトニルの欠片が狼の姿を得て活動してくれるのだ。その後英訳にはブランシュの姉であるダンビュライト=エルフレーム=リアルト。
「ラドバウで鍛えてたんだから、この時くらい暴れるチャンスですよ!」
「成程、そうでありますな。『妹』をお願いするでありますよ!」
ブランシュに背を押されて大きく頷いたダンビュライトの視線の先には『航空猟兵』を束ねる『航空猟兵』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)の姿があった。
可哀想な狼の御伽噺。それはそうある為に産み出されたのであろうか。何か思うところがないわけではないが此度はそればかりではない。
「ああ。援護する。今日は存分に暴れていいぞ、お代わりもあんぜ!」
にい、と唇を吊り上げたアルヴァの狙いはブランシュを場内に送り届けることだった。
そのブランシュは派手な立ち回りを見せる『超合金おねーさん』ガイアドニス(p3p010327)の援護を行なう。イグニスと補助ブースター、そして手にしたのは正義の大型メイスだ。
インサニア・イガリタリアン。聖句を刻んだメイスを手にしたブランシュの放った呪弾はガイアドニスを狙わんとするヘァズ・フィラン達を撃ち落とす。
「待って~、なのだわ~! ほらほら、大きいだけの良い感じの敵なのだわ~! きゃ~!」
こっちこっちとパフォーマンスを見せるガイアドニスの眸がきらりと輝いた。
ガイアドニスの楽しい『仲間達』。飛ぶのが得意なガイアドニスは自らが的になり仲間達の圧倒的な火力で叩き落として貰うことが目的だ。
傷付くのは自分だけで言い。小さなみんなを護るのはガイアドニスの仕事なのだから。
「いやぁ、にしても数が多いね。効率重視で行こう」
「はい。何人たりとも我々の空は譲りません。落ちていただきましょう」
憐憫はその指先に乗せていた。『つまさきに光芒』綾辻・愛奈(p3p010320)は靱やかに宙を踊る。不可能に手を伸ばせ、ガイアドニスを狙う全てを『撃ち落とす』ように。
凍て付く風の下で空という領域を欲しいものとするのが航空猟兵の在り方だ。チームであるからにはその死角を無くすことにも徹底的に心を配った。
蝶々の光が、鮮やかに翅を広げた。愛奈の魔力が刃の形を作り、眩き花を散らし続ける。
体勢を崩したヘァズ・フィラン。もう一度と大口を開いて愛奈に食らい付こうとしたその口に叩き込まれたのは雷の一撃。
一条の稲妻を纏ったのは小さなダガー。『暗殺流儀』チェレンチィ(p3p008318)が指先を揺れ動かせば、それは魔力を伴ってその掌に収まった。
彼女――いや、『少年』は深くフードを被り、コンバットナイフを振るう。乗せた気配は敵を『殺す』為の術。
命を奪う事は即ち、己の死を遠ざけることに通じているのだ。
災いなど遠ざけて、ガイアドニスを狙う者を地へと撃ち落とす。『猟兵』達の領空を侵すべからず。
颰(はやて)は孤高の咆哮を放ち、邪悪を払除けて行く。
アルヴァは「次だ!」と声を上げる。号令に頷いたブランシュはぐん、と高度を上げてその勢いの儘にヘァズ・フィランを地へと叩きつけた。
大地へと強かに落ちてくるのは飛べなくなった一羽。無数の死骸が雨となる。だが、それでも止まらずに進まねばならないのだ。
ガイアドニスは「頑張りましょうね」と微笑んだ。その身を護衛する愛奈は己の決意のように魔力を武器へと通す。
屍の上に立ってこそ、勝利が存在しているのだから。ここで、何を臆する必要があるか。
上空の猟兵達。そして、地上では『陽だまりに佇んで』ニル(p3p009185)が立っていた。
――いたいのも、こわいのも、さみしいのも、かなしいのも。なんだって、いやなのだ。
天上より降り注いだ暖かな光。慈愛の息吹を身に纏うメタルイヴは眩くコアに光を湛える。アメトリンと呼応したニアの命(コア)
魔力の奔流を感じ取りながら、門番への道を開く者達と、共に立ち向かうだけ。
「……門番さんに、あとすこしです」
門番の元に向かうイレギュラーズ達がその傍を走り抜けていく。ニルが惹き付けているから、憂いもなく、戦っていて欲しい。
しかし、数が多いのだ。無数に存在する其れ等は引き寄せても引き寄せても姿を見せる。此処で使い切るとでも言う様に。
門番達のオーダーは時間稼ぎ。その理由も、フローズヴィトニルの顕現への時間稼ぎなのだ。理に適っていて嫌になる。
ぼやく『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)の周辺に符が浮かび上がった。
「カデナ中佐……魔種でありながら相棒であった狼のために引いた理性を持つ者だったが、組む相手が悪いとしか言いようが無いな……。
何にしてもあんなデカブツが外に出たら城攻めもおじゃんだ。ここで食い止めないとな」
寧ろ、そうあらなくては心が耐えきれなかったとでも言うのだろうか。呟いた錬は絡繰兵士と共に進む。
天蓋に輝くのが敵の顕す太陽だと言うならば錬の陰る太陽とて漆黒の気配を以て敵を喰らい蝕むだろう。
何せ、太陽というのが彼だけのお家芸だとは思われたくはない。陰陽に天にある鮮やかなる光は不可欠だ。故に、錬はその輝きにも負けぬようにと太陽を作り上げた。
成否
成功
第1章 第13節
「面白半分――だがまあ、少なくとも、私達を狙うと言うのなら、少しはマシな部類だろう。
良いぞ、期待通りにしてやる。我々は、ここに居る。奪りに来るなら奪れば良い」
切り拓かれた道を進み『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)は立っていた。
獅子戦陣。軍人でも、騎士でもなく、戦士たるエッダが敵と相対する証である。鼓動が叫ぶ、進めと声を上げるように。
ドージェは何処か――ああ、イレギュラーズ達に包囲されているか。エッダは笑う。その目が欲しいと言うならば、盗りに来れば良い。
無論、くれてやる気は無いが戦うというならばその方が燃えるではないか。
鮮血乙女は鮮やかに戦場を戦い続ける。此度のエッダは盾だ。ただ、友の為にある。
「アルア、私達から離れないでくださいまし。大丈夫、必ず連れて行って差し上げますわ」
――『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)に願うことがあるのならば。
革命派の彼女はその先に、アルア・ウォンブラングの目的たるその人がいることを分かって居る。
聖句を口にした。宣教の心得よ、赫々たる炎となり心に灯れ。革命(へんか)を齎すための犠牲に――友の死は必要ではないのだから。
それでも、ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤは世界の不条理を知っている。
知っているからこそ、その足を止めなかった。
「エッダ、もう少し耐えて下さいまし! 行きますわよ、マリィ!」
「エッダ君! 守りは任せた! ヴァリューシャ! 行くよ!」
走り抜けていく。何度だって慣れない戦いが目の前にあったって、『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)は止まることは無かった。
ばちり、と雷が悲鳴を上げた。ガイアズユニオンの乙女が地を踏み締める。
見知った、それも幾度も語らった者との戦いが目の前にあるのだ。ブリギットの元にアルアを連れて行くために――そして、『全ての元凶』との決着を付けるために。
「どこかで見た顔ですわね。急いでいますの。大人しく通してくれると嬉しいのだけれど?」
「魅咲ィ! イレギュラーズ増えてきた!」
叫ぶ乱花に魅咲は「弾幕薄くなったんだろうね。ローズルさんに頼もうか」と揶揄うように笑う。
ああ、そんな余裕なんて消し去ってしまえば良い。乱花に向けて突撃して行くマリアのレールガンが剣にぶつかった。
「うわ――っと」
「やぁ! そこを通してくれないかい? 少し急いでいてね! 駄目ならば押し通る!」
それだけだ。己達は足を止めてはならない。行進のように、マリアの雷が紅く、紅く、真紅の瞳に光を灯した。
「アルア!」
呼んだ『竜剣』シラス(p3p004421)は思考を研ぎ澄ます。無駄なことなんて考えては居なかった。
「荒っぽく行くぞ、ついてこいよ。走れ、おばあちゃんもすぐそこだ!」
「ブリギットの家族? 優しくされたら嬉しくなるタイプ?」
「うるせぇ!」
乱花が揶揄う用に声を掛ける。その拳を突き立てた。魔力を伴って、激しく打ち付けられた拳が乱花の剣に弾かれる。
「大体、魔種じゃん、ブリギット。それと分り合えること何て、今更ないだろ」
「そんなこと――ないよ!」
鮮やかな花が開いた。『蒼穹の魔女』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)の纏う気配。その周辺の全てを惹き付けるアレクシアの紅色の花が揺らぐ。
「ブリギットさんがこのどこかにいるんだね? それだけで私達は進む理由になる。
……君達が侮れない相手である事は分かってる。けど、此処で容易く倒れる訳には行かないから!」
空色の瞳から産み出された三角形の魔法陣。その気配を感じ取りながらヴィリディフローラに色彩が灯り行く。
花想の魔女は、力と為す。アルアを連れていくために、そして、悲しげに笑ったブリギットに言葉を届ける為に。
「アレクシア……」
「シラス君、行って」
此処は自らが持ち堪える。そう告げるかのような魔女にシラスは走った。ヴァレーリヤとマリア、エッダがその視界に収まる。
「幸せ者だなあ」
魅咲が独り言ちた。喪うものがあれば拾い上げてくれる人が居る――そんな光景に虫唾が走るのだ。
「……少し遅れましたが、今から私も手を貸します、安心してくださいセレナさん。エリスさんを守る貴女を守るぐらい、やって見せますから」
『未来への葬送』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)のしるしに光が灯る。魔力が走り、『鮮血の魔女』の眸が鮮やかに魔力に満たされた。
「そして……きっとどこかにいるんでしょう。ブリギット。
勝手にアミナさんを押し付けて……文句の一つぐらい言いに行きます」
その人が、優しい事に気付いて仕舞わぬように。護りたい者は自分で護れる事をマリエッタは知っている。
『夜守の魔女』セレナ・夜月(p3p010688)――大切な『姉妹』を護る為にマリエッタは戦場へとやって来た。
「ありがとね、マリエッタ。とても心強いわ!
ドージェの興味を引いてくれた人はいる……けど、それでも油断は出来ない。エリスが狙われてる事には変わらないもの」
そして、この戦場では乱花や魅咲も警戒しなくてはならない。エリスを護る者は多く居る方が良い。
(エリス……それでも、彼女の覚悟を助けるために私はいる。
……勿論、命を散らしても良いと言う意味じゃないわ。犠牲にならなくても封印できる道が有る限り。
望みがある限りは、自己犠牲なんて認めないんだから!)
誰も彼もが自己犠牲の塊だ。エリスがこの後『どうする』かなんて分からない。
眩い光と共に、恐怖も、憎悪も全てを攻撃に転換してセレナは立ち向かう。マリエッタがいれば強くなれる。
背後のエリスを護り、そして、マリエッタが『文句』を言いにいけるように門番を倒すのだ。
成否
成功
第1章 第14節
「──おい、エリス。
いざって時……お前は自分の命を使って、フローズヴィトニルを封印するつもりなのか?
お前だけ犠牲になるなンざ、駄目だ。俺はそんな手段、絶対許さねぇぞ」
震えた声音で、そう吐出した『祝呪反魂』レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)へとエリス・マスカレイドは困った表情を見せた。
「レイチェルちゃんは、やさしいのですね」
穏やかな声音と、否定も肯定もするわけでもない言葉。エリスが何を考えて居るのか、その全容は読み解けないが苦しい未来だけはどうしようもなく受け入れがたかった。
欠片であるい子犬を撫でたレイチェルは「お前も一緒に来てくれるか? 俺は狼の想いを受け止めたいンだ。怒りも、苦しみも」と柔らかな声音で囁く。
「……エリス。俺が持っているフローズヴィトニルの欠片は、『牙と鎖』だ。鎖(グレイプニル)は、前回の封印の時にも使われたらしい。
鎖で狼を封じる事は出来ないか? 俺はエリスだけが封印の為の犠牲になるのは……嫌なんだ。その負担を分担したい」
「わたしはレイチェルちゃんを殺したくはありませんよ」
エリスの言葉に「よーちゃんが?」と言葉を溢れさせたのは『狙われた想い』メリーノ・アリテンシア(p3p010217)。
「……後で話しましょう。フローズヴィトニルの前に行かねば、この話だってムダになりますから」
「あの……エリス。今は大丈夫? 制御してくれてるんでしょう?」
小さな冬狼を抱き締めていた『氷の女王を思う』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)の問い掛けにエリスは大丈夫だと頷いた。
レイチェルとメリーノと共に、エリスを何時でも護れるようにとオデットは気を配っていた。
フローズヴィトニルの欠片にこうやって触れることが出来て嬉しい。精霊を傷付けたくはなかったオデットは欠片に声を掛ける。
「力を貸して欲しいの、嫌だったら氷狼とは戦わなくていいから。
……貴方の意思でどうか選んでほしい。どうしようともあなたを愛してることは何も変わらないのだから」
「オデットちゃん、その子は『私の制御下』にいます。だから、あなたの思うままに動くのです」
「エリスは、フローズヴィトニルと戦いたい?」
改めて問うたオデットにエリスは首を振った。戦う事を恐れている意味までは聞けずともそれだけで十分だ。
オデットはエリスを此処で消耗させたくはないと護ると決めて居た。
「二人とも頼りにしてるわよ」
「うん。よーちゃんが無茶なことするっぽいから『本当に必要な事』の為によーちゃんを護ってないと、ね」
自分がレイチェルを守り抜くのだとメリーノはころころと笑った。愛らしい笑みを浮かべたメリーノはタンザナイトの術式で作り出された結界の下、カタバミちゃんをそっと握り直す。
「ここで、よーちゃんを誰にだって傷付けさせたくないの。エリスちゃん、あとでお話を聞かせてね?」
「……はい」
殺したくはない、その言葉の真意を聞くために――この城門をも越えて行かねばならないのだ。
(……同じ狼だからか……氷の魔術を一部扱うからか……不思議だね……フローズヴィトニルにとても強い興味を覚えるよ……。
……一目見てみたさはあるけど……それは封印してからでもなんとかなりそうな気がするし……今は……封印の要になる人を守るのが先決……だよね……?)
『青混じる氷狼』グレイル・テンペスタ(p3p001964)は幻狼燈に柔らかな蒼白い炎を灯した。狼たちが具現化し、前線へと走り行く。
ハティとアセナは氷の狼を思わせた。グレイルが駆使するフローズヴィトニルにも酷似した攻撃だ。
エリスを狙う敵を迎撃し、そして行く手を開かんとする。この先に待ち受けているその強大な狼にグレイルとて興味があったからだ。
『永炎勇狼』ウェール=ナイトボート(p3p000561)は独り言ちる。
「悪しき狼、厳冬の原因……今の状況的にも悪と決めつけたくなるが冷たい世界でひとりぼっちなのはすっごい寂しいだろ」
ずっと封印されていた精霊はどの様な心地であったのだろうか。元より、その狼は『そうあるべく』して産み出されたのだろう。
その心と呼べる部分が傍に居るエリスなのであったら、彼女がフローズヴィトニルを制御することこそが『ひとりぼっち』の海嘯方法か。
殺さぬ事だけを意識し、氷狼の欠片を攻撃し続けるが、それらは倒す度に消え失せていく。まるで、氷が溶けて行くかのようである。
「どうにか、あの欠片を消えずに残して仲間には出来ないだろうか……」
「ウェールちゃん、できません。実体が残ってしまえば、それはフローズヴィトニルの――『悪しき狼』の力が此処に残ってしまうと言うことですから」
エリス・マスカレイドの制御下にそれは存在していない。それに、もしも『取り込めた』とするならばオデットの言う通りエリスに多くの負担が掛かるだろう。
「エリスさん、フローズヴィトニルの力を制御しているんだよね……。体は大丈夫?」
気遣う『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)にエリスは大丈夫ですと微笑んだ。
「さっきは大丈夫だったみたいだけど、この先……エリスさんにも負担かかるのなら、少し心配。負担、分担できないかな……精霊じゃないから難しいかな」
「はい。わたしは、もともとがフローズヴィトニルですから」
外付け制御装置なのですと胸を張ったエリス。本来はエリス・マスカレイドは只の道具である筈だった。
その意味合いが透けて見えたことに『祈光のシュネー』祝音・猫乃見・来探(p3p009413)の心が痛む。ぎゅう、と胸を締め付けるようで、苦しい。
「……氷の、狼さん……可愛いね。みゃー」
レイチェルやオデットの傍に居る狼たちを見て祝音は笑みを浮かべた。あれだけ可愛いのだから、それを傷付けられることはどうしてもいやだった。
魔力を振り絞る。創造した剣を握りしめた祝音の眼前には泥を作り出すヨゾラの姿があった。
「皆の声が届きますように。エリスさんが良い精霊さんであるのだし、フローズヴィトニルが悪いだけの存在だと思いたくない。もしかしたら、封印ではなく共存の道も……?」
「それは――」
エリスが何処か悲しげな表情を浮かべた。自らが、掻き消えそれと一つになれば『有り得る』もしれない。
苦しげなエリスの表情を見ればヨゾラは唇を噛み締めることしか出来ない。エリスが要である事は確かなのだから、守り切らなくてはならないのだ。
一人、焦燥感に苛まれる『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)は高鳴る鼓動を鎮めるように息を吐く。
(此処で怪我をしてしまえば、愛する人のもとへと帰れなくなる。温存していれば誰かを護れないかも知れない。
だが、俺が重傷になったら? 最悪の時のリカバリーが出来なくなる。……もっと、もっと力があれば……!)
無い物ねだりをしてしまうとサイズは呻いた。無いなら何だって創造したかったが、それが出来れば苦労しないというのも実情だ。
妖精の血を活性化させたサイズは氷の付与魔術をその身に纏ってから静かに息を付く。此処で落ち着いていなくては誰も護れないのだ。
「ほら、もうそろそろ暖かくなり始めても良い頃でしょう?」
エリスを護る者や、ここから先へと進む者の邪魔を為ぬように雑兵を退ける『歪角ノ夜叉』八重 慧(p3p008813)は呪符を手にアンデッド達を睨め付けた。
侵されざる領域。慧は禍を、敵意を、殺意を呼び寄せた。呪いの一端。それは彼の中に流れる呪われた血によるものだという。
苦しみ続けろ、傷付き続けろ、そして内より出でる焔が全てを焼き払うように。
「慧ちゃん、後ろです」
「しつこい奴ばかりっすね」
ぐるりと振り向いた慧にエリスが頷く。氷杖を握る精霊女王は出来るだけイレギュラーズの力になりたかったのだろう。願うような彼女に堪えるように炎がアンデッドたちの身に纏わり付いて行く。
「エリスさん!」
名を呼んでから、遠くに見えたドージェとエリスの間に体を滑り込ませた『いにしえと今の紡ぎ手』アリア・テリア(p3p007129)の唇が震えた。
「そうですか……我らが精霊の女王であるエリスさんに手を出したと……なんたる不敬。……虫唾が走る」
精霊種と精霊。それは密接なる存在だ。エリスは精霊種ではないが、アリアにとっては故郷を治める女王だ。
精霊種達にとっては、自身達を護ってくれる愛おしい女王である。
「エリスさん、銀の森で生まれた精霊種として、或いは故郷を治める女王様を御守りするべく馳せ参じました!
なにがなんでも彼女を守り通して見せる! だから、貴女も命を投げ打つような真似をしないでほしい。あの森を故郷と思う住民からの、せめてもの願いです」
「アリアちゃん。わたしは、あなたの故郷を護りたいのです」
穏やかに微笑んだエリスにアリアは「この続きは、後で!」と不届き者に向けて汚泥を放つ。遠く見えたドージェが「おっと」と楽しげに声を掛けた。
「ッ――逃がさないからね!」
エリスからは離れきれない。『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)はもどかしさを感じていた。
エリスから離れすぎれば隙を付いてドージェがエリスを狙うかも知れない。此処で倒しきらなくては、エリスを喪う可能性だってある。
「焔ちゃん」
「……エリスちゃん。大丈夫だよ。エリスちゃんはボク達が絶対に守り切るからね」
赤い髪を揺らした焔の『神の炎』が赫々たる色彩を得、燃え盛る。『月香るウィスタリア』ジルーシャ・グレイ(p3p002246)の傍らで精霊達が囁いた。
「敵の数は少しずつ減っていってる……けれど、それは同時にアタシたちも消耗してきているってこと。
城の中で何が起こるかわからないもの。できるだけ万全の状態でここを乗り切らなくちゃ。それは、エリスちゃん、あなたもよ?」
鮮やかに薫った紫香。召喚の香術に誘われたか、現れた気配が仲間達に癒やしを送る。
蜃気楼の扉を叩き、その力を身体に降ろすようにジルーシャは敵前へと身を滑り込ませた。
エリスを狙うなら、可愛い『おねえさん』ではいられない。
「アタシなら簡単に倒せると思った? 心外ねぇ……これでも男だもの――いざって時は獰猛になるに決まってるだろ」
唇を吊り上げた。血を拭ったジルーシャの指先が竪琴を弾く。
依代(ジルーシャ)に手出しした者へと激しい怒りを宿したのは誰であったか。精霊憑きたる青年の右目は黄金に輝き、氷の女王が為にその周囲の氷狼を薙ぎ払った。
成否
成功
状態異常
第1章 第15節
「帝様……いらっしゃるんですね……私もそろそろ覚悟を決めなければ。
――さ! いらっしゃるまで頑張りますか!」
『北辰より来たる母神』水天宮 妙見子(p3p010644)は穏やかな笑みの裏に、一つ隠していた。
――晴明の目に、自分はどう映っているだろうか。醜いだろうか、滑稽だろうか、それとも恐れているように見えるだろうか。
国を喰らう獣、星を破壊する兵器。今までもこれからも、一人で生きていくと決めて居たのに。
(晴明様、貴方を一目見たときに『この人は私と同じだ』と感じたのです。だから、惹かれたのでしょうか。
けれど、貴方も私も今は、一人ではないから……だから、守り切らなくては、何が何でも)
妙見子は震える声音で「晴明様」と呼んだ。振り向いた晴明はその手に刀を携え不思議そうな顔をして居る。
「晴明様、貴方は私が護ります、私が死ぬことになっても、絶対に」
「妙見子殿」
晴明は薄い唇を震わせた。
「可笑しな事を。貴殿のことは俺も、メイメイ殿も、ノア殿も護るに決まって居ように」
そう言う人だった、と妙見子は笑った。『ちいさな決意』メイメイ・ルー(p3p004460)のファミリアーを支える。
そして『雪花の燐光』ノア=サス=ネクリム(p3p009625)へと「頑張ってください」と送ったエールが彼女を前線へと送り出した。
圧倒的な火力。有象無象が群れている城門の敵を一掃する。何れだけ飛び込んできたって在庫処分にすれば良い。
「マブダチの妙見子ちゃんが頑張ってるんだから私も張り切って火力を出していくわ!
魔砲で道を開くわ、味方は射線上から待避して―――――!」
眩い光。それは氷を溶かし希望に溢れた春を告げる号砲。
『ちいさな決意』メイメイ・ルー(p3p004460)が目を伏せる。風が立ち、アンデッド達が消し去った。
「晴明さま、皆さま、参りましょう! ――鼓舞(オールハンデッド)!」
彼が前線に立つならば。メイメイはその背を任せて欲しいと宣言する。彼に送った『おまもり』がその刀に揺らいでいる。
(晴明様のお品が、このよう、に……)
どこか、心がざわめいた。
「『何もすることがなかった』と、霞帝さまのお言葉を戴ければ何よりですが、それ程甘くはない敵、です。
けれど此処で、膝をついてしまったら……その先の約束を、果たせません、もの。
大きな道を切り拓いていきましょう、ね――春を導く、道を」
豊穣郷の美しい四季を思ったメイメイに『戮神・第四席』ウォリア(p3p001789)は緩やかに頷いた。
海容にも豊穣にも縁が深い。故に、国としての好悪など今更問うことはない。パトリックという面白い男もいたのだ。
「押し掛け助っ人、義に縁って助太刀というヤツだ。凍てる吹雪、我が歩みを止めるには及ばず……何より強敵に心が躍らぬ筈もない」
ウォリアの周囲に鮮やかな炎が立ち上った。ウォリアが支えるべく走った先には『冬の王』オリオンの姿が見える。
馳せ参じた彼に助太刀し、そしてこれから来たる豊穣援軍の道を切り拓くことこそがウォリアの戦いだ。
心の底に、理由がなくては走ることさえ出来ない。それは、くだらぬ矜持だろうか。
闘争に熱はなく、鉄帝国に愛着だってない。線上に広がる冷気よりも、純然たる無機質な殺意。そんな気配の中で己は『助太刀』というお題目に押し隠した。
(希望を抱ける機会を、終ぞこの国は与えなかった。
――だからこれは、『任務』だ。しがらみなどない。誰かとの約束もない。ただ、立ち塞がる全てを『戦い』として昇華する。それが強さの糧だ)
ウォリアの姿を双眸に映したオリオンが「おお! コレで百人力よ!」と声を上げた。
「本当ですか?」
「うむ、うむ!」
嬉しそうなオリオンにぱちくりと瞬いたのは『涙と罪を分かつ』夢見 ルル家(p3p000016)。
「折角なので一緒に戦いましょう!思えば一緒に戦った事ありませんでしたしね!」
そのうちフローズヴィトニルの生首と戦うかも知れないのだ。その前に、それにダメージを与えるべく、氷の欠片を削れば良い。
「正直ボーナスゲームですよ! ボーナスゲームのこつは時間制限内に沢山叩く事!」
「何、ゲームか!?」
「ええ。しかも! 実は拙者もビームを出せるのですよ!
フユキンスラッシュもいいですが、色んな技を使えたほうが便利なのでちょうど良いのでこいつらで練習しましょう!」
「確かに、エリスも遠距離技がある方が良いと言っていた。ならば、やはり、ツララビーム……?」
ネーミングセンスのなさにルル家は触れることはなかった。
取りあえず笑顔を浮かべていたルル家にオリオンは「どうした、ルル家ちゃん」と堂々と問うている。
『最期の願いを』シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)はと言えば、冬の王の傍に立っていた。貴族騎士として彼の戦い振りを見て見たかったのだ。
「さあオリオン、この技に合わせて必殺技を撃ち込んでくれ! ――合体技、翠刃・フユキン!」
「む、そうか。合体技か!」
近所の子供も大喜びするだろうと余りに可笑しな感想を掲げてからからと笑ったオリオンにシューヴェルトは「自慢すると良い」と大きく頷く。
痛打を与えるだけではない。『冬の王』がイレギュラーズの仲間なのだという事を顕すことさえ出来る。
「さあ、行くぞ。イレギュラーズちゃんたち。エリスと共に目指すは狼だ!」
「要するに、彼の狼……オオカミ、大いなる神か? それとも精霊か。
考察は兎も角フローズヴィトニルには氷の内側で眠っていてもらいたい……という話であると」
成程、と首を捻ったのは『蒼き燕』夜式・十七号(p3p008363)。『大神(おおかみ)』であるならば、それは大精霊と呼ばれるものなのだろう。
豊穣郷で呼ぶならばそれは神様のように信仰の的でもあるらしい。
「そういうことならば、遠慮なく助けに入らせて貰おう。この国が氷に閉ざされるのは望ましい未来じゃない。
寒いほど調子はいいが、他国の海まで凍ってはつまらんからな!」
鮮やかな青。凍り付いてしまった海とは別の色彩を宿した『海燕』に十七号が乗せたのは圧縮した冷気であった。
洗浄の気配を圧縮し、氷の剣山が周辺へと広がって行く。
己に近づく全てに災いを。そう告げる様に十七号は眼前だけを見据えていた。
「さて次です次。殺すのならば行動は迅速に」
淡々と告げたのは『酔狂者』バルガル・ミフィスト(p3p007978)であった。数が減ってきた。味方の数も多い。
確実に攻撃を狙うには丁度良い。仲間達の影に隠れて、奇襲を繰返す。命を奪い、戦闘継続を挫き、そして疲弊を重ね続けさせるのだ。
鎖がじゃらりと音を立てた。十七号を見据えていたアラクランの兵士の背後に回り込む。
「こちらですよ」
囁く声と共に引き締めた気配。絢爛に、死を囁く殺人の技能を持ってバルガルは進み続けた。
「冠位が勝とうと知ったことじゃない。別に鉄帝が国として成立しなくなるのもどうでもいい……。
だが、ボクの資産を文字通りに凍結させるのはいただけないな。この騒乱も金にはなったが、冬を終わらせてしまうとしよう」
嘆息した『性別:美少年』セレマ オード クロウリー(p3p007790)は眉を顰める。
「――といっても、だ。氷狼共にボクを『殺せる』力があったことは把握している。
時間稼ぎは得意だが、それで相手の怒りを煽り過ぎれば意味がない」
耐えて、耐えて、忍ぶだけ。それだけでは為せる者も難しい。ならば、オリオン達のように進む者達の『後ろ』から放てば良い。
バルガルと同じく、敵の隙を付くのだ。セレマが放ったのは万物をも砕く気配。
契約の指輪でオフラハティが笑っている。負の色彩が広がり、魔力は敵をも蝕んだ。
「さて、城門を開ける準備は出来たか?」
成否
成功
第1章 第16節
「耐えれば勝ち、籠城戦の基本ではあるね。………で、それで?
思い通りにさせると思う? 時間稼ぎの為に相手の足を引っ張るのが俺の十八番、好きなだけ引っ掻き回してあげるよ」
囁くようにその言葉を重ねて、『最果てに至る邪眼』刻見 雲雀(p3p010272)は呪術所を開いた。術式を血液でコーティングする。
作り上げた剣を手に、『合理的じゃない』佐藤 美咲(p3p009818)を追掛けた。霧中を征く女は爆発的なスピードで城門へと飛び込む。
「はー、短期戦狙いスか。騎兵隊はいつも忙しいスねー……そんなわけなら……私も久々に前で暴れますかねー」
魔種が二人、見えた。イレギュラーズと戦っている最中だ。
(――アレを邪魔させるよりも『周辺』を削るが勝ちっスね)
嘆息をしながらも、嵐の如く飛び込んだ美咲が狙いを定めたのは魔種達との戦いに横槍を入れんとするアラクランの兵士達だ。
自身のオーラと、神翼獣ハイペリオンの権能を重ね合わせ作り上げたのはミニペリオンの群れである。前線を押し上げんと走る其れ等は見る限りでは愛らしい。
だが、愛らしいだけではないことを美咲は知っていた。
「此の儘、周辺を『掃除』しておきましょうか」
「ああ、そうだね。籠城戦の為に相手がコレだけ『戦う相手』を用意してくれているんだ」
雲雀が放ったのは気の糸であった。ぴん、と張り詰めたいとの先がアンデッド達へと纏わり付いていく。
けたたましい声を聞きながらも城門へと飛び込む勢いでやって来たのは『騎兵隊一番翼』レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)。
乱花も、魅咲も、『脱獄王』さえもレイヴンには興味は無い。幾ら彼等が一騎当千であれど、手脚がなければ多勢に無勢。兵がなければ陥落するのだ。
「開戦してまだ序盤ではあるが想像以上に敵兵が多いな。現状、城門まで到達するのも困難な状況か。
まァ、やることは変わらん。前方の友軍、巻き込まれるなよ? ――黑き鳥が全て焼き尽くす」
静かな声音と共に、群がる敵影を焼き尽くすのは万物をも砕く執行の矢。
それは終焉を告げる星のように、地へと降り注ぎ続けた。
その下をティンダロスと共に駆け抜けていく『黒鎖の傭兵』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)は戦局の変化――潮目を見た気がした。
(直ぐに戦局が変化するとは微塵も思って居ないが――これならば、『目』があるか)
魔種と『脱獄王』と戦うた其れ等を孤立させる。突貫して行くマカライトは城壁の破壊に赴く仲間達の支援を行なっていた。
ティンダロスが地を蹴った。跳ね上がったままにマカライトはアラクランの兵士へと編み上げた黒龍の顎を放つ。
編むことで肉体に感じた負荷など関係はない。その全てを呑み喰らうことこそが必要不可欠であるのだ。
数が多いこの場所で、希望のように感じられたのは『魔種』と相対する仲間達の多さだ。門番さえ打破してしまえば、次に待ち受けるのは城内だ。
騎兵隊は征く。足を止めず、動き続ける。求める先に進むが為ならば情け容赦も必要は無い。
「レーザーブレード、展開ッ!
……むう……!なんという堅牢な城門でありますか……! ならば、もう一度挑むのみであります!」
輝く星々のように、『宇宙の保安官』ムサシ・セルブライト(p3p010126)の決意が煌めいた。
空を飛び、滑降して行く。見据えたのは魅咲だ。乱花を支援する魅咲の攻撃には様々な戒めが存在している。バッドステータスを越えて征かねばならないのだ。
「輝勇閃光……ブライト・エグゼクションッ!」
「ッ、ああもう!」
だからいやなんだと魅咲が叫んだ。最大出力の必殺剣。ムサシが放ったそれを受け止めたかのように見えた魅咲の『闇』
「さっさと、出てこい雑魚」
「『雑魚』とは天衝種のことでありますか? それならば此方の包囲網の内!」
くそ、と魅咲は思わず呻いた。
複数の目ががぱりと開き、宙を舞い踊り揺らいでいるかのようにも見える。魅咲の目が眩んだか――ならば。
「一秒でも速く……ぶち抜く!」
その背後へと飛び込んだのは『修羅の如く』三鬼 昴(p3p010722)であった。破砕の闘氣と共に城門を突破すべく昴は足を止めることはない。
流石に敵の防衛も硬い。ドレイクチャリオッツで飛び込んだ昴は力技で己の実力を示すのだと拳を突き立てた。
「無視は酷いな」
魅咲の声音に昴が振り返る。流石は『門番』。その役割を全うしようとしたのだろう。
直ぐに腕で庇い立てた昴に、魅咲が放った闇色の気配が牙を剥く。突き立てられたそれが身体を蝕み、その足を重く泥沼にでも沈めるように縺れ込ませた。
「はいはい。突っ込んできた方が悪いぜ」
だが、魅咲に叩き混まれたのは『ド派手な花火』。『雨夜の映し身』カイト(p3p007128)は下準備だと言わんばかりに封呪構築理論で死出の雨を降らせた。
裏返る命運。雨が地より天にもぼる不可思議さ。黒き気配が足元から伸び上がり魅咲の腕を絡め取る。
「面倒だな」
「それはお互い様だろうに」
カイトはやれやれと肩を竦めた。どうやら魅咲も『裏方』の方が得意だ。前線に飛び込む『紅矢の守護者』天之空・ミーナ(p3p005003)と相対する乱花を見る限りにもそう見える。
「サポートが出来てないみたいだぜ?」
「ああ。ツーマンセルってのは面倒だが……一人対多勢なら数の暴力だな」
「サイテー」
「言ってろ」
ミーナがふん、と鼻を鳴らした。その様な口撃に構って等居られないのだ。
「時間さえあればじっくり付き合うのもありだったんだがね、そうも言ってられねぇのさ!」
紅色のドレスを揺らし、運命を切り裂くように剣を叩き込む。ステップを踏み踊るミーナの紅き視線は乱花を逃すことはない。
「露払いは任せとけ、老兵はなんとやらって言うだろ?」
『老いぼれ』バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)は広範囲にばら撒く鋼鉄球でミーナを邪魔せんとするアラクランの兵士の出鼻を挫いた。
その周辺にはアンデッド達の姿も見える。『門番』の役目を担った魔種達を支援するのが其れ等の役割だったのだろう。アラクランの兵士達は天衝種を出来る限り投入してくるのだろうが、城の内部は『氷狼の欠片』達の姿の方が多いのだと推測される。
「此処で時間稼ぎをし、数で蹂躙するつもりならば、大間違いだ」
――そう、バクルドの言う通り。
「騎兵隊のお通りだ!」
ミーナは声を上げ、希望を束ねた剣を掲げた。
成否
成功
第1章 第17節
――騎兵隊員に通達。城門の破壊・突破を優先。
――総大将(かのじょ)がそれを、望まれる。
淡々と行なった伝達はもう行き渡っていただろう。城門の破壊突破を狙うならば矢張り邪魔立てしてくるのは魔種達だ。
その周辺にはアラクランの兵士達の姿も無数に見えたか。『闇之雲』武器商人(p3p001107)はヒヒヒと小さく笑みを零した。
「さて、城門を狙うなら多少は敵を引付けねばね」
軽やかに笑う。ギネヴィアは怪物を連れてやってくる。怪物は純然立つ『力』の暴威を示すのみ。
その存在感こそが、破滅へと導く姿だと顕すように。
汲み上げた糸の先にアラクランの兵士達が絡め取られていく。
「……遅滞戦闘、陣中侵入による進軍速度の低下、範囲攻撃不全化、それなら!」
『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)――総大将は呟いた。敵が入り込む余地がないほどの密集陣形を汲み上げて城壁を『ぶち壊せば』いいのだ。
纏うたのは精霊の加護。司令官だからと言って後ろで燻っている場合ではない。
流星の心臓は、共に征く仲間達の士気を向上させるのだ。『騎兵隊』として、吼えるが為に声を張り上げる。
――神がそれを望まれる、と。
ただ、その言葉を口にするだけで『騎兵』達は城門(きょうてき)さえも者ともせぬのだから。
「私達の前では門も、兵も一緒ってことを教えてやりなさい!」
「はい。お師匠様。
つまりは一団となって突っこんで城門を抜ければいい。云わば投石機で打ち出された鉄球のごとく、ぶつかってまいりましょう」
可愛らしい表情を変えることはなく『オンネリネンの子と共に』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)は淡々と告げた。
師と仰いだその人が前線へと飛び込んでいくならば、弟子である医術士は赫塊と共に敵を退け、全てを巻込む勢いで走る騎兵隊の仲間達を支援する。
皆でひとところに集まっているならば、それを支える。広域に俯瞰する必要も無く、ただ、前だけを見ていれば『信じていられる』
「ここが正念場ですね。やっちゃいましょう!」
治すも、癒やすも、壊すことだって――!
(さすがにこの数は鬱陶しいな……だが! このぐらい退けられなくて何が『一ノ太刀』だ!)
唇を噛み締めていた『一ノ太刀』エレンシア=ウォルハリア=レスティーユ(p3p004881)は門前にその姿を見た。
真白き竜を思わせた一人の騎士。盾を手に、人々を護らんとする鉄帝国の英雄然とした娘だ。
「ったく、何勝手に一人で出てやがるんだよアイツ……」
思わずぼやいたエレンシアは声を張り上げる。
「おいこらレイリー! 一人で勝手に暴れてんじゃねぇ! アタシも混ぜろ! むしろこっちに交じれ!」
呼ばれ、振り向いたのは『ヴァイスドラッヘ』レイリー=シュタイン(p3p007270)であった。エレンシアの美しい黒髪とは対照的な眩い金の髪を結い上げた彼女は「やっほー!」と手を振った。その仕草や、まるで『学校で友達に挨拶をする』かの如きフランクさだ。
「じゃあ、改めて名乗りましょう。私の名はヴァイスドラッヘことレイリー=シュタイン! 騎兵隊の一番槍よ!」
「アタシは騎兵隊一ノ太刀! 我が刃に斬れぬ物なし!」
エレンシアはレイリーの隣に立った。先陣を走り抜けた二人が相手にする城門前には魔種が居る。
『だから』どうしたわけではない。レイリーは苦戦を強いられていたが、この二人の前にコレだけの人数がやって来たのだ。
「今の私を倒せるのはそうはいないわよ!」
「やばいじゃん」
乱花は軽口を叩いて見せた。白亜たるレイリーに対してフランクすぎる乱花の剣が叩きつけられる。変幻したそれを受け止めたレイリーの横からエレンシアが飛び付いた。
「幾ら魔種でもこの数は苦戦するだろ!?」
「マジでそう。あーあ、辞めて欲しいくらいだ」
呟く乱花の視線が『人』に注がれた。ならば――此方は『壁』を見れば良い。
「再出撃だオラァン! 燃料満タン 充填──完了! 刻限が来るまでにはまだ早い! 急げや急げってなぁ! あーはっはっはぁ!」
腹を抱えて笑うように。『敗れた幻想の担い手』夢野 幸潮(p3p010573)の声が響き渡った。
「異界の舞台装置が活躍などそうあり得んしな。我が身に定命の定めなど関係はなく、永久追放を受ける迄皆が道行を支えるのみ。
英雄どもー! 多少の障害など乗り越えて往くがいい!
汝らの悲運は我が書き換えてやろう! その程度の外法は心得ているつもりだぜーい!」
いえーい、と拳を振り上げた幸潮は幾度となく仲間達を支援する術式を展開していた。
滅び行く世界には笑ってやれば良い。拍手喝采、崩れる空があるならば『砕ける壁』があってもいいではないか。
「させるかよ」
魅咲の声が響いた。振り向く幸潮の眼前に滑り込んだのは『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)。かち、と鯉口を切り、一気に引き寄せる。
身を屈め、引き抜いた一太刀が風となり切り裂いた。
「氷の城が難攻不落を気取るか。
いいだろう、イレギュラーズは何度でもやってくる。たった今から俺たちがそれを示してみせるとも!」
「ッ、」
頬に一筋走ったか。寸での所で身を捻り避けた魅咲が酷く苛立ったようにエーレンを睨め付ける。
「盾が居る、回復手が居る。そして、攻撃手までもがいるのだ。それだけではないぞ」
エーレンは後方を見た。騎兵隊が進むことを信じて、『こちら』に照準を向けている少女がいる。
彼女の一撃があればこんな氷弾き飛ばせるだろうと、エーレンは唇を吊り上げた。
「策があるって顔を為れるのは嫌いだよ」
「……何故?」
「知らないことを、誰かが知っていることが腹が立つ。知識を喰らわなくっちゃ、この餓えは凌げないのに」
魅咲の眸が爛々と輝いた。飽くなき迄の知識欲。それは何処まで人を餓えさせることだろうか。『群鱗』只野・黒子(p3p008597)は只その様子を眺めている。
傀儡達と淡々と連携を考え支え続ける黒子。軍の指揮者達との連絡共有を行なうと共に最短ルートを計算し尽くした。
故に、エーレンが考えた『一撃』の軌道も認識している。騎兵隊がその導線に割り込まぬようにと適度に指示を行なうのだ。
『殲滅兵団』、此度の騎兵隊は宛らその名を欲しいものにして居ただろう。
「霞帝らが到着する前に、何としてもこの城門を打ち破らなくては……!」
「はい。門番達を左へ」
その場所を避け、進む位置を指揮する黒子に『散華閃刀』ルーキス・ファウン(p3p008870)は頷いた。
魅咲を近づけないが為にその身を滑り込ませるルーキスの瑠璃雛菊が正義を叫ぶ。ただ、実直に誠実に、己のあるが儘を示す為。
「お前の相手はこの俺だ。余所見している暇はないぞ?」
「あーあ、本当に……『お前は何を教えてくれる』?」
そう笑った魅咲を一瞥し、ルーキスはしっかりと刀を握りしめ、向き直った。
相手は魔種だ。それも門番を任されるほどの――だからと言って臆する必要があろうか!
振りかざした剣が、弾く。その鈍い音と共に、襲い来る暗き闇を切り裂いた。
成否
成功
第1章 第18節
「どちらかといえば暑さよりも寒さの方が得意ではあるんですけど。
だからといってずっと寒いのは無理ですよ! いくらもふもふの尻尾があっても無理なものは無理です! ですから止めますよ、なんとしても!」
思わず身震いをした『ふるえた手』すずな(p3p005307)は城門前で邪魔立てしようとするアラクランを立て続けに切り裂いていく。
この場所は入り口だ。此処で臆していても何も始まることはない。目の前の相手を斬って、斬って、斬り続けることこそが裳k津駅だ。
「ああ、寒い……! その為にもまずここをどうにかしなければ。
フローズヴィトニル、氷狼でしたっけ。どちらが本当の狼か、思い知らせてあげますよ……!」
牙を剥き出すようにして『狼娘』は駆け抜けていく。相手が数の暴力を行なわんと言うならば、すずなとて手数で勝負だ。
「――百花繚乱、御覚悟なさいませ」
すずなの刀が翻る。アラクランの兵士が勢い良くハンマーを振り上げたその場所に飛び込んだのは精霊による災い。
精霊の魔術は自然現象を狂わせて兵士の認識をも阻害した。『紅炎の勇者』リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)はおとがいに指先を当ててこてん、と首を傾げる。
「要石が……首。フローズヴィトニルの、残る心の封印……
だから、要石。フローズヴィトニルを制御する為に心……魂は欠かす事の出来ない部位だったのですね」
背後にはエリスが居る。エリスと共に前へと進むリースリットは、その視界の端に『三人』が居る事に気付いて敢て見ない振りをした。
「精霊女王。私は思うのです。
フローズヴィトニルの心にあった悪しき感情が封印として残り、その心に在った温かな欠片は封印される事なく分かたれて、貴女方になった。
それは……フローズヴィトニルが封印の間際に想った、願いだったのではないかと。
或いは当時の人々の、フローズヴィトニルに対する想いであり願いだったのではないかと」
「はい。屹度、そうだったのだと……思うのです。だから、この冬を止めたい。眠らせて。あげたいのです」
エリスの零した旋律(ことば)を『聞(かん)じ』ながら、『聖女(猛)』リア・クォーツ(p3p004937)は奥歯を噛み締めた。
頭が痛い。青褪めながらもリアはただ、前を向く。
「ハッ、あたし達を出し抜こうなんて甘いのよ。
どんな時でも、お前をひとりにさせるわけないじゃない。
フギン・ムニンには革命派に、ブリギットさんに……それからかつてサンディにやってくれた事の落とし前を付けなきゃいけないしね」
リアには言えないことがあった。何れだけ大切でも『優しき咆哮』シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)と『ラド・バウA級闘士』サンディ・カルタ(p3p000438)に言えやしないことがある。
「リア?」
「……何もないわ。それにしてもサンディ」
睨め付けたリアにサンディはやれやれと肩を竦める。
「こっそり1人で抜け出した……と思ったんだけど。悪いことは出来ねぇなぁ」
この先にはフギンが居る。後手に回りたくはない。アラクランが何処かで見てや居ないかと周囲を見回したサンディが見付けたのはローズルだった。
乱花と魅咲――『門番』達は数に揉まれながらもじりじりと後退している。まるで、扉を開け放っても構わないとでも言う様だ。
「フギンが仕込みを終える前に、行かなくちゃならないだろ」
「うん。そうだね。けれどさ――君ならここに来ると思ったからね、サンディくん。私たちを誤魔化せると思ったら間違いってヤツさ」
ふふん、とシキが鼻を鳴らして笑った。自慢げな彼女はリアの手を引いてやって来た。
「わかってるよ、サンディくんが用があるのはフギン。
親友で、大切で、…特別な君がどこに行くとしても一緒に行くに決まってるじゃん。
だから離れないで、私をそばに置いて。きっと役に立つからさ」
死ぬ気も死なせる気も無い。フギン=ムニンにとってサンディは『王と自身があったことを近くで見ていた』証人のようなものだ。
彼の身に何も起らないという保証もない。だからこそ、シキは警戒を怠らなかった。
「奴の怒りの原点がもし俺なら、あの日以降のフギンの動きそのものが俺が起因なのかもしれない。
それが『思い上がり』なら、それはそれでいいんだが。どうおもう?」
「どう、かしらね……」
リアは首を振った。旋律は聞こえない。サンディは「まあ、さ」とへらりと気が抜けたように笑った。
「ともあれここで何とかしたいが、マジで死ぬ気はねぇ。シキやリアも来ちまったし、なおさらな。
R.O.O.のフギンですらあれだったんだ、この時ばかりは、サンディ・カルタはクールじゃなきゃならねぇ。……リア、シキ、飛び出すなよ?」
勿論だと頷いた二人。ローズルの出方を見ていた三人に『外交官』ローズルは気付いたのだろうか。
「乱花」
呼んだ声が響く。
「魅咲」
その声音に反応し、『朝日が昇る』赤羽 旭日(p3p008879)が飛び込んだ。
動く脚は一本でも多い方が良い。旭日は影よりその顔を覗かせ、魔種達が勢い良く叩きつけた攻撃から遁れるべく援護を送る。
旭日の役割はある種の錯乱だ。明確な目的を持たないからこそ、露払いには丁度良い。
「早速正念場ですね? 調整したばかりの腕輪には酷ですが飛ばしますよ!」
呟いてから『雨宿りの雨宮利香』リカ・サキュバス(p3p001254)は鼻先で笑う。
「それにしても……魔種とわかりあえないだなんて本当に同感です。ですが仲間(バカ)どもはそうは考えてないみたいですよ?」
「ばかって」
思わず破顔した乱花にリカは一気に詰め寄った。叩きつけられた刃を受け止めてリカは蠱惑的に微笑む。
「確かに魔種は滅ぶべき生命、その理由は等しく滅びを加速させるから……
ならば滅ぶ順番を遅らせる位の融通は私もするのです……同じ事ですし? そんな訳で貴方達には早回ししてもらいますよ!」
「遅らせなくても早くなくても自然の摂理に任せなよ」
「案外話せますね」
「死にたいと思う?」
いいえ、と首を振ってからリカは乱花が一歩弾けるように後退した事に気付いた。そして、己もその場を一度下がる。
「いくのでしてーーーーーー!」
真っ正面から飛び込んだ。それは『道』ではなく『鍵』になれと言わんばかりの魔砲。
『開幕を告げる星』ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)は飛び込んだ。
正面から叩き込まれた魔砲は騎兵隊の尽力もあり壁に一直線にぶち込まれる。
「うわ」
「あー」
魔種の二人が声を上げた。ローズルの合図はコレだったのかと気付いた魔種がげんなりとした表情で自身等の『飼い主』を睨め付ける。
「二人とも、そろそろ中にお招きすればいいじゃないか」
「腹が立つので、『あいつ』を倒してからで!」
走り出した乱花に周囲を取り囲まれていた魅咲がげんなりとした顔を見せた。
成否
成功
第1章 第19節
アイツ――そう名指しをされていたのは『よをつむぐもの』新道 風牙(p3p005012)であった。
「乱花!」
「風牙ちゃんだけでも殺さないとさ。折角『理解者』になりそうだったし」
「ッ――」
どう言う意味だとその眸が語った。二人が魔種である理由が、何かあるのではないか。そう感じずには要られなかった。
魔種とは元は人だったという。ならば、本来在るべき未来がこの二人にも存在していて――本来の想いも願いも歪められて、失わされて……。
(――ッッ! 余計なことを考えるな! 過去がどうであれ、今のこいつらは倒すべき敵!
どのみち、魔種は殺さなければ際限なく不幸をまき散らす! なら!)
風牙が奥歯を噛み締めた。人を救うと言った己の手で、彼を殺さないといけないのだ。
「もうお前らは喋るな! いちいち心をざわつかせやがって! 本当に、鬱陶しい!!」
我武者羅に振り上げた槍が、ぶつかり合う。
――この魔種め、魔種め、魔種め! とっとと、ここから消え失せろ!!
乱花が身をぐりん、と捻った。走るマイケルに付いて『ラド・バウA級闘士』白薊 小夜(p3p006668)が追掛けて行く。
マイケルだけではない。小夜はラド・バウの闘士達と一緒に居た。彼等との試合や研鑽は心地良い。
何時までだって刀で語らえる。そんな空間を作り上げる気風の良い闘士達が助太刀を必要とするのだ。
「――今日は私も一人のA級闘士として轡を並べさせて貰いましょう。
折角の鉄火場だもの、エスコートをお願いしてもいいかしら? 勿論闘士の流儀で」
囁く小夜にマイケルがふんすと言った。堅牢なその小さな闘士にウォロクもサポートに付いている。
「小夜は、強いから頼りにしてる」
「あら、それは喜ばしいわね」
囁く声と共に、舞う。セーラー服のスカートがひらりと揺らぎ、枯菊の花びらの如く、ひらり、ひらりと絢爛たる姿を見せた。
女は美しき花のよう。ただ、散り際は鮮やかにその視線を奪うのだ。
「私ちゃんは! まだまだ絶好調! 開花速報満開だぜぇ!
ギュルヴィさーん、あーそーぼー。へっへーん、恥ずかしがり屋さんめー。私ちゃんらとフェスろうぜぇ! おっと! 逃げるのは禁止な!」
「乱花が粘るから」
呟く魅咲に『音呂木の巫女見習い』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)がにい、と唇を吊り上げた。
魂共にフェスってエモく戦うのも希望ヶ浜ガールの宿命。
「大好きなみんなのことばっか考えてたら、戦略なんてぜーんぶ忘れちゃうんだなーふっはっはっはー!」
目的地に最も早く辿り着くことばかりを考えて居た秋奈に唇を噛んだ乱花が「どいつもこいつも楽しいじゃん!」と笑った。
『桜舞の暉剣』ヴェルグリーズ(p3p008566)は乱花との戦いにだけ注力していた。余裕を挫いたのも、自身が注力することが出来たのも仲間達の支援のお陰だ。
「これだけのイレギュラーズがいる中で逃げられると思っているのかな。キミ達はここの門番で何より魔種だ、逃がすつもりは毛頭ない」
「逃げるつもりはない」
乱花が真っ向から向き合えば魅咲が「乱花!」と名を呼んだ。ヴェルグリーズは気付く、魅咲は一度撤退し、体勢を立て直すことを望んでいるのだろうと。
(でもそれは無理な相談だ。イレギュラーズがコレだけ居るのだから……二人揃って退けるわけがない)
ヴェルグリーズは夢弦静鞘を手に、真っ向から乱花を睨め付けた。
「ここはあくまで入り口、時間との勝負な以上ここで立ち止まってるわけにはいかないんだ。早く道を開けてもらおうか」
極限の集中で叩き込む流星の気配。一瞬の煌めきと共に、その全てが追い越して行く。眩き、星くずのような――
「勝負です、乱花さん! 魅咲さん!」
真っ直ぐに告げた『女装バレは死活問題』トール=アシェンプテル(p3p010816)は『少年』のようにただ、敵を見据えていた。
勢いづいている居間、この流れを逃してはならない。周囲の熱気に飲まれず、ただ、士気を落とさず。
決して驕らず、期待せず。常に事態を冷静に。トールはそれだけを心に掲げて進んでいた。
傷だらけの乱花を前に、距離を詰める。魅咲の支援射撃にトールは真っ向から受けて立った。
「それだけでは止まりません!」
「……うん、……止まれない。
乱花と魅咲に何があったのかは……は知らないけど……
僕達と、今……相容れないなら……ここ戦うしかないよね……。
だって……こっちがやらなくても……向こうは仕掛けてくるし… …今、の僕には2人は邪魔だし……」
『玉響』レイン・レイン(p3p010586)は支援を行ないがら首を傾げた。フローズヴィトニルの道から退いてくれるならば、倒すしかないだろう。
魅咲がフローズヴィトニルに興味があるならば、其方を見ていれば良い。乱花とて楽しみたいならば、その傍で戦えば良いじゃないか。
「……その方が、きっと今より面白い……と思うけど……」
「そうだなあ。でも城門前で戦う孤立無援の魔種って格好良くない?」
乱花が笑った。その気配にレインの指先がぴくり、と動く。
「乱花!」
「魅咲はローズルさんところに行って良いよ。待ってるから」
「……」
乱花を置き去りに魅咲が走って行く光景を眺めてから『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)はぱちりと瞬いた。
「このさむーい場所に似つかわしくない大輪の花が2つ、ねぇ。
この先に行きたいのよ、私達。魅咲ちゃんは行ってしまったみたいだし……通してもらえると嬉しいんだけど……だめ?」
「ダメだよ、オネーサン」
乱花が笑う。もはや傷だらけだ。その身体で振るった剣はとっくの昔に太刀筋は理解されている。
魅咲を城門の中に入れたのは、少しだけ。ほんのちょっぴりだけのエゴだった。
――世の中って儘ならない。
――満足出来たら死んでもいい。
「女の子ねぇ、とっても我儘な女の子!
……その割に、貴女には私と似た怠惰の香りがするわ。本当に欲しいのは、二人で惰眠を貪ることじゃないの?」
「オネーサンのこと嫌いになりそうだ」
乱花は見透かされたと笑った。当たり前だ、一緒に死んでしまえたら何れだけ嬉しいか。
それでも、自分が死ぬ姿も、魅咲が死ぬ姿も見せたくはなかったから。
「オネーサン、風牙ちゃん。『殺しても良い』から、『魅咲の事も殺して』よ」
唇を吊り上げた乱花が勢い良く飛び込んでくる。心のままに剣を振るえば、散るときだって美しい。
その姿を眺め、『雲雀』サンティール・リアン(p3p000050)は肩で息をした。
吐く息は白かった筈なのに、今はもう、荒れた呼気になって汗が滲む。魔種は、かたわれを逃がしたらしい。
(……そうか、そうだね。そうやって、誰も彼もが進んでいくんだ。僕も立ち止まってやいられない)
サンティールはドージェを真っ直ぐに見据えた。
指先が、震えていたけれど。此処で何を怖がる必要があるだろう?
「やあ、ダンスの相手を間違えてやいないかな? ……ねえ? 僕と踊っておくれ!」
「オーケー。けどさ、俺ちゃんもモテモテだからさあ」
ドージェがひらりと身を躱す。叩きつけた『社長!』キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)は後方から自身の部下達がやってくるまで『もう少し』だと直感し、敢てドージェを引き留めるように話しかけた。
「ははぁなるほど。お前の蒐集を良しとしない世間一般の評価の方が悪いと。そう言いてェワケか、ドージェよ。
ま、俺は個人の趣味に口出しする気ないけどな。
俺の知り合いにも人間の一部を集めるのが好きな奴が2人いてさァ。そのうち1人は部下なんだ。かわいい奴だぜ。
拘りの強い連中だ。きっと全員気が合わないぜ! ギャハハ!」
「アハハ、じゃあ俺ちゃんの就職先じゃん?」
からからと笑ったドージェにキドーは気に入ったと唇を吊り上げた。強欲な相手である以上は、『好ましくない』筈がない!
「だけどなあ、どんなに気に入っても、お前は駄目なんだよドージェ。
この国は、お前の前に気に入ってた男がより良くしようとしてた国だからな。
この国自体に愛着がある訳じゃあねェが、気に入ってた奴が歪められた上、そいつがなんとかしようとしてた国も滅茶苦茶にされてなんて非常に癪だ」
「へーえ?」
「ムカつくぜ。気に食わねェ。とてもじゃないが許しておけねェ。
だからなあ、ドージェ。乗っかる相手を間違えたんだよ、お前は――馬鹿なやつ」
「俺ちゃんさあ、莫迦だから良く分からないけど一つだけ分かるぜ?」
ひらりと、その身体が武器を躱した。関節を外し遁れるように後方に下がっていく。
「お前等撒いちゃえば第2ラウンドが待ってるってさ!」
笑うドージェに『Le Chasseur.』アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)は「逃がしません」と静かな声音を響かせた。
いつぞやに出会ったその男は暗躍している。一国が滅びかねない状況でも私慾を優先するのが彼らしいとでも言おうか。
「貴方は貴方のままですね」
「良いことだろ。自由奔放で、我が強い。褒められるところだぜ」
「……感心しているのではありません。呆れているのです」
逃げ回れないように押さえ込むことに注力していたが、それでも彼は強敵か。
雷の気配を放ちながらアッシュが追掛ける。
「いつまでも、と言っただろう? 私はまだ踊れるぞ」
『導きの戦乙女』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)は逃す者かと睨め付けた。
「俺ちゃんさ、ブレンダちゃんの眸好きだよ」
抉り取りたいくらいに。
囁かれた声と共にドージェの指先がブレンダの顔面へと迫る。見開かれた眸、刹那、瞼を降ろし振り上げたウェントゥス・シニストラがドージェの腕に突き刺さる。
「ヒュー、やるぅ」
「……ッ、お前もな」
ブレンダが唇を噛んだ。黄金の気配。可能性をその身に纏わせていたブレンダに『運命は未だ味方をしている』
何も間違っちゃ居ない。この運命は留まることを知らない。廻る、車輪を止めることもない。
「――火砲の弾幕は美味しいか? 調子こいて削れといったな。
だったらこっちも削り倒してくたばらせてやるよド畜生どもがよ!」
無数の弾丸が飛び込んでくる。ドージェが後方へと退き、ブレンダとの間に僅かな距離が出来る。
『蒸気迫撃』リサ・ディーラング(p3p008016)の降らせた鋼の驟雨の下をドージェは「ひいひい」とわざとらしい声を上げて跳びはねた。
「巫山戯ている場合ですか」
「ああ、そうだ。コッチを見ろ――!」
飛び込むアッシュにドージェを避けたか、だが、ブレンダに視線を奪われていた男の『右耳』は置き土産になる。
「あっ! 酷ェ!」
外れたパーツに非難がましい声を上げた男へとリサの弾丸が更に降り注いだ。
開け放たれた城門の中に男が滑り込んでいく。相変わらず逃げ足だけが速いが、その行き先を示すように血が滴り落ちていた。
「――これが、城門の中か」
『優穏の聲』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)は凍て付く氷の城の中を見た。伽藍堂とし、何も存在しては居ない。
(クラウィスの命が尽きたならば、他の者をフギンは犠牲にするだろう。
そして、フローズヴィトニルですらもただの道具として使うのだ。それを許すわけにはいかない)
その道具がエリスである可能性が一番に高い。そして――
(クラウィスはネーロとビアンコと引き換えにしているから、要石を大切に守っているのかと思っていたがそれだけではないかもしれない。
要石は他の欠片よりも強い封印。即ち、フローズヴィトニルに最も近い
……もしかしたら、フローズヴィトニルに対して共感出来るところがあったのでは)
底まで考えて居た男の前に、人影が見えた。美しい氷の空間には『ローズル』と『魅咲』が立っているだけだ。
「いやはや、驚きました。もう少し時間が掛かるかと……」
拍手をする男は穏やかな笑みを浮かべる。
「……『外交官』ローズルか」
「こんにちは、イレギュラーズの皆さん。ローズルと申します。それから、こちらは『クロックホルム』
皆さんとダンスを楽しむ為にエスコートに参りました。氷の下で踊るのはお嫌いですか?」
成否
成功
GMコメント
夏あかねです。
●作戦目標
・『悪しき狼』フローズヴィトニルの再封印
・フギン=ムニン及び敵勢魔種の撃退、撃破
・『氷の城』の崩壊
●重要な備考
当ラリーは『悪しき狼』フローズヴィトニルが『氷の城』から飛び出した時点で失敗判定となります。
皆さんは<鉄と血と>系ラリーのどのシナリオにも、同時に何度でも挑戦することが出来ます。
(決戦シナリオ形式との同時参加も可能となります)
・参加時の注意事項
『同行者』が居る場合は選択肢にて『同行者有』を選択の上、プレイング冒頭に【チーム名(チーム人数)】or【キャラ(ID)】をプレイング冒頭にご記載下さい。
・プレイング失効に関して
進行都合で採用できない場合、または、同時参加者記載人数と合わずやむを得ずプレイングを採用しない場合は失効する可能性があります。
そうした場合も再度のプレイング送付を歓迎しております。内容次第では採用出来かねる場合も有りますので適宜のご確認をお願い致します。
・エネミー&味方状況について
シナリオ詳細に記載されているのはシナリオ開始時の情報です。詳細は『各章 一章』をご確認下さい。
・章進行について
不定期に進行していきます。プレイング締め切りを行なう際は日時が提示されますので参考にして下さい。
(正確な日時の指定は日時提示が行なわれるまで不明確です。急な進行/締め切りが有り得ますのでご了承ください)
●Danger!
当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。
●フィールド
鉄帝国帝都近くに作り上げられた『氷の城』です。非常に巨大な建造物であり、帝都外郭に位置する場所に存在しています。
この内部には『フローズヴィトニル(氷狼)』が存在している他、魔種などが配置されているようです。
内部の現状は把握することは不可能ですが、フローズヴィトニルは完全覚醒に至っていないため、最奥部分で目覚めるのを待っている状況でしょう。
皆さんは、氷の城を攻略し、フローズヴィトニルへと到達、そしてその『再封印』を行なって下さい。
●『フローズヴィトニル』
悪しき狼と呼ばれた鉄帝国の厳冬の原因。猛吹雪を産み出し、全てを雪に包み込む力を有しています。
精霊であったとされていますが、意思の疎通は不可能であり、現状は全てを呑み喰らう妄執の塊ともいえます。
非常に餓えて居るためか、原動力に人の命を引き換えとしています。ですが、完全覚醒時にはバルナバスの権能たる太陽を喰らうことを目論むでしょう。
(そして、完全覚醒した際には鉄帝国の全てを終らぬ冬に飲み込み、その余波は近隣諸国をも包み込むことが推測されています)
【データ】
・現時点では巨大な首だけでしょう。章の進行(時間経過)と共に徐々にその肉体が取り戻されて行きます。
※アラクランの目的はフローズヴィトニルの掌握及び完全覚醒である為、イレギュラーズを侵入者として食い止めるでしょう
・実体化している部位とは他に、その姿を小さくした分霊が無数に産み出されイレギュラーズと相対することが推測されます。
【主だったステータス】
・分霊召喚:複数の分霊を召喚し、それぞれを個別ユニットとして動かします。一定ダメージで消失、ダメージは本体に蓄積します。
・狂吹雪:P。フィールド上の全ての存在に対して『凍結』系統のBSの付与を行ないます。
・凍て付く牙:単体対象に対して強烈なダメージ。『出血』及び『不吉』系列のBS付与を行ないます。
・氷の息吹:幅広い複数対象に対してランダムで何らかのBSを5つ付与。中程度のダメージ。
・狂化:???
・使役:???
●魔種
・『総帥』フギン=ムニン
魔種。『アラクラン』総帥。革命派ではギュルヴィと名乗っていた男。
新生・砂蠍と呼ばれた幻想王国を襲った盗賊団の頭領キングスコルピオの副官。イレギュラーズには一度の敗北経験が有。
その際にはイレギュラーズ三人を捕虜に取り、取引を持ちかけ二人が応じて寝返り死亡しました。
バルナバスに声を掛けられ憤怒により反転し、現在は彼の側近のように動いていますが、目的は別です。
フギンの目的はキングスコルピオのための国を得る事。バルナバスをも打ち倒し、己が最期に立っていればよいと考えて居るようです。
・『爪研ぎ鴉』クロックホルム
魔種。前線で戦う事に長けた青年。筋骨隆々であり、所持するは無骨な斧です。フギンの副官であり、彼に付き従っています。
フギンを庇う他、指揮官のように動きます。基本はフギン第一です。元は幻想の騎士。その矜持も落ちました。
・『ドルイド』ブリギット・トール・ウォンブラング
魔種。ハイエスタの魔女。ウォンブラングと呼ばれた村の指導者であり、非常に強力な雷の魔術を使用する事が可能です。
イレギュラーズを本当の我が子のように扱い、慈しんでいます。それでも為さねばならぬ事があると認識しているようです。
・『無銘の』ローズル
鉄帝国の外交官の青年。フギンと共に活動して居ます。平凡な日常が詰まらなかった為に手を組んでいるようです。
いっそのこと誰かがこの力ばかりの国を蹂躙してくれればなどと思って居るようですが――
・『奔放の白刃』乱花
・『狡知の幻霧』魅咲
魔種。暴食の魅咲と怠惰の乱花。互いのみが大切であるため、仲間でも最悪死ねば良いと考えて居ます。
乱花は剣を駆使し戦います。我流としか呼べぬ変幻自在な太刀筋は読みづらく強力なユニットと言えるでしょう。
魅咲は蒐集した知識を駆使した神秘アタッカー。物理的な破壊は知識の消失や欠損になると幻惑などの搦め手を得意とします。
・『ビーストテイマー』クラウィス・カデナ中佐
魔種。鉄帝国軍。中佐。ビーストテイマーです。元々はアーカーシュアーカイブスの編纂にも関わっていました。
刀を獲物としていますが、本職は獣たちを駆使することであり卓越した技能を有します。
フローズヴィトニルの封印である『要石』を所持しています。意識朦朧としており乱花と魅咲に護られています。
また、『要石』とクラウィスを繋ぐのは彼の相棒であった2匹の狼であるようですが……。
・『脱獄王』ドージェ
犯罪者として収容されていた男。恩赦を受けて最近出て来ました。受けなくても出てくるけど。
ハンティングトロフィーとして人間も含め、パーツを奪い取っていく収集癖があります。此処に居ればイレギュラーズの目玉取り放題ってマジィッ!?
●味方NPC
当シナリオでは『海洋』『豊穣』のNPCなどが皆さんの支援に向けて動き出しているようです。
シナリオの進行により援軍は変化します。詳しくは『ラリー各章 の 一節目』を参照して下さい。
・ラド・バウ闘士
ランク帯で言えばBまでの闘士達が疏らにお手伝いに訪れています。
・アルア・ウォンブラング
ブリギット・トール・ウォンブラングの義理の孫娘。彼女の最期を看取るために皆さんと戦います。
・『氷の精霊女王』エリス・マスカレイド
フローズヴィトニルの欠片。ある程度の自衛は可能です。フローズヴィトニルの居場所を探知します。
・月原・亮 (p3n000006)、ウォロク・ウォンバット (p3n000125)&マイケル、建葉・晴明 (p3n000180)、珱・琉珂 (p3n000246)
夏あかね所有NPCです。何かあればお声かけ下さい。ご指示頂けましたらその通り活動致します。
●特殊ドロップ『闘争の誉れ』
当シナリオでは参加者(プレイング採用者)全員にアイテム『闘争の誉れ』がドロップします。
闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran
同行者確認
同時に行動する方が居るかの確認用です。
【同行者】が居る場合は【同行者有】を選択の上、プレイング冒頭に
【チーム名(チーム人数)】or【キャラ(ID)】をご記入下さい
【1】ソロ参加
個人参加です。
【2】チーム参加
プレイング冒頭に【チーム名(チーム人数)】をご記載下さい。
チーム人数については迷子対策です。チーム人数確定後にご記入下さい。
例:【月リリ(2)】
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