PandoraPartyProject

シナリオ詳細

Tower of Shupell

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●『神』への挑戦
「まぁ、簡単な依頼にはならないよ」
 ローレットに集められた多数のイレギュラーズを前にした時、『蒼剣』レオン・ドナーツ・バルトロメイ(p3n000002)は何時もより幾ばくか真剣な調子でそう言った。
「オマエ達に頼みたいのは或る『塔』の攻略だ。
 どれ位訳知りかは知らないが――その顔を見る限りじゃ何人かは聞いてるな?
 そう、御存知の通りだ。オマエ達が挑むのは混沌の歴史の根源、創世、御伽噺そのものだよ」
 Tower of Shupell――
 それは『スターテクノクラート』の異名を持つシュペル・M・ウィリーの拠点である。
 練達の首都であり、練達そのものでもある『セフィロト』からそう遠くなく。天を突き、聳える塔が持ち主の性格と等しく傍若無人に存在しているのは混沌の住民には知られた話だった。
 同時に彼は禁忌であり、常に世界の治外法権でもあった。
 混沌は彼の存在に干渉しない。同時に彼が何をしようとも干渉『出来ない』。過去にはならず者や有力な軍隊が塔に攻め寄せたという記録が残されているが、彼等は例外なく忽然と歴史から姿を消してしまった以上、やはり『塔』はそういう場所でしか無かった。
「間違いなく混沌最高の天才だよ。いや、天才なんて言葉じゃ片がつかない。
 神ならぬ神と言い換えても良い。恐らくアイツに不可能な事なんて死体を生き返らせる事位のもんだから」
 ローレットにとっては特殊な装備を用意してくれる人間、といった印象が強いが、レオンの言葉はそれ以上だった。
 物事を茶化しがちな彼が直接依頼をもってきて、大真面目な顔を崩さないなら言いたい事は知れている。
「……R.O.O――いや、『ネクスト』事件解決の為だよな?」
「ああ。確証はないが、奴ならこんな状況にも手が打てるだろう。
『真相を既に知っているのか、それとも対処が可能なのかは知れないが』。
 何れにせよ、空振りがない事だけは断言出来る。それがシュペルだから」
「……随分信用してるんだな」
「信頼はしてないけどね」
 この切り返しだけは如何にもレオンらしく、肩を竦めた彼は小さく嘆息した。
「問題はそこなんだ。アイツは兎に角変わり者で性格が悪い。
 悪いと言うか……まぁ、何だ。兎に角面倒くさい。
 ……そういや、オマエ達。ネクストでは竜域に挑戦してるんだろう?
 アイツの出方は不明で、今回の『塔』が冗談で済むのか、その竜域より危険なのかすら『分からない』。
 規格外が過ぎるのは碌でもないもんだ」
「……マジかよ」
「大マジ。遊ばれるのか、殺しに来るのかどうかも分からん。
 ついでに言うなら素直に協力を願ってもまず言う事は聞かないし、望む結果は得られないだろう」
「……だろうな」
「それで、必要なのが――」
「――『塔』の攻略、と」
「その通り」
 レオンは頷いて説明を足した。
「アイツは天上天下自分に並ぶ者が無いと確信しているからな。
 まず、話を聞いて貰うには『最低限』聞く価値がある人間だと証明する必要がある。
 ご自慢の『塔』を超えて会いに来れる人間ならまさにお誂え向きって訳だ。
 話が分かり易いだろう? だから、オマエ達には『塔』を攻略して貰う必要があるんだ」
「つまり、これはローレットを挙げての挑戦だ」とレオンは言う。
 曰く総力戦で『誰か』が届けばそれでいい、と。
「成程ね。でも、確かレオンはもう攻略済みなんだろう?」
「なら、アンタが話せば」。そう言いかけたイレギュラーズに苦笑したレオンは首を振った。
「アイツは『塔』を超えた人間の願いを『面白ければ』叶えてくれる。
 だが、それは一回限りのパスポートだ。俺はもう力を借りちまってるからね」

 ――ローレットに協力しろ。混沌の神託をぶっ壊すギルドだ。絶対退屈はさせねぇからよ?

「……ま、そういう訳だ。だから資格が残ってるのはオマエ達だけ。
 ただ、悪い事ばかりじゃねぇぞ。今言った通りだ。
 もしお目通り叶い、願い事がお眼鏡に叶ったなら――条件はキツイが不可能は殆どない。
 素直に叶えてくれるかは別として『そういう事』だ。
 まさに神代の冒険の英雄譚みたいなもんで――頑張りがいがあるってもんだろう?」

●プレイヤーキラー
 幻想北部商都サリュー。
「実に愉快な展開じゃないか!」
 執務室の机に頬杖を突いた上機嫌極まるクリスチアン・バダンデールの地獄耳はこの日、最高に耳寄りな情報を掴んでいた。
 それは言わずと知れたホット・ニュース。
 Tower of Shupell――混沌の『聖域』にローレットが挑む大作戦の話であった。
「上で待つ『神』は万能だと聞く。
 ローレットにつまらない願いを叶えさせるのは退屈だし……
 ここは一噛みしたくはならないかね?」
「誰ぞに頼るのは嫌いでな。そう興味はないが?」
「いいや、嘘だね。それは単なる手段と目的の順序問題だぜ。
 君が君の願いを叶えたなら、闘争は永遠のものになるだろう!?
 君はこの世の混乱の為に、或いはその先に待つ『君の世界』の為に私を手伝っているのだろう?
 なあ、そうだろう。バイセン!」
 何時になく興奮し、熱っぽい雇い主(クリスチアン)に死牡丹梅泉は辟易した。
 言い出したら聞かない男である。子供のように無邪気に残酷極まる行為を『やり切る』男なのだ。
 その好奇心が向く先には大抵碌でもない未来が降りかかる。
「……まぁ、良い。それで何じゃ。主はわしにちょっかいを出せと言う心算か?」
 梅泉とて、毎度顎で使われる趣味はないのだ。
 あのイレギュラーズと一戦交えるのは吝かではなく。
 吝かではないから――何だかんだで『お使い』をさせられているのは否めないのだが。
「いいや、違う」
 だが、この日のクリスチアンの言葉は何時もと少し違っていた。
 こんな時、大抵彼は「任せるから遊んできたまえ。私を楽しませてくれたまえよ」等と言うのだが……
「今回は君にお使いを、じゃない。私も行くからね」
「――ほう?」
 眠たげだった梅泉の目が開く。
 チェスのクイーンのように滅多な事では動かないクリスチアンが重い腰を上げるのは滅多に見れるものではない。
「……じゃが、構わんのか? ローレットに堂々と敵対しても」
「何を言っているんだ、バイセン。敵対なんてとんでもないよ。彼等と遭遇するのは偶然さ。
 彼等が伝説の塔に――神に挑むのと同じように、偶然我々もそうするに過ぎない。
 更に間の悪い事に私達は独自の情報を得ているんだ。
『塔を攻略出来るのは一組だけ』。意味が分かるかい?」
「陰湿な主らしいな」
 梅泉は呆れた調子で溜息を吐いた。
 クリスチアンは出会ったイレギュラーズに例えばこんな風に言うのだろう。

 ――塔を攻略出来るのは一組だけなんだ。だからこの場は我々に譲って貰うよ?
   もし、譲ってもらえないなら……そうだ、ここはフェアに勝負といこう!
   勝っても負けても恨みっこなしで、ね!

 承諾する筈がない。結果として物別れするのだから『やむを得ず排除せざるを得ない』と言いたい訳である。
「そういう訳だから、急いで準備をしよう。
 留守番は……今回は時雨に任せよう。私、君、たては君、それから小雪君。
 チーム・サリューだ。素晴らしい。
 いやあ、私もデスクワークには飽き飽きしていたんだ。
 たまには運動をしないとこの身体も鈍ってしまうというものだからね!」
 相変わらず上機嫌のクリスチアンを半眼で眺め、梅泉は考えた。
(成る程、この男の底は知れない。見極めるも良き機会じゃろう。
 さて、イレギュラーズには災難じゃが、乗り越えてこそ『勇者』といった所か――)

●『神』
 一体何時ぶりの出来事か。
 酔狂の気まぐれと、愚者の蛮勇。
 それを除けば『塔』を望む者等多くはない。
 ましてや本気で攻略を目指す等――天に唾する方が『マシ』であろうというものだ。
「一つ前は『蒼剣』か。その前は『あの女』。その前は――アイオンだっけ?」
 実際問題、混沌の長い歴史の中でも『塔』を踏破した者等、数える程も居ないのだ。
 だが、どうも、ローレットと――オマケが『塔』を目指しているのは本当のようである。
『散発』と違うのはローレットが本腰を上げた以上、『攻略』を重視してくる事は間違いないという点だ。
「ま、経験者(レオン)の考えそうな事ではある。
 ……しかし、まったく。どいつもこいつも俗っぽい。
 小生に謁見しようというのに、実に嘆かわしい限りだな?」
 混沌の全てを見通し、全治を気取る――『スターテクノクラート』は皮肉に口の端を持ち上げていた。
 練達の三塔主から協力を要請されたのは随分前の出来事だが、当然そんなものは一蹴した。
 そうしたら今度はこの通りである。自分の『お気に入り』をてこに話を進めようという事なのだろう。
「……………ま、良いか」
 時間は売ってもなくならない位に余っていて。
 代わり映えしない長閑には些か飽き飽きしていたのは事実である。
 何年振りにか――それも迷い込むレベルではない。
『塔』に挑むに最低限礼儀の整った連中が大挙して押し寄せるなら、これはシュペルにとってもいい娯楽であった。
「……うむ、レオンの所の連中ならこんなものか?
 いや、もう少しか? それともやり過ぎか?」
 彼は空中に生じた青い魔力のコンソールを素早く打鍵する。
 その一打ごとに『塔』の内部は姿を変え続けているのだ。
 元より外から見える姿は仮初のようなもの。
 無限に引き伸ばされ、自由に再構築される内部空間は彼のみに許された至高の幻想そのものである。
『塔の見た目、外から見える高さに意味は無く。実際問題一度足を踏み込めばそこには別の世界そのものが広がっている』。
 シュペルに言わせればシステムを介して『混沌』をコピーしたR.O.O等、玩具に過ぎない。
「良し、一先ずはこれでいい」
 塔を訪れる稀人であるレオンの顔を思い浮かべ、シュペルは作業に『一先ず』ほんの少しの手心を加えた。
 先の保証はしないが、一層から全滅してはいよいよ退屈であるし、何より。
 彼が自分のルールを理解しているのに満足した。お願い事を二回されるのは好きじゃない。
「何人が会いに来る事か――」
 恐らくローレットはレオンの指揮で実に効率的に『攻略』を目指す事だろう。
 それに、ダークホース。『おかしな連中』のお手並みも見物するには愉快だった。
「――尤も、期待はしないがね」

GMコメント

 YAMIDEITEIっす。
 Tower of Shupellのてっぺんでもやしと握手!
 非常に特殊なラリーです。以下を読み込んでご参加下さい。

●依頼達成条件
・Tower of Shupellの攻略

※ローレットの誰かが達成すればOKです

●シュペル・M・ウィリー
 混沌において神に最も近しい人間。
 魔術王であり、鬼才のアーティファクトクリエイター。
 性格は面倒くさくて傲慢。塔を登って会いに行きましょう。

●Tower of Shupell
 練達の『セフィロト』近郊に存在する塔。
 シュペル・M・ウィリーのアトリエとされており伝説そのものです。
 外から見えるのは高い塔の姿ですが、実は内部は一つの別世界になっておりあらゆる変化が生じます。
 塔は登るものですが下る事もあれば、別の事態も生じ得ます。
 またレオンは外見に関係なく空間は無限に続き、何もかもを内包していると言っています。
 塔を攻略した人間は(シュペルが気に入る話なら)願いを叶えてもらえるそうな。

※本人的に面白くない事願うと不機嫌になって叶えてくれない場合もあるそうな。

●チーム・サリュー
 幻想北部商都サリューを支配する一党。悪人です。
 クリスチアン・バダンデール、死牡丹梅泉、紫乃宮たては、刃桐雪之丞からなる四人パーティ。
 所謂プレイヤーキラーであり、プレイヤーチームにランダムでエンカウントする場合があります。
 エンカウントした時、どうなるかは不明です。

●第一層『星彩迷宮アリアドネ』
 Tower of Syupellに足を踏み入れたパーティはその瞬間、それぞれ全く別のポイントに強制転移させられます。
 入り口は同じでも全く別の場所。そしてそれは無限を感じるような大迷宮です。
 シュペル側が一応『手加減』してくれているのか、同チームのメンバーは固まって転移しますが、それぞれのパーティの開始ポイントはバラバラです。
 恐らくは『迷宮をクリアする為のゴール』が存在するものと思われ、ゴールに到達した人間は第二層へ移動出来るものと推定されます。
『星彩迷宮アリアドネ』は大迷路の形状をしており、道中には様々なトラップや、番人(経験者であるレオン曰くシュペル・ナイトと称される彼の駒)が存在しています。
 シュペルがどれ位『本気』かは不明ですが、忘れてはいけないのは彼にとっては冗談程度の事でも他人には重篤な結果を及ぼす可能性は低くない事です。
 死亡判定を含むその他様々な判定が状況上生じ得る事を忘れないようにして下さい。
 制限時間やゴールまでの距離は不明(かつ単純に『配置運』にも左右されると考えられる)ですが、中長期の対応が強いられる可能性は高く、単純な戦闘力のみでの解決は容易くないと考えられます。
 ギフトや非戦スキル等、効果があるものはありますが、塔主は混沌最高の『気分屋』かつ『反則』です。
 尚、レオンはこの迷宮を経験した事はありません。「俺の時の第一階層とはどうせ違うから当てにならない」との事。

 シナリオ結果(返却状態)には以下のステータスが存在します。(ハッキリと記載されます)

【クリア】:現階層をクリアし次階層への参加権を得た状態です。おめでとうございます。次階層をお待ち下さい。
【継続】:返却結果を『オープニング』と捉え、その状態に追加のプレイングをかけて下さい。(チームのプレイングが揃わない場合、プレイングの内容等によっては追加の結果が来ない場合があります。その場合は下記の【脱落】と同様の扱いになります)
【脱落】:現階層にてクリアに失敗しチームの脱落が確定した状態です。残った人を応援しましょう!

●特殊な備考
 Tower of Shupellに参加するルールと心構えです。
 全て守られていないプレイングは有効としない場合があります。

・攻略者は必ず四人のチームを編成して下さい。
・チームメンバーは一行目に【】でくくったチームタグを記入して下さい。(例:【特攻野郎ローレット】)
・本シナリオは『ノックアウト形式』です。第一層を攻略成功したチームのみが第二層以降の参加権利を得ます。第二層以降のルールも同じです。最新層で攻略成功しなかったチームは(不参加も含めて)以降層では自動的に不採用になります。
・特に悪い所がなかったとしても脱落する時はします。そういうものだとご理解下さい。
・PVPではありません! 誰かが届けば皆がOKです。自分が落ちても次の誰かに託す気持ちで応援しましょう!

●情報精度
 このシナリオの情報精度はEです。
 無いよりはマシな情報です。グッドラック。

●Danger!
 当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
 予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。

 以上、宜しくお願いいたします!

※2021/07/15追記
 各チームの攻略状況を公開しています!
https://rev1.reversion.jp/page/shupelt_challenge

  • Tower of Shupell名声:境界20以上完了
  • GM名YAMIDEITEI
  • 種別ラリー
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2021年10月01日 23時15分
  • 章数5章
  • 総採用数397人
  • 参加費50RC

第2章

第2章 第1節

●究極星択カルネアデス
「……いや、中々面白い塔だね、バイセン!」
 Tower of Shupell第一層――星彩迷宮アリアドネを突破した【チーム・サリュー】。
 クリスチアンは興味深そうに周囲を見回し、機嫌良く傍らを行く梅泉にそう声を掛けていた。
「一層でも何人かのイレギュラーズ――ローレットの諸君と『遊べた』し。
 中々上々のスタートじゃあないか。……ん? 君達はあまり満足そうではないな、特にたては君は」
「当たり前です。一人も仕留めていないですし、何よりうちの『逢いたかった』連中は見かけませんでしたやないの」
「成る程、道理だね」
 肩を竦めたクリスチアンに雪之丞が苦笑した。
 アリアドネの中心部に出現したワープホールから上へ登った一行は長い通路をのんびりと歩いていた。
 恐らくは多数のイレギュラーズも『上(ここ)』に到達している以上、一本道で『会わない』のは不自然だったが、恐らくは無数に存在するこの回廊の一つに各々が飛ばされているといった所だろう。
 一行が小部屋に辿り着いたのは通路を二時間程も進んだ後の話だった。
「おやおや! これは」
「扉じゃな。二枚ある」
 小さな部屋の奥には賓客を出迎える二枚のドアが佇んでいた。
 達筆で記された文字が目を引く。
 右の扉は『歓楽の道』。左の扉は『苦難の道』。
 名前の下にはそれぞれ、

 ――歓楽容易を求めるならこの扉を開け。

 ――艱難辛苦を求めるならこの扉を開け。

 なる命令が記されている。
 そして、もう一言。

 ――但し、良く考えて選ぶこと!

「……どう思う?」
「さて、な」
 クリスチアンの言葉に梅泉は眉を動かした。
「何が待つかは知れぬが、こういうものは得てして不可逆になろうという予測はつく。
 そしてこの塔主は恐ろしく性格が悪い事も知れておる。主といい勝負じゃろうな」
「はは! 面白いジョークだね!」
 クリスチアンは大笑し、すっと目を細めた。
「砂時計があるな。さしずめこれが『タイムリミット』か?」
 第二層は『選択』だ。シンプルながらにいよいよ何が起きるか分からない。
 月並みに、思わせ振りな歓迎は一層よりも余程『警戒』を余儀なくされるものだった――



●GMコメント
 YAMIDEITEIです。シナリオを補足します。

●第二層『究極星択カルネアデス』
 カルネアデスの名称は究極的選択の代名詞、緊急避難の逸話から。
 Tower of Syupell第一層『星彩迷宮アリアドネ』をクリアした皆さんは、長い通路に転移させられました。
 気の遠くなるような一本道を進み、辿り着いた先は殺風景な小部屋でした。
 他に仲間達や敵の影はありません。
 部屋の奥にはそれぞれ『歓楽の道』と『苦難の道』と称される扉が存在しています。
 注意書きと思われる達筆の文字が記されています。
 歓楽の道には『歓楽容易を求めるならこの扉を開け』。
 苦難の道には『艱難辛苦を求めるならこの扉を開け』。
 共通の注意書きらしきものとして『但し、良く考えて選ぶこと!』とあります。
 扉の先に『何』が待っているかは一切不明。選ばせる意図も不明ですが、シュペルの本気程度に拠らず、忘れてはいけないのは彼にとっては冗談程度の事でも他人には重篤な結果を及ぼす可能性は低くない事です。
 死亡判定を含むその他様々な判定が状況上生じ得る事を忘れないようにして下さい。
 砂時計がタイムリミットかは知れませんが、どうやら二十四時間を示している様子。
 何れにせよ、兎に角選ぶ必要があるのは間違いありません。
 ギフトや非戦スキル等、効果があるものはありますが、塔主は混沌最高の『気分屋』かつ『反則』です。
 尚、レオンはこの迷宮を経験した事はありません。「俺の時とはどうせ違うから当てにならない」との事。


 第一階層『星彩迷宮アリアドネ』で【クリア】判定を貰ったチームのみに参加権利が生じます。
 第二層でも容易に理不尽や脱落は起き得ます。以上、宜しくご参加下さいませ。


第2章 第2節

夜乃 幻(p3p000824)
『幻狼』夢幻の奇術師
ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
剣閃飛鳥
ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)
人間賛歌

●究極星択カルネアデス(輪舞)
 ――歓楽容易を求めるならこの扉を開け。

 ――艱難辛苦を求めるならこの扉を開け。

 行為は単純で説明書きは明快極まりない。
『歓楽の道』、或いは『苦難の道』。
 何れかを選ぶ事のみを求められた第二層は果てしない持久戦を余儀なくされる第一層とは全く毛色の違うものだった。
 親切心の心算か、それとも何か別の意味があるのか――

 ――但し、良く考えて選ぶこと!

 ――付け足された一文も【輪舞】の面々に何かの答えを連想させるものでは無かった。
「良く考えて……とは、言ってもね」
 苦笑い混じりの『清楚にして不埒』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)は大きく嘆息せずには居られなかった。
 論理的に筋道立てて考えるには大抵の場合、材料が必要だ。部屋の中は殺風景であり、刻限を思わせる砂時計のみが時間を告げている。
 部屋を見回した限り、他に答えに近付けるような余地はなく、つまり彼女等は『唯、求められている』。
「どうする?」
「そりゃあ、勿論」
 ミルヴィは問いながらも大凡、仲間の回答の予想はついていた。
「辛苦の道を選ぶ。おれは生粋の冒険馬鹿でね。
 危険に賭けた方が楽しいと思ってるのさ。ダンジョンアタックは冒険の華、ドラゴンが出ても恨みっこなしだ」
「ああ。消去法ってやつだな」
 口元をニヒルに歪めた『陽気な歌が世界を回す』ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)に『『幻狼』灰色狼』ジェイク・夜乃(p3p001103)が頷いた。
「ハッキリ分かってるのは塔主は性格が悪いって事だ。
 俺達の苦しむ姿を見て楽しむ事こそ――奴にとっての『歓楽』そのものじゃねえのか」
「話は決まりましたかね」
 こんなもの――肝の座り方も、怯まない所も惚れ直す他ないではないか。
 揺らがない夫の不敵な笑みを見て『『幻狼』夢幻の奇術師』夜乃 幻(p3p000824)は満足そうにそう言った。
 成る程、楽か苦かと問われて楽を選んだ相手を『甘やかす』ような塔とは思えない。
『実際の所、部屋にヒントがないのなら塔の有り様こそがプレイヤーの回答の理由、要因になる他はあるまい』。
「塔自体が難関辛苦なら選ぶ道は一つ。行きましょうか――」
 頷いた輪舞の面々は一切の油断無く、『苦難の扉』の前に立つ。
 扉を明けた幻のオラクルはその瞬間、『自身等に近く降りかかる数多の厄災の映像を断片的に見てしまった』。
 だが、全てはもう遅いのだ。
『扉の法則の答えは未だ見えず』。
 暗い虚のように広がった先の通路は【輪舞】を飲み込み、逃がしはしない――


結果:【脱落】

※扉の選択とその結果は或る法則で定められています。(相応に理不尽ですが統一されています)
 その法則は単一のリプレイだけでは分からないかも知れませんが、ストーリーの進行で解き明かされると思います。
 第二階層の『究極星択』そのものにはパーティの戦闘力等は一切関係しません。(その後の結果は微妙に変わるかも知れないです)
 既に【継続】以外のプレイングは締め切られておりますので、是非予測してみて下さい。

成否

失敗

状態異常
夜乃 幻(p3p000824)[重傷]
『幻狼』夢幻の奇術師
ジェイク・夜乃(p3p001103)[重傷]
『幻狼』灰色狼
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)[重傷]
剣閃飛鳥
ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)[重傷]
人間賛歌

第2章 第3節

ベルフラウ・ヴァン・ローゼンイスタフ(p3p007867)
雷神
小金井・正純(p3p008000)
ただの女
ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)
薄明を見る者
リディア・T・レオンハート(p3p008325)
勇往邁進

●究極星択カルネアデス(星花)
「シンプルな問いかけです。故に難しい」
 柳眉を曇らせた『夏の思い出に燻る』小金井・正純(p3p008000)は複雑な渋面をして。
「あはは、なるほど……」
『勇往邁進』リディア・T・レオンハート(p3p008325)は思わず苦笑せずには居られなかった。
「一階で大変な目に遭った私達に対して、敢えてこういう選択を迫ってくるのですね」
 紆余曲折を経て辿り着いた部屋がこんな有様ではそんな顔にもなろうというものだ。
【星花】の一層探索は決して順調ではなく、残ったパーティの中でも最大まで余力を削られた彼女等は辛うじて二層に辿り着いたという経緯がある。
 扉を選べというだけの第二層、『星択』は満身創痍の彼女達にとっては胸の詰まりそうな問い掛けに違いなかった。
「勿論、ハッタリの類ではないのでしょうね。
 私達の思う苦難と、彼が思う苦難では、その次元もまったく違うのかも知れないし。
 だから、決して強がりは言えませんけど――」
 チラリとリディアが見やった『金獅子』ベルフラウ・ヴァン・ローゼンイスタフ(p3p007867)が「うむ」と大きく頷いた。
「何はともあれ、休息を取る事としよう。
 この先が、この問いがもたらす意味は知れないが、二層が『こういう形式』だった事は我々にとっては追い風だ。
 大いに休み、大いに悩めばその内答えも見えてこよう。
 文字の主もわざわざ『よく考えろ』と言ってくれているのだし」
 彼女はそこまで言ってから「いや?」と首を捻った。
「……違うな。そもこの二択は我々にとっては二択ですらない。
 我々の目的はハッキリしていて、それは塔の踏破だ。故に我々が考えるのはどちらの扉を選ぶかではない。
 何れを選んだとしても現れるであろう難関試練をどう越えるかのみが重要な話だろう?」
 どっかと部屋の中央に座り込んだベルフラウは酷い消耗を思わせぬ程に意気軒昂であった。
「……ええ」
 正純はそんな彼女に薄く笑った。
(星の声は――いえ、今回頼るのは違いますよね。
 この選択は私、いえ私達が選び、掴みとるべきものです。
 願いを求めながら、他の何かに頼っていては、例え道が開けたとしても、何も変わらない――)
 幸いにも部屋の中で刻限を告げていると思しき砂時計は二十四時間近い猶予を与えてくれているようである。
「ほら、怪我を見せてみろ」
 傷の手当を診る『猪突!邁進!』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)に「ありがとうございます」と正純が頭を下げた。
 酷い消耗を重ねた【星花】にとってこの時間はとてつもなく貴重だった。
 早く選んで得られる優位もあるやも知れぬが、遅く選ぶペナルティは提示されていない。
 酷くゲイムである事を重視するこの塔は理不尽ながらに筋を通した対応をするものだろうと思われた。
「……で、結局どうする?」
 ゆっくり休んで、長く考えて。
 問い掛けたブレンダにリディアは神妙に応える。
「打算的な思考を何度繰り返しても、満足のいく答えが出てきません。
 なればせめて、悔いのない選択を。私達が私達らしく、全力で挑める道を選びたい――です」
「……だな」
 破顔したブレンダは立ち上がる。
「問いに対する答えなど既に決まっている。
 私の――私達の歩くべき道に楽の文字は存在しないのだ。
 故に選ぶのは艱難辛苦。何が待ち受けていようと踏み潰す――おっと、失礼!
 さぁ、前に進むだけだろう?」
【星花】の開いた扉は『苦難の道』。先行きに待ち受けていたものは――彼女達の想定とまるで違うものだった。


結果:【クリア】
特殊結果:十分な休息により【消耗】を回復!

成否

成功


第2章 第4節

赤羽・大地(p3p004151)
彼岸と此岸の魔術師
セレマ オード クロウリー(p3p007790)
性別:美少年
エルシア・クレンオータ(p3p008209)
自然を想う心
楊枝 茄子子(p3p008356)
虚飾

●究極星択カルネアデス(ヤ羽)
「……よし、よく考えよう!ㅤおやすみ!!!」
 冗談のように聞こえる『羽衣教会会長』楊枝 茄子子(p3p008356)の台詞だが、実際の所それはまるで冗句ではない。
 ……挑戦するチームが二十六個も残っているならば。
 横紙破りをする組があってもおかしくはない。
 ルールがあるから従うのが正道ならば、ルールの外を探索するのはまさに邪道である。
 だがこの塔においては少なくとも正道を進まねばならない『ルール』は無い。
 何一つすらあてにならない伝説の塔で頼りになるのは結局己の判断に過ぎないのだから。
「良く考えろ、という事は、暫くどちらも選ばずに様子を見ろという事ですね!
 態々砂時計なんてものを用意してあるという事は、砂の中にヒントなり真の選択肢なりが隠されているのでしょう。
 ……とは言え、天才を自負するシュペルがそんなお約束の仕掛けを作るだけとは思えませんよね」
 顎に指を当てて小首を傾げる『自然を想う心』エルシア・クレンオータ(p3p008209)は目を凝らして壁や床、天井といったものを凝視している。
「塔の主の性格上、『歓楽の道』を選ぶのは末恐ろしい。
 俺個人としては、『苦難の道』に手を掛けそうになるが……
 ……これまた『よく考える』ならそう簡単にはいかない所だ」
『未来を、この手で』赤羽・大地(p3p004151)の言葉に『性別:美少年』セレマ オード クロウリー(p3p007790)が頷いた。
「これみよがしな砂時計、扉、そして文字……
 まさに選べ、すぐ選べ、とっとと選べと尻を蹴り上げられている気分じゃないか?」
 端正な顔を皮肉に歪めたセレマは曰く『これみよがし』な扉に温い半眼の視線を送っていた。
 茄子子はごろんと寝転んだままだし、相変わらずエルシアは周囲を調べている。
 大地は『一先ず』待ちが賢明と待機を決め込んでおり、取り分けこのセレマは『選択そのもの』に懐疑的である。
 即ち。【ヤ羽】は選択を迫る扉の前で。

 ――どちらも選ばない――

 まさにそんな『腰を据えた結論』を出そうとしていた。
「本当にこれ他のチームと情報共有出来たらいいんですけどねぇ」
「艱難辛苦も歓楽容易も別に求めて無いし、会長は平穏無事がいいな」
 エルシアがぽつりと呟き、半分寝に入っている茄子子が何処かぼんやりと応えた。
 これは博打には違いないが、元より奇跡を束ねられねば攻略が不可能な塔なれば。賭けてみる価値位は残ろう。
 ――果たして。
 砂時計が落ち切るまで運命は動かず。
 その砂が最後の一垂らしを終えた時、【ヤ羽】は塔の外へと放り出された。
 究極の星択は必ず選ばねばならぬ。その横紙破りは、間違いだ――


結果:【脱落】

成否

失敗


第2章 第5節

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)
優しき咆哮
ツリー・ロド(p3p000319)
ロストプライド
クラウジア=ジュエリア=ペトロヴァー(p3p006508)
宝石の魔女

●究極星択カルネアデス(火廣金)
「よく考えて選べ、か」
 流石の『宝石の魔女』クラウジア=ジュエリア=ペトロヴァー(p3p006508)もこれには苦笑を禁じ得ない。
【火廣金】が挑みしは混沌の伝説であり、最悪とまで謳われた試練の塔だ。
 故に単純である程に選び難い。そこに書かれている字面を『よく考える』程に尚更である。
(おそらく正解のルートや考えは後付でしかありえまいな。
 扉の意味などが対になっているようじゃが、艱難辛苦の対義語は歓楽容易ではあらぬしそんな熟語も存在せぬ)
 つまる所、『出題者』は素直な問題は用意していない、とクラウジアは読んでいた。
 何れにせよヒントの殆どない二択である。
 どれ程の深読みをしようとも、明確な答えをすぐに見つける事は困難で。
 或いはそれはクリアした時、道半ば途絶えた時に知れる事――いや、或いはそうなってもハッキリとは分からない事なのかも知れなかった。
「選択肢は『歓楽の道』、『苦難の道』、『待機』……
 引き返すも一応あるけどつまんないから無しで。
 強いて選ぶなら『歓楽の道』かな。
 明確にそれを『選んだ』理由を示すならそうだな……仲間たちが『楽しくいられること』が私の幸せだから」
「まずは休もう」と提案した『龍柱朋友』シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)の言葉は気負わないものだった。
 元より抽象的な二択である。彼女位単純に考えるのも有りなのかも知れない。
「二つの扉、歓楽容易か艱難辛苦、求めるなら?
 そうだな。俺の求める物は妖精女王の悲しい定めの断ち切る事。妖精達が楽しく暮らせるようになる事……
 苦難は敢えて求めなくても、やがて来るなら今求めたくはないな」
 冬の王の力と妖精郷の苦難をちらりと思い出し、『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)は言った。
「どちらにゆこうか、悩ましいですの……
 でも、あのシュペルさんが、おなじようなダンジョン階層をまた作る、なんて凡人の思考を、なさるでしょうか!
 ゆえに、『歓楽』『苦難』『待機』の、選択肢……選ぶべきも、凡人は選べないものに、なりそうですの!
 第一階層を突破した方は塔を知っていますの。ならば、短絡的に『歓楽』は、選べないはず!
 ですので、わたしは……逆を、ゆくのがいいと思いますの!」
『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)が理路整然と冴えた所を見せた。
 休憩しながらの話し合いは長く続いた。
 多数が『歓楽』を選ぶならば是非もなし。
 たっぷり時間を置いた【火廣金】は歓楽を選び――地獄に出会った。


結果:【脱落】

成否

失敗

状態異常
ノリア・ソーリア(p3p000062)[重傷]
半透明の人魚
シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)[重傷]
優しき咆哮
ツリー・ロド(p3p000319)[重傷]
ロストプライド
クラウジア=ジュエリア=ペトロヴァー(p3p006508)[重傷]
宝石の魔女

第2章 第6節

秋月 誠吾(p3p007127)
虹を心にかけて
リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)
黒狼の従者
アカツキ・アマギ(p3p008034)
焔雀護
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃

●究極星択カルネアデス(黒狼)
「うーむ? 良く考えて選ぶこと……か。
 正直、どちらの扉もあまり良くない気がするがのう……」
 眉をハの字にした『焔雀護』アカツキ・アマギ(p3p008034)の『予感』は恐らく間違ってはいないのだろう。
 目の前に分かりやすい二択があるとしても、選択の余地がそこだけに働くとは限らない。
 意地の悪い引っ掛け問題を好みそうな出題者を相手にするならば、相手の話は程々に聞いておくに限るだろう。
 故に【黒狼】は待つ事を考えた。
 体力の回復を図ると共にひょっとしたら出現するかも知れない第三の選択肢を待つ、という事だ。
「そう。パンを焼くときは種をよく捏ねた方が美味しくなりますよ」
「む、難しいのじゃ。また炭になってしまうのじゃ!」
 手持ち無沙汰の時間、『黒狼の従者』リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)がアカツキに料理の指南をしてみせている。
 火を起こすアカツキの火力が強すぎて、リュティスがなんとも言えない顔でそんな彼女を見つめていた。
「さて、歓楽容易にしろ、艱難辛苦にしても何かがありそうではあるが……
『但し、良く考えて選ぶこと!』が無意味である筈もあるまい。
 さて、どういう意味合いなのだろうな」
「単純に待てという事であれば我々は突破が叶おうが」と『黒狼の勇者』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)。
 しかし、精悍にして凛々しいその横顔は自身のその楽観的な言葉を余り信じていないように見えた。
「まぁ、結末は兎も角、だ。良く考えて選べ、と来たが……渡りに船って言えば間違ってねぇな」
『Mors certa』秋月 誠吾(p3p007127)の言葉にベネディクトは頷いた。
 アリアドネの長い探索行は歴戦の戦士達である【黒狼】からしても大変なものだった。
 丸一日近くも安全地帯で休息が取れるというのは『この先』を考えても大きい。
 いや、『この先』がある保証はないのだが――それはともかく、人心地をつけているのは間違いない。
 最低限の警戒は残しながら。【黒狼】が部屋に入って凡そ二十三時間が経過した。
 一時間を残した段階でも『新たな選択肢』は生じず。彼等は今あるものを選ぶ事を余儀なくされる。
「考えれば考えるだけ、思考の迷路に迷い込みそうだが――」
「――情報が少ない。裏を読むこともできない。なら正直な道を選択するのもいいかもな」
 ベネディクトの言葉に誠吾が応じた。
 苦難を選ぶも歓楽を選ぶも博打ならば、裏の裏、本当を信じて『歓楽』を選ぶのも一つである。
「どのような障害があろうとも。『まだ』一時間もあるのです。
 先を、切り開いてみせましょう」
 リュティスの言葉に一同は頷いた。
【黒狼】が選びしは『歓楽』。
 言葉を裏切る試練猛攻はアリアドネの比ではない位に彼等の進行を認める心算のないものになっていた――


結果:【脱落】

成否

失敗

状態異常
秋月 誠吾(p3p007127)[重傷]
虹を心にかけて
リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)[重傷]
黒狼の従者
アカツキ・アマギ(p3p008034)[重傷]
焔雀護
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)[重傷]
戦輝刃

第2章 第7節

ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
祝呪反魂
アリア・テリア(p3p007129)
いにしえと今の紡ぎ手
カイン・レジスト(p3p008357)
数多異世界の冒険者
天目 錬(p3p008364)
陰陽鍛冶師

●究極星択カルネアデス(創世塔)
「『歓楽』か『苦難』か。また悩ましい問い掛けをしてくる物だよね――」
 大きく息を吐き出した『数多異世界の冒険者』カイン・レジスト(p3p008357)は【創世塔】の仲間の顔を見た。
 手強い上に長期の探索を余儀なくされたアリアドネに比べ、第二層は単純極まりない格好をしている。
 詳しい説明がある訳ではないが二層で求められているのは『二つの扉の内一つを制限時間内に選ぶ事である』と推測される。
 そしてそれ自体は何ら苦労のあるものではない。
 周囲に敵影は無く、警戒すれど、意識を張り詰め続けようと危険が現れる気配はなく。
 どうやら本当に『よく考えて選べ』以上でも以下でも無いらしかった。
「良く考えて選ぶこと、とあるがこれで難易度が大幅に変わるとは思えないな。
 精々が攻略の仕方が変わる程度の話じゃないか?」
 しかし『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)は冷静そのものだった。
「それに実を言えば――あくまで個人的な感覚である事は認めるが。
 俺はこれが難問であるとすら思っていない」
「そう?」と目を丸くしたカインに錬は「ああ」と頷いた。
「成る程な」
 一方で『蒼の楔』レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)は錬の言葉に合点がいったのか含み笑いを見せている。
「確かに簡単な話だなァ。
 歓楽か苦難か――選べって言うなら、勿論『苦難の道』だ。
 俺は弟子の想いも背負って、此処に立っている。
 絶対にシュペル先生に会うんだ、どんな苦難も乗り越えてやる。
 なら、結局は――どっちでもいいんだ。でも、そりゃあ簡単じゃない。苦難に決まってるだろう?」
 錬は、レイチェルは塔主との面会に焦がれている。
 彼が試練に何を求むるかはまるで知れないが、彼の試練が『楽な筈は無い』と確信している。
 彼に認められ、彼との謁見を果たす事が最大の望みならば、元より彼の『選抜』から逃れる選択肢は存在しない。
 故に、苦難である。歓楽でも構わないのだが、意思表示ならばその方がずっと明確だ。
「『歓楽の道』と『苦難の道』、か。どちらかが絶対的な正解とは思えないけども
 でも確かに。此処はかのタワーオブシュペル。伝説に続く道が簡易な筈はない、って思わずにはいられないよね」
「うん、あれこれ考えてみたけど全然わかんない!
 シュペルさんが楽する人間を快くお迎えするとは思えないし、それでいいよ!
 待ってろ辛苦! 運も味方につけて攻略してやる!」
 錬とレイチェルの言葉にカインが頷き、『希望の紡ぎ手』アリア・テリア(p3p007129)は腕をぶす。
【創世塔】の『良く考えた結論』は『考えるまでもない』ものであり、彼等の行く先は実に皮肉に歓喜の歓楽に包まれる――


結果:【クリア】

成否

成功


第2章 第8節

ンクルス・クー(p3p007660)
山吹の孫娘
フリークライ(p3p008595)
水月花の墓守
グリーフ・ロス(p3p008615)
紅矢の守護者
Я・E・D(p3p009532)
赤い頭巾の魔砲狼

●究極星択カルネアデス(紅玉)
「うーん……シュペルさん、性格が悪いね。
 これ、きっと選択問題じゃ無くて『言葉遊び』だよ」
 改めて『赤い頭巾の悪食狼』Я・E・D(p3p009532)が言うまでもなく、塔主の性格の悪さは知れている。
 それでもしみじみと彼女にそう言わせる位に――第二層の『選択』は或る種の悪趣味に満ち満ちていた。
 目の前に用意された『苦難』と『歓楽』の扉。
 これみよがしな注意書きは「但し、良く考えて選ぶこと!」。
 こぼれ落ちる砂時計の砂は概ね二十四時間の『猶予らしきもの』を示している。
「おお? 苦難と楽ならそりゃぁ……」
「……歓楽容易、艱難辛苦。求めるならとありますが、どちらも求めない、というのもありなのでしょうか」
「うん?」
「横紙破りとはなりますが、そういう『選択』もあるのではないかと」
「あ~……なるほどかな。シュペルさんは性格が悪いって聞くしね」
『白き不撓』グリーフ・ロス(p3p008615)の言葉に『鋼のシスター』ンクルス・クー(p3p007660)は合点した。
 確かに正規の選択肢ではないが、『敢えて語らない事は嘘を吐く事と必ずしもイコールしない』。
 塔主の考える『フェア』が『全ての選択肢を包み隠さず相手の前に提示するという保証はないのだ』。
「どうしますか?」
「そうね」
 肩を竦めた『赤い頭巾の悪食狼』Я・E・D(p3p009532)が少し皮肉な表情を浮かべた。
「扉を『開け』とはあるけど『進め』とは書いて無いし、扉の先がゴールなんてどこにも書いて無いんだよね」
 それ自体が博打だが、賭けてみる価値はあるように思われた。
 或いは天啓的な閃きを得る事もゼロではなかろうと『期待』もする。
「二十四時間 小部屋 待機 選ブ
 イレギュラーズ 可能性 収集者
 ナラ 可能性 増ヤス フリック達 選ブ」
 最後の一人、『水月花の墓守』フリークライ(p3p008595)がこの可能性を肯定した。
「……ソレニ モシ 深読ミダッタトシテモ ソノコトデ
 シュペル コッチニ 感情 意識向クカモ 他班 アシストナルナラ 良シ
 誰カ 辿リ着ク ソノ為ニ 紅玉 紅玉ラシイ戦イ方 スル」
 片言ながらに熱のある言葉だった。
 かくて覚悟を決めたパーティは約一日の焦れる時間を過ごした後――
「……駄目だ、やっぱり行かないと!」
 ――果たして期待通りに瞬間的な閃きでそれを『知った』Я・E・Dにより『どちらでも良かった』扉を開く事になる。
 そこまでは確実なファイン・プレーだったと言えるだろう。
 しかし、彼等の先に待っていたのは決して幸福な未来では無かった。


結果:【脱落】

成否

失敗

状態異常
ンクルス・クー(p3p007660)[重傷]
山吹の孫娘
フリークライ(p3p008595)[重傷]
水月花の墓守
グリーフ・ロス(p3p008615)[重傷]
紅矢の守護者
Я・E・D(p3p009532)[重傷]
赤い頭巾の魔砲狼

第2章 第9節

アリシス・シーアルジア(p3p000397)
黒のミスティリオン
ルカ・ガンビーノ(p3p007268)
運命砕き
雪村 沙月(p3p007273)
月下美人
笹木 花丸(p3p008689)
堅牢彩華

●究極星択カルネアデス(天つ風)
「散々、何十時間も迷宮を彷徨わせたと思ったら――
 次は進む道をよく考えて決めろ、ですか。
 ……ああだこうだと注文が多く、実に忙しない事ですね」
 その小部屋に到達した時、『月下美人』雪村 沙月(p3p007273)は嘆息と共にそう言った。
「しかし、幸いにも時間はある様子。
 まずは休憩してから考えましょうか。疲れを残すのもよくないですからね」
「剛毅果断だなぁ」
「ラサにも滅多にいねぇぜ、こういう女」等と爽やかに軽口を叩きながら『竜撃』ルカ・ガンビーノ(p3p007268)が床に腰を下ろした。
「歓楽容易。艱難辛苦。
 砂時計と、よく考えて選べ……
 随分と変わった趣向ですね」
「ああ。だが、性格は悪いがルールは守るってんなら、但し書きは守った方が良さそうだ。
 楽な道としんどい道か。シュペルの性格考えるなら、楽な道っつったってロクなもんじゃねえだろうけどな」
『黒のミスティリオン』アリシス・シーアルジア(p3p000397)にあぐらをかいたルカが応じる。
「歓楽の道に苦難の道、良く考えて選ぶことって言われても……
 花丸ちゃんの中ではぶっちゃけこれを見た時点で答えは決まってたようなものなんだけどね」
「それでも二十四時間あるなら有効的に使ってこそだよね」。と続けた『人為遂行』笹木 花丸(p3p008689)に迷いはないが、折角くれる時間を有効活用しない手はない。
 相手がルールを守るならこの階層においては差し当たって選ぶまでは何の危険もないとも考えられる。
 故に剛毅果断と言われた沙月の判断は恐らく正しい。
『この階層で挑戦者がしなければいけない事は、良く考えて扉を選ぶことのみなのだろうから』。
 持ち回りの仮眠と休憩を繰り返し、さて選択の時は訪れる。
【天つ風】は互いの意思を確認し、それを一つに束ねていく。
「私は困難があれば打ち勝てば良いと思っています。
 どのような困難が待ち受けようとも私達の道を阻むことはできないでしょうから」
「予めしんどいってわかってる方が対処しやすいだろ。
 どんな困難だろうが踏み潰して進むだけだ。
 つーか、楽な道を求めるんなら、こんなところ最初から来やしねえよ」
「ええ。此処に挑んでいる以上、初めから苦難は覚悟の上、でありましょう。
 そも、打算を抜きにしても、このような場で歓楽容易等という形容が何を意味するのか、よい想像は出来ませんね」
「流石! 花丸ちゃんも選ぶのは『苦難の道』!
 塔を皆で登るって決めた時から艱難辛苦ドンと来い! ってね!」
 ……作業は実に簡単で、一致までの時間は非常に短い。
 全員が口々に同じような事を言い、喜び勇んで苦難の扉に手を掛ける。
 彼等ならば、如何なる苦難にも打ち勝てた事だろう。
 しかし、彼等には打ち勝つべき苦難等、訪れる事は無かったのである――


結果:【クリア】
特殊結果:【休息十分】

成否

成功


第2章 第10節

スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
サクラ(p3p005004)
聖奠聖騎士
久住・舞花(p3p005056)
氷月玲瓏
彼岸会 空観(p3p007169)

●究極星択カルネアデス(桜花紅月)
「うーん、どっちが良いんだろう……」
 形の良い眉がハの字の形を描いている。
 抜身の日本刀のような精神と少女らしさが奇妙に同居する『聖奠聖騎士』サクラ(p3p005004)の場合、迷わない姿も迷う姿も正真正銘本物だろう。
 究極の選択の岐路に立たされているのは【桜花紅月】の面々も同じだった。
 どういう構造かは知れないが、一層をクリアした挑戦者達はそれぞれが別の通路、別の部屋に『飛ばされて』いる。
 周辺との繋がりは感じられず、他のチームの動静が届く事もない。
 情報は部屋に記された僅かな文言だけで、それをもって正しく選べという。『良く』考えて選べと言う――
「何かがあるのは選んだ扉の先、か。
 これはどちらを選ぶか、少々悩ましいもの。
 ……幸い考える時間もあるようですし、休息がてら皆で考えを纏めてましょうか」
『月花銀閃』久住・舞花(p3p005056)が場を纏め、一同は一先ず一休みの格好を取る。
 非常に戦い慣れた武闘派チームである事は確かだが、一層の迷宮探索はそんな彼女達からしても『堪える』ものだ。
 制限時間は言い換えれば猶予時間とも取れるのだから、少なくとも悩む時間が十分なのは幸いだった。
 十分に長い休息は彼女達に更なる活力を与えてくれる。
「正直を言えば――歓楽、のみであればこちらの扉の方が好みなのですがね」
「容易とまで示されると私がそれを選ぶ訳には参りますまい」と『帰心人心』彼岸会 無量(p3p007169)の美貌が渋面になる。
 修験者のような彼女場合、容易いは如何にも相容れぬ要素である。
「苦難の道しか選ばなそうなメンバーだと思うんだけど……
 困難が起きると思って挑んだ方が気が楽だし、楽な道は自分の為にもならない気がする!」
 応じた『リインカーネーション』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)は如何にもメンバーの問題であるかのような口ぶりで言ったが、本人も半ば自覚しているかも知れないし、何ならそれを良しとしている可能性も高いが、スティア自身も如何にもそんな選択をしそうな超合金である事は言うまでもない。
「楽な道は怖いかなあ。
 だって絶対真っ当に楽な道じゃないし、嘘じゃないけど本当じゃない的な気がする!
 そうなると何が起こるか予測しづらいから苦難より怖いよ!」
「サクラちゃん、理由はそれだけ?」
「いや、苦難は敵とか罠とか出てくるだろうけど、敵とかなら倒せばいいかなって……」
「サクラちゃんがサクラちゃんで安心した!」
 スティアは確かにポン刀とか持っていないが、似たようなものである。
「ががーん」
「意見は皆、凡そ似たり寄ったりかしら。
 まあ、歓楽の道と言われて正直に受け取れるはずも無いものね。
 ……歓楽の道を選ぶ理由が無い、とまでは言わないけれど……」

 好きじゃない。

 舞花のような大層な美人さえこんなもんである。
 選択の動機が『好み』や『主義主張』に異様に寄るのはポン刀を備えた百花繚乱の常なのだろう。
「いずれにせよ何らかの障害が立ち塞がると予測するなら、初めから苦難の道を往かんと心構える方が気も楽というもの。
 鬼が出るか蛇が出るか――何れにせよ、受けて立ちましょう」
「はい」
 立ち上がった舞花に無量はにっこり破顔した。
「それではそろそろ、この部屋はお暇致しましょうか――」


結果:【クリア】
特殊結果:【休息十分】

成否

成功


第2章 第11節

キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!
咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳
フラン・ヴィラネル(p3p006816)
ノームの愛娘
伊達 千尋(p3p007569)
Go To HeLL!

●究極星択カルネアデス(伊達)
「ふむ、つまりはビーフorチキンという事であるな!」
「うん、おやつじゃないよ百合子先輩! 『待て』だよ!」
「おお、了解だ! 吾、レオン殿以外に『待て』されてしまったぞ!」
 扉を見るなり走り出しかけた『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)の襟を『胸いっぱいの可能性を』フラン・ヴィラネル(p3p006816)がナイスキャッチした。
 一先ず止まった【伊達】の面々は塔主の要求通り『良く』考える事にする――
 しかし、【伊達】の相談はこれまでの他のチームとは全く別の展開を見せる事になる。
「えー、選択かぁー……
 楽って書いてあるなら楽な方行かね?
 でもまぁ、確かに罠っぽいよなコレ……砂時計とかあるし……これみよがしだし」
「歓楽か艱難かってね。
 俺ぁもちろん歓楽よ。こっちの方がずっと俺らしい。
 それに、この歓楽が誰にとってのものかってのが気になってな
 シュペルか? それとも俺らか? 他の誰かの頭の中か?
 何れにせよ、お手並み拝見ってヤツだ」
『Go To HeLL!』伊達 千尋(p3p007569)と『最期に映した男』キドー(p3p000244)、男二人は『楽な方』。
 そして逆に、
「シュペルさんの『歓楽』ってすごい意地悪そうだし、あたしは艱難に挑戦の方がいい!」
「吾としては艱難辛苦の方が分かりやすくてよい!
 逆に歓楽はよくわからぬ……ダンジョンで楽しいとは一体……?」
 フランと百合子は『苦しい方』。
 フランは単純に罠っぽいから嫌だ、百合子は美少女道とは死ぬ事と見つけたり。
 士道不覚悟切腹よってな具合であろう。
「あれこれ相談してちょっと白熱して……を見て楽しんでるのかなぁ、やな感じ!」
 フランが頬を膨らめる。
 兎に角、意見は真っ二つで――話し合う時間は十分あるが議論は平行線を辿る事になる。
 しかし、どれだけ意見が割れても最後には選ばなければならないのなら、やはりそれはリーダーに託されるものなのだろう。
「……うーん、俺か。は? いやマジ俺が選ぶの? 責任重大じゃん?」
 千尋は頬をかいてから天を仰いだ。
【伊達】の結論は最後は千尋が選べというものだった。
 彼としては断然『楽な方』だが、全ての責任を背負うのであれば多少は気後れもしようというものである。
(難しいコース選んでマジで難しかったらそこでアウトな気もするんだよな。
 嘘じゃねーならワンチャン楽だったらマジ最高じゃん? クリア出来ちゃうじゃん?)
 口では軽い千尋だが決して無考えで言っている訳ではない。
 これみよがしな選択肢だが、ギャンブラーにとっては逆張りなんて日常茶飯事だ。
 恐らくはキドー辺りも遠からずといった所だろう。
「……OKわかったはい精神集中! フランちゃん、気合のビンタ頼む」
「吾も? 吾も?
「死んじゃうから無しな」
 掛かる百合子をキドーが何とか止めている。
 フランは自分の手と千尋の顔を見比べて、
「おもいっきり?」
「思い切り!」
「が、がんばる!」

 ――ばちこーん!

「はい来た! オ~~~ッシャ元気ですかーーー!!!」
 裂帛の気合と共に千尋は派手に『歓楽』を開く。
 彼が見た通路の先には障害らしきものは何もなく。
 ずっと奥に新たな扉が一枚存在するだけだった。
「っしゃ、勝った――!!! 完!!!!!」


結果:【クリア】

成否

成功


第2章 第12節

夢見 ルル家(p3p000016)
夢見大名
ドラマ・ゲツク(p3p000172)
蒼剣の弟子
善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)
レジーナ・カームバンクル
リア・クォーツ(p3p004937)
願いの先

●究極星択カルネアデス(乙女同盟)
「これは性格が悪い! 選択を迫る事自体が相手を縛る事ですから!」
 挑戦が始まってから一体何度シュペルは異口同音の悪口を聞いた事だろうか。
 しかしながらこの先もそれは変わるまい。
『離れぬ意思』夢見 ルル家(p3p000016)の素直な感想は全く正鵠を射抜いているのだから仕方ない。
「時間掛けて悩めってんなら、その通りにしましょう。
 暇すぎる引きこもりに精々待たせてやろうじゃないの!」
『願いの先』リア・クォーツ(p3p004937)、掛かり気味ですね、一息つければいいのですが――
【乙女同盟】の四人は選択の小部屋で休息状態にあった。
 他のチームの例に漏れず何時もの注意書きを目にした彼女等は現在進行系で『良く』考え議論を深めている状態だ。
「……色々と考えましたが、やはり歓楽の道は避けたいです!
 拙者がシュペル殿なら楽な方を選んだら塔から出して「ほら、楽だろう?」ってしますからね!
 苦難の道も「お前の望みだろう?」とかしてくるでしょうが――
 強力な罠や敵は正体不明の嫌がらせを受けるよりはマシというものですからね!」
「ここに来て歓楽容易と言うのも怪しいし、艱難辛苦を選ぶべきかしらね。
 正直予測はし難いけど、シュペルという人物をプロファイリングしてみるか――」
「この塔の主が歓楽容易にこの塔を登らせてくれるようならば、レオン君程の実力が無くとも、もっと踏破者が出ているでしょう」
『レジーナ・カームバンクル』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)が呟く。
 叡智の捕食者はかしこいので、『蒼剣の弟子』ドラマ・ゲツク(p3p000172)がしたり顔でそう言った。
 アイオンでも何処かのゴリラでも例に挙げればいいものを、ピンポイントで漏れた「レオン君」に幾らか誇らしげな色が混ざっている辺り、【乙女同盟】なるチーム名が体を表している。当然ながら見逃さないリアが「あー、そうね! レオン程の実力だものね!」とかレジーナが「お可愛らしい事」等と混ぜっ返し、ドラマが咳払いを連打しているのが微笑ましい。
「と、兎に角! 選択は『苦難の道』が宜しいかと。
 ……しかし、良く考えて選ぶこと、と言う注意書きは引っ掛かりますね。
 何か時間に関係した変化でもあるのでしょうか?」
 ドラマの視線の先には残り時間を減らし続ける砂時計がある。
 唯選ぶ事ならば二択だが、前提条件が付与されるなら可能性は無限に広がってしまう。
 彼女等の前に突きつけられた選択肢は決して単純なものには思えなかった。
 しかし、ルル家にせよドラマにせよレジーナにせよ、リアにせよ。
 パーティの意志は『苦難』の選択で一致しているのだけは確かだった。
 夢見ルル家は天香遮那に恋している。彼は遥か東の地で神威神楽を背負わねばならない天香の当主だ。
 リア・クォーツはガブリエル・ロウ・バルツァーレクに恋している。釣り合う筈がない。彼は三大貴族の一人で彼女は孤児院の娘なのだから。
 レジーナ・カームバンクルはリーゼロッテ・アーベントロートに恋している。あの食虫植物のような毒薔薇の姫に魅入られている。相手は常に『最悪』だ。
 ドラマ・ゲツクはレオン・ドナーツ・バルトロメイに恋している。彼はきっとずっと――しか見てはいないのに。
 この面々が安直な『歓楽』なぞ選べるものか。
 それは自身の否定である。勝負以前の問題、矜持の問題――
 故にリアは迷わず苦難の扉に手をかけた。
「選ぶ道は当然『苦難の道』よ!
 どんな理由があっても、あたし達がこっちの扉を選ばないわけがない。
 それがこの同盟の由来だから――自分達の覚悟を示す、良い機会だわ!」
 この時。彼女が扉を開けた時、遥かな頂上でシュペルが嫌そうな悲鳴を上げた――


結果:【クリア】
特殊結果:【休息十分】
     【インターミッション】(次節で物語に幕間のシーンが追加されます)

成否

成功


第2章 第13節

●インターミッション
「……普通、落ちるだろう。今のは十中八九『落ちた』だろうが!」
 塔の最上階。空中に無数に投影されたモニターの一枚を見たシュペル・M・ウィリーが明らかな不満顔でそう吐き捨てた。
 第二層――究極星択は彼に言わせればローレットへの『サービス問題』である。
 物理的に挑戦者が超えられないレベルの苦難を設計する事は彼にとっては児戯に等しく、通さない気になれば全てを失格にする事なぞ余りに容易い。
 それがどうだ? 第二層の選択なぞ、単に正しく選べばいいだけの『なぞなぞ』に過ぎず、子供でもクリアする事自体は簡単だ。
『その上、最初から答えまで明瞭に完璧に教えてやっている』のだから――自身の寛大さにはいよいよ驚くばかりである。
 だが、それはそれとして落ちろ。早く帰れ。スターテクノクラートを舐めるなよ。
 だというのに、何だこれは。特に何だ、『さっきの』は。
「よ、予想以上に馬鹿だった……
 何だあれ等は……阿呆なのか? 死ぬのか?
 常識的に考えて普通もっと落ちるだろうが。
 さっきのでいいんだよ、さっきので! そのまま落ちればいいだろうが!
 何故、逆転ホームランを打っているのだ、あのゴリラは!」
「これだからゴリラは」「脳筋は困る」とぶつぶつ文句が続いていた。
『ゴリラ』なる人物が誰を指しているかはさて置いて、シュペルはえらく不満なようであった。
 あくまで彼の様子を見るに現状の通過率は『不本意極まりない』らしい。
 彼の常識の中では『最初から答えを提示されている』究極星択はそれでもクリアし難いものであり、何なら全滅も期待していた様子である。
「……………まぁ、あの親(レオン)あってこの子(ローレット)か」
 辛うじてキーボードをクラッシュする事には耐え切ったシュペルはうんざりしたように溜息を吐き、宙に浮かぶ椅子の背もたれに思い切り体重を預けた。
 意地悪をしてやるのは好きだが、ここまで来ればローレットとやらにも多少の興味は湧く。
 本来ならば軽く九十九層は登らせてやる所だが、なかなかどうして。
「少し、考えてやる事にするか」
 シュペルは自分の考えが多少なりとも軟化した事に正直驚いていた。
 全く、長生きをすれば珍しい事もあるものだった――


第2章 第14節

アルプス・ローダー(p3p000034)
特異運命座標
エルス・ティーネ(p3p007325)
祝福(グリュック)
ロロン・ラプス(p3p007992)
見守る
一条 夢心地(p3p008344)
殿

●究極星択カルネアデス(四天王)
「『よく考えて選ぶ』……ですか。
 まさか、プレイングを時間制限ギリギリに出す事ではなかっただなんて。
 いたずらに時間を浪費させて僕の反応を損なう作戦だったとはシュペルめさすが幹部級の頭脳の持ち主。
 扉もカルネアデスの板にかけたPT間の分断、生死の取捨選択を行おうと企んでいるに違いありませんよ!」
「『良く考えて選ぶこと!』の記述も含め、コレはアルプスの超反応を阻害せんとすシュペルめの遅延の策!
 きゃつめ……余程、我等四天王の力が恐ろしいと見える……」
 第三の次元の壁を突破しそうな危うい妄言を吐く『二輪』アルプス・ローダー(p3p000034)、すかさず『殿』一条 夢心地(p3p008344)が火に油を注いでいる。
「ええ! ですが今の僕には【超嗅覚】と【ママみ感知】があります!
 これで圧倒的バブみのエルスさんと、巨乳イラストのあるロロン君をかぎつけてギフトで救出万事ok。
 殿は……女装してくれたらワンチャンありますね!」
 好き勝手やらかすアルプスを止める手段はボケばかりで構成された【四天王】には有り得ず。
「戦闘能力とか関係ないです、プレイング(条件達成)のみで決定しますv」とか言われてる手前お仕置きをしてやる訳にもいかず。
 おお、もうな惨状は選択の時まで解決する様子はない――
「――へ? ア、アルプスさんがバブみ感知を……?
 圧倒的バブみって何!? ママ適正は付けてるけれど?!
 私がママよ! ええ! こんにちわ、赤ちゃん!
 私、ディルク様の子は二人がいいですよ!!!」
 ――朱に交われば朱くなった『竜首狩り』エルス・ティーネ(p3p007325)(たよりにならない)をツッコミ役に置くには弱く。
 残るメンバーと言えば、プルプルしてるスライムだけである。オワタ。
 閑話休題。
 本件においては予想外にその『無垢なるプリエール』ロロン・ラプス(p3p007992)が救いであった。
 ボケてる連中を傍に置き、ロロンは言う。
「ボクらが選ぶなら『歓楽の道』だろうね、と提案させて貰うよ」
「ふむ?」と首を傾げた夢心地にロロンは続けた。
「別に字面通りには受け取っていないけれどさ。
 どんな道程であれ楽しんでこそ、楽しませてこそこのチームで組んだ意味があるんじゃないかな?
 だってこのチームだよ? 見たら分かるじゃないか」
 ロロンの視線の先ではアルプスとエルスが混乱している。
「成る程、一理ある」
 突然梯子を外したかのように常識人面をした夢心地が頷き、ロロンは「でしょ?」と微かな笑みを見せていた。
 確かに真っ当に困難を超えたいならばこんなチームは組まれまい。
 やるからには(あれはあれで)アルプスも本気だし、生真面目なエルスは言うまでもないのだが……
 言うて【四天王】である。やる事も知れているし、やれる事も知れている。
「麿のオラクルによれば、どちらの扉を選ぼうとも大差は無い。
 四天王とは即ち、万民守護せし強者四騎。
 歓楽の道の名に不相応な障害あれば、これを除き、突破し。
 溺れる者あらば板を渡し、自らは援けが無くとも大海を泳ぎ切る。
 この選択は迷う為の行為に非ず。覚悟を示す為の精選よ――」
 口振りに強き者の気配を漂わせた夢心地は不敵であった。
 食えない男は更に続けた。
「なぁに、麿の超方向感覚は未だ健在。
 万が一、えっちっちなる罠があったとて。
 ロロンのスライムパワーとエルスのむにむに(ノ)`ω´(ヾ)パワーで突破すれば良かろうというもの!」
「エ"ッ?! あ、ああの卑猥なスライムはやめなさい絶対!
 これは――フ、フリじゃないんだからね!?」
 酷くて、酷くて、余りに酷い。
 それでも【四天王】は歓楽の道を行く――行く手を遮るものは何処にもなかった。


結果:(不本意だけど)【クリア】

成否

成功


第2章 第15節

イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
アト・サイン(p3p001394)
観光客
レイリー=シュタイン(p3p007270)
ヴァイス☆ドラッヘ
フラーゴラ・トラモント(p3p008825)
星月を掬うひと

●究極星択カルネアデス(ルサルカ)
「――こういうのは飯を食いながら考えるに限る」
 神に挑む塔であろうとも、『観光客』アト・サイン(p3p001394)のマイペースを崩す事は難しい。
 アトの場合、相手がどうであるかより常に自分がどうあるべきかの問題だ。
 どんな奇っ怪な難問を突きつけられようと、迷宮に挑むという餌がぶら下がっている限りアトはアトに違いなく、彼は常に変化しない。
「そうね。良く考えよ、って言われても。多分、完全に備える事は出来ないし。
 お茶と食事にしてゆっくり考えましょ。司書殿、お茶葉頂戴」
「……はいはい」
 アトの気楽さと『ヴァイスドラッヘ』レイリー=シュタイン(p3p007270)の呼びかけに、『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)が僅かばかりの苦笑を見せた。麗しいその顔に強い思考の気配が乗っているのは生真面目の証明。同じ冒険家でも『相棒』とでも呼ぶべきアトとは随分違う点だ。
(造語、考えろの命令。それ以外を潰す道程。この状況で命令以外何が為せる?
 ……類似した状況が果ての迷宮にあった、参照値に果ての迷宮が存在?)
 思考する事が武器に成り得るならば、常に彼女はそうしてきた。
 尤も。
「急がば回れ、上手い話には罠がある……
 このメンツの実力なら苦難だって乗り越えられる……
 ワタシにとって生涯迷宮に挑むであろうアトさんを選んだのだから……今更だよ。
 それに、そのほうが燃えるからね!」
 俄に始まったお茶会でもやっぱり情熱的な『恋する探険家』フラーゴラ・トラモント(p3p008825)やそれをひょいひょいとかわすアトを見るに。
 イーリンですら「いっそ、それでいいのではないか」と思う時もないではない。
 冒険の本質は『冒険』だ。
 何処かの構文みたいな酷い言い様だが、実際問題それは何も間違っていない。
「四人で共有しているのは、絶対にこの塔をクリアする信念。
 心か体かその両方へか――どんな苦難が来ても。その信念で私達は歩み続ける」
「ええ」
 レイリーの言葉にイーリンは頷いた。
「艱難辛苦の対義は順風満帆。しかし歓楽容易は二語の組み合わせ。
 そこに意味があるのかは知れないけど、選ぶにしては予想が付きづらい。
 ……であれば艱難辛苦がよい。
 どれだけ苦しい道が待ち受けていようと、ゴール地点があることは保証されている。
 これ、僕が砂糖たっぷりのお茶を飲んで思いついたこと」
 アトはイーリンをちらりと見た。糖分を取れよ、という事らしい。
「ワタシも艱難辛苦!」
「でしょうね」とイーリンは笑った。
 答えを出せない問題ならば、飛び込んでみるのも一興だ。
 何故ならば自分達は何処までいっても――『冒険家』なのだから。


結果:【クリア】
特殊結果:【休息十分】

成否

成功


第2章 第16節

アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)
無限円舞
コゼット(p3p002755)
ひだまりうさぎ
シラス(p3p004421)
超える者
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
蒼穹の魔女

●究極星択カルネアデス(塔竜門)
「あー……つっかれたー……
 ここは、とりあえず安全なのかな?
 ちょっと休憩しようよ」
 多くのパーティにとってそうであったのと同じように。
『ひだまりうさぎ』コゼット(p3p002755)にとって、【塔竜門】の面々にとって第二層での猶予時間は至極有り難いものになっていた。
 いや、より厳密に言うならば他のチーム以上に『助かった』と言うべきだろう。
「体を酷使した後は頭、というわけね。
 妙に制限時間?が長いのは気になるけど、私達は休まないとこの先が続かない。好都合だわ」
「ああ。良く考えろって……
 言われなくても良く考えさせてもらうぜ。何せ俺達はクタクタだ」
「謎掛け……というよりは、判断を問われてるのかな?
 前のフロアで疲れた分をある程度取り戻せるし、ある意味で助かる気もするね」
『舞蝶刃』アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)、チョコレートを咥えて床に大の字になった『竜剣』シラス(p3p004421)、『希望の蒼穹』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)の反応もコゼットのものと大差無い。
【塔竜門】は恐らくローレットの中でも有数のチームであり、謂わば『優勝候補の一角』である。
 しかし、そんな事実は探索の『順調』と必ずしも結びついていない。その余力は少なく、どの顔にも疲労困憊の色が覗いている。
 何分、彼等は運が悪かった。第一層であの【チーム・サリュー】と鉢合わせ、命からがら突破してきたメンバーなのだ。
 ……とは言っても、他の遭遇チームが『助からなかった』事を考えれば彼等の実力は逆に知れるという部分もあるのだが。
「よく考えて、と言われてもね。
 歓楽容易なんて熟語は聞いたことがないから、この手の言葉選びとしては違和感があるけれど。
 ……少し擦ったりしてみましょうか?」
「文字には、扉は二つだけなんてのは書かれてないし、何らかの手段で別の道が隠されているかも知れないしね」
 たっぷり休憩し、態勢を整えたなら、回答の始まりだ。
 アンナ、アレクシアが部屋の探索を始めていた。
『何に意味があって、何に意味がないのかは分からない』。
 聞き慣れない単語すら単なるミスリードの可能性もあり、同時に何か正鵠を射抜くヒントの可能性も捨て切れない。
(どちらの道も何とでも理屈をつけられる。
 二択そのものは運以上の意味を持たないだろう――だから他のアプローチを考えたいな)
 スッキリとした頭でシラスはそんな風に考えた。
 意地悪で凝り性の塔主が唯の『運ゲー』を求めるだろうか?
 天命を持つものが勇者と言われればそれまでだが、彼の性質は『そう』ではない気がした。
「正解はどっちか、正直わかんない。
 歓楽容易があたし達にとっての良い事じゃないかもだし……
 苦難の道は苦しいけど正解の道かもだし……
 いっそ時間ギリギリまで待ってみよう。『良く考えて』ってあるし、考えながら」
 コゼットの言葉に面々は頷いた。
 いざ、待ってみて話が変わらなければ後はままよ。苦難を選べばいい。
 予測は外れないだろう。
 どうせ碌な事は起きないが、今更だ。
 だが、容易くいくならこんな塔は登らないものだから。


結果:【脱落】

成否

失敗

状態異常
アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)[重傷]
無限円舞
シラス(p3p004421)[重傷]
超える者
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)[重傷]
蒼穹の魔女

第2章 第17節

クロバ・フユツキ(p3p000145)
深緑の守護者
セララ(p3p000273)
魔法騎士
ユーリエ・シュトラール(p3p001160)
優愛の吸血種
長谷部 朋子(p3p008321)
蛮族令嬢

●究極星択カルネアデス(聖剣騎士団イチゴ味)
「どうするか……ってな」
 半ば呆れたかのような調子で『ただの死神』クロバ・フユツキ(p3p000145)は嘆息した。
【聖剣騎士団イチゴ味】の前に突きつけられた選択は他のパーティと同じものである。
 同じように理不尽で、同じようにヒントはない。
 出題者は「優しい問題だ」とでも思っているのかも知れないが――到底そんな風には思えない。
 しかし。
「ま、『そう』だとは思ってたけどな」
 呆れたかのように、とは書いたが、実際の所、クロバは楽しげですらあった。
【聖剣騎士団イチゴ味】が選択にかけた時間は極めて短い。
 話が出揃うなり他の三人は一瞬で決定を済ませていた。

 ――選ぶのは苦難の道だよ。ボク達ならどんな困難だって突破できる!

 ――苦難な道でも平気、長期戦は慣れてます!

 ――困難の先にこそ栄光あり! 今更安易な道に鞍替えするつもりはないよ!

「……らしすぎるぜ」
 普段から勝手知ったる仲間達の言う事である。
 予想はついていたが、『魔法騎士』セララ(p3p000273)にせよ、『優愛の吸血種』ユーリエ・シュトラール(p3p001160)にせよ、『蛮族令嬢』長谷部 朋子(p3p008321)にせよ殆どノータイムで結論を出したのだから恐れ入る。
 何処かの誰かに「戦闘民族のような思考回路」と称されたセララの傾向が良く出ている。
 チーム全体が実に見事に染まっている。武闘派とは恐らくこういう連中の事を言うのだろう――
「えー? そんな風に言うけどさ!」
 肩を竦めるクロバにセララは可愛く唇を尖らせた。
「クロバはそうは思わないの?」
「そうですよ!」とユーリエが頷いた。
「クロバさんは、反対ですか?
 反対なら、もう一度ちゃんと考えないといけませんね!」
「てっきり一番そういうのが好きかと思ってたんだけどな!」
 朋子もそこに乗っかってクロバをじっと眺めている。
 面々の表情が「わざと言っている」事に気付いたクロバは本日何度目かの苦笑いをした。
 問われるまでもない。そして答えるまでもない。実際の所、答えは余りにシンプルだ。
「――当たり前だろ、これは『全会一致』って言うんだぜ」
 なればこそ。苦難の扉は、彼等にとっては機能するまい――


結果:【クリア】

成否

成功


第2章 第18節

グレイシア=オルトバーン(p3p000111)
勇者と生きる魔王
ルアナ・テルフォード(p3p000291)
魔王と生きる勇者
鬼桜 雪之丞(p3p002312)
白秘夜叉
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子

●究極星択カルネアデス(1爺3孫)
「やっとちょっと広いところに出たと思ったら、行き止まり……じゃないや。扉だ」
『絶望を砕く者』ルアナ・テルフォード(p3p000291)が目を丸くする。
 長く広く深い迷宮の次は一本道。
 まるで迷うような余地はなく、大した長さでもない通路を抜ければ一行は簡単に『その選択』に辿り着ける。
「一本道の先には、意味ありげな砂時計に二つの扉か。
 ……実に。如何にも伝承の塔等にはありそうなものだ」
 これみよがしな扉が二枚に、自己主張の強い砂時計。
 ぶっきらぼうで不親切なリドル――
 実際の所、『魔王』な遍歴の持ち主である『知識の蒐集者』グレイシア=オルトバーン(p3p000111)からすれば『見知ったような』場所だった。
 迷宮の奥深くに辿り着いた冒険者は得てしてこういうものに巡り合うものだ。
 往々にしてこの手の試練は体力も知力も、
「第二層で迷わせるのは通路でなく、扉でしたか。
 ……選択をしいる迷宮。これは運も絡みそうな場所ですね」
 或いは『白秘夜叉』鬼桜 雪之丞(p3p002312)の言った通り天運をも問うものである。
【1爺3孫】の面々もまた、究極を冠された星択の部屋で暫くの立ち往生を余儀なくされる事になっていた。
「色々お話を聞いた感じとかからすると、どっちかが正解!
 ……みたいなスッキリする、単純な仕掛けとも思えないんだよね。
 答えがあるなら凄く捻くれたところにある気がする……」
 レオンから伝え聞いた塔主の性格を思い出し『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)が難しい顔をした。
 ハッキリとした二択ならば、悪くても『半々』だが、正答に横紙破りが生じると仮定するならば可能性は無限に広がる。
【1爺3孫】の面々は話し合い、時を潰し――砂時計の尽きる『ギリギリ』まで様子を見る事に決めていた。
「途中で何か新しい選択肢が出たら、それかな。
 もし何も起きなかったら――苦難の道。この先が楽な道のはずないもんね」
「ええ。鬼が出るか蛇が出るか。如何なる道だろうと悔いることなく、押し通らせて頂きましょう」
 焔の言葉に雪之丞が頷いた。
『消去法の選択になろうとも、覚悟を決めておく事は不可欠であろう』。
『恐らく悪い事しか起きまいが、それはそれ。最初からそんな事は承知の上だ』。
 果たして、第三の選択肢は現れず、グレイシアは嘆息する。
「……やれやれ、だ」
「苦難の先にゴールがあると信じて! みな、いくよー!」
 ルアナの声は力に満ちていたが――この選択は如何せん『消去法』に違いない。


結果:【脱落】

成否

失敗

状態異常
グレイシア=オルトバーン(p3p000111)[重傷]
勇者と生きる魔王
ルアナ・テルフォード(p3p000291)[重傷]
魔王と生きる勇者
鬼桜 雪之丞(p3p002312)[重傷]
白秘夜叉
炎堂 焔(p3p004727)[重傷]
炎の御子

第2章 第19節

伏見 行人(p3p000858)
北辰の道標
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
ジェック・アーロン(p3p004755)
冠位狙撃者
御天道・タント(p3p006204)
きらめけ!ぼくらの

●究極星択カルネアデス(煌星)
「……面倒臭い男の面倒臭い選択……」
 渋面の『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)の表情は本当である。
 同時に、「……モテないわよぉ?」と呟いた彼女の言葉は『本当であって余り本当ではない』。
 本人が半ば自覚し、半ば無意識に感じる所の『好み』を言うなら、圧倒的に簡単よりは面倒くさいよりで。
 ああだこうだと理由がついては困らされるのが嫌いではないのだから、人間というものはほとほと難しい。
「何だか余計な分析をされている気がするのだけれど!?」
 閑話休題。
【煌星】の四人も又、簡単にして面倒くさい二択の前で頭を悩ませる事になっている一団である。
 他の何組かがそうしたのと同じように選択にはたっぷり時間をかける事に決めていた。
「良く考えて、ね。とりあえず、休もっか?」
「ええ。よく考えて……で、あれば一眠りしていくのが良いかも知れませんわね」
 それは『北辰の道標』伏見 行人(p3p000858)や『きらめけ!ぼくらの』御天道・タント(p3p006204)の言う通り、一層の過酷な探索の疲れを癒やす意味もあるし、
(文字は彼の発明品じゃない。
 そして、計り知れないことは知ろうとしないことじゃない――
 だから素直に受け止め、考えるべきだ。
 ……砂時計のリミットは果たして考慮か、攻略か。
 どちらも考えられるなら、精々十二時間までがアタシ達がこの場に留まれるリミットか――)
 沈思黙考を重ねる『太陽の使者』ジェック・アーロン(p3p004755)の考えるように『攻略法を探す』意味もあった。
 それにつけても『良く考えること』である。
 言葉は非常に漠然としていて不親切だ。
 裏を狙えば、結論を出すまでに純粋に時間を重ねろと要求されているように感じる事も不思議ではない。
 だが、ジェックがそう考えた通り『別』の可能性もやはり否めない。
「精霊に話を聞ければって思ったけど、どうもシュペルの塔には精霊も近寄らないみたいだね」
 行人が肩を竦めた。
 成る程、彼が己の塔に自己の認めた挑戦者以外を捨て置かない理由は何となく想像がつく。
 どちらかに決め打ちするには余りにも不確かな情報しか無く、一点買いをするには些か難しいと言えた。
 さて、では問題は時が来たならどうするか、という点に集約されよう。
「で、結局は――どっちに行こうか?」
「シュペル様は発明家。発明とは須く楽を求めるもの
 即ち、歓楽容易を『求める』道こそ成功への道程とご存知の筈。
 故に《歓楽》を選択すべきと思いますわ!」
「あ、賛成。まぁ、こういう時の正攻法は『苦難』だけど……
 此処までも苦難だったしどうせなら『歓楽』に一票ね。
 何より、退屈を持て余した男の歓楽、見てみたいもの――」
 行人の声にタントが応じた。
 彼女の言う通り相手は修験者の類ではない。技術は大抵快適と楽を突き詰めようとするものだ。
 そして先程「モテない」とぶーたれた割には語るに落ちているアーリアもそれに賛同した。
「決まったかな」
 ジェックが頷いた。
 時を経ても変化が訪れないならば『歓楽の道』だ。
 成る程、彼女等の行動は合理的だ。
 話し合いは、選択は実に澱みなく正しく。
 そしてやはり、消去法の選び出す『よく考えた結論でしかなかった』。


結果:【脱落】

成否

失敗

状態異常
伏見 行人(p3p000858)[重傷]
北辰の道標
アーリア・スピリッツ(p3p004400)[重傷]
キールで乾杯
ジェック・アーロン(p3p004755)[重傷]
冠位狙撃者
御天道・タント(p3p006204)[重傷]
きらめけ!ぼくらの

第2章 第20節

エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
イルミナ・ガードルーン(p3p001475)
まずは、お話から。
黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人

●究極星択カルネアデス(チームK)
「まったく――」
 形の良い眉を顰めた『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)が思わず零した。
「――考えろというなら、判断材料くらい出して欲しいものだね」
 恐らくは出題者にあたる塔主に言わせれば「与えている」と言うのだろうが、ゼフィラの納得はそこにはない。
 選択に到る部屋を、扉を『解析』せんとする彼女が何ら手掛かりを得る事が叶わなかったのは第一層に続いての事であり。
『そこ』に並々ならぬ情熱を燃やす彼女にとって、これはやはり渋い顔をする他はない事実だったのである。
「ま、まぁ……時間をかけて考えるのだわ!
 あの砂時計は随分と長く待ってくれるみたいだし……
 お弁当に【境界風・三千世界寿司】もあるだわよ」
 宥めるように『嫉妬の後遺症』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)が笑った。
 長い迷宮探索がかなり『しんどい』ものだったのは誰にとっても同じだっただろう。
 故に【チームK】の面々がこの好機を補給と検討の時間に当てたのも極自然な事だったと言えるだろう。
「イルミナの直感にビビビッと来てる……かは正直わかりませんが!
 あの時計がタイムリミットを意味するかどうかはともかく、砂が落ちきるまでじっくり考えて……」
「うむ。歓楽容易か、艱難辛苦か……
 どちらにせよ、良く考えて選ぶこと、とある以上、即断即決は悪手、だな。
 腰を据えて、考えてみよう」
『蒼騎雷電』イルミナ・ガードルーン(p3p001475)の言葉を『雨上がりの少女』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)が肯定した。
「どちらを選ぶかは最早博打だ。私とて、全く自信がある訳ではないが……」
 手足を投げ出すようにして楽な格好をしたエクスマリアが続けた。
「楽を選ぶ者と、困難に立ち向かう者、シュペルにとりどちらが面白いか。
 それにこの塔に挑むこと自体が艱難辛苦そのものと考える。つまり……」
「……苦難の道を選ぶのは、端的に言えば今もイルミナ達を見ているかもしれない塔の主……
 シュペルさんへのアピールというか、パフォーマンスというか!
 これくらいの気概で登りますよというのを見せ付けていかないといけないかな、と!」
「うむ」
 言葉を繋いだイルミナの言はまさにエクスマリアと一致した意見であった。
「艱難辛苦、臨むところさ。障害は多い方が、乗り越えた時の達成感も大きい。
 それに、かの天才の作り上げた塔だ。我々の障害となる仕掛けでも、その作品を見られるのであれば、あえて苦難に挑む意味もあるさ」
 意見は口惜しさと感心は別物になるゼフィラも、
「……だって、恋の道にはそれが付き物なのだから。
 シュペルさんだってこれを見る方が楽しいのだろうって思うし――」
 幾分か気恥ずかしそうにそう言った華蓮も同じであった。
 つまりパーティは『よく考える為に』砂時計の尽きるギリギリまでをここで過ごし、最初から決めている苦難を行く――という事になる。
(大丈夫)
 大丈夫。
(……大丈夫)
 大丈夫。レオンさんは一人でここを超えたのだわ。
(大丈夫、恋する乙女は闘志全開なのだわよ!
 何が来たって――私達を止めようだなんて、舐めんじゃねぇのだわ!!!)

 ――そこには以前より強くなった少女が居た。


結果:【クリア】
特殊結果:【休息十分】

成否

成功


第2章 第21節

仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
すずな(p3p005307)
信ず刄
白薊 小夜(p3p006668)
永夜

●究極星択カルネアデス(四光)
 頬を掻いた『流麗花月』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)は云った。
「こうも単純だと、自ずと見るべきものは絞られるな」
 単純にして奇っ怪なる難問。
 人生は問い掛けの連続だが、いざ目の当たりにすれば果断に生きるも難しい。
 だが、難しいと不可能であるがイコールしないのが汰磨羈であり、【四光】であるのは言うまでもない。
「『よく考えれば』我々は登頂レースをしているんですから、ここで時間を使う選択肢はありません。
 決断は正しいか正しくないかではなく、早いか遅いかが重要なのです」
 どうせ考えても答えなんて確信出来ないものなのだ。
 試す以上に早い結論を得る方法等無く、周囲が敵と言わないまでもライバルならば勝ちを意識するならば拙速に勝る巧緻も無い。
「良い事を言うわね?」
「何かの本に? それとも受け売り?」と問うた『盲御前』白薊 小夜(p3p006668)に寛治は胸を張って言い切った。
「いえ、私の言葉です。今この場で考えました」
「成る程、だが道理だ。
 見るべきは我等自身。この層で試されるのは『克己』かね?
 どうせ、どちらを選んでも理不尽なのだろう。
 なら、判断は早い方が良い。良く考えてるさ。常日頃から、嫌という程にな」
 寛治の言葉は汰磨羈にとっても納得のいくものだった。
 そしてそれは頷いた『一人前』すずな(p3p005307)も変わらない。
「じゃあ、選ぶのは『苦難の道』ね。
 これまでも、これからも、私の旅路はこれ以外にないわ。
 ……考えても梅泉が楽な道を選ぶなんてことはないでしょうし。
 新田さんの仰る通り時間も有限、『追いつく』なら選択は早い方がいいでしょう」
 小夜の薄い唇から漏れたその名にすずなの眉が幽かに動いた。
 因縁浅からぬその名は――彼女の少し厄介な恋路をさて置いたとしても、憧憬と反発の綯い交ぜになった特別に違いなかった。
「……ええ、ええ」
 すずなは自分にも言い聞かせるように二度頷いた。
(どうせ、あの人達も選ぶなら苦難の道でしょう。
 あの人達が逃げぬのに、どうして此方が逃げられましょうか。
 怖気て日和ったのが姉様に知れたら、叱られてしまうでしょう――?)
 小夜の白磁のような頬に微かな朱色が差すのが気に入らないし、そうでなくても姉弟子の件で返してやりたい借りがある――
「選択は苦難の道。
 抱える想いこそ違えど、選択は皆同じ。何を迷う必要がありましょうか。
 例え間違っていようが――私は意地に賭けても苦難を選びます。
 この場にて、楽に転ぶ教育(しつけ)を、私は受けておりませんので。
 痛みなくして、得るものなし! 猪突猛進、愚直上等! 難局を切り抜けてこそ、道は開けるもの!」
 掛かり気味のすずなに寛治は「決まりですね」と微笑んだ。
 こういう娘でしか得られない栄養もあるものだ。
『砂被りの席で他人の覚悟を眺める事の何と甘美である事か』。
 寛治は我ながらの悪趣味を理解し、同時に完全に肯定する。
 果たして。【四光】の望みはシュペルの塔そのものにないやも知れぬ。
 シュペル・M・ウィリーという神への邂逅よりも先に望んだものがあったやも知れぬ。
 だからなのだろう。或いはそれを汲んだ塔主からの心ばかりの『サービス』だったかも知れない。
 彼等は苦難を選びながら歓楽を行き、そして『運命』に行き当たる。
「うん? 猫娘、犬娘に陰険眼鏡。それから小夜か。
 主等――正解の道に行った筈。なのにまったくこれは数奇よな」
「……あら!」
「……………」
 花のように綻んだ小夜の美貌に喜色が乗った。
 同時にすずなの顔が恐ろしいばかりに曇り散らしているのは言うまでもない。
 他の瞬間では中々見られない築四百年の乙女の貌は気配に振り返った死牡丹梅泉その人に向けられていた。


結果:【継続】(追加プレイング期間は8/31日23時までです。非常に短い為ご注意下さい!)

成否

成功


第2章 第22節

ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
マルベート・トゥールーズ(p3p000736)
饗宴の悪魔
セリカ=O=ブランフォール(p3p001548)
一番の宝物は「日常」
ソア(p3p007025)
無尽虎爪

●究極星択カルネアデス(饗饌)
「先に進む工夫を凝らそうにも、材料となる情報がなければ打てる手も少なくなる。
 たっぷりと時間がありそう……とは言っても、制限時間も誰の人生も有限だ。
 忠告があるだけ良心的だが……困ったな」
 何時もと変わらぬ淡々な調子のまま、『剣砕きの』ラダ・ジグリ(p3p000271)が半眼で扉を眺めていた。
 他のチームと同じく【饗饌】の前に立ち塞がったのも単純明白な唯の選択に他ならない。
 そしてこれは、実に多くの強豪を脱落させてきた難問である。
 一層とは打って変わって他所の情報が隔絶されている以上は、彼女等は『他がどうであったか』を知る由も無いのだが。
「二つの道と、砂時計。あとは分からない事だらけ……
 先に何があるか、それに対してどう対処していくか……想定できる事を出来る限りみんなと相談しておきたいね」
「このメッセージはシュペルさんからなのかな?
 どっちであったとしても良く考える位しか出来る事はないんだけど……」
「あと部屋を調べてみるとか」と付け加えた『一番の宝物は「日常」』セリカ=O=ブランフォール(p3p001548)に『雷虎』ソア(p3p007025)が小首を傾げた。
「では」
 満場一致で時間を待つ事を決めたなら焦る必要はまるでない。
「忠告通り砂時計が落ちきるギリギリまで議論を交わし、全員が望む道をよく考えて選ぶ事としよう。
 くれぐれも、一片の迷いや後悔もないように、ね」
 大悪魔の余裕も綽々に『饗宴の悪魔』マルベート・トゥールーズ(p3p000736)が言えば周りは頷き。
 そして、【饗饌】は二十四時間近い『実に有り難い休息』或いは『焦れる』時間を過ごす事になる――
 こういった選択を強いられる場合、多くの人間は『どちらか』を選ぶ。
 といっても、単純に『歓楽』であるか『苦難』であるかという意味ではない。
『状況を悲観的に予測して裏をかこうと選択をするか』、『どちらを選ぶにせよ己が第一希望で選ぶか』の違いである。
 元より選択に関わるヒント等碌に無いのだから多くの場合は単なる博打になろう。【饗饌】のそれも結論は一緒であった。
 果たして、選択の時が訪れた時、彼女達はこう言った。
「……私は特に願い事もなく、仕事で来ただけだ。
 けどこれは無理とかできないとか、他人に決められるのは嫌いなんだよな。
 結果無理だとしても徹頭徹尾そうなのか、途中までは行けたのかは示さなきゃ気が済まない。
 だから選ぶのは苦難の道だ」
「塔の主が捻くれ者なら敢えて簡単な道を正解にして嘲笑うつもりかもしれないし、素直に難しい道の先に正解を置くかもしれない。
 どうとでも考えられてしまうのなら、私はより愉しめそうな『苦難の道』を推すよ。
 他方は『歓楽』こそ魅力的だけど、仮に正解にせよ不正解にせよ歯応えがなさそうなのは頂けないからね」
「どちらが正解でも変じゃないからボクは素直に選びたいかしら。
 それならやっぱり苦難の道がいい。だってその方が格好いいもの。
 何よりこの四人でいっぱい冒険出来るのはこっちの道だと思うしね――」
「ええ。わたしもみんなと同じ、苦難の道を選ぶよ!
 みんなの無事の為、できる事を全力で頑張って、苦難を少しでも和らげていきたいから!」
 先の『どちらか』は人生の中でどちらか正解という事は有り得ない。
 しかしながらこの塔において扉に手を掛ける者の選択としてだけならば――彼女達は圧倒的な『百点』だったに違いない。


結果:【クリア】
特殊結果:【休息十分】

成否

成功


第2章 第23節

零・K・メルヴィル(p3p000277)
つばさ
フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)
挫けぬ笑顔
すみれ(p3p009752)
薄紫の花香
ノット・イコール(p3p009887)
想いの届人

●究極星択カルネアデス(塔観光)
「ふふっ、シュペルさんってこういうエンタメも嗜むんだね。
 実は彼も楽しんでるのかな――なんてね」
 選択の部屋で『これみよがし』な出題を見つけた時、『想いの届人』ノット・イコール(p3p009887)は思わず修羅場に似合わない華やかな笑みを浮かべていた。
「ここで安全な部屋はありがたいし――一旦休息出来るかな」
「ただ、『よく考えないと』だから見られている可能性は考えて」と『テント設営師』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)。
 第一層を抜けて『へとへと』な【塔観光】にとって確かにこの時間はかなり有り難いものである。
 名の通り観光で留まるのなら実に平和な話に違いなかったが、見ての通り彼女達の観光はそれなりに命がけのものになっているのだから。
「ここは安全そうだけど、念の為、見張りは交代でするとして」
「選択自体は二十四時間以内に行えば良さそうですね」
「よく考えて……か。
 あえて苦難の道を選ぶのが正解にも思えるけど。
 無茶して俺たちがこの塔の苦難を超えられるかは怪しいしな……」
 ノット、『しろきはなよめ』すみれ(p3p009752)に応えるように自身のギフトで用意したパンを齧りながら『恋揺れる天華』上谷・零(p3p000277)が零した。
 休憩を交えながら『よく考える』。時間は実にゆっくりと進んでいく。
「さて、偏見だけどこの塔に挑むような人は苦難の道を選びたがる。
 正直ボクも魅力を感じてる……けど無謀と冒険は異なる。恐らく今のボクらにそれを選べる力は無いね。
 所謂『武闘派』の連中なら現れる敵も苦難も踏み潰す――といった考え方になるのだろうが、【塔観光】は切った張ったが得手ではない。
 いや、決して出来ない訳ではないのだが、第二層まで残った猛者の中では比較的そういうチームではない、と言える。
 そういう意味で先程の零の言葉は正しく、ノットもこれには賛成のようだった。
「それにローレットとして見るなら選択に多様性を持たせた方が良い。
 困難を選ぶ人は居ると断言するけど、容易を選ぶ人は居ないかもしれないしね」
「注意書きを素直に読むべきではないのでしょうが……
 塔登頂自体が危険故、あくまで『勘』の話にはなりますけれど」
「そうだね。うまくかわせれば一層みたいにクリア出来るかも知れないし――」
 すみれやフォルトゥナリア辺りにも異論は無いようで、【塔観光】の選ぶ道は(ノットの予想通り実に少ない)『歓楽』の扉となる。
「……………」
 すみれはチリチリと嫌な予感が働いたが、それが選択によるものか塔そのものによるものなのかは――分からなかった。
 彼女等が第一層を超えられたのは見事な健闘だったと言えるが、結果的に言うならば選択は理不尽な『正解』に届くものではなかった。


結果:【脱落】



成否

失敗

状態異常
零・K・メルヴィル(p3p000277)[重傷]
つばさ
フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)[重傷]
挫けぬ笑顔
すみれ(p3p009752)[重傷]
薄紫の花香
ノット・イコール(p3p009887)[重傷]
想いの届人

第2章 第24節

ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌
三國・誠司(p3p008563)
一般人
橋場・ステラ(p3p008617)
夜を裂く星
蓮杖 綾姫(p3p008658)
悲嘆の呪いを知りし者

●究極星択カルネアデス(烈火)
「第一層はなんとか越えられたようですね。実は私達、結構いけてるのでは!」
 気分良く第一層を突破した『断ち斬りの』蓮杖 綾姫(p3p008658)の前に現れたのは言わずと知れた選択の第二層である。
 二枚の扉と『不親切な』ヒントを目の前にした彼女は頬をかいて呟いた。
「第二層は、一層に比べてシンプル……楽な道か、苦を選ぶかですか。
『よく考えて』という文言には引っ掛かる所を感じますね……」
「まさかの二択! いやー性格でるねー!
 まぁいいや、問われてるなら答えるだけってね。
 ちょっと僕もお願い事があるんでね、がんばるしかないって事で……!」
 腕をぶす『一般人』三國・誠司(p3p008563)を含め、【烈火】の四人は実に勢いの良いチームだった。
 迷宮踏破の余勢を駆って第二層、と意気込めば足止めのような場所に当たった辺り、これはこれで難しいように思えなくもない。
「シュペルさんからすれば我々は馬鹿だもの。
 馬鹿の考え休むに似たり……うん、存分に休むよ」
 しかしながら『私の航海誌』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)の言う通り、多くのチームと同じようにこれはチャンスでもある。
 兎に角追い立てられていた第一層の真逆に『のんびり』させてくれるというのだから断る理由はないだろう。
「重要なのは結局は『どちらを選ぶか』でしょうか」
 こちらは淡々と選んだ先の事等も考えながら――『花盾』橋場・ステラ(p3p008617)が言った。
 結局、こんな場所で選ばされる選択肢なのだから『どちらかが幸福に満ちている』等とは考え難い。
 当然の想像として『どちらを選んだ所で碌な目に合わない』は殆どのイレギュラーズの共通見解だろう。
 故に【烈火】の面々も一休みをしながら、『この先』どうするかの検討を進めているという訳だ。
「よく考えて――結局どうする?」
 誠司の言葉に仲間達は各々の意見を持ち出した。
「よく考えましたけど、やはり今日の私達はイケてるので苦難の道でも突破出来るのでは」
「しっかりとやるべきを果たせば、不可能という事もないでしょう」
 綾姫が、ステラが強気に言う。
 彼女等が強気ならば、『もっと強気』なウィズィの結論等知れていた。
「選ぶのは苦難の道。
 シュペルさんが見たいのは此方を選ぶ人達でしょう?」
 不敵に笑った彼女はまるで『確信』しているかのようだった。
「我々は『烈火』!
 如何な苦難にも闘志全開、この炎は消えない!
 さあ、Step on it! 気合入れて行きましょう!」


結果:【クリア】
特殊結果:【休息十分】

成否

成功


第2章 第25節

ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
佐藤 美咲(p3p009818)
無職

●究極星択カルネアデス(鉄腕)
「さながら、十字架を背負って丘の上へ歩けとでもいう事かしら?
 大いなる傷みを負えと? それとも必要な『何か』を犠牲に差し出すことで初めて道が開けるとか。
 或いは、誰よりも先に『板』に到達するのが大事なのか……ああ、もう。考えてもキリがありませんわね」
『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)の見せた顔は彼女からすれば実に珍しいものだった。
 それらしい表情を浮かべる事が無い訳ではないのだが、普段のそれよりは随分真剣味を帯びた『苦笑』。
(本当の素の部分も大きいのだが)面白おかしい言動を繰り返す彼女の見せた真摯はそれだけ重大な意味を帯びていた。
「皆、忘れていたでありますが――」
 ふ、と皮肉に。『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)の口元が歪む。
「――この女、聖職者の類だったであります」
「どういう意味でして!?」
 選択を前に思い煩うのは聖職者にはありがちな振る舞いである。
 逆に軍人は判断に迷う事こそあれ、『思い煩う機会は少なかろう』。
 究極の星択を前にして対照的な二人は【鉄腕】の見事なコントラストそのものである。
「リタイアが一番容易って線を考えると多分苦難の方が確実性が高い。
 でも歓楽がただ楽な道って可能性もあるから……」
 選択を前にした『ダメ人間に見える』佐藤 美咲(p3p009818)は実に多くを考えていた。
 そこまで戦い慣れていない彼女の場合、何処まで行っても頼りにするべきはパーティのメンバーの方だったからである。
(私が考えるべきは三人と苦難を進めるかでスかね。
 私より強いのは確かでスけど先は未知数だし……
 大佐・司祭は行動に無駄が少なく多分私と相性が良い。実際私が声かけたのは大佐だし……
 殲姫は……うーん、感情的な面が強いような。
 私の目的のことを考えても今後暴発が怖いけど……でも軍務経験と一層の活躍で……暫定合格?)
 打算的な彼女が仲間を見回してそんな風に考える一方で、
「うん? どうしたんだい!
 それにしても、ヴァリューシャは思い悩む姿もかわいいね……天使かな?」
『暫定』扱いの『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)は幸せそうに劇場版のヴァレーリヤを摂取しているようであった。
 果たして、パーティに求められるのは『何を』そして『どう選ぶか』である。
「どうせこの意地の悪い塔の主のことだ、どちらにせよ困難を用意しているなら初めから苦難と分かっている方がいい。
 しかし実際、これは良いチームだ。鉄帝国に足りないものが、ここにある気がする位――」
「――何もないならばそれに越した事等ありませんけれどもね」
 エッダの言葉を否定せず、ヴァレーリヤは淡く微笑んだ。
 やれば出来る表情に、今度はエッダが気恥ずかしくなりわざとらしい咳払いをした。
「扉の先、か……
 どうなることか。でも、皆は勿論――そうだね、聞くまでもなかったね」
 美咲には強い意見は無く、小さな胸を張ったマリアは誇らしく宣言をする。
「行こうか! 艱難辛苦の扉の方へ!
 ありとあらゆる苦難をねじ伏せて、運命さえも従えよう。
 この鉄腕(チーム)なら――きっとそれが出来る筈!」
 彼女の言葉にヴァレーリヤがにっこりと頷いた。
 さあ、扉に手が掛かる。彼女達を待ち受けた運命は――


結果:【クリア】

成否

成功


第2章 第26節

マルク・シリング(p3p001309)
軍師
新道 風牙(p3p005012)
よをつむぐもの
リンディス=クァドラータ(p3p007979)
ただの人のように
ハンス・キングスレー(p3p008418)
運命射手

●究極星択カルネアデス(黒狼疾駆)
 良く考えろと言うからには、良く考える必要があるのだろう――
「よーく考えますか。いいや、よーく考えましたとも!」
 凡そ二十四時間はあろうかという猶予をたっぷりと使い、『よをつむぐもの』新道 風牙(p3p005012)はお茶の一つも啜っていたものだ。
「よく考えろ……とは有り難いような、そうでもないような」
 曖昧な笑みを浮かべた『夜咲紡ぎ』リンディス=クァドラータ(p3p007979)の顔色は先程よりも随分良くなっていた。
 第一層で文字通り『とんでもない目』にあったパーティはかなりの消耗を抱えた上で第二層に到達したのだが、これは彼等にとっての幸いだった。
 求められしが「良く考えること」ではなく「拙速を尊べ」という話だったなら、彼等が更に追い込まれていたであろう事は想像に難くない。
「よく考えてはみたけどね。結局、これはアンフェアな出題なんだ。
 あの文言が単に忠告なのか、それとも思考が反映されるとか……そんな突飛な意味であるのかはどうしたって定かじゃない。
 何れにしろ、結局僕達に出来るのは神ならぬ神の舞台で踊る事だけだから」
『砕けぬ蒼翼』ハンス・キングスレー(p3p008418)の『青の鳥籠(ギフト)』は疲れ果てた仲間達にとって一時の慰めになっていた。
 長い選択の時間の中で、元より強靭なイレギュラーズは気力を賦活し、力を取り戻し、これより次を目指す扉へと向かうのだ。
「どうするかって聞かれてもね――
 シュペルタワーを登ろうというんだ。それが楽な道で無い事くらい百も承知だよ」
 実を言えばほとんど考えるまでもなく、マルク・シリング(p3p001309)の――【黒狼疾駆】の結論は決まっていた。
「よく話し合ってはみたけど……まぁ、そりゃあそうだよな。
 選ぶのは『苦難の道』だ。オレ達が今進もうとしてる道が『歓楽』であるはずがない。
 シュペルだって、楽にオレ達を通そうなって思ってるわけがない。
 なら、奴の元に続く道は『苦難』以外にない――だろ、シュペルさんよ?」
「ええ。きっとこうなると――『信じて』おりました」
 風牙が、リンディスが頷いた。
 答えが正解であるかの問題ではなく、導き出された結論は余りにも確固としている。
「この扉の先が、シュペルの余暇をさぞ紛らわせ、多くの試練の果てに第三層へと辿り着く……
 そんな愉しき『苦難の道』であらん事を」
 瞑目したハンスの言葉にマルクは笑った。
 成る程、塔の主は神を僭称する。ならば神に祈れば一石二鳥というものじゃあないか――


結果:【クリア】
特殊結果:【休息十分】

成否

成功


第2章 第27節

ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
ティスル ティル(p3p006151)
銀すずめ
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
キルシェ=キルシュ(p3p009805)
光の聖女

●究極星択カルネアデス(夜空)
「今度は扉がふたつ。で、ヒントはほぼ無し。
 ……うん。まずは休憩にしましょっか!」
 明るく言った『幻耀双撃』ティスル ティル(p3p006151)の判断は全く正しいものだった。
 他の多くのパーティがそうであるのと同じように【夜空】も疲労困憊に違いなかったからだった。
「歓楽の道と苦難の道……悩ましいなぁ。
 うん、そうだ。考える為にも休憩しよう!」
「ここに来るまでの疲れもあるし、この先いつ休憩出来るか分からないもの!
 休憩出来る時に休憩するのは大事なのよ! 一時間位ご飯食べてしっかり休んで……
 全部それから考えましょう!」
「『良く考える』ためにも体調を整える――
 人生は選択の連続だと言うが、それ位はしないと『良く考える』事すら出来ないさ」
『希う魔道士』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)、『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)と『リチェと一緒』キルシェ=キルシュ(p3p009805)が立て続けに頷けば、選択の部屋は【夜空】が待ち望んだ体力気力回復の好機になった。
「仮眠や食事で一息つきましょっか。ちょっとだけどお菓子もあるよ?」
 ティスルの言葉に場が沸いた。
 ……僅か一時間ばかりの救いではあるが、先を急ぐ塔でもこれが全会一致で決まったのは当然だ。
 そうなって不自然がない位に第一層の冒険は過酷だったのだ。
 人心地つくという意味においては、彼等の面立ちはとても過酷な試練に晒されている風情ではない――
「でも、最後は選ぶ必要があるんだよね」
 大分時間が経った後、ヨゾラがそんな風に切り出した。
「部屋の中、色々調べてみたのだけど……
 このお部屋、扉と砂時計しかないのよね。不思議な感じ」
 記載されていた文言以上にはヒントがないようで、それを検めたキルシェが可愛く小首を傾げた。
「艱難辛苦は、困難に遭って苦しみ悩むこと。
 歓楽容易は……造語か。喜び楽しむ簡単なことか?
 俺は苦しんで生きたくはない。
 だが歓楽とは喜び楽しむだけではないだろう」
「私は『苦難の道』を選びたいかな。
 苦難の道も歓楽の道も、正直何があるか分からなさ過ぎて怖いけど。
 ……そもそも、この塔に挑んでいる時点で試練続きなのは承知の上よ。
 だから『苦難の道』。まあ、意外と扉を開けてすぐに第三層だったりするかもだけど」
「……俺は、強くなるために厳しい環境を選ぶ。
 艱難辛苦を越えて力を示す。こう考えれば俺はきっと後悔しない。
 皆で行こう、『苦難の道』へ!」
 第一層で『大変』だったのにやはりちっとも懲りていない。
 イズマにティスルは冗談のように言ったが、なかなかどうして。
 予想外の幸運も期待していない時に降りがちなものだった――


結果:【クリア】

成否

成功


第2章 第28節

ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃
藤野 蛍(p3p003861)
比翼連理・護
桜咲 珠緒(p3p004426)
比翼連理・攻
美咲・マクスウェル(p3p005192)
玻璃の瞳

●究極星択カルネアデス(桜ノ杜)
「歓楽容易か艱難辛苦かわざわざ選ばせるなんて、普通は楽に済みそうな方を選びそうなものだけど。
 例えばこちらが求めている、塔の主の助力に対して……
 そうね、どれだけの覚悟をもって臨んでいるのかを測りたいとか、そういう狙いなのかしら……?」
『比翼連理・護』藤野 蛍(p3p003861)の形の良い眉が思案の顔を作り出す。
【桜ノ杜】もまた最大の選択を選ばんとするチームであった。
「相手の狙いはともかくとして、まずは各自の選択を考えましょ」
 不親切極まりない出題に対してもあくまで『あの虹を見よ』美咲・マクスウェル(p3p005192)は冷静だった。
「どう答えるにせよ、きちんと考えた上で意思統一して選べばいいわ。
 第一ね、選択肢の定義どころかクリア条件すら提示がない。
 つまり、これは――考えて選んで後は主のご機嫌次第ってことでしょ」
 二層のルールがどれ位『誠実』であるか、それとも『不誠実極まりない』のかは分からなかった。
 それは多くの挑戦者達がたっぷりと時間を掛け、思い悩んでも出なかった答えである。
 故に美咲は【桜ノ杜】の仲間達にこう言ったのだ。

 ――やり切って、納得する答えを取ればいい――

「歓楽容易か、艱難辛苦か
 求める側を開け……開いて進めですかね?
 解釈はどうともできそうなので、選択が真に意に沿うかも不明ですが……
 そうですね、珠緒なりによく考えて、選んでみましょう」
『比翼連理・攻』桜咲 珠緒(p3p004426)の言葉に面々が一つ大きく頷いた。
 どちらかを選ぶ必要があるが、所詮は二択である。
 完全な運を試す選択であるとは思わないが、からくりを即座に看破出来ていないならば同じ事に違いない。
「んー、難しいことはよくわかんないけど……
 ボクは、どうせやることなら、楽しい方がいいよねって思うんだ!
 この先に何かしら楽しいこととか得に感じることがあるって思えれば……思えればね。
 途中の過程が難しくて辛くて苦しかったとしても、もうちょっと頑張ろうって気になれるもん!」
「そもそも最後まで辿り着けなきゃ意味無いのだし、だったら力を温存できるとこでは温存しておけるに越したことはないのよね
 だからやっぱり、うん。選ばせてもらえるなら、素直に『歓楽の道』かなぁ」
 蛍は『激情の踊り子』ヒィロ=エヒト(p3p002503)に同意見だった。何の心配事もないとまでは言えないが、期待はやや勝っている。
「ええ。珠緒が選ぶ側も、『歓楽の道』です。
 そもそもこの塔に挑んでいるのは、ネクスト事象への対応に助力を乞うため。
 それは、対応に関して『歓楽容易を求めている』と言えるでしょう。
 塔の最上層までには艱難辛苦が多々あるでしょうが、それは過程にあるもの。
 今進んで求めるものではないでしょうから」
「桜咲さんの意見は、私ら以外も含めた総意みたいな感じよね。
 ……けど、実際貴女はそのために来てるんだっけ」
 美咲はそんな風に言って最後に一言を付け足した。
「んー、私も『歓楽の道』ね。
 理由は、私が最終的に求めているのは自身が楽しむことだから、ね。
 修行パートも鬱展開も、その後のカタルシスあってこそなわけよ。
 困難に立ち向かうのは、それにより真に求めるものに近づくからで。それは、艱難辛苦そのものを求めているわけじゃないよね。
 手段と目的を混同さえしなければ、これはもう明らかってものだから」
 リアリストは澱み無く歓楽容易を選択し、彼女等はこの壁さえ実に簡単に突破した――


結果:【クリア】

成否

成功


第2章 第29節

仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
すずな(p3p005307)
信ず刄
白薊 小夜(p3p006668)
永夜

●究極星択カルネアデス(四光II)
「不運じゃな、主等。扉を抜けてわざわざ『当たり』を引きよるとは」
 死牡丹梅泉に笑いに『流麗花月』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)が応えた。
「ああ。これは間違いなく正解の道だよ、梅泉。
 我等が選んだのは苦難。故に、こうして極上と相見えたという訳だ――」
 旧知の【チーム・サリュー】と【四光】は実に因縁深く運命を手繰り寄せていた。
 遭遇したのは偶然か、それとも『神の配剤』かも分からない。
 唯一言える事は先程『苦難』を選んだ【四光】が正解を引いたという事だけだ。
「……待て、クリスチアン」
「うん?」
 汰磨羈の言の何かが引っ掛かったのか梅泉の柳眉が顰められた。
「わし等は『歓楽』を選んだ筈じゃ。どうして『苦難』の彼奴等とかち合った」
「……成る程、ね」
 梅泉の反応に『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)のグラスの奥の目が細められた。
 薄々分かっていた事ではあるが、『どうやら表面的な二択自体が解答で無い事は明らかなようだった』。
「簡単だよ、梅泉。どうすればいいか――答えなんて余りにもハッキリと書いてあっただろう」
「……?」
「『良く考えて選べ』と。
 それから『歓楽容易を求めるならこの扉を開け』『艱難辛苦を求めるならこの扉を開け』とも。
 こっちは最後の言葉程は露骨じゃあないけどね」
「……どういう事じゃ?」
 耳打ちするように問うた梅泉に刃桐雪之丞が肩を竦めた。
「相変わらず陰険な男じゃ。結論があるならとっとと答えよ」
 苛立ったような梅泉はちらりと『盲御前』白薊 小夜(p3p006668)や『一人前』すずな(p3p005307)の顔を見た。
 そちらも今の所大人しくしているが、梅泉と、それから犬歯を剥き出しにした紫乃宮たてはと大して変わりあるまい。
 ネタ晴らしか何か知らないが早くやれ、それどころではない――というのは共通見解といった所だ。
「扉自体に意味はないんだよ。塔主は『良く』考えて開けって言ってるだろう。
『よく』ってミスリードを誘ってるけど、これは『良く』だ。簡単ななぞなぞさ。
 言い換えれば消去法で選ぶな。ネガティブに選ぶな。
 選んだ扉に相応しき未来が待つと喜び勇んで開けろって明言されてる。
 だから私は「第二層は何の苦労もないのだ」と決め打ちして『歓楽』を開けた。
 彼等は先程の汰磨羈君の言葉を考慮する上なら、如何なる苦労にか。
 ……いや、或いはバイセン。君に逢えるかも知れないと思って開けたって所なんだろう。
 そして、彼等にとってそれは『素晴らしいこと』だったに違いない」
「ついでに言っておけば時間の流れも出鱈目に弄られてると思うべきだ」とクリスチアンは付け足した。
「第一層をクリアした面々の『タイミング』が同じだとはとても思えない。
 第二層に到る時点で『似たような時間軸に移されていないなら』私達と彼女等が出会う事は無かっただろうし。
 ……いやはや、私はハッキリ天才だが、この世には他にも恐ろしい人間がいるものだね」
 傲慢に肩を竦めたクリスチアンに寛治がパチパチ、とわざとらしい拍手をした。
「実に見事なる自己紹介でした。お陰様で貴方の人となりが寸分違わず分かった心算になりましたよ。
 ああ、お初にお目にかかります。新田、新田寛治と申します。クリスチアン。お会いできて嬉しいですよ」
「お嬢様が随分世話になっているみたいで」
「それなんですけどねぇ」と寛治は何時もにこやかな彼にはやや珍しい顔をした。
「実は私、貴方が嫌いなんですよ。お嬢様が貴方の話ばかりするものですから」
「奇遇だね。私も君が『けっこう嫌い』だ。お嬢様が何時も君の話をするものだから」
 呵々大笑するクリスチアンと寛治のやり取りはまるで狐と狸の化かし合いのようだった。
「もうええんとちゃいます?」
 そんな温く斬り合うような空気を文字通り切り裂いたのはたてはの言葉だった。
 明らかに表情からして業を煮やしている。これ以上、一分一秒も待つものかといった顔。
「じゃあ、改めて――こんなにすぐに会えるなんて嬉しい誤算ね。
 いつかの夜会以来になるけれどクリスチアンさんもお久しぶり。
 お礼を言いたかったからお会いできて嬉しいわ
 ……たてはさんも、もう気配が凄いことになっているけれど壮健そうで何よりね」
 小夜としては全く素直な感情の吐露なのだが『煽られた』たてはの顔に青筋が浮いている。
「私は会いたくなかったですが!
 まあ! じゃあねぇんですよ……
 ほんっと、嬉しそうな顔……はーやだやだ! やだ! や! だ!」
 露骨に駄々をこね、不機嫌をアピールするすずなの姿は青筋のたてはchangと大差ない。
 とはいえ、見知った顔で挨拶の一つもなく『始める』のは趣もないといった所か。
 いや、如何せん。この組み合わせは強烈な『因縁』を帯びている――
「つまらぬ塔と思ったが、主等に会えたならばこれも幸運か」
 梅泉は小夜に軽く微笑みかけ、それを見たたてはは『キレ』て弾丸のように飛び出した。
(本音を言えば引き合わせるのも嫌ですし、私が邪魔したい程です!
 でも――此処で貴女を通す訳には行かないのですよ!)

 ――キン、と鋼が高く哭き。

「故に!紫乃宮たてはさん、貴女の相手は私です……!
 仲良くなれそうな気配はしますが、其方はまたの機会です!」
 たてはの妖刀をすずなの刃界、分水剣が受け止めていた。
「貴方の相手は私がしても?」
「お手柔らかに」
 寛治とクリスチアンが向き合い、
「さて梅泉、お茶の約束だったけれど、今日はこっちのお相手をお願いしてもいいかしら?」
「愉しませるのであろうな?」
「その心算よ。あなたを失望させたら、死にたくなるもの。
 いつもと同じでは芸がないし、今日は別の趣向をお見せするわ。何より飽きられたら悲しいものね」
「ほう。では、その――今日の主を、ゆるり味見してみるとするか」
「……少し大胆すぎたかしら。恥ずかしいわ」
 艷然と笑った小夜に(たてはとすずなは軽くキレ)、梅泉は満足そうに頷いた。
 それぞれに相手は決まった。
 そしてそれは四人目も同じである――
「いやしかし。三者三様、こうも気が立っては当てられるというもの
 どうだ、雪之丞。似た立ち位置同士、こちらで冷厳に斬り合うというのは?」
「互いに苦労するな」
 自身に応じた雪之丞は苦笑を浮かべていた。
 汰磨羈はそんな彼にニコリと笑う。
「いや、考え方次第ではこの私も役得の内よ。大苦労は申し訳ないが、御主一人かも知れぬなあ!」

 ――全身全霊のぶつかり合いは、当然ながら【チーム・サリュー】の完勝だ。
 しかしながら最初から【四光】に逃れる心算は無く、謂わば彼女等は塔主よりもこの標的を狙っていた。
 そういう意味において、勝者は少なくともクリスチアンでは有り得ない。
 小夜の手管と【四光】の猛烈な戦意は梅泉を『満足』させてしまったのだ。
 刀さえ抜かねば、満腹になれば風流で、怠惰な肉食獣のような男は「帰る」と言い出し。
【チーム・サリュー】はそれより先に進む権利を喪失した。
 それは謂わば天才クリスチアンの誤算であり、ローレットの為を思わば。
 ダントツの優勝候補をここで『落とした』【四光】の大金星と呼ぶ他はなかっただろう――


【チーム・サリュー】
結果:【脱落】

【四光】
結果:【脱落】

成否

失敗

状態異常
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)[重傷]
陰陽式
新田 寛治(p3p005073)[重傷]
ファンドマネージャ
すずな(p3p005307)[重傷]
信ず刄
白薊 小夜(p3p006668)[重傷]
永夜

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