シナリオ詳細
<Jabberwock>『怪竜』
オープニング
●観測
罅割れる音がした。
天を覆うセフィロトドーム。中央統制システムマザーの存在により快適さを追求した旅人達の都市国家を覆ったのは黒き影であった。
曇天の雲よりも尚、黒々とした色彩を落とす其れは巨大なる飛龍の形をしている。
キュウ、と高く鳴き声を響かせたワイバーン達さえも小型に思えるほどの強大さ。
天を見上げた者は、誰もが息を呑んだ。その脳裏にはくっきりと死という捉えようのない気配が過る。
「来たか……!」
叫んだのは『実践の塔』佐伯操であった。その声を聞き、『探求の塔』カスパールは直ぐ様に後方を振り返る。
「どうなさいますか、『マザー』!」
モニターへと釘付けになっていた『想像の塔』Dr.マッドハッターは「ついに、彼が……」と呟いた。
それ以上の言葉は出る事は無い。彼ら三人はこの都市国家の『大いなる母』の言葉を待つだけだ。
「――至急、イレギュラーズを集めて下さい」
彼女の声音にはシステムらしからぬ焦燥が乗せられていた。
消耗した彼女の代わりに兄のクリストが協力者となるが、其れだけで容易に勝利を確信できる存在ではあるまい。
識別名:Jabberwock――
通称を『怪竜』と呼ぶ其れは無数の竜とワイバーンを伴って此の地までやってきた。
隣接している覇竜領域を思えば、それが観測されたことは可笑しくはない。
謎だらけの混沌で物語の生き物が実在しただけに他ならぬのだ。
現にセフィロトはその圧倒的な科学力でジャバーウォックを観測し続け、R.O.Oでは覇竜領域の再現まで行って見せた。
個体だけでも上位存在と呼ぶべき其れをクラリスが警戒し続けたのには何も竜種であるからというだけではない。
それは『冠位魔種』らしき気配を伴っていた。
その男が知性を有した竜に「ベルゼー」と呼ばれた事も、その気配が冠位魔種相応であったことも。
セフィロトは観測し、データとして全てを記録してあった。
其れだけ注意深く観測し続けた相手だ。
その観測情報がロストしたのは『Project:IDEA』――通称をR.O.Oと呼んだ問題の余波でのこと。
再度観測出来た時にはもう遅い。
ジャバーウォックはセフィロトに向かって真っ直ぐに向かってきている。
意思を持っての行動である。
知性ある竜は何らかの目的を――否、その様な推測で語らずとも一つしか理由はあるまい――この国を破壊するべく飛来した。
『怪竜』ジャバーウォック。
そして、連なるは『蒼穹なる』メテオスラークを始めとした竜種達。
『薄明竜』クワルバルツ
『白翼竜』フェザークレス
『金嶺竜』アウラスカルト
『霊喰晶竜』クリスタラード
『地竜』ザビアボロス。
其れ等に引き連れられるように暴力的に、破滅的にこの国を蹂躙せんとするのは無数のワイバーンであった。
『実践』の塔主、佐伯 操は希望ヶ浜地区での応戦を。
『想像』の塔主、Dr.マッドハッターは最前線での補佐を。
『探求』の塔主、カスパール・グシュナサフは中央統制システムへの殿を。
R.O.Oの時とは異なる外部的要因。
だが、これを見過ごせばこの国は一面の焦土に化すことだろう――
●『とある男の言い訳』
――そろそろ何(にゃに)かしておかにゃいと、ドヤされるだけでは済まにゃいにゃー。
気怠げな言葉を重ねた黒い毛並みの彼に男は渋い表情をした。相も変わらず眠たげな彼は小鳥を使って其れなりに活動を見せたらしい。
成程、そうともなれば動きが少ないのは自身とあの短気な彼達だけだ。
のらりくらりと躱している暇はないというのを態々、彼が伝えに来たのだからそろそろ本気を出さねばなるまい。
――どーせ、お前は自分の領域(くに)をどーにかするのが面倒だと思っているんだにゃー。
なら、手を組めばいいにゃ。そうすれば好きにゃだけ寝れるし、お前も言い訳が立つにゃ。
彼の誘いに男が頷いたのはある意味必然であった。
オジサマと笑う彼女や、慕ってくれた里の者達。閉鎖的なかの集落を破滅に追い込む事を考えられないほどに男は優しすぎた。
わざわざ可愛い可愛い友の娘にジャバ―うウォックに用心しろと声をかけたのだ。それは無数の集落の里の者へも同じ。
奴の喰らいつく顎は。引き掴む鈎爪は。両の眼を炯々と燃やすそれはうずめき叫ぶ。
ならば、何もしなければいいのではないか?
――いけないよ、『約束』だろう?
そうだ。このままではいけない。それに、そうだ……、腹が減って堪らないのだ。我慢することの出来ない飢え。飽くなき暴食。
その化身たる男は傍らで頭を垂れた巨大な竜に声を掛ける。
「さあ、良いかね。ジャバーウォック。
良き友人を持ったと思わないか。隣接したあの国は半ば自壊状態だろう?。そこを狙って奪えば良い。
産まれたばかりの君と出会えた幸運を今になって恵まれた奇跡だと感じるのさ」
竜の咆哮が轟き、巨大な鉤爪が地を掻いた。翼が揺らぐその仕草一つで地に植えられた木々が薙ぎ倒されて行く。
「それじゃ、話し合いを始めようじゃあないか。良いかね? 『カロン君』」
●『怪竜』
鋭利な爪先がセフィロトドームの天蓋を砂でも掻くかのような仕草で抉り取る。
ばちん、と音を立てたドームに張り巡らされた緊急用第一障壁(バリア)がその爪先を弾いた。
だが、その障壁はいとも容易く破壊された。散り散りに飛び交うのは複数の竜種。
巨大なるジャバーウォックの代わりに竜種たちを統率する司令塔はその羽搏き一つで進行方向を示したか。
観測用ドローンでの視界が真白に染まる。それは光か。吐き出された竜の息吹一つで鎮座していた観測塔の一つが崩れ落ちた。
子供が癇癪を起しブロックをがしゃりと叩き割るかのような容易さで、それは崩れ落ちてゆく。
「避難を」
声をかけたのは澄原 晴陽 (p3n000216)であった。その傍らでは顔についた灰を拭う澄原 水夜子 (p3n000214)が目を見開いて立っている。
「姉さん」
呼ぶ声が震える。
「姉さん、あ、あれ」
年相応の少女の様に、水夜子は晴陽に縋りついた。
再現性東京202X街を出て、秘宝種たちの肉体について造詣を深めるべくセフィロト中央までやってきていた二人の前にはありえざる存在がいた。
ぎょろりと幾つも並んだ目は狙いを定めるように動き回っている。
鋭利な牙を覗かせるその口からは長い舌がだらりと垂れ下がっていた。唾液を弾いた緊急用第三障壁が赤く点滅を繰り返す。
「竜種……」
そんなおとぎ話のような存在の名を口にして晴陽はじりじりと後退した。幸い、希望ヶ浜への連絡は途絶えてはいない。
(龍成……は、祓い屋の皆さんがどうにかする筈。佐伯先生には緊急ボタンで連絡ができる。
音呂木さんにはショートメッセージを……病院を彼女や『学園』に一時的に預け、我々はここを退避せねば)
脳内は冷静だった。冷静であれと育てられた女は落ち着き払った様子で連絡端末を鞄から取り出す。
震える足に力を込めて立っていたのは怯え竦んだ従妹を生還させる為だ。
「ね、姉さん」
呼ぶ声に涙が混じった。まだ17歳だ。この様な事態に落ち着いて対応できるわけがあるまい。
「あ、あれは、なんですか」
「あれは竜種と言います。上位存在……私たちで叶わぬ存在です」
物陰に水夜子の体を引きずってから晴陽はなんとか絞り出した。
突風が瓦礫をも吹き飛ばさんとする。幾重にも重なった瓦礫の下で見つからぬ様に息を潜めて晴陽は水夜子を抱きしめた。
周囲に植えられていた申し訳程度の街路樹は見る影もない。街路樹だけではないか、その周辺に存在したものは全て瓦礫と化している。
どこに居たとて危険だ。シェルターまでの僅かな距離は救援が来てから辿ればいい。今、慌てて走るなど無策。
だが、我慢しきれぬと瓦礫から走り出した幾人もの影があった。
叫声が響く。涙を混じらせて助けてと叫ぶ人間の生の象徴。
だが――それらは直ぐに白き光によって消し飛ばされた。
「う、うう……」
地を這う研究員はその半身すら残ってはいまい。もはや命は助からないだろう。
これが衝撃波だけだというのだからその存在が言葉では言い表せぬものであると認識させる。
申し訳程度としか言いようがない複数のドローンが天へと踊り、緊急事態を告げるアラートが虚しく響く。
――この様な国を捻り上げろと言ったのか。奴は。
逃げ惑う命は美しい。だが、抵抗さえも子供の癇癪程度。
傷心とは聞いていたが赤子同然ではあるまいか……ああ、詰まらぬ。詰まらぬぞ――
声が響く。それが竜の言葉であると気付いた時には周辺に存在した複数のドローンは地へと叩きつけられた。
ぐにゃりと捻じ曲がったかのような闇。竜に衝突することのなかったそれらは火を伴ってセフィロトの空より降り注ぐ。
赤い空に浮かび上がった黒き影。
――『怪竜』と呼ばれたそれはこの地を蹂躙するようにやってきた。
練達を、セフィロトをすべてを壊しつくしこの地にその黒き影を落とすために。
- <Jabberwock>『怪竜』Lv:50以上完了
- GM名夏あかね
- 種別決戦
- 難易度VERYHARD
- 冒険終了日時2022年02月01日 22時30分
- 参加人数163/∞人
- 相談5日
- 参加費50RC
参加者 : 163 人
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参加者一覧(163人)
リプレイ
●
閃光が視界を覆う。晴天をも遮る黒き影は飛来する気配と共に暗澹たる色彩を満たした。
――防衛システムを作動します。
機械的なメッセージと共にセフィロトドームを覆ったバリアは全域に広がったか。各地で起こる戦闘からセフィロト主要部を護る為に展開されたバリアは薄い膜のように都市群を守った。
「やっとこさマザー殿を助けたのにこれってどういう冗談ですか? 練達は前世でどんな悪行したんですか」
嘆息した『離れぬ意思』夢見 ルル家(p3p000016)にくすりと蠱惑的な笑みを浮かべたのは『影を歩くもの』ヴァイオレット・ホロウウォーカー(p3p007470)であった。
ほっそりとした指先がタロットを手繰り、仕草一つから影の気配が漏れ出でる。
『怪竜』の二つ名を有する竜種の相手をするのは荷が重いと嘆息したルル家はせめて露払いを行わねば傍らの『ヴィオ』の様に自身の心を教えてくれた仲間達にも申し訳が立たぬとフィアー&ティアー、二丁の拳銃を構える。
「――故に夢見ルル家! 義によって助太刀致します!」
「ええ、参りましょう。ルル。……少しばかりワタクシと踊って頂きますよ、"竜種"」
ゆったりと笑みを浮かべたヴァイオレットはジャバーウォックの名を持つ竜種の周辺から飛び交うワイバーン目がけ、闘気の糸を放つ。
完全なる自由は乙女の肉体を蝶の如く躍らせる。多重に残像をも生じさせた宝玉輝く短剣の行く先を追いかけてルル家の弾丸が無数に跳ねる。
「ヴィオが蝶のように舞うならば、拙者は蜂のように刺すと致しましょう!」
マザーの暴走が終わったと思えば、次は竜種。乗りかかった船ならばもう少しは面倒を見てやろうかと『砂礫の風狼』ウルファ=ハウラ(p3p009914)は風霊の力をその身に纏う。
「親玉以外がちまちまと守りを削りおる! 纏めて縛って、落ちるがよい!」
ジャバーウォックの周辺に飛び交うワイバーンを目掛け、放ったのは掌握魔術。逃げ場を許さぬ魔術の気配を感じ取り、『Legend of Asgar』シャルロット・D・アヴァローナ(p3p002897)が跳ね上がった。
「何を聞き出すにもまずは目前の脅威よね。来なさいワイバーンども、頂点たる種族とは如何なるものか、見せてあげるわ」
マザーが不調であるこの時期を狙い澄ましての襲撃。その理由が何かを聞き出すならば、ワイバーンを退けジャバーウォックより言葉を引き出さねばならないか。
――この地にさほど興味など抱いてはおらぬ。我が友は『掌握された土地』を求めておるのだ――
「どういうことかしらね? メインディッシュの癖に、大切なところは話してくれないだなんて」
聞こえていたのねと囁くシャルロットの繰り出す直死の一撃はエステル(p3p007981)の叩き込んだ不可視の刃を更にワイバーンへと突き立てるかの如く。
「これほどの大規模襲撃。鉄帝でも自慢できそうですね」
竜種、混沌の最強生物。其れ等との相対は力こそが最優のかの国ではさぞ優れた武勲となる事だろう。
「あーあー全くデカいデカい。言うて我々もっとデカいのヤッてから~。
アノ時に比べりゃ、陸地な分だけ地に足着くが人の生活圏内で気が気じゃねーよ。
まっ ココは愉快な思い出満載の、魅惑の福利厚生都市だから……精一杯守らないと! 女性たちを!」
にんまりと微笑んで『八百屋の息子』コラバポス 夏子(p3p000808)は果てない栄光に包まれた軽槍をひょいと担ぎ上げた。
役割という者は無数に存在する。危機的状況が訪れた女性を見付ければ、それを護る事こそが夏子に与えられた使命。
ドローンを餌に炸裂させたのは丁寧な横薙ぎ、そして弾くような発砲音と強き光か。
「街中にこの巨体は再現性東京の怪獣映画めいた光景ですね。映画では怪獣を阻む軍隊は飛んで火に入るが如き有様でしたが……。
実際にはどうなるか、御覧に見せて差し上げませう」
唇に浮かべた笑みの意味を『旅人自称者』ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)は語らう事は無い。
指輪から紡いだ魔力糸が伸び上がる。傍らには撃退部隊。そして、其れを狙い大口を開いたワイバーンか。
結った髪がふわりと揺らぐ。足に力を込めて跳ね上がったままに放つは花吹雪が如き炎乱。
「では、露払いと参りませうか」
身を捻れば水無月のスカーフがヘイゼルのその身を宙へと誘った。意思の力はワイバーンをも叩き落とす力となる。
「何やら騒々しいと来てみれば……竜、ですか。ふふ、大変宜しい。
しかし、この国を落とされると少々困ってしまいますね。友人との思い出も出来てしまった縁ゆかりあるこの地。故に、お引き取り願いましょう」
淡々と囁いたのは『帰心人心』彼岸会 無量(p3p007169)。すらりと引き抜いたは大妖之彼岸花。
月色の瞳はワイバーンを断ち切る好機に光を湛える。叩きつけた一点の曇り無き一太刀は確かにその肉を断ったか。
「それにしても……梅の君は今回も居られず。竜に嫌われているのか、それとも縁がないだけか」
●
「もう! せっかく頑張ったのにまたこの国は! ええ、ええ、それならまた頑張るだけよ! ドラゴン退治だなんていい演目になりそうね!」
ぐりんと体を揺れ動かしたのは『黒靴のバレリーヌ』ヴィリス(p3p009671)。彼女の言葉に頷いた『繋ぐ者』シルキィ(p3p008115)の糸は一条の流星の如くワイバーンへと降り注ぐ。
「敵だった人々も、練達の人々も……わたし達は多くの命を失ってここまで来た。だから、負ける訳にはいかない。
矢継ぎ早にやってきた困難だけれど、きっと大丈夫。なんてったって、こんなに『イイ女』達が集まってるんだもんねぇ?」
イイ女。そう呼ばれればヴィリスは「出し惜しみはなしね?」と揶揄うように笑う。御膳立てをするイイ女にトドメを刺すイイ女。野蛮な彼らにとっては分からないだろうが栄誉ある死に様を喜べば良いとヴィリスが跳ね上がる。
「良い女というのは、少し分かりませんが……屹度、わたし達は強きひと。
如何な時も、如何な舞台に於いても決して手折れることなく咲き誇る、気高き華々……そう云うものなのでしょうか」
まだその呼び名には慣れぬまま、『plastic』アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)は宵闇をも切り裂くように振り上げる。
天を穿った一条。不吉な色彩に染まった空は混沌でもそう見るものではない。それでも災厄を払い除けてきた自分たちならばと願わずには居られないのだ。
「泣きっ面に蜂とはまさにこの事。
いえ、それが悪意の元に行われているのなら不運を嘆いてる場合ではなく、今このときを切り抜けて今回の件を企てた奴らに吠え面かかせてやる方がいいですね。
こほん、少しばかり口が悪かったです。まだ、この国を滅ぼさせる訳には行かない、全力で抗います」
イイ女らしくないかと口を噤んだ『燻る微熱』小金井・正純(p3p008000)に『導きの戦乙女』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)は小さく笑う。
正純の放った魔砲。それはワイバーンだろうが何だろうが星の祈りを持って砕くべきと激しく飛び交う。
「正純殿の花火は盛大だったな! 私はその残りを斬り捨てよう」
美しき花のようだと笑ったブレンダが地を蹴った跳ね上がった。竜殺しは騎士の誉れ。ドローンの上を跳ねながら、飛来するワイバーンへと狙い定めて叩きつけるはバルムンク。
「ついこの間、竜は懲り懲りだって話してた気がするんですけどねぇ……悪い予感は当たるってヤツかしら。
ま。来たからには盛大に歓迎してやるわよ、トカゲ野郎!
私ら人間が竜に優れる点があるとしたら、ただ一つ――自分よりデカい奴らとの喧嘩には圧倒的に慣れてるってこと!」
『雪風』ゼファー(p3p007625)はにいと唇を吊り上げる。
槍の穂先を向けて、朗々と告げた言葉がワイバーンを引き寄せる。これ見よがしと槍を深々と突き刺すのもイイ女の在り方だ。
『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)は「正純ちゃーん、お待たせしましたぁ!」と振り返る。
「ええ、もう一度花火を打ち上げましょうか!」
「そうしてちょうだいねぇ。傷心の所に攻めるの、男と女の駆け引きなら大いにアリなんだけど。
でもこれはちょーっと、怪竜さんも誰かさんも無作法が過ぎないかしらねぇ。
私、無作法な人は嫌いなの。今日の所は出直して頂きましょ、そちらのワイバーンさんも!」
くすりと笑ったアーリアの語らう恋の有様はファム・ファタルも真っ青だ。刹那の幻をも砕くがために。
アーリアの囁きを聞いたワイバーンへと正純が放つ全身全霊にシルキィは「負けてられないねぇ」と微笑んだ。
イイ女がいるならば『イイ男』も戦陣へと参ずるだろう。『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)の闘志が漲った。
「竜退治たあ面白ェ、おれさまのハクをつけるにゃ丁度いいぜ。イキリまくったトカゲどもをヒィヒィ言わせてやるぜ! ゲハハッ!」
振り上げたは山賊の斧。こんな所で死んで堪るかと叩きつけたのは無数の捨石の中に潜んだ本命を得る最適解。
何もかもをぶっ壊せ。そして、『イキリトカゲ』に終焉を告げる如く。
「ふふっ、空が随分と賑やかだね。そしてどうやら、皆空腹のようだ。私も例外ではないけどね。さあ、ソア。美味しそうな竜達は目の前だよ」
ほらと指さした『饗宴の悪魔』マルベート・トゥールーズ(p3p000736)に『雷虎』ソア(p3p007025)は「群れからはぐれしうなのを狙お」と微笑んだ。
ワイバーン達は覇竜の祖に出るのは屹度久しぶり。狩りを楽しむようにも見えた獲物を狩り取るのはソアの役目。
「よーく太ってるね、どんなお味なのかしら? 美味しく頂きに行こう、マルベートさん」
「ああ。優雅に、愉しく行こう。勿論肉の味見も忘れずにね」
ぺろりと舌を覗かせてマルベートは古より灯を持つ者の片鱗を魅せる。迸る黒きマナ。握る煌命を喰らうグランクトーは食欲に満ち溢れる。
飛び付いたソアの嵐も止まぬ突撃戦術はワイバーンの羽を手折る。それは狩猟に長けた獣の本能。
食べられるのは何方の側か――教え込むようにソアとマルベートは昏く笑みを浮かべ。
「ここには自分のお父さんとお母さんが居るんすよー。負けられないっすねー」
ウィーンと首を動かしたのは『扇風機』アルヤン 不連続面(p3p009220)。その身に魔王の力を纏い、天才の徹底的な並行思考を展開する。
そして――叩きつけるのは逆式風水。うぃーん、うぃーん、どーん。そんなフェイントを仕掛ける扇風機は世界だって救えると豪語する。
「まだ復旧が完全に終わっていないこのタイミングで来襲するとか……悪意しか感じないね!」
正しく敵対する相手だと『咎人狩り』ラムダ・アイリス(p3p008609)は駆け抜ける。ワイバーンに向けて叩き込んだのは対群精神感応攻撃術式『死月』。
マインドジャック・デッドリームーン。それは不吉の月を昇らせて、爆発的エネルギーと共に届かせる断罪の刃。
煌めく術式がその身に与えた反動にラムダは「HAHAHA」と軽やかに笑った。
「ちょっと反動がきついね……いい加減墜ちろ!」
「ン。フリック 攻撃部隊ノ回復支援担当。練達支援システム データ 回シテモライ 効率ヨク支援」
誰かを護れなくとも足は止めない。死を護る者である『水月花の墓守』フリークライ(p3p008595)は息を吐く。
「弔ワレルベキ命 此処ニ居ル。彼ラノ墓標 コレ以上 荒ラサセナイ」
淡々と囁けば――その癒やしが降り注ぐ。ジャバーウォックの攻撃域から生存する誰かを守り、広域に張り巡らされたバリアを守り抜く為に『誰かの為の墓守』グリム・クロウ・ルインズ(p3p008578)は駆ける。
「亜竜でない純正の竜種。だたそこにあるだけの暴力の化身……見ているだけで震えるぐらいに階位が違う。
それでも、これ以上死を振りまかれるわけにもいかないんだ。ここは人の領域。どうかお帰り頂こう」
巨大な怪竜も無視は出来ないが、ワイバーン達を放置しては更なる危機が及ぶ可能性もある。『数多異世界の冒険者』カイン・レジスト(p3p008357)はマルチディヴィジョンを展開する。
「全く、息つく暇もないとは正にこの事だよねっ!
練達は大事変を越えて大変な所なんだ。これ以上の厄介事は、竜だろうとノーセンキューだよ!」
長剣を手に、無数の特殊魔弾を放った。今まで喰らった中出も苦い思いを受けたモノばかり。それを亜竜種達へと届けるのだ。
支える『「Concordia」船長』ルチア・アフラニア(p3p006865)は只、皆が生き延びることを願う。戦略眼を駆使し、出来うる限りの防衛と避難態勢を構築できるように気を配った。
●
竜種――御伽噺で耳にした存在だった。『白銀の戦乙女』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)は「私たちは生き残れるのでしょうか」と呟く。
「……いえ、止めなくてはいけません。この国が消えてしまうだけではきっと済まない! お父様お母様、どうか私に、力を貸してください!」
撃退をするならば損耗させなくてはならない。あのジャバーウォックに「此処は諦めよう」と思わせれば良いのだ。
奴は使いっ走りだ。少しでもリソースを削れば――だが、シフォリィには自身が其れを為せるとは思わない。ならば仲間の為に道を開くのみ。
「練達に竜種……しかもあのライノファイザよりも強いだなんて聞くじゃない。
一匹でも多く撃退出来れば認めてもらえる……なーんて戯言は置いておいて。練達の危機……手を貸さなくもない、かしらね」
くすりと笑った『竜首狩り』エルス・ティーネ(p3p007325)は竜を前にして奇跡を乞うことはしなかった。自身の実力を持って『あの方』に認めて貰える武勲を得たい。
醒めた月の魔性が嘲笑う。エルスの手にした大鎌が魔的な一撃を放った。
「ここで練達を終わらせはしない。この地で紡いだ絆も、繋いだ想いも、無意味に踏み潰されて良いものじゃない」
どこもかしこも人手は足りない。其れはそうだ、あの様な存在を相手にするのだから手数で勝てるわけがないのだ。
『龍眼潰し』ジェック・アーロン(p3p004755)は空を飛ぶワイバーンを狙う。狙い定める――狙撃銃は慈悲も躊躇も抱きはしない。
強欲に命を奪う。敵を逃さぬ効率よき命を奪う気配。空を駆るワイバーンなど地へと打ち落とせば良い。狙え、狙撃手の誉れとするために。
「やらせない……やらせない、やらせない!
人間なんて食べさせない、アタシはそんなの見たくない!! あー、もう、涙でちゃったじゃんか……!」
ぐいと腕で涙を拭って『ハイテンションガール』郷田 京(p3p009529)は唇を噛んだ。天性の当て勘を研ぎ澄ませ、自慢の生足を武器に立ち回れ。
人を襲う者達を此処で止めなくてはならない。人間の腑(はらわた)を抉るワイバーンなど見たくはない。
その雑食性を許してはならない。この地は人が住まう場所――奴らの好きになどさせて堪るか。
足が動く限り、火炎を身に纏い、全力で蹴り付ける。京は勢いの儘、地を蹴った。叩きつけん勢いの蹴撃が鋭くも華奢なワイバーンの身へと飛び込んだ。
「ンだよあのクソでっけぇ奴! 練達がようやく一息付くと思った矢先にコレはねぇっスよ!
アレを倒すまで行かなくとも、何とかするにしても骨が折れそうだな……とにかくやるしかねぇ、こんなトコで折れてたまるかってんだ!」
頭をがりがりと掻いたのは『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)。ワイバーンを一匹ずつ落とせば良い。
翼に狙いを定め――放つ一弾一殺。後追う者の希望となり、未来となるために。
それは只のワイバーンだと笑うことも出来ないか。『蒼の楔』レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)はイレギュラーズの手によってワイバーン達から救われる一般人に避難をしろと声を張る。
これは災害だ。逃げろ、と。そう口にする自身は医者である矜持を胸にシルバと共に駆け参じた。
(――……災害、そう云う他ない。だからこそ、だ。助かる命を確実に拾い上げるぜ)
練達支援システムを強化する。その為に自身は戦場にやってきた。『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)はワイバーンを相手取る仲間達に支援を送る。
其れを狩り、あわよくばを狙い続ける。空を行く銀鯨の髭を加工した指揮杖を振り上げた。空奏結界が広がり、仲間への支援を強固にする。
「猫居ないかなーとか言ってる場合じゃない! 練達を……クラリスさん達をやらせるものか!」
折角仲良くなれたのにと唇を尖らせて。『希う魔道士』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)は量産型ハイペリオンと共に仲間達を癒やす。
展開されたのは強烈なる支援。そうして生命を巻き戻すような神意の祝福を導く純白の竪琴の音色が響く。
星空を飾ったクロースがひらりと揺れる。猫たちも、クラリスも。何方もを護る為にヨゾラは乞うのだ。
赤子同然だと誹られようと、可愛い猫に比べてちっとも可愛くない『大きい竜』に皆を倒させることが癪だと癒やす。癒やして、癒やして、魔術紋に希う――奴に負けて堪るかと。
『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)は「さぁ武者仕事である!」と声高に宣言した。
「クハッ! 美少女からは逃れられぬぞ!」
白百合清楚殺戮拳、狭刺――それは遠距離から至近攻撃を行う敵の空間認識を誤認させる技。百合子に云わせれば『ズル』の一つ。
だが、其れでワイバーンの感覚を狂わせたならば此方の勝利。勢いよく叩き込むのは白百合百裂拳。ただ一つ。
ワイバーンの一体ずつを撃破して、そして越えるのだ。あの巨大な竜を。
「水夜子君も普通の女の子なのだな。少し安心したような寂しいような。何か変な感じだ。何にせよ水夜子君と晴陽君の危機なれば捨ておけぬ」
これが真性怪異相手ならまた違う顔を見せるのかも知れないと『獏馬の夜妖憑き』恋屍・愛無(p3p007296)はふと、思う。
彼女は真性怪異などには強いが、こうした再現性にはない脅威を恐れているか。二人を探し、シェルターへと運ぶことを優先する。
「澄原――晴陽と水夜子だな?」
匂いを辿り『月夜に吠える』ルナ・ファ・ディール(p3p009526)が声を掛けたのは晴陽と水夜子であった。
彼は『剣砕きの』ラダ・ジグリ(p3p000271)の頼みを聞き二人の護衛役として戦場を駆けた。
「てめぇら、ラダのダチか? おら、勝手にくたばってんじゃねぇぞ。此の儘脱出するぜ」
「……有り難うございます。水夜子です。此方は従姉の晴陽姉さん。救援に感謝します」
静かに頭を下げた水夜子は晴陽を支え、ルナが指し示した安全地帯へと向けて走り出す。
「終わったらクレープ奢るよ。生クリームがたっぷりの。少しだけ待っていてくれ」
愛無は己も共にとルナに提案した。彼女らを護るが為に戦場に馳せ参じたのだ。そう言う様に駆けだして。
彼女達のことを心配していた。だが、打てる手は打った。信頼できるルナに任せたのだとラダはビルや倒壊した建物を盾にしてワイバーンを打ち落とす。
ジャバーウォックを撃退する為に戦う仲間達の障害を出来うる限り排除する。銀弾は気まぐれだ。チャンスも有限――だが、チャンスがあるならば、何度だって試行できる。
ラダが打ち落としたワイバーンへと肉薄したのは『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)。竜を殺すために卓越した技術を得たオリーブは上質な長剣を振り上げる。
肝心なのは撃退部隊。彼らの援護を行うオリーブの叩きつけたのバルムンクは不可能なる幻想を穿つ。
『竜食い』シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)は朗々と名乗りを上げた。
「怪竜に従う飛竜よ、竜食いの名においてこの貴族騎士が成敗する! 竜をも堕とすこの一撃、受けてみろ!」
接敵死叩きつけたのは呪いの力を集めた蹴撃。痛烈なるそれは呪詛を纏い悍ましき呪いを乗せる。
「あおーん! こっちにあるブティック、今度お師匠と一緒に行きたい場所なのっ! この街も、行きたい場所も、絶対に破壊させたりしないよっ!」
ぷんすこと頬を膨らませた『( ‘ᾥ’ )の化身』リコリス・ウォルハント・ローア(p3p009236)は全部見えてるよと云わんばかりに睨め付ける。
練達で開発された小型ドローンを使用して、マーキング弾を放つ。竜を落として倒すだけ。この街を潰させないためのリコリスのやり方だ。
「ゲームの中じゃ一匹に見つかっただけで冷や汗もんだったってのに無限湧きしてんじゃねぇよ!」
クレームめいて指さしたのは『鳥籠の画家』ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)。唇を尖らせてた彼に『長頼の兄』冬越 弾正(p3p007105)はワイバーンを引き離しながら「だが、倒さねばならん」と囁いた。
「そうだな。どうする?」
「……マザーを守る。それが俺の、ジェーン・ドゥへの義理立てだ。貴様らに事情があろうと、これ以上練達の地を踏みにじるのは許さん!」
――私は。
あの声が、遠く響いた。母の為に咲いた赤きカーネーション。その花を無駄にはせぬとベルナルドが狙う個体へと全力で放つ神速の抜き打ち。
R.O.Oでの経験を活かし、幾重にも攻撃を重ね続ける。
「さー、頑張ろうか! 大丈夫二人ならなんだってできるさ!」
『月夜の蒼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)の手にした災いと狂気の黒銃に魔術の気配が乗せられた。
やれやれと肩を竦めたのは『紅獣』ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)。流石にファンタジーが過ぎると嘆息せずには居られないのだ。
「セオリー通りにルーキスが叩いて、俺が守る。こんな状況でも何時も通り無理せず着実に、だなー」
「此処は協力して各個撃破がセオリーだろうしね。無理はしなーい、でも攻撃はするー!」
夫婦揃って笑みを浮かべて、狙うは各個撃破。パーティープレイには慣れている。
クラウストラ。深淵は傍らに。ルーキスが放つ呼声に、重ねるの防御力を破壊力に変えたルナールの一撃。
「こういう時は本職の盾役が羨ましくなるな……! 奥さんの盾、これが俺の本職だからな! 役目はきっちり果たすとしよう……!」
ならば――彼の剱となるのは自身の役目だとルーキスは笑みを深くして。
「――とうとう、とうとうこの時が来ましたね! 本物の竜ですよ、小夜さん、斬華さん! 練達の方々には申し訳ないですが、とても心躍ります」
ぱあ、と笑みを浮かべたのは『竜断ち(偽)』すずな(p3p005307)。
声を掛けられた『盲御前』白薊 小夜(p3p006668)はウキウキと首刈大太刀を握りしめる『首神(首刈りお姉さん)』紅迅 斬華(p3p008460)の側へと顔を向けた。
「ふふん♪ 小夜ちゃんにすずなちゃん! 今日の晩御飯はワイバーンの兜焼きにしましょう!
多分鶏肉っぽくて美味しいと思います!!! 首も刈れて美味しいご飯にもなる……エコですね! エコ! お姉さん頑張っちゃいますよ!」
「斬華さんは……聞くまでもなさそうな。皆首ですもんね……いつも楽しそうで何よりです、うん。
あ、ほら、過去にラサの遺跡で斬り伏せたのは水晶で出来た偽物でした故!
あの時は通じましたが――本物に通用するのか、腕が鳴りますよ……! 小夜さんもそう思いません……?」
ねえ、と見遣ったすずなに小夜は悩ましげに首を傾げて。
「ふふ、二人とも楽しそうでなによりね。しかし今回はゼファーも居ないし私が守りに回らせて貰おうかしら。
そんなこと聞かれても、本物と言えば更に前にリヴァイアサンも相手にしてるからこれくらいなら何だか可愛らしく思えてしまって、ねえ?」
すずなと斬華に手技を用いて気の流れを整える小夜は「今は何もしないわ」とすずなへと言い含める。
「ッ――」
ぱちくりと瞬いた彼女を気にすることのない斬華はウキウキとその身を揺らした。
「すずなちゃん! 同時に仕掛けますよ! こうね! ガッ! っとクロスしたりして斬るの!」
全く以て狡い人――けれど、そんな熱情に浮かれては居られないとすずなは「待って下さい!」と首に夢中な斬華を追い掛けた。
●
「絶海より今一度我々は竜に挑む。突撃用意! 脱落は許さないわ!」
掲げるは流星の描くラ・ピュセル。猛き威勢の焔を。深く熱持つ青き炎を。その胸に宿らせ紫苑の娘は声高に宣言をする。
騎兵隊へと指令を送るは『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)。指揮官はビルを遮蔽物としし、ジャバーウォックへと接近せよと指示をする。
盾役を外殻。回復役を血。全員で肉。一個生物として怪竜に噛み付くが為に。
(災厄のケテル――あの日を思い返せ。そうよ、『私』。あの日、皆を生かした操船を忘れてはならないのだから!)
指示を聞き最前線に立ったのは『白騎士』レイリー=シュタイン(p3p007270)と『好機一閃』エレンシア=ウォルハリア=レスティーユ(p3p004881)。
「私の名はレイリー=シュタイン! 騎兵隊の一番槍よ」
「征くは覇道、決めるは王道! エレンシア=レスティーユ、騎兵隊が先駆け! 『一ノ太刀』だ!」
「「いざ、参る!」」
駆け出すエレンシアは宙を踊り、ジャバーウォックへと接敵する。白き鞘より引き抜いた大太刀は城をも叩き切るとされる武技を放った。
――……この身に傷を付けることを望むか、小さき者よ。その勇気、湛えてやろう。
「あら? その褒美に帰って頂いてもいいのよ?」
武者震いをしちゃうと唇を吊り上げたレイリーは「私が倒れない限り、皆を倒させないわ!」と白き大盾を構える。
竜を眼前に。竜の翼を思わせる盾を握るとは何という誉れか。レイリーの体に力が籠もる。
「いやはや。竜と喧嘩。陛下に自慢出来るでありますね」
ふふんと鼻を鳴らしたのは『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)。前線でのダメージコントロールこそがエッダの使命だ。
身を隠したビルに亀裂が入る。爪先一つ、其れだけの威力を有するとて『医術士』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)は師の指示を聞き、仲間を護ると決めていた。
「ゼフィラさん、生きましょう!」
軸たる『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)と同時に行動を開始し、ジャバーウォックの出方を思案する。
「奴のブレスは避けた方が良さそうだね」
「ええ。全員、陣展開! ヒーラーの進言を無駄にはしないわ!」
イーリンの声にゼフィラは頷いた。ゼフィラが行うのはヒーラーのリソースの補強。苦境など遠く、自身が共にあれば無限とも言えると白き花の装飾を施した機械式義手に力を込める。
「どんな強大な存在が相手でも、一緒なら怖くありません!」
自身一人では、どうしても恐ろしいこともある。ココロは途惑い由来だと手、心の目を拓けば越えて行けると医術士として福音を紡ぐ相手を見極める。
「ええ、ええ! 必ず出来る……支えられる。だって、ココロさんと一緒なのだから!
覚悟するのだわ! 私達が貴方の『ヴォーパルの剣』なのだわよ!!」
――ヴォーパルの剣つるぎぞ手に取りて 尾揃おそろしき物探すこと永きに渉れり 憩う傍らにあるはタムタムの樹、 物想いに耽りて足を休めぬ。
『嫉妬の後遺症』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)は伝承に語られた『ジャバウォック』に怪竜をなぞらえた。
燃えさかる炎は決意に他ならず。ココロと共に仲間を支える。それが仲間達にジャバーウォックへと大きな一打を与える好機を齎すと信じているから。
己が番を護る為ならば『断片の幻痛』ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)は予期せぬ未来をも退けることを願うだろう。
誰にもあげないと、己を包み込む気配があるだけでヨタカは強くなれるのだから。
「さあ、行こうか。小鳥」
「……ああ、紫月。アレを落とそう」
飛来する竜種の影などに怯えることはない。囁く一声に笑みを返した『闇之雲』武器商人(p3p001107)がゆったりと微笑めば怪物(ちから)は真っ直ぐにジャバーウォックの一撃を受け止める。
ちり、と身を灼いたブレス。その閃光から愛しき番を守る武器商人は俯瞰し、ギネヴィアと共に無窮を駆ける。
ヨタカが支援してくれるならば武器商人は何処までも強くなれる。無事でありますようにと願うその心が己を守ってくれるのだから。
『騎兵隊一番翼』レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)は眼前に存在する竜に息を飲んだ。
竜種。それは強大なる存在だ。自身等にとっては脅威である亜竜(ワイバーン)さえも、ちっぽけに見えるのだ。歓喜か、恐怖か。何方ともとれぬ感情がレイヴンの心を急き立て断頭台の刃を握る指先により力を与えた。
「了解した」
ジャバーウォックから目を離す勿れ。
騎兵隊の命を守るのは自身等の感覚だ。視覚を、聴覚を、嗅覚を研ぎ澄ませろ。
――蟻が束になろうとも勝敗は決して居るであろうに。ああ、詰まらぬ。
「詰まらぬ、だと。己より遥かに弱く小さき者が、傷で伏せている中を狙った分際、で。詰まらぬと吼えた、か」
金の髪先が、宙を踊った。苛立ちを滲ませ冷たき気配を宿す刀身が引き抜かれる。
その宝石眼は決意の色彩が滲んでいる。『……私も待っている』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)の連続魔は『的』に着弾、だが、甘いか。
「ならば、来い。躾けてやろう、トカゲモドキ」
――甘いというならば、幾度でも放ってやろう。鱗の一枚、落としてやれば良い。爪先に僅かな傷を作り抉れば良い。
「シュペル君への恩に報いる為にも、負けるわけにはいかない。切り札を投入する! 出るぞ! スレイプニール!」
その身に纏うのは異能たる紅雷。
割れた窓硝子が天より落ちる。ばちん、ばちんと音を立て弾いた練達の防衛装置(バリア)を一瞥し『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)はより加速した。
「了解です。マスター。支援行動を開始します」
淡々と答えたのは『マリアの決戦兵装』雷光殲姫専用 異能拡張兵装 スレイプニール(p3p010314)。
――決意は胸にあった。スレイプニールの援護があれば、マリアは真っ直ぐに走って行ける。
マリアの紅雷に乗せたエクスマリアの集中的な砲撃が鱗一枚を弾いた。
しかし、ジャバーウォックばかりが敵ではない。エクスマリアを喰らわんと大口を開けたワイバーンが一直線に飛び込んでくる。
気付くのは『自在の名手』リトル・リリー(p3p000955)。「一度は竜と戦った身だもん、怖がることなんてないよね!」と微笑み魔導書より邪剣士の技を生み出した。
ワイバーンの翼を切り裂く殺人剣。続き、魔導銃は呪いを纏った弾丸を放つ。
「隙あらばワイバーンが飛んでくる、か。怪獣映画の撮影か? ここには『コッカイギジドー』はないから帰れ!」
『観光客』アト・サイン(p3p001394)は口を酸っぱくしてそう言った。遮蔽物を盾にした攻撃指示を行う副将は年老いた影の国の馬に跨がっている。
敵の部位欠損さえ出来ればそこから有利になる。鱗一枚削り取るだけでこの重労働だ。苦しいが、継続的なリソースを割けば腕の一本とは言わずとも指一本は恵んでくれそうな気配さえある。
――惑え、小さき者よ。抗い、嘆くのだ――
「守備隊、防御体制……来るよ! 構え……! オオー!」
息を吸い込む仕草。仰け反った背。先陣に立った『進撃のラッパ』フラーゴラ・トラモント(p3p008825)が盾を構える。
モーニンググローリー。日の出の魔法よ、勝利への栄光を。導け。耐え忍ぶようにフラーゴラが唇を噛む。前線で『支える』フラーゴラの言葉を聞き、攻撃部隊がビルの影にその姿を隠した。
直ぐさまに回復班の防衛を優先する『黒鎖の傭兵』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)は「ツイてないな」と呟いた。
バグを退け表に出れた友人兄妹達の事を思えば練達という国は実にツイていない。
「気張れよティンダロス、じゃなきゃ死ぬぞ」
嘆息しながらもフラーゴラの指示を聞き防衛に当たるマカライトの身をブレスが焼き続ける。エッダは「流石に消耗が激しい出ありますか」と呟いた。
回復部隊の支援があれど、ジャバーウォックの相手は骨が折れる。軍馬に跨がったエッダが振り返れば、眼前に飛び込まんとするのは。
――ジャバーウォックの強大な一撃。その後に支援行動のように飛び交うワイバーンに気付き『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)はメイスを振り上げる。
「どいて頂戴、ぶちかましますわよ!」
ジャバーウォックのブレスには段階があるか。溜め行動のないものは行動を阻害する能力を有しているようだが、溜めて吐き出された者はその命をも削る衝撃だ。
「巻込まれたら只では置かないとでも言いたげですのね」
嘆息したヴァレーリヤはそれでも此処を守り切るのが騎兵隊なのだと『ヤドリギの矢』ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)と頷き在った。
「行くぜみんな! 騎兵隊の上顎として奴の喉笛を噛みちぎってやろうぜ!」
ジャバーウォックの眼を射貫くために。何度だって放つ大樹の剣にして、新芽の矢。伝説の魔剣を生み出し構築し、イチイバルは放つだけ。
片目を潰せば脅威として認識されるだろう。竜種と云えども、練達では奴は害獣。害獣を駆逐するのが狩人の役目だ。
「狩猟してやるよ!」
「ええ、上等です、ドラゴンステーキにでもしてあげましょう?」
シンプルな指輪は刃へと変化を遂げた。紅と蒼。その二つを輝かせ『斬城剣』橋場・ステラ(p3p008617)は直死の一撃を叩き込む。
死守すべきは生き残ると云うこと。隊長の指示は絶対遵守。それを胸に抱きながら、距離詰める。接近と共に放つ邪剣は逃がすべからずと宙を飛ぶ。
●
「一体一体が非常に手強い。亜竜とはいえ竜の名を持つ種という事ね。
雑兵の様に扱われているワイバーンでこれほどの質なら……手が足りない以前に、万全でもまともに戦って守り切れるかどうか。
人の軍勢のように集団としての動きに統率と戦略戦術は感じられないけれど、それ故に強力な個々が予測しにくい動きをして守り難いのもある。やはり、勝機は相手の中枢を叩いて撤退させる他無い……か」
複数の竜種達の相手を分担している。司令官を満足に撤退させられるか――そして、その戦況を見たジャバーウォックがどう動くのか。
『月花銀閃』久住・舞花(p3p005056)は息を呑みながらもワイバーンを撃破し続ける。冴え冴えと冷ややかに。変幻の刃を武器にして舞花は駆け巡る。
「みるくちゃんの故郷。この前のお正月に、訪れたばかりなのに。ううん、嘆いてる暇は無いの。
みんなの笑顔を守る為に! 戦います! ──召剣、ウルサ・マヨル!」
ウルサ・マヨルが召喚される。『召剣士』パーシャ・トラフキン(p3p006384)は隣で憤慨する『いわしプリンセス』アンジュ・サルディーネ(p3p006960)を一瞥した。
「ベヒーモスといい、こいつといい、デカイってだけで調子に乗るやつばっかりだね。
しかも漁夫の利よろしく、弱った所に漬け込んで襲うなんてさ。竜って自尊心の塊だと思ってたけど。こいつはそういうプライド無いのかな?」
「誰かのお遣いって聞いたよ」
「タチが悪いよ!」
唇を尖らせたアンジュに頷いたパーシャ。指先の震えを抑え、月輪を握りしめた『月輪』久留見 みるく(p3p007631)は息を吐く。
「……ここはあたしの故郷。大切なパパとママ。友達。この街に住む人達。皆の日常を壊そうとする、あんた達みたいな奴らは――絶対許さない」
パーシャとアンジュが居れば、たたける。有利に立ち回れるはずだとみるくが走る。
そう、自身等は最後の砦。後何匹切れば良い? あと何匹倒せば『この地を守り切れる』のか。
アンジュはいわし達にも力を貸してと囁いた。敵が多いならば、超絶強化したいわしの力を思い知らせるだけだ。
「私達の役目はバリアを護る事。良いわね、危なくなれば後退をして脱落を少なくするの」
『フロントライン・エレガンス』アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)が行うのは広域俯瞰での戦場把握。そして、戦略眼を駆使した部隊の統率だ。
由来だイモータルクロスは夜よりも深い漆黒。逃れられぬ死さえも遠ざけるとされた其れと共に迫るワイバーンへと突き立てたのは水晶の剣。
氷の気配を纏わせて、雪の結晶が花散らす。
防衛部隊にまで届かせぬように――ワイバーンを蹴散らす『プロメテウスの恋焔』アルテミア・フィルティス(p3p001981)は唇を噛みしめる。
空を踊り、剣に乗せたのは身を焦がすような双炎。蒼、紅。それは『愛しいあの子』がくれた翼。
「人間舐めんじゃないわよ!!」
アルテミアが吼える。トカゲと罵るその声は、この手が届く限り護る事は止めないと揺るぎない決心の響き。
「こちらとて黙ってやられるつもりはない。攻め込んできた事を後悔させてやろう」
全てを見通しながら『天穹を翔ける銀狼』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)は支える。心を喰らい魂を啜る者。
天穹を駆け、仲間を支える『眼』は鋭く研ぎ澄まされる。
回復部隊と侮る勿れ。得た力は攻撃にも転じると神秘的破壊力を一点集約し放つフルルーンブラスター。
『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)は前衛と後詰めの二重防衛戦を敷いた。全戦で戦うアンナ達が苦しくなれば後詰めがスイッチし、回復部隊の支援を受けてバリアを守り続ける。
ゴリョウは己もその作戦から漏れることなきように天狼盾『天蓋』で防備を固める。此処で戦線を維持すれば良いのだ。そうして、背後に存在する防衛装置の破壊を防ぐ。薄い膜のように展開された其れが都市機構を護っていることは良く分かる。
「これは防衛戦だ。幾ら敵を倒したとしても、肝心な所をブチ抜かれては意味が無い。
――手伝うぞ、ゴリョウ。その代わり、後で飛び切り美味い飯を頼む!」
守り切りさえすれば奴は撤退する。そう信じ『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)は跳ね上がる。
的の流れを確認し、報告を行いながら徹底的な迎撃を。身に纏うのは厄狩闘流『旺霊圏』の術式。
卦を以って悪しき気運を剪定する事で流れを好転させよ。攻性的気質を高め、猛威を振るえ。
霊気を散らし、真白き桜と共に踊る。あらゆる者を切り刻む厄狩闘流新派『花劉圏』が一つ。
「ただいまって言えるように、おかえりって言ってもらえるように、ナヴァン様たちのいる練達を守りたいのです。ニルはニルのできることを!」
それは、大切な人を護るための力。『おかえりを言う為に』ニル(p3p009185)の手にしたラースゴブレットに満ちた恨みは乾きの杯となる。
ルリルリィ・ルリルラと朗々謳うその響き。接敵するワイバーン目掛けて放つ高位の霧氷魔は最も美しい術式として広がって行く。
「なんやどえらい事になってはりますなぁ。躾のなっとらん輩にはちぃとばかり痛いお灸を据えてやらなぁいけまへんなぁ」
ふんわりとした笑みを浮かべたのは『はんなり山師』如月 追儺(p3p008982)。現世彷徨う鬼火を集め、うつつに夢幻の絵姿を演出すれば、黄泉の語部はその地を守り抜くべく立ち続ける。
「練達には、産み出した秘宝種の方たちの行く末を見守っていただかなくてはいけませんから。こんなところで滅んでいただいては、困ります」
無数の命がバーチャルからやってきた。同胞達の行く先が、そのコア朽ちるまでの道程が。
『抱き止める白』グリーフ・ロス(p3p008615)は大切なのだと拳大の宝玉のような核を輝かせる。
誰にも遮られること無きように。無数の命を守るため。秘めた煌めきでワイバーンを引き寄せた。
その核を護るように『魔風の主』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)は回復支援を送る。
「去年あれだけ苦労したのに……いいよもう竜でもなんでもどんと来い! 絶対にこの都市は守ってみせる!」
あれだけ苦労したのだ。セフィロトを護る為にも、此処で挫けるわけにはいかない。
紡いだ福音が最適化した特殊支援と共に送られる。この地を護る為、今は努力を重ね続けるのだ。
「……うっさいなぁ……バリアを爪でキーキーキーキー……これ完全に安眠妨害っしょ…バリア触るの止めるかお前らが大地に眠るか選べだよぉ……」
苛立ったように呟いた『ゴールデンラバール』矢都花 リリー(p3p006541)は隙あらばバールで『ボコ』してやるのだと苛立ちを滲ませる。
『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)は死ぬ気も怪我する気も無いのだと、安全圏からの支援を行った。生存率を上げるのは迫り来る脅威を逸早く察知した世界の言葉。
注意を促す彼は後方より眺め精霊達の『眼』で支援の足りぬ場所を探すのだ。そうして、誰かの力になる為に。
●
「おお、これが竜……! まともに見るのは初めてでしょうか。恐ろしく強いとの事ですが、殴り甲斐がありそうですね。
この都市は先日苦労して守り抜いた場所。手を出すならば全員殴り倒してみせましょう!」
やりましょうと戦場を駆けるのは『挫けぬ軍狼』日車・迅(p3p007500)。防衛壁である仲間達をすり抜けてくるワイバーンを相手取り、出来うる限り『後ろ』に向かわせぬよう火力を持って撃破する。
「うむ、うむ。麿も障壁を守る為に一肌脱ごうかの」
『殿』一条 夢心地(p3p008344)はある程度ワイバーンを誘導し、バリアの損傷を遅らせることを考えた。手にした覇竜の導きは、彼の姿を一等目立たせる。
自身を餌だと認識してくれればそれで良い。そうして引き寄せることで守れるモノがあるからだ。
「ぬっはっは、ここが正念場よ。守って守って守り倒す。ゆくぞ皆の者!!」
夢心地に承知というように頷いたのは『勇往邁進』リディア・T・レオンハート(p3p008325)。
「リディア・レオンハート推参! 剣を振るうのも騎士の務めですが――"護る"事こそが本分です!」
如何に相手が強大であろうとも。心の強さは負けてはない。セフィロトに展開された緊急障壁を直接庇う形で、立ち回る。
握る輝剣リーヴァテインにぶつかったワイバーンの牙。鋭き一撃にも怯むことは無い。
「ジャバーウォック自体も気にはなるが……そっちばかりにかまけてるわけにはいかねぇしな。適材適所ってやつだ」
ずしんと音を立てたのは凍波の大盾であった。
並大抵では持ち上げられぬそれを悠々と担ぎ上げた『波濤の盾』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)は己が求む未来を指し示した羅針盤を一瞥する。
極まった獣種は決して己の不意を突かれやしない。
竜種の体内で生成されたとされた宝玉を手にし、エイヴァンは吼えた。その一撃こそが神威――防御力は強き力と転じワイバーンへと叩きつけられる。
「ROOでの異変が解決したと思ったら、今度は竜種が……!
こんなに大きくて、こんなに強いなんて……って言ってる暇は無いよねえ、僕も支援に回るよ……!」
練達を覆うバリアの防衛も必要だ。故に、防衛部隊とし立ち回る仲間達を支えて見せんと『四季の奏者』鳶島 津々流(p3p000141)は強大な魔力をその身に湛えた。芽吹き、茂り、枯れ落ち、眠る。その美しき季節の流れを纏わせたのは桜とヱ霞の舞扇。
ふわりと躍れば神の声の如き妙なる響きを遠く、支援を求める仲間の元へと届かせる。
「笛の音と歌で癒して、誰一人欠けさせやしないよ!」
それは、津々流の決意。人ならざる『ひと』はかそけき幻でも、かなわぬ夢でも――咲かぬ花でも、今は大輪の如くその存在を主張する。
「一難去ってまた一難とはこの事。あまりに目まぐるしくて、開き直る気持ちが滾々と湧いてきましたわよ。この際、なんでもいらっしゃいな。凌ぎ切るだけです」
星の剣を手にして『光華の導き手』星芒 玉兎(p3p009838)は静かに囁いた。練達を守護する障壁、其れ等は不可視の存在ではあるがジャバーウォックの攻撃で罅割れた『場所』が分かる。故に、そこに飛び交う攻撃を受け止めてこの国を守り切るのが玉兎の使命である。
宵闇を裂き、天昇の時来たれり。闇の如き、影さえも拭い去れば光が差すと彼女はそう信じているのだから。
「オイラたちだって練達にはいろいろお世話になったんだ。ここで滅ぼさせるわけにはいかないよ!」
一難去ってまた一難、そんな言葉では言い表せぬと『炎の守護者』チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)は機械盾を構える。
異世界より持ち込んだ大剣を構え、ワイバーンをブロックし続ける。保護結界は気休めでも良い。其れで少しでも街を守れるならば儲けもの。
「――お返しだ! 喰らえ!」
その膂力を活かしてワイバーンを弾く。
ワイバーンが飛んできたことに気付いてびくりと跳ねたのは鯛焼き――ではなく『砂竜すら魅了するモノ』ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)。
「ぬおお! 僕は食べられませんよ! ええいこの程度でダウンするものですか!」
ベーク自身に刻まれた災厄を撥ね除ける術式が反応する。あくる日の思い出を胸に、海洋王国大旗を振り上げた。
出来るだけ長く防衛できることこそが一番だ。ベークの元に接近したワイバーンを切り裂いたのは青き一閃。
「折角R.O.Oでの戦いを乗り越えたと言うのに、次から次へと災厄が続きますねぇ」
やれやれと肩を竦めた『蒼剣の弟子』ドラマ・ゲツク(p3p000172)は魔術礼装をその手に握る。
師の教えを胸に、精霊達の言葉に耳を傾け実戦訓練を体現する。一つの文字は少女の力となった。御伽噺の竜との対峙を体現したような、その気配にビブリオフィリアは胸躍らせ術式を解析し、魔力の流れを断つようにワイバーンのその身を切り裂いた。
「私の学んだ剣は倒す剣ではなく、負けない剣。持久戦はお手の物なのです!」
『ぷるるん! ずどん!』ロロン・ラプス(p3p007992)は雪月花と呼ばれた霊刀を振り下ろす。流体ボディをずるんと運んだ其れはワイバーンを多い、ぷるんと魔力を爆発させた。
「クラリスくんとは約束があるからねー。これ以上負荷をかけさせるわけにはいかないよ」
練達の全てはマザーに頼り切っていた。故に、彼女を護る為にもこの地を支えなくてはならないのだ。
「大好きな再現性東京がある練達を守るために障壁の防衛をするのですよ!」
鳥の幻影を使いながら、『シティガール』メイ=ルゥ(p3p007582)はロケッ都会羊を駆使してワイバーンへと肉薄する。
何時だって楽しく過してきた希望ヶ浜。その地を護る為にも天地揺るがすように叩き込んだのは確実な死を与える跳躍の一撃。
支援システムで飛び、ドローンを足場に跳ね上がる。バリアに向かって多数のワイバーンが接近することを決して許さないと『赤々靴』レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)は自身の身を追い詰める敵の攻撃を者ともせぬと立ち続ける。
「此処まで来るっすよ!」
夢想は現実を侵食する。己が膝を突けど、命を燃やせ。もしも倒れたとて、諦めなければ何度でも。
レッドは命を賭し、何処かでも進撃せんとする誓いを胸に抱いた。
この地を護りたい。その気持ちは父の願い。『永炎勇狼』ウェール=ナイトボート(p3p000561)は息を呑む。
もしも奴らに侵略を許せばR.O.Oは消し飛ぶ。希望ヶ浜学園も、学園の知り合いさえも死ぬ。竜種よりも死が怖い。
父として笑って呉れた彼も――何もかも。置いて逝くのも逝かれるのだって御免だ。だからこそ。ウェールは支える。
燃えるような衝撃がファミリアーの視界を奪う。ワイバーン達の前では其れが只の食事に他ならずとも出来る工夫は重ねたい。
「Nyahahahaha! 漢豚丼、女だが『我等を蟻と見るような』連中でも『鬱陶しい蝿として』意識させる」
『同一奇譚』オラボナ=ヒールド=テゴス(p3p000569)は腹を抱えて笑った。ワイバーンを受け止めて、認識にバグを与える。
行く手を遮ることを最優先に。ワイバーンの自由を奪えば修復プロトコルが発動し始める。
神性に贋り無く、全(ひとつ)は存在する。此処で倒れてはならぬと囁くように。
「竜は、陽のエネルギーだとか幸運のシンボルだなんて言われて居ますが。
嗚呼、ねえヴィクトールさま。あれは、わるい竜だ」
ほら、と指さしたのは『L'Oiseau bleu』散々・未散(p3p008200)。『ボクを知りませんか』ヴィクトール=エルステッド=アラステア(p3p007791)は「ああ、そうですか」と頷いた。
「『食らいつく顎、掻き毟る爪、爛々たる眼――』でしたか。ああ、あれは竜ですね、ええ、竜です。
悪だろうが、善だろうが。よきも、あきも、関係なく。護りましょう。ええ。すべてのために」
絶対に生きて、活かして、帰る。だれもかれも、命の一欠さえ『わけのわからないもの』に渡す気は無いのだとヴィクトールは盾となる。
その背後で未散は「ああ」と呟いた。旧友と行くと約束したパフェ屋も行けていないののだ。
『女子に人気の倫理のせんせ』に護って貰う誉れをその身で受けて見せようと彼女はふわりと笑う。
「まもることでしたら、おまかせくださいですの……。
となりに、ゴリョウさんがいらっしゃるのでしたら、もう、何もおそれることなんて、ありませんの!!
ちゃんと、ゴリョウさんの漢豚丼も、食べてきましたので……もう、体のなかからゴリョウさんにまもられているも、同然ですの……!」
ニンニク醤油と生姜で香味を効かせた豚肉を銀シャリに豪快に乗せた愛夫丼が力になるのだと『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)は熱水噴出杖をぎゅうと構えた。
全戦で戦う仲間達に大いなる海の力を纏わせ、いざとなれば自身の体を包み込む被食者の覚悟が牙を剥く。
つるんとしたゼラチン質のしっぽは美しい。だが、食べるというならば抵抗される覚悟を胸に抱かねばならぬのだ。
絶望的な状態なのだと言われても『雨宿りの』雨宮 利香(p3p001254)は「ちっとも怖くないの」と美しく笑うだけ。
「無謀な連中が好機を掴むまで死ぬ気で守んのよ、それまで自分のケツくらい拭きなさいよハデス!」
無謀だと笑われようとも、馬鹿(ハデス)も戦場に出てきて死ぬ気で頑張っているのだ。切り札同士、思う存分護れば良い。
利香は周辺のワイバーンを精神史は以下に置きながら、防御の構えから飛び上がる。指先が手繰ったのは雷の魔力。
ドローンは言葉を通じるのが不安だ。だが、支援をするというならば『思う存分』利用してやるだけだ。
「バリアを守る旨、了解!」
びしりと敬礼をしたのは『いわしアイドル』アルプス・ローダー(p3p000034)――の交流用アバターである桃色の少女。
マフラーを吹かせ、後衛より狙いを済ます。イグニッション・デバイスは装着済み、走り出せば時間をも越えると折り紙付きに勇気を重ねる。
それはこの場に集まった希望のために使うと決まった必殺技――「僕はジャバーウォックより、ずっと速い! 脅威ですよ!」
喰らえ、驚天動地! パンドラフィニッシュ!
●
「この練達が『この様な国』かどうか……テメェの体で確かめてみろ、怪竜!!」
吼えるように叫んだのは『シャウト&クラッシュ』わんこ(p3p008288)。MST101-C"ケルベロス"を駆り、向日葵のタナトスが笑う。
飛び込め、放つはわんこショウタイム――!
ジャバーウォックの翼目掛けて飛び込んだ其れが、一寸の隙を作り出す。しかし、わんこ目掛けて飛び込む鉤爪の鋭さに唇を噛まずには射られない。
「大丈夫です、エル達は、此処で、負けません!」
連絡役のファミリアーを介しながら『ふゆのこころ』エル・エ・ルーエ(p3p008216)はぐ、と拳を固めた。
冬のおとぎ話を語らうように生命力を糧にして召喚したつららが跳ね上がる。鉤爪を昇り、一発でも届けて欲しいと願うようにエルは真っ直ぐに見詰める。
「竜種だか何だか知らねーけど、遊び半分の殺戮行動で死者増産するとは許せねーのだ!
死出の番人(ニヴルヘイム)として死者達の仇討なのだ! ガルムちゃん、行くのだ!」
ふんすと魔狼ガルムに跨がったのは『呑まれない才能』ヘルミーネ・フォン・ニヴルヘイム(p3p010212)。貪り喰らうモノの異名を有する呪紐が撓る。
騎兵隊は各班の連携で戦場に健在だ。その一翼でもあるヘルミーネは『ヘル・エーリヴァーガル』を放った。
ピキリと音を立てて周辺の空気が凍る。猛毒の氷はジャバーウォックに突き刺さるが鱗が悪意の気配を弾くか。
『ネクロフィリア』物部・ねねこ(p3p007217)は「ワイバーンの死骸って手に入りますか!?」とぱちりと瞬く。
得ていた情報を駆使すれば、遮蔽物に使用できそうな建物は多く存在したが戦いの余波で崩れるものも多い。出来うる限り支えるが為に精神回復爆弾を投げ入れて、此度は仲間を支えることに徹する。
「ROO事変でマイホームが焼けそうになったばかりなんスけどねー……今年、厄払い行ったほうが良いのかな……?」
厄払いに行くとしても、今はジャバーウォックを退けなければならないかと『合理的じゃない』佐藤 美咲(p3p009818)はまじまじとジャバーウォックを眺めた。
バッドステータスの付与を早めることでジャバーウォックの足を止めさせられる可能性。浅いばかりの攻撃では通らないならば多段に其れを食い止めるチャンスを求めれば良い。
ビルの影に隠れ、落ちてくる窓硝子から身を守る。走る度に踏み締めるアスファルトの凹凸が未曾有の災害だと称することしか出来ぬ空間をより感じさせた。
「いやはやとんだデカブツ。ま、志願した以上は腹括ってやりますか」
やれやれと肩を竦める『酔狂者』バルガル・ミフィスト(p3p007978)は呪詛の鎖と死滅の必殺槍を組み替えた鎖付きナイフを手繰る。
回避は勘に任せ、捨て身気味で徹底的に叩き込む。ジャバーウォックへの道を開いた騎兵隊を信じ一撃でも多く殺人剣を放つのみ。
「いやあ、デカブツじゃのう。でかすぎて色々とやっとられんわ! ということで始めるのじゃ」
陸鮫に乗って移動する『宝石の魔女』クラウジア=ジュエリア=ペトロヴァー(p3p006508)はバルガルに癒やしを送る。
そうして、命を繋ぐのだ。ジャバーウォックが『お遣い』出来ていることは良く分かる。
『挫けぬ笑顔』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)は回復を行いながら空より地へと降り立ったジャバーウォックの動き一つでアスファルトが軋んだことに気付いた。
「何かくるかも知れない!」
注意喚起を口にすればクラウジアが頷いた。守り切るための癒やしを、今此処で。イーリンは言って居た。誰も欠けることなきように――此処に満ちるのは死であると。
「マザーの時は行けなかった事に非常に悔やんでいた……だが今のワシは違う……。
戦場に長く立てば立つ程……この怪竜に存在を示し、面目に泥を塗る事もできるッ!」
騎兵隊は長く戦場に立ちジャバーウォックに傷を残す。その誉れを得るため。『Blue Rose With You』オウェード=ランドマスター(p3p009184)は水晶偽竜ライノファイザより削り出した偽竜鱗を懐に、片手斧を振り上げた。
叩きつけるバルムンク。ジャバーウォックより放たれた攻撃を物ともせぬと耐える決死の覚悟は回復手達を守り、戦線維持に役立った。
「新年早々大賑わいですこと。いやあねえ」
嘆息する『翼より殺意を込めて』メルランヌ・ヴィーライ(p3p009063)より放たれたのは終焉の帳。深き紫苑は不吉と終末を予感する。
ジャバーウォックの周囲に飛び交うワイバーンを巻込むように。空を駆る。
「ここは友達からのお使い程度の感覚で、落とせる場所じゃないのですよ! それをみんなで教えてあげるのでしてー!!」
唇を尖らせて『使いっ走り』でやってきたジャバーウォックに文句の一つも伝えたい『にじいろ一番星』ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)が地団駄を踏む。ゼフィラの元から戦線へと復帰し、羽ばたく動作を確認しては遮蔽物の背後に隠れる。
「あの目玉をぶっ壊してやるのですよ!」
無数に存在する目玉がぎょろりと動く。伸びた舌先の動き一つ、恐怖に身が震える気配を感じ取る。
だが、そこで許しては置かないのだ。放つのは破式魔砲。『魔砲使い』は己の身も顧みず収束させた魔力を放つ。
「これが竜? 成程、冗談みたいな大きさだな。けれど何度、何が来ようと同じだ。全て打ち払うまで!」
瑠璃雛菊と白百合に乗せた決意は輝くように。『忠義の剣』ルーキス・ファウン(p3p008870)は『この先』に繋がる何かを得られるようにと余すことなくその姿を観察し続ける。
叩きつけるバルムンク、竜を殺す事。それを目指した剣に乗せた決意は鋭くも研ぎ澄まされる。
回復担当を保護するように立ち回る『群鱗』只野・黒子(p3p008597)はジャバーウォックを注視する。その攻撃域は広いが、守り切れないわけではない。
全てを掌握するように黒子は静かに息を整えた。駆けることは出来る。動くことは出来る。常人をも凌駕して、人を護ることが出来るのだ。
「ぼくの好きな場所…大好きな人たちをつぶさせない……いっくよー!」
練達を護ってみんなで帰る。ただいまと笑って、のんびりとした日常に。
お話の『途中』参加は許さないと『うそつき』リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)はぐるると喉を鳴らすように叫んだ。
空だって、届くはず。確実な死を求めるようにリュコスの鎖がじゃらりと音を立てる。
「ォオオオッ! プリンノ魅力ヲ教エテヤル!」
友人から借り受けた暴れ馬(バイク)で走り抜けて行く『甘い筋肉』マッチョ ☆ プリン(p3p008503)は勢いよく飛び込んだ。
リュコスを巻込むように振り下ろされた鉤爪を受け止める。バイクに傷が付いたのは――ご愛敬だ。
「プリンダ!!!!!」
叫んだマッチョ ☆ プリンのカラメル増し増しプリンヘッドに傷が付こうとも今は気にも止めやしない。
「いきなり現れて滅茶苦茶にされて……ムカつく! 練達は俺の大事なものいっぱいあるんだよ。好き勝手するんじゃねー!」
どないしたん、まーだーは無理しぃやから。そんな風に笑ったあの子の不安そうな顔を思い出し『Re'drum'er』眞田(p3p008414)は苛立った。
緋、紅、茜。混在する赫が目を引く一対のナイフはぎらりと輝いた。ジャバーウォックへと叩きつけた多重の残像。弱点と思わしき場所は分からない。固い鱗を切り裂くのも一苦労。
「まったく。練達も平和になろうっていう時に無粋な真似をするな、竜種は。配下の雑魚共々ここでお帰り願おうか、怪竜」
静かに囁いてから『女神の希望』リウィルディア=エスカ=ノルン(p3p006761)は仲間達へと賦活の力を与えた。
無粋すぎる相手を此処で挫くために必要なのは『立ち続けること』なのだ。
故に、『雨夜の映し身』カイト(p3p007128)はリウィルディアの支援を受けながら『氷戒凍葬』を展開し続ける。
「――残念だけど、お前らみたいな交通事故みてえな厄にやられてる場合じゃねんだよ」
竜。
あの海。
『海淵の祭司』クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)は息を吸う。イーリンとタイミングを合わせることは出来る。
少しでも、『奴』に届かせねばならないのだ。
「いーちゃん」
振り向いたイーリンの目が見開かれた。クレマァダ『らしくない』口元の笑みはあの海を思い浮かべる。
「船頭が居なくては船が進まぬからな。皆で生きる。あの海からずっと、それが我の望みじゃ」
――船頭が誘わない 波が揺らいで 攫ってく。 海のいのちは ぼくらを攫う。ううん、今は違うんだよ。みんなで生きよう、いーちゃん。
●
「あっ……うそ、あれが本物の竜……!? なにあれ。あんなの聞いてない……!」
足が震える。断っていられないほどの威圧感に『揺れずの聖域』タイム(p3p007854)は息を呑む。
それでも彼女がこの戦場に立ったのは、仲間が、友達が共に居るから。
「ほんとは竜なんて、すっごく怖いよ。でも、この街には楽しい思い出が沢山あるの……だから、滅茶苦茶になんてさせない!
あたし達二人がいればもう最強なんだから! ねータイムちゃん!」
にこりと笑って『青と翠の謡い手』フラン・ヴィラネル(p3p006816)はヴェール・ベールをしっかりと纏った。
フランが笑うから、タイムだって笑みを浮かべる。
共に、戦場を支える為に言霊に力を込めた。
詰め所に飛び込んできた助けを求める声。応えた黒狼縁の者達。ああ、それはどれ程に眩しい存在であったかと『罪のアントニウム』クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)は薄く笑った。
「良いですか? 深手を負ったら一度下がってください。倒れさえしなければ癒せる。癒やしさえ出来れば、また攻撃を仕掛けることができるのです」
癒やすことこそ、より長く戦い敵を屠れる可能性を広げるのだ。
何をしようと命ある者は何れは死ぬ。クラリーチェは知っているからこそ、彼らを支えることを選んだ。
クラリーチェ・カヴァッツァという娘は支援魔術に徹底熟練していた。天命尽きる定めにないものを救うことこそ神の理。
永訣の鐘の響きを聞きながら、黒狼を率いる者は先陣を行く。
「一度は退けた練達の危機がこうもまた続くとはな、俺達もまだ休む事は出来んという訳か。
既に竜種という存在の危険性を俺達は知っている、油断せず、この力を賭して守るべき物の為に戦おう。
……では行くとしよう。此度も頼りにしているよ、リュティス」
『特異運命座標』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)へと頷いた従者は「一難去ってまた一難ですか」と肩を竦める。
「竜種の襲来というのは他人事ではありませんし、明日の我が身というものです。ここで返り討ちにして差し上げましょう。
お任せ下さい。御主人様。必ずや期待に見合う働きをしてみせましょう」
宵闇の矢を召喚し、『黒狼の従者』リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)はベネディクトの行く先を遮る敵を赦しはしない。
後方はフランとタイム、クラリーチェのサポートに任せ、今は道を只開くのみ。
「まるでメガ・コーポに立ち向かう個人商店の気分ですね。だが、それが面白い。
それに、頑張る若者(オチナイジョー)を後方で腕を組んで応援するのは、中年の特権というものですよ。ねえ、國定さん?」
古びた.45口径の手入れは完璧だった。『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)が声を掛ければ『疲れ果てた復讐者』國定 天川(p3p010201)は重く頷く。
先にイレギュラーズによって保護された晴陽へと安全な場所に行ってくれと声を掛けた天川は此処からは自分たちの出番だと煙草を放り投げる。
「フリアノンで聞いていた通りというか、それ以上というか。
『怪竜』ジャバーウォック。この規模の個体が他にも存在しているなんて……これが竜という種族ですか」
息を呑んだのは『紅炎の勇者』リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)。剣の切っ先に乗せた魔術はちりりと燃える。
「もう練達はしにゃの第二の故郷なんです! そこが無茶苦茶になっちゃうのは心の底から困ります!
居場所を守る為なら本気です! 勝てる見込みが無かろうと今日は逃げません!」
敵を逃がさぬ様にと目を光らせた『可愛いもの好き』しにゃこ(p3p008456)がラブリーパラソルを振り上げる。
全力を出したら明日の投稿に響いてしまいそう――だけれど、今は気にしている暇も無い。今日を凌げば一日くらい遅刻をしても許される。
だから、『学校に通うため』にも勝たなくてはならないのだ。
「どんなに強大な敵であろうとも生きている限り殺せるはずです。その傲慢さや満身した考えにつけ込んで虎視眈々とチャンスを狙うのですよ」
「わ、わかってますよ!」
しにゃこの弾丸がワイバーンを狙えばリュティスはよろしいと言わんばかりに飛び込んだ。
弾丸を追い掛けて、踊り、そして切り裂く一刃。
「死の舞を披露致しましょう――どうか、ご覧あれ」
ワイバーンを切り裂くリュティスに負けていられるかと駆けだしたのは『よをつむぐもの』新道 風牙(p3p005012)。
「青天の霹靂、ってやつか。このままだとこの国が消えてなくなる。そこに住む人たちごと、全部。
ふざけるなよ……そんなこと、絶対許せるか、認められるか! これ以上、この国から奪わせてたまるかよ!!」
激しく広がったのは鮮烈なる『気』。続き、叩きつけられたのは痛烈なる一打であった。
リヴァイアサンに劣れど、『とんでもない』ヤツが出てきたと『竜撃』ルカ・ガンビーノ(p3p007268)は身震いをする。武者震いか、強敵を前にすれば戦士はその肉体で危機を感じるものだ。
「電話でもしておけば良かったかな」
メッセージアプリの通知音が聞こえた気がする。彼女が笑って、大丈夫だと励ましてい気配がした。
『凡人』越智内 定(p3p009033)は苦笑を漏した。一人じゃ何時も何も出来なかった。太陽のような笑顔が、何時だって前へと誘ってくれた。
今は――今だってそうだ。一人じゃ何も出来ない。何時だって人に頼ってばかりだ。
それ良い。格好悪くたって笑ってくれるだろ? 弱くったって良い。この場所を守れるのなら何だって良い。
「行くぜ、ジョー。お前が練達を、大切な人を護るんだ」
覚悟は決まったか、と笑った『Go To HeLL!』伊達 千尋(p3p007569)が定の頭をぐしゃりと撫でた。
再現性東京と呼んだ揺り籠に籠もりきりだった後輩が、大事な場所のピンチだと息を切らして助けを求めてきた。
それを放置して、見ぬ振りして、後輩一人に背負わして――そんなこと悠久-UQ-が許せるか? 先輩だと誇れるか。
千尋のバイクが駆けだした。捕まる定に浮かんだ不安は、最早消えた。
「ナメんなよ、俺は海洋でもドラゴン相手に戦ったことがあるんだぜ」
走る千尋と定の背中へと風牙が叫ぶ。併走し、目指すはジャバーウォックだと風牙は笑った。
「おい越智内。お前に頼まれるまでもねえ。オレにとっても練達は大事な場所なんだ。
戦おうぜ。そして護ろうぜ。こんな理不尽からな! そんで、その後は一緒にコンビニで肉まんだ!」
共に駆けて行く三名の背にルカが唇を吊り上げた。
「竜なんだ! 俺が怖くねえ程度じゃあ竜たぁ言えねえ!
いいか、手ぇ貸すぜジョー。神社に案内する約束忘れるなよ! 案内は死んだら出来ねえって事もな」
故に、彼らが進むその道を切り開く。ジャバーウォック、その姿を目に焼き付けてルカは吼える。
「ジャバウォックっての! ルカ・ガンビーノが相手するぜ!」
――来るか、小さき者よ。何故、死に急ぐか――
「死に急ぐ、だぁ? それはどっちがだ! デカブツ!」
爪の一つ、指の一つも切り飛ばしてやればいい。そうして、小さき者などと見くびったことを後悔させろ。
ルカの振り上げた黒犬が不幸な魔女の嗤い声と共にジャバーウォックに振り下ろされる。
堅い。ごり、と削れる音。一歩の交代に唇を噛みしめた。
「リヴァイアサン程ではないからこそ、現実的な大きさとして巨象に挑む蟻という例えがしっくりきますね。
とはいえ鱗一枚、爪一枚、刃さえ通せれば全くの無駄では無いでしょう?」
羽虫如きと罵られようともリースリットは止まらない。すらりと引き抜いた剣に乗せた魔力が燃える。
――彼奴め、この様な小さな芽を踏み躙れとは何と罪深いか。
「友達に言われてこの国を壊しに来たって!? ハッ! それじゃあ使い走りじゃあないか!」
醜悪な獣でなくとも。定は苛立ったように叫ぶ。奴の払う爪先一つで体が抉れる感覚がする。
それでも『特異運命座標』は生きていられる『可能性』を宿している。
「例えどれだけ昏い闇に立ち向かう事になろうとも、俺達がその闇を照らし出して見せる!
故に『怪竜』ジャバーウォックよ、お前には一度見せねばなるまい。地に這う者がお前に届き得る術を持った存在であるという事を!」
ベネディクトが睨め付ければ「行くぜ」とルカが唇を吊り上げた。
奴の命を削り取れ。然うして、この地に来たことを後悔させるのだ。
●
「……傷つきボロボロになった所を狙うってぇのは筋が通るさ。戦術としても戦略としても正しいってもんだ。
だがよ、手負いの獣ほど危ねぇもんはないんだぜ? それはこの国も同じだってこと教えてやる」
この国を狙ったのは内乱による損耗のせいなのだろう。『名無しの』ニコラス・コルゥ・ハイド(p3p007576)はそれでも、この地には自身等が射る。守り切れるのだとディスペアー・ブラッドを握りしめた。
一人で届かぬならば、一つじゃ足りないなら。積み上げて穿つのみ。堅い竜鱗をも剥ぎ取るように叩きつけた猪鹿蝶、三撃は鋭くもジャバーウォックの身を軋ませる。
「ジャバーウォックさん、お家帰ったと思ったらまたすぐに遊びに来たのかしら?
でもその遊びが練達壊すならやめて貰うわ! クラリスお姉さん無事で、クリストお兄さんとも前より仲良く過ごせるようになったんだから、邪魔はめっ! なのよ!」
桜の花のブレスレットに力を込めて『リチェと一緒』キルシェ=キルシュ(p3p009805)は唇を尖らせた。
その傍らには穏やかに微笑む『暁月夜』蜻蛉(p3p002599)が立っている。乗り越えられない試練はないと蜻蛉は信じている。
肌に感じた張り詰めた空気に緊張感。不安が前線に立つ誰かの死を招くのではないかと深く息を吐く。
(今日は一人やない。キルシェちゃんもおるんやから――)
彼女を危険に晒したくはない。母は、彼女を、そして仲間を護るのだと深く決意をする。
「人の世を……神の庭を穢そうというなら例え上位の存在であっても容赦はしない!」
睨め付けるように。『二人一役』Tricky・Stars(p3p004734)は堂々と言葉を紡ぐ。死にゆく星が描き出す最期の輝きはその身に纏った。
ジャバーウォックを撃退すべく戦う仲間達を支えることが第一。生命維持にも気を配るとなればやることは多すぎる。
『やること多いよね!』
「だが、やるしかないだろう。奴を許すか!」
吼えるような虚に稔が笑う。
「会長が来たからには!ㅤ全員まとめて生還が前提だからね!!」
練達の『おかわり』なんて期待してないと憤慨するのは『世界一のいい子』楊枝 茄子子(p3p008356)。
兎にも角にも味方を支えて、回復シンボルとなるべく茄子子は堂々と立ち続ける。
「まだやれるでしょ!ㅤ立って!ㅤ気絶とかしたら無理やり叩き起すからね!!
悪いけど甘いこと言ってられる状況じゃないんだよ!
練達が無くなったら私が困るんだって!ㅤそうだよエゴだよ悪いかよ!! ――死に晒せジャバウォック!!」
僅か、焦燥に駆られた表情を見せた『聖奠聖騎士』サクラ(p3p005004)は小さく頷いた。
――奴を倒さねばならない。見上げたジャバーウォックの恐ろしさが、その身を震わせる。
「晴陽ちゃん怪我してない? うん、私は大丈夫だよ。ちょっとだけ忙しくなるから切るね。それじゃあ、また後で」
――『また後で』。そうだ、ちゃんと会いに行けば良い。怪我をしていれば彼女は少し怒るのだろう。
じろりと睨め付けるような瞳で、叱るような眼をして。
だが、彼女が無事ならばもう一度会える。友人の命を守ることが出来るならサクラは修羅にも慣れるのだ。
地を蹴った。ロウライト伝来の刀を振り上げれば、使命と共に沸き立つ覇不可能なる幻想を穿つ一撃。
身を捻り上げる、少女が撃退すべき脅威に狙い定めるその身を狙う不届き者を『零れぬ希望』黒影 鬼灯(p3p007949)は許さぬと糸で繰る。
「まあ、鬼灯くん、お空を飛んでいるあの子達とはお話は出来ないのかしら?」
「そうだね、実に残念だ」
愛しき妻の目を塞ぐ。彼女にはこの様な場面は見せたくはない。ジャバーウォックへ進む者の道を開くのが黒衣の役目であると練達を救うべく鬼灯は尽力し続ける。
『黒のミスティリオン』アリシス・シーアルジア(p3p000397)は息を呑む。
「巨大な竜……けれど、成程確かにリヴァイアサンには劣るのですね。彼の竜は竜と呼称するよりは『龍神』とさえ称すべき存在でしたけれど。
とはいえ、他に降り立った数体の巨竜も、この『怪竜』に比べれば象の前の蟻……とは言わずとも小動物程度。
長じればジャバーウォック……そしてリヴァイアサンの如き存在にもなり得るというのなら、種としては想像を絶するポテンシャルです。
……種として成り立つ以上、それなりには個体数が居る筈。何処かに隠れ棲んで居るのかもしれませんね……」
まだ知る事の無い覇竜領域を思い浮かべて、アリシスは目映き光を放つ。ジャバーウォックへと集うワイバーンの一匹ずつをその命を狩り取るように。
「HAHAHA、中々のデカブツじゃねえか! いいね! 強そうだ! 気に入ったぜ!
特に良いのは目だ、俺達なんざ虫ケラ以下ってその目だ! 痛い目を見せてやりたくなるッ!」
奴らからすればアリシスの云うとおり蟻や小動物程度なのだろう。只の虫けら。そうも言いたげな目をした『デカブツ』に虫の一刺しをより深く突き立てるべく『喰鋭の拳』郷田 貴道(p3p000401)は下方から直線軌道に近いアッパーを放つ。
極まった殺意の拳。其れを突き立て、命を燃やす。ステップ踏んで、叩き込む。巨体に付与を行えど、それが長持ちするとは思えやしない。
だが――其れで構わないのだ。僅かでも削り取れるのならばそれは虫の『一刺し』が重なる証拠。
「『冠位魔種らしき存在とは同行していない』……それが撃退可能と判断する理由? 滅ぼす気があるなら冠位魔種も一緒に来るはず
それをしないのはジャバーウォックにした指示は『襲うこと』だけだから? なら暴れたら帰ってくれるかな。ま、壊させもしないけどね」
微笑んだのは『スナーク・イーター』シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)。
手にしたのはガーディアンブレード。レインメーカーで奇跡を乞う。武者震いか、恐怖か。震える体を隠してシキは笑った。
「君の友達に伝えなよ。高みの見物決め込んでんなよってさぁ?」
――笑止――
「はっ、格好付けやがって! 山で悠々自適に暮らしてりゃいいのに、何を思って降りてきたんだか。
ともかく、テメェにゃなにも取らせやしねぇぜ、ジャバ。R.O.O.もあったし、シュペルとも色々あった。いや俺じゃなくて、シキやリアがな?
……んだから多分、2人にゃ思いのたけってのがあると思うんだ。多分な。今回の俺の役目は、『二人を守ること』で、『それを確実に送り届けること』だ!」
兄貴に任せとけ。そう言う二人の盾となる『横紙破り』サンディ・カルタ(p3p000438)の背を見詰めてから『願いの先』リア・クォーツ(p3p004937)は唇を震わせる。
周りの音が聞こえないほどの圧倒的な旋律。美しい、大切な二人の旋律さえも聞こえやしない。リアはシキとサンディの名を呼んだ。
振り返ってくれた青い瞳。見慣れた色彩は美しい空のようで、リアはすうと息を吸う。
「……手、を、握ってくれないかしら……」
「ふふ、リア。良いよ。握っていて。それから――勝ったもう一度。サンディも」
「勿論だ。怖がるなよ、リア」
無茶ばっかりする馬鹿野郎の癖にとぼやいたリアにサンディが困ったように頬を掻く。ああ、でも――闘える。
『魔法騎士』セララ(p3p000273)はセラフィムをインストール。真白の衣装に身を纏い、燐光が散らばった。
あまたの人々の希望が、ラ・ピュセルの名を持った祈りの盾となる。
勇者は友を護る為ならば竜さえも越える。
折角、友達になろうと笑ったのに――此処で終わりなど、許せるわけがない。
「友達を護るんだ! 大切な人たちを護る為ならドラゴンだって倒せるよ――喰らえ! ギガセララブレイク!」
ジャバーウォックへと叩きつけた雷。白き光を跳ね返すように鉤爪がセララを狙う。
身を捻り上げて、盾は鉤爪を受け止めた。
セララを狙うワイバーンに気付き渾身の一撃を叩きつけたは『無敵鉄板暴牛』リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)。
「行かせないよ! ボクは何度だって立ち上がる! 我が軍(イレギュラーズ)に勝利を!」
仲間達を護るのは立派な役目。ディメンション・デス。空間ごと切り裂けば、其れ等は刹那を飛ばす。
「リヴァイアサン以来の大物だ! しかもこだけアバレてくれたのにまだ全力じゃないって言うんだから竜種って連中はたまらないね! 最高だよ!」
死の香りが身を包む。頬がひりつく。『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)は歯を剥き出しにして笑った。
楽しくて堪らないのだ。呪いに侵された右腕が疼く。竜の爪牙さえも受け止めると囁かれた鉄火仙流の秘術を駆使しジャバーウォックの前に飛び込んだ。
――赤子の手を捻るも同然よ、それでも死に急ぐか人間よ――
「モチロン! 『死ぬ気は無い』からね!」
その暴力性は獰猛なる毛ヒアを宿す。竜の力を宿せ。イグナートは竜殺しのその名を胸に拳を叩きつけた。
固い鱗に拳が痺れる。その感覚さえも青年を高揚させた。もっと『死合い』を続けよう。限界が来るまで、戦いに溺れるように。
「おっきいトカゲだなぁ。よく自重で潰れないなぁ。骨格とかどうなってるのかなぁ……『お友達』の触媒に欲しいかも」
屹度、素敵な触媒になると距離を離して『トリック・アンド・トリート!』マリカ・ハウ(p3p009233)は骸の凶刃――生ける屍の鎌を振り上げる。
お友達はマリカの声に呼応する。大鎌携えやってくる骸骨はローブを頭やってくる。剪定か収穫か。果実(いのち)を狩り取るが如く、死霊達は姿を見せた。
「この化け物をどうやって切り崩そうかしら? ……対策無し! ……とりあえず斬り続ければいつかは死ぬでしょう!」
幸運を活かして何処まで通用するかを試すのみ。『狐です』長月・イナリ(p3p008096)は御柱ブレードを担ぎ上げた。叩きつけるのは身体を向上させ斬撃。
鋭く振り下ろし、炎を纏った木製の大剣で周辺を薙ぎ払う。
●
「完全に潰しに来た……って言うにはちょいとピースが足りてないみたいじゃないか。
アタシらからすればそれでも十分に脅威だし、当然の慢心って奴かね。とはいえ、舐められっぱなしじゃいられない。ちょいと痛い目見て貰おうじゃないか。」
――小手調べで壊滅しそうな小さき命が良くぞ云う――
『暴風暴威』リズリー・クレイグ(p3p008130)は斧を振り上げた。それは楯を壊すもの、戦士達の道しるべ。
近寄るべからずと飛び交うワイバーンなど遠く、誘って見せんとリズリーは致命的な隙を作ることを狙う。
「北風だけでは困難な相手には、太陽も必要になるでしょう。つまり、人の有用性を認めさせる事。
それが上手くゆかぬとすれば、平和的解決ならば対話で行なわれるべきという錯誤によるでしょう。
元来、平和的解決に対話など不要なのです……花と蜂達が言葉交わさずとも互いの都合で利を与え合うように、此方が勝手に利を得た結果、相手も利を得れば良いだけの事」
静かに目を伏せた『自然を想う心』エルシア・クレンオータ(p3p008209)はそろそろと近付いた。ジャバーウォックの鱗を勝手に磨くその仕草にジャバーウォックは不意を突かれたかぴたりと止まる。
――……まるで我が眷属のような――
「眷属がいらっしゃったのですか?」
エルシアの言葉にジャバーウォックは応えることはない。だが、いつかの日に此の竜はエルシアが行うメンテナンスを受けた事があったのだろう。
「竜種と再び相まみえる機会が来るとは思いませんでした。
運が良いと思った方が良いかもしれません。あの頃より強くなったことを証明するのに不足なしの相手ですから」
ふらりと躍るように距離を詰めた『月下美人』雪村 沙月(p3p007273)。雪月花は四季折々の風景の如く、沙月の体術を魅せる。
ジャバーウォックへと距離を詰め、そして一撃。相対する的の強さをその身に刻む。
「奪われる命はひとつでも少なく。救う命をひとつでも多く!
パンドラのあるボクたちだからこそ出来ることです。頑張りましょう!」
シェルター周りの非戦闘員を助けるように走り回る『不墜の蝶』アイラ・ディアグレイス(p3p006523)が感じた焦燥は複数存在する怪我任の多さであった。
(こんな危険な戦場……無傷で帰れるわけがない……!)
近づくジャバーウォックの気配に。飛来し続けるワイバーンに。最大限出来る『最善』を目指すことしか出来やしないか。
『陽の宝物』星影 昼顔(p3p009259)は唇を噛んだ。「僕はもう、誰かを失うのはごめんだ……!」と呻いた彼の頭に浮かんだのは晴陽や龍成といった再現性東京で出会った人々のことだった。
(――うん、分かった)
誰が何処で戦っているか。ジャバーウォックの接近。そうした事を霊魂疎通で耳にする。
「もう大丈夫。一緒にシェルターまで行こう?」
一般人を支え、逃げるように歩を進める。近付くジャバーウォックに昼顔が息を呑めばくすりと笑う声が聞こえた。
「嗚呼、なりません。あなたを見過ごすには練達は大切になりすぎました。どうかお引き取りください――その息を」
美しき綿帽子。白装束に身を包んだのは『花嫁キャノン』澄恋(p3p009412)。
決してか弱い乙女には見えやしないほどの胆力をその身に宿す。
「白黒の対なる姿に牙爪角の共通点。ふふ、鬼と竜の似た者同士。正々堂々戦いましょう!」
澄恋はにこりと笑う。討伐代わりにささやかな後遺症を与えるべく、飛び込んだ全力の覇竜穿撃。誰かを守り切るだけではない、その心臓を奪うため。
「あなたの心臓はわたしのものです!」
この身に馴染んだ竜殺しの加護は、屹度この日のためにあったのだと乙女は微笑む。
「私もアイラ先輩も、皆も! 全員生きたいんです! だから全力で戦います」
ドラゴンなんて恐ろしい。盾になる事なんて、足が震えてしまう。それでも、『真意の選択』隠岐奈 朝顔(p3p008750)は諦めない。
澄恋が全戦で戦う姿を見ながら、アイラと昼顔を護るように朝顔は身をも犠牲にしながらワイバーンを受け止め続ける。
「こいつはマジでヴォーパルソードが要るな。畜生が、物語の怪物のお出ましなら伝説の武器もセットで頼むぜ」
大雑把すぎる攻撃が放たれる度にバリアが軋む。衝撃を受け止めるだけで骨も、肉体も悲鳴を上げる。
羽虫を一匹一匹潰すことなど奴はしない。『竜剣』シラス(p3p004421)はジャバーウォックを睨め付ける。
「ベルゼーのお使いかよ、リヴァイアサンの野郎もそうだった!
何でお前らは冠位魔種達とツルんでるんだ? 世界が滅んだら竜だって何だって生きちゃいられないだろうが!」
――『奴』は覇竜には手を出さぬ――
「は?」
目を丸くしたシラスの傍らに『希望の蒼穹』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)は立っていた。
恐ろしい。人語を話せど、それが強大なる敵だと感じられる。此処で止めなくてはならない。息を吸い、シラスへと癒やしを送ったアレクシアがジャバーウォックと相対する。
それ以上は答えはせぬジャバーウォック。アレクシアは傷ついても皆を護る為にと前線へと飛び出した。
(取るに足りない存在と思っているのなら、人の力を思い知らせてあげるんだから! ――それこそ、御伽噺の英雄のようにね!)
最大の問題点。それはどうしたら竜が撤退するかだ。
狙うは『此処が命を賭ける大一番』ではないことだと『赤い頭巾の断罪狼』Я・E・D(p3p009532)は緊急時障壁の前で両手を広げる。
声を聞け。
jabberwocky(無意味な言葉を話す者)!
「ねえ、ジャバーウォック!! 貴方が必要以上に傷つくのはベルゼーさんだって嫌がるはずだよ!!
今回は痛み分けって事で、もうこれで撤退して貰えないかな!!」
――なれば我が目を潰せ! 郷遠し、郷恋しと叫ぶ我らが王の嘆きを見ることが出来ぬよう!
弱ぼらしい暴なるこのジャバーウォックに帰路を指し示すのだ!―――
無数に存在するその目を潰せば彼はこの地を後にするという。Я・E・Dの身を引き裂く鉤爪の鋭さは伝承に準えた通り。
だが、しかし――『奴はこの地で死ぬ事を望んでいない』のだから。
『鬼火憑き』ブライアン・ブレイズ(p3p009563)は笑う。これは『命を燃やす格好付け』だ。
「もしここで幕引きになっても悔いはねーよ。少しの時間でも稼げれば大勢の命が助かるかもだろ……存外悪くねえ使い道じゃあねえか、なァ?」
怪物を立った百数十程度で撃退しようなんて無謀だ。負ければ殉教の英雄、勝てば龍退治の英雄。
何方にしたって英雄だというならば。
命を燃やせ、削れば良い。
此処で死んでも儲けもの。
「ハッハー! 最ッ高に熱いぜッ!! 合わせろよ! 一息に押し返す! ……ビビんじゃねえぞ野郎ども!!」
不吉の訪れ告げる音色。破滅的傾倒は死をも超越することを望んだ。
これは勝負だ。絢爛に、華やかに。命を賭けた大一番。
「行くぜ――!」
青年の命が燃える。龍の逆鱗なんざ、ぶっ壊せ。
試行回数は――
――英雄になろうと歌うのか! アア、アア、愉快愉快。小さき者よ。剱を手に取り踊るが良い!――
「本当に自分たちが虫けらに思える巨躯だな。だが――だからこそ思い知らせなければな」
好機はいつでも自分で作り出すものだ。『黒き狂雷』クロバ・フユツキ(p3p000145)の握る硝子の如き薄い刀身が荒れ狂う雷の如くジャバーウォックへと叩きつけられた。
堅い。だが、連刃が竜の鱗を貫かねばならぬのだ。
それ位出来なければ、剣聖(あのおとこ)に届くわけもない。
唇を噛んだ。ドローンを蹴り、飛び上がる。
クロバの刃より放たれるのは神鳴り、一筋の閃光。
「――思い知れ、これが人の! 俺が見せる絶対への反逆だ!! これが”死神”クロバ・フユツキの剣と思い知れジャバウォック!!」
●
この国で、沢山の思い出が出来た。
嬉しいこと、怒ったこと、悲しいこと、楽しいこと。全部、此処にある。
誰かの命を奪う選択を求められた時。親友を得たとき。揶揄うように手を伸ばしてくれた親友の笑顔。
困ってしまうほどに輝いた日々。
……大切な人が出来た。
「護りたいモノが、あるんだ」
どんな理不尽でも、どんな敵でも。勝ちたかった。『龍成の親友』ボディ・ダクレ(p3p008384)は駆ける。
帰る場所がある。
あの場所であの人にただいまとおかえりを告げるのだ。
活動停止になどなってやらない。命を燃やせ、削れ。
「さっさと消えろ、ジャバーウォック!」
――奇跡だって、此処に呼び寄せてやる。
勝てる確率は1%もない?
今、己の『限界』を越えた。命だって燃やした、強がりだと笑えば良い。
「黒狼の皆……頼む! 道を拓いてくれ!」
練達は人の理の国だ。マザーやクリストじゃない。僕らが、人が守らなきゃいけない!
――定くん。
君が、笑って過している国は。
――君が無事に帰ってきて、私に一番に言う言葉を教えてあげるよ。『ただいま、なじみさん。元気です』
君が、欲しい言葉を僕は言うことが出来るだろうか。
竜の咆哮が、真っ正面から飛び込んだ。死という言葉が頭を過る。
「ジョーさん!」
叫んだタイムの指先も届かない。痛みなんて忘れるほどに、形振り構わず飛び込みたかった。
ずきりと痛んだ傷が奇跡へと焦がれた彼の元へと行く足を怯ませた。
「ジョーさん、いっけー!」
フランが叫ぶ。
「ジョーさん! あなたの奇跡を見せて!!」
タイムは只、真っ直ぐに叫んだ。あの閃光さえ退ける奇跡。黒狼の癒やし手が願ったのは只其れだけだ。
だが――竜は圧倒的だ。
それが竜の在り方だというならば。横面目掛け飛び込んできたワイバーンにしにゃこが苛立った様に弾丸を放つ。
「お願いします! 越智内さん! いっけー!!」
『可愛いしにゃ』は今は必要なかった。指が捻じ曲がろうと、ネイルが禿げても気にはならなかった。
可愛さなんて後回しにして、彼に奇跡を見せて欲しかった。
「ジョー!」
ルカの声に、定は頷いた。
ああ、それでも飛び込むジャバーウォックの放つブレスは。
「大丈夫ですよ。
……全員護るから――だから、決めてきてください」
命なんてかなぐり捨てる程に。『夜咲紡ぎ』リンディス=クァドラータ(p3p007979)は手を差し伸べた。
苦難を撥ね除けるアトラスの守護。いつかの日、紡いだ物語の『鏡』が竜の息吹を跳ね返したあの日のように。
「――遥か遠くなってしまった、故郷を思う人たち。それでも許容できる中で、必死に今を生き抜いている人々。
似て非なる世界で、それでも生きている……違う可能性の、あの子たち。
大切な皆さんを奪われ、それでも――取り返し辿り着いた光。全部なかったことになんてさせません!」
リンディスの身が灼かれる。
何時かの物語で読んだ事がある。蠍座が篝火に灼かれるとき、その身なんて何べんだって灼かれても良いと。
「若者が無理をするなよ。寛治も言ってたろ。こういうのは中年の特権だって」
リンディスの肩を叩いて、笑った天川の唇が釣り上がる。
「見せてくれ! 定! 自ら全部捨てた俺に! 希望って奴を! ――それが見られたなら俺は!!」
彼に奇跡の女神が笑わないというならば天川は己が身を擲ってでも叶えてやりたかった。
目が潰れてしまうほどの目映さ。知り合ったばかりの少年が、大人びた顔で命を賭ける。
勝たせてやりたい。護らせてやりたい。願ったのは『越智内 定』の勝利だけ。
定の身を運んだ千尋の体が投げ出される。
定は息を呑んだ。君の声が、遠くで聞こえる。
――定くん。
笑う声が聞こえた。そうだ、約束したんだよな。もうすぐ誕生日なんだ。だから、お願いしたいことがあるって。
――それじゃあ、待ってるよ。定くん。
竜の息吹に慄くな。皆が作った奇跡が此処にある。僅かな奇跡、1%にも満たぬ可能性を叶えてくれる人たちがいる。
「――1%を今! 作ったぜ! ビギナーズグッドラック。希望への道標だ!」
定は自分がとどめを刺せなくても構わなかった。勝利に繋がる1%。それを手にすることが出来るなら。
背を押してくれた人の為に。ジャバーウォックの目へと飛び込んだのは梲が上がらなかった――俯きがちの少年のエゴ。
―――――グウウウウウ―――――
呻き声が響く。脳をも混ぜ返すような竜の呻きは恐怖を準える。
ぎょろりと蠢いた眸は潰れた物もあっただろうか。腹を裂いたエゴの刃にジャバーウォックは激しく苛立った。
―――貴様等、生き存えたならば覚えていろ。我が身を傷つけた罪、その身を以て……―――
「ジャバーウォック」
誰ぞの声が聞こえたと顔を上げたのはクロバであった。定を支える様に護るフランとタイムが息を呑む。
「もう良いでしょう。帰っておいで。
ああ……君も傷だらけになってしまいましたな。流石に『あの子』達が苦戦するだけのことはあった」
姿は見えないが、声は聞こえる。聞き覚えがあると感じたЯ・E・Dは息を呑んだ。
羽ばたき、飛来して行く竜が帰還を知らせるように咆哮を上げる。
「待て……!」
手を伸ばすボディに首を振った昼顔は竜の姿を見送った。
●
「駄目だったかにゃ?」
「まあ、そういう事もあるでしょうなあ。兄姉達も酷く苦労していたのを知っておりましたしな。
ジャバーウォックには可哀想なことをしましたな。あの目を治すには……いやはや、幾年かかるか」
眠たげに身を丸めた和装の猫の前に腰を下ろしたのは竜を思わす翼や角、尾を持った紳士であった。
深き森の気配を感じるその場所で、猫の傍に膝を突いたのは空色の髪の少女である。
「主さま、オーダーは滞りねーんですけど、あのオッサンに助言(やさしいことば)吐くとか妬けますよ」
「ブルーベル、大丈夫にゃ。『お兄ちゃん』として優しくしてやっただけにゃ」
ブルーベルと呼ばれた少女はちら、と紳士を見遣った。相変わらず彼らは良く分からないが、『主さま』はあの『オッサン』の兄に当たるらしい。
彼が練達を攻めたのは単純な話ではないか。
彼らはそれぞれが自身の縄張りを有している。例えばこの全てを覆い隠すような深き緑の国、其れこそがブルーベルの敬愛する『主さま』の領域だ。
享楽的で『面倒くさいあの女』は幻想を中心に様々な場所にちょっかいを駆け、一番話しやすかったオカマはあの絶望の海が縄張りであった。
そして眼前の男は――その外見からも推測しやすい。あの未知に溢れた領域こそが縄張りだった。
状況はイレギュラーズが召喚されてから大きく変わってきている。『そろそろ』活動を見せなくてはならぬ段階だ。
「主さま言ってましたもんね。『そろそろ、言い訳の一つや二つ無いとどやされる』って。オッサンは自分の縄張りはイヤだったんすか?」
「そうですなあ。……家族を殺す事が好きかと聞かれているような物で」
「あ、いいわ。アタシもそーゆーの大嫌い。……ふーん、思ってたより優しいんだなあ、オッサン。
でも、失敗したならどうすんすか。やっぱり領域を?」
問いかける少女に悲しげな顔をした男は「いいや」と首を振った。
「カロンくん」
「何かにゃー?」
男の問いかけに猫は欠伸を噛み殺してから首を捻った。
「手伝いましょう」
深き森より愛を込めて――天より飛来した巨大な竜が微睡む間、暫しの休息をこの国へと与えよう。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
お疲れ様でした。
突如として襲来したジャバーウォック。何かの気配も感じますが、一先ずは皆さんの勝利です。
チームプレイを魅せ付けて下さる陣営が多く、とても熱いプレイングが多かったです。
MVPは一番決心をし、仲間達に背中を押されたあなたの一歩に捧げます。
ご参加有り難う御座いました。
GMコメント
夏あかねです。
●成功条件
・『怪竜』ジャバーウォックを撃退すること
・セフィロトのバリアの損傷率を45%までに止めること
上記2点を満たすこと
●決戦シナリオの注意
当シナリオは『決戦シナリオ』です。
<Jabberwock>の決戦及びRAIDシナリオは他決戦・RAIDシナリオと同時に参加出来ません。(EXシナリオとは同時参加出来ます)
どれか一つの参加となりますのでご注意下さい。
●行動
【撃退部隊】:ジャバーウォックを撃退すべく動きます
【攻撃部隊】:ジャバーウォックに追従するワイバーンを中心に攻撃を行います。
【防衛部隊】:緊急時障壁の防衛を中心に行います。
【回復部隊】:各部隊へと有効な支援を与え、死傷率を減少させます。
グループで参加される場合は【グループタグ】を、お仲間で参加の場合はIDをご記載ください。
1行目は行動を、二行目は同行者を指定してください。三行目からは自由となります。
書式は必ず守るようにしてください。
==例==
【撃退部隊】
月原・亮 (p3n000006)
なぐるよ!
======
●敵情報
1、『怪竜』ジャバーウォック
その『怪竜』の名に似合う悍ましい竜です。強大な存在であり、巨体だけではなく鋭き爪や牙も目立ちます。
人間にはあまり興味はなく、今回は『友と呼ぶ存在が指示をした』為にこの地を蹂躙しにやってきました。
知性を有しますがその言葉は不可思議なことも多く、聞き取れたとしても人間的な倫理観などは伝わりません。
彼にとっては人など虫けら同然であり、それらが何事かを言っていても踏みつぶせば終わりだと認識しています。
闇の属性を身に宿し、その攻撃方法は『観測されていただけ』である為に全容が計り知れません。
極めて堅牢かつ、凶暴性が高いことだけは判明しています。高いHPを有し、再生能力なども備えているでしょう。
その巨大さから攻撃方法は範囲攻撃が中心になると想定されます。
非常に高度な飛行能力も有しており巨体故に、ブロックには15人以上が必要になります。
牙、爪、翼での攻撃の他に、ドラゴンブレス等多種多様な攻撃を行ってくるかもしれません。
彼を観測するマッドハッターなどに言わせればここで倒し切るのは不可能だが撃退する芽はある筈だと踏んでいるようです。
その理由は『彼は今回、冠位魔種らしき存在とは同行していないから』です。
2、ワイバーン
ジャバーウォックに付き従うワイバーンです。
数は未知数であり、ジャバーウォックの傍らを飛んでいるだけで赤子のような大きさに見えます。
実物は人二人分ほどの大きさであり、それなりに堅牢で攻撃力も高めです。
練達の街を蹂躙すべく飛び回り、ついでの様に人間を喰らいます。雑食性なのか、それとも気にしていないのか適当に動くようです。
その他、詳細については不明点が多いようです。
●増援
1、練達防衛システム(バリア)
皆さんが守るべきセフィロトのバリアです。現在は損傷率が85%にまで低下。
ジャバーウォックなどの攻撃から主要部を守るために展開されています。
各種シナリオ、クエストの結果に応じて損傷率が変化します。バリアが破壊されれば練達の中枢にダメージが叩き込まれます。
2、練達支援システム
皆さんに疑似的な飛行能力(通常の飛行にはわずかに劣ります)を与えることのできる支援システムです。
生存率を上げるようにと各個人のデータを確認し続け、防衛システムから『バリア』の効果を付与することが可能です。
回復部隊の総数でこの支援システムの強度が変化します。
3、ドローン、防衛システム
数少ないドローンや防衛システムです。あまり役に立ちませんが周囲を飛び回っているのは確かです。
●Danger!
当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。
●情報精度
このシナリオの情報精度はD-です。
基本的に多くの部分が不完全で信用出来ない情報と考えて下さい。
不測の事態は恐らく起きるでしょう。
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