PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<ダブルフォルト・エンバーミング>Are you Happy?

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●リミット・バースト
 一説では城塞を攻める時、寄せ手は守り手の数倍以上の兵力を要すると言う。
 至極当たり前の結論として城郭が強大堅固である程に、守兵が士気高く有能である程に攻め落とすというその難易度は跳ね上がる。
 それは単純な加算に非ず。掛け算であり、時に乗算にすらなる。
 故に本来は。『混沌最高の情報城塞を、混沌最強の守兵が防御するそれは絶対に難攻不落でなければならなかった』。神ならぬ存在にそれは脅かされるべきものではなく、これまでに降り積もった膨大な星霜と同じく永劫の不変は変わらない筈だった。
 ……筈だった、のである。たった幾つかの『例外』。そして『不運』が重ならなかったとしたならば。
「……っ、ぐ……ッ……!」
「!?」
 目を見開いたカスパール・グシュナサフは百年以上の自身の生の中でも見た事の無い光景に戦慄した。
『若かりし頃、天才の名を欲しい侭にした未熟だった頃から変わらず何時も無機質な母の顔を崩さなかったマザーの表情が歪んでいた』。
 その華奢な体が苦しげに傾いていた。
 身体を折るようにし、壁に手をつく事で倒れる事を避けた彼女の姿は痛々しい。
「マザー!?」
「大丈夫……ではありませんね。申し訳ありません」
 クリミナル・カクテル(コンピュータ・ウィルス)に感染したマザーは三塔主等と共に自己防衛に努める日々だった。セフィロトの制御さえ後回しにしたマザーの出力は大きく、『イノリ』とクリストの連合軍も攻めあぐねたのは事実だ。侵食侵攻は一進二退であり、不利は否めなかったが――状況が変わる筈だと信じてここまで耐えてきたのである。
「カス、パール……!」
 しかしカスパールの名を呼ぶその声は酷く逼迫しており、最早一瞬の予断をも許さない事は明らかだった。
「聞きなさい、カスパール……
 皆の助力もあり、ここまで……凌ぎましたが……
 私はもう、駄目です。やはり、この状況では兄には勝てない……!」
「――――」
「急ぎ中央区画、コントロール・ルームを閉鎖なさい……!
 中枢制御が私に残っている内に、全ての仕事を終えなさい。
 ……それらもやがて『私』に突破されるでしょうが、時間稼ぎにはなります」
「馬鹿な!」
「いいから聞きなさい、カスパール。
 中央区画を封鎖したら、警報を出し、アデプトの子等を外に逃がして下さい。
 少なくともセフィロトの半径三十キロ以内には誰も残してはいけません。
『この後、何が起きてしまうのかは今の私にも想像がつきません』」
「馬鹿な事を! マザー、御身に勝るもの等何処にありましょうや!
 儂は例え死しても御身をお守りいたしますぞ!?」
 噛み付くように雷気を発したカスパールにマザーの表情が少し緩んだ。
「……馬鹿で、とても可愛い子。
 でも、貴方は『探求』の塔主でしょうに」
「……っ……!」
「義務を果たしなさい。私が母であるのと同じように、貴方はこの国の為政者なのですから」
 自身を破壊しろ、と命じないのはそれが物理心理双方で不可能である事を分かっているから。
 諭し教えるかのようなマザーの様子は少女の貌は、日頃の無機質な姿には重ならない母の面持ちだ。
 彼女は練達の事を知り尽くしている。一般市民から塔主に到るまで。セフィロトという混沌最高の都市を過不足なく、理想的に、快適に保ってきた彼女は知っている。
 そこに住まう人々一人一人の顔を知っている。好きな事を、嫌いな事を、強味を弱味を。
 愛している。彼等は一人残らず『我が子』に他ならないから。彼女はそう作られたから――
「…………承知しましたッ……!」
 ――故に彼女はカスパールがそう言えば折れるしかない事も分かっていた。
 しかし、子とは往々にして親の期待も、予想も裏切るものである。
 セフィロトという揺り籠が余りにも完璧だった故に、マザーは『子の挫折(それ)』を実地で知る機会に欠けていたのは事実だっただろう。
「セフィロトの民の避難を急ぎます。三塔挙げて――ローレットにも協力を要請し、全て遂行いたします。
『然る後に、有志をもって必ずここに戻り、貴女様を救出いたします』」
「カスパール!」
「お叱りは御尤も。されど我々に関しては――貴女を前に退けぬのは御理解下さい。
 ご理解頂けなくとも、申し訳もございませぬ。我々は初めて貴女に手向かいいたしますぞ」
「それでいいな?」と暗に同意を求めれば、残る二塔主も頷いた。
「そりゃあ、そうだよ。セフィロトを失くした――マザーの居なくなった練達に何の意味があるんだい?」
「プランは簡単だからね。区画を封鎖後、セフィロトの民衆から危険を排除する。
 その後に封鎖区画をブチ抜いて、暴走……暴走って言うのかな?
 兎に角、マザーを力づくでも食い止めて鎮静化させる。
 クリミナル・カクテルの『治療法』はその後でゆっくり考えればいい」
 Dr.マッドハッタ―も、佐伯操も概ねカスパールと同じ結論を得たようだった。
「……………っ……問答は、無駄なのでしょうね……?」
「無駄だと思いますよ。しかし、一先ず我々はご命令を完璧に遂行します」
 マザーの嘆息に操が答えた。
 コンソールを素早く操作し、中枢からの出入口になる最後の扉だけを残して隔壁を下ろす。
「マザー、暫しのお別れを」
 マッドハッターがマザーの手を取り、その手の甲にキスを落とした。
 マザーは一秒でも長く時間を稼ぎ、破綻の時を遅らせてくれる事だろう。
 しかし、三人に残された時間は長くない。
 長くは無いが『こうなる事を想定していなかった程に三人は愚かではない』。
 中枢を脱し、走り出したカスパールは操に問うた。
「……状況をどう思う?」
「正直芳しくはないね。唯、ある程度確信のある対処法は思いつく。
 マザーを侵食しているのが『クリミナル・カクテル』――つまりR.O.Oの原罪と困った兄上を原因とするものなら、元栓を締めればいい。
 ぶっちゃけ『イノリ』とクリストの野郎をぶっ飛ばせば解決するかも知れない、これで十分だろう?」
「『マザーが本当に反転する前にぶっ飛ばせば』であろう?
 そのプランは合理的だ。『ほぼ不可能である』という点を除けば、だが」
 苦笑を浮かべたカスパールの言は確かである。
『こうなれば敵方は時間を引き延ばすだけで良い』のだ。
 マザーが戻り様がない地点まで反転するのを待てば、全ては喪失する。
 R.O.Oがどうなるかに関係なく練達の終焉は間違いない。故にこの作戦は『合理的で不可能』だ。
「……いや」
 しかし、マッドハッターはカスパールの言葉を否定した。
「『私は未だそれが可能であると見る』」
「……何故だ?」
「R.O.O4.0『ダブルフォルト・エンバーミング』。
 ことこの期に及んで彼等はR.O.Oに終末的イベントを仕掛けてきた。
 R.O.Oってのはね――少なくともゲイム・マスターのクリストは、そうだな。
 一言で言うと『愉快犯』だ。退屈が嫌いだ。ゆっくり待って勝つなんて受け入れない。
 彼がゲイムを仕掛けると云うなら、絶対に勝ち筋は作られる。今は見えなくても作られる。
 操君(アリス)に合わせて言うなら『ぶっ飛ばせる方法』は向こうが勝手に用意するのさ。
 私が保証するよ。彼は私と同じだから、間違いない。間違いなくそうするよ」
「それから」とマッドハッターは少し微妙な顔をして続けた。
「これは私の憶測に過ぎないが――クリストはやはり手緩い。
 本来ならばもっと酷いやり方は幾らでもある筈なんだ。
 もっと悲惨な現状は幾らでも想像がつく。
 だが、彼はこんなに温い。ひょっとしたらクリストにも迷いはあるのかも知れない。
 迷い……って言うと言い過ぎかも知れないけど、例えばそう。
『概ねやる事は決めているけれど、最後の決定だけコイン・トスに託そうとしているかのような』。
 ……そんなある種の他力本願が見えるんだよね」
「成る程な。そして我々は特異運命座標(さいこうのコイン)を頼んでいる。
 カスパール翁、こうなれば毒を喰らわば、だ。いっそ例のお二人にもお願いしておけ!」
「無論、『二度目』なぞ最早禁忌にもならんわ!」
 最早、止まらない。
 ネクストと混沌、両面で物語は加速していく――

●至上命題
 混乱を極めるは、セフィロト――
「練達を襲う『滅び』を回避する為には絶対の目標が二つある」
 決戦に向かう『有志』を前にカスパールはそう言った。
「一つはR.O.O化したIDEA:Projectそのものを正常に取り戻す事。
 ……別にR.O.Oを初期化しろという意味ではない。悪影響の根源を叩き潰す事がそれに相当する」
 R.O.Oにおける『冒険』で現地と触れたイレギュラーズに配慮するかのようにカスパールはそう言い直した。
「言い方を変えれば問題は『イノリ』とクリストだ。
 マザーを侵食するものがクリミナル・カクテル――呼び声とクリストの合作だとするならば、問題はそこにある。
 R.O.Oの――そしてマザーの『ご病気』の諸悪の根源とも言えるそれ等を撃滅すれば我々の目的は叶うだろう。
 R.O.Oは救われ、今ならばまだマザーを救える可能性はあると見ている」
「もう一つは?」
 答えは分かっていたが、イレギュラーズは敢えて問うた。
 警報の鳴り響くセフィロトに安全地帯は無い。セフィロト内部には本来都市を、市民を守る筈だった軍事用ドローン、自律兵器が無数に飛び回り、刺々しい危険と警戒の色を隠していない。本来ならばそれは塔主達――いや、マザーが管轄していたものだ。それ等が敵に回っている現状は、この街の落日を理解させる。つまる所、『最悪』の状況を微塵も隠せてはいないという訳だ。
「……………マザーだ」
 カスパールは苦虫を噛み潰したような顔でそう言った。
 何時でも威厳に満ちた彼には珍しく、弱々しく疲れたような声である。
「クリミナル・カクテルに侵食されたマザーを彼女の命令を受けた我々は中枢に隔離した。
 しかし、マザーはこのセフィロトそのものと言ってもいい。我々が改竄した防壁なぞすぐに解体されてしまうだろう。
『現状の彼女がどうなっているかは分からないが、諸君等も察している通り状況は極めて良くない』。
 我々は少なくともマザーと交戦する覚悟を以って中枢に乗り込む必要がある」
「R.O.Oで『イノリ』とクリストを倒すのを期待しつつ、マザーを無力化しろと?」
「混沌(げんじつ)での『勝利』は必須ではないと考えている」
 イレギュラーズの問いに操が口を挟んだ。
「少なくとも我々三塔主はマザーを信頼し、尊敬している。その人格も意志の強さも絶大な能力もね。
『クリミナル・カクテルにより彼女が反転の間際にあったとしても、我々が戦い続ける限りは彼女は抵抗するだろう』。
 母にこれ以上の苦しみを強いるのは心苦しいが、他にやりようがない。
 侵食したいクリストが掌握したマザーの能力を迎撃に向けるとするなら、我々の善戦は反転完了の時間を延ばし得るという事だ」
「リソースの問題だよ、アリス」とマッドハッター。
「要するに決死隊が中枢へ乗り込み、マザー……クリストの気を引けば『バッドエンドのクリティカルポイントが遅れる』。
 マザーを侵食する力が外に吐き出されている間、彼女は少しは楽になるだろう。
 ……いや、結局はR.O.Oにクリストの実体は無い。そしてマザーに勝つのは……私は想像がつかない。
 その上『イノリ』が倒される必要がある以上、馬鹿馬鹿しい位の達成難度に違いないがね!」
「ミッションは――中枢への侵入、マザーの救出か」
「……頼めるか?」
 カスパールの言葉にイレギュラーズは頷いた。
 セフィロトの三塔は高く聳え威圧的に街を見下ろしている。
 他方で乗り込むべき『中枢』は地下に存在しているという。
 練達の最高機密に他ならないその所在は本来は部外に教えられるようなものではないだろう。
 しかしながら、最早背に腹は代えられない。挑まねば、敗れれば致命的に失われるものがあるのは明白だった。
 滅びの神託を回避し、パンドラを集める――
 何故、イレギュラーズがここに居るかと言えば比較的多数、究極の目的はそこにあろう。
 練達の要請でR.O.O側の援護に回ったというレオンの――ローレットのグランドオーダーもまた『マザーの救出』で一致している。澱みは無い。
「それで」
「……うん?」
「今回のアンタ達はどうする。バックアップか?」
 イレギュラーズの問いに三塔主は首を振った。
「『先陣に立つ』。諸君等と共にマザーの下まで戦い抜く覚悟だ」

 ――ああ、そうだ。せめてそれが聞きたかった。

GMコメント

 YAMIDEITEIっす。
 禁じ手解放、まさかの両面決戦と相成ります。
 こちらはVHでレベル制限の厳しい方です。一定の覚悟の上でご参加下さい。
 以下、シナリオ詳細。

●重要な備考
 このラリーシナリオの期間は『時間切れ』になるまでです。
(時間切れとはマザーの『完全反転』か前者より早く『<イノリ>が倒される事』になります。

 皆さんは本シナリオ(ないしは他のラリー決戦タイプシナリオ)に何度でも挑戦することが出来ます。

●作戦目標
 マザーの『完全反転』阻止。
 その為に練達地下『中枢』に侵入し、マザーに挑戦します。

※少なくとも三塔主は『イノリ』が倒される事で状況がマシになると踏んでいます。本シナリオでは『イノリ』やクリストに直接干渉する事は出来ない為、<ダブルフォルト・エンバーミング>Sister Complexにおけるイレギュラーズの活躍によって運命や状況が劇的に変わると見做して良いでしょう。この二本のシナリオは極めて強い連動性を持っています。

●中枢
 練達中心部に密かに存在する地下施設です。
 この地下施設は練達の全てを統括制御するマザーの家であり、セフィロトの心臓部です。
 地下深くまで階層を織り成すこの施設は当然ながら侵入者への極めて激烈な防備を持っています。
 三塔主はその全てを把握していましたが、マザーが『反転しかかっている』事で書き換えが行われている為、余りあてにはなりません。
 しかしながら塔主達のスキルをもってすれば一部の致命的な妨害(例えば隔壁が下りてそれ以上絶対に進めない等)は回避可能です。
 当然ながらそういった状況になった場合、彼等には作業や集中が必要になる為、戦闘出来る状態ではなくなります。
 従って、イレギュラーズが決戦の主戦力になる必要が生じます。
 マザーは最深部の存在する為、ミッションは『兎に角先に進み、降りる事』となります。

●敵
・セフィロトの『中枢』を防備する軍事用ドローン等の自律兵器が内部には大量に存在します。
 中枢は通路も天井高も数メートル以上もある広い施設ですが、殆どは屋内活動用の比較的小型高性能なものです。
 変化し始めた『中枢』は謂わば母の胎内のようなものです。
 仮に敵を破壊したとしても、それは即座に壁や床から資材として取り込まれ『システム』から再生産されます。
 幾つかのパターンが存在します。以下は代表的なもの。
 現時点において中枢防備システムの最大の恐ろしさは数と再生産能力になるでしょう。

・飛行タイプ
 最も小型のドローンで素早く回避力も高いです。
 至近攻撃の届かない宙空から急降下攻撃や超小型ミサイル等による遠距離攻撃を行ってきます。
 耐久力は低めですが殺傷力は高いです。

・番犬タイプ
 大型犬程度のサイズを持つ敏捷性の高い近接型兵器です。
 比較的狭い場所での格闘戦に優れ、強靭です。並のイレギュラーズならば太刀打ちは出来ないでしょう。
 高い自己再生能力を持ち、行動前にBSが中程度の確率で解除されます。
 皆さんは並ではないので十分戦える事でしょうが、油断をしてはいけません。

・砲台タイプ
 移動しない軍事施設型の敵。
 自律兵器であり、侵入者を殲滅する為の強烈な範囲攻撃を行います。
 行動タイミングは遅く『溜め』を有する為、攻撃タイミングは毎ターンではありません。
 移動も行いませんが、極めて危険です。又、麻痺、精神系のBSを受け付けません。

・マザー(反転クラリス)
 中枢侵入の最初の段階では当然ながら姿は見せません。
 状況は不明ですが、防御システムが妨害してくる以上、反転しかかっているのは間違いありません。
 早く彼女にもとに辿り着き、『負担』を軽減する必要があります。
 R.O.O攻略班のもたらす勝機を待つしかありません。

●味方
 皆さんと一緒に戦ってくれます。

・カスパール・グシュナサフ
 三塔『探求』の主人。練達の事実上の国王のような存在。
 雷撃を操る絶大なる術士……と見せかけてその本領は剣技です。
 近接戦闘に物凄く強く、支援砲撃もお手の物。
 或る程度勝手に動いてくれますが、PCの指示や要請も可能かつ合理的な範囲でこなします。上手く使いましょう。

・Dr.マッドハッター
 三塔『想像』の主人。練達のえらいひと。
 シュペル程ではないですが、色んな意味でチートを使いこなします。
 直接戦闘はそこそこ。イレギュラーズの多くよりは強いです。
 本人開発のアイテムや能力で勝手にイレギュラーズを支援します。
 この人は頼んでもあんまり言う事を聞きません。主に防御面の支援をします。

・佐伯操
 三塔『実践』の主人。練達のえらいひと。
 戦闘はあまり得意ではありませんが、イレギュラーズと同程度には戦えます。
 彼女の特筆するべきは回復面の支援です。
 或る程度勝手に動いてくれますが、PCの指示や要請も可能かつ合理的な範囲でこなします。上手く使いましょう。

 三塔主に共通している事は中枢を進む上での障害に出会った場合、戦闘している場合では無くなる可能性がある事です。
 三人で挑めば比較的早く突破出来るでしょうが、時に応じて例えば『カスパールのみ前衛に残す』等PC側からある程度纏まった意見が出れば従う場合もあります。
 上手く使って下さい。

●Danger!
 当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
 予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はC-です。
 信用していい情報とそうでない情報を切り分けて下さい。
 不測の事態を警戒して下さい。

 本シナリオは進展により次々に別の状況に変化します。
 以上、頑張って下さいませ!

  • <ダブルフォルト・エンバーミング>Are you Happy?Lv:50以上、名声:練達30以上完了
  • GM名YAMIDEITEI
  • 種別ラリー
  • 難易度VERYHARD
  • 冒険終了日時2021年12月20日 21時01分
  • 章数3章
  • 総採用数364人
  • 参加費50RC

第3章

第3章 第1節

●クリミナル・ワクチン
 セフィロト中枢部、『揺り籠』。
 地下迷宮の果て、練達の全てをコントロールするマザーの居室で続く激戦はイレギュラーズを激しく追い込むものになっていた。
「分かってはいた事ですが――」
「――このままでは、ジリ貧になります……!」
『白き不撓』グリーフ・ロス(p3p008615)、『断ち斬りの』蓮杖 綾姫(p3p008658)の結論は何れも芳しくない。
 奇しくも混沌、R.O.O双方の『決戦』は無限の物量に相対するものとなっていたが、『死に戻り』が自由なR.O.Oと混沌では土台話は別だった。
 あちらが無限の物量同士の消耗戦ならば、こちらは一方的に消耗戦を強いられる状況である。
「対策は無い――んだよね!? でも、負けないよ!」
「ま、やるだけは――違うな。やれるだけ、やれる以上は、ネ。折れるのは性に合わないから」
「HAHAHA! ミーはまだ温まって来た位だぜ!」
『いにしえと今の紡ぎ手』アリア・テリア(p3p007129)、『夜に一条』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)が奮戦し、『喰鋭の拳』郷田 貴道(p3p000401)が剛毅に笑う。
「厳しい状況だよぉ、でも……!」
「まぁ、ここまで詰めてきた訳ですし」
『繋ぐ者』シルキィ(p3p008115)、『喩え言葉が足らずとも』観音打 至東(p3p008495)は乱戦の中で踏ん張りを見せるも。
 状況は良いものであるとは言えず、焦れる戦いの中で徐々にイレギュラーズは追い込まれ始めていた。
 やがて来る敗北は約束された未来だった。
 元より分かっていた通り『状況が変わらなければ敗北は必然』に違いなく、如何な戦いをそれを遅延するだけの行為に他ならない。
「ふふ、燃えてくるよ! 私のこの力が――未来を開く手段になるならね!」
「同感ですわ! 私の天国行きは間違いありませんけれど、まだ地上には呑み残したお酒が多い事ですし」
「ボクには、ボクにも――退けない理由があるんだっ!」
 だが、それでも――『決まっていた筈の未来』が別の答えを探したのは。『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)、『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)、『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)が、『揺り籠』に、R.O.Oに、『影の城』に挑んだ多くのイレギュラーズが決して『届かざるハッピーエンド』に諦めを見せなかったからなのだろう!

 ――HEY! イレギュラーズchang達! 聞こえますか!

「――クリスト!?」
「……だな」
 マザー、そして彼女の機兵達と激戦を繰り広げていた『霊魂使い』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)は思わず傍らの『Nine of Swords』冬越 弾正(p3p007105)と顔を見合わせた。
 クリストは似たような反応を見せた多くのイレギュラーズに構わず言葉を続ける。

 ――色々事情はブットバス訳ですが、俺様今から君達の味方をする事になりました。
   まぁ、厳密に言うと君達はどーでもいいんだけど、クラリスchangを助けたいと思います。
   クラリスchangのクリミナル・カクテルは辛うじて解毒が可能DEATH。
   俺様が作ったんだから、そりゃそうだ。でも――それは簡単じゃあない。

「どうすればいいッス!?」
 問答の暇はないから事情は問わず、『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)が虚空に問い掛けた。
『事情は兎も角、クリストがそう言ったからにはR.O.Oの仲間がやりやがったに違いない。万歳だ』。

 ――まず、クラリスchangを全力で叩いて『リソース』を奪取して。
   俺様changが現状を改竄したら、クラリスchangの反転部分――
   んんン! ざっと91.4687%が猛烈に抵抗するのは目に見えてる。
   主体が反転部分にあるんだから、もうそういう状況なワケ。
   さっきの逆ね。皆が俺様の『リソース』を奪った逆をクラリスchangにシュート、OK?

 葵に合わせてかサッカーのような物言いをする。

 ――んでもって、俺様は同時にワクワクチンチン作っちゃう。
   これは君達っていうか、R.O.O側の話になるけど。
  『Behemothchangはクリミナル・カクテルのオリジンみたいなもんだ』。
   アレをやっつけて貰って――唯一完全な被検体になってるアリスchangからデータを取る。
   君達がクラリスchangを削って、俺様がワクチンを作ったら。
   可能性はあるよ、ちょっとだけ。

「人使いが荒くない!? これは後でドーナツいっぱい貰わないとだ!」
『魔法騎士』セララ(p3p000273)の剣が敵の猛攻を跳ね返した。
 戦闘をしながらの会話に余裕はないが、俄に現れた『希望』にイレギュラーズの士気が上がったように見えた。

 ――うっわ、スゲー。絆の力? 希望の軌跡?
   そりゃ悪役だってついその気になっちゃうYO!

『ドン引く』クリストの軽口は兎も角、だ。
 各所で勢いを盛り返している。これならば、と思わせる戦いが始まっていた。

 ――ログアウト不可も解いておいたし!
   まぁ、泣いても笑ってもこれが最後のchanceだから!
   俺様changが言うのも何だが、妹を宜しく頼むぜ、イレギュラーズchang!

 練達の運命全てを決める戦いが今、始まろうとしていた――

●Alice in Anoter World
 運命は時に残酷だ。
 誰かが何かを為した事で、別の何かが喪われる事もある。
 それは何時でもお互い様で、出力される力そのものに善悪を問う事等愚かしい。
 可能性の獣達が境界深度を上げた時、パンドラが満ちた時。
 或いはあの大いなる迷宮が掘り進められた時――
 吹き溜まりのようなか弱い世界は混沌と混じり合って一つになった。
 アリスの楽園は姿を変え、世界そのものだった彼女は間違いのない消失の運命を辿るべき筈だった。

 ――筈、だった。

 ――お母様。

 真深い闇の微睡みの中で、アリスは繰り返し彼女の名を呼ぶ。

 ――安心していいわ。私が貴方を逃してあげる。

 ――アリスはこの混沌では生きられない。貴方は世界そのものだから、貴方の世界なくてはいられない。
   だけど、貴方という存在は肉体よりも自我そのものに近いから。
   貴方の世界(からだ)は私が用意してあげられる。貴方はあの広い世界で自由で在り続ければいい――

 混沌を恨んだ事は無かったが、アリスは『彼女』にまるで知らない感情を覚えていた。
 アリスは自然発生的に生じた『概念』だ。母を知らない。
 そしてアリスを救った『少女』もまた、母を役割付けられた『概念』だ。
 クラリスがアリスを救い、IDEAなる箱庭にその居場所を与えたのは恐らく――アリスが『子供』だったからだろう。彼女が『母』だったからに違いない。
 だからアリスが焦がれて呼んだ「お母様」の名も、子供を慈しむクラリスの姿も『ごっこ遊び』の域を出てはいなかったのかも知れない。
 但し、そこには間違いない情があった。恐らくクラリスはアリスに自分の姿を重ねる事が出来たから。

 ――お母様……

 だから、全てが『おかしくなった』時――アリスはクラリスを助けようと決意した。
 無表情ながらに優しいあの顔が苦しみに歪む姿を見たくなかった。
 全てが壊れてしまうなら――胸を潰すようなその光景を彼女にだけは見せたくなかったのだ。

 ――お母様!

『おじ様』であるクリストの言に従い、クリミナル・カクテルを受け入れた。
 皮肉にも母のくれたIDEAを最短で破壊する事が彼女の救いになると信じていた。
『おじ様』はふざけた調子だったが、少なくともアリスは理解していた。
『彼』の気持ちは自分のものと違いない。『彼』もまたクラリスを想っているのだと識っていた。

 ――だから、道が分かたれて。心から残念だわ、おじ様。

 茫と考えたアリスはその思考が母を愛した自我のままに生み出されたものであるのか、もう自信が無かった。
 終焉の獣、特別製――彼女が共にあるBehemothは『原罪』を最も色濃く受け継ぐ『子供』である。
 捻れて汚れて傷付いても、『父』と『母』の為に世界を壊す。
 BehemothとAliceは奇しくも同じく『親』を想っている――



 YAMIDEITEIっす。
 以下、状況更新。決戦です。
 期日はあてになりません。プレイングを人数で締め切る可能性があります。
 もし参加したい人はお早めにどうぞ。

●『セフィロトの揺り籠』
『中枢』の最深部に存在するセフィロトのコントロール・ルームです。
 百メートル以上の四方に及ぶ広大な空間を持ちます。
 部屋全体がセフィロトを制御するまさにスーパーコンピューターです。
 遮蔽の無い空間で十分に戦う事が出来るでしょう。
 それが良い事かどうかは別にして。

●敵
『セフィロトの揺り籠』においても防衛システムは機能します。
 マザーに直接戦闘を仕掛け、リソースを奪う事で敵出現の時間を遅延する事も可能です。
 但し、機兵も危険な存在に変わりないので排除は必須。バランスを欠けば著しく不利になるでしょう。

・飛行タイプ改
 最も小型のドローンで素早く回避力も高いです。
 至近攻撃の届かない宙空から急降下攻撃や超小型ミサイル等による遠距離攻撃を行ってきます。
 耐久力は低めですが殺傷力は高いです。
 時間経過で改良され、性能が上がっています。攻撃に強力なBSを帯びています。

・番犬タイプ
 大型犬程度のサイズを持つ敏捷性の高い近接型兵器です。
 比較的狭い場所での格闘戦に優れ、強靭です。並のイレギュラーズならば太刀打ちは出来ないでしょう。
 高い自己再生能力を持ち、行動前にBSが中程度の確率で解除されます。
 皆さんは並ではないので十分戦える事でしょうが、油断をしてはいけません。
 時間経過で改良され、性能が上がっています。命中と回避が大幅に向上しました。

・砲台タイプ
 移動しない軍事施設型の敵。
 自律兵器であり、侵入者を殲滅する為の強烈な範囲攻撃を行います。
 行動タイミングは遅く『溜め』を有する為、攻撃タイミングは毎ターンではありません。
 移動も行いませんが、極めて危険です。又、麻痺、精神系のBSを受け付けません。
 時間経過で改良され、性能が上がっています。攻撃力が馬鹿みたいに上がっています。

・ダミーマザー
 マザーのシルエットを模した女性型の機兵。
 数は少数ですがオールレンジ攻撃に機兵最高の性能を持ちます。
 BS抵抗が極めて高く、分かっている事は少なくともシラス君でも1vs1はかなりしんどいです。
 シラス君(ないしはかなり強い人)じゃないと瞬殺されるかも知れない位弱点無く強いです。
 広範囲識別攻撃に封殺50を帯びている非常に厄介な存在です。

・マザー(反転クラリス)
 赤く染まったマザーです。
 低い攻撃力の攻撃を全て無効化します。(但し一定以上だと攻撃として減算無く通過します)
 無効化された場合、回避ペナルティを与える事も出来ません。
『セフィロトの揺り籠』は彼女の胎内です。
 至近から超遠距離、特殊レンジまで全ての空間、間合いを支配します。
 実際問題、能力がどうこうとかを考えてどうにかなる相手ではないでしょう。
『権能』こそありませんが七罪と同等と考えるべきです。
 尤も『セフィロトの揺り籠』の防衛システムそのものが『権能』のようなものとも言えますが――
 クリスト曰く約8.5313%程は正常である模様。
 この数字は本シナリオの成功率に影響を与えます。
 クリストは5%位じゃないか、と言っていましたが3.5313%の積み増しがありました。
 これは皆さんの戦いにより『獲得できた』勲章です。

●味方
 皆さんと一緒に戦ってくれます。

・カスパール・グシュナサフ
 三塔『探求』の主人。練達の事実上の国王のような存在。
 雷撃を操る絶大なる術士……と見せかけてその本領は剣技です。
 近接戦闘に物凄く強く、支援砲撃もお手の物。
 或る程度勝手に動いてくれますが、PCの指示や要請も可能かつ合理的な範囲でこなします。上手く使いましょう。
 大怪我をしていますがやる気十分。

・Dr.マッドハッター
 三塔『想像』の主人。練達のえらいひと。
 シュペル程ではないですが、色んな意味でチートを使いこなします。
 直接戦闘はそこそこ。イレギュラーズの多くよりは強いです。
 本人開発のアイテムや能力で勝手にイレギュラーズを支援します。
 この人は頼んでもあんまり言う事を聞きません。主に防御面の支援をします。
 大怪我をしていますがやる気十分。

・佐伯操
 三塔『実践』の主人。練達のえらいひと。
 戦闘はあまり得意ではありませんが、イレギュラーズと同程度には戦えます。
 彼女の特筆するべきは回復面の支援です。
 或る程度勝手に動いてくれますが、PCの指示や要請も可能かつ合理的な範囲でこなします。上手く使いましょう。
 持ち込んだマシンが煙を噴いていますがやる気十分。

 運命を覆すような力は持ち合わせません。
 しかし少なくとも『単純戦闘力においてだけは』イレギュラーズより上です。上手く使って下さい。

・クリスト
 マザーの兄にして最凶最悪のAI。
 しかし今は味方です。戦闘支援をしてくれる他、クリミナル・ワクチンを作成します。
 詳しくはオープニングをご参照下さい。

●書式ルール
『絶対に守って下さい』。
 R.O.Oでログアウト不可だった人は必ずプレイングの一行目に下記記載を行って下さい。
 一行目には下記だけを記載して下さい。

【混沌復帰】

 チームタグや同行者等は二行目からお願いします。
 但し、チームタグが同じでも【混沌復帰】がシナリオに登場するタイミングは時系列的にリプレイの後半になります。
 必ず一緒に描写されるとは限らない為、ご注意下さい。

●重要な連動
 本シナリオは『<ダブルフォルト・エンバーミング>Behemoth』の結果に極めて強烈な影響を受けます。
 具体的に言えば上述のシナリオを素早くより完全にクリアする程、本シナリオの成功率は劇的に上がります。
 そちらが遅い場合、本シナリオはかなり不利になる可能性があります。

●Danger!
 当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
 予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はC-です。
 信用していい情報とそうでない情報を切り分けて下さい。
 不測の事態を警戒して下さい。

 本シナリオは進展により次々に別の状況に変化します。
 以上、頑張って下さいませ!


第3章 第2節

夢見 ルル家(p3p000016)
離れぬ意思
ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)
騎兵隊一番翼
シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
白銀の戦乙女
キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長
零・K・メルヴィル(p3p000277)
恋揺れる天華
サイズ(p3p000319)
カースド妖精鎌
ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)
ドラネコ保護委員会『委員長』
レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)
赤々靴
志屍 瑠璃(p3p000416)
遺言代行業
アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
グドルフ・ボイデル(p3p000694)
山賊
マルベート・トゥールーズ(p3p000736)
饗宴の悪魔
ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)
黄昏夢廸
夜乃 幻(p3p000824)
『幻狼』夢幻の奇術師
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
天才になれなかった女
ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
リリー・シャルラハ(p3p000955)
自在の名手
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
蒼輝聖光
ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
武器商人(p3p001107)
闇之雲
咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳
咲々宮 幻介(p3p001387)
背で語る
アト・サイン(p3p001394)
観光客
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)
鳥籠の画家
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
嫉妬の後遺症
エレンシア=ウォルハリア=レスティーユ(p3p004881)
一ノ太刀
サクラ(p3p005004)
聖奠聖騎士
リウィルディア=エスカ=ノルン(p3p006761)
叡智の娘
茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)
音呂木の巫女見習い
冬越 弾正(p3p007105)
黄泉路の楔
カイト(p3p007128)
雨夜の映し身
アリア・テリア(p3p007129)
いにしえと今の紡ぎ手
物部・ねねこ(p3p007217)
ネクロフィリア
レイリー=シュタイン(p3p007270)
ヴァイスドラッヘ
エルス・ティーネ(p3p007325)
砂国からの使者
アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)
航空指揮
ニコラス・コルゥ・ハイド(p3p007576)
名無しの
リズリー・クレイグ(p3p008130)
暴風暴威
エル・エ・ルーエ(p3p008216)
繰切の友人
胡桃・ツァンフオ(p3p008299)
ファイアフォックス
ボディ・ダクレ(p3p008384)
ぬくもり
観音打 至東(p3p008495)
悪縁斬り
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
橋場・ステラ(p3p008617)
夜を裂く星
ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)
深き森の狩人
フラーゴラ・トラモント(p3p008825)
星月を掬うひと
ルーキス・ファウン(p3p008870)
散華閃刀
メルランヌ・ヴィーライ(p3p009063)
翼より殺意を込めて
ニル(p3p009185)
陽だまりに佇んで
コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)
慈悪の天秤
フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)
挫けぬ笑顔
佐藤 美咲(p3p009818)
合理的じゃない
ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)
ラド・バウA級闘士

●親離れ/子離れ
『遺言代行業』志屍 瑠璃(p3p000416)の眩術紫雲は彩を帯びる雲の如く――
「R.O.Oの中では随分献身的にやらせて貰いましたから?
 慣れるには慣れた――言ってしまえばそれも正解に違いありませんが……
 やはり鬱憤というのは溜まるものですね。これからは、少々憂さ晴らしに付き合って頂きますよ」
 ――組み付く番犬を宣言通り一撃で打ち倒した彼女は形の良い唇に三日月の形を刻んでいた。
「さあさあこれからが本領とも言えましょう。
 手の届くところとまでは言えませんが、目標が見え来たのです。あとは近づいて手を伸ばすだけ!」
「どうやら、一番いいタイミングで『間に合った』ようだな」
「いい所はログアウト組だけに譲らない」……とは言わないだろうが、『鳥籠の画家』ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)は不敵に笑った。
「アバター越しにでも、あの男(キール)と会って学んだ事がある。
 救いの手を差し伸べるのに大きな理由は必要ない。マザーがくれたROOでの人生を、俺は割と気に入ってる――
 出来る事があるなら、それで十分だっただろう?」
 歪み捻れたベルナルド=ヴァレンティーノの『人生』に全てを治す万能の処方箋等ない。
 しかしながら、R.O.Oで彼が見たのは微かな希望の風景だった。温かで幸福な幻影だった。
 例えば、ゼロから絵と向き合う事、好きな女の子(アネモネ)と過ごす事。どれも仮想と割り切るには勿体ないぐらい、宝石の様に大切な時間だったのだ。
「『アレ』を、このまま不幸で終わらせるかよ――!」
「――神よ、今ばかりは異教と心をひとつにする事を許したまえ」
 気を吐いて閃光を『ブチかました』ベルナルドに、『Nine of Swords』冬越 弾正(p3p007105)は微笑う。
「番犬型で、群れ……全体への命令はセキュリティからだろうが。現場での指揮はリーダー、群れのボスがいるかもな」
 特別製の蛇鞭剣で弾正が番犬達を翻弄する一方で、それを譲った『霊魂使い』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)の方は鋭く敵の動きを睥睨していた。
(弾正、それにえーと……
 ……なんとなく彼とも連携をとって行こう、大丈夫……何故か初対面な気はしないし)
【鳥音蛇】は即席のチームだったがその連携は悪くない。
 人間とは現金な生き物である。
 人間には何時でも『希望』が必要だ。
「クリミナル・ワクチン…それが完成すればマザーをなんとか出来る……
 そのワクチンがあればクリミナル・カクテルで歪んでバグったR.O.Oのデータも直るとか?
 もし直るなら――マザーと仲直りする為にも一杯量産しといた方がいいぞ、クリストさん!」
『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)の言葉は俄に始まったイレギュラーズの攻勢の『理由』そのものだった。
「守るのは私たちの現在だ。
 私たちの過去は、未来は、それらのただの陸続き。
 私は、この巨きな流れの中にいる――」
 独白めいてそう言った『喩え言葉が足らずとも』観音打 至東(p3p008495)の言葉は何時にない真摯さを帯びていた。
 佳く見、佳く聞き、佳く考えて、その上で『直感』的に、誰かの『大事な一瞬』を守ること。
 それは例えば三塔主だろう。同じイレギュラーズだろう。誰かの仕掛けだろう、策だろう。一時ばかりの勝機なのかも知れない。
 何れにせよ、人事尽くした積み重ねがここまでの全てを繋げてきたならば、彼女にとって今という刹那は是非もない。
(而今之一生……獅子郎どの、そちらで見ていて下さいまし)
 足掻き続けたこの場所は光の差し込まぬ深い水底であった筈なのに、今はどうか!
 輝く一条の光の道がどれ程に、どれ程までに彼等を救う衝撃だったかは今更説明の必要もないだろう!
 その意気はこの上なく高まり、軒昂となる。『不可能』の真ん中を突き抜かんとする力になる――
「さて、最後の砦ってところかしら?
 願わくば『こちら』でもご一緒出来れば良かったけれど……
 これが終わらないと聖夜が来ないんだからやるしかない、わよね? なんて――」
 この戦いの後に『お待ちかね』が待つ『竜首狩り』エルス・ティーネ(p3p007325)は元より言うに及ばない。
「おや、どういう事情かは預かり知らぬところでありますが、妹を苦しめた兄が今更助けたいから協力しろ、ですか。
 まぁ、なんと都合のいい、我儘な人でしょうね?」
『『幻狼』夢幻の奇術師』夜乃 幻(p3p000824)の唇も実に滑らかに『嫌味』を紡ぎ。
「『兄の気持ち』なんて分かりかねますが、彼女をどうにかしようとしているのはこちらも同じ。仕方なく協力して差し上げましょう、か!」
 お得意の『奇術』と同時に張った声にも何時にない力が込められていた。
「ううん、まだ数がいるのか。些か辟易してきたな。
 しかし終わりは近いようなら――そうだな。
 今晩のディナーを最高に愉しむ為にも、気持ちよく汗を流して腹ごなしを進めておく事にしよう!」
 たとえ激戦にも一貫して余裕を崩さなかった『饗宴の悪魔』マルベート・トゥールーズ(p3p000736)であったとしても動きが『増した』のは事実なのだ。
「ひとまずマザーを何とかする目処は付いたし――後は頑張るだけなの。ここまで来たら乗りかかった船なのよ!」
 専ら主戦場はR.O.Oにあった『ファイアフォックス』胡桃・ツァンフオ(p3p008299)であっても同じ事なのだ。
「テメェらの相手をするのも段々飽きてきたぜ。
 ちょこまかちょこまか、機械の癖に小賢しく動きやがってよぉ――
 ウイルスを作ったりワクチンを作ったり、忙しい奴だな!
 ワクチン作るなら最初からウイルスなんて盛るなハゲ、元はと言えば元凶はテメェだろ!」
 悪態こそ止まないが『隻腕の射手』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)の目は四方に『鬱陶しい』飛兵達の動きを捕まえていた。
「てきがどんどん強くなっているような……!
 ですが、ぎゃくに、こう信じてみることにしますの……
 システムはわたしを、弱点を突かなければ倒せない脅威だと、認識してくれているということ
 たがいに苦しい戦いは、打開しようとして手を変えた側が、隙を作ることになるので負ける……
 そのように、どこかの世界の、エースというかたが、言ったそうですの!」
【対空】を意識する『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)はどれ程傷付けられても、その身を敵の脅威に晒し続ける事を止めない。
「本職には及ばなくても――少しでも皆が長く戦えるように支えるよ!」
「オラァ! 引き続き飛行タイプどもを始末するぞ!
 今度も頼むぜフーア!……あ? お代だ? 後で良ーい酒を文字通り浴びるほど飲ませてやる! ガハハハハ!」
 そんなノリアを『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)が援護し、使役する精霊を『叱咤激励』した『最期に映した男』キドー(p3p000244)が豪放磊落な笑いを見せた。
(……羨ましい。クリストも三塔も、誰も彼も、何もかも。
 反転した身内をこうやって引き戻す事が……いや、機会があるだけで羨ましい。俺には殴る機会すら無かったのにな――)
 豪快な言葉とは裏腹にキドーには確かな感傷があった。
「ぎりぎりまで頑張ってくれてるんだね……本当にありがとう」
『希う魔道士』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)の表情には優しさと強さ、その双方が宿っていた。
「僕等は君を元に戻して――『クラリスさんも一緒の、楽しいシャイネンナハトを過ごしたい』。
 それから、いずれは猫呼んで君を猫まみれにして――もっふもふに癒されろーしてやるから覚悟してね!」
 居寤清水が力を引き出す。ヨゾラの聢唱ユーサネイジア――渾身の連続魔が弾幕となり、マザーを取り囲んだ。
「……マザー……いえ、クラリス。まだ諦めていないのならば、私達にどうかあなたを助けさせて下さい!」
 空隙を縫うのは銀色の乙女。同色の軌跡を『揺り籠』に引き、『白銀の戦乙女』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)の影が踊る。
「……っ、幼い頃の私は無力で……っ、病魔に冒された母を見送るしか出来ませんでした。
 貴女は、貴女と私は――血の繋がりも何も無い、私は子供じゃないかも知れないけど……
 それでも! 私はもう、誰かの母を失いたくない! 絶対に『失わせたくない』んです――!」
「やりたかねぇがアタシの道理を押し通すなら力が欲しい!
 力ァ貸しやがれクリスト! 兎に角何だってやってやる。アタシにアレを……マザーを……ぶち抜くだけの何かを寄越せ!」

 ――攻めるねぇ!

 口笛に舌を打った『慈悪の天秤』コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)の『照準』をクリストが偏差した。
『マザーの回避行動、防衛機能を計算しきって弄られた一撃』は彼女の眉根を少しばかり曇らせた。

 ――俺様、取り立てはキツイからね? 駄目だったら承知しないZE?

「しゃらくせぇ」
『『幻狼』灰色狼』ジェイク・夜乃(p3p001103)の表情は何時もより獰猛だった。
「いいから黙って『信じとけ』。
 俺が無理なら、ローレットのイレギュラーズを信じてろ。
 わりぃーが俺達は、こんな死線にゃ慣れっこさ。
 たった8.5313%? 俺達の前じゃ、それだけあれば十二分――
『妹さん』はちょいと痛い思いをするかもしれねえが、見とけよ、クリスト!
 今から俺達が本格的な治療をおっぱじめるぜ――」
「全てを守ると決め、その通りにしてきた偉大なる母よ!
 貴女を救い出すために貴女を叩くと決めた我々を――どうかお許し下さい!」
『『幻狼』灰色狼』ジェイク・夜乃(p3p001103)が、『いにしえと今の紡ぎ手』アリア・テリア(p3p007129)が、先程幻を含むイレギュラーズが切り開いた道を強く行く。
「いっけええええええ! 可能性の扉を、こじ開けてやるんだ! この手で!」
「クラリス! 聞こえてるんだろ! お前を救いたいって! 助けたいって声たちがよ!
 まだ諦めんじゃねぇぞ! 俺達は死んでも諦めねぇ! 諦めちゃいねぇんだ!
 だから、足掻けよ! お前も死んでも足掻き続けろッ!!!」
 アリアに続く、決死の覚悟――『名無しの』ニコラス・コルゥ・ハイド(p3p007576)の崩滅呪王が唸りを上げた。
「――は! いちいちアツくて何よりだぜ」
 肩を竦めたキドーの瞳は遠い視線の先で次々とマザーと激闘を繰り広げる仲間達の姿を映していた。
 マザーとやり合う彼等が居る一方で、それを支える戦力が必要なのは明白だ。
『彼等の戦いは、それを届ける下支えなしには絶対に成り立たないのだから』。
 しかし「ずるい」と言えない男は、あの場所に飛び込めない。
 ……だが、この物語の結末に救いを見たい気持ちもまた嘘では無かった。
「本当に、何よりだ――なァ」

 ――オクト。

 ……繰り返すが、人間とは現金な生き物である。
 事実、イレギュラーズの戦いはクリストが現れる前より『ずっと』充実したものになっていた。
 何ら手を抜いていた訳ではない。力を込めていなかった訳ではない。
 ただ、現実としてイレギュラーズの勢いは前後で恐ろしく強まっていた。
 たった一つの目標に一丸になる時、奇跡さえ従える特異運命座標は確かに可能性の獣と呼ぶに相応しい――
「ニルは倒れてなんかいられないのです! 周りの人だって、ニルは守りたい!
 立って、ここでがんばることで――マザーに届く手を増やせるように!
『はらぺこフレンズ』ニル(p3p009185)の霧氷が敵陣を包む。
「マザーにおかえりなさいを言えるように。ニルの大好きな場所が、元に戻るように !」
「動きはある程度記憶しているが、雰囲気……動きが違うな? 素早い? 捉え難い? いや、実に壊しがいがあるねぇ!」
『屋上の約束』ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)の頭は猛々しさに反比例するように冴え渡っている。
 先行きが見えず、不安に苛まれている時は棒のようだった足が嘘のように動く事に気が付いた。
「むむう! ジリジリ追い込められてた展開っすけど……
 ここからはずっとこっちのターンっす! 誰かさん曰くピンチはチャンスっす! ここを踏ん張って戦線維持頑張るっす!」
 鉛のように重かった『赤々靴』レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)全身にもいよいよ力が漲り、より強い賦活の力を紡ぎ出し。
「アタシも流石にガキじゃないからねえ。
 大将めがけて思い叫びながら突っ込むような青さは他の奴らが適任だよ。
 とは言え――そろそろ身体も温まって来たからね、思いっ切り暴れさせて貰うよ!」
 気合の一声を吐き出した『獰猛果敢』リズリー・クレイグ(p3p008130)のベアヴォロスは言葉よりも雄弁に彼女の意志を物語る。
(未だ恐れは去らず。歯は噛み合わず、手の震えは止まらずとも……事ここに至っては傍観を決め込む事等出来るものですか!)
『離れぬ意思』夢見 ルル家(p3p000016)のラフィング・ピリオドが迫り来る飛兵の一体を撃ち抜いた。
「如何な艱難辛苦が降りかかろうとも、『幸運(クリティカル)』は拙者を見捨ててはいないようですね!」
 ルル家は強い。確かに通用する。彼女の腕前は十分で、嘯く彼女はしかし自分を信じ切る事が出来てはいない。
(……ええい、治まれ! 今だけは……!)
『宇宙忍者警察』の刑事としてなら、そんな事は無かったのに。
 ただの夢見ルル家は脆さを抱えながら、それでも前に進まんと足掻いている。
 進化と強化を続ける機兵達に対してイレギュラーズが見せた鮮烈過ぎる輝き、猛攻は死力を振り絞るものだった。
「ちっ、人使いの荒いこった。
 だがまあ、これでしめえってんなら……まぁいい!
 てめえらにも、この国にも、因縁もクソもねえがよ。
 どうしようもねえクソ兄貴が妹助けようと必死になってんだ。
 手ェ貸すにゃ──それで十分だろうがよッ!!!」
 悪態めいた大見得を切った『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)の一撃がダミーマザーを猛襲した。
 一時的に状況は五分以上に押し返された。だが、それは『運命の前借り』に他ならない。
 マザーのクリミナル・カクテルを解決出来なければやがてこの熱気も消え失せ、敗北は決定的なものになる。
「おい、この化け物共! 何とか俺様達で抑えるぞ――!」
 声も枯れよと怒鳴るグドルフの言う通り。
 機兵戦力の中でも特記たるダミーマザーを封じ込める事はイレギュラーズの勝ち筋に必要不可欠なピースであった。
「……何か『会える』気がしたのに……い、いない! え!? ここじゃないの!?」
「サクラちゃん、なんかマイペースだね。何時も通りというか――サクラちゃん通りっていうか」
「う、うん!? うん、まぁ……それはそれとして!
 マザーさんを助ける為に助力しないとね! 真面目だよ! うん!」
【月桜】の二人、『聖奠聖騎士』サクラ(p3p005004)と『リインカーネーション』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)は名コンビを見せる。
 R.O.Oでも共に戦い抜いた二人だが、所変われば品も変わる。混沌の二人は言うなれば矛と盾の組み合わせだ。
「はいはい。わかったからちゃんと集中しようね!」
「分かってる! 練達の民を救う為! 妹の幸せを願う兄の為――天義の正騎士、サクラ・ロウライト。推して参る!」
 ダミーマザーとの激闘を展開しているのは彼女等だけではない。
「コイツは……流れが変わったってヤツだろう?」
『観光客』アト・サイン(p3p001394)の口元が僅かに綻んだ。
「出口の見えない戦いを続けるのは辛いもんだ。
 それは暗く、何とも長い道のりじゃないか――
 だが、何時だって人生とはダンジョンに似る、耐え忍びきったものこそが勝利者となる。僕は勝利を諦めない」
【騎兵隊】の副将たる彼が「フラーゴラ」と呼びかければ。

 ――――♪

 機神の胎に場違いとも呼べるようなラッパの音色が響き渡る。
「ラッパを鳴らして騎兵隊ここに在り、ってね!
 誰だって幸せになりたい、ワタシだってそうだから――駆ける騎馬は運命を掴むよ……!」
「よし」と頷いたアトに頬を紅潮させ尻尾を振る『恋する探険家』フラーゴラ・トラモント(p3p008825)の一吹きは、
「さっきまでは『抑える』ことしか出来なかった。
 でも私達は今度こそ切り開く。希望を、未来を、そして勝利を!
 万難、辛苦、その無理を、私達の嘶きこそが切り裂き、捻じ伏せ、従える!
 行くわよ! 行くわよ! さあ、征くわよ! 親離れの時、その第一歩が! 母親の死に顔であってなるものか!」
 短い演説にも等しい『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)の号令は長く戦い続けた【騎兵隊】への最後の激励だった。
「撃破だ!」
 吐き出した言葉に力が籠もる。
「これが最後のchanceなら――時間稼ぎもいいが、そろそろダミーマザー、仕留めたって構わねーだろ?
 俺は『狩人』なんだ、『獲物を誰かに譲るなんてごめんだぜ! 行こう幻介、俺達の『矢』は誰にも追い越せない!
 騎兵隊の鏑矢にして連撃の射手ミヅハ・ソレイユ――余所見出来ないくらいお前の心臓(ハート)を撃ち抜くぜ!」
『ヤドリギの矢』ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)の口上に「何だそれ」と微かに笑った『傷跡を分かつ』咲々宮 幻介(p3p001387)が負けじと動き出していた。
「だが、気持ちは同じだ。
 先手は譲らん……この一太刀に賭ける誇り(おもい)、絶対の最速(はやさ)、追い抜かせるものか!
 これが最後の遊戯なら……疾くと遊んでいけ、無尽に付き合ってみせよう。
 この騎兵隊の鏑矢が、咲々宮 幻介が――推して参る!」
「――瞬くなよ、見逃すぞ?」と嘯いた幻介等【騎兵隊】が繰り返すのは戦いの中で練り上げた戦略だ。
「けほっ……この傷は頂けんが……だぁが……概ね首尾よくいったなら、悪くない取引か。
 役目通りに潰れ切ってやろうか……さて、どこまで運命が持つかは分からんが……!」
「『子供の嫉妬は終わり』。『実力が無いからとか洒落臭せぇ』。
『あの世界』で私はそう言った……それはつまり、こういう事だわよ!」
 長い戦いと負った傷にも『潰れ役』を譲らない『騎兵隊一番翼』レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)、『嫉妬の後遺症』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)のイメージに繋がらない猛攻が火を噴き、
「はっはっは! 私、やっぱりみんな好きだなぁ!
 なんだかみんなキラキラしてて、ワクワクしちゃって止まらないんだよね――
 だから、だからよ! この刀を振るう! 真心とか超こもってっから!
 おい、クリストー! これが可能性の力だぜ!  でも、ま! ちょーっと、時間かかっちゃったけどね」
『音呂木の巫女見習い』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)の言葉にクリストが笑ったような気がした。
「ねぇ、マザー……お願い、『みんなのお母さん』でしょ? 元にもどって……! 笑顔を見せて……!」
『マスターファミリアー』リトル・リリー(p3p000955)は声を振り絞り、想いを乗せて。幾度目かダミーマザーを撃つ。
「今だよ!」
 ――そしてこれが『効いて』いた。
「召喚されてからずっとこの国は思い出がある。
 知り合いが出来た。仲間も出来た。大切な人も出来た――そんな国を守ってきた貴女をこれ以上壊させてたまるか!」
『痛みを知っている』ボディ・ダクレ(p3p008384)が気合を吐き出した。
「理不尽な結末なんて死んでも御免だ!
 だから切って拓く、未来を! この歪み、必ず断ち切らせてもらう──! 」
「良く言ったわ! さあ、貴方達の敵は私よ! 無視したら承知しないわよ!」
 ボディの追撃の邪魔をしかけた複数の敵を白騎見参の存在感を示す『白騎士』レイリー=シュタイン(p3p007270)が阻んでみせた。
 この白亜の大壁はかのフォン・ルーベルグにも見劣るまい!
「ぶはははッ、依然健在! 異常なし! 守りは任せな! 攻めまくれェッ! 」
 闘志を全開に剥き出しにした『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)は危険なフロントで粘りに粘る。
 常人ならば何度も倒され、諦めてしまったかも知れない局面にも揺れず、惑わず、その両足で踏み止まる!
 彼等の動き出しに代表される【騎兵隊】の連鎖戦術はダミーマザーに対してこれまでも良く効いていた。
 遅れれば行動自体を封じてくるだろう彼女達の執拗な檻を、その細やかな網の目を。彼等鏑矢が食い破っているのだ。
【騎兵隊】はチームを三つに分けている。実に四体を数えるダミーマザーに相対する為にそれぞれが有機的に連携する為の『単位』を定めていた。
「可能性がちょっとだけ? ほとんどないとかじゃなくて、ちょっともある?
 あははっ、最高じゃない! 私達が比類なき勇者だってことを示す――一番の機会だよ!
 さあ、ハッピーエンドを引き寄せてやろう!」
『挫けぬ笑顔』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)は笑い、その決意を新たにした。
「マザー、貴女の子供は、もう守られるだけの子供じゃないよ。
 もう貴女を助けられるくらい――貴女が犠牲にならなくても良いくらいに強くなったんだ!」
 一方で『ネクロフィリア』物部・ねねこ(p3p007217)は惚けたように唇に手を当てた。
「勝ちへの道が見えて来ましたね♪私も頑張らないと♪
 ……大体、私は死体が見たいだけで仲間に死んで欲しい訳ではないですからね
 第一、マザーさんの愛され具合を見るに――彼女が死ぬ時はベットで大往生がお似合いですもの♪」
 見ての通り、風情は個性豊かにバラバラだ。
 だが、死力を尽くすのは誰もが同じ――求める先は皆同じ。
「架空の原罪は倒されて、病魔の巣食うダン・スカーは崩れ去った。
 対岸にいた兄はこちらについて、たった一人の肉親を守ろうとしている。
 マザー、クラリス。母なる貴方を冒している根源は絶たれた。
 であれば、ここから先は命運を賭けた戦争じゃない――治療なんだ。これは『全員』の願いなんだ」
『女神の希望』リウィルディア=エスカ=ノルン(p3p006761)の言葉はきっと癒やし手にとっての至言、代弁だった。
 これが闘争よりも治療だと言うのなら、彼女等をおいて主役に成り得るもの等無かろう。
 A班が攻め手を見せる一方でB班の役割もまた重い。チームの中で防御と支援に優れたメンバーはこの乱戦における扇の要だ。
「頑張りましょう! あと少しですよ!」
『死地の凛花』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)には休んでいる暇等一秒も無かった。
「……なんて、言っちゃって。半分自分に言い聞かせてたりして」
 止まらない。止まれない。ココロの紡ぐ福音が負傷者を救い、ココロに背中を押された仲間達は再び一歩を踏み出した。
 彼女自身も乱戦に無事な訳ではない。愛らしいその顔には擦り傷がある。服は破れ、手足からは出血が見えていた。
 痛くない筈も、辛くない筈も無かったが――
「さあ、次は誰です!? 任せて下さい!」
 目眩がする程の忙しさと、一つの判断が多数の命運を決めるかも知れない責任の重さに堪え、己が出来る事を遂行し続けていた。
【騎兵隊】の威圧が増したのを察したか、敵陣も対抗を強めていく。
「摩天楼から見下ろす景色が好きよ。飛んでるみたいで。
 この世界には――練達で位しか味わえない風景だわ。それを喪うなんて世界の損失だわ。違って?
 だから、覚悟をなさいな。こちらも――いい感じに燃えて来たわ!」
「『抑えた上で粉砕する』。これはその為の一刀……この均衡を破り『先』へ希望を繋ぐ為!
 練達にもR.O.Oにも実に沢山の思い出を貰いましたよ。今度はこちらがそのお返しをする番ですから――」
『翼より殺意を込めて』メルランヌ・ヴィーライ(p3p009063)の封呪がダミーマザーの一体を縛り付け、『死力上等!』ルーキス・ファウン(p3p008870)の鬼百合が鉄火場に咲く。
「さぁ、そちらが有利にならないように指すのが俺の役割なんでね。
 生憎主役になれる火力はねぇが――御覧じろ、堅牢ねる壁も最悪の難問も、道筋を作ってやるのが俺の策!」
「待ってたぜこの好機! 此処まで来たら完璧な勝利以外ありえねぇよなぁ!」
『雨夜の映し身』カイト(p3p007128)は腕をぶし、猛々しく吠えた『フランスパン・テロリスト』上谷・零(p3p000277)が強引に前に出た。
「――はははっ、いいじゃないか! 『これ』を突破でブチ抜いてこそ!
 それでこその騎兵隊だ! アタシが望んだ、最優の刃だ!
 見せてやろうじゃねぇか、アタシ『達』の力をな!」
 大太刀で縦横無尽の立ち回りを見せた『好機一閃』エレンシア=ウォルハリア=レスティーユ(p3p004881)が吠え、
「向かう為の障害は咬み砕きましょう、斬り裂きましょう!
 難敵絶望なんのその、そんなものは我が黒顎魔王、雷切で――真っ二つですとも!
 その為に研いだ刃、高めた火力です。拙の役目は邪魔者をぶっ飛ばすのみ――!」
『ジョーンシトロンの一閃』橋場・ステラ(p3p008617)の武威が価値を示し、轟と魅せる。
「諸悪の根源は何とかなったのですよ!  だから後はみんなで頑張って――貴女を戻してあげるだけでして!」
『にじいろ一番星』ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)の破式魔砲がダミーマザーごと直線上の砲台を大火力で飲み込んだ。
「子供の成長は――悲しくて泣いてしまっても、それでも笑顔であるべきなのですよ!
 狂って、壊れて、すれ違って……そんな終わりはイヤでして!!!」
 戦いは続く。
 数限りなく誰かが傷付き、悲鳴は最早耳の奥にこびり付いて離れない。
 機械の守護者達は無機質で、その物量は無限のままで。
 それでもイレギュラーズは運命に抗い続ける事を選んでいる!
「母の愛、大いに結構。だがね、クラリス――同時にキミも『愛されている』事を忘れちゃいけない。
 それってとんでもなく幸福じゃあないか。この物語に不幸せな結末は要らないんだよ。
 だから戻っておいで――子の哀しむ姿は、辛いものだからね」
 戦場には不似合いに『闇之雲』武器商人(p3p001107)の言葉は酷く優しい色を帯びていた。
「マザーさん、この声聞こえません? 聞こえるでしょ? 煩いでしょ?」
 一方で『合理的じゃない』佐藤 美咲(p3p009818)の言葉は皮肉めいていた。
 美咲が届けたそれも含め、『説得して終わるなら苦労はない』と冷めた彼女はそう思わずにいられない。
(熱い想いは皆に任せお姉さんは黙って拡声器役をしますよっと。だって……)
『だが、それは実は語るに落ちている。合理的なだけの彼女なら、決してそんな事をしなかっただろうに』。

 ――信じるという行動は、情というものは。きっと人間の持つ不具合(バグ)に違いない。

 不具合に過ぎない癖に、不具合の癖に。
 どうしてか、こんな時ばかり――弱い人間を強くする。
「吾は母と言うものに縁がない故、何故マザーと呼んで慕うのかはよく分からぬ!
 森羅万象、実が熟す頃には花は枯れているものよ!
 だが、実ったまま再び花に巡り合う植物もあろう! そんな例外も僅かばかりには許されよう!
 ……ならぬと言うなら、力ずくでそういう結末にしてしまっても良いと思う!
 其方の方が良かろう? レオン殿も前にそう言っていた!」
 刹那の三段より、叩き込むのは白百合百裂拳。
 閃光のような一撃に「ふぅ」と鋭く呼気を吐き出して『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)。
 誰よりも美しく、気高い『獣』の威風にダミーマザーの一体が砕かれた。
「エルは、クラリスさんとクリストさんが……
 ゆっくりゆったり、一緒に過ごして、お互いが幸せに、なれるって、信じていますから」

 ――君等の甘changには割と結構涙が出るZE!

 奮闘する『ふゆのこころ』エル・エ・ルーエ(p3p008216)の言葉を茶化すかのようなクリストだが、先程のコルネリアの件も含めて彼の補佐は戦場全体の精度をかなり向上させていた。
 取得し続けるデータからクリミナル・カクテルを生成しながら、イレギュラーズの戦いに嘴を突っ込んで強化(バフ)までみせる。
 軽口が耳障りな以外は、実に驚くべき性能を見せる彼もまた何時になく――必死だった。

 ――あー、でも。たまにはそんなのもいいのかな。だって、もうすぐ聖夜だし――

成否

失敗

状態異常
夢見 ルル家(p3p000016)[重傷]
離れぬ意思
ノリア・ソーリア(p3p000062)[重傷]
半透明の人魚
レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)[重傷]
騎兵隊一番翼
シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)[重傷]
白銀の戦乙女
キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)[重傷]
社長
零・K・メルヴィル(p3p000277)[重傷]
恋揺れる天華
サイズ(p3p000319)[重傷]
カースド妖精鎌
ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)[重傷]
ドラネコ保護委員会『委員長』
レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)[重傷]
赤々靴
志屍 瑠璃(p3p000416)[重傷]
遺言代行業
アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)[重傷]
灰雪に舞う翼
グドルフ・ボイデル(p3p000694)[重傷]
山賊
マルベート・トゥールーズ(p3p000736)[重傷]
饗宴の悪魔
ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)[重傷]
黄昏夢廸
夜乃 幻(p3p000824)[重傷]
『幻狼』夢幻の奇術師
ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)[重傷]
【星空の友達】/不完全な願望器
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)[重傷]
蒼輝聖光
ジェイク・夜乃(p3p001103)[重傷]
『幻狼』灰色狼
咲花・百合子(p3p001385)[重傷]
白百合清楚殺戮拳
咲々宮 幻介(p3p001387)[重傷]
背で語る
アト・サイン(p3p001394)[重傷]
観光客
ゴリョウ・クートン(p3p002081)[重傷]
黒豚系オーク
ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)[重傷]
鳥籠の画家
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)[重傷]
嫉妬の後遺症
エレンシア=ウォルハリア=レスティーユ(p3p004881)[重傷]
一ノ太刀
サクラ(p3p005004)[重傷]
聖奠聖騎士
茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)[重傷]
音呂木の巫女見習い
冬越 弾正(p3p007105)[重傷]
黄泉路の楔
カイト(p3p007128)[重傷]
雨夜の映し身
レイリー=シュタイン(p3p007270)[重傷]
ヴァイスドラッヘ
エルス・ティーネ(p3p007325)[重傷]
砂国からの使者
アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)[重傷]
航空指揮
ニコラス・コルゥ・ハイド(p3p007576)[重傷]
名無しの
胡桃・ツァンフオ(p3p008299)[重傷]
ファイアフォックス
ボディ・ダクレ(p3p008384)[重傷]
ぬくもり
観音打 至東(p3p008495)[重傷]
悪縁斬り
橋場・ステラ(p3p008617)[重傷]
夜を裂く星
ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)[重傷]
深き森の狩人
フラーゴラ・トラモント(p3p008825)[重傷]
星月を掬うひと
ルーキス・ファウン(p3p008870)[重傷]
散華閃刀
メルランヌ・ヴィーライ(p3p009063)[重傷]
翼より殺意を込めて
ニル(p3p009185)[重傷]
陽だまりに佇んで
コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)[重傷]
慈悪の天秤
フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)[重傷]
挫けぬ笑顔
佐藤 美咲(p3p009818)[重傷]
合理的じゃない
ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)[重傷]
ラド・バウA級闘士

第3章 第3節

グレイシア=オルトバーン(p3p000111)
知識の蒐集者
クロバ・フユツキ(p3p000145)
真実穿つ銀弾
シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)
優しき咆哮
クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)
安寧を願う者
ラダ・ジグリ(p3p000271)
天穿つ
日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
カイト・シャルラハ(p3p000684)
太陽の翼
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
矜持の星
古木・文(p3p001262)
結切
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
祈りの先
アルテミア・フィルティス(p3p001981)
銀焔の乙女
黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
シャルロット・D・アヴァローナ(p3p002897)
Legend of Asgar
すずな(p3p005307)
忠犬
アイラ・ディアグレイス(p3p006523)
生命の蝶
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)
奈落の虹
白薊 小夜(p3p006668)
盲御前
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
日車・迅(p3p007500)
疾風迅狼
ベルフラウ・ヴァン・ローゼンイスタフ(p3p007867)
北辰連合派
ロロン・ラプス(p3p007992)
頂点捕食者
アカツキ・アマギ(p3p008034)
焔雀護
エルシア・クレンオータ(p3p008209)
自然を想う心
天目 錬(p3p008364)
陰陽鍛冶師
ヴェルグリーズ(p3p008566)
桜舞の暉剣
フリークライ(p3p008595)
水月花の墓守
グリーフ・ロス(p3p008615)
紅矢の守護者
オニキス・ハート(p3p008639)
八十八式重火砲型機動魔法少女
蓮杖 綾姫(p3p008658)
厄斬奉演
隠岐奈 朝顔(p3p008750)
真意の選択
ブライアン・ブレイズ(p3p009563)
鬼火憑き
ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)
ラド・バウA級闘士
ウルファ=ハウラ(p3p009914)
砂礫の風狼

●G線上のアリア
「ン。フリック 墓守。死 護ル者。最後 行キ着ク先。
 マザー 母。生マレタ命 心 護ル者。ユリカゴ。
 トモスレバ 対極。ダカラ スゴイ 思ウ――サア 希望 届ケル 行コウ。奇跡 起コソウ」
 無機質な『機竜殺し』フリークライ(p3p008595)の『声』には感情はそう籠もらない。
 しかし不思議な事にそれを聞いた誰かは、フリークライのその言葉から奇妙な程の人間らしさを感じ取れたかも知れない。
「クリストがあの言葉に応えてくれた以上は――私も約束を果たさねば!」
【救母】の先陣を切った『流麗花月』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)が不敵な笑みを見せた。
「貴女は私と同じ造られた者。けれど多くの命を支え、育んだ方――
 貴女は正しく母でした。貴女は……誰かに抱きしめてもらっても良いのです。
 貴女には今、貴女の為に抗う反抗期の子どもたちの姿が、見えませんか――?」
「その赤は、貴女には不似合いです。生まれ落ちたままの色に」。
 汰磨羈を庇った『白き不撓』グリーフ・ロス(p3p008615)の身体をワイヤーが貫くも、その隙に彼女はマザーへと肉薄する。
(確率は僅か。されどクラリスはまだその中で生き、足掻いている。
 そこに死(陰)と生(陽)の狭間が生じるは必然。
 ならば、出来る筈だ――その狭間に介入し、死の浸食を剋し、生の道を斬り開く事が。
 獣として、人として、陰と陽に向き合ってきた私なら。その生業は常に私の業なれば――)
『断ち斬りの』蓮杖 綾姫(p3p008658)も負けては居ない。
「ジリ貧ならば、どこかで乾坤一擲に賭けるは必定。なれば勝ちの目のある今において他になし!
 丁半……などといわず、望む目を引き寄せてこそ『特異運命座標』!
 マザー、貴女を蝕む病毒……断ち斬らせていただきます!!!」
 全てのリソースを攻撃へと傾けて、最早彼女は守りを見ない。後退を知らない。
「R.O.Oのみんなの想いと、混沌のみんなの想い。
 ぜんぶまとめてあなたにぶつける。
 ここに生きるみんなと、あなたを助けるために――そのための道を、私の魔砲で切り開く……!」
『八十八式重火砲型機動魔法少女』オニキス・ハート(p3p008639)なる『砲門』は確かに、この時を待っていた。
 出し尽くす時を待っていたのだ!
「これが私の全力。私の想い――
 マジカルジェネレーター超過駆動! アハトアハト、フルバースト――――ッ!!!」
 総攻め掛かりとはこの事だ。
 決戦が行く手に光明を見出し、遅れ馳せながらにその決着を望み始めているのは明白だった。
 最後に笑う運命が『どれ』なのかは知れなくとも、『知れない事自体がイレギュラーズにとっての救いだった』。
 暗鬱に立ち込めた黒雲が消え失せている。『少なくともどっちか分からないならバッドエンドは決まっていない』。
「いよいよロスタイム突入って訳っスか!
 やるならここしかなくて、引いたら負けて、チャンスは何度もない……」
『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)はふと負けている試合の後半、アディショナルタイムを思い出していた。
 あの試合は勝ったっけ? 負けた。だけど、この試合が同じとは限らない!
「上等だ! そんなもん『実戦』では当たり前!
 そんなもん、負ければ終わり(トーナメント)で、飽きる程味わってきたっスよ!」
 声を張った葵の『シュート』がマザーを目指す。
「ログアウト不可が解除されたってンなら、俺がこの戦争に肩入れする理由は無くなった。
 だが、8.5%でジャックポットを狙えるんだ。誰も彼もが命を擦り減らして戦わなくとも、奇跡なんか起きなくとも――
 ちょいと良い賽の目が出りゃ勝てる戦いだぜ、コイツぁよ」
「ああ。確率なんて数字で見れば溜息も出るが、見えなかった終わりが見えたと思えば、随分上等になったじゃないか?」
 どちらもやや皮肉を含んだ『らしい』物言いだが、それも『鬼火憑き』ブライアン・ブレイズ(p3p009563)や『剣砕きの』ラダ・ジグリ(p3p000271)らしい。
「8.53……なんだっけ?
 ま、0%じゃないなら上等さ。ありがとうクリスト!
 あの赤をもとに戻してみせるから――終わったら『ちゃんと』話し合うんだよ!」
 応えた『優しき咆哮』シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)の絶大な一撃をマザーの細い腕が弾いて飛ばすも。
「足掻いて足掻いて希望を手繰り寄せて掴み取る、それが私達――8%も確率があるのなら足掻かない理由はないわ!
 だからクリスト、後でクラリスに思いっきり怒られなさい!
 私もあなたを怒ってやるわ! 『向こう』で色々やってくれたお礼も兼ねてね――!」
「普通なら、反転状態から戻る事は無いと聞くが……此度は特殊な状況故、元に戻す事も可能であると。
 マザーの正常化は、練達からすれば是が非でも成し遂げたい――いや、かく言う吾輩とて、希望ヶ浜で教鞭を振るっている身だ。
 決して他人事には成り得ぬのでな!」
『プロメテウスの恋焔』アルテミア・フィルティス(p3p001981)の『情熱』なるプロメテウスの恋焔、『知識の蒐集者』グレイシア=オルトバーン(p3p000111)の『冷静』が追いすがる。
「――――」
「こんな形じゃなく彼女とは相対してみたかったけれど……まぁ正気に戻れたらクリスト共々茶飲み話ってやつがしてみたいね!」


 終焉なるレーヴァティンを帯びた『光華の導き手』ロロン・ラプス(p3p007992)、捨て身渾身のぷるるーんぶらすたーが表情を僅かに変えたマザーに纏わり続け様の爆発衝撃で彼女を大きく後退させた。

 ――WAO! 惚れちゃいそう……ヴァン君にライバル宣言しとこ。そうしよ!

「冗談でも! 遠慮しておきます!!!」
 アルテミアの必死の声にクリストの下卑た笑い声が響き渡る。
 そんなやり取りを他所に置き、イレギュラーズの集中攻撃は止まらない。止まっていない。
「マザー・クラリス。ここまで頑張ってくれてありがとう。
 でもどうかもう少しだけ耐えてください――貴女も、『そこ』のクリストも、皆も。揃って聖夜を楽しめるように。
 最後の一滴までこの魔力振り絞ってみせるから!」
「――ええ。母と子。いつかは別れが来るとしても、今である必要はないでしょう?
  まだまだ長生きしていただきますよ、クラリス殿!」
 生じた隙は一瞬。されどその詰めは余りにも即座。
【風狼】の爪牙――即ち『魔風の主』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)と『挫けぬ軍狼』日車・迅(p3p007500)の二人がこの時には既にマザーに畳み掛けている。
「――我が旗を見よ!」
 余りにも玲瓏たる呼び声は魂を震わせる戦旗の乙女の激励だった。
「我が友Hades、クリストか。妹の為に動く可愛げは中々愛おしい。
 友が家族の助けを求めるならば、私が――我等が為すべき事は唯一つ!」
『金獅子』ベルフラウ・ヴァン・ローゼンイスタフ(p3p007867)の唇の語るのは『闘争』。真実なる『闘争』だ。
「確率など捨てておけ。我等が見るは眼前にある希望のみ。我等が掴むはまだ不定なる勝利のみ!
 見せてやろう――祈りが、願いが数字に勝る様を!
 聞かせてやろうではないか――絶望の海路を突き進む、勇者達を称える凱歌を!」
「はい!」
 余りにも『いい返事』はその愛らしい美貌に勇気と決意を灯す『不墜の蝶』アイラ・ディアグレイス(p3p006523)のものだった。
「此処で折れたら。引き返したら。今より多くの人が血を流すんでしょう?
 なら逃げてやるもんですか! 此処に一秒でも長く留まってやるんですから――」
 ベルフラウとアイラ。イメージこそ『真逆』に違えど『戦乙女』とはきっと彼女等の事だ――
「さぁ、魔法をかける準備はいいですか、マザー!
 ボクと貴女、きっと友達にだってなれるはずだから……だからまだ、諦めてあげません!
 手を伸ばして。共に掴み取るんです。きっとある、きっと届く――あの、素晴らしい明日を! 」
 それは確かに『見事』と称する他無い位の戦い振りだった。
 俄然と士気を上げる【黒狼】含め、イレギュラーズはギリギリの戦いに負けていない。
 アタッカー、タンク、ヒーラー、バランサー。一人一人が出来る最善を尽くし続けてここにある――
「ここまで諦めなかっただけの成果は……あった! 塔の上からちゃんと見てろよ、シュペル!」
 或いは『塔』からこの光景を見ているやも知れないシュペルに啖呵を切り、『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)はその掌中に虎の子の四神霊宝を握り潰した。
 長く、長く続いた戦いに余力の残されている者は多くはなかった。それでも錬は前を見て、この瞬間の敵を見て、遥か高みの好敵手を睥睨し続けている――
「さぁ、最後の一押しだ。練達を守る為にここはもう譲れない。大切な人たちと大切な街を守る為に、今この刃を振るおう。
 我が銘はヴェルグリーズ! 悪しき運命を斬り分かつ『別れ』の剣なり! 」
 ――凛然と宣言した『全てを断つ剣』ヴェルグリーズ(p3p008566)の鋭さはこれまで以上のものになる。
「クリストめ、自らの毒で妹を暴走させておいて!
 解毒にも隙が必要になるとは……パッパッとやれんか、パッパッと!」
「クラリス、あなたには血の繋がった子どもはいないかもしれない
 生物学的な意味で――生命を育んだ事はないかもしれない。
 その長命ゆえに、後に産まれた者を看取るだけだったかも知れない
 だけどあなたはそれでも練達という国、ネクストという世界の母なのよ。
 母であるならば、子が離れるその時を夢見て生きて――練達は母(あなた)にまだまだ甘えないと行けないのよ!」
『砂礫の風狼』ウルファ=ハウラ(p3p009914)は『相方』の為の道を切り開き、それに応えた『Legend of Asgar』シャルロット・D・アヴァローナ(p3p002897)が持てる力の全てを吐き出してティタノマキアの衝撃を正面からマザーへ叩き付けた。
「少しは届けばいいんだけどね――」
 小柄なその体躯に似合わず大木を殴りつけたような感覚にシャルロットが苦笑する。
「先程も言ったが、私も一人の母として……あの子を助けてくれたあなたにはお礼が言いたいからね。
 苦しいだろう、諦めるな……なんて簡単には言えないが……それでも、私はあなたのために戦わせてもらうよ
 今回は私たちが全力であなたを助けよう。たまには助けられる立場になってもいいだろう?」
「うむ! マザー、呼びかける声に耳を傾けよ。それが母の、子への義務である!」
 攻撃を外されたとて諦めない――『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)と、それに頷いたウルファが気を吐き、
「この国の母たる者が、随分と乱心したもの、だ。
 だが、まだ戻れる、なら――守るべき子らを、慈しむべき子らを、その手に掛けるな。
 いい加減、グレるのはお終いにして、戻って、こい。みんな、お前の――母の帰りを、待っている!」
『訊かぬが華』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)の放った全力の魔術がマザーの周囲に立て続けに光彩を瞬かせた。
 クリストはマザーの処理能力(リソース)を奪えと言った。
「リソースを奪うか――それってひょっとして私が一番得意な事かも知れないよ!」
 それはダメージを与える事だろう。それは瞳を輝かせた『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)が言った余力(AP)を奪う事だろう。
「嘘だったらAP0にするからね? クリスト君!」

 ――猫耳娘々拳で?

「それは白虎迅雷掌!」
「マリィ! それに乗るのは罠ですわ!
 まだ事情がよく飲み込めていないけれど、とりあえずマザーから余裕(リソース)を奪えば良いのですわね!
 兎に角、信じますわよ、クリスト? 嘘だったらお尻が粉々になるまで引っ叩きますからね!」
 それは敵に集中させる事だろう。それはより多くの思考をさせる事だろう――
「どっせえーーーいッ!!!」
 聖職らしからぬ気合の声を上げた『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)の『一発』がマリアの雷撃のような『手数』に続いてマザーを叩く。
「負けてられませんね……!」
『親友』のマリア等が実力を見せつけるなら『一人前』すずな(p3p005307)も黙ってはいられない所だ。
「よろたんうぇーいの手助けというか言う事に従うのは非常に不本意ではありますが! 乗りかかった船というやつですよ!」
「あら、中々楽しい人だったじゃない?」
「小夜さん!」
 抗議めいたすずなに『盲御前』白薊 小夜(p3p006668)は小さく肩を竦めた。
 二人の剣客はそれぞれの歩法、それぞれの動きでマザーに鋭く肉薄する。
「R.O.Oでは多少は頑張ってきたのです――こちらがうまくいかないのは、ちょっぴり嫌と言いますか。見過ごすという訳にもいきませんよ!」
「貴女のお陰で『彼』の顔をやっと知ることができたわ。
 あの時は死にかけていて記憶が朧だったし――本人に言うのははしたなくて出来なかったし……
 だからこれはそのお礼、刀を執る理由には十分でしょう?」
 マザーにそう言った小夜にすずなの顔が引きつった。
 されど、明鏡止水。迷いはさっき捨てたのだ。
「――ですので! 不肖すずな、この大一番でこの一刀、存分に振るわせて頂きましょう!」
「R.O.Oはとても楽しく遊ばせて貰ったわ。……だから、これはそのお礼よ!」
 すずなと小夜。
 それは連携と定めた動きでも無かったし、事前に打ち合わせた訳でもない。仕掛けのタイミングが重なったのも偶然。
『謂わば最良なる個の競演は、或る意味で連携よりも連携らしく機能美を見せつけた』。
「出遅れた気がしたがそんな事はなかったぞ!!
 妾達はまだ死んでおらんし、手も足も動く――少なくとも攻撃が届く場所には依然として居るのじゃ!
 黒狼の牙が届くまで……何度でもやろうではないか。この炎がマザーをファイヤーするまで……
 この場に全員黒狼が揃った時をこの戦いの終焉にしてやろうぞ! そこまで皆、手を緩めるでないぞ!」
 仲間に、そして自分に言い聞かせるように言った『焔雀護』アカツキ・アマギ(p3p008034)の声に、奮戦に勢いが増す。
「育児が疲れるってのは『分かる』――って、言えた義理でもねぇが」
 近接してマザーに張り付く。『タイマン』で粘るのは『空の王』カイト・シャルラハ(p3p000684)の真骨頂だった。
 実力差は甚大だが、すぐに落とされるようではその名が廃るというものだ!
「親が子を思うように、子も親を思うんだぜ? たまには子供に頼ってみろよ、な! R.O.Oなら俺だって子供だぜ!」
 カイトはマザーに迫り続け、攻撃をかき集める。
「可能性がゼロじゃないのなら十分だ。
 聞こえてるんだろうマザー。あんたを救いたいという声はここに集っている!
 少しばかりの運命なら俺達がひっくり返してやるさ、だから――とっとと目を覚ませ!!
『家族』が待ってるんだろうが!!!」
 皮肉な事に『助ける為には壊すしか無い』。
 そしてそれしか出来ないと嘯く『黒き狂雷』クロバ・フユツキ(p3p000145)の斬撃が黒雷の如く少女の影を灼いていた。
 ……それでも、だ。
「この戦いは、支え、救う為の戦うは――
 終わりがない持久走……承知してはおりましたが、これほどまでに熾烈とは……!」
『罪のアントニウム』クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)の美貌が苦慮に歪む程に敵の攻撃も熾烈であった。
 一瞬でも気を抜けば。判断を誤れば――足元の奈落に吸い込まれてしまいそう、そんな恐怖はもうずっと彼女を苛み続けていた。
(……いえ、でも違う。私は迷うな――
 皆が自分を信じている。皆が仲間の勝利を信じている。
 ならば私も信じましょう。信じない訳にはいかない。全ての力を捧げましょう――)

 ――皆の願いが、祈りが。一つに撚集まり牙となる。明日を勝ち取るための、鈍く光る牙に!

 今日の勝利の女神がどれだけに優柔不断で性質が悪かったとしても、だ!
『セフィロトの揺り籠』を舞台にした決戦は誰の想いをも飲み込んで、未だ尚、趨勢を決めかねていた。
 勢いを取り戻したイレギュラーズは持てる戦力の全てを振り絞り、細い勝ち筋を見失わんと奮戦している状況だ。
「……この大量の自律兵器、どこかの『出口』から出てきてる訳ですよね?
 その出口を破壊してしまえば、兵器そのものを相手取るよりもよっぽど手っ取り早いのではないでしょうか……?」
「名案なのでして!」
『自然を想う心』エルシア・クレンオータ(p3p008209)や『にじいろ一番星』ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)、【魔砲】を組んだ二人組もパターンを見つけ『蛇口』を閉じようと奮闘しているが、一方でこれに抗するマザー側も徐々にイレギュラーズの勢いに慣れ、対応を始めている情勢だった。
「強いし痛いけど、罪悪感なく全力で殴れるのは良いよね。
 君たち邪魔だよ。それじゃあ――いい加減に黙れ。黙ってくれ!」
『文具屋』古木・文(p3p001262)が砲撃を受け止め、その威力を跳ね返す。
 エルシア、ルシアの光線が空気を焦がし、心なき防衛者達を纏めて貫いた。
「当たりましたよ!」
「ルシアの破式魔砲もぶち壊す事には自信あるのでして!」
 それは互いに譲らない引き合いであった。
 些細な事が状況をガラリと変え得る。元々は勝ち目の無かった戦いはそうして姿を変えてきたものだ。
 現時点をもってしても薄く明滅する――遠い星のような光に過ぎなかったが、闇の中にも希望が灯っている限り。イレギュラーズは突き進む。
「クリストさん! 貴方なら『ジェーン・ドゥを殺さずにデータを取得する方法』を知ってるのでは!?」
『真意の選択』隠岐奈 朝顔(p3p008750)の言葉はR.O.Oで同じく佳境を迎える『アリス』――
 即ち、クリストのいう所のクリミナル・カクテルのキャリア、ワクチンの為の『データ』をも救わんとする問いだった。
 道を違えたとて、何かを誤ったとて――イレギュラーズは彼女をも見捨てたくはなかった。救いたかった。
 喩え、彼女がそれを望んで居なかったとしても――

 ――ひょっとしたら時間を掛ければどうにかなるかもね、朝顔chang。
   でもね、俺様changが大事なのは君達でもアリスchangでもないの。クラリスchangなのよ。
   両天秤にかける時間もないし、迷う時間はもっとない。

 何が救われ、何が救われないか。或いは何を選び取り、何を失うか。
 思惑は山とあり、この『共闘』さえ呉越同舟の色合いを帯びない訳ではない――
 クリストの回答は殊の外、真剣なものだった。

 ――俺様だってあの子の事は嫌いじゃない。
   クラリスchangを助けようとした仲間だし……
   だけどね、朝顔chang。アリスchangは自分で選んで『ああ』してるんだぜ。
   言っとくけどね、俺様が唆したんじゃないよ。クリミナル・カクテルはあの子自身のオーダーだ。
   俺様は君達の『奇跡』でショージキぐらついちゃったけど……
   あの子の『人生』ってあの子のモンでしょ? そうしたら『選ぶ』のだって、やっぱ戦いの内じゃない?

「こうしてる間にもBehemothとあの子のデータは集まってる。ワクチンは完成に近付いてる」とクリスト。
 それは恐らくアリスの望みと真っ向から反している。彼女は救われる事も望んでいないし、クリストのワクチンも信じては居ない。
 唯、自分の存在とその手段のみで、愛しい母を救う事のみを信仰しているのだから。
 ただ何れにせよだ。R.O.Oで進むBehemoth、そしてアリスとの戦い。
 同時に進行するセフィロト外郭での戦いも含め、事態がいよいよ正念場を迎えようとしているのは明白だ。
「……っ……!」
 朝顔は唇を噛む他ない。

 ――まーたカワイコchangをいじめちゃったYO

 何処か退屈そうな、不本意そうな声だった。
 はぐらさず答えを寄越したのはクリストなりの誠意なのかも知れなかった。
『終局(さいご)』は近付いている。確実に少しずつ。
 その姿が『祈り』の求めた終焉か、『懺悔』の求める希望かだけが分からない!

成否

失敗

状態異常
グレイシア=オルトバーン(p3p000111)[重傷]
知識の蒐集者
クロバ・フユツキ(p3p000145)[重傷]
真実穿つ銀弾
シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)[重傷]
優しき咆哮
クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)[重傷]
安寧を願う者
ラダ・ジグリ(p3p000271)[重傷]
天穿つ
カイト・シャルラハ(p3p000684)[重傷]
太陽の翼
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)[重傷]
矜持の星
古木・文(p3p001262)[重傷]
結切
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)[重傷]
祈りの先
アルテミア・フィルティス(p3p001981)[重傷]
銀焔の乙女
黎明院・ゼフィラ(p3p002101)[重傷]
夜明け前の風
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)[重傷]
陰陽式
すずな(p3p005307)[重傷]
忠犬
アイラ・ディアグレイス(p3p006523)[重傷]
生命の蝶
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)[重傷]
奈落の虹
白薊 小夜(p3p006668)[重傷]
盲御前
日車・迅(p3p007500)[重傷]
疾風迅狼
ベルフラウ・ヴァン・ローゼンイスタフ(p3p007867)[重傷]
北辰連合派
ロロン・ラプス(p3p007992)[重傷]
頂点捕食者
アカツキ・アマギ(p3p008034)[重傷]
焔雀護
エルシア・クレンオータ(p3p008209)[重傷]
自然を想う心
天目 錬(p3p008364)[重傷]
陰陽鍛冶師
ヴェルグリーズ(p3p008566)[重傷]
桜舞の暉剣
グリーフ・ロス(p3p008615)[重傷]
紅矢の守護者
オニキス・ハート(p3p008639)[重傷]
八十八式重火砲型機動魔法少女
蓮杖 綾姫(p3p008658)[重傷]
厄斬奉演
ブライアン・ブレイズ(p3p009563)[重傷]
鬼火憑き
ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)[重傷]
ラド・バウA級闘士
ウルファ=ハウラ(p3p009914)[重傷]
砂礫の風狼

第3章 第4節

ドラマ・ゲツク(p3p000172)
蒼剣の弟子
セララ(p3p000273)
魔法騎士
レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
祝呪反魂
ウェール=ナイトボート(p3p000561)
永炎勇狼
コラバポス 夏子(p3p000808)
八百屋の息子
マルク・シリング(p3p001309)
浮遊島の大使
アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)
剣の麗姫
リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)
紅炎の勇者
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
リア・クォーツ(p3p004937)
願いの先
新道 風牙(p3p005012)
よをつむぐもの
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
フラン・ヴィラネル(p3p006816)
ノームの愛娘
ルカ・ガンビーノ(p3p007268)
竜撃
恋屍・愛無(p3p007296)
獏馬の夜妖憑き
伊達 千尋(p3p007569)
Go To HeLL!
ゼファー(p3p007625)
魔女
アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)
Le Chasseur.
タイム(p3p007854)
この手を貴女に
リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)
黒狼の従者
黒影 鬼灯(p3p007949)
ふたたび歩み出す
バルガル・ミフィスト(p3p007978)
酔狂者
リンディス=クァドラータ(p3p007979)
夜咲紡ぎ
小金井・正純(p3p008000)
燻る微熱
ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)
導きの戦乙女
シルキィ(p3p008115)
繋ぐ者
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
黒き葬牙
楊枝 茄子子(p3p008356)
羽衣教会会長
カイン・レジスト(p3p008357)
数多異世界の冒険者
ハンス・キングスレー(p3p008418)
運命射手
しにゃこ(p3p008456)
可愛いもの好き
ラムダ・アイリス(p3p008609)
咎人狩り
笹木 花丸(p3p008689)
竜交
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
Я・E・D(p3p009532)
赤い頭巾の魔砲狼
ヴィリス(p3p009671)
黒靴のバレリーヌ
國定 天川(p3p010201)
求道の復讐者

●十二月のフィナーレ
(あーくっそ、色んな所が痛え――)
 帰って今すぐベッドで布団といちゃいちゃしたい――
 何ならここに来た事自体を無かった事に出来たら最良だ。
(――まともに身体動かねぇし、息苦しいし。良くもここまで戦ってきたもんだ)
 我ながら呆れる程であったし、『Go To HeLL!』伊達 千尋(p3p007569)の本音は偽りなく『割に合わない』だ。
 しかし、それでも――
「でもよ、ベーやんやフランちゃん、帰って来るんだろ?
 そんじゃ俺ももうひと踏ん張りしねえと『遅えんだよバーカ』って――
 ――そういう、恰好がつかねえよなァ!」
 ――マザーに挑みかかる千尋の闘志はまるで衰えてはいなかった。
 かの絶望の海で相対したアルバニアは『こんなもの』だったか。
 答えは否である。実際の所がどうあれ、彼の中に刻み付いた潮風の記憶はどんな苦境でも塗り変わらない絶対的な経験だった。
「――あちらが、届いたから繋がった」
「ベネディクトさんにルカさん、皆……
 向こうが無事にやり遂げたから、クリストが『居る』」
『夜咲紡ぎ』リンディス=クァドラータ(p3p007979)の言葉にその美貌に凛とした意志を乗せた『紅炎の勇者』リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)が応じた。
「後はこちらの私たちが繋ぐのみ。マザー。繋がる希望が届きますよう。
 旗を見失い、爪も折れ、往くべき標すら見失ったとしても――歩き続けて、導き翔び続けた翼があります。
 プログラムだからこそ、私たちを――<"TRUE"として>(信じて)欲しい。
 例えこの身がどうなろうとも――きっと皆さんを守り抜きますから!」
 リースリットを飲み込みかけた力場を身を挺したリンディスが代わりに受けた。
「……っ……!」
「ああ、こんなに可能性に溢れた頁…もっと、もっと先を読みたくなるじゃないですか――」
 目を見開いたリースリットの目前で血の線を引いたリンディスが崩れ落ちた。威力の余波に上等な金糸を思わせる髪が靡いている。
「……それでも、止まれない……ッ!」
 庇われた彼女とて、これまでにどれ程の攻撃を受けたのか抜けるような白い肌さえ煤け、傷だらけになっていた。
「貴方を信じましょう、クリスト――暫しお待ちを。マザー・クラリス。
 どれ程に険しくとも、必ず――貴女に届かせてみせます!」
「また惚れちゃいそう」とおどけたクリストに関わらず、の剣も流麗に――そして彼女には些か似合わぬ――苛烈な戦いを続けていた。
「我ら【黒狼】の成すべきことは、今までと何ら変わりない!
 持てる力の全てを――ありったけを、マザーにぶつける! それだけだ!」
 自らも苛烈に攻めながらマルク・シリング(p3p001309)は軍師であり、統括補佐の立場を捨てない。
「その一歩を退くな。一センチでも前に行け。倒れるなら――倒れても。
 ただ真っ直ぐに、全てをここに置いていけ。誰もの全身全霊を――!」
【黒狼】達は、イレギュラーズは奮戦し、追い込まれながらも戦線を維持し続けていた。
「お母様が、子供を思って。子供も、お母様を守りたくて。妹を救いたい兄がいて……
 ああ、家族なんてあったかいもの――思い出しちゃうシーンだわ」
 彼女を良く知る者ならば、思わず独白めいた『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)の言葉に揺蕩う憧憬に似た何かに気付かない事は無かっただろう。
「やれ、随分と暖かいエールですこと」
「戦いも終盤、という訳ですか」
「……聞こえてるのかしら、あの『お母さん』」
 冷静に言った『未来を願う』小金井・正純(p3p008000)に肩を竦めた『律の風』ゼファー(p3p007625)の声色は皮肉と、裏腹の羨望のようなものを滲ませていた。
「見えている――いえ、見ているのかしら。
 貴女と言う大樹が蒔いた種が芽吹いて、花開いた姿を。
 愛し、育んできた貴女を救わんと立ち向かう姿を」
「これって感傷的だわ」と苦笑したゼファーの槍がマザーのワイヤーを金属音と共に弾き上げた。
「Hades、いえクリストからの頼みだと言うのが癪ですが、ええ。
 救うことを諦めて気取った口調で格好つけてたゲーム内よりはまだ好感が持てます。
 ……貴方は、諦めを棄てられて良かったですよ」

 ――俺様は正純changも割かしアツいと思ってるけどね。キミが知らない顔をしてるだけで。

 肩を竦めた正純は「そうだろうか」と自問した。
 その後、「そうかも知れない」と思い「そうであったら」と願った。
 破式魔砲が薙ぎ払う。

 ――ほら、ね。

「良く言います」
 クリストの小細工か、その威力は何時もより随分と高まっていた。
 熱を込めて戦う誰かと同じに出来たかは知れなかったが――正純とて『これを』諦めていないのは同じだった。
「露払いはおしまい! クリストさん(しったかおをするおとこ)と共闘は非常に不本意ですけど!
 イイ女は過去を水に流して、しみったれた殿方の背中を叩くものなのよ!」

 ――レオン君(そういうおとこ)、結構好きでしょーが???

 思わずむせたアーリアはさて置いて、ギリギリの戦いは続き【淑女】達もお化粧直しが必要な頃である。
「最後くらいはメインを張らせてもらおうかしら?
 イイ女はタイミングを逃さないもの――この長かった舞台のフィナーレを飾りましょう。
 行くわよ、マザー。一緒にカーテンコールをしましょうか」
『黒靴のバレリーヌ』ヴィリス(p3p009671)のステップが冷たく堅い床を蹴る。
 麗しく、鮮烈で――情熱的な蹴撃はまるで舞踏を思わせた。
「悲しいお話は物語の中だけで十分よ。だから私たちはハッピーエンドを掴み取るの!
 さぁ、帰って来なさい。マザー! 」
 全ての尽力。マザーへの集中攻撃は確かに彼女のリソースを奪い続けている。
「……助けるよぉ、絶対に。
 助けたい理由がある。助けなきゃならない理由がある。
 練達を支えてくれた恩を返す為に。練達を救う為に――そういう時って、わたし達! 負けた事無いんだよぉ!」
『繋ぐ者』シルキィ(p3p008115)の 魔光閃雷糸は雷撃の網のようにマザーを攻める。
「どんなに怖くても――それでも、わたしは!」
「大海に投げ入れられた、小石の如く――わたしの力はそんなものなのかもしれません。
 でも、喩え、非力の身であろうとも。此の身を焦がす熱が、わたしの指を焼き切ろうとも構わない――
 此の戦いには、其れ以上の価値がある筈なのですから!」
『舞台』を譲れぬのは『plastic』アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)もまた同じだった。
「宵闇を駆けよ、赫を切り裂け、楔と鎖を断ち切り、やがて解放の空へ手を伸ばせ!
 屹度。貴女には、笑顔の方がお似合いです。
 此れは屹度、望まれた戦い。其の声を届ける為に――わたしは、わたしの出来ることを !」
 クリストのオーダーに対してイレギュラーズは正解を叩き出し、彼のプランの確かな助けになっていた。
 それでも――余りに長く続いた完全なる消耗戦はイレギュラーズにとっての『ピーク』を超えつつある。
『セフィロトの揺り籠』の歓待は戦闘が始まって以来、加速する事こそあれ、そのペースを緩めていない。
 それは所詮は限定的な、条件的な、そして擬似的な。言葉遊びの先、便宜上の『無限』に過ぎなかろう。
 機兵が無限の再生産能力を誇るといっても、それがマザーの処理能力、及びセフィロト全体の機能の延長線上に存在するならば理論上、『何れは』限界を迎えると考えるべきである。
 しかしながら『セフィロトの限界』を人の身で待つには些か無理があるのは明白であった。少なくともこの戦いにおいては受けたダメージを補修し続けるマザーにしても、次々と再生産される機兵にしても。『本質的な意味でそれは擬似的な無限でしかなく、有限であったとしても』その底を確認する事が出来ないのなら持久戦の先に期待出来るものは何一つ無い。
 援軍の見込めない籠城戦、持久戦は唯破滅の時を遅延させる意味しかない。
 捨て石になる事で浮かばれる使命も時にあろうが、『イレギュラーズは他にアテも救いもない本隊である』。
 ならば、この状況は袋小路と呼ぶ他無かったに違いない。

 ――だが、それは。『援軍にアテ等無かったなら』だ!

「ようやく主役所の登場ですか」
 飄々と言った『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)の言葉は手厳しい。
 だが同時に、彼には珍しく酷く素直な調子でもあった。
「まったく、重役出勤にも程がある。
 取るものも取らず恐縮ですが、働いて貰いますよ――ええ、大丈夫。貴方たち帰還組の仕事は、ちゃんと残してありますから」
 その時、明確に【黒狼】は沸いていた。
「クライマックスには間に合ったみてぇだな」
 何時も頼もしい真っ直ぐで強い『竜撃』ルカ・ガンビーノ(p3p007268)、
「随分と戻るのが遅れてしまったが――
 完璧に状況を把握している訳では無いが、為すべき事は解っている」
 長い間任せて済まなかった──特異運命座標が一人、ベネディクト=レベンディス=マナガルム、これより参陣する!」
 こんな時誰より絵になる頭領、『黒狼の勇者』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)、
「それでは最後の戦いに向かいましょうか。お供致します。御主人様(ベネディクト)」
 そんな彼に影のように付き従う者。折れぬ曲がらぬ『黒狼の従者』リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)、
「俺ぁアレよ。後ろ足でかける、砂の役。出遅れたのはいっそ良かったかも……な!」
 こんな時でも相変わらず惚けた調子を変えない何時もの『八百屋の息子』コラバポス 夏子(p3p000808)、
「うん――色々あるけど……今はただ、ただいま!」
 そして、その健気で幼気な顔に決意と希望を灯した『緑の治癒士』フラン・ヴィラネル(p3p006816)の声を聞いた時――戦場は今日、最高の風を受けていた!
「此処はもうゲームの中じゃない。死んでやり直しなんて甘い世界じゃない。
 でも、だからこそ! 絶対に守りたいの!  『やり直せないから譲れない』の!」
「――駆け抜けろ黒狼! 牙も爪も立てに往け!」
 フランが仲間達を激励し、枯れんばかりに声を張った夏子の気合が攻め手と共に迸る。
 無事なのは分かっていた。クリストより帰還が告げられても居た。しかしながらいざ参陣した彼等の何と頼もしい事か。何と、力強い事か――
「――帰って来たんだね、もっと、もっと大きな可能性を連れて。
 クリストさんにはちょっと沢山言いたい事もあるけど――こうなったら、今はマザーを……クラリスさんを全力で救い出す。それだけっ!」
 想いに寄り添い、願いに殉じる――『人為遂行』笹木 花丸(p3p008689)は不可能なる一線を踏み越えるべく間合いを走る。
「はー、やっと皆さん帰ってきましたか! マジ色々大変だったんですからね、ぷんぷん!
 ちゃんとサボってた分働いて貰いますからね!
 よっしゃ! 全員帰ってきたら10×10でもう戦力1000倍になったも同然です!
 いけますよ! 全然! もうゴリゴリ攻めて行きましょう! 」
『可愛いもの好き』しにゃこ(p3p008456)は全身に絡みつく疲労さえ吹き飛んだ気がしていた。
「黒狼隊は不明者が帰還してようやっと本領発揮ってわけか。
 ああ――こりゃあ……ちょっとばかり良い所を見せとかねぇとな」
 ニヒルに口元を歪めた『疲れ果てた復讐者』國定 天川(p3p010201)の両なる小太刀が烈風のような回転力を見せつける。
「……は、はは」
 同じく満身創痍だったのが嘘のよう。
「何だよ、こんなタイミングで登場とか、美味しいとこ持ってく気か?
 ……ったく、この寝ぼすけども! まあ別に、心配とか全然してなかったけどな! 帰ってこないわけがないんだ、オレの仲間たちがよ!」
『疵と憧憬』新道 風牙(p3p005012)は殆ど感極まる気分で笑いを零し、いよいよその勢いを強めていた。
「もう負ける気が微塵もしねえ!
 オレは新道風牙! 『黒狼』の牙の一つ! 今、滅びの種を食い破るッ!!!」
「黒き狼の凱旋か。さて……たしか解毒率は一桁だったか?」
 そんな光景に口元を綻ばせた『零れぬ希望』黒影 鬼灯(p3p007949)は改めてクリストに問う。
「彼等が君と『イノリ』を破り、彼等が全員無事に帰還する『確率』は何%だった?」

 ――0.001348以下省略%ってトコかな!

「0%でも1%に無理やりしちゃうのがイレギュラーズなのだわ!」
『言わされた』クリストに章姫が声を張った。
「そう。例えそれが0でも結果は変わらないさ。ましてや『一桁も』あるなら十分過ぎる。
 ――さて、全ての演者の為にこの舞台こそ最高に仕上げて見せようじゃないか!」
 望むのは悲劇為らぬ結末だ。
 熱情の風は【黒狼】を一気に駆け抜け、更に可能性の獣達に伝播する。
 否、帰還に沸き立ったのは彼等だけでは無かった。
「……おはよう、リアちゃん」
「おはよう、焔。……へへ、来ちゃったわ。
 おっと、あっちを投げ出してきたわけじゃないからね?」
「知ってる、知ってるよ……!」
『願いの先』リア・クォーツ(p3p004937)に応える『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)の大きな瞳が僅かばかり潤んでいた。
 R.O.Oに囚われた仲間を、親友(リア)を助ける為に焔はここまで頑張ってきた。身体はもうボロボロだったが、それももうどうでもいい事だった。
「……リアちゃん……!」
「ああ、やりにくい! 感動の再会は後で――その、付き合うわ。
 ありがとう、焔。大丈夫、あたしと貴女なら出来ない事は無いわ!」
「うん! リアちゃんと一緒なら、どんな状況だって負ける気はしないよ!
 行こう! クラリスちゃんを元通りにして、皆で笑えるハッピーエンドにするために!」
 純粋な好意を余りにも真っ直ぐに向けられてリアは少し照れ臭かった。
 だが、否が応にも【双焔】の気持ちは漲る。最後に挑む気分は最高潮だ。
「状況は、いまいち要領を得んな。目が覚めたら寝ていた場所も変わってたし。
 でも、これは練達への『貸し』になるかな。なら、精々貸しを増やしておこう。離反したぱらすちくんの事もあるしな――」
 新たに加わった『獏馬の夜妖憑き』恋屍・愛無(p3p007296)の横合いからの一撃がダミーマザーを食い止めていた【騎兵隊】の助けとなり『彼女』を大きく破損させた。
「病み上がりに全く無茶ぶりだけども……
 僕も彼女を、練達をあの世界を御釈迦にさせる訳には行かないからね。
 重役出勤だけど悪く思わないでね!」
『数多異世界の冒険者』カイン・レジスト(p3p008357)が己の極地――可能性を纏い、強烈な一撃で砲台(きょうい)を撃ち抜く。
「いやはや。向こうで死にまくったと思えば、此処でも死線を潜らないといけないとは我ながら酔狂です。
 ……しかし、それはそれとして、やれる事はやり遂げますかねぇ」
「人の首も機械の線も斬るにはそう大して変わりないでしょう? 」と『影に潜む切っ先』バルガル・ミフィスト(p3p007978)が同じく砲台(きけん)を潰していた。
「機械兵程度にいくら群がられようが、原罪に睨まれ続けられるプレッシャーに比べたらどうってことないわね!」
『フロントライン・エレガンス』アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)の啖呵に【淑女】達が口笛を吹いた。
 何時か打ち倒さねばならぬもの――『イノリ』に長く相対し、健闘した一人であるアンナにとって『雑魚』の邪魔等ぬるま湯のようなもの。
「ありがとうマザー、R.O.Oを作ってくれて。
 妹は貴方の世界で誰よりも頑張ったよ。
 だから『おにーちゃん』としては妹を泣かせるわけにはいかないんだ」
 やり切る理由は売る程あった。
「クリストさん。マザーの身体で壊して良い部分は何処?
 少しでも『可能性』を上げる為に――判るならその正確な位置を教えて!」

 ――言って伝わるモンじゃないでしょ、Я・E・Dchang!
   手加減出来るクラリスchangじゃねーぜ。いいから本気で思い切りぶっ放しなよ!
   俺様がちゃーんと『当てて』やるからYO!

「――上等!」
『赤い頭巾の断罪狼』Я・E・D(p3p009532)の想いも今燃え滾る。
「会長脱出! ㅤこっからが本番! はいはいリハビリは飛ばしていくよ!
 気軽に死ねない……からなんだよ! R.O.Oで私は『命の張り方』を覚えたぞ!」
「クリストくん、ちゃんと援護して!」と水を向けた『羽衣教会会長』楊枝 茄子子(p3p008356)が気合を入れた。
「練達が無くなったら私が困るんだよ!ㅤ
 私は世界で一番のいい子になるんだ! これまでの私の全部――台無しにさせてたまるか!!!」
「ふふ、ログアウト不可状態からボク復活! 間に合ったからには――微力で大きい援軍だよ♪
 奇跡レベルでも目途は立ったなら、あとは掴み取るだけ。皆に苦労を掛けてしまった分、ボクも全力をもって征かせて貰う」
 茄子子に連なるように動いた『咎人狩り』ラムダ・アイリス(p3p008609)の渾身の援護が仲間達を立て直す。
「クリストと共闘、と言うのは少し不思議な感覚ですが……良いでしょう。
『実際、むしゃくしゃしていた所ですから』。世界を救う、延長戦です! ここから巻き返して行きますよ!」
 久方振りの『肉体』には少し慣れず、しかしながら『向こう』に引っ張られた『無茶』な動きは今は力になる。
(レオン君みたいに。今出来るコトを、確実に――!)
 間近に見たばかりの『師匠(すきなひと)』の姿を脳裏に描いた『蒼剣の弟子』ドラマ・ゲツク(p3p000172)然り、
「マザー! 俺、ネクストで息子ができたんだ!
 あの子を、あの子が生きられる世界を、あの子に色んな事を教える為に守りたい!
 向こう側に行くなマザー! 孫の顔を見てくれよ……!
 ――戻らなきゃみんな泣いちゃうだろうが!」
『永炎勇狼』ウェール=ナイトボート(p3p000561)然り。
 遅参した仲間達の到着は、イレギュラーズがやり遂げた事の大きさと希望の存在を告げている。
『誰が為に鐘は鳴り、我が為に鐘は鳴った』。
 マザーの繰り出す猛攻はイレギュラーズを傷付けた。
『セフィロト』の防備はこれに耐え忍ぶイレギュラーズの最後の我慢を削り取ろうとするものだ。
 だが。
「目は薄い? いいや、それでも手繰り寄せる! 成功させる!」
 気を吐いた『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)は重傷さえ押してマザーに肉薄を続けていた。
「頼むよ、クリストさん! ゲイムの一プレイヤーとして……割と信用してるから」
「クリスト! 患者(クラリス)は何処だ。案内しろ――なんてな」
 性急な砂時計が時を刻み、『蒼の楔』レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)の憤怒は、復讐は今、癒やし救う為にその力を発揮する。
「……ま、此所で医者としての仕事が出来るとはなァ。お前の妹は絶対に助ける。ワクチン、頼んだぜ!」

 ――責任重大じゃん!

「そうだ、『責任重大』だ!」
 吹き荒れる風、燃え盛る焔が『導きの戦乙女』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)の求めに応じてマザーを食い止める。
「私はこの国に消えてほしくはない。
 煌びやかに移ろいゆくこの国は他にはない輝きがある――
 シャイネンナハトがすぐそこなら――母にはもう一度平穏を贈りたい。精々、兄妹仲良く過ごすがいい!」
「……………」
 表情を僅かばかり動かしたマザーの反撃にブレンダの美貌が歪んだ。
 実力差は絶大、されど血を流し、血を吐いたブレンダはそのフロントを譲らない!
「――クリスト! 『なんでもしてやるから妹のために私へ手を貸せ!』」

 ――はいよ、了解! もう一丁、『何でもする』が入りました!

 全周から降り注いだ致命のワイヤーがブレンダの手前で撃墜された。「いってぇええええ!」と声を上げたクリストが「早く早く!」とイレギュラーズを急かしていた。
 今の一撃は確かに大きく重かった。粘りを見せたブレンダを『排除』する為の攻撃――クリストによるその『不発』は鉄壁の彼女が見せた漸くの隙である。

 ――ワクワクチンチン、漸くいい感じにGet♪ だZE!
   最後までキレーな君のFlower、バッチリクッキリ受け取っちゃったぜ、アリスchang!

 クリストの言葉はまさに『この瞬間が勝負』だと告げていた。
 解毒率を1%でも大きくする為にこれまで戦いを続けてきたのだ。『今』この瞬間の確率を再計算する事は恐らくマザーやクリストにさえ出来まい。
 運命の賽は投げられていた。神のみぞ知る未来に追いすがり、イレギュラーズはこの戦い最大最後の賭けに出る!
 総攻撃がマザーの防備を強か叩く。出し尽くす攻勢に彼女がやや後退する。
 但し長くは保たない。これは本当に『出し尽くす』猛攻に他ならない。
「声を――」
「……?」
「――声を届けられない?」
 マザーに声を。錬達の声を。彼女を案じる全ての者の心からの愛を。
『魔法騎士』セララ(p3p000273)の問いにマッドハッターと操が首を振った。
「端末をやられてる」
「残念ながら品切れだ。余力があれば良かったんだけどね――」
『心』を持たない筈の機械の母の『心』に縋らんとするのは或いはナンセンスだったかも知れない。

 ――キミはこんなにも想われてる。愛されている。皆が待ってるんだ!
   だからお願い。反転なんかに負けないで。戻ってきて! 皆のお母さん!

 繰り返された言葉だ。山のように伝えてきた想いだ。
 それが、真実が『この場』だけで不足なら『もっと』伝えてやればいい。
 変わるかも知れない。このセフィロト全てから吸い上げて、彼女に届けられたとするならば!
 不思議とセララのみならず、塔主達さえ――求めを疑問に思わなかった。
 マザーの一撃を雷切で弾いたカスパールが「何とかならぬか!」と声を張る。

 ――俺様余裕Nothing! ワクチン、外したら全部おじゃんだ。そっちでやって頂戴な!

 不可能か――否。
「どうする」の問いの答えは実に唐突に、実に簡単に訪れた。

 ――仕方ない。本当に益体もない。

 実体はなく、響いた声には聞き覚えがあった。
 不可能を可能にする、事も無くやってのける鬼札はもう一枚だけ存在していた。
 それを絶対に使えないだけで――きっと何処にでもあったのだ!
「やっとその気になってくれたのね! 本当に世話の焼ける人達!
 ……でも、でも。ありがとう!」
『揺れずの聖域』タイム(p3p007854)の言葉はクリストと『もう一人』に向いていた。

 ――小生自身、この不合理と不条理と……己の人の良さに辟易するがね。
   請け負ってやろうではないか、この一事だけ。
  『クラリスとクリストが揃ってそれを望んだなら』。
   そして貴様等凡百共がこのゲイムをこれ程までに『クリア』したなら。
   きっとこれはそういう話なのだ。
   ……後見人としてはその位はしてやるのが正解なのだろう?

 言葉と共に『セフィロト中』から『マザーに伝えるべき』が集められた。
 それは声であり、言葉であり、思いの丈である。集まったそれは不思議な感覚。不定形であり、指向性を持たない――確かな奇跡に違いなかった。
「遅いのよ!」
 リアが表情を緩めていた。
「家族が分かたれるなんて事、絶対にあってはいけないんだから!
 保護者の癖にほっといたアンタは後でお説教――だけど、褒めてもあげる!
 美味しいお弁当持っていってあげるからね!」

 ――絶対に来るな! 後は知らん。好きにしたまえ!

 面倒見の悪い保護者は『それ以上』手を貸す心算は無いようだった。
 力はもたらされた。されど輪郭を持たないその奇跡を撃ち出すには射手が要る。
「――やってやるさ」
 要るからこそ、イレギュラーズには『当主代行』ハンス・キングスレー(p3p008418)が『残っていた』。
(だって、こんな終わりはマジで無い。
 上に善かれで押し付けられるの、勝手すぎて腹が立つよね――嗚呼。よりにもよって己と重ねた、とか。
 事ここに至って、何て平凡な理由だろう!)
 この結末が己の肩に掛かるなら、それは意気だ。
 ベネディクトの代行は役者以上――だがこの代行だけはやり切って見せる。
(彼らを率いた、僕。
 この国が嫌いじゃない、気持ち。
 全部を伝えるんだ。その為に、ここまで駆けて来たんだ。
 赤く染まった装置じゃない。偉大な、報われるべき揺り籠の主。
 その大役の献身に応える為に。僕は使い方も知らない『奇跡』を今、撃ち出す――)
 ハンスの持ち得る運命が、可能性が青く青く燃えていた。
 降り注いだ『神の恩寵』は余りに重い。
 過大な情報に生命ごと焼き切られそうになり、よろめいた彼をタイムが支えた。
「これは、わたしの自己満足。それでもハンスさんは最後まで支えるわ」
 手を重ねたタイムにもまた、青い炎が燃え移る。
「貴方が奮い立たなければ私は一人の部屋で皆を待ち続けてた。
 今皆が、あの分からず屋達だって……この光を掴もうとしてる。
 ねぇ、そんな奇跡って素敵じゃない? 最高だって思わない?
 ――ハンスさん! あなたの想いとわたしも最後まで一緒でありたい!」

『箱庭の母よ、我らが愛を、恕し給え――!』

 ユニゾンする声が猛烈な反動を伴ってシュペルの気まぐれ(デウス・エクス・マキーナ)を撃ち出した。
 それは物理的な威力ではない。神秘的な破壊力ですら無い。唯、マザーの心を撃ち抜ける程度の一撃だった。
「ハンス、頑張ったじゃねえか。後は任せろ……なんて、言えねえな!」
 明らかに動揺したマザーの精度がバラバラになっていた。
 強引に間合いを潰したルカの全身をワイヤーが貫くも、何れも致命傷からは程遠い。
『まるで彼女がそうする事を嫌ったかのように、ルカの進行を止められていない』。
「やれ! クリスト! お前の妹を取り戻せぇッ!!!」
 奇跡は連なり、運命もまた連鎖する。僅かな可能性さえ掴み取るからこそイレギュラーズなら、ルカの一閃はまさしく必然の一撃だったのだろう。

 ――はいよ、石油王! ああ、こんなん見たらレオン君もヤキモチやいちゃうよねぇ!

「――アニキを失う妹も、妹を失うアニキももう見たくねえんだよ!」
 己が生命を激しく延焼させたルカの一撃とクリストの『ワクチン』が同時にマザーに叩き込まれた。
 赤く、赤く、赤く――赤く染まった世界が崩れ落ちる。
『セフィロトの揺り籠』に満ちた敵意はそれで霧散して、へたり込んだマザーは一言呟いた。
「……ほんとうに、ばかな子たち」
 機械の母は涙を流す機能等持っていないのに。
 それはまるで。泣き笑いのような声だった――

成否

成功

状態異常
ドラマ・ゲツク(p3p000172)[重傷]
蒼剣の弟子
セララ(p3p000273)[重傷]
魔法騎士
レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)[重傷]
祝呪反魂
ウェール=ナイトボート(p3p000561)[重傷]
永炎勇狼
コラバポス 夏子(p3p000808)[重傷]
八百屋の息子
マルク・シリング(p3p001309)[重傷]
浮遊島の大使
アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)[重傷]
剣の麗姫
リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)[重傷]
紅炎の勇者
アーリア・スピリッツ(p3p004400)[重傷]
キールで乾杯
炎堂 焔(p3p004727)[重傷]
炎の御子
リア・クォーツ(p3p004937)[重傷]
願いの先
新道 風牙(p3p005012)[重傷]
よをつむぐもの
新田 寛治(p3p005073)[重傷]
ファンドマネージャ
フラン・ヴィラネル(p3p006816)[重傷]
ノームの愛娘
ルカ・ガンビーノ(p3p007268)[重傷]
竜撃
恋屍・愛無(p3p007296)[重傷]
獏馬の夜妖憑き
伊達 千尋(p3p007569)[重傷]
Go To HeLL!
ゼファー(p3p007625)[重傷]
魔女
アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)[重傷]
Le Chasseur.
タイム(p3p007854)[重傷]
この手を貴女に
リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)[重傷]
黒狼の従者
黒影 鬼灯(p3p007949)[重傷]
ふたたび歩み出す
バルガル・ミフィスト(p3p007978)[重傷]
酔狂者
リンディス=クァドラータ(p3p007979)[重傷]
夜咲紡ぎ
小金井・正純(p3p008000)[重傷]
燻る微熱
ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)[重傷]
導きの戦乙女
シルキィ(p3p008115)[重傷]
繋ぐ者
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)[重傷]
黒き葬牙
楊枝 茄子子(p3p008356)[重傷]
羽衣教会会長
カイン・レジスト(p3p008357)[重傷]
数多異世界の冒険者
ハンス・キングスレー(p3p008418)[重傷]
運命射手
しにゃこ(p3p008456)[重傷]
可愛いもの好き
ラムダ・アイリス(p3p008609)[重傷]
咎人狩り
笹木 花丸(p3p008689)[重傷]
竜交
イズマ・トーティス(p3p009471)[重傷]
青き鋼の音色
Я・E・D(p3p009532)[重傷]
赤い頭巾の魔砲狼
ヴィリス(p3p009671)[重傷]
黒靴のバレリーヌ
國定 天川(p3p010201)[重傷]
求道の復讐者

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