シナリオ詳細
<終焉のクロニクル>アドーニスの園にて
完了
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オープニング
●『behemoth』
それは万物を狂わす不吉の象徴。この世に存在してはならぬ狂気の象徴。
跫音は遠離ることはなく。ゆるやかな仕草でそれは立ち上がった。
地を見下ろす窪んだ眼窩には何も嵌まることはなく。暗澹たる闇ばかりが溢れていた。
澄んだ肉体は臓腑の一つも存在して居ないことも物語る。
だが、それはけだものであった。今より大地を食らい尽くすけだもの。
終焉の地(ラスト・ラスト)より至る、厄災の象徴。その名を『終焉獣』ベヒーモス。
醜悪なるは人の心か、それともけだものそのものか。
生まれ落ちたことには意味があるだろうか。空虚なる己の行く先は定まらぬまま、のっそりと脚を動かした。
天を衝くその肉体より溢れ、溢れたのは滅びの気配。
その足下には死を歌う花が咲き乱れ、周囲を溶かし行く。
終わりの時間がやってきた。一度全て屠らねば、アドーニスの園は回帰はせぬ。
――地を、世界を蹂躙し、死を宣告す。
●アドーニスの園にて
死する肉体が大地へと打ち棄てられたならば、その死骸より新しい芽を摘むだろう。
死とは輪廻の巡りそのものである。穢れ狂った世からの離脱し、新たなる楽園を築くが為なのだ。
見よ、世界のあらましを。
争いに満ち溢れ、地は灰燼に塗れたではないか。
ひとの命も、樹木さえも、全て燃え広がれば灰へと化した。風は疾くも全てを攫い行く。
愛しき大地に残された蹂躙の後は、なんと苦しいものであったか。
魔女ファルカウにとっての苦悩は大樹の中より見据えた世界そのものであった。
星々の歌声が地を叩く光景も、さめざめと泣いた空の慟哭が地に決して忘れ得ぬ穴を穿ったことさえも。
鉄帝国に高く聳えた塔はかの男の自尊心そのものか。憂いを抱いた男は自身の居城へ退いたと聞いた。
乾いた風の中に佇んだあの少女は、きっと同じだったのだ。だからと言ってその全てを許容は出来ぬ。
軽やかに笑う男は世界をシステムだと告げたか。0と1でしかなかったならば、人はどうして思考できるか。
霊脈を辿り、瞼を押し上げた神は獣の如く、全てを呑み伏すであろう。ならば、その命を辿り、自らの糧にすることも吝かではあるまい。
魔女は一人、佇んだ。
戦乱に塗れた世界には終焉を。
全てを塗り替える黒いインクは悍ましき死の象徴ではあるが、その中でもただの一つだけの芽が残れば『もう一度』を取り戻せる。
枯れた大地に命を振る舞い、新たなる箱庭を作り上げようではないか。
何度だって試行すればよい。争いのない世界が欲しい。ただ、同胞(いとしご)が穏やかに過ごす日々の中にあればよい。
世界は不出来なパッチワークだ。無数を飲み食らい、人の進歩のように歩みを止めぬこの世界は悍ましい程の悪食だ。
故に、世界は、継ぎ接ぎだらけになったのではないか。
――もう一度、もう一度。
子供をあやすように女は言った。
穏やかな声音は甘ったるいホイップクリームのように、喉に絡みつく。
饒舌であった女の若草色の眸は炎に染まり上げられて、怒りの声音はバタークリームのようにべたりとスポンジケーキに広がったのみだ。
それでも、指先だけは幼い赤子に触れるように穏やかであった。慈しみと悲しみの滲んだ指先がそっと滅びのけだものを撫でる。
――わたくしたちは、罪を背負って生きている。わたくし一人で良いならばすべての咎を背負いましょう。
国を守る為ならば、世界を守る為ならば、殺す事も厭わぬと言うならば、わたくしたちは皆同じでしょう。
争うことが間違いなのです。抗わねば生きて行けぬと言うならば、その様な世界でなくして仕舞えば良いでしょう。
そう願って同胞達と共に過ごした。大樹ファルカウは、ただ、その場に存在して居たが、それだけでは無かった。
愛しい同胞達を守る為に、森を見守ってきた。世界など、己には如何することも出来なかった。
何の力も無いただのおんなであったのだから。
伝承の世界で、おんなが用いた魔法は言の葉のひとつひとつに魔力を編み込ませた精密なものであった。
それこそ、シルクのハンカチーフで包むように柔らかに。羽根の一つを毟り取りテーブルに落とすような軽やかさで。
精密に編み込んだ魔法で作り上げたのは大樹ファルカウという『象徴』の生誕に他ならぬ。
――祝福を。どうか、祝福を。わたくしの祈りと願いは光となって降り注ぐ。
あなたが頂きに立つときに、極光は全てを晒すことでしょう。
わたくしの眠りが目覚めぬ限り、全ての不和は引き受けましょう。
ただ、わたくしが目覚めてしまえば、抱き続けた不和は溢れ落ち、あなたの罪を裁定する事でしょう。
けれど、怖れないで。石となり、岩へと化し、一輪の花へと成り果てようとも。
わたくしは、その種を手に、あらたな場所へと連れて行くことでしょう。
戦乱に溢れたこの世から、死と慟哭に溢れたこの世から、わたくしは全てを攫っていくことでしょう。
ファルカウというおんなは全てを知っている。
見てきた。
見たからこそ、目覚めたくは無かったのだ。
いつかの日、まじないが解けてしまえば、己は世界を恨んでしまう。
どうして起きてしまったのか。目覚めることがなければ同胞達を、世界の全てを愛していられたのに。
目覚めの気配が嘲笑う。
――あなたも、そうだったのでしょう、ベヒーモス?
世界を一度終らせよう。
そうして、もう一度を繰返すのだ。
この世界は戦に溢れすぎた。全てを終らし、『大罪人』の咎を背負うのは一人だけで良い。
そうなる覚悟は疾うに出来てしまっていたのだから。
●
「成程」
豊穣郷よりやってきた『霞帝』は作戦概要を確認してから頷いた。その護衛役たる中務卿と加護を与える神霊は静かに耳を傾けている。
心配そうな顔をするメイメイ・ルー(p3p004460)に建葉・晴明は仕方あるまいと首を振った。にまにまと笑う霞帝に水天宮 妙見子(p3p010644)も拳骨を浴びせたい心地だ。
「帝さんは大丈夫なのだわ?」
「大丈夫だよ、章姫」
それならいいけれどと心配そうに告げる章姫を腕に抱く黒影 鬼灯(p3p007949)は「章殿には心配を掛けないでくれ」と眉を吊り上げる。
「吾が守る。安心するが良い」
「黄龍も無理はしないで」
「ああ、安心せよ。吾は油断はせぬよ」
シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)に穏やかに微笑む黄龍にウォリア(p3p001789)は無理はしてくれるなと言い含めた。
「それで、作戦は此処からか」
静かに告げたは新道 風牙(p3p005012)である。彼女にとってもこの場所は印象深い――美しき夢の都『ネフェルスト』。
この地を拠点としていたが、ラサ傭兵商会連合はこれより、南西へと向かい影の領域に程近い場所から作戦を遂行するという。
「指示は?」
「こっちがやる。テメェらは従え」
鼻先をすんと鳴らしたハウザー・ヤークに「失礼な物言いではダメですよ」と注意するのはイルナス・フィンナその人だ。
何時もならば小金井・正純(p3p008000)やラダ・ジグリ(p3p000271)にヘルプを求めるイヴ・ファルベは「あれって大丈夫かな」と呟いた。
「まあ、大丈夫だろ。奴さん穏健だろうからな」
何気なくそう言うルナ・ファ・ディール(p3p009526)にそれならいいけれどとイヴは呟く。
「それで、そちらは?」
問うたラダにイヴは慌てた様子で手を挙げる。
「あ、あ、クォ・ヴァディスも影の領域での掃討をしてる。覇竜観測所は竜種や亜竜の動向に注意をしてるみたい」と見てきた全て報告した。
「巨大な終焉獣に亜竜達は怯えているわ。暴れ出さないようにフリアノンでも対処を行うことにしているの。
竜種は、協力仰いでいる。出来る限り各所で協力してくれるとは思うのだけれど――」
どうなるかは定かではないと琉珂は告げた。竜種と人間では大きく違いがある。竜種にとって人間などちっぽけな羽虫同然だ。
故に、友誼を結んだと言えども竜の戯れに過ぎぬ可能性はあるのだ。琉珂は「竜種達も、屹度来るはず」と静かに告げる。
劉・紫琳(p3p010462)は「琉珂」と呼び掛けた。
「危険は承知の上、ですね?」
「勿論よ、ずーりん」
にんまりと笑う琉珂に「琉珂様が言うなら仕方ありませんね~?」とヴィルメイズ・サズ・ブロート(p3p010531)は朗らかに笑う。
竜に関連した事柄には経験がないが、竜とは巨大で物語では語られる強大な存在だと霞帝とて知っていた。
「それだけ、危機迫る状態なのだな?」
「そうであろう事は明らか。現状は此処に集まっていますが、何かしらがあれば各地に援軍派遣がもう一度為される可能性もあります。
それに、此処に戻れぬ可能性も。……出来る限り周辺の敵を排除し、あのけだものの動きを止めるべきでしょう」
静かに告げたのはリンツァトルテ・コンフィズリーであった。その腰にはコンフィズリーの聖剣と呼ばれる剣が存在して居る。
「あのけだものって、でっかくん?」
問うたセララ(p3p000273)にリンツァトルテは頷いた。神妙な表情を浮かべたのはサクラ(p3p005004)である。
「でも、巨大すぎない? 称賛は?」
「ある、とは言えない。だが――R.O.Oという観測システムにおいては、このけだものを観測した中で、脚を攻撃し動きを止めさせたらしい」
「なるほど……、幸か不幸か、あのけだものは影の領域を広げているらしい。つまり、イレギュラーズならば太刀打ちできる可能性が広がるね」
リンツァトルテは察しよいサクラに頷いた。
「援軍は周辺の相当とあのけだものの動きを止める手助けをすればよい」
「……! パンドラの加護……!」
イル・フロッタは息を呑んだ。パンドラの加護は、すなわち、此れまでの『可能性』による強大なる力の発露だ。
イレギュラーズの姿も変容するかも知れないが、それならば、勝利の芽がないとは言い切れまい。
「じゃ、凄い力を使って貰えば良いって訳ね? それで、あのデカブツに膝を付かせる。
そうしたら魔女も降りてくるから舞台に引き摺り出して、ボコせばいいってこと。実に簡単だわ」
「カ、カロル」
慌てた様子のイルに『元遂行者』である聖女カロル・ルゥーロルゥーは「私、相棒と聖女として此処に派遣されてきたから」とさらりと告げた。
カロルは我儘を申し入れ本来ならば国から離れられない聖女の立場であっても、救国の為にとこの地にまでやってきた。
カロルに勢い良く肩を掴まれたのは相棒ことスティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)である。
聖女として『相棒の聖女』とこの場で戦ってみせるのだと胸を張る。「面白いですねえ」と微笑む澄原水夜子と、情報を確認しながら練達との連携――R.O.Oシステムでの解析だ――を行なう澄原晴陽は「接敵しなくてはこれ以上の情報は分かりませんね」と呟く。
「晴陽、無理は」
「貴方こそ」
國定 天川(p3p010201)を見上げて笑う晴陽に「姉さん、生き残ったら私、ご褒美が欲しいですね~?」と水夜子は笑う。
「貴女は死んでも死にきれないでしょう」
「ええ、だって、死ぬためのエスコートが多いのですもの」
にこにこと笑う水夜子の視線の先には恋屍・愛無(p3p007296)とミザリィ・メルヒェン(p3p010073)が居た。
「みゃーこ、澄原先生はR.O.Oの情報解析ですか?」
問うたミザリィに水夜子は頷く。自身は出来うる限りの露払いを行なうつもりなのだ。
「なら、さっさと行きましょう」
「カロル、危ないわ」
「行かなくちゃ、あれは歩いてくるわよ。一歩もでかいでしょ」
カロルが指差せばマナセ・セレーナ・ムーンキーは「うぐぐ」と呟いた。確かにそうだ。あれは巨大すぎる。
「え、恐いわよね、どうしよう?」
振り向いたベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)の腕の中でポメ太郎が「無理しないでください」と言った。
「アレクシアがぶん殴るとかどうかな!?」
「マナセ君って私のことそんなに恐ろしい存在だと思っているの?」
「あ、あれくし……うむ……? 何だかアレクシアってパンドラでもアークでもない要素が出てるって聞いた」
「誰から!?」
驚くアレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)に夢見 ルル家(p3p000016)は「まあまあ」と諫めた。
「一先ずキャロちゃんが走り出しちゃいそうなんですが、勇者側から意見はあります?」
「止めないと、カロルは普通に殴りに行くよ。莫迦だから」
「莫迦じゃないですー!」
拗ねるカロルに楊枝 茄子子(p3p008356)は「いや、莫迦だよ」と小さく笑った。
その問に答えたのは赤毛の青年であった。
「……ロックが……いや、イレギュラーズが救ってくれた異界『プーレルジール』の元魔王だったイルドゼギアが、あれが膝を付いたならば一時的に動きを止めるための魔法陣を作ってくれている」
勇者アイオン――彼もプーレルジールの存在であり本物のアイオンではない――は静かに言った。
カロルは「じゃ、私も聖女の加護ってのでイレギュラーズの重傷率を出来る限り下げてやるわ、出来る限りね」とさらりと言ってのける。
「何か、面白いわね。おまえの国は神様が暴走してイレギュラーズに救われて?
おまえの国は、おまえのオジサンが暴れ回ったけれど恐かった竜と和解して?
それで、お前は? 暴れ回った精霊を鎮めたら命を貰ったって?
で、勇者のおまえたちの世界はイレギュラーズに救われた。この私だって、本来死ぬはずだったのにあのお人好しに救われた。
なんか、恩返しみたいなもんじゃない。いいわね、やりましょ。
あいつらみたいなお人好しの為なら、死んでも良い位に戦えるでしょ? ね、魔法使い」
「え、ええ! そうよ。わたしたち、本当なら死んでるはずだったもの。この人達のためなら、戦える。
……いこう! とりあえず『ぶんなぐれば』いいんだものね!」
「そうよ、『ぶんなぐる』わよ!」
話は早いと言いたげな元聖女と『伝承』の魔法使いにアイオンはやれやれと肩を竦めてから「行こうか」とあなたを振り返った。
- <終焉のクロニクル>アドーニスの園にて完了
- GM名夏あかね
- 種別ラリー
- 難易度VERYHARD
- 冒険終了日時2024年04月24日 22時00分
- 章数4章
- 総採用数478人
- 参加費50RC
第1章
第1章 第1節
●
「懐かしいな、でっか君。前に倒したのは3年前か……」
そう呟く『アネモネの花束』ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)は天を崇めるように顔を上げた。
あの時、彼は美しい少女の姿(アバター)でその場に立っていたか。あの場所は非現実だった。何れだけ命を失おうとカウンターが回転し、デスカウントに+1が計上されるだけだった。だからこそ、何の気なしにゲームにコンテニューする要領で挑むことが出来たのだ。
それでも――これは現実だ。
「俺達のパンドラはあのデカブツを前にして削れるばかり、と言いながら『加護』だなんだ準備は出来ているようだが――
ベルナルドの手には絵筆が握られていた。書き心地は滑らかで、本来ならば見ることの出来た春の朗らかな空を望み描くがために動かされたであろうそれは今は魔術式を描く。
「……悪かねぇ。芸術家ってのは清濁なんでも愛して描く。
ただ、新たな作品を描けなくなる未来ばかりはノーセンキューだ。
ジェーン・ドゥの事を差し引いても、先の未来は譲れねぇ。もう一度倒させて貰うぜ!」
愛おしいと声を上げる。まるで小鳥の囀るように。色彩を喪えども、心ばかりは生の躍動を纏わせていた。
その少女の名前に肩がぴくりと動いた。彼女の気配がしたならば耳を欹て我武者羅にも探す『妹』が居る。それが『赤い頭巾の魔砲狼』Я・E・D(p3p009532)の此処に来た理由だった。
「デッカ君かぁ。R.O.Oの時でもルージュが滅茶苦茶苦労してたけど。こっちでも出会うと、本当に大きすぎるね……」
見よ。この巨体を。天衝く姿を。アバドーンとも呼ばれた化身。ベヒーモスと名乗った死の象徴。
あの時にあった悲しみは『姉』とて泡擦れることは出来ない。愛を振り上げた妹の涙だけは胸に渦巻き、濁流とならぬように何とか堰き止めたものだ。
(……それはそれとして、あの時を傍に置いておいたって、こちらでもデッカ君を止めるには命を賭ける必要すらある)
その事を思い出す。けれど、あの経験の全てが無駄だとは思えない。
「あの時のデッカ君の装甲が薄かった場所は『体の内側』、『関節』、『足の甲』だね。
まずは足を止めないとどうにもならないから、集中攻撃で行くよ!!」
地を蹴った。脚だけしか見えないが空を飛べば『泣き所』を叩き付けることは出来るだろう。相手の的がでかければそれだけ攻撃地点が散るのだ。
仲間を巻込まぬように、叩き込む鋭き一撃。続くはベルナルドであった。自らの可能性をも燃やせ、その在り方の如く――気高き蒼穹の翼を広げた神官の姿へと転じる。
もしも鳥籠の主が見たならば翼を手折ってしまうであろうか。いいや、これは鳥籠の聖女の祝福を帯びた聖なる絵筆の描く未来なのだ。
彼女が共にあるならば、それもそれで悪くはない。セオリー通りに脚を狙え。滅びの気配を遠ざけるは『ウォーシャーク』リック・ウィッド(p3p007033)の支援。
空を駆り、有象無象の終焉獣へと放つ神獣の気配。その様子を眺めながらも戦場支援を行なうリックは振り返る。視線がかち合ったのは天義の聖騎士に何やらあれやこれやと指示をするカロル・ルゥーロルゥーであったか。
「天義の騎士達の事はおれっちが支えるぜ! だから、聖女様はおれっちに任せてくれ!
それから、練達の人は何処だろうか? おれっちの『契約者』がコンピューターが得意なんだ。きっと皆の役に立ってくれるはずだ!」
間近で見詰めるベヒーモスの情報をR.O.Oのデータで解析する。つまり『攻撃の蓄積度を目で見えるようにする』の練達の処理機構を使った支援だ。
遠目に行なう澄原 晴陽は「ではお願いします」と声を掛けた。後方に向かうシャノンと別れを告げてリックは本格支援を始めるべく指揮を執る。
周囲には無数の終焉獣が駆け回るのだ。それらが塵芥のように、その肉体から毀れ落ちる。まるで服の裾に絡みついた砂をはたき落すかのような簡単な仕草で滅びの使徒は襲い来るのだ。
「これがベヒーモス、デカいわね……。この依頼1本で大怪獣映画の一つくらいできそうだわね。
シン・ベヒーモスとかベヒーモス・マイナスワンとかどうかしら? あ、冗談よ。真面目に頑張りますー」
ひらり、ひらりと手を振った『狐です』長月・イナリ(p3p008096)はルグドゥースの位置を確認するように周囲を見回した。これではお行儀の良い戦いになどなりはしない。精々が乱戦だ。
「それじゃ、宜しくね?」
振向けば『狐達』が少数のみ存在した。連絡役たる狐達の本陣は他に、此度は緊急時につき負傷者救護を担当してくれるのだ。
イナリの狙いが魔女であることは明らかだ。情報を駆使する相手というのは面白い。実に『気が合いそう』な相手では無いか。
「そこかしら」
終焉獣が邪魔をする。それらを斥ければ魔女にも手が届くであろうか。同じく、終焉獣の群と巨体の影に隠れて居るであろう敵を探すのは『灼けつく太陽』ラダ・ジグリ(p3p000271)であった。
「エトムートを探すよ」
「うん、お願い。ラダはあの人をよく知っているから」
「……まあ」
それも因縁浅からぬ仲になってしまったからだとラダは肩を竦めた。不安げな表情を浮かべるイヴ・ファルベのその傍らには『ただの女』小金井・正純(p3p008000)が立っている。
「ハウザーさんからの指示は、終焉獣が余りにも統率がとれている。司令官を2-3人位此処で狩り取っておきたいそうです。
エトムートの居場所が判断され次第、合流致します。……この状況、中々に渋いですね」
「ああ。結局ROOの時と似たことになったな。それでも一度は倒した相手、経験があるってのは存外心強いものだ。
……それに『準備は入念に』だ。イヴからは物資の調達を願われた商人達が居たとも聞いているよ。何やらプーレルジールの魔王達も用意をしているようだし」
この状況ならば、大将首を取ることも夢ではない。いいや、とラダは首を振った。執らねば世界は滅びるのだけれど。
所詮は虫がちくちくと差す程度に思って居るだろうか。それにしたって、ベヒーモスの動きは緩慢だ。だからこそ、踏まれぬように時を配り敵陣に穴を開いた。
取り逃がしたままでなど居られない。「エトムート」と名を呼べば、何処か遠くで何かが動く気配がする。人間なんてものは追われれば逃げるのだから、分かり易い。
「エトムート、聞こえているのだろう? 何しに来たかは分かってるな? 始めようじゃないか!」
弾丸の音響く。
ハウザーが「始まったか」と呟いた。イヴの緊張した顔を見て正純は「イヴさん」と呼び掛けた。彼女は何時だって、少し怯えた顔をするのだ。
「共にこの難局を乗り切りましょう。大丈夫です、どうやら頼りになる聖女様もいますし、ね」
「聖女様?」
「私、私」
「そうそう。キャロちゃん!」
何故か誇らしげなポーズをとったカロルを囃し立てる『夢見大名』夢見 ルル家(p3p000016)。友人達からそっと視線を逸らして正純が矢を放つ。
「では、イヴさん。魔女も終焉獣も、そしてあの巨大なでっかくん、いえベヒーモスも、実に厄介です。
それに、エトムート。自身の主ではなくこの戦場にいるということはなにかの企みがある可能性もありましょう」
「うん、警戒する」
「ええ、それが大事です」
「あ、無視された!」
騒がしい『ルルコンビ』に「何だァあの女」とぼやいたハウザーへ『駆ける黒影』ルナ・ファ・ディール(p3p009526)は「何時ものことだな」と肩を竦めた。
「あの『聖女サマ』ってンはまあまあ喧しい。ああいう女は嫌いじゃねえが、華と言うより拡声器状態だな」
「違いねえ。で、テメーは何しに来た? ルナ」
煽りに来たんだろうと言いたげなハウザーにルナは唇を吊り上げた。「分かってるじゃねえか、ハウザー」と。旧友に告げる様に声音は軽やかだ。
「運命だ物語だっつーのはどうにもイケメン綺麗所ばっかりとりあげやがる。やれ蒼剣だ赤犬だってな。
んで、化け物対峙はおれらみてぇなのにお鉢がまわってきやがる。そんなら、お望み通り獣くせぇ暴れ方して盛り上げてやろうぜ?
娘に振り回されっぱなしで腑抜けた最近のアンタの指揮がどんなもんか、みせてくれや」
「娘じゃねぇけどな」
「んじゃ、そのついでにだ。アドバイスを聞いとけ。あの聖女だと名乗ってるカロルとあの魔法使いっつー女。
ありゃぁ一緒にしねぇ方がいいと思うぜ。相乗効果で制御不能になるわ」
「……あれを制御出来るとでも?」
イヴよりも胡乱な女である。暴れ回って、飛び出していきそうな暴走機関車だ。どうしようもないのは確かである。自らの可能性をも味方に付けて、ハウザーの指示に従い、獲物を狩る。
ハウザーは道を空けろと行った。ならば、多くを薙ぎ倒せ。傷など、弾け。魔力はさざなみ障壁となる。
ルナは今はハウザーというボスの群の一匹だ。獣はボスに従い獲物を喰らう。群の仲間を喰われてはならぬからだ。
「獣の群れでの狩り、見せてやろうじゃねぇか。なぁ?」
――故に、無数の弾丸が降る。驟雨の如く、みぞれの如く、『竜の狩人』ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)は只管にベヒーモスの周囲の終焉獣を巻込んでベヒーモスの関節を狙う。
「さぁて、ついにこの時が来たか!
待ちくたびれた、ってほど待っちゃいないが。むしろ今すぐにでもお帰りいただきたいところなんだが……まァ先ずは話し合いのテーブルについてもらうべく『おすわり』してもらおうか!」
その為に情報を集めろ。膝を付かせるならば何が必要か。膝さえ付けばあとは削るだけだ。動かぬ『山』は崩せば良い。
だが、ほら、地が揺れる。足下が波を打つ。この衝撃に耐えながらミヅハは狙い定め続けた。
どうすれば奴が膝を付くのかを知る為に。膝さえ付けば『魔法使い』が準備を整えてくれている。
(カロル様のお手伝いもがんばりますが、ロック様が準備をしてくれている間……ニルは進むべき道を切り開かなくちゃ!)
ぎゅうと『おねえちゃん』を握り締めた。それはまるで手を繋ぐようで。魔法使い(ウォーロック)は『願い紡ぎ』ニル(p3p009185)の好きになさいとそう言った。
――おねえちゃん。すぐにヒトのカタチに戻してあげられなくてごめんなさい。わがままなニルでごめんなさい。
でも、ニルは……今は、これまでみたいに、おねえちゃんと戦いたい。
どうか……ニルに力を貸して、ニルの背中を押して、おねえちゃん!
彼女がくすりと笑った気がした。その背中を支えてくれる。彼女がいれば進んでいける。
(倒れないこと、欠けないことが大事だから。だから、おねえちゃん、手を貸してください)
回復をして、支え続ける。その息吹の気配に「ニル、行くわよ~!」とカロルが手を振った。
「キャロちゃん!」
駆け寄ってくるルル家にカロルはくるりと振向いてからその頬を両方の掌で包む。
「辛気くさい顔してんじゃないわよ」
「……はい! 作戦失敗ででっかくんが目覚めたので流石に責任を感じますね。
ですが今更悔いても仕方ありません。女ならバチッと成果で取り返しましょう! キャロちゃん! ファルカウまでの道をお掃除するので待っててね!」
「私も行く」
「いやいや」
「私も! 行くわよ!」
元遂行者舐めんなと叫んだ彼女の周囲に糸が見えた。魔力の糸を眺めてからルナがやっぱりなと呟いた。
守らねばならない相手が増えたもの。それでも、大樹(ファルカウ)の加護は暖かに包み込む。ルル家は「行きますよ、キャロちゃん」とその手を引いて。
「フランツェル殿もこの前の怪我は大丈夫ですか? 無理はしないでくださいね!」
「だーいじょうぶ。なんか体半分石なだけよ」
「十分やばいのでは!?」
「でも、ほら、私達は大樹の加護で生きている。それを、忘れないでね」
そうだ、だから、この戦いの『はんぶん』は――きっと悲しいことで出来て居る。
フランツェルの言葉を聞いてからニルはぎゅうと杖を握り締めた。
成否
成功
第1章 第2節
●
――可哀想なファルカウ
呟く。呻くように、そう言った。植物は水をあげるだけでは育たない。太陽がなければ命は枯れ逝く。
『優しき水竜を想う』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)は苦痛に歪んだ表情を浮かべる。
「私は……こんな状態から命なんて生まれるとは思えない、燃え尽きるよりもひどい。
それすらわからなくなってしまうのなら、あなたのそれは『まじない』じゃない。『呪い』なのね」
それを彼女だって分かって居るのだ。だからこそ、表舞台に彼女は居る。あんな、滅びの獣と共に動いて、まるで殺してくれとでも言うように。
ベヒーモスの前へと向かうのはその滅びの獣を止めなくてはならないからだ。それは世界を殺す。世界に滅びを満ちさせて無の大地へと転化させるのだ。
それを『ホンt脳』のファルカウは喜ぶわけがないだろう。オデットの魔力が揺蕩う。脚の位置を確認していれば、前方に走る男がいた。
「珠」
「オデット」
振向く――そして、目を見開く青年へ「豊穣海洋の連合軍が来てるなら、なんだかんだ紛れ込んでると思ってたわ、お人好しだものね」と微笑んだ。
「……マナセ、この人が私の初恋の人なのよ。約束を、必ず」
「ええっ!?」
恋バナと叫んだマナセにオデットは微笑んだ。それはひみつなのだ。今は、秘密にして、胸に抱えて進むだけ。
「ねぇ、珠。死ぬんじゃないわよ。私、初恋を終わらせないといけないんだから」
「それと俺に何の関係が?」
マナセが悲痛な顔をした。オデットはいいのと首を振る。彼が全てを忘れてしまっていたって構わない。
「巻込まれ体質でしょう? 私もそうなのよね」
「は?」
「終焉獣、来るわよ!」
ひゅうと風が吹く。その気配を背負っていたのは一人の少女。長く伸ばした髪は一つに結び、剣を振り上げる姿は正しく『勇者』そのものだ。
「おじさま! どうして!? ルアナが寝てた間に世界が終わりかけてるよ!」
「ああ。確かに……其れ処ではなかったのは世界も此方も同じだったな」
「ううう、そんなのんびりとして! とりあえずやっていけることからやっていこう!」
『魔王と生きる勇者』ルアナ・テルフォード(p3p000291)が地を蹴った。久しぶりに握った剣でもよく馴染む。それは勇者としての力ではなくて、この世界でルアナが得たものだから。
周辺の終焉獣を薙ぎ払う。彼女が盾となるように守るのはおじさま――『勇者と生きる魔王』グレイシア=オルトバーン(p3p000111)だ。
魔術師である彼を護り戦うのは前衛剣士の仕事だとルアナは自負している。それでも危険な目には遭って欲しくないというのがグレイシアの言だが。
「久しく力を振るっていなかったが、致し方あるまい。ルアナも、十分気を付けるように」
魔術の弾丸が展開する。降り注ぐ。銃弾となり、無数の終焉獣を巻込み乍ら巨躯のベヒーモスを叩く。かつんと硬質な音、鱗か。それとも。
滅びの獣は堅牢だ。周囲を確認し、あまりに突出せぬようにと気を配ったのはルアナが勇者の力を失ったばかりであったからだ。
そんな少女の傍らを走って行く赤毛の青年は「アイオン!」とマナセに呼ばれた。アイオンと呟いてからルアナとグレイシアが顔を見合わせる。伝承の勇者王――当人ではないが、そのベースを得た存在だ――が隣になって居る。
「君、こっちだ!」
「あ、う、うん!」
勇者に引連れられて、元勇者は走る。魔法の気配が周囲に広がっていた。終焉獣の牙を打ち払う『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)の魔力が迸る。
「楽園追放……ここから先へ通してもらうよ!」
ベヒーモスの脚まではそれなりの距離があるが近づけぬ訳ではない。それにしたって無尽蔵に終焉獣は降ってくるものだ。
だが、それらもベヒーモスから生み出されて居ると見れば良い。毀れ落ちた終焉獣を斃し続ければ『ベヒーモスのリソースも削れる』のだから。
「誰も倒れさせないよ……!」
ヨゾラはじらりとベヒーモスを睨め付けた。周辺の対応に走るアイオンに「今だ」と声を掛けられる。
「これが僕のとっておき……星の破撃ーーー!!」
ちらつく星が、ベヒーモスの関節付近を狙う。だが、高い。届きにくい。しかし、重ねることが必要だ。
(ロックさん達の準備が整うまでも、その後も、誰も倒れさせない!)
その決意を胸にしたヨゾラの背後から「えっ、でかすぎる!」という声が響いた。
「ええ、ええ。これがベヒーモスですか。所謂『デカ過ぎんだろ……』でございますねぇ。
う〜ん、ここまで大きいと逆に恐怖心も失くなる気が致します。琉珂様もそう思いませんか〜?」
「思いすぎてびっくりしちゃった」
ぱちくりと瞬く珱・琉珂へと「ですよね~」と『指切りげんまん』ヴィルメイズ・サズ・ブロート(p3p010531)は頷いた。
「琉珂様、援護しますよ。ばっちりばっちり……ん?」
「あの、体大丈夫?」
「え? 琉珂様、いかがなさいました? ああ、……ええ、私は大丈夫です。ご心配なく!
『あの方』は私の硝子細工のようなメンタルがヘラった時においでになりますのでね〜心してかかりますとも!」
琉珂の訝しげな視線にヴィルメイズは微笑みを浮かべたままだった。はいぱ~里長たる琉珂を援護するのは決定だ。彼女に誰も近づけさせる訳には行かぬ。
けれど、己の心の中垣にならないと言えば嘘になるのだ。
(ああ、私の中に在す貴方。私は貴方の事が嫌いではありません。
私には分かります。貴方の劫火の如き怒りと憎しみ。その根底に、凍てつくような悲しみがあることを。
私を昏き闇に誘うというのであれば……次は私が貴方を闇から引き摺り出す番です!)
――全てが終わった後にぶん殴ってやっても構わないほどに!
ヴィルメイズはその決意と共に終焉獣へと一撃放つ琉珂が「ぎゃあ」と叫んで終焉獣の攻撃を避けた。
「こわー」
「世界の危機、かぁ……こわ」
奇遇ですねと言いたげな琉珂に『つばさ』零・K・メルヴィル(p3p000277)は笑った。
「お、琉珂もいるんだな、お互い頑張っていこうぜ」
「ええ。でもびびってるわ」
「……まぁ俺は……怖いっちゃ怖いが、お前も含め大事な友人も多いし、手加減抜きで全力を尽くすさ」
「私も」
友達のためならば強くなれると琉珂は笑った。零だってそうだ。だから、地を蹴った。ベヒーモスの動きを見極めるために全ての最善を目指す。
狙う。ただの一度を狙うために、それは何度も来るだろう。波のように。
一度では叶わない。ここで通行止めだと叫ぶために、一度、仲間達と合わせた攻撃にベヒーモスの巨躯はぴくりと揺れただけだ。
虫が刺した程度に思ったか? ならば、『もう一度』だ――!
「や、やるぞ!」
琉珂がふんすと拳を固めた。
「大丈夫ですか? 琉珂さん!」
「大丈夫よ、ユーフォニー! 今井さん!」
さも当然のように認知された今井さんと共に『相賀の弟子』ユーフォニー(p3p010323)はやってきた。
「琉珂さんも出陣してますし、私も応援しに行かなきゃって、来ました!
思いっきり暴れちゃいましょうか。やっと来れた終焉です。なんだかわくわくしてるんです」
「えっ、でっかすぎてこわくない!?」
「いいえ、わくわくです!」
にっこりと笑ったユーフォニー。終焉獣に指示を出すエトムートの場所はもうそろそろ割り出されるだろうか。
ベヒーモスに仲間達が集中砲火出来るように、渾身の魔力を放つ。煌めくそれが叩き込まれる。
出し惜しみなんて不要である。だからこそ、彼の力を借りてやってきた。
「今井さん。万華鏡は今日も思いっきり、キラキラ色鮮やかにお願いしますね!
世界に争いは尽きずとも、この世界には綺麗なものもあるんですよって、ファルカウさんに見せなきゃ。
キラキラ派手にやっておけば有象無象の敵もこっちに惹きつけられるかもですし!」
「はい。今日の今井も輝いていますし。えっ、まさか、壊れたら捨てませんよね!?」
何か不安そうな顔面の良い男がいるとカロルはぼやいた。顔の良い男を見ると直ぐに寄っていくのだからと咎めるような顔をしたのは『天義の聖女』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)である。
「浮気?」
「え?」
顔を見合わせる二人に「さあ、行くよ!」と『聖奠聖騎士』サクラ(p3p005004)が声を掛けた。
「ROOの時はどこかでゲームだからって気持ちがあったけど……現実でこの威容を見ると流石にビックリしちゃうね」
「そうだね。今は現実だ」
「それでも迷わず進めるのは、きっとスティアちゃんが隣にいてくれるからだね」
「ふふ、それは嬉しいなあ。じゃあ、悲しい物語のままで終らせないよ! ベヒーモスを止めてファルカウさんを救う!
それでハッピーエンドだ! ってことで、出発だ、サクラちゃん!」
「うん、いこうスティアちゃん。全部ばっちり解決して今夜はパーティーだよ!」
護りはカロルに任せれば良い。彼女の支援があれば大丈夫だ。「イルちゃん! リンツさん!」とスティアは呼び掛けた。
走るイルとリンツァトルテ、そして『無限円舞』アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)がひらりと布を纏わせる。
「久しぶり……の再会が戦場とはね。ま、何にしても背中は任せて。死んだら承知しないわ」
「ふふ、アンナこそ!」
イルがにいと笑みを浮かべた。多くの騎士を支援するのはアンナにリンツァトルテが連れていた小隊は安堵したような表情を見せる。
「アンナ、いや、ミルフィール卿、我が隊を頼む」
「言われなくとも。任されたわ、コンフィズリー卿」
聖騎士達は果敢に戦へと走る。それでも、あれは強大だ。特にパンドラの加護を持たぬ者は、どれ程に恐ろしいか。
「これは神託を覆すための聖戦よ! 他の国に遅れを取るわけにはいかないわよね!」
見よ、正義は此処にある。声を上げろ。手を伸ばせ。騎士の本懐を見せ付けよ。
「ハッハーッ!!」
『歩く災厄の罪を背負って』リドニア・アルフェーネ(p3p010574)は笑った。ああ、可笑しいと。アレを見たか。髪の作り賜った存在にしては『ちょっとはしたない』ではないか。
「こんだけデカいとはしたないですけど、やりがいがあるってもんですわね!
――賽子を振る準備は出来まして?此れよりは先は修羅の道。
我が名、天義騎士がリドニア・アルフェーネ! 戦場が華、天義騎士隊一番槍頂戴仕る!!」
リドニアの元に騎士達が集う。ベヒーモスへと向かう為、道を開くのだ。眩き光に誘われて、騎士達が欠ける。
アルフェーネ卿と呼ぶリンツァトルテに「任せておきなさい」と彼女は言った。堂々と、強く、己が支えてみせると。
ならば、『切り拓く』のだ。道を。
「リンツさん、イルちゃん! 斬り開くよ!」
サクラはロウライト家伝来の刀、聖刀【禍斬・華】を模した刀を手にしていた。砕けてしまった、けれど、これでも斬り拓くだけの力はある。
「……こうも大きいと効いてるのかわからなくて嫌になっちゃうね!」
「けれど、サクラ。雨も何か、穴をどうたらだ!」
「イルちゃん、胡乱だね?」
誰かさんを感じると振向く目線の先でスティアが「えへへ」と笑った。戦場だからと、全て肩肘張って居れば苦しい事ばかりではないか。
だからこそ、今は軽く振る舞うのだ。何度だって斬りつけてベヒーモスに傷を与えなくてはならぬのだから。
狙うのは皆同じ。ハウザーが数カ所を指示した。それに従えば良いだけだ。従い、そして斬り伏せる。
「この地に住まう人を悲しませる訳にはいかない! その為にもできる事は何でもやらなきゃ」
スティアはベヒーモスを見た。そうしなくちゃ、きっと、彼女は苦しむだろう。
「今は滅びに侵されていたとしても、別世界で触れたファルカウさんの優しさを忘れる事はできないよ。
短い間ではあったけど話をして、ちょっと怒られて……成長した姿を見せたいなって思う」
「スティアちゃん」
サクラは彼女は『プーレルジールのファルカウ』を知っているからこそ、そう考えて居るのだと知っていた。
彼女を知れば知るほどにコレは本意では無いと分かるのだ。
「……それに起こしに行った時に心から笑えるように、こっちのファルカウさんも助けたいなって思う。
本質的な部分は同じはずだしね。きっと元に戻れば、優しいままの彼女が見れるはずだ!」
「お人好し」
「そんなこと言って。今までも不可能を可能にしてきたし、頑張らないとね……ルルちゃんもそう思うよね?」
カロルはスティアを見てから笑った。
おまえならできるわ、と。何故って――? そうも出来ない相手に背中を任せたつもりはないの。
成否
成功
第1章 第3節
●
「水夜子君は後方支援か。ならば前線を維持する事が彼女と世界を護る事にもなるだろう」
くるりと振り返る。『愛を知らぬ者』恋屍・愛無(p3p007296)へと澄原 水夜子はにっこりと笑った。
「水夜子君の灰色の髪と紫の瞳はラサの砂漠に良く映えそうだ。はー好き。それが見れないのは少々心残りだが。是非も無い」
「え、じゃあ私も前に行きましょうか?」
「それはそれで心配だけれども」
くすくすと、笑う彼女に愛無は「いってくるよ」と背を向けた。彼女に言いやしないけれど、戦うのが彼女と同じくらいに好きなのだ。辛気くさいのも趣味じゃない。だからこそ――彼女のためにやってみせようか。
ベヒーモスは巨大だ。投擲しながら相手の出方を見る。成程、コレまでの攻撃は全て一部分に集まっているか。流石に巨体と言えども一部だけを狙われれば『泣き所』にもなるだろう。そこを弱点と表現して良いかは分からぬが、狙わぬ場所にはならないはずだ。
「ベヒーモスを止めるために、まずはこれに大ダメージを与えること。オレ自身も攻撃に参加すべきかもだが……アレが気になるんだよな」
『よをつむぐもの』新道 風牙(p3p005012)はぽつりと呟いた。前線からの一報はエトムートとルグドゥースの姿が発見されたというものだった。
(ルグドゥース……っつったか。何かじっとこちらを見ている……情報を集めてる?
嫌~な感じがするんだ。放置してたらまずいことになる、そんな気がびんびんする。アレをフリーにさせないように……)
そうともなれば、此処まで同行してきた大切な豊穣郷の貴人から離れればならないか。まあ、無理をしないはずだ。彼にはお守りが沢山居るのだから。
「じゃ、また後でな! カスミさん、セイメイ! ちっと行ってくら!」
「ああ、気をつけろよ」
何て軽い挨拶だろうか。ひらひらと手を振った彼に風牙は小さく笑う。ルグトゥースに向かうならば一度ベヒーモスの下を通り過ぎねばならないか。
(ついに動き出したかー。実際動くと、さらに迫力増しやがるなあ、でっかくん。
そして、ファルカウ……あの大樹の化身。レテートにとっては母親の母親、お祖母ちゃんみたいなもんかな。
それが、あんなふうになっちまって、きっと哀しいよな……)
きらりと握り締めた欠片が光を帯びた気がした。木々も心配しているだろう。それは良く分かる。
(ああ、大丈夫。止めるとも。争いのない世界を求めてるのはオレらも同じ。
だけど、そのために争いを起こしてる時点で矛盾してるんだ。そこもオレらと同じ。……同じなんだよ、ファルカウ)
ただ、その方法が違っただけ。どうしても、分り合えないのだろうか。悔しくて堪らない。
風牙の前には彼女がいる。魔女だ。黒いドレスを纏った女が指先だけをゆっくりと動かした。
「はじめましてだ、魔女さん。この新道風牙と、しばらくお話しようぜ!」
「……いやだと言ったら?」
「勿論、無理矢理にでも聞いて貰うさ!」
天を衝く巨躯。それは海原の潮騒が砂塵に変わっただけだろうか。何にせよ、久方振りとはこの様なことを言う。
「いやぁ、思えば遠いところまで来たもんだね。んじゃませっかく懐かしい人達に呼ばれたし、今日は会長ってことで!」
にんまりと笑ったのは『虚飾』楊枝 茄子子(p3p008356)だった。何時ものように、『茄子子』として彼女はその場に立っている。
その軽やかな声音を聞きながら『涙を知る泥人形』マッダラー=マッド=マッダラー(p3p008376)はゆったりと頷いて。
「あの海の無力さを糧に俺たちはここまで進んできた。混沌中に響かせるぞ、これが俺たちの集大成だ」
あの大海原は遠くなった。滅びの気配が濃く、身をも溶かし行く死は、傍らにぴったりと寄り添い笑う凶星の如く。
しかし、それをも越えてきた。露払いを皆に任せ、ただベヒーモスの膝を手折ることだけを狙うのだ。マッダラーは近寄る終焉獣を払い除ける。
「道は開かれている」
「ええ。この集まりもいつ以来でしょうか、思えば皆遠くまで来たものです――用意は万全ですとも、夜式様。最後まで突き進みましょう」
乙女の姿に転じようとも、心はあの日の儘で。『アイのカタチ』ボディ・ダクレ(p3p008384)の張った障壁が魔力を帯びる。
ベヒーモスへと近付く為に味方を傷付けさせぬ為、ボディは尽力する。そう、相手の守護を担う者も居るのだ。それらを思えば一筋縄には行かぬだろう。
「確かに懐かしい顔ぶれになったが……会話に話を咲かせている暇など無いぞ。とっとと行くとしよう」
進む『目的第一』マッチョ ☆ プリン(p3p008503)の声音は僅かに咎める響きを込めたが茄子子は気にする素振りもない。
「ほらほら、敵が来るよ!」
「振り払え。進もう。強大な存在など、もう何度も見てきた。今度も打倒されて貰わねば困るな」
茄子子は「確かにねえ?」と唇を吊り上げるのだ。故、勧め。臆することなどない。全てを惹き付けて『仲間に任せれば』良いのだ。
そうして道を開けば敵の懐に飛び込むが同じ。踏み潰されぬようにだけ注意を為ねばならないか。
この巨体はR.O.Oで見知ったものより動きが遅いと茄子子は気付いて居る。その理由は、何かは分からないけれど。
「否が応でもROOの時を思い出す相手だね……それでも、だからこそ諦める訳にも行かないってね!」
『数多異世界の冒険者』カイン・レジスト(p3p008357)に茄子子が頷いた。
「デッカ君! キミは私を知らないだろうけど、私はキミを知っている! ROOで培った経験、知らないってんならわからせてあげるよ!」
『あれだけ死んだ理由』は、こいつを倒す事だった。ある意味でチートである。全ての情報を持っている。
あの日のように、狙う場所は決まっている。R.O.Oと同じ戦いをすればこの獣は膝を付くのだ。何せ、あの時よりも動きが呪い。
オマケのように存在する魔女はまだ動きを見せない。ならば、と茄子子はにまりと笑う。ギャザリング・キャッスルはいつかのように、攻略を行なうのだ。
「今日だけだからね! 翼を授けるよ!! ――よおし会長に続け!! あの傷狙え傷!!」
かなぎ君の名の元に。
その言葉に「結局私が頭なのか……」と『蒼き燕』夜式・十七号(p3p008363)は呆然と呟いた。
「最初は海と来て最後は砂漠とは、奇妙な縁もあるものだ。――狙うはベヒーモスの脚だ」
進めば、退路は断たれるだろうか。いいや、『騎兵隊』もいる。仲間達は多く居る。ならば、前だけを見ていれば良い。
戦陣を行くカインはどのサイズだって地に足を着ければ生物だ。少しでも泣き所を着けば進行が遅れるはずだと空を駆る。
「行くよ!」
脚を叩く。傷がある。その場所だ。繰返せば構わない。邪魔だてするなと言いたげに『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)の符が光を帯びた。
「超巨大な敵に始まり最終決戦もまた超巨大な敵ってな。
面白いタイミングで面白い連中たちと一緒に呼び出されたもんだぜ。
さて、この縁を無為にしないためにも最後も盛大に締めくくるとするか!」
にいと唇を吊り上げる錬に十七号は「右!」と声をあげた。迫り来る終焉獣をマッダラーが払い除ける。
「一人ではお前を止められんだろうが、俺たちには仲間がいる」
静かに、そして強い決意を込めてマッダラーはそう言った。頷く、錬は敵の群を声、ベヒーモスの脚に一撃を叩き込む。それは大木を切り倒すイメージだ。魔法など、符術など、創造など、イメージだ。想像の世界だ。だからこそ、『そう思えば』そうなるのだから!
「進め!」
「ああ。此の儘! 墜落の危険に配慮を! だが、撤退など此処にはない! 進め!」
十七号は錬の言葉に重ねた。刀の先が硬質なる獣にぶつかった。これを折る? 無理難題であろうと押し通せ。
そうするだけの『経験』が今までにあったのだから――!
ボディの声音が地より天を刺すが如く。小さな小さな一突きは決してそれだけでは終らぬことを象徴していて。
「――まずは一穴、穿たさせていただきますよ」
ベヒーモスの呻き声がする。
天を見上げてから『蒼穹の魔女』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)の杖に魔力が灯された。
「この世界を……生命を消させるわけにはいかない! 相手がどれほど強大だろうと! 行こう!」
このまま、小さな傷でも良い、それを重ねて膝を付かせれば良い。虫に刺された程度であったって構わない。
そう、そうしてきた『筈』だから。そうした『経験があった』と読んだのだから。
(……らしい、だなんて。その時の事はもう覚えていないけれど、大切なものを護りたいという気持ちは絶対に変わっていない!)
アレクシアの表情を見てから『竜剣』シラス(p3p004421)はフランクに笑って見せた。
「行こうぜ、アレクシア。あのデカブツに膝をつかせてやろう」
地獄のような眺めだ。アレクシアにとっては初めましてかも知れないが、シラスにとっては奇妙に懐かしい。
デジャヴだろうか。R.O.Oのシラスは竜だった。背中には彼女がいた。屹度、覚えていないだろう。
シラス君と、背に乗る彼女と共に空を駆けたのだ。蒼穹の魔女を連れて、そうして、あの化け物に一泡吹かせてやったのだから。
(――何でもやれると思っていた。でも現実の俺はどうだ?)
竜ではない。けれど、練り上げた魔力は竜の顎にも劣らない。
「……やってみせるぜ」
拳を固めた。ベヒーモスの前へと躍り出る。ギャザリングキャッスルの者達が叩き付けた『傷』へ更に一撃を投じる。
パンドラの加護が身を包む。燃やせ、全ての決意を胸に。
まだまだ――此処で倒れるわけにはいかないから。
「何度でもやってやるぜ!」
「そうだね! 私達は、負けない!」
アレクシアは真っ直ぐにベヒーモスを睨め付けた。
「ねえ、ファルカウ。聞こえるんでしょう?」
その傍に、屹度彼女は居る。あの魔女は憂い嘆いているのだろう。この世界のことを、このありさまを。
「ファルカウ……例えあなたがすべてを滅ぼそうとしているのだとしても……私達はあなたが育んでくれたからこそ今ここにあるんだ。
そんなあなたに、愛したものを壊す罪も後悔もあなただけに背負わせてなるもんか! その呪いも、力も……希望育む祝福へと戻してみせる!」
まじないが、『のろい』に転じてしまったって。
術式を正せば救いになってなる筈だ。その準備はしてきた。全ての約束は『覚えていなくったって』持ってきている。
「……そのためにも、ここを乗り越えて、必ずあなたの前に立ってみせる!
数多見た絶望の先にも、戦乱の中にも、希望の芽はあるのだと見せてあげる! ――だから、待っててよ!」
成否
成功
第1章 第4節
●
「思えば混沌は学舎、今が卒業の時! 生か死かいずれにせよ――」
大地を蹴り上げて『バアルぺオルの魔人』岩倉・鈴音(p3p006119)は駆ける。周辺にばら撒かれている滅びの気配を取り去ることが目的だ。
「っとォ! 終焉獣は邪魔なんじゃ!」
堕天の輝きを纏い鈴音は大盾を手に、相手を見据えている。巨躯のベヒーモス、山を思わすその存在の脚を留めることが目的だ。
歩みは鈍いが一歩動けば地響きが聞こえるではないか。ぐらつく足下に構うことなく淀みない攻撃を繰返せ。
「終焉とかいう狂った天命を越えていく……ベヒーモスとの長い戦いの始まりだ!」
ちらりと天を仰げばそこに見えるはずの青空は巨大なる獣の陰に隠されたか。これでは育つものも育ちやしない。
くすんだ空の下に存在する筈の砂漠はからからと乾ききった死の気配に変わりゆく。眉を顰めた『白き寓話』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)のスカートは鮮やかにふわりと舞い踊った。
「さて、と。今日はいつもよりもっと頑張った方がよさそうねぇ」
さあ、賽は投げられた。白き薔薇の娘は終焉獣の数を減らし、仲間の歩みを邪魔立てする者に狙いを定める。
「ファルカウは戦乱が溢れすぎたから出てきたんだよな……? つまり何らかの要因で戦乱を観測する力があると……」
悩ましげに呟いた『妖精■■として』サイズ(p3p000319)にぱちくりと大きな眸を瞬かせたマナセは「どうしたの?」と問うた。
「ちょっと妖精郷に今戦乱あるか聞きたいし、他のイレギュラーズに倒される前に聞いてみよう。
まあ、現状妖精郷が襲われなさすぎて戦乱なんて全く無いが……逆にこれで妖精郷に戦乱あるよとかふざけた返答返ってくるなら、言ってる事がデタラメだし、皆戦闘に集中出来るようになったりするかもな?」
「それ、多分無意味よ、サイズ。だって、『あった』でしょ。そうじゃないとサイズ達は妖精郷って場所で戦ってないじゃない」
そう、ファルカウは『過去』を差している。彼女が眠ってから永きの時間に混沌世界は戦に溢れすぎたではないか。
その戦乱を嘆いているのだ。故に、終らせようとしている。マナセの言う通りかとサイズは眉を顰めた。
「そうか」
「そうよ。あの人は、これまでを嘆いている。でも、サイズが妖精郷を守らないとファルカウをどうにかしないとよね。あと、でっかくん」
どうしてと言いたげな彼にマナセは言った。だって、あの人は世界の全てを終らせるために、終焉の獣と共に進んでいるのだもの。
そう。だからこそ、あの足を挫かねばならないのだ。その為にロックはクレカと共に退いた位置から術式の準備をしている。ベヒーモスへの攻撃の蓄積に可能な限りの陣の展開が叶っているか。
そんな彼等の様子を見てほっと胸を撫で下ろしたのは『ウシャスの呪い』雨紅(p3p008287)であった。
「解析、うまくいったようで何よりです。
それを出番無しで終わらせるなんて出来ませんからね。かの獣の、膝を折らせてみせますとも」
「有り難う。雨紅、君の気遣いに感謝をするよ。僕もクレカも術式にて一杯だ……けれど、余り恐ろしくはないのは君達のお陰かな」
穏やかに笑ったロックの傍でクレカは「雨紅、気をつけてね」と言った。父と子。その関係性を微笑ましく見詰めている雨紅は口元に笑みを浮かべた。
「ええ、ご安心下さい」
「二人は此方へ」
二人を守るように立っていた『紅矢の守護者』グリーフ・ロス(p3p008615)は流れ弾の一つも許さない。雨紅は前線へ、そしてグリーフは二人を守り抜くと心に決めていた。
(2人が準備したもの。それが、混沌と境界、プーレルジールの未来を勝ち取るための一手だと、そう、信じているから。
……この先も、家族が共にあるために。もしイレギュラーが発生し、発動のためのエネルギーが足りないなんてことがあれば。――私のエネルギーを供出しましょう)
大丈夫だと、そう告げると決めて居た。ずっと、守る為に、そして仲間達を支える為に立っているグリーフを見上げたクレカは「ダメだよ」と唇を動かした。
「……グリーフが、何かの犠牲になるなんて駄目なことなんだよ」
「……はい」
それが姉妹の情なのか、それとも。クレカにとってグリーフは大切な存在だったのだろう。
前線を見遣れば今まで戦ってくれていた『赤々靴』レッド(p3p000395)はすうと息を吸う。ロックやクレカの手伝いをしていれば随分と出遅れてしまっただろうか。
ゼロ・クール達を連れて遣ってきた。この場に道を広げることは出来やしないが、ゼロ・クール達と共に戦場を駆抜けることは出来る筈だ。
「助太刀は遅れてやって来るってね……! プーレルジールの『魔法使い』達からお土産っすよー!」
きっと道は開かれていた。そうやって誰もがこの巨大なる滅びの獣を撃破することを願っているのだ。
レッドの指揮を受けて進むゼロ・クールそして彼女達と共にひらりと鮮やかに舞い踊る雨紅の姿がクレカの双眸には映る。
(――これだけの巨体、効果はわかりませんが試さぬ理由はない)
傷を狙え。それだけで彼等は足を止めることが出来る筈だ。生物の弱点を狙いながら的確に傷を増やしていく。それが今できる最善だ。
(ROOではコウを護るために君と戦った。迷って悩んで、それでも、戦うことを自分で決めた。
……今度も俺は戦うよ。この世界は俺に居場所をくれた。
俺が俺のまま生きることを受け入れてくれた。愛しい混沌を護る力に僅かでもなれるなら、命を賭すことは怖くない)
あれだけ恐ろしかったはずの戦いも、今は誰かを守る為の物になった。
『キラキラを守って』イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)が抱いた不安だって、次第に変化をし力になっていくのだ。
それだけの長い間を混沌世界で過ごしてきた。イーハトーヴはベヒーモスの全てを捉えられていない。その巨体の全てを認識することは難しい。
けれど、脚を狙えばその歩みが止まる。膝を付ければ頭を垂れる。滅びの気配は遠ざけることが出来る筈だから。
災いの気配を叩き付ける。己の持ち得る全てを吐き出すようにして。
「世界を滅ぼすなど、どんな理屈であっても許せるものではありません。
……それにしても世界を守る戦いなんて数年前には考えもしませんでした。やっぱり琉珂といると退屈することはありませんね」
「え? えへへ、そうでしょう」
ずーりん、と楽しそうに呼んだ琉珂を護る事。それから、琉珂と共に戦場を駆けること。
それが『未来を背負う者』劉・紫琳(p3p010462)の為すべき事であった。広域を確認し、隈無く戦場の様子を把握する。
(ルグドゥースはどこか――その位置を探しておかねばなりません、が、ベヒーモスは巨大すぎる)
視界を覆い隠すようなその巨躯に紫琳は眉を顰めた。「琉珂、連携を」と呼び掛ければ彼女は「言われなくても!」と笑った。
紫琳の放った弾丸の中を琉珂が駆けて行く。桃色の髪がふわりと揺れて、紫琳はそれを視線で追いかける。
「琉珂殿」
「上から来るわ~!」
ほら、と指差す琉珂に『約束の瓊剣』ヴェルグリーズ(p3p008566)が頷いた。斬り伏せれば終焉獣が地へと叩きつけられる。
「終焉での決戦ももちろん大切だけど、こちらは混沌を直接浸蝕しにきているからね。
対処の優先順位は最上位だ。ベヒーモスを止めて、終焉での戦いに集中しよう!」
にいと笑ったヴェルグリーズに琉珂と紫琳は頷いた。ベヒーモスは血潮の代わりに滅びを垂れ流すか。
しかし、肉体から毀れ落ちた終焉獣を斃せば倒すほどにベヒーモスにはダメージが蓄積しているようにも見える。露払いは決して無駄では無い事を思い知らせてくれた。
左脚地点が重要地点だった。それでも脚は一本だけではない。二足歩行だ。右足には何ら傷は付いていない。ならば『片足だけでも挫けさせれば』構わないだろう。
出し惜しみする事も無い。兎に角自らの全てを出し切るのみだ。
ヴェルグリーズの握り締める刃がぎらりと閃いた。その切っ先がコレまで仲間達が傷を付けたベヒーモスの臑を狙う。僅かな傷だが、更に重ねれば広げて行く事ができるだろう。
(私がもっと動けていれば、ベヒーモスが起きることもなかった――だからこそ、立ち向かわないわけにはいかない)
悔しげに『死血の魔女』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)は呟いた。ぞろりと血潮の気配がその体を包み込む。
「何より……あの獣は私とアタシ、死血の魔女の狩るべき獲物なのだから」
呟くマリエッタの後悔を感じ取ってから『夜守の魔女』セレナ・夜月(p3p010688)はふるふると首を振った。
「マリエッタ……ううん、それは違う、あなたの責任じゃないわ。それだけは言わせて。
だからこそ、わたしも一緒にいる。もう一度、ファルカウ様にまみえる為に、世界を守る為に、あなたの傍らに居る為に!」
大切な人を護る戦いだとセレナは知っている。
マリエッタが大切だ。彼女はそっと聖女の側に行くのだから。カロル・ルゥーロルゥーの加護を広げることが出来るのは聖竜の力を戦いに使わなかったマリエッタならではだ。
その加護を広げるための支援が出来るだろうと彼女はカロルの傍に立っている。けれど、戦わずには居られないのだ。
「……脚を挫きましょう」
魔力の消費がないマリエッタだからこそ最大火力を叩き付けることが出来る。共に進むセレナは「飛行戦もすべきかしら」と呟いた。
空は危険だ。四方八方、どの様な場所でも隙は出来やすい。足が地に着いていることで安全が一つ安保為れるのだ。
それを知っている――けれど、攻撃が低い位置ばかりで構わないかは定かではない。何処か、もっと『弱点』があったならば――
成否
成功
状態異常
第1章 第5節
●
此度は混沌の運命をも左右する一戦である。大敵へと立ち向かわねばならない。豊穣援軍の中にはいつもの通り――居ては困るのだけれど、来るなと言っても自ら動くのが彼なのだ――霞帝の姿があった。ただ、何かあった際には自らを盾とするつもりであろう黄龍の姿が見える。
「黄龍」
呼び掛けてから『生命に焦がれて』ウォリア(p3p001789)はぎゅっと彼を抱き締めた。女性の、畝傍薄雪の姿をとっているその人は「おお」と驚いた様子で声を漏す。
「黄龍チャージ。これで気分的に力が10倍にはなった心地だ――油断してたな? ふふん、シキばかり構うとオレは拗ねるぞ?」
「ウォリアよ。吾は主が来たくば何時でも相手にしてやるのにな」
揶揄うように黄龍は笑った。神霊は自在に動き回れるのは豊穣だけなのだ。だからこそ、ずっとその場に留まり待っていてくれるのだろう。
「ああ。ならば――……しかし、今ではないだろう。チャージ完了……いってきます、だ!」
駆け行くウォリアを眺めて居れば、この世界が存続してくれることを黄龍は願わずには居られまい。
ウォリアが目に着けたのは前方へと進もうとするベヒーモスの脚、その『後ろ側』だった。ずん、ずんと大地を踏み付けようとするその獣の動きは鈍い。だからこそ、狙いが付けやすいのだ。
踏み潰される危険は承知している。動きが鈍いならば連携を行う中で避けきることは可能である筈だ。終焉獣が上空から降ってくる。真っ直ぐに見据えた大和型戦艦 二番艦 武蔵(p3p010829)はぎらりと終焉獣達を睨め付ける。
「聞きしに勝る威容であるな!! 世界を滅ぼす獣とはこれほどのものであるか!!
だが、この武蔵、退くわけにはいかん!! 海洋と豊穣の皆と共に戦い、そして勝つ!!」
そう、豊穣と共に海洋軍人達もこの場にやってきた。支援係として物資を運び込むコンテュール卿達も此度の戦いでは援助を行なってくれている。
文字通りの総力戦だ。ならば、武蔵も己の持ちうる全てを見せ付けねばならぬ。十全に連合軍が活躍できるようと地盤を固めるのもまた、イレギュラーズの力である。
「迷わず進め!! この武蔵が付いている!!」
堂々と『彼女』は宣言する。船とは恋人のような存在だとコンテュール家の者は言うのだ。ソルベにとって船は気紛れな女性だ。
彼女達は大海原を乗りこなしてくれるが機嫌を損ねれば真っ逆さまに海へと叩き付けることであろう。だからこそ、船が呼ぶならば『海洋軍』は進むのみ。
「おお~う? 凄い敵がでかすぎて索敵も難しくないカナ!?」
キョロキョロと周辺を見回している禄存はと言えば観測しながらも『ともに最期まで』水天宮 妙見子(p3p010644)を一瞥した。
「如何する? 誰か、狙うカナ?」
「いいえ、いいえ、全ては仲間達を支える為です。……鉄帝の時を思い出しますね。どうかあの時のような冬には戻りませんように」
妙見子は静かに言った。ピアスに触れる。指先から伝わる彼の気配は愛おしい――あの赤き竜は屹度不遜に笑う事だろう。
「滅びという種が芽吹いてしまったらすべてが終わってしまいます。
……今の私はこの世界を護ると決めたのですから、一刻も早くあれの進行を止めなければ」
勢い良く晴明の背を叩けば彼は驚いた顔をする。次に、賀澄の背を叩けば彼は笑うのだ。
「よもや傾国の娘がなあ? 構わぬよ、俺はそういうの好きだ!」
「貴方って人は――気合い入りましたね! 行きますよ!」
晴明が好むわけだと霞帝を見詰めてから妙見子は歌声を響かせた。己の歌は『竜』と共にある。それだけではない。
今の妙見子は自らが望んで世界を守るが為に立っているのだから。誰も喪わぬ為、誰も悲しい思いをしないため。
「それにしたって、巨大だな」
「……ええ。ベヒーモス、『ヨブ記』の巨獣だけれど……この威容を見れば、納得も行くわ。
とはいえ、こっちだって世界を壊される訳には行かないのよね。抗ってみせるわ、全力で」
力強くそう言った『高貴な責務』ルチア・アフラニア・水月(p3p006865)へと賀澄は「ルチアと言ったか? 俺は伝承が好きでな。落ち着いたら教えてくれ!」と軽やかに、そして力強く笑うのだ。
ルチアは頷いた。全ての状況を隊に連携し、そして戦いを活発化させる。回復役であるルチアは自らの被弾を厭うことはなく最前線の仲間達と共に動く事を心掛けた。
賀澄の周辺に浮かび上がる刀。その無数の切っ先がルチアの指示を受け、終焉獣へと襲い征く。その剣戟を後押しするのは『蒼光双閃』ルーキス・ファウン(p3p008870)であった。
「賀澄様が出撃されるなら、お供しない訳にはいきませんね。世界を守る為の正念場、最後までご一緒させて頂きます!」
「死んでくれるなよ? ルーキス!」
軽やかに笑う彼にルーキスが顔を見合わせたのは『黒蛇』物部 支佐手(p3p009422)であった。
「陛下の御前で無様を晒すわけにゃ行きません。必ずや、敵を討ち果たしてご覧に入れましょう」
堂々たる立ち振る舞い。支佐手はベヒーモスの脚を攻撃し続ける。ウォリアが狙った位置へ、賀澄が叩き付けた一打を更に支佐手は重ねた。
「こりゃ、わしも負けとれませんの」
「こちらも。しかし、的が大きすぎて、まるで山に向かって攻撃しているような気分だな……。
チリも積もれば何とやら。少しづつ攻撃を重ねていけば、必ず光明が見えるはず!」
留まることを知らぬ剣戟を見せるルーキスを包み込むルチアの淡き祈り。傷をも癒やすその気配に、妙見子の歌声が載せられる。
支佐手は終焉獣を睨め付けてから「ええい、次々と煩わしい」と思わず呻いた。
「……メイメイ殿! 件のデカブツ、お願いしてもよろしいか!」
呼ばれた少女は力強く頷いた。「晴さま。約束、ですよ」と微笑む彼女は愛おしい人に加護を与えてから杖をぎゅうと握り締める。
『約束の力』メイメイ・ルー(p3p004460)は「此処から先の戦場も、お供、させていただきます、ね。賀澄さま」と微笑んだ。
滅びの種を打ち払い、ベヒーモスの脚へと肉薄する。そして、仲間を支えながらも隊の継続を願うのだ。
「貴方に、刻みます……!」
己の全てを叩き付ける。この世界を『まっさら』になんてさせるものか。
――まだ、見たみたいものがある。まだ行きたい場所がある。まだ、過ごしたい人が居る。
誰物思いを乗せたようにメイメイの神秘の一撃が叩き付けられた。
ほうら、だから。『傷付ける』事を得意とする『ニンゲン』が山をも削るように少しずつ少しずつ手を伸ばす。
「たみちゃんとひつじちゃんが、でっかくんの膝を折りたいっていうんだもの。
それにしてもでっかいわあ あししか見えないじゃない。
やあねぇ、見下されるの いい気持ちじゃないわぁ 早く、頭を垂れてもらわなくっちゃ」
くすりくすりと笑ったのは『狙われた想い』メリーノ・アリテンシア(p3p010217)であった。「この『あし』をくじくのね?」と問えば「そうです、ですが、大きいですね」と『追憶駆ける希望』ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)は僅か不安そうな表情を見せたか。
「……ですが、諦めません。踏み潰されるとしても花だって毒を持って抵抗しましょう。
ここに生きるものたちを守るために咲かせます。それが僕達の出来る事だから」
シナモン色の髪色がざわりと可能性を帯びて紫苑に咲いた。ジョシュアの弾丸が無数に飛び回り、メリーノはちくりと刺すように踊る。
ほら、この巨体に付いた傷より降る滅びの気配。終焉獣をも打ち倒し傷口を更に広げれば、その動きは随分と鈍くなったものだ。
成否
成功
第1章 第6節
●
――今まで混沌に生きた者のためにも。これから生まれる者のためにも。未来は、燃やさぬ。
「行くぞ、『騎兵隊のお出ましだ!』」
朗々と声を上げたのは『黒のステイルメイト』リースヒース(p3p009207)であった。魔力がすうと線上へと広がって、支援を担当するリースヒースの指先に留まった。
精霊達を使役して『まじない』とは何かを意識する。精霊達は酷く怯えている。魔女ファルカウの『まじない』が果たしてどの様な者であるかはさだかではないのだ。
そう――彼女のまじないは『呪い』に転じた。それ故に、人の足をも挫く可能性があるというのだから。
「マイネェエエム! イズ、ギョウブ、ウメヒサァアアアア!」
堂々と叫ぶは豊穣の刑部省の男であった。筋骨隆々たる大男は誉れを胸にし立っていた。
彼の声音に小さく笑って『流星の少女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)は「あら、精が出るわね。鬼刑部」と微笑んで。
「どうしたイーリンよ。――吼えるのだろう、豊穣で互いの名を呼び、生きるために戦った我等が此処に居て何が不都合か。
霞帝の御前で鬼人種が誇らしく吼えられることのなんと幸福な事か。梅久隊を率い、轡を並べ騎兵突撃をしよう」
「そう。それは重畳だわ」
卑しい出自であると人は言う。梅久は鬼人種だ。だが窮地たるこの時に豊穣郷の主上と共にこの場に来られたことは何と言う幸福か。
「世界を喰らう敵を相手にするのだ、これ以上の誉はあるまい。
故に、何度でも我々は立ち上がり、喉笛に噛みついてやろうぞ。――あの巨木が倒れるまで!」
「ええ、それはこちらだって」
イーリンの旗の下に集う戦士達。パンドラの加護は自身等を高揚させて行く。
これは『勝利への水先案内人』としての立場である。何度でも攻勢を掛けるための『退路』が必要だ。
あれだけの巨大なる存在を前にしたならば体制を整えることが必須となるだろう。だからこその騎兵隊である。
「総員突撃用意! 大樹も山も関係ない。我々が争いの中に生きるものの権化であると、その中にある希望を見せつけてやりましょう!」
そう、この場に立つイーリン・ジョーンズは先行くが為の希望の旗印であるのだから。
「この6年、厳しい戦場は幾つもあった……まもなく、終局の時か。
眼前には終焉の獣、アレに挑むなど阿呆かと言ったところ、が、否は無い。彼女が騎兵隊の旗を掲げる限り」
にいと唇を吊り上げたのは『騎兵隊一番翼』レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)であった。
一刻も早く膝を付かせるが為。レイヴンの鉄の星は煌めき大地を叩き続ける。乱射すれば、その内部に仲間達は巻込まれる可能性があろう。
注意が必要だ。ベヒーモスの足下へと走り行く仲間を攻撃してはならぬのだから。入念なる計画を整えて。
「この場合、『木を見て森を見ず』の逆バージョンって感じがするねぇ。
今まさに健康な若木ごと全部焼き払おうってやつ? ヒヒヒ」
くつくつと喉を鳴らした『闇之雲』武器商人(p3p001107)は長い銀の髪をゆらりと揺らがせた。周辺を俯瞰し確認し、相棒と共に進み行く。
長い髪の隙間から覗く紫苑の瞳は伏せられる。破滅へと誘うその気配は鮮やかなる紫苑によって終焉獣達を誘引し続けた。
「さぁて、パンドラの加護と言うからには、どれ程のものであろうねえ」
共に前線に立つのは『決別せし過去』彼者誰(p3p004449)であった。ぴんと背筋を伸ばし終焉獣達を引き寄せる。
「参りましょう、私は騎兵隊の執事たる彼者誰!
道を開く者の守護者ですとも。騎兵隊が通る道はいつだって広々としたロビーでなくては!!」
朗々と声を発する。露払いとは言うが、ベヒーモスの肉体から毀れ落ちてきた終焉獣達はベヒーモスそのものを削る事と同等だ。
リソースを分け与えて有象無象として姿を現しているのだ。だからこそ、彼者誰と武器商人が引き寄せる終焉獣の前に鮮やかな紅色の光が一戦する。
ぎらりと瞳を煌めかせたのは『騎兵の先立つ赤き備』エレンシア=ウォルハリア=レスティーユ(p3p004881)であった。
「ふん、生きるか死ぬかなんてなぁその時にならねぇと分からねぇ。
ま、死ぬ気はねぇし死ぬとしてもただで死んでやる気はねぇよ……いや、死んだら誰かにシバかれるか」
エレンシアの視線はイーリンを捉えた。何時だって彼女は『絶対生存』を掲げているのだ。
だからこそ、『誉れ』を胸に、名乗り上げるのだ。
「我は騎兵隊の先鋒にして赤備! エレンシア=ウォルハリア=レスティーユ! 行くぜ!」
――それは誉れである。
エレンシアは斬り結ぶ。『騎兵の赤備ここにあり』と朗々とその声音を響かせて。
「臆するな!! 進め!!」
駆け行く兵士達は道を開くが為である。ベヒーモスの身震いと共に落ちてくる小さな終焉獣達。それらはあの滅びの獣の『リソース』を分け与えたものであったのか。
目を瞠った『ロクデナシ車椅子探偵』シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)は「なぁるほど」と唇を吊り上げた。
小さな終焉獣達を斥けて、そして大物であるベヒーモスの足を挫くのだ。それだけで『手が届く』
「持てる智の限りを尽くした、楽しい戦いの日々だった。
さて、無事この戦いを一段落させようじゃないか……また、次の戦いの為にも」
故に、シャルロッテは徹底的な支援を行なった。仲間達を支え続けるのは自らの在り方だ。
イーリンへの指示を仰ぎ、そして、彼女を支え続ける。智は泉の如く深い、しかして、その静謐なる泉に培われた『水』は溢れかえるほどに彼女の心を震わせただろう。
「……思うままに動き給え、取りこぼしはこちらで抑えよう」
仲間達と共にある。前線に彼女は立っていた。眩い金の髪を揺らす白銀の娘は唇を吊り上げる。
「まだ私は死ぬつもりはない、まだ仲間を死なせたくはない、まだ混沌を滅ぼさせるつもりはない!
――私の名はレイリー=シュタイン! 騎兵隊の一番槍よ さぁ、皆行くわよ!」
駆け行く『騎兵隊一番槍』レイリー=シュタイン(p3p007270)は無数の攻撃の雨の中でも臆することなく声音を響かせた。
騎兵隊で切り拓くその道にレイリーは死骸の一つも転がっては堪らぬと護る事に尽力し続ける。
「私がいる限り誰も死なせないから、そう、私が歌い続ける限り」
人馬一体の逃げで何もかもを届かせやしない。レイリーを支える筆は全てを描いた。
『敗れた幻想の担い手』夢野 幸潮(p3p010573)は腹の底から笑みを込み上げさせる。ああ、なんて愉快な事か。
「"不吉"の象徴ァ!? ハ、ハハハッ──アッハッハッハ! 俺に不吉が効くとお思いでか!?」
見かけだけの木偶の坊。そう感じさせたのは動きが緩慢であったからだ。だが、それは同時に『攻撃が多く集まったときに乾坤一擲の一撃』が飛んで来る可能性があるともいうこと。
万年筆で描き続ける。構わず突き進めと声を掛け、前線に立っている彼女を見遣った。
「レイリー」
「ええ、幸潮、愛してるわ」
ウィンクをした彼女はにんまりと微笑んだ。彼女を喪わぬ為に支え続けねばならぬ。
愛しい人を喪わぬように、愛しい人達が住むこの世界を守る為に。
「……どれだけ巨大な存在だろうと臆しはしない! 人々の可能性を信じて突き進むんだ!」
手にした輝剣を手にして『プリンス・プリンセス』トール=アシェンプテル(p3p010816)は空より落ちてきた終焉獣を弾く。
剥き出された牙を受け止めて、払い除け、剣の切っ先に魔力が弾丸の如く纏わり付いた。敵の『おかわり』は多い。
それだけ騎兵隊が勢い良く攻め立てたからである。繰返すこととなろう。小さな終焉獣を斥ければベヒーモスの僅かな身震いと共にその体から蚤でも落ちてくるかの如く終焉獣の『おかわり』がやってくる。
「……それにしたって、有象無象と言うべきでしょうか」
思わず呻くような声を出すトールは白き騎士としてその場に佇んでいた。身を守る可愛らしい少女の姿ではない、誰ぞを守る『王子様』はプリンセスの涙を拭うために戦っているのだから。
「効いているのか?」
「さあ、大きすぎて顔色を伺えやしないわ」
肩を竦めたイーリンに『黒鎖の傭兵』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)は小さく笑った。
「やれやれ。いよいよ終末めいて来たが、戦場が有るなら突破出来るって大将が聞かないんだ。
……だから悪いが絶望は出来ないな。
まぁ元々絶望には拳叩き付けるタチだから、最初っからしてやる予定はないがな!」
にいと唇を吊り上げた。鎖の周辺に漂ったは黒い弾丸。それらがひゅうと音を立て、無数に終焉獣達へと絡みついた。
攻撃は単純明快だ。頭目たるイーリンの為に道を開き続ける為だ。
「――さっさと消えろ!」
繰り返し攻撃を続ける。己のリソースが足りなくなることはあるまい。仲間達の支援が支えてくれている事をマカライトは知っているからだ。
ひらりと舞うように、魔術の気配が集権獣へと纏わり付いた。騎兵隊の陣形はしっかりと組まれている。故に、前線には飛び出さぬようにと『Enigma』エマ・ウィートラント(p3p005065)は気遣ったのだ。
「世界の滅びも遂に佳境ってごぜーますか。滅ぶも残るもここが分水嶺。
やれやれ、妙なもの背負わされて……イレギュラーズなど、世界などどうなろうと知った事では無かったと言うのに」
呻くように言葉を発してからエマはくつくつと笑った。
「このまま世界が滅ぶのも少し惜しい。さて世界の命運を賭けた戦いの行く末を見守るといたしんしょうか」
まるで観測者のようにエマは言う。魔力が纏わり付けば、それらは道をも阻むであろう。倒れた仲間を支え、護る事も騎兵隊の在り方だ。
「――さあ、騎兵隊としてこの僕も参戦しよう。あの巨獣を倒すためにも、まずは道を切り開くところからだ!」
堂々と告げた『策士』シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)の握る剣はその手にもよく馴染む。
終焉獣を薙ぎ払う。牙を剥きだし、魔力を纏った剣の鋭さはシューヴェルトの決意であった。
ぎらと瞳を煌めかせる。終焉獣は多く増えてやってくるのだ。それでも、それが『ベヒーモス』のリソースを削り行けるのであれば構いやしない。
「まずは道を切り開け! あの巨獣を弱らせるためにも!」
真っ直ぐにベヒーモスの様子を見ていた『群鱗』只野・黒子(p3p008597)はまじまじと見詰めた。
山の如く聳え立った肉体を有するベヒーモスは一度脚を持ち上げた。黒子の警戒を聞いて前線の仲間達は一歩下がる。
「一歩進みます、ですが、また沈黙――」
ベヒーモスの一歩は鈍い。それ故に、攻撃を重ねて行けるのだ。だが、一度脚が持ち上がれば砂埃が巻き上がる。脚を降ろす動きまでが緩慢であるとは思えない。
それ故に一度離れねばならぬのだ。それはタイムロスともなろうか。隊全体の継戦力を意識する黒子は『魔女の動き』から目を離すことは無かった。
淡々としていた黒子に「動いたわね~」と周囲を確認したのは天義の聖女ことカロルである。そんな彼女を見付けてから『無職』佐藤 美咲(p3p009818)はひらひらと手を振った。
「ルルちゃん氏元気っスか? 私は過労で死にそうでス、なんスか5戦線+αって」
「げえ。おまえ、死ぬんじゃない?」
驚きを浮かべるカロルに美咲はひらりひらりと手を振った。いやいや、そんな真逆――なんて笑ってみせるがカロルからすれば十分な過労死ラインだ。
「んま、裏切りとかやる前は集団戦特化とかやってたんでね。
最終決戦とかそんなの関係ありません……今回も突っ込みにいきまスよ」
「そう? おまえって元気なのか不健康なのかまるで分からない女ね、美咲」
カロルが「無茶すんじゃないわよ」と声を掛ければその首根っこを掴んだのは『最果てに至る邪眼』刻見 雲雀(p3p010272)であった。
「ぎゃあ」
「カロル!」
勢い良く掴んだ雲雀に「雲雀じゃない! 何よ、おまえは私と喋りたかったの?」としたり顔で言う.相変わらずの少女だ。
雲雀は嘆息してから「カロル」とその名を呼んだ。嘗ては、敵だと、嫌いであると、そう接してきた存在だ。
「周りがもう口酸っぱく言ってると思うけど、前には出ないようにね?
何かあれば俺もすぐに助けられるようにしたいけど常にそうはいかないだろうし。
それに、君の元気さで後ろから応援してくれるだけでみんな頑張れるんだから」
「それって邪魔って事?」
「……聖女パワーの見せ時なのはわかるけど、友達に心配かけないようにね? 俺も友達が傷つくの見たくないからさ」
その言葉にカロルがにんまりと笑った。「後で騎兵隊に私を紹介なさいよ。おまえらを支える女だし」と彼女は明るい笑みを浮かべて見せた。
心配だなあと呟く雲雀が助け船の用意をしながらも、過保護さを発揮したのは言わずもがなである。
前線には無数の攻撃が飛び交っている。乱戦状態だ。どれ程に危険であるかは定かではない。
「ファルカウ」
呼べば、彼女はベヒーモスの影に居た。
「生きる為に命が命を奪う……それは覆せない理だ。俺たちは常に命を犠牲にして生きている。
それが火種になるか否かの違いだけ。例え全てを無に返して新しく命が生まれても――やがて同じことが始まる。
根本的な解決には決してなり得ないんだよ」
魔女の声音は空から聞こえる。ベヒーモスの傍に居るのであろうか。肩にでも腰掛けているかのようにも思える。
――いいえ、わたくしは全てを白く白く雪色に全てを真白に消え失せさせて……何もかもを消し去るのです。
雲雀は苦しげに眉を顰めた。終焉獣の排除を目的として居るが、天より落ちたる終焉獣を払い除け続ける。
「ルルちゃん氏、本当に前に行っちゃダメですからね!」
美咲の言葉に振り返ったカロルは「分かってわよ~」と笑った。美咲は仲間達と共に前へ、前へと進み行く。
ベヒーモスの元へ行くための道を開くことが自らの役割だと知っていた。『出せるリソース』を全て提示し、維持をし続ける。
「さ、進みまスよ」
美咲は見上げた。カロルがファルカウを見た気がして「ダメでスよ」と静かに告げ――そっと彼女の行く先を留める。
「……かの魔女に共感できる部分もありますが、私にはこの後に合いたい人が居ますので、その行為に抗います。
後は只の生存競争。此度は馬に乗りませんが、騎兵隊、罷り通ります」
致し方ないと言う様に『遺言代行業』志屍 瑠璃(p3p000416)は息を吐いた。
剣の先に纏わせた、闇の気配。漆黒に塗り固めた其れ等が敵を穿ち胸を突く。終焉獣がぎい、ぎいと声を響かせた。
魔女達はファルカウの傍から降り立ってきただろうか。それだけ、イレギュラーズの果敢なる攻めがベヒーモスの膝を付かせたのだ。
「……ファルカウ。まだ自分は諦めてないんやわ。
この世界で生きる事を。せやからさ。壊してもらっちゃあ困りますわ。皆がいるこの世界で自分は生きたいよ」
首を振った『晶竜封殺』火野・彩陽(p3p010663)に空から降る声音は「わたくしは、そうは思いませんの」と囁いた。
ああ、そうだろう。美咲と共に駆けてきた。彩陽はもっと、彼女に声を掛けたい。もっと彼女の思いを知りたかった。
終焉獣を払い除けた。初手から全力だ。出し惜しみなんてして居る暇も無い。
そんなことをしていれば、大地は死んでいく。次々に新たな景色を飲み食らうように進んでいくのだ。
「ッ――」
これではもしも『世界』が続いていったってこの地は放棄せねばならないか。いいや、それは行けない。
彩陽は弓を引いた。ファルカウならば、屹度この地を救うことが出来る筈だ。天を穿て、成せる事がまだまだある筈だからだ。
瑠璃の紅色の瞳がつい、と逸らされた。その刹那に『雨夜の映し身』カイト(p3p007128)の雨が大地より天に昇っていく。
「……黒波の如く押し寄せる事で『なんとかなる』とタカを括られちゃ、困るんだよ」
カイトは手を伸ばした。符に乗せられた術式は、終焉獣を掴み取るが如く。確実に減らして、道を切り拓くのだ。
「――闘争が無くならないのは『生きなきゃならない』からだ。
平和を求めるならば、何かしら争わなきゃいけない。大小問わずな。
だからこれは既に交渉の場じゃない。意見を刃として押し通るだけの『喧嘩』だ」
どんな相手だって、構いやしない。カイトにとっての『本領』は場を作ること。
だからこそ、終焉獣の脚を縺れさせ、その場に留め周囲を巻込まぬ場所へと誘導して行く。
「この世界を、ここに生きる人たちを滅ぼさせはしない。
攻撃目標、終焉獣ベヒーモス及びその眷属。――全て、撃ち抜く……!」
眩き光と共に『八十八式重火砲型機動魔法少女』オニキス・ハート(p3p008639)は放った。
全力全開。動きが鈍った所を薙ぎ払う。ベヒーモスに向かう味方への道を開くが為に、魔力が展開して行く。
『∞.∞』――インフィニティモードに移行。マジカルジェネレーター、フルドライブ。バレル接続。
固定完了。超々高圧縮魔力充填、120%。ターゲット、ロック。
「マジカル☆アハトアハト・インフィニティ―――発射(フォイア)!」
放つ。何度だって、焼き払うが如く。それは仲間を巻込まぬが故に出せる全力だ。
打ち払われた敵影にさらなる姿が現れ続けるがこれで怯む『朝日が昇る』赤羽 旭日(p3p008879)ではあるまい。
「日寄ったり迷ったりしたけどさ。ここまでくれば固まった足も動くもんよ。
がむしゃらに走るしかできないけど……でも、騎兵隊の主目的は全員生存……聞いたからな、俺は!」
――イーリン・ジョーンズ!
ハッキリと宣言する旭日に応えるイーリンの瞳がきらりと輝いた。騎馬達と進む。味方の危機にも気を配れ、自らは戦になれている。
弾丸が、跳ね上がった。撃ち続けろ。止まってはならない!
「無理はしても無茶はしないっす、娘の為に帰らなきゃいけないっすからね! イーリン先輩、指示を!」
「ええ、まだ、足を止めてはならないわ!」
声を上げるイーリンに『先駆ける狼』ウルズ・ウィムフォクシー(p3p009291)はにいと笑った。
その瞳が真っ向に見据えたのは更なる姿を表す終焉獣と大地に立っている『枯蝕の魔女』エヴァンズであった。
――さあ、終わりにいたしましょう。
囁くエヴァンズの声音に、ぞうと大地が枯れ逝く気配がした。魔力を吸い取る相手を真っ向から見据えるウルズは「敵影、増加!」と叫ぶ。
レイリーが抑えきれない終焉獣を受け止める。それだけではない。声を荒げ伝達する。
エヴァンズの傍にルグドゥースの姿が見えた。影のように揺らぐ女の瞳がじろりとウルズを見る。
背筋に走った嫌な気配を拭うように『願い護る小さな盾』ノルン・アレスト(p3p008817)は首を振った。
自身はヒーラーである。だからこそ、ここで挫けてはならないのだ。ヒーラーの仕事は負傷者を減らすこと。そう、死を遠ざけることである。
――全員生存!
それは騎兵隊の掲げた目標だ。『挫けぬ笑顔』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)もノルンもその何方もがその仕事を自負している。
「……私の仕事は回復役! 私がいる限りガス欠なんてさせないし、ベヒーモスを攻撃する邪魔も通らない!
そしてできる限り友軍も死なせない! 命を落とすにはまだ早いよ! 希望を胸に一緒に戦おう!
でも倒れたばかりの人は下がって補給して! 長い戦いになるし貴方の出番はまたすぐ来るからね!」
穏やかに声を発する。美しい声音だ。凜として、それでいて仲間達の足並みを揃えるためにその微笑みは光となる。
ノルンはぐ、と拳を固めた。前線を行く『100点満点』Lily Aileen Lane(p3p002187)はがひらりと踊った。空より飛び込む少女のスカートがふんわりと揺れる。
フリルとレースの美しさ。それでいて、鉛の雨と共に飛翔する娘の双眸がベヒーモスを捉えている。
「鉛の雨よ! 勝利への道を指し示せ!」
Lilyの攻撃は澱みはない。鉛の雨は瀟洒な乙女の『執行兵器・薊』によって鼻垂れ続けるのだ。血潮は弾丸の如く飛び散るだろう。
執行せよ。星を砕くように――!
ノルンはただ、真っ直ぐ見据えた。戦うために、生きる為に、何をするか。
そう、きっと。
「参ります。背中を支え、前に進むために……ボクだって!」
今持ち得たのは『戦いを続ける為』の手段だったのだから。
成否
成功
状態異常
第1章 第7節
●
「デカいにも程があるだろ、いつぞやの鉄帝のアレが霞んで見えるぞ……」
呻くようにそう言ったのは『真打』紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)であった。
紫電の目から見て、それは巨山の如くであった。無数の目をその背に背負って紫電は駆抜けて行く。
赤いマフラーはふんわりと揺らいだ。地を蹴った紫電の一戦はベヒーモスにぶつかり弾かれる。
小さな舌打ちと共に、向かい合えば終焉獣が迫り来た。それらも黙らせねばならないか。終焉獣が空を飛ぶならばそれらは空からベヒーモスを打ち倒そうと狙う者の害となる。
「近くで見るとなおのこと、デカいね……」
天を仰いだ『冠位狙撃者』ジェック・アーロン(p3p004755)はごくりと唾を飲み込んだ。
いつかの日に仰ぎ見た竜は過去のものとなってしまったけれど――一歩進んだ巨躯の獣の恐ろしさに息を呑みジェックは銃を構えた。
「リヴァイアサンで見慣れたと思っていたけど、地上で見るとなお圧巻だ。
大きいっていうのはそれだけで力だから……厄介だね。とはいえ、やれることを一つずつ、だ」
為すべきは決まっている。ジェックの細い指先は一つ引き金に添えられるだけで命を狩り取る為の準備が整うのだ。
狙撃手は弾薬を手に狙い定める。足へと向けて叩き込め。騎兵隊によって開かれた道――狙うはただ一カ所だ。
「このデカブツを削る、さあ、やっていこうか」
ジェックの弾道に迫り来る終焉獣を蹴散らすようにして『泳げベーク君』ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)は走った。
味方の支援を行ないながら終焉獣の妨害を防ぐのだ。「さて、がんばりましょうか」と告げたベークは自らを奮い立たせ続ける。
ベークの傍を駆抜けたのは『竜拳』郷田 貴道(p3p000401)と『黒撃』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)であった。
「ジェック! こっちだよ!」
「うん、任せていて」
イグナートがひらひらと手を振った。駆けて行くイグナートの瞳には嬉々たる光が灯されていた。ああ、だから『イレギュラーズ』はやめられない。
「ここまでデカイ相手はハジメテだね!
今まではリヴァイアサンかジャヴァウォックが最大級だったけれど、今回のベヒーモスはソレを超える重量級だね!」
「ああ。……コイツが例のでっかくんってやつか! なるほど確かにデケェじゃねえかよ!
小細工は通用しそうにねえが、さて……叩き折れるか、あの脚……試してみようか!」
貴道はにいと唇を吊り上げた。地上からの攻撃に、傷口を抉り其処にジェックの弾丸を通すのだ。
コレは個人プレーとチームプレー、その何方もの側面がある。最終戦だ。意識もせずとも身についた戦いにイグナートの心が躍った。
「世界の命運を賭けた戦いで世界最大の敵と戦えるなんてオレたちは本当に運がイイよ!
命運だけでも、世界最大だけでもラッキーなのに両方だもんね! これを超えて生き残ればオレたちまだまだ強くなれるね!」
「ああ! 行くぜッ!」
貴道が大地を蹴った。力の限りぶん殴る。至近距離では対応しづらい。だからこそ、距離をとる貴道はくるりと振り返る。
「歩みを遅らせるくらいはしてやりたいが、どうだよ?」
「やってやろうよ!」
うきうきとしたイグナートに貴道は「やるぜ!」と笑った。巨体は緩慢ではあるが、叩き込んだ拳の強さで少しは『グラ』ついてくれれば構わない。
何度も、何度も、何度も拳を叩き付ける。イグナートはにんまりと笑って貴道と共に叩き込んだ。
ベヒーモスは硬い。拳にその衝撃が感じられるが構わない。ああ、なんて楽しいのだろうか。
「幸せに生きる未来を掴むために、安全な場所に引っ込んでなんかいられないからね、とっとと止まれ、デカブツ!」
安全地帯なんて何処にあるかは定かではない。それでもジェックは退く事は無い。
「そうだね! ジェックちゃん! でも、とっても大きすぎない?」
慄いたのは『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)だった。「R.O.Oで戦ったけどこんなだっけ?」と振向いた焔に水夜子が「大きいかも知れませんね~」と返す。
「本当!?」
「どうでしょう」
「えっ、嘘!?!? う、ううん、きっとこれはボクが怖がってるから、それで大きく感じちゃってるんだ。
ここは現実で、あの時と違って死んだら本当に終わりだから……それでも、世界を終わらせるわけにはいかない!
1度は勝ったことがある相手なんだ、今回だってきっと勝てる!」
焔は決意するように言った。イグナートと貴道が叩き込んだ場所に、焔も続く。カグツチを突き立てるのだ。
「ねえ、爪と肌の間ってどうかな!?」
「突き刺して起こって踏み潰されたらどういたしましょう」
「どうして脅すの!?」
水夜子がくすりと笑う声がした。ああ、そんなの、怯えている場合じゃないのだ。
「ふーむ……正直役に立てるかどうかも分からんが、やれるだけの事はさせて貰おうか。
なに、元はとうに朽ちたはずの身。此処で散るならばそれも良し」
うんうんと頷いたのは『未だ遅くない英雄譚』バク=エルナンデス(p3p009253)である。
この程度の苦行には慣れているのだから何も問題はあるまい。少しでも負傷を押し付け返せることを目的にしているのだ。
サポート役のバクに背を押されるようにしてイグナートと貴道の猛攻は続く。
「さて、噂のでっかくんをどうにかして止めねば、ファルカウの所まで辿り着く事すらできないのね。うん、何とかしてみせるの」
ぱちくりと瞬いたのは『ファイアフォックス』胡桃・ツァンフオ(p3p008299)だった。
全体支援は底上げだ。それだけではない。胡桃は自らの戦い方として通常攻撃を繰返す。
「一つ一つは小さな火でも、二つ合わせて炎になると、どこかのだれかが言っていたの。みんなの力を合わせて、止めるのよ」
そうだ。だからこそ、胡桃も止まることは無い。蒼火の化身は炎を司る。胡桃が見据えていたのはベヒーモスと共に世界全てが滅び行く様を見守って居るファルカウだっただろうか。
炎とは死の化身であると。彼女はそう言った。果たしてそうなのであろうか――それは定かではないが。
(生きて、帰る。私とて、その言葉の重みを分からずに約束した訳ではない。
届かぬ夢想の痛みを知っていた筈なのに……だが、約束したからには――手を伸ばす義務がある)
約束を口にした『61分目の針』ルブラット・メルクライン(p3p009557)はあの小さな掌を思い出した。
ぎゅうと握り締めたその温もりが『これから先の未来』を夢想してくれていた。
だからこそ――迷う事なんてないのだ。ルブラットはナイフを手に駆け行くのだ。白昼夢の続きに居るように、ルブラットは進むのだ。
空を駆り、ベヒーモスの脚を狙い続ける。ルブラットの周囲を舞う暗器は穢れなきクロークをふわりと踊らせながらベヒーモスの脚の動きを胡乱にさせる。
それこそが、好機だ。傷付いた。幾つもの細かな傷がベヒーモスの脚に踊っていた。
それを爺と見詰めていたのは『ガイアネモネ』紅花 牡丹(p3p010983)だった。
全てを終らせて、もう一度。それを『アドーニスの園』と呼ぶらしい。
「アドーニス、か。偶然なのか、それとも名前の由来かは分かんねえがよ。
その名を出されちゃオレが黙ってられるはずねえだろ、なああ!
全てを見てたっつうなら、かーさんのことも知っててやってるっつうことだよな!? 売られた喧嘩、買わせてもらうぜ!」
叫ぶ牡丹へと魔女ファルカウは切なげな声音を響かせた。
――貴女の母が死んだ事とて、戦乱でしょう。どうして、もう一度繰返すというのです。
ああ、何ら分かっちゃいないのだ。相手は何もかも分っちゃいない。
だからこそ、その膝を挫けさせあの魔女を下に引き摺り堕とさねばならない。終焉獣を引き離す。
この巨躯だ。相手の動きを止めることにその前に立つことは危険だ。
「ならまっ先に真正面からぶん殴ってお膳立てしてやるぜ!」
ぎらりと睨め付けたガイアドニスはただ、只管に傷を付けることに注力した。
そうしなくては、何も届かない。言葉も、何もかも。感じ取った思いでさえも。
成否
成功
状態異常
第1章 第8節
●
「アイオンさん! 来たよ!」
駆け寄った『星月を掬うひと』フラーゴラ・トラモント(p3p008825)にアイオンは「ああ、フラーゴラ」と微笑んだ。
屈託なく笑った青年は眼前の巨体にどの様に戦うべきかを考えて居るらしい。
考え得る限りでも『状況』は変化している。ベヒーモスの前に魔女達が姿を現し始めた。ファルカウはベヒーモスを護る事を目的として居るだろう。
「……フラーゴラ、ベヒーモスを捕らえるための術式はまだ少し時間が掛かるんだ。何せ、膝を付いてくれなくっちゃならないからだ」
「分った。それに、お腹空いちゃうよね。これが終わったら美味しいご飯作るからね!
ワタシの役割はヒーラーとして皆を癒すことだから。
後は振り返らず皆前へ! 背中は任せて! ベヒーモスに真っ直ぐ向かおう!」
にんまりと笑うフラーゴラは迷うことなく駆け出した。ベヒーモスの脚を狙うように戦うのだ。
「行くよ行くよ! こっちだって止まらないよ!」
回復を施すフラーゴラに支えられたのは天義の騎士達もである。後方で守られるようにして『ファルカウの加護』を与えているフランツェルは手をひらひらと振っていた。『傲慢なる黒』クロバ・フユツキ(p3p000145)は小さく息を吐く。
「……リュミエは終焉の方か。ま、だからといってファルカウを止めないわけにはいかないよな。言ってやったんだ『必ずハッピーエンドに導いてやる』と」
クロバの声を聞いてからフランツェルは言った。ベヒーモスは大地を荒し、全てを殺し尽くす。故に、この歩みは止めねばならないのだ、と。
魔女ファルカウを止め、魔女ファルカウを救うこと。それこそがクロバにとって必要なことだ。
「見届けたならちゃんと元に戻ってもらわないと困る。
深緑の歴史書にしっかり先の事件含めて顛末を記録してもらうからな」
「うふふ、その為に頑張ってね」
石になろうが彼女は明るい。楽しげなフランツェルに背を向けて、クロバは走り出した。
「さぁ、切っ先を向けるは終焉そのもの。
そのハッピーエンドにはお前の存在も含まれてると教えに行くぞ――ファルカウ」
大地を踏み締めた。斬りつける刃の鋭さは信念そのものである。クロバは死神だ。それでも『目の前の死』を許容など出来る訳がない。
「さあ、行くわよ」
背後から音頭をとる――それでいて前に出ることを否定されてちょっぴり拗ねている――カロルを振り返ったのは『同一奇譚』ロジャーズ=L=ナイア(p3p000569)であった。
「貴様――カロルだったか? ――貴様は本当に羨ましい女だ! ――奴は幸せだと思うがな」
「カロルよ。ええ、聖女ルルでも構わないわ。私もおまえの愛した男は幸せだったと思うけれど」
そんな風に揶揄う彼女からロジャーズは目を背けた。遂行者だ。頁を手繰れば『姿が見える』。
「アーノルド! ――貴様の愚かさをこの女に叩きつけてやれ。遂行者だった貴様等の所為で――私が世界を滅ぼすと約束する破目になったのだ!」
そうだ。それが全てだった。背後に居る女も、ロジャーズの心を離さぬあの男も。
行き着く先は同じであった筈なのに。ロジャーズの開く障壁の背後に守られながらカロルは「あの男は羨ましいわね」と言った。
「何?」
「だって、私は失恋したからね。何だか、おまえの愛は永遠になったじゃない」
なんてそんな風に笑ったカロルに気付いたのだろう『神殺し』リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)が駆け寄ってくる。
「ルルー!」
「ああ、リュコス」
「『ぶん殴る』といえば、ぼく! そう、ぼくも来たよー!」
何処か楽しげに声音が弾んだ。とりあえずはあの『でっかいの』が邪魔なのだ。カロルはファルカウを殴りたいとも考えて居た。ならばリュコスもその『道』を開く手伝いをするだけだ。
その鮮やかな瞳が細められた。終焉獣を引き寄せて、滅びの気配を斥ける。『でっかくん』は巨大だ。だからこそ、骨が折れるのだ。
「ルルが殴りたい人はまだまだ?」
「ええ。まだまだだけれど、あそこに居るのだけれど『魔女の使い魔』みたいな奴らはぶん殴っていきたいわ」
拳を振り上げたカロルにリュコスは小さく笑った。ならば、ベヒーモスを殴れば良い。
「カロル様は『ぶんなぐる』のですか?」
きょとんとした『願い紡ぎ』ニル(p3p009185)にカロルは微笑んだ。「ええ、そうよ」と胸を張る。ぱちくりと瞬くニルに「おまえは知らなくて良いのよ」とカロルは頭を撫でた。
それが嬉しいのだ。カロルがニルと呼んでくれるのが嬉しい。誰かと一緒に居られるのは、あたたくて、『おいしい』。
この世界の半分が『かなしい』でできていても、それだけじゃないのだ。
ニルは杖をぎゅうと握り締めて息を吐き出した。
――おねえちゃん、いこう。
ニルの姿を見詰めていたカロルは「それはニルの大切な人なのね」と問うた。
「はい」
「なら、その子が壊れないように私も祈りを捧げるわ」
微笑んだカロルの傍に立っていたリンツァトルテも神に祈りを捧げた後に「行こう」と振向いた。
頷いたのは『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)だ。その手に握り締めたのは聖盾だ。
「ぶはははッ、来たぜ最も新しき友よ! 聖盾の習熟には手ぇ焼いたが、間に合ったぜ!
というわけで聖盾継承者セレスタン=サマエル・オリオール代理ことゴリョウ・クートンが手ェ貸すぜ!」
堂々たるゴリョウの手に握られていたのはカロルにとっては友人のセレスタンの盾であった。
「カロルの嬢ちゃんもサマエルの盾と同じ戦場に立つことになるたぁ思ってなかったろ? 奴さんのしたり顔とか想像しても良いんだぜ!」
「……ホント嫌になる」
そう言いながらもカロルは笑っていた。ゴリョウは腹を叩いてからからと笑う。
きっと、サマエルならば――「良いだろう? カロルよ」と楽しげに笑うのだ。盾は受けてこそ、剣は斬ってこそ。
だからこそ、ゴリョウは盾となる。その分は剣(正義)でぶん殴れとリンツァトルテは背を押すのだ。
「ああ、ゴリョウが居ると心強い。行こう」
「そうだね、行こう!」
リンツァトルテと共に前へ、前へと走るのは『聖奠聖騎士』サクラ(p3p005004)と『天義の聖女』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)であった。
「時間をかけてもこっちの被害が増えるだけだから一気に決めないとね! 行くよー!」
スティアは拳を振り上げた。サクラと共に終焉獣を斬り伏せてベヒーモスへと迫り行く。
その傍に、彼が居た。今井さんだ。
「今井さんが壊れる…えっ、実はひとじゃなくて本当に武器だったんですか!? ……出会って2年、衝撃の事実」
驚愕する『相賀の弟子』ユーフォニー(p3p010323)に「それ武器でしょ!?」と指差すカロル。
「わ、カロルさん! お元気そうですね。ムシャムシャくんたちも元気です?
わくわくするのは当然です。だって決戦。みんなの士気がこんなにも高くて、未来を勝ち取りに行くんだ、って高揚せずにはいられないですよ」
にんまりと笑ったユーフォニーに「そのイケメン武器なんでしょ!? は? いいなあ」とカロルは呟いた。
イケメンを別に侍らしているわけではないけれど――ユーフォニーはベヒーモスを狙う天義騎士団を補佐するように周囲の終焉獣へと万華鏡の鮮やかな世界を叩き付けて行く。
少しでも敵が落ち着いたならば爪楊枝のようにちくりと痛みを与えたいのだ。
「お願いしますね今井さん。攻撃を爪楊枝や縫い針に見せて、視覚的にも痛そうに! ――見てるかわからないですけども」
「頑張ります!」
やる気十分な今井さん。契約書に則って、ちくり――するとベヒーモスがくぐもった声を漏した『気がした』。
「……ちょ、ちょっと効いて居るみたいですわね」
『歩く災厄の罪を背負って』リドニア・アルフェーネ(p3p010574)は驚いた様子でベヒーモスを見た。嫌がらせ的な爪先ちくちくも良いが傷も大きく開きつつある。
「まーったく嫌になる程デカすぎましてねえ!! 狩りするにも猟銃の口径が足りません事よ!
まあそれでも何度だって戦い続けますわ。それが、私ですもの」
堂々たるリドニアは声を響かせる。進め。膝の傷を狙えば良い。零距離に近付くように『届かせろ』!
「続け続け。天義の騎士達よ。あの足を崩せば勲章もんですわよ」
にいと唇を吊り上げた。リドニアは出来る限りの拳を叩き付けてあのバケモノに挑むのだ。
(――なんだ。夢にまで見た、御伽噺がここにあるじゃありませんの)
まるで英雄譚のように。騎士がアルフェーネ卿と呼ぶ。ああ、此の儘戦い続けよう――!
「んー、ルルちゃんにわかるなら教えて欲しいんだけど、指輪の力で滅びをなんとかすることってできるのかな? 例えば封印とか?」
問うたスティアにカロルは「……どうしたいの?」と問う。その問い掛け方に何か、切欠がある気がしてスティアは息を呑んだ。
「誰かを守る為に使えるのは知ってるけど、他に手段の使い道もあれば私達にできる事も増えるのかなって思ったから……。
ここにはマナセちゃん、ルルちゃん、フランツェルさんもいるし、アレクシアさんだっている。選択肢は多い方が良いでしょ?
後から後悔するのはもう嫌なんだ! できる事があるなら試してみたいなって」
「私も分らないわ。だって、指輪は壊れてしまうかも知れないじゃない。
ただ、滅びをなんとかすることが出来る可能性はある。でも、どこまでかはわからない」
「……如何すれば良いかを考えた方が良い?」
「いい」
カロルは神妙に頷いた。
「私と祈る?」
「考えておこうかなあ」
スティアはにんまりと笑ってからサクラを振り返った。
「そうだよね、サクラちゃん」
「うん。私はファルカウのことは知らないけれど、スティアちゃんが助けたいって言うなら全力で助けるよ!
私とお祖父様の禍斬は折れちゃったけど……セツナお兄様が持ってる禍斬・雪があれば手伝えるかも?
でもお兄様、色々やらかして出奔してから行方不明なんだよねぇ……。
禍斬・華と月も持ってきてはいるから、力を取り出すとか出来るなら使って貰って良いんだけど、いずれにしても滅びの気配を減じないとだね!」
「兄何処行ったの?」
「さあー……」
それは分らないけれど、何か『リンツァトルテの聖剣』なども合わせれば何か出来るかも知れない。
そう考えてからスティアとサクラは顔を見合わせた。
成否
成功
第1章 第9節
●
これが最終決戦だ。『戦輝刃』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)は傍らで尾を振る相棒を見た。
「今更置いて行こうとはせんよ、ポメ太郎。お前はもう、戦友に等しい」
使い魔であったポメ太郎とは沢山の戦場を駆けてきた。危険地帯であろうともポメ太郎は臆することはなかった。
使い魔である以上は主の傍に居るのが辺り前だっただろう。だが――ポメ太郎も、様々な出会いを経た、そして友人が出来たのだ。
「マナセの傍に居たいのだろう、行って来い。彼女を応援してやれ。俺は、俺の戦場に赴かねばならん」
「くぅん……」
良いんですかとでも問うようなポメ太郎にベネディクトは笑いかけた。「大丈夫だ」と。ポメ太郎が友人と共に過ごすその時を主として喜んでいるのだから。
「マナセさん、ベヒーモスをぶん殴るんだよね。僕も頑張ってぶん殴るよ。みゃー」
目の前には魔導書を手にした少女がいる。桃色の髪の小さな彼女は『魔法使い』だ。そんな彼女に穏やかに話しかけたのは『祈光のシュネー』祝音・猫乃見・来探(p3p009413)だった。
「ええ。ぶんなぐりましょう! えいえい!」
拳を振り上げた彼女の様子に小さく笑ったのは『暗殺流儀』チェレンチィ(p3p008318)だった。
「それにしても、カロルさんとマナセさん、お二人何だか気が合いそうですねぇ。気合い十分なのは頼もしいですが、無理はしないでほしいです」
「そうかしら? ふふ、お友達が増えると良いわね!」
天真爛漫でまだまだ幼いマナセと自由奔放なカロルには共通点があったのだろう。彼女達のティータイムを一緒に楽しむのも屹度良さそうだとチェレンチィは目を細めて微笑んだ。
「マナセさん、お供をさせて頂けますか? マナセさんと共に『ぶん殴り』ます」
「うん、とってもうれしい!」
彼女はチェレンチィと共に空を駆ることが好きだ。彼女は自分を守ってくれることを知っている。チェレンチィだけではない。傍に走ってきてくれたポメ太郎も、声を掛けてくれた祝音も、大切な友人だ。
「アイオン、マナセさん、遅ればせながら私も参戦させていただきます。
運命の巡りあわせは不思議ですね。本来ならば出会う事も、戦う事もなかった私達が今ここに居る。
こんな時に何でしょう、世界を救う戦いを一緒に出来る事が嬉しいです」
まるで『あの夢の様な』――『白銀の戦乙女』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)が恭しく挨拶をすればアイオンは「君になら任せられる」と屈託なく笑った。
「俺とマナセはこの世界の住民じゃない。本当の勇者でもないし、世界を救うだなんて大それた力も持ってはいないんだ。
けれど、シフォリィとなら『あの夢の様な』未来が来る気がするんだ。なんて、気障ったらしい?」
「気障ったらしい」
「マナセが言うなよ」
シフォリィは小さく笑った。きっと、彼ではない。自分だって彼女ではない。けれど――
「……なんて、言ってられる場合でもないですね、彼女……ファルカウにも、言いたいことが山ほどありますし。
まずは話す為にも、あの獣を倒しましょう!」
駆けるシフォリィは脚以外にも、目が有効なのだろうと『膝を付かせてから』の指針を固めていた。ベヒーモスの機動力を削ぐならば爪先か。それとも。
傷は広がりつつあった。ベヒーモスの肩の付近に座る魔女ファルカウの気配はこの滅びの獣を守る為の刺客を差し向けたのだろう。
「ファルカウ、さん……大樹の嘆き達の事は……クェイスの事は、どう思ってるの。
彼等は大樹ファルカウを護ろうとしたのに、頑張ったのに……彼の結末すら、君は否定するの?」
苦しげに呟く祝音に、魔女の声音が風に乗せられて響いた。
――彼の決意を最初に蔑ろにし、敵であると踏み入る事をも否定した彼へ刃を向けたのはイレギュラーズと呼ばれる『外の者』でしょう。
祝音は唇を噛み締める。言葉を費やせど、彼女にとっては『侵略者』の扱いなのだろうか。それでもいい。それでも、ベヒーモスを止めて、何度だって叩き付け続けるだけだ。
「祝音、退いてぇーー!」
光の速さで魔術が叩き付けられる。マナセと共に駆けたのはチェレンチィ。ベヒーモスは巨大だ。だが、少し歩みが緩んだのは猛攻のお陰であろう。
「ベヒーモス……! あの時目覚めさせてしまった終焉獣が動き出しましたか……しかも、幻想に向かって進んでいるとは!
これ以上ラサも踏み潰させる訳にはいきません。何とかして止めねばですね。
ロックさんの準備してくれている魔法陣もありますし、どうにか早いところ膝を付かせられたら、被害も少なくて済みそうですし有利ですよね……」
「この辺何もないの!?」
マナセが周囲を見回した。チェレンチィは空から見た景色で出来るだけ周辺の人間は避難していることを伝える。
何度も、慈悲を帯びた刃は鋭く命をも狩り取るように振り下ろされる。「マナセ」と呼んだのはベネディクトであった。
「――では、行くとしよう。俺達が生きるこの世界を守る為に」
向かう先は、ただ一つ。
「まだ、序の口だ。相手もまだまだ奥の手は隠しているのだろうが……臆せず行くぞ!」
ベネディクトに促されてマナセは「頑張るわ!」と力強く行った。魔力の奔流と共に騎士は駆ける。
鋭き一閃を防がんとする黒き魔力に顔を上げたのは『結切』古木・文(p3p001262)であったか。
「ルグドゥース」
その名を呼べば影を編んだようなドレスの女は漆黒の気配を揺らがせた。
「彼女の能力には謎が多いだけに早めに対処を考えておきたい。さて、どうやって調べたものか……」
思わず呟く文に「戦いながらだ」と『よをつむぐもの』新道 風牙(p3p005012)は言う。伝承にさえ残らず闇に葬り去られた魔女ルグドゥース。鳴ればこそ、その情報を出来うるだけ引きだして『次に』撃破する機会を得るべきだ。
(精霊や魔女に対する興味、知りたいと思う衝動は怪異のような危険な非科学的性質に惹かれる延長。
静かに滅びを受け入れるべきだったのか。……此処に立っている今でも分からない。
穏やかに生きていたいと願いながら結局は争いに身を置いているためファルカウのことを責められるだろうか)
自問する文の目の前にルグドゥースと向き合う風牙が居た。聞きたくないと耳を塞いだって無理矢理でも聞かせるつもりだったのだ。
「とりあえず、共通の話題で盛り上がろうか。ファルカウについて、とかどうだ」
「……」
ルグドゥースの切れ長の藍色の瞳が風牙を見た。
「ずっとずっと長い間、この世界と、世界に住む命を慈しんできた人。
すげえ人だよな。オレも、目指す方向は同じだとは思うんだけど、とても真似できねえし、思いつきもしない。
そんなすげえ人が、今、多くの命をその手にかけようとしてる……なあ、ルグドゥース。あんたはどう思う。今の彼女の行ないを。オレは、すごく哀しいよ」
「あの方が望むのであれば」
ぞう、と背筋に嫌な気配が走った。まるで、風牙の攻撃の真似事だ。威力までは違うが、その在り方は良く似ている。
「反射ってワケ?」
にぃと唇を吊り上げて蛇と共に踊ったのは『音呂木の蛇巫女』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)だった。ああ、なんて愉快なのだろう。
パンドラフェスだ。燃やせば燃やすだけ勝てるヴィジョンが湧いてくる。
「魔女ちゃんいっぱいいんなー! 誰にしようか迷っちゃうな! ガハハ! ここまできちゃったらもう、無理やりにでも親睦深めるしかないだろ!」
『攻撃を真似してくる』なら単純で良い。風牙と与えた攻撃の全てを真似るわけではない。最後に受けた攻撃をルグドゥースは『模倣』するだけだ。
「いやいや、かませんじゃん、これ! ほうら、来い来い! この戦神、斃れるつもりはないのだけど?」
にいと笑った。祭は未だ未だ始まったばかり。蛇は執念深いのだ。だからこそ――飲み込むまでは離れやしない。
「見付けた」
囁く『灼けつく太陽』ラダ・ジグリ(p3p000271)の引き金が引かれる。弾丸を受け止めるように腕を上げたエトムートが舌を打った。
「よう、いい加減決着つけようじゃないか。世界が終ろうが終わるまいが、お前に逃げられたままじゃ寝覚めが悪いんでね!」
「またお前か」
「そうだ。この顔、覚えただろう?」
だらりと垂らした腕を動かしたのはラダの弾丸がエトムートにまで飛び込んだからだ。指示などさせるわけがない。これまだ高みの見物をして居た男の元へと飛び込んで、この指揮官ぶった男にお終いを与えるのだ。
「行く手を塞ぐっす!」
相手が終焉獣に自らを守らせぬように。慧はラダの開いたエトムートへの道を維持した。周囲にばら撒かれた滅びの気配を『優穏の聲』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)は打ち払う。
「終焉獣達の数が多いが、エトムートを守る為か」
「そうっすね……指揮系統的に守ろうとするのはよくわかるんすけど」
慧は真っ向からエトムートを睨め付けた。自らに注意を向けるゲオルグと、エトムートの前へと踊りださんとする慧。
「ベヒーモスもファルカウも、止めなきゃなんねえんで邪魔しないでもらえます? ぶん殴りたいっつーお嬢さん方もいるんでね」
癒やしの気配を宿すゲオルグの支えを受けて、慧はエトムートに肉薄する。
彼がこの場から居なくなれば終焉獣は何の指揮も受けずに暴れ回るだけになるだろう。
「面倒な」
「ええ、同意いたしますわ」
囁くルグドゥース。その声音を受けてからエトムートは『この場の二人が狙われている』事に気付いてからがりがりと頭を掻いた。
「我々が最初の餌のようだが」
「……悲しいけれど、皆を殺して差し上げましょう」
――「だと、よ」と『駆ける黒影』ルナ・ファ・ディール(p3p009526)は言った。にいと唇を吊り上げて振り返る。
「ハウザー!」
「行け」
群の頭(ボス)は牙を剥きだしただろう。ならば、ルナもそれに従うのみである。
「よぅ、ボスからのご指示でな。そっちの群れのボス2~3匹狩って、道を開けろだとよ。人使いが荒ぇもんだよなぁ?
……俺ァ群れの小物1匹。対してお前は中ボスだ。その頭抑えられりゃ、お釣りが来るぜ。
つっても。ただの小物であしらわれるほど、俺ァ安くねぇけど、な!」
「お前も、面倒な」
思わず呻いたエトムートに「コレから始めるぜ、良い女にもお呼びが掛かってんだからな?」と鼻先で笑って遣った。
さあ、コレから踊ろう。最後まで。勿論、『お前が息絶えるまで』!
成否
成功
第1章 第10節
●
「相変わらず大きすぎて効いているか判りにくいけど……。
少しずつだけど動きが鈍ってる気がする、これならあと少しで行けるはず!!」
ちら、と前方を見遣ればエトムートや魔女との小競り合いが発生している。少しずつでも敵影を減らし、ベヒーモスの膝を付かせてファルカウ『のみ』にするべきか。『赤い頭巾の魔砲狼』Я・E・D(p3p009532)は宙よりベヒーモスの膝裏関節を集中的に攻撃し続けた。
そう、今こそ少しだけ本気を出すのだ。豊穣援軍との『協力体制』で傷付いたその場所を抉る。外皮は確かに破られていた。堅牢なそれが傷付けば中の肉はどの様な生物でも柔い。
傷口から血の代わりに終焉獣が溢れ出すのは流石は『滅びの獣』であるということか。
「うーん、R.O.Oの時と完全に一緒なわけでは無いのかなぁ……?
でも、悩んでも仕方がないね、今はとにかく攻撃を続けないと」
情報を得たい。悩ましげに呟くЯ・E・Dの傍をするりと抜けて行くのは『悪巧み』をする四人の娘達だった。
「うふふ! このメンバー、悪巧みするには最適よねぇ、そうでしょ? ね、みんな」
揶揄うように言った『狙われた想い』メリーノ・アリテンシア(p3p010217)に「わるーい」と茶化したのは『死血の魔女』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)の傍に立っていたカロルであったか。
「流石に埒があきませんね……やはり弱点を探さねばですか。
……カロル。ちょっとだけ悪戯を思いついてしまったので彼女達とベヒーモスに実験しに行ってきます」
「ほんと、おまえたちって」
そうやって笑ったカロルに「良い子にして居るのですよ」とマリエッタは躾るようにそう言った。一方の豊穣援軍側では『ともに最期まで』水天宮 妙見子(p3p010644)が晴明の肩を勢い良く叩く。
「少しだけ彼女たちと遊んできます。えぇ、心配しなくとも戻ってきます故。
良い子で待ってるんですよ晴明……あとそこの偉~い人の監視もお願いしますね」
「俺は……幼子ではないのだが……」
「いいえ、私から見れば子供同然です。良い子にするのですよ」
晴明の妙な顔を見てから妙見子は「では、参りましょうか?」と微笑んだ。「悪友って本当に悪そうな面子ねマリエッタ?」と片眉を釣り上げて揶揄うように言った『夜守の魔女』セレナ・夜月(p3p010688)にマリエッタがくすりと笑う。
「って、冗談冗談。……半分だけね。何を思いついたのかしら。効くと良いのだけど」
――本当に悪そうな奴らだ、と『悪かった女』カロルが思ったのもマリエッタは気付いて居るだろう。
「さあ、頼みましたよお三方!」
サポート役たる妙見子に支えられて前進するメリーノは素足の儘で大地を踏み締めた。美しい長剣を手にし、金の髪がふわりと揺らぐ。
その姿はまるで。黒き翼を得たかの如く。先ず狙うは膝裏――先程まで攻撃が集まっていた場所だ。
「でっかくんが起立するイキモノならば「起立するために必要な筋肉もしくはそれに類するもの」があるはず。見抜きたいわぁ」
この場所の傷口は広げることが出来るだろう。しかし、バランスを崩して前に倒れては元も子もない。膝を付かせるためにアキレス腱を敢て狙った。
――腱を断つ。そして動きを阻むかの如く。
「獣……血のようにこの気配を循環させているのであれば……思いついたんです。
この傷口から、循環する気配に毒やそれに付随する力を流し込めば、それが全身に廻り機能する」
「では、毒って何だと思いますか?」
囁く妙見子にマリエッタは「あら、ご存じなのでは」と囁いた。
「さあ。彼の地で培った破邪の毒、滅びの気配で満たされたその体にはさぞ猛毒になりましょう。
幻想へは行かせません――その足を止めて頂きます」
「ええ。雨垂れ石を穿つ……きっと全然効いてない訳じゃない。生物としての弱所、関節とか、腱を狙って断てれば、或いは……」
だからこそ、アキレス腱だ。その位置を狙い『注ぎ込む』のは毒ではなく、もっと単純なモノでも良いのではとセレナは顔を上げてから――「パンドラ!」
はたと叫んだ。
ぴくり、と肩を動かしたのはファルカウであったか。滅びの気配を打ち消す可能性(パンドラ)は希望の光のようなものだ。
「……ファルカウ……」
妙見子は彼女を見上げた。
「眠りから目覚めてしまった哀れな魔女……そしてこの巨大な滅びの象徴もまた、起こされて大地を蹂躙するものになってしまった。
陸の獣。貪欲の悪魔。本来は一介の獣であったはずの名前であるのにいつから悪しき者と貶められたのでしょう。
皮肉ですね――きっと私達も同じようなことをしているのに」
その在り方が変われば、全てが変わってしまうのか。穏やかに過ごせやしないかと夢を見てしまう。
(だからこそ、討たねば。彼女たちを――これ以上愛しいものを壊させないように)
アキレス腱に叩き付けるのは続く『約束の瓊剣』ヴェルグリーズ(p3p008566)も同じであった。
「ベヒーモスが滅ぼそうとしている地にはたくさんの人の生活がある。
今そこに人はいないとしても大事な故郷を失う人もいるかもしれない……それはなんとしてでも防がないといけないからね」
ベヒーモスさえ止めれば魔女へと話が出来る。彼女のまじないならば、もしかすると枯れた大地を戻せる可能性もあるだろうか。
毀れ落ちてくる終焉獣の数々を屠り続ける。切っ先に、決意と信念を乗せて。
「動きが鈍い、ねぇ。何? まだ迷ってんの? やるならちゃんとやり抜かないとさ。こっちも安心して咎められないじゃん」
不機嫌そうな顔をして『虚飾』楊枝 茄子子(p3p008356)はそう言った。仲間達には翼を、そして、護りの術をと与え続ける。
「ルル、殴らなくていいから後ろいてよ。怪我したくないでしょ? 私も痛いのやだから。さっさと治してね」
「茄子子が私に頼むなんてな~?」
「何言ってんの」
「ふふふ」
カロルの悪戯な顔を見てから茄子子は「上から降ってくるから後ろに居なよ」と眉を顰めた。本当はあの口にでも飛び込んでやりたい。まあ、死ぬのだけれども。
「弱点は見当たらなかったし、単純な力押し勝負ってトコだな。
あの巨体ならバランスを崩すだけでもち致命的だろう、甲殻の隙間や関節の裏側など狙いにくい部分を優先して攻撃するぜ。
一箇所の足を集中攻撃して、バランスが崩れたところに畳み掛けるのが効果的だろうか。周りの仲間たちと攻撃タイミングを合わせよう。
――で、アキレス腱ってか?」
それは実に面白い。特徴的な弱点がないならば『人体と同じような構造だと定義して』戦えば良いと言うことか!
『竜の狩人』ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)の唇が吊り上がった。ああ、コレだけ巨大だと『狩り』甲斐もあるではないか。
狩人は持ちうる全てを叩き付ける。アキレス腱の外皮がぼろりと落ちたならば後は肉を切り裂き腱へと届かせるのだ。
それは繰り返しの行動となろう。何度も何度も、その行動を繰返すこととなる。
「ベヒーモス……! ……向こうでは何度も『やられた』相手……だが、怯むつもりはない! この世界を救うためにも……今度も奴を倒す!」
決意を胸にして『宇宙の保安官』ムサシ・セルブライト(p3p010126)は駆けて行く。
腱を断てとは中々オツなものだろう。それでも、ベヒーモスの体内に何らかのダメージを与える手立てを作り上げるというならば、橋渡となる何かが必要か。
(危険でもあの世界でやったことだ、こっちでもやれるはず……! いや、やらないと……世界を救えない!)
考えろ。考えろ。茄子子が与えてくれた翼で飛び上がる。それは小鳥遊 リンドウとて同じ。
「助かったよぉ!」
にこりと笑った娘は聖女アネモネの懐刀だ。だからこそ、翼を与えてきた存在をよく知って居るという顔をしたのだ。
「は? 誰?」
「あれ、アネモネんちのひと」
「……カロル知ってるの?」
「一応、私のことはシェアキムが保護してくれてるわけだし」
――ふうん、と茄子子は言った。目の前でリンドウは天義の騎士達と共に駆けて行く。
悪事を外から隠した狡猾さ、オンネリネンと争うことの強さがある。兎に角、『アネモネの大事な小鳥』を護る事に注力するのだ。
「こっちだよ、ほら、おねーさんの後ろに隠れてねぇ」
「お、おい」
『アネモネの花束』ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)はぐい、と腕を引かれる。アネモネに叱られると笑うリンドウに頷いて。
ああ、そうだ。世界を救わねばアネモネに叱られる。彼女の居る天義にまでこの滅びが広がらぬように――!
その絵筆は勝利を描き続けるのだ。リンドウが居ればアネモネが見てくれている気がする。さあ、進め。魔力を奔らせろ。
成否
成功
状態異常
第1章 第11節
●
「うわぁ、ほんとにでっかいんだな……ま、今は脚しか狙えないっていうんなら仕方ないよね。さっさと膝をつかせてやろう!」
にぃと唇を吊り上げて悪戯っこのように笑った『黄龍の愛し子』シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)がぎゅっと黄龍の手を繋ぐ。
「黄龍、一緒にいてもいい?
無理はしないように、なんて言ってられる場合じゃないんだけどさ。この手が届く限り全部、護りたいから。今回は一緒に戦っておくれよ」
「ああ、本当にシキは愛い子じゃなあ」
くすくすと小さく笑う黄龍に「そうでしょう」と彼女は笑うだけ。大切な人を、大切だと声にする。その人を守り抜きたいと声高に宣言する。
だって――『脚』を挫けば救える人が居ると知っているけれど、それだけでは物足りない。我儘にだってなりたいほどに大切だ。
「ベヒーモス。お前と再び相まみえる日をずっと待っていた
今度こそ俺はジェーン・ドゥとの誓いを守る。
彼女のお母さまを、世界を守るために……パンドラがくら削れようと構わない。この命を燃やし、仲間の背を押す歌を歌おう!」
その声音を響かせるのは『終音』冬越 弾正(p3p007105)だった。
ベヒーモスは、彼女の友達だった。でっかくんと軽やかな声音で呼んだのだって彼女だった。
弾正はよく知っている。『いけませんよ、アリス』と囁く自らの声音も。そんな自分を愛おしそうに笑ったあの子の顔も。
――デッカ君。一緒にお外に出ましょうと言ったけど、ごめんなさいね。
無理だったらこの世界を滅ぼしてから、私と一緒に死にましょう?
彼女は救われたくはなかったのだろうか。死にたがりだった。ジェーン・ドゥ。可憐なる娘。
彼女を思い弾正は歌い続ける。彼女の騎士を名乗れるように、多くの命を守るが為に――奇跡を掴むが為に。
「達郎。お前には秋永一族頭首の側近として……いや。共に戦い続けた友として、大切な役目を任せる」
「はっ」
柳生 達郎は弾正を見た。
「俺達は豊穣へ逃れる様に渡ったが、先祖代々、深緑の恩恵に預かってきた一族だ。今こそ滅びを退け、大恩を返す時!
天国の長頼の為に聞こえるくらい、俺達の音を強く広く響かせよう。そして仲間達を勝利へ導こう!」
豊穣の民として。その後方には霞帝が立っている。彼の傍を守るように『未来への陽を浴びた花』隠岐奈 朝顔(p3p008750)は立ちはだかった。
「カロルさんにリンツァトルテさんイルさん。霞帝に黄龍様……私が死んで欲しくない人が此処には沢山いる。だから私も全力で!
霞帝と黄龍様と共に! 世界の危機とはいえ、母国の偉い人が此処に居るの怖いんですからね?!
黄龍様も御身を霞帝の盾にさせません! よろしいですね!?」
「はは。しかし俺も可愛い女性を盾にはしかねるのだがなあ」
霞帝が軽やかに笑えば黄龍が「吾も可愛いだろう」と外方を向く。もう一体何を言って居るのかは分らない。
――けれど、死にたいぐらい苦しくたって、待っていなくてはならない人が居るのだから此処で滅びるわけには行かないのだ。
向かう先が幻想だというならば、『点睛穿貫』囲 飛呂(p3p010030)は意地でも、命を賭けてでも足を止めてみせると決めて居た。
撒かれた種は除去し弾丸を放ち続ける。行く先は『彼女』が待っている。『彼女』の家だ――ギルド・ローレットは彼女の居場所だから。
「幻想は、特に思い入れのある国だ。再現性東京から出て初めて足を踏み入れた国。何より、情報屋の彼女がいる国。
皆を信じてくれてるあの人の為に、おかえりって言ってもらう為に――絶対ここで止めて、勝って、帰ってやるんだよ!」
ユリーカ・ユリカにとって、彼女の両親が残したローレットは唯一無二だろう。
お父さんと笑う彼女は、何よりもローレットを守りたいと願っていた。
レオン、と心配そうに呟く彼女はそれでもローレットの名代として立っていた。
「負けて、堪るかっ!」
「はい。負けません。ニルたちは此処で止まれません」
『願い紡ぎ』ニル(p3p009185)は杖に光を灯した。おねえちゃん、きっと彼女は一緒に居てくれるから。
ふたりぶんのありったけ。それを叩き込むだけだ。ベヒーモスも終焉獣もなにもかも。『えいっ』と叩き付けるニルの傍に今井さんが居た。
「!?」
「お気遣いなく」
知らない人が隣に立っていたことに驚くニルにカロルが「ニル! 一度下がりなさいよ。回復したげるわよ」と手を振った。コレが終ったらシュークリームを食べに行くと約束を(向こうが勝手に)結んだカロルはニルの体を気遣っているようだ。
「あの今井さんって何?」
「カロルさんもイケメンを武器にしたければ闇市に行きましょう!
係長だった頃の今井さんに出会ったのは闇市でしたので。カロルさんが闇市を引く為にもしっかり戦いますよ」
「待って、人身売買じゃないの」
雑草を両手に握り締めていたカロルに『相賀の弟子』ユーフォニー(p3p010323)はきょとんとした顔をした。ドラネコのリーちゃんが周囲を各員し続ける。
ベヒーモスは足下に数個の傷が出来て居るか。それが故に、守らんとする敵影が現れたと見るべきだ。
「成程……少し状況が変化しましたね」
ユーフォニーが呟けば、上空からファルカウの声が聞こえた。
――青褪めたカーテンに覆われた空はどれ程に見苦しいのでしょうね。
人は苦しみ呻き、病に慟哭を遺しましょう。わたくしは、それを見て入られないのです。
何があったとて戦いを続けるというならば、それは病でありましょう?」
「……ファルカウが怒る気持ちも理解できるわ。それでも……だからって、このまま世界が滅んでいいなんて思わない。
戦いばかりだったけれど、流れた血は多かったけれど、沢山の命も、喪われたけれど。
誰かのために、何かのために、命を懸けてでも手を伸ばせる――そんな世界が、アタシは好きよ」
ああだって、愛おしい人とまだまだ見たい景色は沢山あるのだから。何より、あの魔女は愛おしい人の『母』のような存在なのだから。
『ベルディグリの傍ら』ジルーシャ・グレイ(p3p002246)は精霊達の気配と共にベヒーモスに一撃を叩き付ける。
「デカブツ! 止まりなさいよ!」
重なったのは『黒のミスティリオン』アリシス・シーアルジア(p3p000397)の攻撃。魔力の気配が重なり合った。
ベヒーモスの臑の傷口から終焉獣がぼろぼろと溢れ出す。その様子を眺め、周辺を掃討しながらもアリシスは嘆息した。
「此方のファルカウ様は、聞く限りではどうやら随分と変質してしまった様子。
彼女の言動は全く理解できない話という訳でも無いのですが、しかし……致命的に破綻している。
抱え過ぎたアークの影響に……既に人ではなくなったからか。或いは、長く生き長く世を見過ぎた弊害か。
……プーレル・ジールで見たファルカウ様はやはり、最初に眠りにつく以前に人であった頃の本来の姿、彼女の在り方という所なのでしょうね。
それを考えれば、今の彼女の姿は流石に私でも見るに忍びないと感じます」
そうだ。彼女は穏やかな女だったではないか。ファルカウは『聖域』を意味していると、そう言った。
――「ファルカウ?」
「ええ」
「ファルカウ!?」
「そうだと言って居るではありませんか。このアルティオ=エルムの主、ファルカウですわ、魔法使い。
わたくしもご一緒致しましょう。森で優雅に食人花(マンイーター)と遊んでいる暇はないのでは?」――
あの時の朗らかな声音をも思い出せば、『優しき水竜を想う』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)は悔しくもなるのだ。
「ファルカウ、あなたが止めて欲しいと願うならきっと止めて見せるわ。
でもそれは先にベヒーモスを何とかしてから。世界から命は奪わせない。木漏れ日の妖精、太陽の子としてはこれだけは譲れないもの」
光を纏う。ベヒーモスから毀れ落ちた終焉獣を振り払う。ファルカウはずっとベヒーモスの傍に居た。まるで諦観を抱いたかのような。
その焔の色に染まった瞳は、彼女が変質したことが良く分かる。
長く生き、長く世を見過ぎたからこそ彼女は人では無くなったか。それとも――『長く生きたことで彼女は諦めてしまった』のか。
大樹の精霊と化した女と話がしたい。そして、その心に芽吹いた悪の芽を摘み取るために。
「うむ、起こしてしまった責任は取らねばならぬからの」
頷いてから『殿』一条 夢心地(p3p008344)は光り輝いた。
シン・シャイニング・夢心地・アルティメットとなった夢心地が煌々と光り輝きながら空からやってくる。
「星よりも煌めき、月よりも優しく、そして太陽よりも熱く――これぞ一条夢心地の最終形態! シン・シャニ(略)じゃ!」
最早眩すぎて呆然としていたのは友軍側であっただろうか。
天より放たれた夢心地ビーム。眩すぎる太陽のような人影(殿)。
「ぬおおおりゃあああああーーーっ!」
その孤高たる存在を見詰めていたマナセは「すごおおおい、格好いい!」と指差したのであった。
成否
成功
GMコメント
夏あかねです。
●作戦目標
・『ベヒーモス』の完全停止
・『古代の魔女』ファルカウの無力化or撃破
●重要な備考
(1)当ラリーはベヒーモスが『幻想王国』に辿り着いた時点で時間切れとなり、失敗判定となります。
(2)皆さんは<終焉のクロニクル>系ラリーのどのシナリオにも、同時に何度でも挑戦することが出来ます。
(3)二章以降は各章の第一節に個別成功条件が掲載されています。確認を行なって下さい。
●参加の注意事項
・参加時の注意事項
『同行者』が居る場合は選択肢にて『同行有』を選択の上、プレイング冒頭に【チーム名(チーム人数)】or【キャラ(ID)】をプレイング冒頭にご記載下さい。
・プレイング失効に関して
進行都合で採用できない場合、または、同時参加者記載人数と合わずやむを得ずプレイングを採用しない場合は失効する可能性があります。
そうした場合も再度のプレイング送付を歓迎しております。内容次第では採用出来かねる場合も有りますので適宜のご確認をお願い致します。
・エネミー&味方状況について
シナリオ詳細に記載されているのはシナリオ開始時(第一章)の情報です。詳細は『各章 第1節』をご確認下さい。
・章進行について
不定期に進行していきます。プレイング締め切りを行なう際は日時が提示されますので参考にして下さい。
(正確な日時の指定は日時提示が行なわれるまで不明確です。急な進行/締め切りが有り得ますのでご了承ください)
●Danger!
当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
また、『古代の魔女』は現在の魔術形態と違ったまじないを駆使する為に何らかの『まじない』を付与される可能性もございます。
予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。
●フィールド
ラサの南部砂漠コンシレラ。後方には影の領域が、そして南方には覇竜領域がございます。
進行方向は幻想王国です。其の儘歩いて行けばラサのネフェルストも踏み潰されてしまいます。
(商人達は幻想へと避難済み、傭兵達は援軍となります。また、深緑は木がざわめき閉鎖状態にも等しいようです)
巨躯を誇る終焉の獣は移動を行っており、皆さんはダメージを与えることでその移動を遅らせることが第一目標となります。
第一目標を達成した時点で状況は変化し、終焉の獣をその場に止めての撃滅作戦が行われます。
終焉獣ベヒーモスが通り過ぎた後は更地になります。オアシスの水は涸れ果て、砂さえもなくなり滅びの気配が広がります。
つまり影の領域を広げている、といった印象です。ただし、『影の領域の効果』がベヒーモス周辺では漂うため以下の『パンドラの加護』を利用可能です。
・『パンドラ』の加護
このフィールドでは『イクリプス全身』の姿にキャラクターが変化することが可能です。
影の領域内部に存在するだけでPC当人の『パンドラ』は消費されていきますが、敵に対抗するための非常に強力な力を得ることが可能です。
また、フィールド上には滅びの種がばら撒かれ、滅石花と呼ばれる花が咲き誇ります。
・滅びへの種
成長することで魔法樹となります。滅石花を咲かせます。
その成長の大元はパンドラや大地そのもの支える魔素的なものです。大地のマナを吸いあげて、滅びの魔法樹を育てております。
種が数個ばら撒かれていますが、攻撃を加えることで成長が止まります。
●エネミー
・『終焉の獣』ベヒーモス
終焉(ラスト・ラスト)より現れた終焉獣(ラグナヴァイス)の親玉に当たります。
天を衝くほどに巨大な肉体を持った悍ましき存在です。世界の終焉を告げるそれはただ、滅びを齎すだけの存在となって居ます。
【データ】
・非常に巨大な生物になります。飛行していない状況だと『足』のみが戦闘部位です。踏み潰されないように注意して行動して下さい。
・『飛行』を行った場合でも『脚』までしか届きません。ダメージ蓄積により膝を突くことでその他部位を狙えそうです。
【ステータス】
不明です(第一章時点)
・『古代の魔女』ファルカウ
大樹ファルカウと同じ名を冠する魔女。大樹がまだ名を持たなかった頃に、彼女は平安なる世界を維持し、滅びを濾過する事を目的に『まじない』を用いて眠りに着きました。
その際に利用されたのが『Frauenglas』というまじないです。
『あなたの上に天は立つ。全ては極光の元に』との碑文と共に世界には祝福を齎しますが、来たる罪の裁定を行なうかの如く『滅びが溢れた際に』はその祝福の代償のように呪いが顕現します。罪ある者は岩となり一輪の花を咲かせて崩れ落ちる病と化すのです。
現在のファルカウは『大樹ファルカウの精霊的化身』と呼ぶべきでしょう。人では無くなり、今は古代より生きる精霊その物です。
外の情報はポイボスの若木を通してみてきました。本当に、この世界は戦で溢れすぎたのです。
ファルカウは『樹』であるため、己が生きていれば新たな命を産み出す事が出来ます。だからこそ全てをまっさらにしても構わないとの考えです。
焔のまじないを利用する事は判明していますが、その他の細かな戦闘方法は不明です。
意思疎通は出来ますが、意思の疎通が可能なだけです。説得などが難しいのは確かです。
何せ、彼女は「世界が戦乱に溢れすぎた」事を起こっています。Bad End 8の一人ですが、他の誰かの意思にしたがっているわけではなく、全てをまっさらにさえすれば戦という手段を選んだものがいなくなるからこそ、平穏を取り戻し培っていけると考えて居るのです。詰まり、皆さんはファルカウの敵なのです。たとえ、同胞であったって。
・終焉獣(ラグナヴァイス)
ベヒーモスを好み、それに付き従う終焉獣たちです。空から、そして大地から、様々な終焉獣が存在して居ます。
ベヒーモスに付き従いますが後述のエトムートの指示にも従います。
・『枯蝕の魔女』エヴァンズ
魔女ファルカウの連れる『三人の精霊』の一人。アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)さんが幼い頃に出会った魔女。
『魔女の魔法(エヴァンズ・キス)』と呼ばれた奇病を発生させる事で知られる精霊です。
人の体に深く種を埋めるということ。種は芽吹き、寄生主の体に巣食い魔力を吸い揚げます。魔力欠乏症となった幼子は其の儘死に至ることも多いのです。
その逸話の通り、エヴァンズは『魔力を吸い揚げる』力に長けています。その能力的に後方からの魔法支援に長けていそうです。
・『??の魔女』ルグドゥース
魔女ファルカウの連れる『三人の精霊』の一人。御伽噺にも残らなかった娘です。
能力は不明ですが、動きなどを見ていれば情報を奪う力に長けているのでしょうか。前衛で動き回っています。
・『不毀の軍勢』エトムート
エトムートと名乗る白い仮面のエネミーです。青年……にも見えますが機械染みたフォルムをしています。
長身を屈めておりだらりと腕を降ろしています。ベヒーモスが幻想を蹂躙した後は鉄帝国に連れていこうと考えて居るようです。
後方支援タイプです。指揮官としては優秀です、あまり鉄帝国らしくはありません。
・魔女の使い魔(精霊)
・滅石花の騎士
ファルカウの魔法陣から作り出されて飛び込んでくる敵です。意思の疎通が可能な個体も多く居ます。
●味方NPC
当ラリーでは友軍が存在します。関係者を指定し同行も可能です。
・天義聖騎士団より友軍であるリンツァトルテ・コンフィズリー【聖剣】、イル・フロッタ等、騎士達
・豊穣海洋連合軍(海洋軍人、霞帝始めとする豊穣援軍、建葉・晴明 (p3n000180)や黄龍 (p3n000192)。
コンテュール家は補給要員です)
・ラサ傭兵団(ハウザー・ヤーク『凶』やイルナス・フィンナ『レナヴィスカ』、イヴ・ファルベ (p3n000206)など)
・フランツェル・ロア・ヘクセンハウス (p3n000115)、澄原 水夜子 (p3n000214)と澄原 晴陽 (p3n000216)(救護要員)
・珱・琉珂 (p3n000246)、カロル・ルゥーロルゥー (p3n000336)(ファルカウぶん殴るぜ隊)
・マナセ・セレーナ・ムーンキー (p3n000356)、アイオン (p3n000357)
※ロック (p3n000362)はクレカ (p3n000118)と何かを準備しています。
★カロル及びフランツェルによって戦場の重傷率が一時的に低下しています。
聖女の加護:元遂行者であった少女の竜の心臓が僅かに影響を及ぼしています。聖竜アレフを知る者が存在するとその効果は高まります。
大樹の加護:フランツェルを通して巫女リュミエの加護が戦場に広がっています。幻想種の重傷率低下と回復スキルの効能上昇。
====第一章での特記====
●第一章目標
・ベヒーモスに出来る限りのダメージを与える事
エネミーデータ、味方NPCについては上述された情報を参考にしてください。
また、各種データの補強などは戦闘中に行なわれます。
行動人数
以下の選択肢でいずれかをお選びください。迷子防止です。
【1】同行者なし
お一人での参加です。チームを組んでいない場合は此方を選んでください。
誰とも話したくない(強い意志があり、他の方に構っていられない)場合はその旨をプレイングにて表記ください。
【2】同行者あり
複数人のグループにて参加する場合の選択肢です。
プレイング冒頭に【チーム名(チーム人数)】or【キャラ(ID)】をプレイング冒頭にご記載下さい。
※チーム人数はリーダーとなる方のみで構いません。迷子防止です。
1~2名のズレは対応しますが、人数が揃ったと見做した時点で出発しますので追加には対応しかねる場合がございます。
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