シナリオ詳細
<終焉のクロニクル>アドーニスの園にて
完了
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オープニング
●『behemoth』
それは万物を狂わす不吉の象徴。この世に存在してはならぬ狂気の象徴。
跫音は遠離ることはなく。ゆるやかな仕草でそれは立ち上がった。
地を見下ろす窪んだ眼窩には何も嵌まることはなく。暗澹たる闇ばかりが溢れていた。
澄んだ肉体は臓腑の一つも存在して居ないことも物語る。
だが、それはけだものであった。今より大地を食らい尽くすけだもの。
終焉の地(ラスト・ラスト)より至る、厄災の象徴。その名を『終焉獣』ベヒーモス。
醜悪なるは人の心か、それともけだものそのものか。
生まれ落ちたことには意味があるだろうか。空虚なる己の行く先は定まらぬまま、のっそりと脚を動かした。
天を衝くその肉体より溢れ、溢れたのは滅びの気配。
その足下には死を歌う花が咲き乱れ、周囲を溶かし行く。
終わりの時間がやってきた。一度全て屠らねば、アドーニスの園は回帰はせぬ。
――地を、世界を蹂躙し、死を宣告す。
●アドーニスの園にて
死する肉体が大地へと打ち棄てられたならば、その死骸より新しい芽を摘むだろう。
死とは輪廻の巡りそのものである。穢れ狂った世からの離脱し、新たなる楽園を築くが為なのだ。
見よ、世界のあらましを。
争いに満ち溢れ、地は灰燼に塗れたではないか。
ひとの命も、樹木さえも、全て燃え広がれば灰へと化した。風は疾くも全てを攫い行く。
愛しき大地に残された蹂躙の後は、なんと苦しいものであったか。
魔女ファルカウにとっての苦悩は大樹の中より見据えた世界そのものであった。
星々の歌声が地を叩く光景も、さめざめと泣いた空の慟哭が地に決して忘れ得ぬ穴を穿ったことさえも。
鉄帝国に高く聳えた塔はかの男の自尊心そのものか。憂いを抱いた男は自身の居城へ退いたと聞いた。
乾いた風の中に佇んだあの少女は、きっと同じだったのだ。だからと言ってその全てを許容は出来ぬ。
軽やかに笑う男は世界をシステムだと告げたか。0と1でしかなかったならば、人はどうして思考できるか。
霊脈を辿り、瞼を押し上げた神は獣の如く、全てを呑み伏すであろう。ならば、その命を辿り、自らの糧にすることも吝かではあるまい。
魔女は一人、佇んだ。
戦乱に塗れた世界には終焉を。
全てを塗り替える黒いインクは悍ましき死の象徴ではあるが、その中でもただの一つだけの芽が残れば『もう一度』を取り戻せる。
枯れた大地に命を振る舞い、新たなる箱庭を作り上げようではないか。
何度だって試行すればよい。争いのない世界が欲しい。ただ、同胞(いとしご)が穏やかに過ごす日々の中にあればよい。
世界は不出来なパッチワークだ。無数を飲み食らい、人の進歩のように歩みを止めぬこの世界は悍ましい程の悪食だ。
故に、世界は、継ぎ接ぎだらけになったのではないか。
――もう一度、もう一度。
子供をあやすように女は言った。
穏やかな声音は甘ったるいホイップクリームのように、喉に絡みつく。
饒舌であった女の若草色の眸は炎に染まり上げられて、怒りの声音はバタークリームのようにべたりとスポンジケーキに広がったのみだ。
それでも、指先だけは幼い赤子に触れるように穏やかであった。慈しみと悲しみの滲んだ指先がそっと滅びのけだものを撫でる。
――わたくしたちは、罪を背負って生きている。わたくし一人で良いならばすべての咎を背負いましょう。
国を守る為ならば、世界を守る為ならば、殺す事も厭わぬと言うならば、わたくしたちは皆同じでしょう。
争うことが間違いなのです。抗わねば生きて行けぬと言うならば、その様な世界でなくして仕舞えば良いでしょう。
そう願って同胞達と共に過ごした。大樹ファルカウは、ただ、その場に存在して居たが、それだけでは無かった。
愛しい同胞達を守る為に、森を見守ってきた。世界など、己には如何することも出来なかった。
何の力も無いただのおんなであったのだから。
伝承の世界で、おんなが用いた魔法は言の葉のひとつひとつに魔力を編み込ませた精密なものであった。
それこそ、シルクのハンカチーフで包むように柔らかに。羽根の一つを毟り取りテーブルに落とすような軽やかさで。
精密に編み込んだ魔法で作り上げたのは大樹ファルカウという『象徴』の生誕に他ならぬ。
――祝福を。どうか、祝福を。わたくしの祈りと願いは光となって降り注ぐ。
あなたが頂きに立つときに、極光は全てを晒すことでしょう。
わたくしの眠りが目覚めぬ限り、全ての不和は引き受けましょう。
ただ、わたくしが目覚めてしまえば、抱き続けた不和は溢れ落ち、あなたの罪を裁定する事でしょう。
けれど、怖れないで。石となり、岩へと化し、一輪の花へと成り果てようとも。
わたくしは、その種を手に、あらたな場所へと連れて行くことでしょう。
戦乱に溢れたこの世から、死と慟哭に溢れたこの世から、わたくしは全てを攫っていくことでしょう。
ファルカウというおんなは全てを知っている。
見てきた。
見たからこそ、目覚めたくは無かったのだ。
いつかの日、まじないが解けてしまえば、己は世界を恨んでしまう。
どうして起きてしまったのか。目覚めることがなければ同胞達を、世界の全てを愛していられたのに。
目覚めの気配が嘲笑う。
――あなたも、そうだったのでしょう、ベヒーモス?
世界を一度終らせよう。
そうして、もう一度を繰返すのだ。
この世界は戦に溢れすぎた。全てを終らし、『大罪人』の咎を背負うのは一人だけで良い。
そうなる覚悟は疾うに出来てしまっていたのだから。
●
「成程」
豊穣郷よりやってきた『霞帝』は作戦概要を確認してから頷いた。その護衛役たる中務卿と加護を与える神霊は静かに耳を傾けている。
心配そうな顔をするメイメイ・ルー(p3p004460)に建葉・晴明は仕方あるまいと首を振った。にまにまと笑う霞帝に水天宮 妙見子(p3p010644)も拳骨を浴びせたい心地だ。
「帝さんは大丈夫なのだわ?」
「大丈夫だよ、章姫」
それならいいけれどと心配そうに告げる章姫を腕に抱く黒影 鬼灯(p3p007949)は「章殿には心配を掛けないでくれ」と眉を吊り上げる。
「吾が守る。安心するが良い」
「黄龍も無理はしないで」
「ああ、安心せよ。吾は油断はせぬよ」
シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)に穏やかに微笑む黄龍にウォリア(p3p001789)は無理はしてくれるなと言い含めた。
「それで、作戦は此処からか」
静かに告げたは新道 風牙(p3p005012)である。彼女にとってもこの場所は印象深い――美しき夢の都『ネフェルスト』。
この地を拠点としていたが、ラサ傭兵商会連合はこれより、南西へと向かい影の領域に程近い場所から作戦を遂行するという。
「指示は?」
「こっちがやる。テメェらは従え」
鼻先をすんと鳴らしたハウザー・ヤークに「失礼な物言いではダメですよ」と注意するのはイルナス・フィンナその人だ。
何時もならば小金井・正純(p3p008000)やラダ・ジグリ(p3p000271)にヘルプを求めるイヴ・ファルベは「あれって大丈夫かな」と呟いた。
「まあ、大丈夫だろ。奴さん穏健だろうからな」
何気なくそう言うルナ・ファ・ディール(p3p009526)にそれならいいけれどとイヴは呟く。
「それで、そちらは?」
問うたラダにイヴは慌てた様子で手を挙げる。
「あ、あ、クォ・ヴァディスも影の領域での掃討をしてる。覇竜観測所は竜種や亜竜の動向に注意をしてるみたい」と見てきた全て報告した。
「巨大な終焉獣に亜竜達は怯えているわ。暴れ出さないようにフリアノンでも対処を行うことにしているの。
竜種は、協力仰いでいる。出来る限り各所で協力してくれるとは思うのだけれど――」
どうなるかは定かではないと琉珂は告げた。竜種と人間では大きく違いがある。竜種にとって人間などちっぽけな羽虫同然だ。
故に、友誼を結んだと言えども竜の戯れに過ぎぬ可能性はあるのだ。琉珂は「竜種達も、屹度来るはず」と静かに告げる。
劉・紫琳(p3p010462)は「琉珂」と呼び掛けた。
「危険は承知の上、ですね?」
「勿論よ、ずーりん」
にんまりと笑う琉珂に「琉珂様が言うなら仕方ありませんね~?」とヴィルメイズ・サズ・ブロート(p3p010531)は朗らかに笑う。
竜に関連した事柄には経験がないが、竜とは巨大で物語では語られる強大な存在だと霞帝とて知っていた。
「それだけ、危機迫る状態なのだな?」
「そうであろう事は明らか。現状は此処に集まっていますが、何かしらがあれば各地に援軍派遣がもう一度為される可能性もあります。
それに、此処に戻れぬ可能性も。……出来る限り周辺の敵を排除し、あのけだものの動きを止めるべきでしょう」
静かに告げたのはリンツァトルテ・コンフィズリーであった。その腰にはコンフィズリーの聖剣と呼ばれる剣が存在して居る。
「あのけだものって、でっかくん?」
問うたセララ(p3p000273)にリンツァトルテは頷いた。神妙な表情を浮かべたのはサクラ(p3p005004)である。
「でも、巨大すぎない? 称賛は?」
「ある、とは言えない。だが――R.O.Oという観測システムにおいては、このけだものを観測した中で、脚を攻撃し動きを止めさせたらしい」
「なるほど……、幸か不幸か、あのけだものは影の領域を広げているらしい。つまり、イレギュラーズならば太刀打ちできる可能性が広がるね」
リンツァトルテは察しよいサクラに頷いた。
「援軍は周辺の相当とあのけだものの動きを止める手助けをすればよい」
「……! パンドラの加護……!」
イル・フロッタは息を呑んだ。パンドラの加護は、すなわち、此れまでの『可能性』による強大なる力の発露だ。
イレギュラーズの姿も変容するかも知れないが、それならば、勝利の芽がないとは言い切れまい。
「じゃ、凄い力を使って貰えば良いって訳ね? それで、あのデカブツに膝を付かせる。
そうしたら魔女も降りてくるから舞台に引き摺り出して、ボコせばいいってこと。実に簡単だわ」
「カ、カロル」
慌てた様子のイルに『元遂行者』である聖女カロル・ルゥーロルゥーは「私、相棒と聖女として此処に派遣されてきたから」とさらりと告げた。
カロルは我儘を申し入れ本来ならば国から離れられない聖女の立場であっても、救国の為にとこの地にまでやってきた。
カロルに勢い良く肩を掴まれたのは相棒ことスティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)である。
聖女として『相棒の聖女』とこの場で戦ってみせるのだと胸を張る。「面白いですねえ」と微笑む澄原水夜子と、情報を確認しながら練達との連携――R.O.Oシステムでの解析だ――を行なう澄原晴陽は「接敵しなくてはこれ以上の情報は分かりませんね」と呟く。
「晴陽、無理は」
「貴方こそ」
國定 天川(p3p010201)を見上げて笑う晴陽に「姉さん、生き残ったら私、ご褒美が欲しいですね~?」と水夜子は笑う。
「貴女は死んでも死にきれないでしょう」
「ええ、だって、死ぬためのエスコートが多いのですもの」
にこにこと笑う水夜子の視線の先には恋屍・愛無(p3p007296)とミザリィ・メルヒェン(p3p010073)が居た。
「みゃーこ、澄原先生はR.O.Oの情報解析ですか?」
問うたミザリィに水夜子は頷く。自身は出来うる限りの露払いを行なうつもりなのだ。
「なら、さっさと行きましょう」
「カロル、危ないわ」
「行かなくちゃ、あれは歩いてくるわよ。一歩もでかいでしょ」
カロルが指差せばマナセ・セレーナ・ムーンキーは「うぐぐ」と呟いた。確かにそうだ。あれは巨大すぎる。
「え、恐いわよね、どうしよう?」
振り向いたベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)の腕の中でポメ太郎が「無理しないでください」と言った。
「アレクシアがぶん殴るとかどうかな!?」
「マナセ君って私のことそんなに恐ろしい存在だと思っているの?」
「あ、あれくし……うむ……? 何だかアレクシアってパンドラでもアークでもない要素が出てるって聞いた」
「誰から!?」
驚くアレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)に夢見 ルル家(p3p000016)は「まあまあ」と諫めた。
「一先ずキャロちゃんが走り出しちゃいそうなんですが、勇者側から意見はあります?」
「止めないと、カロルは普通に殴りに行くよ。莫迦だから」
「莫迦じゃないですー!」
拗ねるカロルに楊枝 茄子子(p3p008356)は「いや、莫迦だよ」と小さく笑った。
その問に答えたのは赤毛の青年であった。
「……ロックが……いや、イレギュラーズが救ってくれた異界『プーレルジール』の元魔王だったイルドゼギアが、あれが膝を付いたならば一時的に動きを止めるための魔法陣を作ってくれている」
勇者アイオン――彼もプーレルジールの存在であり本物のアイオンではない――は静かに言った。
カロルは「じゃ、私も聖女の加護ってのでイレギュラーズの重傷率を出来る限り下げてやるわ、出来る限りね」とさらりと言ってのける。
「何か、面白いわね。おまえの国は神様が暴走してイレギュラーズに救われて?
おまえの国は、おまえのオジサンが暴れ回ったけれど恐かった竜と和解して?
それで、お前は? 暴れ回った精霊を鎮めたら命を貰ったって?
で、勇者のおまえたちの世界はイレギュラーズに救われた。この私だって、本来死ぬはずだったのにあのお人好しに救われた。
なんか、恩返しみたいなもんじゃない。いいわね、やりましょ。
あいつらみたいなお人好しの為なら、死んでも良い位に戦えるでしょ? ね、魔法使い」
「え、ええ! そうよ。わたしたち、本当なら死んでるはずだったもの。この人達のためなら、戦える。
……いこう! とりあえず『ぶんなぐれば』いいんだものね!」
「そうよ、『ぶんなぐる』わよ!」
話は早いと言いたげな元聖女と『伝承』の魔法使いにアイオンはやれやれと肩を竦めてから「行こうか」とあなたを振り返った。
- <終焉のクロニクル>アドーニスの園にて完了
- GM名夏あかね
- 種別ラリー
- 難易度VERYHARD
- 冒険終了日時2024年04月24日 22時00分
- 章数4章
- 総採用数478人
- 参加費50RC
第2章
第2章 第1節
●
――デッカ君。一緒にお外に出ましょうと言ったけど、ごめんなさいね。
無理だったらこの世界を滅ぼしてから、私と一緒に死にましょう?
いつかの日、この獣にそう微笑んだ人が居る。
色彩の抜け落ちた、征く場のなくなったただの我儘な女の子。
『名無し少女(ジェーン・ドゥ)』
彼女はR.O.Oでこのベヒーモスと共に世界を蹂躙し、一番に美しい華になって枯れ落ちた。
滅びの獣は彼女に寄り添っていただろう。
ならば、今の滅びの獣が寄り添うのはあの魔女か。
――わたくしは、誰にも知られずに大樹として消え失せ子らが生きてゆく事を願ったというのに。
何と言う浅ましいことでしょう。
この世界は戦を知りすぎた。戦乱を愛し、全ての綻びを無理にでも縫い合わせた。
不出来なパッチワークともなれば、救いなどはないでしょう。
灰色の王冠(グラオ・クローネ)に謳われる感謝など、形骸化してしまった。
わたくしは――世界がこの様に戦乱に濡れることなど、望んでは居なかったのに。
ただ、欲しかったのが平穏だったというだけなのに。
叶わないから世界を全て消し去るだなんて、なんて傲慢な行いか。
「どうする」
だらりと長い腕を下ろしていた『不毀の軍勢』エトムートはがりがりと頭を掻いた。
「どうすることもできませんわ、ミスタ」
美しく朗らかに微笑んで見せたのは『伝承に語られなかった』――『蝕喰の魔女』ルグドゥースであった。
彼女は攻撃を模倣する能力長けている。だが、それはあくまでも現時点では手を抜いて模倣しているだけなのだろう。
「本気を出しては?」
「わたくしが? ……ええ、よろしくてよ」
ルグドゥースが見上げた先でエヴァンズが美しく微笑んだ。
勝たねばならない、と魔女達は認識している。
憂うファルカウの苦しみを何とか拭ってやりたかったのだ。
ルグドゥースの本質こそ情報を『奪う』能力だ。そう、それは、自らの糧とするという意味である。
彼女は自らが受けたスキルを封じ込むことが出来る。しかし、パンドラの加護を帯びた戦士出ればそれも永続とはならぬであろう。
厄介なのは彼女は後方からエヴァンズによって補佐をされていることである。
相手のスキルを跳ね返すように奪い、使用し、そして封じ込む。戦闘時間を永く長く伸ばし、出来る限りベヒーモスを進ませるというならば彼女の存在は厄介だ。
「わたくしは魔女ファルカウの使い魔、三人の精霊。
その力を分け与えられしもの――彼女の苦しみは、悲しみは、これまで与した慈しみの裏返しとも言えましょう」
女の周囲に黒い靄が広がった。
「やれやれ」と呟いたエトムートの周囲を騎士がずらりと囲む。
「ベヒーモスには少しでも進んで貰わなくてはならんのでね、申し訳ないが時間稼ぎをさせて貰おうか」
彼等が攻勢に転じたという事はベヒーモスの傷も広がり始めたと言うことだ。
――エトムート、ルグドゥース、そしてエヴァンズを打倒さねばならないか。
====【第二章情報】====
・ベヒーモスはやや東方へと脚を進めています。しかし動きは非常に鈍く、右足に大きく傷を負っているようです。
特に【膝裏】【臑】【アキレス腱】は外皮が剥がれ始めました。
・傷口からは血ではなく終焉獣が落ちてきます。それらはベヒーモスを切り取っていると同等のため、倒す事でベヒーモスの実質リソースを削る事が可能です。
・ベヒーモスの体内に何らかの影響を及ぼすには『小細工』が必要そうですが――?
・ベヒーモスが膝を付いた場合は『魔法使いロックとクレカ』の【捕縛魔法陣】の発動が行なわれます。
頃合いを見て、二人の支援をお願いいたします。【捕縛魔法陣】の展開は可能ですが、二人だけでは長時間の捕縛は難しいかも知れません。
非戦闘スキル(魔術系)もしくは『メンタル』『キャパシティ』の値を参照しこの捕縛魔法陣の効果を増幅させることが可能です。
・ベヒーモスを守る為に『エトムート』『ルグドゥース』との戦闘が始まっています。
エトムートの周辺には『滅石花の騎士』が多く存在して居ます。また、エヴァンズは後方より『ルグドゥース』の支援を行なっているようです。
・魔女ファルカウはベヒーモスの肩口付近に鎮座しています。
第2章 第2節
●
「世界が終るその前に私のこと、何処かへ連れ去ってくれますか?」なんて、プロポーズにしては退廃的で、なんて魅力的だろうか。
もしも望んでくれるならば何処へだって連れて行くと応えただろう。どうせ、それも口先だけだと知っているからこそ構わないよ、なんて揶揄ってみせるのだけれど。『愛を知らぬ者』恋屍・愛無(p3p007296)はちら、と澄原 水夜子を見た。
「早くボコボコにしないと水夜子君が前線に出たがるかもしれん。
最近、おにゅーの夜妖とか振り回してるしな。あれ、誰が渡したんだ。代償とか大丈夫なのか? ていうか、あれ愛が重そうな夜妖だよな。はーすき」
唇に笑みを浮かべた。広域で眺めたのは彼女の横顔。相変わらずで、従姉の傍で護衛なんて『一般人』らしからぬ顔をして笑っている。
彼女の手にした夜妖の出所は屹度『従姉』だろう。彼女も結構剛毅な性格だ。弟の為ならば戦場にも出て来て何にも頓着しないのだ。
無難に傷を狙うだなんて、していても気にするのは彼女の事ばかり。
なんたって――「愛無さん。世界が滅びたら一緒に居られませんね」なんて言うのだから! 世界を救わなくては!
「晴陽」と呼ぶ『決意の復讐者』國定 天川(p3p010201)に澄原 晴陽は「はい」と静かな声音で応えた。涼しげな彼女の表情は何時もと変わらない。
「しっかしでけぇな……。ここまでの奴はジャバウォック依頼か? まぁいい。ちょっとぶった斬ってくる。晴陽、気を付けてな。
いい加減可愛い婚約者に良いとこくらい見せておかねぇとな。……こんなのが続いたらおちおち結婚もできねぇよ」
「では、この戦いが終ったら結婚という事ですね」
「あ、死亡フラグって言うんですよね、姉さん」
胡乱なことを言う水夜子に「みゃーこ」と笑った天川は「ま、負けることはないさ」と唇を吊り上げた。愛無は『可愛らしい水夜子君』にひらりと手を振って地面を蹴った。
天川がぎらりと睨め付けたのは腱の辺りか。傷口から溢れる終焉獣を斥けて、更に抉ればそれは膝でも付いてくれるだろうか。
「元復讐者の意地って奴を見せてやろうじゃねぇか! こっからが本番だ! 覚悟しな!」
彼女と居れば忘れてしまうけれど、幸せなんてものはそうそうと其処にはやってこないのだ。例えば、ほら――大切にするならば優しく壊れ物に触れるように。
大切な者を守る気持ちは誰だって同じだった。なんたって『行く先に愛しい人が居る』事を『点睛穿貫』囲 飛呂(p3p010030)は知っている。
ベヒーモスから溢れる終焉獣を薙ぎ払う。その身に一点集中したのはパンドラの加護だった。何故って簡単だ。命だって擲っても良いほどに大切な人と大切な場所がある。
ほんの一点集中で良い。愛無と天川に続き放つ。飛呂さんと笑った彼女は一人でローレットを背負っているのだろうから――
「スナイパー自称してんのは、伊達じゃねえからな!」
母親が蛇神(普通じゃなかった)事に感謝したのは、きっと今が一番だ。
飛呂の弾丸が傷口に飛び込んだ。大口開いた終焉獣が更に溢れ出す。傷口から飛び出すそれは血潮の如く。
「……アレ、パンドラ収集器を狙ってたよな。それがヒントにならないか?」
呟いたのは『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)であった。「ううーん」と悩ましげな声を上げたのはマナセ・セレーナ・ムーンキー。
そんな彼女を一瞥してから「考えてくれる?」とイズマは問うた。幼いながらも天才魔法使いと名高い少女は何かを思いついたならば必ずしや言葉を届けてくれるはずだ。
ならばイズマが行なうのはただの一つ。細剣に旋律を宿し、燕尾服を揺らがせて青年は駆抜ける。眼前のベヒーモスから一度も視線を離さぬように。
「一度壊れたら二度と同じ存在は芽吹けないんだ。別の存在は芽吹けども、今を生きる者達の代替にはなり得ない。
――だから壊させない。今ある者達を守る。ベヒーモスを止めるぞ!」
奏でる音色は終焉獣達を薙ぎ払う。体内を叩くための小細工を調べようにも難しいか。さて、マナセから何らかの案が得られたら良いのだが――
「どうですか?」
問うたのはマナセと共に行動をして居る『暗殺流儀』チェレンチィ(p3p008318)であった。
翡翠のその人は、純白にその身を包みマナセと共に駆けている。マナセは不思議そうに彼女を見てから「綺麗ね」と笑った。
「チェレンチィはとっても綺麗」
「いきなりですね……?」
驚いたように瞬くチェレンチィに「わたし、もっとチェレンチィと遊びたいから頑張らなくっちゃなあっておもったの!」とマナセの杖に魔力が宿された。ならば――その魔力をマナセの勢いと共に届けるだけだ。
「膝裏です」
「分かったわ。魔力のカン、取り戻せてきてる! 繰返してるからかも! いきましょ~~!」
「はい。人間、立ったり歩いたりするのにはやはり膝が重要ですからね。ベヒーモスも体の作り的に同じと見ました。何とかして砕ければ……!」
砕きそうなプーレルジールの魔法使いははたと立ち止まった様子で『殿』一条 夢心地(p3p008344)を見た。
「光ってる!!!!!」
――眩い男が其処に立っていた。神々しいほどである。
マナセの魔力がベヒーモスに叩き込まれるように夢心地の『夢心地ビーム』が叩き込まれていく。
「アキレス腱の語源を知って居るか!!!! 神話の英雄すら弱点だったのじゃ、ここをやられて平気な生物なぞおらぬわ!」
何だか凄く良い事言ってる気がするとマナセはチェレンチィに隠れながら夢心地を伺って居る。
「麿もかつては落馬してアバラをやってしまったこともあった……。アレ……めちゃんこ痛いんじゃよな~。
ベヒーモスに乗ってのんびりしとるファルカウも、もし地面に転がり落ちたら息できなくてヒューヒュー言い出すのは間違いない!
ベヒーモスをグラグラ揺らして、落っことしてやるわ。なーーーっはっはっは!」
「そんなファルカウ見たくないよ~~!」
困惑するマナセの声を聞いてから『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)は「マナセちゃん!」と呼び掛けた。
「試したいことがあるんだ。あっちの魔女達も動き出したし……今、色々と考えておいた方が良いと思って!」
「教えて!」
焔は火の付いた終焉獣を寄せ集め傷口と共に体内に押し込めやしないかと考えた。元々はベヒーモスの肉体の一部だった。
だからこそ、体の中を巡り、血管を辿るようにその臓腑にダメージを与えられるのではないかという焔の提案だ。
「でも、あんまりにも怪我しそうだと受け入れてくれないかも。……焔さん、さっきイズマさんがパンドラ集めしてたからそれを活かせないかって言ってたの」
「うんうん」
「パンドラ……この子にとっては毒とかなのかなって。でも、どうすれば体の中に入るかなあ」
終焉獣を燃やしながら焔は「難しいね。でも、何か『出来る事』がある筈」と悩ましげに呟いた。
「R.O.O.のベヒーモスは確か、石花の呪いの治療薬が効いた筈だ。
滅石花があの呪いに近い力を持つなら、治療薬さえ作れればベヒーモスの小細工に使えるかもしれない」
静かにそう言ったのは『アネモネの花束』ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)であった。マナセは「それってファルカウの呪いでしょ?」と問うた。
「成程、魔女の鈍いが石花の呪い――それが滅びのアークその物ならば、治療薬はパンドラを細工したもの、と見ても良いのだろう」
蒼穹の翼で空を駆るベルナルドは悩ましげにそう言った。龍の言葉を力と換えた魔術砲撃を駆使し、仲間を巻込まぬようにと意識する。
巨大な敵だからこそ、その工夫が成せる。ただ、巻込まないようにと言う注意だけは必要なのだろう。滅石花は確かにファルカウの魔力が感じられる。
(……呪いの力を帯びて滅びの徒となったベヒーモス。あの時、花になったと言うジェーン・ドゥを想像してみれば良く分かる。
このベヒーモスという存在は自らが望んで滅びに導いているわけではないのだろう。彼女は『優しい獣』とベヒーモスを呼んでいたではないか)
ベルナルドは何とも言えぬ想いを飲み込んで、只管にその歩みを止めることのみに注力し続けた。
「おじさま! わたし達はこのまま終焉獣の数を減らし続けたらいいんだよね」
くるりと振向いた『魔王と生きる勇者』ルアナ・テルフォード(p3p000291)の手にはその身には余るような長剣を握り締めていた。
「わたしもおじさまも、まだまだ戦える。おじさまとたくさんの思い出を作ってきたこの世界。壊させるわけにはいかない――」
「だが、無理はしないように。
……どのみち大量の敵を排除せねば、ベヒーモスを止めることもできん。ベヒーモスの様子を見る限り、終焉獣を倒す事も重要な役目のようだしな」
「心配性」
揶揄うような声音にやれやれと帽子を押さえた『勇者と生きる魔王』グレイシア=オルトバーン(p3p000111)が肩を竦めた。
弾丸の雨の中、終焉獣を引き寄せてグレイシアの補佐を受けるルアナは迷うことはない。
「もー!」
倒しても倒しても増えていく。その分、減ってくれれば『楽』になるのかもしれないけれど。今は余りにも増えすぎるとクレームも入れたくなるものだ。
憤るルアナの声を聞きながら『白き寓話』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)は唯只管にベヒーモスの傷口を抉る。
膝面とアキレス腱、どちらも狙いやすい場所か。作戦遂行するならば裏側の傷を広げて行くのが良いか。ぱちり、とヴァイスと視線がかち合ったのはアキレス腱を狙う『黒撃』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)であった。
「そっちもいいね!」
「ええ。あまりこちらを狙われて消耗しても困ってしまうもの……魔女の手下は少し厄介でしょうけれど」
眉を顰めたヴァイスにイグナートは顔を上げた。ベヒーモスは図体がでかい。だからこそ戦いやすい。殴れば殴るほどにベヒーモスの体力を削っていくように終焉獣が襲い来る。ある意味傷口のバロメーターを記していてモチベーション効果もある。
なんて、そんなことを言いながら戦うことは嫌いではない。イグナートの唇がついと吊り上がった。
「しかし、穏やかな世界が欲しくてたどり着いた先が世界でイチバン騒がしい場所なのは趣きがあるよね!」
本当に――ここは騒がしい。喧噪に溢れているけれど『怪獣バトル』なんてして落ち着いて居られるなんて可笑しな話だ!
「お二人とも」と『ウシャスの呪い』雨紅(p3p008287)は恭しくロックとクレカを思いやった。
「捕縛魔法陣の助けになりたいところですが、魔術に関しては力になれぬ身ですから――ならば膝をつかせるまで」
「任せていい?」
「勿論ですとも」
ひらりと舞うように雨紅は駆けて行く。出し惜しみなんてするものか。
クレカとロックが『魔術を展開する』準備をして居る。マナセが小細工したならば、もしかするとベヒーモス自体を此処で長時間捉えられる『かも』しれないのだ。
その可能性が何よりも素晴らしい。彼等がここにいるのは紛れもなくイレギュラーズによる成果なのだから!
(かの獣が通ったあとの更地は心が痛む――)
全てが無に返ることを赦しは出来ない。だからこそ、己は進むのだ。
「これ以上、広げさせません!」
成否
成功
第2章 第3節
●
伝承に残ることがなかったのはその魔女にとっては幸運であっただろう。
奪う事、それは即ち他者に成り代わることだった。ルグドゥースという魔女はそうした取り替えの物語をベースにしたのではないかと考えられていた。
故にイレギュラーズの攻撃を奪う、模倣し、使用する。それは単純な術式による模倣であり、完全とは言えないのだろうが。
「胸糞わりぃな」
そう、ハウザーは言った。鼻をひくつかせた男を一瞥し『駆ける黒影』ルナ・ファ・ディール(p3p009526)は「だろうな」と笑った。
「あの腕長は良いのかよ」
「あっちはイイ女に任せる。お互い男の顔なんざ見飽きただろうからな」
ルナはじらりとルグドゥースを見た。ハウザーが嫌がるのも良く分かる。使用するスキルを跳ね返して封印するというのは厄介そのものだ。
「ならよ、ハウザー。純粋なステータス”で殴りゃ、どうなんだ? こいつぁ攻撃じゃねぇ。干渉できる類いじゃねぇだろ?」
ハウザーはやや面食らった顔をしてから「面白いじゃねぇか」と笑った。『凶』(群)のリーダーの興が乗ったのだ。ルナは「行くぞ」と駆けて行く。
純粋な暴力ならば届く可能性があるだろう。ならば、ルグドゥースへと辿り着けば良い。
「少しずつだが、ベヒーモスの進軍が鈍くなってきている。ここからが正念場か。
……エトムート、ルグドゥース。どちらもベヒーモスを止める前の障害として厄介極まりないが、それを支援するエヴァンズも邪魔だ。
――ならば、その支援を断つ! 更なる時間稼ぎなんてさせねぇよ!」
そうだ。ルグドゥースに圧倒的火力を与えるのであればエヴァンズが邪魔になる。勢い良く顔を上げ、『真打』紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)は駆け出した。
V.I.L.Q.L.A.S.を駆って空を行く。戦乙女と悪魔を象った銃剣を手にし紫電は姿を見せたエヴァンズに狙いを定めた。
「酷い方」
「酷い? 敵同士だろう」
紫電の唇がついと吊り上がった。孤立や無理はしないように立ち回る。だからこそ、背後から仲間が支えてくれている事を紫電は知っていた。
此処で死んで堪るモノか。愛しい人は平気で死に急ぐヤツだ。婚姻の儀も結んだのだから――こんな所で命をくれてやるものか。
「退いて貰おうか、エヴァンズ!」
柔らかな光と共に魔力が紫電を包み込んだ。癒やしは花開くように『水月花の墓守』フリークライ(p3p008595)によって届けられる。
「魔女ファルカウ。ヒトハ親ニ似ルノダ。
――君ガ罪ヲ背負イ世界ヲ無ニシ母トナッタトシテモ ソノ原罪ガ子ヘト引キ継ガレルダケデアロウ」
「それは、今を生きる幻想種全てが罪人という事ですか。秘宝種(レガシーゼロ)」
美しい声音であった。エヴァンズは魔力を吸い取るようにして手招いていく。だが、フリークライは永久機関そのものだ。自らの内部で魔力炉のように、無尽蔵に力を沸き立たせる。
ある意味で、エヴァンズにとっては『良い餌場』であり、戦闘面では歯が立たぬ存在だろう。エヴァンズの足止めにフリークライは適している。
だが、先程の言葉はどう言うことか。紫電と、そして前行く『二人』を支えながらもそう考えた。
魔女ファルカウは『幻想種』の母なる存在であると自認している。今生きる全てを否定したのかと、そう問うたのか。
「罪人、か」
呟いたのは『蒼穹の魔女』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)であった。
目を伏せて、息を吐く。味方がベヒーモスに、そしてルグドゥースやエトムートに集中できるように。
それよりも尚も、アレクシアにとっては縁のある相手だ。今の自分があるのは彼女がいたからで、彼女がいたからアレクシアはベッドの上を余儀なくされたのだから。
「飛ぶぞ!」
叫んだ『竜剣』シラス(p3p004421)にアレクシアは頷いた。駆ける。あれがアレクシアに植付けられた病だ。
アレクシアが前を行く。強かに、打ち付ける刄の如き魔力の花弁が広がっていく。アレクシアの魔術にしては強い攻勢に転じたものだとシラスはそう考えた。
癒し、救う為の少女が武器を手に取り誰かを傷付けてでも尚も世界を救う。英雄譚の一篇だ。
「あなたにはこっちを相手してもらうよ!」
強かな彼女という光にシラスは焦がれてきた。だからこそ――エヴァンズのことを許せやしない。
「貴女――」
エヴァンズの瞳が暗く、アレクシアを見た。唇がつい、と吊り上がった事を確認しシラスはエヴァンズの視線を釘付けにするように敢て大立ち回りを見せた。
「余所見してる暇はないぜ?」
シラスの声音に顔を上げたエヴァンズは「少し、忙しくておりますのよ」と囁いた。肉体から馬割れる魔力など関係はない。
エヴァンズは此方を見ている。それだけで儲けものなのだ。戦線を飛び越えた事も分かっている。集中砲火の的だ。分かって居る――それでも、支えてくれる人が居ることも知っている。
「呪いも祝福もクソくらえだ。お前らの気分一つで滅茶苦茶にしやがって!」
苛立った様子でシラスは叫んだ。目の前の女がばら撒いた病はもう仇だ。失くしたものはシラスだけが覚えている。
魔力が尽きても、遺された可能性がある。それは、魂そのものをぶつけるように――大切な人を守るようにシラスは立ち振る舞った。
アレクシアの杖の先の魔力をぺろりと舐めとるようにエヴァンズは目を伏せる。
「今更だけれど、あなたもファルカウの断片みたいなものなの?
……そうだとしたら、なんだかおかしな話だよね。私はずっと、ファルカウに護られ、同時に呪われてもいたんだもの」
「ええ。そうでしょうとも。外に出てはならないのですから」
――ああ、そうなのだろう。『外』は恐ろしいと、彼女はそう語るのだから。
「でも、恨んではいないよ……昔の私がどうかはわからないけどね。
大変なことはあったけど、だからこそ世界の美しさを、大切さを知てた。……その呪いは、私にとっては希望の種でもあったんだ」
だから憧れた。だから、『ここに立っている』
エヴァンズの支援が剥がれた。それが好機であると知っている。
「ヤツの能力、こちらの技のコピー……取り込む?」
『よをつむぐもの』新道 風牙(p3p005012)は真っ直ぐにルグドゥースを見た。時間が許すならばじわじわと攻めたいが、そんな暇はない。
――ならば。
「こっちの持てる最大火力を立て続けにぶち込むまで!
言っとくがな、真似るなら形だけでなく、オレの内面までコピることだな。
オレの技は、気合が乗れば乗るだけ強さが増すんだからよ!」
猿まね如きで出来るわけがなかろう。風牙は責め立てる。槍の穂先をルグドゥースが弾く。
邪魔立てするなとでも言う様に、彼女の魔力の槍が気の如く炸裂した。
「ルグドゥース! お前の主が争いを望んでるだなんて、本気で思ってんのかよ!
それとも、争いのある世界より、完全な『無』のほうがいいってのか!? 世界が、無くなっちまうんだぞ!!」
「世界がなくなってもよろしいではありませんか」
囁く声音に風牙が奥歯をぎり、と噛み締めた。駆ける風牙の背後でがらがらと音を立てたのは狐達の乗る戦車だ。
戦車部隊はベヒーモスに向けての砲撃を行って居る。まるだ『怪獣映画』の在り方だ。情報提供に根回しに、狐達に支えられて『狐です』長月・イナリ(p3p008096)は駆けていく。
「なるほど、敵の能力は模倣、もしくはそれに類する能力なのね。
私は絡めては無理だし……あれも模倣出来るのかしらね、彼女?」
「無理では!」
「無理かと」
「よねえ」
狐達に頷いてからイナリはふうむと呟いた。用意したのは『ネタ技』だった。
『いのちをだいじに』と叫ぶイナリ。大太刀を振り回し、何てこった! ――そう言いたくもなる良く分からない戦いが開始されていた。
「……わあ」
ぱちくりと瞬いたのは『ファイアフォックス』胡桃・ツァンフオ(p3p008299)だった。
「さて、状況が動いてきたし、手がないわけでもなさそうだけれども。
……みんなが頑張ってる間に邪魔されると大変そうねぇ。こちらの方の相手をしておくの」
ぱちくりと瞬く胡桃は焔の気配を纏い走る。こやんぱんちを放った胡桃はこれならば模倣されないと気付いて居た。
あくまでも通常攻撃。そう、術式を伴わない攻撃であればルグドゥースは全く以て模倣する手段を得ていない。
戦法を工夫すればそれ程困惑もしないだろうか――胡桃の傍で「私、どう殴れば良いかしら!?」と困惑するのが琉珂である。
確かに全員が『通常攻撃』をしていればルグドゥースが別の手段を持ち出す可能性はある。「そのままでいいとおもうの」と返す胡桃に琉珂は不安げに頷いて。
「琉珂、遅くなっちまったな」
「ししょー!」
ぱあと明るい表情を浮かべた琉珂に『運命砕き』ルカ・ガンビーノ(p3p007268)はひらひらと手を振った。
「親父を捕まえるのに時間がかかっちまってな。……母さんの実家の姫様で、息子の弟子が戦ってんだ。こんな時ぐらい手伝えよ」
「ああ?」
眉を顰めたのはロウ・ガンビーノだった。妻を喪ってやさぐれて居たようにも思えるか。ルカに気付いてから「それお父さんなの~?」と前線の真瀬が手を振っている。
「ああ。親父だ。それでマナセ、ファルカウのやつ、元には戻せそうか?
アイツが本心から滅亡を望むなら、アイツとは戦うしかねえ。だがアイツがそんな事望むとは思えねえ。
プールレジールで会ったファルカウは戦があっても人を、植物を、生き物を愛してた。……だから俺達に力を貸してくれたんだ」
「うん。わたしには出来ないと思う」
「……わたし『には』?」
「そう。ルカさんはどう?」
「アイツが滅びに侵食されて、滅びを望まされるなんざ我慢ならねえ!
何とかしようぜマナセ。せっかく久々に会えたのに喧嘩別れなんざ御免だろ?」
マナセはこくりと頷いた。何が起こっているのかをあまりに知らない顔をしたロウは「よく分からねぇが」と前置きをしてから息子を振り返る。
「何を殴る?」
「分かり易いヤツでよかった」
ルカが唇を吊り上げた。琉珂の肩を叩く。仲間の戦いが続いている――ならば『重ねれば』良い。
「アイツらをぶっ倒すぜ。遅れるんじゃねえぞ琉珂!」
「ええ! お父さんもいらっしゃいな!」
亜竜種の姫君に父と呼ばれたロウが妙な顔をした。ルカは戦略を選んだ訳ではない。
スキルを封じられるのは厄介ではあるが、それ以上に『力』がある。それっきりでは止まらないのだ。
「邪魔だぜ! 魔女!!」
封じられ、跳ね返されても構いやしない。ぶっ倒してファルカウに会いに行く。その為に、ルカは何の手抜きもしない。
「アンタの主様か母親か知らないが、どつきに行かないとなんでね。退いてもらうよ」
こうあるべきだ。そうするべきだ。そうならないなら消えてしまえなどと、その様な言葉を発されて受け入れられる訳がない。
『欠け竜』スースァ(p3p010535)はただ眼前の敵を睨め付ける。正直な感想を言ってしまえば、『クソ傲慢な親の類い』が嫌いなのだ。
「さて、ところで私は魔術とか苦手でね。魔道具使うのが精一杯だ。――アタシはただ武器を振るうだけ。それもアンタは跳ね返せるのかね?」
だからこそ、自らの闘争心を揺れ動かした。向かう場所がただ一つであったから。
削り取る。ルグドゥースもエヴァンズも『どう足掻いたって、親の良いなり』でしかないのだから。
「ベヒーモスを倒す策が出来上がってきたのなら…その作戦、通すためにも邪魔はさせない!
ルグドゥース! 貴様が自分の情報を読み取ってこちらの技を封じるなら……放つ一発一発に全て魂を込めて……すべての技で対抗するまで!」
『宇宙の保安官』ムサシ・セルブライト(p3p010126)はぎらりと睨め付けた。憤怒を力と為して、全てを滅する力と為す。それ故に、己の武装全てに力を込めた。
レーザービームを叩き付ける。ゼタシウムブラスターは心に込めた勇気と炎を宿し放つが為。保安官たるムサシの最終兵器は眩い光を灯し、叩き付けられる。
「模倣したくらいで自分の……俺の焔と勇気を封じきれると思うなよ、ルグドゥースッ!」
「いいえ、全ては掌の上――」
目を伏せったルグドゥースに手を伸ばすように。ムサシが女が模倣した技を押し返す。魔女の黒き靄のような気配がふわりと踊った。
腕が消し飛んだ――が、女は迷うことはない。
「本来は、貴方がたの論理に、理論武装を以って反論すべきなのだろうが……疲れてきたな」
嘆息した『61分目の針』ルブラット・メルクライン(p3p009557)の靴音は砂の海では響かない。押し切れる。それを理解している。
見れば良い。ルグドゥースは疲弊して居るでは無いか。此処は幸いにして喧噪の中。何を話そうとも誰も耳にはしないだろう。
ルブラット・メルクラインは彼らしく穏やかな声を発するのだ。
「そうだ。私は死すべき罪人だ。
だが、私は……友人と他愛のないことで笑い合いたい。医師として嘆き苦しんでいる人々を救ってあげたい。見出した光を失いたくない。
それだけだ――死んでくれ。私の未来の為に」
「『はい』などと応えられるわけが、ないでしょう」
女の声音にルブラットは首を振った。構いやしない。そう言って居る間にも死は宣告され、時が近付いて着ているはずだからだ。
「吹けば飛ぶような妖精が、一人で往こうとするのを目にしてはな。
我ら覇竜の民、もとより自らを圧倒する存在の相手には慣れている。
とはいえ、このスケールは想定以上ではあるが……四の五の言っても始まりはすまい」
小さく笑ったのは『緋夜の魔竜』シャールカーニ・レーカ(p3p010392)であった。その傍らには氷狼と共に行く『優しき水竜を想う』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)の姿がある。
怒りが胸を焦がす。それを冷やすのは氷狼だった。この小さな狼と共にあるならば、己は氷精でもあるのだろうか。
「ねえ、レーカ。レーカが手伝ってくれるなら安心ね」
微笑んだオデットの傍にレーカは立っていた。オデットを庇う。それがレーカの成せることだ。
だからこそ、オデットは『本気』を叩き付けるのだ。ルグドゥースがスキルを封じ込めんとしたとして、それを『問題』としないだけの火力と仲間の戦いを見せれば良い。
「ねえ、あなたは何?」
オデットは問うた。その声音は柔らかに揺らぐ。
「あなたを知る事でファルカウを知れるわ」
あの人は何を考え居てるのか――怒りに飲まれて仕舞ったというならば、その心を巣食う闇を払い除けることが出来るだろうか。
眉を顰めたオデットは温かな光の恵みをその身に纏いながら、ただ、ただ、ルグドゥースを見ていた。
「森は全てを知っている」
「けれど、貴女のことは何にも遺してやくれなかったじゃない」
オデットを見るルグドゥースは「それでも『しあわせであればよかった』でしょう」と言った。ルグドゥースの胴に叩き込まれた一撃は凍て付く気配と共に彼女を霧散させる。
討ち取った。けれど、心の中に遺されたのは彼女のたった一言だけ。まるで、その言葉はファルカウが発したかのようで――
「うん、きっとそう言う存在なんだろうね」
良く分かると『虚飾』楊枝 茄子子(p3p008356)は頷いた。そうだろう。ファルカウは今『デッカ君』に寄り添っている。
「デッカ君が最後まで寄り添っていたのはアリっちだけどさ。デッカ君に最後まで寄り添ってたのは私なんだからね。
……滅びの獣は平穏を許されないだなんて、ほんと意味わかんないよね。ま、キミがどう考えてるのかは知らないけど」
デッカ君と呼んだベヒーモスはファルカウが理解者であるわけがない。アリスを愛していたのかもしれないが、ベヒーモスを寧ろ支えていたのは己の方なのだと茄子子は言いたげな顔をした。
「よくやった、皆! 会長、すまんが飛行能力のかけ直しを頼む!」
「りょーかい」
「――それと面倒な横槍を入れられては叶わん、残る魔女と指揮官には気を付けろ!」
堂々と告げる『蒼き燕』夜式・十七号(p3p008363)に「リーダーの頼みとあらば」と茄子子は、いいや、『会長』は悪戯な笑みを浮かべて見せた。
翼を授けるのは何度だって。羽衣教会に参入してくれれば嬉しいけれど、そうとも行かないのだろう。
地を蹴って十七号は飛び上がる。ベヒーモスの膝裏まで飛び込む事が容易であったのは十七号の視線の先でルグドゥースが倒され、エトムートは仲間が抑えているからだ。
「このままだ!」
十七号は声を発する。あの大波を越えるように、されども『この波はそれ程恐ろしくはない』と思えるように。
『涙を知る泥人形』マッダラー=マッド=マッダラー(p3p008376)は納得した様子で天を仰いだ。
「どうやら奴さんも相当苦しいらしいな」
そう呟いた。茄子子を庇いながら、進まねばならない。泥の羽根と踊ってくれたようにも思えた彼女は掻き消えてしまったか、
だが、それで構わない。マッダラーの重ねた攻撃の行く先は、『膝裏』だけだ。
「ほらほら、早く何とかしないと会長死んじゃうぜ。そうなったらみんな撃墜して終わりだかんね。気合い入れて膝カックンしな~」
揶揄うような茄子子に『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)がからからと笑った。
「ROOの時もこうしてベヒーモスに死を恐れず吶喊して行ったな!
今はもうあの時の俺に追い付いている。なんならギルドの皆の分今の方が強いからな、さぁ盛大にひざかっくんしに行こうか!」
己の理想なんて、其処には存在して居なかった。敵の横槍には気を配る。翼は直ぐに掻き消えてしまうだろうからこそ、落下の注意を行なうべきだ。
「蟻の一刺しというにはちょいと過激だぜ!」
溢れた終焉獣を『数多異世界の冒険者』カイン・レジスト(p3p008357)が払い除けた。仲間達と臨機応変に、しかして、叩き込んだ攻撃に仲間を巻込まぬように注意すべきであったか。
カインが顔を上げれば問題ないというように錬が手を振った。好機狙うが、膝裏に集う仲間を自身の攻撃で倒すわけには行くまい。
錬の治癒符がひらりと舞った。振り仰いだエトムートと『目的第一』マッチョ ☆ プリン(p3p008503)の目が合ったか。
(今になって本腰を入れて妨害にくるか。ここでの出し惜しみは無駄に思えるが、何か事情か仕込みでもあるのか?)
悩ましげなマッチョは『ファルカウという女は心の何処かで己を止めて欲しい』なんていう感傷でもあるのかと考えた。
これまでルグドゥースを相手してきた。彼女が倒れる刹那に――そう、「悪いが、狙いは最初からこちらなのでな」と声を掛けたときに。
「お前は確かに障害だが……最大の問題さえ倒してしまえば、後でどうとでも処理できるだろう」と告げたプリンへと「ええ、そう分かって居たって止まりませんわ」と彼女は笑ったのだ。
魔術を手を受け止めやってきた。『アイのカタチ』ボディ・ダクレ(p3p008384)は最後の最後、届く場所へと思いの丈をぶつけるのみだ。
「相手が邪魔をしてくるぐらいに、私たちの攻撃は無視できないと――ならば良し。妨害を捩じ伏せ依頼を遂行します」
困った事に後ろの方には義姉が居る。従妹と言えば血縁関係もある。
なんとも『困った事に此処を守らねばならない事情』が増えてしまっているのだ。
「その巨体だ。さぞや膝の負担は重いことでしょうね」
故に、ボディとプリンはその時を待った。
「さっさと膝をつきやがれデカブツ!」
マッダラーの声音に、カインが頷き地を蹴った。空を駆る。ただ、直向きに攻撃を放つ場所を探るようにして。
十七号は仲間達の姿を見る。攻撃が重なっている。『騎兵隊』にエトムートを相手取る仲間達。
タイミングを合わせ、号令を出すのは何時だってリーダーの役割だ。
「今だ。奴の膝をつかせてしまえ――!」
成否
成功
第2章 第4節
●
「ふぅ、愉しい実験でした。ひとまずカロルの傍に戻って重症抑えの加護の手伝いをしましょうか。
概ねベヒーモスの足止めに関してはどうにか見えてきましたし、対処に回る人も話がついてきました。
……でしたら私は小細工の手段を考えるとしましょう。魔女らしく、ね」
くすりと笑った『死血の魔女』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)に「悪い顔よねえ」とカロルはそう言った。
マリエッタの役割はカロルの援護だ。適宜、前線で回復支援を、そしてカロルの護衛として立ち回る。
「仮に終焉獣が撤退するのであれば、その獣に細工ができそうです。
手段は……各地で獣が狙ってたパンドラ収集器。叩き込んで送り返す……とかでしょうか?」
「逃げる場所、無さそうなのがあれだけれどね」
「そうですね。所でカロル。ちょっと相談です。私の中にアレフの力……傲慢との戦いには使いましたが。
この場で使えそうなほど残っていそうでしょうか? 可能ならとっておきの切り札として……別の一撃に使えそうとは思っていましてね」
「ちょっとなら」
「ちょ、ちょっとですか」
本当に聖竜に頼りたいほどだとマリエッタはそう言った。カロルがそれを行使すれば彼女は生きては居られないだろう。だからこそ、カロルを生かしておける程度の塩梅を探さねばならないのは確かだ。
「人身売買なんてそんな。……あれ、よく考えたらそうなのかも? でも契約書持ってきたのは今井さんで……」
「相手が買いを求めてくるだなんて、やるじゃない。イケメンだし……」
何とも戦場らしからぬ会話を楽しむカロルに「まあ、そんな感じでした、カロルさん!」と微笑んだ『相賀の弟子』ユーフォニー(p3p010323)は背を向ける。
世界が平和になったなら今井さんの代わりに誰か『イケメンを闇市』に迎えに行く手伝いをしてやっても良いのかもしれない。ベヒーモスを狙う『騎兵隊』や『豊穣・海洋連合軍』を支えるべく――向かうは、
「狙いはエトムートや騎士達です! ベヒーモスには少しでも進んで貰ったら困るんです、申し訳ないですが時間稼ぎはさせません!
行きますよ、今井さん! リーちゃん!」
ドラネコの『リーちゃん』が召喚されてふわりと浮かび上がる。戦況把握に注力するリーちゃんを頼りにしながらも、味方を巻込まぬ万華鏡の魔力がエトムートへと迫り行く。
ユーフォニーの戦い方は短期決戦に向いている。詰まり、1人では『最大火力をぶつけて』出来うる限りの早期解決を行なうべきなのだ。
「今井さん。万華鏡はさらにキラキラ派手に、目立つようにいきましょう!
ベヒーモスから湧いた終焉獣もどうぞこちらへ惹かれておいで。そしたらまとめて照らしちゃいましょう、ね?」
「そうしましょう!」
ウキウキとした今井さんにユーフォニーはにこりと微笑んだ。後方でのカロルの加護はイレギュラーズを守るに適している、が、彼女は大人しく後ろで見守ってくれるわけではない。
「キャロちゃんは大人しくしといてくれと言って大人しくしてくれる人じゃなかったですね……」
ため息を混じらせたが、そう言う部分は実際には自分に良く似ていると『夢見大名』夢見 ルル家(p3p000016)は知っている。
彼女の性格が『そう』だからこそ、仲が良いと言っても良いくらいだ。自分にアレフを使わないでくれ、生き延びてくれと彼女は懇願した。その意味を理解しているルル家は「仕方ない! 一緒に行こうキャロちゃん!」と手を伸ばした。
「あー! お前はジェック殿に封殺されて何も出来なかった全剣王の部下! たしかエトムート!」
じらりと睨め付けるエトムートに「え? 煽り癖あんの、おまえって」とカロルがルル家を見る。「そうじゃ無いけど!?」と慌てて振向いたルル家にカロルは「行くわよ」と微笑んだ。
神聖なる魔力を帯びたカロルの加護をその身に纏ってルル家が走り出す。前行く聖女の姿に困惑した表情を浮かべたのはリンツァトルテであったか。
「ミルフィーユ卿」
「……ええ。…そのつもりだったから頷いたけれど、随分あっさり自分の隊を任せたものね。信頼は心地良いから良いけれど。
さて、コンフィズリー卿から任されたからには頑張るわ。死ぬ気で死なないようにして頂戴ね」
さっぱりとリンツァトルテは指揮権を『無限円舞』アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)に譲った。その理由など単純だ。
彼女は天義の貴族にして指揮にも慣れた存在だ。自身が聖剣を握る以上はこの場から離れる事も多くなろう。それが天義の決戦で学んだ結果だ。
「すまない」
「いいえ。貴方は士気を下げないことを意識して。それが騎士よ」
――彼女ならば任せられる。だからこそ自身は『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)と共に前を行くと決めたのだ。
「巨大な獣を――魔種と戦うだけが大事ではない! 勝利の為に力を貸して頂戴!」
アンナは声を発する。騎士達を支え、指揮をする。終焉獣がぼろぼろと毀れ落ちる血潮のように。それをも蹴散らせば未来に繋がるのならば遠慮などしない。
白布がふわりと揺らぐ。その気配を眼前に眺めながらゴリョウは「リンツ」と呼び掛けた。青年にとってゴリョウは『盾を受け継いだ』存在だ。
信頼できる。頼りに出来る。故に――彼の言葉は重いのだ。
「リンツ、騎兵隊と【豊海】が組んでデカブツの未だ無傷の『左アキレス腱を粉砕する』と言い切った。
俺ぁ騎兵隊の強さをよく知ってる。豊穣の賀澄の旦那……霞帝を始めとした豊穣海洋連合軍や共に在る【豊海】の強さも知ってる。
――奴らなら『やる』ぞ、間違いなく」
「……ゴリョウ。それは少し悔しくなるんだ」
彼は何処か子供っぽく拗ねた。傍に居るイル・フロッタが小さく笑う。ああ、そうだ――
「俺達天義の聖騎士も成せる筈だ。だからこそ」
「ああ。突き崩すことが出来る。タイミングを見極めるぞ!」
ベヒーモスを突き崩し膝を付かせるために。ゴリョウはリンツァトルテを始めとした幾人の騎士と共に行く。
「リンツさん、右!」
顔を上げる『聖奠聖騎士』サクラ(p3p005004)が瞳を煌めかせた。不毀の軍勢が行く手を阻まんとするならば押し通すのみである。
「天義の聖騎士、サクラ・ロウライト。参る!」
「エトムート……!」
リンツァトルテは指揮官がせめてもの行く手を遮ろうとしているのだと気付き、その名を呼んだ。眩い魔力が後方から広がってくる。
『天義の聖女』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)は優れた魔術を用いて、突き進む。聖女と呼ばれた娘の指先にリインカーネイションが輝いていた。
「滅びはリンツさんの聖剣とか使えば祓えそうだよね。
その後なら結界で滅びから隔離できたりはできそうだけど……問題はそれだけじゃ決め手に欠けるってことかなイルちゃんの杖はあるんだっけ……?」
「ある。でも私じゃあんまりかもしれない」
「大丈夫だよ、大丈夫」
スティアの励ましにイルがどこか緊張したような顔をした。杖を背負っていたのだろう、イルは「うーん」と唸ってから杖を握る。
「うんうん。大丈夫。ここにはリンツさんの聖剣、ゴリョウさんの聖盾、スティアちゃんの指輪、イルちゃんの杖。あと私の禍斬がある。これならもしかしたら……」
サクラとスティアはマナセを振向いた。彼女ならば何か策を講じられる可能性がある。ずっと何かを考えて居るようだったからだ。
(私にしかできない事があるかもしれないからちゃんと考えないと、それに皆で力はなんとだってなるはず! ……今までもそうやってきたのだから。
何にせよ、この状況をなんとかしてファルカウさんと相対しないと始まらない!
マナセさんが結論を出すまで、この場をきっちりとカバーし続けないと……!)
スティアの視線にマナセが「どうしたらいいとおもう!?」と慌てた様子で声を上げた。
「例えばこれらを起点に五芒星を描いてファルカウの滅びを祓う事って出来ないかな?
マナセちゃんの封印と聖遺物の力をお互いに増幅する……みたいな感じで。
勇者パーティーの潜在能力を持って、ファルカウから知識を得たマナセちゃんとなら結構勝ち目あるんじゃないかな。
マナセちゃんもファルカウと親しかったって聞くし、きっとファルカウを元に戻したいよね。
絶対に成功できるっていう訳でもないけど……それでも出来る事はやってみたい」
「う、うーん、ベヒーモスからファルカウを引き摺り下ろして、先にファルカウを救えば『ベヒーモスの効果を全て打ち消すチャンス』があるか持って思ってて……」
「どういうことかな?」
スティアの問い掛けにマナセはこくりと頷いた。皆の持ち得る力を用いて何か――あと、もう一つピースが足りない気がする。
マナセの視線は『冠位狙撃者』ジェック・アーロン(p3p004755)の姿を捉えた。
「世界は歪なパズルに過ぎない……パズルが綺麗にハマっている時代を知っているというのは、ある意味で不幸なことだね」
ファルカウは全てのパズルが綺麗に嵌まっており混沌が此程までに『混沌』としていなかった世を知っていたのだろう。
だからこそ、この現状には憂いを持って存在して居る。それを責めることは出来やしない。
「エトムートやルグドゥースを止めることも勿論大事だけど、ベヒーモスを野放しにするわけにはいかない。
終焉獣を倒すことがベヒーモスのリソースを削ることと同義なら、倒されていない終焉獣はベヒーモスのリソースも同然なわけだ。
……傷口から落ちてくる終焉獣に、パンドラの奇跡を被せればどうなるかな?」
「できるの!?」
「わ。マナセ。そ、そうだね。どうかな――パンドラを纏った攻撃が、アタシの弾丸でベヒーモスの体内に入り込めば」
「入る、かしら」
「入れ込むんだ。でも、諸刃の剣だね。『奇跡に頼り過ぎちゃ』身が持たない」
「――それだわ!」
マナセはジェックを見た。弾丸を叩き込む彼女の様子を見て思いついたというように手を叩き合わせる。
ああ、そうだ。ベヒーモスを破壊しきるには滅びへの対抗手段が更に必要だ。かと言ってベヒーモスにリソースを割けばマリアベルへの対抗手段が喪われる。
自らの命をベッドすれば、何れは尽き果てる。ならば、ファルカウを先に引き摺り下ろし、彼女を何らかの『リソース』にする事が一番だ。
その為に「持ち得る全てをファルカウに使いましょう。あとは、なんとかなる!」とマナセは力強く言うのだ。
「うん、そうだね。『なんとかする』!」
笑ったのは『魔法騎士』セララ(p3p000273)だった。そっとリンツァトルテの聖剣に手を添える。これはベヒーモスに膝を付かせ魔術を発動させることで、次の一手を目指すための祈りだ。
「リンツなら一人で聖剣を起動できると思うよ。でも、皆で起動した方が何倍も強い力になると思うからね。今回もボクの正義パワーを注入!」
にんまりと笑ったセララに「有り難う」とリンツァトルテは頷いた。セララは其の儘走る。エトムート達の妨害を斥けるように地を蹴って叩き付ける。
全力で、壊す。全力全壊――魔力は鋭く、そして重く地へと叩きつけられた。眩い光と共に駆ける少女の姿に気付き、マナセが「行くわよ~!」両手をぶんぶんと振り回す。
『黒のミスティリオン』アリシス・シーアルジア(p3p000397)はと言えば真瀬の話を聞いてから「ええ、『ファルカウ様』であれば、ベヒーモスの消し去った無の大地を再生する能力があるかもしれません。それが命懸けとなってしまったとしても」と囁いた。
「傷口から終焉獣が零れ落ちる……ベヒーモス自体が無数の終焉獣の集合体のようなものか。
……零れた方の処理もする必要があるけれど。優先度としては、やはり足を潰す方が先ですね」
ベヒーモスが無数の終焉獣で出来上がっているならば、動きを食い止め、その場に留めた後にその全ての命が潰えるタイミングを求めるしかあるまい。
「ファルカウ様を引き摺り出すならば最低限、ベヒーモスを留める必要がある」
降りてくるまでは魔法陣の維持に全力を注ぐ必要があるだろう。それまではベヒーモスが膝を付く、そのタイミングだけを探し続ける。
「そう易々と……」
「いいえ、易々と。許して貰いましょう。どうやらルグドゥースは『おしまい』ですよ。
それに前にでてきた、いや周りを騎士に守らせているから完全に出てきた訳では無いのでしょうが、少なくとも顔は出している。
――ということは、そうせざるを得ない理由がある、ということ、違いますか?」
囁くようにそう言った『ただの女』小金井・正純(p3p008000)にイヴが頷いた。
可能な限り刃を届かせるべく正純が周辺を固めた騎士達を払い除けて行く。イヴは正純の狙った敵を『声かけなくても』気付くように、振る舞って叩き切った。
「ベヒーモスが貴方の目的の根幹であることは理解しています――だから、それを阻止するためにも貴方を倒す」
もしも全剣王が打倒されたとて、エトムートは構いやしないのだろう。王の目指した目標に向け進むだけとでも口先で飾るだろうか。
(そうはさせない――!)
引き絞った弓はエトムートを捉えている。正純の矢が放たれるのと同寺院、前線へと飛び込んで行くのは『歪角ノ夜叉』八重 慧(p3p008813)。
「さ、敵意でもなんでも、幾らでも向けてきてくださいよ。その程度で折れやしねーんで」
呪われた己の身であると認識している。だが、呪いを帯びたと認識した己は何れだけの敵意でも、悪意でも『それ以上の苦しみ』がないと知っていた。
慧がぎらりと睨め付ける。被弾をしたとて構うまい。長くこの場に立ちはだかって、エトムートを惹き付ける。己の可能性だって燃やせば良い。
ただ、目の前の男を倒す事だけが慧の成せることなのだ。エトムートの動きが止まったならば、これこそ好機なのだ。そう『竜の狩人』ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)とて人気している。
(護衛役が避けている間に――!)
早々のダメージの入った右足、それから、更に狙うこととなる左脚。ミヅハが振り仰げば騎兵隊による攻撃作戦が遂行されている。
ベヒーモスに叩き込まれる多段的攻撃。兎に角、その動きを食い止めることが目的である事には違いない。
「な、何ィーッ! そいやデッカ君だったわ。ベヒーモス! くっ、ウチが名前を忘れるなんて! つか知らんかったわ」
大仰にそう言ってみた『音呂木の蛇巫女』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)は騎兵隊目掛けて勢い良くダッシュしていく。
「目立ってアゲてマジ卍! 終焉獣出してる悪い子は何処じゃろがい!」
極めて鋭いマジダッシュ。その勢いと共に戦いに赴いた。肉をスライスしているとハムが食べたくなるのはご愛敬。
生ハムが食べたくなってくる。生ハムの原木を思い浮かべながら、打ち上げは焼肉が良いと叫んだ。いっそ全部盛りで行かねばならない。
「ぴえん! 一撃で倒せないのくやちすぎ!」
「ベヒーモスを?」
問うたのは女性を護る事を意識する『八百屋の息子』コラバポス 夏子(p3p000808)であった。
「いやー、あーぶな。間に合った。琉珂ちゃんも黄龍ちゃんも 他にも交流あった数多の女性ちゃんは無事。
ヨシ! コレ終わったら平和の象徴作んないとね! 出ちゃうね! ヤル気!」
にんまりと笑った夏子は広域を確認しながら、エトムートの様子にも気を配る。奴はかなりの攻撃が重なっているだろう。
天義騎士団もエトムートを打ち崩すために躍起になっている。これならば、残る敵はエヴァンズとベヒーモス――それから、ファルカウか。
「っかしーよな~ 今正にまとまってるんだけどな~ 世界 ……ただ一つ 何故か敵対する連中が居るってだけで」
それは何とも皮肉だと夏子は思うと同時に「あの女性(ヒト) ひょっとして、これ狙いだったりして?」なんて戯けて見せた。
そんな夏子の言葉に息を呑んだのは――きっと『赤い頭巾の魔砲狼』Я・E・D(p3p009532)やマナセだっただろう。
Я・E・Dはベヒーモスの膝を付かせることを目的に尽力してきたのだ。
「……R.O.Oの時も貴方はあの子に寄り添ってくれていた。でも、ごめんね、わたしは今回も貴方を止めなきゃいけないんだ」
悔しい。この子は屹度優しいのに――希望の力を押し込む。それでも、押し返される。終焉獣が牙を剥く。
何か、何か工夫をしなくてはならないのだろう。ただ、膝裏の部分に重ねた攻撃にベヒーモスの動きが鈍くなっていることは確かだ。
(うん、わたしの運命量ならまだ大丈夫、やれる事はやってみる……ただ、と届かすとなれば、どうすればいいのか……!)
この巨体だ。少し痛んだ程度では全てを倒しきるには至らないだろう。傷口から溢れる終焉獣から『死澱』瀬能・詩織(p3p010861)を庇う『復讐の炎』ウルフィン ウルフ ロック(p3p009191)は全てを振り払う。
「大樹ファルカウは愛する方と初めて共に旅行した、大切な思い出の象徴なのですけれど……。
私の大切な、愛する方と共に生きて行く世界を壊すと言うのでしたら……ええ、是非もありません」
苦しげに呟く詩織の長い黒髪がふわりと揺らいだ。前線へと向かう詩織を守るロックは不死性の体力を利用した戦法だ。
傷を負えば負うほどにロックは強くなる。復讐者は食らい付くことを止めやしないのだ。
「貴女の願いも祈りも、これまでの献身も――全てを暗き死の澱みの底へと引き摺り込み、その魂命肉叢を喰らい尽くすのみです」
護りを任せたロックを一瞥し、詩織の髪は一本一本が意志を持つが如く伸びくねる。広がる斬糸は迫り来る終焉獣を斥けた。
(最後の戦いへの挑戦……詩織を守るために。最後を最後にしない為に……我は我を喰らうモノ)
――そう。ロックは言うのだ。
『我は死んでも死なん、詩織と共に此処にいると誓ったのだからな』
その為に戦うことを止めやしない。ファルカウの視線が注がれる。女の名を呼ぶ詩織を一瞥したのだろう。
「はっ、分かってねえな。かーさんは戦乱のせいで死んだんじゃねえ。かーさんは愛に生きて、愛に死んだんだよ」
ファルカウへと叫んだ『ガイアネモネ』紅花 牡丹(p3p010983)はエトムートへと飛び付いた。
「娘へのお土産にもできない獣ばかりいるわねぇ……いくら私とはいえ、これは煮ても焼いても食えないというのは分かるわよ。あの馬鹿みたいに大きいの、止めないとね」
呟く『焔竜の頌歌』星華(p3p011367)は回復要員として牡丹を支え続ける。エトムートを狙う弾丸は彼の体力を確かに削り続けている。
「響け! 我が竜唱(ロア)! 我が頌歌(オード)! 終焉(おわり)に抗う戦士に加護を!」
朗々と奏でる音色。回復の足りない部分があるならばここで『全員が生き残る』ために星華は尽力するのだ。
エトムートを倒しきれば良い。彼は指揮官であるが、守る者達の姿は掻き消えた。だからこそ、根競べとなったのだ。
「口惜しい」
「そうですか。それは何に?」
静かに問うた正純をエトムートが睨め付ける。持ち上がった腕を『灼けつく太陽』ラダ・ジグリ(p3p000271)を穿った。
「ベヒーモスを足止めする策があるようだが、その妨害をされては敵わない――時間稼ぎはお互い様さ。存分にやり合おうとも。それとも、そもそも限界か?」
ラダが唇を吊り上げる。敵に塩を送られたつもりで撃ってきた。ラダの弾丸は敵が増えようとも逃しはしない。
エトムートは奥歯をぎりりと噛み締めた。此度ばかりは逃がすわけには行かぬのだ。
「全剣王はこの世界をも支配する筈であった。その王道を邪魔立てするとは――!」
「そうか。それは良い夢だな」
ラダはそう言った。ただ、それっきりの言葉を発したのはエトムートという男は、きっと『鉄帝の現状』を知らないからだ。
弾丸がエトムートの仮面を吹き飛ばす。機械のかんばせが覗き、苛立ちの赤色が灯される。しかし、構うまい。放つ。ばちん、と大仰な音が響いてエトムートが地へと叩き付けられた。
正純の嘆息する声を聞きながらラダは「呆気ない最後だよ」と静かに言って――
「魔法使い(ウォーロック)! 魔力の質(M)はそんなにだがよ! 容量(C)なら結構あるんでな!
何より! オレはこれでもハイウィザード!
かーさんとかーさんが見届けてきた数多の人々が磨き上げ、オレが受け継いだ悠久の教え、見せてやるよ!
世界を守ろうとしてるのは今を生きるオレ達だけじゃねえ! だから、いざって時は任せろよ!」
牡丹へとロックは頷いた。ベヒーモスは地を揺らし――
「ベヒーモスが少し動きを鈍らせているみたいだ。
――どれだけ体が大きくても、意味がないなんてことはない止まらないというのなら、止まるまで。全力を尽くし続けるだけ」
『優しき咆哮』シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)はロックとクレカに「私が支えるから、安心していて」とひとつ言葉を残してからアキレス腱に向けての一撃を叩き込む。
諦めない。これまで出会った人々と出会った場所を守る為。
美しい豊穣も、始めの街だった幻想も、何もかも、思い出が溢れている場所だ。
繋いだ手を離さない。蒼穹はコレだけ明るく、澄み渡っているのだから。
「イクリプス……さいごまで全力疾走! 終焉獣や滅びの種を掃討する露払いよっ」
『バアルぺオルの魔人』岩倉・鈴音(p3p006119)はにいと唇を吊り上げる。
「みんな~殺ってるかぁぴょん?」
地を蹴った。うさみみがゆらりと揺れる。終焉獣の群へと飛び込む鈴音と共に真礼が黒い髪をふわりと揺らす。
「劍が囁く……終焉獣を余さず喰らうと。滅びを望むモノが旨いのかこんど劍に尋ねてみよう。
ちりめんじゃこみたいな雑魚をいくら屠ったところで栄養にならぬかも知れんが、ベヒーモスという美味しいものは最後にとっておきましょう」
くすりと笑った真礼に庇われながら鈴音は駆けた。露払いは粗方済んだ、とは言えど傷口から溢れ出るそれは留まるところは知らないか。
ルグドゥースが倒れた。エトムートは倒れた。だが、エヴァンズは残っている。ファルカウだって。
『つばさ』零・K・メルヴィル(p3p000277)は小さく息を呑む。
(アキレス腱とか動きが止まりやすい部分の弱点はROO時代を思い出しつつやれば―――上手く、削げるか!?)
あの日のように。
ただ、怯えては居られないのだ。
駆ける。当たり前の様に、己の『届けられる全て』を出すように。
デスポイント? いやいや、現実は死んだらそれで終わりなのだ。だからこそ、死んではならない。
それだけでどれ程に緊張するか。
叩き込む。ただ、一度だけ――!
「止まれ―――!!!!」
成否
成功
状態異常
第2章 第5節
●
騎兵隊、そして『豊穣海洋連合軍』が互いに連携を行ない続ける。それだけではない。
唇をつい、と釣り上げた『竜拳』郷田 貴道(p3p000401)は拳を叩き付けた。
「おうおう、やってみるもんだな。効いてるみたいで何よりだ、足に来てるじゃねえかデカブツ!」
叩き付ける貴道は右足を叩き付ける。腱が切れても、臑が折れても無理が利くだろう。だが膝裏はどうだ?
膝裏への攻撃を行なう者も多く居る。その拳は全てを壊すためにあるのだ。蒼き焔は男の生命そのものだ。
「掘削だ、ぶち抜くつもりでいくぜ! 掻き分けてでもこの膝、ブチ砕いてやるよ!」
貴道の声を聞き、すうと息を吸い込んだのは『ともに最期まで』水天宮 妙見子(p3p010644)であった。
「『ベヒーモスの両足を同時に挫き』ます」
ゆっくりと振り仰いだ妙見子は「また豊穣海洋連合軍と共に傷口から溢れてくる終焉獣の対応を。賀澄様も晴明も任せました!」とその瞳を煌めかせて。
「ああ。本気を出そうか」
賀澄の周辺には黄龍の加護を受けて産み出された刀剣が『模倣・模造』され存在した。其れ等を投げ入れ戦うという何とも派手な戦いっぷりを見せるのだ。
「状況が変わったようですね……取り敢えず、ベヒーモスを何とかする所からですか。けど何も考えずやれば周囲に影響が出てしまう……。
世界を救う戦いとはいえ、出来るだけ被害を少なくする為に、ちょっと危険な事に挑戦しますが、霞帝や黄龍様達は無理しないようにですよ!」
「ダメらしい」
振向いた賀澄に「絶対ですよ」と『未来への陽を浴びた花』隠岐奈 朝顔(p3p008750)は眉を吊り上げた。
「確かにあれだけの巨体、倒れた場合のことも考えねばなるまいか。承知した、武蔵も全力で協力しよう!!」
堂々と頷いたのは大和型戦艦 二番艦 武蔵(p3p010829)であった。背には豊穣海洋連合軍が存在して居る。
「少しずつ、ですが確実に。デッカくん……ベヒーモスを、削っています。
妙見子さまのおっしゃる通り、右足に狙いを定めて参りましょう……! わたしは、最前線に行ってきます……晴さま、そちらをお任せします、ね」
晴明が『約束の力』メイメイ・ルー(p3p004460)の手を一度やんわりと握った。大丈夫だとその手を握り返し、笑ってからそっと離した。
メイメイは走り出す。向かう先はただ一つ。騎兵隊と『豊穣海洋連合軍』は合同で狙いを定めるのだ。
「魔力回路全段直結――皆、やるわよ」
静かに告げたのは『流星の少女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)であった。
全員生存こそが必須目標。次にベヒーモスの健全な左脚の破壊を刊行することだ。幾人もが捕縛魔法陣補佐を行って居るはずである。
「いいわね」とイーリンは問うた。勿論と笑う者が居る。ああ、それでいい。号令を聞け。進む先は決まっているのだから。
「――"それをキミ達が望むなら"。今暫くここに留まるといい、ベヒーモス」
唇を三日月の形へと変えてから『闇之雲』武器商人(p3p001107)が笑う。その長い銀の髪がゆらりと揺らいだ。
斯うしたときくらい『御伽噺の魔法使い』を気取ってみよう。捕縛魔法陣の補佐役を担った武器商人が「合図をしたら良いね?」とロックへと問い掛ける。
「頼りにしている」とクレカは返した。「なら、待っていろ」と『雨夜の映し身』カイト(p3p007128)が唇を吊り上げた
「――俺達の舞台へ引き摺り降ろしてやりゃあ良いんだろ?」
「心から、その通りだと答えておこうか」
ロックが微笑めば、ならばとカイトは進むだけだ。雨の気配は下から上へ、舞台はなによりも美しく飾られる。
「しかし、捕縛封殺ってのは俺の普段通りの仕事な訳だが……
はぁ……俺は基本的には役者のつもりなんだけどもさ。 魔術師としての腕を買われるのは――殊の外複雑でな?」
結界に対しての素養もあったが、それを何処まで活かせるかも定かではない。やれやれと肩を竦めるカイトは火の粉に関しても軽視しておかねばならないとロックを一瞥した。
それまでは、あの『デカブツ』の膝を砕く為に尽力するだけだ。
「騎兵隊の白盾、レイリー=シュタインよ! ベヒーモスまで道を拓くわよ!」
堂々と、彼女は行った。美しき白き騎士。白の聖女が応援してくれるならば、何処までだって偶像騎士は進むことが出来るのだ。
『天下無双の白盾』レイリー=シュタイン(p3p007270)は前線を駆けて行く――前にはた、と足を止めた。
「妙見子さんとは何度もラド・バウで肩を並べた仲だ。そんな彼女からの支援要請、全力を尽くさないワケにはいかないさ。
ね? カイトさん。 俺たちの本領――ここで発揮しなきゃ封殺屋の名が廃る!」
微笑んだ『最果てに至る邪眼』刻見 雲雀(p3p010272)の傍にはカロルが立っていた。イーリンが「紹介して頂戴」と言ったからだ。
「何よ?」と不思議そうな顔をするカロルに雲雀は肩をぽんと叩いた。
「冠位傲慢との決戦の時に顔は散々見ただろうから知らないことはないと思うけど。
イーリンさんも別にカロルの紹介はいらないよね? とりあえず俺から言わせてもらうと、彼女の支援は本当に頼りになるよ。保証する。
お言葉に甘えさせてもらっても悪いことには絶対ならないよ。ね? カロル。聖女パワー期待してるからね」
「あら、雲雀。言う様になったのね。当たり前じゃない。お前は頑張りなさいよ」
「はいはい。これ終ったらお菓子奢るから支えておいて」
そんな軽口を交している二人に向かってレイリーが駆け寄ってくる。雲雀はコレより、迅速に部位破壊のためのダメージ蓄積へと向かうのだ。
「騎兵隊の白き盾、そして、鉄帝のアイドルのレイリーよ、よろしくね! ファンなの! 会えて嬉しいわ」
「あら、良い心がけね」
不遜に彼女は行った。雲雀が思わず笑ったのはカロルは誰に対してもその態度が変わらないからだ。
「今からあそこで舞台だから、騎兵隊の応援よろしくね!」
ひらひらと手を振って、「ああ、満足!」とレイリーは笑みを浮かべた。この舞台を見ていて。何よりも輝いてみせるから。
そうだ。レイリーが輝けるのは彼女がいるからだ。
「仕方ないだろう。英雄という偉大なる存在は、戦いの中で生まれ、戦いに生きるんだ。
そしてこの『夢野幸潮』はそんな英雄共の活躍を記し語る為に筆を執る。故に汝らとは衝突する定めらしい。
……難儀だな、お互いに。ま、味方キャラと敵キャラの違いってやつだ。諦めてくれ」
編纂する領域が増してくれればそれで良い。『敗れた幻想の担い手』夢野 幸潮(p3p010573)はそう考えながらも仲間達を支え、その記録を紡ぎ続ける。
「私を倒さない限り誰も死なせないわよ!」
前線に向かうレイリーとは逆の脚に『生命に焦がれて』ウォリア(p3p001789)は肉薄していた。
終焉獣に何れだけ攻撃されようともウォリアは構うことはなかった。背中を任せる相手が居る。愛する者が此処にまで来てくれた。
「んじゃ、気合い入れて敵ぶっ倒していきゃいいっすね!」
にんまりと微笑んだのは『蒸気迫撃』リサ・ディーラング(p3p008016)であった。
長い髪を揺らがせる。可能性への希求。前線を見据えたリサはただ、己がなすべきを知っている。戦い続けてくれる人を想うだけ。
前を行く。その人を助けるために周囲の獣を払い除けるのだ。
(今の私じゃ、これが精いっぱい。だからこそ、前に行く人の背を押してあげたい。誰かの支えになりたい。
……それが私がメカニックを目指した理由だったから。射手として戦場に立っている理由だから)
リサは息を吸い込んだ。掃射。弾丸が散らばって行く。
「――だから。テメェらあの人達の邪魔すんじゃねええええ!!!」
弾丸に後押しされるように、『高貴な責務』ルチア・アフラニア・水月(p3p006865)は進む。
傷口を抉る行為は好きでではないけれど、それでも相手が終焉獣だというならば話は別だ。ここで為すべき事を為すのだ。
癒やし手として、ただ、『勝利を信じている』のだから。ルチアはウォリアを支え、そして、広域の仲間達の位置を確認する。
騎兵隊の者達は遠い。だが、それでも互いの存在を支え続けるだけだ。それは『群鱗』只野・黒子(p3p008597)とて同じであった。
ルチアのような癒やし手が支えているように。黒子のように伝播手段を持ち得て、ファミリアを介して状況を共有し続ける。
ベヒーモスへの攻勢を仕掛けるタイミングは合わせた方が良い。膝を付かせるために、最も大切な手段を用意しているのだ。
黒子の指示を聞きながら『決別せし過去』彼者誰(p3p004449)はヒーラーの護衛を、そして、救護をして居た。
「騎兵隊の執事、ここに馳せ参じました。
さあさあ、いつかと同じく道は前を見て歩きましょう、舞台の大事な生命線、守らせて頂きますとも!」
生命線たるヒーラーを護る事。そして、いざともなれば己がその実力を発揮できるようにと尽力するのだ。
彼者誰は堂々と進む。その背に守られながら懸命に仲間を支えていたのは『願い護る小さな盾』ノルン・アレスト(p3p008817)であった。
「全部倒しきるまで、こちらの誰もが倒れないために……!」
騎兵隊の『戦線生命線』はヒーラーだ。誰かが倒れれば、そこから瓦解する可能性がある。
この乱戦状態では何が原因になるかも定かではないのだ。しかも、終焉獣はベヒーモスの血潮のように振ってくるのだ。
孤立しないように、誰もに気を配ることがヒーラーと、そして指揮官の担うべき事だと知っている。
被害を減らす為にとノルンは祈るように仲間達の動きを見詰めていた。『月へと贈る草の音』ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)は「行きます」と言った。
「ベヒーモスの傷口に毒(パンドラ)を注げばいいのですね。ええ、僕にとっては得意分野です。続けましょう」
少しずつの毒をじわりと注ぎ続ければ、きっと『膝を付かせることだけは出来る』のだ。
全てを崩壊させるには力が足りない。それが天義の騎士が持ち得る聖遺物全てを使用し、カロルの加護を使ったとしても足りない可能性さえあるという。
「……成程ね」と『ロクデナシ車椅子探偵』シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)は呟いた。
「敵は強大なれど着実に削りつつある。
知略を武器とする者としてはあるまじきに聞こえるかもしれないが……実際最後は気合いだよ。我々ならそれは折り紙付きだ。
そして、気合の後に待つのが手段だ。『魔女ファルカウ』が転じることが出来たならば――ああ、きっと、彼女は『ベヒーモス』を打倒す鍵になるだろう。どう思う?」
「ええ。取りあえず魔女の目を覚まさせなくてはならないようだけれど、その前に降りて来て貰わなくては」
イーリンに「同感だ」とシャルロッテは微笑んだ。その傍にひょこりと顔を出したのは『あたしがいるっすからね』ウルズ・ウィムフォクシー(p3p009291)である。
「さあて、イーリン先輩に攻撃の要を邪魔させるなという指示を承ったっす。
元よりそのつもり、あたしが盾になるから先輩たちの自慢の矛をぶつけてやってくださいっす!」
にっこりと微笑んで、ウルズは戦場を駆けた。ベヒーモスを倒す為のアタッカーを守る為に周辺制圧を行なうのだ。
進むウルズの支援は、確かなものだろう。アタッカーを守るが為に、そして、来たる不和の気配を先んじて受け止めることが目的だ。
ジョシュアの弾丸が鋭くベヒーモスの傷口を抉る。弾丸を追いかけるように『Enigma』エマ・ウィートラント(p3p005065)の魔力が飛び込んだ。
「くふふ、やはりお祭りは人が多くないとねぇ?」
にいと微笑んだエマの放ったわざわいは、傷口にべたりと張付くようにして離れやしない。毀れ落ちる終焉獣をウルズが受け止めれば、愛馬から『騎兵の先立つ赤き備』エレンシア=ウォルハリア=レスティーユ(p3p004881)が飛び上がる。
「ベヒーモスの左足破壊ね、おっけーやってやろーじゃん――ここがアタシの見せ場ってね。フリームファクシ、パージ!」
ひらりと空を舞うようにエレンシアが飛び込んだ。
「そんじゃま、こっからがアタシの真骨頂ってな! 行くぜ!」
唇を吊り上げる。緋色の気配、それは戦意そのものである。エレンシアの瞳がぎらりと光った。
斬り伏せることが出来る相手では無い。だが、傷は開いている――!
「あのデカブツの足を折る? 良いだろう、龍はいつかに引き倒したから今更文句はないさ」
にいと唇を吊り上げたのは『黒鎖の傭兵』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)であった。
ティンダロスと共に進み続ける。味方からの伝達を聞きながら、周囲に存在する終焉獣をも蹴散らして、攻撃を届かせるために。
「纏めて吹き飛ぶか、そのまま止まれ……!!」
マカライトの声音と共に、終焉獣達が薙ぎ払われて行く。
「右足だけとは言わない。ここで両方とも砕いて止めさせる。これ以上は一歩も進ませないよ。最大火力で打ち砕く……!」
『八十八式重火砲型機動魔法少女』オニキス・ハート(p3p008639)は静かにそう言った。
仲間との攻撃を合せ、そして全てを払い除けるのだ。魔力の奔流に巻込まれる仲間達も居ただろうか――連携の中で出来る限り『巻込まない』ようにと無数の終焉獣を狙い続ける。
両足を崩せば侵攻は防がれる。そして、その時に『魔法陣』が発動する時を待つのだ。
(……感じるな、自身の"運命"がすり減り、限界が近い事を。ともすれば最期となりかねん、か……。
マァ司書殿が全員生存を掲げる以上は……此処で死ぬわけにはいかんが)
ごくりと『騎兵隊一番翼』レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)は息を呑んだ。連射する星々は、鋭くも仲間諸共ベヒーモスの傷口を広げて行く。
その乱撃は確かに仲間達をも傷付けただろうがベヒーモスにも大打撃を与えていた。
(――屍人面を構築。記憶は手段、情報は力。この力、死を越える為に使います)
あらゆる呪力を強化する面が悍ましくも美しい力を宿していた。『遺言代行業』志屍 瑠璃(p3p000416)はすらりと駆抜けタイミングを合わせるようにとロックへと意識を向ける。
膝を付かせたならば直ぐに捕縛陣を使って貰う為に、だ。遠方からの全体の把握を行なう瑠璃の亡者の群達はその足を止めることはない。
「次行くで次! 苦難は織り込み済み。問題なし! 倒せるだけ倒して削り切る。出来るって信じとるしな。
せやから自分はそれの邪魔をさせないようにするわ。直接攻撃は一旦任せた! 邪魔はさせへんよ」
にいと笑みを浮かべた『晶竜封殺』火野・彩陽(p3p010663)は不意打ちを防ぐようにして剥がれ落ちてくる終焉獣を振り払う。
これは必要な役割だ。何せ、仲間達を狙う相手から護りきらなくてはならないのだ。全力は此処に持ってきた。
空を穿て、地を剔れ。彩陽の鏃は敵を貫く。ペンダントがその胸で煌めいた。
「――Fire!」
『朝日が昇る』赤羽 旭日(p3p008879)の弾丸が連射されていく。終焉獣を払い除けたのはそれだけの数が現れたからだ。
機動力を活かすならば、周辺に『溢れた』終焉獣を払い除け、より多くの攻撃をベヒーモスに届かせねばならない。騎馬と足並みを揃え、そして、行く先を見定めるのだ。
旭を一瞥し、『黒のステイルメイト』リースヒース(p3p009207)は長期の戦いから不利を遠ざけるためにと駆け回る。
誰も喪わぬ事がリースヒースの目的だ。冥界は彼等の死を求めて等居ない。
(術合戦では、打ち消しも有効だ。故にそれだけは避けねば――)
見上げた先の魔女は、どの様に動くであろうか。ただ、それだけを確認する。
旭日が再度前線へと駆けて行く。リースヒースはそのリソースを回復しながらも孤立しないようにと連携を意識し、ベヒーモスを見上げていた。
●
「……陛下」
静かに呼ぶ『黒蛇』物部 支佐手(p3p009422)に「ああ」と頷いた賀澄はイレギュラーズの奇跡を見詰めているかのようだった。
「無理をするなよ、支佐手」
「ええ。しかし、陛下。御身に何ぞありゃ、刑部卿と宮様に申し訳が立ちませんけえ」
静かに告げた支佐手に賀澄は「怪我をするのも勲章よ」と笑う。快活な彼と共に終焉獣を払い除ける。
そうだ、目の前には『強敵』の前に向かった仲間達が居るのだ。彼女達の元に行かさない。それだけではない――主君は彼女を守ることを求めているのだから。
「今の私なら大丈夫。この力で皆を助けられる!」
その声が聞こえた。『挫けぬ笑顔』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)は前へ、前へと進む。
仲間を救うため。希望は此処に持ってきた。だから、此処で誰も死なせないとフォルトゥナリアは宣言するのだ。
味方への回復も敵への妨害も此処で両立する。目の前のベヒーモスから毀れ落ちる終焉獣の数が多くなれば苦戦する。
――けれど、そんなのは問題じゃないのだ。
構わない。此処で、ベヒーモスさえ膝を付かせればそれで『目的』は達成される。次に進むことが出来るのだから。
「悪巧みして、調べてきたし ここからは証明だわぁ――QEDで終わらせなきゃ、ね」
くすりと笑ったのは『狙われた想い』メリーノ・アリテンシア(p3p010217)であった。
ルチアの支えを受けて、メリーノはふわりと走る。アキレス腱らへん、とアタリを付けて攻撃を続けていく。
「――そろそろ頭(こうべ)を垂れるじかんだわあ」
ふわりと愛らしく笑うが、その攻撃だけは強かだった。ドレスがふわりと揺れる。
彼女は硝子の靴も何もかもを持ってやいない。此処に用意しているのは、ただ、『女の子の矜持』だけだ。
「待っていてね、ファルカウ」
「――」
「高いところから見下ろすのは終わりよ?」
魔女は、此方を見ている。
「武蔵の可能性も、持っていくといい!!」
武蔵は叫ぶ。護るべき人が傍に居る。そして――戦うならば命をも削らねばならない。
改造を得たように、己は進むべき場所を定めていた。ベヒーモスへと痛打を与えるために。
戦艦の娘はその砲撃を続ける。
「撃(テェ)――――!!」
武蔵の声が響き渡った。
(愛する者と大切な存在/黄龍が共に在る大一番___実に戦士冥利に尽きる話だ!)
ウォリアは飛び込んだ。黄龍が笑った気がしてならないのだ。
己の全力を此処に叩き込むだけだ。
「妙見子達に遅れは取らぬ、豊穣と共に在る者として……混沌を救うべくこのウォリアが此処にいる! 黄龍ーッ!!! ちゃんと見てろよ!?」
からからと、黄龍は云うだろう。「何時だって、見て居るよ」と。
ああ、そうだ。
――鏡の少女へ。岐路の乙女は、ひとときの友よ。
炎を美しいと、そういった彼女。花束を渡せやしなかったが、見せたい景色ばかりその胸に集めているのだ。
――偉大なる魔女へ。眠れるドルイドよ、我が友よ。
傍で眠るオオカミと、一時の夢を見て居るだろう彼女にまた会えると信じている。だからこそ、ここへ来た!
此処にはいない彼女達も、きっと見ていてくれている。
そう信じる心といつかの約束が、たとえ窮地に陥ろうと己が前に進む力を奮い立たせてくれるのだから。
「頑張るお母様……たみこママから頼まれたのなら、私は全力で応えるのです!」
にこりと微笑んだのは『100点満点』Lily Aileen Lane(p3p002187)であった。その紅色の瞳が真っ向からベヒーモスを見据える。
「……すぅ、はぁー……私ね。解ったんだ
誰かの為に戦うとき、私は頑張れるって、きっと皆もそうだったんだよね?
ううん、そうだと信じてる! だから、力を貸して……騎兵隊の皆! 騎兵隊を応援する人達! そして……『ミーナさん』!」
目を見開いたLilyが叫ぶ。
「いい加減に倒れろ、です!」
鮮やかな華を咲かすように。ただ、攻撃は鋭く、揺るぎない。
命なんて削って構わないと朝顔、いいや、向日葵はそう感じていた。未来の為に、こんな所で『先』を消させて堪るものか!
「……賀澄様。俺は死んだりはしませんよ。平和になった世界も、自分の目で見れなくては意味が無いですからね。
それに、この御守りがありますから、では、行ってきます!」
主は心配性だ。だからこそ、此処で全てを叩き付けるのだ。命を燃やして『死んで堪るか』と叫ぶように。
理解している。騎兵隊と共にあったこともあるのだ。だからこそ、イーリンは必ずやってみせるだろう。
ならば? この豊穣と海洋の関した連合軍が騎兵隊に遅れをとることなど『蒼光双閃』ルーキス・ファウン(p3p008870)は許せない。
ならば、徹底的に『落としてみせる』のだ。負けて等居られまい! 刀が鋭くもベヒーモスを斬り伏せる。
「私の全力で、この豚野郎の膝をつかせてやりましてよ。任せなさいな。アルフェーネ家の意地をお見せしますわ」
唇を吊り上げた『歩く災厄の罪を背負って』リドニア・アルフェーネ(p3p010574)は駆抜けて行く。
天義の騎士達と共に、アルフェーネの娘は自らの実力を見せるのだ。
(――さて、このデカ物をどう調理していい物か。
アキレス腱を断つことによる足の動きは、大きく制限されるはず……後は、私の勇気と覚悟だけ)
その背には沢山の騎士達を背負っている。リドニアは知っている。ごくり、と息を呑んだのはここで『捨てることは出来ないからだ』。
己の出来うる限りを叩き込めば良い。ただ、それだけでは足りないのが現状だと知っている。
(ええ、ええ――! 神に、三度祈りました。友を救ってくれと。されど願いは届けられませんでした。
けれど、今度は、今度だけは。叶えてくれませんか。私の夢の為に。皆の明日の為に。
死ぬかもしれないけど、それでも世界は美しい。そんな美しい世界の為に、命を懸けたギャンブルを)
リドニアが唇を噛み締めた。
――ねえ、ライアム様。私、ヒーローになれましたか?
視界に、彼が見えた気がする。「起きるまで待っていてよ」と笑うような彼の声が聞こえた。
どうやら神様ってやつはまだまだ戦う必要があるというのだ。一人きりのパンドラじゃ、この巨体は倒せないのだから。
「どうやら、まだまだ戦えという事ですわね」
「そうですよ」と『プリンス・プリンセス』トール=アシェンプテル(p3p010816)は美しく微笑んで見せた。
虹の気配を纏ったのは、ただ、『姫君』であった少年が前を進む為だった。堅牢な存在であったとて構わない。
硝子の靴なんて脱ぎ捨てて走って行けるのだ。何処へだって、何をしたって。
己の力全てを叩き込み、そして『発動しろ』――! 魔法は信じる世界だ。だからこそ、トールは全てを信じて此処までやってきた。
「AURORA-Eos最大稼働! 止まれえぇぇぇっ!!」
誰もの声が響き渡った。
「―――止まれぇええええ!!」
それはイーリンの声だった。騎兵攻撃陣、数多の戦場を駆けたからこそ、この号令は皆の力となるだろう――!
「あれの進行を止めるため……私が愛したこの世界を護るため。さあ――今度こそ答えて頂きますよ混沌」
妙見子はパンドラの加護をその身に纏った。想いに乗せて、傷口に食らい付く。
護国の九尾の姿に気付いてからメイメイは頷いた。今は違うけれど『恋敵だった』女子は強かなのだ。
「……妙見子さま? ……そう、だったのです、ね」
貴女は、あの人を愛してくれた。それだけでもメイメイは嬉しいのだ。だって、あれだけ怯えた様子であったあの人を好んでくれる人が居た。
世界が優しいことを教えてあげられる。そんな気がしてならなかった。
「せっかくですし一緒に突っ込みますよ!
舐めて貰っては困ります! だって豊穣の女の子達は強いんですもの!」
「はい……行きましょう、共に!」
騎兵の号令を聞いただろう。
乙女の意地だって、此処にある――!
指輪に口付けた。欲張りなのだ、女の子は。
戦果が欲しい? 平和が欲しい? 愛しい人を守りたい? この先の未来を、これまでの思い出を守っていたい?
いいや、違う。一つだなんて選べない。選ぶだなんて勿体ないでしょう。
――『全部』が欲しいのだから。
音を立てベヒーモスが膝を付く。
今だと叫んだのは誰であったか。魔法陣が、広がって行く。
知識を活かすのは今なのだ。砂が舞う。終焉獣が飛び上がったように地から天へ、そしてまたもや地へと叩き付けられる。
「……私が魔術系行動に参加っスか。召喚当初はこうなると思わなかったんスけどねー。地球系出身の私にとって魔術とか遠い物と思ってたんスけど。
思えば遠くまで来たものでスよ、ホント」
『無職』佐藤 美咲(p3p009818)の笑う声がする。広がった破邪の呪い。ただ、それだけではない。周囲に温かな気配がしたのだ。
見上げる。その先に――
成否
成功
状態異常
第2章 第6節
「ひえ~~。ベヒーモスの足の腱が見えて……あまりじっと見てたら自分の足まで痛くなってしまいそうですね?
傷口から終焉獣が現れている……? 油断禁物でございますねぇ」
そんなことを言いながらも周辺警戒を行って居た『指切りげんまん』ヴィルメイズ・サズ・ブロート(p3p010531)は琉珂と「恐いわねー」と言い合っていた。
琉珂を支援し、終焉獣を払っていたが。遂に時が来たのだ。
「見上げる程の巨躯。それに立ち向かう我(わたし)達はさながら象に群がる蟻かしら?」
「状況的には圧している感じでしょうか。景色はこの世のものとは思えないですが……怖じ気づきましたか?」
「怖気付いた? ……冗談。我(わたし)がここまで来た甲斐があったと言っているのよ。白き女王の力を励起させるのは苦労したんだから」
くすりと笑った『レジーナ・カームバンクル』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)は膝を付かんとするベヒーモスの周囲に飛び込んでくる終焉獣を撃ち払う用に『ツクヨミ』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000668)と共に進む。
「そうですね。まだどちらに転ぶか不透明です。作戦が円滑に進むこと。それが此度の勝利に直結することでしょう。
私も後方でお茶を啜っている場合ではないということ。一人でも心得が有るものを欲するならば。この手を喜んで貸しましょう・
最前線に行こうというのですから……女王についていったらかえって死にそうですね」
困り切ったか大wしたツクヨミは小手先の技術は関係ないかと呟いた。
「ツクヨミ! 遅れずに着いて来なさい! 貴女はほぼ非戦闘員みたいなものなんだから、離れたら即死だと思いなさい」
膝を付かんとするベヒーモスがそれだけ巨大なのだ。しかし、『神殺し』リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)にとっては好機だった。
「ルル! ちょっと待っててね!」
カロルの側から離れて、向かう先にはファルカウだ。届くだろうか、届かないだろうか。
「……」
ファルカウの瞳がリュコスを捉えた。
「ファルカウ――!」
呼ぶ。彼女の杖が振るわれる前に、咄嗟に気付いたリュコスの攻撃が放たれた魔力にぶつかった。あちらはこちらの様子を見ているか。
――邪魔をなさらないで。
「ふざけるな…僕はこの世界に生きて幸せなんだ! 意地でもベヒーモスを止める……!」
唇を噛んだ『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)にまたもファルカウの声がする。
――わたくしたちは、もう止まれないのに。
ファルカウの声が響く、が『願い紡ぎ』ニル(p3p009185)は首を振る。
「カロル様が元気をくれるから、ニルはがんばれます! ロック様の秘策につなげられるように、前へ、前へ!
だから、そうして来たんです。おねえちゃんといっしょに。ファルカウ様のかなしいが、なくなるように!」
光を帯びた魔法陣。それがベヒーモスの動きを食い止める為にあると知って、ニルは支えるべく『おねえちゃん』と共に魔法陣に手を翳す。
ロックの起動した捕縛魔法陣は眩い光を帯びている。護衛役であった『紅矢の守護者』グリーフ・ロス(p3p008615)はそっとクレカの手を握った。
「何をするつもりでしたか」
「手伝い」
「……クレカさん。いえ。クレカ。貴女は私にダメといったけれど。貴女も、無理はダメじゃないですか?
それに。犠牲になるつもりはありませんよ。共に支えましょう。
ロックさん、貴方も。娘のために犠牲になろうなんてことは、考えないでください。
最後まで、生きることを諦めないで。生み出したものとしての責任を、背負ってください。貴方には、ドクターと同じ選択を選ばないで欲しいです」
だから――己だって手伝いに来た。秘宝種だ。魔法による創造物だ。ニルもグリーフも、『核』の加賀宇アキト共に来た。
精霊はベヒーモスを敵としてみていなかった。
だから、ベヒーモスは悪い者ではないはずなのだ。そう分かって居る。分かって居たから――
ヨゾラは魔術師だ。だからこそ、彼等を支える事を決めていたのだ。
「僕は混沌世界に召喚されて、幸せに生きて強くなったんだ……魔術師兼魔術の意地、ここで見せてやる!」
光のように鮮やかな魔力が魔法陣に重なっていく。すう、と息を吸って『玉響』レイン・レイン(p3p010586)は邪魔立てしようとする終焉獣を倒す。
「ごめんね……世界を守る為に君の命を犠牲にする……」
倒す。それだけで、苦しくなって堪らないのだ――
「少しでも力になりたい……関わった2人だから……
もう居ない…他の人も……僕が生きてる間は…その関わってきた人達の思い……約束……願い……。全て……保たれる……。
その人達が望んだ世界……優しくて平和な世界……。それを……まだ諦めたくない……。
僕が関わる事で…少しでも…その世界を目指せるなら……僕は未来を諦めない……。
僕が死ねば…その人達の思いも…消える事になる……だから……僕は生き抜かなきゃならない……世界は……生きてる、が溢れてて……好きだから……」
魔法陣が眩い光を灯す――
「あっ周りにいる子供が気になる?
この子達はえ〜と……話せば長くなるので割愛しますが、かつて「誕生を祝福されなかった命」が存在したということですね。
……彼らが生きられなかった分だけ、私はこの世界を生き残ります。琉珂様も一緒にあと千年くらい長生きしましょうね〜」
「無理じゃない!?」
陣を支えるヴィルメイズに琉珂がぱちくりと瞬いた。
「ベヒーモスは終焉獣の集合体だったのか……群体かよ
悪趣味な生命だ、ファルカウが全てを滅ぼした後生命作ってやり直すとか言ってたらしいけど…ろくでもない生命体とか作りそうだな、どうでもいいけど」
思わず呻いた『妖精■■として』サイズ(p3p000319)にじたばたと脚を動かすマナセが「サイズ、手伝ってえええ」と叫んでいる。
「はいはい」
「はい! はい!!」
マナセが大騒ぎしている様子を眺めながらも、サイズはまじまじとファルカウを見た。
妖精郷で燃やし損ねた戦闘本能が此処で燻っているのだ。どうにも、困ってしまうとサイズは嘆息し、ファルカウを睨め付ける。
『同一奇譚』ロジャーズ=L=ナイア(p3p000569)の支える魔法陣は美しかった。偽、彼女は『そうした行動に適する』能力を持っていたのだ。
その器は何を設け入れる事だろう。ロジャーズは周囲に迫り来るベヒーモスの血潮――いいや、終焉獣を受け止めながらもロックの陣を支えている。
臓物を剔れば落ちてくるのが生物だというのだからなんとも機会だ。だが、嫌いではないのが現実である。
「……なんでしょうね、本当に不思議な気分です、異世界の皆が今私達の世界を守るために共に戦うなんて。
本来ならば出会うことのなかったこの縁、不思議と嬉しく思います。
さあ、出来る限りの支援をしましょう。やることは魔法陣の安定化を重視です。
ちょっとした知り合い……まあ、『私』はこういうことに詳しかったみたいなので、生まれ変わりの私が今この時力を尽くさないでどういう話だって言うんですからね! 大魔法使いには劣りますけれども!
――今度こそ守ってみせますから! 生きて、私達は勝つために!」
夢で見た『私』はこう言うのが得意だったのだと『白銀の戦乙女』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)が振向けば、マナセは息を呑んで呼んだ。
ねえ、フィナリィ。一緒に世界を救うなら、こんな感じかしら――?
シフォリィは目を見開いてから、小さく笑った。ええ、きっとそうでしょう、と。
魔法陣はまるで縄のように膝を付いたベヒーモスの体を包み込んだ。
顔を上げたロックが息を呑む。その視線の先には、ベヒーモスの肩からゆっくりと降りて来たファルカウと、その傍に立っているエヴァンズの姿があった。
「どうしたって、わたくしたちは戦わねばならないのですね。
平和とは何でしょう。幸福とはなんでしょう。わたくしを敵として世界が一つになった、と仰った方が居ましたわ。
ええ、きっと、皮肉な事に。わたくしが、世界というキャンバスをぐしゃぐしゃと握りつぶし、湖に沈めてしまおうとしたことが、あなたがたの心を一つにしたのでしょう。
わたくしはマリアベルのように原罪ではありませんわ。全剣王のように傲慢にも強欲にもなれやしませんでした。
ええ、どの方とだって分り合えやしなかった。わたくしの心は、わたくしの在り方は、あまりにも人間に近すぎたのでしょう――」
ぞう、と滅びの気配が焔のように散らかった。
砂の海は焔に包まれ、戦場の気配を変える。
「すこし、お話しいたしません事――?」
成否
成功
GMコメント
夏あかねです。
●作戦目標
・『ベヒーモス』の完全停止
・『古代の魔女』ファルカウの無力化or撃破
●重要な備考
(1)当ラリーはベヒーモスが『幻想王国』に辿り着いた時点で時間切れとなり、失敗判定となります。
(2)皆さんは<終焉のクロニクル>系ラリーのどのシナリオにも、同時に何度でも挑戦することが出来ます。
(3)二章以降は各章の第一節に個別成功条件が掲載されています。確認を行なって下さい。
●参加の注意事項
・参加時の注意事項
『同行者』が居る場合は選択肢にて『同行有』を選択の上、プレイング冒頭に【チーム名(チーム人数)】or【キャラ(ID)】をプレイング冒頭にご記載下さい。
・プレイング失効に関して
進行都合で採用できない場合、または、同時参加者記載人数と合わずやむを得ずプレイングを採用しない場合は失効する可能性があります。
そうした場合も再度のプレイング送付を歓迎しております。内容次第では採用出来かねる場合も有りますので適宜のご確認をお願い致します。
・エネミー&味方状況について
シナリオ詳細に記載されているのはシナリオ開始時(第一章)の情報です。詳細は『各章 第1節』をご確認下さい。
・章進行について
不定期に進行していきます。プレイング締め切りを行なう際は日時が提示されますので参考にして下さい。
(正確な日時の指定は日時提示が行なわれるまで不明確です。急な進行/締め切りが有り得ますのでご了承ください)
●Danger!
当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
また、『古代の魔女』は現在の魔術形態と違ったまじないを駆使する為に何らかの『まじない』を付与される可能性もございます。
予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。
●フィールド
ラサの南部砂漠コンシレラ。後方には影の領域が、そして南方には覇竜領域がございます。
進行方向は幻想王国です。其の儘歩いて行けばラサのネフェルストも踏み潰されてしまいます。
(商人達は幻想へと避難済み、傭兵達は援軍となります。また、深緑は木がざわめき閉鎖状態にも等しいようです)
巨躯を誇る終焉の獣は移動を行っており、皆さんはダメージを与えることでその移動を遅らせることが第一目標となります。
第一目標を達成した時点で状況は変化し、終焉の獣をその場に止めての撃滅作戦が行われます。
終焉獣ベヒーモスが通り過ぎた後は更地になります。オアシスの水は涸れ果て、砂さえもなくなり滅びの気配が広がります。
つまり影の領域を広げている、といった印象です。ただし、『影の領域の効果』がベヒーモス周辺では漂うため以下の『パンドラの加護』を利用可能です。
・『パンドラ』の加護
このフィールドでは『イクリプス全身』の姿にキャラクターが変化することが可能です。
影の領域内部に存在するだけでPC当人の『パンドラ』は消費されていきますが、敵に対抗するための非常に強力な力を得ることが可能です。
また、フィールド上には滅びの種がばら撒かれ、滅石花と呼ばれる花が咲き誇ります。
・滅びへの種
成長することで魔法樹となります。滅石花を咲かせます。
その成長の大元はパンドラや大地そのもの支える魔素的なものです。大地のマナを吸いあげて、滅びの魔法樹を育てております。
種が数個ばら撒かれていますが、攻撃を加えることで成長が止まります。
●エネミー
・『終焉の獣』ベヒーモス
終焉(ラスト・ラスト)より現れた終焉獣(ラグナヴァイス)の親玉に当たります。
天を衝くほどに巨大な肉体を持った悍ましき存在です。世界の終焉を告げるそれはただ、滅びを齎すだけの存在となって居ます。
【データ】
・非常に巨大な生物になります。飛行していない状況だと『足』のみが戦闘部位です。踏み潰されないように注意して行動して下さい。
・『飛行』を行った場合でも『脚』までしか届きません。ダメージ蓄積により膝を突くことでその他部位を狙えそうです。
【ステータス】
不明です(第一章時点)
・『古代の魔女』ファルカウ
大樹ファルカウと同じ名を冠する魔女。大樹がまだ名を持たなかった頃に、彼女は平安なる世界を維持し、滅びを濾過する事を目的に『まじない』を用いて眠りに着きました。
その際に利用されたのが『Frauenglas』というまじないです。
『あなたの上に天は立つ。全ては極光の元に』との碑文と共に世界には祝福を齎しますが、来たる罪の裁定を行なうかの如く『滅びが溢れた際に』はその祝福の代償のように呪いが顕現します。罪ある者は岩となり一輪の花を咲かせて崩れ落ちる病と化すのです。
現在のファルカウは『大樹ファルカウの精霊的化身』と呼ぶべきでしょう。人では無くなり、今は古代より生きる精霊その物です。
外の情報はポイボスの若木を通してみてきました。本当に、この世界は戦で溢れすぎたのです。
ファルカウは『樹』であるため、己が生きていれば新たな命を産み出す事が出来ます。だからこそ全てをまっさらにしても構わないとの考えです。
焔のまじないを利用する事は判明していますが、その他の細かな戦闘方法は不明です。
意思疎通は出来ますが、意思の疎通が可能なだけです。説得などが難しいのは確かです。
何せ、彼女は「世界が戦乱に溢れすぎた」事を起こっています。Bad End 8の一人ですが、他の誰かの意思にしたがっているわけではなく、全てをまっさらにさえすれば戦という手段を選んだものがいなくなるからこそ、平穏を取り戻し培っていけると考えて居るのです。詰まり、皆さんはファルカウの敵なのです。たとえ、同胞であったって。
・終焉獣(ラグナヴァイス)
ベヒーモスを好み、それに付き従う終焉獣たちです。空から、そして大地から、様々な終焉獣が存在して居ます。
ベヒーモスに付き従いますが後述のエトムートの指示にも従います。
・『枯蝕の魔女』エヴァンズ
魔女ファルカウの連れる『三人の精霊』の一人。アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)さんが幼い頃に出会った魔女。
『魔女の魔法(エヴァンズ・キス)』と呼ばれた奇病を発生させる事で知られる精霊です。
人の体に深く種を埋めるということ。種は芽吹き、寄生主の体に巣食い魔力を吸い揚げます。魔力欠乏症となった幼子は其の儘死に至ることも多いのです。
その逸話の通り、エヴァンズは『魔力を吸い揚げる』力に長けています。その能力的に後方からの魔法支援に長けていそうです。
・『??の魔女』ルグドゥース
魔女ファルカウの連れる『三人の精霊』の一人。御伽噺にも残らなかった娘です。
能力は不明ですが、動きなどを見ていれば情報を奪う力に長けているのでしょうか。前衛で動き回っています。
・『不毀の軍勢』エトムート
エトムートと名乗る白い仮面のエネミーです。青年……にも見えますが機械染みたフォルムをしています。
長身を屈めておりだらりと腕を降ろしています。ベヒーモスが幻想を蹂躙した後は鉄帝国に連れていこうと考えて居るようです。
後方支援タイプです。指揮官としては優秀です、あまり鉄帝国らしくはありません。
・魔女の使い魔(精霊)
・滅石花の騎士
ファルカウの魔法陣から作り出されて飛び込んでくる敵です。意思の疎通が可能な個体も多く居ます。
●味方NPC
当ラリーでは友軍が存在します。関係者を指定し同行も可能です。
・天義聖騎士団より友軍であるリンツァトルテ・コンフィズリー【聖剣】、イル・フロッタ等、騎士達
・豊穣海洋連合軍(海洋軍人、霞帝始めとする豊穣援軍、建葉・晴明 (p3n000180)や黄龍 (p3n000192)。
コンテュール家は補給要員です)
・ラサ傭兵団(ハウザー・ヤーク『凶』やイルナス・フィンナ『レナヴィスカ』、イヴ・ファルベ (p3n000206)など)
・フランツェル・ロア・ヘクセンハウス (p3n000115)、澄原 水夜子 (p3n000214)と澄原 晴陽 (p3n000216)(救護要員)
・珱・琉珂 (p3n000246)、カロル・ルゥーロルゥー (p3n000336)(ファルカウぶん殴るぜ隊)
・マナセ・セレーナ・ムーンキー (p3n000356)、アイオン (p3n000357)
※ロック (p3n000362)はクレカ (p3n000118)と何かを準備しています。
★カロル及びフランツェルによって戦場の重傷率が一時的に低下しています。
聖女の加護:元遂行者であった少女の竜の心臓が僅かに影響を及ぼしています。聖竜アレフを知る者が存在するとその効果は高まります。
大樹の加護:フランツェルを通して巫女リュミエの加護が戦場に広がっています。幻想種の重傷率低下と回復スキルの効能上昇。
====第一章での特記====
●第一章目標
・ベヒーモスに出来る限りのダメージを与える事
エネミーデータ、味方NPCについては上述された情報を参考にしてください。
また、各種データの補強などは戦闘中に行なわれます。
行動人数
以下の選択肢でいずれかをお選びください。迷子防止です。
【1】同行者なし
お一人での参加です。チームを組んでいない場合は此方を選んでください。
誰とも話したくない(強い意志があり、他の方に構っていられない)場合はその旨をプレイングにて表記ください。
【2】同行者あり
複数人のグループにて参加する場合の選択肢です。
プレイング冒頭に【チーム名(チーム人数)】or【キャラ(ID)】をプレイング冒頭にご記載下さい。
※チーム人数はリーダーとなる方のみで構いません。迷子防止です。
1~2名のズレは対応しますが、人数が揃ったと見做した時点で出発しますので追加には対応しかねる場合がございます。
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