シナリオ詳細
ローレット・カーテンコール
オープニング
●『ハイタッチ』は
サーカスの来訪。『シルク・ド・マントゥール』から始まった一連の事件は幕を閉じた。
彼らの狂気は幻想を蝕んだ。多くの事件を経て『幻想蜂起』へと繋がり、一時は大量の血が流れると目されるまでに。実際、あのまま事が進めばそうなっていただろう。されど、されど――
「皆、お疲れさん。……まぁ、そのなんだ。あんまり多くあれこれ言っても無粋ってもんだろ」
ノーブル・レバレッジによる反撃からついに諸君らの手はサーカスへ届き。
「だからよ一言で済ませるわ――おい、準備はいいよな?」
彼らは今ぞ壊滅した。故に。
「ローレットに」
特異運命座標に。
「勝利に――!」
「乾杯ッ!!」
甲高い音。飛び出たコルクが空を舞う。『蒼剣』レオン・ドナーツ・バルトロメイ(p3n000002)の開けたシャンパンの音が――サーカス撃破に伴う祝勝会の開始を物語っていた。
勝利を喜ぶ者。生還を尊ぶ者。多くを語らず、友と拳を合わせる者。
多くの者らが集っている。一様に皆が笑顔で、此度の勝利を祝っている。目前に用意されたのは大量の料理に飲み物に酒。『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が、あわわわと忙しなく動き回っている様をレオンは眺めていれば。
「レオン――良さそうなシャンパンだな。一口いいかい?」
「おおいいぜ。今日ばっかりは俺の奢りだ。何せ、お前らからはもう酒を貰った」
レオンへ言葉を告げたイレギュラーズがいた。酒? と、疑問符を浮かべつつも投げ渡されるシャンパンをしかと手で掴む。はて、こちらからレオンに何か渡していたろうかと。されば。
「勝利の美酒だよ。この上ない、極上の酒さ」
「――高名な冒険者なら何度でも呑んだろ?」
「知らないのか? 美味い酒は神様でも止めれないんだぜ」
幾度味わっても。幾度飲み干しても。
「良いもんさ。今回はホント、ご苦労さん」
言いつつ、手を挙げる。軽く、掌を相手に見せる様に。握手の形ではない、それは。
言ったろ? ノーブル・レバレッジの時。
「『ハイタッチは』」
「『終わってから』――だったな」
サーカスの後始末で『色々』調べる事はあるけれど。それでも今日。確かに感じた勝利を手に。
乾いた音が、一つ鳴った。
- ローレット・カーテンコール完了
- GM名茶零四
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2018年07月19日 21時25分
- 参加人数229/∞人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 229 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(229人)
リプレイ
●祝勝会開始!
世は全て事もなし。上手く行ったのならばそれで良し。故に、レオンは高々と盃を掲げて。
「愛すべき運命の特例――その最右翼たる諸君等に乾杯ッ!」
乾杯ッ!! 音頭を取ったオーナーの言に合わせて皆も高々に。
多くの甲高い、盃同士の接触音がギルド中に響き渡れば――そう。宴の始まりである。
「いやぁほんとお疲れ様ッス。サーカス完全撃破、めでたしめでたし……! ここまでやれりゃあイレギュラーズの皆々様を呼んだ甲斐もあったってヤツじゃないッスかね。神様も」
自らも、手前味噌ながらその一助になれたと思う。そう真っ先にレオンへと話しかけるはスウェンだ。
数多の世界から呼ばれたウォーカー。人によっては様々な文化をもたらしている者もいるだろう。これは己もうかうかしてはいられない。この世に生まれた地元民として遅れは取れぬのだ。
「今回の戦い、勝てるとは思っていたけれど……
まさか、魔種の集団を相手にこれ程の大戦果を挙げられるとは思っていなかったわ」
レオンの決断と采配のおかげだと彼へ言葉を紡ぐのは暁蕾だ。
「いんやいや。俺は根回しこそしたけどね、でも前線で戦ったのは。実際の活躍はお前らさ」
「それでも、私は再び友人達の顔を見る事が出来たわ」
感謝を。ありがとうと暁蕾は言う。
……無論、勝って兜の緒は締めねばならぬ。これで魔種が壊滅した訳でも無し。
勝利に胡坐をかかず、彼らの暗躍に対処していかねばならぬだろう――これからも。
「……狂気事件から様々始まって……やっと一区切り、ですね」
ギルドの隅。誰に語るという訳でもなく、フロウは林檎ジュースを片手に喧噪を眺めて。
「魔種の集団だった――というのは残念ですが、公演だけは真っ当に素晴らしかったですよ」
グラスの中の氷が音を鳴らす。血生臭い事があれど、楽しき事もあった。それは事実。
過去の記憶も込めて。果実の味と共に喉奥へと呑み下す。
あぁ――なんとも甘き、味であった事か。
ユリーカにジュースを手渡しながら話しかけたのは、胡蝶だ。
「えへへ! 胡蝶さん、ありがとうなのです! ボク、雑用で回ってて忙しくて……うぅ……」
「いいのよ。ユリーカさんには常日頃からお世話になっているしね。依頼では勿論の事だけれども……ほら、依頼以外でもちょっと前にあった怪盗……」
いえ、なんでもないわ。と言葉を中断したのはユリーカがガタガタと震え始めたからか。レオンのお叱りはちょっと怖かったらしい。でもいつかまたやってねユリーカちゃん。
「受け取れ……そして、少し良いか?」
と、ユリーカへジュースを差し出すはリュグナーである。己と彼女。二つ分を手に携え探していたのだろう。わ――い! また貰ったのです! とはしゃぐユリーカを横に。
「此度の事件。戦線に出て元凶を討伐し、無事解決したのはイレギュラーズと言えるだろう」
――だが。その行為に至ったのは。至れたのは。
「それも貴様らローレットの活動あってのもの。裏方……というのは失礼やもしれぬが、貴様らの集めた情報が無ければ我々は容易には動けぬ」
故に。
「貴様には感謝している。小さな情報屋、ユリーカ。その歳で大したものだ」
「当然なのです! だって僕は――ローレットの、期待の星なのですから!」
そうだな、と笑みを見せるリュグナーは手を低く掲げてハイタッチ。
……いやそれは『ハイ』タッチなのか微妙だが。ユリーカは嬉しそうなので――良しとしよう。
まぁ待て待て待て。料理に手を付けるのはまだ早い。飲み物は行き渡ったか?
「これで全員分の飲み物は揃ったでしょうか? ――はい、大丈夫そうですね」
クラリーチェが場を確認し、言う。よぉぅしそれなら。
「んじゃ、みなの衆お疲れッ!! 全員の無事なる生還とッ」
「イレギュラーズの勝利に!」
かんぱ――いッ! と一角にて再びグラスをぶつけ合うはリオネルと侠。それからクロジンデとヒィロ、輪廻らである。シュトロゼック・ファミリーらの集いで集まった面々は和気藹々。決戦においては各人別の戦場で奮闘したが、終わった今はここに集まって。
そして輪廻は隣にいたクラリーチェとグラスを重ねる。高い音が一つ響けば。
「へぇ、貴女がくらりーちぇ……もとい、くらちゃんね。うちのファミリーに、『今回』の件で同じ名前の人がいるという話は聞いていたのよ。でも――貴方は善人みたいね」
「ふふっ、名前は……なんとも偶然があったものです」
弄り甲斐のありそうな、と輪廻含めて伝えて。クラリーチェへの言とする。
「ハハハ、よし! みんな何が喰いたい? 好きなもん言えよオレがどんどん運んできてやんぞ!」
「あぁー! じゃあボク、肉の次はデザートが良い! お酒と合うようなのがいいかな!」
ならチョコかあるいはパウンドケーキの類か、と甘味を求めるヒィロの言葉に。果実水を一気に呑み下したリオネルは思考しながら席を立つ。後は他には? 肉か? 魚か? 野菜か?
「あ、ならこっちは肉ー肉ー肉ー! 肉持ってきて――! 足りないよまだまだ――!」
「おっ、このシチュー美味しいぞ……って、おいおいクロジンデ。折角だから肉以外も食べてみたらどうだ? こっちのサラダも中々のもんだぞ」
「いやいや折角、だからこそだよー経費も全部ローレット持ちで気にする必要が無い今、高い肉を食べる事こそがなんぼだろー? それに、幻想種だからってヴィーガンでもないしねー!」
肉と野菜を適当にバランスとりながら食べる侠に対し、クロジンデは肉一食だ。レオンの財布は潰す。なぜならこんなめでたい席なのだから! 高い酒と高い肉を口の中へと放り込み。
「っし。ならオレはバーガーとかないか探してみるか。色々一纏めにかぶりつけるからな」
お得な上に最高な品だ。なければ作ろうか、などとも思考を広げながら。
「……でも。もう争い事はできれば起きないでほしいのですが……まだまだ続くのですよね」
そして、その背を見据えながらクラリーチェが静かに呟いた。サーカスの一件は終われども。世界の騒動は終わらない。いつかまた、似た様事が起こるだろう。ならば。
「またこうやって祝勝会を開けるように。共に在れるように」
皆で騒げるように――頑張っていきましょうか。
「なんとまぁ……有意義な一日だったよ」
葡萄酒を舌で楽しむはマルベートだ。獣と戯れ、娘と散歩し。あぁなんたる良き日であった事か。
「とはいえ日は暮れた。全ては過去となり楽しい時間はお仕舞いだ……だからこそ」
日々を惜しみつつ、されど大いに飲み喰らう場を楽しむとしよう。大皿に盛られた肉に野菜に至高の葡萄酒。さて、戦った獣達に敬意を表して。生に近しき肉料理でも食べようか――などと思考しながら。
「何。決戦依頼に貌を晒さず、違う依頼で忙しかったのだ。
故に我等『物語』は席の隅で適当に食事を成そう」
其処の肉と酒を寄越せ――必要ならば肴に語るぞ。と、オラボナは飄々とした口調で近場の者へと紡ぎ出す。右手にグラスを。左手を大仰に振るえば。
「己の身に刻まれた滑稽冗長な恐怖の文字列。貴様が望むならば幾等でも垂れ流そう。ああ。そうだ。博物館恐怖以外が好いな。肉塊の群れは如何だ。団長の輪郭を想起させ、貴様等の傷を称えて魅せよう。兎角――乾杯だ。特異の勝利に得意の音頭を!」
矢継ぎ早。口端が上がる、彼の表情は今宵も見えぬ。
行人は思う。見知った顔はそれなりにいると。が、今宵は彼らと語らう――星の日ではない。
「詩人の才でもあれば、別だったかもしれないけれど」
己は残念ながらそうではない故に。されど、これだけ多くの者が集まっているのだ。
語りは誰ぞがやってくれるだろう。雄弁に、早大に、的確に。ならば己は。
「……偶には溺れるのも悪くはない。腹は膨れないが」
心は満ちる。笑う声。語らう声。喧噪に溺れる様の、なんと心地よい事か。
目を閉じれば感情の波が頬を撫でて。さてさて、腹が即物的な何かを寄こせと我儘を示すまで。今しばらくこうしていようか。
壁に背を。グラスを片手に。耳と口だけで万事を楽しむ。
「折角の祝勝会、参加しないと損よね――無料で、美味しいのが食べられるし」
それも沢山、と言うはイリスだ。果物ジュースを片手に料理を見て回る。さすれば。
「――スターゲイザーパイ、スターゲイザーパイじゃないか。こんな所にまで出てくるなんて」
大型のサーディンを、パイ生地を用いて作る料理――スターゲイザーパイ。
突き出た魚の頭部がこちらを向いている。ううむこれは食べるしかない。己を呼んでいる。というか誰だこんなの作ったのは。作れる奴がいたのか。まぁこれも良しと、一口分、口へと運んで。
「……一連のサーカス事件。ようやく、ひとまずと言える所の収束まで漕ぎ着けた」
些か離れた場所でグレイは酒を喉奥へ。
喧噪の最中にあらず。喧噪の――言うなれば傍観者として、彼は場を見守っていた。
「狂気もまた、人の確かなる一面だ。でも……そればかりを助長して、あまつさえ歪めてしまうなんて勿体ないよ。人は、それだけの生き物じゃあない」
人の感情は多種多様千差万別。故にこそ、美しいのだから。
「む、むぐむぐっ……! うまい肉喰って、もっとつえー身体を作らねえとな!」
ルウは先の戦いによる傷で全身に包帯を巻きながら――肉を只管に。腹へと急速に収めている。
カルビを。骨付き肉を。骨ごと噛み砕かん勢いだ。次の戦いに備えるべくかっ喰らっている。
……ついでにビ、いや麦ジュースをも狙っているのだが。飲み時はさて。いつの事やら。
大きな仕事はこれにて超えた。いつかまた……似たような事はあるかもしれないが。それはあくまで未来の話だ。今宵、この一時ぐらいは気を緩めても問題は無いだろう。
「……と、頭では分かっているのだがな。しかしとんと……俺と言う男は駄目らしい」
アカツキは思考する。頭を掻きながら。
向かう先は――レオンの元へと。どうしても気になる事がある故に、目線を合わせて。
「レオン・ドナーツ・バルトロメイ、お前は言ってなかったか?」
かつて魔種と対峙したと、そんな事を。
「さて。言ったかねぇ? ま、俺も割と長く『冒険者』してたからね。そういう事もあるんじゃない?」
「――その事を詳しく聞かせてもらえないだろうか?」
「酒飲みの話でいいならね」
上質なシャンパンの注がれたグラスを片手に。さて。レオンがアカツキに語る内容は真実か。それとも――酒飲みの戯言か。
勝利への高揚は誰しもにある。大規模な戦いを乗り越え、ここまで生き残り。
「……だが、一時の高揚を超えて落ち着いてくると……思い浮かんでくる事もある訳だ」
ウィリアムは思う。サーカスにいた魔種の事。原罪の呼び声の事。
狂気に陥った人の事……それらを助け、あるいは助けられなかった者の事。
心中に渦巻く思いは泥の如く。救済の手段は無いのか? そもそも魔種とは――
「――うぅむ。や、やはり最近は胃にあまり負担を掛けれないでござるなぁ……!」
多くを喰らった下呂左衛門であるが、途中で胃が悲鳴を挙げそうになったので中断した。若い頃ならばパンパンに喰らってこそ楽しきものであったのだが、やばいものはやばいので仕方がない。
「……しかし召喚された当初はどうしようかと思ったものでござるが、人生は分からぬものよ……」
未知の文化に触れ、本来であれば触れ合う事もなかった者達と肩を並べて戦い。そして――今こうして酒を酌み交わしている。塞翁が馬、と言うべきか? 爪楊枝を口に、楽しき喧噪を眺めて彼は思う――
「――――」
黒翼の少女、ナハトラーベが座っているのは――立て看板の上。
喧騒からは少し離れた場所で、しかし見渡せるような位置であった。そこで、貪っている。
何を? それは勿論大皿によそおった料理の数々。……いやホントに尋常ではない量である。ナイフとフォークを巧みに使い、礼儀作法はしっかりと。しかして量がやばい。
何故そんなに食べるのか。理由は単純――ただ食べたいだけ。食い意地の巨大さである。
「…………足りない」
ほぼ無言で、しかし一言だけ漏らしたそれは未だ堪えぬ食欲。次なる視界に入ったそれはローストビーフと唐揚げの数々――いわば標的と言った所か。一本の黒い羽をその場に残し、歩みはそこへ――
「件の事件にはあくまで末席として参加させて頂いた訳ですけれども……こうして勝利に喜んでおられる皆様を見ていると、なんだか――えぇ。自分の事の様に誇らしくなるものです」
エリザベスは語る。勝利は良きものだと。参加は無為ではなかったと。皆の笑顔を見て。
――が。そ・れ・は・さておいて、だ。
「フフフ。これだけの宴会ならば良い潰れて眠る者も……これはわたくしの『寝顔スケッチコレクション』を増やすまたとない好機でございますわね……!!」
鼻息が若干荒く。どこからともなく出したスケッチブックと共に睡眠中の参加者へと近付く。気配を殺し、万一にも気付かれない様に――まるで台所の某黒い悪魔の様に不審に近付きながら。誰かおまわりさん呼んで! 早く!
「ウラ――ッ! 飲んでるかいレオン! すぅくないんじゃないかリョウが――!!」
と、そこへ。レオンの背後から絡むように接触したのはイグナートで。飲みかけのエールを片手に。
「オレの今日のモクヒョウは、レオンが明日からのシキングリに困るくらい飲み食いすることさ! ハッハ! 覚悟しておいくれよ! ノミアカシテやるぞ――!!」
「おいおい、すっからかんに成る前には勘弁してくれよ?」
ハハハ、顔をアオクしてやるぜ――! と、イグナートは叫ぶ。心の底から、楽しむように。
「オリヴィアさん――どうも。一杯、付き合って頂いても?」
「おっ! アタシとかい? いいねぇ……だが一杯で済むかなぁ?」
オリヴィアと盃を交わす礼久。酒に呆れる程強い彼女に、礼久は如何ほどか。
遠くで聞こえる音楽に耳を傾けつつ、酒は進んでいく。
「今回矢面に立ったアーベントロート勢力だけど、今後の幻想国内における近郊に影響をきたす程削られてないよね? そこんところどうかな?」
「さて。具体的な被害は調べてみないと分からないが……狡猾なお人だ」
そうそう致命的な被害は受けないんじゃないかな、とショウはミニュイへ。
「…………成程。流石、英雄の話には事欠かないッスね……」
遠くで、決戦の話やそれぞれの活躍の話が耳に入っているのはクローネだ。
己から語る事は特別には無い。酒を飲めればそれでよしと、喧騒からは少し外れて。
「……何というか、今回の戦いは異様なモノでしたね。酷い戦場、とはまた別の……」
あるいは異質と言うべきか、と鶫は言葉を。かつての世界でも『酷い戦場』と形容すべきモノはあった。されど、ばらまかれる狂気。狂う人々。そんな戦場であったにも関わらず、結果としては祝勝会を開ける大勝利とは。
「これも、皆が努力した結果――正に賜物というべきものなのでしょうね」
盛大に並んでいる食事や酒、それらを堪能するもの達に目をやれば真にそう思う者だ。
さてさて。それでは、感慨に耽ってばかりでもいけない。折角の祝勝会なのだ。
食べて飲んで騒いで楽しまねば損である。顔見知りがいるだろうか。つまみをもって、歩き往く。
――生き物と言うのは不思議であると思わざるを得ない。
此度の勝利は意味のあるものなのだろう。だが、こうして集まる意味はなんなのだろうか。
「……あの良く取り仕切るレオンなる生き物曰く、神すらこの酔いを醒ませないらしい」
難しいものだ。己の今までの生の中に置いて『成否』は幾度となくあった。されど――『勝負』はなかった。正しかった、そうではなかった。リジアの中にあるのは、それだけだ。
「……難しい。あぁ難しい……教えろ生き物……なぜ。お前たちはこんなにも……」
活気に満ちているのか。
「いやはや。俺は今回の戦いには参加しなかったが……全く、活気があるもんだ」
キーリは集った者達を眺めながら言う。山盛り詰まれた、タダ飯を喰らいながら。
さてはてどんな戦いだったのか、少し誰ぞに聞いてみようと思って。
――酒が美味しい。ミディーセラが楽しんでいるのは、酔いの味だ。
挨拶はそこそこに。自由となれば酒へ一直線。あれはおいしい。向こうのヤツも美味しそうだ。度数強めだが後を引かぬ物もあり、柑橘系のさっぱりしたヤツも最高で。
「――あっレオンさん。お酒、とてもおいしいのです。ところで一番高いのはどこにありますか」
「高いのを聞くのかよ。ま、答えてやろう。これさ」
今持ってるものらしい。本当か? 女性を近くに置きたい為の餌では?
さりとて試してみるのもまた一興。喉を鳴らして、新たな酔いを身中へ。
「美味い美味い。自慢話はする程の縁はなし……楽しむべきは飯だね飯」
メルトは巡る。テーブルを一つ。また一つと。上手そうな物を片っ端に取りながら。
口に放ってまた次へ。報酬分の働きはした。余剰分を楽しませてもらうとしよう――
「やぁ――レオン、ショウ。お疲れ様」
言うはゲオルグである。レオンとショウ、二人にハイタッチの姿勢を見せれば、彼らも応じて軽く音を鳴らす。レオンは幻想蜂起の際に貴族達との折衝をしてもらい、ショウら情報屋には事前情報に尽力してもらった恩がある。
「此度のサーカス問題、私達イレギュラーズだけで掴んだ勝利ではない。本当に、感謝している」
「こっちもさ。あんな大規模なの、お前らがいなきゃ止めきれてなかったさ」
「互いの尽力の結果ってヤツかな。フフッ、ゲオルグ。次もよろしくね」
レオンはゲオルグの肩を叩き、ショウはグラスを持ってきて三人で再び小さな乾杯を。
調べなければならないことは多々あれど。今夜ぐらいは羽目を外してもいいだろう――そう思考して。
人の心を惑わしていたサーカスは一段落。さすればレストは。
「んふふ~今日はおばさんも、この空気を楽しんでしまいましょう~あら? あらあらあら! なにかしらこの特大なパフェは~?」
皆の浮かれ顔に合わせて自らも笑顔に。誰が用意したのか巨大なスペシャル感のある抹茶白玉パフェを手に取り、目を輝かせる。おばさん可愛い。めっさ可愛い。スプーンを手に取り、口に運べば。
「んふふ~白玉のもちもち感がたまらないわねぇ~」
「狂信者の村で足止めを喰らい、戻ってきた時には全部終わってたとは……無念です!」
残念至極の極み、とクレッシェントは言う。スッゴイバチガイカン、と些か肩身が狭いようだが気にしても仕方がない。これはローレット全体のお祭りなのだから――
「ま、とっておきのお酒を連れて馳せ参じました! これだけの方々が集まってるととても足りぬやもしれませぬが……おや、あなたもお疲れ様でした。一杯どうです?」
「おお、注いでくれるのかい? 悪いね! オットットッ……」
と。クレッシェントが注ぐのはクリスティアンである。賑やかなる雰囲気に既に半分酔っぱらっている彼。注いでくれたお酒をつい、一気飲みしてしまい。
「ああ本当に楽しい! 楽しいよ! ついつい飲み過ぎてしまいそうだ! アッハッハッハ! 我々の勝利に、乾杯!! ローレットに! 我が祖国に! 万歳――!!」
「そうそうそう! いいね、分かってるね!! ローレットの、イレギュラーズの、幻想の勝利を祝って――っかんっぱ――いっ!!」
あ、かぁんぱぁ――い! と。クリスティアンは、何時の間にやら近くにいた、果実ジュースを滾るテンションのままに混ぜ合わせたモノ、を掲げていたフェスタと共に高らかに。
「いやー勝利出来て、無事に帰って来れて良かったよーおっきな戦いだったもんねー」
「おお、貴女も決戦に参加された方の一人ですか! お酒……はご年齢的に渡せそうにありませんが。宜しければ武勇の談を聞かせて頂いても?」
いいよー! 飲んで騒いで無礼講な空間だしね――! と。フェスタは笑顔全開だ。
それは何かから目を逸らすかの如く。掻き消すように上げた高揚感。と、その時レオンの姿をその目に捉えて。
「あっ! レオンさん! 私ともハイタッチ、良い!?」
「おぉ可愛い子ちゃんとなら大歓迎。でもちっとこれは『ハイ』とは言い難――」
「細かい事はいいじゃない! いつかきっと『ハイ』になるし――」
乾いた音をまた一つ。これからもよろしくね、と。
これまた離れた場所にいるのは死聖だ。車椅子に座り、星を眺めて。
「来てみたはいいけれど……こういう騒ぎは僕にはあまり向いてないね。いやいや、別にこの騒ぎ事態を否定する気はないけど、さ」
グラスの中に入っているのは果物のジュースだ。別に、酒が飲めない年ではないが――
「――おっと安心してよ。『君』の身体が飲めない事は理解している。これはただの気分さ」
内に潜む肉体の本来の持ち主に話しかけ、背後より聞こえる人の声を唄とし――目を閉じる。
「仕事を一つ片付けて、良いもんを腹一杯食えるってのも――良いことだな」
アオイは言う。酒を飲み、料理を喰らい。騒ぎを眺める形をとっていれば。
思い返すは先の決戦。死ぬのはまっぴらごめんに思いながらも、逃げはしなかった。さればこそ、美味い料理と勝利の美酒を今飲めていて。良きかな良きかな――
マスターの奢りだと聞いて衣が来ない筈がない。
「いっぱい食べれるッ!! いただきます……ッ」
可愛らしい量だった。小皿に少し程度。すぐに御代わり。量は倍に。皿も倍に。
三巡したぐらいから量が変な事になってきた。大皿に肉の塔を作って持ってくる。顔は少しばかりぼうっとしている割に魔法の様に肉が消えていく。いつ食べたの? ちょっと待てその魚は何時の間に持ってきたの? 消えたぞオイ! 周りが段々と引き始めてるが当の本人は知らぬ存ぜぬ。
「――次はジュースが欲しいなぁ。あ、酒でもいっか」
そう言いながら手に取ったのは、樽でした。違う違う違う! それ在庫! 入れ物――!
「魔法少女はいないか――ッ!!」
おや。最近の魔法少女勧誘も直接来なものになったものだ……って違う。声の主はイリスである。いるかどうかは分からないが、己と同じ『魔法少女』を探して直接的な声を。こういう時にこそ少し話をしておきたい思いが溢れたのだ。
さりとてそう都合よく一人っきりの魔法少女なんている訳が――
『眩き愛の光の導き手――』
え、嘘まさか。
『魔法少女インフィニティハート、ここに見参! 貴方のハートを撃ち抜きます!』
いたッ――!! 愛だ! 流石五年も元の世界で魔法少女やってるだけはある現在進行形だぜ!! 堂に入っている!! 物理的にハートを撃ち抜く魔法少女がやってきた――! ……と、思ったら。
「犬! 犬ではないか! くっ、どうしたお前ペットか!? 主人はどうした!!?」
くぅーん、と鳴くは愛の魔法少女マスコット『ラヴ(二代目)』である。主人はどうしたかって? 実はなぜだか急な仕事が入ってしまいましてね……
『後で祝いの魔砲をぶっ放しに行きます――』
遠くから聞こえる呪詛の声。許すまじローレット。代わりの出席としてラヴ(二代目・普通の犬)を置いていったのだとか。無念、イリス。すれ違いで会えないとは……
「いやぁ……イレギュラーズって、すごいんだなぁ。知識としては前からあったけれど……」
いざ自分がなってみると、また別の感じ方があるものだとディジュラークは言う。些かの恥ずかしさはあるが、そう。まるで物語の主人公の様だと、そう感じたのだ。己だけではない、一人一人が主役なのだと。
酒やジュースの匂いが漂う中、別の良き匂い――珈琲のカップを握るのは、彩乃だ。
最近加わったばかりの彼女はサーカス関連の事は書面のみでしか把握できていない。されど、祝勝会に参加せしローレットの面々を遠目にでも見たく思い参加すれば。
「……賑やかなのは苦手ですが、祝勝会なら悪い気はしませんね」
砂糖も入れぬ黒のみの珈琲を喉奥へ。
揺蕩う湯気と、その先にある喧噪をゆったりと眺めていた――
「ペット同伴可とは……良かったですね、ペロ」
言うはエウラリアだ。連れてきた己が柴犬、ペロ二世へ。味の薄い犬でも食べれる肉を装いながら声をかけて。
「――決戦、お疲れ様でしたエリシアさん」
「ああ、いや。なに……こちらこそ、急な申し出を受けて貰い感謝している」
ワインと、一方は葡萄ジュースを握るはイージアとエリシアだ。
二人はそれぞれ別世界からの来訪者。かつての世において繋がりは一切ない、初対面。されど決戦において交流を経た二人はこうして共に祝勝会を過ごす程度には仲を深め。
「あの、エリシアさんは今後どうなさるつもりですか?」
「……ふむ、これから、か? 我は今まで通りこの世界を堪能するつもりだが」
変わる事は無い。サーカスは大きな出来事ではあったが、彼の生活の根幹を変える程でもないのだから。さて、しかしと。呟いてから一つ思案し。
「そうだな。我は今一人だが、イージア。もしよければ――」
お前も来るか? と誘いの言葉を。差し出す手は、握るか否かで返答とし。
「――修道者見習いの私で良かったら……」
さればイージアは添えるように手を重ねる。微笑むその顔は、とても優しく。
「さて……これで破滅回避の第一歩になったかねぇ……」
感慨深く喧噪を眺めるのはMorguxだ。奮戦した、その結果が破滅回避の一端を担えば良いが。
「ま、ともあれ今回もタダ飯。存分に食うとするか……しかしレオンは少し前にイレギュラーズに金を配ってた気がしたが……財布にはまだ余裕があるのか……?」
まぁいい。ともかく他人の財布で腹の限界まで喰うチャンスである。肉は避けよう。魚と野菜を中心に……特に鮪の香草焼きなどあると疲労の回復にいいのだが。そしてそれを――十人前ほど。
「平々凡々とした暮らし、それなりに気に入っていたのですが、ね」
しかし今やこうなってはそれも叶わぬかと、アニーヤは苦笑い。
直前まで鉄帝の一村娘として暮らしていた彼女だが……突如イレギュラーズとなり、早々にサーカスとの大規模な戦いが待っていた。事態を飲み込むのに些か時間は掛ったものの、目の前の事態に対しては全力を尽くし。
「……ふふふ。こうやって経験を積んで強くなっていけば、鉄帝には大手を振って帰れますね。これもまた、一つの運命として捉えるべきでしょうか」
故郷の父は喜ぶだろうかと、思案しながら。彼女は想う。これからの未来を。
「ふむ――この喧噪。皆が無事に帰って来れた証でありませすね。それは良いのですが……」
碧は呟く。帰って来れた、それはいい。いいのだが――
「しかし我! 北は良いものの何をどうすればいいのかがサッパリとんと分からないでありますよ!」
命のやりとり、殺伐とした世に生きた者に時折現れる現象である……! 右往左往してしまいそうだ。まぁ正直な所、見ているだけでも楽しい所はある。落ち着けば、さて。何か食べてみようかと思いながら。未来の懸念はともかくとし、今はこの喧噪を楽しもうと。
大きな戦いは終わった。そして皆無事な訳だが――あれでもある。
全く怪我が無かったかと言えばそうではなく、つきものとはいえ凄惨たる感じの者もいる訳で。
「――ええ。かくいう私もなんですが」
狐耶は思う。なんでしたっけ、怪我をした時は、ええとたしか母様が……
――肉喰って寝ればすぐ治る。
「でしたね。流石母様、真偽が疑わしいです」
本当にそれでいいのか、と思わないでもないが、でも大体なんとかなってるので大丈夫だろうと結論付けて。そんなこんなで更に積むは肉。肉である。しかし無造作に摘めば無作法。淑女らしく沢山食べるにはどうすればいいのか。
「そうです。どう盛り付けたか誰にも気づかれない速度で片付ければ――問題ないのです」
それも母様の教えでしょうか? 喰う。そしてリロード。凄まじい速度が繰り広げられている。
「――やぁ終わった終わった。厳しい戦いだったねぇ」
ははは、と薄く微笑むのは威降である。ボロボロで、気付いたら転がっていて――正直記憶も些か飛んでいる所はある。だが、それでも。
「……何とかなった。良かった。こうして皆、無事でいる」
召喚された当時はとんでもない事に巻き込まれたと思ったものだ。今も割かしそういう気持ちはあるが、さりとてそれだけではなく。この国で過ごした日々は楽しかったと、記憶に残っている。
次は何を見るのだろう。誰と会うのだろう。林檎酒片手に、未来を想う。
「若い子達は元気ですね……あそこまで賑やかなところに混ざるのは少々辛いです」
見た目からは分からぬ――三桁後半に達する時を経たクリムはドレス姿で喧噪を眺めて。
「ユリーカァ――!! ぐへへ、頑張ったよ褒めて褒めて――!!」
背後よりユリーカに抱き着くはフルートである。
文字通りの大勝利。流石数多の人材を揃えているローレット、と言った所か。これだけの仕事がこなせるならば魔種だって怖くないと、フルートは思考し。
「レオンの奢りなんだろう……? ユリーカ、今こそ『ないない』を再びだ! あの日の感動を再びッ! 全ローレットとユリーカが感動でむせび泣いたあの日をもう一度再現するんだ!」
「だ、ダメなのです! もう一回やったら流石に本気で怒られるのです!」
ぐふふ、いいじゃないかもう一回やってみようよ! と蛇の様に誑かそうとするフルート。しかし――楽しいモノだ。からかうのも。騒ぐのも。勝利を共有するのも。
「いやぁ中々にしんどい闘いじゃったな」
めんどうくさかった。その一言に尽きる、と語るはルアである。いるだけで狂気を誑かし隠れ潜んで自らの目的を成そうとする。今後もああいう手合いが次々と出てくるのだろうかと、思いもするが。
「ま、それはさておき――肉じゃ! 肉を食べていくとしようかのぅ!」
高級な肉をたらふく食える機会などそうはなし。無料であるなど尚になし。
赤ワインをグラスに注いで。されば、肉と絡むは至高の組み合わせである。
「んむ。我ながら良いチョイス、やはり肉にはワインよのぉ……」
吐息一つ。ワインも、勝利の美酒も。美味なり美味なり。
「……元の世界じゃ、精々お兄ちゃんの剣術を眺めてるだけだったのに……えへへ」
何か、変な感じと言うはメルナだ。ジュースとサンドイッチを手に取り、隅の方にて勝利の余韻に浸る。イレギュラーズ達の喧騒を耳のおかずに。
彼らと共に己も戦えたのだと。そして勝ったのだと。誇らしい思いが胸に満ちる。少しでも兄に近付けただろうかと、嬉しさを静かに噛み締めながら。
「これからも……此処に居る限りはずっと、頑張るよ。私」
きっとこれは本来兄がしていたであろう事だ。己ではない、兄が。この味も噛み締めていた筈なのだ。
それでは最愛のあの人は――ここにいないのだから。
「お兄ちゃんの代わりに。きっと、上手にやるから」
ずっと。ずっと。
俯きながら、噛み締める。サンドイッチを――勝利の余韻を。
「みんな――! おかえり&おつかれ&おめでとー!」
みんなぶじでよかった! Q.U.U.A.ちゃんはうれしい――!
無念ながら彼女はやんごとなき『おとなのじじょー』でお留守番をしていたが、その分決戦を制した彼らを迎え入れる準備――具体的に言うと飾り付けなどを頑張った。リボンに文房具、それらを自らの跳躍で高所にびっしりと飾ったのだ。身軽である、彼女であるからこそ出来た行い……!
「さぁみんなかもーん! かも――ん!! たのしいパーティはこれから・だよっ――!」
跳ねる。跳ねまわる。テンション高めに高度も高めに!
きゅーあなりの万歳三唱、と言った所か。さて――クラッカーはどこにあったかな。
闘いの傷は名誉と考える者もいるが、しかし女性ならば気にする者もいる。
「大勝利おめでとう――レオンさん。皆の努力と、レオンさんの政治力統率力の賜物なのだわ」
例えば華蓮がそうである。鼠に噛まれ、痕が付いている箇所は――いずれは消え失せるだろうが、今はまだ故に服で隠す。足の傷は長い浴衣で。手の傷は洒落なグローブにて。
あくまで元からこういう服装であるかの如く。されば。
「割と色んな奴からそう言われるけどね。でも、違うんだよなぁ」
「あら、謙遜なんて駄目よ。レオンさんがノーブル・レバレッジから主導して――」
「俺は傷を負ってないからね」
レオンは差し出す。果実水の入ったグラスを――傷ついていない方の手側へと。
微かな動きの違いから気付いたのか? それとも偶然か? ともあれ、お疲れさんという声に合わせて。
「ふふっ――ありがとう、レオンさん」
良い女は引き際も弁える。引っ張りだこのレオンを過度には引き留めては行けぬと、自ら離れて。
「うーん。流石祝勝会……美味しそうな料理がいっぱいだ。これも勝利故の特権だね」
緋呂斗は言う。これは、皆が皆自分のやれる事を全力でやり遂げたからこそなのだろうと。
それは勘違いではない筈だ。なにより――己が、そうであったのだから。
「……もう誰にも悲しい思いをしてもらいたくはなかったからね……
さ! とにかく食べよう食べよう! 迷った時は――どちらも食べるに限るしね!」
肉を積み、野菜を積み。全て喰らってしまえば良いのだと彼は豪快に。
後は――そうだ。偶にはお酒も飲んでみようか。
どこかお酒に詳しい人はいないだろうかと思考しながら。彼は勝利の場を渡り歩く。
「フフ。お疲れ様、トーヤ」
「おう。改めて、決戦お疲れさんジル」
杯の口を軽く接触、小さく乾杯とするジルーシャと縁。
かたや紫色のバイオレットフィズを。縁は日本酒らしき香りの酒を頼んでまずは一口。お互いに大きな負傷が無くて良かったと会話をしながら。
「――で? そっちはどうだったんだい?」
「アタシの所? そりゃあ大変だったわよぉ……あっちもこっちも強そうなコばっかり。ま、香りでも音楽でもなんでも……本来『そう』でない物を攻撃に使う事しか知らないって……すごく寂しく思っちゃったけどね」
「ハハ、お前さんらしいねぇ」
音楽は人を斃す為ではなく、人を救う為にあるものだとジルーシャはあの決戦で戦った。どうしてサーカスは。彼らはそれを理解出来ていなかったのか……
――と。ダメダメ! 暗い方向の話はナシ、とばかりに。頭を振って。
「そういうアンタの方こそどうだったの? たしか団長の所にも行ったんでしょ?」
「んっ? あぁ――おっさんの方は、何もねぇさ。やる気のある奴らが率先して頑張ってくれたおかげで、適当にこそこそしてた割にはこの通り。五体満足で帰ってこられたしなぁ」
くっくっ、と喉で笑う。酒は一気には飲まず、少しずつ、少しずつ飲んで楽しんで――
「……本当は、あの時死ねたら。楽だったのかもしれねぇが」
ついぞ漏らした一言は酒の戯れか。あるいは――
「――なんか言った?」
「ははっ。なんでもねぇよ。ただの独り言だ」
「……ま、いいわ! ほら、もう一杯いきましょ! どうせタダ酒なんだから!」
水面の底は見えぬ。未だなお。これからもなお。
サーカスとの戦いは切り抜けた。魔種との戦いはこれからであろうが、今はこの宴を楽しもうと。
「――アルテミアさん! お久しぶりです!」
先日はお疲れさまでした、とアルテリアに駆け寄るはシフォリィだ。
アルテミアも彼女の姿を確認すれば談笑すべく近付いて。
「シフォリィさん。聞いたわよ、占領された村での依頼で活躍したって。流石ね」
「あ、有難うございます……! アルテミアさんにそう言ってもらえるなんて……!」
二人とも貴族の家系に連なっている存在だ。だがアルテミアは自ら家を出て戦いに身を投じており、そこがシフォリィと違う点になっている――そして、そここそが。その決断こそがシフォリィにとって憧れの感情を抱く事になった起点であり。
「嬉しくなります……! ですが、まだまだ自分も未熟な身です! これからもお互いに頑張りましょう!」
「ふふ、そうね。でも、今はこの祝勝会を楽しみましょう?」
アルテミアの側もそんなシフォリィに少しばかり好意的な対抗心を抱くものだ。自ら出奔して戦いに身を投じた者として、そうそう負けてはいられない。次は。次こそは、と。明日を見据えて。
ナーガはとにかく肉が好きだ。大好きだ。元気が出て来る、パワフルなものが。
「ニク! オニクはないの? ナーちゃんはオニクがだいすき! もっと! オニク!!」
情報屋、というのが存在する。
それはいわゆるローレットで依頼を斡旋している者とは別の、集まりとしての話なのだが――
「――駄目よマナ。こんな時にも真面目におしごととは『らしい』けど……今日この時くらいはハメを外して楽しむってのがマナーよ! 駄目よ! マナー違反は絶対に駄目!!」
情報屋『フリートホーフ』の一員として更なる情報の取得をし、皆の役にたてれば――と考えていたマナだったが、タルトの言に思わず吐息。彼女のギフトで差し出されたマカロンを口に含めば。
「……まぁおっしゃる通り。折角の祝勝会ですし、私も楽しみましょう――で、その手に持ってるケーキは一体?」
「良い所に目を付けたわね! ボクはそこらへんの人に突撃して生クリームでシャンパンファイト的な事をしてこようかと!! ボクの雄姿をその目に焼き付けなさい!! 止めても無駄よ――!!」
酔ってるのかな? 止める間もなく集団に突撃していくタルト。一瞬どうしようかと悩んだが、結局美味しい紅茶を注文して。その香りをマカロンと一緒に楽しめば。
「…………今日くらいは見なかった事にしましょうか」
ほう、と先程とは別の吐息を優雅に一つ。
あぁ――なにやら背後で悲鳴が聞こえてくる。無視した。
「まずはお疲れ様、ですね! シオンさま! ご無事でなによりです!」
「お疲れさまー……うん……今回は、凄く疲れたー……」
折れもアニーが無事でとっても嬉しいよー……! とアニーへ紡ぐのはシオンである。
今回の一連の出来事には肝を冷やしていたものである。もしかしたら、まさか……そんな思いを、決着する瞬間までアニーは拭えなかった。しかし、いざ終わってみれば己もシオンも無事であり。
「ああぁ、お祝いの席なのにこんな話題はダメですよね! 楽しく行きましょう! ――あ、ほらシオン様。お口に食べ物がついていますよ?」
「んーありがとー……あっ、そうだ……! アニーにね、渡したいものがあるんだ!」
口の端に付いた者をハンカチで拭われながら、思い出したシオンが差し出すは――花だ。
「ほら、前にアニーに貰った竜胆の花……! 種が取れたから、植えて咲いたの……! お水もね、毎日あげた……あ、あげすぎたかもしれないけれど……とにかく受け取ってほしー……!」
「本当ですか! わたし……わたし、人からお花を頂くのって初めてです……」
咲かせた事はあった。渡した事はあった。
営む最中に触れ合えど――それでも。渡された事はかつて無く。
「ありがとう、大事に、大事にしますね……!」
涙ぐむ。その目端の涙を拭きとれば、胸に抱えた紺色は――かつて無いほど、美しく見えた。
「あ、レウちゃんじゃん。生きてて何よりぃッフーッ! おっきいヤマだったけど片付いたねぇ!」
「おや姫喬さん。そちらも、ご無事なようで、なにより……です」
会うはレウルィアと姫喬である。サーカスにおける戦場は異なったが、いやだからこそお互いの無事にこそ喜ぶ。安否の確認は、今会えたからこそ行えたのだから。着物の裾を躍らせ、レウルィアに至っては見える尻尾を左右に揺らす。と、そうしていれば。
「――失礼。そちらのお嬢様がた、よろしければご一緒させていただけませんか?
私、この通りあぶれてしまいまして」
「んにゃー? なーに、ナンパ?」
いいえ、エスコートです。と言うはスーツに身を包んだ寛治だ。
怪しい奴、お嬢に何用か! と姫喬の取り巻き、鮫ヤクザが寛治の前に立ちはだかるが、頭引っ叩いて下がらせる。えーん。
「私、新田と申しまして、ファンドマネージャをビジネスとしております」
「んんん? ファンド?」
「ファンドというのは……具体的には、そうですね。主に複数の方から出資を頂き、何方かの肖像画作成を――コンセプトや拘りのある形で画人に依頼し完成させる、という事をビジネスとしているのです。イラストファンド、とも申し上げましょうか」
「えと……?」
レウルィアは首をかしげる。難しそうな話だ……何がしかの仕事の話、とは分かるが。
「へぇーん、面白そうね。それがビジネスだなんて……世の中色んな生き方があるのねーいっひひ」
「よろしければお二人にも是非ご検討頂きたく。こちら、名刺となっております」
慣れた様子で、両手で己が名刺を差し出す寛治。いつでも連絡を、と付け足して。
赤いジュースを。透明色のジュースを。掲げて乾杯。この出会いに。偶々の運命に――
――なお後日レウルィアの『とても麗しい姿』のファンドが完成するのだが。
それはまた別の話。
力を。身体の底まで使い果たせば、腹も減るものである。故に。
「うーん、無事仕事は終わったから祝勝会。当然の流れだよねー……だけれどさ。肝心の料理、おいしいよね? おいしくないものを混ぜてるような罠はないよね? メシマズじゃないよね?」
「えへへ、それじゃあいっただっきまーすっ……はふふっ♪ おいっしぃっ! 身体の傷が癒えてく感じがするよっ、リンネ~! どうしたの? リンネは食べないの~?」
互いなる死神。リンネとリインは同席にて料理を味わっていた。
リンネの方は些か警戒心を抱いていたものの、リインが特に不調になる事もなく料理を吸い込む様を見て、その警戒は改める。ていうか待って。どれだけ食べるのだ本当に。めっさ早いのだが。
「まぁ大変だったからねー……骨休みみたいな意味もあっての祝勝会なんだから、いくら食べてもいいんだけどね。別に私の財布が痛む訳じゃないし……肉でも取ってこようかな。肉」
「そうだよリンネ! 楽しまなきゃ! 最前線で頑張ったんだし……お腹ぺこぺこだし……! あぁ、い、いいよねもっと食べても! 傷を治す為にもおいしいごはんは必要不可欠だよねっ、ねっ!」
誰ぞへと語り掛けるかのように、リインは皿を次々と積み重ねていく。彼女の姿が見えなくなっても、尚に。まだまだまだまだまだまだ――
「――しかし、本当に無事で良かったわ。決戦自体は大成功と聞いてはいたがよ……お疲れさん」
「はい、お疲れ様でした。ええ……私は無事です、大丈夫でしたよ」
決戦は別の所で、そこも確かに厳しいものだったけれど――と告げるはアマリリスである。愛しき存在であるシュバルツと共に、シャンパンで乾杯すれば。
「そうか。ま、重要なのは生きて帰って来れたか……だからな。問題ねぇさ。お互い、役目を果たせたようでなによりだな」
「んっ……ッ……そうですね。シュバルツも無事で安心しました」
アマリリスは些か前、決戦で傷を負った身。身体の一部に痛みが走る――が。ここで倒れる訳にはいかないと平静を装う。それは彼にいらぬ心配をかけると。奥の歯を噛み締めれ、ば。
「……ま、俺にとって言うと……」
瞬間。
「ローレットの勝利よりも。お前の無事の方が、気掛かりだったよ」
頭の上に感触を感じた。降りてきた、それはシュバルツの手の平。
「――よく頑張ったな、アマリリス」
「え――あっ……」
それは怪我の事を指していたのか。それともそうではなく只の気遣いであったのか。
どちらにせよ不意なる柔らかさに得た感情は――安堵。
「私、も」
怪我の痛みから走っていた緊張が和らぎ、思わず寄り添う肩が。
「シュバルツが無事で、安心しました」
彼の胸元へと沈みこむ。
――喧噪を背後に。シャンパンの苦みが、喉奥へと飲み込まれて。
「人の営みは守られて。こうして英雄は祝杯を挙げる、という訳だ」
喧噪の場からは些か離れた場所で軽食をつまむのはシェンシーである。
「やれやれ……人に手を貸す趣味は持ち合わせてないんだが。さりとてこうしないと世界が終わってしまうかもしれない。面倒な」
人の為に戦った訳ではない。あくまで己の為。己の見る世界の為の戦いであった。
故、あの輪の中に混じるのは些か以上に拒否感がある。場からは離れ、昇るは屋根上。月光でも眺めながら、飲食に明け暮れるとしよう。物を喰い、飲むこと自体は嫌いな訳ではない為に。
勝手に楽しませてもらうとしよう。そう思考しながら。
「なにはともあれ。先ずはイレギュラーズの勝利に乾杯かな」
「そうですね! 勝利にかんぱーい!」
鳴らした音は二つだが一つに。アレフとスティアは乾杯と共に一口含んで。
「結果的には我々の大勝とも言っても良い物だったが……ヴァークライト。また何か悩みを抱えてはいないかい? いや、なければ無いでいいんだが……」
「えへへ、気にかけてくれてありがとう! 今回は上手くいったから大丈夫だよ。
いつもの元気な私だよ」
真実を見通す目がスティアを見据える。されど、反応しないという事は――些か安心してもいい、か。
「そうなのか。それは良かった」
杞憂。漏れた吐息は、安堵の類か。
望む未来を引き寄せる事は難しい。救いたいと思っても手から零れて。拾おうとすれば余計に零れて。されど、為せたのならば――彼女はこれからも――
「んー……? アレフさんの方はどんな感じだったの?」
そんな思考をしていたアレフの目を、スティアはほんの少し覗き見る。
どこか。上手く口に出来ないが不自然な様子だったような、と。
「私かい? 私は……いつも通りだったよ――手痛い怪我は負ってしまったけど」
「さらっと『いつも通り』って言えるのは凄いなぁ……でもお大事にね!」
無理はしてないけない! と元気よく。今回、己は助けたいと願った子供達を救う事が出来たが。
まだまだだ。いつか、アレフに追いつけるよう頑張らねばと――心に刻む。
「――よっ! 二人ともお疲れ様!」
アルエットとラビ。かつて依頼で共に行動した面識があるみつきが、声を掛ける。アルエットが仲間の回復を行い――ラビは現地調査で情報の取得をしていたからこそ得た勝利でもあると。されば。
「みつきさん――そんな。あれは、私達はお手伝いをしたぐらいですよ」
「ダメって言ったのに皆無茶して……もう」
「ははっ、悪いな――でも勝てたからさ。許してくれよな!」
相も変わらずみつきは笑顔のままで。激戦たる戦いだった。死者が出るかとも思った。
それでも生きて帰れたのなら談笑しよう。買ったから。明日はまたきっと、来るのだから。
「お姉さん、いつものかぼちゃスープが飲みたいのです! ぷりーず! ハリーぷりーず!!」
「はい! レオンさんも来てますしいい機会です! 気合入れて作ります!」
この大怪我している利香に平然とスープ作成を頼んだ外道はクーアである! でも受けちゃう利香も利香だよ! え、何? 仕方ないって? クーアに任せると危険? 大惨事?
「……プライドで心は満たせても腹は膨れないのです。くすん」
「ま、まぁ無理しなくていいですからね。配膳させると多分、どんがらがっしゃーんじゃすみませんから……」
特に今日は周囲に人が多い。誤って皿をぶつけては大変と、故に利香は役目を買って出たのだ。
いつも宿屋で作っているかぼちゃスープ――の、簡易版を料理。隠し味のスパイスを入れて、と。
「ぐきゅるるる……まだでしょうか……」
クーアの実年齢三十。しかしてその幼き外見からは、傍から見てタダのクソガキにしか見えぬと本人も自覚済みである。いや流石にバツが悪いと本人も思ってはいるのだが……どうしようもないものは仕方ない。
さてはて。スープを作ったらクーアさん以外にも配りに行きましょうか――などと、利香は思考しながら。
「お疲れさん相棒!!」
「ええ、お疲れ様です。相棒」
勝利の余韻。それはかけがえのないモノ。
浸る思いと共に乾杯一つ。ヨランダはアルコールを、オーガストは変わった名前のジュースを一気に。うん、これは実に変わった名前のジュースだ。まるでカクテルの名前の様な――
「――あっ! さっきのジュースだと思ったらカクテルか!! まッ、しまったもう全部飲んで!?」
「うへへへヨランダさぁん。今日はとことんまで呑みまじょおぉ。帰しましぇんよぉぉ?」
早えぇ! とオーガストのべろんべろんな様子にヨランダはしまったと思いつつも最早手遅れ。回復呪文を唱えつつ。
「ああもう待て待てせめて吐くんじゃないよ!?」
「履く? お水を履く訳ないじゃないぅですかぁ……するなら吐くしかぁ……おろッ……」
あー待て待て待て! と介抱するヨランダ。やれやれ手間のかかる事だ。悪い気はしないが。
ただ――後日、この事をネタにして散々弄られる事になるのだが。それはまぁ別の話である。知り合いに視られていないのを、オーガストは切に願うのだった。
「いやはや……成功して良かったけれど、疲れたね」
「……ほんとに、お疲れさまでした」
ライセルとセレナ。お互いに傷だらけの二人だが、今は無事なる生還を祝い乾杯。
動く度に痛みが走るが、ライセルはエールをセレネはジュースを。それぞれ一口含めば。
「そっちは傷、大丈夫かい? 俺はもう大丈夫――うー、痛ててて……ッ」
「私もだいぶ良くなりました……が、無理しないでください。傷が塞がったのも表面でしょうし」
調子にのって動いてみせたライセルが痛みを。少し、顔が赤いようだ。酔いが回っているのか。
「ああ、そうだね……でも君が傍に居てくれてよかった。ありがとうセレネちゃん」
「そんな……私の方こそ、ライセルさんが助けてくれなかったら……」
あの時襟首を引いてくれなかったら。もしかしたらここにはいなかったかもしれない。一人では立てず、怖くて震えて……そんな未来も。
痛みとは違う震えが微かに。で、あればライセルは彼女の小さな肩を――と、思えど一瞬の逡巡の後に、頭に手を乗せて。
「よく、頑張ったね」
「……はい。前より強くなれた気がします」
大きな瞳を潤ませながら。手の感触を髪越しに感じる。
優しき手の平。それはいつもより大きく感じて――
「あ、あのライセルさん」
だからこそ、屈んで貰ってもいいですかと言葉を紡ぐ。
返すは己も。彼に伝えるべき事があるのだから――
「――お疲れさまでした。蜻蛉さん」
「雪ちゃん、お疲れさまでした。飲み物……ある?」
「ええ。拙はお酒ではないですが、用意しております」
ほな、乾杯。と言うは蜻蛉。雪之丞との同席にて勝利に浸る。
「いやそれにしても……こないに可愛らしいのに。身のこなしから刀の振り方まで……やっぱり普通の子やないんやなぁ……とてもそうは見えへんけど」
「ご無事で何よりでした……今この身は人の姿を纏っているだけですので。お望みとあらば、本来の姿の方がご心配おかけしないでしょうか?」
ええのよそのままで、大丈夫と。
思った事をそのまま口にしただけでそれ以上の意味は無い。それに『普通』を『人』という定義でいうならば――自身も違う。猫も鬼も、この世においてさしたる違いがあろうことか。
「うちは……あんまりお役に立たんかった気ぃもします」
背を合わせるように立って。戦って。しかしあの刀身の煌めきに己が何の役に立ったろうかと。
自虐とは異なる。それは遠くを見据える様な、届かぬモノに想いを馳せる様な――
「――拙は」
その時。その『憂い』を雪之丞は。
「背に、誰かが居る。という戦は初めて。でした」
霧の様な雨粒に包み込まれる中で。
前には敵。左右は分からず、それでも背に感じた確かな気配――
貴女がいたから、前へ進めたのだ。
「蜻蛉さんのお力に、支えて頂きました」
労うように、頭を撫でて。
「……ほんに、堪忍やわぁ……」
優しい子やね、とたった一言。嬉しさを伝える事が出来ればと。
酌を返す。この小さな手に、きっとあの時。
己も支えられたのだから。
未成年に酒は飲めず、ジュースが配られる。さりとて。
「楽しんでいく気持ちに変わりはありませんよ――ひとまずはこの勝利を喜びましょうか」
アグライアは言う。一人で料理を摘まみながら、場を巡って。
しかしこうしているのも悪くはないが、折角ならば誰かと言葉を交えてみたいものだ。と、思ったその時。
「――おや、ショウ様。やっぱりいらっしゃってたんですね、祝勝会に」
「アグライアじゃないか。毒ナイフ使いの一件では、世話になったね」
それはこちらのセリフですよ、と言葉を重ねる。討伐そのものは確かにそうだが、情報屋の者達の仕事もあっての討伐だ。彼らがいなければ間接的にこちらのお仕事も食い上げとなる。
少しばかり話を続けてみようか。他に誰か話しかけてくるまでは――と。
「お仕事が終わりましたにゃ~♪ とっても頑張りましたにゃ~♪」
「うむ、無事終わって何よりだ」
サージェイトに抱き着く鈴音。受け止め、頭を撫でてその労を労ってやる。よくぞ無事に帰って来たものだと。
「鈴音、いっぱい頑張ったのでご主人様に甘えても良いとおもうのですぅ」
「そうだな……鈴音はよく頑張った。今日は我に存分に甘える事を許そう」
満面の笑みが鈴音の感情を満たす。彼の膝上を即座に占拠。座り込み。丸まり。あるいは腕に長い尻尾を絡ませて。己が主人である彼の匂いを堪能す。
「ご主人様、お仕事の時とっても素敵でしたの♪
……でもでも怪我するのは心配ですから、気を付けてくださいませね……?」
上目に眺めれば瞳が滲んでいる。耳も垂れて――心配していたというのか。
「……ふふ。心配するな。我を誰だと思っている」
世界に二人といない。
「――お前の主人だぞ?」
安心させる様に首筋の裏を撫でる。やれやれ、混沌肯定で全盛期には程遠く……
些か鍛え直す必要があるだろうか……膝上で悶えている彼女にその思惑は見せぬ様に、思案を重ねて。
「アレクシアさん、アリスさん――決戦お疲れ様です。ご無事で何よりでした」
「ふふふ。この三人で集まるのは初めてだから、楽しみだね……!」
「それじゃ二人とも、改めて皆の無事に――乾杯っ!」
三つの音が鳴った。Lumiliaと、アレクシア。そしてアリスの三人。闘った場所は多少異なれど、須らくサーカスの一件から帰還した事に間違いはない。皆々無事に、ここに集えた。
アリスが集め回った飲み物を片手に。一口付ければまずはルミリアが口を開いて。
「現状も、まだ。全てが解決したという訳ではありませんが……今はどちらでもいいですね。折角の祝いの席なのですから――怪我も無事、治りつつありますしね」
「無事って言えば……戦いが終わった後帰ったら、アレクシアさんが怪我しているのを見てスッゴイ心配したんだよ? あの後も大丈夫だった? 怪我は……」
「ん――ふふ。大丈夫だよ。まぁ激戦区に行ったわけだしね。仕方ない仕方ない」
良かった……ルミリアさんの方の戦いは大丈夫だった――? と、言葉を続ける二人の様子を、アレクシアは眺める。知りたいのだ。二人の話に耳を傾けて。彼女らがどんな風に努力して喜びを感じたのか。それはなぜかというならば……
「……こんなにも、笑っていられるなんて、ね」
深緑にいた頃には誰もいなかった。己の周りに、今は、こんな近くに――
友がいる。
友が無事で、笑って、喜んで。ありきたりに触れ合える。あぁそれがなんとも……
「決戦では情報網を駆使したり、側面からの攻撃に加わったり……色々あったなぁ……」
「奮戦極まる……ですね。しかしサーカスが一段落すればこれからは海洋の依頼辺りが多くなるでしょうか……新天地へと迎えるは旅人の私からしてみればとても楽しい事です。お二人は如何ですか?」
「たしか――水着と浴衣のお祭りもあるんだよね、海洋は。何を着ようかなとは思ってる!」
アリスは想う。戦いはまだ始まったばかりで、不安の種はまだまだ尽きねども。
それでも今は、こんなにも沢山の仲間がいるのだから。次も必ず、と。
「あぁそういえば向こうの貴族様がそんな宣伝をしてたっけ――ふふ」
楽しみだなぁ。本当に。
時は経つ。かけがえのない者達と共に。されど今少し、今少しだけ続きたまえ――
「いや皆お疲れ様! 無事帰って来れて本当によかった……」
戦闘、という依頼はこれが初めてだった雨祇は、祝勝会が始まると同時に安堵の吐息を。
柄にもなく緊張したものだ。全てが終わった今となっては、喜びしかないが。
「魔種が本格的に出張ってきた訳だし……今後の事とかやっぱり色々考えなきゃいけないことは多いけど……ま! 今日この時くらいはね! ゆっくりするとしよう!」
考えすぎても仕方なし、と。海鮮料理の並びに手を付ける。刺身に焼き魚……醤油はあるかな? あぁあとはノンアルコールかお茶の類でもあれば――と。
あ、では皆様かぁぁぁぁんぱぁああああ――イッ!!
「わー! どんどんぱふぱふッ――! みんな生還おめでとうぉ――!!」
「いやぁ! かつてなき強敵を撃破し、仲間と喰らう飯の旨い事旨い事ッ! なんともはや! こちらの世界に来て本当に良かった!! 生き恥の甲斐があったというものよ!」
ムスティスラーフのラッパに、百合子の言が続く。団長撃破の為に集まっていた同士をそのままに。美少女さながらジョッキを一気飲みして。
「平和な街が戻ってホント良かったわ……これでまた安心してショッピングなりこうやって皆とお食事なりできるわね。サーカスの狂気が撒き散らされてたら、それ所じゃないもの」
「全く、その通り……あぁ皆さま本当にお疲れさまでした。アルコールは厳禁なのでソフトドリンクで失礼しますが……まったくこうして終わってみればなんともはや。得難い経験でした」
「うむ、うむ! 改めて……乾杯、だ! ……んっ? ノブマサはともかくアリソンは酒じゃないのか?」
べ、別にジュースが好きなだけなの! と強がるアリソン。ノブマサは普段着用し続けているフルアーマーを――兜の部分だけとはいえ珍しく外して、ドリンクを片手に。ヨルムンガンドの再なる乾杯で口を付ける。
「まずは無事に決戦を乗りこたって事で――」
「そうね。とりあえず勝利に乾杯! って所かしら」
「さ、祝杯ね祝杯! 怪我もよくなったし……えぇ、乾杯!!」
竜胆の言に続いて、アクアが。ルーミニスに盃を渡し、合わせて。一気に飲み干せば。
「いやー中々大変獲物だったけれど……アタシたちに掛かれば造作も無かったわね!」
「んんんそうだよぉ! でもなぁ! わたしはなぁ! サーカスになぁ! こう……なんだ……」
と、そんなルーミニスの言の直後に泣き上戸になっているのはルーティエであった。
サーカスが壊滅した事はめでたい。めでたい――の、だが。
「こういった家業を始める前……このステップで人を殺せるぞとか考えるようになる前……愚かにも普通に踊りを楽しんでたりしたガキの頃にさぁ……あったんだよ……サーカスの華やかさに……憧れと言うか……そういう感情が……!!」
特に彼らは世界的にも有名なサーカスの集団だ。そんな彼らの正体が魔種だったとは。残虐だったとは。
「ええいちくしょう! こんなの似合わない! やけ食いだやけ食い!! 肉持ってきてくれ――!!」
「成程ねぇ……戦う動機は人それぞれ、か。悲しみがあってこそ戦ってたのね……」
「うん……でも私の場合は単純に、連中が気に喰わなかったから――としか言いようがないわね」
泣くルーティエ。うんうんと聞きながら背をゆするルーミニスの横で、竜胆が語るは己が理。
許せなかったのだ。人の矜持を、想いを踏みにじり狂気に染め上げるその行為が。自らの嫌う一つを堂々と……あそこまで大胆に。なんの呵責もなく行える連中が。
「だから落とし前を付けようとした。いや、付けた、か……ただソレだけの事よ」
「これからもなさるおつもりで? 『そういう事』があったのならば」
「勿論。どこまでも」
ノブマサは竜胆のその言に、左様でと答える。やはりイレギュラーズは誰も彼も大なり小なりあのような戦いからは逃れられそうにはなさそうだ。それぞれの信念が。あるいは思惑が、いつか必ず『敵』と交差する。
「――恐ろしくも、楽しみですね」
いずれまた共に、英雄らと戦場で轡を並べる事もあろうと。談笑を続けて。
「戦う理由ねぇ……オレにとっては、そうだなぁ。強くなりてぇからかな」
その為には激戦区に向かうが最短だったと、語るはBrigaだ。
闘うのが楽しい、という事もあるがなにより目標がある。それは。
「鉄帝のガイウス……いつかアイツと戦いてェ」
だからオレは強くなりてェのだと。Brigaは語る。いつの日か、いつの日か――と。
「んーふふふ。私は、私達が倒すべき敵。魔種に私達の存在をしめしてやりたかったっていうのがあるかな! あの戦いを通して……私がこの世界で戦う理由、なんとなく見つけられたきもするし……」
続いてヨルムンガンドが。食べる手を一切止めずそのままに語り続ける。それに幻想の人々の期待に応えたい気持ちもあった。世話になってもいるのだからと。料理に続いて皿も食べながら――ん? あれ? 食器も食べてる?
「誰が死んでもおかしくなかったけど……今ここには皆揃ってる。うんうん……本当に良かったよ――正直戦闘の最中は怖かったけどね!」
咲花ちゃんに守ってもらってなかったら逃げてたよ! とムスティスラーフは軽口を。
しかしその言がどこまで本気である事か。結局、重傷を負うまで奮戦したのだから。彼は
「――何も出来ない昔と違って、今は僕も戦えるから」
あの日は後悔しかなかった。出来ない事が多すぎた。
しかし今は。戦いの苦しさはあれど――無力の苦しさはないのだと。彼は語る。
「フッ――いい顔ではないかムスティスラーフ殿……むっ! あれに見えるはレオン殿! 報告書では散々語ったが、もう一度我らの武勇を聞きたくなったのであるか? いやそうであろうな!! うむ! 遠慮せず、とくと皆をねぎらっておくれ!」
「相変わらず圧が強ぇなぁ。ま、いいけどね。長危険地帯である団長に挑んだお前らだ――しかし、よく行ってくれたよあそこにね」
酒を片手に訪れたレオンは言う。決戦の最中、どこにも危険はあったが――特にクラリーリチェの所と団長の所は格別だった。そこへ行った面々が、ここにいる。なぜ、どうしたあそこに行ったのかと。
「勝てると思ったからである」
されば百合子は言う。平然と。勝てると思ったからと。
「レオン殿が示した絵と、皆の士気が合わされば必ずや食い破れると確信した故挑んだ。別に勝ち目のない戦いはせぬという訳ではないが、取れると信じて潜る死線は気持ちよいぞ!」
「人の心を操って、支度もない事をさせるなんて理不尽でしょ?
そういうの、嫌いだったからね。あとやっぱり――」
続いてアリソンも言葉を重ねる。許せぬ事があったから。そして、なにより。
「楽しくお出かけできた方がいいじゃない!」
晴れ晴れとした日に。不安なき街を出かける事が出来ればと――そう、思ったのだから。
「やっぱお前ら」
その答えに、レオンはどこから笑みを見せて。
「大した連中だよ。ホントにね」
そのまま場に混じりて談笑を続ける。決戦のあれそれを。彼らの口から聞き出して――
「えー、そんじゃまーローレットの勝利と、オイラ達の無事を祝して!!」
「此度の勝利に、ローレットの皆に!!」
「我等が特異運命座標に!」
かんぱーい!! ギルドの一角でモフドラした集団が一斉にグラスを。
ジョゼ、創、エリシルの言の順。エリシルに関してはジュースだが、と。それに続いてラデリも一言。
「……あぁ、乾杯、だ。エリシルに創も……皆、無事で良かった」
被害こそ決戦以外の場でも出たが……犠牲者はいない。これは奇跡に近い事だろうと彼は言う。骨付き肉にかぶりついて。黙々と食べながら。
「たしか――ジョゼさんもラデリさんも前線に出てたんだよね? どうだった、魔種相手の戦いは」
「あぁ、今思えばほんとにすげー戦いだったよ。座長はいきなりヤベェバケモノになるわ……そうでなくても周りに敵は多いわだ……背中の毛がヒヤリとしたね」
創の言に、ジョゼが返答を。予想外の多い決戦だった。団長のいきなりの変貌には何が起こったものか、とも思ったものだが……しかし結果として皆は無事。良かったと、安堵の息を。
「……しかし各々方の武勲に武勇。話に聞くだけでも実に素晴らしい。私も元居た世界では修羅場をくぐってきたつもりだが……こちらのそれとは比較にならない事だろうな。むっ、創殿。ワインのおかわりが必要かな?」
「あぁエリシルさんごめん。ありがとうこれに、いいかい?」
注いで差し上げよう、とエリシルは代わりのワイン瓶を。此度の戦いは見送ったものの……願わくば、いつの日か直接体験できるほどの力を付けておこうと、心に誓いながら。
「……まぁ、まだ終わってはいないしな」
ラデリが言う。そう。サーカスは片付いたが、魔種の問題は一つ終わっただけの話。
幕は下りていない。また別の脅威が、いつか必ず現れる事だろう。
その時は。いつか、必ず、全て。全てを潰し、全部食い千切って――
「――相棒」
書いて、ラデリと呼ぶはジョゼだ。骨付き肉を骨ごと砕かんとしていた形相の片割れに。
「うかねぇ顔してねーでパーッと行こうぜ! 今日はそういう日で――俺達は、勝者なんだからさ!」
「……ああ。そうだな相棒――今は、喜んでもいいんだよな」
己らの勝利を。無事に明日を迎えられるという代えがたき事実を。
噛み締めて、良いのだと。表情も柔らかく――
「ふ……ベスティア撃破、お疲れ様……なの! ティアティアが怪我しゃったのは……アレにゃけど……」
だが、皆無事に生還し――めでたい事には変わりないとミアは言う。故にシエラは。
「みんな、作戦成功おめでと――! よーし! ミア社長を胴アゲだ――!!」
「皆さん胴上げですよ胴上げ!! 一人を数人が『全力』で上に投げるという、祝い事には欠かせない作法です! これ抜きにして祝勝会を語ろうなどと笑止千万です! やりますよ――!」
足、腰、腕、そして体――総てのバネを溜めて、放り投げるんです! と言うはルルリアだ。全力。そう『全力』が重要である。天井付近にまで放り投げる用意を。むしろ天上を突き破らんとする勢いを……!
「にゃっ……!? 胴上げ……!? お、おーけーかかってこい、なの……♪」
「白猫ファイターズ! ばんざーい! ミアさんばんざ――い!!」
「胴上げわっしょーい! ミア監督ばんざーいにゃ! わっしょいしょ――い!!」
覚悟を決めたミア。さすれば即座にミアを取り囲んだ一人、リディアと。胴上げ道極めて十年。得意技としているシュリエも彼女を投げる。ちなみにその設定は今決めました。そう決めました。
「ミアさんからだね! わーい! 作戦成功おめでとう~おめでとぉ~っ!」
「ば、ばんざーい? え、っと? こ、これでいいの?」
そしてカシミアと若干テンションの急上昇に付いていけていないアンナも加わって胴上げ開始だ! わっしょいわっしょい! ちなにね! 胴上げってね! 落ちたら危ないからね! 誰か服の裾を掴んでね! 行うのが――
「ふ、ふにゃ! 高ッ、高いなの……! あぁぁ天井が、ふにゃ――っ!?」
「あ――! か、監督の鼻が――! なんてこったにゃ――!」
シュリエの声に、ふと上を見れば。て、天井に当たった……!? とアンナも驚く。頑張り過ぎである……! ミア監督。痛恨の重症です。嘘です。
「なるほど、ああいう風に持ち上げて上に投げればいいんだね。高すぎるとアレだけど」
『ちゃんとキャッチしないと怪我人が出るから気を付けろよ? ――若干手遅れだが』
「はーい、大丈夫だよ、私力あるし」
不安だな……と言うはティア――に宿る魂の声である。胴上げとはなんぞや? と思っていたが、見れば成程。やっている事は単純だ。力加減に気を付ける必要はありそうだが、と。
「最初の犠牲者……こほんっ。ミアちゃんの胴上げが一段落した所で――次はシエラさんですね!! 巷で『胴上げのルルリア』と呼ばれている力をおみせしましょう!!」
「私達は つよい! 白猫ファイターズ! ばんざ――え、ちょっと待って? 私!?」
「我らが白猫ファイターズ、キャプテンのシエラも胴上げにゃー! かこめかこめー!」
わああああ! と叫んでいる間に無数の手に捕まって胴上げだ! わっしょいわっしょい! シエラキャプテン、わっしょいしょ――い!! このチーム名もシエラ=キャプテンもさっき思いついたばっかりだけど! 細かい事はいいよねキャプテン!!
「……え、これ。本当にこういうものなの? 何の儀式? 会場の人に怒られない? ……て何? なんで私を見てるの? え、まさかこの流れ私も!? ま、待って心の準備が、きゃあああ!?」
「あ、あれ? 全員を胴上げする流れなの!? この流れ、まさかまずい!?」
アンナすら胴上げされ始めた流れを見て、カシミアは終わったらこっそり逃走、もとい隠れようとする算段を始める。尤も、特徴的な耳と尻尾があるのだ。何処まで隠れる事が出来るか――疑問は尽きない。
「って、これ本当に全員やるの? 順番制?」
『そのようだな』
「私飛べるから別に……」
そういう話ではないのだろう、と言ってる間にティアに胴上げの番が回ってきた。
浮遊する。普段の飛行とは違う感覚――浮かされている感覚は、新鮮な物だった。
まずはジュースを持って乾杯といこう。そう考えたのはサンディで。
「せーの、かんぱあい!!」
「よーしパーティーだ! こういうのは幻想じゃ祝われる内が華、だからな! 喰い尽くしてやるぜ!」
「かぁんぱぁい!! てね!」
音頭を取ったのはサンティールとシラスもだ。特にサンティールはこの『乾杯』
一度やってみたかったのだと、高々に掲げて。
「かんぱぁぁぁぁい! である!! みんながんばった! よくやった! えらい! よ、てんかいち!!」
続くはボルカノ。テンション高めにサンティールに続く。
皆が努力し、無事戻って来れて敵も片付いた。何一つ文句などありはしない。いう事なしであるな! と。
「パーフェクト勝利お疲れ様。後片付けは残ってるけど、皆が無事で何よりだねぇ」
「これの場合はお疲れ様でした、になるのか? 何はともあれ皆無事に終わって良かったな」
そしてルーキスと、その隣にルナールが腰かける。グラスを軽く、噛み合わせて。
ここまでの大所帯で大規模作戦に参加するとは、露ほども思っていなかったルーキスであるが。狙撃し、攪乱し、削り落とす。きっちりと己が役目を果たせた事は良しと思うべきかと思考すれば。
「俺は戦ってるうちにいつも夢中になっちゃうのだけど……今回は終始落ち着いていられた。ずっと皆の顔がよく見えてたよ――きっと、ルーキスの的確な指揮のおかげだね」
「ふふ、そうかい? でもそれはきっと皆の連携が繋がってこそ、だ。指示する側も楽で楽しかったよ」
平素の様に指示を出せたのは、皆がよく動いてくれたからだと。シラスの言への返答とする。皆がスムーズに動いてくれれば、指揮する側としても脳の負担が少なく――故に戦況がよく見える。己だけの力ではないのだと。オマケに守ってもらえた。そう言って。
「大きな部隊に参加は初めてだったんだがな、悪くない――ああ、そうだ。忘れない内にいっとく。今回、誘ってくれてサンキューな。ポー」
「うん。部隊に呼んでくれてありがとうポー。また仕事で一緒になったらよろしくね」
「いえいえ! ルーキスさんとルナさんの連携、凄かったです!!」
やはり恋人同士心が通い合っているからですかね……とルーキスらの言に呟くはノースポールだ。
ジョッキを――いや中に入っているのはジュースだが。で、優しく皆のグラスと重ねて。ギルドマスターの財布を狙い撃ちにすべくじゃんじゃん注文を入れて行く。
「ボルカノさん、サンディさんお料理は足りてますか――!? 琴音さんもじゃんじゃん飲んでくださいね! 大丈夫です! どうせ――我々の財布は痛みませんから!」
「ふふふっええ、その通りねぇ。でも私はまだ大丈夫よぉ」
なぜならピッチャーで飲んでいるから。尋常ではない器で琴音は喉を鳴らしている。
高そうな酒から安そうな酒まで、とにかくアルコールというアルコールを摂取する。食べ物はそれに合いそうなモノだけでいい。勝利の美酒は、ここにあるのだから。
「ポーちゃんは剣の檻の立ち上げととりまとめ、おつかれさまぁ。おかげで自分の強みも活かす事が出来たし……なによりこうしてみんなと出会う事ができたわぁ。ボルカノ君は……守り切れなくてごめんなさいねぇ」
「なんのなんの! 皆が全力をだしたからこその結果! お気になさらず、であるよ――!」
決戦ではコンビを組んでいた二人。無念ながら重傷を負う事になったが――それはそれ、とボルカノは言う。手を抜いた結果ではないのだ。いやむしろ、逆であるからこその傷。何を引け目に思う必要があろうかと。
「しっかし……皆結構強かったよな?
ああいう戦場に立ったら俺なんてすぐ死にそうとか思ってたんだが……」
おかげさまで命拾いさせてもらったと、サンディが呟く。誰一人欠けず、再びこのグループとしてここに集う事ができた幸運――いや。己らで掴み取った勝利を噛み締めて。
「うん――ホント、あの戦いは。すっっっつごくこわかったし、痛くて、意識が遠のいて」
しんじゃのかな、なんて思いかけもした。だけれど。
「みんなの声が聞こえたんだ」
その時、確かに思ったんだ。
「『死んでたまるか』って! ルーキスの指示があって迷わなくて、ぽーちゃんが一番前を駆け抜けてくれて、シラスが声を張り上げてくれたから――魔法が使えた! ホント、みんなの、みんなのおかげだよ!」
「ええ、本当! シラスさんの鼓舞は、グッときました! お礼にサラダをどうぞ!」
「ああ、あんなふうに檄を飛ばすなんて自分でも驚いたよ。一緒に戦ってるうちに気持ちが熱くなっちゃってさ! あとそれとなくサラダを寄せて来るのもビックリするなぁ!」
ノースポールのサラダ寄せに。返却を試みるシラス。食べなきゃダメです!
「なんでだよ……野菜は苦手なんだよ……! ゼロは倍にしてもゼロだから……!」
やむなく肉と一緒に口に放り込む。ノースポールの視線が痛い。渋々。渋々――ゴクンッとな。
「おっしゃあ! 今日は食うぜぇぇ!!」
「よろしくお願いします! あ、お肉どうぞどうぞ! 取ってきましたよ!」
渓の用意した肉を真っ先にかっ喰らうはアランであった。サーカスとの戦いを終え、やっと安心して食事にありつける瞬間を待ち望んでいたか。
「みんな、お疲れさんやねぇ。ほんと頑張ったわぁ総力戦ちゅうか数の暴力っちゅうか……ま、あんだけ被害がでたなら『暴力』って程でもなかったんかなぁ」
言うはブーケである。勝ったし、死人は出なかったが重傷者は大勢出た。結局の所丁度いいぐらいだったのだろうか? ともあれ誰も彼も無事? で良かったと心中で呟きながら。
「あ、店員さ――ん! 一番高いお酒、ボトルでェ――♪ レオンさんにツケといてください!」
「……それにしても決戦後だというのに元気なヤツばかりだ。ま、疲れ果ててればいい訳でもないが――おいやめろ勝手に飲ませようとするなオレのペースで飲ませ、ごぼっ!」
「まァまァまァ……イイお酒なんですからまァまァまァ! そーれイッキ! イッキ!」
酒を喉へ。いつもよりやたらテンションの高いヨダカに突っ込まれたのはクロバだ。ええい人にはペースというモノがあろうが。ペースが。肩押さえられていたが、一瞬の隙を突いて少しだけ逃げ離れる。さすればそこで、呷ろう。酒を。自らの速度で。
安い高いはさほど関係ない。彼には味覚が――ないのだから。
「――ま、勝利の月見酒ってのもまた格別に『美味い』もんだ」
窓の外。見える月に、味など無いが。
風情はあるのだ。そこに酒の味は――確かに、あるのだ。
死神が識る数少ない味。『勝利の美酒』と共に。
「御機嫌よう――ここに座っても構わないかな?」
と。そんな時現れたのはイシュトカだ。
「ん……アンタは……」
「私はイシュトカ。見ての通りいわゆる旅人で――あぁいや」
と、一度言葉を止める。そして大仰に手を振るえば。
「そうだ。折角ならば、普通に自己紹介するよりも……どうだい。一つ、私がどんな人物か当ててみないかね? いやいや無論。こちらからそれを披露してみるとしよう」
八卦見の類ではないが――観察と分析には自信があると。そしてこういう折は曖昧な事を答え、なおかつそれを誤魔化すに足る技能が重要。ワインを片手に、語る舌は――はてさて。如何な力を持つ者か。
「――おやレオンさん。やはり参加されていたんですね」
と、そこへ通りがかったレオンへと悠凪は声を。少しばかり話がしたいものだ。
かつてデートなる約束もした事だ――まぁのらりくらりと、躱されそうな気もするが。
「決戦は大変でしたね……重傷者も大量に。これからは後片付けがあるんでしょうか?」
「そうだねぇ……ま、色々気になる事は残ってるからね。その辺りの調査も、おいおいさ」
でも、今は祝勝会を楽しみなよ、と声を掛けられる。
焦る事は無い。これからある程度――時間はあるのだから。
「しかし、んまぁ――サーカスと言やぁ俺ァあんまし活躍できなかったしな……後ろで光のビーム撃ちまくってたら刃飛んできて重傷って、ダサすぎだろ。目立ちすぎたんかなぁ……」
そういう点ではお前達の方が活躍してたよな、とクロバ、冬葵、ヨダカへと声を。
結局、ジャコビニを仕留めたのもここではない知り合いのグループだった。なんとも……
「なんつーか……敵わねぇな……」
頭を掻く。次は上手くやれるかと。どうすべきかと、軽く思案をしながら――
「はい! 暗い顔してはなりません! そんな顔は祝勝会に似合わないので……これでもどうぞ!」
「お、おぉ。悪いな」
と、ヨダカの絡み酒がアランを襲う。お酌する、と言うよりも飲ませに走るのだ。無理に、と言う程ではないが、減っていれば注いで飲むように促す程度には。アルコールそのものよりも場の雰囲気に酔っている感じか。グイグイ行く。グイグイ。
「……刃? もしかしてそれがクラリーチェとの戦いですか? サーカス本陣との戦いには参加していなかったので、どのような戦闘だったかお尋ねしたいのですが……」
言うはエリーナだ。ウィズ・マスコットによる小さな妖精を連れて、聞くは決戦の内容。
「多数重傷者が出る戦いとは聞いていましたが……そこまでの激戦だったとは……」
「ん~……クラリなんとかサンも、あないに美少年さんやったのにねぇ。ま、人も見かけによらず……と、過去の話ばっかしてたらあきまへんな。折角こないな場やとに」
堪忍ね、とブーケは話を区切る。英雄譚の話はともあれ、これからの話をするとしよう。例えば。
「そうやねぇ。皆は好きな子おるん? 隣のクラスのモブ=貴族子さん? なぁーんてなぁ。あはははは! ……えっ? ホンマ?」
一体何者なんだモブ=貴族子さんッ……!
「何の話なんだよモブ=貴族子って……んっ、サーカスの話、か? オレに聞かれてもな……こう、上手く説明はし辛いんだが……」
「ふふふ……いやいや。その場にいて実際に経験されたお話は重要。是非とも武勇伝、お聞かせください」
多少場が落ち着いたか、と戻ってきたクロバに、氷彗が声を掛ける。冷気を纏った彼女の空気は、酔いをある程度冷ますかもしれない。クロバの英雄譚と言えば――クラリーチェとの戦いであろう。甘くて強い酒を氷彗は飲みながら。
「このグループの――リーダーなのでしょう? 結成から何から、奔走されたのでは?」
「ん、む――いや。そう大したものでもない。ただ、まぁそうだな。実際の戦いとなれば、クラリーチェの刃が左目を掠めた時など……」
彼は語る。客観的なものではない、己がみたままの。己が戦場を。
自らの心の、往くままに。
宴会の予約、入れといたから――そんな事言ったのは誰だったか。
「えっひっひキドーさんってばあの戦いの最中にそんな事いうんですもん、ビックリしましたよ」
「おおそうかい――なら、ああ言った甲斐があったってもんさ」
そうだ。キドーだとエマは言う。決戦の最中『唐揚げにレモンかけといた』とか突拍子もないギルティ案件を口にしたのは彼をおいて他にいなかった。だめよかけちゃ。戦争よ? ま、それはともかくとして――
「さぁやろうぜ――乾杯ッ!!」
「うむ、乾杯じゃ」
「かんぱぁ~い!」
義弘、ゲンリー、アーリア――乱暴に打ち付け合うグラスとグラス。丁寧さなど欠片もない。必要ない。ただただその音が彼らの感情を。高ぶりを。これ以上なく示しているのだから。
「いや……ホント、めっちゃ頑張りましたね……これは語り継がれるべき事案だと思うんですよ私」
「ハッハッハ。まぁ、そうじゃの。一人くらいくたばるかもしれんと思ったが、成程流石は燃える石よ。どいつもこいつも――しぶとそうな面構えじゃわい」
「あ、ゲンリーさん早速グラスが……お酒をどうぞ?」
刀根の言に被せたゲイリーだったが、酒の速度が速い。それを目聡く気に掛けた礼拝は即座に御代わりを一つ。注いでグラスの渇きを防ぐ。
「ってあ――! ホントに唐揚げにレモンかけてる! 何してるですかこれはギルティですよギルティ! 食べますけど――!!」
えひひ、言ったみたかっただけですと、表情は柔らかいエマ。口に一つ、含みながら。
「それにしても全員生き残りましたねー快勝快勝! こんな国でしたが、私の故郷に変わりありませんからね……やはり何もかも血みどろで崩れてしまうよりは、あった方がいいもんです」
「ああ。おかげで、こうして大勢で酌み交わせる。怪我人はいても、死人はいなかったってのも最高だ。これ以上ねぇよ」
「なんでもいいぜ! とにかくキドーの奢りなんだろぉ? そいつは重畳! 破産するまで喰って飲んで騒いでやろうぜ! ゲハハハハッ! だが唐揚げにレモンは余計だろぉぉお!?」
エマの言に合わせる義弘。俺の奢りじゃねぇよ! とキドーはグドルフの笑い声に反論し。
「戦場なんて初めてだったんで色々と難儀したけど……魔種も斬った感じは人間と変わらないって判明したのは収穫なんだよ。見た目よりも精神性で人かどうか判断してるのかな? それとも目に見えない、魂とか?」
本能的な事なので確たることは言えないが、と芒は言う。魔種。反転者達。
彼らは一体『何』で出来ているのか――今は分からないと思考しながら。
「ここのお酒、いくら飲んでもただなんでしょ~? そうしたら、一度……あ。丁度良くシャンパンがあったわぁ~」
試してみたい事があったのだと、アーリアはシャンパンを手に取る。
それは瓶ごと。口を押さえて振って……いやちょっと待ってそれ以上いけない!!
「発射よぉ~! それ~~ッ!!」
泡が飛び出る。周囲に撒き散らされる。うああああシャンパンファイトだあああ!!
抗議? 反撃? なんのその! アーリアはばっちこーいと言わんばかりにハイテンションだ。今日は騒ぐぞ最後まで騒ぐ! だって――こんな日なのだから!
「わーい! わーい! 生きて変えたの! 今後も商売繁盛うっはうはなの!!」
生きてさえいれば商売を続けられる。繁盛の機会はこれからもあると、オロディエンは語る。未成年であるがゆえに生絞りのマンゴージュースを飲み干しながら、次はメロンジュースだろうかと手を伸ばし――
「――さていい感じに盛り上がってきた所で皆。突然だが良い知らせと悪い知らせがある」
その時。キドーが険しい表情を見せる。眉間に皺を寄せて、机に両肘を立てて、両手を口元へ。
なんだ。どうしたのか。いきなり雰囲気が変わった――と、思えば。
「良い知らせは、料理の差し入れだ! ほら見ろ! 大皿一杯の唐揚げだ! レモンもあるぞ!」
おお、これは美味しそうだ! しかし差し入れって一体どこから――
「悪い知らせは――この唐揚げは酒場『燃える石』の店主謹製だ」
静まった。確かに今一瞬、この場の熱が消滅した。
『燃える石』の店主謹製の唐揚げその意味は……いや、止めておこう。語るに及ばず。
え、どうするのこれ……食べ、ると?
「……出る時に押し付けられたんだ。無言で。圧が、圧が凄かった。きっとこいつは……相当気合が入ってるぜ。確実に『燃える石』の弁当を超えるシロモノだ――皆、残すなよ。最悪、レオンに分けてもいい」
「はっ?」
思わず向こうの席で我関せずと飲んでいたレオンが思わず振り向いた。ちょっと待って? 今お前なんて言った? 的な表情をしているがキドーは全力で無視。ポーズを固定。
「…………わ、儂等は何時でも食べられるから、他の所に差し入れてくるのが良かろう。速やかに、な。うむ。これは善意。あくまで善意じゃ。それに儂はマヨネーズに一味唐辛子を振ってそこに醤油垂らしたヤツが最高でのぉ……」
「お、おぅ。そうだな…………オッ! 我らがローレットのマスターサマじゃねの。オウ唐揚げくうだろ? な、ホラ遠慮すんなってただの唐揚げだよ――男見せろホラ」
「なんで唐揚げ喰うのに男見せなきゃならないんだよ」
不審すぎる。ゲイリーとグドルフは周囲に分け与えようと被害は拡大。なんて唐揚げだ……!
「えエッ!? この唐揚げ、マスターが作ったの!? えっ!! ……た、食べる前に運動しよっと!! ほらみんな先に唐揚げ食べちゃって!? 僕の分もいいよ!!」
「……その、マスター謹製の? 唐揚げ? あは、あははは。いや、ホント残念なんだけれど……私、さっき揚げ豚肉オーダーしたから……あは、ははは。あ、レオンさん唐揚げ食べる――!?」
「はい、レオン様どうぞ、あーん。私は付け合わせのパセリを頂きますね……ええ」
「お前らどんだけ俺を人身御供にしたいの?」
ロクははしゃぎながら唐揚げから逃げようとするし、オロディエンと礼拝は、とりあえず困ったらレオン。とばかりに唐揚げを薦めまくる。もはやテロだよ!
「……おれは別にレモンかかってようがマヨネーズかかってようが問題はねぇ美味けりゃいいのさ」
問題は『違う』という事であると義弘は尋常じゃなく渋い顔を。
店主のかぁ……それは、やべぇなぁ……と、呟いている。どうしようねホントこれ。
「私達が勝ったのですよ! あの魔種達に! 先の戦いでもすごく頑張っちゃいましたよ! いや実際? 行けるかなとはずっと思ってましたし? 怖くなんて無かったですよ本当! これから鉄帝に帰ったら家族に自慢して、友達にも自慢して、行く行くは国の皇帝になってさー! それからそれからドラゴンを倒して……」
「ぶちぶちブチュチュ!! 長話禁止レモン汁攻撃――!!!!! しね――!!!」
「ぐああああ! 目が、目がぁあああ!! ていうか今、し、って――!!」
ねぇねぇどうしたの失明する? 失明するぅぅぅぅぅ??? 夢見る刀根に先制攻撃。床を転げまわる。こ、このポチ野郎!! あとでモフモフするぞ!!
しかし――こうしている刀根だが。シグルーンは知っている。ふざけているその様の陰で、戦場では皆を守り切った生粋の騎士であったと、見直したから。我ながら似合わぬと。そういえばあの時はそんな事を言っていたが。
「……そうでもなかったよ」
その彼の背中を守ったのは己であったが。故、同時に思ったのは。
護る人は――では、誰に守られるのか、という事であろうか。
酒の酔いに浸りながら、巡る思いは彼女の中に。求めるは果たして強さか――
「……やれやれ。マスター謹製のから揚げなんて、それは地球では日本唐揚協会の認定カラアゲニストだった芒さんでも避けざるを無いかな……うん。そこで食べ物で遊んでる人たちに処理して貰うでいいんじゃないかな? というか口に突っ込もう」
えっ!!? という顔を見せる者らがいるが、問答無用。さぁ喰らえ!
「魔種との戦いにはまず勝利。重症からの回復も遠く無し、と」
戦果としては至上と言うほか無い――と、ウォリアは語る。本来ならば美酒も美味も不要であり……いや、そもそも強者の魂以外を味わう事が出来ないこの身ではこんな場など参観しても意味など無い筈なのだが。
「しかし――今宵は――」
どことなく、味がする。喰らう肉に酒に。不思議な――
「……いや、気のせいであろうな」
闘い以外で心が躍る、久しい感覚に成れていないからであろうと心中で思い。
彼は往く、遠目に見かけた知り合いの元へと。そこにいたのは。
「生き延びたぜ――!! やった――ッ!! お、ウォリア君じゃーん!!」
プティである。傷を負った身ながらも生死の領域に影響はなく。生きて、ここにいる。
知り合いの零、並びに雷霆と揃って救助される事態になりかけたが――
「おっしゃカンパ――イ!! いやー今回は中々やばい依頼だった……サーカスの団長のあのやばくなった姿な事……禍々しい姿だった事この上ねぇぜ。重症程度で済んだのはプティと雷霆達のおかげだろうな……!」
「決戦では皆、大いに働き、大いに傷付いた。それは然る所――大いに休まねばならん、と言う事でもある。傷付き疲れ果てた時こそ肉体が強化されるのだからな」
超再生という、肉体の回復現象だ。ともあれ零も雷霆も共に無事で、この祝勝会を楽しんでいる……いや雷霆の方はまだ目が鋭い。闘争心は衰えてなどいないか。油断している者がいるのならば――襲い掛からんとする勢いだ。
「さ、ともかく恐怖と苦痛なんてほっぽって! 祝勝会の始まりだぁ!
皆ばらばらに動いていたけど……無銘堂一同全員生きてまた会えてよかったぜ!」
「いやぁ、実に目出度い目出度い! 無銘堂の無事に! 此度の戦いの勝利に、乾杯ッ!」
プティに続いて、今日は無礼講である! と言うはジークだ。練達上位式による式に酌をさせながら、食事を楽しんで。
「勝って兜の緒を締めよ、とは言うが……うむ。今日一時くらいは羽目を外してもいいだろうさ。皆それだけの戦果を挙げて。それだけ頑張ったからな」
「うん。皆適材適所で色々な役回りだったけど、誰一人欠ける事無く帰って来れて……ひとまずは一段落って感じだね。ま、後始末とかいろいろあるんだろうけれども……」
一方の汰磨羈とノワもまた、少しくらい警戒を解いてもよいだろうと。されば汰磨羈は料理を物色し、魚介系から制覇していこうと心に刻む。マグロとか如何ですか。マグロ。
「パーティだ! 飯だ! 肉だ!! 怪我も治ったし、体力取り戻さなくちゃな!」
ど・れ・に・し・よ・う・か・な! と肉を見るのはカイトである。魔種に一度は焼き鳥にされかけたものの、その傷はもう大分治っている。気にせず料理を取り、皿に盛れば。
「む、これはパンに乗せて食べたい所――っと。零、良い所にいた。パンを出してもらえないか」
「ん、俺のパンか? いいよいいよ。幾らでも乗せてやってくれ」
零のパンが汰磨羈へ。こういう時彼のギフトは便利な事この上ない。
具材さえあれば乗せて良し。挟んで良し。より取り見取りである。
「この働いた後の飯の旨さよ……! つーわけで俺は肉だ肉狙うぜ!! よっしゃその肉もーらい――!!」
「そうだ! 零君楽しむんだ! 食事がメインこの場……たらふく胃に叩き込むんだ!! 騒ぐんだ――!」
でも雷霆君に獲られないように注意しつつ食べなきゃね――! とある程度の警戒をプティは見せる。ただ飲んで。食べて。騒げば――その内警戒も緩んでしまいそうだと。心のどこかで油断しながら。
「リゲル――乾杯の音頭を、お願い出来るか?」
「ああ、いいよ。そうだなぁ……うん」
リゲルはポテトに音頭の催促をされ、グラスを掲げれば。
「――皆の熱意と努力でもぎ取った勝利に! これからも続く明るい未来にッ!」
乾杯!
彼の乾杯に合わせる形で、グレイル、ノーラ、ユーリエなど――決戦で集った面々がここにいる。
「イエ――イ!! お疲れ様――!! 生還おめでとう――!!」
「お、お疲れ様にございます。QZ殿」
さればQZがノンアルコールのこどもビールてに乾杯を。明日へと背後より抱き着く。あくまでも死人がでなかっただけで重傷者は数多く存在している。人によっては『イエーイ』と騒ぐようなノリではないかもしれないが。
「今日はお祝いだから! テンション上げていくぞ――!!」
「ど、どうしたんでございますかQZ殿……?!」
それでも、しんみりさせるわけにはいかない。安堵の気持ちに嘘はつきたくなかったから。明日の口へと料理を『あーん』して。ハイテンションのままに全てを乗り切る。
「……子供泣かせなサーカス団の討伐記念祝勝会、か。俺自身はそう関わってはいないが。オーナーの誘いともあれば無下には出来ないな」
言うはマカライトだ。食事には興味があるし、討伐そのものには関わっていない者の――周囲で行われている決戦の話にも耳を傾けておく。どんな戦いだったのか。どんな戦況だったのか。
「知っておくに損はないだろう……こういう戦いが、今後一切ない、なんて事はないだろうしな」
むしろない方が驚く。あくまで基本的には食事に集中しつつ、場の雰囲気を楽しむことは忘れない。
「皆さんお疲れさまでした! 今ここにこうして……美味しい食事が出来るのも。皆と楽しく会話が出来るのも。あの戦いを生き抜いて勝利したからこそ! 本当に、本当に皆無事で良かった!」
「ああ本当だよな――イレギュラーズの大勝利。死者が出なくて良かったわ本当に」
皆が無事であることに感涙するユーリエ。まさかこんな大戦果だとは夢にも思わなかったのだろう。シレオも同意し、されど難儀な戦いでもあった。些かゆっくりしたいねぇと言葉を続けて。
「救援部隊としての参加だったけれど……こっそりと、ね」
セリカだ。乾杯の音頭に合わせて自らも乾杯を。知り合い多き、この場へと参加する。
決戦の現場の凄惨たる事や、負傷者が大勢いた。最前線はもっと大変だったのだろうが……結果として、それを誰一人欠けることなく乗り越えられたことは。
「ホントに、よかったよ……誰かは、亡くなっちゃんじゃないかって思ったりもした」
それでも『みんなが無事』であった。喜びを噛み締めながら、彼女は往く。
その最前線グループの皆を始め、様々な人に改めの御礼をも――と。
「みんなお疲れ様だ――! 今日はいっぱいご飯食べて騒ぐんだ――!! かんぱぁーい!」
「……うん……そうだね……乾杯……」
身長の低いノーラは、それでもと思いっきり掲げて皆と乾杯を。まずはグレイルから。されば、何から食べようかと目を輝かせる。エビフライもあるしハンバーグも美味しい。あ、プリンもあるぞ。今日は! 今日はデザートプリンから食べたい――!
「……皆とまた生きて会えた……良かった……」
そんな様子をゆっくりと眺めながら、グレイルは呟く。ここに、皆がいれるのは。
「……みんなが……自分の出せる精一杯と……団結力で……成し遂げられた……ことだよね……」
「ああ。戦場が異なっても、皆己の信念でもって力強く戦った。
サーカスを打ち倒すことが出来たのは――皆の想いの強さのおかげだな」
ローレット・トレーニングの成果もここまで活かす事が出来るとは……積み重ねた努力とは裏切らない物である。きっと最後の一撃を出せたのはそこに至るまでの全てが乗っていたのだろう。それが今回、身に染みた。
「今日は無礼講だし、羽目を外し過ぎない程度に騒ごうか……と? どうしたノーラ?」
ジュースのグラスを片手に、ポテトが見た先には――
「ん、ん――! レオンおじさんとハイタッチしたの! だから!」
「……あぁ……ハイタッチ、か……うん。お疲れ様……だよ」
「成程。うん、お疲れ様」
「ノーラちゃん、ハイタッチする? はーい!」
両の手を全力で掲げるノーラに、グレイルとポテトは優しくタッチ。それからユーリエは少し高い音を響かせて。やったー! と言いながら走るノーラはそのまま知り合いたちの元へと駆け抜ける。リゲルの所にまで行けば、彼は事前に屈んでハイタッチ。
「ハハハ。よし! 皆に挨拶して回ろうか――向こう側の武勇伝も聞いてみたいしな」
死者がいない。敗北もない完全勝利が……これ程までに嬉しいものとは。
知り合いは多くいる。彼らの元へも行ってみよう。勝利の美酒は、皆で飲むモノなのだから。
「類い稀なる完勝に――乾杯!」
「かんぱ――い!」
レイヴンの音頭の直後。イーリンの乾杯の声が続く。
普段は『気持ち』抑えめ程度に嗜んでいるレイヴンだが、今日に限っては制限なし。当然だろう。祝勝会という特別な日なのだ。あ、勿論未成年に飲ませるつもりはないが。
「……え? 見た目未成年? いやいやいやいや私はとっくの昔に成人してっからな? 問題ないだろう? まー酒飲んでも酔いにくいんだが……毒の類が効きにくいせいかねぇ」
「まーまーまーまー……それならほら、こちらの酒を……」
だーが飲めるなら話は別だ。ミーナのグラスに対して注いで満たす。されば。
「さ――肉だよ肉。持ってきた! 酒に合いそうなスパイシー系だ。食べてみてくれ!」
さればアトが。皿一杯に豪勢な肉料理を。見ればミンチ系の肉に大量の香草が混じっている。臭みを消して炒めたようなモノだろうか? ちょっと変わった味ではありそうだが、スパイシーな様子が窺える。
「ああそちらの話は多少聞いていたよ、見事な騎馬隊だったとか」
「なんとか、だけどねぇ。騎馬戦闘こなせてよかったよ」
「ああ……私も初めて騎乗戦闘なんてやったが、わるかーなかったな」
レイヴンの問いかけに、上手くこなせた故の吐息をアトは一つ。続いてミーナも騎乗戦闘の時の事を想い返す。初めてやった急ごしらえではあったが――効果はあったようだ。
「特にあの、いけ好かない野郎どもに、大毒霧ぶっぱしてやった時のツラったらよ――」
「あっはっは! あの時の事!? 後衛が怒って前まで出てきた時の敵の顔ったらなかったわ!」
そして、珍しくイーリンはしかめっ面ではなく破顔の如く笑みを見せる。酒でもないのに酔っぱらったように笑って。
「とはいえ、首を取ろうと団長を狙ったはいいが――あの瞬間、まさか巨大化するとは思わなんだ」
あれには意表を突かれた、とエスクマリアは語る。仕方のない事だ。あれを予測できた人物などいただろうか。サーカスの者達すら知らぬ、予想外の事態だったのだ。
「弾き飛ばされては飛び付き。風穴を開け、薙ぎ払われては躍り掛り肉を抉りの……繰り返しだ……文字通り山を崩すような仕事だった」
「……あれはねぇ。魔種との戦いは初めてだったけど……あんな隠し玉があるとはね。これからは注意しないといけないな」
その上、一度でも間違えれば己が山の崩れに飲み込まれる。分の悪い賭けとでも言おうか。最終的には生きてここに要るが故、良しとしているが。アトの言うように『隠し玉』の存在はこれからも警戒しないといけないかもしれない。彼らと、戦う時は。
「いやはや。地上は相当な英雄譚だったみたいだね……だが、ワタシを含めた飛行隊は空飛ぶケモノを叩き落としてやったよ。あとはもう制空権、空を制する者が戦場を征するってね!」
些か誇張した物言いはある、とレイヴンは自覚あるものの。宴の席だ。
多少の脚色はお許しあれとモノを語れば。イーリンは想う。
「本当に――」
吐息、一つ。激戦なる戦場の過去を、想起しながら。
「――皆無事で良かった」
「無事で良かった、なんて当たり前だろ」
されどそんなイーリンの言葉に返すのは、ミーナで。
「私がいて、あんたがいて、皆がいた。勝って生きて当たり前の条件だからよ」
それは信頼。負けようはずがないという絶対の。
仮に次があったとしても――また勝てよう。
「――よきものよ ちにみちよ」
その時、場に響く声があった。
それはカタラァナの声。ギルドの一角、そこにて響かせるは――楽団なる者達の。
「あしきものよ ちにみちよ
ありしことこそ よきことぞ
あってさかせる はなみもあらん♪」
今宵、一夜の演奏会。世界を股に掛ける道化の名は地に落ちた。されど、芸によって貶められた名誉は芸によって挽回されねばならない。だから――歌うのだ。
「ああ。その通りだね。ねぇ、カルラ」
『ええ。その通りだわ、レオン』
レオン・カルラも共にあり。大道芸にて場を湧かす。
歌に合わせて踊りに合わせて。お酒にお皿に食べ物も――皆で楽しく遊ぼうと。
ギフトが巡る。用意した人形や、周りにある物を操って。全力で舞台を盛り上げようと。
「ラ――♪ ラララ――♪ ラ――ッ♪」
続く星玲奈の歌声が、場に満ちる。
即興の楽団なれど、だからこそ楽しみがあるというモノだ。悲しみが今までこの国には満ちていた。だからこそ今は。精一杯の楽しそうな歌を。心が安らぐ陽気な歌を! さればリノもその歌に合わせて舞を見せる。
「さぁさぁ、老若男女の区別なく! どうぞ魅せられてちょうだい――今宵はカタラァナ楽団の、凱旋公演よ!」
明日の事は分からねど。
「今日は祝いましょう。騒ぎましょう! 勝利の美酒で、武勇を寿ぎましょう!」
命ある事の喜びをここに。先へ続く未知へ期待を!
あぁきっと――明日は無事にやってくるのだから。
「うふふ。アタシは決戦じゃ裏方だったから、語れるような武勇伝はないわ。でも……」
この浮かれた空気の中で――じっとしてなどいられないと。パルファンは往く。
武勇はともかく。踊りならば自信があると。魅せてみせるとリノに続く。手首足首に音の鳴る飾りを付ければ、リズムを取る度鳴るものだ。時折に舞踏を。誘惑なる香りを混ぜれば人々を魅了する。
合わせられるだろうか。リノと。経験はなくこの場の即興で。
悩みは一瞬。答えも一瞬。交わった視線が、お互いの答えを示していて。
――回る。手を打ち足で跳ね、腰を揺らして見せる二つの影は。声に揺られて場を揺らす。
響く声は観客の身を揺らし。耳から脳に届いて高揚を。さぁ――踊れよ皆も。共に往こう!
「おぉ、皆ノってきたね! それそれっ♪ ヨハン、そっちはどう!」
「フフフ! カタラァナさんに事前に太鼓の叩き方は聞いておきましたよ――行きます!」
さればそこへ、彼女らの踊りと歌を盛り上げるべくミルヴィとヨハンが音を刻む。
ヨハンは太鼓の重さを。ミルヴィはギターを鳴らして伴奏を。共に重低音の響きが誰しもの芯を揺らす。力強気音の振動が、人々の高揚感をもたらすのだ。
……悲しい事が沢山あった。泣いた人達がたくさんいた。
「――アタシが倒した魔種達も、元は泣いた人達だった」
だから。ミルヴィは同じ芸人として――カーテンコールは楽しくやっているのだと!
響かせる。どこまでも。観客の腹を。天に、地に! 届くまで! どこまでも!
「……痛いですね」
『大人しく寝ていても構わないぞ?』
言うはアケディアとオルクスだ。負傷の痛みで安眠出来ぬが故にこそ祝勝会に足を運んだが――それはそれで身体の節々に痛みが走るものだ。しまった、と思った時にはもう遅く。
「……どうしましょう?」
『グラを見習って、元を取るのもいいのではないか?』
と、視線を横にやればそこにいたのは――
「さぁ、いくら食べてもいいらしいですよ!」
『怪我人は大人しく寝ているべきだと思うのだがな』
グラとストマクスだ。彼女もまた負傷している……筈なのだが。向こうとは違い、痛みを訴える様子はない。あるいは我慢しているのか、そこは定かではないが。
「まずはお肉ですね! 他の人に取られる前に確保しましょう!」
『食事はバランスよくとるべきだが……それよりも自身の身体を労わるべきだろう。治癒が遅れるぞ』
「回復には栄養が一番です! 食べていれば治ります!」
まぁそれも事実の一端だが……とストマクスは渋々。間違ってはいないが間違っている気がする。
「あはは。向こうは元気ですねぇ。いい雰囲気ですねぇ、楽しいですぅ」
『……』
「だからこそですよぉ、景気の悪いことは忘れてしまいましょぉ」
そしてそんな様子を見据えながら言葉を紡ぐのはルクセリアとレーグラである。会場を己が足で巡りつつ、時折その状況をアワリティアに伝えれば。
「怪我人はグラちゃん以外大人しくしてますよぉ。相も変わらず」
『……』
「食べ物は今のとこなんか高いもの頼んでましたけどぉ……多分すぐ飽きるんじゃないかとぉ」
経験か。横目に凄い速度で食べていくのが見えるが――さて。あれもあと何分続く事やら。
「……あ……ぁ……っ……」
『はっはっはっ、結構手酷くやられたみたいだなぁ?』
そしてその近く。今度はこちらにいるのはインヴィディアとカウダである。これまた深い傷を負っているカウダだが、他にも傷を負っている同胞の為にと。会場を駆けずり回って食料や飲み物を確保している。だが。
『おいおい、逃げてどうするよ?』
「……うぅ……ひ……っと……が……」
『そりゃ、祝勝会だからいるだろうよ……』
全く世話の焼ける契約者だと。インヴィディアはぼやき。
「――なんとか終わったねぇ」
『我らの同胞含め死者0は驚きだな』
厨房。そこには実はアワリティアとブラキウムがいた。
何か良い素材は無いかと見繕っていれば。
「おっ、流石にいい素材がそろってんねぇ。さて何を作ったもんか……」
『ルクセリアから聞く限り高いものを所望してるようだが?』
「あぁ、そりゃほっとけばいいさ。物珍しさで頼んでんだろうしさ」
『知らない物。未知への興味かなるほどな』
どうせその内飽きる、とルクセリアらと同じ様な会話を。故に気にせず。己が興味で腕をを振るうのだ。
「……無事……終わった……」
『怪我人はいたが死者は出なかったようだしな』
メランコリアとコル。彼女たちがアワリティアの作った料理をメンバーに届ているのだった。ついでとばかり、摘まみながら歩いていて。
「……うむ……おいしい……」
『待て待て。それは怪我をした同胞に持っていくのが目的ではなかったか?』
「……配膳……の……特権……?」
『それは料理を作ったものの特権ではないか?』
そうだっけ……と言いながらもう一口。完食されしなければ良しとしようか――
「ったく、手酷くやられたものよね」
『やるべきことは成したのだ、落ち着くことだな』
勝利の対価を頂きに、更にイーラとコルヌが訪れる。彼女らもまた、負傷している身であり。
「じゃぁ、一番高いカクテルでも頼もうかしらね? どーせギルド持ちなんだから」
『せめてメニューは見るべきだと思うがな?』
「普段、頼まないんだから見ても同じよ」
『そうかもしれないが礼儀というものだよ、我が契約者殿』
大雑把と言うべきか。それとも豪快と言うべきか。
まぁ負傷中の身で多少の不機嫌さが伺える。深くは追及せず、そのままとしておこうか。
「――流石に無理が祟りましたね。覚悟の上でもありますが」
『その甲斐はあったと信じたいものだがな』
言うはイリュティムとアーラ。感じる痛みは虚飾の意地で誤魔化して。
あくまでも優雅さを保つ。カクテルと軽食を喉の奥へと流し込めば。
「――やはり高いものは風味が違いますね」
『努力は認めるが僅かばかり動きがぎこちないぞ?』
「気が付いたとしても指摘しないのが礼儀ですよ?」
『……すまない、我が契約者殿よ』
何のために装っているのか。些か配慮が足りなかったと、アーラは素直に感じながら。
「……ったく、ここまでやられたのは初めてかしらね」
『状況が悪かったとも言えるが慰めにはならんな』
スペルヴィアとサングィス。彼女らもまた祝勝会へと足を運んだ。無論、痛みは意識の外に追い出して。傲慢の果てに。己はこんなもの感じる筈がないのだと。
「何がいいかしらね? この無駄に高い軽食とか? 何使ってるんでしょうね」
『高価なものが美味とは限らないが? むしろ逆の可能性も――』
「権利を行使したいだけだからいいのよ」
『……成程。ま、最悪は近くにグラもいるだろうしな』
どうせどれを選んでもタダ飯だ。ならば権利を。この時にしか使えぬ権利を。
駄目ならグラに押し付けよう。うん、それでいい。
――ビッグファイトの後はパーティだと、誰が言ったか。
「HAHAHA俺さ! ぶっ倒れるまで飲み明かすぜ!!」
言うは貴道だ。ジョッキ丸ごと一気飲み。豪快に飲み干して、次の瓶を開けようと。
「決戦お疲れ様! 団長とクラリーチェの撃破をサポートなんて危険な戦場だったけれど……皆パワフルで怖さなんて吹っ飛んじゃたなぁ」
貴道は存在感だけで威圧するオーラを。ハロルドとレオンハルトは剣技による連携を。
ルーニカは魔王っぷりに磨きがかかっていたし、ダークネスは長期戦を見据えてうまく立ち回っていた。そしてアメリアに至っては回復してもらった恩義がある。
「なんのなんの……私も、皆様の勇猛さに元気づけられる思いでしたわ。誰一人欠けることなく、無事に帰ってくることが出来て……本当に良かった……」
そんなアメリアだが。逆だと言い、皆の御酌に回っていく。
戦場で。あれほど己を勇気づけた皆の凛々しさが――今は、明るく楽し気な物に代わっている。そんな様子を見ていると、自然と己も幸せな気分になるのだからと。
「ははは、だが次の脅威も迫っているであろう。勝利の余韻に浸ってばかりもいられぬが、この時ばかりは羽目を外そうではないか――何より、酒も旨いからな」
「あぁ。だが……飲み比べなんぞするなよ。未成年の手前だ別の物にする」
「あー……ごめんね。本質的に、ちょっとお酒が苦手でさ」
ははっ、と苦笑するはルーニカ。酒も入って上機嫌なダークネス。されど、ハロルドが飲み過ぎは駄目だとシャットアウトを。酒が入るとどうしても騒がしくなる。酒の飲み比べ――は、負けん気の強い己にとってもやりたい気持ちはわかるが、先述したように未成年の手前。非常に宜しくない。故に。
「ほーう腕相撲という訳か……いい度胸だな。ミーとアームレスリングなんて明日以降の腕がどうなっても知らないぞ! HAHAHA!」
「むっ? 腕相撲か。だが俺の腕ではどうあっても本気とは言い難いのでな……レフェリーに徹させてもらおうか。構わんよな?」
やる気全開の貴道だが、一方のレオンハルトは銀色の利き腕を示しながらあっさりと。
「んーあんまり腕っぷしには自信ないんだけどなぁ……でも、ま。これもいい機会だ。乗るっきゃないよねぇ。やろうやろう」
されど反対に、ルーニカは気力を漲らせる。こういう時なのだ。バカ騒ぎをしても許されるであろう。どれだけ騒いでも。どれだけ叫ぼうと。――まぁ羽目を外し過ぎない程度にはしておくが。
「――では遠慮なく掛かってくるがよい! 悪の秘密結社「XXX」総統、ダークネスクイーン! どのような勝負であれ挑まれたのならば決して退かぬ! 媚びぬ! 省みぬ! 総統に逃走は無い事だ――ッ!!」
腕にオーラが纏わりつく。効果音も豪華だ。具体的な意味? ねぇよそんなもん。かっこよけりゃいいんだよ。誰だ見掛け倒しとか言った奴はぶっ飛ばすぞ。
「はははっ! 腕相撲ってのはただ力が強けりゃ良いってもんじゃねぇぞ! おら、神殿騎士団式腕相撲四八手を見せてやるぜ! これを解禁するのは何年振りな事か……!!」
「御二方とも頑張て下さいませー! 私は応援しております!」
王者の如き覇気を見せる貴道。漆黒を纏うダークネス。四十八手を極めた達人ハロルド。わー、とオーラの激突を見ているルーニカ。頑張れー! と全員を応援するアメリア。
「馬鹿騒ぎや腕相撲ではっちゃけている姿も元気一杯でいいね! うん!」
そしてルチアーノは。アメリアと同様に応援の側に回りながら指をキャンバス代わりに。
――後に絵を起こせるように、とだ。ラフスケッチの準備に抜かりはない。
「――完全勝利を収めた勇者たちよ。私は君たちの事が知りたい」
とはいえ、そうならばまずはこちらから、か。とラルフが呟き。
「私は……元の世界では魔種の彼らと似たような事をやっていた。人を侮り、嘲り、唆し……我が子同然の人類を堕落させようとしていた」
そうして敗れた程度の小さな存在だ、とラルフは語る。
決戦では戦友に恵まれ部隊の指揮を執る事に成ったが――
「――いやはや四苦八苦したものだ。とはいえ英雄諸君と共に轡を並べられたのは、光栄な事だったが」
こんな所だろうか、と彼は言葉を区切る。
……紹介の前半部分。かつての世での行い。真か嘘か。訝しむ者はいたが――
「さっ。ゴリョウ氏。君も此処にくるがいい――そして話を」
「おぉ俺の番かい? ご指名とあらば仕方ねぇなぁ」
――次に来たゴリョウに目が移った。ぶははっとエールを片手に持った彼は声を荒げて。
「見ての通りしがねぇオークやってるゴリョウ・クートンだ。あ、種族名は言わなくても分かる? やかましいわ! あーそれより俺がサーカス関連でやった事と言えば……」
ふむ、と少しばかり考え込んでから。
「――ゾウと殴りあったり新人共を指揮してみたりってくらいかな? なんだよ相手はサーカスだったんだからゾウぐらいいるだろう。ゾウ。おっ! そうだ貴族の説得の時に用意した『同意書』が役立ったのは密かな自慢かな!」
ノーブル・レバレッジの折の同意書――詳しくは長くなるので割愛するが。あれを案として取り上げたのがゴリョウだった。貴族へのスムーズな対応の一手となった策。有用であったのは間違いない――
「はい! と言う訳でそろろそ次かな? ならば私! 私だ!
異端審問官のジョセフだ! 初めて会う者はどうぞよろしく!」
そして次なる者が出てきた。鉄仮面を被ったジョセフは矢継ぎ早に言葉を捲し立て。
「あの戦場にて敵は我々に言った『要らないものなら殺していい』のかと。魔種の残虐性を咎めるが……こちらがやる事も殺しは殺し。『一緒』ではないのかと」
語るは決戦の内容だ。そう。殺しに違いなどある者か。イレギュラーズも、魔種も所詮は同じ穴の――
「今。私はこれに対してこう答える――知った事かッ!!」
狢、などと言わせるか馬鹿めが。
「敵に対して心を砕く者もいるだろう。それは君の道だ。君は往け! されど、無慈悲に屠るのが私の道だ。なぜなら私は――異端審問官なのだから」
例え誰ぞに咎められようと責められようと成すべきことを成す。
それが私。自己。ジョセフ・ハイマンという一個人である。
「おいーす! 飛び入りで悪いね。ニルだお。サーカス関連では命がけの鬼ごっこしたり……えーとアーベントロートの街で蜂起鎮める事もしたんだぬ。蠍の連中ぶん殴ったこともあったかにゃ?」
そしてジョセフと入れ替わりで入ったのはニルである。
彼女はサリュー事件以降の己の活動を、簡易的に。素早く語りのけ。
「あとは――え――決戦では破軍でぽこちゃかしてたんだったかにゃ。これから先依頼で一緒になる事もあるかもだけど、よろしくなんだお!!」
語り過ぎても疲れると、ニルは飛びのく。
これを機に――色んな事知り合いになれればよいと、想いながら。
「えっと……レイです。飛び入り、いいのかな?」
ニルもしてたし良いよ良いよ! さぁ語ろうか、と思うのだが。
「私はね――うん。どこにでもいる女の子だよ」
彼女自身はそう語る。『事実』はともあれ。少なくとも今、人の形を保っている内は。
「感染者救出で行動してたんだよ……頑張ったから、少しは皆を助けられたんじゃないかなって思ってる」
ただ、思う。今回の事件は終わったのではなく――何か、始まりに過ぎないのではないかと。
「もっと強くならなくっちゃ……もしよければ、強くなるコツ、教えて欲しいな」
ぺこりと頭を下げて順番を変わる。さすれば次に来たのは。
「我等ローレットの勝利に乾杯を! 我等イレギュラーズの生還に祝福を!」
こうして再び、武士に顔を合わせる事が出来た事、光栄に思います。とフォーガは恭しく頭を下げて。
「……なんと? 自己紹介、ですか? 私のような獣にそのような場を与えて頂けるのであれば……」
そうですね、と咳ばらいを一つして。
「私の名はフォーガ・ブロッサム、この身の丈から察しがつく通り、この世界に落ちてきた旅人です。無念ながら元々いた世界の記憶の殆どが剥がれ落ちているのですが……」
その中でも覚えていたのが『我々はフォーガの民』なるフレーズ。
そして、この世界に落ちてきて初めて見た木々――ブロッサムという存在。
「故、新しき名としてフォーガ・ブロッサム。
この名で、再びの生をこの世界で謳歌したいと思っております」
「――ん、へぇ。自己紹介、かぁ。丁度番が空いた?」
やったね、と呟くのはペッカートだ。壇上に上がりて。
「あー俺はペッカート。いわゆる『悪魔』だから皆の事不快にさせちまう事があるかもしれねぇけどよろしくしてくれると嬉しい。今回の事件なんだけど……わりぃ。あんま詳しくねぇんだ」
召喚されて直後。決戦をするというからホイホイついて行ったら――結構な怪我を負っていた。恐ろしい世界だと、あの時は思った物だ。
「これからは面白、楽しい、混沌ライフを満喫したいと思ってるから色々教えてくれな。まーだ来たばっかりだから、お手柔らかにお願いするぜ」
不敵に笑ってペッカートはどこぞへと。悪魔の如く――どこかへと。
「あー……俺の名前は葛城リゲル、まだ選ばれたばかりの新米だ。よろしくな、先輩方。なんというか……最初の一言としてこれでいいのかちょっと迷いはあるんだが――」
一息。
「俺は、弱いな――それが先の決戦を終えて感じた事だった」
全体としての結果は死者無し連戦連勝。これ以上ないと言っていい戦果だった。
だが己の周りだけに焦点を絞るならば完璧とは到底言えぬと感じて。
「救えたはずの命、そして取り逃がしちまった標的……チェネレントラ」
きっと歯がゆく思っている者もいる筈だ。己以外にも。
「済んだことだと、忘れられねぇ。誰かと話がしたくて吹っ切れたくて――この祝いの席に顔を出したのかもな、俺は……」
一人でいると、悪い方向にしか考えが向かぬからと――呟いて。
「むっ、俺も、か? 些か傷が癒えぬ身ではあるが……」
と、言うは銀だ。無理をしない歩き方をしながら。
「俺は銀……今は殆どの力をギフトに残すのみだが、かつての世ではそれなりに力のあるヴァンパイアの戦士だった」
彼も例外なくウォーカーとしての洗礼を受けている。今回の決戦においても、僅かながらに残っていた力を利用して感染者救出班の一翼を担っていた――のだが。
「その癖、最後の最後で道化師の見えぬ一撃を躱す事ができなかったのが悔しいな……次に似たような状況があれば同じミスはしないつもりだ」
そう言い、思う。あの頃の力があったなら、と。
「……不老不死であったならな。この程度の傷、すぐ立ち上がれたものを……」
力のあったウォーカーが誰しも考える道。昔なら、と。彼はその想いから抜け出し――かつての力を取り戻すことが出来るのか。それは、彼の今後の道だけが知る事であろう。
喧騒から少し離れた場所。そこに二人はいた。
「無事に帰って来れてよかったです……シキさんは怪我は? ありませんか……?」
ほっ、と肩の力を抜けたのはティミだ。隣にいるのはシキ。
大激戦だった。そういえばシキに傷は無いのか――と思えば、ふと見た手の甲に微かな傷を見つけて。
「僕達は、武器だから……怪我をしても、平気ですよ」
――治癒魔法なんて掛けなくても、いつか治るのに。
そう思っていれば。手に重ねているティミの手が、震えている。最初は微かに。しかし少しずつ大きくなって。
「本当に、良かった……」
大粒の涙が、手の甲に落ちる。頭が下がり、額が手にくっ付いて。
でもそれでも。振るえと涙は止まらない。良かったと。繰り返し言いながら泣く――リリーさん。
「……あ。舐めれば治る、と聞いた事があります。舐めましょうか?」
泣いているという事はどこかが痛いんだ。そうだ、どこが痛いんだろう。顔? 目? それとも――
「――舐めても」
そう思っていればリリーさんの顔が上がった。相変わらず、泣いたままだったけれど。
「しょっぱいだけですよ」
表情は笑顔で。目端の涙を拭っていた。大丈夫そうだ。
「…………変なリリーさん」
だけれども、嫌じゃない。
今度は私の頭が抱き寄せられる。そうして暫く。暫く心臓の音を聞いていた。
「お疲れさん、ミスター・ギルオス。アンタとの仕事はやりやすかったぜ。レディからのお誘いがなきゃ、どうだ。俺と一本あけないか?」
「やぁ晴明じゃないか。いいね、丁度誰かと飲みたい所だったんだ」
インフォーマー・ワークス以来だな、と同席する晴明。
どこからかかっぱらってきたのであろう赤ワインの蓋を開けながら。
「ああ、そうだ。あの時の香りなんだがな……ありゃあ魔術との組み合わせでもあるんだよ。具体的には――」
「おっと、いいのかい? それは企業秘密なヤツでは?」
「いいさ。アンタならな」
信頼に足ると見込んだ情報屋だからこそ、書面では伝わりにくい情報を伝えて。
「――次に繋げてもらいたいもんでね」
……期待に応えられるよう全力で励もう。そうギルオスは返答しながら。
「こんにちは、ホリスさん。一緒に如何ですか?」
と、そうしていたらもう一人来客だ。ヨシツネ。彼が持ってきたのはワインではなく牛乳。未成年故の選択であり。それは己用として、ギルオスにはお酌とばかりに酒を注ぎ――
「さぁ、良いですか? ホリスさん。杯に酒を注がれたら一気に飲み干すもの……と決まっているようです。ここはひとつ、ぐぐいっと。さぁ躊躇せず。ぐぐいっと」
「えええ? いや、だがね。これ結構後から来るヤツじゃ……」
問答無用。喉奥に叩き込んだ。そうして拍手喝采。
「素晴らしい――そして、杯は皆で飲みまわす者でもあります。さぁ! 共に宴会を楽しんでいる戦友たちにもドンドン回していきましょう!」
首根っこ掴んで。強引だなぁ! 咽ているもなんのその。杯を回すべくヨシツネは駆ける――
「大変だったけど大きな怪我がなくて良かった……
ムツと一緒に戦えると本当に安心できるよ。護ってくれて――ありがとう」
「僕も瞬がいて心強いよ。ありがとう」
言うは瞬兵と霧玄である。喧噪の場からは些か離れた別室――瞬兵は膝枕で霧玄を支えている。そうしたまま頭を撫で続ければ、リラックスするものだ。甘えるように霧玄はすり寄って……そのまま二人は口付けを交わす。
「そ、その……こ。これはお礼ね……う、うん」
ただしそれはたどたどしい物。慣れぬ。頬に熱を帯びる。初々しき一連。
「じゃぁ、俺からも……お礼ね……んっ――」
そうすれば起き上がって今度は霧玄の方から。首に手を回し、逃げれない様にした上で顔を近づけ――て。
ギフトを使う。人格を入れ替える、もう一人の零夜と共に。
交わした瞬間は、同一同時刻。
「……ふぇ?」
「――俺達からの『御礼だぜ!』」
はにゃっ!? と今度は耳まで真っ赤に。
邪魔の入らぬ空間で、二人――いや。三人だけの時間が過ぎていく――
『――我らイレギュラーズ側の死者0人とは素晴らしい戦績だったね! 目出度い事だ!』
命の炎を燃やすジェームズは魔種のブロウマンとの戦いを思い起こす。奴も炎の使い手として相当だったが――こちらを焼き尽くすには些か火力が足りなかったと。
『……まぁ、何はともあれ。こうやって美味しい食事を皆で頂ける事実に感謝しないといけないね? 此度の勝利に――乾杯!』
他の参加者にも声を掛けながら。彼は練り歩く。
時折頭部の炎に料理を投げ込み――いやこれは彼特有の食事法だ。栄養摂取と、言い換えても良いか。
とにかく食べる。咀嚼も必要ない故に投げ込んで。会話中? 別に口がふさがる訳ではないので問題ない。食べる。食べる! 食べる!! わーいかろりー! 高かろりだいすき――!
「……やれやれ。誰かと組んで動いてた訳じゃねーからな」
こういう時、一人では些か居辛いと話すのは勇司だ。
「さて。まぁ料理は山ほどあるし……適当に見繕ってみるか」
――さて。こういった集まりもいつぶりでしょうか。
「運命の歯車は回り始めている。それはもう、俺たちには想像できない速さで」
その一つの歯車が動きを止めて、脱落したようですが。
「しかし止まる程ではなく……些かの変化が訪れるのみ、ですか」
さて次はどんなものが見られるのか楽しみだと――ノインはグラスを傾ける。
如何なる者にも栄養は必要だ。肉体と言う意味ではない。心に、である。殺人鬼や阿修羅であろうと。神であろうと――心の潤いだけは森羅万象に必要なのだから。
「俺達も悦に浸ろうではありませんか、この賑やかなBGMを背に、ね」
笑みは沈む。闇の底に。闇の中に。
「……ふぅ。と。人が多すぎる所は、やっぱりちょっと苦手だな……」
人込みをかき分けて外の空気を吸いに来たのは、ヴァンさ。ジュース片手に。口に含みながら。
「大きな戦いだったから、みんな無事だったかなって思って祝勝会に来てみたんですが……」
――この賑やかさを見ると。怪我をしている者は相当数いるが、それでも大丈夫なのだなとホッとするものだ。皆元気が余っているようで結構結構。ならば自分は、この辺りで皆の話声を――喧噪を聞くだけで充分だと。空を眺める。
「申し訳ないけど――ちょっと、取るのを手伝ってもらえるかな?」
人混みの中、レンジーが声を掛けたのはシャルレィスだ。とても一人では手が足りぬと。
「ん、いいよ! 美味しい物一杯たべようね。何取る? ステーキとかフライドチキン?」
「あぁ何でもいいよ――うん、ありがとう」
ちょっと向こうに行こうかと空いているテーブルに席を取る。
レンジーは甘めのお酒を。シャルレィスはグレープジュースに――デザートも既に取ってきていて。
「さて、サーカスとの一件はひとまずは決着がついた訳ですが……サーカス惨禍の余波についてはこれからの対応になるんですよね」
ヘイゼルは言う。逃げたサーカスの魔種やラサから来た盗賊団の蠍、そしてなにより。
「……オーナーという単語。これは一体……」
詳細は不明だが、これで終わりでないという事だけは確かだ。
次があるのだろう。あるいは次の次も。
「――この席では忘れて、存分に飲み、喰らい、騒げばよいと思いますが」
その後は『サーカスに勝った』事は過去の事として。案件に当たっていく必要があるだろう――
「うーん。大きな怪我とかはしちゃったけど。それでも皆無事に生きて帰ってこれて。サーカスも壊滅できて、おめでたい、なの!」
とてもとてもめでたいことなの――! と、言うは鳴で。
「まだまだ大変な事はこれからも一杯ありそうだけど……でも、今は目一杯楽しむの――!」
ジュースで乾杯。賑やかな場に混ざろうと駆ける。
「――やれやれ。騒がしいのはあんまり得意じゃないのよねぇ」
意義は理解できるが、と退避してきたのは結だ。あまり多人数と話して騒ぐのは性に合わない。
「折角だからレオンやユリーカとは話してみたい所だけど……どうかしらね」
「ケケケ、やっぱ祝勝会つったら酒だろうに……あ~あ。お子様の結じゃあジュースが限界かァ?」
黙って。と言われるズィーガー。
ケケケと軽く笑うその様は、酒を飲めぬが故にからかうぐらいしかやる事がない故か。と、その時。偶々に会話が途切れたレオンとユリーカを発見し。
「お疲れさま。ちょっと御話いいかしら? 二人には日頃御世話になってるからお礼が言いたくてね……特にユリーカはちょくちょく色んな情報をくれるし、情報以外にも……っとこれは言わない方がいいわね」
「……おやユリーカ? この前のないないプラスでなんかしてんの?」
ひぃぃぃなにもしてないのですぅぅぅ、とガタガタ震えるユリーカ。
相も変わらず面白い様子だ――結はそう思いながら。様子を眺めて。
「なんて楽しいんでしょう!」
ミルフィは駆ける。子供らしくあちこち美味しそうな物、楽しそうな物に目移りして。見て、食べて、回って。それでもまだ物足りずイキイキとした状態でパーティに参加中だ。いずれ興奮が爆発するのではないか? という勢いだが。
「ハハッ――サーカスに勝利したことで各々よく盛り上がるもんだ。飯も酒もうまいし、程良く酔いも回って……ミルフィも、酒じゃあないだろうがそういう感じかねぇ」
「とっても賑やかな食事会。皆が凄く楽しそうで、見ているだけで嬉しくなりますね……」
リングの言葉に続いて。あの決戦は訳も分からぬまま戦い抜いたと弥恵は言う。無我夢中だったと。それ故にこの場にいていいのか些か恐縮しているが――
「でも、旅一座の皆との交流のいい機会ですので楽しみましょうか。あ、人前に出るのならお化粧に香水を――と?」
しっ、とリングから目配せが届く。何事か――と思えば視線の先にはヨタカがいて。
「……笑う。皆、皆が笑っている……」
懲悪足りえたサーカスの幕は下り、祝勝会の幕が上がった。戦場で感じた死、故成る肌刺す雰囲気は感じられず、皆が嬉の感情を持っている。
ヨタカは想う。食事も酒も程よく入って、自らの底に何かが芽生えていると。
それがなんなのか、今一つ口にはし難い。されど分かる。口の端が思わず上がっているのが。段々と。段々と、周りの空気に己が感化されているのが分かる。ああ、そうかこれが――
「『笑う』か」
皆と同じになっているのだと。胸の内が静かに猛る。
言葉にするは難しい。されど、このままではいられない。あぁ今こそに奏でるべきだ。宵闇のように暗く光るヴァイオリン――己が友を手に取って。星屑を、瞬かせる。
皆が楽しいと感じる、音色を。星の輝きを。さすれば。
「さぁ注目!! 今幻想で大人気の旅一座【Leuchten】の生演奏だ!! 今宵一幕限りの場ではあるが――華麗な踊り子のダンスも見てってくれ!!」
リングの声が一喝するかのように場に響く。同時、ミルフィも団長――ヨタカのヴァイオリンの構えを合図に、動きを見せる。その手にはタクト。待ってましたと言わんばかりに高き所に駆け上り。
「――ヨタカだんちょの笑顔は、士気があがるといいますか。なんともはや――これは来る。来るのです」
更に更にクァレも往く。馳走を頬張っていたが、団長の笑顔を見せられて黙っていられるものか。決戦では皆と肩を並べる事が出来ず、力になりたかったとの後悔があったが――霧散する。賑わう宴の席で。楽しいと満ちる、感情の波で。
来たのです! 見逃さないのです!
愛用のタンバリンを手に、己も加わる。歌の中へ。踊りの中へ。
あぁ――こここそが己のいる場所なれば!
ボクらが幻想に来た時、イレギュラーズの宣伝として、歌を披露した事がある。
始まりは歌から。だから、終わりも、きっと。
「歌で――ね!」
そして旅一座に続いて彼女らも声を張り上げる――舞踏、歌唱、ステージ技術――
己の持つ全ての技量をここに詰めて。高らかに謳い上げるのだセララは。
「行こう、ココル、セティア! 特にセティアの歌は大分エモいから――ボクがリードするね!」
「えもい? わたしのうた、えもい? えもい!!」
なぜか嬉しそうなセティアは、二人のリズムに合わせる形で歌って踊る。妖精のリュートを弾いて、奏でる流れは独特に。恥ずかしいので足もとの方を見るシューゲイズなエモめステイルだ。
されど、見えたのは胸。
「シューをゲイズできない……えもい……!」
えもいのです……! と、されば今度はシューゲイザー出来るココルが下を見る。
すとーん。すとーん。やっほい!!
「くっ……セティアめッ!」
ともあれ彼女もセララとセティアと共に。音楽のコード進行になんぞ詳しくないので、タンバリンを持って行く。マイ・タンバリン。激しく鳴らすぜマイ・タンバリン!
「私はココル~♪ 羽なしだったけど~♪ メリポで飛べた~♪ ラルラル~♪」
あれは飛ばされたの間違いでは? されど元気は良く、歌声はよく響く。
好きなのだろう。歌うのが。聞いている者皆に響いてくる。体の芯まで!
「行くのです。コード進行はC、G、Am、Em、F、C、F、G――トレモロとアルペジオでイントロスタート。そこからはハ長調のカノンコードで八拍リズムを」
ちょ、ちょちょちょ待って? セティアさん? 何? どうしたの? 何を食べたの?
「はっ――かっこいいところ、みせられた?」
つぎは私のオリジナル、と続けるセティア。聞いて下さい。新曲:いれぎゅらー
いれぎゅうー、らあずすごいーぱないーめっさぱないーぁぁあー♪
オーディエンスの空気感、違う。感じる。でもいい。だってえもいから。
「そう――大事なのは技術より、上手く歌おうとする事より『楽しく歌う事』。
みんなに楽しさをお届け!!」
そう。えもさをリードしつつ届けるのだ! 皆に感情を、楽しいという事を!
そして――数多の歌が会場に響き渡る頃――それは起こった。
「た、大変なのです! 依頼が思ったよりも早く終わって超特急で帰還した愛さんによる呪い、違う祝いの祝砲が!! ボクの用意していた大量のクラッカーに直撃して――」
ユリーカ・ユリカ(p3n000003)の発言直後。爆発が起こった。
連鎖する射撃音に似た――クラッカーの破裂音。
舞う。大量の紙吹雪が。それは皆に降り注ぐ。まるで、全てを祝うかのように。
「届きましたか私の祝砲――はいはいおめでとうございますおめでとうご・ざ・い・ま・すッ!」
「おっ、なんだ来れたのか? どうだここで一杯――乾杯でも」
無限乃愛(p3p004443)
イリス・フォン・エーテルライト(p3p005207)
「フハハ! 肉もいいが、刺身も上手い。もっと飯を持って来い!」
「皆の勝利に、乾杯♪」
ジーク・N・ナヴラス(p3p000582)
ノワ・リェーヴル(p3p001798)
「あ、それ俺の肉!! 返せ――! 食い物の恨みは恐ろしいぞ!」
「ふん――名前でも書いていたか? 何、邪魔をするというのなら大歓迎だ。これを最後の晩餐としてやろう!」
「ちょ、ちょちょちょ! 俺を間に挟んで決闘始めるなって! 待って! せめてこの肉だけは救わせてくれ――ッ!」
カイト・シャルラハ(p3p000684)
雷霆(p3p001638)
上谷・零(p3p000277)
「カイトと雷霆は何をしているんだ……いや大体予想はつくが――カイト。生きろよ。食材適正持ち故の宿命から逃げるんだ。負けたら料理にされても文句はいえんぞ……!」
「……あれはいいのか? 何、毎度の事? そうか……」
仙狸厄狩汰磨羈(p3p002831)
ウォリア(p3p001789)
「あはははは! いいね! 良いよ! もっとはしゃごう! もっと騒ごう!
――皆無事に、ここで会えたんだから!!」
プティエミニョン(p3p001913)
「ま、連戦連勝おめっとさん――て所か」
「じゃあね。ユリーカ。今度もまた色々よろしくね」
佐山・勇司(p3p001514)
琴葉・結(p3p001166)
「ん? え、なんですって!? 二次会もあるのですか!!?」
「わくわくしちゃうの――! 楽しみなの――!」
ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)
焔宮鳴(p3p000246)
「まぁ安寧は今の内に楽しんでおくべきかとは想います――我らアイオンは闇に見つめられ、かつ私たちも闇を監視し続けているのですから」
ノインウォーカー(p3p000011)
「――あっ。お疲れさまです……貴方も、外に?」
ヴァン・ローマン(p3p004968)
『ただし、水分はNGだ! カロリー変換効率が悪くなってしまうからね! どうせなら骨付き肉を!』
ジェームズ・バーンド・ワイズマン(p3p000523)
「誰一人かけちゃいないもんな……次もこうだと良いんだが」
サンディ・カルタ(p3p000438)
「みんな……いっぱいの、ありがとう!」
サンティール・リアン(p3p000050)
「お肉! お肉一杯ください! 吾輩おっきいから三倍は入るよ! え、赤色? それは関係であるよ!」
ボルカノ=マルゴット(p3p001688)
「わたしはレンジー。いつもは薬を売っているよ。
今回は後方の救援本部で救護をしていたんだ――よろしくね」
「はい! 私はシャルレィスです! 祝勝会が出来て――本当に、良かったですよね!」
レンジー(p3p000130)
シャルレィス・スクァリオ(p3p000332)
「ポーはこえかけてくれてありがとな! こうやってみんなと騒げて嬉し――サラダは嬉しくない!」
「皆さんと戦えたこと……とても、光栄に思います」
シラス(p3p004421)
ノースポール(p3p004381)
「――他のみんなも一緒に戦えて嬉しかったわぁ」
祈祷琴音(p3p001363)
「ルーキスも指示役お疲れさん、大変だったろ?」
「んー、目が回りそうだけど割と楽しかったかな」
ルナール・グルナディエ(p3p002562)
ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
「悪くはいけど――ちょっと怖いねこれ」
「ふ、ふふ……私は耐久性に定評のあるシエラ! 覚悟するのだ皆の衆――逃がさない!!」
「これで全員胴上げ出来ましたねぇ……え? ルルですか? いや、その。ルルはいいですから! いいですから、ちょっと待っ、わあああああ!!」
ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)
シエラバレスティ(p3p000604)
ルルリア・ルルフェルルーク(p3p001317)
「ふふふミアも天井にぶつけるぐらい、高くあげ……あげ、にゃ? にゃっ、にゃ! ふにゃぅぅぅ……!?」
「……大丈夫? これで届く?」
届かない。ミア・レイフィールド(p3p001321)
アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)
「さ、皆さんお疲れ様でした――あ、やっぱり私もです? いや、その胴上げはいいんですけどスカート短いからその。ぱ、ぱんつ見えちゃいます――! ああ――ま、待って!」
「ふぅーははははは! わらわの胴上げテクの餌食にしてやるのにゃ――!」
魅惑のくまさんぱんつ。リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)
次は君の番。シュリエ(p3p004298)
「なにはともあれ! みんな本当にお疲れ様だよ――!」
カシミア(p3p005160)
「騒がしいのは苦手なんだよな……ま、こういう催しが必要ってのは分かるんだが」
「タダ飯なんだし栄養ぐらいは取っておけよ。味覚云々はともかく栄養は必要だろ?」
「んふふ~、普段の呑みじゃなくて……こういう場って初めてだけど……楽しいねェ」
クロバ=ザ=ホロウメア(p3p000145)
アラン・アークライト(p3p000365)
ヨダカ=アドリ(p3p004604)
「大変な決戦でしたが……さてはて。またいつか、似たような事があるんでしょうかね……」
「その時はその時ですよ! 次も――勝てばいいんです!」
冬葵 D 悠凪(p3p000885)
秋嶋渓(p3p002692)
「もっとも確からしい事は、君もまた優秀な得意運命座標だという事。
これまでの冒険譚があれば是非とも聞きたいね」
イシュトカ=オリフィチエ(p3p001275)
「私ですか? 私は別の場所でけが人の治療をしていたので大した事はしていませんよ」
エリーナ(p3p005250)
「まぁまぁ、酒の席なんやさかい。細かいことはナシでええやないの。ほら、現役椿姫クラスならではのセクシーお酌したるから、グイッといき。そう、ええやないの! よっ、お大尽! もう一献!」
「ふふふ……こう見えても、お酒は結構強いほうなのよ?
あ、ちょっと待ってヒェッ! 熱燗は、熱いのは駄目よ……!」
ブーケガルニ(p3p002361)
氷彗(p3p006166)
「まだまだ夜は長い、楽しもうじゃないか」
「そうだな……今は、この時間を何より大切に……」
生方・創(p3p000068)
ラデリ・マグノリア(p3p001706)
「御二方はゆっくり体を休めてくれ。あぁ気休めだが、治癒魔法でも如何かな」
「お、ありがと! 助かるぜそういうの!」
エリシル・ルクレツィア・クラッド(p3p001810)
ジョゼ・マルドゥ(p3p000624)
「――あっ。このお魚美味しいわ。もう一皿お願い」
アクア・サンシャイン(p3p000041)
「残党も根こそぎ始末してやるからな……覚悟しておけよ……!!」
ルーティエ・ルリム(p3p000467)
「――はい! 私の話はこの位。皆の話も聞かせて貰える?
私だけ話すとかアレじゃない……ほら、次っ!」
九重竜胆(p3p002735)
「アタシは強大な敵をぶっ飛ばしてアタシの冒険譚に加えてやる為よ!
それに色々暴れてくれたし……やられたらやり返す! そんだけよ!!」
ルーミニス・アルトリウス(p3p002760)
「次なる戦場はどこに成る事か! 昂ってたまらないわ!」
咲花・百合子(p3p001385)
「皆! また共に戦える時があればよろしくね!!」
「ええ。いずれまた、どこかの戦場で」
ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)
ノブマサ・サナダ(p3p004279)
「お互いの無事と命がある事に感謝――てな。さ、宴をもう少し楽しむか」
Briga=Crocuta(p3p002861)
「レオン~奢りありがとなぁ~」
「あれ、酔いつぶれている? …………誰も見てないよね? ちょっと解放がてら顔に落書きを……」
ヨルムンガンド(p3p002370)
アリソン・アーデント・ミッドフォード(p3p002351)
「今回、少しでもお役に立てたなら幸いだけど……これからどうなるかなぁ。楽しみの様な不安の様な」
「……やれやれ。皆、騒ぐのが好きですねぇ……」
雨祇 - N123(p3p005247)
すずな(p3p005307)
「あぁ楽しいね――『次』も誰一人欠けることなく、酌み交わせりゃあ最高だ。なあ?」
「おぉい。エールの酒樽を一つ確保してきたぞい。まだまだ終わらんじゃろ?」
「今日くらいは朝まで飲み明かしてもいいだろうよ。付き合うぜ」
グドルフ・ボイデル(p3p000694)
ゲンリー(p3p001310)
亘理義弘(p3p000398)
「皆、残してもいいけど持ち帰るなよ……いいな、絶対だぞ。絶対だぞ!」
「フリかな?」
キドー(p3p000244)
オロディエン・フォレレ(p3p000811)
「あんの頭から花が生えてそうな王様も意識変わりますかーサーカス云々より、そっちの方が驚きですよね。やれやれ。この国も一体これからどうなることやら」
エマ(p3p000257)
「シグ、もっと強くなりたいな……」
シグルーン(p3p000945)
「悶える痛みですが……反撃が無いとでも思いましたか!! 喰らえレモン汁反撃攻撃――!!」
「!? だれ! 目潰し返しするのだれ!! やめて!! アアッ!! 目が、目があぁあ――!!」
刀根・白盾・灰(p3p001260)
ロク(p3p005176)
「あら~レオン君浴びてないわね~~そぉ――れっ!!」
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
「またいつか、同じ顔がほころぶ様子を見られますように……」
「さて――酒の肴は他にもあるし、なんだったら芒さんが焼いてみようか。タレは無いから塩だけどね」
沁入礼拝(p3p005251)
梯・芒(p3p004532)
「……しかし、グラは元気ですよね」
『痛みよりも食欲が勝っているのだろうな』
「……た……すっ……けて……」
『りょ~かいだ、我が契約者殿。人の少ない場所を見繕ってやるよ』
オルクス・アケディア(p3p000744)
カウダ・インヴィディア(p3p001332)
『……』
「あはは、あんな思いは二度と御免なのでぇ、気を付けますよぉ」
「ディアさんもありがとう!動くの意外にきつかったので!」
『……我への負担は許容するが自身の身体は大切にするように』
レーグラ・ルクセリア(p3p001357)
ストマクス・グラ(p3p001455)
「……ふむ……平穏……ね……」
『少々騒がしいがそのために行動したのだろう?』
『音頭をとった者たちの努力の成果だろうな』
「そりゃそうか、ほっといて事態が好転するなんてありゃぁしないだろうし……祝勝会用の料理も作ってみようかねぇ。偶には」
コル・メランコリア(p3p000765)
ブラキウム・アワリティア(p3p001442)
「我ながら少し無茶はしましたがそれに見合うものは手に入りましたからね」
『平素、教会に通ってくる人間が増えたのは確かだな』
「しっかし、スペルヴィアはともかくイリュティムまで手酷くやられるとはね」
『聞くところによるとアケディアもらしいな』
「確かにイリュティムがっていうのは珍しいけどイーラは人の事は言えないでしょう?」
『怪我人同士で不毛な喧嘩はしないように』
アーラ・イリュティム(p3p000847)
コルヌ・イーラ(p3p001330)
サングィス・スペルヴィア(p3p001291)
「ご主人様~まだ、まだお願いしますぅ~♪」
「やぁれやれ。ま、今日はな特別だぞ――」
小鳥遊・鈴音(p3p005114)
サージェイト・ロゴス・カーネイジ(p3p005457)
「終わったとはいえ、これから色々後始末も残っているんでしょうけどね……」
アグライア=O=フォーティス(p3p002314)
「あ、ありがとう……」
「どう『いたしまして!』」
星影瞬兵(p3p004802)
星影霧玄(p3p004883)
「二人とも――これからも宜しくね!」
「ええ、宜しくお願いします。次もまた、皆無事に」
「何かあってもまた――皆で、乗り越えよう!」
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
Lumilia=Sherwood(p3p000381)
アリス・フィン・アーデルハイド(p3p005015)
「……これからも、仲良おしてね。妖二人、似た者同士」
「はい是非にも――これからも、よろしくお願い致します」
蜻蛉(p3p002599)
鬼桜雪之丞(p3p002312)
「全く……世話のかかる相棒だねぇ……」
「ふへへ~……ヨランダさぁ~ん……」
ヨランダ・ゴールドバーグ(p3p004918)
オーガスト・ステラ・シャーリー(p3p004716)
「――いい歌だねぇ。輪唱でも披露しようか。なーに喉は母親譲りでね」
天之空・ミーナ(p3p005003)
「良き歌、良き演奏だ……むっ、いかん、髪が逆立つ……」
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
「……あ、ところでこの料理? 美味しい? 本当に? 食べちゃった? ところでさぁ……ジャコビニの死体って巨大だったよねぇ……」
「……ん? なんだって? え、まさかこの肉って……」
「――って、アト貴方ぁ!?」
冗談だよ! アト・サイン(p3p001394)
レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
「……ライセルさんも、頑張りました」
「ふふ……ありがとう」
セレネ(p3p002267)
ライセル(p3p002845)
「お酒……じゃなくてジュース飲みますか? 注ぐぐらいならできますけど――多分」
「あ、大丈夫ですよ! それよりチーズありませんかチーズ。好物なんですよね!」
クーア・ミューゼル(p3p003529)
雨宮利香(p3p001254)
「これも折角できた縁だ――これからも仲良くしてくれよな!」
宗高・みつき(p3p001078)
「我々は勝った――次も上手くやりたいものだ」
「でもまずは傷を癒してから、ね」
アレフ(p3p000794)
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
「……わかってると思うけど。太るよ?」
「えへへ。今日くらいは、特別だからいいのっ♪」
巡離リンネ(p3p000412)
巡理リイン(p3p000831)
「負けた者は勝った者にジュースか酒を奢る! それでいいな!!」
「無論だ! 全てをハイバランスに兼ね備えた超人種に死角はない――ォォォオオ!!」
「ぬかせェ! 何が超人種だ、俺を舐めるなよォォ――ッ!!」
「それでは――レディ――」
「……なんだか後片付けが必要になりそうな勢いだなぁ」
ダークネスクイーン(p3p002874)
郷田貴道(p3p000401)
ハロルド(p3p004465)
レオンハルト(p3p004744)
ルーニカ・サタナエル(p3p004713)
「鋭気を養えばこそ。仲間がいればこそ――
また戦場へ出陣する勇気を得て、戦いを続けられるのでしょうね」
「そうかもね……だからこそ。今この瞬間は楽しまなきゃ、ね!」
アメリアアレクサンドラ(p3p004496)
ルチアーノ・グレコ(p3p004260)
「一つ乗り越えたが、それでもイレギュラーズの役目は山積み……長い戦いになるな」
シェンシー・ディファイス(p3p000556)
「……美味い飯だけ喰いに来たつもりだったが。楽団、か――中々悪くねぇ音色じゃねぇか」
ティバン・イグニス(p3p000458)
「次の機会、今度は俺が護ってやるさ。任せとけ」
「ふふ、次はじゃあ、期待しておりますね!」
シュバルツ=リッケンハルト(p3p000837)
アマリリス(p3p004731)
「QZはデザート全種類制覇か……ってえ? 一口って――ぁむッ」
「……こうやって……騒ぎながら食べるって……あんまり経験ないから……新鮮だな……たまには……こういうのも……いいね……んっ……ケーキ、美味しい……」
ポテトチップ(p3p000294)
グレイル・テンペスタ(p3p001964)
「みんないっぱいお疲れ様――! てゃ――! ぺちぺちぺち――!!」
「負けないぞ――! 私も皆とハイタッチする――! うお――ぺちぺち――ッ!」
ノーラ(p3p002582)
クィニー・ザルファー(p3p001779)
「皆さん――ありがとうございました!」
ユーリエ・シュトラール(p3p001160)
「これからもみんなで、色々一緒に過ごしていけたらっ!」
セリカ=O=ブランフォール(p3p001548)
「どうだ? ほら、爪楊枝と紙を合わせて作ってみたんだよ。勝利の旗、さ」
「おぉ上手でございますなぁ。お見事ッ」
シレオ・ラウルス(p3p004281)
春夏秋冬明日(p3p002871)
「祝勝会、か。ま、もし次も何がしかの出来事があっても――こうであれたら、いいんじゃないかね」
「――いつかまた。次も皆と会えたなら」
マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)
リゲル=アークライト(p3p000442)
「では、出会いに乾杯を」
「ファンドの話は覚えておくよ、いっひひ。機会があったら、ね」
「では……乾杯ー、ですッ……!」
新田寛治(p3p005073)
燕黒姫喬(p3p000406)
レウルィア・メディクス(p3p002910)
「Foooo! 祝勝会よッ!! シャ・ン・パンファーイトッ!!!」
「あぁティラミー様……あぁ、ああなんて悲惨な事に、あ、あ――あー……」
タルト・ティラミー(p3p002298)
マナ・ニール(p3p000350)
「ナーちゃんはね、サーカスのケモノさんたちをたくさんアイしたの! サイコウだったよ!」
ナーガ(p3p000225)
「お互いの無事に――勝利に――乾杯」
「はい――乾杯!」
アルテミア・フィルティス(p3p001981)
シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
「この感情を抑える事は……不可能……もっと、皆と楽しみたい……」
ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)
「改めて、おつかれさまー……!」
「はい、シオンさま! お疲れ様でした!」
竜胆・シオン(p3p000103)
アニー・メルヴィル(p3p002602)
「まだいけるわよね?」
「おぉ当然だろ――そら、もう一口だ」
ジルーシャ・グレイ(p3p002246)
十夜縁(p3p000099)
「たのしいパーティに、なるといいよねっ!」
Q.U.U.A.(p3p001425)
「今回は上手く出来た――これからも、人の為に成る事をしていきたいなぁ」
百目鬼緋呂斗(p3p001347)
「私の役目だから……私の、罪滅ぼしだから。頑張るね、お兄ちゃん」
メルナ(p3p002292)
「仕事に成功してハイタッチ――なんて。前いた所じゃなかったから……楽しいね」
「ふぁあ……少し酔いが回ってきたかな。丁度いい頃合いか……」
フルート(p3p005162)
アオイ=アークライト(p3p005658)
「こういう場は面白い方が良いもんねぇ。さ、まだまだこれからさ!」
「ここは舞台に非ず。広くはありませんが――それでも技術の限り、盛り上げて見せましょう」
「楽しい! をモットーに、にぎやかで楽しい演奏になるよう頑張ります!」
「さぁさぁ皆のもの、暴れまくろうじゃないですか!」
Ring・a・Bell(p3p004269)
津久見・弥恵(p3p005208)
ミルフィモノフォニー(p3p005102)
クァレ・シアナミド(p3p002601)
「あぁいけないいけない……考え事ばかりでは。折角こんなに美味しい食べ物が揃ってるんですもの。今は目の前に、ね」
アニーヤ・マルコフスカヤ(p3p006056)
「さて――共に戦った者達の所へ。歓談にでも混じるとしようかのぉ」
ルア=フォス=ニア(p3p004868)
「では、改めてよろしく頼む。イージア」
「改めてよろしくお願いします……エリシア」
エリシア(p3p006057)
イージア・フローウェン(p3p006080)
「大規模召喚以降ローレット初の偉業と聞いたけど……
同じ舞台に立てなくても、いつかその現場を見てみたいですね……自分も」
鼎彩乃(p3p006129)
「たしか骨も欲しがっていたような……余っている物があるでしょうか」
エウラリア(p3p005454)
「いいですね、こんな日は……ええ。失いたくない物です。そう、もう誰も、何も失いたくはない……」
ミラ・エイノス(p3p005136)
「……本当だ。しょっぱいですね」
「ふふ――ほんとに、舐めたんですか」
シキ(p3p001037)
ティミ・リリナール(p3p002042)
「フフフ。フッ、フフ、え、なんだって? あぁまだ全然酔ってないさ! ところで君はなんで分身」
「おーい。誰か彼に水を持ってきてくれー」
クリスティアン=リクセト=エードルンド(p3p005082)
クレッシェント・丹下(p3p004308)
「……楽しい時間程、過ぎるのは早いものだね」
「……ふふ。騒ぎは苦手だけれども、偶には……悪くない、もの……だね……」
ディジュラーク・アーテル(p3p005125)
宮峰死聖(p3p005112)
「これからもローレットの為、貴方の為に頑張るわ。見ていて欲しいのだわっ!」
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
「もぐもぐ。母様、私は元気です」
「幻想だけじゃなく、他の国も行くことになるんだろうね、うん……今からとても楽しみだ」
最上・C・狐耶(p3p004837)
風巻・威降(p3p004719)
「甘い物など、折角なので頂きましょうか……お嬢様にも分けてあげられれば良かったのでありますが」
竜胆碧(p3p004580)
「まだだ。これだけじゃ当然足りねぇ……そうだな。次は魚介のスープでも――」
「ふぅ……腹八分目っていう所かな……」
Morgux(p3p004514)
神埼衣(p3p004263)
「みんな笑顔で、素敵ねぇ~。やっぱりこうでなくっちゃ~」
レスト・リゾート(p3p003959)
「ふむ。これは、確かに中々。さりとて次は甘めのもので……」
ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク(p3p003593)
「……この出来損ないに教えてくれ」
リジア(p3p002864)
「っと、これも良さそうなつまみですね。こうして盛り付ければ……よし」
弓削鶫(p3p002685)
「パフェに、パイに、ケーキに、ドーナツ……より取り見取り。流石幻想ね」
「……ま、そこらの吟遊詩人のほら話よりは聞きごたえがありそうですね……」
「へぇ。そんな激戦だったのか……ハハッ。ならその傷は勲章って所か」
シャルロット・D・アヴァローナ(p3p002897)
クローネ・グラウヴォルケ(p3p002573)
キーリ(p3p003303)
「サーカスは片付いたけれど、幻想国内の情勢はこれからどうなる事かな」
「……次は一体、何が起こる事やら……」
ミニュイ・ラ・シュエット(p3p002537)
浅木礼久(p3p002524)
「レェオン! 二次会にもいこう、二次会! あるらしいぞ――!」
「二次会もあるとか。やれ、全く。気概があると言うのも考え物です……」
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
クリム・T・マスクヴェール(p3p001831)
「ん、美味い。あとは、スイーツ類はどこかな……? 探さねば……」
「全く。良き勝利、良き日であったことだ」
メルト・ノーグマン(p3p002269)
ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)
「え、ああ気付かれましたか? ……いえいえ別に。私介抱していただけでして。ええ――他意はありません。それより無理はせずそのまま眠られては。そうそう、あ、違います。さっき同じポーズで――いや別に他意は」
エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)
「御代、わり……」
「この先。ローレットは、拙者は、どこへ向かうのでござろうか――柄にもなく楽しみでござるよ」
ナハトラーベ(p3p001615)
河津下呂左衛門(p3p001569)
「ほんの些細な不安さえあれば、気を緩める事が出来ないとは……全く、やれやれだ」
「――あぁ。考える時間はあるんだ。今は、まだ」
楔アカツキ(p3p001209)
ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)
「うめぇ! でも、まだだ……もっと、もっと喰っておかねーと……!」
ルウ・ジャガーノート(p3p000937)
「……あぁ。本当に良かった。僕はまだ、この景色を見ていられる」
グレイ=アッシュ(p3p000901)
「ま、なんにせよ気の滅入りそうな事件も終わったし、これから楽しそうなの多くて嬉しいよね」
「うむ、言いたい事は言えた――後は、ゆるりとな」
イリス・アトラクトス(p3p000883)
リュグナー(p3p000614)
「ラララ イレギュラーズ 幻想にやってきた 正義の味方 心を一つに 国をまとめ 悪いサーカスやっつけて世界を救う」
「正義の味方~! 心を一つに~」
「ラララ イレギュラーズ これからも 応援よろしく ねっ です!」
セララ(p3p000273)
ココル・コロ(p3p004963)
セティア・レイス(p3p002263)
「未知とは怖きモノ……次は、どんな者達が何をしでかすんでしょうかね」
「さぁ暴飲暴食も今宵は尊く。『我等』が物語を示そう記そう! 御歴々よ笑い嗤って幕を迎えたまえ!」
フロウ・リバー(p3p000709)
オラボナ=ヒールド=テゴス(p3p000569)
「皆の健闘に――それと、散って逝ったサーカス団員やその配下達にも」
「英雄には喝采を。そんな英雄達と轡を並べられたこの日の幸運に感謝を。そして、この一時に」
乾杯――マルベート・トゥールーズ(p3p000736)
伏見行人(p3p000858)
「ミスター・ギルオス。大丈夫かい? 向こうで飲み直すか?」
朝長晴明(p3p001866)
「さぁさぁ一献どうですか! ぐぐいと! さぁぐぐいと!!」
ヨシツネ・アズマスク(p3p004091)
「ボクは決戦には行けなかったから……皆の武勇伝、あれば聞いてみたいな!」
「んっ――そうだな、個別の戦果でいうとオレは秋さんと一緒だったんだが……いやいや笑える事に、陽動の筈のオレ側に主力が来る形でな! 大丈夫だったかって? ハッ、勿論乗り切ってやったさ!」
「いやーでもシュトロゼック一家としては集まらずにバラバラ戦ったけど、各戦場の結果が繋がって大勝利となったのは良かったねーおかげこうして高い酒が飲める」
「全く、この調子で次も快進撃って感じで行きたいね……まだ色々と解りかねてる部分もあるしな」
ヒィロ=エヒト(p3p002503)
リオネル=シュトロゼック(p3p000019)
クロジンデ・エーベルヴァイン(p3p001736)
九条侠(p3p001935)
「ふふ。ちょっと食べ過ぎてしまいました」
「腹八分目ぐらいが丁度いいわよ? ――私はまだまだ足りないけれど」
クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)
秋空 輪廻(p3p004212)
「……」
シェリー(p3p000008)
「人の心は脆いわ。いずれ私達の中からも……
悪しき蛇の誘惑に負け、禁断の実を食べてしまう者が出ないとも限らない……」
暁蕾(p3p000647)
「あら。また人が集まって……ふふ、ユリーカさんは人気者ね」
「つーわけで! そろそろボチボチイレギュラーズの戦力アップを兼ねて! 我らが故郷ゼシュテルの闘技場へ皆様をご案内したいんスけど、どうッスかね!? オーナー!」
鏡・胡蝶(p3p000010)
スウェン・アルバート(p3p000005)
「ま。今回はホント助かったよ。ここは俺持ちだ。優しいオーナーに感謝したまえ!
――おい、誰だ今俺を便利なおっさん扱いした奴は!!」
レオン・ドナーツ・バルトロメイ(p3n000002)
誰もが望んだ紙吹雪。光り輝く、星の様で。
これから先――未来が如何であろうとも。例えば巨大な悪意が潜んでいようと。
今日、この瞬間に嘘はない。
誰しもの勝利を祝った今日この日は。確かに此処に存在した。
あぁ今宵の事を言うなれば、これをおいて他はあるまい。
今日この日は。きっと君達の――カーテンコール。そう!
『ローレット・カーテンコール!』
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
次もまた。みんなと一緒に祝えたら。
はい、ありがとうございました!!
白紙の方以外は全員描写したつもりです。
もし、プレイング書いたのに! という方がいらっしゃればお知らせください。
ご参加どうもありがとうございました!
GMコメント
茶零四です。この度の勝利、真におめでとうございます!!
という訳でローレット主催の祝勝会が開始されました。どうぞお楽しみください!
●達成条件
祝勝会を楽しむ!
●プレイング記述
下記の注意を必ず守り、プレイングを書いて下さい。
一行目:下記シチュエーションから一つ選択 例:【食事】
二行目:同行者名(ID)(もしくは【グループ名】タグ。無い場合不要です)
三行目以降:自由なプレイング
●シチュエーション
・【食事】
食事をメインに楽しみます。がやがや楽しむ貴方に! 個人でもご友人とでも!
・【談話】
軽い飲み物を楽しみながら。ちょっと静かなシチュエーションが良い貴方に。
・【その他】
シナリオ趣旨に明確に反していない限りはご自由にどうぞ!
●その他
お酒出されてますが未成年の方の場合カットしたりジュースになったりします。
本シナリオではステータスシートのあるNPCはお名前を呼んでいただけましたら登場する可能性があります。
ステータスシートのあるNPCに関しては『ざんげ以外』でしたら登場が可能です。
それでは、良い祝勝会を!
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