シナリオ詳細
<YcarnationS>楽園の東側
オープニング
●???
――あなたは、私を■■■と呼ぶのですね――
――それでも、いいのです。それが、あなたの支えならば――
――命なんて、誰が価値を決めるものでも、ないのですから――
●会議Ⅰ
ラサ、そして深緑で発生していた幻想種の誘拐事件、通称を『ザントマン』事件と呼ぶそれはラサの商人オラクルが真犯人であると判明した。
オラクルによる離脱宣言を受け、混乱を極めたラサ。オラクル派の掃討作戦で打撃を与える事が出来たが、其処には『謎の幻想種』が姿を見せた。
「カノン・フル・フォーレ」
その名を口にしてから、フランツェル・ロア・ヘクセンハウスはチェス盤に駒を一つ載せた。彼女の名前より『血縁』を厭でも認識させられた気がしてフランツェルは小さく息を吐く。
カノン――彼女はオラクルの力により制御されていた『グリムルート』の力を上書きし、囚われの幻想種を連れ去ったのだ。
それも、深く昏く悍ましい狂気を振り撒きながら。
「ザントマン、というのは彼女の事だろう」と眠たげにそう言った一匹のカピバラ、ジャック・ロカタンスキーはさも詰らなさそうにそう言った。
魔種ハンターを自称する彼にとっては相手を狩ることができれば現状は関係ないのだろう。
「ええ。その様に見えるわね。それで、彼女が行きついたのが『砂の都』」
「砂の都ってのはあの寓話にもある?」
行商人であれば見た事もあるのだろうか。ジョシュアがそう告げた言葉にフランツェルは「よくご存じで」とだけ返した。氷に特化した魔法剣士である彼は「実在してたのか」と驚いたように息を吐く。
「それってのはどういうもんなんだ?」
『白牛』マグナッド・グローリーの言葉にジョシュアは緩く頷き、商品の中から寓話集を取り出した。
――一夜にして砂の海に沈んだ古代の都。今は朽ち、誰もその場所を知ることはないとされた幻の場所。
「幻……な。それが今、目の前にあるってんだ。そこに魔種がわらわらと集結してんだろ?
『赤犬』達も挙兵するってんなら老いぼれちゃいるが、現役の俺達が指咥えて『待て』されてる必要もねぇってわけだ」
豪傑たるマグナット。面白くなってきたと自身の傭兵団『白牛の雄叫び』の挙兵を高々と宣言する。手にしたエールが毀れたがそんなことはお構いなしだ。
「仕事なら、俺達も協力するさ。パカダクラ騎兵隊が居た方が役に立つ事もあるだろ?」
ライナルト・レーベルは人好きする笑みを浮かべた。迅速果断が主義たる彼はここで挙兵について悩むことはなかった。悩む時間も無駄だと言う様に『戦場に向かおう」と彼がくるりと振り返る。
一匹のカピバラに二人の傭兵団の団長、そして傭兵の魔法剣士を前にしてフランツェルは「さあ、作戦会議といきましょう?」と息巻いた。
●『楽園』
美しき緑、生き生きとした枝に指先を這わせ、声を震わせる小鳥たちのさえずりを聴く。
優しい■に、幸福を形にしたその場所が楽園であった。
その楽園より逃げおおせる様に出奔した一人のおんな。
彼女が『楽園の東側』に見つけたのは彼女だけの狂った楽園であったのかもしれない。
始祖。『■■■■』を市井に流した檻の中の乙女。彼女が立ったその場所こそが『楽園の東側』であり、その聖地(らくえん)なのだ。
そんなことを大使的にして居たわけではないのだとカインは詰らなさそうに片翼の天使が掲げられた祭殿の中に居た。砂に埋もれながらもその場所はひっそりと存在していたのだ。
「ここは……?」
「ああ、エリー。『彼』が来る場所だよ」
柔らかに、そして、狂った色を乗せてカインは振り返った。エリーと呼ばれた片翼の飛行種はその言葉に歓喜するように手を組み合わせる。
「『つい』に!」
「そう。僕は最初からそれだけが目的だったんだ。誰が試練を超えようと、誰が思惑巡らせようと。僕らは手を繋いでいかなくちゃいけない場所がある」
教祖カインの目的は只のひとつだった。
――『三人で行く』こと。
その為には母であり姉であったエリーの存在は不可欠だった。欠けたピースであるエリー。瓜二つの乙女を捕らえ、その身代わりにしたことさえカインの思考からは抜け落ちた。邪魔なパーツも切り落とせば三人である事には変わりないのだから。
(『エリー』。その役目を果せば、私を見てくれるのでしょうか――?)
それは一種の偏愛だったのだろうか。
(アベル、カイン、エリー。その三人での『楽園片道切符』を手に入れれば貴方は――)
恐らく、彼女に取っての世界の全てはカインであり。彼という檻(ゲージ)のなかで夢を見てるだけなのだ。決して、醒める事のない夢を。
「さあ、彼を招こう。ああけれど、邪魔立てする障害(みんな)はどうしようか」
「……必要ないのなら、捥いでしまえばよいではありませんか」
祈るように囁いたエリーにそれもそうかとだけカインは笑った。
●『救済』
ミリィ・メリィ・マリィは神の徒であった。信心深き敬虔なる乙女は『惨たらしく殺された魂を哀れみ救済してくれる』と信じ込んでいた。
そうして、殺した。ひとり、ふたり、さんにん。
そうして、そうして――天義という国より逃げおおせた彼女は『■■■■』という本と出会った。
下らない内容であった。自死さえ許されるという。しかし、死が試練という事には彼女は共感した。
――なら、全てを殺し尽くせばよいではありませんか。
丁度良い切欠であっただけだった。惨たらしく来る者全てを殺してしまえばいいのだ。
首輪のついた女たちが死にたいと嘆くならその首を捻り、息があるうちに惨たらしく飾ってやればいい。
その宗教を信ずる者たちも特異運命座標という彼らがじっくり甚振った後に止めを刺してやればいい。その時もデコレーションはお忘れなく、だ。
周囲を覆う砂嵐がきっと彼女を隠す事だろう。ミリィ・メリィ・マリィの傍で響いていた呼び声は深く、砂の精霊王にも呼応した。この土地固有の精霊たちであり王という存在は多数いるのであろうが、それさえも愉快だった。
砂のカーテンに覆われ視野を失った女たちの眼球を繰り抜いて美しい顔を赤く染め上げてやればいい。
ああ、なんと、なんと、なんと愉快ではありませんか――!
●会議Ⅱ
ラサの傭兵たちの許へと広まった伝達は出来うる限りの砂の都での対処であった。
すべてが集結していくのだ。
カノン・フル・フォーレが、奴隷を奪われた商人が、始祖の楽園を目指す信徒が。
魔種の呼び声反響するその場所は何処までも危険で、そして更なる脅威を呼ぶ事だろう。
フランツェルは云う。
「楽園の東側の信徒は大集結しているし、魔種の呼び声の反応を受けた精霊たちが暴れてることも確認されたわ。
私って、自分の行動は自分で決めたい派だから呼び声ってノーサンキューなのよね。
後死ぬときも誰かにこうだって指定はされたくない方。指図されるって厭じゃない?」
冗談めかした新緑の魔女はカノン・フル・フォーレの名を口にした。
熱砂の恋心は死に至るほどに深く、致死量の愛を齎した。
それは『楽園の東側』のエリーという少女も同じなのだろう。
致死量の想いが心から漏れた時、人は其れに溺れ、狂ってしまうのだから。
「此処で負ければラサも深緑も飲み込まれるわ。どうか、みんな、力を貸して頂戴」
己の意志と関係なく傀儡のように躍る乙女たちの救済も必要だ。
救える命は無数存在している。
見捨てる事無く、全てを救い上げることが難しいことは承知の上だ。
それでも尚、『可能性』にかけたいのは間違いではないだろう――
- <YcarnationS>楽園の東側完了
- GM名夏あかね
- 種別決戦
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2019年11月04日 23時10分
- 参加人数252/∞人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 252 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(252人)
サポートNPC一覧(2人)
リプレイ
●
砂の海は全てを飲み喰らうかのようであった。
砂の都――フェアリーテイルに語られた幻想――はちっぽけな廃墟の様にも思えた。
しかし、その場所にも彼らは居た。救えるならば手を伸ばし、求めるならば掴むが為に。
「さてさて、古の都ってやつかな。それにしては随分とお客さんが多いみたいだけど……自由にさせておくのもあれだし制圧していかないとね」
鳴り響く晩鐘は慰みであり、裁きであり、宣告。リンネは己の生命力を以て仲間達を強化する。眺めるだけで千客万来。大盛り上がりだとでもいう所か。
「ホエールチャペルの突入も済んだし、このまま付近を確保しようか。まあ簡単ではなさそうだけどね!」
公はシスターメランとティーチャーアリコの武運を願いつつ軍馬を駆る。高圧水流を以て突入口を開けば、その眼前には敵襲に備える様に幻想種が待機していた。
「楽園ね」とアクアはそう呟いた。狂気の気配の濃いその場所に、一人の幻想種が立って居る。
魔種ルベリア。砂塵舞うその場所に立って居る彼は一つ、特異運命座標を退けろと首輪を付けた幻想種達を戦場へと飛び出たせる。
『楽園の東側』と呼ばれるその宗教は、端的に言えば死こそ救いであるという考えを掲げている。魂が楽園に向かうが為に死という試練を乗り越えよと『■■■■』を解釈したところから始まったのだ。
ルベリアという少年は両親による度重なる暴力により楽園に縋ることしか出来なかったのだ。そう、彼にとって『この教え』こそが救いであるとアクアは知っている。
「……魔種であるが故に、私たちではあの子を救うことは出来ない。
けど、あの子がどうこうは関係ない。ここを制圧するわ」
ここを失えば『今を生きている人たち』を護れない。
「制圧する? 命ばかり大事にするお前らが!」
ルベリアの声音が響く。前線へと飛び込もうとする狂気に駆られた商人を受け止めてエイヴァンが低く唸る。
「私はね、戦いに縁遠い、日常を生きている普通の人たちを守りたいの」
アクアのその言葉と共にエイヴァンが大いなる波を打ち付けた。商人たちをこの先には行かせはしないと心に決めて、言葉にして。
エイヴァンの背後で癒しを送ったレンジーは医療知識を駆使しながら商人や幻想種の姿を確認する。特異運命座標(なかま)の命を護ることが何よりも大切な事である事を彼女は知っている。
「死んでしまっては元も子もないからね! さあ、ここは任せて!」
堂々たる魔女の日と声に勇気づけられるようにエイヴァンは進む。癒しの気配をその背に感じれば、誰かを護る力にもなるというモノだ。
「異世界に喚び出されたと思えばいきなりこのような大規模な戦とはな……ああ、存分にやらせてもらおうか」
小さく呟いてティーザはグリムルートに操られた幻想種との距離を詰める。
グリムルート。それは『意志に関係なく人々をしたがわせる隷属の証』。無理強いされるように戦場に躍る者たちを救う為に彼女達への最期の一手はその拳で打ち込んだ。
――愛。愛と云うのは何だろうかと火輪は口にする。それは氷輪も同じだっただろうか。
ローレットに所属する冒険者たちが『愛』について語っていた。きっと、愛とはすばらしい者なのだと『二人』は新たに知り得た言葉を口にする。
「愛故に死なねばならん! 愛の為に自らを危険に置く石(意志)こそ真に求められし物だ! ――と」
「探しに行こう、救われない子らを救おう、そこで愛は見つかるだろうか」
二人の人格形成は此処から始まる。だからこそ、救わねばらぬのだ。人間とは『失う事を懼れる』存在なのだろう?
自身にはまだまだ力が足りぬときりは認識していた。有象無象の如き信徒たちの中、捕縛するが如くロープを放つ。
「中々に人が多いですねー。遊軍的な感じで動くのもオツなものでしょー」
倒れた幻想種達の可能な限りの保護を目指すきりが走る。その傍ら、エマは岩を足場に跳躍する。
「うへへぇ、空気がよろしくないですね……。頭がおかしくならないようにしっかり意識を保たねば」
狂気に充てられぬようにと速力を活かし音速の殺術を放つ。奇襲を仕掛け商人たちを翻弄するこそどろは響き渡る狂気の声を聴きながら「厭になりますねぇ」と小さくぼやいた。
「無双ゲーにゃっはー! ……といきたいけど現実の人間相手じゃいまいちテンション上がらねーにゃあ」
信心深く宗教にどっぷりと沈んだ信徒を見遣ればシュリエは「にゃ」と小さく唸る。
「こいつら目が怖いのにゃ! しょうがないから真面目にやるにゃ」
魔力の弾丸が周囲に展開されて広がり続ける。
「結構な数の幻想種が操られているんだな…できれば全員助けたいが……どこまでできるのやら……いや考えてる暇があったら行動を起こさねば……」
小さくぼやきながらサイズは『本体』を振り上げる。その素晴らしき刃は鍛冶仕事の賜物か。威嚇を用いて戦い続ける。
「なんともまあ、嫌な雰囲気に包まれている場であるものだな。
だがこれは戦場の狂気なんて上等のものではない。
臆病者が狂人の振りをして実際に狂人になってしまった……その程度の芯の無い狂気だ」
マスターデコイは『臆病者の狂気』になど宛てられて命を失うなど持っても他だと幻想種達の保護へと向かう。制圧するべく不殺を用いる仲間達と共に慈悲を伴う一撃が確かな感触で幻想種へと飛び込んだ。
「ううん、とにかく『殴るよ』!」
やる気は十分。命刈り取る横薙ぎと来世へ葬る斬り上げのコンビネーションを伴ってリインは白き大鎌を振り下ろす。
「良い子に生まれ変わってねっ!」
兎にも角にも理不尽な状態と狂気には『ぷんすかモード』なのだという様に地団駄を踏む。
それに続くようにジュルナットは射撃を持って援護した。
「楽園なんてないし、死は救いなんかじゃない。
あるのは非情な現実だけだし、……最後まで死にたくなかった人に失礼じゃないか」
スィフィーはふと、信徒なら痛めつけても問題ないんだよねと首を傾いだ。
グラッジ・チェインを手にし、指先より伸びる魔性の茨で絡めとる。至近、飛び込んだ信徒をリインが斬りあげれば、スィフィーはその背後の信徒を悪意の霧で包み込む。
「ああ~流れる砂と私の心~」
朗々と歌い上げるように潮は阿僧祇を手に飛行にて偵察を行い続ける。聖なる光を放つ潮は決して命は奪わないと狂気に駆られた商人たちへと慈しみを与え続ける。
「楽園は目指すもんじゃなくて、作るものだと俺は思うけどな。
住めば都っていうだろ? 日常は辛ぇかもしれないけど、ちょっとずつなら変える力を人間は持ってるからな」
トカムはやれやれといった調子で肩を竦める。持久戦ならば任せろと自身におろした加護の儘、一手に商人たちを引き受けた。
「楽園かぁ。俺は今働いてる診療所がそうだよ。好きな人がいて、のんびりした時間を過ごせてる。
大多数の人が満足できる場所なんて、現実主義の俺にとっては胡散臭い以外の何物でもないんだけど……救いが欲しい気持ちは、まぁ分かるよ」
そう呟いた十三。二代目『弥七』と連れ添って肉体再生能力を与えながら十三は小さく呟く。救い、とその言葉に晴明は反応したように溜息をついた。
「信じる者は救われる、って言葉ほど胡散臭いモンはないぜ。
俺も商人の端くれだから、宗教が儲かる事は知ってる。ただ、絶対に便乗しようとは思わねぇよ。カラクリ知ってるから余計にムカつくんだ」
吐き捨てるように晴明は言った。屍を踏み越えてでも生き抜く覚悟を決めろと有毒ガスを周囲へと撒き散らす。
何かを信じて適当なことを口にするより仲間とツルんで馬鹿をして。そういうことが楽しいのだと春樹はピュアエルポスターを手に声を張る。
「神ってのはな、縋っても全てを委ねるモンじゃねぇんだよ。ちったぁテメェの意志で現実と向き合えや!」
意志という言葉を思い出す。アネモネ・バードゲージに触れてベルナルドは春樹の言葉に眉を寄せた。
「存在しねぇんだよ、楽園なんてのは。あったとしても、それは刹那の幻想だ。
永住できるもんじゃない。……かつての俺が、あの女の笑顔を守れなかったように」
美しい女の笑みはもう遠く。小鳥が囀る声を聞くことすら疎ましいと放つ破邪は聖なる輝きを持って周囲を焼いた。
「悪いけれど、あたしは死にたがりに手加減するほど優しくないわよ」
苛立つようにミラーカは雷撃を放つ。無粋な首輪で他人に強要されて死ぬなんて理解できないとミラーカは『生きたい』と願う幻想種の意識を奪った。
「月の舞姫、華拍子♪ 津久見弥恵の参上です!」
舞踏・銀氷月華。その美しき舞と共に弥恵は威嚇術で意識を奪う。
夜を照らす月のように、天爛の魅力で舞台を染める舞は融けるように――見惚れさせた。
●
「さア、行こうカ」
黒羽のペンで描くはアネモネ。大地は朱音色の恨詩を口にして、唯、ひたすらに幻想主達へと救いの手を伸ばす。怨嗟の声と共に、響かせれば苛む痛みが襲い行く。
「辛かったよね、苦しかったよね、今助けるから……
でもこの首輪……どうやって外せば……? お願い壊れて!」
アニーはもがく様に何度も何度もグリムルートを叩いた。自分の指が折れても手が砕けてもいい。
隷属の首輪に踊らされる幻想主と比べれば、こんなのへっちゃらだと唇を噛み締める。
疑似刀『硬刃』を手にした零はゆっくりとアニーを見遣った。
「大丈夫」
もう、悲しませる事はしないというように。首輪に放った一撃が、幻想主を解き放つ。
操られる幻想種のグリムルート。その無効化と幻想種の保護こそが必要だと彼は知っていた。奇跡に乞うてもいいと思う程――好きな――大事な人が悲しむ事は避けたいと使える手札なら何だって使って見せると彼は不殺を用いて戦い続ける。
「狂気に駆られた人々というのは、往々にして恐ろしい物じゃのぅ」
華鈴の言葉に結乃は怯えたように『理性』についてを思い出す。いつかの日、マスターは理性は大事なものだと言っていたのだと唇を振るわせた。
「……理性とかそういう、大事なものをなくした人ってこんな風になっちゃうんだ……。
こんな状態でも人だから、なるべく命は奪いたくない、けど。
おねーちゃんが危ない目に合うのは嫌だから……ごめんね、って思う……」
選ばなくちゃいけないのはいつだって『人間』として必要だ。結乃はやさしいと小さく笑い、華鈴は幻想種の元へと飛び込んだ。
「何、出来る限り加減をすれば良いのじゃ。動けなくなっていればそれで十分じゃろ」
失うことがない様に、慈悲を与えながら。
混沌肯定が、世界が彼に与えた法則が歯痒いと言うようにウォルは一菱流(死極)を手にフォローへと回る。
(悪人じゃない人は命を奪わずおとなしくしたかな……)
蹴撃放つウォルの傍から顔を出しタツミはひたすらに竜巻を放ち続ける。
「楽園なんて求めるもんじゃねえ。
この世界にゃ理不尽が沢山あるから縋りたい気持ちも判るけどな。救ってやるとか野暮なことは言わねえよ。ただ、戦うっていうんだったら、容赦はしねえ」
信徒たちは人に与えられただけの言葉にすがり続けている。そんな『誰か』に従うだけなのだと言うならば、それは下らぬ拘りなのだと攻撃に乗せ続ける。
「楽園というのがどんなのかは興味ないけど、ろくなものじゃないのは何となく分かるよ。
ここであなた達を止めるし、止めなくちゃならない――今のあたしには女神が微笑んでいる……ような気がするもの!」
綾花は自身のありったけを放つように不吉の囁きを持って商人より奴隷たちを引き離す。
『蔓延る魔を光に還す愛と正義の灼光! 魔法少女インフィニティハート、ここに見参!』
決めポーズと共に愛が放つはピンク色の暴風。『愛』がすべてを救うため――愛が何たるカをその心に刻み付けると手加減はしない。
「ふーん、よく分かんないけど、アンジュにとってのいわしってことだよね。
まーでも、自分の好きを押し付けたらダメだし。アンジュはアンジュのやり方で、いわし好きを増やしてみせるから。そういう話じゃない?」
折れない心を掲げて、エンジェルいわしとつれそうアンジュ。パパいわしの群れが異様な勢いでアンジュの周囲から飛び込んだ。パパだって娘の力になりたかったのだろうが、放たれていく……無残な様子で……。
それを眺めてハッピーはEsperanzaを手に飛び込んだ。戦いやすいように周囲の露払いを続けていく。
「敵が幾ら集まったって大丈夫なのさっ! さあ、おやすみ! 起きる事にはきっとこの戦いも終わってるよ!」
ハッピーの声を聞きながら、暴風を放った巫女は困ったように肩を竦める。
「全く、楽園なんてね。他人から与えられるものじゃないのよ。
それは神だって同じ……私が言うのだから間違いないわ」
幻想種を巻き込まぬように、巫女が飛翔する一撃を放ったそれを追いかけて、サンは癒しを送る。
「……ようやく、一区切りといったところなのでしょうか。必ず、同胞は……助けます」
同胞を救うが為、癒しを送りその命を繋ぐのだと隷属の証より彼女たちを切り離す。
グリムルートより感じる気配は前より歪でありサンは唇を小さく噛んだ。
「変な集まりもあったもんだけど……これで全部終わりにするっ!」
ピットはZ.A.Pを手に自立爆弾で遊撃手として立ち回った。幻想種たちを救うために尽力する仲間たちの行動をしっかりと確認し、観察は尽かさない。
「布教は良いのです。良き教えには私も賛同いたします。でも信仰の強制はいけません」
イースリーの中にある記憶が神であり信仰だ。イースリーは威嚇術を使用して信徒たちを退け続けた。
「兵站を軽視する国は、どれほど精強な軍隊を持っていたとしても、いずれ敗れ、歴史から消えるもの。
兵站を担う事となる商人たち、その保護を行なうというのは、理屈として“可”であると判断いたします」
穏やかな調子で言った統に文は「いやいや」と手を振った。
「同じ商人として、ほっといたらアカンしょ? だってぇ、もし商売したことあるんがおったらどうすんの?
ほっといて明日の朝には冷たくなってたら、うち、一食くらいはごはん美味しくたべられへんかもしれんやん?」
美味しいご飯のため、商人たちだって今は狂気に溺れたりうまい話を鵜呑みしているだけではないか。
その為ならば商人たちを捕まえ、捕まえ、捕まえ、馬車に放り込む! 美味しいご飯のために!
●
「死の祭典と言った所ですか。中々面白そうな物語ですが。さて、果たしてどんな結末になるでしょう?」
楽し気に笑う四音は唇に指先を当てて首を傾げる。今回の仕事は傷付いたものを癒す事。
グリムルートで操られる幻想種は『敵』ではない――癒す対象なのだと彼女は朗々と癒しを謳う。
「痛いとは思いますが。後で治療しますから今はどうぞ我慢してくださいね」
信徒、幻想種、承認。様々な存在をその両眼に映してから、みるくはノービスソードを手にしゆっくりと顔を上げた。
「あたしだって、一兵卒くらいには戦えるはず。命令、ちょうだい」
人は誰かの犠牲の上に成り立っている。それを知りながらカレンは肩を竦める。
「幻想種を奴隷にした楽園なんぞ幻想種にとって地獄なだけだのぅ。
そんな偽りの楽園なぞ壊してしまった方がいいのぅ――その為に妾も少し頑張ろうかのぅ?」
心のそこに渦巻く悪意の花を咲かせて、カレンが放つ攻撃にあわせてくうと腹をすかせたアイリスが前進する。
「楽園? 楽園ってどんな所なのかな〜? 私にとっては空腹を満たしてくれるならどこでも楽園なんだよね〜」
息もつく暇与えずに、肘鉄、裏拳、回し蹴り。体を捻るアイリスの一撃が信徒たちへと飛び込んだ。
「どんな戦い方をしてくるかは不明だ、皆気をつけてくれよ」
馬車を使用し唯ひたすらにシェリルは走る。そのコーナリングを駆使して目指すは魔種がいる場所だ。
「本当に楽園みたいな場所があるのでしょうかね? 法の無い世界が私にとっては楽園ですかね。
誰かが作り上げた限りそいつにとっては楽園であり、それ以外の奴にとってそうとは限らないのです」
「確かにその人にとっての楽園は人それぞれです、イヴ。
でもある一定の共通需要の高まる楽園は存在します……それを元に意志を集められてるのが現状です」
穏やかに、そう返したシエラへとイヴは悪しき理不尽を断ち切るために恋愛乙女のチェーンソーで神さえ絶つ気概を見せた。
イヴにとってはルベリアが防衛反応で親を殺したことは『肯定』だ。理不尽に刃を振るうのは人間らしい反応なのだから。
「楽園があるかどうかなんてLoveには関係ないの。Loveは誰でも愛するの」
そうLoveは再生能力を付与しながら微笑んだ。背後に誰も抜かさぬようにと、霊的因子で信徒たちを包み込み、『愛』を与え続ける。
アウローラは歌声を響かせながらただ、全力で声を響かせた。
成敗してやると憤慨する彼女の美しい声が伸び上がり、信徒たちを翻弄し続ける。
「歌を聴けー!」
その声に後押しされるように癒しを送るディアナ。奴隷のように強いるのは許せないと彼女は掌に力をこめる。
「私は、こんなの許せません」
「アウローラちゃんも!」
だからこそ戦うのだと、ディアナの鎮魂歌が響き渡る。
「楽園……? そこには美味しい物や楽しい物が沢山あるの、シエラお姉ちゃん……?
『人狩り』がなければ嬉しい……かな。でも今、私達って……争い合ってる」
エリクシア頻出治癒魔法重要語800を手に首を傾ぐ。癒し手のエリクシアの傍でシエラは首を振った。
「争いは“生きる”限り起きます。楽観もせず悲観もせず戦うしかないんですよエリクシア」
悪党でも戦闘要員ではない相手に槍を向けるのは気が引けるのだとゼファーは守りを固め、信徒たちの鎮圧に向かう。
百人組手と考えればいっそ気が楽だとゼファーは攻撃を重ね続けた。
「救われない者を取り込んだ宗教の武力集団……宗教団体の闇を見ている気分になりますね。
平和な時代でもそういう事を行う者は数多く居たけれど……」
冬佳は静かにいい気を着く。天義の宗教とは違い国家のカラーが多いこともあり、宗教による統率と言うものがsどれほどまでに強いものかを認識させられる。
「そこに魔種という要素が加わるのなら……こうもなる、か」
魔種、と言う言葉を続ける。冬佳は宝華鏡により魔方陣を展開させ、不浄なるものを洗い浄め祓う刃の如き荒波となって貫き続ける。
「楽園の東側……死が試練、か。まるでカルト宗教そっくりね。狂信者集団、というところかしら?」
吐き棄てた舞花。斬魔刀を手にし舞花は変幻の刃を振るい上げる。
「信徒の少年ですか。魔種になった経緯は……察します、けれど。
もう終わりにしましょう。どのような不幸が起きたのであろうと――前に進むしかないのですよ」
進むため、その刃を止める事はない。舞花がちらりと見遣れば襲い来た信徒の数はもはや少ない。
命を奪うもの、命を護るもの。様々な思惑が交錯しあう。
「メイ殿!」
コウの呼び声にメイが反応する。「コウさんと一緒に商人さんを倒すのですよ!」とやる気十分のメイは速力を活かして商人たちへとその一撃を放った。
メイが隙を作り出せばコウはその商人へと組み技を放つ。
「この世界って、もしかしてかなり危険なところなのです?
うち、元の世界では生きる為にしか戦わなかったけど、こっちだと無駄に鍛えられそうなのです……」
きょろりと周囲を見回して、ソフィリアは魔弾を放つ。ぺしぺしと攻撃を重ね続けるソフィリアの背後より千尋がぐんと前線へと飛び出した。
「雑魚は任せな! 露払いくらいは『悠久ーUQー』斬り込み隊長のこの俺がやってやらァ!!
ウォラァ! 『悠久-UQ-』ナメんじゃねえぞテメコラボケがァ!!」
よくは分からない。けれど、良く分からない覚悟が決まってしまったのだから仕方がないだろうと千尋は声を張り上げた。
高度の高い位置からの偵察を行う運び屋。「新人には新人のやれること」と掲げた使命は確かなものだ。
「戦場は怖いにゃ……お家のこたつでぬくぬくしてたいにゃーがいるにゃ。
でも、仲間が帰ってこないのはもっと嫌にゃ。操られてる幻想種さんの帰りを待ってる人が悲しむのも嫌にゃ! 三人で頑張るにゃ!」
ニャーが異世界の巨大なネコさんを召喚し戦うそれに引き連れられるようにアンファングは慈悲の拳を突き立てる。
猫も執事も覚悟を決めているならば年上として全力で護りサポートするのだと心に決める。
パーフェクト・サーヴァントはアンラックノートを手に統制を続けていく。
「狂気に飲まれないよう、俺達がするべき事を忘れるな!
助けるために戦っている事を心に刻め! 一人でも多くの幻想種を助けるために全力を出すぞ!」
ニャーとアンファングはその言葉に頷いた。一人でも多く――そのために戦場を駆け出した。
●
「すごい嫌な空気。身体に、心に、張り付くっていうか……気を抜いたら変になりそう。
こういう時、旅人じゃない自分を呪うよ。ま、そうは言っても、なるようにしかなんないもんね」
べたりと肌に張り付くような感覚にステラはビートを刻み信徒たちへと攻撃をし続ける。
「悪しき戒めによって意思を奪われる罪無き幻想種、神はお見捨てになりませんわ」
星官僚のタクトを手繰りながらСофияは権威たる聖光を放つ。治癒は魔術の本懐であるとСофияは自負し続ける。
味方から離れぬよう、そして幻想種を救うがために尽力する仲間たちの一助となるようにタクトを振り続ける。
クリストフは呼び声が聞こえても耳を貸してはならないと説いた。
「自身の信じるものをしっかりと持つのです。例えば私には信じる神があります。
私にとって神は何時だって絶対です。目を閉じ大切なものを思い浮かべてください」
心の焔が消えなければ、きっと――クリストフの支援とСофияの支援は万全だ。
「こういった戦いも明日は我が身……ってなるかもしれんねよな。……いつだって、うちは全力や!」
水城は幻想種を誘うように声を上げる。竜の呪いを片手に宿し、慈悲を帯びた一撃を唯、放つ。
頬を掠めた幻想種の一撃に強烈なるカウンターを返した水城の瞳が僅かに煌いた。
「この面子で共に戦うのも大分慣れて来たわね。じゃぁ、いつもの戦法で、行かせて貰うわね」
輪廻が闘気を纏い前線へと躍り出る。茨の鎧を身に纏う輪廻に続き、鈴鹿は進む。
決して無理はしないでね、と囁くその声音に推されるように鈴鹿は進む。
「……何この……脳筋ばかりの集団……全員特攻って頭筋肉でできてるの……
輪廻姉様と一緒なの! 特攻野郎でも何でもどーんとこい! なの!」
鬼にも勝る外道より輪廻を護るため鈴鹿はフレイムブレイドを一気に振るう。
「ここにいるおかしくなっちゃった商人の人たちって奴隷商人の人ー? ちがう商人の人もいるのかな??
んーーー、でも見てもわかんないや! いっぱいいるし、まとめてあいてしちゃうよー」
いい人がいたらごめんねと一角獣はひた走る。オカカはつのを武器にぐるぐると周囲を回って作り出す暴風に商人たちを巻き込み続ける。
その隙を突くようにアレクシアが声を張り上げ飛び込んだ。こんな場所に楽園なんて存在しないと、その声音は唯しっかりと伝え続ける。死を求める信徒たちは特異運命座標との戦いで命を失うことこそも『試練』だと考えているのだろうか。アレクシアは「悪いけど」と小さく呟いた。
「楽園なんて、あっちにはない! これは『試練』なんかじゃないんだ!」
だから、殺させないと鮮やかなる花を咲かせ続ける。
美しき花。それを見遣りながら不浄写し――河鳲家に代々伝わる戦闘術を使用した響子がアレクシアの援護を行った。
「兄様程じゃないけどさ、僕だって幻想種贔屓なんだよね。
可愛い年下達がかわいそうじゃん。カノン様だかなんだか知らないけど、年上の……庇護者になるべき者の態度じゃないでしょ」
ふん、とルフナがそっぽを向いた。兄に助力を請われてからと言うもの、彼がこの騒動に協力的であることが分かりブーケは小さく笑う。
「あの子達は僕が深緑に連れ帰る。商人にもどっかの古狸にも渡さない。
……とりあえず、首輪の外し方わかんないし、わかる人が来るまでに寝かしつけるよブーケ」
「……吹き飛ばして気絶させるのを寝かしつける言うんは知らんかったなあ」
笑い距離を詰める。ステップ踏んで攻撃を重ねるブーケに続きルフナが賦活の癒しを与え続ける。
「……怖がって、鳴いてばかり、いられません。や、やりましょう……! 必ず、助けます……!」
小鳥が周囲を旋回する。その情報を得ながらメイメイは幻想種の救出にあたる。
癒しを与え、気を失った幻想種を震える手でぎゅっと抱きしめる。隷属の首輪がかしゃりと外れた幻想種の心の傷を癒すようにその手はきつくきつく彼女たちを癒し続けた。
「カノエは信仰も教義もよくわかりかねます。死にたいのならご自分で死ねばよろしい。自害の決心もつかぬというのであれば、裸で夜中に転がっていれば寒さなり魔獣なりが誘ってくださいますのに」
庚は式符で生み出した毒蛇で信徒たちを幻想種から退けさせる。隷属された幻想種たちは皆、弾除けのように使われ続ける。
「世の中の理不尽に心をくじかれ、恣意を他人に押し付けなさるのは単なるエゴです」
「この方はお任せ下さい! 続けて一人でも多くの保護をお願いするでござる!」
運搬性能を活かし、幻想種の保護に回るパティリアに庚は小さく頷いた。パティリアが目指すはヨシトのところである。
サイバーゴーグルをつけたヨシトは癒しを伴って幻想種たちを救うがために戦場に布陣していた。
「必ず生きて帰してやらぁ! こんな所で死ぬんじゃねぇぞ!」
「よろしくお願いするでござる!」
パティリアのその声に頷き、彼は精神的にも肉体的もボロボロである幻想種を護るために癒しを送る。
まだまだ。まだまだなのだとミスティルは速度を武器に走った。足で稼ぐのだ、こういうときは。すべてをかき集めて、兎に角前のめりに進むだけ。
「死が救済か……医者には寂しい訓だな……認めるわけにはいかない。
それが操られてるものであればなおの事な。同胞達は返してもらうぞ」
手袋を付け直しジェラルドは自身の体内に魔力満ちるのを感じ続ける。癒し手として幻想種の保護とグリムルートの対応に走る彼の背後でオジョ・ウ・サンが跳ねた。
「オジョウサンが困ってタラ助けニ来てクレた食z……アンジェラと一緒デス! 嬉しいDEATHネ!」
――少しばかり不穏な言葉ではあるが、確保し続けると食材狙って進むオジョ・ウ・サンに引き続きアンジェラは付き従う。
生殖階級のオジョ・ウ・サンがいうならば絶対なのだろう。アンジェラはぼんやりと振り仰ぎ首を傾いだ。
「ところで、商人の方を餌として渡されましたが……食べて処分しろという意味で良いのでしょうか……?」
●
「生命活動停止したら皆おにくなのです。試練なんてのは幻想だと叩きつけてやりましょうか」
もつは肩を竦める。おにくは喋ってはいけないのだと彼女はルベリアへと距離を詰めた。
「それは楽園には持っていけない部分がお肉なだけだろう?」
「さあ? そもそも、楽園なんてものあるんでしょうか」
もつの言葉にルベリアはあるさ、と囁く。その発言にさえつきり、と胸が痛むのだとニーナは唇を閉ざした。
狂信をささげる信徒たち。少なくとも『楽園』はそこには存在しないのに、そうも『死』を高尚なものと思い込むことこそ、死への冒涜であるとニーナは絶望の海を謳う。
「貴方にどんな過去があって、どんな思いでここに立っているか……無辜の民であればそれを想い、感じ、守るべき者であったでしょう。
ですが、貴方は魔種としてここにいる。故に私には興味があまりありません。私はただ世界に、民に害為す魔種を赦さない」
鳴は静かに、その言葉を紡いだ。霊書『焔宮』を手に、彼女は輝く美しい命の煌めきを知っていると民を護る為に黒き呪詛の焔を放つ。
「虐待ねぇ……別にニートしてればよくない…?
部屋に鍵かけて床ドン壁ドンしてれば食事が出て来るのにさぁ……そんないい環境狙えるのに楽園とか、意味わかんないよねぇ……意味わかんなくてキれるよぉ?」
ぶつぶつと呟いたリリー。ルベリアとリリーの環境は大きく違うのだろが、リリーにとっては『引きこもり』ができたら楽園だったのだ。なんとなく『激おこ』状態でリリーはぷんすこと攻撃を続け続ける。
閠は砂の地で踊る。ルベリアが噛み付く様に攻撃を仕掛けるそれを受け流しながら。
「死が救済や贖罪だ、なんて、生きている者の、傲慢で怠惰な、思考停止です。
彼らが死んだ意味すら、殺すつもり、ですか? どんなに愚かな命であれ、その手で奪った意味を、いかすために、生きなければ、いけません……だからボクは、ここにいます」
死人に口なし。だからといって、そのすべてが幸福である保証はないのだと声を張りながら弓を爪弾く。
ルベリアが地面を踏み締める。距離を詰め、殴りつける様には鳴ったその拳を受け止めてラノールは眉を顰めた。
ラノールはルベリアを見遣る。彼が両親を手に掛けた事を糾弾することはできない。
「楽園か……そんな場所に逃す訳には、いかないな。
罪を犯した自分を赦すためには、その罪を償うしかないのだ。そうしなければ君は……本当の意味で救われることはない。絶対に」
救い。その言葉を唇に乗せてエーリカは傍らのラノールを見遣る。距離を詰め、ラノールの至近で攻撃放ったルベリアと視線を合わす。
「ルベリアは、つよいね。自分のみちを拓いたのだもの」
「何を――!」
「あなたはきっと。あったかもしれない、わたしの――」
エーリカの脳裏に過るのは過去の欠片。飲みこむ様に魔術を手繰る。風霊よ、自由なる乙女たちよ。我が声、彼の者達に届け給え、と声を発して。
「……もう、眠ろう。傷は何時か塞がることを、もっとはやくあなたに伝えたかった」
「試練なんだ! この生も――母さんも父さんも俺が連れていく!」
叫ぶルベリアの声を聞きながら文はやりきれない、と小さく呟いた。両親による暴力さえも彼にとっては『試練』だったのだろうか。扇子を手に、甘く切ないバラードを奏でる文はルベリアを見遣る。
世界とはやりきれないことで満ち溢れている。ムスティスラーフは切なげに眉をひそめた。
「起きちゃったものはどうしようもないよ。お母さんのことも、お父さんのことも、そして魔種になってしまった君も」
ムスティスラーフはがルベリアと距離を詰める。それは、命を散らす一撃。
「だからせめてこの手で君を葬ろう」
死こそ救いだと告げるルベリアの瞳を覗き込む。ルベリアによる一撃がムスティスラーフへと突き刺さる。
「ああ、本当に。まだ若いのですね。本来ならば救いの手を差し伸べるべきなのでしょうけれど――貴方を救ってあげることはできませんわ。せめて、貴方の魂の行く先に、主の慈悲があらんことを」
ヴァレーリヤは声を震わした。メイスを構えて聖句を唱える。
――主よ、慈悲深き天の王よ。彼の者を破滅の毒より救い給え。
毒の名は激情。毒の名は狂乱。どうか彼の者に一時の安息を。永き眠りのその前に――
その衝撃波に吹き飛ばされたようにルベリアの足が僅か、後退する。
「悔恨ね。気持ちは分かるしやりたいことも分かる。
でもね、それは世界が許さないだろうし、何より私が放置しやしないわ。過去の死人が、今を暮らす生者の妨げになっちゃいけないもの。だから、倒すわ」
ルチアは歌う。天使の歌を。唯、その声を響かせて――その目的を潰えさせる為の支援は欠かさない。
「孤児であるか。辛いよね、吾輩もそうだからわかりみが深いわーである。。
え、碌な親じゃ無かったし自分で殺した? ごめん、やっぱわかんねーである。
――だから、分かることでやるべき事を。魔種と成り果てなお後悔に苦しむのなら。
吾輩が、お前を裁く者となろう……そう、『ママ』に!」
逆に訳の分からない持論ではあるがローガンは子供とけんかするときは相手を受け入れるのが肝要であると理解していた。
ルベリアの『ママ』として頑張るのだと彼を受け入れるような仕草を見せる。
「人に幻想種、カルト集団と、まるで狂気のバーゲンセールだな。
それに楽園だなんて、笑えない話だな……要は無理心中じゃないか。
そんなイカれた連中に負けてられるほど。ローレットも柔じゃないぞ?」
紫電はそう呟き、空駆けるようにルベリアへと一撃放つ。速力を火力に変換する練達製の武器はじゃじゃ馬ながら彼女によく合っていた。
「君の境遇には、情状酌量の余地があったのだろう。魔種に落ちた事もむべなるかな。
だが、それでも、ボク達はキミを倒さなければならない。……初めてだ、敵の排除に、躊躇いを感じるのは」
神秘との神話を高めてマテリアは困ったようにそう呟いた。ルベリアの境遇は誰が聞いても悲惨なものだった。死に逃げたくなるという気持ちは『否定』できるものではない。
「家族にいじめられて、反撃して、殺しちゃったんだ……すごいね!
ずっといじめられてたのに、勇気をもって、戦ったんだね…あたしは、反撃もできなかったなあ。すごいなあ」
にこりと、コゼットは笑った。これ以上はだめだと、もう戦ってはいけないと。そんなことはないのだと兎は踊る。誰も助けてくれなければ自分から助かるしかないのだ。
「自分のために、戦っても、いいんだよ
だからあたしも、あたしのために……きみを殺すよ。後悔は、きっとしない」
「なら、俺もしない。みんなを殺してこの試練を超えて――楽園へ向かうんだ!」
ルベリアの一撃がコゼットへとぶつかった。その背後より飛び込んだムスティスラーフが悲しげに眉を寄せる。
「死は、始まりなんかじゃないよ」
その言葉はルベリアの信じる未来を否定するかのようであった。手にした白刃を煌めかせ、素早い一刀の下に万物を両断するかの如くヨシツネはルベリアへとその刃を振り下ろす。
「案ずるな。その身体に染み付いた罪は我らが斬った。無垢なる魂を抱え、安らかに眠るが良い」
●
「凄い砂嵐ねえ。前が良く見えないわ。先ずはアレを何とかしないとダメね」
アレクシエルは精霊の王も狂気に犯されれば戦場がこうなってしまうのだと小さく溜息を吐く。
F・ブレイカーを手に、地上を唯、ひた走り精霊たちを避け続ける。
「砂の獣は私におまかせください! そーれっ!」
アレクシエルの許へといかぬようにとライムは亮と共に獣を留める。
偵察用の小動物で情報収集を行うライムに「次は?」と問うた亮。獣は知性が低く衝動で動いていることが分かりやすい。
「あっちです!」
ライム指差す方向にまずは、と走る。その足を止める事無く唯、まっすぐに。
「まさか伝説の王国に足を踏み入れることになるとは思っていなかったなあ。
むしろ実在していたとは思っていなかったのだけど、なんとも因果なものだねえ」
ロゼットは月光めいた青き輝きを伴った一撃で獣たちを退ける。
目指すは精霊王――この熱砂の地に住まう砂の精霊の王の下だ。
「そしてこの精霊王の乱心が、砂漠のモンスターが増えた遠因かね、やり方が乱暴で申し訳ないけど沈静化してもらうよ」
長反射神経を用いて獣を避け、吹き荒れる砂嵐の無効を唯、目指す。
「全く、この戦は胸糞が悪い。この狂気の奔流が楽園だと? 性質の悪い冗談だ」
吐き捨てるように無銘は言った。不殺の儘に幻想種や信徒を斃せるほどに『器用』ではないのだと彼は静かに吐き捨てた。舞う砂嵐の中、一気呵成に相手へと距離を詰める。無銘の拳が獣を殴りつけた。
「心せよ、狂える獣相手に慈悲の心は持たぬぞ」
死の先に、何があるか。チャロロは『楽園』という言葉を口にする。
「命は無駄にしていいものじゃない。少なくともオイラが死にかけたときには『楽園』なんて欠片も見えやしなかったよ」
死の先に素晴らしき楽園が待っている。アダムとイヴが手を取り合い、愛をはぐくむ世界がそこにはある。
……そんな場所がないこと位、チャロロは分かっていた。機煌重盾を手に声を張る。獣も全て受け止めて。
「こんなこと、もう終わりにしなきゃいけないんだ――」
きょろりと周囲を見回してトリーネはフェアリーテイルに語られる幻の場所に踏み入れた事を実感する。朽ちた砂の都は何処までも美しい退廃の気配を孕んでいる。
「幻の場所…こんなおっかない人達がいなければ感動できたのかしら。
戦い戦い、また戦い。でも私はめげないわ! ローレットの鶏代表だから!」
自称はローレットの鶏代表。アシストニワトリとして痒い所に手が届くようにしっかりばっちり支援は欠かさない。
「こんな戦い、皆は何度だって経験したんだから! 今回も同じよー!」
死の気配孕む暗澹なるベアトリーチェ・ラ・レーテを退けたように。
狡猾なる蠍の毒に蝕まれぬ様、国家を護りきったように。
今回だって、護るためならばとトリーネは――飛べない――翼を羽ばたかせる。
「砂で視界がキツい! 誰も彼もが狂気にあてられてるようなものッスかね、この状況」
鮫牙棒を手にシクリッドは感覚を研ぎ澄ませる。その身に乗せた強烈なる闘争心の儘、信徒たちを殴りつける。周囲は千客万来、様々な相手がいるが適材適所という言葉をシクリッドはよくよく知っていた。
「あっちが準備を必要とするように、こっちも準備が必要ッスからね」
天十里は黒いアンダーバレルリボルバーを手にしながらハイセンスを使用して士右辺警戒をしながら走る。
周囲迫り来る獣や信徒をその両眼に移しこみ、ホルスターに『夕暮れ』を収めて、銃を切り替え精密なる六連射を放つ。
「アベルくんたちが無事に前に進むためにも、頑張るよ!
だから、悪いけど。不殺だなんだ気にする余裕ないから、死にたくなければ逃げるんだね!」
ナインは首を傾ぐ。死にたいという思いは別に否定することもなく、理解できないわけではないと口にする。それは生きるものの、思考を持つものの自由だがそれが蔓延した末路は現状が物語っているのだとゆっくりと目を開けた。
「……こんな考えを野放しにしてはおけない。完全に叩き潰して消し去る必要がある」
グリムルートを上書きするカノン・フル・フォーレのことを思えばリーゼロッテは頭が痛くなると煌きの羽ペンを手にしながら呟いた。
「魔女の名にかけて仲間もみんな助けるから! 大船に乗ったつもりでいるのよ!」
気を失った幻想種の保護は任せて欲しいと立ち回る。魔女は慈愛を持って、幻想種を助けるべく理不尽と戦った。
「操られてる幻想種さんを死なせたくないっきゅ。
死んだ人とはもう会えないっきゅ……会えないのはとっても辛いっきゅ」
レーゲンの呟きにウェールはゆっくりと頷いた。もしも、命が潰えたならば、大切な人は凄くなくのだとウェールは声を震わせる。
「……俺の息子も、梨尾も俺の傍で泣いてた。……家族や大切な人に操られてる幻想種がまた会えるよう、頑張るぞレーゲン!」
砂嵐の中、レーゲンが最初に行ったのは精霊たちへの呼びかけであった。その行く先を開くように、ウェールがレーゲンを庇い続ける。
「この声が聞こえてるなら、一人でも多くの命を助ける為に砂嵐を弱めてほしいっきゅ! お願いしますっきゅ!」
砂嵐を止める為に砂嵐が邪魔をする。酷い有様だとラダは小さく呟いた。
その聴力を活かして精霊王を探し続けるラダは狂気とはこれほどまでに広がるものなのかと小さく呟いた。
様々な場所を拠点とする精霊たち。砂の都が朽ちた頃、その場所を根城とした精霊たちが現在狂気に充てられたのはどうしようもないことだったのだろう。
(精霊王を鎮静化したらすぐで悪いが、魔種対応に力を乞おう。この地は彼らの場所なのだから)
死ぬほど痛いだろうが死ぬことはないとゴム弾を放ち精霊たちを退ける。
「なーなー、オレの仲間達が、その先行きたがってるんだよー、だから通してやってくんねー?
ここを荒らそうとするやつは、ぜってーオレ達がぶっとばすからさ!」
洸汰は真直ぐに精霊たちへと声かける。元はこの場所を護ろうとした防衛的な意識の下での行動だったことなど、想像に易かった。元気チャージで立ち続けると洸汰は精霊たちへと笑み向ける。
「大規模な戦争ですね。何が起きてるのかさっぱりですが、放っておけない事だけはわかります。僕はローレットの盾として戦場に向かうのみ! 行くぞっ!!」
目指すは精霊王。ヨハンは古びた大剣を手に砂塵の中に立つ精霊王に向けて飛び込んだ。
聖なる光を持ってその刃を振り下ろせば砂がぐん、と押し返すようにその刃を受け止める。
「王たるものが狂気に負けるなど。精霊王の名は、そんなものではないでしょう」
影狼を手に雪之丞の心は躍った。銀の森で狂気に当てられた氷の女王がいたように、この一帯に住まう精霊王と手合わせできる機会はまたもないチャンスだ。
不謹慎かもしれないと、それでも実力をすべて見せきると放った一打。捌き、流し、攻め入る斬撃は攻防に熟達し、唸り続けるだけの精霊王に確かな一撃を与える。
『――アアアア!』
クーアはその姿に熱砂の地にある精霊たちを救うため、焔を欲する自分として何かをできる事がないかとこげねこメイドとしての『手加減』を放つ。
(――どうか、彼らの行く末が穏やかでありますよう)
精霊疎通を用いて、焔の気配を纏わせたクーアに伝わるのは『この地で嘆き苦しんだ娘を救って欲しい』という精霊王の嘆きの声であった。
「それは誰かの役目なのです。そう思うなら、力を貸してほしいのです」
クーアの尾がゆるりと揺れる。精霊王を覆い隠すようにして、精霊たちがふわりと舞うそれを留めるようにニアが声を張り上げた。
「遊び相手が足りないなら、あたしが思う存分遊んでやるさ。
さあ、ここからは根比べだよ……! 一匹でも多く、一寸でも長く捕まえておいてやる」
その声は精霊たちに良く通る。 風唄の夢を響かせ、精霊たちを巻き込むように放つ風が冷静さを奪い続ける。
「お願い! 砂嵐を止めて!
今ここにはたくさんの幻想種の人達が連れてこられててボク達はその人達を、それに精霊さんや精霊王さんも助けたいの!」
焔は声を張り上げた。精霊たちに話を聞いてと声を張る彼女に砂嵐が遅い来る。
「ッ――それに、貴方達にこれ以上誰かを傷つけさせてくないの!」
精霊王を正気に戻すための力を失わせない為。焔を狙うその一撃を一凪、ニアの一撃が受け止めた。
アマーリアは『アイスマン』と共に精霊王の正気を取り戻すべく戦い続ける。魅了の弾丸を撃ち込むアマーリアの傍らで説得を担当する啓はゆっくりと顔を上げる。
「精霊よ、何故にお前は荒ぶる。忌むべきを砂で隠し、触れられざるを遠ざける、大いなる秘匿の霊よ。何故に心を乱さんとする」
朗々と語るようなその言葉を唯、届かせんとする啓。支援するようにアイスマンは魔法剣士としての実力を大いに奮い続ける。
精霊王は説得に応じず、物理でその力を証明した上で正気に戻さねばならない。ねねこの期待する性癖、ネクロフィリアには合致しないが興味深いと彼女は歩む。
「狂気で無理やり従わせると言うやり方は好きじゃないですね」
肉体知識を理解しながらねねこは手提げかばんを手に精霊王の周囲の精霊たちを退ける。
「師匠! 手助けに来ました!」
アイスマンの許へと飛び込んだエストレーリャ。狂気に支配された王も助けると自身の師と共に声を張る。
「落ち着いて、砂の精霊たち。狂気に負けないで、いつもの自分たちを思い出して……!」
精霊たちへと癒しを送る。その気配に精霊たちはほっと穏やかに胸を撫で下ろした。
「これ以上魔種達による被害を出すわけにはいけません。精霊達よ、力をお貸しください」
癒しを送り、戦線を継続させるエレアノーラ。唸りながらも正気を取り戻さんとする精霊王にあと少しだと彼女も僅かな手ごたえを感じ始める。
妖精郷の主は唯、その声を響かせんと妖精王を呼んだ。
―――響く、その声音が。
―――精霊王の、確かな『響き』が。
●
「手荒で済まんな。今、解放してやる!」
ジョージは華やかに魅せる戦いを続けていく。殺さずと力ずくでグリムルートをもぎ取るように、彼は隷属より幻想種を解放し続けた。
彼にとって人攫いや人買いは性に合わず魔種にまで支配されるというならば運が悪かったとしかいえないではないか。
パニーラは霊樹の槌を手に獣たちを殴りつける。幻想種の保護をするにもまずは襲い繰る獣への対処も大切だ。
「お兄ちゃんだけど砂なんて関係ないよね! お兄ちゃんたちを尾行してきたら砂の中で見失っちゃったけど、カクレンボかなぁ……? あはは……でもカクレンボなら得意だよ! だってお兄ちゃんならちゃぁんと匂いでわかるから!私の妹力は甘くないから……うふふふ……!」
脅威の妹力で戦場を行くイ=モウト。包丁を手にくるりと振り返って「信者? 誰それ」と『お兄ちゃん』に近寄るものを拒絶するように突き立てる。
「こんなのが楽園って呼んでもええもんかねぇ?」
奴隷、精霊の暴走。フェアリーテイルで語られるような『すばらしい楽園』がこの有様では果たして、それを『楽園』と呼んでいいものかと紫月は羽織を揺らす。遠距離より放ち出すは美麗なる意匠の古き銃。
「家に帰えればカレーが待っているっっ!!!!」
その意気込みやよし。寿彰はバリア・システムで安心して戦えるだろうと肉体の力を呼び覚まし、援護に当たる。
「こっち側に居てくれて正直ホッとしたよ。別に人間性を疑ってた訳じゃないけど、割と後先考えずに物事決めるし」
2年という年月は長いものだから、と付け足したミニュイにライナルトは小さく笑う。特別に訓練されたパカダクラを駆り戦場へと訪れた彼はミニュイに「ご期待にこたえられてよかった」と冗談めかした。
ふと、ミニュイが勢い良く振り仰ぎ、機動力を武器に獣を断ち切る。
「……あなたには散々向いてないと扱き下ろされたけど、戦うのが上手くなったでしょ、ライナルト」
手を叩く。それ以上の言葉はないというようにライナルトは迫り来る獣と戦闘せよと走り出した。
(あぁ……祖国と同じ、戦場の匂いがします。護るべきモノ、救うべきモノがあるのであれば、鳳圏軍人として背を背ける訳にはいきませんね)
同輩が戦うというなれば華綾とて負けるわけには行かぬと魔砲を打ち込み続けた。
獣の手から逃れるように華綾が攻撃を放つ。それに合わせて信徒を狙った藍は茨の鎧を身に纏い、癒しを送る。
胸元煌くエメラルド。その『動き出したばかり』は唯、唯、癒しを続け同輩たちを支援した。
「――自己犠牲の精神とはまた違いますね。これは、ただの自殺願望です。
御国の為ですらありません。ただ、『逃げたい』だけなのです。『試練』と言っていますが――死んだ先に待っているのも、きっと、『地獄』ですよ」
生きれば掴み取れるものがあるのに、死が救済であるというのは立ち止まることと同義ではないかと戒機は目を伏せる。
「戦は滾るなぁ。やはり俺ァ軍人だ」
栄龍の心は躍る。オーダーは単純であれど、これほどの人数がいる戦いは『戦争』と感じさせれば軍に所属する人間としては心踊るというものだ。
「応、斬られたい奴から来い!! あまり動き回るんじゃねえ、仕留めにくいだろうが」
異国に来ても何も変わらないといえど、これは随分派手であると迅は魔種の狂気そのものを体感するように小さく笑う。
嗚呼、戦ってみたい――けれど。
「……残念です。未熟者の僕では辿り着けそうにありませんね。
それではせめて道を開くお手伝いをしましょう。何、いつもの事です。
以前は隊のために、今はローレットの仲間のために。この拳を振るいましょう!」
拳を用いて殴りつける。その一撃に獣たちが唸り地に伏すそれを栄龍が切りつけた。
アンラックノートを手に癒しを送り続ける。唯、その支援をしながらも死を救済と思うものを見れば戒機は曖昧な思いを抱かずにはいられなかった。
「ふむ……砂嵐相手じゃ木枯らし程度では敵わんか。まぁ、素直に負けてやる気はないがな!」
コルウィンは砂の獣へ向けて攻撃を打ち込み続ける。襲い来る獣に対して、威力に特化した一撃を叩き付けた。
「他のメンツが自分の戦いをしているところに横合いから邪魔させるわけにはいかんからな」
「砂嵐など何のその!」
アウロラはキルデスバンカーを手に敵陣を進み行く。エネミーサーチを用いて信徒たちを退けながら砂嵐など至近に近寄れば怖いものもないのだとアウロラは小さく笑う。
「ほんまややわぁ、砂埃煙たいわぁ」
清音は超視力と温度感知を用いて、状況を逆手にとった。狩人は動物だけに特化しているわけではないとマンハンターの実力見せる。
「どんなの信じようがお前らの勝手だがな、此処は楽園じゃねぇんだよ。
きっと『諦め』の最果てでしかねぇんだよ。都合のいい楽園なんてあったら最初から皆苦労しねぇ……――これだから宗教の話すんのは嫌いなんだ」
吐き捨てるようにそう言った。レンジスは癒しを与えながら戦場の中を走る。
都合のいい楽園を目指してその命を『棄てる』動きに虫唾が走るというようにレンジスは息を吐いた。
「楽園の東側ね、正直言って理解できねェな。死んじまったら、何もかもお終いだろうによ。
……ま、いいさ。奴らにも事情があるんだろう。俺は、俺のやるべきことをするだけだ」
レンジスと同じくウィリアムとて宗教については理解ができなかった。死の向こうに何かがあるなんて、そんな都合のいい話が合ったならば医者は存在しなくて言いと、そうとも考えられる。
しかし、それをすべて否定するのも『医者』のやることではないとでも言うように、彼は静かに息を吐いた。
●
涼太は「砂漠か……そんな世界もあったな」と小さく呟く。それはその昔――という回想シーンはカットである。
火炎で敵を包み込み、縦横無尽に走る獣を捕らえては放さない。一度見れば理解できるというように、獣らしい行動パターンの相手を務める彼は小さく笑みを零した。
ふと、レヴォイドは『楽園の東側』の教義を思い出し息をつく。死が救いであるというならば、死がまるで慈善事業であるかのような言い草ではないか。
「――ほうら、お前らのいう『救い』が向こうからやって来たぞ」
死が救い問うならば有象無象としてその命を奪うことこそ彼らの望みではあるまいか。
「砂漠を泳ぐサメだの何だの、不思議なものは沢山見たが、まだまだ世界は見た事無い生き物でいっぱいだな……今度は獣か」
クリストファーは自立自走式の爆弾放ち、獣たちを翻弄し続ける。
それに続いて、セフィは栞と共に獣を撃破し幻想種たちの運搬に当たる。流れる赤き血潮が戦いの始まりを告げれば、アヌビシオングレアスを手にした栞が飛び込んでいく。
「『試練』とはまー、勝手な事を言うもんで。
本の内容なんざフィクションが多いのさ。ノンフィクション本なんてもんもあるがな。
それでもフィクションなんかに縋るような連中には――残酷な『ノンフィクション』を見せつけんのさ」
カイトは言う。死は絶望なのだと葬雨で残酷で不幸な結末を与え続けた。フィクションのような美しいおわりなんて何処にも存在していないから。
精霊王の無力化が完了したことが精霊たちより伝わってくる。砂嵐が徐々に弱まってきていたとしても、精霊たちの混乱をひしひしと感じて紗恵は精霊たちに落ち着いて欲しいと声を掛け続ける。
『――!』
「もう大丈夫」
そう口にして、がばりと襲う砂をものともしない。
「さて……我の力がどこまで通ずるかはわからぬが。やれることはやってやろう」
エリシアがゆっくりと手を伸ばす。精霊たちと対話し、王を護らんとする彼らを安堵させるように声をかけては癒しを送る。
「これ以上抵抗を続け苦しみを長引かせるか……今抵抗をやめれば我らも邪険には扱わん」
そう、囁くエリシアに精霊たちは王を助けて欲しいと懇願した。
「うわ……砂が多いなぁ。でもあたしの身体も技も、砂なんかには負けないよ!
砂漠の組手だと思って、信者さんの相手、頑張るからね!」
スピネルは武力の鎧を纏いながら信者たちを相手取る。さあ、秘伝書オープン――スピーカーボムを使用して仲間たちとの連携を意識するスピネルの言葉を聴きルミナは獣の居ないルートへと走った。
出来る限り獣たちを避けるようにしていたルミナはトンファーを手に、信徒たちへと打撃を展開させる。
無力化させた幻想種たちの保護も大きな仕事だとルミナの額には汗が滲み出した。
「やれやれ、幻想種を奴隷にしておいて何処が楽園というのかな?
個人の自由を奪い、尊厳を弄んで楽園だなんて巫山戯ているね。僕に出来る事を全力でさせてもらうよ」
妖樹は傍らでぷるぷるとするTofuへと視線を送った。
「美味しい豆腐だよ! ……なんて言ってる暇はないのか。
みんなが安心して豆腐を食べられるように僕、頑張っちゃうよ! 安全第一!」
安全第一。美味しいお豆腐をみんなが安心して食べれるように。妖樹のもふもふを護るためTofuは毒を放つ。
「……人の心は脆いモノですメェ…………だから、救いを求めて宗教に縋ったりするんですメェ……。
……人の心の弱さや立場の弱さを利用するなんて酷いですメェ……」
信徒達は信じ込んでいるだけ。幻想種たちは利用されているだけだとムーは名乗り上げ、信徒や幻想種をかき集める。
操り人形のように動き回る幻想種の痛ましい姿にムーは睫を震わせ「メェ」と小さく呟いた。
「絶対に生きて帰してやる。意識はあるんだよな……だから、痛いのだけは我慢してくれ!」
ヤナギは苦しげに幻想種たちに声をかける。流れ弾で死なないように。隷属の首輪は後でもいい。
だから、命と尊厳を護ってやりたいのだとヤナギは慈愛の攻撃を持ってスタープレイヤーとして戦い続けた。
「くくっ、後ろの生きた猛火が厄介か? ならばまずは眼前の要塞を打ち砕いてみせろ!」
竜祢の背後より、業炎の気配が立ち込める。アニーの纏う炎はその異能そのものだ。
「イカれた信徒どもなんて焼却処分でいいと思うんだけど、まぁ他に任せるわ。
先に潰さなきゃいけない厄介者もいるようだし、こっちの対処を優先しましょう」
「くくっ、鳳凰なら燃やせば済むで終わるだろうが、他はそうはいかないものだ。
人は生きてこそ輝く、なればこそ安易に殺すものではない……私はそう思うがな」
アニーはさて、と肩を竦める。竜祢の暴風に巻き込まれぬよう、獣の身から生命力を吸い取った。
「アハハ★アイドル出張でこんな所に来ちゃいましたね♪
まさか砂漠ロケでこんな乱戦に巻き込まれるなんて……ジェーンちゃんびっくり♪ どうしましょうか、ミリヤムさん?」
その豊満な体を縮めるようにしてそう言ったジェーン。絶望の海を謳うジェーンを見つめながらミリヤムは「騙したな、プロデューサー!?」と叫んだ。
砂漠でファンと交流と聞いていたのに、この有様だ。どちらかと言えば『変な宗教のファン』との交流会なのだから、アイドルはステップ踏みながら攻撃を重ねていく。アイドルはちょっとのことではへこたれないのだ。
沙愛那はけらけらと笑い続ける。この前も召集されたと言うのに、『また』だ。
「アハハッ! ついこの間参加したのにまた参加しちゃったよ、このGA……もう四度目だよ
特攻馬鹿野郎多すぎじゃない? この人達、大丈夫? まあ、私も人の事言えないんだけどね! 同類だね!」
沙愛那は正義の首狩りウサギとして『狩り』続ける。
「オーホッホッホ! ここで出会ったのも何かの運命!
敵は脅威の魔種ですが我々ローレットの総力を集結すれば決して勝てない相手ではありませんですわ!
為ればこそ、この道中は仲間達を送り出す為に我々で死守するのです! いきますわよ、野郎共!
特攻B(BAKA)チーム! 新たな仲間を加えて四度目の集結ですわ!」
堂々たるガーベラ。名乗りを上げた盾たる彼女の傍でもう一人、高笑いが響き渡る。
「オーホッホッホ! ……あらまた会いましたわねガーベラ様。
ええ、また出会ったのも何かの縁ですわ! 私、リアナ・シンクライも協力いたしましょう! このドリルに掛けて!」
高笑いと共に高貴なドリルを装備したリアナも負けじと戦場を進み出る。
「……いやいや、お嬢!? また面倒な依頼受けなくてもいいでしょう!
……チッ、これだから巨乳は……はいはい、頑張ればいいんでしょ? これもお勤めだから頑張りますよっと」
がくりと肩を落とすマナ。巨乳はこれだから困るのだと困った雰囲気のマナの背後より勢い良くゲイ・ボルグを振り回したスカサハは勢い在る面々に気を惹かれたと戦場へと飛び出した。
「やあやあ! 私こそは最近この世界で目覚めたばかりのスカサハ・ゲイ・ボルクでありますよ!
義により助太刀致すでありますよ!」
勢い良く暴風を吹き荒れさせる。その暴風を受けながらスカートを抑えた聖奈は「あー」と小さく唸った。
「……何というかさ、人間ってここまで狂えるだってビックリするよね。
……まあ、その最たる例がすぐ近くに居るわけですけど……」
視線の先には由奈が立っている。その様子を見遣り桜華は状況を的確に把握した。
奴隷商人や信徒が無数居る。悪辣なる人間は許しはしない――そこまでは『把握』の上だ。
「……不安要素があるとすれば何故かこの集まり…脳筋の集まりみたいになのがそこはかとなく不安なのだわさ」
桜華の言葉にうっとりとした調子の由奈がにこりと笑い、大剣を握り締めた。
「フフフ……死聖お兄ちゃんが居る場所には私が隣にいる……私が死聖お兄ちゃんを守るの。
脳筋だか何だか知らないけど少しでもお兄ちゃんが守れるのならどれだけ仲間が居ても足りないからね」
仲間と書いて肉壁と読むことに気づいて聖奈は「ッ! 由奈ちゃん!」と名前を呼んだ。
お兄ちゃんを護るためなら――泥棒猫さんが居たのは気づかない振りして――頑張るのだと彼女の笑みは濃くなった。
「よし、それじゃぁいつもの様に歩兵を蹴散らすとしようか♪ 今回も宜しくね、可愛い皆♪」
死聖がそっと尻を撫でんと手を伸ばす。それを見逃すことはない『妹』は「お兄ちゃん……?」と首を傾いだ。
嗚呼、熱が入った。不惑の心を目覚めさせ、総ゆる悪意に抗う彼を中心に進むリアム。
「それじゃ、いつも通り……背中は任せた、よ」
「やれやれ……いつも背中を守られているのは俺の方なのだがな」
ウインクひとつ。リアムはその言葉を聴きながら魔砲を放ち、戦い続ける。
――『勢い』を伴って、特攻Bチーム出陣である!
●
「エンヴィさん。信仰って何だと思いますか?」
何気なく、クラリーチェはエンヴィに問いかけた。突然の問いに、ぱちりと瞬いてエンヴィはえっとと小さく呟く。
「……神様を信じる事……かしら……?」
真直ぐに、只、エンヴィはそう言った。その言葉にどこか安心した気がしてクラリーチェは小さく笑う。
「仰る通りですね。……あの人は、自らの信仰のために人を惨殺しているそうですよ」
掌に、力がこもる。敬虔なる神の徒。歪な信仰者『廿血河』ミリィ・メリィ・マリィを見遣れば温厚なクラリーチェの心も僅かに騒めいた。
「私はあの人の信仰を許せません。……宗教戦争というと大袈裟ですが」
エンヴィは頷いた。他者を害するという事はあってはならない。酷く惨い神様何て、此方から願い下げなのだ。
クラリーチェが拒絶するようにジョセフもそれが道徳(みち)を外れた存在であることを理解していた。
「神に代わる縋るもの、愛し慈しむあの女(ひと)が居なければ私もああなっていたかもしれん。
嗚呼……彼女さえ居れば、あの紅い三日月が照らしてくれさえすれば、この世は私の楽園だ」
朗々と謳う。ミリィ・メリィ・マリィは首を傾げ「嗚呼」と小さく呻いた。
「『お可愛そう』に――」
生きているだけで魂は救済されない。誰かに依存する生など可愛そうなだけだと言う様に淑女が笑えば異端審問官はその距離詰める。
「正義の聖人・どら登場!悪は、不正義は、不信心は! この僕が許さない!」
びしりと指差したどら。足止めの壁になると不知火を手にミリィを留め続けんと強烈なる一撃を放ち続ける。
イーゼラー様とセレスチアルは信ずる神の名を呼んだ。
「異教を否定する気はないが、私には理解できぬ信仰ではあるな。
なんにせよ立ちはだかるというのであれば敵だ。仲間と共にイーゼラー様に良き魂を捧げるため奴を打ち取ろうではないか」
イーゼラー様。信ずる神の喜びこそが自身の喜びであることをセレスチアルは知っている。
「フフ……どこかシンパシーを感じますねー。
しかし、私達とはどーやっても分かり合えないでしょーね。残念ながら」
斬脚緋刀を手に奇襲攻撃を仕掛けたピリム。ミリィ・メリィ・マリィはそれにちら、と視線を送り「どうぞ、慈悲を」と祈るように囁いた。
「慈悲? イーゼラー様の教えに背く異教徒が! しかも我等の信仰を冒涜する発言をしたらしい! 許すまじなのだ!
故に我が<力>の名に懸けて……異教徒アンラックセブン「ミリィ」を滅殺するのだ!」
暴力的なまでに。ネメアーは『力』としてミリィへと距離を詰める。筋肉パンチを放ったそれへのカウンターが腹に食い込んでも彼女の信仰心は揺るぎやしない。
「ふふふ、こんなものが楽園だなんて……楽園はイーゼラー様の御許とヴェルフェゴアお姉様のお傍以外ありえませんわ」
アンゼリカはヴェルファゴアを護るように立ちはだかる。『お姉様』に近寄る輩は断罪だと漆黒の刃を構え進む。
「さあ、救済でございます。大人しく魂を差し出してくださいませ」
幹部の動きを見てはバストはさすがだと肩を竦める。信仰者には区別はないが信ずるものが違えば対立はありえるものだ。
「いや~お姉さん、巨乳で強くて……俺の好みドンピシャ。どう?俺と付き合わない?
……まあ、戯言だけどな。あんた俺やうちの幹部連中と同じ『救いがたい狂人』みたいだし……まあ、世の平穏の為に死んでくれや」
バストの一言にミリィはくすりと笑う。その言葉をさえぎるように放たれた一打を持ち前の反応の高さで避けて冷や汗伝う感覚に「手痛いな」と呟いた。
「信じる神が違えど! 行く先は同じですわ!! さぁイーゼラー様に捧げられなさい!」
ヴェルフェゴアの号令は魔力解放と共に発せられた。黒赤白とイーゼラー教に相応しい色を身につけた彼女の声にアンゼリカは頷きミリィへと狙い定めた。
「胡乱な悪意が蔓延るのは世の常だと思うし、失礼ながらこの地の闇商人や盗賊に関しては猶の事、という認識で生きてきたが。
しかし今回、一人明らかな『異物』がいるな? ……アンラックセブンとやら、できれば早々に御帰り願いたいところだ。そう容易くは行くまいが」
舞妃蓮はつまらなさ層に呟いた。赤の王冠を手にし、『アリスの卵』は自称・ひ弱な乙女の武器攻撃(魔法)を放つ。
「初めましてさようなら。お前が言う『惨たらしく殺された者達』だ。
まあ事故死の『同胞』も多いけどさ、人の命なんだと思ってるんだお前」
苛立ちに、許さない許さないと白は『同胞』黒黒を手にして許さないとミリィを狙い続ける。
「おやまァ、アレは知ってる顔だ。ミリィ・メリィ・マリィ、可愛い信仰の使徒」
武器商人は旧友に語りかけるかのようにそう言った。ふらりふらりと遊びに来た感覚の武器商人のその言葉にミリィは僅か、苛立ちを見せる。
「気に入らないんですよね、あのタイプ。死は等しく死です。
そこに神の慈悲の差などありません。あるとしたら愛だけですよ、バッドレディ」
彼者誰は小さくぼやく。今回のアタッカーは武器商人と京司だと小さく呟いて。
「なあ。おぜうさん。死が救済だと云うなら、なぜヒトは死に抵抗する?」
ミリィは京司の言葉にこてり、と首を傾いだ。その無垢な仕草は単純に『狂って』いることを感じさせる。彼女はあくまで常人で、狂人で、魔種ではないことは確かなのだ。
「……分かるだらう。痛みは、悼む心だ。原初の恐怖だ。
おぜうさん、君はそれを与え続ける悪なのだ。過ぎた信仰は過ぎた正義に同じ、他者を害するのだ」
ミリィは「おかしなことをおっしゃるのですね」と手を組み合わせる。死の気配はまだ遠いーー嗚呼、けれどとミリィはゆっくりと笑みを零した。
「キミは我(アタシ)が嫌いだけど、我(アタシ)はキミを愛してるぜ?
キミの殺人はキミの信仰において初めて意味を持ち、しかしてキミを救える者はこの世に何処にもいやしない! 孤独なコ」
「慈悲を」
走り寄るミリィの前へと飛び込んでビーナスはけらけらと笑う。野獣が如き破壊力を宿した彼女は「おっかっしー!」と声を上げた。
「アハハハ!面白い事言う人だね!
「『神は惨たらしく殺された魂を憐れみ救済してくれる』? あいつらにそんな感情なんてないのにね~
神が貴方達に期待してるのは……その愚かしさ。道化としての行動だけです。元破壊神だった私が保証してあげます、ミリィさん」
「我が神を愚弄しますか」
穏やかであったミリィの声音に僅か殺気がこめられる。武器商人や京司との攻防よりぐん、とビーナスへと近寄ったミリィへとビーナスの触手が寄った。
それを弾くように『狂気の女』はビーナスの一撃を弾く。確かな痛打を重ねた特異運命座標の中で、獣や精霊の中に雲隠れするようにミリィは姿を消す。
「おやまあ」と武器商人が残すが、彼女は特異運命座標に自身の信ずる神を愚弄されたと認識しているのだろう。また、姿を現すものかなとくすりと小さく笑みを零して。
●
「すれ違いから起きた悲しみの連鎖……そしてそれに乗っかる非道な悪事。ここで止めないといけないんです!」
紅蓮の大剣【飛炎】を手にしながらシュラは走る。その先、教祖の下へと向かう仲間へと群がろうとする敵を受け止めて放ったのは鋭利なる一撃。
依狐は自由を奪うように無数の見えない糸を放つ。馬鹿げた防御力とはこのこと。生存優先するように依狐は『呼び声』には負けてはならないと声を掛け続ける。
ファミリアーの鴉が情報収集をする中で、エラは自身の生命力を引き換えに味方を大きく強化する。勇気付けられるように、颯太はグロリアスを手に信徒たちへと強烈なカウンターを放った。
「なーに? 宗教? 天義でもないのに大した事するわね
信仰なんてね、信じれるのは死神しかいないわよ! 『■■■■』なんて絶版にしてやるわ!
戦神が一騎、茶屋ヶ坂アキナ! 有象無象が赦しても、私の緋剣が許しはしないわ!」
マフラーをなびかせ秋奈は『光を走らせた』。それは戦神戦闘術参の型。
信徒たちによる妨害を意識してノリアはふしぎな貝殻を準備して、信徒を巻き込むように力いっぱい水鉄砲を放出する。
カインの許には届かなくていい。ノリアが狙うのはあくまで攻撃を受けているという意識を信徒に植え付けることであった。
(わたしが攻撃に集中しすぎて隙だらけになっていると考えてくれればそれでいいんですの)
一斉に攻撃を受け止めるノリアを癒すLumilia。白銀のフルートで奏でる音色は何処までも伸びやかに調和を届ける。
「我らが英雄たち、運命特異座標たちの英雄譚を。そして、敵となった彼ら彼女らの物語を。
後へ語り継ぐ為見届けるのが、吟遊詩人たる私の役目です。深緑における卑劣な拉致事件、その決着を見届けましょう」
神の剣の英雄のバラッドはのびのびとその音色を伝え続ける。語らず、そして奢らず――その身に負荷が掛かろうとも決してその音色を止める事はない。
「壁?むしろ津波な感じ? ――まぁまぁどちらにせよ。
――ここは! この! 藤堂さん家の夕さんにまっかせっなさーい!!!!」
決めポーズはばっちりだ。夕は異界とリンクしながら人生で一度は口にしたい台詞を叫んだ。
ここは任せて先に行け――!
それはニャンジェリカも同じだった。ここから先は一歩も通さないとイオ=ン=モールを手に構える。
ここは任せて先に行くにゃ、と告げたニャンジェリカをちらりと見て夕が小さく笑う。
どうやら、その考えの人間は自分以外ではないようだ。
イージアは紫水晶龍の呪いを纏う武具を以って攻撃を続け続ける。信徒がそれ以上行かぬようにと癒し手としても立ち回り、唯、ひたすらに攻撃を続けた。
「不謹慎かもしれないけれど一度でいいから伝説の傭兵の戦いぶりを特等席で見てみたかったのよね」
暁蕾の言葉にカピバラ――ジャック・ロカタンスキーはふんと鼻を鳴らした。暁蕾がいつも酒場で聞いていた荒唐無稽な伝説、魔種ハンターの呼び名はどれ程のものなのかという興味は尽きない。
「さあ、いきますかね」
「ええ。フォローはするわ」
その様子を眺めてセティアは「カピってる」と騒いだ。パなくてナウくてヤバくてエグみのあるカピバラの登場を妖精騎士は心躍らせ歓迎する。
「わたし楽園しってる。おこただよ。おじいちゃんがいってた。
極楽だった、えもい。でも似てるし同じかなっておもう、たぶん」
まじでがちめにひやっこい一撃を放ちながら彼女の脳裏にはおこたが浮かんでいた。暖かくって心が落ち着いてエモくって、その中でアイスクリームを食べたらどれほど幸せなんだろうか。
「――――」
ナハトラーベの翼が舞う。黒翼の結界の中、遊撃手として彼女は立ち回る。
意気込みを感じさせず、表情はつるりとした能面を思わすがその剣戟こそが何かを物語るか。
『死』は救いではない。試練でもない。その事実を直視すべきと告げるかのように。
「どうしてこんなチーム名なのですか……? 私は、足癖なんて悪くなんてありませ……ッと!」
「ほらぁ」
ミドリは惑を非難するように見遣る。丁度のタイミングで『足癖』が出ているとマジックロープを放った惑はにやりと笑う。
「貴方も、人の事言えないじゃないですか! ……全く、背中は、任せましたよ!」
「後ろまでちゃあんと見んとなぁ。油断大敵やで~」
ぴょこり、と顔を見せてミドリは「Pi……」と声を漏らした。敵が何を考えているかは分からない。
アベルの友人、と言うにはあまりにすれ違いが歩きがすると小さなアミュレットを手にすくえるならば救いたいとその力を尽くし続ける。
●
カインを護るように布陣する魔種アルアはエリーを護るように布陣する。
リゲルは天義を守護れた次はラサと深緑の力になるとその刃をしっかりと握りこんだ。
「アルアは、カインの亡き後はどうするつもりなんだ? 教祖にでもなるつもりかい?」
「いいえ。いいえ」
首を振る。強欲は、何処まで言っても強欲だ。彼女が欲しいのはそんなものではないのだろう。
自身を殺す為に、もっと試練をと望んだアルアにポテトは唇を噛み締めた。
「死は救いなんかじゃない。残される人のことを考えたことはあるか?
……私は、残された人の悲しみを知っている。だから、今ここでお前たちを止める!」
「ねえ。それって『繋がりがあるから』でしょう?」
ポテトのいう悲しみの連鎖。それこそ、アルアには『求めてやまないもの』だった。繋がりがないからこそ病的なほどにそのつながりを求め続ける。
リゲルの一線を受け止めてアルアが至近へと飛び出した。ポテトの言葉を「私には、ないもの」と一蹴した女の瞳に宿った憂いをリゲルは見逃すことはしない。
「繋がり、そうですね……大切な人達の居るこの国を、この場所を荒らす者達を決して許しません」
薫子は蒼き彗星が如くその速力を武器にし続ける。
アルアの悲哀を切り裂くようにアリシアは紫雷を纏わせた魔法刃で切りつける。その怜悧な瞳が僅かに細められ、矜持こめたスカートがひらりと揺れる。
「次は――当てる」
苦しみや悲しみ。それによって、死を救いと認識することをメルナは否定できなかった。かつての自分のように、死こそが救いだと信じ続ける事だってある。
(でも、それはつまり──その救いは、絶望で歪んだ先に辿り着く結論でしかない。終わりへ向かう逃避でしかない)
死が誰かにとっての救いだとしても、それが解放なんていう高尚なものではないと『お兄ちゃん』なら、きっとそう言うのだと掌に力をこめる。煌く光を放つ刃を握り締め、兄とのつながりを失わぬようにアルアへと距離詰める。
「僕の力、役に立てーっす!」
医療知識を用いて中衛位置で戦うジルをちらりと振り返りラルフはアルケミックアーツ・シュートを手にしながらアルアへと赤い弾丸を放つ。
「ふ、この少人数では苦しいがやれるか? ジル君」
「だ、大丈夫っす! 動かないとヤバイっすよ!」
癒し手としてジルの支援を受けながらラルフはアルアと距離を詰める。『蠍姫』との戦いを経て記憶した呪詛の毒がアルアの体を蝕んでいく。
「守り手が必要っしょ、手伝う!」
二人の間に飛び込んでミルヴィがにまりと笑う。消耗を見せるアルアをマークし、明星の剣イシュラークを手に距離を詰める。
「わ、わ」
「大丈夫! ここはお任せっ!」
慌てるジルにミルヴィはにまりと笑い、踊るように幻惑の一打を放った。
「なんか知らないけど頑張る君たちを応援するよ。君に決めた! 黄身を守るのは白身!」
鈴音は『旧き蛇』の林檎を手にエリーを確保できないかと狙い定めた。
エリーを護るように動いたセーロを行かせはしないとンクルスはノービスソードを振るう。
「……信仰に貴賎なし。
私は貴方達の信仰に敬意を払うし、きっとそれは貴方達にとって素晴らしい物なんだろうけど……」
「耳を貸さない!」
アルアの厳しい一声にセーロの肩がびくりと震える。ンクルスはそれにも負けず声を震わした。
「私にとって死は救済じゃないよ。大事な体を欠損させる行為を私が信じる神様はきっと嫌がるだろうから。
……だからもう一度言うけど私は貴方達の邪魔をするよ」
魔種に付き従い狂気にその心を支配されている人。魔種未満。反転にも至らぬ哀れな二人。
佐里は彗紅果断法典をぎゅ、と握り締めた。声を張り上げリリアルを行かせぬ様にと手招いた。
(狂気と言うものはこんなにも恐ろしいのですね……)
魔種たる存在。そして、その側近。
「やれやれ、これを倒せというのはなかなか難しいな。まぁ、やらねばやられるから頑張るけどな」
嫉妬に強欲。人間の当たり前の感情が人を反転させるというのだ。フレイは魔種はどうすれば救えるのだろうかと思案した。それを考える前に生け捕りに――嫌、そうする間にもこちらの身が持たないかと仲間たちの支援を行った。
エリーとその名を呼ぶ。彼女を護るように布陣するアルアは『象徴』を失ってはいけないと特異運命座標を退けんと戦い続けた。
「わたしの吐息から彼女を守り切れるかしら……?」
アリーヤの毒の吐息が『アルア』を狙うわけでもなく『エリー』を狙う。
は、と顔を上げたアルアが苛立つようにアリーヤの許へと飛び込み「護りきれるわ、私は!」と慟哭のように叫びを上げた。
その声を遮る様に、魔力を介して呼び出した植物が暴食の限りを尽くさんと襲い掛かる。
「悪いね、趣味の悪い攻め手で。でもね……絶対に美しくなんて死なせてやらないよ」
政宗はそう囁き、ロビン・フットを握るその掌に汗を滲ませた。魔種の呼び声がこれ程までに近い。それだけで、緊張感はぐん、と跳ね上がっていく。
「変わった教義をお持ちのようだけれど、惨たらしく殺すなんては下品なことはしてあげられないわ。
……代わりに私の持ちうる技の限りを尽くして殺してあげる」
小夜の手元で菊花透図鍔が揺れる。アルアの傍へと飛び込んで強引にも戦いの流れを崩す。
「変わってなんてないわ」
「いいえ、変わっているわ。貴女のことは私が全てを遣ってでも――」
一気呵成、攻め立てる小夜の背中を見つめながらフィーネは小さく息を呑む。
「私では隣に立つ事は叶いませんが、せめてもの手助けとなれますように。
誰一人失うことなく帰れるように……微力を尽くします」
祈るように囁いてフィーネは癒し手を中心に魔力の供給へと手を尽くす。自身が癒すよりも誰かの手伝いを、支援は継続的な戦闘では必要なることだと彼女はよく知っていた。
「信仰とは生きる人々の為のものじゃ。
確かに日照り水害で飢える者、冬を越せぬ者も居ったし哀れに思うたこともある……」
瑞穂はアルアと戦い続ける人々へと癒しを送った。その癒しは十全で。アルアに刻まれる傷だけが時間の経過を思わせる。
「じゃがそれはその者が必死に生きようとしておったからじゃ。
死を救いとし自ら死を望むような信仰をわしは認めはせん」
信仰とは縋るべきものだ。それは知っていると瑞穂は目を臥せった。
「おおものってやつだね! はりきっていこー!」
アルアがエリーを庇うことを確認したクランベルは悪戯な贈り物でエリーを狙い続ける。
「何故っ、エリー様を!」
「何故って……これもお仕事だから」
クランベルの言葉は尤もらしい。唇を噛んだアルアは象徴を護りきらねばとその体を張り続け、戦闘のタイミングを逃し続けている。
アルア様と呼んだ彼女に付き従う二人の幻想種。その前へとするりと滑り込んだ焔珠はくすりと笑った。
「あらあら、世の中変わった人達がいるものね。
元の世界にもいたけれど、見た事が無いものをどうしてそこまで信じられるのかしらね?
もし大好きな人と『あちら』で再会出来なかったら誰が責任取ってくれるのかしらってまあそれはいいわ!」
にゃん、と鳴いた陰陽丸と共に幻想種の相手をする焔珠。魔砲を避けたその場所にするりと入り込んだ陰陽丸が「にゃーん」と怒りを露にする。
「……シャハル。今頃カノン様の方かしら」
不安げに呟いたハンナ。このままではいられないとFORを手にし魔種を庇おうとする信徒を防ぐ。
「死が救いという教義はよく分かりませんが……このままでは邪魔になりますので斬らせて頂きます」
「死が救い……受け入れ難い思想です。この人達は生きていて楽しくなかったのでしょうか……。
こうなる前に何か出来ていたら……ううん、駄目ですね」
何か出来ると思ってしまうのは傲慢だろうかと首を振ったミュリエルに無理はしないでとハンナは声をかける。
出来ることは仲間を支え癒すこと。迫り来るアルアを受け止める焔珠の声に合わせて柔らかな癒しがその身を包み込んだ。
「供物とかって、ぶっちゃけ私としては! そんなばからしい事はすぐやめて、このひろーい世界を見て生きていって欲しい所なんだけど、ねっ?」
スーはそれでも、信仰のほうが大事と言うのだろうと理解していた。アルアに向けて飛び込む。
踏み分ける事で続け様に放った簡易魔術にアルアが小さく唸りをあげる。
「こんな世界なんて! いらないのよ!」
「だから、『信じた』んだね」
だから、信じた。それを否定することはできない、できない――けれど、アトゥリは首を振る。
「あんまり信仰とかは分からないですが。他の人を、まして生命を脅かすのはやりすぎです。やるなら一人でやってろ、なのです!」
もはやエリーを庇い続けたことで傷だらけになったアルアを包み込んだ魔性の霧。その中で彼女は渇望するように楽園を求め手を伸ばす。
その先に、何もないことを誰ももはや言わない。彼女と共に会った幻想種は気を失い、今、試練を越えんとした一人の女も『楽園』に旅立ったのだ。
●
金の髪に優しげな眼差し。それが、アベルの知る『カイン』という少年であった。
「『アベル』」と呼ぶその声にガスマスクをつけた青年の方が震える。
「……あれがアベルさんの因縁のお相手ですか。何があったのかは分かりませんが、俺は今回お手伝い。その辺は気にしません。
ただ、悔いが残らないように……アベルさんが無事に決着をつけられるよう全力でお手伝いしますね」
威降はそう言った。風巻流小太刀でカインを狙い、『背後の三人』に気を配る。
「悔いなきようにのう……」
夢見るようにそう言った魔王ニルの囁きにゆるく頷いた。ちょっとばかりのおまじない。無駄な感情が出ぬようにと感情封印を忘れはしない。
もしも、アベルがエリーを殺す前にカインを倒せたら――?
『エリー』と名のつく存在を殺さずに棲むかもしれないとニルは思ってやまなかった。
「共に存りたいと願うなら、道連れになんて思わないよね」
「どうして?」
ゆっくりと、問いかけるカインにリウィルディアは確かに理解する。
カインは死の先に救いがあると信じている。それは『楽園の東側』の教祖だからということもあるのだろうが、カインとアベル、その二人で進む未来が『死の先』にあると盲目的なまでに確信しているからなのかもしれない。
「僕は彼と、アベルさんと親しくはない部外者だ。けどカイン。その想いは、外側の僕でも認めたくはない」
彼は、アベルに死ねといっているのだ。そう思うとプラックは苛立ちしかなかった。
変装とアベルのギフトを使用し『偽者』を二人。愚か者のBACCANOによる自立した存在をちら、と見てはプラックは伝う汗を止めることができなかった。
(寡黙な偽者として徹しても、カインにはばれるだろな――けど、時間が稼げりゃそれでいいんだ。
ダチを護るんだ。糞持論なんざ展開する奴に仲間を、ダチを奪われて堪るかよ――!)
ぽん、とプラックの肩を叩いてからキドーはにやりと笑った。偶には誰かの手助けってのも悪くはないと。
ずらりと並んだ特異運命座標の姿をその美しい瞳に映しこんでカインは「へえ」と小さく呻いた。
「こんなに、友達が出来たんだ? 『アベル』……なんだか、ずるいな」
その声は僅か、哀愁を帯びる。少年が親友の知らぬ顔を見て寂しがるかのような。
キドーは彼がそれで終わるような『可愛らしい少年』出ないことくらい分かっていた。
「ずるいなァ……」
彼にとって、アベルとカインは常にひとつだったのだから。
カインが真っ先に地面を踏みしめる。気づけば『三人』に増えたアベルたち。その偽者を最優先で庇うしぐさを魅せたオラボナに苛烈なまでの一撃を放つ。
「楽園を嘲笑し、冒涜し、終を齎すべく異物が出現したのだ」
その物語は楽園が終焉を迎えるまでの一節。失楽園。オラボナがとっさに庇う仕草を見せた『偽者』にカインは「どうして、今日のアベルは黙っていて、人数がいるんだろう」と囁いた。
「ああ……遊んでいるのかな。ふふ。孤児院のころもしたよね、かくれんぼ」
かくれんぼと聞けばヨハナも『楽しいこと』であることは分かる。
「……ヨハナにも3人みたいな関係のお友達欲しいなぁ」
「そう! そうだよね? ぼくとアベル! 素晴らしいよね?」
ヨハナの言葉にカインの声が跳ねる。喜び感じるその声音。彼の『依存のかたち』が見て取れることにヨハナはにんまりと笑って「はい!」と大きく頷いた。
「楽園の果てまでお尽くししましょう何処までもっ!」
分身体、偽者への攻撃狙うカインに「そんなにもお友達を痛めつけていいんですか!?」とあからさまな『演技』を見せる。それこそ特異運命座標の狙いであった。
かくれんぼと認識するカインも『あの頃』のように楽しげに笑っている。
「楽しいかい? 教祖様!」
「とっても!」
浮き足立つカインの攻撃より分身を庇い、癒しを送るゴリョウ。
カインが進むその道を閉ざすように巨体を張った彼に「アベルのところに行きたいんだけど」と少年が小さく呟く。
「ぶはははっ、やらせねぇよ教祖サマ! アベルは戦友だからよ、連れて行かれちゃ困るのよ!」
「ぼくは、『親友』だよ」
友人に位があるのかは分からない。
しかし、少なくともカインには――彼には、アベルと自分は『一番同士』であると言う認識と自負があった。
どうして、あの時にこの手をとってくれなかったのか。
共に死んでくれたなら。楽園に至ってくれたなら――!
カインが『アベル』に気づかぬようにリラが弾幕を張り続ける。満遍なく広がっていく弾丸の中、カインは「どうして僕らの邪魔をするんだ」と声を震わした。
「リラはアベルお兄ちゃんの勝負の邪魔をする奴らを蹴散らしてるだけだよー♪」
カインの周囲に立っていた信徒たちを吹き飛ばす。遠巻きに見遣るエリーが不安げに息を呑んだその様子にアベルは『見知らぬ少女が身代わりになっていることを実感して』唇を噛んだ。
混乱を誘い同士討ちを狙う繰子はミッドナイトラヴァーを手にビートを刻む。
「ほっといてもええ事無さそうやし、悪即斬の精神で。っちゅうのを――暗殺者のうちが言うのもアレやけどなにゃははー♪」
冗談めかした繰子にニルは「そういうのもありだお」と笑みを零しおにゅーの武器でカインへと一撃放つ。
「折角こないだの戦いで知り合ったのに、こんなとこでサヨナラバイバイされても夢見がわりーんだお。ってことで、アベルちゃんのお手伝い頑張るんだぬ」
「知り合い」
その言葉にカインは小さく反応を示した。にんまりと笑った絵里は「ふわあ」と声を漏らす。
「ふわー、ここでたくさん人が死ぬんですね。という事は、お友達が一杯できるのです! やったー! いやー、嬉しいですなあ。うっしっしっなのです」
「友達……?」
「そう! 皆お友達になってくれて嬉しいのです。
楽園? そんな所には行きませんよ? この声と気配と感じないんですか?」
彼女は霊魂はその場に残り楽園になど導かれないと口にした。カインは「そんなことはない」と胡乱に呟く。
その向こう、エリーを伴ったルチアーノとノースポールの姿が見えた。
ルチアーノはノースポールの武器になる。エリーを確保し、彼女を救いたいとノースポールは小さく告げた。
「死ぬ必要がない人が死ぬなんて、嫌だ! だから私はエリーを解放したい。
エリーの翼も、命も、エリーのものなんですよ。他人が傷つけ、奪っていいものではないのです。
私達がエリーの翼になります――もっと、世界を見てみませんか?」
エリーは首を振った。その瞳には確かにカインが映っている。
「君は供物じゃない。道具でもない。人間なんだよ。だから放って置けなかったんだ」
エリーは首を振る。何度も、カインを求めるように涙を流しながら。
カインは「どうして」と小さく囁いた。
彼女には護衛も存在したはずだ。彼女が『あちら』に渡って仕舞えば彼の目的は達成されない。
「エリー……君まで、『また』」
その言葉は、何かを分岐させた。
指先を振るわせたカインが唇を噛み締める。彼の脳裏によぎったの『あの日』の事だった。
燃える孤児院に次々と『幸せそうに飛び込む』人々。
それを追いかけるように、『 』はエリーの手を引いて彼を誘った。
「さあ、いこう」
拒絶を見せる彼を誘うように焔の中に飛び込んだ。飛び込むしかなかった。
彼は――エリーと『 』は拒絶したのだ。
二人でひとつだったのに!
皆、自身の用意した供物を求めて火に飛び込んだのに。
彼とエリーは来なかった。どうして、どうして、どうして。
――『また』? 彼も、エリーも『また』ぼくを見ていない……?
地面を踏みしめノースポールへ向けてカインが魔力を放つ。体を反転させ、不意の攻撃にルチアーノが滑り込み、慌てたように「ポー!」と呼んだ。
ルチアーノの体が壁に打ち付けられる。その勢いを失わぬうちにエリーを護るノースポールの意識が刈り取られた。
魔種が『本気』を出したのだと気づきドラマが「いけません!」と声をあげる。
「アベル君も、誰も、殺させはしませんよ!」
ドラマはそう声にした。書に謳われた猛き暴風を産み出して、カインを飲み喰らうようにその『書の一節』が飛び込んでいく。
ドラマの攻撃を避けたカインが「アベル」と彼を呼んだ。いつかは自分の名で、今は彼の名になった響き。
突き止めたように『プラックを偽者と分かって』振るった一撃。それを受け止めたオラボナが呻く。
「はは……いつからアベルは護られるだけのお飾りになったんだろう……?」
プラックは魔弾を受け止め「お飾りだァ?」と低く唸った。
「我侭坊主に灸を据えてるだけだろ」
「我侭……? おかしいね。『ぼくの親友と遊んでるのは君たちじゃないか』」
酷い頭痛がするとプラックは頭を抑える。それが現在の呼び声を持つ魔種の力であると言うのか。
首を傾いだカインは「そっちか」と確かにアベルを見た。
「わたくしの使命はアベル様をお守りすること!
そう、できれば……呼び声からも。わたくしの呼び声と原罪の呼び声、どちらが強いと思っておりますの!」
指を鳴らす事無くとも、タントの名をアベルは呼んだ。
「大丈夫だよ」
「ええ。ええ。呼び声なんて、わたくしのきらめきで――!」
アベルの頭をぐわりと揺らす。それは『楽園へ行こう』とカインが手を差し伸べる確かな響きだった。
時代は求め、伝説は生まれ、英雄達は人為によって『作られる』。華蓮は「だめなのだわ」と声を上げた。
何が、と答える事はなかった。
いつもどおりの笑みを浮かべたカインは「楽園へ行こう」と何度も何度も繰り返す。
カインの呼び声に頭が酷く痛む。
――どうして。
どうして――?
――一緒に居てくれればよかったのに。
お前の信じる楽園なんてないんだ――!
唇を噛み締める。タントが「アベル様」と呼ぶ声を受けながら、カインによる攻撃より皆を守る為の癒しを謳った華蓮の額に汗が滲んだ。
シラスの目には彼らが狂っているとは思えなかった。誰もが縋れる平等な要素。それこそ死なのだ。
だからこそ、絶望だらけの世界から逃げ出したいと。共に在ると誓った彼を連れて行きたいのだって分かる。
「アベル――!」
周囲の『アベルの大切な仲間たち』を振り切るようにカインが叫ぶ。魔術が飛び出し、アベルの心の臓を掴んだ。
どくん、と音がする。
どくん、と。
視界が白く変化する。楽園への片道切符。幸せあふれるその場所に行こうとカインの魔力がぎゅうぎゅうと締め付ける。
「そんなにも聞き訳がないなんて思ってなかったなあ……。
助け合って生きてきたのに。どうして、理解してくれないんだろう……」
囁きと共にアベルの命を刈り取らんとしたカインの横面へとシラスが一気呵成殴りかかった。
その隙を逃さぬように、魔王ニルの一撃が追いすがる。生きていて欲しい。彼には。
「――死ぬでない!」
そう呼ぶ声が反響する。カインとアベルの距離が離れ、その間に入るように特異運命座標たちが立ちはだかった。
「悪いね。アベルの奴はまだ連れてはいかせない」
シラスの手が、アベルの手首を掴む。まるで命を繋ぎとめるように、この場所には友人たちが居た。
ゆっくりと、顔を上げたアベルは「そうだ、行けないんだよ」と囁いた。
ぼたり、と赤が零れ落ちる。その血潮を止めるように癒しが施され、呻きと共にアベルが愛銃を握り締める。
「……どうして……?」
カインの、声が毀れた。
「羨ましいか? お前は届かねえよ」
毀れた、その声音に返したシラスは脱力したカインへの攻撃を仕掛ける。
続くは一晃。容赦などするかと全力を以って叩ききった一撃にカインが呻く。
「……覚悟をしているのならば。
アベル、決別の一撃はくれてやる。たまには他人の前座になるのもまた一興よ。
墨染鴉、黒星一晃。一筋の光と成りて、楽園の終焉をここに示す!」
自死せぬようにと意識を失い『彼女』は何も知らないまま。
エリー。彼女は唯、そこに居ただけだ。
彼女にとっての光を失って、これからどうなるかなんてもう分からない。
彼女を殺さないでくれと懇願する仲間たちの中、カインは「アベル!」と『親友』を呼んだ。
「楽園へ――!」
共にきてくれると思っていた。
あの日と同じように。不幸の、泥沼の中から二人ならば幸せになれるとでも思っていた。
「カイン」
指先が、引き金に掛かる。
「お前は俺を愛しているって言ったな」
「愛してるよ。ずっと。唯一の、かたわれじゃないか」
あのときに目にした物語では唯一無二の兄弟の名前だった。だから、自分たちの名としたのだ。
『 』は『 』を見つめた。あの頃と、何も変わらない二人で居れたのならば。
愛する人を殺す罪を、悲しみを背負っていくのは自分だけでいい。
愛と言う言葉は、どれほどに重いのだろうか。
愛してる。
そんな言葉、今、聞きたくなかったよ。俺の唯一無二、大切なかたわれ。
「ああ、でも――お前が一緒に生きてくれって言ってくれたなら。
どんな奇跡でも、原罪の呼び声でも受け入れて、人だって棄てて一緒に居ても、よかったかもな」
鈍い、音がした。
それが少年の体が地に臥せった音であることに気づいて『 』は唇を引き結ぶ。
パラダイスロスト。微温湯との決別。
これまでの命、君が心から毀れていく。
偽りを打ち砕いたその一撃は脆く幻想をも壊した。
もはや、物語より決めた名前は意味を成さない。あの物語はどう、終わるんだっただろうか。
「――俺にとっての楽園は、ずっとお前の隣だったよ」
そうして、一人。少年が死んだ。
進むべき導となった師を失ったその教団は霧散した。
残された少女は殺してくださいと何度も懇願した。
白の少女は愛しい人を失い、飛ぶことも出来ぬまま、『名前すらなくなって』残されただけで。
少年は歩き出す。己のいのちの片割れをそこにおいて。
世界が、ひとつ、終わった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
あとがき
お疲れ様でしたイレギュラーズ!
カインは死亡。エリーは確保されましたが、彼女のよすがは失われたため廃人同然です。
楽園の東側は壊滅的打撃にて、その存在を消しました。
ミリィに関しては逃走。彼女についてはまた――
まずは体をお安めください!
このたびはありがとうございました!
GMコメント
夏あかねです。関係者盛りだくさん。援軍来てます。
●Danger!
当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。
●同時参加につきまして
決戦及びRAIDシナリオは他決戦・RAIDシナリオと同時に参加出来ません。(通常全体とは同時参加出来ます)
どちらか一つの参加となりますのでご注意下さい。
成功条件
・『魔種』の討伐
・操られた幻想種の可能な限りの保護
・『■■■■』の無力化
●ご注意
グループで参加される場合は【グループタグ】を、お仲間で参加の場合はIDをご記載ください。
また、どの戦場に行くかの指定を冒頭にお願いします。
==例==
【A】
リヴィエール(p3n000038)
なぐるよ!
======
【A】砂の都・入口
砂の都にて『楽園の入口』を死守すべく広範囲に広がる商人・信徒たちです。
魔種による狂気が影響しているのか商人たちは皆、此処を死守しなければと認識し、信徒たちは『試練』が為に身を挺します。
商人や信徒の無力化、および、可能な限りの幻想種の保護を行う事が必要となるでしょう。
★重要:A戦場は他戦場及び他シナリオにも援軍や狂気伝播可能性などで大きく影響を与える可能性があります。
・『魔種』ルベリア
楽園の東側の信徒である魔種。少年です。自身の両親に虐待を受けたうえで反撃して殺してしまった事が大きな心の傷です。
その悔恨を晴らすが為に、楽園に至ることを考えています。
・商人
狂気に駆られて砂の都をうろつく商人たちです。悪人ではありませんが今は言葉も通じる雰囲気ではありません。
彼らの生死に関しては戦闘条件には含みません。
・楽園の東側の信徒たち
非常に数が多く有象無象と云った雰囲気があります。『司教』を中心に狂気に駆られて戦場に訪れる者たちに攻勢を仕掛けます。
・操られる幻想種
グリムルート(首輪/簡単には壊れませんが壊し方張るそうです)に操られ自らの意志の範囲外で戦う幻想種達です。
彼、彼女に関しては可能な限りの不殺での救出をお願いします。
・【同行】『白牛』マグナッド・グローリー:『白牛の雄叫び』の団長。白牛の雄叫びを引き連れ友軍として戦っています。
・【同行】フランツェル・ロア・ヘクセンハウス:幻想はアンテローゼ大聖堂の司教。魔女。
【B】砂の都・祭殿前
砂の都の内部に或る祭殿前です。楽園の東側の信徒たちが警備を行い、多数の獣や精霊たちの姿が見られます。
砂の精霊は砂嵐を周囲にまき散らし、視野の阻害を行っています。また、【C】戦場に向かう為の露払いが必要となるのもこの戦場です。
【A】戦場の制圧が完了している場合は多数の増援が見込めますが、【A】戦場が敗北した場合はこちらに戦力が流れ込みます。
獣や精霊の無力化、および、可能な限りの幻想種の保護を行う事が必要となるでしょう。
★重要:砂の精霊を無力化しなくては砂嵐が他戦場及び他シナリオに影響をもたらす可能性があります。
・『廿血河』ミリィ・メリィ・マリィ
旅人、アンラックセブンに属する快楽殺人者。「神は惨たらしく殺された魂を憐れみ救済してくれる」という信仰に基づき、殺人を続けるシスター。
『■■■■』に興味を持ち戦場に訪れました。不利に陥った場合は撤退します。
天義を出奔し、最近は暇をしていたので。こんな事件、丁度いいではありませんか。
彼女の生死については成功条件に含みません。
・楽園の東側の信徒たち
非常に数が多く有象無象と云った雰囲気があります。『司教』を中心に狂気に駆られて戦場に訪れる者たちに攻勢を仕掛けます。
・操られる幻想種
グリムルート(首輪/簡単には壊れませんが壊し方張るそうです)に操られ自らの意志の範囲外で戦う幻想種達です。
彼、彼女に関しては可能な限りの不殺での救出をお願いします。
・砂の精霊
砂嵐を巻き起こす精霊たちです。砂の都付近に住まう砂の精霊王『アレーナ・レイ』を中心に狂気の影響を受けています。
王に関しては武力での無力化が必要となりますが、精霊たちに対しては精霊疎通及び類似スキルでの説得が効果を齎すでしょう。
・砂の獣
緑無き場所に住まう砂の獣です。四足獣のかたちをしており、縦横無尽に戦場を走り回ります。
獣は狂気に駆られ敵味方関係なく襲い掛かる可能性がある為に注意が必要となります。
・【同行】ライナルト・レーベル:「羚羊の蹄」団長。羚羊の蹄(パカダクラ騎兵)を引き連れ砂の獣と戦っています
・【同行】アイスマン:ラサで活動するフリーの傭兵兼、行商。魔法剣士です。砂の精霊との戦闘を行っています。
・【同行】月原・亮:ローレット所属の冒険者。前衛タイプ
【C】砂の祭殿
砂の都の内部にある祭殿です。朽ちたその場所は以前は何かが祭られていたように思われますが、今は折れた翼の天使像が泣いているだけです。
この戦場は魔種による影響が濃く、また、強力な信徒がエネミーとして存在します。
・『魔種』カイン
嫉妬の呼び声。愛しい親友に信仰に否定された信心深い『だけ』の執着のかたまり。
宗教集団「楽園の東側」の教祖。元はラサの傭兵同士で生まれた孤児であり、孤児院で育った少年でした。
孤児院では『■■■■』を聖典とし、死は救いであると『間違った解釈』を教育され続けた彼はそれを信じ込み、染まり、その歪められた概念を信仰しています。
目的は親友『アベル(p3p003719)』さんと『エリー』と共にこの世界から『死の世界』へと旅立つ事。
それ以外には興味は持ちませんし、エリーの事は『母代わり』の代わりとして認識しています。アベルさんには殺しにかかってきます。
非常に強力な個体です。 一筋縄ではいきません。また、呼声の効果は強く注意が必要です。
・『楽園の供物』エリー
片翼を切り落とされた飛行種の少女。宗教集団「楽園の東側」の教祖の御神体とされる少女。
カインの目的が達成されたときにその完成の合図として翼を切り下ろす宣告を受けています。
孤児であり、生活には困窮していました。彼女に取っての全てがカインであり、カインが彼女の生きる理由です。
彼女の信仰心は『■■■■』に向いておらずカインに向いています。魔種ではありませんが彼女を護るものは多く存在します。
(※彼女の生死については成功条件には含まれませんが生存は難しいでしょう)
・『供物の世話係』
アルアという魔種とセーロ、リリアルという二人の幻想種です。カインの側近であり『楽園の東側』の信徒。エリーの世話係です。
強欲の魔種あるアルアの狂気に突き動かされるセーロとリリアルはエリーを命を懸けても守り通します。
また、アルア自身もエリーが『教祖様の目的の完遂』までは生かさなくてはならないとセーロトリリアルに言いつけているようです。
・信徒たち
有象無象です。数が多く、皆、魔種の狂気に充てられています。
・【同行】ジャック・ロカタンスキー:カピバラ。魔種ハンター。
・【同行】『蛇蝎の』キルベルト:凄腕の傭兵。必要なら非常な手段も問わない。
●呼び声に関して
当依頼は非常に『魔種』が多く『強力』です。
純種の皆さんはどうぞ、お気を付けを。
どうぞ、よろしくおねがいします
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