シナリオ詳細
<鉄と血と>Rising Black Sun
完了
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オープニング
●鉄帝国動乱
『麗帝』ヴェルス・ヴェルク・ヴェンゲルズが敗れ、新皇帝バルナバスが誕生して暫く――
混迷する鉄帝では六つの派閥が天を競っていた。
先帝ヴェルスの治世に戻さんとする帝政派。
南部戦線の英雄ザーバ将軍率いるザーバ派(南部戦線方面軍)。
我関せずと政治不干渉を貫くラド・バウ独立区。
ギア・バシリカを中心に民の救済を願う革命派。
ノーザンキングスに抗する戦力を持つポラリス・ユニオン(北辰連合)。
空浮かぶアーカーシュに拠点を持つ、独立島アーカーシュ。
各地で勃発した戦乱の成果は手札として揃い始めた。
悍ましき冬の象徴であるフローズヴィトニルの欠片は中央こそ敵の手中に収まったが、各地に点在していた者はイレギュラーズが有する事が出来た。
帝政派とザーバ派は合流する講話が叶い、ラド・バウ派も来たる帝都決戦に向けての防備を固めつつある。
各地で蜂起する民草を纏めた革命派は今や『人民軍』の名を欲しいものにして居るだろう。
東部より来たる北辰連合は女神の加護を手にすると共に理不尽なる冬を終らすが為に帝都へと躍進し、
天より訪れる独立島アーカーシュはラジオの電波ジャックを行ない、各地に決起を促した。ラトラナジュの火が仇敵に放たれるまであと少し――射るべき先は慎重に見定めている。
予てよりアプローチを続けて居た海洋王国からの貿易船は氷海に苦戦しながらも到着した。
コンテュール卿は『嘗ての縁』での協力を約束し、同様に豊穣郷も出兵を宣言したという。
これら事実は新皇帝バルナバスの即位と勅命から始まった混乱は収束し、着実に帝都への包囲網は整えられたという事に他ならない。
即ちそれは帝都と帝位を鉄帝国の民のもとに奪還しうる最後の戦い『帝都決戦』に到る道である。
かくて、決戦を望む号砲は轟く。
南からはザーバ派が切り札たる列車砲『ノイエ・エーラ(新時代)』に加え、ザーバ将軍本人と精鋭部隊も出撃。
西からは帝政派も、バイル宰相が決戦兵器『グラーフ・アイゼンブルート』を起動させる。
東からはポラリス・ユニオン(北辰連合)も『月と狩りと獣の女神』ユーディアの加護を得ながら大兵力を出撃させ。
北からは天空に浮かぶアーカーシュが、海洋や豊穣の援軍を引き連れ、帝都へ進路を取るか――
地下からは革命派も多くの武器と共に動き出し、ラド・バウも帝都の中で防衛の意思を見せる。
手に入れたフローズヴィトニルの欠片や、多くの切り札と共にいざや決戦。
しかし。今だ帝都に座す新皇帝バルナバスは斯様な状況にすら一切の揺らぎを見せない。
有象無象が幾ら束になろうとも敵ではないと言わんばかりの態度。
いや、より正確に言うのなら『これに到るを望んでいたかのような不遜さである』。
向かい風は依然強い。
各地に訪れるべき春の気配を打ち消すフローズヴィトニルの冬風。
更には新皇帝の圧倒的な武を信望する者も、尋常ならざる怪物共も後を絶たない。
昏き因縁に囚われ、全てに復讐を望む梟の影もあり。
更には頭上で輝く二つの太陽――バルナバスの権能――も大きな影を落としている。
いやさ、しかし是非も無し。
為さねば成らぬのならば他に手段はない。
それが鉄帝国の流儀に則るなれば尚更の事。
前を阻む全てを退け、眩き春を求める為に――精強なる鉄の民と可能性の獣はこの決戦ばかりを望むのだから!
●それはそれ
「――って訳らしいが、まぁ……余談だなぁ」
帝都に轟く悲鳴と怒号、或いは歓声と混乱の音色を聞きながら。
王城のバルコニーから城下を眺める新皇帝――バルナバス・スティージレッドはせせら笑っていた。
彼の目的が『支配』の類ならば、或いはもう少し間延びした長閑な話になったに違いない。
だが、『絶滅』ならば話はどうか?
「まぁ、こうなるな。誰でもそうする。俺でもそうする」
何処ぞの覗き魔に手品を喰らった時からこうなる事は知れていたのだ。
窮鼠猫を噛むとは言うが、座して死ぬ位ならば特攻の一つも選ぶのが人の常である。
ましてやそれが血の気を売る程余らせた鉄帝の連中、それにどうあれ諦めが悪すぎる特異運命座標達ならば言うまでも無い。
かくて六天を競い合った鉄帝国各軍閥は目的を一つにし、帝都スチールグラードの攻略に着手したという訳だ。
遅まきながらの話ではあるが、それ自体を実はバルナバスは『歓迎』している。
「ま、何事も無くエンディングじゃ……仕事には上等だが欠伸が過ぎらな」
原罪(イノリ)は嫌な顔をするだろうが、バルナバスは知った事では無い。
わざわざ鉄帝国くんだりまで遊びに来たのに、お寒いままに仕事で終わるのはぞっとする。
『七罪である以上、このクソったれた世界がぶっ壊れるのは大いに愉快だが、趣味と実益をついでに叶えて誰の文句があろうものか』。
「しかし、まぁ……俺が言えた義理でもねぇが、鉄帝国ってのは愉快な国だな? おい」
独白めいていたバルナバスはここで漸く背後に控える部下――『黒狻猊』バトゥ・ザッハザークに水を向けていた。
「愉快、と申しますと?」
「この城さ。皮肉にもこの国をどうにかしちまう俺を厳重に守ってやがる。
まぁ、俺は別にこんなもん必要でもねぇが……『それはそれとしてこりゃあ上出来な戦争装置だ』」
バルナバスは武人が武器を褒めるような調子で上機嫌に笑う。
帝都スチールグラードの中心に位置する王城リッテラムは有史以来唯の一度も外敵に破られた事の無い鉄壁の堅城である。
一般的に成熟した国家の大都市の中心部に居を構える城ならば、前線基地としての意味も効果も薄かろうが……闘争を信望し、戦争を愛する鉄帝国の歴代の皇帝達は王城の機能を『実用』に振り続けた経緯がある。
高い城壁に二層の堀を有するその防御は周到に地上軍を阻み、城壁に多数備え付けられた対空対地兵器は隙無く無謀な挑戦者の殲滅を狙っているという寸法だ。無論、建物自体の防御力も異様の一言であり、砲火力で制圧するのもそう容易い話ではない。
究極最強の個としてのバルナバスは城の防御を気にするような男ではないが、『それはそれとして』一級の芸術品には一言がある。
「リッテラムは鉄帝国の誇りなれば。新皇帝陛下にお褒めに預かれば古き英霊も本望足り得ましょうや」
慇懃無礼にそう言ったバトゥにバルナバスは小さく鼻を鳴らした。
「愉快なのはてめぇも含めてさ。頭おかしいだろ、分かってて乗るか? 普通」
「優先順位の問題ですな」
揶揄したバルナバスにバトゥはすげなく答えた。
彼は元々鉄帝国軍部の実力者である。最も早くからバルナバスの志向に完全な理解を示し、頭を垂れた男だ。
とは言え、彼はバルナバスの呼び声を受けていない。狂気に染まった風でもない。バルナバスの言葉も尤もというものだろう。バトゥはあくまで鉄帝国軍人として、一人の獣種としてその凶行に付き従っているのだ。『新皇帝の目的が全ての破壊にある事を知りながら、リッテラム防衛軍の指揮官として忠勤に励んでいるのだから言われても仕方ない』。
「優先順位だって?」
「『惰弱な者に生きる資格を与えてしまったからこそ、この国は零落し続けている』。
嘆かわしい限りではありませぬか。我等は誰より強き鉄帝国の民であったのに。
足を引っ張る者共を慮るがばかりに、幻想程度も踏み潰す事が出来なかった。
実に、実に、実に不快な話だ。『それはこの私が産まれた時からそうだったのだから』」
バルナバスはバトゥの静かな怒りに目を細めた。
成る程、是非は兎も角筋は通っている。バトゥがバルナバスに共感したのはその『憤怒』が為だ。
「それでグレートリセットに期待か」
「左様ですな。新皇帝陛下の施政は私の希望に全く合致している。
『一度全て吹き飛ばせば良いのです。この程度を生き抜けぬ惰弱はこの先の鉄帝国に必要ない』」
「そりゃあてめぇが含まれてもかよ?」
「無論」と答えたバトゥにバルナバスは呵々大笑した。
「……『人間』やらせとくには勿体ねぇな、バトゥ・ザッハザーク。
てめぇには兵を全部貸してやる。精々囀った以上の仕事をして見せろよ」
「御意に。我等が戦いを御覧じろ」
頷き退がったバトゥに視線をやる事無く、バルナバスは考える。
(面白ぇ男だ。生き残ったら真面目に部下にでもしてやるか。
……『黒い太陽(ブラック・サン)』発動まではもう少し掛かるな?
俺の敵じゃあねぇが、連中も随分と工夫はして来やがるんだろうよ)
城下での戦い、そして王城での戦いを展開する『新皇帝派』の不利自体は否めまい。
最終的に唯のぶつかり合いならば各地の総力を結集する軍閥が押し切る可能性はかなり高い。
だが、新皇帝派――厳密にはバルナバスは負けまい。
『権能』が降ればこの国は終わる。そうでなくても自身は『七罪最強』だ。誰にも負けない。
「まぁ、いいや――」
肌をひりつかせる戦いの風を全身に浴びながら、バルナバスは晴れやかだ。
「――かかって来いよ、特異運命座標。兄弟共とは格が違う所を見せてやるからよ?」
- <鉄と血と>Rising Black SunLv:80以上、名声:鉄帝50以上完了
- GM名YAMIDEITEI
- 種別ラリー
- 難易度NIGHTMARE
- 冒険終了日時2023年03月30日 20時30分
- 章数4章
- 総採用数401人
- 参加費50RC
第1章
第1章 第1節
●鉄壁を穿つ I
「――さあ、戦争の時間よ!」
実に端的でありながら容赦はない。
「お腹いっぱいよね。分かるわ、あの城、食べてないのにもたれるわ。
でも……まだ幕も開いてないのに、音を上げるような奴はいるかしら!」
簡略にして単純明快ながら、何よりもこの時を言い当てている――
実にイーリンらしい物言いに、傍らのザーバ・ザンザが感心したように声を上げた。
「成る程なあ、冒険家業をやらせておくにはやはり惜しいわ」
「あらあらまあまあ!
誰よりも早く先陣を切りたがるとってもか弱い子がいるみたいね!
ふふ、これはいよいよ――おねーさんが護ってあげなくちゃ!」
「――ったく、本当に無理しかねねーからな、コイツの場合」
生粋の『戦争屋』にそう言わしめ、ついでにガイアドニスやミーナには含んで言われたイーリンは何とも言えない表情で肩を竦める。
「さってと、遂にやってきました本土決戦!
将軍もこの戦場に参戦している訳だし、南部戦線に属する身としては物凄く奮い立つ状況だよね!」
一方で実に屈託なくそう言ったアリアに、彼女とも苦楽を共にした『南武戦線』の軍人達は声を上げて笑っていた。
「嗚呼、鉄帝もラサも幻想も、どこもかしこも危機的状況……
混沌の情勢は過去最悪と言ってもいいんじゃないかしら?
新皇帝の――その強さを一戦味わってみたいだなんて冗談も言えない散々だわね」
「ここが天下分け目の戦いってとこかな……負けられないね、絶対に!」
『恐らくはディルクが欠片も耳にした事の無い』皮肉な調子を口にしたエルスの一方で、フラーゴラの可憐な美貌に強い決意の色が宿っている。
ゼシュテル鉄帝国帝都スチールグラードは彼女の言う通り未曾有なる混乱の中に居た。
七罪バルナバスの真の狙いを察知した鉄帝国、そしてイレギュラーズの動きは素早く、状況は加速的にこの決戦を望んでいた。
帝都のそこかしこでは今まさに激戦が生じており、市街地はまさに容易なる死の跋扈する戦場へと姿を変えている。
『そんな中、王城リッテラムを間近に臨むフラーゴラ等、精鋭は全ての運命を託された存在だ』。
彼女等、数十人のイレギュラーズ。そして『塊鬼将』ザーバを中心とした南部戦線の精鋭部隊は各所に無理を押して絞り出された、先へと駒を進めた『決定的戦力』に他ならなかった。
「『強い』って事は退屈だよなぁ。『仕事』だ『国』だと御託を並べたところで、結局の所、退屈なだけだ。
『僕は寂しいです』って泣き言の一つも垂れ流せば、まだ可愛げがあったろうに。
『弱い』って事はいいぞ。実際、糞みたいな毎日だ。目の前にゃ壁しかない。
これ以上の最高なんて世界の何処にだって無いだろう――?」
嘯く愛無をはじめとした一同は決死であり、同時に運命そのものである。
そんな勇者達の行く手を阻む王城リッテラムは有史以来、一度の陥落の記録も無い堅城である。
今まさに、ゼシュテルの存亡をかけて立ち上がった勇者達の行く手を阻むのは皮肉な事にそんな鉄の守護神であった。
「権能が発動するまでの時間を考えると、すぐにでも城内に突入したいところだが……
これだけ守りを固められればそう注文通りにはいくまいな」
「……しかし王城リッテラム。
如何に一度も外敵に破られた事の無い堅城であろうとも、元々が鉄帝国の持ち物であるのならば建築図面等あって然るべきと思いましたが……」
ゲオルグの呟きに微苦笑を見せたドラマの脳裏にザーバとのやり取りが思い返された。
――正確なものは無いな。いや、あるにはあるがあてにならないと言うべきか。
防衛施設の仕組みや設計を知る事はその攻略に並々ならぬ恩恵をもたらす……常識は常識だが、鉄帝国はやはり鉄帝国だった。
(……そうですね、そう言えばここは鉄帝国でしたものね)
呆れ半分、諦念半分のドラマは『そういうもの』と承知する他は無かった。
何の事は無い。歴代の皇帝が勝手にカスタムし続けた結果、この城は触れてみるまでは如何なる防御が飛び出すかも分からない針鼠(ブラック・ボックス)と化しているという事だ。性質の悪い事にその有用性だけはお墨付きにして――
成熟した国家の王城が儀礼的な役割に終始するのは世の常だが、闘争こそを信望する鉄帝国における『象徴』は実の所全く違う意味を帯びていた。歴代の皇帝という『その時に一番腕っぷしが強かった男達』は自らの居城に尊厳を求めて止まなかったのである。かくて歴代の皇帝が己の主義趣向と戦争に対しての美学を反映させ続けたリッテラムは元々の在り様である『堅城』に芸術的なまでの闘争性を兼ね備えた芸術にまで昇華されている。
「……しかし、それなりには長い人生生きちゃきたが太陽が二つ、うち一個は黒いたぁ。世も末ってのを実感してくるな?」
「頭上に黒い太陽、精兵集う眼前の堅牢が中枢には最強の冠位七罪か。状況はいかにも最悪だな」
現実はバクルドやエーレンの言う通り口にする程悲惨に『最悪』を極めているに違いない。
「権能なら一国滅ぼして余りあるのはありえたけど、ここまで派手なのは想定してなかったかな……
とにかく、まずは新皇帝の所までの道を開く事。それしかないよね」
「ああ。見過ごせば民は死ぬ。国は滅ぶ。認められるはずもなし。やれるだけのことをやるだけだ」
とは言え、イリスの言う通り『それしかない』なら話は別だ。
頷くエーレンの気概は何ら揺らがない。『最悪』は他に択を失くせば常に『最良』とも成り得よう。
「ああ、ああ――まったく。貧乏くじだ」
心底から零はぼやいた。
「確かに俺含めて命知らずだよなぁ……
でも、どのみちここどうにかしないとこの国やべぇんじゃん?
だったら……恐かろうがやるしかねぇよな、顧客もいるしな。『仕方ないよな?』」
外堀を挟み、対峙する彼我の軍勢は始まりの時を待っていた。
精々が数分にも満たない僅かな『猶予』。
遺書を書き残すには短く、お祈りを済ませるには手持無沙汰になるような微妙な時間。
睨み合いの時間に嘯きを重ねるのは、イレギュラーズがイレギュラーズだからこそに違いない!
「混沌に召喚されてから今まで力で助けられたものは多い。
でも力だけでは助けられなかったものも少なくない……
力も、想いも。それは常にどちらかに偏るべきものでは無かった筈だ。
弱くても他者を助けられる人や思いやれる人が、立ち上がって共に戦ってくれる人々がこの鉄帝にいる限り……この国を終わらせてたまるかよ!」
ウェールが吠え、攻略部隊が動き出したのと敵方――リッテラム側の迎撃兵器が起動したのは殆ど同時の出来事だった。
対地対人で使用するには過激に過ぎる大型のバリスタが、投擲兵器が此方味方の陣営に降り注ぐ。
同時に二層の堀の奥の城門が開き、敵戦力の一部が急襲の構えを見せていた。
「同じ釜の飯を食った仲、一緒に戦えるのは光栄だあなあ!
……おっと、奴さん達! やっぱり尖兵は天衝種の連中かァ!
だが――俺の鉄壁はそう容易く崩れんぞ!」
「Nyahahahahahahahaha!!! やはり、風。戦争なる風!
勇猛無謀なる突撃が大好きな連中だ! 私も仲間に入れ給えよ!」
『読み通り』のゴリョウが腕をぶし、哄笑したオラボナが後背の盾になるかのように対軍兵器を受け止める強烈な存在感を見せつけた。
「木っ端が! 小賢しいわッ!」
「うっわ……」
「人間辞めてんなあ……」
一喝したザーバの振り回した鉄球が宙空で飛来する大岩を粉砕撃墜し、『傘の下』のイーリンやミーナの表情が引き攣る。
(整理、及び分析は突入口となりうる門扉や敵陣固定兵器近傍の着弾状況を注視が最良。
他方からの射撃諸元情報の変遷や敵の迎撃状況を収集。然るべきは味方側砲火力維持という大前提……)
細い『勝ち筋』を誰より速く弾き出した黒子の視界の中で、既にせっかちな連中が活発な動きを見せている。
「撃って、ほら早く。撃ち返して……撃ったら動いて! ほら、時間は寸土より貴重なのよ!」
「城攻めなんてのは本来は『じっくり』炙るもんだろうが……」
一方でやられてばかりではいられない鉄帝国・イレギュラーズ陣営も砲撃を急かしたイーリン、『技師』として戦線を支える心算十分の錬が応じ。
「砲兵の皆さん、戦場では砲兵は『戦場の女神』と呼ばれてます。
砲兵力が戦場を支配する、砲兵こそが戦場の神なのです。
そう、故に貴方達はこの戦場の神様なのです!
一心不乱の大砲撃で敵軍を、敵の居城を更地に、大地の堆肥にしましょう! 頑張りましょう!」
抜群の偵察能力を武器に的確な砲支援を指示し始めたイナリが煽りに煽る。
「それじゃあ先ずは大きい花火を上げるとしようか……出し惜しみは無し本気で征くよ?」
「強固な城壁って言っても未知の金属でー、とかアーカーシュ的な凄いバリアみたいに全部弾いてー、ではなく!
あくまで普通に凄い硬い城ですよ、ならば! これはルシアの出番という訳でして!」
「遊びに来てやった、ぞ。バルナバス。
禄に服も着ていない癖に、住処の方は随分と分厚いようだ、が……そのドアは勝手に叩くぞ!」
更には自身の得手を『対軍殲滅式』と豪語するラムダの術式、『自分自身が火砲たる』ルシアの砲口、『史上最乱暴なドアノッカー』たるエクスマリアの暴威を背景に動き出している。
「此処にきて城攻めが出来るとは思わなんだわ!
吾も昔は城を一人で落とし傾国の美少女などと呼ばれた事もあるのだぞ!
……セレマ、聞いてる?」
「聞いてる聞いてる――ボクが傾国級に美しいという話だろ」
疾空踏破なる電撃戦を誰より可憐にこなしている――
『清楚なる毒花』、即ち百合子とセレマの二人は外堀さえ瞬時の内に飛び越えてその場所を『確保』する。
「だが今回は本物の城を落とす話だ。それも絶対に落ちない鉄帝の城塞だ……
わかるか、美少女。今日、ボクとお前が歴史を変える!」
正面攻撃ながらにこれは時間差、幾らかの奇襲要素を帯びていた。
先鞭をつけた二人は百合子の展開力を橋頭保にセレマの制圧力を生かす構えである。
そしてそれは当然ながらに、後に続く仲間達を呼び込む為の動きに他ならない。
「バルナバスに指が届くまでは犠牲者をだすわけにいかないなっ!
能力の底上げくらいはしてやるからな、威風堂々、正々堂々と城ドンじゃ~!」
「黒い太陽! いいねいいね、領地をしょっちゅうぴえんにされてたもんな!
いい機会だし、日頃のうっ憤をここで晴らすかんな!
せーっの! うぇーい!!! か弱い乙女ー!!!」
「鉄帝を……パルスちゃんがいる国を滅ぼそうとするなんて許さないよ!
行くよ! また皆が笑ってライブを観に来られるようにするためにも!」
鈴音の言葉と支援に応えるように、秋奈が、焔が。僅かなる隙を縫った攻略部隊が前に出て外堀辺りに食らいつく。
「魔法騎士セララ参上! 鉄帝の皆を守るため、ここを突破するよ!」
見た目の可愛らしさ、名乗り文句のポップさはセララの本質を担保しない。
可愛いなりでローレットでも指折りの武闘派と言える彼女は或る意味でこの戦いに最も向いた一人であろう。
「難攻不落の城攻め、ね!
無茶苦茶なオーダーは嫌いじゃねぇが、『私情』の仕事には随分吹っ掛けてくれるじゃねぇかよ」
ルカの鋭い双眸は堀を超えられる事を嫌い、撃って出てくる敵兵の姿を捉えていた。
「おー、おー。まるで英雄譚の一幕じゃねえか。
こういう時、賢いやり方はあるんだろうが……不向きなのはお互い様だな?
ならよ、正面からぶっ潰す。それがクラブ・ガンビーノのやり方だ!」
遂に会敵し、猛撃を繰り出したルカの咆哮が轟いた。
「城の奥にいる本命を狙う為に切り込むとは、どこぞの海を思い出す光景だ。
頼りになる前衛がいるとは純粋に頼もしい。
郷に入りては何とやら――鉄帝らしく派手に行こうじゃないか!」
砂漠の砂嵐を思わせる、その制圧力はラダの代名詞――そして名刺代わりですらある。
「何をどうするにしたって――正面戦闘である程度拮抗しなければ話にならないものね。
まずは存分にかき乱してあげましょうか!」
気を吐いたアンナは広い視野で敵方の動きを確認し、それ等多くの動きを見事なまでに撹乱する。
そこかしこでは彼我の兵力同士がぶつかり合う激しい戦いが始まっていた。
「まずは正面からの一手、今ここで出来る事は――使える火力は全部前にね!」
敵の視界を鮮烈に灼き裂くはアクセルの放つ神気の白光。
「正面突破の道行きを作るのはまさしく『花道』を作ること。
無血開城なんてモンが出来るたぁハナから思ってないんでね!
極寒の凍土と、漆黒の逆雨どっちがマシか……選んで貰おうか?
……お生憎様、要望(オーダー)は承ってねぇけど、よ!」
カイトの『凍獄愁雨』――氷戒凍葬たる極寒の災禍が降り注ぎ、
「ここが正念場だ! 気合入れるよー!」
熱式義体(オメガシステム)で効率的に威力を高めたヨゾラの『泥』が敵前線を飲み込みにかかる。
「君達なんかに用はない……とっととどいて、僕達は先に進むんだ……!」
彼と共に連携する祝音の繰る神滅の切っ先が阻みにかかった敵兵の一人を切り裂いた。
『彼我の軍勢の早期の衝突は取りも直さず敵軍が完全に籠る心算の無い事を告げている』。
それは即ち消耗戦だ。
「攻めなければいけない状況。誰かが矢面に立ち踏み込まなければ。
相手の数が多ければ多いほど、私の輝きは、混乱を生みます。
果たして、これが本当に私が望んだ光景なのかは、わかりませんが……」
「癒ヤス。トニカク癒ヤス。味方 集ウマデ 開幕担ッタ者達ヲ耐エサセヨウ……!」
事の是非そのものよりも、グリーフやフリークライの尽力こそがモノを言う。
「ここを通らなきゃ、はじまらない、のですよね。
ニルも、せいいっぱいがんばるのですよ……!」
得物の杖(ミラベル・ワンド)をぎゅうっと握ったニルの想いばかりがモノを言う。
本来の防戦プランならば敵方指揮官たるバトゥ・ザッハザークは籠城に終始したかったに違いない。
されど、リッテラムは堅城なれども、良くも悪くもこれは混沌の戦いであるという事だ。
空を支配するものも居れば、絶大なる火力が火を噴かないとも限らない。
先の百合子やセレマのように一足飛びに陣地を超えんとする者もあれば、特殊な手段での浸透を図る者も居よう。
要するに防衛ラインを下げる事は取られてはいけないキングの居る敵方には大問題になりかねないのだ。
『少なくとも鉄帝国側に列車砲(ノイエ・エーラ)、浮遊島(アーカーシュ)、空中機動戦艦(グラーフ・アイゼンブルート)等の切り札が存在している事を考えたら、単純な防衛戦に終始する事が敗北を近付けるのは決定的に明らかであると言えるだろうか』。
新皇帝派は防衛戦ならば今この瞬間は優位に違いないが、リッテラムを攻略せんとする主戦力を削らぬままでいたならば中期的には不利に陥るという判断だろう。無論、迎撃で削る判断も有り得ようが、少なくとも天衝種中心とは言え戦力を前に出してきたという事は……
「短期は五分。中期戦ならこっちの優位、向こうさんの準備が整う長期戦ならこっちの負けって所か。
キングまで続く隙間さえこじ開ければ――まずは戦術的勝利だよ!」
朗々と言い切ったЯ・E・Dの一撃が至近距離から敵影を撃ち抜いた。
敢えて口にしない『その先(バルナバス)』は誰にも見えない結末で……
それはきっと、チェック・メイトの盤面をひっくり返す酷いゲイムに違いなかったのだろうけど――
成否
失敗
状態異常
第1章 第2節
●鉄壁を穿つ II
「好き勝手やってるだけの魔種に皇帝が務まるかよ!
いい加減アイツを引きずり降ろさねぇと、鉄帝のお先が知れたもんじゃねぇっス」
「正面には無事人が集まっているようだからね」
ぼやいた葵に小さく零したヴェルグリーズの口調には彼らしくもないほんの僅かの冗句の色が混ざっているようにも思えた。
「『これも鉄帝国らしいと言えるのかな?』」
鉄帝らしい熱気に『あてられて』とまでは言わないが。
王城リッテラムを舞台とした攻略戦は緒戦から激しく削り合う壮絶なものとなっていた。
保有する戦力の特に大きな部分を正面戦闘に回したイレギュラーズはザーバ隊との連合軍でかなりの圧力を強めていた。
戦争の花とでも言うべき正面衝突は文字通り彼我の意地を賭けたかのような押し合いの様相を呈している。
その一方で、『馬鹿正直』が強烈な程に効いてくるものがあるのも確かだろう。
「さーて、鉄帝杯決勝戦……キックオフといくっスか?」
「まぁ、忍び込む人の為にも耐えている人の為にも他方面からの攻撃も必要だ。
精々、此方も存分にかき回してやろうじゃないか――」
『今日は1.5列目(シャドウストライカー)』を気取る葵やヴェルグリーズを含めた少数のイレギュラーズは謂わば別動隊であった。
正面に圧力を展開する事で敵を引き付け、少数の迂回で側面攻撃を伺う――これは戦術的な理に適っていると言えるだろう。
用意出来た数は現状では然して多くは無いが、一騎一騎が特別な戦力を有する『精鋭』ならばその存在感を無視する事は難しい。
「……ああ、確かにこの上。もう待ち切れないな。
戦いたくてこんなやり方にしたんだろう、ならば望むところだ――」
果たして、そう気を吐いたイズマは正面に気を取られたリッテラムの側面を突く事に成功した。
「――そういう鉄帝国らしさは嫌いじゃない。だからどこまでも『まだ諦めない』し、噛み付いてやる!」
前を見据えた彼は幻想を纏い、その視線の先の全ての障害全てに凄絶極まる全方位制圧攻撃を展開したのだ。
側面の動きに気付き、意識を向けかけた天衝種の数体を文字通りに薙ぎ倒している。
「同感ですね」
そしてその攻勢に気炎を上げたのはブランシュも同じである。
「空中戦で遅れをとっちゃ、航空猟兵の名折れですからね――一つ派手に行きますか!」
借り受けた『ブリッツクリーク』は空戦を本懐とする彼女にとってはいよいよ有難い代物だった。
何時もより俄然素早く高度を得た彼女は絶好の『ポジション』に陣取り、見下ろした敵陣を堕天の光で睥睨する。
同時に展開したフローズヴィトニルが地上側から傷んだ敵陣を猛襲するのだから余念はない。
「マイヤの故郷はやらせないっすよ。アルヤン不連続面、推して参るっす」
曰く「扇風機にも意地もプライドもある」らしいアルヤンがまさに敵を阻む『空間封鎖』を目論んで、更なる空撃を仕掛けている。
(鉄帝が無くなったら、自分もちょっと困るんすよね。守りたい人の故郷があるっすから――)
どの道攻撃を受ければ性能低下の否めないアルヤンならば、攻勢を強く取るその覚悟はハッキリしている。
これ等の一連で敵側全ての戦闘力を奪えた訳ではないが、抜群の奇襲技術の産み落とした大きな隙は進軍を図る友軍の大きな助けになろう。
「ここまで来て国土焼滅とかいただけぬの!
今のところは頑張ってどうにかするとしか言えぬけれども、一念岩をも通すとも言うのね」
機動性と連続性は『一念』の手段に相違ない。疾空踏破より、立て続けに閃くは胡桃の放つ奔放たる連続攻撃。
「正面切っての殴り合いは不得手でな。『らしく』側面を突かせて貰おうか」
「依頼とは言え前皇帝には借りがあるの、この国の騒動なんて勝手にしたらいいケド…
アレ落ちたら流石に死人が出すぎるわ、幹部一人相手に……
食事の時間ね? 愛するにせよ喰らうにせよ……いひひ!」
「鉄の塊とはいえいちおう城。
……なんとかして火を放てたりしません?」
アーマデルが、そして眷属同士似た者同士――どちらも他人の話をそう聞かなさそうなリカとクーア、【紫炎】なる二人がこの隙に一気に距離を詰め、敵陣へと切り込んだ。
「『そっち』だ」
まるでチェスの駒を動かすかのようなストラテジーはアーマデルの眼力の賜物か。
「了解、っと」
「敵をやっつけて――燃せそうなら片っ端から試してみるのですよ!」
アーマデルの奏でた狂気にも似た不協和音を従えて、リカが前に出た。
敵の迎撃を軽く弾き飛ばした彼女をブラインドにして、連携良くクーアの炎が間合いを焦がした。
「幻想民としては他国の情勢に関わりたくないですが、世界の危機、冠位種が相手となればそうも言ってられません。
ここが正念場なら――是非もなしというものです!」
反撃の爪牙をシフォリィの銀光が先んじた。
美しくも妖しきその軌跡で敵の動きさえ縫い止めて。
「何より私の中に流れている鉄帝の、いくつもの故郷の血がここを護らなければならないと言っています!
この国を――この国は。返して貰いますから!」
銀麗なる騎士の切っ先が魔獣の巨体を打ち倒していた。
しかし、敵側は側面をついた寡兵に対して幾分かの数的優位を持っている。
「……っ……!」
次が『来る』動きを見据えたシフォリィが構えを取り直すが、
「お見事です。ですが、今度は此方が」
そんなシフォリィに代わるように静かにそう言った沙月が前に出た。
腰を低く落とし、理想的な体重移動を見せている。
側面攻撃に入った沙月はこの一局面においてもそれを徹底していた。
「――――はっ!」
『シフォリィに対しての攻撃姿勢を取りつつあった巨体の側面を突き、極限の集中力で研ぎ澄ました彼女は裂帛の一撃を繰り出した』。
邪道の極み殺人『拳』。編み出した男(ばいせん)も斯様な改造を受けるとは思いもよらなんだに違いない。
そして、同時に。邪道にもう一つ邪道を重ねた沙月の技量をきっと笑って褒めるのだろう――
猛撃の乱打が天衝種を微塵に砕き。
「御免遊ばせ」
楚々たる美貌に返り血を飛ばした沙月はやはり静かなる流麗のままに長い髪を軽く払った。
正面戦闘の一方で、側面攻撃に出たイレギュラーズの攻勢は敵陣をざわめかせている。
彼女等の活躍もあり、激しくかみ合う正面が幾らか揺れたのと、
――ドン……ッ!
戦場の誰もの腹の底を揺さぶるような轟音が響いたのはほぼ同時の出来事だった。
極上の支援砲撃がリッテラムの城壁に突き刺さり、破壊の爪痕がその存在感を見せつける。
帝都中央駅(ブランデン=グラード)に到った新時代(ノイエ・エーラ)の鏑矢は皮肉にも守将バトゥの『判断』の正解を証明していた。
正面も、そして側面も。敵陣の混乱にイレギュラーズは攻勢を強めるばかり。
敵を前に大立ち回り、「ヒュウ」と口笛を吹いた葵は嘯く。
「負けられねえな。
……でも、ハットトリック位じゃ勝てないかも」
この試合、何点取っても十分ではない。
『絶対に勝たねばならないが、勝ちの確約が難しい重さがあるのだけは間違いない』!
成否
失敗
状態異常
第1章 第3節
●鉄壁を穿つ III
(有体に言っても言わなくても――)
広域俯瞰の絶大な視野で戦場を見渡す武器商人の口元に悪戯気な笑みが浮かんでいた。
(――抜群の好機ってヤツだね。特に小細工を仕掛けるなら『かなりいいタイミング』だと思うよ?)
ハイテレパスを利用した情報伝達は秘匿性が高く、実に素早いものである。
混乱した戦場で『傍受』の余裕のある者も少なかろうが、目的意識がハッキリしている側は違う。
搦め手を多用するとは思えない鉄帝国軍人の気質を考えれば駄目を押したようなものだった。
側面攻撃に出て敵を引き付けた武器商人が情報を『伝えた』のはもう一つの別動隊だ。
「敵陣に攻め入るには偵察から。
城内に少しでも多く味方を突入させるために、ボクが斥候となりましょう」
チェレンチィのやり様は『この先』に繋げる為の布石である。
戦うよりも『視る』事を優先した暗殺者は、誰の首を獲る事が戦いの勝利につながるかを知っていた。
「うん……よく見える。これは、翼ある者達の強みだわね」
「何分、『目』も多い。情報収集が捗るな?」
チェレンチィの、華蓮の、或いはレイヴンの言う偵察は直接戦闘を避けたとしても、敵の火力の只中を覗き込むような危険に満ちている。
「ちょっとだけ自慢なのだけど、簡単に捕まってはやらないのだわ」
「全くだ。あんなもので撃たれると思えばぞっとする――」
幾分か戦場に昂っているのか、何時になく挑戦的に鼻を鳴らした華蓮にレイヴンが肩を竦めた。
事実、敵砲の水平射を受けた回数は既に複数回。されど、初動は攻勢よりも情報収集と考えた彼女等は兵力配置や砲角の情報の共有に動いている。
正面戦闘を支える主力、側面から戦況を動かす部隊、そして彼等は戦闘に更なるアクセントを加える遊撃隊といった所だ。
「何れにせよ、向こうさんに圧力が入り続けるのは好都合だな。
どうせ今回は長丁場、我慢比べなら『城攻めの拠点』も生きてくるって寸法にならぁ」
その任務は多岐に渡り、例えば嘯いたサンディは既にある程度の長期戦を予期し、予備的な陣地の整備を進めていた。
側面攻撃がある程度奏功したのは言うに及ばず、戦場を極大に揺らがせたのは言うに及ばぬ列車砲の一撃である。
「随分と気持ち良く『ぶっ放した』みたいだ。あれだけの超遠距離射撃、ちょっと妬けちゃうかも」
「まぁ、同感ですが。我々はもう少し『精密』な方でしょう」
自身の言葉に肩を竦めた寛治に「まあね」とジェック。
「でも、あれだけの衝撃を受けたにしては――意外と落ち着いてるみたいだ」
「予期していたのでしょう。我々の手札は一通り把握していると見える。
城門外に撃って出てきたのも圧倒的な砲火力下おける城砦が『あてにならない』という計算の上でしょうよ。
……鉄帝にしては、良い指揮官がいるようですね」
しかし、ジェックに頷いた寛治の言う通り、敵側もさるもの。
元よりこれを警戒して『籠城』を選ばなかった分、或る程度対ショック態勢は取っていたに違いない。
「良い指揮官がいるなら、消していけば良いさ」
「そう、まさに。『もう少し精密な我々の出番という訳です」
Wrathのスコープを覗き込むジェックは『驚くべき』立射を見せた。
彼女が狙ったのは味方の情報収集、そして自身の状況判断から得た敵の『急所』――即ち前線指揮官である。
元より大した連携の取れない天衝種(バケモノ)共は兎も角、寛治曰くの『良将』の意思を遂行する『人間の指揮官』は狙い甲斐のあるネックである。彼等とてそう簡単に仕留められる相手では無かろうが、攻撃を受ければ指揮の余力は減衰する。危機に下がれば機能は低下しよう。そして守勢が強まる程に判断は鈍るというものだろう。屋台骨を揺らがせば、いざ目の当たりにする恐ろしいまでの単純暴力はいよいよ敵陣の混乱を深くしよう。
「我々は此方から。真打は皆さんに任せる事としましょうか?」
故に。
「――ったくよ、割に合わねえ仕事だぜ! どいつもこいつも反則級の力を持ちやがって!」
アルヴァのぼやきは半分が本音で、もう半分はポーズになった。
本格的なぶつかり合いが激しさを増す程に、奇手で浸透せんとする遊撃の効力も大きくなるからだ。
機動的な浸透を図るのはアルヴァだけではない。
「憤怒の太陽の力が満ちかけている今やこれが最後の好機。この戦、必ずや勝たねばならぬ――!」
「上等だ! 太陽が落ちるまでがタイムリミットなら、時間との勝負だろ!?
この国を――この国に住まう人たちを、絶対に護ってやるからな!」
狙撃を武器にする先の二人に負けじと咲耶はその踏破力で城壁の『上』の前線指揮官の一人へと肉薄し、一方の風牙は虎視眈々と城内への浸透を図っている。緒戦において『突入』の成功を果たすのはかなりの難題になるだろうが、それが『完全な無謀』にならぬのが、これまでのイレギュラーズの戦いだった。
(これほどの お城なら きっと……壁は 物質中親和で およげないくらい ぶあついでしょう
でも 城壁の 銃眼なら……その まわりなら。或いは突破する事もかなうかもしれませんの……!)
敵兵は城壁を滑るように縦に登り、『通り抜け』を狙うノリアへの対応を強いられている。
「私の父を奪った、山向こうの野蛮な国……
ハッキリ言っておくけどね、別に大好きな国じゃあ無いのよ。ゼシュテルなんて!」
やや感情的に、同等以上に熱烈に。
「……けれど、この国には飲み交わすバカみたいな友人が居る。
私達を慕ってくれるアーカーシュの人達もいる。
敢えて理由を付けるなら、こんな戦い――その人達の為、で充分でしょう!?」
敵兵に変装したアーリアが『彼女らしい魅惑で』上手く忍び込んだ外堀の内から敵の迎撃を撹乱している。
そう何度も通用しない手も含めて、手錬手管を尽くす遊撃隊は正面の、或いは側面の作り出した貴重な好機を誰一人無駄にしていない。
分かっているのだ。作戦はそれ単一で成り立つものではなく有機的な連携を以て初めて奏功するものであると。
「責任重大だぜ?」
意地悪く言ったルナに「背負わせてくれるじゃん」とシラスが笑った。
「敵本陣は相当『遠い』。まぁ――気楽にいける距離じゃないが」
「止まらねえよ、俺が一番槍だ」
「獲物は一番良い所からかぶりつくと決めてるの」
ルナの言葉をシラスが、ソアが遮るように言って笑った。
ローレットでも指折りの武闘派の考える事は見事な程に一致した。
即ち、二人で乗り込んでバルナバスを叩く――である。他ならぬ誰も中々考えないアイデアは、バックアップのルナの肩を竦めさせる程に大雑把にして強烈であり、言っても聞けない彼等一流の論理であった。
「先客がいるかも知れないが――ここは誰にも譲れねぇ」
「お腹すいたんだよねぇ」
それはシラスのみならず傍らのソアも同じようで――彼女はシラスに譲る心算も無いようで――愛らしくも獰猛な犬歯を禍々しくも剝いている。
第一ターン(こんなじょうきょう)で本丸攻略を本気で考える人間なんて他に居る筈も無く……
「どうあってもバルナバスに挑めるのは少数だ。
出遅れて蚊帳の外になる気は更々ねえよ。『最強』を名乗る男から遠ざかる訳にはいかねえのさ!」
……平然と飛び出した貴道もまた大いなる例外と言えるだろう。
遅れる訳にはいかぬとルナ、シラス、ソアが貴道を追う。
追いつかれぬと全身に力を漲らせ、目を爛々と輝かせた貴道が先を征く――
イレギュラーズが攻め、敵兵が慄く。
或いは敵兵の苛烈な攻撃にイレギュラーズ達が叩きのめされる。
彼我の戦いは未だどちらが優位と呼べる程の差も生じず、リッテラムを舞台とした戦いは刻一刻と激しさを増していた。
意志と意志がぶつかり合い、その切っ先は互いの喉元ばかりを狙っている!
――だからこそ。
「こんな所で膝つこうって奴はいないよなァ! ブチ上げんなら今だぜッ!」
一進一退、鎬を削る戦いに負けじと。弾正は声も枯れよと声を張る。
「鉄帝で出会った人々は強くなる事に前向きで、弱気な俺に戦いの心構えを教えてくれた。
だから今度は、俺が皆を支えるんだ。歌で奇跡を起こしてみせる……俺の因子は、その為に!」
「怒りと憎悪であの太陽が力を増すならば、全身全霊で明るく盛り上げる!
士気高揚はどんな戦でも大事だ。ならばおれが、いっちょ派手に盛り上げる、ってな!」
弾正の支援(アシスト)を受けたヤツェクがにっと笑う。
どうしようもない戦いだからこそ、そのどうしようもなさに抗って見せる。『抗い続けて見せる』。
大音量の『放送』は我ここに在りと見せつける力一杯の応援(エール)である。
『アーカーシュのDJ』の自負は、こんな鉄火場だからこそ強く輝く!
「アーカーシュの陽気なおじさんの出番だろ?
さあ声出せ、歌え! 手と手を取って――笑っちまう位の希望の春へまっしぐらだぜ!」
成否
失敗
状態異常
第1章 第4節
●鉄壁を穿つIV
「ハァイ、軍人さん達。素敵な秘密兵器をスペシャルデリバリーよ!」
その声は、その姿は武骨な戦場には余りにも鮮やか過ぎる――
「あらあら! 凄い歓迎ね?
じゃあ、まあ。期待通りに――気張っていきなさいよ、野郎共?
こんなに愉しいお祭りですもの。早々とギブアップするのは損よ、損!
鉄帝最高最大の大喧嘩に、でっかい華を咲かせてやろうじゃない?」
――前線にて暴れに暴れ、大立ち回りを演じるゼファーは音質の花ならぬ、『野辺に咲く大輪』と呼ぶに相応しかろう。
「ああ、まあ、そうだな。全くだ!」
しなやかな獣のように美しい、ゼファーと好対照なのは『しなやかでなく美しくもない』大山賊グドルフの存在感だ。
「男は裸一貫、身軽な方が丁度いいや。
作戦? いるかそんなもん。真っすぐ行ってブッ飛ばァす!
郷に入りては従えってんなら――それがこの国のやり方だろうがあ!」
大喝は戦いを『支配』し、山賊刀に斧戦刃から繰り出されるぶった斬りは敵兵と共に破滅的な運命さえも切り裂かんとするが如しであった。
「四人揃うのもおひさスねー」
何時もと同じく何処か惚けた調子で美咲は言った。
「南部、革命、独立島と分かれてたので尚更で。
私は余所者スがー……アルハラのない鉄帝は静かすぎて気持ち悪いんスよね」
「ハラスメント何て何処にも無いが?」
「……マリア氏の見解はさて置いて。
その辺りを『とっくり』私以上の新参者に鉄帝を教えてやりましょうか!」
幾分か胡乱なやり取りはご愛敬。
美咲の存在は【鉄腕】なる四人、鉄帝国武闘派の鏑矢である。
彼女から連鎖する攻勢はこれまでにも何度も繰り返した破壊的な猛進そのものだ。
「ええ、ええ! 準備は十分、後は死力を尽くして戦うだけ。勝てば平和が戻ってくる!
この上なく単純明快! 分かり易くて良いですわねっ!
待ってなさいバルナバス。ゼシュテルに手を出したこと、後悔させて差し上げますわー!」
「ああ、ようやくだ! よくも鉄帝国で好き勝手やってくれたな……!」
敵兵器の一部に肉薄したヴァレーリヤの一撃が強化外格の支援を受けて何時も以上に唸りを上げる。
一方で応じたマリアはすぐさまに反撃に出かかった敵の照準を高機動で撹乱し、そんな彼女から注意を無理矢理に引き剝がしている。
「小細工はなしだ。正面からぶっ飛ばしてやる!
我々が正面から斬り込めば多少なりとも他の仲間達が動きやすくなるはずだからね!」
低空を滑るマリアはまるで宙空に弾けた雷光だ。
珍しくも獰猛に犬歯を剥いた彼女の行く先は、『神の怒りに触れた愚か』の責任を取る事になるのだろう――
『戦争はかくも残酷で美しい』。
(……貴方は満足しているでしょうか?)
血風荒ぶ戦場の真ん中でエッダ・フロールリジは『不似合い』な問いかけをする自分に苦笑した。
(少し拗ねているのでしょうか?
それとも――然したる興味もないのでしょうか)
轟く武名に比して呆れる位に穏やかで涼やかな男は全くゼシュテルらしくない人間だった。
『ゼシュテルらしくない癖に、誰よりゼシュテルらしい唐変木』に違いなかった。
無事だとしたら――エッダの中で彼は生きているのだが、それはそれとして――『どちら』も有り得る。
己がものでない闘争に興味が無いのも、自分達がゼシュテルらしく戦い抜いている姿に目を細めるのも。
ただ、皇帝の特権であるかのような振る舞いは道理だが、彼女には少し癪である。
「進むのだ。陛下が居なくとも――皇帝ではない。我々が。我々こそが、ゼシュテルなのだ!」
正面より始まり、側面、遊撃。そして時折の大砲撃。
通常の城攻めのような長い猶予を持たない戦いは彼我双方の事情も相まってより激しさを増していた。
(……しかし、頑強な抵抗ですね。魔種と天衝種は兎も角、存外に人間の兵が多い。
軍人として国と命令に服従する者、鉄帝国の倫理のままに力に従う者……
士気の高さからすると、残る新皇帝派の人間は凡そそんな所でしょうか?)
撃って出た連中は天衝種が中心だが、城壁の内外から支援する兵力には人間の軍人も少なくない。
「戦闘中にじっとしていては砲撃の的ですからね。それは敵も味方も同じ事――」
「さて、これだけ敵の数がいると壮観、撃つ先には全く困り様もありません。
正直なところ、この国にはいい思い出もあんまりないのですけれど――
一応故国ですし? アーカーシュの皆さんには良くして頂きましたし。
パトリック・アネルの理想を歪めたのが憤怒だと言うのであれば、それだけで弓を取るには十分な理由でしょうから」
オリーブの掃射撃が後退しかかったリースリットを援護し敵を叩く。更には傘に着た正純の夜残が撃ち抜いた。
「私だってもう何もできない村娘じゃあありません。
この国を救うんです。そう決めたなら、ここはやり切る他はないんですから!」
マリエッタは自身の為すべきをユーフォニーを十全に生かす事と考える。
一方でユーフォニーは『城壁も壊す勢い』で敵陣の突破を狙っている。
「私はこの世界が好きだから――だから、頑張るんです! 『頑張れる』んです!」
ちらりと黒い太陽を見上げ、頭を振る。
凛と声を張った彼女の彩波揺籃の万華鏡が敵陣に強い圧力をばら撒いた。
「そう、その調子です!」
排熱する熱式義体の持つ限り、全力を放つ彼女の姿にマリエッタの瞳の輝きが強くなる。
「思う存分やっちゃってください!」
「食い止めろ――!」
たまらず。たまらずなのだろう――敵前線指揮官の一人から悲鳴にも似た怒号が響く。
咆哮を上げた天衝種が命令と共に手近な茄子子の小さな体に喰らいつくが――
「こんなにか弱い女の子に、まさかひと傷もつけられないなんて事、ありませんよね。ふふふ」
――その性、不遜にして可憐。傲慢にして邪悪。
「なんて言うか、私より先に国盗りしててムカつくんですよね。是非失敗に終わって欲しいです」
あまりにもあんまりな言葉を吐き捨てた彼女の『二重の盾』は総ゆる攻撃を遮断するリッテラムに勝る堅牢であった。
乱戦でバケモノ相手に引き付けるという意味においては巨漢にも勝る小柄な少女は持ち前のムカつくスマイルで敵を煽りに煽っている。
「何が正しいかなんて考えるのは後世の歴史家にでも任せればイイよ!
今行われてるのは世界を変える権利を賭けた挑戦者決定戦!
負ければ自分の信じる未来にトライすることすら出来ないんだ!」
気炎を上げたイグナートの鉄拳が茄子子の代わりに敵を打ちのめした。
「敵の主力と真っ向から打ち合うのに、兵員は幾ら居たって足りないことはないでしょうしね。
微力ながら、力添えをさせて――『させ続けて』貰うわよ」
「アリガト! 助かる!
……でもバトゥは少し焦ってるかもね。決着をつけるにはチョウドいいけど!」
激戦で傷を負い、消耗の見られたイグナートをすかさずルチアがフォローする。
一事が万事、これら連携を見るだけでも『実力差』は証明されていると言えるだろう。
砲火力、敵兵の数という面において鉄帝・ローレット連合軍は敵に幾らか劣ったが、兵の質という意味では十分なアドバンテージを持っていたと呼ぶべきだろう。選りすぐりの精鋭を集めた攻略部隊はそこかしこで生じる乱戦の中で少しずつ勢いを此方側に傾け続けていた。
そしてその大きな理由はイグナートの指摘した『バトゥの判断ミス』の部分である。
……否、実を言えば『これ』を指揮官のミスと呼ぶのは幾ら何でも苛酷に過ぎる。先述の通り『レンジ外』から繰り出される絶望的な砲火力を相手に籠城が難しいという判断は正確である。彼等は防衛側でありながら一定に連合軍に打撃を与え、攻勢能力を殺ぐ必要があったのは必然だ。そして城外に撃って出る兵力を『使い捨て』の利きやすく強靭な天衝種を中心に編成したのは合理的だとさえ言えるだろう。
「憤怒の権能ということはつまり……怒りゲージの高まりによって発動されることは明白。
これを止めるには怒りとは真逆のパワアー、すなわち笑い! 麿の一発ギャグをぶつける他にない……」
『問題は嘯く夢心地を含むイレギュラーズが強すぎた事だけだ』。
「皇帝陛下にもう一度謁見したい所だけど……
いい女は少し焦らすものだって、知り合いから教えてもらったしね」
『知り合いから教わった事を実践したからか、最近遊楽伯爵と上手くやったらしい』リアが微笑う。
「願いを諦めない限り、あたし達は必ず先へ進める!
この冬を越えて春の日差しを迎える為! 立ち止まらずに、前へ!
寝ぼけてる奴は目ぇかっぽじって見てなさい!
『勇気と愛』がふざけた憤怒を打ち破る所、見せてあげるから!」
「まーずーは、道を切り開ーく!
斬って斬って斬って斬りまくり、バルナバス・スティージレッドへ至るのみ!
待っておれ、バルナバス。麿が貴様の前に辿り着いた時こそが、その太陽が落ちる時じゃ!」
温かくも強い『激励』ははリアの力の本質を示し、夢心地の切っ先が更に鋭さを増すばかり。
「今日も頼りにしてるよスティアちゃん!」
「えへへ、大船に乗ったつもりで任せてね!」
正面にて、真っ向勝負を仕掛けるサクラとそれを支える超合金ガール(スティア)は実に一本気である。
「聞け勇敢なる鉄帝の兵達よ!
時は来た! 今こそ愚かなる新皇帝とそれに阿る者共から国を取り戻す時だ!」
凛として可憐に。朗々と声を張るサクラは美しく、誰よりも前に出る『実に鉄帝国らしい戦乙女』の如くである。
「傷ついた人達は無理せずに少し下がってね! また戦えるように私が傷を癒やすから!」
柔らかく優しく。我が身傷付いても『そこ』を退く事は無い、『慈愛の女神のような』スティアと合わせて戦線を支え、味方を沸かせ続けた。
掲げた白刃を真横に下ろし、サクラは『笑う』。
「――――突撃ッ!」
連合軍の『強さ』とはより正確に言うのなら単純な強さではなくシナジーを含んだ戦い慣れの方なのだから実の所、事前には読みようがない。
新皇帝軍の強さは個のそれであり、比較的個で完結していたが、連合軍は組み合わせで陣地を押し込んでいる。バトゥの指揮もあり、或る程度は防衛陣形が機能しているものの、平均的な天衝種の知性レベルではザーバを指揮を受け、総ゆる鉄火場を乗り越えてきた一同の勢いを押し止めるのは難しい。
では、早い段階から主力を全て出していれば? という話にもなろうが、『それが正解かどうかはシュレディンガーの猫である』。
「バトゥらしいよね、あるイミで」
イグナートは『より最悪』だけを回避した敵将の戦術に納得せざるを得ない。
彼はこの戦いで生き残れない、或いは押し切られる弱兵を一顧だにしていないのだ。
『連合軍が強いからと言って押し負ける連中等、悉く磨り潰されれば良い』程度のものだろう。
――バルナバスが斃れない限り、鉄帝国は滅ぶ。彼の満願は成就されるものなれば――
歓声が上がる。
外堀を超えさせまいと防衛に努めていた敵戦力が押し潰され、連合軍の浸透が強まったのだ。
外壁の一はノイエ・ノーラで崩され、対空対地兵器も各圧力、或いは遊撃の浸透戦術により機能を低下させている。
城門を破り、進軍し、玉座の間のバルナバスを『獲れ』ば破滅の時は回避されよう!
「しかし」
沸く友軍の一方で大きさを増した『太陽』を仰ぐ『黒のミスティリオン』――アリシスの表情は微妙なままだった。
「死と闇、破壊の象徴。
成程、冠位憤怒の本質が破壊であるのなら、太陽の如き破壊の力はバルナバスの権能に相応しいと言えるでしょうが……
……その名、否が応無く『第一位』の事を思い出さずにはいられない」
――アリシス。最優の魔術師を知っているかい?
――決まっております。――様を置いて他に居る筈もありません。
――いいや、『最優』は……
アリシスは『黒い太陽』の名が示す『最悪』を知っている。
彼女は『神』から受けた啓示と、自身の肌を粟立たせるその予感を全く信用する他は無かった――
成否
失敗
GMコメント
YAMIDEITEIです。
もうラリー決戦なんてやらないよ、絶対。
以下詳細。
●任務達成条件
・『煉獄篇第三冠憤怒』バルナバス・スティージレッドの撃破
・憤怒権能『黒い太陽』の発動阻止
●バルナバス・スティージレッド
『煉獄篇第三冠憤怒』。七罪と称されるオリジンの大魔種の一角です。
七罪の常で純種である幻想種に似た姿をしていますが、筋骨隆々の大男で幻想種のイメージから最も遠いタイプです。
前皇帝ヴェルス・ヴェルグ・ヴェンゲルズとの帝位戦に挑戦し、皇帝位を奪取。
新皇帝として鉄帝国に統治とも呼べない苛烈な統治を敷きましたが、その目的は全土から『憤怒』を集める事でした。バルナバスの冠位権能は『黒い太陽』。人々の怒りや憎悪を集める事で至上の破壊力を生む最悪の大技であり、それは『鉄帝国そのものを滅ぼし尽くす程のもの』と思われます。(如月=紅牙=咲耶(p3p006128)さんが『過去演算装置ヴェルザンディ』の主機能により、そういった情報を覗き見ています)
王城リッテラムの玉座の間で『その時』を待っていますが、その前に挑戦者に来て欲しい所もありそう。
戦闘能力を言うなら『最強』です。命中回避は最強(そこまででもない)位ですが、パワーとタフネスは特に悪夢です。
非固定値系のBS(割合ダメージ)は一定値までに軽減されます。又、一定確率で行動阻害効果をレジストします。
せめてもの救いは権能が(現状の情報では)大量破壊にある程度特化している為、他大魔種のような個人戦影響が比較的少ない事が挙げられるでしょう。
●黒い太陽(ブラック・サン)
憤怒権能。毎度お馴染み黒い太陽。嫌気玉。
チャージ中ですが、これがMAXになると鉄帝国は滅亡の憂き目に遭うでしょう。
●『黒狻猊』バトゥ・ザッハザーク
五十前後の獣種の将軍。反転しておらず、狂気も受けていません。
彼の思想がヤバいのは持ち前のもので、バルナバスと『気が合う』ようです。
当人の戦闘能力もさる事ながら、指揮能力がかなり高く覚悟ガンギマリなので厄介です。
バルナバスから(魔種連中を捨て置いて)王城リッテラムの守将に任命されました。
●王城リッテラム
二重の深い大堀、高い城壁、無数とも言える対空対地兵器を備える要害。
曰く『成熟国家の儀礼的な王城にあるまじき、本当の戦争芸術』。
城攻めには守り手の三倍の戦力が要る、とまことしやかに言われますが防衛力は強固です。
プロの軍人であり、思想に問題がある以外は実に有能な『黒狻猊』バトゥ・ザッハザークが守将である為、進軍は難関を極めます。全軍で玉座の間に到達する事はほぼ不可能だと思われるので、必然的に少数精鋭を送り込み、バルナバスを討つというプランが想定されるでしょう。
●リッテラム防衛隊
新皇帝派の諸兵、諸将、魔種、天衝種等の複合部隊です。
敵の数は多く、精強であり、その数や詳細は限定的な情報しかありません。
重要なのはこのシナリオの下限レベルが『80』という事です。
●友軍
本シナリオにはPC以外の友軍が存在します。
現時点で参戦済み、或いはPCサイドに伝わっているものは以下です。
・帝政派(グラーフ・アイゼンブルート)
進軍中。本シナリオ一章時点ではまだ王城まで到達していません。
壱花GMのシナリオをご確認下さい。かのシナリオ次第でバイタルが変わったり不測の事態が起きるかも知れません。
・ザーバ派(南部戦線精鋭隊)
朗報です。かの『塊鬼将』ザーバ本人が率いる精鋭部隊が本攻略に参加します。
南部戦線は最戦前である為、鉄帝国でも屈指の実戦部隊となっています。
ザーバ・ザンザが戦場に健在である限り、PC、NPCを含めた全ての味方は防御面にプラスの補正を受ける事が出来ます。
スチールグラード全体が戦場になっている為、戦いの規模は非常に大きいです。
しかしながら、王城の早期攻略に入れる友軍は全体で精鋭を中心に数百程度の規模です。
敵側も各地で戦いを進めていますが、王城は本拠地である為、兵力自体は敵の方が多いものと推測されています。
●備考
本シナリオの情報はゲームの進展と共にガンガン更新されます。
又、他シナリオの結果や判定により状況に変化を及ぼし得ます。予めご了承下さいませ。
●特殊ドロップ『闘争の誉れ』
当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争の誉れ』がドロップします。
闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran
●Danger!
当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。
●情報精度
このシナリオの情報精度はC-です。
信用していい情報とそうでない情報を切り分けて下さい。
不測の事態を警戒して下さい。
もうラリー決戦なんてやらないよ、絶対にだ(二回目)
このシナリオの背景は折角なのでレッドさんご提供のものを使いました。
太陽は一つですが角度の見え方の問題です。
以上、宜しくご参加下さいませ。
特殊兵装
本作戦に参加するPCは以下の特殊兵装を借り受ける事が可能です。
何やかんや鉄帝国は古代文明(オーパーツ)の宝庫です。
戦いのスタイルに応じてお好きなものを選択し、作戦を有利に進めましょう。尚、プレイング投稿毎に選び直せますが、それはなんやかんや上手く補給を受けたという扱いになります(特に触れません)
選択毎に機能は停止していても復活します。
【1】強化外格『カイザーストーム』
攻撃力(両面)を大幅に強化するパーツです。
攻撃回数に応じて効力が減少していきます。(10発撃つとゼロになります)
【2】対撃装甲『ローゼンキルト』
HPと防技値を増強する追加装甲です。
一定以上のダメージを受けると防技値増加効果は消失します。
【3】疾空踏破『ブリッツクリーク』
機動力を大幅に強化し、飛行性能を付与(或いは強化)するユニットです。
ダメージを受けるか10ターン経過すると機能を停止します。
【4】熱式義体『オメガシステム』
少量の能率を獲得し、充填を得るシステムです。
保有する自身のAPが20%を下回ると以降は機能停止します。
【5】無し
男(女性でも)はそういうのに頼らないんで使わない!
その心意気が集中力を増す為、クリティカルが少しだけ増えます。
攻勢判断
攻撃作戦の参加個所を決定します。
尚、攻撃作戦の支援としてNPC(モブ)等が砲火力支援を行う前提があります。(その辺の統率をしてもいいです)
自分の行動に概ね近しいものを選択し、プレイングをかけて下さい。
チーム等で連携する場合は、プレイングの一行目にタグ(【】)をつけるかキャラIDを記載して下さい。
ラリー決戦タイプですので、シナリオの進展と共に『対バルナバス』、『グラーフ・アイゼンブルート』等が追加される場合があります。
【1】正面攻撃
王城リッテラムの正面側から攻勢を仕掛けます。
当然ながら敵側は最も分厚い防御を備えていますが、正面攻撃が不十分だとそれ以外の選択肢の効果が激減します。最低限、正面に戦力を引き付ける事は攻略の絶対条件です。
ザーバ隊は正面攻撃に参加します。
【2】側面攻撃
正面攻撃に比して時間差をつける等、小細工を含め側面からの攻撃を試みます。
王城リッテラムは全方位に絶大な防御力を備えていますが、守兵は人間です。
正面と連携し、効果的な多方位攻撃を仕掛ける事で戦況を優位に変えましょう。
【3】特殊遊撃
比較的少数で敵側を攪乱する特殊な奇襲を仕掛けます。
『奇襲の内容なりに具体性が伴い、尚且つ有効であると判断された時、効果を発揮します』。
玄人向きの選択肢ですが、戦争のアクセントに一つまみ入れられれば僥倖でしょう。
【4】グラーフ・アイゼンブルート
彼方より現れた帝政派の空中戦艦を支援します。
彼等は戦艦であり空母である為、砲撃と航空戦力で戦いを強烈に支援してくれますが、『黒い太陽』が変化したのが問題です。
黒い太陽の産み出した無数の『亜魔種』の大攻勢を受けます。
事前の戦いにより魔種『焔心』により襲撃を受けているのも気がかりです。
飛行能力を駆使してグラーフ・アイゼンブルートに到り、旗艦を守りましょう!
【5】バルナバス
玉座の間に到り、バルナバス・スティージレッドと対決します。
様々な情報が不足していますが、自称『七罪最強』の彼は生半可な相手にはならないでしょう。
ヴェルス、キールはこの場所に登場します。
しかしながらメタ的に言えば皆さんの活躍が無ければ彼等は絶対に勝てません。
最精鋭を送り込み、勝利への細い道筋を掴み取りましょう!
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