シナリオ詳細
新春! セフィロト運試し
完了
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オープニング
●Dr.マッドハッター研究所
探求都市国家アデプト・『想像の塔』――Dr.マッドハッターはにんまりと微笑んでから背筋を伸ばした。
「やあ、我らの特異運命座標(アリス)。異世界への探索に、神堕ろしと大忙しであったそうだね。
兎の穴から飛び込んで、R.O.Oへと遊びに行った頃がまるで懐かしい。ところで、元気かい? 勿論、私は元気だ。君達が元気であればあるだけ私も細やかにお祝いをして置かねばならないのだけれど、君達が大忙しでは何でもない日のパーティーを開きにくいと困ってしまっててね!」
「はいはい」
マッドハッターの口へと【ばってんマーク】の書かれた紙を押し付けてから陽田 遥研究員が振り返った。
「皆さん、明けましておめでとうございます」
「そうだ。新年の幕開けであったね! さあ、特異運命座標(アリス)達には何が起こるかな? まだまだ眠気眼だろうか。
はは、成程。夢を見るのであればその椅子に座ると良い。君の夢を具現化し、愉快な茶会を作ろうでは亡いか。
君の誕生日だろう。え? 違う? 毎日が誕生日だというのに、はは、愉快だな! はは、白薔薇が赤く染まって仕舞うほどに愉快だ!」
「はいはい……ドクター」
遥が肩を竦めたが彼は止まらない。これが通常なのだ。カレンダーには奇妙なマークが踊っており、テーブルには緑色のケーキが鎮座している。切り分けた形跡のある部分からはラズベリーソースが滲んでいた。
「さて、本題だが」
「あ、切り替えた」
「そりゃあ、もう11時だからね!」
「時計が止まってますよ、ドクター」
遥の言葉も何のその、マッドハッターは『特異運命座標(アリス)』へと向き合ってから微笑んだ。
「君達に少しだけ協力して欲しいのさ! 勿論、お土産も用意しているよ。トレーニングの代りだと思って欲しい。
何せ、君達の貴重な時間を一日欲しいのだと看板娘のお嬢さんにお伝えしてみたのさ。突拍子のない物語は突拍子もないタイミングで始めるべきだ! それの幕開けに相応しい日だろう。丁度、数字も0101規則正しいのだからね」
――と、云う事で『ドクター』が作り上げたのは新年の運試しなのだそうだ。
運試しと言うだけあって、何が起こるかは分らない。独自AIでナビゲーターが自動でセッティングされるらしい。
見知った顔が選ばれたのはイレギュラーズのサポーター役のデータを観測して適当にR.O.Oデータベースから抜き出したからなのだろう。
例えば、操やカスパール、マッドハッターなどの練達重鎮だけではない。各国の主要人物やはたまた街に居る誰かまで、データを抜き出して何かに利用できないかというテストの一環だったのだろう。
それを『おみくじ』で行なうのだそうだ。勿論、おみくじを引く以外にも練達では出来る事がある。
例えば、希望ヶ浜にある音呂木神社に初詣に行き新年の抱負やお祈りを神前に、と言うことも出来よう。御守りを購入すれば安心だ。
新年初売りだって、運試しのようなもの。チャレンジをしに行くのも屹度楽しいだろう。
それに――
ガシャンッ。
「ああ、檻があるのだけれどね。R.O.Oのモンスター達もボディを与えれば有効に利用できないかと考えたのさ」
ガシャンッ。
「けれど、ちょっとストレスが溜ったようで、少しばかり遊んで貰っても構わないかな。はい、これは棒さ」
……R.O.Oでマッドハッターがデータを得る際に確認したモンスターにボディを与えたそうだが、さて。
井と書かれたフォルムの何か(実在人物とは関係ありません)が棒でつんつんと突く遥へと「あひいん、いい、いいよ~」と叫んでいる。遥の目は死んでいる。
その傍らではビーバーのような何か(実在人物とは関係ありません)が「デスゲエエエエエエエエエム」と叫んでいる。
そして、その足元でぴょこぴょこと跳ねている数十体の――( ・◡・*)。
「はい」
( ・◡・*)を膝の上にそっと載せた心優しきゴリラはドラミングをしている。
「はい」
「……と、言うわけさ。さ、楽しい一日を過ごそうか!」
言いくるめたつもりなのかマッドハッターはそこまで言ってから優雅にティーパーティーを楽しみ始めたのであった。
- 新春! セフィロト運試し完了
- 『想像の塔』の塔主より、アリスたちへと愛を込めて。
- GM名夏あかね
- 種別ラリー
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2024年01月10日 00時15分
- 章数1章
- 総採用数132人
- 参加費50RC
第1章
第1章 第1節
●新春お神籤I
「全国3000万人の胡乱人(うろんちゅ)の皆様お元気かしら〜? くるみなの。今年もよろしくお願いしますの」
マッドハッターのモニターに向かってやんややんやと手を振ったのは『ファイアフォックス』胡桃・ツァンフオ(p3p008299)。
「本日はデータの天候だけれどもお日柄もいい感じ、絶好の運試し日和なの。加えて一年の計は元旦にありとも言うので、本日中に出したかった感じなの」
占いたい事と言えば胡桃にとっての死活問題――そう、これからの自らの在り方だ。
「肝心の通常攻撃クラスがまだ見つかってないの。神様に運試しをしてみるの」
お神籤は掌を翳せば自動で数値が出てくるハイテク仕様。お神籤のエフェクトが表示され――
【08 - 吉】
『惜しいのです! もう少しで大吉だったのです。屹度、何か良いことはある筈なのですよ。
がんばるのです! ファイトなのです! こやー!
捜し物: 望んでみると良いのかも 』
何時もの情報屋が手をフリフリとして居る映像が映し出された。そんな様子を眺めてから「成程」と『蒼き燕』夜式・十七号(p3p008363)は頷く。
「久しぶりに外に出た訳だが、どうしようかな……。
新年だし、御神籤とやらでも引いてみようか。練達の文化は詳しくないが、吉凶を占うのは鉄帝でも見たことがある。
これでよいものが出たらいいのだけれど。まぁ、そううまくはいかないと思って引いてみようか。
結果にかかわらず、神社の……なんだったか。そこに巻いて帰るんだったか? では、いざ――!」
【12 - 吉】
『マッドハッターさんの温室に巻いておくのなら結果をプリントアウトするのです。ぶーん。
あ、因みにこれって結構良いのですよ。わーいって喜ぶのです。わーい!
冒険: 激しくなる。』
こっそりとガッツポーズをして居た十七号。この結果は上々だ。本当に1d100という神頼みのお神籤。何が出るかも分らないの占いの醍醐味だ。
がっつりと大枠での結果は中吉という事だが――
「心機一転! サンディ様だぜ。なんか去年はすげーこう、兼ねてからのヤマ案件がきまくった気がするが、去年の内に一応片付いたし。
今年はなんかまっさらだから、どう転ぶか全然予測つかねー。ってことで、ちょうどいい感じに運試しってか占いってか。
そういうので今年の様子見してみようじゃねーか」
具体的なことが解るわけではないけれど、それはそれだと『金庫破り』サンディ・カルタ(p3p000438)はにんまり笑い――
【47 - 小吉】
『やあ。小吉だって。丁度良い塩梅って言うんじゃないか?』
サンディ似よく似た青年がにっこりと笑った。他ならぬ練達みくじの醍醐味はこうしてAIが返答してくれることだ。
『これからの冒険は屹度、何かが起こるよ。冒険運って意味なら、そうだなあ。思うままに走れ、だ!』
快活な笑みを浮かべるアイオンにサンディは肩を竦めた。勇者様にそう言われてしまえば頷くことしか出来まい。
これから混沌に起こる未曾有の事件。それを思えばこそ。
「わあ!」
ぱちくりと瞬いたのは『星月を掬うひと』フラーゴラ・トラモント(p3p008825)だった。
「アイオンさんもちゃんとデータにあるんだね! それに、不思議な感じだけど、シントーって流派の神聖な場所をイメージしているのかな?」
きょとんとしたフラーゴラに奇妙な茶会の席で研究者達が雰囲気作りに巫女の格好をしている事にも気付いた。絵馬なども奉納できそうだ。
「アトさんと結婚出来ますように♡って描いておくね。あとでベイクドモチョッチョっていうの? 食べに行くんだあ。あ、お神籤お願いします!」
【67 - 末吉】
『末吉か。うん、これからよくしていくと良いよ。でも、もしかするとベイクドモチョチョじゃなくて、大判焼きがあるかもしれないらしい。
心して挑んでくれ。やっぱり、食事というものは名前が変わるだけで身構えてしまうもんな』
何故か微笑むアイオンにフラーゴラはこくこくと大きく頷いた。
「じゃあボクも今年の運試し! お神籤を引くよー。頭の中で念じながら引くよ。大吉、でろー!」
悪い結果でもポジティブシンキングの『魔法騎士』セララ(p3p000273)。世界を救うことを考えればどんな結果でも大吉になるだろう。
【49 - 小吉】
『うん、まずまずな結果だよ。そしたら、これを大吉にしていくんだろう?
セララなら出来るさ。やっぱり、その笑顔だと大吉だもんね。楽しい一日になれば良いな』
「うんうん、じゃあ、次はバクルドさんかな?」
「ああ。信心とかがあるわけでもねえが。
放浪先に立ち寄った村の風習は験担ぎに沿うこともあるしその延長線と考えればまあ……」
二番弟子のコメントがあるというならばそれも喜ばしいことだ。
「それはそれとして碌な事になりそうにない気がするのは杞憂かはたまた放浪者としての勘って奴だ」
『蛇喰らい』バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)はにんまりと笑ってからお神籤に手を翳した。
【59 - 小吉】
『セララと一緒だな。碌な事にならないとしても、何かがあっても乗り越えられるって事じゃないか?
これからを見据えやすいって意味としては素晴らしいよ。旅って言うのは困難が付き物、だろ?』
弟子の言葉にバクルドは「まあ、そうだなあ」と明るく笑って見せた。
成否
成功
第1章 第2節
●檻I
「ウオオオオオオオオ!!!!!!!」
『鉄帝神輿祭り2023最優秀料理人』御子神・天狐(p3p009798)の渾身の一撃。
無数のハイペリオンにわっしょいわっしょいとされながらスーパーウドンライドを決めようとする天狐。
すると、檻の中から何かの腕がぐいんと伸びた。
( ・◡・*)「ふふっ」
「あああああ―――――ッ!!!
何かに掴まれた。天狐の身体が引き摺られていく様子を『翠迅の守護』ジュリエット・フォーサイス(p3p008823)がおろおろとしながら見守って居る。
「何かが居ます」
ジュリエットは危機迫る様子で言った。
「どこかでお会いしたような、して居ないような。あのオレンジ色のまわるい生き物が腕を伸ばして捕まえています。
あ、あの。離して頂けませんか。す、凄い力……ファンシーなビーバーさんが何か言って……
デスゲエエエエエエエエム――!!!!!
「ど、どうすれば。ふふって笑ってます……どうして……!?」
「分らないのです」
首をふるふると振った『おいしいを一緒に』ニル(p3p009185)も衝撃を覚えたような顔をしている。
「お顔は可愛らしいのですが……」
「はい。ニルもそう思います。ニルはあとでテアドールさまと初詣に行くつもりで、その前に見に来ました。
井様? 井様が怯えているようにも見えますが……あの、これは如何すれば良いですか?
大丈夫ですか? おなかすいていませんか? みなさま、何が「おいしい」のでしょう? 天狐様じゃないのは確かです」
「うどんを食え!!!!!」
妖怪・うどん食えになりかねない天狐を掴む( ・◡・*)。眺めて居たジュリエットは「何がお好きですか?」と問うた。
( ・◡・*)「ふふっ」
井「えっちなのならなんでもOKです」
「おもち? 栗きんとん? バナナ? 低身長童顔成人男子? ぎゃる? それは、『おいしい』のですか……?」
困惑するニルに井は「はい」と頷いている。ジュリエットとニルは困惑している――!
「カリギュラ効果って知ってるにゃ?
やっちゃダメなことほどやりたくなる心理とかそういうのにゃ。
いつかはショウを超えるくらいの情報屋を目指す僕は、最近ちょっとかしこいのにゃ」
胸を張った『見習い情報屋』杜里 ちぐさ(p3p010035)は「障らない方が良い」と分かって居ながらもつんつんと突こうと向き直り。
「あの……ホントにツンツンしてもいいのにゃ? 楽しいにゃ? 一応聞いとくにゃ」
井「いいよ」
「い、いいのかにゃ………なんか、大丈夫そう……にゃ??
せっかくだから報告書を彩るべくインタビューしてみるにゃ。モンスターの人(?)たちは何か好きなものとかあるのかにゃ?」
井「えっちなのならなんでも」
「そ、それしか答えないにゃ……」
困惑するちぐさに『約束の力』メイメイ・ルー(p3p004460)が「めぇ……」と鳴いた。おめかしをして此処までやってきたのだがデートスポットにするには間違えてしまった気がしてならなかった。
「え、ええと……」
明けましておめでとうと微笑んでみても、檻に意識が向いてしまって仕方が無いのだ。
「メイメイ、これが練達で見られる不思議なものなのか?」
「はい。そう、なのですが……。晴さま、これ、異文化交流というレベルのお話、ではなさそうです。
と、とりあえず、つついてみます、か? ……えいっ! だ、大丈夫そう、です……ね……?」
「大丈夫なのだろうか、これは」
「は、はい……」
井と描かれた謎のレインボーが「あひんあひん」と叫んでいる。晴明があからさまに怯えた顔をして居ることをメイメイは見逃さなかった。
「めぇ……! 晴さま、大丈夫です、か?」
ぎゅっとしがみ付いて庇う姿勢を見せたメイメイに晴明は「こんなにも恐ろしい生き物が居て良いのか」と呻く。
「大丈夫ですか」と声を掛けたのは『導きの双閃』ルーキス・ファウン(p3p008870)であった。
「こちらにセフィロトの御神体が祀られていると聞いてお参りにきました!」
「これが、ご神体……?」
困惑するメイメイと晴明にルーキスは「想像と違いますが……」と呟いてから「井さんは偽物みたいですけれども」とほっと胸を撫で下ろす。
「こっちの( ・◡・*)からは、どことなく禍々し…じゃなくて神々しい雰囲気を感じますね。成程、こちらが御神体ですか。
えっ、この棒で突くんですか? 中々斬新な参拝方法ですね。つんつんつんつん……。
供物もちゃんと用意してきましたのでご安心を! 低身長童顔成人男子奴隷達です、どうぞお納め下さい。
これを供えると良い気がしたのです。何故かは分からないんですが!」
――奇声が響き渡る!
微笑むルーキスの背を信じられないものを見るような顔で晴明は見ていた。
成否
成功
第1章 第3節
●初詣I
「初詣と言う名の……いや、マジでそれとなくひよのの様子見に来たんだけど」と呟いてからちら、と見遣れば忙しそうに走り回るひよのの姿があった。
無事に解決したと言えどもやはり心配なのだと『雨夜の映し身』カイト(p3p007128)は頭をがりがりと掻いてから嘆息する。
初詣で願掛けするべきで在るかと言えば頼まないと其れは其れで罰当たりだろうか。祈る事は人並みに、特に言う理由も無いのだが、カイトはちら、とひよのを眺め――何となくそれらを熟していた。
勿論、遠巻きに彼女を見る事で無事の確認をすることが目的であったのだけれども、普通に目があった。
「あら」と笑うひよのにカイトは肩を竦める。
「ああ、ひよの。元気そうで何より」
「はい。元気ですよ。お神籤とか、ご参拝ですか?」
「そう。そーいうなんでもないこと。あんまりこの先できなくなる気がしてて、さ。
……気の所為であってほしいんだけど。そういう厄除けとかって、本業に含まれたり……するか?」
肩を竦めるカイトにひよのは「厄除けは出来るでしょうけれど、けれど、大きすぎればそれを何れだけ減らせるかですものね」と目を伏せる。
ああ、確かにそうなのだろうと頷くカイトの側に悍ましい気配が漂った。「うわ」と振り返れば普通に微笑む『音呂木の蛇巫女』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)が立っている。
「ういっす! パイセン! お憑かれ様です! 初詣に来ました! いや、元々ここに居たような? あれ?
それはさておき私――ちゃんの運勢が気になって御神籤をひきにきました! え? はいぃ! 巫女のお仕事に戻りますう!
ハッ! 去年も同じやり取りした気がするぞう!?」
睨め付けるひよのに秋奈が慌てた様子で「アリエっちいるから、サボってないよ! アリエっちも手伝ってくれるし!」と手を振る。
「有柄を使うのはおやめなさい」
「えっ、自力で? あ、はい。努力します。でもさあ、アリエっちもやりたああだだだだだアリエっちもつねらないで、それ二人の身体」
慌てた様子で身体を揺らがせる秋奈は「三が日終わったら、もっとひよのパイセンに付き合ってもらうかんね!」と叫んだ。
「全く以て……」
嘆息するひよのに『約束の瓊剣』ヴェルグリーズ(p3p008566)は「やあ」と声を掛けてから笑った。
「あけましておめでとう、ひよの殿。昨年は色々と世話になったね。
その後、あさひ殿共々変わりはないかな? 何か困ったことがあればいつでも言ってね」
「ええ。大丈夫ですよ。あさひは……賽銭箱の近くで皆さんの祈りを食べてますけれど」
ほら、と指差すひよのはあれでも神様だからそれを糧に叶えていくのだと告げる。
「そっか。祈りを食べて……神様らしいね」
「ヴェルグリーズさんのお祈りは?」
「そうだね……今年……今年はもう少し家族でゆっくりできると嬉しいかな。
キミにも気遣ってもらったからね、子供達との時間ももっと増やしたいと思っているよ。
去年は色々と子供達にも気を使わせてしまったからね。何なら練達に住んでいるから、ここにも連れてきてあげたいかな」
勿論と笑うひよのから家族の御守りを受け取ってからヴェルグリーズは「この御守りのお世話にならなければ良いのだけれど」と先を思い嘆息した。
「ねえ、玲樹」
チョコバナナを囓る琉珂に琉・玲樹(p3p010481)は「どうしたの?」と首を捻る。
「明けましておめでとう、琉珂。おしょうがつ?は神様にお願い事をする日なんだよ。一緒に神様にお願い事――って思ったけど」
「うん、混み合っているわ。たこ焼きも食べなきゃ」
もぐもぐとチョコバナナを囓っていた玲樹に「そのひらひらの綺麗な服汚れない?」とこてりと首を傾げる。
「振り袖っていうのよ。汚れちゃうかも。気をつけなくっちゃいけないわねえ」と琉珂は困り顔だ。
「でも、お願い事をちゃんとしてから食べなきゃ、ね! 玲樹は何をお願いするの?」
「ふふ〜! よく聞いてくれたよ! すばり!今年も美味しい物がいっぱい食べられますように、だよ!
やっぱり美味しい物を食べてる時が一番幸せだよね!」
勿論だと笑い合う二人の傍らを通り過ぎていくのは水夜子と『ヴァナルガント』ミザリィ・メルヒェン(p3p010073)であった。
「実は、初詣というものをするのは初めてなんです。元の世界にそういう文化はありませんでしたので」
「そうなのですね。本当に?」
口実――だというのはばれているけれど、嘘では無いのだとミザリィが目を細めれば水夜子がくすりと笑う。
「あさひさんが祈りを食い、信仰を得て力を付け、そして皆に幸せを与えるのですね。加護の可視化のようで面白いですよね。
ですから、あさひさんが咀嚼しやすいように抱負を語り、しっかりと未来を見据えてやるのが神様にとっての養分なのです」
「抱負を語る、なるほど。そうですね……特異運命座標としては勿論、残った冠位には勝たねばなりません。
それから、なるべく死者や重傷者が出ないように立ち回りたいですね。癒し手へ戻ることも検討しています。……真面目すぎますかね?」
「いえ、良いのではないでしょうか。私も案外無鉄砲なので、戦えるように整えたいですし、命、失いたくないので」
ミザリィが癒やし手ならば助かるものだと水夜子はからからと笑った。そんな顔を見てからミザリィは「もっと個人的な抱負でも?」と問うた。
「ええ。どうぞ」
「みゃーこと、もっと同じ時を過ごして、たくさん思い出を残したいです。
ええ、勿論この初詣もそのひとつです。――今年もよろしくお願いしますね、みゃーこ」
水夜子はぱちくりと瞬いてから勿論だと楽しげに微笑んで見せた。
「明けましておめでとう。今年もよろしくな。にしても音呂木神社も中々に盛況だな。
色々あったせいか、あまり縁起が良い印象がないが……。まぁ神社だ。ご利益はあるだろう。時間があったら後でお御籤でも引きに行くか?」
『決意の復讐者』國定 天川(p3p010201)の問い掛けに晴陽は「それでも、信仰の中心なのでしょうね」と頷いた。
晴陽から話を聞けば、成程、この場所の神様というのも案外『きちんと扱えば』捨置くものでもないのだろうと考える。
余りに人が多いと手を取れば彼女は何事もないようにそれに応じた。本殿で二礼二拍手一礼、慣れた様子で行なう天川も晴陽も似たような文化で育ったことが良く分かる。
(どうか晴陽が末永く健やかに幸せでありますように……)
祈る天川の横顔をまじまじと見ていた晴陽は「何をお祈りなさったのですか?」と問うた。
「何を祈ったかだって? ふふ。惚れた女の健康と幸せかな。俺が幸せにしてやるつもりだが、神頼みするだけならタダだろう?
まぁ……俺が常に晴陽の傍に居られる訳じゃねぇからな……。この世界にゃ実際に神様も居そうだし、祈っておくのも悪かねぇかなってな」
晴陽はぱちりと瞬いてから天川をじっと見た。その顔を見れば己が前向きになった事は分る。
それでも、『あの時』の事からは完全には抜け出せない。自分の手が届かないところで愛する者を失うのは恐ろしい。
だからこそ、目一杯の愛を注ぐのだ。後悔しないように、自分の気持ちが全て、愛する人に伝わるように――天川に晴陽は「奇遇ですね」と何気なく言った。
「どうやら、無茶をするタイプなので。私も貴方と同じそう言った方のご無事を祈っておきましたよ」と。
成否
成功
第1章 第4節
●新春お神籤II
「今年も無事年を越せたなぁ。練達もR.O.Oを始め面白い催しをやるもんだ。
今年こそはタワーオブシュペルを踏破するついでに魔種を根絶する! ……を抱負にお神籤を引かせてもらおうかね。
塔踏破は占ってもらうもんでもないし、健康運でも占ってもらおうか。大分パンドラも消耗したし回復を意識しないとなー」
さて、如何したものかなと『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)はおみくじに手を翳そうとした。
タワーオブシュペルと聞いたからだろうかマッドハッターがニコニコとした気がしたのは気のせいではないはずだ。
【83 - 凶】
『ふん、まだまだ甘いという事だな』
画面に映し出されたシュペルをマッドハッターは自信作なのだと指差した。この偏屈ぶりをAIに学習させるのは骨が折れるのだそうだ。
『健康には気をつけると良い。何か簡単なことで身体とは脆くなるものだろうからな!』
暖かくしろよとでも言って居るかのような愉快な反応を作り上げてマッドハッターがご満悦な事が錬には良く分かった。
「1年ってあっと言う間らしいわね、人にとっては。
新年、あけましておめでとう……失礼ね、その眼差し。アタシだって新年の挨拶位はするのよ?」
「お誕生日おめでとう、アリス」
「違うわよ」
全く変な人、と『ジーニアスムーブ』リディア=フォン=ユーベルヴェーク(p3p005189)は頬を膨らます。
マッドハッターという奇人は毎日を誰かの誕生日だと口にして楽しげに話すのだ。
「アタシも折角だからお神籤は引いていくわ。何が出るかしら? どうせなら、大吉を引きたいわね」
【12 - 吉】
『とても良いと思うのですよ! 吉なのです。あと一歩で大吉なら、これからもっと良くなると思うのですよ!』
情報屋の少女が画面に映し出されて嬉しそうに笑っている。大吉になって終うのも味気ないのだろうか。
リディアは「なら、運勢は良いのだから頑張らなくっちゃね?」と穏やかに微笑んだ。
そんな画面にデジタルで映し出される不思議なおみくじを「こんな感じなのですね」と『星巡る旅の始まり』ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)はぱちくりと瞬いてから眺めて居た。
「よくわかりませんがAIがナビゲートしてくださるとか。まぁ時間はありますから運試ししてみましょう。
うーん……気になるのは仕事運でしょうか。今でこそ安定して生活できていますが、やはり働かざる者食うべからずです。
そのために色々な国や世界に行くのは別に構いません。友人へのお土産話にもなりますし。
ただ、変な事に巻き込まれるのはちょっと遠慮したいですね……。普通でいいんです普通で。……もしかして既に巻き込まれてます??」
ならば、それを占ってみようとマッドハッターに勧められてからそっと手を翳す。
【09 - 吉】
『何かに巻込まれても乗り切れるという結果なのですよ。仕事運としては、覚悟を決めたのなら何だって乗り越えられる、なのです!』
楽しげに笑うユリーカの声が響く。なんともトンチキシステムだと『記憶に刻め』マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)は眺めた。
「そうかR.O.Oのデータをサルベージして……。ユリーカもシュペルもAIで再現とはなかなかだな。
今年は特に何事もなく平穏無事に過ごせればいいのだが…昨今の世情を見る限り平穏とはかけ離れているんだろう。
それはまぁ仕方ない。今年の運勢を試して…生きて帰れることを祈るだけ。とりあえずおみくじを引いた後はゆっくり帰ろう、と思ったのだが……」
【45 - 小吉】
『小吉でも、ツキはあるのですよ! のんびりどっしり構えると良いと思うのです! ファイト!』
「……AIだから好き勝手に喋らせることが可能なのか……へぇ。そう言うゲームにもなりそうだな……」
マニエラの探究心が刺激されていた。ユリーカが映された画面を眺めるマニエラの傍で挙手をするのは後輩、こと、『先駆ける狼』ウルズ・ウィムフォクシー(p3p009291)。
「ジャパニーズギャンブル! じゃない、おみくじ!
あれやりたーい! よし、やろ、即決するのができる後輩ですからね。
はいはーい! おみくじやらしてほしーっす! 今年の運勢がこれ一本で決まるってよくよく考えるとやべーっすよね。大吉こいこいこいこい!」
【67 - 末吉】
『後輩だからこその末吉なのですよ。ボクより運勢が良かったら仕方が無いのです。ふふん』
「あ、じゃあ、ユリーカ『先輩』は?」
『あっ、勝手にするなですよ!?」
【95 - 凶】
「ああ、因みに、ギリギリ凶だね。凄い運だ。称賛するよ、アリス」
「あれ? 褒められたっす」
ぱちくりと瞬いたウルズにAIユリーカが「なんてことをするですかー!」と叫んでいる。
その声を聞いてから『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)が愉快だと小さく笑った。
「ふふ! 私の運勢はいつだって猛虎だけど、折角だから占って貰おうじゃあないか!
ではよろしく頼むよ! きっと猛虎吉が出るに違いない! 私は虎だからね!」
【78 - 末吉】
まあまあなのだろうかとマリアとAIユリーカが見詰めある。
『何か抱負とかあるですか? 聞いてやるのです』
「そうだなあ。……出来れば、もう友達は失いたくないね。そうだ。それがいい。今年の抱負は、もう友を失わない。守ってみせる。これにしよう。
全く困ってしまうよね…リ屋の仕事はいつだって人手不足っていうのにさ。
急に居なくなってしまうんだもん。本当に、困ったものさ。
寂しいな……。こんな姿はヴァリューシャには見せられないね。
でも一人だし、良いよね……。全部タイム君が悪いんだ。そうさ。私が悲しいのは彼女が悪い。それくらいの文句は許しておくれ」
俯いたマリアの背中をじっと見詰めているのはとらぁ君だった。
どこか寂しげなとらぁ君は突然居なくなって仕舞った従業員を思うかのようである。
『とらぁ君もいるのです……』
【71 - 末吉】
『とらぁ君も末吉なのです。大丈夫、これからツキが回ってくるですよ!』
成否
成功
第1章 第5節
●檻II
『赤い頭巾の魔砲狼』Я・E・D(p3p009532)は言った。
「もちろん、檻の中を突っつくのにひよってるやつなんていないよねーー」
ペットだと聞いた。動物だと聞いた。だからこそ綺麗な水とペットフード(猫缶)を用意した。
完璧な飼育環境だ。動物だって遊ばねばストレスを溜める。だからこその準備を整えた、筈だった。
「いや」
目の前の井をぐりぐりと突くと「あひぃ」と声を上げる。
「いいのかな。マッドハッター。一番振動する棒とか用意できる」
「しようか」
――いいのかな。
水をあげても増殖しない筈だ。だから屹度大丈夫。水分補給をさせながら的確にストレスを……あれ、後ろの方でオレンジの増えていませんか……?
「わあ……!」
眼前の檻に『昴星』アルム・カンフローレル(p3p007874)は手を打ち合わせて瞳を輝かせた。
檻の中で暴れ回る奇々怪々――新年早々、勝手知ったる相手を檻にぶち込んでこの表現をするとはどう言うことだろうと思わなくもないライターが後方に控えているが――の中でも人一倍穏やかに微笑んで居るゴリラの姿がある。
「心優しきゴリラ……! ゴリラだ……!! なんかいっぱいお世話になった気がするからつんつんしていっぱい遊んであげよう……!」
ゴリラは穏やかに微笑んでアルムに優しすぎるドラミングを繰返している。
「ほ〜ら、バナナだよぉ〜。美味しいよ〜。星の形に並べて渡してあげようねぇ。
いいかい、俺みたいな無害なカミサマには優しくするんだよぉ。
……いや、ちょっとくらい厳しい目に遭わせてもいいんだけど。苦難を乗り越えてこそってところもあるからね」
「ウホ……」
ゴリラはドラミングをしながらそっとバナナを口にした。バナナを食べるゴリラの傍では「あひい、いいですね~~!」と叫んでいる井が居る。
「あれは……井……?
なんだろう。こっちもいっぱいお世話になった気がするんだけど、気のせいかな……似てるけど違う人な気もするなぁ。
俺がお世話になったのはアライグマみたいな容姿だった気がするし……こんな虹色じゃなかった気がする。ん? やっぱり虹色だったかな……?」
他人の空似……かも、しれない。こんなゲーミング洗井落雲が現実に居て堪るものか。困惑するのは『歪角ノ夜叉』八重 慧(p3p008813)だった。
「なんすかこの百鬼夜行」
マッドハッターの話によれば何だか勝手に連れてこられて檻に詰め込まれてストレスを溜めたモンスターということなのだろう。信じても良いのだろうか……。
「井がなんか言語喋ってて、なんとなく他に比べると人に好意的(?)な気がしないでもない……んですが……。
こう、棒を猫じゃらしのように……えっ、つつかれる方が好み?」
「焦らす方が得意ですか!?」
「いえ……突きます……なんか竜宮とか練達で偶にこういう依頼とかあったな……ウッ頭が。
ううっ……バニーは着ません、もう着ませんってば……なんでイラストまであるんだ俺……」
トラウマが刺激される。目の前の怪生物は危険だ――!
一番反応が良さそうなツインテバニーに身を包んで『黒のステイルメイト』リースヒース(p3p009207)は遣ってきた。エナメル生地が井さんの心にクリーンヒットするはずだ。
「こう言うのが好きなのだろう。霊に聞いた。多分好きだと思う。で、この分厚いブーツのそこで……」
「あああああ――――!」
虹色の井が揺れている。恐い。
これが恩を労っているのか謎の扉を開いているのかは分らないが前者だと認識しておこうとリースヒースはそう思った。
「混沌に来て幾星霜、たまには変わったこともしないとなっ。檻のなかに何はいってんのかはしらんが、動物かなんかだろ」
箒を中に突っ込んで慟哭する謎の井も動物だと認識した『クラブチャンピオン シード選手』岩倉・鈴音(p3p006119)は噛まなさそうだと手を突っ込んで――何かに握られた。
「新年明けましておめでとう! 運がよけりゃ正体はピチピチギャルだろ。脂肪は掴め! うーむこりゃ贅肉かな」
「いいですねええええええええ」
「何か居る」
何かに手を握られている。離れない。離れないだろうか。
「握っていきましょうねええええ!!!! ほぅら、ぎゅっぎゅ!!!!!」
(……さっきまでコレ、デスゲェエエエエムとか叫んでましたよね。何だコイツ……)
『今を守って』ムサシ・セルブライト(p3p010126)はまじまじとそれを見ていた。宇宙指定凶暴生命体(星を食い尽くすレベル)が入っていると言われた方が安心する生物が中で蠢いている。
「大丈夫であります……? 棒で突いたら一気に檻の中に引っ張られたり棒を伝って檻の外に出てきたりとかは……しないでありますよね……?」
突いたら謎のビーバーが離れたが、何だか不安にはなる。このまま檻に引き摺り込まれて捕食されてしまうのでは――!?
「で、でも……ストレスが溜まっているのは少し可愛そうでありますし……ちょっと遊んであげなくては……。
心優しいゴリラと情緒を焼きに来そうな井さん……? と( ・◡・*)さんに……」
「はい。その……これは、持って帰っちゃダメなんですよね……?」
可愛いけれど。クル・クルジス(p3p010403)はぱちくりと瞬いた。痛くはしないように優しく『えいえい』と突くクルの傍で「辞めた方がいいんじゃねぇか?」と『流浪鬼』桐生 雄(p3p010750)は低身長童顔成人男子奴隷を檻の前に差し出した。
ガァァンッ!!!!
檻に( ・◡・*)がぶつかった。
「おっ、いい食いつき! ほれほれもっと突っついてやれ。すげえ事なるぜきっと!!」
ガァァァンッ!!!!!!!
欲しそうである。朝から酔っていても皆生暖かい目で見てくれるから新年は最高だぜ。と、思って居たが酔いさえ吹っ飛ばす勢いで飛び込んでくる。
「はは、凄い凄い」
『洪水の蛇』成龍(p3p009884)は楽しげに笑った。除夜の鐘みたいに( ・◡・*)を突こうとする成龍の前に井が飛び出した。
「もっと! イイッ! あ、そこ!」
「あっそーれ! ごいいいいーーーん! ガンガンガンッカッカッ」
ドンカッカッのリズムで突き続ける成龍。呻く井。謎のイケボを響かせて、脳内ギャルに突かれている想像をして居る居。
( ・◡・*)「^^」
「( ・◡・*)は微笑みに圧がありますな……何故か震えがぶるぶる。おさまり給え鎮まり給え……。
ゴリラ……ゴリラ?? 鉄帝とかにいそうですな……そういえばアメリカなる国ではゴリラは超超人気だとか」
お祈りをする成龍に井が「もっとぉ~」と懇願している。恐い。中々に恐怖を煽る存在だ。
「ウホ」
「あら。ゴリラの方、お優しいですね」
膝の上に( ・◡・*)を乗せてスマイルを浮かべたゴリラに『紅の想い』雨紅(p3p008287)は柔らかな微笑みを浮かべた。さすがは森の賢者だ。
「しかし……R.O.Oから連れてこられて、不安だったりしないのでしょうか? 彼(?)のストレスはそういうのが原因なのやも。
つまり、一緒にドラミングして、こちらにも仲間がいると思ってくださればストレスも軽減されるのでは?」
雨紅はゆっくりと胸に手を当てた。両足を肩幅に開きやや前傾姿勢をとる。
そう、今の雨紅はゴリラ。ゴリラなのだ。ドラミングをどんどこどんどこ繰返す雨紅にゴリラも嬉しそうにドラミングを繰返す。
異様なゴリラ空間を指差して笑うビーバーを『愛を知らぬ者』恋屍・愛無(p3p007296)は「あれは危険だよ、水夜子君」と指差した。
「危険ですか?」
「ああ、けれど僕はビーバーを突くのだけれど。水夜子君は如何する?
君のあぐれっしぶ欲を満たすいい機会だろう。モンスター退治には連れて行けやしないが、怪異探索だと彼女も並みの怪異では満足してくれぬだろうからな。以前の異世界で剣をぶん回す彼女も楽しそうだったし。突くと良い」
「オススメは?」
「あの中だと( ・◡・*)は何か危険度が高そうな気がする。あの井っぽいのか、ゴリラみたいなのは比較的安全な気がするけど。
なんなら一緒につつくかね。しっぽ当たりならつついても、そんなに怒ったりしないかもしれない。顔は何か可哀そうだし」
「……」
突いて許されるのかと水夜子はじっと檻の中を見ていた。「安心しろよな! 大丈夫だぜ!」と笑って飛び出したのは『簒奪者』カイト・シャルラハ(p3p000684)。
「井はほら、つついても真ん中でスカっていきそうだし、ゴリラさんはお世話になること多し、( ・◡・*)は祟られそうだし。
とりさんチキンハートよ、とりだけに。
というわけでビーバーのような何かをつつくことにする。くちばしで。つんつん。鳥だもの、つつくならくちばしよね?」
「いいですよォ」
「ほら、良いって」
「言い残すことは?」
「あ、新年の抱負? とりあえずPPP、生きて完走ですね。いつ死んでもおかしくないよね現状!」
「違いません?」
水夜子は愛無の袖をついついと引っ張って「あれ、死ぬ前に言い残すことはないか聞いてません?」とカイトとビーバーの様子を伺って居る。
「分らない」
「カイトさん……」
二人の生温かな視線を受けながらカイトはふと思い立ったように言った。
「ところでナツアカネというナマモノをつつくって選択肢はないの?」
――ええんか? なあ、ええんか……?
成否
成功
第1章 第6節
●新春お神籤III
――愉快な6人がやってきた。
「たみちゃん! とーるちゃん!!! マリエッタちゃんにセレナちゃんも! おみくじだわ! おみくじ! 引かなきゃ。
良いやつ出るまで引くのよ 一番いいやつがほしい。たみちゃん、一番いいおみくじって何? だいきち? じゃあそれがいいわ! それがほしい!」
ぐいぐいと羊羹――ではなく『心よ、友に届いているか』水天宮 妙見子(p3p010644)の尾を引っ張っているのは『狙われた想い』メリーノ・アリテンシア(p3p010217)。
「メリーノ様ぁ! 引っ張らないでください! 尻尾ちぎれちゃう!
大吉もいいんですが……神社によっては大大吉っていう大吉よりも上の運勢があるんですよ」
豆知識を披露しながら尾を引き摺られていく妙見子は「待って下さいよ~~」とずるずると引き摺られていった。
「わっ、わっ! 押さないで下さい、メリーノさん! わかりました、おみくじ引きますから!」
引き摺られるようにやってきた『プリンス・プリンセス』トール=アシェンプテル(p3p010816)は正装だとオーロラドレスで煌めいていた。
その姿をカロルが「え、やばくない? 超絶美少女じゃないの。私もそれ着たい」と追い剥ぎをしようとしているのは気のせいではない。
「ダメです、ダメですって」
「……」
『死血の魔女』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)は何が起こっているのだという顔をした。新年早々、何かが起こっている。
斯うした文化はマリエッタ自身にも余り馴染みが無かった。だが『夜守の魔女』セレナ・夜月(p3p010688)が「一緒に引きましょうね」と言うのだからそれを無碍には出来まい。
「シャイネンナハトでは結局どこかにふらっと行っちゃったんだから。新年くらいは一緒に過ごしてよね!
運勢が良くても悪くても、ちょっとヘンだったりしても、わたしが一緒だから大丈夫よ!」
「ええ、なら……」
追い剥ぎを仕様とするカロルと掴まれているトールを横目にマリエッタは画面の前へと進み――
「ルルちゃん、引きますよ」
「良いわよ。何の運勢にするの?」
「そうですね……恋愛運とか恋愛運とかあと恋愛運とか占ってみたらいいんじゃないですか?
妙見子もそれで引いてみますので結果が良かったら一緒に見せ合いっこしましょう」
そそくさとトールを掴んでやってくるカロルにマリエッタはどうしてと呟いた。
「というか妙見子さん、何故カロルを……私、彼女に喧嘩を売ってるようなことのほうが多いんですが?
あんまり良いことしてあげられなかったんで、気にしてるんですよ……! 後、恋愛運は今更ないので……私はそれ以外を希望しますが?」
「あ? 今からマブになんのよ、マリエッタ。おら、引け」
「何ですか、この聖女。良いんですか」」
態度の悪いカロルに背を押されてマリエッタはいざ実践。
【68 - 末吉】
「末吉、だそうです。というかカロル。目を覆ったほうがいいですよ。
彼女達のお家芸なんですけど……酷い目にあいたくなければ忠告は聞く事をおすすめします」
「マリエッタが今私に絡まれてるよりも酷い?」
ノーコメント。セレナはその様子にくすくすと笑った。
【07 - 吉】
「わ、見て。マリエッタ。結構良いんじゃないかしら?」
「本当ですね。いや、向こうの二人がめちゃくちゃ引こうとしてるのが気になるんですけど……」
とりあえずメリーノと妙見子にモザイクをかけたトールはお神籤をいざ。
【15 - 吉】
「中々ですねえ」
「よし」
メリーノは大吉が出るまでお神籤を引くことにした。一先ずは見守ろう。
メリーノちゃんその1! ―― 【73 - 末吉】
メリーノちゃんその2! ―― 【20 - 吉】
メリーノちゃんその3! ―― 【14 - 吉】
メリーノちゃんその4! ―― 【10 - 吉】
メリーノちゃんその5! ―― 【14 - 吉】
此処から割愛
32! 59! 43! 06! 50! 10! 31! 19! 39! 08! 62! 37! ……
メリーノちゃんその31! ―― 【04 - 大吉】
「やったわ!」
途中に出た末吉以下の時は妙見子に向かって愉快玉が投げ入れられていた。
「ふむ。では引きましょうね!」
光り輝く妙見子第一投 ―― 【98 - 大凶】 ←初めて出た……。
「ショバ代払ってんのk……ですよね……自分の研究室ですもんね……スイヤセン……」
思わず、何だか良く分からないことばかり言ってるイケメンに殴りかかりかけた妙見子であった。
トールのウィッグを掴んで振り回している神様にカロルは「運勢なんて自分でどうにかなるわよ、神様だし」なんてあっけらかんといった。
「ええ、なら課金しましょう」
「どうして……」
「第四の壁と魔女二人をお供に人々に課金を促す金運の神様になってしまったのです!」
金運を占えば【60 - 小吉】だった。促し続ける妙見子が有り難い御守りを手に追いかけてくるが、セレナはそっと目を背けた。
「あっ、挨拶も忘れずに……旧年中は大変お世話になりました。
新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。最近身に着けた礼儀作法なの。どうかしら?
……あっ、こちらお供え物(?)です、どうぞ」
何故か愉快玉をそっと捧げるセレナにマリエッタはそっとカロルの目を覆った。
「ああ、はい! そうだ! 愉快玉といえば新型を持って来ましたよ! 夏あかね……この愉快玉を見てくれ、こいつをどう思う?」
うわ、すごい……。トールくゃん、取りあえずそれをメリーノちゃんに投げて。狙われている。
「ええ!! 見ていてね!!! 画面の向こうの夏あかねちゃん!!!!!!
みて!初日の出ってやつ! 神々しい光だわ! 愉快玉を投げておくからね。第四の壁ってやつ! あけましておめでとう! 今年もよろしくね!!!!」
いけ、トールくゃん、今だ、メリーノちゃんに愉快玉!
「新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします!」
にっこりと微笑んだ『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)がぐりぐりと頭を撫でるのは『ひだまり猫』もこねこ みーお(p3p009481)。
今日ももふもふパンのあったか香りとお日様の気配に包まれているみーおなのである。
「あけましておめでとうございますにゃ! 今年もねこもふもふですにゃー!」
「あけましておめでとうございます……みゃ。今年もよろしく」
ヨゾラがなでなでするなら『祈光のシュネー』祝音・猫乃見・来探(p3p009413)はもふもふ。そして『彷徨いの巫』フィノアーシェ・M・ミラージュ(p3p010036)は肉球をぷにぷにと。
「新年あけましておめでとう……今年もよろしく頼む。む……猫を愛でながら引くのか? ……願掛けか?」
「動けませんにゃ?」
きょとんとしたみーお。どうしようかなあ、何を占おうと思いながらもふもふとされていた。
「ナビゲーターさん、こんにちは」
『こんにちは!』
にっこりと微笑んだのは見慣れた看板娘だった。「わあ、ユリーカさんだ」と祝音がぱちりと瞬いた。
「凄いですにゃ。占って貰って良いですかにゃ?」
『はいなのです。みーおさんからですか?」
「はいですにゃ」
こくりと頷いたみーお。それぞれがこれからの結果を出して貰うのだ。ヨゾラは「僕らのチームはユリーカさんAIが担当なんだね。良い結果が欲しいなあ」と揶揄うように笑う。
『では、いざです!』
【86 - 凶】
「にゃっ!」
みーおが当てればユリーカは『ちょっぴりパンが焦げるかもしれませんが、それだけで厄落としなのです』と力説する。
「本当ですかにゃ?」
『はいです! ここからもっと運勢は上昇なのですよ』
「ふふ。それはいいな。それじゃ、宜しく頼もうかな」
フィノアーシェがそっと手を伸ばし――
【02 - 大吉】
『ぱんぱかぱーん! おめでとうなのです! 凄いのです!』
「おお、大吉……!」
手を叩いて喜ぶフィノアーシェにユリーカは『これから何をするのです?』と問い掛けた。
「そうだな。この後は買い出しして、何処かへ集まって、お神籤の結果を話しながらのんびりでもするかな、と」
『ならきっと、お買い物で掘り出し品が見つかるですよ!』
ユリーカはにっこりと微笑んだ。
「わあ、すごいね。みゃ。じゃあ、僕も……」
【87 - 凶】
「……! 持ち帰りたいけど、良くない結果のお神籤は括ったほうが良いんだよね。お神籤括る場所とか……ある?」
『僕が預っておくのですよ。あとはヨゾラさんなのです?」
祝音の結果が芳しくないと少し悲しげな顔をした彼の頭を撫でてからヨゾラは「うん、お願いね」と微笑む。
【17 - 吉】
「結果はどうかな? ユリーカさん」
『はいです。沢山楽しい事があるはずですよ! あ、みーおさんと祝音さんの凶もフィノアーシェさんとヨゾラさんで打ち消すのです!』
「それがいいね。楽しそう!」
皆一緒だったら楽しいからとヨゾラはにっこりと笑った。正月を楽しんで、これからも楽しく過ごす。
お神籤も屹度良い思い出だ。ならばフィノアーシェの結果に肖って『掘り出し品』を見付けに行こう。
「いってきます」と手を振った祝音とみーおは手を繋いでにこにこと歩き出す。
成否
成功
第1章 第7節
●初詣II
音呂木神社で初詣。ウキウキとした様子でやってきた『おしゃべりしよう』彷徨 みける(p3p010041)は「楽しみだねえ」と振り返る。
「しゃおみー、音呂木神社は初めてかも、何とかここまで来れた……!」
ソワソワとしている『初めてのネコ探し』曉・銘恵(p3p010376)が周囲を見回せば『気紛れ変化の道化猫』ナイアルカナン・V・チェシャール(p3p011026)がにこりと笑う。
「再現性東京は猫(ナイアル)も初めてなんだ。2人と一緒に初詣して、お神籤引いたり屋台の食べ物買ったりしたいな」
此処では最近何かあったと報告書で見た気がするとナイアルカナンはぱちりと瞬き周囲を見回した。
そんな心配を余所に楽しげなみけるは「何をしよっか? まず、お詣りをして、屋台に行って……お正月ってわくわくするよね!」と笑みを浮かべている。
「うんうん。えっと、拝二拍手一礼……? こう、で合ってるかな」
不安げな銘恵にみけるは「そうだよ。教えてあげるね!」と向き合った。微笑ましいその様子と、どうにも薄ら暗い気配を感じるナイアルカナン。
「新年の抱負……それも初詣の楽しみ、なのかな。しゃおみー、新年の抱負も言ってみたい……!
これから先は何があるかわからない、誰かに何かが起こるかも……だから、『今この時を楽しんで頑張って生きていきたい』を抱負にしたいな」
「ふふ、いいねえ。私の新年の抱負は……迷うけど……正直、この先どうなるか私にもわからないんだよね。
だから……『今日を楽しんで頑張る、明日も明後日も楽しんで頑張る』かな?」
こてりと首を傾げるみけるにナイアルカナンは二人が話したのならばと口を開く。
「基本的に日々を楽しく気紛れに過ごす猫だけど、皆で楽しく過ごせる機会は貴重だし。
『楽しめる時に、楽しめるものを後悔なく楽しむ』が抱負かな」
うんうんと頷いてからみけるは「ところで肩が重いんだけど、気のせいかなあ」と呟いた。
そういえば、どことなく何か『重たいもの』が憑いてるような……擦れ違ったひよのがにっこりと笑ってからそれは『気のせい』に変わった。
「琉珂様。振袖、よくお似合いですよ」
穏やかに微笑む『未来を背負う者』劉・紫琳(p3p010462)に「でしょー」と琉珂が胸を張った。相変わらずの彼女は何時だって楽しげだ。
「参拝はお済みでしたらお守りを一緒に買いましょうか。琉珂様には無病息災が良いでしょうか。自分の分は健康祈願で……」
「無病息災?」
「ええ、何事もないように、ですよ」
琉珂が「へえ」と呟いて御守りの種類を眺めて居ある間に紫琳は『こっそり』と。恋愛成就の御守りを購入した。
これは彼女には見つからないようにこっそりと購入する――けれど、琉珂は「何か追加で買うの?」と覗き込む。
「な、なんでもないですよ、ええ。本当。それよりあちらで甘酒を頂けるそうですよ! 行きましょう、ねっ?」
「甘酒! いいわね、うんうん。行きましょう」
「ええ、ええ、行きましょう」
何か隠している気がすると呟いてから琉珂は「不思議なずーりん」と笑った。
「よお似合ってます。うちの見立ては間違うてなかったんよ」
着付けも髪飾りも完璧に。『想い出は桜と共に』十夜 蜻蛉(p3p002599)にとって自信作とも言わしめるのは『祝呪反魂』ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)の姿だ。
「そりゃ、姉上のセンスは抜群なんだが! やっぱ恥ずかしい!!!」
慣れない着物に身を包み、何処か気恥ずかしそうに首を振ったヨハンナの頬に熱が灯っている。その様子を見るだけで蜻蛉は可愛らしいと笑みを零すのだ。可愛らしい人を可愛らしく着飾る事が出来るなんて役得だと笑う蜻蛉は相変わらず涼しげで。
「そりゃもう。ほら、お願い事しましょ? だいじょうぶ、綺麗やよとっても♪」
「………俺よりも、姉上のが美人さんだぞ。綺麗だ」
ほら、と手を差し伸べる蜻蛉にヨハンナは慣れない着物姿で心からの言葉をぽつりと零した。
照れている顔も可愛いと揶揄う蜻蛉は慣れた様子で祈りを一つ。沢山の出来事を越えて共に願い事を捧げられる今この時に感謝をしながら。
(――今年も、愛する人たちが幸せでありますように)
一番に大切な願いを込める。ヨハンナはその横顔を眺めた。この命が繋がって、願うことが出来る事は屹度喜ばしいことだ。
(俺の大切な人達が、怪我も病気もなく無事に過ごせますように)
ふと、顔を上げてから「初詣の約束、果たせて良かった」と蜻蛉は微笑んだ。ああ、本当に約束を違えずに済んで良かったとヨハンナはにかりと笑うのだ。
「めぇ……とんでもないものを、見てしまいました、ね……き、気分を変えて……初詣に行きましょう、か。ふふ、此処は何となく、落ち着きます、ね」
繋いだ手をぎゅっと握ってから『約束の力』メイメイ・ルー(p3p004460)は境内を見回した。作法は屹度豊穣と同じ。だからこそ、ここは心地良いのだ。
(晴さまが笑って過ごせるように、健康と、幸いを。……そして、豊穣の安寧を)
真摯に願うメイメイの横顔を眺めて居た晴明は「何を願ったのか聞いても?」と問うた。
ぱちりと瞬いてから「わたしの願い事ですか? きっと、晴さまと『同じ』ですよ」とメイメイは小さく笑う。
「……ああ、屹度見透かされているな」
「ええ。豊穣の事を願ったのでしょう」
あなたは、いつだってあの国を愛している。メイメイは微笑んでから、一度目を伏せてその手を取る。
「あっ、でも、晴さまの事も、お願いしました。
晴さまの代わりに、願ってあげないと……ご自分の事、ほったらかしにしてしまうでしょう、し。
晴さまは、わたし、の………大切なひと、ですから。
今年も、晴さまと笑い合って過ごせたらいいなって。貴方がわたしにとって、そうであるよう、に。わたしも晴さまの笑顔の源に、なれたら、と」
ひとつひとつ、言葉にして、緊張を滲ませて。それは抱負でもあるけれど、この場所では『言霊』にこそ力が宿るとメイメイは微笑んだ。
「頑張らなくては、いけません、ね」
「ああ。……なら、俺は今年こそ自分を労らねばならないのだろうか。で、なくてはメイメイの願いは叶わないな」とどこか困ったように彼は微笑んだ。
音呂木神社の端で大朱盃に酒を注ぎ込んでどかりと腰を下ろしていた『藍玉の希望』金熊 両儀(p3p009992)は息を吐く。
「戦乱の時は暫しの休み……昨年は儂も活発に動いたき、楽しこうたが中々に疲れる一年じゃったぜよ」
独り言ちる。
「ほいで……おまんの見たいもんは見れとるか?」
誰も居らずとも虚空に呟く両儀は盃を傾ける。
「――はっ、灰は灰に、塵は塵に、土は土に……おまんなりの信念はとはいえ難儀な性格しとるのぅ……おまんも」
「折角、儂のぎふとで何処ぞやの心臓とか前世やらお袋みたいな状態なんじゃから……もっと……ん? それ以上喋るな? はぁー、つまらんヤツぜよ」
「でも、まぁ」
淡々と語らった両儀は『誰ぞ』と話して居るかのように笑った。
「「お互いに悪くない一年だったな」」
酒を勢い良く呷ってからゆっくりと立ち上がる。暫しの休息も、これにて終いだ。
「――さて、ぼちぼち世界に異変ば起きとるみたいじゃけぃ、また戦いに赴くかの」
成否
成功
第1章 第8節
●初売りバトルI
折角の新年初売りバーゲンセール。食材を思う存分に買いまくると意気揚々とやってきたのは『女子力の高い勇者』赤坂 忍(p3p002493)。
人並みだって突き進める。誰かを傷付けないように時を配るのは冷静さとトレンドを活かした行動力だ。
忍の初売りバトルは今始まったばかりである。やや幸不幸を比べれば不運(ファンブル)が高いが――其処は難なく食材をゲット。
「よし、次だ」
人並みを眺めて居た『いつかの歌声』ソニア・ウェスタ(p3p008193)は「わあ」と呟いた。
「世界は大変なことになっていますが……。
こんな時こそ、平常心。自分を見失ってはできることもできず、救えるものも救えなくなってしまいますよね」
そっと落ち着きながら、目の前の戦場(初売り)を見ていた。此処も凄まじい戦場ではあるのだが。
「……と、まあ、難しい話は置いておいて、せっかくの新年です。これからの戦いに向けて英気を養うためにも、今は新年を楽しみましょう。
そんなわけで……よさそうな茶葉や菓子など、手に入ったりしないでしょうか……?」
ソニアに初売りで変えないという事は無い。何せ、不幸など何処吹く風でやってきたからだ。
茶葉の福袋には再現性東京らしく日本茶が多いが、ルイボスティーやフレーバーティーも詰め込まれている。
「お茶に合うお菓子も探しに行きましょうか」
流石は『庶民』のイベントだ。『策士』シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)は物の見事に素晴らしい品を購入できていた。
「ふむ、これもいいな。こっちとも悩むが……両方買おう」
それだけ選択肢を持てたことは幸運だ。素晴らしい戦歴(購入)を果たしたシューヴェルトの背後から迫り来るのはバーゲンの鬼、つまりオカンである。
戦車のように駆抜けていく『オカン』達を避けて『覇竜相撲闘士』オラン・ジェット(p3p009057)は行く。
「うおおおおおおお、やべー! バーゲンの時の女強くね?! 目の光かたも違うしな……おお怖ええ」
こんなにも彼女達は違うのか。勤め先の姫はあれほど可愛かったのに。ぐったりとしながらもオランは進む。
「よし、酒ゲット! まずまずか……?」
中身がランダムになった酒では『ガチャ』宜しくランク分けがされているらしいが、それも楽しみの一つだ。
「勤め先のホストクラブじゃセールの酒なんか出さないが酒はあればあるだけいいからなー。
俺はよくわかんねえが料理にも使ったりするらしいぜ。レアものとか掘り出せれば上司の冥夜サンに手土産とかもいいかもしれないぜ!
そういや冥夜サン結婚して娘もいたんだっけ……未成年だろうから甘酒とか買ってもいいかもなー」
何か良い物があるだろうかと周囲見回すオランの前をまたも女性陣がずんずんと進んでいく。
「あの。バーゲンセールという風に聞いていましたが。
この人込みの中を突っ切っていかないといけないのですか……? ……えぇ、承知しました。出来る限り、押し通らせて頂きます!」
決意をした『料理人』テルル・ウェイレット(p3p008374)は勢い良く飛び込んだ。
――が、弾き飛ばされる。凄まじい人混みだ。これに紛れ、波に乗るのはなかなかの至難の業か。
「……店の数も種類も様々ですし、折角ですので普段行かないようなところにも行ってみましょうか。
実の所、機械関連だとかガジェットだとか、そういった物は関わりが薄かったですので何か便利な物とかはあるでしょうか?
個人的には自動販売機、でしょうか。警邏の方が良く通るような場所にしか設置できないと聞きますが、それがあればお店の商品を売ったりできると聞きますし、可能ならば欲しいですし探してみますか」
周囲をきょろりと見回すテルルに「あっちにいくといいよ」と微笑んだのは紫の髪の少女であった。その背後には金色の眸の猫耳の娘もいる。
「なじみさん」
「やあやあ」
声を掛けたのは『遺言代行業』志屍 瑠璃(p3p000416)だった。新春初売りは趣味の物だ。なじみも同じように趣味の品を探しに来ていたのだろうと瑠璃は認識する。
「何か良い物はありましたか?」
「人が凄くってね。難しいね」
「そうですね。普段であれば買いそうにない物が入っていて、そこから興味が広がったケースもまた良しと言えますが。
サイズ違いの服も、オーバーサイズ用の着こなしを考えるのは随分楽しかったですし。
……逆に小さめの服に袖を通した時に喜ばれる方々も居られるので、我ながら得な性分と言えましょうか」
くすりと笑った瑠璃に「中々の強者だねえ」となじみは頷く。瑠璃はそっと許せなかった福袋を取り出した。
「これは?」
「はい。これは10枚+1枚すべて同じサッカーゲーム(売れ残り)だったものです。
……あれは担当者を探し出して釘を刺しに行こうと思った程でした。物理で」
何とも言えない品を彼女は手にしていた――
「凄い荒波なのだわ」
衝撃を受けていたのは『蒼剣の秘書』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)だった。
「初詣とかは自宅で済ましたし……他所に行くとうちの神様が嫉妬しちゃうのだわ。だから来たのだけれど……」
これはもう凄まじい人間の波だ。想い人にアピールするための可愛いお洋服を用意したい華蓮。此処は負けていられないのだ。
イレギュラーズとして培った戦略眼を発揮して、予算は上から下までコーディネート丸々一つ分。素早く行かねば良い物は売れていく。
「……い、行くのだわ!」
買った物は後ほど着替えて、写真を撮って帰るのだ。今日の記念を得るために、いざ。
神様は言った。ニットワンピがいいよ、と。
「バーゲン? よくわからないけど、わーって雰囲気が楽しそうだよね、わー!」
マイペースに楽しむ『雨に舞う』秋霖・水愛(p3p010393)はにこにことした様子で店内を見て回っていた。
「何か面白いものないかな? できたら本とかぬいぐるみとかそういうのだと嬉しいけど、後は故郷のウェスタでも使いやすそうなものかな。
上手く使えないともったいないもんね。変わったもの買っちゃった後に交換会とか……ダメ、かな?
どうしてもよくわからないものを勢いで買っちゃったらお友達にあげてもいいかも……ケトルをあげたら怒られそうだけど、ね」
ウェスタの人々はケトルで殴ってきそうな気がする。とても殴ってきそうな気がするが……その辺りはさて置いて。
何か面白い品を手に入れられると喜ばしいと見て回る。
「バーゲン、とても素敵なひびきね!」
福袋争奪戦には参加せず新春初売りに参加する事に決めた『無尽虎爪』ソア(p3p007025)。
ずっと憧れだった人間そのものの姿を手に入れた。これ以上に欲しい物はないけれど、この姿を思い切り楽しみたいのが『虎』の欲だ。
「練達は色んな衣装があって楽しいからきっとお買い物も止まらないなあ。
可愛いのも、格好良いのも、セクシーなのも、清楚なのもいっぱい欲しい。さあ、何が手に入るかな!」
るんるんで進むソアは不思議な着ぐるみや可愛らしい現代風ファッションと様々な衣服を手にしていく。
そんな服の山を掻き分けながら『最強のダチ』ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)は進んでいた。
「よし、妻(ヘレナさん)に土産を買って帰るぞ。……妻……いい響きだよな」
妻の為に何かを買っていくならばさて、何が良いか。コートを買ってポケットに二人の手を突っ込んで手を繋ぐ。
寒さを言い訳にしてほかほかになる。ほかほかしあうのだ。それも良い。
いや、なんとなく寒さを楽しみながら風呂へ行くのも悪くないな。今のうちに温泉デートでもするか? 二人で一本のマフラー巻いて肩寄せ合うか?
(ああ、夢が広がるなー。こんな調子じゃしょうもないもの買って帰りそうだなぁ。
……サメちゃん巨大ぬいぐるみとか。シマエナガだきまくらとか。ええい、悩んでいたららちがあかん! これ買うぞ!)
かっと目を見開いて手にしたのは――ペアルックの謎のセーターだった。
「……」
ヤツェク、僅かに動きを止めて息を吐く。
そっと顔を上げれば、雑貨が並ぶ店舗が見えた。食器類を見ているのは『酔狂者』バルガル・ミフィスト(p3p007978)。
「しっかし何処も人混みが凄いですからねぇ。とはいえ此処の治安はそこそこに良いはず、スリの心配もそうないので一安心ですが」
食器の類いは安価でありながら鉄帝国ほどでなくとも頑丈なものがおおい。日用品の買い出しにはぴったりな場所なのだ。
目利きには自信があるが――『今日はあまりその効果を発揮しなかっただろうか』。思わぬ不幸(ファンブル)には見舞われていたようだ。
「さて……」
ふらりと歩くのは『黄昏の影』ヴァイオレット・ホロウウォーカー(p3p007470)。
知人が板と手会話せずまるで影のようにふらりと行く。武器、毒物、呪物。そうしたものを敵を倒すために求めてやってきた。
偶然手に入って有用な品物を見付けてこっそりと近くに居た琉珂の所持品に捻じ込んだ。
悪を殺す為の品を手にして、動く。それが影として進むヴァイオレットの在り方なのだ。
――気付かない琉珂はと言えば『未来を託す』ヴィルメイズ・サズ・ブロート(p3p010531)と立っていた。
「里長様〜新年もよろしくお願いいたしますねぇ。ということで福袋を買いましょう! 福袋!
ちなみに福袋と言いますと衣料品のイメージがありますが、売れ残りの服だったり安い生地を使った質の悪い「福袋用の服」など入っていたりするので、あまりオススメはできませんねぇ」
「そうなんだ? じゃあ何が良いのかしら」
「つまり狙うべきは……食品! ということで、スイーツの福袋買いに行きましょう〜」
うきうきと歩くヴィルメイズに「食品かあ」と涎を垂らしそうになる琉珂。此処から先は別々に動くのだ。
「分りますか、里長様。初売りバーゲンは戦争でございますのでね、厳しい戦いが予想されます」
「倒せってこと?」
「はい。ライバルを多少蹴散らしても殺めることはないので安心ですね! さあ覚悟して参りましょう!」
いざ――!
なんとか厳しい戦いではあったが『普通の品(1d100=44)』を購入できたヴィルメイズ。草臥れた様子ではあるが。
「ハッ!? 里長様それは……限定10袋という超目玉福袋なのでは!? 素晴らしい、さすが里長様です! きっとベルゼー様のお導きでしょう」
「やったー! オジサマありがとう!」
るんるん気分の琉珂にヴィルメイズは「ベイクドモチョチョなる食べ物を買ってきたのですよ」と美しく気の利く男として声を掛けた。
「これ、オジサマが大判焼きっていってたわ」
「ベイクドモチョチョでは?」
「でも、あの店舗には回転焼き……?」
「さあ、ルルちゃん! 希望ヶ浜の新春初売りバーゲンだよ。ががーん、すごい一杯居る」
折角だから一緒に体験しようとカロルと連れ立って遣ってきた『天義の聖女』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)は驚愕していた。
「お洋服買えるかな」
「恐すぎでしょ。ニコイチの私服を買うんでしょ、頑張るわよ。スティア」
アクセサリーも見に行きたいけれど体力が持つのかとぼやいたカロルにスティアが「がんばるぞー!」と拳を振り上げる。
戦果はまずまずと言った具合か。どちらかと言えばスティアの方が一枚上手。可愛らしいワンピースが入った福袋を二個ほど手に顔をひょっこりと出す。
「ルルちゃん、買えた?」
「何か凄い勢いでネックレスを手に入れた。おまえとお揃いで……」
ぐったりとしたカロルにスティアは小さく笑った。戦利品を見ながらクレープでも食べようと誘う。紅茶を飲みながらのんびりと出来る店ならばきっと心穏やかに過ごせるはずだ。
「せっかくだし、似合いそうな物が入っていると良いね!」
「どっちかが似合うでしょ。まあ、ファッションショー気分よね」
「なるほど、これがバーゲン……というものなのですね。再現性東京には初めて来ましたが……これは激戦区に違いない……!」
ごくりと息を呑んだのは『物語領の猫好き青年』メテオール・エアツェールング(p3p010934)。
身構えた『物語領の兄慕う少女』コメート・エアツェールング(p3p010936)は「これは本気の戦いですわ……!」と呟いた。
耳と尾を服で隠した『物語領の愛らしい子猫』ミニマール・エアツェールング(p3p010937)はごくりと息を呑む。
「行きますよ、コメート、ミニマール。はぐれた場合は買い物後に外で合流しましょう」
「ええ、メテオ兄様! ミニマールも頑張りましょう! 何が何でも買うのです、誰か1人でも成果物を得られたなら勝利ですわ!」
そんな熱意の溢れる二人にミニマールは「わたしも頑張る。みゃあ」と頷いた。
一人一品でも買えれば、いい。何が何でも幾つか手にできればそれはそれ――うきうきとするメテオールに緊張するコメート。そして決意のミニマールがいざ出陣。
三者三葉の様子で人混みを掻き分ける。
「さて……自分達の成果は、どうでしょう」
一品、福袋を手に顔を出したメテオールは『普通の品』が入っていたと合流したミニマールへと声を掛けた。
「2人とも…お疲れ様。わたしも頑張ったよ、成果物確認しよう」
ミニマールはと言えばかなりお得な福袋を手にしたのだろう。『素晴らしい成果』を上げている。
「まあ、素敵ですわね。私は……こんな感じですわ……!」
コメートはと言えば『少しばかり残念』な品の福袋ではあったが――
「それもそれで良いですね。さて、自分達の飼い猫のミニマールにお土産でも買えていたらいいのですが……」
「ええ、ミニマールがお留守番して待っていますしね……!」
同じ名前のミニマールはびくりと肩を振るわせた。本当は傍に居るけれど、飼い猫は家で大人しくしているはずだから。
「お、おもちゃとかあるといいよね……」
ついつい、誤魔化したのであった。
成否
成功
第1章 第9節
●新春お神籤IV
「おみくじを引かないことには、新年は始まらないわよね……! ど、どんなことを言われるのかしら……」
目の前にあるのは練達謹製お神籤だというのだから初めての代物だと『ベルディグリの傍ら』ジルーシャ・グレイ(p3p002246)は息を呑んだ。
「結果もだけれど、やっぱり『恋愛運』が一番気になっちゃう。だってプルーちゃんったら手強いんだもの。
ドキドキして欲しいのに、アタシの方がドキドキさせられっぱなしだし……そういう所も好きなんだけれど!」
そんな乙女(オネェ)心がドキドキする日々を送ってきたのだから、こういう時くらい素敵な結果が出ても――
【88 - 凶】
『今年も翻弄されて頂戴ね。仕方が無い事だわ? だって、ブーゲンビリアに染まる貴方が可愛らしいじゃない』
「ちょっと! 誰! プルーちゃんをガイドAIに選んだのは!」
慌てるジルーシャにこんな事もあるのだと『深緑魔法少女』リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)は戦慄いた。
(え、え……お神籤って凄いですね……。
こういうものは気の持ちようで、お神籤の結果が良いからと言って慢心すれば良い結果にならないこともあるし、逆にお神籤の結果が悪くても努力すれば良い結果を得られる場合もあることでしょう。とはいえ気になることはやっぱり占ってみたいわけで……)
意中の彼は女性が苦手だから。中々距離を詰められないのは少しばかり悲しいけれど。
「好きな人が居るのね? 良いわねえ。初めて会った時は綺麗な子、って印象だったのに。
時々意地悪で、悪戯っぽく笑った時の顔は可愛くって。ずーっと見ていたいし、独り占めしたいって思うの。ってあら、惚気ちゃった?」
「いえっ、でも、好きになるとどんなところも見て見たいですよね」
頷いてリディアはいざ、とおみくじに手を翳す。
【69 - 末吉】
「ふむ、恋愛運が人気なのかい? 成程ね、恋愛小説というのは中々に見応えがある物だ。私もそうしたものは好く嗜むよ」
「ひょっ」
イキナリ顔を出したマッドハッターにリディアの肩が跳ねたAIをセレクトする前に乱入してきた彼は「次に誰が恋愛運を占うんだい?」と楽しげに問う。
「なら、私でも良いだろうか? あけましておめでとう。正月に限らず、お神籤を引くのは好きだ。
個人的には仕事運と恋愛運に注目したい。
仕事運は本業のStella Biancaの経営者である私と、ローレット所属のイレギュラーズである私の運勢を占ってもらいたいな。
恋愛運は……私だって独りは寂しいのだ。人生のパートナーが欲しいと思う事は多い」
『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)は「そういうのでもいいだろう?」と問うた。穏やかに問うたモカは悪い運勢は信じないけれどとからかい――
【8 - 吉】
「まずまずだね。これは好い出会いがあるかも知れないな」
「……成程」
こうやって運勢を占うのかと一部始終を眺めて居たのは『61分目の針』ルブラット・メルクライン(p3p009557)。興味深くもある。
「そんな手軽に運命が見通せるとは思えないが、こういう催しは話の種として楽しむのが筋だな。
私も興味が無いと言ったら嘘になる。さて、何を視てもらおうかな?
……健康運は――自力で占えるな。結果が悪くても瀉血すればいいのみだ。他のものにしよう。
……仕事運、金運――私の職で食い逸れることはないな。残念ながら。他のものにしよう」
消去法の恋愛運。マッドハッターが楽しそうに手を打ち合わせている。成程、塔主は何がよく占われるのかを見てAIに改良でも仕込むのだろうか。恋愛運限定の乙女チックな占いでも生まれそうだと考えながらルブラットはおみくじに手を翳した。
【30 - 中吉】
「これはまずまず、だと言えるのだろうか。何にせよ、出会いがあるかも知れないと言うのだから興味深くはある」
「出会い……出会いならもふもふ運はどうでしょうか?」
そろそろと手を挙げたのは『救済の視座』リスェン・マチダ(p3p010493)。練達風の占いにはドキドキとするが、今年の抱負が『沢山引き籠もること』だと思えば今日は特別な外出なのだろう。
『はいです!』とAIユリーカが明るい声音で答える。リスェンのもふもふ運は、
【22 - 中吉】
『良いもふもふと出会えるかも知れませんね! ふわふわで優しい肌触りかもしれないのです!』
「へえ―、何でも占えるんだね。
あっ、やぁやぁ、新年明けましておめでとー!!!
普段は覇竜でヒッキーなボクだけど、なんか練達で面白い事をやってるって聞いちゃってさ! きちゃった★」
にっこりと笑ったのは『藍染霹靂』藍 瑞冰(p3p010485)だった。AIユリーカをまじまじと見て、手を翳すお神籤機械をじいと見る。
「んー、御神籤って神社とかにあるアレだよね! アレ! 運試し!
新年の運試し、早速チャレンジしてみよー!!! 何が出るかな、何が出るかな! 大吉が良いよね! やっぱり! この御神籤を開く一瞬! 凄くドキドキ! 良いの出ますようにー」
からからと音を立てて『お神籤を振っている』ような感覚を与えてくれる全自動お神籤。その結果は――
【24 - 中吉】
「中吉かあ! 先ずまずって感じなのかな?」
「こんな感じに結果が出るんですね。
なんていうかこう、去年は色々と小さな失敗とか悲しいこととかがたくさんありましたから……。
今年は心機一転、いいことがあるといいなぁ……と、御神籤で運勢を占ってみます。
お仕事……音楽活動の調子とか、交友関係とか、その辺どうなりそうなんでしょう? ――ドローッ!」
堂々と叫んだ『灯したい、火を』柊木 涼花(p3p010038)。
【88 - 凶】
ぴしりと固まってからずうんと沈み込む。ユリーカが慌てて『此処から運勢UPなのですよ! 大丈夫なのですよ!』と声を掛けている。
AIユリーカ、その辺りも本物と同じ精巧さだ。だからだろうか『点睛穿貫』囲 飛呂(p3p010030)が「ユリーカさんだ……!」と慌てたのは。
お神籤は読み方が何回だけれど此れなら良さそうだな、何となくだし――という気分でやってきた飛呂は困惑していた。
「俺も引く! 大吉出ろ!」
もうあの子が出れば大吉なので、この時点で飛呂は大吉以上の結果をゲットしている気分にもなるのだ。
世界平和を願いたくもなる。そりゃ世界が平和なら彼女も笑ってくれるし最高なのだ。と言うわけで、結果は――
【18 - 吉】
『善い結果なのですよ。ばんざーい!』
「ばんざーい!」
真似してから飛呂は再現性の高すぎるユリーカAIと睨めっこしていた。
「HA――! 私は神だ。神に神籤とは如何様な冒涜だ? Nyahahahaha!!!」
からからと笑って遣ってきた『同一奇譚』ロジャーズ=L=ナイア(p3p000569)。
「兎角、昨年は酷い物だった。特にシャイネンハナトなど地獄めいた有り様だった。故に、今年は私も『運が良く』なければ困る。
貴様等の中で、特異運命座標の中で、混沌世界の何よりも幸運で在るべきなのだよ! さあ、私の運命とやらを骰子に委ねようではないか。
良い悪いは関係ない。結局のところ、私こそが神故に、私の在り方を定めるのは貴様等だ。
見るが良い、読むが良い、書き殴るが良い。私は貴様等の存在を認識しているのだよ。第四の壁の彼方の諸君!!! Nyahahahaha!!!」
堂々と笑うロジャーズにダイスが示したのは――
【19 - 吉】
成程、運が良い。運が良いのだから在り方だって屹度素晴らしい物となろう。
成否
成功
第1章 第10節
●新春お神籤V
「さぁ、幸潮と二人でお御籤ひくわよー運任せ、運任せ。あ、どう、似合う?」
白に梅。振り袖姿の『ヴァイス☆ドラッヘ』レイリー=シュタイン(p3p007270)はくるりと回る。
「hmm……なんだレイリー、そう我ばかり見ていても面白いことなどない」
「ううん。龍と水仙の着物幻想的で似合うわよ、綺麗」
うっとりと笑うレイリーに『敗れた幻想の担い手』夢野 幸潮(p3p010573)は頷いた。レイリーはその様子を愛でて褒めて、しっかりと見詰めておきたいのだ。
にこにこと笑うレイリーを見詰めていた幸潮はその振り袖姿に「美しいな」と頷いた。
「その着物、汝の大輪が如き笑顔に負けぬ華やかさだな。」
「うふふ、有り難う。それじゃあ引いてみましょうか」
「ああ。小さな乱数器、1d100の御籤、当たるも八卦当たらぬも八卦。
さて結果は如何なるか――ちなみにクソ出目出したら爆発オチらしいぜ」
「えっ」
レイリーは手を翳してからくるりと振り返った。まさか、そんなことはないはずだけれど。
【39 - 中吉】
「ああ、よかった。爆発オチとかなさそうだわ。ねえ、幸潮は――」
「ファンブルした」
【98 - 大凶】
「えっ――」
……どうやら、爆発はしなかったようだ。ほっと胸を撫で下ろしたレイリーは幸潮に向き直る。
「今年も一年よろしくね、幸潮」
「――ああ。終焉の先、汝の生の旅路終えるまで我は汝ら愛と恋を書き連ねよう。今年もよろしくな、レイリー」
「今年も良いことあるとええなあ。ほな宜しゅうお願いします」
穏やかに微笑んだ『晶竜封殺』火野・彩陽(p3p010663)は「あんまり悪い結果やとどっか結べるところないかな?」と周囲を見回した。
「どうやらAIが自動で結んでくれるらしいよ。此の辺りは近代的だけれど……。
毎度思うけど、元の世界でもこの世界でも、新年の催し物はそんなに変わらないものだね。
家族で初詣に行ったりした時が懐かしいや。誘ってくれてありがとう、彩陽さん。それじゃあ、引いてみようか」
『最果てに至る邪眼』刻見 雲雀(p3p010272)に促されて彩陽はナビゲーターのマナセが『じゃあ引くわよ~!』と楽しそうな声を上げる光景を眺めて居た。
【76 - 末吉】
『まあまあ、って感じかしら? どう? どう? まあまあだったらこれからも良い事が起こると思うけど!』
「ははあ。まあ確かにそうかもしれんなあ。あ、雲雀兄さんどないでした?」
くるりと振り返った彩陽に雲雀は「見ていてね」と笑って手を翳し――
【30 - 中吉】
「うん。これはまずまずかな。早速良い思い出が出来たよ――、っと、ごめん。つい家族にして居たクセが……」
頭を撫でようと伸ばした手を引っ込める雲雀に「ええですよ」と彩陽は笑った。柔らかな髪を撫でてから「御守りでも一緒に買おうか」と笑う。
可愛い弟弟子の不運を背負うと告げる雲雀に「なら御守りで一緒に中和しましょ」と彩陽が笑う。
「あ、そうだ。あっちで林檎飴を売っていたよ。よかったら食べに行こうか」
『特異運命座標』佐伯 昴(p3p005187)は不思議そうに画面を眺めて居た。
「オレの世界でも初詣でお神籤を引くのはポピュラーだったんだ。やっぱり、懐かしくなるよ。
Dr.マッドハッター、初めまして。オレもお神籤を引いても良いかい? 折角だからね」
「勿論さ。アリス、君の世界とは画面が大きく違うかもしれないが宜しいかな?」
「…なんか、ちょっと変わったお神籤みたいだ。少しドキドキするよ。これが天才の発想って奴なのかなぁ。
ああ、紙のお神籤に慣れてたからさ。凄いデジタルだなーって。これはこれで新鮮で楽しいかな。有難う」
じゃあ、と昴が手を伸ばす。
【99 - 大凶】
マッドハッターは「これは驚いたな。ぶっちぎりだ」と手を叩いた。驚く昴に「逆に幸運さ!」と彼は嬉しそうに言う。
「……いや、いいのかな。いいんすかね?」
ぱちくりと瞬いたのは『蒸気迫撃』リサ・ディーラング(p3p008016)であった。
「私、思うんすよ。この手の物をやる時は、必ず足元から確認しないといけないって。
いやだって思うじゃないっすか! なんかこう、悪いの引いたら足元が爆発して顔面ダイブするのが混沌クオリティだって! 間違いなく!
さっきのが逆に幸運って言われたってね! というか引きたくねーって気持ちもあるっすけど、それはそれとして良い物を引いた時に何かイイもんでもくれるかもしれないって希望もあるんで、やっぱり運試しはしたくなってくるっすねー」
言葉を重ねてからリサは小さく息を吐く。覚悟は完了した。何が出たって構わない。
「……ふー。よっしゃこいよオラァ! 私はちゃんと覚悟したっすからねー!
こちとら夫は神様なんじゃ! たかが此処の神なんぞに負けるような神様なんかじゃねぇんすよ!
妻の私も簡単に撒けるような存在じゃない! ――ッシャいくぞ!」
【04 - 大吉】
「ッしゃ!」
旦那様が味方したのだろうか。喜ぶリサの傍ではAIマナセと向き合って硬直をして居る『優しき水竜を想う』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)の姿があった。
「恋愛運よ? そりゃあね?」
『ふふーん』
「……まぁ引いてみるならタダ……だし? でもせっかく引くならいい結果のが嬉しいところ、特に恋愛運とかよかったりしないかしら。
いや、よかったとしてもどうにもならない壁があるから無理だとしても! 偶然に会えたりするかもしれないし!」
『本物のわたしが来たら期待されちゃうなー。お話の続きー! あ、このAI自動連絡なのよ!』
「えっ!? 違うってば! 恋バナの続きじゃないから! 続くかわからないんだからぁ!!」
顔を真っ赤にするオデットが振り向けばにっこりと微笑んでいたマナセの姿があった。
『えっ』
「ほら、結果」
【73 - 末吉】
「わたしが来ることを予見してたのかしら」
オデットは「続きは?」と眸を爛々と輝かせるマナセに距離を詰められていた――
喧噪を眺め、マナセは何時も通り喧しいのだと確認してから『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)は肩を竦める。
「……一人で初詣というのもなんだが……まあ、神の機嫌をしれそうだし、試しにやってみるか」
自分の呪いや妖精郷の事を考える。冬白夜の呪いか、それとも恋の祝いか。なんとも焦ってしまっている気がしてならないのだ。
『じゃあ、引きましょうね』
「は」
マナセだ。AIマナセが出れば、リアルの方のマナセも「わたしだー!」と騒ぎ出す。嗚呼、厄介だ。
【58 - 小吉】
「わ、まあまあの出目なんじゃない? ねえ、サイズ。どう思う。ちょっと無視しないでよ、聞いているの?」
「……」
マナセはやはり喧しかった。背後で楽しげに声を上げて居る彼女に嘆息してから「まあまあ、か」と呟くのであった。
成否
成功
第1章 第11節
●檻III
「話半分に聞いてたけど新年早々なんか物騒な……
いえ、ROOの人々やモンスターに肉体を与えれば有効活用は確かにできそうですけど……。
最近物騒ですし……もう敵の親玉も出てきそうな雰囲気ですし……」
出来るだけ好意的に考えて見たが『雨宿りの雨宮利香』リカ・サキュバス(p3p001254)は「いや有効活用とか無理だってこれ」と指差した。
肉の壁に出来そうな存在だろうか。めちゃくちゃ( ・◡・*)が棒を掴んでいるの確かだ。
「あの、本当につついて大丈夫なやつですこれ?
耐久力に自信はありますが攻撃とかされませんよね?」
「( ・◡・*)」
「いやあの?」
リカはサキュバスだ。魑魅魍魎(オトコ)相手は慣れているのだが、何だか鳥渡様子が違うのだ。
「あ、待ってください。離して」
「ウホ」
「いいですねええええええ」
「待ってください」
腕を引き抜こうとするリカの助太刀のようにつんつんとビーチパラソルを差し入れたのは『大艦巨砲なピーターパン』メイ・ノファーマ(p3p009486)。
「あっ」
「え?」
そろりとリカが見ればメイは慌てていた。
「あっ! 井おじさんの真ん中に入っちゃった」
井のど真ん中! そんな……え、えっち過ぎる……。
メイは「ごめんね~」と笑ってから引き抜いた。井が「あひいん」と叫ぶ様子を『未だ遅くない英雄譚』バク=エルナンデス(p3p009253)は真顔で眺めて居る。
「井おじさんが檻の外に出てこれるなら、開いたビーチパラソルの上でクルクル回したかったなー。おめでとうございま~す」
にんまり笑顔のメイと「ぬんぬんぬーん」とやってきた『勇猛なる狩人』ダリル(p3p009658)をバクは見詰めていた。
「ところで檻を棒で突くだけじゃと?
それだけだとつまらんのー派手に式を編んでぶっ放したい所でもあるが、研究する場である以上それを妨げたり破壊したりするのも、のう。
まぁそれはそれとして棒に式を絡みつかせ、威力増した状態で叩いたりするのは良かろう! きっと!」
ほーれ、と勢い良く叩く。ほーれほれ、と叩き続ける。
「ほーーれ! ぬあーはっは! 楽しくなってきたぞ!」
あんまりな勢いで殴り続けるダリルにビーバーが「ヒャッハアアア! 反撃の時間でっすよぉ~~!」と声を上げる。
「え、やり過ぎた?え、何の事ああああああああああ!?!?!」
「……のう」
もうその様子を見ていればバクは問わずには居られなかった。
「この檻、というのはいったい何なのじゃ?」
「モンスターを飼育する環境です」
「いや檻そのものの事を聞いているわけではなく、中にいる存在というか……
………………まぁ、これも新年早々の、苦行として……正直嫌じゃぁ」
遥の微笑みにバクは何も言えやしなかった。
「まぁあれじゃ、実験体その三十二としては頑張るかのう。
それで儂はどれを担当すればよいのじゃ?ふむ、あのちっこく数の多い存在を、か。
とはいえ突っつくとしてもどうやって、ではあるがのう。
……叩くは刺激してしまうじゃろうし、頭の上からなでるように、撫でるようにゆっくりと、じゃのう。その方が良い。良い」
ダリルを見ていればそう思ってしまう。ビーバーが勢い良く棒を掴んで引き摺り込もうとしている。なんて恐怖映像だ。
「ルチアさん」
どうしようと『夜鏡』水月・鏡禍(p3p008354)は見た。遊んでいて良いのかどうか。こんな時期だと問えば彼女は「羽を伸ばせる機会は思う存分ね」と笑うのだ。
『高貴な責務』ルチア・アフラニア(p3p006865)は「檻の中には変な生き物だわ。それも危険なタイプ」と目を伏せる。
「そうですね。でも……ええ! ちょっと突きましょう!」
はちゃめちゃに良い笑顔だった。『井』には酷い目に遭わされた。ここれ憂さ晴らしをしようではないか。
鏡禍は「本物じゃないとしても態度がそれっぽいのがまた腹が立つんですよね。忘れませんからね、いろんな屈辱!」とお冠だ。
「まあ……そういえば、鏡禍は井さんのプロだったわね」
「って違います! 井さんのプロなんかじゃないです! やめてくださいよ変な称号!」
井さんに好き勝手遊ばれてきた鏡禍。彼の受けてきた『仕打ち』を思い出したルチアがごそごそと準備を繰返す。
「喰らえ喰らえ、こうなったら餅つき前に井突きです!」
勢い良く突く鏡禍の傍からそっと棒の先に猫耳ビキニメイド鏡禍のブロマイドを貼り付けてルチアは「釣れるかしら」と棒を差し入れた。
「ルチアさん!?」
「あ、良い食いつきよ、ホラ見て」
棒の先のブロマイドが欲しくて跳ね上がる井。
「いいですねえええええ」
「何ですか、本物っぽい反応して!」
鏡禍はその声を発したとき檻の中の井さんと目があった気がした――
沈丁花の腕章を付けて立っていた『彼岸と此岸の魔術師』赤羽・大地(p3p004151)は「無茶しやがって」と呟いた。
檻は危険だ。新年早々なんてものを設置しているのだと頭を抱えたくなるほどに。
「闘魂注入するべきか? 俺は医学の勉強をしている所だが……やはりこういうのは実地で学ぶのが一番だと思ってさ」
大地の傍で膝を抱えて「成程ぉ」と頷いていたのは遥だった。悍ましい現状から目を背けているのだろう。
「そういうわけで、どんどん檻を突っついてどんどん運び込まれてこい、イレギュラーズ(?)」
「イレギュラーズじゃなくっても良いんですか?」
「え?」
遥は研究員達を指差した。死屍累々。これまで檻の相手をして居た者達なのだろう。
自分の自分もと駆け寄ってくる研究員達に――
「……いや!! いくらなんでも担ぎ込まれすぎだろ!!!!」
大地が過労死ラインを越えそうになるのだった。
成否
成功
第1章 第12節
●初売りバトルII
「国ごとに特色があり、街の風景も様々ですが練達は特に変わってるように感じます。
旅人が齎した技術や知識によって作られた街は丸で異世界のようですね」
ぱちくりと瞬く『ドラネコ保護委員会』風花 雪莉(p3p010449)は不思議そうに周囲を見回した。
掲げられたバーゲンの文字列を目で追いかけてから「お買い得な品が沢山……?」と首を傾げる。
「楽しい物や生活必需品、美味しい物。なんだかワクワクしてきました。ドラネコさんや猫さん達のお土産なんかもあるでしょうか」
うきうきとした様子の雪莉は一歩踏み出してから、驚いた。人が濁流のように存在して居るのだ。
「すごい、人だかり……! でも負けません、希望への道筋はきっとあります! 私の帰りを待っている人たちがいるんですから……!」
猫やドラネコが待っている。雪莉は『それなりの成果』を手に入れられたようだ。
「ふむ」
近いうちに孫がやってくる。そう考えれば備えが必要だと『揺蕩う老魚』海音寺 潮(p3p001498)はバーゲン会場を遠巻きに見ながら眺めて居た。
「何を買おうかのう……」
孫のために一人部屋が用意できる。部屋には布団も用意してあり生活用品もある程度揃っている。
つまりは最低限の生活は保障できているのだが――其れは其れで味気ない。
「肌着や衣服でも買い足しておこうかのう。数日分しか持ってこれんじゃろうしあって困るもんでもなかろう。
サイズはわしとそう変わらん筈じゃから、店員さん何か最近の若者が好きそうなファッションを見繕ってくれんじゃろうか……わしみたいなサメの男が着られるような」
「あ、は、はい」
再現性東京ではあまり見られないタイプだが、セフィロト側の初売りではそれなりに良い品が揃っていたようだ。
此れならば孫も喜んでくれるだろう。潮にとっても大満足である。
「調度品はセンスが合わん。服はあんな団子になった人混みでヨレヨレになるかと思うと怖気が走る――だが、女には戦わねばならん時がある。わかるな?」
『零度戦姫』スティーリア・ツンドレアス・シャンデル(p3p009288)は真っ直ぐに天を、いいや、フロア案内を見た。
「そう! スイーツだ!
ケーキにチョコにアイスクリーム、新鮮なフルーツに至ってすらとろけるような甘さ――そして、今年はなんとグラオクローネが近い事もあってあの超有名パティスリーが福袋をはじめとした様々な出品をしていると言う!特に今回は創業者をして珠玉ともいえるショコラが目玉らしい!」
恋人や大切な人のためとは聞くが。そうではない。そういった概念を否定はしない。
だが、スティーリアはスティーリアの舌を満足させるために、至高のショコラを手に入れる為に走るのだ。
その足は淀みなくお目当ての品に無事に辿り着けただろう。そう、ダイスロールは上々だったのだ。
「あけましておめでとう。今年はもう既に大変なことになってるが、平和になるよう頑張りたいな。
さて、練達と言えば何でもあるし斬新な物もあるイメージ。初売りで何が見つかるのか、楽しみだな!」
うきうきとしていた『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)はレコードなどの音源や楽器、楽譜と言った消耗品。時間が許すならば紅茶類を見に行きたいと考えて居た。そう、穏やかな気持ちでやってきたイズマは初売りは初めての経験であったのだ。
「無駄に買うつもりは無いが、新しい音楽との出会いは逃したくない気持ち。初めて来たが、初売りにかける情熱が凄いな……」
感心しながら、一度売り場に飛び込んでみる。『少し人混みに押された』か。少々の品を手にして困惑している。
「はあ……」
甘酒を休憩がてらに口にした。その甘みもさることながら酒と着くが酒類分類と迄行かないのは新鮮だ。
酒、と言えば『怨讐鬼』艮 悪羅(p3p008937)である。
「こういう初売り出しってさ、割とお酒作ってるところの『庫出し』と重なるから普段は見ないような珍しい銘柄とか。
えっ……まだこれあったの!? みたいな一昔前のB級品まで出会えるんだよねえ……。
ハイカラな言葉だと【あうとれっと】ってんだっけ?なんでもいいけどさ。
じゃあそういう系を求めに来たのか、っていわれるとこれが違うのよ」
何がエグいかと言えば練達は缶だ。豊穣では手にできないような酒に出会える可能性がある。
「ビール、チューハイ、それからなんといっても『つよつよゼロ』!
カートを押して箱買いしなきゃ損ってもんだ……おっ、各種銘柄ランダム封入福袋!?
そういうのだーいすき! 5袋くらいあってもぺろっと呑んじゃうからなあ……さぁ買うぞ!」
そのランダム封入の中身というのが――悪羅にとっては『まあまあ』のものではあったが、ぺろっと飲める者ならばそれ程悪くはないだろうか。
酒に、肴に。そうやって売り出されているならば『八十八式重火砲型機動魔法少女』オニキス・ハート(p3p008639)が求めるのは――
「新春セールと言えば食品。特に海産物。かに。いくら。まぐろ。うに。えび。あとは……かに。
ん、完全にかにの口になってしまった。この人波をかきわけて、何とかかにを手に入れなければ……!」
広い視界を用いて人の流れを読み分けるのがオニキスに求められた仕事だ。マジカルレーダーが上手く機能してくれれば良いのだが。
そう、これがこれからの一年の先行きを決めるのだ。多分。かにはとっても大事なのだ。多分。
『まあまあ』な成果を得られただろうオニキスを一瞥していた『寿司聖』ゴリョウ・クートン(p3p002081)は「なぁるほどなあ」と頷いた。
通行の妨げにならないようにと身を細くしたゴリョウ。まあまあ寒いのだが、熱量のお裾分をして居る彼は周りの熱気にも圧倒されていた。
「面白い成果物はあるかね……」
十分な成果を手に入れられただろうか。ゴリョウは希望ヶ浜学園の生徒達に「用務員のおっちゃーん、何買ったの?」と声を掛けられる。
「おう、明けましておめっとさん! 今年も無事に過ごしてくんな!」
「あ、おっちゃん、蟹セットだー!」
集う生徒達の波に押されながらもゴリョウは「いいだろう」と明るく笑うのだ。
「衝動買いこそ正義、買えば正義よ!!! そら、財布がすっからかんになるまで買いまくるぞ! けぇぇい!! ――そのブランドもののバッグは妾が貰ったァ!」
飛び込む『傾国邪拳士』弥狐沢 霧緒(p3p001786)。OKANタチとの争奪戦が行なわれ、霧緒はそれなりの成果を得たと汗を拭った。
「にょほほほほほ!妾は名前を書いた葉っぱを貼り付けた対象の外見のみを3分偽装出来る!
オヌシがGETしたと思い込んで取ったのは隣のラクダ色のモモヒキよ! 残念じゃったのぉ~~~!
……なんじゃ、人の肩を気安く触りおって…警備員? ……なぬ?! バーゲン戦場でのギフトの使用は御法度!?」
――ずるずると引き摺られるようにして霧緒は会場から撤退を余儀なくされたのであった。
「うむ、おみくじ……は神だしなーんか違う気がしてな。
かといってバーゲンもしっくりこない。私の教義は『質素清貧、好色であれ』だ。
どこぞの狐や氷竜のように欲望のままに銭を撒き散らすのは恥ずかしいものだ。そもそもバーゲンで無駄に人の肌と触れ合うと興奮してしまうからな」
何てことを考えて初売りバーゲンの現場で焼き芋を販売していたのは『豊穣神(馬)』エレン(p3p008059)。
寒々しい空の下で焼き芋を頬張るという事以外の至福はそうそうありはしないだろう。
ケンタウロスがリヤカーを牽きながら販売する焼き芋屋さん。これはもの凄く珍しいものなのである。
焼き芋販売の声を聞きながら『赤き騎士の馬』滅導騎獣弐式 戦乱蹂躙疾駆 ヴァルレイン(p3p010842)ははたと見遣った。
「ウム……再現性○○ならば未だに『初日の出暴走』をやっているような所もあるのではないか?
今日はいい風が吹いている……年は明けたが、そういった浮かれた者達に本物の走りを教えてやろう!」
ヴァルレインの主人は籤を引きに言った。遙々練達にまでやってきたが、ここまで連れてこられた側としては暢気だと感じずには要られない。
(ああ見えてまだまだ精神的にはガキもいいところ、今頃は青臭い抱負など熱っぽく語っている事だろう。
今や主は『黙示録の騎士』ではなく、『混沌を守るべく立ち上がる勇者』としての道を歩き出そうとしている――)
それも実に良いことだ。終焉をまるっと斬って捨てるくらいの意気込みを見せて貰えなければ元世界に戻ったときに何ら喜びを抱いてその身に乗せることなど出来ないのだ。
成否
成功
第1章 第13節
●初詣III
「去年は色々ありましたね……いえ、私は11月以前の記憶はほぼ消えたんですけど。
其れでも豊穣とかセレスタン=サマエルさんとかで大きな影響を受けましたし……?」
恋心こそが彼女そのもの。故に欠落した記憶が多いのだと『新たな一歩』隠岐奈 朝顔(p3p008750)は考える。
「という訳で御神籤を引きに来ました! カロルさんはどうでしたか?」
豊穣式の作法なら教えられると告げる朝顔に「じゃあ、頼もうかしら。知らないのよね、豊穣って」とカロルはにんまりと笑った。
朝顔の所信表明のようなものだ。どうか世界が平和に鳴って、その世界で『彼が前世である他人』じゃなく、もう一度再会できるように、と。
(セレスタン=サマエルさんと再会して、初めましてを言えますように)
そう願う朝顔をじいとみてから「お神籤どうだったの」とカロルは問うた。【50(まあまあ)】の出目に朝顔は「どうって答えましょう?」と首を捻った。
「ああ、ルル氏」
「ルルちゃんでいいわよ。氏ってなんか可愛さ半減しない?」
相変わらずだと『無職』佐藤 美咲(p3p009818)は肩を竦めた。
「新年明けましておめでとうございまス。まさか4人も年を越せるとは思いませんでしたね……私、全滅すると思ってましたもん」
「私もお前は死ぬと思ってたけど、テレサが案外優しかったわ」
酷い冗談だと美咲はカロルを見た。彼女は「ジョーク」と言ってから笑っている。ブラックジョークが過ぎると含んでから周囲を見回した。
「ルル氏は今年の目標、決めましたか? 私はー……とりあえず死なないで行こうと思いまス。
死んだほうが楽かなーと思ってたらそういうわけでもなかったので、これからは命を大事にしようかと」
「へえ、周りに言われた?」
「まあ。……というわけでルル氏も道連れね。
私は死んだらクッソ怒られるんスからルル氏もそうなってくださいよ。二人目の勝ち逃げはNGスよ」
美咲に「おまえが私を護るんだよ」とカロルは冗談めかして笑う。この聖女、本当に聖女らしくないのだ。
「……そういえば、天義に属するルル氏的には初詣ってアリなんスかね?
私は信心が余り無いのでイベント的に呼んでしまいましたが。レグルスが大好きな愉快玉の神とかならまだ良いんスけどねー……」
「大丈夫よ。アッチの神様も私なんて懲り懲りでしょうからね!」
ところで、その愉快玉の神様って羊羹ちゃんね、とカロルが食い付いたのは仕方が無い事だったのかもしれない。
「ふむ………参拝の一つでもさせてもらうとするか。
今年も世界が無事であればそれが一番なんだが……まぁ何だ。多分そうもいかんような気がするんだよな……嫌な予感というか最早確信だが」
嘆息した『靡く白スーツ』コルウィン・ロンミィ(p3p007390)は世界情勢の変化は『世界終焉の予見』という神託の少女の齎す絶対的破滅を前にしたものだったのだろう。
「ともあれ、俺としては一人のグリムアザースとして精一杯手伝えることがあれば手伝わせてもらうだけだが、
……せめてお手柔らかに、と世界と神に向けて祈らせてもらうとするか。
さて、帰りに新春初売りバーゲンでも寄って何か食い物でも買い込むとするかな」
神様というものは多岐に亘る。この神様が『そうした事に優しく接してくれる』相手である事だけをコルウィンは願わずに入られまい。
「――祓え給い、清め給え、神ながら守り給い、幸え給え……ってな。
出来れば加えて世界よ平和であれってのもあるが……なかなか難しいのも分かってる。俺にその手伝いとか出来りゃあいいんだけどなぁ」
思わずぼやいた『救い手』ヨシト・エイツ(p3p006813)は甘酒でも飲んで帰ろうかとくるりと振り返り――
ぎゅ、と手を握られたことに気付いた。
「ん?」
嘘だろ、と思わずぼやいたが「ママは何処ぉ」と泣き出す子供を放置は出来まい。慌ててあやしながら巫女を探しに行くのであった。
「年明けくらいはお参りしとかねェとな。
やっぱりアレだ、ローレットの仕事もやらずに海洋で湾岸警備と砂浜の清掃してばっかの窓際のオイラにもご利益ってヤツは平等だろうからねィ。
――いつものルーチンワークを変わらず続けられるように無病息災を祈願しとくとしよォや」
そう笑って『蒼海の守人』スクアーロ=ケトス=グランガチ(p3p001753)は美しい所作で参拝を行なった。
ローレットの同輩が集っているのも悪い気持ではない。詳しいことは知らずとも、それなりのゴエ利益はあるだろうか。
(神様神様、どうか来年も立派に警備と清掃勤めますンで健康で荒れるようにしっかり見守っててくださいなっと。
なんだか世相は物騒になってきたけどよ、オイラは手ェ届く範囲の海(テリトリー)さえ守れりゃ十分ってなモンさァ)
祈り言葉を捧げてからスクアーロはうんと背伸びをした。
「……さ、メシでも行くか!」
「凄い人だな、年明けの風物詩という奴か。数年もこの世界に居れば何となく慣れてきた気もする。
ポメ太郎、マナセ、迷子にならない様に気を付けるんだぞ。もし逸れたら此処に集合だ、解るか?」
「わん」
「ポメ太郎が分かるから大丈夫よ」
そういう事ではないのだけれどと困った顔をする『騎士の矜持』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)の前でポメ太郎のリードを握ったマナセが胸を張っている。
「わたしよりポメ太郎の方が信用できるでしょ?」
「わん」
「いや……さ、マナセ。初詣だ。願い事を言うんだぞ。何を願うのが良いかな。やはり無病息災辺りが鉄板か?」
悩ましげに呟くベネディクトの傍でポメ太郎は「ごはん! あそぶ! たのしい!」なんて事を考えながらマナセの足元をぐるぐると回っていた。
勿論、リードで絡まっていくマナセが「ぎゃあ、ポメ太郎だめよ、ぐるぐる!」と慌てていた。
因みに、マナセもポメ太郎と同じような事を考えて居たと知ったのは「ご飯食べに行くの!?」と彼女が意気揚々と飛び付いてきたからなのであった。
「ううっ、新年早々恋愛運が凶だなんて……ちょっと凹んじゃうわ……。
だからって諦めるつもりはないけれど! プルーちゃんに会えればそれだけで大吉だもの!」
気を取り直した『ベルディグリの傍ら』ジルーシャ・グレイ(p3p002246)。最後はやっぱり初詣とひよのに挨拶をしにやってきた。
慣れた様子で賽銭を投げ入れて、お詣りをするジルーシャが考えるのはやっぱり彼女の事だった。
(願うのは――そうね、一番はプルーちゃんの幸せ。それから、皆の笑顔が、どうか消えることのないように。
……お願い事が多すぎて、神様に怒られちゃうかしら。
でも、仕方ないじゃない。だってこの世界で、大切な友達がたくさんできたんだもの)
たくさんの素敵な事ばかり。混沌に来てジルーシャは確かに変化したのだ。増えた大切なものを取りこぼしやしないようにと手を伸ばし続けて居る。
「アタシも、皆を守るために、もっともっと強くなってみせるから――ちょっとだけ、オマケして頂戴ね、神様」
「あざみ」
呼ぶ『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)に「やあやあ、たまきち」とあざみは手を振った。その口調や仕草はなじみそのものだ。
なじみは屹度、定と一緒に出掛ける事だろう。ならば『二人きり』を演出する為にあざみを――というのが汰磨羈の口実だ。
「さて、着ていく服なのだが、赤を主体にしてみた。あざみは……ふむ、青か」
「うん。青に牡丹。レトロで可愛いと思う。なじみに選んで貰った。なじみはもうちょっと華やかなのが似合う」
冷ややかな雰囲気をさせる夜妖。だからこそなのだろうかと汰磨羈は小さく頷く。参拝の作法などもなじみが仕込んだようだ。
「流石は飼い主、か?」
「なじみってやつは結構しっかりものなんだよ」
ああ見えてと付け加えるあざみに汰磨羈は小さく笑った。願い事はと言えば『世界を、滅亡の運命から救えますように』――なんてものを汰磨羈は用意していた。
あくまでも、己の手で救うのだ。救われる事なんて求めちゃ居ない。あざみは「楽しければ良い」とそう言った。願うのも彼女らしい刹那なものだ。
お神籤をし、ひよのに挨拶に行こう。歩き出したあざみをまじまじと見てから汰磨羈は心に決めた。
この光景が日常だ。だからこそ、護らねばならない――この日常を。大事な存在を守り抜くと、その心に決めたのだから。
「初詣だね、フランさん。今年の抱負は、世界を救う! これだね!
秘密基地でちょっとお話してから考えてたんだ。私はこれからどうするのがいいのかなって」
『蒼穹の魔女』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)はフランツェルをまじまじと見た。にっこりと笑っている魔女は華やかな振り袖姿で耳を傾けている。
「それで、なんというか、怖がりすぎてたのかもしれないなあって思ったんだ。
色々なものを喪ってしまうことが。……執着が薄れていくことが。
でもやっぱり私はみんなに笑っていてほしいし、それが叶わなくなることのほうが、自分がいなくなることよりも何万倍もイヤだから。
これまで以上に私らしく、振り返らず、躊躇わずに行くよ! ファルカウさんに赤点をつけられてもね!」
「怖がりも、素敵な事よ。臆病者って一番強いのだから」
「うん。分かるよ。でもね、『私』のことは、フランさんや……きっと他にも誰かが覚えていてくれるもの。
そう思ったら、この先私がどうなっても、前に進めるような気がしてきたんだ。
そんな感じ! あれ、これ初詣じゃなくてフランさんに抱負を告げる感じになってるね!? 神様にも聞いといてもらわないと!」
フランツェルは「本当だわ。神様も『え、魔女同士でオッケー?』って思って居るわね」と微笑んだ。
フランツェルは『覚えている』事が役割だ。だからこそ、アレクシアは彼女の事を信頼している。
「あのさ、……ちなみに、フランさんの抱負は何だろう? せっかくだし聞かせて欲しいな!
私なら聞いてもそのうち忘れちゃうからね! オトクだよ、ふふふ」
「そうねえ。生き延びて、沢山の記録を残して逝く事かしら。次代を引き継ぐ人が必要だわ。
アレクシアさんもファルカウの封印がどうにかなって、記憶を蝕む災いがなくなって、心配事がなくなったら私の後を継ぐ?」
「え――っ」
冗談よとフランツェルは笑ってから「じゃ、世界平和ってことで」と付け加えた。
成否
成功
第1章 第14節
●新春お神籤VI
「おみくじ、ねぇ。とりあえずことし一年の運勢でも占ってみますか。
気に入らなかったらその辺にくくるんでしたっけ? それごんごろごろごろ……」
『こそどろ』エマ(p3p000257)は手を翳す。モニターに映し出されたユリーカがはらはらとした表情で見守って居た。
「………………………………………………………………さぁ結果はいかに!」
【75 - 末吉】
「エマさん、『まあまあ』なのですよ!」
同じく名前が『エマ』である『Enigma』エマ・ウィートラント(p3p005065)は「おやあ?」と振り返る。
「そうそう。神社にきちんと参拝した事がごぜーませんねぇ。と言うわけで、参拝は適当にやっておきました。生憎、無神論者なものでね」
『じゃあ、ここではお神籤なのです?』
「ええ。特に知りたいのは……旅の安全。交通安全でありんすな」
【22 - 中吉】
「これまた良い出目と言うべきでは?」
『はいなのです! 神様のご加護なのですよ!』
嬉しそうに笑うユリーカの声音が弾む。『不退転』レオナ(p3p010430)はその様子を不思議そうに見詰めていた。
(神籤か。本来であればそんなものに頼るなど、と思う所である。
が……正直な所、今は悩んでいる。旅を続ける内に強者へと挑む機会を逃していたり、後追いの仲間が私よりも強くなっているのを見る内に、結局己は何が出来ているのだろうか)
ぐるぐると脳内を駆け回る懊悩。未熟と言われても仕方が無いのだろうが何かしらの方針が欲しくもなった。
お神籤とはあくまでも参考だ。「良いも悪いも普遍的な物でも、何でも良い。何かしらの答えが、欲しい」と告げてから掌を翳す。
そう、例えそれが惰弱な考えからくるものだとしても、一人で歩むと決めた以上は、適当に倒した棒から歩く道を決めたりしたって良いだろう。
【69 - 末吉】
旅立ちの道には困難が付き物だろうが、それも何れは乗り越えられるはずだろう。
「うーん、今年一年良い年にできるかはこれからの行動にもかかっていると思うし、しっかり頑張っていきたいね。
本当に......バグホールの話とか各地でとんでもないことが起こってるという情報もあるし。
ここが正念場というのを感じる年ではあるけれど、だからこそ、こういうイベントも大切。おみくじ楽しんで、今年もしっかり頑張っていこう!」
えいえいおーと拳を振り上げた『挫けぬ笑顔』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)は一年が良い物になるようにと願っていた。
【68 - 末吉】
結果はまずまずだが、それでも先を見通すにはそんな出目をも乗り越えていけるはずだ。
「拙者はお神籤を引かせてもらうでござるよー!」
嬉しそうに手を伸ばした『跳躍する星』糸巻 パティリア(p3p007389)はと言えば【68 - 末吉】をフォルトゥナリアと同じk津亜炊き出していた。
気をつけて機動力を活かして飛び回ることがパティリアの成せることだ。
「まぁ拙者の強みは機動力の高さとギフト『海星綱(カイセイコウ)』による立体起動でござるからな!
結果がどうあれこの強みは捨てられないのでござるよ!
というわけで、お神籤を結び終えたらドロンっとさせてもらうのでござるよ!
ご先輩方、今年もよろしくなのでござる! 精一杯お手伝いをさせていただきます故、よろしくでござるよ!」
堂々と宣言するパティリアを眺めて居たカロルは「何だかイレギュラーズって個性的でいいわねえ」と呟く。
「そうかな。あ、あけましておめえでとう!」
レンタルの晴れ着を身に纏っていた『夢見大名』夢見 ルル家(p3p000016)は晴れ晴れとした笑みを浮かべていた。
「お正月と言えば初詣! 初詣と言えばおみくじだよキャロちゃん! 折角だから占って貰おう! ……私は何にしようかなぁ」
「全体的な運勢で良くない?」
ルル家は恋愛運は今は鳥渡個人敵に恐かった。良くも悪くも複雑な心持ちになるからだ。無難にカロルと一緒に運勢を占うこととして――
【11 - 吉】
「やった。みて、キャロちゃん。良いでしょう?」
【53 - 小吉】
「ねえ、大名。トレード機能を実装しない?」
「しない……」
首を振ったルル家に「しなさいよ」と飛び掛かるカロルは楽しげに笑っていた。この後は二人で一緒に街に繰り出してカラオケに、そして、甘酒を飲んでお汁粉にと盛大に楽しむのだ。
「あっ、キャロちゃん!着物レンタルだから汚さないように気をつけて……アーーーーーッ!!」
「あっ」
大騒ぎのカロルの着物が開けようと汚れようと、もう仕方が無いと割り切るべき……なのだろうか。
「いやあ、騒がしいですねえ」
「ああ、そうだな」
にこりと笑う水夜子に『愛を知らぬ者』恋屍・愛無(p3p007296)は頷いた。
「せっかく外に出たし、ついでにおみくじをひいてみないかね? 僕はあまり運がよくないが。水夜子君は、何ぞ運のいいイメージがあるし」
「そうですか?」
「ああ。それに、実際、今年も色々とありそうだ。運を天に任せるというのもつまらんが、余興としては悪くない。
どうだろう、運勢の悪かった方が帰りに何か奢るというのは。汁粉とかどうだろう。たまには和すいーつもいいんじゃないかな」
「……それはいいですねえ?」
【72 - 末吉】
愛無の結果はまずまずか。水夜子は嬉しそうに【55 - 小吉】とかいたお神籤を差し出した。
「R.O.Oを利用した運試しですか……意図的にあえてR.O.Oに一度も入ったことのない。
私がこの実験を試行致しますとどうなるのか。逆に気になりますね」
ぱちくりと瞬く『旅人自称者』ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)は眼前に現れたのは占い師めいた話し方をする『嘗ての知り合い』を思い出した。
いいや、知り合いと言うべきではないのだろう。袖振り合う様な多少の縁があっただけの相手だ。そんな酒場で相席しただけのその者の口調だけがサルベージされたようでもある。
「なるほど。おみくじは【56 - 小吉】でしたが……興味深いですね。
話し方だけではなく見た目も雰囲気も占い師めいておりましたけれども画面にはノーデータとでる。。
まあ、R.O.Oのデータも無限ではありませんから、特異運命座標や各国の有名人のようにR.O.O内にデータがあるかは定かでは無いですが。
――これはこれで面白い結果ではありますね?」
『生命に焦がれて』ウォリア(p3p001789)は真っ直ぐにお神籤を見詰めていた。
「結婚という吉事も通り越し、この混沌での戦いもいよいよ佳境に入って来た。
彼女を守り、共に進む事こそ第一ではあるが……まだまだオレにはやらなければならない事も多い。
ニンゲンで言うならば……宿題が山積みといったところだな!」
『結婚したのか?』
「黄龍――」
いいや、AIか驚いたとウォリアは瞬いた。己が神であるという感情は心の奥底に放り込んで望んでみたのだが、これは予想だにしていなかったとも言えるか。
『吾と瑞に紹介は?』
弾むその声音にウォリアは咳払いを一つしてから「今日は『運勢』を占うのだろう」と告げた。
『そうであったな。何を占う?』
「……勝負運だ! 運気一つでうじうじ悩む様な惰弱さとは無縁だ……全てにおいて完璧!
なんなら『最強吉』を出しても良いぞ! 抱負なんて立派なものは無い、が」
『考えはあるだろうに』
「ああ。良い結果ならばそれを胸に刻んで真っ直ぐに突き進み、悪い結果ならばそれが真実となり立ち塞がっても撃ち破る。
それしか出来ない愚直な自分だから、此処まで来た」
――だから、見ていてくれ、最後まで信念を貫き通して見せよう。完璧でなくとも、泥臭くとも、きっと誇れるようになる。
ウォリアはAIであろうとも黄龍を見据えていた。
『吾が好きだな』
揶揄う声音と共に運勢が表示された。
【08 - 吉】
それは吉兆だ。故にウォリアは「良い結果だ」と頷くのみ。
(――ああ。オレは本当はこの世界が大好きだ。
守るべきものや、失いたくないものと縁を結び…自分自身こそ救われ、導かれてきたこの混沌が……!)
成否
成功
第1章 第15節
●新春お神籤VII
「こういった和な感じの新年も良いものですね。
今年一年豊穣の神が微笑むように祈りを捧げましょう。
全ての生命に、幸福とパスタが在らんことを。ええ、きっと素敵な未来が待っていますわ。……さて、この御神籤を引けば宜しいのですね?」
ぱちくりと瞬いた『アーリオ・オーリオ』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(p3p010347)。
【64 - 末吉】
「まあまあ、でしょうか?」
「おー! まあまあでもこれから良くなるし! あーけーおーめー!! でもってことよろ〜!
オレもおみくじ一丁! 引かせてー!
……何を占うか、ってーと……うーん……健康運? やっぱ元気に遊ぶには、身体が一番大事だからなー!」
一発勝負。引き直しはなしだと『理想のにーちゃん』清水 洸汰(p3p000845)はお神籤を引いてみる。
【44 - 小吉】
結果としては上々か。そんな様子を見ていた『青混じる氷狼』グレイル・テンペスタ(p3p001964)は「画面で……か……」と頷いた。
「……来たからには……ここでしか出来ないことをしたいね……となるとやっぱり……御神籤かな……?
……占いたいものは……そうだな……学問についてとか……かな……術式の研究だから……ちょっと微妙に違うかもしれないけど……。
……いい結果が出るといいな……ここまでデジタルだと……信じていいのかちょっと怪しいけど……。
……それと……この一年に備えて……御守りとかもあったら欲しいな……」
音呂木神社にはあるだろうか、と考えて【44 - 小吉】のお神籤をグレイルはまじまじと見詰めていた。
「お正月かぁ、せっかくお祝いごとだしね! お神籤でも引いておこうか。
うーん、どんなことを占おうかなぁ。今年の運勢とか?ざっくりしすぎ? ま、いっか! いい結果だったらいいなぁ!」
『良き事がありますように』
「わあ、瑞だ」
AIでも嬉しいと『優しき咆哮』シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)はにこりと微笑んでからお神籤を引いてみる。
【64 - 末吉】
「うーん、でもこれから良くなるかな? 去年は色んなことがあったからさ。
大変なこともあったけど、楽しいことのほうが多かったけれどね!
今年もきっと、大変なことがたくさん起こるのだろうけれど……それと同じくらいたくさんのものを護りたいな」
『シキならば、大丈夫ですよ』
「AIでも瑞二言われると嬉しいな。
私の手の届く限り手を伸ばして、わがままと傲慢で、私らしく歩いていこう」
――その果てで何があったって、屹度胸を張れる。シキはにこりと笑ってから、「ま! でもお正月くらいは美味しいもの食べて楽しく過ごしたいものだよね!」と微笑んだ。
「御神籤ねぇ……正直、この世界の神様ってかなりアレが何してアレな気がして正気を疑うレベルなのだけど……」
『血風旋華』ラムダ・アイリス(p3p008609)は最近『神様』というのは妙な物を見た気がしていた。
「まぁ、すがれるものなら何でも良いって感じなのかね? 返答に求められる対価に何を求められるのやら。
えっこの御神籤はそういうものではない? 気晴らしみたいなもの? AIの乱数制御?
……成程、其れならお気楽に引けるね♪ 今年のボクの運勢は……さて何が出るのやら……」
『わくわくですね』
「ああ、ナビゲーターがいると尚更に気楽だね」
にこりと笑って画面に映し出されているユリーカに頷いた。
【83 - 凶】
「これは……」
『ファ、ファイトって意味なのです!』
「お御籤引こうよ二人とも。いい結果が出ればいいね。当たるも八卦当たらぬも八卦と言う話だけどね」
『特異運命座標』水鏡 藍(p3p011332)はにこりと微笑んだナビゲーターAIのユリーカが『善い結果だと良いですね』と笑っている。
と、いえども藍は『瓦礫の轍』シャーロット(p3p011329)と『幻想の冒険者』雛鶴・星乃叶(p3p011020)の結果が良くなければ取り替えようとも考えて居た。
【00 - 大凶】
――何とも言えぬ凄まじい結果を握り込んでいたのは屹度気のせいではないのだ。ユリーカが『凄いのです』と言った声にシャーロットはぱちりと瞬く。
「どうだった?」
おみくじは運勢を占うのには良いと聞いていた。仲間である二人の結果が気になったのだ。
【60 - 小吉】
結果を見せるシャーロットに「こういうのは初めてです」と星乃叶がそっとお神籤を差し出した。
【04 - 大吉】
「良い結果だね」
シャーロットに頷かれて「わあ、本当ですか!」と星乃叶が微笑み、藍は「本当だね」と頷く。
藍の握り締めたお神籤に二人が驚いた顔をしたのは――仕方が無い事なのだった。
「皆様お待たせ致しました。R.O.O.と言えばこの私! 九重ツr……何、現実でのパーティだと?
うっかり情報を流し見したせいで、あやうく身バレしてしまうところだったではないか。
これが『危ない、致命傷で済んだ』というやつか」
果たして無事であったのかは『終音』冬越 弾正(p3p007105)しか知りやしない。スースラは暇だからと着いて来たのだ。
「何をするんだ?」
「そうだな。死ぬ事以外はかすり傷、を合言葉にあらゆる敵と相対してきた俺だが、今年は反転した実父との殺し合いが確定しているので既に運気はお祓い行った方がいいレベル。
ここらで一発、そーい! とクジを引いて、どかーん! と景気いい内容でも読んでおきたいものだ。
悪かったら全部、クジを結んで見なかった事にすればいいしな!という訳で鉄帝からわざわざスースラ殿を呼んできた。クジを結びたい人はツノを貸してもらうといい」
「成程」
「……?」
スースラはどう言うことだろうかと眉を寄せた。ネクタイを結ぶことさえ危ういスースラはお神籤の結び方を理解していなかったのだ。
【02 - 大吉】
「すまない、スースラ殿。良かった」
『あら、本当ね』
うわ、とスースラが言えばAIのビッツが「うわってなによ」と唇を尖らしている。
「へえおみくじか、面白そうじゃん。
ピンポイントで占いたいことはあるっちゃあるけどさ、流石に重いだろ?
そういうのはおみくじには期待しちゃ駄目だよな、元旦らしく軽快にいこうぜ。
かといって関心ないことでもつまらないし、うーん……じゃあ、これ!」
『竜剣』シラス(p3p004421)はモニターに映し出されていたビッツを一瞥してから「折角だしいいだろ?」と笑った。
『あら、いいわよ。子犬ちゃん、言ってみなさい?』
「ラド・バウのSクラス昇格についてだ。今年こそビッツ・ビネガーと同じ土俵に立って一矢報いてやりたいぜ。
ルストの顔面にだって届いたんだ、やってやれないことはないだろ。
【75 - 末吉】
『どっちかというとアタシの勝ちね。諦めないんでしょ、子犬ちゃん』
「上等だよ、ブッ倒してやるぜ」
「あら、いいじゃない」
「ッ――!?」
振り返ったシラスにビッツがにっこりと笑って弾正の襟をひっ捕まえた。
「ほら、『シラス』も行くわよ。忙しいんだからね」
「あ、おい、ビッツ――!」
呼ぶシラスの声に嬉しそうに笑ったビッツが「此の儘、正月特番に行くわよ」と駆けて行く。
そんな新春『セフィロト』お神籤。これにて店じまいなのであった――
成否
成功
GMコメント
2024年もどうぞよろしくお願い致します!
難易度はノーマルとなって居ますが恐いことも、戦う事も必要ありません。イベントシナリオの延長線上のシナリオです。
●場所
練達です。
マッドハッターの研究室のモニターでお神籤を引くor再現性東京希望ヶ浜で初詣をするor想像の塔の檻を突くことが出来ます。
●プレイングに何を書けば良いの?
新年の抱負とか、「これに対して占って!」だとか、何か言いたいことをご記載下さい。
イベントシナリオのようなものです。お好みの選択肢をお選び頂き自由にご選択下さい。
●NPC
マッドハッターや操、陽田あたりがおります。
また、音呂木神社には音呂木ひよのがおります。
他、夏あかねのNPCでしたらお気軽にお声かけ頂ければ遊びに来させて頂けるかと思います。
(亮やフランツェル、クレカ、なじみ、晴明、イヴ、水夜子、晴陽、庚、琉珂、蕃茄、カロルと
最近混沌に渡ってこられるようになったらしいマナセ、アイオン、ロックあたりならばお返事できると思われます)
●おみやげ
当シナリオでは参加者様に1つ『ユリーカのないないボックス』がお土産で配布されます。
ラリーシナリオの性質上何度も参加は可能ですが、お土産は『一人につき一つを後日配布』とさせて頂きます。
アイテム名:ユリーカのないないボックス
効果:【使用するといずれかの効果をもったアイテム一つと交換する事が出来ます。「経験値+2000」「パンドラ回復+2」】
●参加時の注意事項
当シナリオではチームでの参加が可能です。
【チーム名(チーム人数)】or【キャラ(ID)】をプレイング冒頭にご記載下さい。
同行者
お一人行動orチーム行動を選択してください。
また、チーム行動時は【チーム名(人数)】をご記載下さいませ。
【1】チーム参加
多人数での参加を行ないます。
必ず【参加するチーム名】をご記載下さい。
【2】お一人行動(誰かと同行可能)
お一人で行動されている方同士でランダムに組み合わせる可能性があります。
【3】お一人行動(必ず一人で行動する)
やっぱり、静かに祈ったりもしますしね! ソロ行動です。
何をする?
以下の選択肢より行動を選べます。
【1】お神籤を引く
お神籤を引きます。1d100で結果が出て来ます。
ランダムなNPCがナビゲーターとして結果を伝えてくれます。マッドハッター作成AIのお返事です実物と大きく違いますのでご注意ください。
(※ナビゲーターに関係者を望む場合はご指定が可能です)
【2】初詣に行く
希望ヶ浜の音呂木神社の初詣です。
新年の抱負を語って帰りましょう。本日もお憑かれ様です。
【3】新春初売りバーゲン!
希望ヶ浜の新春初売りバーゲンの荒波に飲まれましょう。
成果物があるのかも1d100で結果を出しておきます。ある意味運試しですね。
で、何を買う?
【4】檻の中の何かを突く
井「あっ、そこ……イイ……天才では!!?」
( ・◡・*)「はい」
ゴリラ「ウホホォォォォドコドコドコドコドコドコ」
???「^^^^」
何かが起こります……。
【5】その他
練達内で、ご希望に応えられるかは分りませんが、どうぞ。
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