PandoraPartyProject

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<希譚>

聞いてはいけない話

希譚

 それは『希望ヶ浜』の都市伝説。
 それは『希望ヶ浜』の有り得ない話。

 それは『希望ヶ浜』に存在した神様の――……

希譚シリーズ

『希望ヶ浜 怪異譚』
 それは希望ヶ浜に古くから伝わっている都市伝説を蒐集した一冊の書です。
 実在しているのかさえも『都市伝説』であるこの書には様々な物語が綴られています。
 例えば、『石神地区に住まう神様の話』。例えば、『逢坂地区の離島に住まう蛇蠱の話』。例えば、『万年桜の降霊術』……
 無数に綴られた物語は作家『葛籠 神璽』の口伝や手記を頼りに辿ることが出来ます。
 ですが作家『葛籠 神璽』そのものも存在して居るかは分かりません。ひょっとして――……?

  • 人口減少によって残された集落、ダム底の――『石神地区』
  • 工業廃水の向こう離島に住まい続けた住民の――『逢坂地区』
  • 狂い咲いた万年桜。その下に佇むは――『両槻地域』
  • 口伝、手記、怪異を蒐集する道筋たれ――『音呂木神社』

[注:繙読後、突然に誰かに呼ばれたとしても決して応えないでください。]
[注:繙読後、何かの気配を感じたとしても決して振り向かないで下さい。]
『真性怪異』
 人の手によって斃すことの出来ない存在。つまりは『神』や『幽霊』等の神霊的存在。人知及ばぬモノである。
 神仏や霊魂などの超自然的存在のことを指し示し、特異運命座標の力を駆使したとて、その影響に対しては抗うことが出来ない存在のこと差す。
 只し、此処で定義される神は混沌世界の『神』とは同義ではない。再現性東京の『日本』というフィールドを強く反映し、此処で定義される神仏や霊魂などの存在は八百万の神々(人間社会の法則や論理では制御不能な存在)を指し示すようである。
 それは混沌世界では『神霊』『大精霊』と呼ばれる者と同義であるかもしれない。だが、其れよりも尚、再現性東京では強大なる恐怖を内包する存在であると考えられていた。

 この真性怪異と出会ったならば、先ずは逃げることを推奨する。何故ならば、其れ等によって齎される祟りや呪いには抗う為の手が確立されていないからだ。
 ――稀に『解決方法』が存在する真性怪異も存在している。
 だが、希譚に綴られた存在は……。

石神地区[▼]

これまでの事件のあらまし

 希望ヶ浜地区には去夢鉄道と呼ばれる鉄道会社が存在し、希望ヶ浜での生活をより豊かにしている。
 そんな去夢鉄道には幾つかの噂話があった。その一つが、『最終電車を寝過ごした生徒が辿り着いた先には――』というものである。
 深夜1時23分発の『石神駅行急行』という有り得ざる電車に乗れば異界に連れ去られる可能性があるのだそうだ。

 噂を実践したイレギュラーズを待ち受けていたのはネットロアの一つ『猿夢』、そして『きさらぎ駅』にも類似した奇妙な駅に降り立つこととなった。
 駅を降り、異界と化した石神地区を散策したイレギュラーズ達の中で奇妙な予感を感じた者が居る。

 真性怪異の侵蝕を受けたか、それとも。「呼ばれている」と告げた彼等が向かわねばならないと考えたのは『来名戸村』であった。
 それは石神地区に嘗て存在した村である。今はダムの底に沈んでいるはずのその村に『秋祭りの日に立ち入ることが出来る』のだそうだ。
 共に任務に訪れていた音呂木ひよのには見えないダムの底の村。
 儀式が執り行われている村の中でイレギュラーズは探索する。後ろから何かの声がする……村に留まれと告げるように誘う……。

 この地に存在して居たのは『来名戸神』と呼ばれる真性怪異であった。それも古くから信仰され、太刀打ちできる存在ではない。
 其れ等を此処まで強力に育てたのは石神山上ダムに存在する『阿僧祇霊園』であった。
『阿僧祇霊園』の石神支社は真性怪異の強い侵蝕を受け、人身御供となった少女の為の贄を捧げ続けていたそうです。
 土葬された筈の遺体は真性怪異の『妖気』を受け、『死人憑(ゾンビ)』として現実世界に溢れ始めました。

 イレギュラーズの活躍を受け『死人憑』を斥けた後、ひよのは在る決断を下します。
 真性怪異は『払除けられる存在』ではない、と。共存しているだけならば害のない存在として認識できる来名戸神を深いダムの底に封じるのです。
  ……ですが、来名戸神は気に入った存在を自身のフィールドに呼び込みました。
 あの地から帰ってこなくてはならない。自力で脱出することとなるイレギュラーズは音呂木の鈴の音色を頼りに、何とか帰還をし――今現在は石神の神『来名戸』は深いダムの底に眠っています。

 その封印が少しでも綻びたら、今度こそは……

『石神地区』スポット概要
 再現性東京2010街の希望ヶ浜地区の端に位置するスポット。山と田舎、土着信仰にフォーカスを当てて設計された地区です。
 利用者が減少した去夢鉄道石神線は廃線となり、交通手段が脆弱で在る事が人口流出に拍車を掛けているようです。
 非情に風光明媚な田舎と言った雰囲気です。寂れた街であり、田園風景が広がっています。直ぐ傍に存在する石神山を越えれば混沌世界と練達の風景が広がっています。
 山が『非現実』を阻んで居る事で、山自体が神域であると言う考え方も存在して居ました。
 山上には石神山上ダムが存在して居ます。此のダムは嘗ては住民運動が行われた来名戸村の上に立てられたものですが、移住支援などの手厚い住民への対応で開発が進められたそうです。
 現在は閑散としており『音呂木』と『希望ヶ浜学園』は立ち入りを一時的に封じています。

[長編情報1:去夢鉄道に乗って辿り着いた石神地区では夜な夜な祭りが行われていました。どうやら、来名戸村への誘いだったようです。]
[長編情報2:土着信仰にフォーカスを当てているため、この地では少女が嘗ては『神様へと嫁いだ』ようです……。]
[長編情報3:来名戸の神に存在を認識されたイレギュラーズが居たため、一時的に真性怪異を封じ刺激しないようにと村への立ち入りを禁じています]
『スポット紹介:石神地区』
『石神駅』
 元・去夢鉄道 石神線 石神駅。
 廃線になった元無人駅です。音呂木ひよの曰く唯一現世と『隔世』の入り口としてのモチーフとして使いやすい場所だそうです。
『石神市街』
 石神地区の中央市街です。田園風景の中にぽつぽつと家屋が存在して居ます。其れ等も殆どが空き家となっており、寂れた商店街には人気がありません。
 残された人々のために阿僧祇霊園のスタッフが慈善事業を行っていることがテレビでもよく中継されています。
『石神山上ダム』
 石神山の上に存在するダムです。嘗てはダム予定地に来名戸村が存在しましたが、村全てを取り潰すと言う方向で可決され、ダムが建設されました。
『旧:来名戸村(山上ダム底:来名戸村)』
 来名戸村と呼ばれた村です。ダムの底に沈んでいます――が、この『来名戸神』と呼ばれる真性怪異が眠っています。
 人々の存在に気づき手を伸ばし、抗うことを拒みます。それは、自身らの『領域』に入った者を決して逃さぬという意志なのでしょう……
 参考シナリオ:<希譚>石神地区来名戸村
『阿僧祇霊園石神支社』
 阿僧祇霊園の石神地区の支社です。冠婚葬祭イベント事は何でも担当していましたが昨今の人口流出によって、現在は村の便利屋さん状態です。
 長らく此の地区に根を下ろし続けた事で、一部スタッフは精神に異常を来たし地下の空洞にて******(これ以降は繙読不可能です)
 参考シナリオ:<希譚>阿僧祇霊園石神支社

神域巫女:『音呂木』

音呂木 ひよの
 音呂木神社の一人娘。古くから希望ヶ浜に存在する『音呂木神社』の巫女であり、真性怪異及び悪性怪異の専門家。
 神事の奉仕、及び神職の補佐役を担っているが希望ヶ浜学園の学生及びアドバイザーとしての立場が強く、中心的な神事は両親が行って居るようである。
 真性怪異には『音呂木の娘』として受入れることを拒絶されることも多い程に『音呂木の娘』としての血が濃く、霊的存在を認め忌避感を示すことはない。
 普段は明るく元気な希望ヶ浜の皆の『センパイ』。希望ヶ浜学園の生徒を送り出した際には、彼女は『皆の帰り道』となるべき存在である。

 石神地区では『帰り道を示す』役割を中心的に担っていた。

逢坂地区[▼]

これまでの事件のあらまし

朱殷の衣』と呼ばれる都市伝説がある。逢坂に残された伝承によれば、それは死人の地で染め上げた美しい布なのだそうだ。
 見た者を魅了し、思わず袖を通したくなるようなその布が存在した逢坂地区には少し離れた場所に離島が存在します。
 地区の者達は皆、向かう事を否定し、口を閉ざすその場所は『閉鎖的』な島でした。

 島へと渡ったイレギュラーズは村人の目を盗み調査に乗り出します。蛇蠱が存在すると言い伝えられたその島では身代わり人形の小芥子がよく用いられています。
 有柄。ユウヘイとも読める其れは後天的に『幽閉の島』として名乗られた蛇の憑物筋の島であったのだろうか。
 閉鎖的な空気を醸す山はまるで蛇の腹の中のような感覚。
 その島そのものが『蛇』であるような奇妙な感覚を感じたイレギュラーズは呪われると島民に叱られます。

『外部を遮断する』有柄島では一年ぶりに『海祭り』が行われました――前回、踏み入った時とは違い、歓迎する島民にイレギュラーズが感じたのは底の見えない不快感と恐怖でした。
 何とも奇妙な空気を醸した逢坂の『離島』では、祭りの日に『小芥子』での厄払いをお勧めされます。
 小芥子を籠に。祝詞と唱えながら進む島民達の様子を後ろで見ていたイレギュラーズは目にしました。

 滝壺に向かって小芥子を投げ入れる巫女達の姿を。そして、其の儘巫女達は滝壺に飲まれ――

 彼女達の遺体は島の隅、裏側、海から通じる洞に存在して居た洞穴に流れ込みました。
 調査中のイレギュラーズはその遺骸を目にし、『下半身が蛇の女』が現れたと告げた者が出てきます。
 海祭りの儀式の度に、その神は器を手に入れたのでしょうか――嘗て、風土病が存在したと語られた有柄の島。

 この島の風土病とは『再現性東京が受け入れぬ存在』、つまりは蛇の獣種のことでした。
 ですが、発端となった事が些細であれど其れは恐怖とし広がり、真性怪異を作り出したのでしょう。
 祟り神を屠ることがこの島にどのような影響を与えるかは定かではありませんが、確かにその支配を払いのけたのです。

『逢坂地区』
 再現性東京2010街希望ヶ浜地区の海沿いに存在する街です。海というロケーションが存在し得ない区域ですが、『希望ヶ浜から出たくない人々』の為に神奈川県鎌倉付近の風景を再現したと言われています。
 遠景の海自体は一種のホログラムで作成されている様子ですが、実物であるかのような錯覚を与える細工がされています。
 ある種で片田舎の観光地と言った風貌です。遠く、海より見えるのは『沖の御島』とも呼ばれる離れ小島です。
 島には護島(後藤)と呼ばれる人々が守人として住んでおり、様々な伝承や民俗風習が残されています。
 その一つが護島は『蛇蠱』であるというものです。余所者を赦さず、特異な信仰形態を以て生活を営んでいます。ただし、祭りの日のみ『島』を開き外の者達を歓迎するそうですが……。
『スポット紹介:逢坂地区』
『逢坂市』
 神奈川県の海沿いの田舎をモチーフに作られた海沿いの街です。其れなりに栄えていますが閉鎖的な雰囲気は否めません。

『有柄島(沖の御島)』
 逢坂地区から確認できる離島。
 区内では『名前を呼んではいけない』『行ってはいけない』とされ、名を呼ばれる事は少ない様です。様々な伝承が付随しています。
 島の名前は『ありえ』と読みます。護島(ごとう)という一族が代々居住し、神託を齎す神様を護っているとされているようです。
 島へと渡るために船を出してくれた漁師は「蛇には気をつけなさい」と何度も何度も忠告してきました。それは蛇蠱(へびみこ)に謂れがあるのだとか。

物語の語部

澄原 水夜子
 希望ヶ浜に存在する『七不思議』の『北希』澄原病院に所属する澄原家分家の娘。
 希望ヶ浜学園の大学にて民俗学を専攻しながら、澄原病院の営業職を務めている。  阿僧祇霊園に出向したり佐伯製作所に協力したりと日々を忙しく過ごしている。『希譚』や『真性怪異』の研究家であり、『希譚』の語部的存在。
 音呂木の加護が強く、霊的存在に拒否されるひよのに代わって両槻の地ではフィールドワーカーとして活動している。
『イレギュラーズを調査に付き合わせている』という認識も強く、出来る限り多くを巻込まないように注力している。

両槻地域(万年桜)[▼]

これまでの事件のあらまし

 春先から夏まで、万年桜が咲き誇る――観光スポットとして知られる万年桜の地は希譚にも掲載された場所でした。
 ところが、可笑しな事にその土地名称は脳から欠落してしまいます。それこそが『真性怪異の侵蝕』であり、『若宮』と呼んだ真性怪異から別たれた新たな存在をこの地に封じ込める役割を担っていたのでしょう。

 花見を兼ねての調査に赴こうと誘う澄原水夜子は嘗てはこの地で従姉の晴陽、『祓い屋』燈堂 暁月が何らかの問題に直面した事を告げます。
 其れこそが、晴陽が暁月を毛嫌いする切欠――親友『鹿路 心咲』の殺害の現場でした。
 どうして暁月が心咲を殺したのか。遊歩道で出会う心咲は何なのか。晴陽と暁月が覚えて居ない理由は何か。
 イレギュラーズは『普段の希譚』とは違った側面からの調査を始めます。

 お堂に落ちていた綿は『この地に伝わる降霊術』に使用されたものだったのでしょう。山の立て看板は肝試しに訪れる者を驚かすためのもの。
 そして――この地に存在した『怪異』を『祓い屋』として高校時代の燈堂暁月が祓わんとして降霊術を行ったことも判明しました。
 今の『鹿路心咲』の幻影は、真性怪異に利用された姿のようです。
 暁月と晴陽は『鹿路心咲』を解放すべく、イレギュラーズとあの日の再現をし――『若宮』と呼んだ真性怪異の分霊を撃破するに至ります。

 撃破された『若宮』は楊枝 茄子子(p3p008356)の与えた形として神性を失い、怪異の欠片として生きてゆく事になった。

 TOP:桜散り行く日々に

『両槻地域』
 再現性東京2010街希望ヶ浜地区の郊外に存在する観光名所です。奈良や京都、古都を思わせる風光明媚な建築物と『万年桜』と呼ばれる開花期間が長い大木が存在しています。
 万年桜は春~夏まで咲き綻び、桜並木を長い期間で楽しむことが出来ますが『土地名称』は何故か頭から欠落し、言葉にしても聞き取った後ぼやけてしまう奇怪な現象が起きています。
 近しい山には二つの塔が立っており、万年桜の裏には古びた社が存在していますが……。
 嘗ては学生時代の澄原晴陽、燈堂暁月、朝倉詩織(暁月の恋人)、鹿路心咲(晴陽の親友)が訪れた事があるそうです。
 何故か、遊歩道より逸れた道に進もうとすると鹿路心咲によく似た人間が忠告を促すそうです
『スポット紹介:両槻地域』
『万年桜』
 再現性東京では『観光地』として親しまれている地域です。美しい花が狂い咲くそうです。
 村人達は疫病と飢饉が流行った際でも『真性怪異』の影響を受けて狂い咲く桜をご神体であると思い込み『神様を別ちました』
 疫病で死んでいった人々の無念と、そしてまだ年若き新興の神――『若宮』は今もその地で咲き誇り続けて居ます。

物語の語部:『澄原病院』

澄原 水夜子
 従妹の晴陽に代わって両槻の地を調査している澄原分家のフィールドワーカーガール。
 基本は『真性怪異』専門家として『希譚』に関わっているが、希望ヶ浜の人間には珍しく『外の世界』にも寛容である。
 一人っ子であった事から従姉兄の晴陽と龍成によく懐いており、彼等のために『両槻』の一件を何とか調査完了したいと考えているようだ。
澄原 晴陽
 澄原病院院長。希望ヶ浜にネットワークを広く持つ澄原財閥の直系親族。年若くして院長の座に就いている。専門は小児科・内科及び『夜妖』
 希望ヶ浜の特異的な診療としての『夜妖総合診療』を行っており、横の繋がりは広く持つ(希望ヶ浜内に存在する夜妖診療所で対応できない場合は全て澄原病院が受入れることとなっている)
 医療的観点から夜妖への対応に当たる事より『祓い屋』に対してのスタンスは「其方で出来るのであれば此方は出る幕がない」と一歩引いた様子であるが、無理矢理の対処は患者(対象者)の負担になると非常に否定的見解を述べるようである。音呂木ひよのに言わせれば「晴陽先生の都合の良いお医者様ごっこの台詞」であるそうだが――……

 彼女は『祓い屋』燈堂 暁月の高校時代の『後輩』に辺り、彼の恋人『詩織』と自信の親友『心咲』が仲が良かったことで関わりを持った。
 ある日、燈堂暁月も関わった不慮の事故で『心咲』を亡くし、同じ夜妖の専門家でありながら非情な決断を下した暁月に幻滅した過去がある。

 真性怪異の『侵蝕』で忘れていた過去を思い出した今、『何も気づけなかった自分』の事を悔やみ、山に登る決意をした。
燈堂 暁月(ゲスト)
 希望ヶ浜学園の教師。燈堂 廻の保護者。
 性格は優しくもあり厳しくもある。良き指導者。
 裏の顔は夜妖憑きを祓う事を生業とする『祓い屋』燈堂一門の当主。
 晴陽、心咲の先輩であり、心咲の友人であった詩織の恋人。
 自身が山に調査に赴いた際に『起きた不慮の事故』で真性怪異の侵蝕を激しく受けた心咲を晴陽の目の前で殺した過去を持つ。
「晴陽を助ける為に仕方が無かった」「自分の力が足りなかった」事のみを覚えており真性怪異の侵蝕でその他の過去を忘れてしまっていた。
 思い出した今、晴陽と共に『心咲の先輩』として山に登る決意をした。
鹿路 心咲
 澄原晴陽の親友。享年16。
 先輩であった朝倉詩織と仲が良く、その縁で彼女の恋人であった燈堂暁月とも懇意にしていた。
 裏では名の知れた家系同士である晴陽と暁月の間にはぎこちない空気が流れていたが心咲は持ち前の明るさで「なんとかなる」と笑っていたという。
 笑っていたという――が、彼女は不慮の事故で亡くなった。

 どうやら、彼女はお花見で訪れた両槻の地で万年桜に魅入られて居た。居たいに残された桜型の火傷と痣は彼女をこの地に引き寄せる。
 その結果、燈堂暁月の任務に軽はずみに同行し、真性怪異の侵蝕を受けて燈堂暁月に殺害されたのだという。
若宮 蕃茄
『鹿路 心咲』の形を借りていたハヤマ分霊(若宮)そのもの。

葉山信仰が深く根付いた両槻の地は飢饉や日照、疫病に襲われた。
村人は咲き誇る万年桜へと信心を寄せ『ハヤマ様』は別たれた。
その分霊は力なき存在である。故に波長の合う人間を見付けてはその身を依り代にしようと考えていたのだ。
そのターゲットとなったのは鹿路心咲。そして、イレギュラーズの手によって分霊の『荒魂』は封じられ――

受け入れると宣言した楊枝 茄子子(p3p008356)に新たに『蕃茄』の名を与えられ神霊の欠片、力無き存在として生きることとなった。
心咲の影響を大きく受けてはいるが、無垢な子供を思わす様子である。
時折、真性怪異の反応をその身で大きく感じるが……?

音呂木神社[▼]

これまでの事件のあらまし

 ――No date......

『音呂木神社』
 再現性東京2010街希望ヶ浜地区に古くから存在しているとされる神社です。
 その名の由来は神社境内に存在している神木からとされており、『神々が神木を目指してお通りなさった』という意味合いで御路木(また、神木が天の世界に繋がっているとされお通りなさるという意味で『戸路来』)と呼ばれていたとさえています。
 それが転じ『御途路来』となり、現在の漢字が当て嵌められたと言われています。

物語の語部:『神域巫女と学者少女』

音呂木 ひよの
 音呂木神社の一人娘。古くから希望ヶ浜に存在する『音呂木神社』の巫女であり、真性怪異及び悪性怪異の専門家。
 神事の奉仕、及び神職の補佐役を担っているが希望ヶ浜学園の学生及びアドバイザーとしての立場が強く、中心的な神事は両親が行って居るようである。
 真性怪異には『音呂木の娘』として受入れることを拒絶されることも多い程に『音呂木の娘』としての血が濃く、霊的存在を認め忌避感を示すことはない。
 普段は明るく元気な希望ヶ浜の皆の『センパイ』。希望ヶ浜学園の生徒を送り出した際には、彼女は『皆の帰り道』となるべき存在である。

 音呂木の神様こそ、真性怪異であると『知って』いながらも――……
澄原 水夜子
 従妹の晴陽に代わって両槻の地を調査している澄原分家のフィールドワーカーガール。
 基本は『真性怪異』専門家として『希譚』に関わっているが、希望ヶ浜の人間には珍しく『外の世界』にも寛容である。
 かかわり続けた希譚に記載されていた『音呂木』の名をポケットに隠しながらも、行き着く先を眺めるために共に探索をしている。

登場人物

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タムケノカミ(分類名)
 再現性東京202X街『希望ヶ浜』地区に存在するとされている悪性怪異。澄原 水夜子曰く「希望ヶ浜怪異譚にすこしばかり記載されている怪異の一種」であるそうだ。
 旅人の安全を護り、旅の安全を祈るが為に道端に存在しているとされたみちの神の一種であるとされ、正確な名前は判明していない。
 葛籠 神璽曰くは音呂木家に縁が深く、『音呂木』より旅立つもの見守っていた存在であろうと考えられているらしい。
 但し、希望ヶ浜怪異譚にその記述が少ないのはタムケノカミ自身が他の地区に存在する真性怪異――例えば石神や逢坂の神様達だ――と違って自由に場を移動できる存在であるからだとされていた。
 音呂木神社は再現性東京202X地区がモチーフに置いている現在日本の急成長により独自のフィールドを要しているわけではない。故に、非常に狭苦しい場に押し込められている神であるとも考えられる。その『音呂木』の使者とも呼べる立場に当たったタムケノカミはその力の届く範囲を徘徊し続けているのだそうだ。
 詰まりは神が己の加護が届く範囲と定めた不可視の結界の内部を彼は動き回りみちを示しているという事だろう。
 負を背負った者を見付けたならば音呂木神社への道を示し、不浄を注ぎ終えた者には怪異とは別たれる道を与えるようにと加護を与える。
 正しく音呂木の神が望んだ正常の動きを繰り返す。音呂木の神が正常であれば、の話であるが……。
葛籠 うつしよ
 『夜妖憑き』――? 怪談の噺家を自称し『語り部』を名乗っている人形のような娘。
 音呂木の縁者であると名乗る彼女は双子の兄と共に「葛籠」の名を有し活動している
葛籠 とこよ
 希望ヶ浜大学民俗学部に所属している青年。澄原 水夜子の先輩に辺り、研究分野は『再現性都市が精巧に再現する民俗信仰に関して』
 音呂木ひよのとは面識があるが、彼女はとこよを毛嫌いし面会を拒否する。
 蜘蛛が憑いている――? ただ、彼は多くは語らない。

『怪異譚』に関わるイレギュラーズ

笹木 花丸(p3p008689)
 異世界よりやって来たトンチキガール。異世界生活を満喫すべく『花丸手帳』に遣りたいことを纏め、日々を謳歌する。
 人の痛みに寄り添い、自分の思うままに直向きに走り抜ける。傷だらけの拳は乙女の秘密。
 ひよのと懇意にしており、ひよのからも特に気を掛けて貰っている。水夜子に言わせれば『大事にされすぎて怪異もびびりますよね』との事。
 音呂木の加護を(本人が知らずの内に)最も受けているのは花丸だろう。
 花丸自身は大切な友人との毎日を過ごしたいという一心なのだろうが、『非夜乃』の立場はそれを容易に赦すモノではない。
 巫女たるもの、使命が存在する。花丸にはまだ伝えられない業が彼女を傷付けることがないようにと、そう祈る事しか出来ない。

 もしも、ひよのに一大事があったならば花丸は一番に駆け付ける、とひよのは認識している。
 ただ、少しの危うさばかりが気になってしまうから――彼女だけには幸せになって欲しい、などとひよのは今日も思うのだった。


ロト(p3p008480)
 深緑出身の記憶喪失者希望ヶ浜では希望ヶ浜学園の教員をしている。
 去夢鉄道のウワサを耳にし、石神地区の調査に乗り出した。
 青年は『怪人アンサー』と呼ばれる悪性怪異:夜妖と連絡を取り合い、石神の神の通名を耳にした
 ――が、その所為か『来名戸』の異界へと迷い混むこととなる。
 もしも『厄』を呼ぶ結果となろうとも青年の知的探究心は止まらない。
 ざぶん、と音を立て滝へと飛び込むことも厭わない。その先が常世へと続いていたとしても、だ。

 だからこそ、来名戸の『妻』となったお嬢さんは彼を好んだ。
 決して離さないと呼び込めども呼び込めども、彼は『出て行ってしまった』
 お嬢さんは何時だって待っている。何時か彼が『現実』を捨てたくなった時――石神に帰ってきてね、と。

 来名戸神が音呂木によって封じられている現在は、若宮(蕃茄)に乞われて家庭教師を行って居る。
 蕃茄曰く「ロトは、気を抜けばお嬢さんに連れて行かれるから蕃茄が面倒見ている」そうだ。
恋屍・愛無(p3p00729)
 山は境界。根の国。そんな場所に立ち入るは地球外生命体。
 死に最も近い気配を感じ取るように澄原 水夜子の傍で怪異の経験を重ね続ける獏馬の夜妖憑き。
 水夜子に言わせれば『死』という気配だけが細い糸のように自身と愛無を繋いでいる。

 無茶をし、身を挺する少女の傍で『死なないでおくれ』と生きる理由を与え続ける。
 他の誰よりも、簡単に命を散らしそうなその人が、愛無にとっては興味深くて仕方がないのだ。
 桜の花に攫われて言ってしまいそうな君と。
 死なんて恐れていなかったはずの自分が『死んではいけない』と口にする重みが未だ不可思議な気配を纏う。
 それもこれも、感情に名前を付けられないまま、怪異を追掛ける水夜子の傍に佇んでいた。


楊枝 茄子子(p3p008356)
 天義出身。偽名。本名は『呼ばないで、蕃茄!』
 「羽衣教会」の会長であり、その性質は非常に利己的。身勝手。自由奔放――と称する。
 茄子子は己の興味の赴くままに活動している。していた。
 だからこそ、穴を掘った。覗き込んだ。それが神に覗き返されると知っていても。
 石神の神に好かれた娘は、それでも己が信じるものだけを見詰めていた。

 茄子子は『利己的』だったからこそ、神様と友達になることを望んだ。
 宙ぶらりんだった若宮に己の存在を刻みつけ、それを『ただの友人』であれと願ったのだ。
 晴陽やひよのに言わせれば『無茶』だった。それでも、茄子子は友人の為に無茶をするのは吝かではなかったから。
 怪異を、神様を、ただの『女の子』に作り替えてしまった。
 依代であった人形に無理矢理封じ込められた若宮に『蕃茄』の名と、姿を与えた。
 蕃茄は茄子子をナチュカと本来の名で呼びかけ、母のように慕っている。彼女が望んでくれなければ、生きて何て居なかったから。


カイト(p3p007128)
 希望ヶ浜学園 現代文教師。最近は「先生、少し変わったよね。落ち着いたっていうか……」と言うのが生徒の談。
 巫術を手繰り、結界術を駆使する音呂木の巫女ひよののサポートを行なう事が多い。
 その理由も『場作り』を得意とする為に舞台設営術を得意としているが故。舞台設営術と呼びながらも噛み砕けばそれはほぼ結界術そのものである。
 場に向かえないひよのが遠隔で結界を張り『都合良くコントロール』する難しさをカイトはよく知っていた。
 そのサポート経験によりひよのには結界術に関して非常に頼りにしていると言われたが「手伝えって? 勘弁してくれ……」と毎度、肩をがっくり落とす。
 ひよのに力を買われるのは構わないが、手伝う事は非常に労を消費するため余り乗り気では無い。どうせ、手伝わされるのだが……。

 彼は見てしまった。タムケノカミと呼ばれるそれを――
「信仰も、続ければ続けるほどに手垢が付いて気付けば取り返しの付かないモノになりましょう」
 その言葉に頭を抱えたのは……言うまでもない。

茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)
 音呂木神社の押し掛け弟子――が、今は見習い巫女。
 何時だってハイテンションな「女子高生」を演じている戦略兵器。ぽんこつガールと言われようとも、巫女見習いとして奔走している。
 神社の手伝いをよくサボるためひよのには叱られることが多い……が、それも可愛い後輩という事でと笑顔で躱している。

 秋奈を弟子にした理由も、彼女が『怪異に好かれやすく』『怪異に引っ張られやすい』からである。
 通常の人間は怪異を忌み嫌うが秋奈は別だ。怪異に同情し、怪異に理解を示し、怪異と共に在ろうとする。
 その危うさにより音呂木の加護を与えることをひよのは考えた――が、有柄島での儀式にて、彼女は怪異の影響をその身に色濃く受ける事となる。
 舌は蛇のように割れ始め、腕には蛇を思わす鱗が這う。
 夜妖憑き未満、見習い巫女以上。音呂木の神の加護を受けているからこそ『後輩』はその状態を維持できていた。
 だが、夜妖に少しでも心を寄せてしまったときは――音呂木の加護は弾け飛び、夜妖に憑かれることとなるだろう。

散々・未散 (p3p008200)
 葬列を引連れる蒼い鳥。葬儀屋である以上、魂に声を掛けるのは道理の上。
 恐怖という感情が元来、彼女は薄い。自己の認識も『人間として当たり前な自我』の形成が甘い。
 怪異に付け入る隙を与えるからこそ、誰が言ったか『怪異サークルの姫・紅一点』。愛し愛され、呪い呪われ、魅入られたならば真っ逆さまに落ちていける。
 未散を繋ぎ止めるのは、友人アレクシアの声だった。繋いだ手を離さないからこそ、現に繋がりを保つことの出来る。
 アレクシアが霊的に何らかの力を有しているわけではなくとも、未散を『未散』と認識し名を呼ぶことが彼女の存在を保ち続けることとなった。

 それでも、未散とは怪異の呼ぶ方に向かってしまう。どうしようもなく、気になって堪らないのだ。
 呪詛を受けようとも怪異が呼ぶならば踏み入れたいのは恐怖心が薄いが故か、それとも『興味本位(怖い物見たさ)』であるかは定かではなく。
 その身を蝕んだのは両槻の真性怪異。『ハヤマ様』の痣は何時だって迎えに行くと印のように。
 石神のお嬢さんとて、ハヤマ様には叶わぬだろう。ハヤマ様は唯一無二に未散の事を見詰めている。何時か、空っぽになったならば器として桜の根元に埋めて仕舞う
 今はただの証である。その証が暴れぬならば、『烏合 あさの』とて傍に居る。彼女が傍に居る内は、怪異に関する危険がないと言うことだ。
 何時か、一人きりになったならば――


アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
 大樹ファルカウを信仰者。深緑生まれの『魔女』
 弱きを助け、強きを挫く――訳ではなく、ただ、広い世界を冒険し、人々を笑顔にする『ヒーロー』を目指す事を志していた一人の娘。
 希望のために駆け抜ける彼女は、希望ヶ浜では少しばかり『立場』が違う。
 有り体に言えば怪異に寄り添いやすい。その心根の優しさが故なのかもしれないが、彼女は基本的に怪異の傍に寄り添う傾向がある。

 友人・散々・未散(p3p008200)が『怪異サークルの紅一点』であることを危惧し、彼女を護るべく立ち回っていたが……当然、一人で佇む『贄』を見捨てることは出来ない。
 アレクシアも未散も、どちらも怪異に非常に好かれやすい。
 怪異とは耳を傾けてはならない存在である。そこに在ることを認め、そこに佇むことを知り、その目的を聞き出すなど持っても他。それでも彼女は優しく手を差し伸べるのだ。
 怪異にしてみれば実に付け入りやすい存在ではあるが、現在の彼女は『快いストーカー』が存在している。
 つまり、とある因習の村の贄であった『烏合 あさの』女史がひたひたと足音を立てながら見守ってくれている。
 あさのが何時かアレクシアを連れて行くのが早いか、アレクシアが他の怪異に喰われ変えた際に『あさの』が対抗するが早いかは――……今は未だ誰にも分からない。

古木・文(p3p001262)
 希望ヶ浜学園の古典教師。出生は大正から昭和にかけての二本であったが、希望ヶ浜という土壌にはよく馴染んだ。
 教師として学生達の成長を見るのが楽しみではあるが、その本質的には何処か『怪異』に対する興味が深い。
 何故ならば、その生まれ故に人が信仰で何らかを作り出すという謂れについては身に覚えがあったからだ。
 逢坂ではその深く根付いた民族的な信仰や文化についての調査を行なってきた。それが彼の知的好奇心を大いに揺さ振る事項であった。
 文化的にインターネットや携帯電話の存在しない世界からやって来た文にとって、噂話で作られる怪異は受け入れやすく、そして『その存在を求めやすい』。
 故に、怪異がそこに存在するならば文は積極的に踏み入れてしまうのだ。
 危険だと知っていても。どうしようもなく、惹かれてしまう。

 ――ただ、自らを理性的に保つことが出来るのは『教師』であるという強い認識なのかもしれない。


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