PandoraPartyProject
漆黒のAspire
幻想王国を襲った冠位色欲の凶行を何とか斥けるに至ったイレギュラーズ。
だが、その中に『レオン・ドナーツ・バルトロメイ』の姿はなかった。ギルドオーナーの代理として各国の情報収集や依頼遂行の可否を決定するのはユリーカ・ユリカとなる。
そんな彼女に小さな肩に新たなる凶報が圧し掛かる。
「世界各国に影の領域が出現したとの報告が来ているのです」
影の領域とはラサから北西、深緑の遥か西に存在する人類唯一の未踏領域である。
覇竜領域すら踏破したイレギュラーズでさえも一切踏み込める事の無かった混沌最大のタブーは即ち魔種達の本拠地に他ならない。
「正確には影の領域に繋がった端末というか、影の領域の蛇口というか……」
ユリーカの歯切れの悪さは即ち彼女――人類が持ち合わせる情報量の少なさを示すものと言えるだろう。
何れにせよ彼女の説明によれば、世界各国に出現した『影の領域』は魔種達の本拠と繋がるワームホールであり、橋頭保であるらしい。
これを放置すれば魔種陣営の戦力は各地に無限に供給され、やがて人類圏は疲弊し、崩壊しよう。
バグホールによる混乱を背景に攻勢を強める彼等の狙いは世界各国の更なる混乱と完全なる破壊だろう。世界中がそれぞれに追い詰められれば、イレギュラーズの力で勝ち得た各国が辛くも見せ続ける『人間の連携』も崩壊するとの目論見だろうか。これは魔種達による総仕上げなのだ。来る神託を迎え入れる為の。
「ボク達の理想は各地の橋頭保の破壊なのです。
ですが、それが出来なかったとしてもせめても侵食を食い止めないと皆が……」
悲痛な顔をするユリーカは今回の事件には声明があると続ける。
――ごきげんよう、皆さん。
ルクレツィアがお世話になったようですけど、もう冠位では力不足。
これより先は私、『聖女』マリアベルとBad end 8がお相手いたしますわ。
どうぞ、手加減等なさらぬよう。ラスト・ダンスまでそのステップは後悔のないように!
「アレクシアさんが最近その名前を聞いたと聞いて……イレーヌさん達とも連携して文献を調べ直したです」
蒼褪めた顔のユリーカは伝承に語られた本物の聖女の名を告げる。
物語は遂に風雲急を告げていた。