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シナリオ詳細

<漆黒のAspire>特異運命座標無双:騎兵伝

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●敗者の末路
「ぐぬぅ……あの小生意気な蛆共め……!
 奴らの邪魔を受けたせいで、わっちの主(ぬし)様が……!」
 黒い粒子が渦を巻く不可思議な空間にて。
 女の姿を象るそれは終焉獣。
 ローレットには『クルエラ』という種別名称で登録されている個体とよく似ていた。
 通常の終焉獣や寄生終焉獣を操り滅びを蔓延らせる者。
 いわば指揮官級の個体といったところ。
 先日の冠位色欲の幻想襲撃においては、中心部へ赴く己が主のために、幻想郊外へイレギュラーズ達を引きつけ、そのまま外から国を責めようと画策してた。
 だが絶望を振りまく目論みは、希望の前に辛くも打ち消されて。
 恐らくかの個体を生んだ覚えすらないであろう主は、より強大な闇の前に呆気ない終わりを迎えていた。
 残された淑女は、おめおめと子供のように。
 怨嗟の声に合わせて涙を流す他ない。
「泣いても仕方ないよ。残念だけど、もうキミの願いは叶わないんだから」
 そこへいつの間にか表れた垂れ目の少年が声をかけた。
 隣には吊り上がった目以外全く同じ少年の姿もある。
「くぅ……よくもヌケヌケと! お主らにとってもあ奴らは敵だったでしょうに! 何故(なにゆえ)加勢しなんだっ!」
 女が扇を広げると、空間中を揺蕩う滅びの魔力は凝縮され。
 振るわれた扇に呼応する流線となって二人を包み込む。
 ――かに思われたが。
「だーかーらー。ちゃんとお願いを聞いて手伝ってあげたでしょ」
 触れたものを熱で溶かし、塵一つ残さず消失させるはずのその一撃は。
 つり目の少年が伸ばした手の前で、皮肉にも跡形もなく消えていき。
「ボク達は別に、あの人達を殺すことも冠位色欲を助けることも願ってない。
 出会った命の願いに一度機会を与えるだけ」
 今度はたれ目の少年が手を伸ばせば。
 細い糸のような魔力が女性体のこめかみへと添えられる。
「……この『狂姫』。例え傲慢の魔種に身を操られようとも心までは――」
「はぁ。あんたもバカだなぁ。自分で言ったんじゃん。子供が糸になんたら~ってさ」
 次いで放たれるつり目の糸。
 二つの糸は左右から挟み込むにして位置取り、そして。
「今度はボク達の糸に、縛られてもらうね」
 糸は蛇のように牙を剥く。
「ああああああ!!!???」

~~~

「それでどうする『メウ』? コレの転移航路があれば、ワームホールから出現する終焉獣の運搬は楽になると思うけど」
 つり目の少年が問いかければ。
「まぁ、聖母様達を無視するわけにはいかないからね。でもそれはそれとして、ボク達は願いをきく仕事もやらないと。例えば……操られていた最強の皆の願いを聞いてみようか」
 たれ目の少年が答える。
「分かった、それってきっと復讐だ」
「そうだね。かつて自分達を倒した存在と……コレにもかな」
 少年達は笑みを浮かべると、優しく手を握った。


●白に寄り添う紅と紫苑
 冠位色欲による襲撃事件からほどなく。
 幻想国内は被害の情報収集、不明者や帰宅困難者への対応、復興作業等。
 同時並行的に様々な事柄へ着手する必要に迫られていた。
 当然それらは人民(立場の優劣はあるが)に関わる事柄が優先され。
 ましてや国内に至ってすらいない郊外での出来事など構っている余裕はなかった。
 だが、昨今のバグ・ホールやワームホールの出現は、こうした郊外でも頻繁に確認されている。
 ならばそれにいち早く気づくのが、次の悪夢と戦う最善の策となる。
 そんな思惑を胸に秘め、幻想郊外の草原地帯には三つの人影と馬達がいた。
「さてと。書庫ではあの子やメンバーが慰労会の準備をして待っているわ。
 遅れちゃ悪いし、手早く調査を済ませるわよ」
 愛馬から地へ降り立つ『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)。
 『見果てぬ先【紅依】』――かの高名な旗印が風に靡く。
「でもよ、一応あの後も簡単には調べたが空の穴は消えちまったし、檻の痕跡も残ってなかったろ。ここに用はねぇ気がするが」
 どんなに穏やかな場所も、一度戦地となれば血にまみれよう。
 けれど終わってしまえば、やはり帰ってくるのは静寂のみ。
 そこに意味を持たせるのは人の意志でしかないわけで。
 麗しき平和か、心燃やす紅き焔が消えた跡なのか。
 少なくとも『滅海竜の鱗から作り上げられた大太刀』を草原へ突き立てる『騎兵の先立つ紅き備』エレンシア=ウォルハリア=レスティーユ(p3p004881)の心には、燻る炎が残っていた。
「実際どうなんだよ、今回の予感は?」
「ちょっと。前回はたまたま当たっただけなんだから。人を不幸探知機みたいに言わないでくれる?」
 わりぃわりぃと呟くエレンシア。
 その隣に並び立つ『ヴァイス☆ドラッヘ』レイリー=シュタイン(p3p007270)もまた、そっと武具を地へつけるのだが。
 『ドラゴンの翼を思わせるほどの白い大盾』故に備えた重量は、やはり突き立つ形で大地へもたれ掛かる。
「あら。でも私だって貴方に言ってやりたい小言の一つや二つはあるわよ?
 まさか声も掛けずに飛び出していくなんて。
 私ったらそれはもう悲しくて三日三晩は泣き続けたわ」
 地面や空を調べる仕草に抜かりなく。
 けれど紡ぐホラは軽やかに、紫苑の髪を揺らしながらイーリンも物申す。
「あの時は気づいたら身体が動いてたのよ」
 でも。
「ごめんなさい、一人で行って。それと……ありがとう、来てくれて」
 白の想いが、集った二人へ沁みていく。
「ま、いうほど気にしてねぇけどな。
 お前が突っ走るってんなら、戦闘でもキャンプでも、あたしは付いていくぜ?
 その方が面白い事に出会えそうだしな」
「同感ね。アイドルでも何でも、好きな事を精一杯やる……それが貴方の魅力な訳だし。
 そのための努力や結果は、私達が見てるから。
 心配することはあっても否定なんてしないわよ」
「ええ、分かったわ」
 巻き込んだことを迷惑ではなく共に楽しんでくれる。
 自分の見えないところすらも見てくれている。
 交差する視線は、互いと互いの心をまっすぐ見つめ合っている。
 本当に、頼りになる仲間。
 だからきっと大丈夫。
 嬉しくなった気持ちを何とか押しとどめて、努めて冷静に。
「なら、遠慮なんかせず言わせてもらうわ」
 空を指さす。
「あれ……この前の魔法陣よね?」
 交差から集中へ。
 視線の集う先では、晴れ渡る空に穴をあけるようにして鎮座する魔法陣。
 先の戦いではその最奥は見えなかったが、今回はそこに巨大な塔の外壁が映っている。
 あれは確か。
「『コロッセウム=ドムス・アウレア』!」
 イーリンが記憶からたぐり寄せたその名称は、終焉獣の活動が活発化していく中で、鉄帝の帝都周辺に突如出現した奇妙な塔のもの。
 更に景色は揺らぎ壁の向こう側、塔の内部を透かす。
 そこには丘陵地帯を思わせる光景が広がっていた。
「なんだよこれ、テレパスか何かか?」
 エレンシアには分からない。恐らく他の誰にも。
 だがら誰かがそれに答えるよりも早く。
 魔法陣から吹き下ろされた風の魔力が3人と馬の身体を宙へと持ち上げ、勢いそのままに吸い上げていく。
「くっ、これは……!」
 イーリンには、知らなかった事実すら知ることができる贈り物がある。
 だが、彼女でなくともこの事実には気づけるだろう。
 慰労会の開始時間には、どうあっても間に合わないのであろうと。
 そして。
(はぁ。あの子が『あーもう!』っていう姿が目に浮かぶわ。……だけど)
 彼女は残してきた者がこの後の対処を上手くやってくれると信じ、まずは流れに身を任せるのであった。


●兵達の夢の地で
 魔法陣に吸い込まれた先、迎え入れるように開いた塔の外壁をすり抜けると、三人の身体はふわふわと浮いた。
 シャボン玉にでもなった気分に内心戸惑いながらも、空中遊泳の要領でなるべく開けた場所へ着地する。
 降り立ったのは草原。
 遠くには森が見えるし、そのまた奥には城壁のような石壁が薄らと確認出来た。
 空は快晴、魔法陣は未だその大きな口を開いている。
(ここがあの塔の中だとすれば、こんなあり得ない風景の説明は付くわね。
 魔法陣は転移装置だとして。前回の戦いの時は終焉獣の雨を降らせてくれたわけだけれど……)
 今度はどうくるか。
 どう利用できるか。
 イーリンの思考は急速に回り始める。
「みんな、大丈夫? 馬も……無事みたいね」
 その間レイリーは仲間や共に転移させられた馬の様子を確認。
 アイドルでだって騎士でだって。
 他者を気遣い、己を呈して励まし護れるのが彼女の美しき不倒の精神だ。
「なーんかよく分からねぇけどよ、レイリー。
 どうやらここは虫の声を聞いてられるほど、柔な場所じゃなさそうだな」
 エレンシアは武器を構えると、二人よりも前へ。
 のらりくらりと、落ち武者が一体迫ってくる。
「へっ。アンタから漂うその気配、考えるまでもねぇ!」
 目の前のそれが終焉獣の類いだと確信したエレンシアは、自身に燻っていた闘志を滾らせんとしたその時。
『縛られなさい』
 地面から出た無数の糸が彼女の身体に絡みつき。
「はぁ!? なんだよこれ!」
 ほんの一瞬でその体内へと吸収されていった。
 どうやらイーリン達も同じ状態らしい。
「気持ちわりぃことしやがって!」
 仕切り直して。
 けれど、力が入らない。
「なんでだ?」
「ウアアァァァ……!」
「エレンシア!」
 生じた僅かな隙に飛び込んで来る落ち武者。
 その一刀をレイリーが間に入る形で受け止める。
「今よ!」
「ああ!」
 とにかく今は脅威の排除が先決。
 迷い無きエレンシアの一撃は落ち武者の身体を真っ二つに切り裂いた。
「っしゃ! 見たか? 騎兵の先立つ紅き焔、先駆けの赤備の力を!」
「流石ね、エレンシア。私も負けてられないわ!」
 騎兵の誇る盾と刃がその闘志を燃やす中。
 努めて冷静にこの状況の分析を試みていたイーリンは。
(ああ、なるほど……大体分かったわ)
 今にも駆け出しそうな二人を止めるよう、押しのける形で間へ入り。
「それで。ルールは何かしら?」
『馬のひっつき虫の分際で話が早いねぇ』
 城の方角から聞こえる声は続ける。
『心優しい主様は破れた最強が願う復讐をお与え下さったのさ。
 紫のと白いの。あんたらは覚えがあるんじゃないのかい?』
「……そういうこと」
 恨みを買う機会がないわけではない。
 その為の呪いよけだ。
 だが、流石に人間以外から直接的な恨みを買うのは珍しい。
 しかも余程怨んでいるのだろう。
 先程は一体の落ち武者に過ぎなかったが。
 今度は多種多様で血気盛んに思える兵士達が軍隊となって駆けてくる。
 未だ黒点にしか思えぬこの距離でも感じる数の暴力。
 ざっと500は堅いだろうか。
「あんた、今その城の中に居るのよね?」
『だったらどうするのさ?』
「知れたことじゃない」
 イーリンは『【鋼鉄の女帝】ラムレイ』の背にまたがると。
「後でお邪魔するわ。だから首を洗って待ってなさい」
 それだけ言って後方へと馬を走らせる。
 エレンシアとレイリーも急ぎそれに続いた。
「おいイーリン、城の声に敵の軍隊、どうする気だ?」
「大丈夫よエレンシア。正直状況としては最悪この上無いけどね。
 身体に違和感があったでしょう? 大体予想はついてるけど、多分それが鍵になる。
 だから一応安全な内に確認しておきましょう。部隊準備は勝敗を大きく分けるもの。
 それと……」
「イーリン?」
 視線の意味を問うレイリーへ、笑顔で返す。
「レイリー。あの時貴方は私達が来る事を信じて戦いに行ったでしょう?
 同じよ、今回だって」
 まさか。あり得ない。
 そんな出来事すら予想して手を打てば。
 何が起きてもそれは全て『知っていた』ことにできる。
(まるで身体を内から燃やし尽くすようなこの闘志。
 ……本来なら歓迎すべきじゃないのだけれど)
 魔力が爆ぜ、人としての終わりが近づく。
 胸が、目が、思考が加速する。
 それに近しいこの感覚は敵が用意したもの。
 ならばこんな好都合、利用しない手はないだろう。
(出来過ぎた話ね)
 だが同時にこうも思うのだ。
 『神がそれを望まれる』のだとも。

ーーー

※1分で分かるOP
●1(PL情報)
良く分からん空間で良く分からん女と子供が喋ってるぞ!

●2(PC情報)
PC三人(イーリンさん、エレンシアさん、レイリーさん)が先日関わった事件の調査をしていたら空に開いた魔法陣に吸われたぞ!

●3(PC情報+GMコメント一部PC情報化)
この空間では何かしら身体に変化があるのと、遠く城の方に重要そうな敵がいるのは分かったぞ!
敵の大群も押し寄せて来ているので、一度距離をとって準備だ!

GMコメント

《システム情報:情報確度A》
●目標(成否判定&ハイルール適用)
 『コロッセウム=ドムス・アウレア』内『ヒライズミ』の層からの脱出
●副目標(一例。個人的な目標があれば下記以外にも設定可)
 仲間達と共に、一騎当千/天下無双の働きで生き延びる
 特殊個体の鎧を破り、更なる攻撃を加える

●優先
※本作は、以下の皆様(敬称略)のアフターアクションを採用したものであり、
 該当の皆様がオープニングに登場している他、優先参加権を付与しております。
『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
『騎兵の先立つ紅き備』エレンシア=ウォルハリア=レスティーユ(p3p004881)
『ヴァイス☆ドラッヘ』レイリー=シュタイン(p3p007270)

●冒険エリア
【鉄帝帝都近辺『コロッセウム=ドムス・アウレア』内部『ヒライズミ』の層】
 塔内部の不思議な力により生成された広大な敷地10km四方。
 城、草原、森林、川、起伏ある地形等が歪に融合して存在しています。
 時折吹き付ける追い風も相まって、建物内部ながら野外を感じさせます。

●冒険開始時のPC状況
PC初期配置(エリア右下=東南)からスタートします。
エリア左端(北西)にある城を目指し、そこで待つ特殊個体「破鎧終焉獣」の撤退を狙いましょう。

《依頼遂行に当たり物語内で提供されたPC情報(提供者:イーリンさん、エレンシアさん、レイリーさん 情報確度D)》

●概要
 先日戦った巨大終焉獣の痕跡を探っていたところ、魔方陣に吸い込まれた。
 そこは何故か鉄帝にある不思議塔の中。
 無数の敵兵を前に、生き残るため力を貸してほしい。

●人物(NPC)詳細
 特筆すべきネームドNPCは無し。

●味方、第三勢力詳細
 今回はサポート解放しているのでいません。

●敵詳細
【破鎧終焉獣・狂姫(きょうき)】
※関連シナリオ
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/10427
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/10619
 かつて境界にて確認された人型の終焉獣、見た目は体長5mくらいの遊女っぽいお姉さん。
 どうやら先日の一件にも関わっていた模様。
 ローレットの登録名称でいう『クルエラ』に当たる特徴を持つ個体で、色欲系列の終焉獣。
 ですが今回は何故か不毀の軍勢に協力するような形で動いており……。
 全剣王の力が流れる『破鎧』を装着しています。
 扇子を用いて魔力を操り、レーザーのようにして放つ広域戦闘が得意です。

【破鎧】詳細<ブレイク不可>
・スキル、行動全てに【副】【力特レ】 ※カは1ターンに1回まで。
・エリア全体に【破鎧の呪糸】を付与
・シナリオ中任意で一度のみ【物無】or【神無】
・【再生・充填4000】
・【HP・AP鎧500】
・主行動終了後次のターンまで攻撃によるダメージを受けなかった場合、次ターンEXA+100。
・【特殊反】→鎧による軽減前のダメージで計算し跳ね返す。
・条件達成後【時限10】が発生。時限経過で【破鎧】消失。
 (時限のターン数は、一定ダメージを与えると追加で減少)

【不毀の軍勢】
エリア各所に既に配置されている他、どんどん増えます。
一度に同時存在するのは最大1000体まで。
ザコ敵ですがHPが低い以外はH相当の強さです。
特徴により以下のように区分しますが、共通して人間サイズです。

<最強の攻撃兵団>
剣、槍、斧などで物理攻撃。
呪符、扇、杖などで神秘攻撃。
等々、とにかく射程まで近づいては攻撃してきます。
物理は毒や出血、神秘は麻痺や停滞もあったりします。
大人数で囲んでタコ殴りが得意です。

<最強の援護兵団>
治癒や付与、BSばらまきを行う祈祷師。
超レンジにて弓や猟銃で削ってくる狙撃兵。
爆発物を持ち歩く工作兵がいます。

<最強の騎兵団>
馬や熊(動物は全て終焉獣が形取ったもの)を操る高機動攻撃兵。
動物と息を合わせ連撃やヒット&ウェイ戦法が得意。
攻撃兵や援護兵よりは少ないですが、一定程度います。

<最強の拠点兵長>
他と比べて全ステータスが上昇している兵士。
城壁内と城壁前にいます。
周辺には最強の拠点兵長部下もいます。

●特殊判定
 今回は特別に以下の特殊判定があります。
<破鎧の呪糸(通常回復不可)>
・【治癒】を持たないアクティブスキルが使用不可。
・【かばう】を副行動にて使用可能。
・通常攻撃に【仰け反り(命中度に応じ行動順を僅かに後退させる)】付与。
 ※これにより、味方と協力することで場合によっては一方的に殴れます。
 ※仰け反らない敵もいます。
・1ターンに一度だけ、通常攻撃後、EXAに関わらずチャージ技が発動可能。
 ※チャージ技(スキルは都度選択可、スキルのBS選択を選び直し可)
  選んだアクティブスキルの25%のAPを消費し発動。
  ダメージ有りスキル→スキルの持つダメージ25%と指定の付与orBS1つを追加した通常攻撃。
  ダメージ無しスキル→スキルのレンジに基づく2ターン継続の付与(累積8ターンまで)。

例1)『戦鬼暴風陣』を選択しチャージ技発動
   →【窒息/乱れ】のどちらか1つを持った【至範自分以外】への通常攻撃を放つ。

例2)『Dragonsong』を選択しチャージ技発動
   →AP200を消費しレンジ2内味方に各種能力値増加を2ターン付与。

※【識別】や【必殺】、【変動】や【反動】などは付与効果でもBSでもないスキルの特色なので通常時と違いはありません。
※スキルの距離指定と武器の通常攻撃距離指定が異なり矛盾する場合は「武器の距離」が優先します。
※スキルの対象指定と武器の対象指定が異なり矛盾する場合は「スキルの対象指定」が優先します。
※後述する「無双撃」で選択したアクティブスキルのみ、チャージ技では選択できません。

<士気レベル(全体計算、最大50)>
 士気レベルが上がるほど味方全員の能力値に上昇補正。
 「士気レベル35以上で2人以上が特殊終焉獣へ無双撃を当てる」が破鎧の時限開始条件です。
※上昇条件
・敵を20体倒し、勝ちどきを上げる毎に1上昇。
・勝ちどきに呼応し仲間の活躍を称賛することで1上昇。
・その他個々人の素晴しい活躍や作戦の成功で、内容に応じ1~50上昇。

<無双レベル(個人計算、最大100)>
 無双レベルを100消費し全てのアクティブスキルへ【カ特レ】を【特別瞬付】。
 【破鎧の呪糸】効果を無視、かつ敵の攻撃の最中であってもスキルを1回使えます。
 この際敵へダメージを与えるアクティブスキルを使用した攻撃を『無双撃』とします。
 ※無双撃で選んだスキルは、チャージ技では選択できません。
 レンジ2以内の仲間の無双撃に合わせて無双撃を放つ場合、感情設定に関係なく連鎖行動を取れます。
※上昇条件
・時間経過
・攻撃を当てる、喰らう、回復する等通常の戦闘行動をする
・敵撃破時(倒した相手や数によって上昇量変化)
・味方全体で士気レベルを累積5上昇させる度、全員が50上昇。
※無双レベルはそれなりにたまるので、ほどほど消費しましょう。

<騎兵伝>
 パッシブスキルです。今回のみで、自動付与されています。
・装備品等で【騎乗】/【騎乗戦闘】を活性化していて、実際に騎乗している間のみ、機動力+7。
・騎乗しているものが生物or自立行動可能な物体の場合、通常のEXA判定の前に主行動追加1回。
 (この追加行動で通常攻撃を選ぶと、描写的には乗り物が援護してくれる形になります)

●エリアギミック詳細
<1:城>
 城壁は高く(30m)、城門以外は鉄壁をほこる要塞です。
 壁の上には援護兵がいます。
 城門は拠点兵長を倒した上でチャージ技で耐久値を削れば壊せます。

<2:草原>
 大人の膝下くらいまでの草が伸びており、城の方まで続いています。
 乾燥しています。

<3:森林>
 城と開始位置の中間くらいに鬱蒼と広がっています。
 乾燥しています。

<4:川>
 草原や森の合間をほどよく流れています。
 地面を這うような広がり方をするものは丁度良く堰き止められるでしょう。

<5:起伏ある地形>
 エリア全体所々です。騎乗中は無視できます。

<6:城内>
 1km四方の開けた場所。破鎧終焉獣が待っています。
 奥には魔法陣(転移航路)が1つ。
 拠点兵長を倒し魔法陣を攻撃して破壊するまでここから敵が湧きます。

【サポート参加】
 解放してあります。
 通常参加のPCと連鎖行動する形で
 「通常攻撃、スキル使用、かばう、回復、その他行動」が1つできます。
 声かけによる士気向上を狙うのも良いでしょう。

《PL情報(提供者:GM プレイングに際しての参考にどうぞ)》
【ルールよく分からないんだけど?】
 すみません……。簡潔にまとめれば。
 エリア移動→騎乗がオススメ!
 戦闘行動→囲まれないように動き回りつつ、通常攻撃でどんどんゴリ押し!
      時折スキルで一気に攻撃!
 ボス戦→皆で一緒にスキルで攻撃!
 です。
 非常に本シナリオのタイトルに似たゲームが世にありますので、そちらを調べてみると動きのイメージが湧きやすいかと思います。

 今回のルールは「把握した上でその超え方を問う指針」というよりは「範囲系スキル連発ではAP消費苦しすぎるので通常攻撃の重要性を上げた」
「普段の依頼に無いような大多数の敵に囲まれても単体攻撃に使い道がある」
 というような、描写を成立させるための調整とお考え下さい。
 無数の敵をなぎ倒す爽快アクションをお楽しみ頂ければと思います。

【主目標のために何すればよい?】
 とにかく早く駆け抜け城内へ到達し、破鎧効果の消失を目指しましょう。
 また敵の撃破も非常に重要となりますが、城内の転移航路が破壊されないと、無限に敵が湧きいずれ押し負けます。
 城内での戦いに集中するためにも、城外での戦闘では何か敵を効率良く減らせる様な策があれば良いのですが……。

【破鎧終焉獣】
 道中の戦いがかなり厳しいです。
 辿り着くのも一苦労でしょうし、敵の反撃も手痛いです。
 だからこそじっと機会を待ち。
 ここぞの機会で渾身の一撃を重ねて大ダメージを狙いたいものです。

【怒り】
 本シナリオは性質上【怒り】で集めて攻撃を引き受ける動きは非常に難しいです。
 (下手に引き寄せると1ターンに100回超えの攻撃を喰らう事もあります)
 タンク系の皆様は仲間と共に行動し、仲間の通常攻撃の間に迫る敵の攻撃をかばうのが良いでしょう。

【プレイングのススメ】
 普段と違い、通常攻撃の有用性が高い依頼。
 かつ士気レベルの早期上昇が勝利の鍵です。
 スキルの運用も重要ではありますが、仲間との連携を図る台詞や士気が高まるような通常攻撃の動作、騎乗する相棒との絆などに重点を置いた方が、良い結果を得やすいでしょう。

・その他
目標達成の最低難易度はH相当ですが、行動や状況次第では難易度の上昇、パンドラ復活や重傷も充分あり得ます。

  • <漆黒のAspire>特異運命座標無双:騎兵伝完了
  • GM名pnkjynp
  • 種別EX
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2024年03月07日 00時45分
  • 参加人数10/10人
  • 相談5日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

(サポートPC7人)参加者一覧(10人)

志屍 志(p3p000416)
密偵頭兼誓願伝達業
ロジャーズ=L=ナイア(p3p000569)
不遜の魔王
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)
黒鎖の傭兵
エレンシア=ウォルハリア=レスティーユ(p3p004881)
流星と並び立つ赤き備
カイト(p3p007128)
雨夜の映し身
レイリー=シュタイン(p3p007270)
ヴァイス☆ドラッヘ
ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)
人間賛歌
アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(p3p010347)
アーリオ・オーリオ
トール=アシェンプテル(p3p010816)
ココロズ・プリンス

リプレイ

●騎兵善鏡
 空に輝くものを太陽と呼ぶならば。
 先程までこの空には二つの太陽があった。
 一つは皆がよく知るあの太陽。
 といってもここが『コロッセウム=ドムス・アウレア』である以上は仮初めに過ぎぬのだが。
 感じさせる煌めきの眩しさや仄かな温もりは、紛い物にしてはよく出来ている。
 もう一つはこの舞台への招待状とも言える大きな魔法陣。
 本来ならそれは狙い済ました獲物だけを絡め取るはずだったのであろう。
 だがしかし。
 『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)が『鳴山童子』へ送った一方的連携プレーを前に、『騎兵の先立つ紅き備』エレンシア=ウォルハリア=レスティーユ(p3p004881)や『ヴァイス☆ドラッヘ』レイリー=シュタイン(p3p007270)を除いても、総勢14名にも及ぶ『兵(つわもの)』達を余分に招き入れてしまっていた。
「皆、よく来てくれたわね。早速で悪いけど色々説明させてもらうわよ」
 話を聞き終わるなり『無職』佐藤 美咲(p3p009818)は頬をポリポリかいた。
「あー、いいすか」
「なぁに『美咲』?」
「なぁに? じゃないっスよ! なんスかその笑顔は。
 『どうせ時間通りに戻って来ないし、何ならトラブル対応に忙しいと思うから迎えに行ってほしい』
 って言われて来てみたらホントに疑似戦争に巻き込まれてるとか……。
 どうして『司書』氏はいつもこうなんスか!」
「慰労会をおじゃんにしてしまったことは謝るわ。でも『貴方』はやっぱり私を選んで来てくれるんだと思うと、笑顔の一つも出るってものじゃない?」
「……はぁ。ま、私は騎兵隊の雑用役。今回も何でもやってやりまスよ」
 イーリンの言葉に呆れたような様子を見せつつも、美咲は本当の表情は隠さんと左腕の調子を確かめるようにして視線を落とす。
「とはいえ大将。流石にあの大軍相手にこの人数じゃ、色々下準備が必要そうに思えるが」
 一歩進み出て進言したのは『雨夜の映し身』カイト(p3p007128)。
 彼の言うように目的とする城までの距離は遠いにも関わらず、点在する草原や起伏、大きな森や川といった自然物。
 その合間に見える武装を携えた鎧武者の軍勢と、超えねばならぬ障害は多いように見受けられた。
「一応方針は練ってあるけど……折角のカイト一門揃い踏み。大師匠様としての意見はあるのかしら?」
 自身と同じ。
 カイトは数多の経験と関わりを通じて『弟子』を持った仲間だ。
 イーリンは彼の背後に控える『最果てに至る邪眼』刻見 雲雀(p3p010272)と『晶竜封殺』火野・彩陽(p3p010663)を見やる。
 二人もまた『師』の言葉を待っていた。
「ははっ。あんまりデカい面するつもりは無かったんだが、確かにこれはおあつらえ向きってとこか」
 吐息で指先を湿らせ、風を感じる。
 元の世界ではデータとして観測できた事実も、この混沌では生々しくも不安定な『感覚』に過ぎない。
 けれど彼には確信があった。
「用意されたチェス盤。集いしはどんな盤面にも対応できるプロモーションを秘めた最強の兵士達。そしてこの追い風だ……『こっちがやりやすくする』算段は見えてる」
 カイトは魔術で小さなマッチを作り出す。
「自然物はともかく、軍勢を減らすならやっぱこれだろ?」
「ふふっ、なるほど。普段ならこういった自然豊かな土地でその作戦は中々取りづらいけれど、ここは塔の中だし面白いことも出来そうだ」
 カイトの提案に頷く雲雀の袖を、彩陽が優しく引っ張る。
(ちょいちょい、雲雀兄さん。師匠が言ってはるのはつまり……火計、やんな? せやったら、あの森らへんが狙いやろか?)
(正解。また察しが良くなったね)
(ホンマ!? 嬉しいなぁ!)
 仲睦まじい師匠から一番弟子へ、一番弟子から弟弟子へ。
 異なる肉体、精神ながら思考が伝達し同一していく様は『同一奇譚』ロジャーズ=L=ナイア(p3p000569)から見ればある種の芸術か、奇奇怪怪か。
 とはいえ混沌における一般的師弟関係が原本の再編でも写本でもない事も知っていれば。
 今ここにある血肉は這い寄る混沌のロジャーズ=L=ナイアでもなければ、美術教師のオラボナ=ヒールド=テゴスでもないことくらい問うまでもなく解している。
 此度は『騎兵隊の一員ロジャーズ=L=ナイア』としてこの伝記に名を刻み。
 並びに先日のちっさなどと定義される途上の餓鬼との戯れにおいて、絶対封殺付与するマンの援護に婉曲ながら借りを返すと書に記してきた。
「終焉の名の下に我が物顔で焦土を肥やす蛆共を逆に灼くとするか。Nyahahahaha!!! 皮肉すら解さず塵芥に成り下がる様はさぞ愉快だろうな! なれば我が肉の壁をもって蛆を惹きつけ地獄への水先案内人となろう!」
「ガハハ! 相変わらずの難攻不落の要塞振りは頼もしいのうッ!」
 豪快に笑う『黒鉄守護』オウェード=ランドマスター(p3p009184)だが、彼は一度城にて女王として君臨する『彼女』と相まみえている。
 故に相手が終焉獣とはいえただならぬ存在であることを知っていた。
「奴さんはワシを黒髭鼠と呼んで侮っていたが、実力は本物。城に着いてからこそがお前さんの出番じゃろうて。誘導や細かな調整はワシらが引き受けようぞ」
 オウェードからもたらされた情報に『黒鎖の傭兵』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)は思わず息が零れ、ぶら下がる鎖が小さく音を立てる。
「はっ。騎戦の勇者を馬のひっつき虫、黒鉄守護を黒髭鼠か。どんだけ偉いつもりかは知らないが、城に齧り付くシラミのような分際にしては随分ふかす奴なんだな」
「へー。その人に会うとあだ名をつけてもらえるんだ」
 変な終焉獣だねと感想を言いながら『魔法騎士』セララ(p3p000273)はどこからともなく取り出した『ポンデなドーナツ』を一口。
「ボクはやっぱり魔法騎士がいいけど、二人と合わせるなら『魔法勇騎』になるのかな?」
「どうかしら? あまり好意的なネーミングは期待出来なさそうだけれどね」
 苦笑いを浮かべたイーリン。
 幻想の新世代勇者が三人も肩を並べ戦うのは練達TVのプロデューサーなら是非撮影を! と名刺片手に飛び込むような状況だろう。
 しかしオウェードとセララには破鎧の呪いが強く作用しており、本調子を出せない以上油断は禁物だ。
「私達を侮っているのもそうだけど、あれは根本的な事を分かってないわ」
 イーリンが騎兵隊の旗印――『見果てぬ先【紅依】』を構える。
「例えどんなに小さな力しかなかったとしても。
 私達はこの旗に集い、力と想いを重ね、掲げた誓いをすべからく成し遂げてきたという事実がある。
 だから精々見せつけてやりましょう?
 獣を飼い慣らす飼い主に、戦闘でも計略でも圧倒する様を。
 そして掲げましょう。全員生存と完全勝利を!」
 沸き立つ一行。
 中でも『挫けぬ笑顔』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)は殊更にうきうき気分だ。
「司書さん。そろそろあれ、やるんでしょ?」
 生命の躍進、他者へ齎す命の息吹を与えるその概念を、自身に授けられた『希望』と『勇気』を与える力になぞらえて、二刀のタンバリンに集約する。
「ちょっとヴェルーリア、流石に少し恥ずかしいんだけど」
「でも皆で言ったらきっと楽しいよ! 士気向上ってやつ! あ、もしかしてコール&レスポンスが良かった? それともバイオリンでも作る?」
 敵が迫る中と考えると、ある種悠長なのかも知れない。
 けれどヴェルーリアの笑顔には本当に希望を導く力があると、イーリンは長き闘技場(バンド)生活で充分に知っていた。
「はぁ、分かったわ。それじゃあ斉唱で。皆……行くわよ!」

『『『神がそれを望まれる!』』』


●騎兵策道
「まず本隊は迫る敵軍に正面から突撃するわ。別働隊の動きを妨げられないよう敵とは足を止めない程度に遊んで惹きつける。とはいえ数が数よ、全員気合い入れてよね!」
「そうね。気魄からも敵を圧倒してやりましょう!」
 イーリンやレイリーのかけ声に仲間達が次々と雄叫びを上げ。
「ラムレイ……いつも通り、お願い」
 各々が騎乗する『相棒』達も、それに呼応する。
「目指すは【狂姫】の首一つ! 進軍開始!」
 全員の心がまとまった。
 イーリンを中心とした本隊は正面へ進軍、一部の仲間達は計略のために別行動を取る。
 目標は約10km先。
 まずは中間地点と言える森まで行き着きたい所だが、草原にはピカピカの鎧を纏った不毀の軍勢達が既に待ち構えていた。
「よし、行くぜ! 先駆けはアタシだ!」
「ちょっとエレンシア、先頭は私がもらうわ!」
「へっ、面倒だ。なら一緒に行こうぜ?」
「うふふ、ええ!」
 一団から先行し並ぶは矛と盾。
 黒馬『フリームファクシ』と鹿毛馬『ムーンリットナイト』が相棒に一番を与えんと力走する。
「我は赤備、騎兵隊の先陣を切る赤備、エレンシアだ! 斬られたい奴はどいつだ!」
「私の名はレイリー=シュタイン! 騎兵隊の一番槍よ!」
 いざ開戦。
 迫る攻撃兵団にエレンシアの『滅刀アポカリプス』が渇きを満たしていく。
「おらおらどうした!」
 だが敵も軍勢を名乗る者。
 ましてや曲がりなりにも最強を自負する集団だ。
 襲われる味方を援護すべく夥しい識別の矢を降り注がせる。
「させないわ!」
 それをレイリーの決死の盾が防いだ。
(確かにこれは並大抵の盾じゃ割れてしまいそうね)
 雨のように避ける事を許さないそれには、毒だの麻痺だの相応面倒な絡め手も含まれていた。
 しかれど。
 そんな姑息、輝ける白竜偶像の前には多少の傷を与えるが精々だ。
「そんなんじゃ私は崩せないわよ!」
「レイリーを相手にするつもりならこの50倍は持ってくることね!」
 大将の確信。初手はイレギュラーズの優勢に決した。
 なればすかさず攻め手を重ねるのが一流たる者。
 イーリンは囲むように位置取り始める兵団に目をつける。
「囲まれるは敗北と心得て! 道は見つけ、無ければ作るまで、簡単よ!
 瑠璃とマカライトは左の攻撃兵団、カイトは右の援護兵団を。ヤツェクとアンジェリカもそれぞれ付いて。
 ロジャーズ、後ろは任せたわ! 私とトールはエレンシア達と合流して戦線を押し上げる!」
 各々が動き出せば『プリンス・プリンセス』トール=アシェンプテル(p3p010816)はイーリンに微笑みかけた。
「エスコート役にご指名頂けるとは、嬉しいですよ」
「ええ、私も一緒で嬉しいわ。でも心して? この前のダンスは様になっていたけれど、一番弟子を任せるんだから騎乗戦闘の腕前だってちゃんとしててもらわないとね。厳しくチェックするわよ?」
「おっと、これは気が抜けなくなりましたね。ですが僕も貴方を見てきた身。戦いを指揮する凜々しい姿は僕や僕のシンデレラの憧れですから、少しでもモノにしたところ、お見せできればと思います」
「言うじゃない。グラオ・クローネの時はあんなに可愛らしかったのに」
 流れるような指示も、仲間との信頼から生じる大人な語り口も『推し』の萌えポイントの一つ。
 『100点満点』Lily Aileen Lane(p3p002187)は感動に目を輝かせる。
「わぁ! やっぱりイーリンさんは格好良くて素敵なのです!」
「ありがとリリー。貴方も力が出せるようになるまで、絶対に私の側を離れないでね」
「はいです!」
 動き出した二手三手は次なる道への第一手である。
 気さくな会話をこなしながらも戦術を計算するイーリンの手腕。
 そして迷う事無く従い結果を導き出す騎兵隊の絆に『遺言代行業』志屍 瑠璃(p3p000416)も感動を覚えていた。
(ひとつの旗印のもと、多数の意思が有機的に連携し、それぞれの役割を担いひとつの目的を果たす……いい軍団です、掛け値なしに)
 忍という生い立ちにおいて組織という概念は経験した。
 ローレットもその一つと言えるかもしれない。
 だがそれらと違うのは、ここにあるのは宿命でも契約でも義務でもない。
 仲間への深い信頼と。
 それに導かれた運命が、共に在り共に戦う事を欲する心持ちが繋がって生まれた因果だ。
(そんな軍団に混じって活躍に名を刻むことができて……光栄に思いますよ)
 なれば自分の役割は、騎兵の忍として全身全霊を注いで群がる悪滅を屠るのみ。
 瑠璃は両足に装着した練達製武装大型静音ドローンをAIと魔法で制御することで最も『貫通』を活かせる高度を取った。
 これぞ『忍法:瑞雲』の術の真骨頂なり。
「ご無礼!」
 瑠璃の『ゲイザー・メテオライト』から射られた矢がマカライトの背中側から、頬すれすれを掠め正面の敵を一気に貫く。
「いい仕事だな忍、一石二鳥ならぬ一射全討ってやつか。なら俺達も続くぞ、ティンダロス!」
「アオーン!」
 瑠璃の矢に怯んだ隙を逃すまいと、軍馬の様な巨体と各所に甲殻を纏った狼の様な生物『ティンダロスType.S』の大爪が、マカライトの斧槍『Over Wolf』の牙が喰らいついた。
 二頭の狼は敵を蹂躙するが、盾を構えた個体は何とか攻撃を耐える。
「狼の力以上を味わいたいか?」
 マカライトは再度盾に斧槍を突き立てると、邪神の力を宿す鎖の3本を武器へ纏わせ、複製、膨張させていく。
「ならこいつで葬ってやる!」
 こうして生まれるは黒龍の顎。
 邪道の魔技はその強大なる力をもって盾ごと相手を喰らい粉砕した。
「……さて。次に喉笛咬み千切られたい奴は前に来い」
「マカライトの猟犬っぷり、胸がすくわね」
「ああ、クールな仕事ぶりだ。傭兵は傭兵でも、その腕前は邪神と司書のお墨『憑き』だな!」
 マカライトの勝利を寿ぐはイーリンと『最強のダチ』ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)。
 騎乗する『ドレイク・チャリオッツ』の縁にスピーカーよろしく片足を乗せれば、音を纏い高らかに歌う自律の魔槍『歌劇』が奏でる音色に合わせ魔法の角笛を高らかに。
「さぁ『ここに我らあり』だ!
 これより演じられるは集いし数多の運命が描く痛快活劇。
 士気と無双で困難を突き崩すハッピーエンドの楽劇で、レイディ・ラックに微笑みを。
 散りゆく滅びに笑顔で別れを贈ろうじゃないか!」
 芝居に上げられたような気分にも思う。
 なれどここが舞台の上ならば『ギターを担いだ星屑野郎』の配役はひとつ。
 ありのままの己で言葉を紡ぎ、魔法の歌として語る伝承を現実に変えていくだけだ。
「いい詩ねヤツェク。言葉の力を持たぬ連中の心を貴方の刃で貫いて!」
「オーケー、我らが麗しのレディからリクエストだ。おれに見える物語を歌おうか。
 右展開した祈祷師諸君。祈るなら滅びの治癒じゃなく呪符や十字架が視界に入らないよう祈るといい。届く頃には舞台から降りて永遠の夢を見られるぞ!」
 スピーカーボムが響かせた爆音に『アーリオ・オーリオ』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(p3p010347)も高揚を隠せない。
「どうやら私達をご指名のようですよ、カイト様」
「そのようだ。ま、こうして上手く使ってくれた方が俺も舞台を整えやすいってもんさ」
「では、いざ一気呵成に蹂躙と行きましょう。治癒はお任せを」
「ああ。にんにく(HP)も油(BS)も回復はマシマシを期待させてもらおう」
 『凍鮫』と名付けられた練達式ホバーバイクを駆るカイトはアンジェリカの『ドレイク・チャリオッツ』と併走していたが、先行すると中央に支援魔法を送る一団へ突撃する。
 『葬凍符』を片手に、もう一方で空間に刻むは呪式。
 『舞台設営術』とも称されるそれは、彼の戦いを舞台という結界の中で芸術に昇華するもの。
「うちの大将に喧嘩を売ったのはそっちだ。――存分に後悔して逝きな」
 カイトは本来なら破鎧の呪いによって力を出せないはずの状況下において、綿密に練られた『演出』によって己の技に封印の力を宿していた。
 さらにそれは一撃が双撃となる呪式によって、ほとんど反撃の隙も与えず討ち取っていく。
 流石に全てを妨げることは出来ないが、アンジェリカの尽きることない魔力が繰り出す治癒によりカイトは倒れず、削れない。
「俺が一手封じられただけで『指せない』と思われていたなら心外だな。
 お前らが用意した『呪い』すらも、俺は利用してみせる。それだけだ」
「良いわよカイト。そのまま貴方の仕事を死ぬほど味わってもらいなさい!」
 またしてもイーリンの筋書き通りだ。
 兵としての力はあれど接近を要する攻撃軍団は、ヤツェクの魔法の歌の加護を受け機動力の高まった瑠璃とマカライトが、縦横無尽な削りと狩りの連携を行うことで力を発揮することが出来ず。
 強力な攻撃手段を持たぬ援護兵団は、カイトというたった一人の駒がアンジェリカの手を借りることで不落となり、最早暴力的なまでに破壊している。
「HA――! 貴様等、随分と蠅の真似が上手なのだな! 本気で私を倒すと意気込むならば、先ず、虚空と定めるが好い! 」
 些細な取りこぼしは、全力で前進する進軍態勢とニャハハとポップな呼び声で剣も矢もすべからく飲み込むロジャーズの嘲笑の的となる。
 彼女を背に乗せるため大きくなった『外世界からの漁師』も今回ばかりは愛らしい見た目(アイコン)から立派なワイバーンへとジョブチェンジだ。
 ついでに足も二本から一本へ変わった様に見えるのは気のせいか。
 余計な手出しを退けた今、残るは前方に生じた風穴を道となるまでこじ開けるのみ。
「エレンシア、レイリー、トール! 突破口を開くわよ!」
「イーリンお前、大将ってのは普通は……」
 前線に来るものではない。と言いかけたエレンシアであったが。
 思い起こせば、騎兵隊の戦いはいつも最前線で旗が靡いているものではないか。
「いや、お前はそれでいい。だからこそ付いていける!」
 練習なんて必要ない。
 幾千の戦場を共にした仲だ。
 先日だって絶望の闇において希望を切り拓いた組み合わせだ。
 仲間の動きを感じ取り、呼吸を合わせる。
 ただそれだけで、自然と最高率の連携が生まれるのだから。
「雑魚がいくら来ようが物の数じゃねぇ! 纏めて吹き飛びやがれ!」
 エレンシアが重ねた剣戟の合間にアポカリプスに魔力を込めて振るえば、生じた暴風域は敵達を押し流し。
「行くわよリット! 私達の舞に見惚れなさい!」
 レイリーが誘いの魔力で敵の陣形を乱し、怯んだところをリットが足で蹴り倒す。
「『カヴァス』。本格的な騎兵戦は二度目、しかもハードな状況ですが……乗り越えますよ」
 トールもまたハシバミの霊樹が眠る聖域で出会った真白の愛馬を駆り、華麗な剣技で敵を討ち取っていく。
 残す進軍の障害となる敵勢力は、熊に跨がり斧を構えた一体のみ。
「貴方達に構っている暇なんて無いのよ!」
 ラムレイの手は煩わせない。
 迫る槍は旗で払い。
 振り上げられた蹄が到達するより早く、本物の熊ならば心臓があるであろう場所へ『黒剣』を突き刺し。
(世界を救うにも、未踏の迷宮を探すにも……みんなと過ごすにも)
 全てが、足りない。
 それでも、歩みは止められない。
 だって払うと決めた代償だから。
 だって貫くと決めた覚悟だから。
 イーリンの想いは光の魔力となって黒剣を輝かせる。
 其は正に夜を統べる狩りの御劔。
「だから今すぐどきなさい!」
 破鎧の呪いが、期せずして技を、己を人の域に留めて。
 強烈な一撃は、騎乗する主ごと終焉獣を両断した。
「道は開けたわ! 全員続いて!」
「へっ、やるじゃねぇかイーリン! アタシも負けてられねぇな!」
「ありがと。エレンシアも暖まってきたみたいじゃない。このままあいつらに本物の赤備えを見せてやって!」
「……ん? あ、ああ、当然だ!」
「レイリーも。騎士の盾もアイドルの魅了も絶好調みたいね!」
「そう言ってもらえるなら嬉しいわ! イーリンこそ、指揮も戦闘も絶好調でしょ?」
「ええ、最高の気分よ!」
 それだけ告げて、軽くウィンク。
「さぁ皆、このままゴールまで突っ走るわ!」


 嗚呼、右目が燃えてしまいそう。

~~~

 イレギュラーズ達は各々が信じる相棒と草原をかける。
 道中では進軍の妨げとなるよう配置された寡兵や一行同様に馬を駆って追い掛けてくる騎兵団に対処する必要はあったものの。
 戦いを通じ高まった闘志が一時的に破鎧の呪いを打ち破ることで、徐々にイレギュラーズ本来の技を繰り出せる機会も増えてきた。
 そんな必殺の一撃を前に、相応の防御力を持つといえど雑兵では歯が立たず。
 目論み通り敵兵の多くが一行を追い掛ける形となる。
 しかも本来攻めの勢いを削ぐはずだった起伏ある地形も『騎兵』の前には無力。
 むしろ敵の主力である攻撃兵団や援護兵団の進行を妨げているというのだから笑い草だ。
 これも最も敵に接近、包囲された状態となりやすい初会敵を迅速に突破できた事が大きいのだろう。
 やがて見えてくる第一目標。
 森の入口に当たる部分では、平均より大柄のリトルワイバーン『バーベ』に騎乗した美咲がこちらを手招きしていた。
 その手にはどこからで掠め取ったのであろう、敵工作兵が持つ爆弾が握られている。
「準備はバッチリっスから、皆さんは早くこの森を抜けちゃって下さいっスね。火薬の感じを見るに結構派手に燃えると思うんで」
「頼んだわよ美咲」
「……了解っスよ」
 駆け抜けていく『紫苑の君』。
 『私が望むなにかのために』、女は仮面を纏い続ける。
 森を抜ける途中、カイトもまた時を待つ雲雀と目があった。
「……」
 ――気にかけるかは、お前の求め次第。
 ――大丈夫、俺は舞台脚本家が求める運命をたぐり寄せてみせるから。
 二人はただ小さく頷きあい別れ、殿のロジャーズも森を通過した。
 ようやく後を追う敵勢の先頭が森へさしかかれば、兵一人を倒し『軍馬「雷雲」』の上で実力を誇示するようにアピールするオウェードが見えた。
「次が来たか、どれワシを倒してみよ!」
 なればと敵軍は彼に白羽の矢を立てる。
「むむ、こんなにおったか!? これじゃ流石のワシも抑えきれんわい! すまぬが一旦引くぞ……!」
 オウェードは情けない様子で森内部へ撤退。
 当然敵軍はその後を追うが、本隊が駆けていった方角と僅かにズレた方向へ進行していることには気づかぬまま。
 森の中腹まで入りこんだ所で、敵軍の背後から火の手が上がる。
「これ、お預かりしたものお返しするっスね」
 それは美咲と彼女が操る二十二式自動偵察機(ドローン)が空から落とす爆弾によるもので。
「ガハハ! お主ら程度にワシがただ退くと思っていたのかね?」
 オウェードも馬を反転、敵軍に向かい合えば。
「この風やし、焼かれる前にはよ森出な! って思っとるやんな? でもな……リーダーと師匠なめられて俺もちょーっとイラっとしてん。ストレス解消、手伝ってもらえます?」
「今日の彩陽さんは……うん、星占いによると仕事は大成功って出てるから、きっと軍勢の皆も付き合ってくれると思うよ!」
「ならついでに敵の星も見てあげたらどうかな? まあ、見える星は吉兆の輝きじゃなくて死兆星の瞬きだろうけどね」
 彩陽が、ヴェルーリアが、雲雀が並び立つ。
 本隊の舞台から招かれざる役者を降ろすべく、五人は協力し火に煽られ混乱する敵軍へと挑んでいく!

~~~

 森を抜けた本隊は周囲環境を確認。
 近くを流れる幅数百mの大きな川に沿うようにして進軍する。
「始まったようですが……どうやら順調みたいですね」
 その最中、不毀の軍勢達があげる呻き声のような断末魔に後ろを見やるアンジェリカ。
 瞳に映ったのは立ち上る煙と放たれる魔力の輝き。
 様子からして、追走し森へ入り込んだ敵軍は封殺の呪いで身動きも取れぬまま火に焼かれ、斧に斬られ、三頭身のヴェルーリアにタコ殴りにされているのであろう。
「あらアンジェリカ。迷える終焉の魂にシスターとして祈りでも捧げたいのかしら?」
「いえいえ。我らが歩む一騎当千の道に素晴しい無双の風が吹いた事を祝しているのですよ。だってここから一気呵成に蹂躙と行かれる手立てがあるのでしょう?」
 アンジェリカの問いかけにイーリンはほくそ笑む。
「対岸には敵が見えるけど、精々弓を放ってくる程度でわざわざ川を渡ってまで襲う気配がない。
 つまりこの川を渡るのは敵側に相当デメリットがあることを示している。
 恐らくそれは大半が歩兵故に川が深すぎて行軍に支障が生じるから。
 なら利用しない手はないでしょ?
 出来得る限り城へ近づいた所で、私達は一気に川を超える!
 そのまま電撃攻城戦と洒落込んでやるわよ!」
「敢えて難所を越える形で敵の機先を制する形を取るわけか。良い作戦だ、今のアンタは危険なほど綺麗だよ、司書殿」
 頷く面々、笑むイーリン。
 ヤツェクの囁きは、この場にいる皆の代弁とも言えるのだろう。


 嗚呼、心臓が燃えてしまいそう。


●騎兵の詩
 火計により城から見て川の向こう岸へ渡った戦力の多くを失った不毀の軍勢。
 残る寡兵では騎兵隊の本隊に到底太刀打ち出来ず、彼女らに城近くまでの行軍を許してしまう。
「ここからは時間との勝負! 敵集団が増えきる前に対岸へ渡り主首を抑える! まずは川を越えるわよ!」
 騎乗する相棒を信じて、一行は川に足を踏み入れた。
 イーリンの予想通り、川の流れはそこそこに早く鎧を着た人間では押し流されまいと耐えるのが精一杯なほど。
 しかし多くの戦場を駆け抜けてきた馬たちであれば、流れに負けることなく前に進むことができた。
 後はそれを阻まんとする対岸の敵軍を片付ける必要があるか。
「飛行出来る者は先行して敵勢力の迎撃を! 高度をそれぞれ別に取って攪乱を意識して!」
 イーリンは『戦乙女の舞踏服・銀鶏』に魔力を込めラムレイから浮かび上がると、そのドレスの輝きで敢えて敵に狙われやすいよう空を飛び回る。
(――わたあめ。貴様は何処に征くと謂うのか)
 ひとつの器。
 謳われる者。
 神の望みと心を定めた女をロジャーズはただ観測する。
 その視線がふと交わる時、かの混沌は流れ燃え尽き爆ぜる流星を感じたが、それは今かの女が望む物語ではない。
 だが確実に進む心臓という物語の鼓動が聞こえなくなるその日まで願いというホイップクリームを己が器で混ぜ続けるのであろうか。
「嗚呼、騎兵隊……私は『この場』に呼ばれた事を愉悦に思っている!」
 なれば精々気の向くまま観察し続けようではないか。
 だが手を出さぬとは一言も。
 蹂躙を、喝采を、望むが儘にするのが乙女なら。
 それに這い寄り甘いクリームを一舐め味見するのが混沌なのだ。
 ロジャーズもまたワイバーンの尻を叩き飛行すると、脳髄を刺激する不可思議な音――と形容するのも難しい何かを発すれば。
 味方には普段通りのちょっと変わったロジャーズの仕草。
 けれど終焉の者には『煩わしい、煩い、誰かアレを黙らせろ』という怨嗟の思いをありもしない心に抱かせる。
「ロジャーズ! ……心配するまでもないと言いたいんでしょうけど」
 同じ事をしておきながら。
 自分は心配して相手には心配してほしくないなんて。
 意図を解し即座に反応する仲間にイーリンの心はほんの一時ぐるぐる回転する。
 一方敵を惹きつける者あれば敵を薙ぐ者あり。
 カイトのホバーバイク、眷属の力を解放することで飛行出来るマカライトのティンダロス、軍馬に属するものでありながら空を飛べるトールのカヴァス等。
 川の抵抗を無視できる面々は次々に対岸へ渡り、戦線を押し上げていく。
「うん、いつも通りとは言わないけど、大分戦えそうかな」
 飛行といえば魔法騎士の活躍は外せない。
 セララは念じることで光の翼を背に宿すと『聖剣ラグナロク』と勇者の盾『ラ・ピュセル』を構え突撃する。
「セララ参上! 今日は特別に『騎兵隊』をインストールだよ!」
 勢いのまま敵を斬りつけると、己に魔力を蓄えていく。
「みんなの祈りを光に変えて! いっくよー!」
 ――全力全壊、ギガセララブレイク!
 対岸での戦闘が激化する中、 エレンシアの相棒は川を前に怯んでいた。
「フリームファクシ、水は苦手か?」
 小さく首を振りはするものの、やはりどう見ても好きには思えない。
「ならいっそ飛び越えりゃいいんだ! 泳ぐ必要なんかねぇだろ?」
「……ブルゥ!」
 主人の喝破に気合いを充填。
 速く飛ぶように駆け飛び出し、その上でエレンシアが黒い翼を広げれば、二人は正に人馬一体。
 一気に対岸へ降り立つと、勢いのまま敵を斬り捨てる。
「しゃあ! 騎兵が赤備エレンシアとフリームファクシ、敵兵撃破だ! この勢いで行くぜ!」
「エレンシア! 流石、私の矛で相棒ね! 私ももっと頑張るわ!」
 飛べないレイリーは、同じく直接の川渡りとなるヤツェクやアンジェリカのチャリオッツに帯同。
 対岸より放たれる矢をその盾で弾き落としていく。
「白き騎士の不倒なる盾がお出ましだ。これならおれは両目を瞑ったままでも詩えるな」
「ありがとうヤツェク殿。でも、実際そうできるくらい固い守りのつもりよ!」
「確かにレイリー様がいれば矢にやられることは無いでしょうが、こういう時に反撃できないのは、この呪いの歯がゆい所ですね……!」
「矢がご所望ならばここに」
 零すアンジェリカの隣には、いつの間にか瑞雲により平地同様の姿勢で佇む瑠璃の姿が。
「瑠璃様!」
「まさか忍具本来としての使い方をこの戦いでさせるとは思っていませんでしたが。
 今の私は騎兵の忍。仲間に矢が射られるのならそれを廃するのが務めです」
 瑠璃は川の上を統べるようにして位置取ると、レイリーを狙う三体の猟銃兵に狙いを定め。
「上位なる世界、混沌に集められし兵達!」
 最初の一矢を突き刺し。
「大将より授けられし騎兵の絆は、絶望と滅びの戦場に戦友(とも)への希望と力を巻き起こす!」
 続けざまの矢には毒の魔力を込めて。
「央基五黄! 一白太陰九紫に太陽! 乾坤九星八卦良し!! 落ちよ怒槌神鳴る力の矢!!!」
 極めつけの三射目は、神の怒りたる鎚を彷彿とさせてる稲妻を纏った一矢。
 流れるような連撃に撃ち抜かれた猟銃兵達は、やがて光の粒子となって消えていった。
 瑠璃の勝利に、ヤツェクは角笛を鳴らし。
「『敵兵、討ち取ったり! やってくれたのは騎兵が誇る東洋の神秘だ! さぁ城に眠るお姫様! もう間もなくのご挨拶、首を洗ってお待ちいただこう!』」
 戦況をスピーカーボムで伝えることで、仲間達への士気口上と情報共有を並立させる。
「これ以上ないほど鋭い弓だったぜ、掛け値なしに」
「……ふっ、お褒めに預かり光栄です。では、先を急ぎましょう」

~~~

 無事に川を横断した騎兵隊は、遂に城の城門前へと至った。
 後は中に入り主を討つだけ。
 そう思われていたのだが……。
「イーリンさん、城の門が開かないです~!」
 本隊と共に軍馬に騎乗し帯同していたリリー。
 力が戻ってきたところで物質透過を用いて城門の通過を図るが、どうやら狂姫の施した特別な魔力がそれを妨げているようだ。
 その間にも、城壁の上には兵団がどんどん湧き出しており、近接主体の個体に至っては飛び降りながら切り込んでくる。
 先の火計と川渡りで城周辺以外の敵に挟まれない状況を作れた事は幸いだが、このままではいずれじり貧であることは明確だった。
「城門の向こうに敵の出現ポイントがあるようですね。恐らくは先日の戦いで出ていた魔法陣のような役割をしているのでしょう」
「トール殿の言う通りだと思うわ。確証はないけれど、リットもそう感じているみたいなの」
「このまま雑魚と戦ってても埒が明かねぇ。城門に一斉攻撃はどうだ?」
「待って」
 勇んで駆け出そうとするエレンシアをイーリンが制する。
 自身の経験とオウェードやトールから聞いたかつての戦い。
 そのどちらでも、狂姫は魔法陣の前に相応の防御を敷いていた。
(見たところ城やその周辺に怪しい仕掛けはない。とすれば……)
 思考が、答えにたどり着く。
「皆聞いて! 恐らくこの軍勢の中に私達を狙うのではなく城門を守ろうとしている個体がいるはずよ、邪魔の数を減らしてそいつを見つけて!」
「了解。『俺達の神が示された』んだ。なら『舞台』を照らすのは任せろ」
 カイトが己の心に燃えた闘争心を魔力に変える。
 自身を縛る鎖の呪い。
 それが想定しているであろう結末をひっくり返す、その一撃を望んで。
「氷戒凍葬が一つ……『破軍星雨』!」
 晴れ渡る空に放たれた聖なる光は、五月雨となって。
 カイトが定めた舞台は城門前を照らす光のスポットライト。
 降り注ぐ粒子は終焉の軍隊を灼いていく。
(イーリンさんが大将として指揮を行うなら、僕は剣技で華を添えましょう)
 次に動いたのはトールだ。
 今日彼が己に課した命題は裏方役。
 仲間達の為に道を切り開くための剣としてここにいる。
「アアアァァァ!」
「貴方はこの光の道に相応しくありません」
 道を穢す剣を、金色に輝く誓いの剣『真説『プリンセス・シンデレラ』』で払いのけ、返す刃で斬り捨てる。
 流れるように揺れ動く剣の輝きがカヴァスに反射すれば。
 トールはまさに地上を歩むオーロラの騎士である。
「いよいよクライマックスか。ならば騎兵の伝説が行き着くその最後……見届け語るだけでなく、この手で紡ぐも選ばせてもらおうか」
 混沌を流れるもう一つの叙情詩。
 そこで語られた無名の騎士の伝説。
 『我が剣は苦痛に喘ぐ者の、悲運に嘆く者の、力なき者の刃』。
 それをこの叙情詩で奏でるのであれば。
 相棒アーデントから白銀の魔剣を抜き放ち、呪符で周囲に暗闇を飛ばし秘密を拡散とする罪人が目に付いた。
「今日の一等星はおれじゃねえ。だが、輝ける舞台を暗く染めんとするしらけた野郎には……伝説の刃を送ってやる」
 舞台に立つのは一瞬のみ。
 ただ一刀の下に闇を払い終えたら。
「さぁ騎兵を自負する兵達! こんな人形遊びじゃ修羅場をくぐってきたおれ達に勝てんことを見せつけようじゃないか!」
 詩人は再び場を盛り上げる仕事へ戻るのだ。
「Nyahahahaha!!! やはり貴様等は素晴らしい、爽快な飛沫は我らが心を潤し蛆のねぐらを消し去っていくではないか!」
 自身を狙う兵士の、仲間達の攻撃の間隙に。
 ロジャーズは蛆の中の蜂を見た。
「おお、貴様。貴様が女王蜂に傅く兵隊蜂か。ならば去ね!」
 The Haunter of the Dark。
 ロジャースなるものの背中から何かが這い出したような強い幻覚。
 放たれる魔皇を咄嗟に一体の蜂が庇うように受け止め、爆散した。
 そうか、蜂は蜂でも社会があるか。
(あの奥に件の個体がいるのは明らかだな)
 敵が体制を立て直す前にマカライトが後を継ぐ。
「ならば俺は俺の務めを果たす! 蹴散らすぞティンダロス!」
 鉛を奏でるように。掃射される魔力弾が二体の特殊個体の動きを止め、更にティンダロスの牙が青い印のついた一体の喉笛を噛み切った。
「はわ! イーリンさん! 何だか門の雰囲気が変わったのです!」
「誰かが当たりを見つけたようね。リリー離れて。今門を壊すわ」
「あ、それなら私にやらせて欲しいのです!」
 リリーには透過を試そうとしたからこそ分かっていた。
 不思議な魔力が無ければ自分の技でも壊せると。
 ならば今こそ、身体が弱く病弱な私に沢山の冒険譚を教えてくれる貴方に、強くなったところを少しでも見せたい。
「……分かったわ、お願い」
 その全てを彼女は理解してくれて。
 リリーは120点の笑顔を浮かべる。
「馬さん、無理させるけど、ごめんね」
 項髪を撫で、赤い闘気を纏うと馬の加速を利用して一気に門へ叩き付け、その壁を打ち破った。
「よくやったわねリリー、ありがとう」
「え、えへへ」
 褒められるとは、なんと『た~のし~♪』ことか。
 城門の開放を確認し一行は続々城の内部へ侵入するが、リリーやセララを始め、闘争心を使い終えたロジャーズ、ヤツェク、マカライト、カイトは城壁周辺や城壁上に残る敵の対処を申し出た。
「貴様らが女王蜂のロイヤルハニーを絞り終えるまでに我が肉の城壁となって頭蓋の器を集めておいてやる」
「まさに混沌、全てを飲み込むような言葉だな。だがこの世界ではどうしようもなくレディーでもあるだろう? おれも付き合おう」
「安心しろ、大将達の背中はそう簡単に取らせねえよ」
「あとは任せたぜ」
「分かったわ。みんな、お願いね」

 仲間を信じて。
 騎兵という繋がりが、心の波を同調させる。
 その強い絆、その中心は、迸る魔力のように眩しくて。

 嗚呼、心●●●●●●●●●●。


●流星の心臓
 愛馬達と共に、城内へと踏み込む。
 城壁以外何もない風景は、ただこのために用意された場であることを示しているのであろう。
「よく来たねぇ。わざわざ死ぬためにご苦労なこと」
 城の主たる終焉獣【狂姫】は歪に笑う。
 それはこちらが傷だらけであることを楽しんで見ていた証左だろう。
 多数の計略や個々の奮戦でかなり優位に戦闘は進めてきたものの、全員で相手取った数は優に700を超えた。
 どれだけ回復を手厚く行ったとしても、相応の消耗は避けられなかったのは事実だ。
「丁重な歓迎痛み入るわ。もっとも、馬のひっつき虫なんて言ってくれたから、道中のお仲間には本当かどうか身をもって知ってもらったけど……貴方も確かめてもらえる?」
「減らず口がぁ!」
 全ては一瞬。
 破鎧の加護に身を包んだ狂気の女の概念が手にした団扇を振れば、夥しい魔力が彼女の頭上に生じ、敵を無差別に薙ぐ魔力線となって乱舞する。
 けれど。
「貴方の趣味の悪いダンスに大切な仲間達を付き合わせるつもりはないわ! 私が一緒に踊ってあげる!」
 ずっと最初からそのつもりでいた。
 ここぞのためのとっておき。
 レイリーはその優しさで闘争心を不屈の守護へ塗り替え、リットから降りると歌声に乗せて城内を白竜の舞台へと変える。
「あっちの攻撃を一人で受けると? 笑わせるねぇ!」
 集約する魔力線が、レイリーを――。
「なら二人にしましょうか」
「えっ?」
 アトラスの守護が宿った呪符で結界を張った瑠璃を焼く。
「レイリー! 瑠璃!」
「……大丈夫よ、エレンシア」
「イーリン?」
「二人は落ちないわ。だって私が頼りにしている騎士とくのいちだもの」
 最強を自負する魔力と、最大の信頼。
 凄まじい魔力の光が弱まれば、その結果は……。
「はぁはぁ……もう、終わりかしら? 私を倒さない限り……誰も死なせないわよ!」
「以前に、私を撃ち落とした時よりも……弱く、なったの……では?」
「……きぃぃぃ!!!」
 防がれた? たった二人に! あれだけの魔力を浴びせてやったというのに!?
 この女共、あの戦いの時と同じ目をして――!!
「アンジェリカはすぐに回復を! エレンシア、トール、合わせて!」
「ああ!」
「分かりました!」
 心を弄ばれようとも、最強を纏い図に乗る様は変わらぬ慢心。
 故に仲間の想いを背負い合い、相棒を信頼し戦場を駆ける騎兵達の想いに、その力は及ばなかったのだ。
(この闘争心すらも、今の僕なら制御してみせる)
 ギフトという呪いを打ち破り、ありのままの自分を、包み隠さぬ心を手にした王子様。
 トールは身につけているAURORAの機能も、鎖が導く闘争心すら制し。
 ただ『仲間のための剣となる』、その思いで剣を振るう。
「貴方が姫でありたいと願うなら、僕がエスコートしましょう。案内先はあの世ですが」
「や、やめろぉ!」
 剣の一撃は鎧の前に痛みとはならない。
 けれどその純白が示す絶対必殺の思いこそが、狂姫の心を乱していく。
「赤備が真の奥義だ! レイリーと瑠璃のお返し……とくと食らいやがれ!」
 今度はエレンシアの一撃。
 トールとは真逆、鎖の闘争心を仲間達への思いから生じる更なる闘争心で燃え上がらせ、荒ぶる海竜のような一撃を加える。
「ひいぃ!」
 狂姫はその恐ろしさに鎧の加護も忘れて背を向けた。
 だから傷を避けられず。
「あんたはずっと影に潜んでばかり。多少強い力はあっても一人ぼっち。分かってないようだから教えてあげるけど……そんな風に傲慢だからあんたの親玉は一度も勝つことなく死んだのよ!」
「あ、あぁ……?!」
 馬が走り。
 私が旗を振るい。
 集った仲間達と未来を勝ち取る。
 それは輝かしい今までで。
 きっと、これからも。
「私の相棒に、大切な人達に手を出した報いを受けるのね!」
 だから折角の力も失われてしまうのだ。
「あああああぁぁぁぁぁー?!」
 強烈な痛みと共に、破鎧に傷が入る。
 鎧を装備してこれなのだ。
 もしそれが壊れたなら?
 これだけワームホールから沸いた終焉獣を借り受けたというのに、もしもおめおめと全剣王様達の前へ帰ったなら?
「あ、あ、あ……!!」
 まるで這う虫が如く。
 姫を自称する負け犬は城奥の転移魔法陣へと逃げ込み、その穴を閉ざしてしまう。
「くそ、待ちやがれ!」
 追い掛けようとするエレンシアであったが、残された棘まみれの鎧を纏う兵士に弾き飛ばされ、それをトールが抱き留めた。
「大丈夫ですか?」
「あ、ああ、悪ぃ」
 既に破鎧の力を消費した二人を狙い、兵士は大鎚を振り下ろすも。
「ご存じなかったでしょうか? ヒーラーもまた……兵の一人なのですよ!」
 そう言って身の丈ほどもある十字架で受け止めたのはアンジェリカ。
 彼女が掲げる祈りは断罪と救済双方に作用する。
「さぁ、この一撃を勝鬨の狼煙としてみせましょう!」
 遙か遠くの世界で物語を紡いでみせた御伽噺の住人は。
 混沌の世界においても、遥か未来まで続く寓話を求めた。
 十字架を敵の胸に当て。
 ありったけの闘争心を込めて放たれる神撃は、棘の跳ね返る暇すら許さずに兵士を跡形も無く粉砕。
 兵士が倒れた事により口を開いた魔法陣を壊せば。
 今度は空に、来た時と同じ巨大魔法陣が出現した。
「どうなってんだ?」
「ここは全剣王の塔、恐らくですが戦いに勝った為に与えられた出口なのでしょう」
 空を見上げるエレンシアとトール。
 すると魔法陣から光が降り注ぎ、それは二人の前に辿りつくと太陽のような暖かさを持つスロープとなって空へ続いた。
 ああ、これで終わった。
 今日もまた、勝つことができたのだ。
 残党を倒し終えた仲間達も次々と城内に集まり、互いの健闘と誰一人欠けずに済んだ事を喜び合う。
 そんな光景をイーリンは城の壁にもたれ掛かりながら、シガリロを咥え見つめていた。
「やったわね、イーリン!」
「もうレイリー。あんな無茶するつもりなら、先に話していて欲しかったわ」
「ごめんなさい。でも、ちゃんと騎兵隊は掲げた願いを叶えたわ。
 これもあなたが頑張ってくれたからよね。ありがとう」
 二人が話している所へ、マカライトがやってくる。
「大将、お勤めご苦労さん。レイリーもな。取りあえず戦いは終わったんだし、話の続きはここをさっさと退場していつもの書庫でやらないか?
 祝勝会とやら、するんだろ?」
「そうね。行きましょ、イーリン」
「ええ」

 破鎧の呪いは間違い無く解けた。
 けれどそれは、確かにイレギュラーズ達の魔力を乱したのだ。
 騎兵隊。
 そこは仲間達が集う、誰しもの確かな居場所。
 こんなにも心が温かくなる絆の輪。

 ――と、この本には定義されている。


 嗚呼、私の中でまた焼けた音がする。

成否

成功

MVP

レイリー=シュタイン(p3p007270)
ヴァイス☆ドラッヘ

状態異常

志屍 志(p3p000416)[重傷]
密偵頭兼誓願伝達業
レイリー=シュタイン(p3p007270)[重傷]
ヴァイス☆ドラッヘ

あとがき

※納品遅れてしまい申し訳ありませんでした。

冒険お疲れ様でした!

少々独特な戦闘形式でしたので、混乱させてしまった部分は申し訳ありませんでした。
集団戦となると普段なら範囲対処で済むところを、単体攻撃が増える分仲間との連携が重要となる今回でしたが、騎兵隊の絆は流石でございました。

狂姫に関しては一旦逃走ですが、こちら側の状況も状況ですのでまずは一度帰って英気を養いましょう。

サポートに関して、当初「帯同者指定の上、行動1つのみ」という方向で考えていたのですが、メイン/サポート参加PC全体のプレイングを鑑み「自由移動も可+行動1つ」で描写しております。

MVPは危険を承知で怒りを用い、完璧なタイミングと美しい心の輝きで鎧よりも先に敵の心を砕いてみせた貴女へ。
このような判定になるとは思ってもみませんでした。

それでは、またどこかでお会いできることを願いまして。
ご参加ありがとうございました!

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