PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<漆黒のAspire>華盛り、恋盛り、雷盛り

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ――『塔』を攻略しなくてはならない。
 鉄帝国とは実力重視で立場が変容する国家である。武こそが全てとされている。
 天衝く高さの『コロッセウム=ドムス・アウレア』はそんな鉄帝帝都近郊に突如として顕れた。
 中は様々なフロアが広がっており、想いのまま――であるからは、はちゃめちゃな様子であった。それはそれはどうしようもない程の。
 ワームホール。そう呼ばれる『出入り口』が顕れたのは突然の事だった。
 各国にそれは姿を現し、軍勢が呼び出される。ラド・バウだけではない、鉄帝国軍やヴィーザル地方に棲まう者達も挙ってそのワームホールから姿を見せた軍勢への対処を行っていた。
「アミナちゃん達は?」
「此方に向かってるかと!」
 パルスは了解と笑った。D級ラド・バウ闘士には「外で守りを固めてね」と言い付けた。嘗ての革命派と呼ばれた者達も協力体制を敷いてくれることだろう。そのあたりはビッツが上手く取り計らってくれているはずだ。こんなにも早く敵襲が来るとは思って居なかったけれど――
(……まあ、此れからの布陣の相談とかはラド・バウを守ってるビッツに任せれば良いし、イレギュラーズのミンナもビッツの力になるだろうし。
 ボクの役割は問うの内部かな。大勢で乗り込むのも楽しいけど、人を動かすならちゃんと手順を踏まなきゃだしね)
 パルスはくるりと振り返った。柔らかな桃色の髪、溌剌とした豹の娘は「ここはパルスちゃんに任せなさい!」と笑うのだ。
 全剣王が何か知らないが、ファンが怯えているならば明るく振る舞いぶっ飛ばすのがパルスの役目。
 怖がってなんかいない。
 ――嘘、本当はちょっと意味が分からなくて恐い。だって、何が起こっているかわかんないんだもの。
「パルスちゃん?」
「大丈夫。大丈夫だよ。ボク達に任せておいてよ!」
 でも、恐くても構わない。仲間(イレギュラーズ)が一緒に居るのだから!

「とか思ってたんだけど」
 比較的シンプルになったフロアには相変わらずな人が立っていた。
「来ましたわね―――!」
 びしりと指差したのは『不毀の軍勢』ロザリエイル。艶やかな黒髪を揺らがせた白い仮面の娘である。
 『不毀の軍勢』とは全剣王の配下である。その中でもこのロザリエイルという女は全剣王に盲目的に恋をしている。
「聞いて驚くと良いですわ! この塔周辺には何だか良く分からない結界がありますのよ!」
「うん」
 パルスも慣れたものだった。三度目になるこのロザリエイルという女は口が軽い。その上で何を言って居るか良く分からないときもある。
「その結界の効果を受けて、わたくし! はいぱー強くなっておりますのよ。ええ、素晴らしい! 多分、全剣王が私を愛しているから!」
「ち、違うと思う」
「いいえ、そうですわよ! わたくし、不死ですわ! 何てこと無い攻撃なんてお茶の子さいさいですわよ!
 と、言うわけで、分かりますわね? 今回のお題は――でけでけどんん! 電流デスマッチ――――でしてよ!」
 ロザリエイルは胸を張った。「何を言って居るの」と呟いたのはレイリー=シュタイン(p3p007270)。
「そ、それは強敵だね」と慄いたのは炎堂 焔(p3p004727)である。そして、目を逸らしたのはしにゃこ(p3p008456)だった。
「どうしてしにゃの発案ばっかり採用するんですか!?」
「わたくしと気が合うようですわね」
「そういうこと!? マッチング成功って奴ですか!? いやだーーー!」
 前回は宇宙空間で無重力バトルと叫んだら、何故かドレスを着せられたりオギャらされた。
 そもそも初対面が常夏水着バトルだったのだ。そんな簡単な電流マッチングで済むわけがあるまい。そう、済むわけがないのだ。
「今回は王道。そう、バニースーツです」
「……どういうことかしら?」
 レイリーは再度問うた。
「全剣王に好かれるためには如何すれば良いか考えておりましてよ!
 ですから! その為に! ええ、考えて! 来てみようかと思いましたの。わたくし、これでもスタイルは抜群ですけれど!
 わたくしの純情を弄んだ白騎士さん? よろしくて! わたくし、今回は軽やかにぴょんぴょんしてあなたがたをけちょんけちょんにしてやりますわ!
 ここがわたくしの本気! 此処で駄目なら次回決着! よろしくて? いきますわよ――!」

GMコメント

●成功条件
 ロザリエイルさんの撤退

●フィールド情報
 突然鉄帝国に生えてきた『コロッセウム=ドムス・アウレア』の内部。
 せっせことロザリエイルさんが電流が流れる装置を設置しておきました。至る所にあります。罠でもあります。
 電流に触れた場合は1T行動不能になります。3回触れると5Tお休みです。ただし、ロザリエイルは何らかの要素を持っているため、3回までは帳消しにしてきます。
 とてつもなく動き辛い空間ですが、今回もロザリエイルが特殊なルールを用意したようです。
 兎はぴょんぴょん跳ねるため、今回はバニースーツを着ていれば3回触れても3Tお休み程度になります。
 全剣王が好みだったら良いなとロザリエイルさんもしっかりとバニースーツで顕れました。

●特殊ルール
 バニースーツを着用している場合は電流による『おやすみ(行動不能)』が半減します。
 1回触れると1回休みなのは変わりませんが3回触れると5ターン動けないという状況を軽減してくれるようです。
 また、何故加速度が上がります。兎さんだからね、素早いんだ。知ってますか、時速80kmで走る兎もいるんですよ。

●特殊ルール
 ロザリエイルに限り、何らかの『権能影響』を受けているのか電流の効果を余り受けないようです。
 3回ほど当たっても帳消しにしてきます。ただし、彼女の足元はお留守だ!

●『不毀の軍勢』ロザリエイル
 ロザリエイルと名乗った黒髪ロングヘアーの女性。年齢不詳。白い仮面で顔面を隠し真白のドレスを着用しています。
 きちんとバニースーツを着て堂々と活動しています。些かテンションが高すぎるのが『面倒くさい』タイプのようですが……。
 ゴーレム二体が撃破された時点で撤退していきます。彼女は兎に角全剣王が好きなようです。
 また、今回見ていれば割りと脳筋である事が分かりました。ちょっとオツムが残念なだけなのかもしれませんね。

●『不毀の軍勢』ゴレム・ソラム(ゴーレム)
 二体のゴーレムです。ロザリエイルの配下のようです。基礎ステータスでは非常に堅牢、防御力に優れていす。
 兎の耳を生やされて今回も不憫そうです。
 攻撃は質実剛健な打撃が中心のようですが、ソラム側は魔術にも優れます。ゴレムはブレイクなどを行えるようです。
 何方もロザリエイルを守ります。ロザリエイルは後ろで楽しそうであるため、ゴーレムが何故か不憫に見えてくるような……。

●終焉獣 4体
 びりびりとした電流を纏ったセクシーな大根思わせる終焉獣です。俊敏に動きます。パルスが4体纏めて相手にしています。

●『同行NPC』パルス・パッション
 ラド・バウ闘士。皆さんとご一緒にここまでやってきました。終焉獣三体を相手にしています。
 スピードファイターと謳われますが実力はお墨付ですので余り心配なさらないで下さい。
 何をするかも皆さんにお任せ致します。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • <漆黒のAspire>華盛り、恋盛り、雷盛り完了
  • GM名夏あかね
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2024年03月03日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
リア・クォーツ(p3p004937)
願いの先
白薊 小夜(p3p006668)
永夜
レイリー=シュタイン(p3p007270)
ヴァイス☆ドラッヘ
しにゃこ(p3p008456)
可愛いもの好き
星影 向日葵(p3p008750)
遠い約束

サポートNPC一覧(1人)

パルス・パッション(p3n000070)
アイドル闘士

リプレイ


「焔ァ! 洗井ィ! またアンタ達の…………井が居ない!?」
 その日、『願いの先』リア・クォーツ(p3p004937)は困惑していた。
『リアちゃん、こんな依頼があるんだよ! 依頼を引き受ける冒険者推薦をしておいたからね!』なんて言われて、またもあのアライグマの所為かと考えたというのに奴は居なかった。そう、奴は居なかったのだ。
「ヴァレーリヤとしにゃこもいるからなんかそれっぽい感じだと思ったんだけど……。
 焔から推薦が飛んできて嫌な予感がしていたけど、もしかして実は真面目な依頼だったのかしら。じゃあいいかあ」
 慢心した。リア・クォーツ――いいや、バルツァーレク公に婚約を申し入れられた淑女は「ま、真面目な仕事ね」なんて思ってこの場にやってきたのだ。
「これで相対するのは三度目だが。相も変わらずだな、ロザリエイル!
 何か、ちょっと安心感を抱いてしまうのは何故なんだろうな? そして、そっちもそっちで相変わらず不憫だな……」
「わたくしがいなければ皆さん、真面目すぎる時間で困ってしまったのではなくって!?
 そう、これは細やかながらの癒やしの時間ですわ! 決して、全剣王の性癖を探っているわけではございませんことよ!」
 高笑いをして顕れたのは仮面の淑女だった。そうそう、この人はこう言うタイプだった。そんな安心を覚えてしまった『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)に『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)は「待ってよ!」と声を上げた。
「今まではちょっと変なノリで戦ってたけど、流石のロザリエイルちゃんもこの状況なら真面目に……そうでしょ!?
 だって、Bad End 8(なんかすごいひと)が動き出しているんだよ? 世界規模の戦いが勃発だよ!?」
「ええ、ですから、わたくしも来たのです」
「それで?」
「今回の特殊ルールは! バニーですわ!」
「は? バニー? パルスちゃんがいるのに? いつもリアちゃん達と練達でしてるような恰好を? 何で!?」
「おい焔ァッ!」
「これは違うんだよリアちゃん! ボクもこんなことになるなんて思ってなかったんだよ! これどういうことなのしにゃこちゃん?」
「しにゃですか!?」
 突然、全責任を押し付けられた『可愛いもの好き』しにゃこ(p3p008456)は慌てた様に両手を挙げた。弁明をする機会を求めている。
「いやいやしにゃもね別に電流デスマしてぇ~! なんて本当は思ってないんですよ! まさか採用されるとは微塵も思わない訳ですよ!
 なんか無い? って聞かれるとつい捻りたくなる性分が憎い……女の子がビリビリと痺れる姿に可愛さは無いと思います……! ですからしにゃのせいじゃないですよ!」
「でも、提案したんですわよね?」
『願いの星』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)はぱちくりと瞬いてから際どいバニースーツを手にしていた。
 勿論、二着用意している。穏やかに微笑んでいるヴァレーリヤは「その結果ですわね?」と全責任を取りあえずのようにしにゃこに押し付けてさも真面目な様子で言った。
「ルールがバニーだというならば、きちんとしたものを着なくてはなりませんわね?」
「待ってよ、ヴァレーリヤちゃん!」
 慌てた焔の視線の先には『アイドル闘士』パルス・パッション(p3n000070)が居た。何としてもパルスを守り抜かねばならないのだ。
「おい! 聞いてんのか! まとも――んな事ぁないわよね!!! 知ってたわクソが!!!
 なんか知らん間に渡会玄都IL(かみ)のバニースーツ着せられてるし!!!
 これちょっと胸のトコきついから、あんまちょっと…… て言うかあたし今デリケートな時期なんだけど!
 ドブ川女の消滅を見届けるまであたしの黄金劇場は終わってない、って言っちゃったんだけど!」
 地団駄を踏んだリア・クォーツ(ヴァルツァーレク公夫人内定濃厚)の傍で『永夜』白薊 小夜(p3p006668)は常と変わらぬ落ち着き払った様子でやってきた。
「熊虎さん(かみ)のバニースーツを着る機会なんてもうないと思っていたけれど、人生わからないものね。それにリアさんの怒声も久しぶりに聞くわ。
 色々あったと言うか今回も大変だから不謹慎かもしれないけれど、またリアさんや焔さんと一緒に"こすぷれ"できるなんて嬉しいわ」
 そう言われるとリアはトーンダウンしてしまうのである。そんな嬉しそうにこの状況を噛み締められるとロザリエイルもつい喜んでしまうのであった。


「ロザリエイルさん。全剣王が好きな気持ちも、好きな人の為なら頑張る気持ちも素敵だと思う。
 けれど全剣王がバニー好き……それだけは否定させて貰います。ソレ認めたら流れ弾がこっちに来る気がしてならないんですよ!」
 びしりと指差す『未来への陽を浴びた花』隠岐奈 朝顔(p3p008750)に「まさかあなたも全剣王がお好きですの!?」と驚いた様子でロザリエイルが声を上げる。
 長い黒髪の美女は真白のドレスを着用している。正直黒髪、白仮面、白い衣服で想い人を想像してしまう恋する乙女は「認めたくねぇんですよ!」と叫んだ。
「良く分からないけれど、全剣王は渡しませんわよ~!」
「あれ? ロザリエイル殿、浮気?」
 何食わぬ顔で、そして、にんまりと笑ってみせる『ヴァイス☆ドラッヘ』レイリー=シュタイン(p3p007270)に「ご機嫌よう~~」と後方に下がったロザリエイル。ゴレムとソラムは心配そうな顔をして居る。
「ロザリイエル殿は痺れるぐらいの愛をしたいのかしら?
 じゃあ、私も負けないぐらい頑張らないとね……と、考えたけど何で電流?」
「そちらの桃色のお嬢さんが提案して下さいましたわ」
「否定はできない!」
 しにゃこが「がーん」と明らかにショックを受けたような顔をした。そりゃあ、何か求められたらその期待に応えちゃうのがしにゃこ道。
「仕方ないですねえ! バニースーツとウサミミもつけます! ケモミミ4本!
 4本あってもしにゃの可愛さは不変ですね! あと肉食と草食のキメラなんてそうそうないと思います」
 胸を張ったウサギハイエナガール。堂々たるしにゃこの姿を見ながら朝顔ははっとしたような表情でうさ耳を眺めて居た。
「でも依頼の為にバニー着なきゃ……大丈夫、今回だけにするつもりだから……!
 うぅ……こんな醜女のバニーなんて誰が得するんですかぁ……っ」
「わたくしですわ!」
「どうしてですか!?」
 白い仮面は其の儘に、バニーガール姿で登場するロザリエイルは「老若男女どんなお方であろうとも愛するのがわたくしの道! ええ、一番は全剣王ですけれど!」と高笑いをしている。全く以て意味の分からない戦場だが肯定されてしまったならば朝顔も着用するしかない。
「まぁ、何はともあれだ。此度も! 全力で!! 行かせて貰うぞッッ!!」
 ――OH! sexy!
 汰磨羈は猫耳にうさ耳をじゃきんと装着してポーズをとった。
「あんまり見ないでね」
 露出を高めた白兎騎士は照れた様子で杖と盾を手にしたバニーナイトレイリーとして降臨する。ちょっぴり興奮しちゃうのは秘密なのだ。
「いい? 皆、今回は第一目標はパルスちゃんに比較的マシなのを着てもらうこと!
 第二目標はボクがパルスちゃんの前であんまり変な格好をしないこと! 第三目標がロザリエイルちゃんの撃退!」
「焔ちゃん、ボクに気を遣ってくれるんだね」
「パルスちゃん……」
 焔はパルスちゃんに『リアちゃんみたいな格好』なんてとんでもないと考えて居た。ショートパンツや燕尾服、そうしたものならば動きやすくて清純派アイドルパルスに良く似合うはずだ。
「だからね、こういうのも似合うと思うんだ! これを着てるパルスちゃんが見てみたいな!
 うぅ、ごめんねパルスちゃん、でもこうしないとヴァレーリヤちゃんが……」
「ヴァレーリヤ?」
「ええ、わたくしですわ。確かにパルスちゃんに選んでもらうのが一番ですわよね! 少しでもすごいを勧めて、選んでもらいましょう!」
 ずんずんと進んでくるヴァレーリヤは「選ぶのはパルスちゃんですもの。私がお勧めしたのが選ばれたとしても、当然恨みっこなしですわよね? ああ、でも焔が際どい方を着て選択肢がなくなってしまったら、パルスちゃんには残った方を着てもらうしか無いかも知れませんわねー」と視線を送る。
「えっ、何言ってるのヴァレーリヤちゃん?こんなの着なくても他にいっぱい種類が……ない!?
 さっきまでいっぱいあったはずなのにどうして!?」
 傍でセクシーポーズを決めている汰磨羈が「ロザリエイルに回収して貰ったぞ!」とサムズアップ。
「くっ、わかったよ、これでパルスちゃんを守れるなら、ボクがこれを着るよ。リアちゃんも頑張ってるのに、ボクだけ日和ってるわけにはいかないしね……」
「頑張ってねえよ」
「リア、いけないわ。それでは普段着だと言って居る様に聞こえる」
 リアはぐ、と言葉を呑んだ。穏やかな小夜が際どいバニー姿で立っているのだ。もう何も言えやしない。
「ねーえ、パルスちゃん。折角ですし、仲良しの焔と同じバニースーツなんて如何ですこと?」
 おろおろとした様子でパルスは「焔ちゃんとお揃いも好きだけれど……その上にショートパンツを履いて良いかな?」と中途半端な選択をした。
 焔ちゃんが脱いで欲しいなら脱ぐけどとコメントするパルスに小夜は「アイドルの嘉神ね」と目を伏せる。
「ふふ。特に可愛い焔ちゃんやパルスちゃん、そして、太ももやお尻が綺麗な汰磨羈殿。他の皆さんもとても眼福……うん、皆を護るのが私の役目!」
 一先ずは闘い始めだ。レイリーは「それじゃ、始めましょうか!」と電流デスマッチに飛び込んだ。


 静電気が凄まじい。一歩踏み出したロザリエイルの長い黒髪がばちばちと静電気を孕んでいることに気付いてから小夜は「待ちなさい」と皆に制止を掛ける。
「懸想している方がいるのでしょう? 髪がぴょんぴょん跳ねた残念な状態を見せる事になってもいいの?」
「あなた……お優しいのねー!?」
 ロザリエイルが「皆さん、ヘアケアを致しましょう!」とうきうきと小夜の前にやってきた。もう此の儘首を刎ねれば終るが、そんな事はしないのだ。
 なんでか憎めないこの人はゴーレム達には使えないと唇を尖らしている。その間に戦闘前準備を整えられる。
「焔ちゃん、パルスちゃんを手伝ってあげて。私は常用してて大丈夫だから他の方を手伝うわ、まずはリアさんからよ」
「……小夜」
「事前準備をして置きましょうね」
 囁く小夜に頷いて、事前付与等の準備を終えて早速飛び込むのはゴーレムの元である。相変わらず可哀想なゴーレム達に汰磨羈は同情していた。
「待っていろ、すぐにそのうさ耳から解法してやるからな……」
 ゴーレムを操る能力を有していることが推測されるロザリエイルだが、頭を一撃殴ったら、其の儘寝返ってくれそうな気がして鳴らないのだ。
「大根を一本借りるぞ、パルス! 痺れる前に痺れさせれば良い、電流デスマッチとはそう言うものだ!」
 びりびりセクシー大根ソードを手にした汰磨羈がゴーレムに向かってシューッ!
 ゴーレムは困惑していた。ゴーレムを引き寄せていた朝顔も困惑していた。ノリノリの『先輩』達が電流ビリビリ大騒ぎなのだ。
「……あの……ゴーレムのお二人も、やっぱり、……厭ですよね?
 分かるよ。分かる……何だか分からないけど典型的に相手の性癖に気付かされたような、嘘だ、そんなことないよって言葉が欲しいのに、否定が見つからないような、この気持ちの落ち着く先が分からないよね。……あれ? でも、ゴーレムさん達はうさ耳だけですか?」
 朝顔が問えばゴーレム達は首を振った。よく見ればスクール水着めいた何らかの衣装を着せられている。無理矢理だ。朝顔は物悲しくなった。
「うおおおお―――! ここでもしにゃが勝利を刻むーー!
 それにしたってゴレムとソラスさんも毎回困ってません? 主人に振り回されて可愛そうです! しにゃの所に来ればもっと優しく扱ってあげますよ!」
 ゴーレムがいやいやと悲しそうに首を振った。まさか、同列に扱われたのだろうか。
「――どっちもどっちっぽそう!? まさかそんな!!」
 衝撃を受けたしにゃこはちら、とロザリエイルを見た。
「レイリー=シュタイン! ロザリイエル殿の相手役として只今参上!
 ロザリイエル殿、しばしの間、共に踊りませんか?」
 ダンスに誘い電流に痺れても構うまいと踊り出す。レイリーは自らだけを見ているようにとロザリエイルに告げた。
「小夜、全力で行くわよ! 全力出しなさい! あたしが全部支えるからさっさと始末するのよ!」
「言われずともいつでも全力よ。あっちは……うん、焔ちゃん(とパルス)の邪魔をしない方がいいわね」
 小夜はそっと目を逸らした。ヴァレーリヤの罠にはまった焔は「どうしてこんな格好ー!」と困惑しているのだ。
 リアは恥ずかしげな焔に対して吼えた。いつも『やられる』側なのだ。
「あぁ、悲しかな……こんな格好している時に隣に焔が居るって事に全く違和感がない……
 こいつの馬鹿に巻き込まれるのももう何回目なんだか。
 焔ァ! パルスの前だからって日和ってんじゃないわよ! いつも通り、全力でいきなさい!」
「そ、そう言っても、リアちゃん!」
「焔ちゃんはどんな姿でも可愛いよ」
 ――ウッ、と焔は胸を押さえた。正直、パルスによって致死量の攻撃が与えられている気がしてならないのだ。
 バニーガール姿の小夜は何の遠慮もしていなかった。もう惜しげも無くそのスタイルと剣技を見せ付けている。
 その剣の美しさ。その隣を駆抜けていくセクシー大根騎士汰磨羈。リアは「どういう図なんだよ」と呟いた。
「よろしくてよ! 大根ですわね!」
 ヴァレーリヤはメイス代わりに大根でゴレム達を殴った。リング中央に立っている聖職者(悪魔)にゴーレムはタジタジである。
「全剣王さんも見てますよ! ほら、あそこで!」
「えっ!?」
 見て居るわけがないのにロザリエイルはつい視線を逸らした。しにゃこに騙されすってんころりん。
「うぇーい引っかかったー! ちょーし乗ってるからそうなるんですよ! あびぇびぇ!」
「そちらこそ! ちょーし乗ってあびゃばやや」
 二人して痺れている。しにゃことロザリエイルは矢張り同じ種別なのだと三角座りで待機する敗北ゴーレム達はそんなことを考えて居るのであった。
「卑怯ですわ!」
「卑怯でよろしくってよ!」
 大根が襲い来る。二刀の大根アタックを受けているロザリエイルに「何なんだよ」とリアは思わずぼやいた。
 仲間を支えているリアのお陰で電流なんてなんのその(バニー効果含む)のイレギュラーズ達。しかし、痺れて立ち止まってと時間は着実に経過している。
 レイリーは「ロザリエイル殿は何時も楽しそうでいいわね」と微笑んだ。なんたって、彼女は恋する乙女なのだ。猪突猛進型ガールは恋に恋するかのように、取りあえずあれこれ手段を講じてくるのだ。それはなんと愛らしいことだろうか。
「それにしたって、愉快なものだな! ロザリエイル! 次回のお題はまたも此方一任か?」
「ええ、考えると良いですわよ!」
「ひょっとして、ロザリエイル、お嬢様口調は張りぼてか」
「ぼてくりまわしますわよー!」
 同じ気配を感じる者が居るなあと振り返った汰磨羈にヴァレーリヤが微笑んだ。パルスは「ああー」と呟いてから、ロザリエイルに感じていた既視感の正体に納得したかのようである。
「パルスちゃん、大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ!」
 にんまりと笑うバニーガールパルスちゃん。際どいバニー服の上にショートパンツを履いているがそれはそれで可愛いのだ。ちょっぴり卑怯ななのである。
「バニーで死んだら互いに死にきれないでしょう?」
「全剣王が『それで良い』と言えば本望ですわー!」
「……そ、そう……でも、互いが後悔しない服装を指定して欲しいですね……恋をする者として共感する所だってあるので」
 何処か困ったような顔をした朝顔にはっとした様子でレイリーが微笑んだ。「バニー姿、とてもかわいいですよ。彼には見せたのですか?」と。
「いいえ! 会ってくれませんわ!」
 ロザリエイルは出禁だった。胸を張ったロザリエイルに対して大根が迫り来る。
「ドッジボールは足元狙いが基本だ!」
 汰磨羈の大根を避けようとしたロザリエイルを電流流れる鉄線へ押し込んで同時に痺れるのはヴァレーリヤ(今回の悪魔)なのであった。
「あばばばばば――こ、此の儘ではビリビリしすぎて私電流だけで肉体を構成してしまいますばばばばば。
 こ、此の辺りで失礼させて頂きますわ! 次回! ええと、何をするかは決めておりませんけれど、今後如何するかは考えましてよ!}
「あの人、頭一発殴ったら寝返りませんか?」
「可能性はありますわね」
 こそこそと話すしにゃことヴァレーリヤに「んまあーーー! 失礼ですわねーー!」と叫びながらゴーレムに担がれ逃走していくロザリエイル。
 見送りながら小夜は「二度と会いたくねぇわ」と呟いた。小夜は「でも、楽しかったわよ」と微笑むのだ。
 その場に残されたのはバニーガール姿のイレギュラーズ達だけだった。
「……で、何だったんだよ」
 もう一度、思わず呟くリアに小夜は「一応は、全剣王の精鋭だったのでしょうから、勝利には違いないわね?」と首を傾いで。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

いっけな~い。洗井さんが乗り移ってたみたい!うっかりうっかり!

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