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シナリオ詳細

<漆黒のAspire>燃え殻の下に眠る夢

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ――ごきげんよう、皆さん。
   ルクレツィアがお世話になったようですけど、もう冠位では力不足。
   これより先は私、『聖女』マリアベルとBad end 8がお相手いたしますわ。
   どうぞ、手加減等なさらぬよう。ラスト・ダンスまでそのステップは後悔のないように!

 優雅に華憐にそう声明をあげた『聖女』マリアベル・スノウはシャイネンナハトに伝わる伝承の女の名。
 混沌大陸に存在する主要各国へと広がった『影の領域』はラサの北西、深緑の遥か西方に存在する『終焉』から通じるワームホールだった。
 このままでは魔種陣営の本拠地たる彼の地から無限の如く戦力が供給され続けることとなるのは明らかだった。
 それを許してしまえば諸国の分断と連携の崩壊もそう遠い未来とはならないだろう。そんなものは許されていいはずがなかった。
 当然の如く各国は『Bad end 8』が守護、扇動するワームホールへの対処を始めていた。
 トール=アシェンプテル(p3p010816)とココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)はそんな最中、練達からの招待状を貰い受けてた。
「ヘイエルダールさん……あの時の彼からの招待状ですね」
 ココロの脳裏に浮かぶのは天義にて成立した帳の内側で繰り広げられた舞台。
 誰よりも華やかに輝くためのシンデレラステージで競い合った相手だ。
「敵になるわけじゃないのなら……受けてみてもいいんじゃないかしら」
 そう言ったのはイーリン・ジョーンズ(p3p000854)だ。
「そう思わない? シャルール?」
 イーリンの言葉に応じたのは驚いた様子の女性だ。
「わたくしも良いのでしょうか」
「さぁ? それは知らないけれど、トールが赴く舞台、貴女も見たくはない?」
 シャルールを見上げたイーリンのウインクに、目を瞠ったシャルールがこくりと頷いた。
「……行きましょう。彼らの下へ」
 トールは招待状を懐にしまって声をあげた。
 ふと思い出したのは数日前の事だ。
『……けど、ケジメってのはやっぱりつけなきゃだよな』
 赤髪の兄はそう呟いた。
『やってきたことの責任を負わないわけにはいかないんだ』
 寡黙な兄はそう珍しく饒舌に言った。
『本当ならば、終焉との戦いを前にしたかったのですが、既に始まっている以上、そうも言ってはいられません』
 王子様然とした兄は、いつものように穏やかにそう告げた。


「練達――セフィロトに襲来したのは『始原の旅人』ナイトハルト・セフィロトだそうです」
 そう吐息を漏らすのは銀髪の青年だ。
 すらりとした体躯の青年は穏やかに笑みを浮かべながらその手に大身の槍を握る。
 彼の名前はヘイエルダール=アシェンプテルという。
「セフィロト外周は見たか?」
 帽子を目深に被る男――ヴィルヘルム=アシェンプテルが言葉少なに問うてくる。
「彼は外へ大量の終焉獣を展開しました。防衛兵器の多くは外への対処に割かれ充分な数とは到底言えません」
「力押しでしょうか……」
 寡黙な弟の話に続けたヘイエルダールへ念のためにココロが問えば、彼はふるふると首を振って否定する。
「本命は、ここですよ」
 そう言ってヘイエルダールは足元を指し示す。
「僕達は良く知らないのですが、R.O.O.事件と六竜襲撃という事件があったそうですね。
 この『エン・ソフ』はその後、セフィロト復興のために新造されました。
 ここが陥ちるとなればセフィロトを支える各種機能……特にネットワークが機能不全を起こすでしょう」
「……本当に、この地への贖罪を果たす日がこうも早く迫ってくるなんてな」
 そう呟いた赤髪の青年ベルシェロンが拳を作る。
「……そうですね。それに、ここを守り切ることは僕達にとっても重要なことです」
 そうヘイエルダールが言う。
「皆さんにとって重要、ですか?」
 トールが問えばヘイエルダールは短く頷いて。
「僕達のように人のエゴで生まれた人工生命体の中には、まだ目覚めてない子供達も多くいます。
 各地の研究施設でまだ培養液の中で成長をしている子もいるかもしれません。
 それらの施設に使用されているシステムがダウンすれば……」
「目覚めればまだしも、目覚める前から死ぬ子だっているでしょうね」
 イーリンが引き継ぐように言えば、前を進む3人は短く頷いた。
「人のエゴで作られ、人のエゴで殺されるのも許せません。
 ですが、人のエゴで作られ、生きる事すらできずに殺されるのは、もっとごめんです」
 施設の入口へ飛び込んだ3人に続くまま、イレギュラーズは走り出す。


 辿り着いた施設の一角、まず3人が立ち止まり、イレギュラーズ達もそれに倣うように立ち止まる。
「……多いですね。ヴィルヘルム、貴方は後衛をお願いします。僕達の中ではまだ貴方の方が範囲攻撃向きです」
 短く応じたヴィルヘルムがオーロラに輝かんばかりの刀を振るえば、終焉の獣たちを一瞬で両断する。
「ふふ、面白い……それに綺麗ね。その輝きが男の手で作られているのでなければ、もっときれいなのに」
 そう響き渡る声は終焉の獣たちの奥、笑みを刻む女が発したものか。
 白百合のような優しい髪の色と黒百合のような瞳、ふわりとどこかから漂う香りも目の前の女の物か。
「でも仕方のないこと。男なんて連中はどれもこれも汚らわしい。
 その汚らわしさに相応しい姿に変えてあげましょう。
 だってほら――美しい物とは、穢れてこそその消失に価値があるのだから!」
「……あぁ、なんでしょうね。貴女をみると不快感がこみ上げる」
 穏やかなままに、ヘイエルダールが舌を打ったかと思えば、深く呼吸をして、視線だけイレギュラーズへ向けた。
「……あの日の言葉の通り、力を貸してもらえますか? トール。
 僕達は――練達にいる同じように生まれてしまった子供達を守りたいのです」
「……えぇ、もちろんです」
 金色の刀を握り締めトールが応じれば、ヘイエルダールが小さく「ありがとう」と呟いた気がした。
「トール、それにローレットの方々はあの女の相手をお願いします。
 周囲の終焉獣に関しては、こちらで処理しますので任せてください」
「わたくしも、お手伝いをしますわ」
 そう言ったシャルールの姿がヘイエルダールの横に立つ。
「ヘイエルダールさん、あの日と同じく踊っていただける?」
「……えぇ、仰せのままに」
 紳士らしくヘイエルダールがシャルールの手を取るか。
「ふふふ――さぁ、終わらせましょう。
 そうだわ、暗闇の中で輝きを失い、血だまりの中で踊ってちょうだい?」
 女がカツン、と強く足を踏み鳴らす。
 血だまりが戦場に溢れ出し、周囲を飛び交う鳥型の終焉獣が彼女の傍に降り立った。

GMコメント

 そんなわけでこんばんは、春野紅葉です。
 さっそく始めましょう。

●オーダー
【1】『■■■■■』リリィ・リリンの撃破または撃退

●フィールドデータ
 練達の『エン・ソフ』の一角です。
 広場のようになっています。遮蔽はなく、視界は良好です。
 後ろには施設の1つの扉が控えています。突破されると施設への侵入を許すことになります。

●エネミーデータ
・『■■■■■』リリィ・リリン
 謎の女、完璧主義者かつ女性至上主義者。
 輝く者は女性であるべきで、男など全て汚らわしいぐらいに思っています。
 同時に美しい物は全て『やがて穢れ、輝きを失うからこそ美しい』と考えるイカレ女でもあります。

 極めて高火力で必要以上に広範囲を攻撃することを好みます。
 また、『美しいもの』への執着、より正確に言えばそれを穢す事への執着が非常に強いです。
 トールさん達の用いるオーロラエネルギー、見栄えする輝きを放ちそうなスキルを扱う対象を狙う傾向があります。

 主に【毒】系列、【出血】系列、【火炎】系列などのBSを用いるほか、【鬼道】、【邪道】、【スプラッシュ】を持ちます。

・『終焉獣』金鳥
 リリィ・リリンの眷属らしき終焉獣です。金色の鳥。
 主に【出血】系列、【痺れ】系列のスキルを用います。

・『終焉獣』銀鳥
 リリィ・リリンの眷属らしき終焉獣です。銀色の鳥。
 主にヒーラータイプ。身体を輝かせることでHP・AP、羽ばたきによるBS回復などを用います。

・終焉獣×10~???
 大量の終焉獣です。
 アタッカー、タンク、サポーター、ヒーラーなどなど多種多様です。
 初期は10体程度ですが、戦闘開始後にだんだん増えていきます。

 リリィ・リリンが撤退または撃破されると撤退していきます。
 ある程度以上は友軍に任せましょう。

●友軍データ
・『再誕の救済者』ヘイエルダール=アシェンプテル
 白に近い銀色の髪とオーロラ色の瞳をした細身の好青年です。
 柔和な微笑を湛え、どこか童話の王子様とでも言える雰囲気があります。

 武器はオーロラに輝く巨大な槍。
 中~遠距離レンジから高火力で確実に叩き潰していく純アタッカーです。
 単体、貫通、扇などの範囲攻撃を行ないます。
 主に【スプラッシュ】や【連】、【多重影】、【変幻】を用います。

・『再誕の救済者』ベルシェロン=アシェンプテル
 赤毛に金色の瞳をした好青年です。
 コミュ力と自己肯定感がばりばりに高い陽キャ系俺様王子様といった雰囲気。

 オーロラエネルギーを拳に纏う近接レンジの反応型のEXAアタッカー。
 単体と近貫攻撃を行ないます。【防無】【必殺】などの特性を持ちます。

・『再誕の救済者』ヴィルヘルム=アシェンプテル
 帽子を目深にかぶった金髪の長身の青年です。
 寡黙という単語が似合うクールで物静か系の王子様といった雰囲気。

 身の丈を遥かに超えるオーロラ色の抜身の刀を武器とする近接~遠距離レンジの範囲アタッカー。
 【必中】の物や【変幻】の他、【出血】系列のBSを用います。

・『歴代最美』シャルール=サンドリヨン=ペロウ
 トールさんとは同じ世界、同じ国、同じ時代を生きた同郷の女性。
 かつての世界ではトールさんに敗れるまで『歴代最美』と呼ばれた人物。

 オーロラに輝くドレスを纏い、神秘型のヒーラー兼バッファーとして行動します。
 シャルールが戦闘不能にならない限り、イレギュラーズ陣営は命中、防技、抵抗に上方補正が加わります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • <漆黒のAspire>燃え殻の下に眠る夢完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2024年03月04日 23時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)
華蓮の大好きな人
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)
虹色
武器商人(p3p001107)
闇之雲
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人
結月 沙耶(p3p009126)
怪盗乱麻
トール=アシェンプテル(p3p010816)
男の矜持

リプレイ


「まるで僕が仕えていた第一国の女王そのもの……あまり考えたくはありませんが、僕にまとわりつく女王の悪意が『終焉』の力で具現化されたとでも言うのですか……?」
 ヘイエルダールが端正な顔立ちに険しさを刻む。
「僕達は自分の意志で生まれた理由を、生きる意味を探すと決めたのです。邪魔をするのなら、その因縁を断ち切る!」
 槍を構えて突き付けるようにヘイエルダールが叫ぶ。
「美しい輝きね……本当に、野蛮な男などという生物が持っていなければなおよいのに」
 ハエでも払うように侮蔑の色を籠めた瞳でリリィが舌を打つ。
(ヘイエルダールさん、ベルシェロンさん、ヴィルヘルムさん……
 彼らを『兄』と呼ぶのは平和を取り戻してからになるでしょう)
 その様子を見た『プリンス・プリンセス』トール=アシェンプテル(p3p010816)は剣を構えるものだ。
「……貴方達の守るべき者の為にも、家族となれる日を迎える為にも僕も剣を取る!」
 それはAURORA-Eosへ捧ぐ誓いであり、ハシバミの霊樹へと向けた願い。
 願いを勝ち取るために必要な力はその宣言に応じるようにトールへとその祝福を齎す。
「ありがとう、トール」
 その言葉は3人それぞれに各々の声で聞こえてきた。
 リリィへと肉薄するままに放たれる刺突は彼女ではなくその肩に止まる銀鳥を叩き落とすためのもの。
(美しさが見せる輝き、とはなんでしょう。
 外からわかる見た目? それとも内なる精神が見せる威厳?)
 奥に立つ女の台詞を思い起こし、胸の内に『医術士』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)は問いかける。
 けれどその実、それは分かり切っていることでもあった。
「わたしの輝き……ふふ、そうね。嘘はつけないかな」
 小さく笑みをこぼすままにココロはそう呟いた。
(……いま此処にいる人。みんな前からよく知っている。
 やっぱりわたしは自分が輝くより、わたしの好きな人たちが輝いてくれる方を望んでいる。
 特に我が敬愛する師匠、イーリン・ジョーンズにはね。もっと沢山見せてくださいお師匠様)
 視線を移す先にいるその人は、いつものようにそこに立っている。
 思い浮かべるその人たちの顔を思い浮かべ、ココロは祈る。
 それは冬の日の太陽のように彼らを支えるという、自分への祈りだ。
 踏みしめるように脚を前に進め、『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)はその背に光を背負う。
 燐光を引いたイーリンは自分が連れてきたに等しいオーロラの少女へと笑いかける。
「シャルール、貴方に相応しい輝きをもう一度私も見せましょう。
 前は壁の花だったけど、今回は違うわ。貴方は特等席を好きに選んで」
「ふふ、ありがとう……では、わたくしは貴女の傍でみることにしますわ」
 応じるシャルールにもう一度笑いかけて、イーリンは前を向いた。
「さあ、やるわよ――神がそれを望まれる」
 その言葉に応じるように隣のシャルールがオーロラの輝きを纏うか。
「トールの兄弟、か。事情は知らないが、腕は立つらしい、な。味方ならば、頼りにさせてもらおう」
 3人を順繰りに見上げ『愛娘』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)は言う。
「ありがとうございます、レディ……僕達もご期待に添えるように力を尽くしましょう」
 柔らかく笑み、銀髪の青年が言う。たしか、ヘイエルダールと言ったか。
 言われてみれば、前を行く男装姿のトールと似てもいる気もする。
「お互いに、な」
 改めてヘイエルダールへとそう答え、エクスマリアはギュっと拳を握りしめる。
 黒金絲雀の手袋を媒体としてその身に降ろすはエクスマリア自身の紡ぐ最古にして最新の伝説。
「この前はどうも。戦場が変われば轡を並べるのは戦場のならわし。背中を預けて貰えると嬉しいわ」
 そのまま、改めてイーリンは3兄弟へと声をかける。
「えぇ、お互いに。僕達にも預けていただければと」
「あぁ、アンタらの力は良く知ってるからな」
 ヘイエルダールに続け赤髪のベルシェロンが応じ、もう1人は短く頷くばかり。
「私だけじゃなくて他の子たちもね……華蓮にエクスマリアの輝きは私をよく支えてくれる。
 ヴァイスや沙耶も、胸を張って、背筋を伸ばして綺麗だし。武器商人? アレは楽しげに踊ってるのを見るタイプでしょ」
 笑みをこぼすまま展開された術式は瞬く間に戦況を確立する。
「美しい物が好き……という事自体には同意するのだけどね。
 男性はダメだなんて、美しい物が半分にまで減ってしまうのはもったいないのだわよ?」
 リリィへと一面をもって肯定しつつ『蒼剣の秘書』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)は口元に手を置いて首を傾げる。
「男など、汚らわしく悍ましい。存在することさえも度し難い」
 吐き捨てるような言葉と侮蔑の視線は凝り固まった悪意に満ちている。
(ココロさんに、マリアちゃんに、司書さん、トールさん……そして他の仲間達も
 ……今回は私にとって大切な人が集まった依頼だから、ちょっとは良い所見せなくちゃ!)
 その視線を受けながら、華蓮はそれを振り払うように祈りを捧ぐ。
 清らかなる祈りは華蓮自身に加護を齎す。
「……けれど美しいものがここに集うのだから、許しましょう。
 美しい物は穢れ堕ちて消えるその刹那に価値があるのですから」
 笑むリリィの声は先程と同じようなことを言っていた。まるでリピート再生するような作り物のような声だ。
「……今何と言った。美しい物とは? 穢れてこそその消失に価値がある?」
 武器を握る手に自然と力が籠ったのは『少女融解』結月 沙耶(p3p009126)にとっても無意識の事だった。
「えぇ、そうよ。美しい物は穢れてこそ意味がある。
 美しいものが美しいままでいるなんて、悍ましいことはありません」
「戯けた事を言うんじゃない! 美しい物は輝き続けるからこそ、存在し続けるからこそ価値があるんだ!
 それが例えくすんでしまったとしても、心に輝きがあるならば価値はあり続けるんだ!」
 その叫びは本心に違いない。
 凄惨なるあの過去の日々を、数多の苦痛と忌まわしき過去を。
 あの日々にだけ価値があるといわんばかりの言葉は、受け入れることなんて出来やしない。
「そうだろう、リジェネイド・セイヴァー達にシャルールよ!
 私やトールやココロと共にあの日を踊り明かした者共よ! ――行くぞ、あの女に本物を見せつけてやろう!」
 それは彼らへの鼓舞である以上に、きっと自分自身を奮い立たせる声だった。
 軽やかに跳び込んだ沙耶はそのまま愛刀を振るう。虚ろなる嵐は銀の鳥を刈り取るべく斬閃を描く。
(まったく、どこもかしこも荒れ放題ねぇ……何とかしないと、いけないわね)
 戦場を見た『白き寓話』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)はその有様に一つ息を吐いた。
「あまり戦いは好きじゃないのだけれど。でもまぁ、ちょっと頑張りましょうか」
 ちらりと巡らせた視線の先には3人の青年がいる。
 ヴァイスが彼らと会ったのはたしか今と同じく練達でのことだ。
 冠位傲慢の攻勢が練達に及んだときに遭遇した。
(……彼ら、今日は味方なのね。まぁ、敵が増えるよりはいいかしら)
 こちらには全くの敵意もなく、いっそ戦友のようにふるまう彼らから視線を移す。
 リリィなる謎の女の肩に乗る2羽の終焉獣は鳩のようにも見えるだろうか。
「さてと、それじゃあ始めましょうか。ゆっくりと眠ってなさい?」
 そう短く告げると共に、ヴァイスは結界術を展開し、そのまま暗器を銀鳥めがけて投擲する。
「や、綺麗なコらが美しく踊る姿はそれだけで心洗われる光景だよねぇ」
 そう笑う『闇之雲』武器商人(p3p001107)は広域を俯瞰するままに最前線へと歩みを進める。
「半分当たりだよ、ジョーンズの方。でも、たまには羽目を外したっていいだろう?」
 口元に指を乗せて笑むままに、イーリンへと答えてから進む足取りはリリィの眼前にまで到達する。
「こんにちは、リリィだったかな? 我(アタシ)はどうだい?」
 ソレは口元に妖しく笑みを浮かべた。
 リリィは眉間に美しいとは言えぬしわを寄せた。
「そこまで言うのなら血の舞踏会をお見せするわ!」
 叫ぶように笑ったリリィが硝子めいたヒールの高い靴を踏み鳴らす。
 血だまりが波紋を打ちドレスを血で穢すように波濤となってリリィの周囲を攻め立てる。


 多くの終焉獣達はイーリンと三兄弟、それにシャルールを加えた4人によって抑え込まれ続けている。
「手を貸していただいてありがとうございます。レディ……ですが、よかったのですか?」
「心配しないで。言ったでしょ、預けてもらうって」
 ヘイエルダールの言葉へイーリンは笑みをこぼす。
「それであればいいのですか……」
 後ろに下がる鳥型の終焉獣めがけヘイエルダールが槍を撃ち込み、流れるようにベルシェロンが一気に攻勢を仕掛けていく。
 それとほぼ同時、イーリンは黒剣を掲げ持つ。輝くオーロラの舞踏会に合わせ、黎明の光を照らす斬撃が続く。
 瑠璃色の外套を纏うソレは茨の権能を展開する。
 昏き影の権能はリリィの血だまりを貫き、影の茨で彼女の身体を伝抜いた。
「──ところでキミ、炭になるのは美しさに入るかい?」
 串刺されたリリィへ、武器商人は笑みを刻むままに問う。
「えぇ、それが美しい物であればね」
 挑発への答えか、痛みに越えた減らず口か、リリィが笑みをこぼす。
「そうか……ちょうどいい。エイリスの煮え炎は美しい。その炎は、穢れることなく敵を灼き続けるのさ」
 仄暗い光を宿す武器商人の瞳とリリィのそれが交わった。
「輝きなら私も負けてない!!」
 沙耶はそう叫ぶままにAURORA-Ysの出力を高めた。
 オーロラエネルギーを背負うままに、沙耶は戦場を奔る。
 最高出力のままに刻む天衣無縫の太刀。
 斬撃の影すらも質量を纏うオーロラの閃きが血だまりの中を輝いていく。
「そうね、お前は確かに綺麗ね――ふふ、ふふふふ! 認めましょう!
 貴女達は綺麗――だから、全部台無しになりなさい!」
 溢れ出した血だまりがリリィの動きに合わせて刃となり響き渡る。
 血の波濤が刃となり戦場を席巻する。
「大丈夫、私がいるのだわ」
 華蓮は短く笑みをこぼし、紅蓮華の輝きを戦場に満たす。
 特に傷の多い仲間の傷を瞬く間に治癒させると共にその背中を確かに押している。
「生憎ですが、貴女の言う穢れた男でも美しい存在になれるのですよ。至高のシンデレラである僕が、その証拠をお見せいたしましょう!」
 改めてリリィに肉薄するトールはAURORAエネルギーを転換、煌くドレスへと切り替える。
「――シンデレラの輝きを! 穢すつもり!?」
 発狂するリリィへと剣を振るう一方で、トールはココロへと手を伸ばす。
「一緒に僕の剣を握ってほしい」
「トール君、では一緒に」
 応じたココロはその手に熱を抱き、その手を取った。
(あなたの願いも誓いも教えてもらいました。できる限り叶えてあげたい。
 でも……わたしの胸中にある炎、あなたに見えますか?)
 とくんとくんと重なる鼓動、ココロは不死鳥の術式を展開するままに言葉にすることなく問いかける。
(それから……沙耶さん。あなたが居てくれたからわたしは『気付く』ことができたのです。だからあなたの輝きを見たいの)
 ちらりと前線を飛び回る少女を見据え、ココロはその輝きを見つめ続ける。
「月光の閃きがお前の美学に適うかはわからない、が」
 そう呟くエクスマリアは血だまりを踏みしめる。
 その手にある月光の剣は美しく輝く時を待ちわびる。
「美学というのは人それぞれ、だ。だが、男でも女でも、美しいものはいる。
 少なくともここに居るのは、お前の醜い性根より、よほど美しい者たちばかり、だ」
 その言葉を聞いた刹那、リリィの表情に敵意が見えた。
「――美しいと感じる余裕も与えない」
 鋼鉄の始祖の名を背負う娘は極まった栄光を掴み取るままに斬撃を振るう。
 そのために鍛え、研ぎ澄ませてきた。ならばそれを証明する。
 それこそがエクスマリアの本領なのだから。
「いうに事を欠いて、この私を! 醜い!」
 激情に揺れるリリィが発狂せんばかりに声をあげる。
「ドレスが穢れてしまうわ」
 ヴァイスはふわりと舞うままに攻勢を開始する。
 その身にあり得たかもしれない『可能性』その全てを一斉に励起すれば、距離を取るままに術式を展開する。
 トレーネへと重ね掛ける術式は一本一本が刃に変質していく。
 放たれる幾重もの術式はそれぞれがそれぞれの可能性を秘めていた。


「――」
 ふとリリィの方を見やれば、金の鳥へと何かを語りかけた様子が見て取れた。
 笑みをこぼすイーリンは閃いたように騎兵策動を展開する。
「不意打ちね――今更驚きはしないわ」
 その言葉通り動き出す終焉獣達を紫苑の魔眼は絡め取る。
「ココロとトールのダンス、様になるわねぇ」
 そのまま、イーリンは眩しそうに目を細めた。
「……そうだな」
 応じるヴィルヘルムの払うオーロラの輝きと合わせ天眼の魔女は無数の武具を展開する。
 織りなす煌きの色が戦場を呑み込み、終焉獣達を塵さえ残さず浄化していく。
「俺達も負けられないな、ヘイエルダール!」
 快活に笑ったベルシェロンが風穴の如く開いた敵陣を駆け抜けていく。
 輝かんばかりの流星が如くヘイエルダールの槍が走り。
 オーロラの燐光を引く拳打が薙ぎ払われた敵陣の奥にある終焉獣を叩き伏せる。
「あなた達の輝く姿を、この特等席で見られる。美しいだわよね、絶対に穢させはしないのだわ」
 華蓮は仲間たちの動きを眩しく思うように微笑んで見せる。
 自分の身体に刻まれた傷も浅くはないけれど。
 それは大切な人たちを今日も支えてこれた証明でもある。
 祈りの歌を紡ぐ先では、大切な人の一人が多数の終焉獣を一手に抑え込んでいる。
 紅き蓮華の祈りはそんな彼女に輝く舞台をもっと見て貰うための祝福だ。
「人に非ざる美しさを帯びているわね、貴女」
 ヴァイスはそう告げるリリィの視線が自分に向いていることに気付いた。
「あら、私を見ている暇なんてあるのかしら?」
 そう嘯くままにリリィへと複数の術式を展開、一斉に射出する。
 燃え盛り、あるいは泥のように、あるいは人々を魅了し、恍惚の中に落とすような輝きを秘め。
 喪失感と虚無感に陥れる呪いを帯びた数多の可能性が一斉にリリィを冒していく。
「どこまでも醜い、な」
 エクスマリアは終焉獣を嗾けんとするリリィの動きに気付くや、一気に攻めたてる。
「――小娘が! この私を何度も醜いなどと!」
 絶叫するリリィの身体に痛撃となる刺突が撃ちだされ、その身体から夥しい量の滅びのアークが溢れ出す。
「お前も終焉獣、か」
 彼女の表情が引き攣った。
「さて――もうそろそろだね」
 武器商人は口元の笑みを深くする。その身に宿す傷は余りにも多い。
 だが不死にも思えるソレはその傷をまるで気にも留めてなかった。
「キミも肯定したことだ。炭に変わるのもいいだろう」
 ぴちゃりと血だまりが飛沫を上げる。
 一歩前に出るまま、武器商人は短く告げる。
「火を熾せ、エイリス」
 蒼き炎の槍がリリィが切った啖呵を証明するように、彼女を焼き殺さんと放たれた。
「……ふふ、確かに綺麗な炎――得体のしれないナニカではなく、乙女が使っていればもっといいのに」
 悲鳴の後、そうリリィが笑った。
「確かに、終わりというものはある。始まりがあれば終わりがあるのは道理だ。
 だが、それまでを全力で駆け抜けて輝くからこそ――価値があるんだ! 彼らのようにな!」
 沙耶は自分の後に続く2人のことを思い浮かべ、剣を振るう。
 自分が隣に立ちたいと思っていた人と、彼が選んだ人が待っている。
 そのために結ぶ剣の輝きは、きっと2人が織りなすだろう輝きとは別の色をしていて。
 どちらがどちらかなんて言うのは余りにも無粋な花時だった。
「……いつか終わりを迎えるからこそ今を精一杯輝けるのです。
 それに、終わりが穢れとは限らない。終焉の美を知らぬ貴女に美しさを語る資格はありません!」
 トールは愛剣に力を籠めなおす。終焉の美を証明するように、輝かんばかりの誓剣は打ち下ろされる。
「さて、リリィさん。お考えは変わりましたね?
 固い信念を持つ姿は美しさの一つなれど、硬い思想では伸びしろはありませんよ」
 ココロはその手に魔力を纏う。描く術式が黒き竜を呼ぶ準備は既に出来ている。
「ふふ、ふふ……」
 乾いた笑いを浮かべるリリィはその正体を隠す事さえできてない。
「――いきますよ、黒黥!」
 それは葬送の言葉を示すように、黒い闇のような身体をした悪竜がリリィの身体を食らい潰す。
 吐き出された頃には腹部から下は消し飛んでいる。
「あ、あぁ……私が――私が消える……」
 リリィは手を伸ばす。
 石に変わっていく女であったものは、最後に一輪の百合の花を咲かせて――塵に還ってきえた。


 リリィの死を受けて、終焉獣は蜘蛛の子を散らすように去って行った。
「――これでサヨナラは惜しいし、皆で茶会でも如何?」
 イーリンは三兄弟へと声をかける。
「えぇ、もちろん」
 ヘイエルダールに応じて2人も頷く。
「……ところで、トール。男だった、のか???」
 終焉獣から視線を外したエクスマリアは今更感のある驚きを声に出す。
「これまでの事情には関わってなかったので、初耳、だ。びっくりした、ぞ」
 トールは少し驚いてから、男性であることを公言するようになってから彼女と会ったことがなかったことを思い出す。
「少し前から表立って言えるようになりました。驚かせて申し訳ありません」
「そうか……そう言うこともあるのだろう、な」
 特に気にせず首を傾げたエクスマリアはこくりと頷いた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

イーリン・ジョーンズ(p3p000854)[重傷]
流星の少女
結月 沙耶(p3p009126)[重傷]
怪盗乱麻
トール=アシェンプテル(p3p010816)[重傷]
男の矜持

あとがき

お疲れさまでしたイレギュラーズ。

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