シナリオ詳細
<漆黒のAspire>アスタ包囲網を突破せよ
オープニング
●影の領域
「これは……アスタ上空に影の領域(ワームホール)が?」
空から次々と降り注ぐ星界獣の群れを前に、ユーフォニー(p3p010323)は戦慄に震えた。
世界各地にて『影の領域』が出現したという報告があった。
影の領域とは覇竜すら踏破したイレギュラーズですら踏み込むことのできない世界最大のタブーだ。であると同時に、今のユーフォニーの目標でもある。
正確には影の領域というより、そこから繋がる橋頭堡である。
これを放置すれば魔種陣営の戦力は世界各地に無限供給され、やがて人類は疲弊し崩壊してしまうだろう。
現にアスタ上空に開いたワームホールからは大量の星界獣が溢れ、それが今もなお覇竜のあちこちへ降り注いでいるという。
バグホールによる混乱を背景に攻勢を強める彼等の狙いは世界各国の更なる混乱と完全なる破壊だろう。世界中がそれぞれに追い詰められれば、イレギュラーズの力で勝ち得た各国が辛くも見せ続ける『人間の連携』も崩壊するとの目論見だろうか。
●ギャラド
「なあ、こいつは使い物になるのかい?」
人型星界獣の一人が後ろを振り返りそんな風に問いかけた。
「あん?」
柄の悪そうな人型星界獣がそれに応え同じように振り返る。
そこには巨大な亜竜めいた星界獣が鎮座し、戦いの時を今か今かと待ち構えている。
一定のラインまで攻め込まれない限りは戦闘は控えるようにと命令してあるものの、今にも飛び出してしまいそうな勢いだ。
人型星界獣のルキスはその真っ白い身体で伸びをしつつ言う。
「竜種の力を喰らったやつと違って、こっちは亜竜だろう? 戦闘力に大きく違いがあるんじゃないのかい?」
「まあ、な」
一方で真っ黒い身体をした人型星界獣のクサレナは苦笑を浮かべて見せた。
「ステラの意向さ。刃向かうなら殺すしかないが、必至に逃げるなら『逃げ道くらいは用意しておけ』とさ。あのローレット・イレギュラーズの精鋭部隊ならギリギリ突破可能な戦力が配置されてるってわけさ」
「おいおい、ちと敵に塩を送りすぎじゃあないのかな」
ルキスのぼやきももっともだろう。まるで自分達が突破されて然るべきだと言っているようなものだ。
「だから、俺たちがここに配置されたんだろ? 連中が舐めてかかるようなら殺しても構わない、と」
「ああ……」
得心がいった。そんな様子でルキスが顎をあげれば、クサレナはにやりと笑った。
「第一、連中は巨大な『お荷物』を抱えてるはずだ。そこを叩けば簡単に壊れるだろうぜ」
「アスタの戦力は既に把握済み、だしねえ」
顔を見合わせ、二人は頷き合った。
「ローレットの連中だけがむざむざ生き残ることになるか」
「それともアスタの連中を連れて逃げ切ることができるか」
「「実に見物だ」」
●星界獣包囲網
「とにかく、このままではアスタの皆さんに危険が及びます! 一刻も早く避難を!」
「ああ、だが……そう簡単にも行かせてくれないみたいだぜ」
赤羽・大地(p3p004151)が舌打ちをしながら里の出口を指さした。
そこには大量の星界獣が集まり、こちらを威嚇するように構えている。
「一度は退けてあげたのに、こりずにまた来たんだね」
ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)は武器を構え、不敵に笑う。
「いやむしろ、それをふまえて戦力を整えてきたと言った方が正しそうだな。見ろ」
イズマ・トーティス(p3p009471)が先を示すと、人型星界獣や見たこともない強力そうな星界獣が控えているのがわかった。
「アスタの皆様を守りながらこの包囲網を突破する……ですか。なかなかに大変な仕事になりそうですね」
ヴィルメイズ・サズ・ブロート(p3p010531)が扇子を広げ構えた。
「皆さん……!」
慌てた様子で駆け寄ってくるのはアスタの里長にして星の巫女、アドプレッサだ。
「避難の準備が整いました。戦士達もいますので多少の自衛は出来る筈ですが……やはり星界獣を倒していただかなくては突破は難しいでしょう」
「だろう、な」
首元に手を当てて考える大地。
非戦闘員の守りはアスタの戦士達に任せるとして、自分達の仕事は包囲網を形成する星界獣たちの撃破になるのは間違いないだろう。
「ああ、わかった。こっちは任せてくれ。いずれにせよ、連中を倒さないことには俺たちもここを脱出できないわけだしな」
「その作戦に賛成だ。全員、準備は?」
イズマが問いかけるとルーキスたちが手を振って返してくる。
「大丈夫。こういう時向けの戦術もあるからね」
「ええ、こちらも大丈夫です」
ヴィルメイズは頷き、そしてユーフォニーの方を見た。
ザッと今井さんが銃を構え戦闘準備を整えている、その横でユーフォニーは……ワームホール越しに現れた影の領域をじっと見つめていた。
「今は、『そのとき』じゃないぞ?」
「ええ、わかっています。その時が来れば、必ず。ですので今は……」
そして、皆は走り出す。
「星界獣の包囲網を突破して、皆さんを救います!」
- <漆黒のAspire>アスタ包囲網を突破せよ完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別EX
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2024年03月05日 22時06分
- 参加人数10/10人
- 相談5日
- 参加費150RC
参加者 : 10 人
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参加者一覧(10人)
リプレイ
●絶望の中にありて
滅びは確かに迫っていた。
けれど彼らは諦めているようには見えなかった。
そう、このときになってさえ、人が人であることを、なによりも守ろうとしているようだった。
滅びてなどやるものかと、集落全体で叫ぶように。
「まさか、これほどの物量で来るとはナ。更に質まで上等とハ、手厚いフルコースだこっタ!」
大量の星界獣が居並ぶ中を、『彼岸と此岸の魔術師』赤羽・大地(p3p004151)は駆け抜ける。
襲いかかる星界獣の攻撃を、里の戦士であるダンメリが矢を射ることで迎撃した。
そんなダンメリに星界獣の鋭い爪が突き刺さる。
「ぐあ……!?」
「安心しロ、すぐに治療してやる!」
大地は腕に深い傷を負ったダンメリに『知恵の実』の術をかけると出血をとめてやった。更に治癒魔法をかけ傷口を塞いでいく。
「助かった……かなり高度な治癒魔法を使うんだな」
「まあナ」
キッと星界獣たちを睨むように見つめる大地。
「どのみち戦わないことには、この里の人達には……そして俺達にも、未来はない
生きて帰ろう、皆!」
「「ああ!」」
里の戦士達がこたえ、星界獣へと攻撃を開始した。
無数の矢が飛び、槍が突き出される。
星界獣と彼らの戦力はおよそ互角といった所だが、星界獣の数がなんといっても多い。これを解消しないことにはこのラインを突破することはかなわないだろう。
それを可能とするのが、『月夜の蒼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)や『片翼の守護者』ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)たちの役目なのである。
「おー、来た来た……ってなんかえらい大所帯じゃない?
なんかデカブツも居るし、いやあこれは大変そうだなぁ。
まあ今回はルナールも居るし大丈夫でしょう」
「慣れたし、毎度の事と言えばそうなんだが……。
また集落が襲われるのか…しかも未開の地ときた。
状況を考えるときつい気がするが、泣き言も言ってられんな。
俺がやれることを全力でやるとしよう」
ルナールは『ブレイズハート・ヒートソウル』を発動させると青い炎を手のひらの上に出現させた。
ルーキスや里の住民たちに牙を向けようとする星界獣たちめがけ、投げ放つように炎を展開。すると炎にまかれた星界獣たちは目の色をかえてルナールへ攻撃対象を移したのだった。
大量に殺到する星界獣相手に、白銃『グラシア・メンシス』を抜くルナール。
「敵の攻撃は引きつけておく。対処は任せても?」
言いながら銃撃を放ち、正面から飛びかかる星界獣を零距離でいなした。
更には側面から飛びかかる星界獣の爪を軽やかに回避する。
踊るように美しく、次々と敵の攻撃を回避していくルナールだが、流石に数が数だ。徐々に敵の攻撃がルナールへかすり始めてきた。
「大丈夫ですか、ルナールさん! 治療は!?」
ラクテウスという治療魔法を使える亜竜種女性が声をかけてくるが、ルナールは心配無いとばかりに手を突き出す。
「まあ見ていろ」
言うが早いか、ルーキスが『星灯の書』を翳し魔術を発動させた。
発動させたのは『ケイオスタイド』だ。
ルーキスが生成された宝石めいた物体を発射したかと思うと、着弾地点を中心として混沌の泥が出現。ルナールを集中攻撃しようとしていた星界獣たちを巻き込んで泥が吹き上がる。その泥がルナールを穢すことは一切ない。
更に、ルーキスが手をかざすと『ソトースの銀鍵』が発動。がちゃんと囁きながら鍵を回すジェスチャーをした途端、ルナールに群がっていた星界獣たちが突如として爆発四散した。
「まあ、ざっとこんなところかな? ルナール、まだ行けるよね?」
「当然だ」
二人は構え、そして突き進む。
里には子供たちも多い。というより、子供たちの数は一般的な小集落より多いとすら言えるかもしれない。
そんな子供たちがおびえを見せる中、颯爽と槍を手に立ちはだかる女がいた。
『祝福の風』ゼファー(p3p007625)である。
「やれやれ、どんどん洒落にならない状況になって行くわね。
戦場にするなら、もうちょっと他人様の迷惑って奴を考えて欲しいものだわ?」
槍をくるりと回し、突っ込んでくる星界獣を突き殺す。その槍をそのまま振り込んで他の星界獣をなぎ払うと、ゼファーはその勢いのまま刺さった星界獣を吹き飛ばした。
「敵に突っ込め、血路を開けだなんてまあ。
良くあるオーダーと言えば、そうですけど……人使いが荒いんですから」
そんな風に言いながらも、ゼファーは子供たちに振り返りウィンクをしてみせる。
ハッとした子供の顔に、安堵の色が宿った。
「ここは任せときなさいな」
ゼファーは群れを成す星界獣へと自ら飛び込んでいった。
迎撃しようと構える星界獣だが、動きで言えばゼファーの方が遥かに早い。というより、攻撃をしたはしたがすべて空振りし、ゼファーは避ける動きと合わせてカウンターを放っていた。
次々に星界獣を撃破していくゼファーの手際に、里の戦士達が驚愕の声を漏らす。戦闘力が圧倒的すぎるのだ。
アスタの里の戦士達はその土地柄戦闘力はそれなりにあるが、それでもだ。
「皆、できるだけ中央に固まるんだ! 敵は俺たちが引きつける!」
スピーカーボムで拡張した声で叫ぶ『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)。
里の女性に襲いかかろうとする星界獣を鋼の足で蹴り飛ばすと、『響奏術・羅』で自らのパフォーマンスを向上させた。
「戦士の皆は円の外側に集まって少しでも防衛を固めるんだ! 回復は俺がする!」
「アテにしていいのか……?」
囁くように、震えるように言う男の言葉に、イズマは頷いて治癒魔法を発動させた。
細剣メロディア・コンダクターを指揮棒でも振るかのように美しく振り抜き、風の音をメロディに変える。メロディはそのまま魔法の音楽となり、星界獣と戦う戦士達の傷を広範囲で癒やしていった。
この戦術は仲間が多ければ多いほど有効だ。
「大人しくやられる気は無いよ。アスタの皆さんも生き延びさせる。
生きて可能性を繋ぐんだ、俺達も混沌もまだ終わってない。
行くぞ、突破する!」
イズマもこの里とはもう浅からぬ仲になっていた。誰一人として死なせるつもりはないのだ。
(味方は多い。この数を力に変えることが出来れば、この苦境も乗り越えられるはずだ。ただ護るだけじゃない。共に戦い、生き延びるんだ……!)
「終焉獣といい星界獣といい、世界中大変だな。座の温まる暇もない。
そんな時こそイレギュラーズの出番だ、全力で働こうじゃないか」
地を駆け風を切り、『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)は跳躍する。飛んできたリトルワイバーンの『風花』へとタイミング良く騎乗すると、それを追って飛行しようとしてきた数体の星界獣めがけ『豪鬼喝』を放った。
エーレンの放つ一喝が強烈な力となって星界獣を押しのけ、地面へと叩きつける。
「鳴神抜刀流、霧江詠蓮だ! お前たちに覇竜の地も民の命もくれてやるわけにはいかない!」
風花に合図を出して加速をさせるエーレン。それを見上げたアスタの民たちがわっと声をあげる。それもそのはずだ。常人ではまるでマネのできない超速度での加速を見せたのである。
それによって突出すると、鳴神抜刀流・衰滅之手引『散華』を放つ。敵集団の長所の「要」を一瞬で見抜き、すれ違いざまに斬り抜ける戦闘行動だ。
低空飛行から放たれる斬撃が星界獣を纏めて斬り割き、散らしていく。
そんなエーレンを迎撃しようと更に数体の星界獣が飛行を開始。今度は『豪鬼喝』は使わない。距離的にも鳴神抜刀流・衰滅之手引『散華』の射程にあるからだ。
「斬り割く――!」
刀の一振りは飛ぶ斬撃となって星界獣をまたも斬り割き、撃墜させる。墜落した星界獣は息があったが、【恍惚】状態を初め様々な弱体化状態にあった星界獣に里の戦士達が襲いかかればあっという間に殲滅が可能だ。
そんな中で、『宇宙の保安官』ムサシ・セルブライト(p3p010126)はちらりと『影の領域』を振り返った。今もなお星界獣はあふれだし、別働隊がそれへの対処を行っているようだ。
(ユーフォニーが目指してる影の領域。……俺にも気にならないわけじゃないけれど。今は……)
ぐっと拳を握り込む。不安そうにする人々の表情が見えた。
「この包囲を破ってアスタの人達を全員無事に避難させることが最優先だ……!」
アルビオン――正しくは『小型竜式エンジン MODEL:ALBION』。竜種からとられた素材を利用したというエンジンを起動させ、『ブレイ・ブレイザー』を抜き放つ。
亜竜種相手ではないとはいえ、彼のそんな勇気溢れる姿に星界獣たちは注目した。
「来い星界獣共ッ! お前達には誰一人として奪わせやしない! 『Superior Combat Active System』起動!」
コンバットスーツの特殊システムを起動させ、更に『ソリッド・シナジー』を発動。戦いの姿勢を整えると、ムサシは『ブレイズハート・ヒートソウル』を放った。
剣から放たれる炎が星界獣たちを巻き込み、その意識を強制的に染め上げる。
彼らはムサシに強烈な敵意を向けたかと思うと一斉に襲いかかってきた。
多脚型の蠍めいた星界獣たちの尾による攻撃。見るからに毒を含んだそれをコンバットスーツの機動力でジグザグに回避。
走り抜けた先で背部のファンネルユニットを射出した。
「行け! ディフェンダー・ファンネルッ!」
飛行したファンネルユニットが星界獣を次々と焼く中、『相賀の弟子』ユーフォニー(p3p010323)は連携して『カレイド・フォーチュン』を発動させた。
「今井さん、お願いします!」
「はっ!」
短く応えた今井さんは手榴弾のピンをぬいて投擲。それを連続させると幾度もの爆発を引き起こした。
ディフェンダーファンネルによって弱らせた敵たちが爆発によって吹き飛んでいく。
爆風に髪をなびかせながら、ユーフォニーはアスタの民たちををちらりと見やる。
(迎え撃っているだけでは当然こうなるわけで……。
依頼は達成したから、と言われ足を止めた必然の結果。
8割生存? ふざけないで。
全員でしょう)
ユーフォニーの『人助けセンサー』は常に反応を示し、人々が不安に駆られていることを示していた。
今からでも死ぬかもしれない。そんな不安だ。当然だろう。
「誰一人だって死なせたりしません。安心して私達についてきてください!」
ユーフォニーが主に狙うのはムサシの【怒り】付与から逃れた、あるいは付与しきっていない星界獣たちだ。
彼らは平気で民を狙いにかかる。
そうはさせない。させるものか。
(命はひとつも取りこぼすものか)
苛烈な感情を瞳に宿し、今井さんに力を送り込む。
力を受け取った今井さんは大量の書類を展開すると、それらを無数の紙飛行機に展開させて発射した。
民へ襲いかかろうと迫る星界獣に紙飛行機が直撃した途端、花火のような爆発が起こる。
爆発はいくつも重なり、それは万華鏡のように美しく輝いた。
恐怖におそわれたはずの民が思わずハッと息を呑むほどの、それは美しい爆発であった。
「きれい……」
アスタの亜竜種、コーラルと名乗った女性は思わずつぶやいた。
「美しいものがお好きですか? ならばもっとお見せしましょう」
『未来を託す』ヴィルメイズ・サズ・ブロート(p3p010531)が扇子を開いて前へ躍り出た。
「星界獣……これ以上、アスタの方々に手出しはさせませんよ。
これ以上美しい私を怒らせないで頂けます?」
ヴィルメイズは『崔府君舞』の舞いを踊り始める。
舞いはそのまま魔法の力となり、ムサシへ集中していた星界獣たちを混沌の泥で包み込む。
(それにしても、数がとにかく多いですね。この中を突破するには相当な数を撃破しなければならないでしょう。ということは、効率が重視される……)
『崔府君舞』を舞い続け、あちこちの対象に【不吉】系統のBSを付与していくヴィルメイズ。
激しい不吉系BS状態になった星界獣は戦闘能力を大きく欠如させ、里の戦士達でも対抗可能なほどに弱体化する。コーラルも槍を持って星界獣に突きを繰り出し、その堅そうな装甲を突き破っていた。
「あっヤバイエグい。アタシの攻撃でも通じるじゃん」
「付与は永遠ではありません。お気をつけを」
ヴィルメイズは舞いを続けながらそんな風に声をかけた。
頷くコーラル。その頭上を、『箒星』に跨がった『夜守の魔女』セレナ・夜月(p3p010688)が低空飛行状態で抜けていった。
「影の領域からの軍勢、包囲網。
普通なら絶望するもの……だけど。
ここにはわたし達が居る。
希望と言うものを見せてあげるわ、星界獣……そして、ステラ!」
セレナは自らに『完全逸脱』、『ソリッド・シナジー』を付与するとスペックを向上。
そして民を狙おうとしている星界獣を見つけ『マリシャスユアハート』を展開しながら突っ込んでいった。
ぴょんと箒から飛び降り、祈願結界『vis noctis』を展開。
彼女を半透明な球系結界が覆い、その上から更に祈願結界が覆っていく。
セレナの放った魔法によって意識を支配された星界獣たちは一斉にセレナへと攻撃を開始。
全方位から一斉に繰り出される攻撃に結界がばきりとヒビいるが、星界獣の流し込む毒や出血といったBSは通用しない。どころか、セレナのうけたダメージはそのまま反撃の力に変わるのだ。
「ついてきなさい!」
再び箒に飛び乗って飛行。群れの中を抜けていくと、背後に向けて『ケイオスタイド』の魔術を放ち追ってくる星界獣たちを混沌の泥にまみれさせた。
「星界獣の群れを突破するわ! 次は……」
白と黒の人型星界獣の姿が見えてくる。
「あいつら、ね」
●人ならざる
白きルキスと黒きクサレナ。
二人の星界獣は悠然と構え、アスタの民たちの前に立ちはだかっていた。
「ここは通さない……と言ったら?」
「当然。押し通らせて貰う」
ルナールはスッと前に出て白銃『グラシア・メンシス』を突きつけた。
「お行儀のいいこって。俺たちがそこの連中の中に押し入って暴れて見せたらどうするつもりなんだ? 今すぐにでもやっていいんだぜ?」
「さあて、そこまで『おばかさん』かしらねえ?」
同じくスッと前に出たゼファーは槍を構えてみせる。
この人型星界獣たちにとって、アスタの民は容易に殺せる対象だ。しかし、戦力的に言って今のイレギュラーズたちと人型星界獣は互角。そんな『無駄な時間』を使っている余裕はないのだ。
クサレナはチッと舌打ちをしてみせた。それが肯定を示すものだと知って、ルーキスもまた前に出る。
民たちに万一被害が出そうになった再には戦士達に護らせるよう言いつけて。
「それじゃあ、始めようか? さっさと突破してしまいたいからね」
人型星界獣を軽んじた発言にルキスは怒りを露わにした。
それで結構だ。ルーキスは『星灯の書』を掲げ、『ワールドエンド・ルナティック』の魔術を発動させた。
襲いかかるルキスは魔術の効果をレジスト。腕から砲台のようなものを出現させると、激しい凍気を宿した生体ミサイルを発射してきた。
「おっと」
ミサイルの爆発を受けて吹き飛ばされかけ、魔術結界でそれをギリギリ防ぐルーキス。
結界はボロボロに崩れたが、ミサイルの凍気がルーキスを傷つけることは無かったらしい。なにせBSを無効化する結界が張られているのだから。
「一発目はハズレかあ。まあいいけど」
ルキスは突然歌を歌い始めたかと思うと歌を魔法に変え、腕を剣に変える。
対抗したのはイズマだ。
「大地、援護を頼む!」
細剣『メロディア・コンダクター』に音を纏わせメロディに変えると、エネミースキャンを発動させてルキスの能力を調べにかかった。
「相手はかなりの手練れだ。ダメージ覚悟で突っ込む!」
「ああ、わかった」
大地が治癒の魔法を唱えると同時、イズマは『響奏撃・麗』を発動。叩きつけた魔力はルキスに確かなダメージを与えたはずだが、込められた【魅了】や【致命】の効果は発揮されなかった。【災厄】つきの攻撃であるにも関わらずだ。それだけ能力に開きがあるということだろう。
「チッ!」
舌打ちするイズマの肩にルキスの剣が突き刺さり、そこを中心に魔法が炸裂する。
全身が引き裂かれるかのような痛みが走ったが、それと同時に大地のかけた治癒魔法がイズマの腕を護ってくれた。もしこれがなければ腕が切り落とされていたかもしれない。
セレナはすかさず『魔女の彗星』を発動。
「よそ見なんてさせないから!」
セレナは自らが纏っていた結界を発光させて突撃。巨大な砲弾の如きそれをうけたルキスは流石に【怒り】が付与される。
「おっと、まずいね」
セレナの放つ魔法『魔女の彗星』はただ【怒り】を付与するだけの魔術ではない。【疫病】と【変幻25】を併せ持ったそれはたとえ格上の相手であろうとも逃がさない強烈な【怒り】付与効果をもっているのだ。
こうした戦いでは非常に有利な一撃だ。
「流石にBS無効ってほどではなかったわね。いける……攻撃は私が引き受け続けるわ! その間に集中攻撃を仕掛けて!」
「させるかよ!」
それを阻もうと突っ込んできたのは黒い身体に大量の装甲を纏ったクサレナだった。
だが――。
「おっと、ここは通さない」
ルナールがクサレナをブロック。
格上を相手にするにあたって『ブロック』は簡単でかつ確実な足止め手段だ。実に有効な選択といえるだろう。
「そこを退きやがれ!」
腕に魔法の力を宿し、拳を突き出してくるクサレナ。
直撃を受けるルーキス――だが、巧妙にその直撃を僅かにかわした。
【巧妙40】の使い所である。そう、ルナールはその能力を格上相手に有効なものへとビルドしていたのだ。
「ゼファー、【怒り】の付与はできそうか?」
「ちょっと難しいわねえ。当てるのは難しくないんだけど、さっきからレジストされてるわ。そのままブロックし続けて頂戴な」
「無茶を言う。が、やってやろう。大地、援護を頼む」
「そっちもか。まあわかった、任せロ」
大地の放つ治癒魔法を受けながら、クサレナの攻撃を一身に受けるルーキス。
その間にもゼファーの攻撃がクサレナへと襲いかかる。
「人型はちょっとはやるんですって?
ハリボテみたいな連中じゃ全然満足出来なかったんですけど。
少しは楽しませてくれるのかしらね」
槍で足を払う攻撃を跳躍でかわし、続けて頭を払う攻撃を腕で受けるクサレナ。
「邪魔だ!」
強烈な拳の一撃。魔法を纏ったそれをゼファーは腕で受けた。
『防御集中』。簡単でかつ分かりやすい防御の型だ。
回避200台のゼファーに当ててくるというだけでも厄介な敵だが、それでも【巧妙20】【堅実20】をもったゼファーの防御はかなりのものだ。こちらもこちらで、格上相手の防御性能をもったビルドなのである。
その間もヴィルメイズはエネミースキャンで二人の強さを図っていた。
「歌の魔法と剣の腕で戦うルキス。拳に魔法を纏わせて戦うクサレナ。スペックに違いはあれど、強さはほぼ同じとみて間違いなさそうですね」
であれば、当初の予定通りルキスを標的にして間違い無いだろう。
仲間達の連撃によって隙ができているルキスに『崔府君舞』を踊り力を発動させる。
そこで更に『無常勾魂舞』だ。
「くうっ、厄介な魔法を……やっぱりローレット・イレギュラーズ。並じゃないね」
ルキスが苦しげに呻くが、それを無視してヴィルメイズは『孟婆舞』を踊り始めた。
流石にルキス相手にクリーンヒットを出すことは難しかったようで、纏っている魔法の力を【ブレイク】するには至らない。だが【封印】効果は付与できた。
「さあ、今です……!」
「鳴神抜刀流・太刀之事始『一閃』!」
エーレンは『風花』から飛び降りると剣を繰り出した。
ルキスの腕の剣とぶつかり合い激しい火花が散る。
そこで『モード・シューティングスター』を解禁。激しい連撃がルキスを襲い、ルキスはそれを半分ほど腕の剣で弾くがもう半分は身体へと斬り付けられていく。
「剣の腕も立つ。全く、やってられないね。そこまでして滅びに対抗したいのかい? こんなクソ世界、滅んだ方がマシだと思わない?」
「ああ思わない。世界の素晴らしさを、俺は知っている!」
ルキスの挑発をはねのけ、エーレンは更に斬撃を重ねる。
そんなエーレンから飛び退くようにしてルキスは距離をとり、歌の魔法を叩きつけた。
まるで暴風のように叩きつけられたそれにエーレンは思わず吹き飛ばされる。
が、それをフォローするようにムサシとユーフォニーが動き出す。
「悪いが手間を掛けていられない。何を企んでいるかは知らないが……容赦なく潰させてもらう! ――ブレイ・ブレイザー!」
ムサシの放つ『ブレイ・ブレイザー』による斬撃がルキスを斬り割き、悲鳴と共に爆発四散させる。
「次だ!」
ギャリッと反転しクサレナへと狙いを移すムサシ。
「ルキスがやられた、か。だったら――」
突進していくムサシに対抗するように拳を突き出すクサレナ。
ムサシの剣がクサレナへと突き刺さったと同時、ムサシのコンバットスーツにクサレナの拳が突き刺さる。
「ムサシさん……!」
ユーフォニーが思わず叫ぶほどのその一撃は、ムサシに血を吐かせた。
ドッ――とほぼ同時に動き出す仲間達。
一斉に攻撃がクサレナへと集中し、その中でも激しい攻撃となったのはユーフォニーの――もとい今井さんの放つ大量の書類の槍であった。
『凪色万華』『完全掌握プロトコル』『光彩変華』の順で放たれた槍は様々なBSをクサレナへと押付、更には消費APを倍にした『無限万華』が叩き込まれる。
強烈な衝撃にクサレナを覆っていた頑強な装甲が破壊され、貫かれる。
「が、は……!」
膝をつき、クサレナは血を吐いた。
「これが、生き足掻く連中の力だってのか……へえ……けれど、あのギャラドを倒せる、か……」
がくりとそのままうつ伏せに倒れ、動かなくなるクサレナ。
そしてユーフォニーたちは、巨大な星界獣を見上げるのであった。
●ギャラド
宙を舞う、それはまるで竜のようであった。
が、しかし違う。強力な亜竜の力を喰らい進化した特殊星界獣『ギャラド』である。
「ルキスやクサレナみたいに知性があるって感じじゃないわね。悠長に戦ってたら民が攻撃いをうけるわ。一気に行きましょう!」
突っ込んでくるギャラドに対して、セレナは真っ向から対抗するように突っ込んでいった。
怒りの付与など行っている場合では、おそらくない。
セレナは持ちうる魔力を総動員して『グラウンド・ゼロ』を発動。衝撃がギャラドに向けて叩きつけられる。
(不思議とね。『突破してみせなさい』と言われてる気がしたの。言われなくても、負けたりなんてしないから!)
と同時に、ヴィルメイズが『無常勾魂舞』を発動させた。
狙いは【重圧】。とはいえ相手の性能はこちらより遥かに上であったようで、BSをレジストされてしまった。
ならばと『蚩尤血楓舞』を発動させ直接的なダメージをたたき込みにかかった。
ここまで来れば出し惜しみも入らない。ギャラドさえ倒してしまえば良いのだ。
ギャラドはそんなヴィルメイズを脅威を見なしたのか、口から破壊光線を発射した。
「――ッ!?」
扇子を払って攻撃を受け流しにかかるヴィルメイズ。が、流しきれずに光線を浴び、衝撃に吹き飛ばされる。
「大地さん、ヴィルメイズさんのフォローを!」
「分かってる……!」
大地が治癒の魔法を唱えるのをよそに、ユーフォニーはなりふり構わず『無限万華』を連打しにかかった。
(領地でアスタの住民の保護もしてるの。ひとびとの「大切」を、竜域を脅かさせはしない!)
ユーフォニーの、もとい今井さんの放つ資料束の槍。それがギャラドに次々と突き刺さる。
「ひとびとの「大切」を、竜域を脅かさせはしない!」
常人であれば簡単に倒れているであろうダメージだが、それでもギャラドは止まらない。
ユーフォニーに狙いをつけ、再び破壊光線を発射しようと口を開いた。
「させるか!」
ムサシが間に割り込み、ブレイ・ブレイザーとレーザー警棒を交差させる。
放たれた光線が浴びせられ、衝撃にムサシは派手に吹き飛ぶ。
「ああ全く、休む暇もないナ……!」
大地がすかさず治癒の魔法を放つ中、ムサシはごろごろと転がりつつも素早く立ち上がる。
(一筋縄ではいかない相手……だが、止まるわけには行かないッ!)
『地廻竜の吐息』を発動。仲間達の力が激しく向上していく。
「落ちろ……ッ! ゼタシウム・ジャッジメントッ!」
ブレイ・ブレイザーを振り抜いたムサシはギャラドの身体を十字に斬り割き、傷を刻みつける。
そこへ更に攻撃を加えたのはエーレンだ。
『モード・シューティングスター』を維持した状態での鳴神抜刀流・太刀之事始『一閃』。
それは凄まじい衝撃となり、ギャラドの開いた傷口を更に大きく切り拓いていく。
ギャラドは大声をあげ、一度はエーレンたちから距離をとる。
そして再び破壊光線を放ってきた。
エーレンはそれを真っ向から斬り割くように剣を振り抜き、ダメージを軽減させる。当然そこには神秘能力を向上させた大地の治癒も合わさるのだ。
「くっ……!」
エーレンが押されかけたところで、イズマがメロディア・コンダクターを指揮棒のように振り抜いた。
メロディが魔法となり、巨大な盾が出現する。
なぜそんなものを――と思った途端、ギャラドの破壊光線は民たちへと向けられていた。
巨大な盾が破壊光線を受け止め、イズマは剣を構え歯を食いしばる。
「親しきアスタの民を死なせてたまるか!」
ステラが見ているのは混沌の末。終末だろう。今を生き延びて、あのとき語った言葉や意志が本物であることを示すのだ。
「くらえ――ギャラド!」
攻撃をなんとか耐えきったイズマは『アイゼルネ・ブリガーデ』を発動。
出現した架空の楽団が一斉に演奏を開始し、合わさった巨大な音楽の魔法がギャラドへと叩きつけられた。
「全く、どいつもこいつも無茶ばかり……」
大地はフッと笑って治癒の魔法をかけ直す。
そんな大地を追い抜く形で前に出たルーキスとルナール。
「さて、俺の本領発揮はここからって感じだな?」
「回復もさせないよ、潰すって決めたからね」
ギャラドが警戒を込めて放った破壊光線。ルナールが素早く前に出てルーキスを庇いにかかる。
大地の治癒とあわせルナールはギャラドの攻撃をなんとか受け続け、その間にルーキスはこれまで温存してきた『禍剣エダークス』を解禁させた。
ただでさえ強化された神秘攻撃力から放たれる攻撃は凄まじいものに違いない。
「そこ――」
宝石を核として作り上げた仮初めの剣がギャラドへと突き刺さる。
と同時に込められていた魔力が暴走し、爆発。凄まじい衝撃となってギャラドの肉体を吹き飛ばした。
ドッと音をたてて地面に墜落したギャラド。
そんなギャラドへと飛びかかったのはゼファーだった。
手にした槍を思い切り投擲。
仲間達の刻み込んだ傷口に深く突き刺さった槍めがけ、ゼファーは跳躍跳び蹴りを叩き込むことで更に深く突き刺した。
「此処で出し惜しみなんて野暮なのはナシ!
やらなきゃ、皆終わりなんですから。
その首根っこ捩じ切ってさっさと終わりにしてやろうじゃない!」
グオオ――とギャラドは大きく鳴いて、そしてどさりと頭を地面に落とした。
わっ――と歓声が上がる。
「まさかあの星界獣まで倒してしまうなんて……!」
星の巫女アドプレッサが駆け寄ってくる。
他のアスタの民たちもだ。
「これで安全に逃げ切ることができます! ありがとうございます!」
感激したように手を取り上下に振るアドプレッサだが、大地はゆっくりと首を左右に振った。
「まだダ。ヘスペリデスを抜けるのは容易なことじゃない。俺たちがそばについてるから、一緒にここを抜けるぞ」
そうだ。アスタの民を守り切る仕事はまだ終わっていない。
大地たちはアスタの民をつれ、戦線を離脱していったのだった。
そんな中。
(調査しなければ必ずまた後悔する……)
ユーフォニーは天に開いた『影の領域』にアナザーアナライズをかけていた。
必ずたどり着くと、決意を深く刻みながら。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
――アスタの民に被害を出すことなく戦線を突破することに成功しました!
GMコメント
●成功条件
・成功条件:アスタの民が80%異常生存した状態で包囲網と突破する
※このシナリオの結果は『<漆黒のAspire>星の雨が降る空』のオプション条件達成に影響します。
アスタ上空にワームホールが開き、星界獣たちが無尽蔵に出現しています。
このような状況で里を維持することはできず、里長アドプレッサたちは避難を開始しました。
しかしそれを阻むように星界獣の包囲網が出来上がっています。皆さんはこれらの星界獣包囲網を撃破し、アスタの民が逃げるための道を切り開かねばなりません。
●第一ライン
・星界獣×多数
とにかく沢山の星界獣が道を阻んでいます。
範囲攻撃などを駆使してできるだけ早く星界獣を駆除しましょう。
●第二ライン
・人型星界獣×2(ルキス、クサレナ)
人型の星界獣がラインの守りを固めています。これらを撃破し突き進みましょう。
人型は一体を五人がかりで相手してなんとか張り合っていたレベルの怪物です。今回は力を合わせ短期決戦を狙う必要があるでしょう。
●第三ライン
・特殊星界獣『ギャラド』
沢山の亜竜を喰らって進化した強力な星界獣です。
皆で力を合わせればギリギリ勝てるレベルの強さですが、悠長に戦っていてはアスタの民が攻撃を受けてしまいます。
ダメージ覚悟で突っ込んで素早く倒す作戦がこの場合は有効になるでしょう。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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