PandoraPartyProject

ギルドスレッド

捩れ木の匣

ある夜、森の入口。

ある夜、森の入口。
すでに陽も遠く涼しい風。虫の歌声が聞こえている。
家馬車の脇でおんぼろ外套が火を焚いている。
石の輪の中、串に刺された肉が焼ける香りが煙と共に上がる。
君は焚き火に加わっても良いし、足早に通り過ぎても良い。

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(簡易の炉端で火を眺めているのは、かつては上等だったのだろう黒外套の青年。
 傷痕だらけの痩躯に虚ろな眼差し、出で立ち如何にも不気味だが、
 仄明かりが照らす真白い顔はよくよく見れば意外にも秀麗だ。)
(じゅう、と滴り落ちた脂が火の中で燃え果てる音がする。)
こんばんは。お散歩してたら灯りが見えたから降りてきたの。
お邪魔しても良いかしら?
(少女の声、ゆっくりと顔を上げ)
――ああ、ええぞ~……。
あんまり遅い時分に娘っ子がひとり、危なかろう~。
誰ぞ供はおらんのかえ~?肉食うか~?
(と串の一本に手を伸ばし、肉の焼け具合を確かめる。うまそうだ。)
(なにか重いものを引きずる音と)
(ガシャン…ガシャン…というぶきみな音が近づいてくる)
(森を駆け、木々を渡り、獲物を追い――残ったのは、空っぽの矢筒と喧しく泣き喚く腹の虫だけだった。所謂、坊主である。干し肉はとうに尽きていたし、人里のあかりも遠い現在地。今日は食事にありつく事は出来ないだろうと諦めかけていた、そんな時だった。夜風に乗って漂う、香ばしい肉の焼ける香りが鼻先を掠めたのは)……、

(ぐう。)

(他者へ声を掛ける事を躊躇ったのは一瞬。自分が口を開くよりも早く、腹の虫が篝火の主と先客に自身の存在を知らしめてしまっただろうから)
(暗がりから現れたのは黒い鉄のこども)
(なぜだか動物のお肉を引きずっていて、火と傍らの人影を見てほっとしたようなかおをしている)
ウウウ。良かった、デス。ヒト、と、会えた。
ボク、森、迷ってて。暗いとよく見えないのですけど、飛び出してきた動物と衝突するし、暗いし、で。もうダメかと思っていたトコロだったんです。
だから、今ネ、安心して、もう一歩も歩けない気がするの。……アノ、お隣、イイデスカ?
(鹿の肉も焼けますか?と、お肉を差し出しながら近づいてきた)
あの、……こんばんは。
(影は漸く唇を開く。目深に被ったフードのせいで、其の身を隠す闇色のせいで。男なのか女なのか。大人なのか、それとも子供なのかすらも判別に難かっただろうが、零れ落ちた高い囀りは影が年少、少なくとも言語を扱う事の出来る生き物である事が幾許か彼らに伝わるだろうか)
出会い頭にこんな事を頼むのは失礼だと承知の上で、頼む。……何か、食べるものを分けてくれないか。
(狩りが上手く行かなかったのだと添えた直後。聞き慣れぬ、金属同士が打つかり合うような音を耳が拾えば音の方角から一歩飛び退り)
(しゃべった。)

(金属音の正体を見止め、其れが知的生命体で――それも、幼い子どもであると認識すれば抜き掛けた短刀から手を離し少年へ小さく会釈し)
(串を手にしたまま、音のする方に目を遣る。
 虚ろだった瞳がひゅっと開き、頭の上の耳がぴくぴくと震えるが、やがて)
……なんじゃ、今日は人っ子がよう来るのう~。
腹ぁ空いとるんか~。しょうがないのう~。
(ぴたりと止まっていた尾が、呆れたようにゆっくり左右に揺れる。
 大きな鹿肉の塊を見遣り、)
……煮るか~。捌いてあるだけ上出来じゃな~。
(やれやれと腰を上げ、家馬車の中へ上がると鍋やら水桶やら何やらを持って来て、
 手慣れた様子で仕掛け始め)
焼けとるの、とりあえずお食べや~。
(と数本の串をあごでしゃくる。)
(思いがけず同じタイミングで辿り着けた狩人さんの存在に気が付き、ガシャンと慌ててお辞儀した)
こんばんは、デスネ。同じ時に森に居て、出てきて、コチラに辿り着くなんて。キグウ、ですね。
……あ! ハイ、お肉、おねがいします。
(手際良い様子に感嘆しつつ、お腹が空いていたことに気がついた。胸に手を当ててお礼を言い、いただきます、と一本に手を伸ばし) (もぐもぐ) (つかれがとれるようなえもいわれぬ美味しさ)
(もぐもぐ) (にこにこにこ) (もぐもぐ)
(……ハッ)
イキナリご馳走になったまま、名前も言わなくて、失礼シマシタ!
ボクは、リュカシスです。ごらんの通り、オールドワン。鉄なので、トテモ硬いんだよ。飛び出してきた動物より、とてもとても、なんですヨ。……もしもボクが柔らかいヒトだったら、迷子の上に、とても痛いことになるトコロだった…
あ。あの、お名前、お二人トモ。なんていうのか、ヒミツじゃなければ、教えて欲しいデス。
(人の形をした其れは、暗い森を一人歩く。洋燈のオイルは遠の昔にすっからかんで、夜の森を照らす灯り何て今や月だけだった。勿論、其処には望んだ宝石の煌めきだってない。唯々意味も無く時間を浪費したのだと思えば、足音の軽さに反し足取りは酷く重い。道さえ解れば早々に帰りたかった。解らないから、誰ぞやかの夕餉の匂いを頼りにせざるを得ないのだけれど。)
(そうして、暫し歩いた先。漸く見えて来た焚火にあかるく照らされた場所は、随分前に見た覚えがある。入口だ。実に喜ばしい。けれど、其の近くに添う馬車の方にも"見覚えがある"と気付けば、其れの表情は思い切り歪んだ。何とも複雑な表情だった。解りやすく言い表すならば、)
げエッ。
(――そう。「げエッ」って感じだった。)
(他に客人が居ると気付けば、取り繕う様にと晴れやかに笑い)
あッは、はア。奇遇だねェ〜〜。若しくは俺がツいてないのかねェ。此のだだッ広い世界でまァた此の馬車に遭遇するたァ……いンや、此の際背に腹は変えられねェや。 何せ、今にも俺の爪先がおッ欠けちまいそうなンだもの!
(ちィと邪魔するよゥ、と地面に胡座で座って。腰を落ち着ければ、燃ゆる硝子の瞳でまじと客を見て)
にしても、客は初めて見たねェ。 なァに、薬でも買いに来た?それとも迷子?俺はねェ、迷――冷やかしの篝だよゥ。宜しくねェ。
(人懐こい猫の様に首傾ぎ、指先はどさくさにと串に伸び。)
ん~?そうかえ、リュカシスってのかえ~。そりゃあ丈夫でえかったのぅ。
オレかえ?オレぁな――
(鹿の肉を削いだ端から鍋に落としつリュカシスの問いに答えようとするも、
 みたび、暗闇からの人の気配に耳を立て手を止める。
 見開かれた獣じみた緑の瞳が焚き火に照らされ剣呑に光るが、)
――なんじゃぁ、オマエさんかい。
まァたがらくた拾いをしよって迷子かえ。
(にやりと意地悪く笑えば、鋭く尖った歯列が覗く。)
こんだけ迷子が寄ってくるとなると、こりゃあ他にも迷子が来るかも知れんのう~。
(くつくつと笑いながら、鍋に葉の粉をぱらぱらり。なんとも良い香りが立つ。)
(鍋を杓子でかき混ぜかき混ぜ、)
……あ、そうそうオレの名じゃが、オレぁリザシェというんじゃよ~。
薬草売りだの花売りだのをしておる。
森に入ったり遺跡に潜ったり……そこで育てたりな。
(と自分の馬車の変わった屋根を指さす。
 暗がりで見えづらいが、あれこれと植物が植わっているようだ。)
それと――まあええか。(と首を振り、)
……ああそうそう、ちょうど今日遺跡でこんな物を拾うてのう~。
入れてやるから、開けんか~。石、好きじゃろ~?
(脇に置いてあった革の背負い鞄から取り出した古びた石板の欠片を手にし、
 篝の胸をこじ開けようとする。
 ――いかにも意地悪げな笑みを浮かべて。
 彼の胸に宝石をしまう空洞があることをリザシェは知っているのだ。)
(獣の耳と角を生やした頭部は獣種を思わせるが、角と同じく百合に似た花を絡ませた尾が視界の端に留まる。男が『外の者』であると理解すれば、思わずまじと上から下までをフードの隙間越しに眺め)
…………。
(ややあって我に返る。あまり不躾に眺めては失礼だと気付いたが故に。それよりも今は御相伴に与る許しを得られた事の方が重要だった)
ありがとう。朝から何も食べていなかったから、助かった。
(篝火の側に無造作に腰を下ろすと、肉汁の滴る串に手を伸ばし)
(無骨な装具に夜を切り抜いた様な肌の色。幼子の姿をしてはいるが、少年は自身を『絡繰仕掛け』だと名乗りを上げた。定命の人間種以外の存在を未だ良く知らぬ影は、人好きする笑みを浮かべる黒鉄の少年に対してどう接したら良いものかとかんばせを俯けた。そうして喉から音を絞り出すまでに、短くない時間を要した)
私は、――
(カチャ、カチャン。陶磁器の食器が重なり合う様な音色を尖った耳が拾い、小さく跳ねた。
視線を向けた先。其処には大層うつくしい『人形』が。其のきれいなきれいな顔を歪ませたかと思えば、ちゃっかり火の側へやってきたものだから。それからそれから、篝火の主と可笑しげに戯れ出すものだから。
影は事態を飲み込めず、名乗る事も忘れて、只々目を白黒させるばかりだった)
(串に伸びた手がぴたりと止まり、表情を僅か引き攣らせ)
な、……ァ〜〜に言ッてンだかね此の爺ィは?此処らはもう俺の庭の様なモノなンだ。まッさかァ迷う訳無いじゃアない、――ン? 今、ガラクタッて言ッたァ!?宝石を!?御前さんが集めてる古いだけの物の方がガラクタだろォ!?
(そりゃあ聞き捨てならない、と。前のめりに主張するも、リザシェの石版が胸へと寄れば慌てて後退り。着物が汚れた分も含めて、じとりと睨んで)
だッ、もー、馬ァ鹿!俺が好きなのは宝石だッて言ッてンだよゥ!そンなの入れられたら胸焼け起こしまうッてンだ!
――ウウ。ねェ〜〜。見てないで助けてくれよゥ〜〜。見ての通り苛められてンだ。俺の綺麗な収集品が不揃いになッちまうよォ。
(よよよ。着物の裾で目許押さえて、態とらしく泣き真似て。あわよくば、エーリカの方へと逃げようと)
ハイ!丈夫なのがウリ、ですので。えかったえかったデス。
(……と、店主サンの視線の先を追いかけ)
わあ。コンバンハ。カガリ、サン。篝サン、ですね。アナタも迷子ですか。実はね、ボクもなんデスヨ。狩人サンもですよね。同じトキに迷子が重なるですねえ。
え、え。篝サン、開くの、ですか? オールドワンかと思ったけれど、また少し違うんデスネ。イジメ。仲良しサンかと思ったのですが、違うのか。胸焼け、良くないですケド、でも、開くの。見てみたいナァ。変なもの、仕舞いませんカラ。ね、ね。(わくわくそわそわ)
(言いつつお肉ももりもり食べながら)(ハッ、となにか思い出した様子)
ソウダ。狩人サン。さきほどなにか言いかけませんでしたか? コトバ、忘れちゃうのは勿体無いですカラ。思い出したら聞かせてくださいネ!
お肉たべるわ、ありがとう。アルエットよ。よろしくね。
(焼けた肉を受け取り、短い祈りを口にした後、小さな口でぱくり、ぱくりと頂く)
美味しいね。
その『爺』呼ばわりは慣れんのう~。
オレぁ≪リースリング≫の中じゃあそれなりに若い方なんじゃぞぅ。
(と口を尖らせるも、ふ、と吹き出し、)
良かったのう、篝よ。リュカシスも開けて見せてほしいとよ~。
(いつでも放り込めるぞ、と手の上で欠片を跳ねさせる。
 ――と、少女の言葉に振り返り、)

おう、アルエットじゃな。
……オマエさんがたはようそれをするのぅ。『信心深い』というやつじゃな?
(祈る姿をしげしげと眺め。)
美味いか、そりゃあよかった。ようお食べ。

……ん?それで、オマエさんは誰じゃったかのう~?
(篝、リュカシス、アルエット。
 そういえばもう一人の名前は聞いたのだったかどうだったか。
 思い返すのも面倒がって、そう問いかけ。)

(*このあと、末尾00~29で鍋は煮えすぎ、30~59で頃合いなことに誰かが気付く。)
(羽翼人の少女に、宝石好きの意志持つ陶磁器。黒鉄の少年に、耳馴れぬ音を持つ外の者。疑心も躊躇いも無く名乗り合う彼等に倣う勇気が、足りない。黒鉄の少年が無垢な瞳で以って齎す言の葉には曖昧な頷きを返す事しか出来ず。紡ぎ損ねた言の葉を、肉に歯を立てる事で飲み込んだ)
(――の、だが)

もごっ。

(『人形』が、ともすればヒトよりも余程感情を溢れさせて隅に身を寄せていた自身に泣き付いてくる。此方に振ってくるとは思わなかったらしく、肉を頬張り乍らの驚愕は篭って妙な音になった)
(いじめられている。石が、いやいや宝石が好き。中に。胸の中に、しまう?服や鞄の中では無く?)
あなたは、宝物を自分の中に入れるのか。
(何が何やら良く分からない。理解の範疇を超えた彼等の遣り取りに大量の疑問符を浮かべつつ、)
あ、いや、ええと。……ごめん。私は、……その。『ニンゲン』以外に出会った事が、殆どない。だから……私以外にも、『ニンゲン』でない生き物はたくさんいるものなのかと。すこし、驚いてしまって。
(言葉を選ぶ。失礼に当たらないだろうか。彼等が不快感を覚えはしないだろうか。田舎者だと、笑われるだろうか。顔を俯けた侭、逡巡する事暫し)

……『夜鷹』。

(皆は自身をそう呼ぶのだと。おいおいと泣き真似を続ける人形を背に庇い乍ら小さく呟き)
(誰と視線を合わせる事も出来ず、鍋に視線を向ける。ちょっと、いやかなり、ふきこぼれそうではないだろうか)……あの、(鍋。次いだ音は、果たして火の主に届いただろうか)
だ、だァから俺は、迷子じゃなくてェ、其の――。
(迷子仲間が居たとて、背伸びがちな矜持で相も変わらず誤魔化さんとして。エーリカの背に身を縮こませ様とし乍ら、其の選ばれた言葉を聞けばぱちりと瞳瞬き。其れから、二マリと笑い)
ははア〜ん、成程ねェ。人間ばッか見てンなら、俺達は物珍しいだろねェ。俺はリュカシスの言う様に此の世界のオールドワンでも無いし。寧ろ脆さから言や正反対の"旅人"だし。尚更に。 ……へへェ、そうさ。俺は胸が開いて、其の中に宝石を入れンのさァ。何せ、――宝石箱≪コフレ≫だからねェ!
(と、得意げに指先で柔く叩いた胸からは、微かに金装飾が揺れて鳴る音が聞こえるかもしれない。)
見たい? 見たい? 仕方ないねェ〜〜。其処の口調から若ぶりがてンで伺えない爺ィの手元、ちゃアんと見張ッとくンだよゥ!
(跳ねる欠片を見咎め乍ら、軽く押した胸がカチリと音を立てる。身体から浮き存在を露わにする蓋が取り去られた後には、奇妙な空間が広がっていた。)(其処に、煌めく宝飾達がたっぷりと詰められている。)
俺の御気に入りはねェ、篝火みたいな色のやつさ。 篝火、……ン!そういや、食いそびれてたねェ。アルエットが美味いッてンなら、問題無さそうだし――ッア"〜〜!リザシェ!鍋!なァ〜〜べ!
(次いで、見た鍋に。先人の発見者よりも騒ぎ立て)
信心深いのかな? パパとママが食べる前にはこうしなさいって言ってたから。
(リザシェの言葉に小首を傾げるアルエット。短い祈りの際、心の中で発する言葉の意味を理解しているわけでは無い様だ)

(篝の独特なしゃべり方に引き寄せられて、じっと魅入られた様に見つめていたアルエットは彼の大声にとても驚いて、羽を大きく広げてしまう)
……ひゃわ!?
夜鷹サンですか。格好いいお名前ですねえ。
アノネ、そのビックリ、とっても分かります!ボクの国にもオールドワン以外の方も居ましたけれど、それでもたくさんいらっしゃるのでは無かったので、呼ばれた日から、ビックリは尽きません。尽きませんけれど、楽しいコトばかりですヨネ。
見たいデス! え、手元? リザシェサンの手元ですか?……ハイ! これでバッチリ。
(あっちを見たりこっちを見たり、これならひとまず見張れるか、と、石版ごと店主さんの手をにぎった) (おもいのほかちからがつよい!)
(そして。見せて貰った胸の中を覗き込んでキラッキラに目を輝かせている)
わあ。すごいや。すごいや。綺麗だねえ。こんなに綺麗なトコロ、初めて見ました。篝火! ひときわ赤いものデスね。ほんとうに、篝サンのお気に入りというの、分かる気がします。
……お鍋? ワ、ホントだ! こげ臭い気がシマス! まだ間に合いますか?
ほ~。ヨタカと言うのかえ。鳥の名前なんじゃの~。
(まるきりそれを名前だと思い込み、ふむふむと頷いているうちに、
 いつの間にかリュカシスに手の内の石板ごと握られ、)
にぎゃーーーー!!痛い!あほう!ばかもん!はげ!花なし!
(思い付く罵倒を次々と並べ立てつつ腕をぶんぶん振って逃れ、
 ぴんと立っていた尾がようやく垂れる。)

(と、篝が何やら騒いでいる。)
む?……おお~、いかんいかん。
(鍋を火から下ろし、杓子でかき混ぜ。
 ごりごりと底から何かを剥がす音がする。)
底がちと焦げ付いたようじゃが~……ま、いけるじゃろ~。
(ごろり鹿肉と根菜と共にところどころ薬味とお焦げの浮くスープを、
 木の深皿やジョッキ、小ぶりの壺、広口フラスコによそって木の匙とともに出す。
 普段人を招くことが無いらしく、馬車の中から寄せ集めてきたらしい。)
(さぞや珍しいだろうと。にんまりと猫のように目を細める意思持つ陶磁器。気を悪くしただろうかと不安げにフードの下の双眸を彷徨わせたものの、次いだ言の葉に。それよりも――)

……わ、ぁ。

(感嘆。嘆息。炎のあかりに照らされて、其の”中身”が良く。とても、良く見えた)
(きらきらと輝く七色の宝石たち。耳にした事も、見た事も、想像した事すら無い、”誰が為の宝石箱”。言葉を忘れて、暫し呆然と篝の”中身”を見つめ)
(すん、と鼻を鳴らす。篝に気を取られていたが、篝火の主が鍋の状態に気付いた事を知れば未だ自身は空腹の最中にあった事を思い出した)
(黒鉄の少年が人懐こい笑顔を浮かべて此方に視線を寄せてくれる度、此方は俯いてその視線から逃げてしまう)
(敵意も嫌悪も無い。が、どんな態度を以ってして他者に接したら良いのか、影には其れを知る術が無かった)

(楽しいことだなんて。自分には、何一つ――)



(逸れ掛けた思考は篝火の主の悲鳴で現実に引き戻された)
(ほわほわと湯気の立つ小ぶりの壺は食器と言うには豪快な代物ではあったが、これはこれで悪く無いものだ)

ありがとう、リザシェ。……ええと、リュカシス、も。
いのちを、もらってきてくれて。ありがとう。

(いただきます、と。小さく添えてからスープを口に運び始め)
――ン、ア、〜〜ッハッハッ!
やァい、やい! お前さん、俺を虐めるからバチが当たッたンだよゥ!俺は忘れないよォ……寝惚け眼に胸漁ッて頬寄せたのが石ころだッた時の、あンの虚しさ!
(全くの私怨を全く自身で返しもせず、リザシェの叫びに一人で誇らしげにきゃいきゃいとはしゃぎの。 している間に、胸から転げそうな宝石に気付いて掌添えて)(賛辞や感嘆には陶器仕立てとは思えない程に頬をゆるっと緩めて)
エッヘッヘ。そォだろ〜〜?
もッと良く見て、もッと褒めて良いンだよゥ。何時でも見せてあげッからねェ。何たッてェ、俺の御自慢の宝石箱は褒められ足りてないからさァ!
(と、スープがちぐはぐな器に注がれるのを見れば蓋を慌て閉め。ぶわっと広がる羽には、パチと瞳を瞬き)
ン! おやァ、アルエット。驚かしちまッた? ごめンねェ〜〜。でェも、御覧!スープはギリ――守られたみてェだ。お前さんも食べて、盛大な宝石が似合うまでに大きくなるンだよゥ〜〜。
(ニマニマと人懐こく笑い。自身もと、頂きますを告げれば壺に口つけて)
ウ”ッ。焦げに当たッちまッたァ!
(ぎゃあ、と悲しい嘆きをひとつ。)
花なし、デスカ? ボクは鉄ですカラ、花は咲かないんです。
(かわいらしいワードに一瞬怒られたと気づかず)
(わわ!と慌てて手を放し。折れてないですよね?と覗き込んだりおろおろとしている)
(聞こえてきた篝さんの大笑いにホッとしたようにつられてわらった)

ウッカリ、です。痛くしてゴメンナサイ、リザシェサン。次の時はやさしく掴みますからネ。篝サン、宝物見せてくれてありがとうございます。とっても!素敵デシタ。ゼヒゼヒ、また見せてください。ボクも綺麗な宝石を見つけたら、またお届けに行きマスネ。

あ!大丈夫でヨカッタ。いただきます。
フラスコでスープ飲むのッテ、はじめて。特別感がありますねえ。
(嬉しそうにいただきます、と再び)

(と)
(夜鷹さんとあまり目が合わないと気が付き)
(フラスコを持ったまま、視線の先に回り込もうとそわそわゆらゆら)
(……なかなか難しい。)
(ガシャンと立ち上がると、ドスンとお隣に座り込んだ)
(お隣さんからはじめよう作戦)
(”コフレ”にとって、”見られること”と”愛でられること”は存在意義のようなものなのだろう。言葉通り本当に胸が開いた事には大層驚いたが非現実的な其の光景は素直に美しいと思ったし、またの機会を与えてくれるならば、其の時は、このきれいな宝石箱をもっと素直に褒め称えよう。何時でも、と屈託無く告げる声に、小さく小さく頷いて)


(がしゃん、どすん!)
(黒鉄の少年が此方を伺う視線に気付いてはいたが、どう返したら良いか分からずに黙々とスープを口に運んでいたら。少々賑やかな音を立てて堂々と座り込む豪胆さに、ぱちぱちとフードの下に半ばを隠した氷の様な蒼が瞬いた)

……どうしたの。

(歳の頃は自分よりも片手ひとつぶん位は幼いであろう少年を邪険に扱う事は躊躇われたのか、出来るだけ柔らかい声音で。おしゃべり上手なら、ほかに――言い掛けて、止まる。幼いその姿に自身の卑屈さを露呈させる事が躊躇われたからだ)
(かと言って気の利いた言い回しや軽快な冗談が言える程器用でもない。そろそろと遠慮がちな視線で以って少年に問うて)
(どうしたのと言われれば、深い考えがあるのではなく、しかし、なんとなくですと返すのも楽しくない。でも馴れ馴れしいのも気を遣わせそうだ)(と、考え。考え。)

えっとね。席替え、デス。ときどきすると楽しいんですよ。ソレだけ。ソレだけ。

(満足そうにソレだけ!を何度か繰り返し)
(スープにしばしの集中。フラスコの底に沈んだ具材をとり出そうと四苦八苦している様子)
(席替え。楽しいこと。繰り返し”ソレだけ!”と主張する少年の懸命さに、ふ、と小さく吐息を零し)

私は、黒鉄のあなたよりも、暗い、昏い夜の色を纏っているから。
あまり近くに来たら。ふたりとも、宵の空に溶けてしまう。

(もしもそうなったなら。手を伸ばさずとも星と寄り添う事が出来るかもしれない、なんて)
(内緒話のように囁いて、緩く首を傾いで見せた)
(影は変わらず顔の半ばまでを夜色のフードで覆い隠していたけれど、覗く口元はほんの少しだけ笑みを形作っていた)

(あなたと私。性格はきっとまるで違うけれど――色だけならば、ちょっぴり似ている)
(言ってから気恥ずかしくなったのか、再びついと視線を逸らし)
(やわらかな気配を感じ、笑ったのかなと、話す声にみみを傾け) (それがあまりにもすてきなことばの集合だったものだから。……ただひたすらにぽかんとした間抜けな顔をしている)

夜鷹サンは、物語屋さんデスカ?

だって、あんなステキなふうに! 国語の先生だって、あんなにステキなふうに、ことばを掛けてくれることはありませんよ。えっとね、ビックリしてしてしまって、ゴメンナサイ。
心配してくれたッテことですよね。大丈夫、大丈夫ですよ。ボク、コワイもの以外なら、何でも見てみたいんですもん。
へへへ。でも。そっかあ。色、チョッピリ似てますねえ。黒い鉄で良かったなア。

(せっかくのないしょばなしにもかかわらず、嬉しくていつも通りの声量で喋ってしまうのだった) (それにも気付かず、へへへへ、と、ほっぺたゆるみっぱなしのニコニコ顔)
ものがたりやさん?

(スープをふうふうと冷まし乍ら、黒鉄の少年の問いに首を傾ぐ)
(輝きを増した満月のような双眸に、興奮気味に矢継ぎ早に告げられる言の葉に、呆気に取られたらしく瞳を瞬かせ)

私は、ただの夜鷹。それ以上でも、以下でもない。
でも……。

(つい、と指先を宙に浮かせれば、夜露を求めて舞う蝶がひとひら影の指先に止まる)
(青白い鱗粉を纏った其れを、少年の鼻先にそろと寄せて)

『もしもし、そこの素敵な紳士さま。すこし、お水を分けてくださいませんか』

(僅か声音を落として告げる音は、”彼”の代弁だ)
(蝶は僅かに羽を揺らすだけで、影の指先から飛び立とうとはしなかった)
ナルホド。それ以上でもそれ以下でも無いッテ、格好いいですね。丁度いいまん中ということでしょうか。
ボクもパーツをつけるときは丁度いいまん中じゃないとうまく行かないの、だからチョット分かるよ。まん中はいいことデス。

……?

! ! !

(あまりにぴったりと沿った様子に夜鷹さんを見たり蝶を見たり周りの方々を見たり、精一杯音を立てないように、でもバタバタとあちこち見渡している)
(みず、水?)
(そうだサックに入れていたはず! と 水筒を取り出して、慌ててお水注いだコップを夜鷹さんと蝶の方に差し出した)

(これでいい?……小声でそっと聞いてみた)
そう、真ん中。……パーツを、つける?

(絡繰仕掛けのオートマン。鉄騎種たる少年にとって其れは食事をとることと同義なのかもしれない)
(然れど耳慣れない其の文面に、影はことんと首を傾いで、物言わぬ問いを投げ掛ける)

……ふ、

(慌てる仕草に、其れでも蝶の”おうかがい”に応えようとする少年の姿に微かに笑みを零して)
(内緒話のように囁く声に、指先に止まっていた蝶がひらりと離れて――少年が支えるコップの縁に止まると、口吻を伸ばして水を吸い始めた)

『ああ、おいしい。ありがとう、やさしい紳士さま』

(其の瞳にやわらかな色をうつした侭。影はそうっと、”彼”の言の葉を紡いだ)
うんそう。パーツ、デス。
……?
(不思議そうな視線に、そうか、ガシャンと手を打って)
ボクは手足のパーツを交換して、強くしたり改造したり、できるんデス。取れても、痛くないんだよ。
オールドワンにもいろいろ居ますが、ボクの家族はそうなんです。面白いデショウ!
(へへ、と、どこか誇らしげに自分の手足を指差しては一生懸命説明している)

ハイ。どうぞどうぞ!
(水を飲む蝶々の様子にほっとした顔をして)
良いんですよ、良いんデスヨ。たくさんどうぞ。
(しばらく呼吸も小さくひそめながら見守った後。ふわと飛び立つ蝶々に手を振った)

……ね、夜鷹サンは、蝶々とお話出来るんですか?
ダッテ、ボクひとりではこんなに仲良く出来たことないですもん!
(すっかりヒーローを見るこどもの顔をしている)
交換……すごい。
あなたは、あなたたちの家族は。そうして、自分を磨いていくの。

(見た目も、少しずつ変わって行くのだろうか。人間で云う成長のようなものなのだろうか?)
(少年の黒い肌は如何にも硬く冷たそうではあったが、熱っぽく語る其の姿は自分よりも余程あたたかい血の通った存在に映った)

『ごちそうさま。これで夜が明けるまで、飛んでいられるよ』

(去り際、蝶が告げてくれたことのはを唇に乗せて)
(瞳を輝かせ乍ら此方を見つめる少年の姿に、こくんと小さく頷いてみせた)

内緒だよ。
……草、花。動物、さかな。それから……蝶々。てんとう虫だって。
私には、みんなの声が聞こえる。
みんなに、声を届けることも。

(ヒトとお喋りする事は苦手なのだけれど)
(此れは自分だけが出来る唯一の特技なのだと、声を潜めて囁いて)

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