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捩れ木の匣

ある夜、森の入口。

ある夜、森の入口。
すでに陽も遠く涼しい風。虫の歌声が聞こえている。
家馬車の脇でおんぼろ外套が火を焚いている。
石の輪の中、串に刺された肉が焼ける香りが煙と共に上がる。
君は焚き火に加わっても良いし、足早に通り過ぎても良い。

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(森を駆け、木々を渡り、獲物を追い――残ったのは、空っぽの矢筒と喧しく泣き喚く腹の虫だけだった。所謂、坊主である。干し肉はとうに尽きていたし、人里のあかりも遠い現在地。今日は食事にありつく事は出来ないだろうと諦めかけていた、そんな時だった。夜風に乗って漂う、香ばしい肉の焼ける香りが鼻先を掠めたのは)……、

(ぐう。)

(他者へ声を掛ける事を躊躇ったのは一瞬。自分が口を開くよりも早く、腹の虫が篝火の主と先客に自身の存在を知らしめてしまっただろうから)

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