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捩れ木の匣

ある夜、森の入口。

ある夜、森の入口。
すでに陽も遠く涼しい風。虫の歌声が聞こえている。
家馬車の脇でおんぼろ外套が火を焚いている。
石の輪の中、串に刺された肉が焼ける香りが煙と共に上がる。
君は焚き火に加わっても良いし、足早に通り過ぎても良い。

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あの、……こんばんは。
(影は漸く唇を開く。目深に被ったフードのせいで、其の身を隠す闇色のせいで。男なのか女なのか。大人なのか、それとも子供なのかすらも判別に難かっただろうが、零れ落ちた高い囀りは影が年少、少なくとも言語を扱う事の出来る生き物である事が幾許か彼らに伝わるだろうか)
出会い頭にこんな事を頼むのは失礼だと承知の上で、頼む。……何か、食べるものを分けてくれないか。
(狩りが上手く行かなかったのだと添えた直後。聞き慣れぬ、金属同士が打つかり合うような音を耳が拾えば音の方角から一歩飛び退り)

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