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捩れ木の匣

ある夜、森の入口。

ある夜、森の入口。
すでに陽も遠く涼しい風。虫の歌声が聞こえている。
家馬車の脇でおんぼろ外套が火を焚いている。
石の輪の中、串に刺された肉が焼ける香りが煙と共に上がる。
君は焚き火に加わっても良いし、足早に通り過ぎても良い。

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(人の形をした其れは、暗い森を一人歩く。洋燈のオイルは遠の昔にすっからかんで、夜の森を照らす灯り何て今や月だけだった。勿論、其処には望んだ宝石の煌めきだってない。唯々意味も無く時間を浪費したのだと思えば、足音の軽さに反し足取りは酷く重い。道さえ解れば早々に帰りたかった。解らないから、誰ぞやかの夕餉の匂いを頼りにせざるを得ないのだけれど。)
(そうして、暫し歩いた先。漸く見えて来た焚火にあかるく照らされた場所は、随分前に見た覚えがある。入口だ。実に喜ばしい。けれど、其の近くに添う馬車の方にも"見覚えがある"と気付けば、其れの表情は思い切り歪んだ。何とも複雑な表情だった。解りやすく言い表すならば、)
げエッ。
(――そう。「げエッ」って感じだった。)

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