シナリオ詳細
<Stahl Gebrull>Go ahead.
オープニング
●<Stahl Gebrull>
――アーカーシュを巡る騒動は遂に決戦を迎える。
アーカーシュの最高権限(システム・メタトロン)を奪い取ったパトリック・アネル大佐は、アーカーシュそのものを掌握した。それは、アーカーシュに広がる古代兵器群が彼の管理下に置かれた事も意味する……
ゴーレムの多くが彼に従い、敵を排さんと動き出しているのだ。
――いやそればかりかパトリック大佐は超兵器たる『ラトラナジュの火』をも手に入れた。
それは魔王とされる存在が求めたソレは、街にでも当たればまるごと吹き飛ばす砲撃兵器……既に幾度か放たれ地上では凄惨たる被害が確認されている。
そして。大佐はその超兵器を伴って、アーカーシュを帝都方面へと進めた。
自らを次代の『鉄帝国皇帝』と称して、だ。
……彼は魔種へと堕ち、最早正気ではなく。
しかしラトナンジュの火がもしも帝都に落ちれば――只では済むまい。
故に鉄帝国は現地の兵力を動員し、更にイレギュラーズ達にも依頼を出す。
パトリック・アネル大佐と、それに抗するイレギュラーズ達。
その戦たるや如何に流れるか。
『鋼の咆哮(Stahl gebrull)』と呼ばれる作戦が――今始まろうとしていた。
が。
「まぁ『どっち』だろうが関係ないんだよ。分かるだろう――?」
その、アーカーシュが一角にて。
今より始まる死闘の決戦の空気などどこへやら。
煙草に火を点け、天空のアーカーシュの絶景を眺める者が――いた。
……いや一人ではない。その他にも幾人かの影が窺えて。
「特務の大佐殿、か。随分と熱心に皇帝の地位を目指すもんだな」
「なにがしか強い想いってヤツがあるんだろうさ。ま、俺達は言われた事をするだけだ」
「へいへい。大佐殿にお味方、ね。どーせイレギュラーズが来るんだろ? 歯ごたえありそうでめんどくせぇなぁ」
彼らは、往く。なにがしかの思惑を抱きて。
特務大佐――パトリック・アネルの行動を支援するべく。
……そして実際向こうからも味方と認識されているのだろうか。彼らはパトリック大佐への道に防衛線を敷いているゴーレム……セレストアームズの大群から攻撃される気配はない。彼らは何者だろうか――パトリック大佐の指揮下にあった特務派の軍人にすら見えない、が。
一方で只の物見遊山であるとも感じ得られなかった。
いずれもが強靭なる肉体を携えて強者らしき者達。
ラド・バウにでも出ていればそれなりの層に行けるのではないだろうか――
そんな気質を携えているものだ。
「『戦争屋』の旦那――そろそろ行くぜ。出番の時間だ」
「あぁ。もうんな時間か……さて。ちったぁ面白い事になれば良いんだがな」
そして。彼らの内の一人が、奥に佇む男に声を掛けた。
さすれば動き出すは狼らしき獣種の特徴と。美しくもどこか濁った紫の瞳を携えた人物――
彼らは赴く。イレギュラーズとの交戦を、望みながら。
彼らは往く。己らが『役目』を――果たす為に。
●
「イレギュラーズ――来てくれて助かった。
既に聞いている者もいるだろうが、改めて意識を共有しておく。我々の目的はパトリック・アネルの暴挙を止める事だ。奴は次の鉄帝国皇帝を自称し……アーカーシュを帝都方面へと進めている」
言うはゲルツ・ゲブラー(p3n000131)である――アーカーシュ各地より低く鳴り響く爆発の音は戦闘の気配だろうか……彼が言うには、この先にも敵の防衛線が組まれており、大佐の下へ赴かんとする者が在らば容赦なく排除せんとしているとか。
「万が一アーカーシュが帝都に到達すれば、奴が見せた『ラトラナジュの火』が落とされるかもしれん。そんな事は絶対させる訳にはいかない――だからこそお前たちには、この先の防衛線の突破に協力してもらいたい」
「敵の戦力は?」
「主力となっているのはセレストアームズという古代兵器共だ。
ゴーレムの一種と言うべきかな……完全に大佐の管理下に置かれている。
これに対して我々は帰順した特務派軍人も含めた戦力で対抗するが、数が足りない」
特務派軍人――言うなればパトリックに従っていた軍人達の事である。
……が、彼らの多くは魔種として狂っているパトリックに嬉々として従っていた訳ではなく、軍人としての指揮系統を遵守したに過ぎない。前回の戦いを経てパトリックの狂気を理解した者達は彼から離脱し鉄帝国側に戻って来た――
国やイレギュラーズと敵対してしまった罪滅ぼしが故か、彼らも勿論戦線に参加するつもりのようだ、が。
しかしそれでも戦力が満足とは言い難い様であった。
「……なにせ此処は絶海の孤島……いや、絶空の孤島と言うべき場所だからな」
可能な限りの戦力は掻き集めたが、とゲルツは言う。
……やはりパトリック大佐が行った『ラトラナジュの火』の威力が誰しもの目に焼き付いているからだろう。あんなモノを帝都に落とさせる訳にはいかない――その意識が可能な限りの戦力を此処へと集結させたのだ。
しかし。アーカーシュは天に浮かぶ島であるが故にこそ各地の基地から幾らでも……とはいかなかった。走って来られる場所ではなく、天に座す孤立した島なのだから。現有戦力で何とかするしかない。
――故にこそ一騎当千たるイレギュラーズ達こそが頼みの綱。
敵の防衛線を粉砕し、大佐への道を切り開いて欲しいと――さすれば。
「ハーハッハッハ! 此処か此処か、イレギュラーズが集まっている陣地と言うのは――
おっ! やっぱりいたかマリア! 人々の危機に際して集うとは、流石だな!!」
「わぁ!? ヴォルフ、どうしてここに……って、神夜も!?」
「――偶然だが、我々もこの近くの地上にいてな。
……あのように街が消し飛ばされる様を見て座してはいられなかっただけだ」
マリア・レイシス(p3p006685)の下へと集って来たのは、彼女の知古の間柄であるヴォルフガング・ヴォルフィードに輝龍 神夜であった。かつての世界における同胞たる両名は……偶然にもノイスハウゼンの近くにいたらしい。
――ノイスハウゼンと言えばラトナンジュの火の試し打ちに使われた街だ。
試し打ちだったからか、狙いが逸れたのか完全破壊は免れたようだが……しかしそれでも甚大な被害があったのは間違いなく。斯様な非道を許せぬとした二人が、鉄帝で名高いマリアの名を使って鉄帝国の基地に赴き空路手段を確保したそうな。
「えぇ、なにしてるの!? 私の名前でそんな事を!?」
「あぁ――許せ!」
「うん、まぁいいけど! ふふ。二人が来てくれるなんて、心強いね!」
「マリィのお知り合いの方ですのね。確かに心強いですわ――
さぁ! 其れではこちらも……
パトリック大佐に操られている場合ではありませんわよ! 酒樽くん1号!」
『ガ……ガガ……! うう……お酒……デナい……!』
「出ないではありませんわ! それは大佐の陰謀!! 気合いですわよ気合――!!」
同時。にこやかに語るマリアの様子を見ながら、ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)が言を紡ぐのは、己に懐いているゴーレム『酒樽くん1合』――間違えた『酒樽くん1号』だ。
便宜上、彼と称するが――彼はこのアーカーシュで発見されたゴーレムである。
……故にこそ今、彼はアーカーシュを統帥する大佐の手中にある。辛うじての所でコントロールを奪取されずに抗えている様だが、一刻も早く事態を解決せねば、彼に待っているのは自らを起動してくれた恩人たちとの戦闘やもしれない。そしてそれは。
『マスター……ご命令……ヲ……』
「……奮起せよ。今はただ、それだけであります」
ハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク(p3p000497)に付き従うゴーレム、アレフゼロも同様の状況であった。彼にとっての『マスター』の認識がいつ書き換えられるか……その瀬戸際にてアレフゼロも懸命に抗っている。
さすればハイデマリーに出来るのはやはり――敵陣に圧を加え続ける事であろうか。
ゴーレムを自動で操っているかそうで無いか知れぬが、しかしいざや大佐自身に危険が迫れば、他所に気を配っている余裕がないのは間違いないだろう。
故にこそ、進もう。
この先にこそ勝利があると信じて。
アーカーシュの地は、鉄帝に必ず明るき未来を齎すのだと――信じて。
さぁ。防衛線を突破し、大佐の思惑を討ち果たすべく、今こそ進撃を開始しようか!
「……なんだ? なにか、妙な気配が混じっている様な……」
しかし。
渦中においてシオン・シズリー(p3p010236)には、胸騒ぎがしていた。
敵を倒し、活路を切り開く。
それはいい。だが、この戦場に広がる妙な気配はなんだ――?
パトリック大佐の狂った意図とは異なる『何か』が紛れ込んでいる気がするのだ。
異物と言うべきなのだろうか。今の所、なんぞやの姿が見える訳ではないが……
「……いやとにかく依頼なら果たさないと――な」
頭を振る。この先には大量の敵がいるのだから。
注意が散漫になる様な事は避けるべきだと……今は只、前だけを見据える。
己らが『役目』を――果たす為に。
- <Stahl Gebrull>Go ahead.Lv:30以上完了
- GM名茶零四
- 種別決戦
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2022年09月02日 22時21分
- 参加人数104/104人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 104 人
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参加者一覧(104人)
リプレイ
●
アーカーシュ攻略作戦。
天に在るその地を巡る攻防は佳境へと至っていた――
交戦は激化する、その中で
「……随分とまた揃えているね……命令に従順で殺意の高い兵器群を内蔵した機械兵器の軍隊とか……また厄介な……数も多く、統制されているのなら……指揮系統を潰すのが効果的かな……」
「ボクは正面からぶつかりにいくよ――ま、数が多ければ多い程狙いやすくもあるしね」
ラムダは冷静に戦局を窺っていた。敵の数は多く、特に中核を担う機将は厄介だと。
故にこそ、かの機将へと通ずる力は絶やさぬ様に立ち回る。
前面を担うロロンが、かつて喰らった強敵の成分を再現し彼方に走らせれば多くの敵を巻き込み薙ぎ払うが如く。そこへラムダの号令が届けば、ロロンを含めた味方の面々に戦いの活力が宿るもの。
敵が統制されていようとも、こちらも動きを効率化し抗ってみせようではないか。
「進めェ! 味方を少しでも進ませて敵をぶっ壊せや!
数がなんだ! むしろ多い程燃えるってもんだろ――怖気づいた真似なんざ出来ねーよなぁ!」
「あぁあぁ……依頼を受けて遠いお国に来てみれば、本当に『ろぼっと』が沢山ですね! 右を見ても左を見てもより取り見取り……どれを叩き壊しても良いと? あぁそれは――非常に、血が滾る!」
続け様、後方に位置するリサは息を整え集中と共に敵を補足する――
無数に飛び往く鋼の驟雨が敵を穿てば、同時に周囲の味方を鼓舞する様に声を張りあげよう。敵の数が多いからなんだ。そんなのはいつもの事であると……さすれば孤屠もまた、波の様に押し寄せる戦力に、むしろ口端を吊り上げるもの。
滾るは心の臓か。闘争の本能か。
いずれであろうと破壊する。手当たり次第に、彼女の卓越した槍技をもってして――!
「串刺しになりたい方から、えぇどうぞ。遍く全てこの槍は受け入れましょう――!」
一突多殺。これが、私の武であるとばかりに。
如何なる装甲であろうとも貫いてみせよう。
「アーカーシュを、奪おうと、するなら……絶対、許さない、の……っ!
此処はもう……誰か一人の為の、場所じゃない……!
どうしても、止めないなら……そんな事する奴全員……殺してやる……!」
更にまるで滝の様な殺気を垂れ流しながら往くはアクアである。
彼女が見つけたクロワタ達。ふわふわで、臆病な彼らや……その他にも生きる生物たちが沢山いるというのに。彼らはソレを奪うのか? 平穏を乱し、クロワタ達を踏みつぶすつもりか――?
赦さない。イレギュラーズ達の攻勢に乗じる形で彼女はセレストアームズを薙ぐ。
特に狙うは攻撃が集中している個体だ――
一機ずつ確実にスクラップにしてやる。心臓は? 動力部は? コアは?
必ず弱点がある筈だ。
「ただのガラクタの分際で邪魔をするな! さっさとゴミクズと壊れろッ!!」
傷が増える程に獰猛となり得る業と共に。
彼女は全霊たる一撃を――振るい続ける。
「これほどの数の古代兵器がいるとはな……だが。生きた存在よりも、機械相手って言うのはまだ気楽なもんだ――って言ったら緊張感がないか?」
「分からないでもないけれど、ウィルくんはどんな状況でも無茶しいだから、ずうっと心配だよ、わたし!」
「……隣にパートナーが居るからな、不安はないさ」
「もう! パートナーじゃなくて彼女って言ってくれる?」
あぁすまないな、と。魔力を収束させながらコルクと話しているのはウィリアムである。
二人は共に在る。どこまでも、いつでも。あぁ――
――一緒に行こうぜ、エト
――勿論! ウィルくんのエスコートなら、どこへだってついていくわ!
眼を交わすだけで意思が疎通される程の絆と共に。
直後に放たれるウィリアムの魔道。飛翔する個体を狙いて超常の魔光が放たれる――であればコルクは、斯様なウィリアムの砲撃に注意の目を向ける個体達を迎撃せしめるものだ。打ち砕かんとするばかりの勢いで、襲い来るセレストアームズ達を撃滅する。
「大丈夫か、エト? 無理はするなよ」
「もう、なぁに! 平気だってば!
ウィルくんの背中を守るのはわたし。心配しないで、前だけを見てね」
互いを護る様に布陣する。背と背を護る様に。互いの心配をしながら、しかし……
(――信じてるよ、わたしの一番星)
信頼に固められたその姿に――崩れそうな気配は一切ないものであった。
「俺は、いや、俺達はこんな所では止まらねぇ!!
ただの傀儡となってる連中如きがどれだけ押し寄せてこようが――
テメェらは通過点で有象無象なんだよッ!」
「パトリック……情けないわね。反転したばかりか、強い兵器を得ないと皇帝も名乗れないなんて――その上でこんな人形ばかり配下にして、誇りはちゃんとあるのかしら?」
更にセレストアームズを狙っているのはオランやリエルも、である。
オランは三感を研ぎ澄ませ、全方位を警戒しながらも――闘争の意は分散させぬ。足音、目線、血の匂い、音……あらゆる情報を精査し、襲い来る者共を打ち倒すのだ――あぁこんなガラクタ共に負けてたまるかと!
同時にリエルは、こんな連中を操っていい気になっているパトリックへ思考を巡らせば、吐息を零すもの。アーカーシュ古代遺跡に通じる血筋も、反転出来たも、他者あってのもの……彼の行動は全て、他力本願極まる。
そんな様で何を収めるつもりか――まぁ、いい。
「イレギュラーズになってわかったのは。
この世界の強さは愚直に努力すれば得られるということよ!」
彼女は魔力を収束させ――閃光を放ちて敵陣を乱すものだ。
剣に激流を纏わせソレを放出する様に。アームズを叩きのめし、踏みつけ先に進まん!
「ふぅむ。中々の数じゃのう……とはいえワシらが居る限り、正面突破は容易じゃないワイ! 来るなら来てみせよ――! ワシらの底力というものを存分に見せてやるからの!!」
次いでオウェードは後の先を取る様に。斧を振りかざすセレストアームズへ撃を一閃。
正面から叩きつけるのはワシの得意分野じゃよ――負ける訳にはいかんの。
「さぁ次はどいつじゃ? かかってくるがいいぞ!」
彼は敵を己が名の儘に粉砕せしめん。
最前線で戦うその様は正に威風堂々――危険な味方から注意を逸らすように、彼は往くのだ。
「正念場、ってところですか? ちくっとしますよ――ですが大丈夫。
痛みもすぐに終わります。百発百中、挫けぬ魔弾……ってね!」
「たかが相手の百や二百……全て斬り伏せてやります。この程度の数など如何な問題でしょうか!」
そしてオウェードなど前線を担う者を迂回し、横からイレギュラーズを突かんとする個体がいれば――コヒナタが狙い穿つものだ。フレンドリーファイアせぬ様に、冷静に狙い定め……引き金を絞り上げる。
敵を撃ち落とすように。されば、バランスを崩した個体へとボディが一閃。
そのまま跳躍し、数が多い敵陣の波へと赴こうか――
連中を一手に引き受ける。真正面からぶつかりて、数多の撃紡がれようと知った事か!
「あぁ。爪牙も白刃も銃弾も、その攻勢能力は素晴らしい。
数を以て防衛線を築くのも実に良い――まっこと、見事な手腕と方針でしょう」
だが、しかし、まるで全然!
「――私に傷をつけるには程遠い!」
ボディは往く。数多の撃を受けても尚平然とするほどに。
数だけ揃えようが――そんなもの。私の前には一切合切意味を成さないのだと教えてやる。
「正面戦闘か――望む所だ。俺にとってはこっちの方が性には合ってる。
行くぞ。崩せるものなら崩してみろッ……!!」
「魔種ってのはこんなにも世界に溢れてるもんなのか――? ったく、世界てのは広いもんだぜ……」
そして。なんとかしてイレギュラーズ達の前線を押し込まんとする敵共を抑えるのは、フレイにジェラルドだ。黒き稲妻を顕現させ、穿ち貫く轟音と一閃あらば、多くの目がフレイに向くもの――そうして至る攻撃を彼は全霊をもって受け止める。
同時に己が体に防の加護も齎しながら、だ。
さすれば正に鉄壁が如き堅牢さが其処にある――
ジェラルドも同様に、味方に危険な撃が至る事を察知すれば壁代わりへと。やれやれ全く……少し前まで遊びに来てた鉄帝も怒涛の戦火に塗れるとは、想像だにしていなかったものだ。そしてその裏には――なんだ。魔種がいる?
「ペイトから出るまでは信用無かったが……実在するたぁね。俺もいつかあんなもんんいなっちまうのか――? いや。まだ死ねねぇんだ……化け物に成る訳にもいかねぇよ。見守りてぇヤツがいるからさ!」
さりとて。彼は強き意志と共に在るものだ。
死なないし狂わない。夢見る明日があるのなら――それを糧に今を生きるのだ!
「迂回班の方々が前線に到着するまで、今少しの時が必要でしょう……!
故にこそ私達の役目は、敵の気を引き続ける事――!」
続けてジュリエットもまた前線の一角にて奮戦しているものだ。
敵の数は多く、中々困難な状況……であるが故にこそ立ち回っている別班がいるのであれば、その者達の助けとなるべく決意を露わに。むしろ気を引き付けるだけでなく、ハイアームズの倒しにもかかろうか――
上手い事指揮官型を倒せればそれだけで楽になる筈だと。
「恨みはごさいませんが、お覚悟下さいませ!
生憎とこのような状況で……手加減など、出来ませんが故!」
彼女は視線を巡らせつつ――魔弾を射出するものであった。
「今回もまた、大きな戦場だね。うん……でも。
何処に行ってもやることは同じ。照準を合わせて、引鉄を引く――
私は、私の役目を果たし続けるよ」
そして銃のチェックを済ませたハリエットは、丁度良い物陰から戦場を狙い定める。
キューブとキューブの狭間にて。気持ちを変に昂らせず、静かに。
平常心を保ち――銃口を静謐に保つのだ。
「……そこッ!」
引き金を絞り上げる。特に狙うは、セレストアームズの関節部などであろうか。
一体一体着実に。狙った獲物は逃さず――貫き続けて。
「いけドン! 死亡上等は魔法の合言葉ッ!
姓は岩倉、名は鈴音ッ……! 寄らば癒すぞ者共ぉ~~! 寄らなくても寄って癒すぞ!」
と、その時。
なにやら名乗りを上げながら戦場へと赴くは――鈴音だ! 彼女はワイバーンに騎乗しながら正面より戦いを挑むイレギュラーズや鉄帝国友軍たちを治癒にて援護していく――!
ンッフッフ♪ 茶ァ飲んで冷静さを保っておかないとな。ンッフッフ♪
「斃れる時は前のめりに歌舞伎ながら斃れろ、ばっちゃが言ってた。
おーっと! しかしそうそう簡単に癒し手を落とせると思うなかれぇ~~!」
しかし。斯様に目立つ行動をしていれば敵からの集中砲火もある……のだが。治癒の術を各地に振りまけども、防御重視の彼女は存外にしぶと――失礼、かなり耐え忍び健在であった。なんなら雑魚アームズには返しの一撃紡ぐ余裕があるぐらいである――いえーい!
「激しい戦いなのです……でも、ニルは……みんなで帰らなきゃいけないと思うのです」
そして。治癒の術を巡らせているのはニルもである。ニルは、イレギュラーズ達よりも……各地で敵を押しとどめている鉄帝国軍人達の方へと赴き、皆を治癒し、鼓舞している――
みんなみんな、立っていられるように、ちゃんと帰れるように。
「ニルはみなさまを応援するのです……! みなさまと一緒に、戦いますです!」
「おぉ! 皆、奮い立てよ――! 此処が正念場だ――!!」
さすれば。ニルの治癒を受けてか、軍人たちの士気が上がる――
古代獣らを、ゴーレムらを押し返すのだと。
ニルも攻勢時と思わば根源の力を宿す泥をもって――敵を押し流そう。
「やあ特務派の諸君。ぼかぁ勝手に指揮役に任命したエクレアだよ」
瞬間。友軍の中でも、パトリック大佐から離反……いや、鉄帝国軍に帰参した特務派軍人に語り掛けるのはエクレアだ。こんなガキに指揮されたくない者もいるだろうが――今はそんな事を言ってる場合じゃないのだよ。
今や戦況は山の天候のように激しく色が変わっている。
一人一人の動きこそが戦いの天秤を容易く傾け得るのだ――つまり。
「恐れるな一騎当千の戦士達よ、君たちを裏切った大佐に一泡吹かせようじゃあないか!」
イレギュラーズだけではない。君達もまた、立派な戦士の面々なのだと。
彼女は鼓舞しつつ誰しもを戦場に駆り立てるものだ。さぁ行こう共に! 勝利を目指して!
「さてさて……どこもかしこも熱気の渦。であれば私も多少、真面目にいきましょうか」
更に続くのは幸潮だ。突発的に、万年筆を己が体に差し込めば――身体に皺が。
それは錯乱に非ず。自己否定の一環にして、紡がれる一手の序曲たれば。
物語閉帳。一に皺が空間へと広がり。二に上。三に下を埋め尽くし。
四に無為なる空間が広がりて――五に深刻化。
六にて敵を巻き込み、次元諸共崩れ堕とせば数多を潰して……あぁ、元通りの閉帳なり。
敵陣の一角に穴拓く。と、すれば。
「……急にこんな危険な戦場でごめんね。でも、また頼むよ――今が、踏み留まる時なんだ」
その地を避け、空より強襲せんとするアームズら、をシャルティエが止めんとする。
言の葉を向けるはワイバーンへ。空を、敵に確保されたままではいられぬのだと。
指揮官――ではないタイプのアームズらを引き付けんと彼は立ち回る。
「さぁ来い……! 早々簡単に、僕達を突破できると思うなよ……!!」
時に。光刃をもってしてアームズらを撃ち落とさんとし。
であれば反撃の一手がシャルティエにも紡がれ一進一退。
この場を奪われねどもせめて動きの阻害をと――彼は奮戦するものだ。
「――負けられませんわね、皆のこれからが掛かっているのですもの。
行きましょうマリィ。お互いに……また無事で会いましょう」
「うん! ヴァリューシャ! 君も気を付けてね――そして必ず勝とう!」
激化する戦場。その最中にて、短いなれど確かな意思を交わしたのはヴァレーリヤにマリアだ。混戦が発生しうる状況では多少距離が離れる事もあるやもしれぬと……しかしヴァレーリヤが狙うのは――指揮官機の打破、である。
広き戦場を支える指揮官機こそ撃破すべき存在であると思考して……しかし。
「……先程からちらほらと。軍人……ではありませんわね。貴方達、何者ですの? 生憎、予約していないお客様をもてなすほどの余裕はないのだけれど」
「安心しな――只の野次馬みたいなもんさ。時期が来れば帰るよ」
「ならば今すぐお帰り願いたい所ですわね。野次馬の皆さん方には!」
途中。介入して来た――謎の男達を迎撃するものである。
メイスを振るい距離を取りて、更には。
「行きなさい、酒樽くん1号!
お酒ビームでございますわ! 祝勝会の分も吐き出したら承知しなくてよ!」
『ムリ……! ムリ……!』
「出来る出来る気持ちの問題ですわ、ほらさんは――い!!」
酒樽くん1号と共に薙ぎ払わんとする……! あ、ホントに何かビーム出た! 虹だー!
「さて――こっちも行こうか! ヴォルフ! 神夜! まさか君達とこっちで一緒に戦えるとは思ってなかったよ! でも……コンビーネション、忘れてないよね? ちゃーんと覚えてるかい!」
「ハハハ! 見くびりすぎだぞ、如何に世界を跨いだと言っても――記憶まで衰えたつもりはない!」
「無論だ。さて……数が多いな。早々に切り伏せていくとしようか」
そして。マリアの方でも、別の指揮官機を狙わんとしていた。
盟友たる二人と共に。されば、ヴォルフは苛烈なる炎を纏いて古代獣を薙ぎ払い。
神夜は――刹那の溜めの果てに、神速の抜刀にて敵を凌駕せしめん。直後にはマリアも、雷光と至るが如くの力を身に纏いて蹴撃三閃。神夜の抉じ開けた穴を更に広げ、そこへヴォルフやヴァレーリヤを導いていく――
「ふむ。アレが……マリアさんの同僚さん達です、か。
実に強者の気配……! うんうん、頼もしい限り! 私も燃えてきました!
――特に神夜さん、一剣士として非常に興味があります!」
「ほう……其方も、中々の使い手とお見受けする。機会があれば、いずれ」
「ええ――ではいずれの為に、今は道を切り開きましょうか!」
勿論、ヴォルフガングさんとも――と、更に至ったのはすずなだ。
直接戦闘、望むところ。防衛線を切り崩すべく彼女も剣撃繰り出す。
兎にも角にも前へ。目の前の敵を斬り伏せ、敵陣をかき乱してみせよう――!
「まぁまぁ! タイマン特化とはなんて潔く『素敵』な相手なのでしょう。
ラド・バウB級闘士、シャルロッテ・ナックルがお相手致しますわ――!!」
「おぉ、現役ラド・バウ闘士かよ。こいつぁちったぁ相手してやらねぇとな!」
直後。ヴァレーリヤなどに襲い掛かった謎の男達へと参戦するは、シャルロッテだ。
セレストアームズの数を減らしながら見つけた彼女は、どうにもこうにも『魅力的』な戦い方をする者達に魅せられている――あぁ無視は出来ぬとばかりに。己が持てる全力を投じ、その力を窺ってみせよう!
拳、蹴り、数多を使いてまるで試合の様に。
――あぁあぁ! ふふ、しかし!
「ここからが本番ですわよ!」
彼女の血気は此処からだと。刹那の隙を突いて繰り出すブレーンバスターが――炸裂した。
「アレフゼロ――」
刹那。パトリックより受けている干渉に辛うじて耐えているゴーレムへ声をかけるのは、ハイデマリーだ。必死に抵抗しているアレフゼロ――の手を握りて。
――聞いて欲しいであります。私は、君と一緒に戦いたいであります。
紡ぐものだ。自らの、心の儘に。
力を貸してほしいであります。もしも大佐の干渉があっても。
「その度に私が、君を此方に引っ張り戻しますから」
「そうだよ――キミはもうボク達の大切な友達だよ。この戦いが終わったら色んな事をしよう! 植物を育てたり、料理したり、冒険したり、いっぱい遊んだり! やれる事がね、この世界にはいーっぱいあるんだ!」
次いで。セララもまた――アレフゼロへと語り掛ける。
だから、意志を強く持って。支配なんかに負けないで!
「一緒に未来を掴もう!」
『ガガガ……! ウウッ、勿論……!!』
「よし――一緒に行くであります。一緒に、戦うでありますよ!」
アレフゼロが奮い立つ。然らばセララとハイデマリーもまた動くものだ。
アレフゼロが、渾身の熱閃を放ち、道を切り拓かんとすると同時に。セララは自らに戦闘の加護を施し、雷光の斬撃によって――撃ち漏らしを撃滅。ハイデマリーはアレフゼロの様子を常に気に掛けながら……目前の敵を薙ぎ払うように、狙撃を敢行。
セララに追従する形でより深く、敵陣を乱していく――!
「ミミも背一杯頑張るのです……!
はーい、怪我されてる方はこちらへどうぞーなのですっ。
大丈夫ですよ。ミミがしっかりと治しますからね!」
「んにゃ! 皆、無理だけはしちゃダメにゃ!
変な連中もいるから……無理していざという時動けないと怖いかもしれないにゃ!」
同時。前線を支えているのは、何も敵に対して武を振るっている者達ばかりではない。
例えば一歩離れた所で傷の治癒などに当たっているミミなども全体を支えているものだ。
友軍たる鉄帝国軍人などを中心に、怪我を治癒せんとしている……鉄帝はぶっちゃけ敵国! 侵略! コワイ! という印象が強いのだが……しかし今は味方であると思えばこそ、ミミは頭を振って雑念を掻き消すもの。
そして同時にちぐさは跳躍しつつ――周囲の偵察に当たっていた。
敵がどこから来るかの警戒。敵の中に混じる『妙な連中』の動向調査も兼ねて。
「なんとも嫌な予感がするにゃ……連中は一体なんなんだにゃ……?」
どうにも。魔種の影響で狂っている――と言う訳でもなさそうだ。
もしかすればこの戦いの被害を拡大させる為に動いているのか……?
考えすぎならそれでもいい。嫌な予感を振り切るべく、ちぐさは戦場を翔け巡る。
「皆を支えるべく頑張りましょう。あなた様と共に行けばなんとかなりますよ、きっと」
「ああ――支えるべきはあれだ、行くぞ」
次いで、プラハにヴュルガーの両名は共に行動しながら支援に務めていた。
ヴュルガーが優れし目で戦場を見渡し、時には飛翔して苦戦しつつある戦況に駆けつれば、共に至ったプラハが治癒の術を即座に飛ばすもの。邪魔な敵共に包囲されている様であれば、ヴュルガーが穴をあけるべく吹き飛ばしてやろうか。
「アレフゼロ様。酒樽くん1号様――皆なんもご無事ですか?
ゴーレムの方々も無理をなさいません様に」
『ガガ……感謝、感謝……!』
「此度の裏方は少ないようだ。その割に敵の数は未だ途切れん……休む暇はない、行くぞ」
然らばプラハは共に戦うゴーレム達の身も気遣う。おっとりとした彼女らしい優しさは誰しもに降り注ごうか――尤も。今この火急な事態である場でおっとりした彼女を、ヴュルガーは急かして引っ張るものだが。
それぐらいでお互いの速度が丁度よくなっているのやもしれない。
「空中での戦闘って……すっごく高いんですね! わぁ、こんなに飛ぶなんて……!」
「大丈夫。僕が付いてるからね――絶対に、落とさないから」
そしてペアで行動していると言えば、アイラにラピスもそうである。
アイラはワイバーンに騎乗しながら地上を見据えれば、思わぬ高さに慣れぬ感覚を得るものだ――しかし飛翔するラピスがすぐ傍にくっ付いていれば、彼女の心の臓の鼓動も落ち着きを得るもの……もしかすれば別の意味で鼓動が早くなっているかもしれない、が。
ともあれ二人は一緒だ。
君を落とさせる訳にはいかない――危ないからね。
「だから僕がきっと護ってみせるよ」
「でも、もし落っこちちゃったとしても平気です。だってボクには――ラピスがいますから!」
「……ふふっ。そうだね、うん」
然らば。アイラの微笑みがどこまでも眩しければ――ラピスは改めて決意しようか。
この瑠璃の盾は決して砕けない、と。
――往く。ラピスはアイラを援護する様に、彼女の活力を満たす術を張り巡らせ。
アイラは地上に布陣している敵へと――命喰らう蕀を展開し、喰らい尽くさせる。
「皆様に星々の加護があらんことを……天に座す星々は、皆様をいつでも見守っております」
続いてセスも周囲の面々に治癒と、鼓舞する様な号令を響かせるものだ。
護りが薄い場所が発生せぬ様に視線も巡らせ。時に統制する動きを伴いながら。
「今一歩、死力を尽くす必要がありましょうか……勝利の為にも」
戦況は一進一退。イレギュラーズを中心に大攻勢が仕掛けられているが。
敵の数もまだまだ尽きそうにないと――セスは冷静に判断を。
……己を追う敵があらば引き付けもした方がいいだろうか。
思案巡らせつつ、セスは戦場に立ち続ける。己が意志を伝える――祝福と共に。
「パトリック大佐……野心に燃えるのは結構なのだけど、周りへの迷惑がとんでもないわね……街を消し飛ばすを好きに暴れさせるわけにはいかない。ここで止めましょう――大佐は過ぎた玩具を手に入れてしまったみたいだわ」
「沢山の人が住む街を、これ以上焼かせるつもりはないよ……! 世界と人の暮らしを脅かす魔種の陰謀なんて挫かないといけないね! 絶対――止めてみせるよ!!」
そしてセスらの支援を受け取ったアンナやクルルは、沸き上がる活力を感じながら古代獣達へと撃を紡ぐものである。アンナは特に斧を抱きしセレストアームズ達の注意を引き付けつるものだ――大振りで振り回すだけの相手など、対処するに楽。
更にクルルは、そうして引き付けられた面々へと、鉄帝軍人達と共に一斉攻撃。
放たれる弓が関節部へと直撃。動きを縛りて、立て続けに仕掛けるものだ。
「……鉄帝の為に、というのはなんとも複雑ですが。しかしこのまま放っておけば犠牲は増えるばかり――鉄帝の後は他国に、という事がないとも限りませんしね。微力ながら、お手伝いいたしましょう!」
「難しい御託はいらない――怒り狂ったバカをぶん殴る! そんでもって黙らせる!
ははっ、そうさそれだけでいいんだ! 実にいいじゃないか――
どんなに知略を巡らせたって最後に勝つのは絶対的な暴力だ!」
次いで。動きが鈍った個体をシフォリィが斬撃にて斬り伏せ、クルルが全霊の膂力によって完全に破壊。そのまま突き進み――とにもかくにも数を削らんと彼女らは奮闘するものだ。
幻想に縁のあるシフォリィにとっても、まぁ戦うのに異論はない。目前の犠牲が増えるのを、ただ黙して見ていられる様な事が出来ようか――只管に強さを求める心と共に、眼前に立ち塞がる敵の群れを二閃、三閃。
幸いにして敵の数が多いが故、纏めて薙ぎ払いやすくもあるのだ。
特にアデルは、己が使役する式神(ゲボク)に伝令役を担わせつつ、己は眼前に集中。
「こっちだよボンコツどもが! 纏めてスクラップにしてやるからかかってこいや!」
注意を可能な限り引いてから薙ぎ払うものだ。
――どうだ。故郷ファルカウをも焼き払うクソッタレの炎は! 実によく効くだろうさ!
「街を消し飛ばすなんて、あんな被害見せつけられてじっとしてられるわけないよ!
――さぁ掛かってきなよ! 魔種に従うなら容赦しないぞ! オイラが全部守ってやる!
人呼んで炎の勇者、この暴虐に屈してたまるか!」
続けてシャロロも、先のラトラナジュの火の被害を思い起こしながら前線を支えるものだ。あんなものをもう一度繰り返させたりなんてさせない! 古代獣やアームズ達を派手な名乗りと共に引き付けながら、彼は立ち塞がり続ける。
正に崩れぬ意志と共に。あぁ然らば。
「ゲルツさん、一緒に戦おう! 皆を――護るんだ!」
「ああ。行くぞ! 此処が正念場だ――こっちを援護してくれ。一気に攻める!」
瑞希はゲルツへと声を掛けながら、共に敵地へと赴くものだ。
優れた耳に入ってくる情報から苦戦していそうな場所は概ね分かっている――故にゲルツとも意志の疎通を取りながら向かおう。撃が差し込まれそうな所へと瑞希が介入し、皆の盾とならん。そうしていれば後方よりゲルツの射撃が敵を薙ぎ払うものであり。
「大丈夫。絶対に、ボクは倒れない! 皆を必ず――護ってみせる!」
「おぉ、イレギュラーズに続け――!! 負けるな、死ぬんじゃないぞ――!!」
そうしていれば周囲の士気も上がるものだ。
瑞希は白き風を顕現させ、その一歩を支援もする――あぁ、皆で行こう!
今のボクはね。守るだけじゃ――無いんだよ!
「貴方方の好きにさせる気はありませんよ……我が名はアンバー! アンバー・タイラント! 悪道に与し、正道を妨げるならば容赦はしますまし! ――我が刃恐れぬのならばかかってきなさい!」
「ここは正面から迎え撃たせてもらうッスよ!!
……ただ、妙な方々も混ざってるみたいなので、気を付けて下さいッス!!」
挙がる士気。であればアンバーやイルミナもその勢いに乗じるものだ。
アンバーは名乗り上げる様に咆哮しつつ、襲い来る敵を斬り伏せて往く。リーチの長さを活かし放たれる一閃は、防御に重点を置きつつも確実に敵の体力を削っているのだ――そしてイルミナも速度を武器に敵を迎え撃ちつつ、しかし警戒も怠らぬ。
――敵の中には何をしてくるか分からぬ連中も混じっていそうだから。
明らかに怪しい。かといって魔物の様ではない……あぁ全くキナ臭いもので。
「見敵必殺、速やかに排除させて貰うッス!」
故にこそ彼女は精鋭たるイレギュラーズが沿ってして、彼らに当たろうと。
「もうこうなってしまった以上は武力制圧する以外に解決方法はないわよね――
ならば行きましょう。ただ、前へ。あり得たかもしれない可能性は、もうないのなら」
更にはイリスも前線へと至るものだ。仲間を導く星になる様に、彼女は立ちて。
味方を鼓舞しつつ、敵を撃ち落とす――
纏う神聖なる輝きが邪悪を討つのだ。
……何もなければ平和的にアーカーシュを治められたかもしれないのに。
もうこうなってしまっては何もかもが無意味な仮定だと、心を定めて。
「さぁ…… それでは わたしも 行きますの!」
と、その時。
天より声が響いたと思えば――ノリアだ。彼女は同時に飛翔する『部隊』を掩護する様に、往く。空を浮かんでいれば防御は行いにくいものだが……しかし。敵の撃を跳ね返す事を常とする彼女の戦い方からすれば好都合な所もある。
「わたしを 撃ちおとしてみると いいですの 出来るものなら ですが!」
決死の盾となる彼女へと紡がれる撃の数々――しかし耐えてみせよう。
そして。その間に往くは彼方やシューヴェルトだ。
「指揮型を狙うぞ――奴を仕留めれば、この周辺の動きが鈍る筈だ。
それから……敵の中枢を担っているであろうハイアームズやアルトラアームズも、な」
「分かりました師匠。しかし必要とはいえ空中からの強襲とは……中々しない分緊張しますね」
まぁやっていきましょうかと、紡ぐ彼方は、師匠たるシューヴェルトと共にワイバーンに騎乗し往く。彼方は敵を薙ぎ払うように、邪悪を祓う光を紡ぎて。シューヴェルトは遠方より敵を次元諸共消し飛ばんとする一撃を放つ――
そうして狙うは先述した通りの個体共。
流石に、アルトラアームズの力は強力であり早々容易くは討てぬ、が。
それでも成さねばならぬ。逃げて状況が好転する筈も無し――!
「セレストアームズの統制が綺麗に取られているね……まずは指揮系統のシステムを崩していかないと――いた。あの個体だ、間違いない……攻め立てよう」
「生き残るためには死線を潜らないといけない……か。
矛盾してる様な、そうで無いような。ま、生き残るためにも――頑張って行こう」
更に幽我とラビットも、ノリアの引き付けが行われている間に――彼方やシューヴェルトの動きに続くものだ。幽我は敵を分析しうる術をもってして指揮型を特定する……然らば一斉攻撃だ。
ラビットは挨拶代わりに虹色の軌跡を一閃。直後には幽我も関節部を狙いて、極小の炎乱を絡ませようか――機械と言えど内側からの攻撃には弱かろう。さすれば、敵陣の奥に引っ込まんとする動きを見せるものだが、逃がさない。
全霊の魔力を収束。幽我は敵を討ち貫きて、その身を完全に破砕させん。
――直後。周囲のアームズ達に、動揺が走ったかのように動きが乱れるもの。
指揮型を一体潰した影響であろうか。であればと、続くのは。
「さて、それじゃあ各々方、そろそろ派手に暴れるとしましょうか……!」
確かなる意思と共に前線へとその姿を示したのはリディアだ。
傍には朋子らの姿もあろうか。集いて行うは、単純明快。
「あぁ喧嘩を売りまくってやるとしようか! そもそも向こうから売ってきた喧嘩だろ――? 売られた喧嘩は買う主義でねぇ! 仲間が買ったんならあたしが買った喧嘩も同じってね! さぁ行こうかねリディアッ!!」
「はい! あぁ、とにもかくにも目前の連中を殴りつけて行けばいいなんて……
最高に分かりやすくて良いですね、朋子さん!」
一気呵成なる攻勢である! リディアが号令を成し、味方に戦の加護を齎せば。
口端吊り上げし朋子は全力全霊を持ってして――吶喊するものである。コンバルグを真似し会得した、暴風の如き突撃は敵陣を文字通りに打ち破る。いや、食い破るとすら言おうか――凄まじい衝撃と共に多くの敵が空を舞う程。
「さあさ! そこのけそこのけ! 運命特異座標が通りますぞー!!
やぁや命を惜しまば早々に退くが宜しいですぞ――! スケさん、容赦はしませぬ故!」
「行くわよ――正面に全火力を叩き込む! 精々派手に爆散させてやるのだわ!!」
次いでヴェルミリオにきゐこも、朋子らに続くものである。
目立つように立ち振る舞いながら。ヴェルミリオは自らの身に加護を纏いつつ、名乗り上げて敵を引き付けるものだ。然らばきゐこは魔力で発生せしめた巨大な光球を敵陣に叩き落す――圧殺する勢いから逃れえた者らはどれ程いるか。
勿論、目立てば目立つほどにヴェルミリオらの危険度は挙がる。
大量の古代獣やアームズ達の狙いが一斉に其方を剥くのだから――
だがそれでいい。それら全ての行動の意は陽動にあるのだから。
――迂回班が辿り着くまで、敵の目を眼前に釘づける為に!
「大火力こそ私の本領――存分に叩きつけて差し上げましょう。
増長した魔種の配下ならば気に留める事もありませんし、ね」
「はいはいはい! 敵さんをあっと驚かせればいいんだよねー! いっくよー!」
だからこそ綾姫は投じる。後先よりも今、この場にて。
――さあ、励起しなさい黒蓮!
――魂無き兵器の群れに見せつけて差し上げましょう!
放つは極大斬撃。本来持つ異能から零れ落ちた欠片――しかし絶大の両断概念。
敵の密集地へと叩き込めばどれ程の敵が粉砕されようか。然らばマリリンも火力を担う者達の援護をなすもの……数多の戦の加護を齎し、準備が整えば己も放とうか。水を操りて、巨大なる球弾をお見舞いだ――ッ!
「自慢の装甲貫かれた気分はどう? 水は何にでも染み込む……ってね!
機械の身だったら尚更でしょ――次々いくよ!」
壊す。壊す。壊す。誰もが、誰しもが。さすれば。
「さあどうした! こんな子竜一つ落とせないか?
古代兵器などと大層な名を冠しながら情けないものだ――!
我が名は解・憂炎! イルナークが戦士だ! 貴様らの刃、何一つ通しはしない!」
「彼らの怒りが見えます……順調に進んでいる、と見ていいでしょうか。
しかし迂回班到着まではもう暫くの時が必要なはず――参りましょうか」
憂炎も全力をもってして敵を挑発し続ける。
竜の盾が敗れようものか。どんな戦場でも――この生ハムの原木は燃えない! なんだこの生ハム。まぁいい。とにかく、場の状況を見ながらも前面に火力を集中させているエルシアの援護も彼は行うものだ。
苛烈なる攻撃を行い続けるのは、敵にイレギュラーズ達が力押しを選んだと錯誤させる目的もある。故にエルシアは決して止まらぬのだ……この身が彼らの憎悪に灼かれ、欺瞞が露になるまでの間、力を振るい続けよう。
先に果てるのは、彼らか、私か。
――でも、私は信じています。
「私は、私の想いは、多くの仲間達と共に在る事を……」
敵に取り囲まれようと。この先に必ず勝利があると――で、あれば。
「皆、見ろ! 敵の背面を味方が突いている――!
ここが正念場だ! 息を揃えて正面突撃するぞ!」
周囲を、俯瞰する様に冷静に窺っていたジョージが気付いた。
大海嘯で敵を押し流した果てで、今までとは違う動きが生じている事を。
それは、場を迂回して来た――イレギュラーズ達の援軍の姿であった。
●
ジョージの号令が響いたのは絶好のタイミングであった。
彼は共に戦う鉄帝国軍人達に支援を行いながら、効率的な動きを齎すものであり。
正面と背後から一斉に攻撃を受けた敵陣は――明らかに動揺していた。
「正面からぶつかるだけが戦じゃない……なるほどね。
この機を逃す訳にはいかないわね――突撃するわ。動揺が収まる前に、趨勢を決めましょう」
「やれやれ、今度もまた実にデカい戦場よねぇ……
ま。えてしてこういう所は『稼ぎ時』ってヤツよ。
露払い? いいわよ。見せてやろうじゃないの、こっちの力をねぇ!」
背後に回ったイレギュラーズ達。その一角を担っているのは、ディアナやコルネリアだ。発見されぬ様に足音などを殺していた甲斐があったというもの――ディアナは後方より不可視の一撃を叩き込んでやり、コルネリアも勢いの儘に強襲してやる。
派手な銃撃音。戦闘開始の合図は、セレストアームズの顔面に。
動揺の波紋を更に広げてやらんと投じ続けて。
「諸君! 今こそ勝ち鬨の折は近い――! 奮戦せよ!
勝利の美酒を味わいたくば進め! 我らは勝つのだと信じ、前を見据えろ!
必ずや我らの進む先に未来はあるのだと――我が旗を見よ!」
そして戦場の全域に轟くが如くの一喝を吼えるは――ベルフラウだ。
彼女の旗が誰しもに力を齎す。加護を降り注がせ、戦いの力を与えよう。
――パトリック・アネル大佐。この様なやり方で祖国鉄帝を手中に収めよう等と軟弱な。
(……魔に墜ちねば伸ばせぬような手なのであれば、最初から伸ばすべきではない)
その程度の事は『理解』する男だと思っていたが、買い被りだっただろうか。
それとも――奴を『呼んだ』声が――あまりにも巨大であったか?
……いずれにせよ最早道は違えた。ならば自らは旗を振るい続けよう。
かの愚かしき野望を打ち砕くべく!
「この島の美味しいものまだ食べ尽くしてないんだから、ここがなくなっちゃうのは嫌よ! 一人が独占するなんて、絶対ダメなんだから――! 行きましょ、この島に特大の暴風を吹かせてやるの!」
「いっくぞー! 後ろに回ってどーんだ!
あ、小鳥さんは動くなよー! 離れると怪我するからなー!」
直後には鈴花とユウェルも突撃するものだ。鈴花の紡ぐ魔砲が敵陣に瞬き貫いて、ユウェルは移動中にディアナから預かっていた、使い魔の小鳥を頭に乗せて撫ぜるもの。此処にいるのが安全だからな、と優しくしつつ。しかし敵に叩き込む一撃は苛烈極まる絶技。
「竜が如き一撃を受けてみろ! なーんてね! わたしたちが来た!」
「油断大敵! もう一発くらいなさーい!」
古代獣らが散発的な反撃を叩き込まんとするが、それすら彼女らは潰す。
攻撃に次ぐ攻撃。攻勢に次ぐ攻勢――を見据えるは。
「いやぁみんな、張り切っとるなぁ。あんまり無茶して怪我せぇへんといいんやけども……ま、今が無茶のし時って事かねぇ……悠長にお弁当作っとる訳にもいかへんし、少しだけでも手伝わせてもらうわ」
カフカだ。虚を突けたとはいえ、抵抗が全くない訳でなければ、傷を負う者もいる。
故にかれは治癒を施すのだ――ベルフラウの傍に布陣しながら、彼もまた戦うものであり。
「本当は痛いのなんて嫌やけど、しゃーないわなぁ」
……俺やのうて他人が怪我する方が耐えられん。
微かに、一瞬だけ目を伏せた後に――彼は再び治癒の術を味方へと。
無事に帰ろう、皆。勝ったら美味いもんご馳走するで。
「過ぎたる力を持った人間の末路とはいつもこのような物か。
いや……魔へと堕ちたのであれば、もはや人間ではないのだがな」
語るは一晃だ。魔道へと堕ちるとは愚かな――
まぁいい。思想も何も必要なくただ斬る相手を用意してもらえたのならば十分。
黒一閃、黒星一晃。
「――一筋の光となりて、古たる兵器を破砕する!」
御免ッ! 超速へと至る彼の技は、背後より敵を斬り伏せん。
混乱しうる戦場にて存分に暴れればいいとは――これ以上にやりやすい戦場があろうか。
紡ぐ斬撃が伸びる様に。敵陣を裂きて、彼の武威を示さん!
「アーカーシュも鉄帝も……これ以上やらせない。
邪魔するなら……防衛線なんて、めちゃくちゃにしてやる……!」
「この地に蔓延る敵を打ち倒し――パトリックへの道を斬り拓く! いくぞ、決戦の時だ!」
更に祝音や紫電も乗じるものだ。此処まで気配を潜めてきたが、いざや戦闘となれば最早遠慮はいらないのだ――祝音は敵陣中枢へと気糸の斬撃を放ちて、一気に敵の足並みを乱さんとすれば、動きの鈍った個体へと紫電が。
「迸れ、紫電の太刀よ! 我が前に立ち塞がる障害を蹴散らし――道を拓け!」
――最早。斬られた事にすら気付かぬ程の神速をもってして両断するものだ。
闇が奔った。かの如き抜刀術を、凡百のゴーレム如きが見極められようか。
突き進んでいく。勢いの儘に、滅ぼし尽くすまで!
「奇襲は最初の一手が肝心だ……いくぜ……!
態勢を整えさせたりなんてしねぇよ――食いやがれ!」
「ふむ――私の愛弟子がゴーレム達に名前を付けて可愛がっていてね。
しかしどうやら君達の頭目は、ゴーレム達を不当に制御せんとしているようだ……
愛弟子に悲しみが齎されるのは看過できん。沈んでもらおうか」
続けて子墨にリーディアも攻撃を降り注がせるものである。銃撃を降り注がせる子墨の動きに次いで、リーディアはワイバーンを駆りながら直上より。大きく旋回しながら銃撃の雨あられ――
氷の狼の遠吠えを聞くがいい。
尤も、聞こえた時にはもう死の足音から逃れられはせんが。
「ラトラナジュの火……あれほどのものをもう二度と使わせるわけには……!
私達が本気を出しているんだ。ここの絶望なんか盗み取ってみせよう!
――今こそ、悪逆非道を止める時なんだ!!」
「これ以上の暴虐は許せない!
此処でとめてみせるわ……看守以前に私も鉄帝民だもの! 蹂躙はさせない!!」
言を紡ぐは沙耶にセチアだ。先だって放たれたラトラナジュの火の威力は、まだ記憶に新しい。もう一度使わせてなるものかと――沙耶はワイバーンに騎乗しながら、機動力に沿う形で敵へと撃を紡いでいく。敵がどれだけいようとも、全て切り裂いてみせよう。
セチアもまた、故郷たる鉄帝の惨事に心を痛めている。
故にこそ確かなる意志を瞳に宿し――往くものだ。
狙うはハイアームズの指揮官。指揮を乱し、混乱を生じさせ、勝利を掴むのだ!
「喰らいなさい! これがお前を撃ち落とす……看守の力よ!」
全霊の奇襲。逃さず打ち砕かんとする意志が――戦場に瞬きて。
「やだなぁ機械や獣じゃあ酸で溶かしても鉄っぽくて美味しくないです。こんなのやる気半減所じゃないですよ……はぁ、もう御主人様に内緒でサボるしか……んっ……? あれ、この匂い……」
その時。大きな大きなため息を零したのはライムだ。あっちを見てもこっちを見ても食べてもいい……のがいるのだが、どうにも舌に合わないのばかり。と落胆していれば――おやおやいるではないか。『生きている人間』が。
「いただきま――す。っと、ありゃりゃ。
兵隊さんにしては手強いですねえ、そんなに食べられたくないです?」
「食べられたいのが趣味の奴なんているか?」
「いるかもしれないじゃないですか――少なくともいてくれた方が都合いいですし」
が。ライムの奇襲をもってしても倒しづらい――大人しく食べられてくれません?
だけど獲物の抵抗が激しいぐらいでなんだ。
ライムは体を大きくする。そう、躱しようのないスライム津波で――再度、頂きます♪
「人を燃料に、エンジンにするなんて……こんなことの為に軍人になったり、ここに来たんじゃないはずなんだ。助けられないならせめて……少しでも早く楽にさせてやる! こんな戦い――もう終わらせてやるんだ!」
「非人道的にも程がある……人を、エンジンにする兵器なんてもんは元生物兵器としても認められるかッ……!」
直後。混乱究めし戦場へ更に介入したのはトウカにウェールだ。
――いずれもアルトラアームズの有り様に嘆いている。こんなモノが存在していいのかと。特にウェールにとってはあまり他人事とも言えぬ……息子に、大切な人に武器を向ける馬鹿は俺だけで十分だと、奥歯を噛みしめ――前へと進む。
「こんな悲しみばかりの兵器は此処で全てぶち壊す――レーゲン、行けるな!?」
「行けるっきゅ! 残骸一つも、絶対に残さないっきゅ!!
こんなのを放置していたら……あとどれだけ犠牲になるかも分からないっきゅ!!」
ウェールが語り掛けたのはレーゲンに対してである。レーゲンもまた、かの兵器の在り方には激しい感情の燃え広がりを感じているものだ……防衛兵器の増援が出てきてるのなら、むしろこの時にすら『増えて』いるのではないかとも。
故に彼らは急ぎ往く。ウェールに乗っていたレーゲンは敵軍の真横から魔術を放つものだ。それはグリュックと自身の歌と、数多の音色が混ざり合う詠唱魔術。続け様にはトウカも奇襲する形で敵軍へと、鮮血撒き散らす乱撃を。
いずれも多くの敵を纏めて穿つためのモノだ。
二人を引き連れ、飛翔していたウェールもまた――己の番に至れば、手札からカードを一つ。追随する様にカードが群れを成して……吹雪へと昇華すれば――数多の兵器を巻き込み上げ散らせるように。
「いけるっきゅ! このまま押し込んでいくっきゅ――!!」
「ああ、だがレーゲン先輩! あまり前には出すぎないように――狙われそうだ!」
そして戦況を見据えつつレーゲンは治癒術も振るい。
トウカはそんなレーゲンを援護すべく――敵の注意をも時に引き付けんとするものだ。
「これだけ好きに暴れて……下の街も壊して……
壊して壊して壊してばかりで何になる――なんて、魔種に通用するわけもないけど。
それなら……こっちは、止めるだけだよ。どれだけ企んでも、絶対に」
更にメルナもハイアームズなどの個体を狙う。敵の中でも大きい方の戦力を減らす――連中が一体でも落ちれば、戦線を支える力もなくなろうから。見つかればアルトラアームズも叩いてみせよう。一刻も早く、魔種の狙いを打ち砕く為に――!
強き意志を抱きながら斬撃一閃。
竜撃の一手を紡ぎてアームズらを退けてみせよう。
……ただ。アルトラアームズに対してだけは、些かの念はある。
「人が、燃料代わりに使われているなんて……! どうしてそんな非道を……!」
かの機体は、高性能だ。しかし高性能なのにはソレだけの理由がある。
――アレは止めねばならない。
決意露わに、彼女は往く。先の、レーゲンらの攻勢も生じていれば落とすまであと一歩であり。然らば自らの全霊たる一撃をもってして――落とすもの。
「……ッ! 搭乗者の方、意識はありますか! 意識は――、ッ!!」
……だが。呼びかける避難の声に、応える者はもう『其処』にはいなかった。
唇が微かに震える。されど、自らに課す自己暗示が感情を抑え――
彼女に次なる戦いに向けさせる力を与えるものだ。
――止まれない。太陽の様に――あり続ける為に。
「なんだかよく分からない連中も紛れ込んでいるみたいだけど……
ま、戦場に突発的な事態はつきもの、か。
とにもかくにもまずは眼前の脅威を取り除きながら――かな!」
「確かに……まだまだ『この先』のありそうな気配がしますね。
陰謀はこれにて終わらない、と言う事でしょうか……」
同時。アームズらへと攻勢を仕掛けるのはカインやクシュリオーネも、だ。両名共に、戦場の節々にて感じる『妙な連中』の気配は感じているものの――今はとにかく数を減らさねばどうにもならなさそうだと、思考を切り替え目前に備える。
カインは、先のトウカらと同様に奇襲する様にしつつ、迂回側から攻勢を。
放たれる破壊的な魔術は砲撃となりて――敵陣に瞬こうか。
その一撃の着弾と同時に、正面より攻め立てていたクシュリオーネも更に攻勢を仕掛ける。移動を繰り返しながら魔力を収束させ――銃撃の様に降り注がせるのだ。可能な限り多くの敵を巻き込みながら、粉砕せしめて。
「斬り捨て御免、とでも言っておこうか?
好機を見逃す程、甘くはないのでな――悪いが、粉砕させてもらうぞ」
更に汰磨羈の跳躍が続いた。彼女は常に移動し、時に飛翔して戦場をかき乱す。
俗にいうヒット&アウェイだ。奇襲による混乱を更に広げてみせよう、と。
無論。孤立してしまえば危険な事は分かっている。
故に立ち位置は常に意識を……されど。縮地を用い、瞬間的な移動を繰り返す彼女は――正に神速の領域であり、混乱しうる敵陣にて捉え得る者は、極僅かであった。
「さぁ……いくわよ。折角手を入れている夢の島だというのに――独占しようとするものがいるなんて、ね……あまりかかわりがなくっても、こういうのは悲しいと思うものよ?」
続け様、奇襲の撃を紡いだのはヴァイスだ。
気配を殺していた彼女に気付けた者はいない――後ろに回り、手数で押して行こうか。
あらゆる戦いの加護を彼女が纏えば、正に盤石。
……少しでも。今の状況を良い方向に変えようと思えばこそ。
関わりが薄くとも――全力を尽くすのだ。
「此処で防衛線を崩さねば他の作戦にも支障が出る。
――すべき事は明確だ、各々自身の全力を以て当たってくれ。
ラトラナジュの火をもう一度吹かせる訳にはいかない!」
直後。戦場に馳せ参じたのはベネディクトだ。
彼は巨大なポメたる茶太郎と共に此処にある。大丈夫だ、恐れる事はない。屋敷に戻ったらご褒美の茶でも一緒に見に行くか――と初参戦の茶太郎を気遣えば……茶太郎も勇気と共に眼前をキリリッと見据えるものだ。あ、でも緊張削ぎ落す為にフランちゃんのポニテをもしゃもしゃしてから。
「うわー! 茶太郎、今日はすっごくちゃんとしたお仕事なんだから!! ダメだよ!! 髪の毛食べちゃ、めーっ!! あ、でも島が落ちそうなときは乗せてー! 飛んでー!」
「はわわ! とってもおおきな、ぽめらにあん……! かわいいー!!!
メイも、メイももふもふさせてほしいのです!!」
「まぁまぁ後でな――っし、じゃあ行くか! 茶太郎、一緒に頑張ろうな!」
わん! と、茶太郎が紡ぐ先にいるのはメイや誠吾だ。
黒狼隊として集う面々はベネディクトを中心に既に攻勢態勢を整えている――然らば号令一つで一気に突き進むものだ。一騎当千の強者揃いの中、メイは微力ながら助太刀せんと意志を強く保ちながら、邪悪を祓う光を放たん。
その光を皮切りに、誠吾は迎撃の為に現れたセレストアームズへと一撃。
――いやしかしマナガルム卿。凛々しいのに違いはないのだが……騎乗しているのが茶太郎だと……なんだろうな、このメルヘン感は……あっ。茶太郎のモフモフラインからポメ太郎も顔を出してる。お前そんな所に埋もれてたのか!
「……おや、そんな所についてきていたのですか? ポメ太郎。貴方も黒狼隊の一員とはいえ、戦闘に巻き込まれないように注意するのですよ――此方も、常に余裕があるとは限りません。繰り返しますが気を付けておくように」
「やれやれ、茶太郎もポメ太郎も怪我はしないようにな!」
然らば事態が分かっているのか分かっていないのか『わん!』と陽気なポメ太郎に、リュティスは言を紡ぎつつ――見据えた敵の群れの中心に、根源なる力を宿した泥を振るうものだ。堪らず、陣形を乱して突っ込んできた個体がいれば死の舞によって歓待しようか。
「もしも怪我したらあたしが治すからねー! でもみんなも、十分注意して!」
「メイもお手伝いしますです! おっきな戦い――ぜったいに成功に導くですよ!」
同時。茶太郎はむはむから脱出したフランは治癒の術を張り巡らせる――激励と言える一声はしかし、苦しい戦況でこそ何より欲しい一助となりえるのだ。時にはメイとも連携し、深い傷を集中的に癒そうか。さすれば。
「――了解だよ、ベネディクトさんっ!
此処にいる私達だけが、パトリック大佐の野望を止められるんだ……!
今出来る事を精一杯やって私達で皆の道を切り拓こうっ!」
「……ここを抜けない限りは下層に危険が及ぶのですね。
であれば、掲げられる黒い狼の御旗のもとに。
私も――微力ながら、進むための力添えをいたしましょう」
花丸が邪魔立てする敵を粉砕する勢いで拳を振るうものだ。リンディスの言う通り一人では辿り着けなくても、黒狼の皆がいれば……きっと突破出来るから! 花丸は己が身に戦いの加護を纏わせながら――全霊たる一撃を紡ぎ続ける。
神威に匹敵しうる様な拳と共に。邪魔だよ、退いて――!
リンディスはそんな花丸や、前線を担う者らを援護する様に治癒の一手を。
周囲を俯瞰する様な視点と共に常に注意を張り巡らせていれば……的確に誰に必要か、分かるものだ。故に彼女が成すは回復支援に、情報支援。
(……敵の中には時折精鋭が混じっている様です。人間であれば分かりやすいと言えば分かりやすいですが)
出来る事を一つずつ。そして最大限に成して――勝機を見据えんとしよう。
「死をも恐れない機械の兵士――加えて操られた獣の軍勢ですか。
消耗は実に激しい事になりそうですね……しかしだからこそ私達の力が求められる場。
――力の限り支えてみせましょう」
「ええ……それに、機械の兵と獣では、余りに違う兵科。
故にそれぞれの連携には限界もありましょう――
もし指揮を執っている者がいるのだとしても、いずれ綻びが生じるが摂理です」
続いて冬佳の治癒術たる、正常なる神水も味方の支援を成し。
場の状況を冷静に俯瞰するアリシスは、敵陣の隙を見据え続けるものだ。
冬佳の言うように、敵は無生物か、操られた者による損害を恐れぬ戦いが出来る――それは恐ろしい事である、が。しかし戦いは斯様な理屈だけで決まるものではない。足並みがどこまでも統一されよう筈も無いのだ……それぞれが異なるのだから。
故にアリシスは状況を常に窺いながら、敵陣の中でも疲弊している者を中心に、断罪の秘蹟を降り注がせる。束ねられた祈りの光刃がその命を救済しよう――
(……だからこそ気になる所もあります。
戦い慣れた人間が混じっているのは、一体……?)
そして彼女が最も警戒せしめるは敵でありながら正気に見える者達、だ。
魔種の狂気に狂わされている訳ではなさそうな者達。
それもかなりの実力となれば……必然、警戒せざるを得ず。
「なぁ~~に。実力があろうがなかろうが、女性の身の安全はこの僕 夏子にお任せあ~ぁれっ! どこまでもどこまでも支えてみせまっしょ~」
「夏子さん――ご武運を。敵も相応の実力を身に宿している様ですので、油断はされぬ様に」
しかし。斯様な心配などする必要はないとばかりに――夏子が敵を押しとどめるものだ。アリシスや冬佳など、女性陣は必ず守ってみせると……女性限定のいい笑顔を向けて。
敵の注意を引き付け絶対に傷つけさせんと。それでも押し込んで来んとする敵は、吹き飛ばして進ぜようか。さすれば、リースリットは夏子が時折相手取る……『人間』達へと視線を滑らせる。
「やーれやれ! 戦いたいなら人様に迷惑かからない所でやってくださいよ! これだから戦いたがりは嫌なんです! どこまでもどこまでも他人の事なんて考えず、自分勝手に振舞うんですから!! きーっ! 黒狼の皆さん! あの脳筋共に解らせちゃってくださいよ! 我々が真の気高き狼だってね!」
まーしにゃはハイエナですけど! と、自慢なのかよく分からない事を、しにゃこはドヤ顔しながら語るものだ。直後には可愛いしにゃの喉笛を狙わんとした不届き者へ、ビンタ一閃。
「ふふふん! しにゃにそんなのは通用しませんよ! お仕置きです!」
続けて紡ぐはしにゃのパラソルより。数多の銃撃が敵へと降り注げば。
「さて―と、派手にやってくれたんだもの。
こっちもやられた分はやり返さないといけないわよね。
――行くわよっ! 今更朱華達を敵に回したこと、後悔したって遅いんだから!!」
次いで朱華も黒狼隊に続く形で戦線に穴を開けていくものだ。
降り注がせる炎は敵のみを穿つ。遠方より撃を成す彼女を止める事が出来ようか――
特に。指揮を執っていると思わしき個体には集中的に狙っていく。
此方に趨勢を手繰り寄せる事が出来そうな手は幾らでも取ろう。勝利の為に!
「頼んだぞ、朱華! 事前に情報があった『戦争屋』については探っている――位置が判明次第、共有する。皆も注意しておいてくれ!」
「ああ! ったく、よその国の政治に首を突っ込みたくはねえんだがな……
だが皇帝になろうって奴が自国の民を巻き込んで戦争しようってんなら話は別だ。
いつラサの方に来ねぇとも限らねぇ――」
然らば。茶太郎を駆りながらベネディクトは槍を天より堕とす。
それは激しき衝撃を伴いて、敵陣を穿とう。
狼の唸り声が響き渡るかのような破砕音は多くの者らを驚嘆せしめ――同時に、ルカは生じた間隙を見逃さない。刹那の隙があれば、彼が踏み込むに足るに十分な時間。
……俺が此処にいる理由はなんだ? 常識か? 良識か?
否。
『テメェらの在り方が――気に入らねぇからぶっ潰す』!
戦う理由などそれで十分だとばかりに。彼の戦意は天にも昇る――!
「首貰うぜ大将!」
そして。狙うのは――ハイアームズの指揮官機だ。
最早数も少なくなっている指揮型の首筋を捉え、彼の一閃が貫き穿てば。
いよいよもって戦況はイレギュラーズ側優勢に傾きつつあった。
各所でアームズの、古代獣の防衛線が崩壊しつつある。
「……チッ。なんて使えねぇ奴らだ。やっぱり『手駒』になってる様なのはダメだな。どれだけ指揮をしようと思っても、反射的に動けねぇのは使えねぇ。死をも恐れねぇってのは必ずしも利点じゃねぇよ」
「おぉ『戦争屋』か。まだ生きてたのか――どうする? まだやるか?」
「いやもういいだろう。機を見て離脱するぞ」
であれば。敵陣の中で時折暗躍していた者達にも一つの動きが見えるものだ。
所謂正気に見える……者達だ。
彼らが撤退の算段を企てている。今だアームズや古代獣の数が多い内に、と言う訳か。
「絶好のタイミングって奴かねぇ――さ。遂に出番だ、行くとすっか!」
しかし、その時戦場へと跳躍したのはルナだ。
彼は優れし感覚をもってして周囲の索敵と警戒を行いながら往く――だがそれは一人ではない。
彼が引く馬車に乗り、或いは追随し同時に動く者達もいるのだ。
流れる様に、連鎖する様に駆け抜ければ多くの者が一斉に動けようか。
導かれる。彼の一挙手一投足に。
刹那に見極めた一点の――間隙の狭間を突く俊敏さ。その馬車の中には……
「ルナ、こっちは任せろ! 辺り一面敵だらけだ――怪我はないようにな!」
「あぁこっちは今の所大丈夫さ! ラダも、馬車から顔を出し過ぎねぇようにな――!」
ラダの姿もあるものだ。
ルナが無茶な軌道をせぬか、敵から圧を受けぬか気遣う声を掛けながら……彼女は馬車内より敵へと銃撃一つ。前面に降り注がせ道を切り拓かんとしようか――
尤も。ルナはその間にもラダに撃が飛んでこぬか、注意を絶やさぬ。
チームの足である自分が損なわれぬ事は第一に。
しかし。
「おい、ちゃんと俺に合わせろよ? 遅れたりしても、手を引いたりはしねぇぞ――?」
「ちゃんと合わせろ、ですって? それは此方の台詞です。遅ければ置いていきますよ」
直後。軽口叩きながら駆けるはアルヴァとチェレンチィだ。
二人もルナの馬車たるチャリオッツに同乗しつつ、予定地点へと至れば一気に駆け下り敵の下へと飛翔する。狙いは――敵の戦力の中核を担うアルトラアームズだ。雷撃が如き閃光と共にアルヴァとチェレンチィが襲来すれば、超絶の勢いにアームズが押されている――
「アーカーシュを丸ごと掌握した魔種ですか……御大層にゴーレムを沢山従えているようですが、空中戦でしたらボクも負ける訳にはいきませんね――押し切らせてもらいますよ」
「悪趣味な機械人形が、お前は鉄屑がお似合いだ――さっさと墜ちろ」
アルトラアームズの反撃も至れば簡単に、とはいかないが。
しかし奴めの放つ熱閃にすら臆さず両名は、むしろ踏み込むものだ。
その芯に確かなる一撃を届けるべく――さすれば。
「さぁ狩りの時間だ……妙な連中が混ざってるのが気掛かりだが。しかし『戦争屋』だと――? ハッ。戦争のプロはお前だけじゃないってのを思い知らせてやるぜ!」
「はてさて。あちらにいるのが噂の『戦争屋』ですかね……ご挨拶がてら、一つ交えましょうか」
ゴーレムの一部が破砕し、金属片が飛び散る場を抜けるは、ジェイクとバルガルだ。
その目で捉えるは、魔種に操られし有象無象……ではなく。確かなる意志を宿した『人』
――『戦争屋』と呼ばれていた男だ。
逃さぬ。この二人もまた、ルナの馬車に同乗していた身であれば、高速の狭間より飛び出し『戦争屋』の背姿を捉えるもの。息を整え、集中の果てに見据えた奴を――ジェイクは討ち貫かんと銃撃連打。
同時にバルガルも乱戦の中から奇襲を試みんとする。
邪魔な個体がいれば亜空の影へと至る己が全てをもってして排除せしめん――
そのまま『戦争屋』へと接近。鎖を投じ、同時に拳と蹴りによって仕留めに往こうか
「――なんだテメェらは。こちとら帰り支度の最中なんだよ、消えろ」
「そう言わずに。折角のご縁ですので」
「俺と同じ狼の獣種とは笑えるな――そうそう簡単に逃がすかよ」
「ハハッ。いいか、退却の道ってのは用意されるものじゃなくて、自分で切り開くもんだ」
が。『戦争屋』は自らに襲来する存在がいる事も予見していたのか、奇襲はされども動じずに対応するものだ。それは、彼が獣種として……奇襲などに対し鋭敏なる感覚を持っていた事も起因していたかもしれない。
バルガルの攻撃を凌ぎ、ジェイクの銃撃もゴーレムを盾に射線を切らんと立ち回る。そして。
「テメェは――いやテメェらは一体どこの誰の差し金だ?
あぁパトリック、って言うのは無しな。奴の差し金にしては動きが妙すぎる。
御託や上っ面の話は――正直どうでもいいんだよ」
「オイオイ。シロクマ如きに語る舌があるとでも思ってんのか?」
「まぁ、どーしても軽口しか出て来ねぇなら、口より手を動かさせてもらおうか」
続いてエイヴァンも追撃を仕掛けるものだ。堅牢な氷拳を振るいて、撃を成そう。
どうにも、窺った気配は魔種の類ではなさそうだ、が。
ならば逆に疑問は深まる。一体どこからの刺客なのか、と。
――だが正体不明ならいずれにせよ放置してはおけない。
転がした後にたっぷり聞かせてもらおうかと――彼は再度拳を放ちて。
「お前、どこの所属だ? いやそもそもどこかに『所属』してる奴なのか?」
直後にはヲルトも駆けつける。『戦争屋』の背後に回り、手で作った銃口を――向ければ、その指先には極大の魔力が宿るものだ。刹那の果てには射出できる状態で、問えば……
「ハッ――言う訳ねぇだろ? ただ、まぁそうだな……
俺はちっと雇われた人間でな。で、雇先は割とすぐに分かると思うぜ?」
「具体的な事を言えよ。なぁ、どこから来た?」
「まぁまぁ多分だが……数日待てば分かるからよ、大人しくしてな。
誕生日プレゼントを待つ――ガキみたいによ!」
直後。男は腰を捻り、体のバネをもってしてヲルトに後ろ回し蹴り。
彼の足を弾かんとして――しかしヲルトも反射的に『銃』を放つものだ。戦争屋の頭へと。それ自体は辛うじて躱されるも、続けざまに襲い掛からんとしていた古代獣の頭を吹き飛ばした。
――然らば。第二射の準備が整う前に、男は駆け抜けるものだ。
これ以上は流石に捕まってしまいそうだと。戦場の混乱の中に隠れんとし……
「テメェ……! 待ちやがれ! こんな所何してやがる――!!」
「おぉ――? しつけぇな、イレギュラーズてのは……誰だよお前は!!」
瞬間。戦争屋が完全に気配を消さんとした寸前に捉えたのは――シオンであった。
彼女の瞳には、憤怒が宿っている。それは何故か?
――ハッキリと顔を覚えている訳じゃねぇ、が!
「忘れたってか? それとも興味がないってか? なぁ――クソ親父ィ!!」
「あぁ? …………あ? おぉ? テメェ、もしかして上の方のガキか?」
「あたしは、シオンの方だ!!」
頭の中が灼熱に染まりそうだ――
剣撃一閃。『戦争屋』も手に持っていたナイフで応じれば、激しき金属音。
――殴り飛ばす。全部吐かせてやる!
何をしてるのかも、何故あたしら家族を置いていったのかも!
「ハハ! 面白れぇ……! だがお前に構ってる暇はないんだな、これが。
――どーしてもなら、今度にしろ。どうせ俺は暫く鉄帝にいる予定だからよ!」
が。向こうの方はシオンに付き合う義理はないとのたまうかのように。
丁度。偶然にも混戦で割り込んできたアームズが居れば――それを囮に駆けて行った。
待ちやがれ――シオンが即座にスクラップにする、も。この状況では最早追えず。
「ねえヴァイオレット――彼らの狙いは何だったんだろうね?
命をかけて、っていう風には見えなかったけど……
でも只の物見遊山、って感じでもなかったよね。何か意思はありそうな……」
「…………ふむ。見てくださいシキ様、これは……」
しかし戦況は完全にイレギュラーズ側に傾いていた。
残存のアームズは最早少なく、古代獣も散り散りに逃げている。
……その中でも『人間』の相手をし、隙を突いて奇襲などを行っていたシキやヴァイオレットたちは、己らが相手をしていた者達の正体に関して思考を巡らせていた。然らば、ヴァイオレットが試しに占いをしてみれ、ば。
「皇帝の逆位置――です。あまり、吉報の意ではなさそうですね」
何がはたして起こるのか。
胸のどこかに微かなしこりが……残る者もいた。
しかし。勝利が決定し、鉄帝国軍人らを中心に勝ち鬨が挙がる――
あぁ今は浸ろう、勝利の美酒に。
アーカーシュの平穏を取り戻せた事は――確かなのだから。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
――依頼、お疲れさまでしたイレギュラーズ。
アーカーシュ全体の戦いが収束した模様です。パトリック大佐など、他の戦場がどうなったかは各々のシナリオにて……
各所で怪しく動いていた者達は何者なのか――その詳細は、きっとその内に。
MVPは、戦場を駆け抜けた貴方に。
ありがとうございました。
GMコメント
●依頼達成条件
敵勢力の撃退
●重要な備考
本シナリオは運営都合上の理由により、通常よりも納品日が延期される場合が御座います。
●フィールド
アーカーシュに存在するショコラ・ドングリス遺跡内部です。
パトリック・アネル大佐の下へと続くルート上に敵の防衛線が確認されました。この地を抑えられていると、大佐へ攻撃を仕掛ける部隊に何らかの影響が及ばないとも限りません――敵陣を乱し、敵勢力を撃退してください!
周囲は謎のキューブが浮かんでいたりしますが、戦うに不足ない程に広いです。
●行動指針
おおよそ、行動方針としては三つほど存在します。
【A】:敵との『直接戦闘』
【B】:迂回し、敵の背後を突く『迂回班』
【C】:その他戦場の『支援』全般。
Aは多くの味方NPCと共に敵陣を粉砕する為に戦います。
Bは戦場を大きく迂回し、敵陣を背後や側面から突く奇襲戦法です。上手く行けば敵に打撃を与えられます。
Cは主にAに影響を与えますが、Bにも若干影響があります。
ただ、これ以外に何か作戦のアイディアがあれば行ってみても構いません。
●敵戦力
●セレストアームズ(斧・槍・銃)×50~
アーカーシュに眠る古代の防衛兵器です。現在はパトリック・アネル大佐の指揮下に完全に置かれており、敵対者の排除を狙ってきます。最低でも50体はいますが、一定ターン毎に増援としてある程度の数が増えていくようです。
斧は超接近戦型で攻撃力が高く。
槍は近距離~中距離型で反応や命中が高く。
銃は遠距離タイプでEXAが高い様です。
●ハイアームズ(天空闘騎)×15
上記のセレストアームズの強化版たる存在です。
飛行能力を宿しており、自在に空を飛びます。戦闘能力としては剣や槍、斧など接近戦に特化した精鋭であり、更に時折超高熱の熱閃を放つことも出来ます。【火炎系列】や【出血系列】のBSを付与する事があるようです。
この内の数体は『指揮型タイプ』がいる様で、その存在はR4以内のセレストアームズ・ハイアームズの戦闘能力を強化します。(後述のアルトラアームズは対象ではありません)
●アルトラアームズ(天空機将)×5
セレストアームズ、ハイアームズに続く最高位の古代兵器です。
ハイアームズ並みの接近戦能力に加え、更にドローンビットの様な自動攻撃兵器をも操ります。ドローンビットは超高熱の熱閃を放ち、貫通能力も宿している様です。
全体的に優れた能力を持ちますが――エンジンは実は人間そのものであり、特務派の軍人が犠牲となっている様です。
●古代獣(エルディアン)×多数
かつて古代に魔王の手先だったモンスター達の残党です。
現在は強力な魔種たるパトリックに支配されています。
●???×複数
敵勢力の中に人間が混じっています。
どうにも特務派の軍人と言う訳でもなく……むしろその戦い方は一対一に慣れており、まるでラド・バウ闘士の様な戦い方を繰り広げます。が、少なくとも現在確認出来る限り、ラド・バウ闘士に(属している者として)彼らはいません。
一対一であればかなり強いです。しかしどこか無理をする戦いではなく、戦況次第で彼らは戦線を途中離脱します。目的は不明です。
●『戦争屋』
敵勢力の中に混ざっている謎の人物です。『戦争屋』と呼ばれています。
まるで狼の様な獣種の特徴がありますが、詳細は不明です。
●味方NPC
●ゲルツ・ゲブラー(p3n000131)
ラド・バウB級闘士にして、鉄帝国保安部に属する一員です。
遠距離射撃を得意とする飛行種であり結構強いです。
また、射撃程ではありませんが接近戦も出来、皆さんと共に戦います。
【A】で戦いますが、指定があれば他方面に移動します。
●特務派・軍務派軍人×30
鉄帝国の軍人達です。
特務派――つまりパトリック・アネル大佐に付き従っていた者もいますが彼らは大佐の反転を知り、鉄帝国側に帰順しています。前回は敵対していた場合もありますが、今回は純粋に味方ですのでご安心ください。
接近戦型、遠距離型共に攻勢に優れた者達です。
反面、治癒術などの支援に特化した者は少ないようです。
【A】で戦いますが、指定があれば他方面に移動します。
●酒樽くん1号
ヴァレーリヤさんに懐いているゴーレムです。
酒樽の様なフォルムから名付けられました……でもお酒は出ません。多分。
パトリック大佐にコントロールが奪われかけていますが、辛うじての所で抵抗できており、皆さんと共に戦う意志を見せています。酒樽らしい強靭さによって、皆さんを可能な限り守らんとするでしょう。
【C】の行動を行いますが、場合によって【A】で戦います。
●アレフゼロ
ハイデマリーさんに懐いているゴーレムです。
酒樽くん1号と共にパトリック大佐にコントロールが奪われかけていますが、辛うじての所で抵抗できていて、なんとか皆さんと共に在らんとしています。熱閃を放つことも出来るのですが、今回は防御主体の行動になるかもしれません。
【C】の行動を行いますが、場合によって【A】で戦います。
●ヴォルフガング・ヴォルフィード
マリアさんの関係者です。
偶然にも、地上の街――ノイスハウゼン付近にいたそうです。かの街が消し飛ばさんばかりの火に襲われたのを見て、これは放置しておけないと鉄帝で名高いマリアさんの名前を使って空路手段を経て援軍として馳せ参じました。
熱を操る技能を宿しており、卓越した武技を宿し、敵陣を粉砕せしめる勢いで戦います。
【A】で戦いますが、指定があれば他方面に移動します。
●輝龍 神夜
マリアさんの関係者です。
ヴォルフガングと同様にノイスハウゼン付近にいたそうです。
超速の剣技が数多の敵を捻じ伏せんとするでしょう。皆さんと共に戦います。
【A】で戦いますが、指定があれば他方面に移動します。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
●決戦シナリオの注意
当シナリオは『決戦シナリオ』です。
<Stahl Gebrull>の決戦及びRAIDシナリオは他決戦・RAIDシナリオと同時に参加出来ません。(EXシナリオとは同時参加出来ます)
どれか一つの参加となりますのでご注意下さい。
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