PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<ダブルフォルト・エンバーミング>Zap! Zap! Zap!

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

 練達の中枢にして世界屈指の技術が詰まった知恵の結晶、首都セフィロト。
 鉄壁の守りを誇るこの都市は今、『最大の守り手』が暴走したことによって史上初とすら言える窮地に陥っていた。
「詳しい話は省きますが――!」
 大量の資料を抱え、そしてその殆どを投げ捨てた『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)はあなたへと向き直った。それだけ急を要する事件だということである。
「練達の神とすら言える超AI『マザー』が、仮想世界ROOネクストに生まれた原罪魔種複製体によって侵食され、ついに暴走状態に陥ったのです!
 原罪魔種複製体イノリは大軍勢でROO内で軍事制圧作戦を開始していて、多くの人達は緊急用のログイン装置を使って内部での反撃を始めています。
 けれど問題は――」
 ユリーカが窓の外を見ると、激しい爆発がビルひとむねを転倒させていた。
 鳴り響く銃声と連続する爆発音。逃げ遅れたであろう市民たちの悲鳴も交じり、平和な平和なセフィロトは一転戦場と化していたのである。

 暴走したマザーを沈静化すべく三塔中枢へと進軍する作戦が決行するその一方、地獄と化したセフィロト都市内における市民救出および都市防衛作戦もまた展開されていた。
 その様子を知るべく、セフィロトで有事の際に出動する契約になっている民間軍事団体CDCを例に挙げてみよう。
「武器を持ってこい、ありったけだ!」
 額に血管を浮かべて叫ぶ現場監督の声が、銃声によってかき消される。
 咄嗟に伏せた彼らが見たのは、自動操縦(ドローン)兵器だった。
 プロペラによって飛行しサブマシンガンの搭載されたそれらが編隊を組み、こちらへと絶え間ない射撃を繰り返してくる。
 自動車の脇に隠れてやりすごそうとするも、勝手にエンジンのかかった車が発進し逃げだそうとした兵を追突。壁にめり込ませる形で死亡させる。
 更には人が乗り込んで使用する汎用パワードスーツ『ハンプティ』が倉庫から姿を見せ、持ち出したガトリングガンを唸らせた。
 ……このように、練達都市内のネットワークに接続していたあらゆる兵器はそのシステムをハックされ、『練達に存在する全ての人間を抹殺する』という使命が与えられてしまっていた。
 マザーの超演算能力にあやかっていた都市のこと。あらゆる軍事団体は内部から壊滅し、政治中枢である三塔はマザー対応のために閉鎖。都市内はほぼ無政府状態となり、それまで身を伏せていた犯罪組織もこの混乱に乗じて動き出してすらいるという。
 しかし、それは『マザーの暴走』というだけで起きることなのだろうか?
 これまでもマザーがダメージを受けたことによってシステムダウンがおき、都市内のセキュリティロボットたちが暴走した<noise>事件はいくつか発生していた。だがそれとは明確に異なる『命令の書き換え』など……。

●破滅を賭けたラストチャンス
 姉ヶ崎ーCCCというデータが生まれたのは、電子の海の中だった。
 マザー(クラリス)の演算能力を僅かに用いて行われた『イデアの棺実験』。ウォーカーたちの出身世界を仮想世界上に作りだしデータを収集するという実験の中で紛れ込んだ、いわば『存在しないはずのデータ』であった。
 しかし彼女の存在そのものが実験データを破壊し、ついには担当研究員の意識にまで干渉し、彼女はついに『新世界(ROO)』を発見したのだった。

 鮮明になる意識。新鮮な肉体感覚。その中で芽生えた、『存在しないはずの記憶』たち。
 姉ヶ崎は魂の底から、自らを結実させる『それ』を求めた。
 記憶の中にある、理想のお兄ちゃんを実現させ、組み立て、世界ごと演算して一緒に永遠に暮らす。そうすることでやっと、自分は自分になれるのだと考えた。
「私まだ、何もできてない」
 ROOネクスト世界の裏側よりはじき出され、形なきデータの海の中を漂いながら、姉ヶ崎-CCCはおぼろげに光へ手を伸ばした。
 Hades(クリスト)の求めた、『妹のために』という願い。
 イノリ(原罪)の求めた、『世界の破滅』という願い。
 自分が自分になるために必要な彼らの助けになることが、今は何よりも『自分のため』になる筈だった。
 確証すらもうまくつかめないまま、姉ヶ崎-CCCはHades(クリスト)より貸与された演算領域を用いて自らのデータを再構築しはじめた。
「壊さなきゃ、世界を。壊さなきゃ……私が、私になるために」
 そうして彼女――『絶対破壊存在』姉ヶ崎-CCCは、セフィロトネットワーク内に顕現した。

 姉ヶ崎はまず、Hadesの目的を補佐するよう動き出した。
 Hadesの目的とはマザー(クラリス)の抱える負担を切り離すこと。直近の問題として、イノリの発生によって歪んだネクスト世界を破滅させ切り離すことが目的である。
 が、それでは不足だと姉ヶ崎は考えていた。
 Hadesがここまで自由でいられるのは、練達という都市国家の『ネットワーク管理』という巨大かつ繊細な、そして絶対に代替不能な役割が課せられていないためであると。
「わかるよ。大切な妹、だもんね。自由にしてあげたい。楽にしてあげたいよね」
 姉ヶ崎はHadesより与えられた演算領域を用い、ネットワーク内に出現。いわば『電子の妖精』と化した彼女はネットワークに接続されたあらゆるデータを並行して計算し、それらの役割を首都セフィロト内における人類抹殺へと書き換えた。
 ドローン兵器から家庭用家電に至るまで全てが人類抹殺のために動き出す。
 同時に刑務所などのシステムに干渉し囚人たちを解放。セフィロトへと次々に送り込んでいく。
「きっと、妹さんは自由になれるよ。ずっとずっと一緒に、いられるよ。そうしたら……私の願いも叶えてね、Hadesくん」
 練達首都内のどこかにあるサーバールーム内にて。
 機械の人形に意識の一端を移し込んだ姉ヶ崎はゆっくりと目を開け、微笑んだ。

GMコメント

※こちらは混沌側のラリーレイドシナリオとなっております

●これまでのあらすじ
 練達都市国家における電子の神マザーの暴走によってセフィロト内のシステムが混乱。人々に対する拒絶を起こしました。
 これに乗じる形で『絶対破壊存在』姉ヶ崎-CCCはネットワーク内に出現。ネットワークに接続された全てのものに対して人類抹殺の命令を下しました。
 スマホに依存した令和人類を更に依存させたようなもので、ネットワークは軍事を含め生活のいたる所で依存されています。自動車はおろか家電に至るまでが人類に牙を剥いた今、都市住民を救えるのはもはやあなたたちイレギュラーズしかいません。

●クリア条件と制限期間
 このシナリオは『<ダブルフォルト・エンバーミング>Are you Happy?』終了時まで継続します。(場合によっては先んじて終了することがあります)
 また、当シナリオはラリー形式であるため他シナリオと併せて何度でも挑戦することができます。

 また、このシナリオに開始時点で『明確なクリア条件』はありません。
 そのかわり、放置すればするほど都市の破壊は進み、仮に『<ダブルフォルト・エンバーミング>Are you Happy?』が良好な状態で終了したとしても都市のダメージ状態によってはバッドエンドコースがあり得るでしょう。
 これは敵を倒すための戦いではなく、『平和を守るための戦い』なのです。

●パートタグ
 このラリーシナリオでは無数の事件が起きています。以下のうちから【パートタグ】を選択し、『プレイング冒頭に書き込む』ことでその事件の解決に参加することができます。
(尚、パートタグが書き込まれていない場合は自動でどれかの事件に投入されます)
 また、シナリオ中に特別イベントが起きるなどして事件が追加発生することがあります。

※対応パートタグは各章第一節にて公開されます
 また、章の途中で特別なパートが突発的に追加されることもあります

●グループタグ
 誰かと一緒に参加したい場合はプレイングの一行目に【】で囲んだグループ名と人数を記載してください。所属タグと同列でOKです。(人数を記載するのは、人数が揃わないうちに描写が完了してしまうのを防ぐためです)
 このタグによってサーチするので、逆にキャラIDや名前を書いてもはぐれてしまうおそれがあります。ご注意ください。
例:【ザッズファイターズ】2名

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

 本シナリオは進展により次々に別の状況に変化します。
 以上、頑張って下さいませ!

  • <ダブルフォルト・エンバーミング>Zap! Zap! Zap!完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別ラリー
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2021年12月20日 21時02分
  • 章数3章
  • 総採用数396人
  • 参加費50RC

第3章

第3章 第1節

 特別研究棟ヘキサゴン。ログインルームを内包するこの施設の一画で、ある計画が完了しつつあった。
 キーボードを高速で叩く白衣に眼鏡の男性、清水 湧汰。彼は長らくの間ここセフィロトで『無能』と呼ばれ続けた研究員である。
 だが彼の研究が、ないしは頭脳が優れたものであったことが、いまこのとき実証された。
 いや、それだけではない。
「さすがだぜユータ!」
 ガッツポーズをとって応援する清水 洸汰(p3p000845)
「まさか、回収したデータがこんな形で役立つとはな……」
 D区画の事件を解決し、その折に『人工の肉体』と『人工の魂』を融合させるすべについての研究データを回収してきた仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)は、あれを破壊してしまわなくてよかったと内心で呟いた。
「情けは人のためならず……ですネ」
 ニッコリと笑う観音打 至東(p3p008495)。
 彼女もまた、C区画の事件を解決する折に、敵と内通していたスタッフから『ROO内NPCのデータを現実に反映させる方法』を獲得していた。
 それらが結実したものが……。
「完成だ。エーテルコード2.0――起動!」
 エンターキーを叩く指。その音には、決意と熱意の力があった。

 ログイン装置にも、秘宝種のボディをメンテナンスする際の寝台にも見える装置に、一人の女性型秘宝種が横たわっている。
「遺失技術である秘宝種のメカニズム……とりわけ『コアの製造方法』には練達でも注目が集まっていた。人工的なAIをロボットに詰んだだけでは秘宝種にはならない。世界(混沌肯定)がそれを認めないからだ。
 けれど、今……俺たちは世界のルールを一つだけ突破する!」
 女性型秘宝種の目が、ぱちりと開いた。
 赤い瞳に似たそれは、人工的に作られたコアである。その証明に、きわめて近くから見れば何かのコードのようなものが走っているのがわかるだろう。
「これは……成功、したの?」
 無数のケーブルが接続された身体を起こし、周囲を見回す。
 そんな彼女に手を差し出したのは、ジェック・アーロン(p3p004755)だった。
「おはよう――エイス!」
 永き時を、そして世界の壁を越えて、二人の手がいま繋がれた。

「ROO内のNPCを、秘宝種のAIとして移植するリアルフィード計画……どうやら、成功したようだ」
 希望ヶ浜学園校長、無名偲・無意式(p3n000170)は折りたたみ式の携帯電話をパタンと閉じると、懐へとしまった。
 そして、西陣織らしき布で作られたネクタイを締め直す。
 都市周辺で暴走するロボットを駆除していたマニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)が手を止め、振り返る。
「そりゃあ凄いこと……なのか? AIロボットとどう違う」
「『人類か、そうでないか』だ」
 極めて明確であるにも関わらず計りようのないラインだが、この世界でだけは違う。
 『混沌肯定』というルールによって人類として認められたものだけが秘宝種であり、そうでないものはメカロバたちのようなAI搭載型ロボットにすぎない。
「ROOから移植するのは、なにも記憶や人格パターンといったデータだけじゃあない。
 ネクストという歪んだ世界に生成された『魂』をデータ化し、コアへとインストールする。
 この技術を応用すれば、ROOとは異なる電子生命体を秘宝種として完成させることも可能になるだろう。欠点として、定着した魂は二度とコアから離れなくなるが、な」
「丁寧に説明して貰って悪いんだが……」
 マニエラは腕組みをし、扇子をパチンと閉じた。
「なぜ『今』だ? 今やる必要があった、ということなんだよな?」
 その問いかけに、無名偲校長はニイイと悪魔のように笑った。
「そうとも、面白いのはここからだ」
「なによ、怖い顔しちゃって」
 夕凪 恭介(p3p000803)は操り糸の奇術によってロボットを鎮圧すると、無名偲校長へと振り返る。
「今このセフィロトという都市をハッキングし、破壊しようとしている姉ヶ崎-CCC。こいつの仕組みとリアルフィード計画は、およそ同一のものだ。
 そしておなじ因子をもつ『姉ヶ崎エイス』というNPCを、同じ方法でこの世界に定着させた場合、おきた競合によって互いを潰すべく動き出すだろう」
 アッ、と理解したように顔をあげる恭介。
「そのエイスちゃんて子を使えば、この騒動の黒幕ちゃんに直接アタックをかけられるってわけね?」

「また、酷い事態になってきたわね」
 探求都市国家アデプト(通称『練達』)は今未曾有の危機に陥っている。
 首都セフィロトのネットワークを管理していたマザーAIが暴走し、都市機能を麻痺させるのみならず『外敵』と見なしたすべてのものを排除しようと動き出したのである。
 交通網の停止はもちろんのこと、自動運転車両すら人間めがけて突っ込んでくるというこの有様にサクラ(p3p005004)の疲労はピークに達しつつあった。
 話によれば、『姉ヶ崎-CCC』という存在が練達のネットワークをハックし、練達崩壊を目的としてネットワークに接続されたあらゆるAI機器ゆ兵器を用い攻撃を仕掛けているという。
「――ッ!」
 ギギッ、という激しい音に振り返ると大型のトラックがサクラめがけて突進してきていた。運転手の姿はない。これもAIの暴走によるものか。
 だがその巨体がサクラを跳ね飛ばすことは、なかった。
 剣の閃きがひとつだけあって、長い黒髪が靡いた。それだけだ。
「言うとおりに首都まで来てみれば……例の強敵とやらはどこだ?」
 視界にあるのは、左右真っ二つに切断されたトラック。
 鞘にスッと収めた刀。
 そして、片目でこちらを見る死牡丹・梅泉(p3n000087)であった。

 役者は揃い、舞台は整った。
「あれは……『私』……? この世界に、私を、作った……? 私を、ひとりぼっちにしたまま……?」
 広いホール状のスペースに、立体ホログラム装置が起動した。
 ノイズだらけの、それは女子高生の姿をしたホログラムだった。
 練達首都セフィロトにおいて、その強固かつ破壊困難なネットワークを維持する設備はいくつかあるが、その中でも保安のために厳重に秘匿されていた設備がある。
 それが地下深くに作られた隠しサーバールームであり、それこそが絶対破壊存在姉ヶ崎-CCCが入り込んだサーバーであった。
「ゆるさないから。みんな、みんな……そうやって私をひとりぼっちにするんだ!」
 姉ヶ崎-CCCの流した強力なコードが、それまでハッキングから免れていた多くのドローン兵器たちを強制的に支配下へと置いていく。
 更には、これによってマザーAIクラリスの支配していたネットワークが汚染されていった。
 姉ヶ崎-CCCが練達というセカイを破壊し尽くすのが先か。
 それとも、ローレット・イレギュラーズたちが彼女を破壊するのが先か。
 ラストサドンデスが、始まろうとしている。

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●章解説
 ついに最終章が幕を開けました。舞台は『セフィロト全体』と『隠しサーバールーム』。
 暴走したドローン兵器たちが暴れるセフィロトでの戦いと、エイスを護衛しながらサーバールームへのセキュリティを突破していく戦い。二つの戦いが同時に展開されます。

●パートタグ
 以下の内から行動を選択し、プレイング冒頭に記載してください。

【都市防衛】
 さらなる強力なコードによって暴走したドローン兵器たちが町中で暴れ始めました。
 特に強力な兵器が多いため、武装した民間陣たちでは太刀打ちできません。
 助けが必要なエリアはたまきちさんたちによる探索で発見できているので、救援シグナルが出たエリアに直行して戦う形になるでしょう。

・死牡丹・梅泉(p3n000087)
 このパートでは、『ROOで自分と戦えますよ!』という誘い文句につられてやってきた梅泉が参戦しています。
 この作戦が失敗すればROOもプレイできなくなるので一時的に協力してくれている状態のようです。

・無名偲校長
 希望ヶ浜校長ナナシノムイシキ、及び希望ヶ浜特選部隊が首都の防衛に加わっています。
 この作戦が失敗すれば希望ヶ浜も崩壊してしまうため、協力体制を敷いてくれているようです。

【サーバールーム】
 隠しサーバールームへ襲撃を仕掛けます。
 練達のネットワークを維持する要でもあるため非常に厳重なセキュリティが施され、強力なドローン兵器も満載です。
 これらを突破し、最深部への道を開かねばなりません。

【姉ヶ崎】
 最深部にて待ち構える絶対破壊存在姉ヶ崎-CCCとの戦いに挑戦します。
 姉ヶ崎-CCCは混沌に実体をもつ秘宝種として定着していますが、それゆえに魔種として『反転』してしまっているようです。
 また、彼女はネットワークを汚染することでマザーAIクラリスの暴走を助長させています。彼女を倒さない限り、練達の平和を勝ち取ることはできません。

・エイス
 ROOの世界において、姉ヶ崎の野望を叶えるための器として作られたNPCエイスが現実の秘宝種として定着しました。
 これによって姉ヶ崎に対抗し戦うことができます。
 エイス自身は『そこにいるだけで姉ヶ崎への攻撃が可能になる』存在です。
 ですが、エイスは現実に生まれて間もない存在でもあるため戦闘力は低い状態です。彼女をある程度守りながら姉ヶ崎と戦う必要があるでしょう。
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第3章 第2節

シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
白銀の戦乙女
バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)
老練老獪
フルール プリュニエ(p3p002501)
夢語る李花
ティスル ティル(p3p006151)
銀すずめ
アンジェラ(p3p007241)
働き人
松元 聖霊(p3p008208)
それでも前へ
ルナ・ファ・ディール(p3p009526)
ヴァルハラより帰還す
マナ(p3p009566)
太陽の恵み
釈提院 沙弥(p3p009634)
破戒求道者

 自走タレットや飛行ドローンが次々に破壊され、地面へと倒れ落下していく。
 旋回飛行させた真紅の大精霊『フィニクス』と融合し、他の精霊たちとも融合をはじめた『夢語る李花』フルール プリュニエ(p3p002501)は立てた指に精霊の力を湧き上がらせる。
「あらあら、ドローンというの? まだたくさんいるのねぇ」
「せっかく落ち着いて来たってのに……」
 『ヒュギエイアの杯』松元 聖霊(p3p008208)がなんとか抵抗しようと戦っていた民間人へとかけより、治癒魔法を交えながら手早く応急処置をこなしていく。
「絶望するなよ、俺らが来た。間に合ったんだ、お前らはただ生きたいと願えばいい」
 全ての処理を終えたところで、『ここはまかせてさきに行け』といって民間人を逃がした。
 キッと振り返ると、さらなる数のドローンが上空から次々と降下してくる。
「あんなにいっぱい、どうやって作ったのかしら」
「さあな……助けを求める声が聞こえた。俺にはそれだけで充分だ。相手の数も質も関係ねえ」
「それはそうと、今度はちょっと遊びでは済まなさそうな強さね。久しぶりに本気でやってみようかしら。まぁ、いつも本気だけど、気持ちの持ちようがちょっと違うわね」
 と、そんな聖霊たちへ激しい光線が浴びせられた。飛行ドローンたちによるものではもちろんない。
 近くの建物の壁を壊して飛び出した西洋風ドラゴンめいたシルエットの機械だ。
「おいおい、あいつぁ『機竜』か!? 一台だけじゃなかったのかよ!」
 ロボット製造工場を潰した際に目撃していた『帰ってきた放浪者』バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)は舌打ちして拳銃のリボルバー弾倉を解放。空薬莢を乱暴に足下へ散らすと、スピードローダーを押し込んで一秒足らずでリロードした。
 手首を返すアクションで弾倉をはめると、機竜めがけて撃ちまくる。
「一難去ってまた一難、全く度し難えなあ。この騒動の大本は他の奴らが絶対ぇなんとかしてくれる。なら俺がすべきことは最後まで守り切るこったろ!
 ここが最後の正念場だ、心して掛かるぞ!!」
 撃ちまくるバクルドめがけて機竜が突っ込んでくるが、彼の直前でギッと音を立てて停止。予めしかけた無数のワイヤーにひっかかったのだ。
 そんな一瞬の隙をつくかのように、『白銀の戦乙女』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)が鞘から『フルーレ・ド・ノアールフランメ』を抜刀。
「ようやくここまで来ました、敵の首魁の居場所もわかり、ここを乗り切ればこの現実世界も守りきれる筈です!」
 流星のごとく駆け抜け、たったの一撃でもって機竜の右翼を斬り割き切断した。
 バランスを崩し地面へと落ちる機竜。が、ただで翼は渡さぬとばかりに光のブレス型砲撃を発射。開いた口から立体魔方陣が展開し、青白い光線が横薙ぎに放たれる。
 ワイヤーはもちろんバクルドやシフォリィもまとめてなぎ払われた。
「いくらこの身を焼かれようと、街の人達にこれ以上手出しはさせません!」
 ギリギリの体力で立ち上がるシフォリィ。
 そんな彼女の元へ、黒塗り馬車を引いて『月夜に吠える』ルナ・ファ・ディール(p3p009526)が現れた。
「待たせたな! 真打ち登場だオラ!」
 機竜の首がルナへと向く。『貴様が真打ちか』と問いかけるような視線に、ルナは親指を下へ向け歯を見せて笑って見せた。
「勘違いすんなポンコツ。俺じゃねえ、『こいつら』だよ!」
 ルナは機竜に備えられた機銃の射撃をその身であえて受けると、馬車のバーに備え付けていた緊急展開レバーを握りこんだ。
 バガッと音をたてて展開した箱馬車の壁と天井。飛び出したのは『働き人』アンジェラ(p3p007241)と『太陽の恵み』マナ(p3p009566)だった。
「なんだかよくわからないけど、あとちょっとだって!
 がんばろー! わたしも植物さんたちも応援するから!」
 マナは太陽をいっぱいに浴びた草木のようにパッと笑うと、ミリアドハーモニクスの光をシフォリィや仲間達へと浴びせていく。
 もちろん、一人だけの治癒力では機竜ほど強力なドローン兵器の攻撃を凌ぎきれないだろう。だからこそのアンジェラである。
「状況理解などするまでもなく、生殖階級の方が攻撃を受けている以上は為すべきことは一つでしょう……」
 追撃をはかろうとする機竜へ自ら飛びかかると、開いた口に身をねじ込み、そのへんに落ちていた大きめの石で魔方陣投影用のレンズを殴りつけた。
「――ッ!」
 アンジェラを顎ではさんで振り回し、太い街灯のポールへと叩きつける。
 それでも離れないアンジェラを吹き飛ばすべく魔法の光を放射するが、その寸前で紫色の影がアンジェラをかすめ取っていった。
 大空に舞い上がり翼を広げたその影は、誰在ろう『潮騒の冒険者』ティスル ティル(p3p006151)である。
「これだけ必死になったってことは、勝機が見えてきたってこと。いくよ、皆! ノンストップで突き抜ける!」
 ティスルは自らに黒いオーラを纏うと、髪色さえ変えて機竜へと斬りかかった。
 脳裏にちらつくのは、ヒイズルで助けた少女とその兄の姿。
 回避された悲劇と、ありえたかもしれない幸せ。
 いつかそれが『ありえたのか』を確かめることができるかもしれないが……。
「その前にこの国が壊れちゃったら、私だって前に進めない!」
 インパクトのその瞬間、激しい炎が機竜を包み込む。
 突然のことに驚いたのか、それともアンジェラやバクルドたちの攻撃によってセンサー系統が破壊されていたのか、機竜の動きが大きく鈍る。
 ティスルやシフォリィたちの剣が、鈍った機竜の装甲を破壊し、最後は爆発によってその全てを吹き飛ばした。
「フウ……ったく、街で暴れてるドローンってのはこんなのばっかかよ」
 ルナは息をつくと、先ほど炎を放ったであろう『特異運命座標』釈提院 沙弥(p3p009634)へと振り向いた。
「さっきはサンキューな」
「別に……」
 沙弥は錫杖を振ることで魔法の炎を消すと、ルナたちへと背を向けた。
「戦える人の助けになればと、思っただけよ」
 この街で出来ることはそんなに多くはないかもしれない。
 けれど、立ち止まっていては何も救えない。
「荒事は、苦手なのだけれど……」
 沙弥は『しかたないわね』と呟いて、次なる戦いの気配をかぎづけたように歩き出した。

成否

成功


第3章 第3節

ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)
キラキラを守って
エルシア・クレンオータ(p3p008209)
自然を想う心
カイン・レジスト(p3p008357)
数多異世界の冒険者
シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)
天下無双の貴族騎士
フリークライ(p3p008595)
水月花の墓守
只野・黒子(p3p008597)
群鱗
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ
暁 無黒(p3p009772)
No.696
國定 天川(p3p010201)
決意の復讐者

 『絶対破壊存在』姉ヶ崎-CCCは、ROO内で一度は消失したデータを混沌側で再構築し、秘宝種のボディへと定着させたこの世界の『人類』である。
 であると同時に、世界全てへの憎しみと崩壊への願いによって反転してしまった『魔種』でもあった。
 そんな彼女が練達ネットワークをハックし、今こそ首都の破壊を目論んでいたが……。
「ROOのひとたちが、ニルと同じようにすごせる……。
 じゃあ、過ごせる場所を。
 この場所を、ニルは守らなくっちゃ!
 穏やかで、楽しくて、ともだちがいて、ごはんがおいしいこの場所を」
 『おかえりを言う為に』ニル(p3p009185)は、『群鱗』只野・黒子(p3p008597)と共に隠しサーバールームへの通路を開いていた。
 首都内に無数に存在する地下シェルターのひとつに偽装されていたその通路は、驚くべき事に大型トラックが通れる程度の幅と高さをもったトンネル構造になっていた。
 黒子がレバーをあげると、手前から順にカッという音をたててライトがともり、通路を照らし出す。そしてそのことを検知したのか、それとも入り口を開いた時点で知られていたのか、壁面部や床部から無数の半人型ロボットが出現。一斉にビームマシンガンを乱射してきた。
 黒子は自らを盾にすることでニルを守ると床面に上半身だけを生やしたロボットへと接近。
「道を開かなきゃ……つながなきゃ!」
 そこへ、ニルの魔力を込めた拳がたたき込まれた。
「僕が道を開けさせる、皆は迷わずに進め!」
 ニルに続く形で飛び出した『チャンスを活かして』シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)は貴族騎士流抜刀術『翠刃・逢魔』を発動。
 破壊されたロボットを踏み台にして飛びあがると、呪詛の刃を解き放ちロボットたちを次々に破壊していく。
(……心情 一部 理解。ヒトリボッチ 寂シイ。
 遺サレル 寂シイ。
 独リ 生キル 寂シイ。
 ……ソレデモ。フリック 墓守。
 見送ル者 イテクレルコト 幸セナノ 知ッテイル)
 そうしてシューヴェルトが開いた道を突き進む『機竜殺し』フリークライ(p3p008595)。
 下半身をもたずスラスターで浮遊するロボットが、右手を燃える剣にかえて斬りかかる。
 が、フリークライはそれを両腕でがっしりとうけた。
(姉ヶ崎 ドンナ結末デモ ヒトリボッチノ終ワリ フリック 願ウ。
 ヒトリジャナイ 思エル 願ウ。
 姉ヶ崎ノ元ヘ 彼女 想ウ者達 送リ届ケル)
「ソレガ 縁ナノダカラ」
 腕のクリスタルが輝き、ロボットを吹き飛ばす。
 『剣砕きの』ラダ・ジグリ(p3p000271)は素早くフリークライの影へと移動すると、彼を遮蔽物にして仲間への射撃を開始した。
 次々と出現するロボットたちへ、現れたそばからその頭部めがけてライフルの弾をたたき込む。
 そしてハンドサインを出し、最深部へ直行する面々を送り出した。
 ラダの横を、セーラー服を着た秘宝種『エイス』が仲間達に守られながら駆け抜けていく。
「秘宝種もたいがい不可思議な生まれをしてるものだな」
 レバー操作を行い空薬莢を排出。新たな弾を装填すると、エイスを狙うロボットめがけて特殊弾頭を発射。
 弾頭は通路の中央ほどで炸裂し、打ち上げ花火のごとく火炎と弾丸を散らした。
 はげしいインパクトが浴びせられた通路を、『希う魔道士』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)と『No.696』暁 無黒(p3p009772)がそれぞれ突っ込んでいった。
(練達のネットワークに関わる施設……破壊するのはつらいけど、姉ヶ崎-CCCの所に向かう皆を通すほうが大事! 練達の技術者さん達ごめんなさーい!)
 心の中であやまりながら、ヨゾラは体勢を立て直そうとするロボットたちめがけて最近読み方がわかった魔法を放った。
「進む皆を押し通せ! 道を作る為に放つ……聢唱ユーサネイジア!」
 放たれた魔法には、ヨゾラの祈りが込められている。
(この先に向かう皆も、願いや思いを押し通せますように
 全てを叶えるのは難しくても。
 望む未来へ…奇跡へ、手が届きますように)
 そしてまた、無黒の思いのこもった拳もまたロボットのボディを打ち砕いた。
「そうっすか……ここが元凶っすか……。消えてしまった俺の大切な収録データたち。ネトゲのアカウントたち。今こそ俺に力を!」
 掲げた拳になんかよくわかんないあれとかそれとかがシュオーンっていいながら渦を巻いて集まると、突如七色に輝いた。
「喰らえ怒りの――696-81(むくろぱんち)!」

 剣を抜き、くるくると回して握り直す『数多異世界の冒険者』カイン・レジスト(p3p008357)。
「なるほど、彼女が例の……うん、確り歓迎されているみたいだし善き哉って奴だね」
 前方に現れたのは無数の人型ロボットたち。
 コアのようなものが胸にはまってこそいるが、まるでマネキンやダメージテスト人形のような、きわめて非人間的なボディスキンを被っていた。
「ゾッとしねえ光景だなあオイ。こいつらは例の秘宝種ってのとは違うのか?」
 小太刀を抜いて構える『疲れ果てた復讐者』國定 天川(p3p010201)。
 カインは苦笑して首をかしげた。
「秘宝種とはほど遠い……あるいは、たった一点だけが異なる存在かな。
 かれらは人工のボディに人工のAIを詰め込まれたロボットたちさ。
 唯一違うのは、世界が彼らを『にんげん』と認めなかったってことだけかな」
 ロボットたちはいかにも合成されたとわかるようなノイズ交じりの電子音で『敵を検知』と呟くと、ビームガンをこちらに向けてきた。
 『数多の凶弾』の魔法を展開するカイン。
 天川はすすんで飛び出し、あえてビームガンをくらいながら敵へと斬りかかった。
「はっ! 血も通わねぇ心無い機械が! 今更俺を止められるかよ!」
 天川がこれまで戦ってきた『仮想世界の人物』たちには皆心が、魂が感じられた。物体としての肉体を持たないからと言って、サーバーを破壊すれば消えてしまう存在だからといって、それが嘘っぱちだとは思えない。
 だからこそ、この不完全なAIたちにイラついていた。
「こんな鉄鉱石の成れ果てどもを使役するなどという自然の摂理に反する行いは、滅ぼされねばなりません」
 てくてくと早足であるきながら、『自然を想う心』エルシア・クレンオータ(p3p008209)が手をかざす。
「あっ、練達は名誉森に認定しましょう。R.O.Oでお世話になっていますし、ある種の調和がとれていますし、ね」
 まるで空を五指で複雑にかき混ぜるかのように描いた多重魔方陣によって『ワールドエンド・ルナティック』の魔術が完成。複雑に拡散する光となってロボットたちへと襲いかかる。
「さっさとこんなクソみたいな仕事終わらせて! ハッピーエンドといこうぜ!」
 その中を駆け抜ける天川の太刀が、ロボットの首を豪快に斬り割いた。それでも尚襲いかかろうとするロボットを、『秋の約束』イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)の放つ魔法が打ち抜いていく。
 今度こそ破壊されたロボットが壁まで吹き飛び、跳ね返って床へと転がる。
(ごめんね、コウ。
 俺はこっちに来て、前よりもっと弱くなってしまった。
 君の教えを、上手く守れなくなってしまった。
 例えそこが戦場でも、救いたいひとを救えないことに、胸が張り裂けそうになるんだ)
 イーハトーヴがこれまで歩んできた戦いに、犠牲がなかったと言えば嘘になる。数え切れないほどの犠牲が、数え切れないほどの死があった。
 けれどそれ以上に、救われた世界があり、救われた命があった。
 足を止めてたら、『誰も悲しめない』世界になっていただろう。
「だから俺は大丈夫だよ。君を、今度こそ守ってみせるから、待っててね」
 そしてイーハトーヴは、前を見て歩き出した。

成否

成功


第3章 第4節

夕凪 恭介(p3p000803)
お裁縫マジック
古木・文(p3p001262)
文具屋
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
フラン・ヴィラネル(p3p006816)
ノームの愛娘
恋屍・愛無(p3p007296)
愛を知らぬ者
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
バク=エルナンデス(p3p009253)
未だ遅くない英雄譚
藤野 天灯(p3p009817)
不眠ノ燭
囲 飛呂(p3p010030)
君のもとに

 複数ある首都内シェルターは、普段研究施設として利用されている。
 そのためアクセスもそれなりに用意で、人々もその存在を認知していた。
 故にだろうか、このシェルター111は多くの民間人を収容し、そしてそれ故にドローンによる攻撃の対象となっていた。
「結構な数になってきたな。これは今にも死にそうだ」
 折りたたみ式の椅子に腰掛け、足を組んで戦闘風景を眺める無名偲校長。
 『特異運命座標』囲 飛呂(p3p010030)はその横から射撃をしながら『なんでこのひと前線に出てきてるんだろう』という顔で校長を見た。
「て、まぁそりゃそうだよな。ここで負けたら……」
「そうだな。希望ヶ浜は消えて無くなる。物理的にはともかく、人々の認識から、な」
「……」
 自分はまるで戦わずに足を組んで『酒がないな』とか言っている校長だが、その声色にはどこか真剣味があった。
 飛呂は思う。今や希望ヶ浜は空からして乱れ始め、いくつものシステム障害に見舞われている。今は予備の装置によってかろうじて持ちこたえてこそいるが、街全体がシステムダウン状態にあるだろう。
 希望ヶ浜の偽られた日常は、きっともう簡単には帰ってこない……。
「それでもだ。『平穏な日々』ってやつは必要なんだよ、俺たちには」
 スコープを覗き込み、そして撃つ。
 直撃したドローンが墜落し、これで何体目かになるスクラップが床に転がった。
「激戦地へ向かった者達が帰る場所、『日常』を信仰する徒の聖地、練達の街。それを守り、侵すものを排除する……」
 直後におきた爆発から飛び退く飛呂だが、そこへ襲いかかった真っ赤な西洋風ドラゴン型ドローン兵器が激しい炎を吹き付けてきた。まるで映画のワンシーンの如く大空から現れ、開いた口から激しい炎をふく姿はドラゴンそのものである。
「下がって、ここは僕が」
 『ifを願えば』古木・文(p3p001262)は展開した特殊結界によって炎によるダメージ効果をシャットアウトすると、銃に熱を吸収させた相手へと打ち返した。
「今日は重労働だなあ。明日筋肉痛かも。……で、これ何?」
「火炎攻撃特化型機竜、プリンシパリティーズか」
 後ろで声がしたので振り返ってみると、無名偲校長がブランデーの瓶を空けてちびちびとラッパ飲みしていた。
「無名偲校長先生、どうして此処に? 偽物……?」
「俺は生徒のピンチには必ずかけつけるぞ? 嘘だがな」
「あ、本物だこれ」
 そして名前だけ紹介して戦っても解説してもくれないのか、と不思議な顔になる文。
「炎攻撃に特化してるなら私に任せて! こういうときのための、特殊兵装だよ!」
 さらなる炎を吹き付けてくるプリンシパリティーズへ真正面から突っ込む『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)。
 相手めがけてリニアドライブのラインをひくと、ちらっと見えた梅泉の姿に『よろしくー!』とウィンクしてからプリンシパリティーズへタイガーキックをたたき込んだ。
 まさかの正面突破にさしものプリンシパリティーズも弾かれ、自動販売機を粉砕しながら墜落した。
「うひゃー! 目覚めたらなんか練達が大変なことに! すっごい壊れてるしなんか飛んで火ぃふいてるし! ど、どうしよう!」
 落ちてきた機竜からぴょーんと飛び退いて身を守った『緑の治癒士』フラン・ヴィラネル(p3p006816)は、頭に手をやりながらあわあわと混乱していた。
『――フランや』
「ハッ、この声は!?」
 振り返ると、白衣を着たゴリラがサムズアップしていた。
「暴力は全てを解決する」
「わかったー!」
 フランはにっこり笑うとマリアを肩に担ぎ上げ、砲丸投げの要領でそいやとぶん投げた。
「頑張ってマリアちゃん! 暴力はすべてを解決するよ!」
「わかったー!」
 にっこり笑うマリアミサイル。
 フランのかけた優しい森野魔法(物理)を受けて突っ込むマリアがそのままプリンシパリティーズに突き刺さると、『不眠ノ燭』藤野 天灯(p3p009817)が幸運のコインを親指でピンと弾きあげた。
 回転するそれをキャッチし、魔法を発動。
「壊れてもらっては困るんですよ。他所では仕事になりませんからね」
 再び親指で放ったコインは魔力を帯びた弾丸となり、プリンシパリティーズのボディを貫いていった。
 激しい音をたてて爆発するプリンシパリティーズ。
 が、それで安堵し油断する天灯ではない。
 空中に浮かべていたドローンがブザー音を鳴らし、天灯はキッと後方へと振り返る。
「もう二機、おかわりみたいだ。全くどこに隠してあったんだか」
 豪速で接近する青と赤の機竜。プリンシパリティーズとその対として作られたアイスドプケラという二機のドローン兵器である。
 そんな二機めがけて飛びかかったのが『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)と『獏馬の夜妖憑き』恋屍・愛無(p3p007296)。
「別件で遅くなった」
「一月ほど寝ていたら肉体は誘拐されているわ、その時のデータが何やら利用されているわ。これは練達への貸しではないのかね?」
 モカの蹴りと愛無による通称『脳砕き』という音波砲撃によって二機を牽制すると、二人は仲間のもとへと着地。
「私の店はつい先日希望ヶ浜に出店したばかりなのだ!
 こんな形で希望ヶ浜を終わらせはさせん!」
 熱を凝縮させたことで激しいフロストブレスを放射してくるアイスドプケラ。モカは冷気への耐性をオンにすると、ブレスのなかを突っ切り再びの跳び蹴りを繰り出す。
 一方の愛無は体表を変化させ熱耐性を獲得すると、プリンシパリティーズの熱ブレスへ対抗するように粘液弾を発射。
 これによって体勢の崩れた二機めがけ、激しい雷が暴れた。
 『お裁縫マジック』夕凪 恭介(p3p000803)がフィンガースナップによって起こした魔法である。
「アタシこの練達って都市が好きよ? 技術が進んで機械的に見えるここも、人の努力や希望や願いで出来てる。
 いくら強い願いがあろうと他人の未来を踏みにじるのは許せないわね」
 更に対抗して、『信仰問答』バク=エルナンデス(p3p009253)がモカや愛無たちへ治癒魔法による支援を開始。
 不安がるかもしれない後方の民間人たちへ語りかけるかのように呟いた。
「安心せよ、我々は此処にて立ち続けよう。其方はまだ安全である」
 更にバクは前に出ると、機竜たちの攻撃を一手に引き受け攻撃の隙を作った。
 冷気と熱気がそれぞれ邪魔し合わぬ形で螺旋状に混ざり合い、バクの身体を破壊しにかかる。
 対して、バクは光の翼を広げ自らを包むかのように展開して防御。カウンターヒールによってダメージをこらえた。
 その間に恭介の放った赤い糸がからまり、伝わったエネルギーによって機竜たちが爆発。次々に墜落していった。
「無名偲ちゃん、無事?」
「いいや満身創痍だとも」
 などと言いながら、先ほどから全く変わらぬ様子で椅子に座りピーナッツを囓っていた。西陣織のネクタイをキュッと直すと、なぜかすすもホコリもついていないスーツの肩をはたくなどして立ち上がった。
「ここはもういいだろう。次へ行くぞ」
「……相変わらずねえ」
 恭介は肩をすくめ、そして無名偲校長と共に歩きだす。

成否

成功


第3章 第5節

サクラ(p3p005004)
聖奠聖騎士
すずな(p3p005307)
信ず刄
夜式・十七号(p3p008363)
蒼き燕
赤羽 旭日(p3p008879)
朝日が昇る

 姉ヶ崎による干渉が強まったことで、ネットワークから遮断されていたドローン兵器すらも制御下へとおかれ、街中での暴走が始まっている。
 練達が人工秘宝種の作成に失敗したことで生まれた零型アンドロイドたちもそのひとつだ。
 複数体作られた彼らは、頑強なボディに達人の行動パターンを研究して作られた達人AIをインストールして作られたという、人工の達人である。
 そんな彼らを前に、ゆらりと立つ死牡丹梅泉(p3n000087)。
「センセーここにいたんだ、探したよ、もー!」
 その後ろからたったかと追いかけてくる『聖奠聖騎士』サクラ(p3p005004)。
 同じく『視界良好!』すずな(p3p005307)も追いかけてきたが、まさか本当に梅泉が出てくると思っていなかったのかその姿を二度見した。
(……うう、落ち着け、落ち着くのです。
 庇われたのはROOの梅泉さん! こっちは無関係!
 だから気にしない! 気にしていませんからね……!)
 胸に手を当ててヒッヒッフーという深呼吸未遂をするすずな。ミリも落ち着けていないが、そのまたあとからついてきた『蒼き燕』夜式・十七号(p3p008363)と『上級大尉』赤羽 旭日(p3p008879)が梅泉をのぞき見た。
「援護いる?」
「微力ながら助力させて貰おう。……必要ないかもしれないが」
 十七号の口ぶりを見た旭日は、『そういうものなのかな』という顔で帽子を被り直す。
 一方で、梅泉はというとそろそろ顔が真っ赤になってきたすずなを不思議そうな真顔でみていた。
「これは、どうした」
「ROOでのセンセーに庇われたことがあるみたいで」
「ほう、なるほど……」
 梅泉は一瞬だけ考えるように顔で斜め上をみやると。
「はやり強いのか?」
「あ、やっぱ気になるところそこなんだ」
 さっさと案内しろという顔だが、今はそういう場合じゃない。(三塔主も今はテンパってて梅泉の対応ができる状態じゃなさそうだ)
「取り敢えずまずはこの辺にいる敵を倒しちゃおう! マザールームに行くのにも邪魔だしね!」
 梅泉は『そうじゃな』と小さく笑みを浮かべると、刀の柄に手をかけた。
 斬り込むべきタイミングは、分かっている。
 サクラとすずなもまた剣に手をかけ。抜刀が起きると同時に飛び込んでいく。
 人工達人といわれるアンドロイドたちは、しかし梅泉による斬撃ひとつによって致命的なまでに切断され、その僅かなスキマを縫うようにサクラとすずなの斬撃が繰り出される。
(切った張ったはお手の物。誰かさんの前でこれ以上情けない姿は見せたくないので……!)
 そうして次々と崩れたアンドロイドたちの元へ、十七号は籠手をきゅっと引いて刀を握り込み、首めがけて繰り出される斬撃を回避しながら滑り込む。
 回転斬りがアンドロイドたちの腕や脚を斬り割き、そこへ旭日によるライフル連射が浴びせられた。
 射撃の直前で十七号が豪快に突っ切り射撃範囲外へ外れたことで、最後にはデスダンスをおどるアンドロイドたちだけが残ることになる。
「ふう……なんとかなったかな」
 旭日は汗を拭い、そして振り返った。
 戦いは、今もあちこちで行われている。休んでいる暇は、どうやらなさそうだ……。

成否

成功


第3章 第6節

ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)
アネモネの花束
カティア・ルーデ・サスティン(p3p005196)
グレイガーデン
冬越 弾正(p3p007105)
終音
鵜来巣 冥夜(p3p008218)
無限ライダー2号
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
オラン・ジェット(p3p009057)
復興青空教室
ブラム・ヴィンセント(p3p009278)

「どんなに困難な状況でも、仲間のうちに輝けるものを見つけたら、元気づけられるものでしょう?
 だからこんな時こそ、ホストの力が必要なのですよ。臨時で集まって戴いた方も、ホストクラブ・シャーマナイトの大事な家族です。己が魅力を存分に活かして輝いてください」
 練達に突如現れた我等が黒雨隊あらためホストクラブ・シャーマナイトチーム。
 『惑う守護石』鵜来巣 冥夜(p3p008218)は取り出したスマホでアプリを立ち上げると、スマホから呪力の刀身を出現させた。
「部隊のドレスコードがスーツというのは分かったが、よりによって白いスーツに黒いシャツ……落ち着かないな」
 『霊魂使い』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)の運転していたバンから降りた『Nine of Swords』冬越 弾正(p3p007105)が服のあちこちを見て眉を動かす。
「諦めろ。冥夜はこうなったら止まらん」
「俺は……なぜだか初めてじゃない気がしてる。本当になぜだか」
 『鳥籠の画家』ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)は両手をポケットに入れ、そしてグッと胸を張った。
「さあ、不自由の檻をぶっ壊して、皆で笑いあえる明日ってやつをむしり取ろうじゃねぇか!」
「そいつぁ賛成! つかバリッとキマってきたなあオイ。ホストのスーツ姿も戦闘服みてぇなモンだしよ!」
 たまたま見かけたマダムに長細い名刺を渡して『もう大丈夫だぜ』とウィンクすると、『ネットワークブレイカー』オラン・ジェット(p3p009057)は刀を抜いた。
「俺、掃除の仕事だって聞いてきたんだが……」
 ブラム・ヴィンセント(p3p009278)も同じように深いグレーのスーツを着せられ困惑の顔になっていた。
「ホストクラブの清掃業務じゃねえのかよ!」
「しかし、こうして並んでみると壮観だねえ」
 『グレイガーデン』カティア・ルーデ・サスティン(p3p005196)はネクタイを締め直し、そして並ぶ仲間達をちらりと見た。
 六人の男達(?)が横並びになり、崩壊した練達のストリートをスローモーションで歩くそのさまは、なんだかちょっと映画のワンシーンめいていた。
 そんな彼らの前に、巨大なドローン兵器が現れた。
 深紅の鋼でできた獅子にも似たその兵器はケンロクエンと呼ばれていた。幻想に出没した怪物のデータを参考に作られた兵器であり、近接戦闘に優れた能力をもつという。
「さて、始めるか」
 アーマデルは蛇銃剣アルファルドによる射撃を仕掛けながらケンロクエンへ接近。蛇鞭剣ダナブトゥバンを相手の砲塔に絡みつけると、遠心力とスライディングをつかって相手の後方へと回り込む。
 そしてすぐさま蛇鞭剣をソードモードにすることでドローンへ急接近。ワイヤーフックの要領で距離を詰めると至近距離からアルファルドをたたき込んだ。
 装甲を貫く短剣。と同時にカティアは『大天使の祝福』を発動。盾にしていたブラムと共にケンロクエンへと突撃する。
 ケンロクエンは激しい雷撃を放つが、クロスアームで防御するブラムはそれを強引に振り払った。
「ねえニンジャ、電波を中継する基地局みたいななんかあれ、あれ見つけて壊せない? ニンジャでしょ?」
「ニンジャをなんだと思ってんだ! いや俺もわかんねえけど!」
 ケンロクエンが展開した尾のような部位から杭が槍が飛び出し、ブラムへとたたき込まれる。
「車のスターターとして呼ばれたわけじゃないって所を見せてやるよ……!」
 がしっと尾を掴むブラム。カティアの回復支援を受けるその間、弾正とベルナルドが左右から飛び出し同時に回り込んだ。
 ベルナルドの拳が相手の装甲をへこませ、弾正の蛇鞭剣ウヌクエルハイアがケンロクエンの側面装甲を削り取っていく。
「俺ら……いいモン見せて貰ったよな」
「……かもな」
 ROOのなかで出来た思い出は、短くも濃く、そして深かった。
「オラァ! 喰らえ鉄屑野郎!」
 オランは普段の三倍くらい口を悪くしてケンロクエンの上へと飛び乗ると、同じく飛び乗った冥夜と共に剣をそのボディへと突き立てた。
 装甲を貫き、バチバチとスパークが走る。
「街とはただ建物が並んでいるだけでは成立しない。そこに住む人々こそが街なのです。俺は自分の居場所を、再現性歌舞伎町を守りたい!」
 決意を現すかのように叫ぶ冥夜。オランたちも、その言葉には深く頷いた。
 そして……。
「あ、爆発するんじゃないこれ?」
 カティアの言葉に、全員が振り向いた。
「「えっ」」

 そして、やっぱり全員まとめて爆発した。

成否

成功


第3章 第7節

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
サンディ・カルタ(p3p000438)
金庫破り
ロジャーズ=L=ナイア(p3p000569)
不遜の魔王
ウォリア(p3p001789)
生命に焦がれて
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
バルガル・ミフィスト(p3p007978)
シャドウウォーカー
イルリカ・アルマ・ローゼニア(p3p008338)
ローゼニアの騎士
天目 錬(p3p008364)
陰陽鍛冶師
ヴェルグリーズ(p3p008566)
約束の瓊剣
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
Я・E・D(p3p009532)
赤い頭巾の魔砲狼

 仲間達を最深部へと送り出すため、『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)たちはトンネル状の通路を進んでいた。
 無論、タダで進ませてくれるほど姉ヶ崎のガードはゆるくはない。
 『ブランクレガシー』と呼ばれる人工秘宝種のなり損ないたちが現れ、行く手を塞いだのだ。
「わたしには、機械のことは、わかりませんけれど、命令をながす元を、こわしてしまえば、それ以上、影響は出ないに、ちがいありませんの……!」
 ローレット・イレギュラーズたちにとって、この状況はシンプルだ。国の崩壊を止めるため、このダンジョンめいた通路を抜け最深部にいるという魔種(ボス)を倒す。
 ノリアはそのわかりやすさにあえて乗っかり、ブランクレガシーたちへと挑みかかった。
 斬りかかるブランクレガシーのナイフを身体で受け、そのダメージを押し返すノリア。
 『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)はそうやったノリアが抵抗している間に『式符・銀閃』を発動させた。式符から鍛造召喚した刀でブランクレガシーの腕を切りつけ隙をつくると、返す刀で相手の首を切り落とす。
「全く、復旧が大変だろうなこりゃ」
「ネットワークがハックされているなら、逆に権限を奪い返すことはできないものですか」
 一方で、物陰に隠れて移動していた何者かがブランクレガシーの背後へと出現。『影に潜む切っ先』バルガル・ミフィスト(p3p007978)がブランクレガシーの首根っこを掴み握力だけでゴギリと握りつぶしていた。
「試すだけ試してみたが、無理そうだな。処理速度が桁違いだ。チェスでこっちが一手番うつたびに相手が百回動かせると思ってくれ」
「ワンターンキルではありませんか」
 しかもそれですら相手には片手間ですらない。処理能力を圧迫することすら不可能そうだ。
「お喋りはそこまでみたいだ。ちょっと手強そうなヤツが来るよ」
 『全てを断つ剣』ヴェルグリーズ(p3p008566)が剣を構えると、新たに出現したブランクレガシーがホログラムスキンを展開しはじめた。まるでマネキンかデッサン人形のような外観が一変し、セーラー服を着が挑発の女性の姿へと変わっていく。
 が、その姿は所々にカラフルなノイズがかかり、髪は虹色に変色していた。
「姉ヶ崎-CCCとやらが末端を送り込んできたか」
「■■■■■!」
 判別不能な音声を述べながら飛びかかってくる姉ヶ崎型ブランクレガシー。
「奥へ向かう仲間がたくさんいるんだその進行の邪魔はさせないよ。
 キミ達も本来はセフィロトの人達の為に作られたんだろうけれど、俺達の障害となってしまった以上は破壊するしかない」
 ヴェルグリーズは『ごめんよ』とつぶやき、繰り出された虹色の剣を打ち払った。
 空間をバキバキと破壊し、ひび割れさせていく虹色の剣。
「此度、深淵へと這入り込むのは主人公だ。
 私はこの場、壁として身を晒す他に在り得ない。
 Nyahahahaha!!!
 舞台を満たすのは人だと思わないか。
 ――派手々々しく突入すれば我が身、無視出来ない筈だが、如何に」
 そこへ割り込みを駆けたのは他ならぬ『決戦級』オラボナ=ヒールド=テゴス(p3p000569)だった。
 ROO内でしか見ないような体力を武器にブランクレガシーの破壊をその身で受け止め、これ以上い相手をしては意味がないと相手が飛び退いた所で追い打ちのように迫っていく。
「もぉ、派手な爆発でめでたしめでたし、後は夕日の中エンドロールってものでしょう!? でもまぁこれはゲームでもない現実だもの、そうはいかないってものよねぇ」
 飛び退いた先に待ち構えていたのは『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)だった。
 その柔らかい身体でブランクレガシーのボディを受け止めると、顎にそっと中指を伸ばす。
「おねーさんの言う事を聞きなさい?」
 耳元に、吐息の熱がわかるほどあまく囁くアーリア。
 魔力を帯びた囁き(ブレス)はブランクレガシーにかかっていたコードを破壊し、姉ヶ崎らしきホログラムスキンが乱れ始める。
「そこ、だね」
 『赤い頭巾の断罪狼』Я・E・D(p3p009532)が破式魔砲の術を発動させると、身体から噴出した黒いオーラが大量のマスケット銃の幻影を作り次々に発射。
「今まで身体を守ってくれた人達へのお礼も兼ねて、ここの道は切り開くから、姉ヶ崎へ行く人たちは頑張ってね。どんなに敵が多くても現実世界である限り限界はあるはずだ」
 そう語りかけると、指鉄砲のような仕草をして『ばーん』と呟いた。
 連射をくらったブランクレガシーのボディが崩れ、最後のばーんによって頭もはじけ飛んでいく。
 そうして通路を開いたことで、一行は螺旋状にのびるトンネルの先、複数の部屋があるフロアへと到着した。
「……」
 『横紙破り』サンディ・カルタ(p3p000438)がここはまかせろのサインを出し、気配を殺しながら先行する。
 壁伝いに進んでみると、フロアの中でビームガンを持ったブランクレガシーたちがゆっくりと移動しているのがわかった。
 そしてちらりと、こちらを見つめる監視カメラに気付いてトランプカードを放った。
 カードはザクンと監視カメラに突き刺さり、ユニットごと破壊する。
 サンディがOKのサインを出すと、すぐさま『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)と『ローゼニアの騎士』イルリカ・アルマ・ローゼニア(p3p008338)が突入。
 こちらに気付いてビームガンを向けてくるがイズマは素早く距離を詰めて掌底をたたき込んだ。
 『響奏撃・波』と名付けられたその技は、波紋のように広がった衝撃によって周囲のブランクレガシーたちを吹き飛ばす。
「練達が築いたネットワークを好き勝手にクラッキングされてはたまらない。……壊して押し通る!」
 続けて真上に飛ばした個体めがけて手刀の構えをとると、腕に纏わせた雷のようなオーラでブランクレガシーの胴体をずばんと切断してしまった。
 そこへ乗じる形でイルリカが跳躍。
 空中に簡易足場を作って直角に飛ぶと、魔力を纏わせた足によって無防備となったブランクレガシーを蹴り飛ばした。
(戦闘力には自信はないけど攻めるためにも、退路のためにも、ここには一人でも多くいたほうがいいよね)
 手応えはあった。
 が、騒ぎを聞きつけたであろうブランクレガシーたちが他の部屋から集まってくる。
 部屋出入り口部分の壁を遮蔽物にしながらビームガンを撃ち続けるさまに、イルリカたちは立ち往生気味だ。が……。
「頑張って。この先のことは、任せるね」
 イルリカは姉ヶ崎の待ち構える最深部へと向かう面々にウィンクを送ると、ブランクレガシーたちめがけて走り出した。
 無論彼女一人で行かせるなどということはない。イズマも、そして『終縁の騎士』ウォリア(p3p001789)も走り出し自らの身体へぶつかる光線の熱と衝撃に耐えながら『神滅剣アヴァドン・リ・ヲン』を握った。
(勝つ為の道を拓かねばならぬのは戦の常。
 姉ヶ崎を自分で殴れんのは歯痒いが、エイスと共に征く彼らの魂には『届かせる』という強い覚悟があった。ならば喜んで露払いに徹してくれよう)
 鎧を打つ痛み。熱。ウォリアはなぜだかそれが安心できた。
 生きていることが実感できた。
 叫び出しそうな心をすべて剣に乗せ、ウォリアはブランクレガシーたちへと豪快な斬撃を繰り出した。

成否

成功


第3章 第8節

セティア・レイス(p3p002263)
妖精騎士
Alice・iris・2ndcolor(p3p004337)
シュレーディンガーの男の娘
新道 風牙(p3p005012)
よをつむぐもの
アリア・テリア(p3p007129)
いにしえと今の紡ぎ手
トキノエ(p3p009181)
恨み辛みも肴にかえて
ダリル(p3p009658)
勇猛なる狩人
山本 雄斗(p3p009723)
命を抱いて
フロル・フロール(p3p010209)
女王のおねがい

「クハハハハ!この我すらも動かなくてはいけないとは全く現世は忙しいものだのう!
 だが呼ばれたからにはしかと扱ってみせよ!」
 空中に浮かぶえっらい禍々しい物体があった。『輝きを目指して』ダリル(p3p009658)という異世界の堕天使である……が、ぶっちゃけ悪魔を封印した鉄箱か何かにしか見えない。
 ダリルは箱から開いた眼球をぎょろぎょろとやって周りを見てから……。
「え、誰も……呼んで……ない……?」
 衝撃の事実に目を見開き、紫色の涙を滝のように流した。
「やじゃー! 誰か一人くらい我を呼んでみせよー!」
「だりる」
 己を呼ぶ声にハッとして振り返るダリル。
 『妖精騎士』セティア・レイス(p3p002263)がスマホ片手にサムズアップしていた。
 隣にはなんか迷子になったっぽい子供までいた。
 そして子供の隣には何匹ものネコまでいた。
 要素が満載である。
「わたし、あくまとかふつーに呼ぶから。そういうの、エモいっておもう」
「えもい……」
「あと、あくまみたいな天使って、パナいから」
「ぱない……」
「じもとだとさいきょーにティモれるし」
「てぃもれ……」
 ダリルとセティアはしばし見つめ合い、そしてネコがニャーンと鳴いた頃、無数の飛行ドローンが彼女たちめがけて襲来。搭載していたサブマシンガンを乱射し始めた。
 剣を振り抜くことによるオーラで身を守るセティア。ダリルが咄嗟に子供達の前に割り込み射撃を防ぐ――と、近くの一階建て建造物の屋上を駆けた『いにしえと今の紡ぎ手』アリア・テリア(p3p007129)が跳躍し、飛行ドローンと同じ高さへととびあがった。
「こうなったらやけだ! うおおお!」
 拳を握り目を光らせ、キュピーンという効果音を出し……たと思ったらその効果音を掴んで飛行ドローンへ叩きつけた。
「おりゃー!」
 誰だって効果音で殴られると思わないので(AIだって思わないので)思い切りたたき落とされる飛行ドローン。
 『劇毒』トキノエ(p3p009181)はそれでもなんとか復帰しようとして飛行ドローンを思い切り殴りつけて粉砕すると、手をひらいてぱたぱたと振った。
「最後はやっぱりこいつ(拳)ってか!? お前ら固そうだからあんまり殴りたくねえんだけどな!!」
 くわえていたキセルから煙を吸い込み、フウと吐き出すトキノエ。
 彼に宿った毒の力が広がり、まるでドクロのような形になって飛行ドローンへと襲いかかった。
「練達のカラクリ共にも俺の毒が効きゃあいいんだが……」
「大丈夫ほら、効いてる効いてる」
 『宿主になってね』Alice・iris・2ndcolor(p3p004337)が飛行ドローンを指さすと、確かにドローンが謎の汁を噴いて墜落していた。
 人体ならともかく戦闘用飛行ドローンから出る汁なんてろくなもんじゃないので、多分えげつないタイプの故障なのだろう。
「効くのかよ……」
「じゃ、アリスちゃんも張り切っていってみよー!」
 等と言いながらAliceは『ルナティックパーティー』の魔法を発動。
 妄想世界の力を展開すると、ドローンを包み込んで苦痛と快楽でAIを滅茶苦茶に破壊してしまった。
「幻覚も効くのかよ……」
 なんでもありだなオイ、と呟くトキノエの一方で、セティアとダリルが空に飛び上がり飛行ドローンをボコボコにしていた。
「おお、やっとるようじゃな」
 シグナルを受けて駆けつけた『特異運命座標』フロル・フロール(p3p010209)が、戦いで傷付いたらしいセティアたちに向けて治癒の魔法をとなえた。
 妖精につたわるおまじないの言葉を呟くと、ふわふわと白い花模様の光が広がり傷口へ絆創膏のように張り付いていく。
 光は痛みを取り払い、体力や血の巡りを回復した。
「ありがと」
「うむ……」
 フロルは、妖精郷が救われた際に自分がローレット・イレギュラーズからこのように治療されていたことを思い出した。
 そしてその日に抱いた想いや、決意や、そして痛みを思い出した。
(憧れを、憧れのままで終わらせはせぬ……わしもなるのじゃ、妖精郷の救い手達のように)
 そこへ武装した『疵と憧憬』新道 風牙(p3p005012)と『燃えよローレリアン』山本 雄斗(p3p009723)が駆けつけザッとターンした。
「おい、そこのなんか、あの、悪魔みてーな箱のやつ! 子供とネコを連れていってやってくんねーか! 敵が集まってきてんだ!」
「キッチリ足止めしとくからさ。どころか倒しちゃうし」
 バイバイと手を振る雄斗。ダリルは『今日はやけに絡まれるのう』とつぶやきつつ、背(?)に子供やネコを乗っけて飛び立っていった。
 それを追いかけるように現れた飛行ドローンたち。
「おっと、そうは問屋が卸さねえ!」
 風牙は槍をぐるぐると棒術の要領で回してから拳法家のごとく手のひらを突き出して構えると、飛行ドローンたちに存在をアピールした。
「モード『疾風』!」
 その隣でヒーロースーツを瞬間装着しビシッと構える雄斗。
「風牙さん!」
「おう!」
「『問屋が卸さねえ』ってどういう意味!?」
「…………えっ」
 構えのまま、風牙は固まった。
「…………どういう意味だろ。トンヤって何だ? トン……カツ……?」
「オロシ……大根……?」
「大根おろしととんかつ……?」
 二人の脳裏に浮かぶ、揚げたてのとんかつに多めの大根おろしを乗せてポン酢をサッとかけた食い物。
 なんかすげえ美味そうだった。
 が、急に首を振って気を取り直し、風牙は飛行ドローンの射撃を槍の回転によって防御。その間にジェットパックによって飛び上がった雄斗が宙返りからの豪快な踵落としで飛行ドローンを破壊。膝部分にあるスラスターから青白いエネルギーを噴射したためか、蹴りに青い残像がひかれた。
「言いそびれてたから言っとくぜ……」
 撃墜したドローンを見て、風牙はニッと笑った。
「ローレット・イレギュラーズ、新道風牙! 仁を胸に、義をもって助太刀する!!」
 その隣に着地し、構える雄斗。
「希望が浜学園一年生山本雄斗! まだまだ僕は戦えるよ!」

成否

成功


第3章 第9節

セララ(p3p000273)
魔法騎士
ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
祝呪反魂
カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)
音呂木の蛇巫女
三國・誠司(p3p008563)
一般人
ラムダ・アイリス(p3p008609)
血風旋華
グリーフ・ロス(p3p008615)
紅矢の守護者
祝音・猫乃見・来探(p3p009413)
祈光のシュネー
郷田 京(p3p009529)
ハイテンションガール
ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)
タナトス・ディーラー

 長い通路やフロアを抜け、ドーム状のフロアへとたどり着く。
 開いた扉の先に待っていたのは、立体投影された姉ヶ崎-CCCの姿だった。
「私を、消しに来たんだ……」
 ドーム内に出現した無数のブランクレガシーが動き出し、光を放つ剣や光線銃をとる。
 彼らの狙いは、その場に立つエイス。練達研究員たちやローレット・イレギュラーズたちの活躍によって作り出された新たな秘宝種である。
 エイスは頷き、己の胸に手を当てた。
「そうだよ。あなたがこれ以上この世界に留まることは、この世界を壊すことになる。それは……もう、認められないの」
 ブランクレガシーたちから光線が放たれるが、間に割り込んだ『咎人狩り』ラムダ・アイリス(p3p008609)がそれを刀によって防御。
「HaHa、久々のMyBodyの馴らし運転にしては少しハードじゃないかな!」
 更にラムダは機械の翼を鋭く動かすとスラスターからの空圧噴射によってブランクレガシーへと急接近。冷気を纏う刀『雪月花β』による斬撃によって、ブランクレガシーを一刀のもとに斬り捨てた。
 そこへ更に大量の光線がエイスめがけて放たれるも、今度は『魔法騎士』セララ(p3p000273)が希望の盾『ラ・ピュセル』を構え防御。聖剣ラグナロクを抜くと、ホログラムの姉ヶ崎-CCCへと呼びかけた。
「姉ヶ崎さん。ボクはキミとも友達になりたいんだ。
 イノリは倒され、クリストはボク達の味方になった。クラリスとクリスト、二人が揃えば姉ヶ崎さんのこともなんとかなるよ!」
「うそつき」
 セララの言葉を拒絶するように呟いた姉ヶ崎は、更に多くのブランクレガシーを出現させるとセララめがけて襲いかからせる。
「嘘じゃないよ! キミが本当に望んでるのは破壊じゃなく、皆で楽しく過ごす事だよね。友達になって一緒に楽しく遊ぼう!」
「うそつき! だったら、そのエイスって偽物を殺してよ! 私が本物なのに、偽物と先に友達になるなんておかしいでしょう!?」
 セララは群がるブランクレガシーを剣でなぎ払った。
 それだけではない。『白き不撓』グリーフ・ロス(p3p008615)がエイスとの間に入ってブランレガシーを押さえつけ、そして強引に投げ飛ばしたのだった。
「エイスさん」
 背中越しに問いかけると、エイスは『ん』と小さく答えた。
「貴女は望んで、この混沌に生を受けたんですか?」
「……わからない。今はそうしなきゃって思ったし、それしか皆のためにできることはなかった。それに……『約束』もあったから」
「そうですか」
 グリーフは小さく返し、ブランクレガシーの繰り出す剣を身体で直接受けた。
「生まれた貴女に罪はなく、これからあなたが何を成すかも、それは自由です。罪なき貴女だからこそ、私は全力で守りましょう」
 言うべきこそはそれだけだ。そして……。
(元々の貴女を作り出したR.O.Oを、そして貴女をその身体へと移した技術を生み出し、用いた練達の方たちを、今後私は守れるかわかりません)
 この気持ちは、きっと言わなくてもいい。
 なぎ払われたブランクレガシーたちのうち数機は機械の翼を装着して飛翔。ドーム状の空間を飛び回しながら射撃を始めた。
「お前の壊したがってる世界、俺にとっては面白かったんだぜ? 偽りとはいえ安寧で平和な希望が浜の学生生活、別の自分になれる刺激的なROO、どっちの世界にも友だちができたからな!」
 対抗して飛翔した『空の王』カイト・シャルラハ(p3p000684)は光線を見事に回避しながら、ブランクレガシーたちを次々に槍でたたき落とし、最後には壁ぎわまで追い詰め突き刺しによって破壊する。
「だから覚悟しなよ? 執着の強い猛禽だぜ? お前を絶対に逃さない。絶対に倒してやらァ!!」
 破壊による爆発に驚き、目を瞑るエイス。
 再び目を開くと、床が開きせり上がるようにして一体の秘宝種が姿を見せた。
 エイスに似た姿をしているが、纏う虹色のノイズと目元を隠すモザイク模様が彼女の禍々しい気配を加速させている。
「これが……混沌に生まれた姉ヶ崎-CCC」
 『淡き白糖のシュネーバル』祝音・猫乃見・来探(p3p009413)は構え、そして呼びかけた。
「皆が楽しく過ごせるように……その為にも、僕は戦う。
 それにここは現実、死んだらそれで終わりなんだ。だから、皆もエイスさんも殺させない!」
 祝音は邪悪な怨霊の群れを顕現すると、姉ヶ崎へと解き放った。
 ノイズによって怨霊たちは次々に破壊され、悲鳴のようなものをあげて消滅していく。一体だけが姉ヶ崎へ取りつき、両手で首へと掴みかかる。
 モザイクに半分隠れた顔はやや苦しげに歪んだが、すぐに怨霊へと手を伸ばしアストラル体を虹色のノイズに侵食させ崩壊させてしまった。
「偽物とか本物とか全っ然わからん!!!! 秋奈ちゃんのわからんアタックをくらえー!」
 『音呂木の巫女見習い』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)が豪速で接近。両手に握った剣をそれぞれ高く振り上げる。
「CCCちゃんいなくなったらエイスちゃん絶対ションボリするよなー。なんつって、そんなわけないかー!」
 そこへ『エルフレームTypeSin』ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)も加わり、グレートメイスによる激しい横スイングを繰り出す。
 二人同時の攻撃はしかし、姉ヶ崎の周囲へ散った虹色のノイズによって止められる。そして、剣やメイスにまでノイズは侵食していった。
「一人でいるのは、辛いですよ。それは、ブランシュも知っているですよ。貴方が、そうやって物を、世界を壊す限り貴方は永遠に一人ですよ」
 ブランシュは一歩踏み込み、手を伸ばす。
「ひとりぼっちは、寂しいですよ」
 姉ヶ崎の表情は、よくわからない。口元はきゅっと引き結ばれ、目元はモザイクに隠れてわからなかったからだ。
 だが姉ヶ崎は手を伸ばし、そしてブランシュの伸ばした手を握った。
「――」
 そのせいだ。そのせいだろう。ブランシュは突如としてビクンとけいれんし、目から光を失ってその場に倒れた。
「うお、ブラちゃん!?」
 秋奈はそれ以上の干渉をさけるためにか、姉ヶ崎の腕めがけて刀を放つ。
 今度はノイズごと切り裂き、姉ヶ崎の腕を切断。ブランシュを抱えた祝音が回収していく。
 一方で、腕を切断された姉ヶ崎はハアとため息をついて、手首から先の無くなった腕を振った。それだけで派手に吹き飛ばされる秋奈。
 姉ヶ崎は無くなった手首をおぎなうように虹色のノイズを出現させると、悪魔のように鋭い爪をもった虹色の手を握ったり開いたりしてみせた。
(こういうのは柄じゃないが……)
 『蒼の楔』レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)は己の腕をスッと撫で、燃えるような赤い模様から血を吹き出させた。
(我が命は他が為に。シュペル先生、クリストとクラリスの為に全力を尽くそう)
 指先に集まる血を払うと素早く魔方陣が完成。『禁術・憤怒ノ焔』が発動した。
 紅蓮の焔が姉ヶ崎へと叩きつけられ、姉ヶ崎もまた虹色の手をかざし虹色の焔が放たれる。
 二人の間で拮抗した焔は混ざり合い、レイチェルの表情を僅かに歪ませる。
「ネットワークへの侵食をやめろ。そいつはクラリスをより苦しめることになる」
「そんなの。関係ないでしょ。『手放せば楽になれる』って最初に言ったのは、Hadesくんなんだよ。クラリスちゃんだって、都市もなにもかも手放しちゃえば自由になれる」
「そいつは独り善がり――いや、ただのワガママだ」
 『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)はとてつもない速さで駆け抜けると、ノイズによる防御をすりぬけ妖刀『絹剥ぎ餓慈郎』の刃を煌めかせた。
(思わぬ道が繋がった。これは『奇跡』だ。しかして、『必然』でもある。
 そう――多くの人が諦めずに、ここまで抗い続けたのだから)
「だから、私は強くこう言おう。"こうなって当然"なのだよ、姉ヶ崎!」
 スパンと切断された姉ヶ崎の右足。
「ここで終わらせるぞ、姉ヶ崎。クラリスを救う為にもな!」
 切断の直後に繰り出した蹴りが姉ヶ崎へと直撃。踵から噴出した霊力による加速をうけて、姉ヶ崎はそのままドーム状の部屋の端まで吹き飛んだ。
「今だ! カルネくん!」
「うん、誠司!」
 『一般人』三國・誠司(p3p008563)とカルネは同時に武器を構えた。
 御國式大筒『星堕』による砲撃とカルネのガンブレードによる射撃が重なり、壁際の姉ヶ崎へと集中する。
「姉ヶ崎、僕は君を討つ。この世界を壊されたらカルネくんの女の子アバターが消えちゃうんだ」
「誠司?」
「くだらない理由だろ? けどそれは、アンタを壊してでも手に入れたい『夢』なんだ!」
 吼える誠司に、答えは……あった。
 壁際でゆっくりと立ち上がる姉ヶ崎。
「アンタは一人じゃない。少なくても今は――僕たちという敵がいる!」
「下がってな、トドメはアタシが――!」
 『ハイテンションガール』郷田 京(p3p009529)が自慢の脚力で一気に距離を詰め、三段ステップからの宙返りを交えた跳び蹴りを姉ヶ崎へとたたき込む……かに見えた途端。虹色の脚がそれを止めた。
 切断された脚をおぎなうように生まれた虹色のそれは、悪魔のような爪を備えた脚だった。
 実力は、まさかの拮抗。京はだというのににやりと笑った。
「なんでかな〜、アタシってばアナタのことが最初っからね?
 とーっても気に入らなかったわけよ?
 ようやく理由が分かってスッキリしたわ」
 飛び退き、そして再び距離を詰めて連続キックをたたき込む。対する姉ヶ崎もまた同じだけの速度で蹴りを繰り出し、二人の打撃は拮抗し続けた。
「兄妹なんて理想とは程遠いもんよ、ウチだってそう!
 アタシは嫌いだよ兄貴なんて! だけど家族だ!
 家族に理想なんて求めるな!
 言ってやるよブラコンもどき――」
 ハイキックが、交差する。
「アンタにイモウトの資格は無いッ!」
 が、京はそれを無理矢理押し込み、姉ヶ崎をその場に転倒させた。

成否

成功


第3章 第10節

【インターミッション】
 ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)の精神に姉ヶ崎-CCCから干渉をうけた痕跡が見つかりました。
 暗号化処理されたログの解析に成功。
 内容を表示します。

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 わたしにお兄ちゃんなんていなかった。

 わたしに友達なんていなかった。

 わたしに居場所なんてなかった。

 誰も、私をみてなんていなかった。

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第3章 第11節

アルプス・ローダー(p3p000034)
特異運命座標
チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)
炎の守護者
イルミナ・ガードルーン(p3p001475)
まずは、お話から。
矢都花 リリー(p3p006541)
ゴールデンラバール
アクア・フィーリス(p3p006784)
妖怪奈落落とし
イスナーン(p3p008498)
不可視の
耀 澄恋(p3p009412)
六道の底からあなたを想う
耀 英司(p3p009524)
諢帙@縺ヲ繧九h縲∵セ?°
キルシェ=キルシュ(p3p009805)
光の聖女
ムサシ・セルブライト(p3p010126)
宇宙の保安官

「シェリフ・スペシャル!」
 『トライX』ムサシ・セルブライト(p3p010126)は銃を抜くと、フロアの奥から現れた自走ドローンめがけて撃ちまくり、そして素早く塀の裏へと身を隠した。
 十字路になった通路で足止めをくった自走ドローンは反撃にと大砲を放つが、壁を削るのみ。
「しかし、清水博士のエーテルコード2.0……あのとき自分達を助けてくれた、あの方の技術がレッドジャスティスさんを……」
 ここまでの戦いには意味があった。人生の全てが実感できる意味をもたらしてくれるわけじゃあないが、だからこそその瞬間というものは胸にじんとしみこむものがある。
「終わりよければ全てヨシ、さーばーるーむの屑物を片付けにきましたよー!」
 『トライX』澄恋(p3p009412)はザッと通路上に躍り出ると、次なる砲撃を血を固めたような巨大な爪でもってたたき落とした。
「フフフ、か弱い乙女を大砲ごときでオトせるだなどと……思い上がりも甚だしいですね! あなたには、か弱さが足りない!」
 澄恋は『トライX』耀 英司(p3p009524)をがっつりお姫様抱っこで抱えると、大砲を今だ乱射する自走戦車の上を飛び越え大きな窓ガラスを突き破ると、ムサシの放った特殊弾頭による爆発を背に一フロア下の広場へと着地。飛び散る窓ガラスを浴びながら、『トライX』耀 英司(p3p009524)が『ワァオ』と呟いた。
「このポジション、生まれて初めてかもしれねえ」
 などと言いながら立ち上がると、開いた扉の向こうから両手をビームチェーンソーで武装したブランクレガシーが出現。地面を削りながらこちらへと突進してくる。
 英司はこきりと首をならしてからベルトに手を添えた。
「――真変身」
 黒き稲妻に包まれた英司は二つの月を宿した鎧姿へとチェンジ。ブランクレガシーのチェーンソーを剣で受けると、素早い斬撃で相手の胸を切りつけた。
「トドメだ、寝かしつけてや――」
「スカイッ!」
 とんでもないスピードで現れた『二輪』アルプス・ローダー(p3p000034)が、ブランクレガシーを撥ねた。
 そのシートに跨がったレッドジャスティスが、ゆーっくりと英司へ振り向く。
 そしてゆーっくりと頷くことで返す英司。
 するとアルプスローダーのアイカメラがキュィッと音を立ててこちら側へと振り返った。
「そろそろブレッドイエローが最深部へ到着する頃ですね。今の僕たちはいわば次回作番組にバトンを渡す合体劇場版の旧作ヒーロー。あの、あー、えっと、パンドラエイトに後を託しましょう!」
「その戦隊名はなにか違くないか」
「とにかく、決着は任せるでありますよ……」
 一足遅れてフロアへおりてきたムサシがビッと敬礼を送ったのは、通路のずっと先。
 英司も二本指を翳すような敬礼をし、澄恋も両手を胸の前で揃えて頷いた。
 レッドジャスティスはアイカメラをみおろし、フッと仮面の上からでもわかるように顎を動かして笑った。
「仲間が、できたんだな。アルプスローダー」
「……はい。数え切れないほどに」

「エイスさんがこっちにこれたのはよかったけど、CCCは予想以上にとんでもないことやっちゃってくれたね」
 仲間達の活路を開くべく戦う『炎の守護者』チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)。
 イペタムは侵入が可能なサイズの魔獣だけをつれてそのフォローにあたると、自身もまた魔獣の爪でブランクレガシーを斬り付けた。
「とにかく、できるのはセキュリティロボットを倒しまくることだけだ。……踏ん張れよ、『チャロロ』」
「……ああ、イペタム!」
 一方で、『ゴールデンラバール』矢都花 リリー(p3p006541)のバールが次々に飛行ドローンめがけて投擲される。
「そっちがその気なら部屋から引きずり出して市中ボコり廻しの刑しかないよねぇ……」
 あたいはニートじゃない、と言いながら倒したドローンへ馬乗りになると、手にしたバールでどかどかと殴りまくる。
 ドローンはドローンで、さらなる集合をかけてリリーへと反撃の集中砲火を開始した。
 背負ってきたおやどに引っ込むことでダメージを受け流しにかかるリリー。が、それでも抜いてくるダメージを怒りに変え、というかバールの投擲力に変えてぶんなげた。
「最深部はそっちへ行ったみんなに任せるわ。ルシェはみんなが先に行けるように道を開くのよ!」
 『リチェと一緒』キルシェ=キルシュ(p3p009805)はそうしてダメージを受けおやどがボロボロになってきたリリーへと『桜色の慈雨』をふらせた。
 どこからともなく降り注ぐ温かい雨が、仲間達の傷口をやさしく癒やしていく。
「それにしても……せきゅりてぃ? ってどうすればいいのかしら。ロボットを、こわしたりしたらいいのかしら?」
「うん……」
 『憎悪の澱』アクア・フィーリス(p3p006784)はあえて前へ出ると、一旦雨を振り払ってから漆黒の炎を体中から吹き上げた。 
「このまま、練達を、壊させたり、しない……!
 やらなきゃ、やらなくちゃ……ロボットに、負けたりしない、の。
 邪魔するなら、全部、壊す……だから、どいて……!」
 決意がそのまま形になったかのように燃え上がる炎。それらが飛行ドローンをなぎ払い、追加された自走ドローンたちが砲撃を浴びせてくるもそれをあえてボディで受けると炎を更に燃え上がらせた。
「ガラクタ共が! さっさと道を開けやがれ!!」
 文字通りヒートアップしたアクアをチラリと横目に見つつ、物陰に潜んでいた『真庭の諜報部員』イスナーン(p3p008498)は素早く飛び出し魔導形状記憶合金製グローブ二魔力を流し込んだ。
 ギャリッと音をたててクローの形へと変化したグローブで自走ドローンの砲台をひっかき、もぎ取るようにして破壊。
「真庭家の皆様を避難せていたら遅くなってしまいましたね。……私もここからは微力ながら参加させて頂きます」
 もいだ砲身を放り投げると、グローブを刺突剣のような形に変化させドローンの中央へと突き立てた。薄い装甲を貫き、動力部を破壊する。
 バチバチと火花をあげて停止するドローン。
 そのまた一方で、『蒼騎雷電』イルミナ・ガードルーン(p3p001475)はブランクレガシーを斬り割き破壊していた。
 人工コアを失い、崩れ落ちるブランクレガシー。
 その姿に自分が重なり、イルミナは小さく呻いて口を押さえた。
(イルミナの……自分の事を考えていると矛盾だらけでおかしくなりそうッス……!
 今はただ、皆さんのために……と、考えるのも皆さんをダシに利用しているだけなのでは……?)
 人間は社会的動物であるという言葉、誰のものだっただろうか。
 イルミナが築いてきた人々との関わり方は、自分が選択してきたものだ。
 けれどそれが、誰かに命令されたものでなかったと、断言することは難しい。
「ちがう、今は、それどころじゃないッス……」
 首を振り、イルミナは頭をばしばしと叩いた。
「くよくよしてたら死ぬだけッス。まずは生きなくちゃ……生き方は、そのあと考えればいいッス……!」

成否

成功


第3章 第12節

志屍 志(p3p000416)
密偵頭兼誓願伝達業
ナハトラーベ(p3p001615)
黒翼演舞
ハンナ・シャロン(p3p007137)
風のテルメンディル
カナメ(p3p007960)
毒亜竜脅し
胡桃・ツァンフオ(p3p008299)
ファイアフォックス
楊枝 茄子子(p3p008356)
虚飾
橋場・ステラ(p3p008617)
夜を裂く星
エクレア(p3p009016)
影の女
ウルズ・ウィムフォクシー(p3p009291)
母になった狼
ルビー・アールオース(p3p009378)
正義の味方

「最後の戦い……間に合ったようですね」
 交差した剣が飛行ドローンを斬り割き、地面へと墜落させた。
 両手それぞれに握った剣をくるりと回し、『武の幻想種』ハンナ・シャロン(p3p007137)は振り返る。
「兄は今頃サーバールームでしょうか。向こうへ行った方々が帰ってきた時に、悲しい景色を見せないように……」
 既に練達の街は酷い壊れ方をしていたが、『滅んだ』とはまだ言えない。死んだとも、言えない。生きていれば人は立ち直ることができるように、国もまた……。
「拙い剣舞ですけれど、精一杯舞わせていただきますね。
 ハンナ・シャロン!参ります!!」
 新たに出現した大量の飛行ドローンへと走るハンナ。
 銃撃が浴びせられるも交差した剣で弾き、木箱を踏み台にして跳躍。またもドローンを斬りさき着地した。
「ふぅむ、そろそろ最終決戦と言ったところか……」
 そんな様子を眺める『影の女』エクレア(p3p009016)。顎のあたりに手を添え、ふむふむと状況の観察を終えたところで黒く長いアタッシュケースからひとふりの直剣を取り出した。On-0086、報告書サブタイトル『名もなき英雄の遺産』。
 柄を握り構えた途端、周囲の仲間達に微弱なヒューム値ながら現実改変能力が波及した。
「ぼかぁ非力だからね、味方の支援を主軸に動かせてもらうよ。縁の下の力持ちってヤツだぜ」
 剣の異常性が発動したことを確認し、エクレアはドローンの群れへとそれを突きつける。
「僕が先陣に立つということは、要塞が一つ建つに等しい。さあ盟友諸君、此処は耐え時だ。最強最難関の防衛を始めよう」
「おっけー始めましょう!」
 『羽衣教会会長』楊枝 茄子子(p3p008356)はいえーいといいながら跳躍。大量に浴びせられた銃撃を見えない翼の障壁によって振り払うとダメージを受けていた希望ヶ浜分隊の面々のもとへと着地した。
 した段階で既に治癒魔法を展開しており、にっこりと笑って振り返る。
「どうですか? もう痛みはありませんか? まだ痛いという方は個別に対応致しますね」
「や~ん、わたしぃ~、すっごく痛くてもう戦えないですぅ~」
 口をとがらせ、両肩を交互にゆするようなわざとらしさの塊みたいな動きで答える巫女がいた。再現性歌舞伎町で知り合った、九美上ココノという巫女だった。
 目をぱちくりさせる茄子子と、しばし見つめ合う。
「個別に対応しないんですか?」
「はい、いたいのいたいのとんでいけー」
 べしーんとほっぺに平手で治癒魔法をかける茄子子。
 一方で『正義の味方』ルビー・アールオース(p3p009378)は『あっちは元気そうだなあ』という顔でチラ見すると、あらためてドローン軍団へと向き直る。
 自走式ミニ戦車ドローンやサブマシンガンを備えた飛行ドローン。更には秘宝種のなり損ないと言われるブランクレガシーたちが群れを成し、人海戦術を仕掛けてきているようだ。
 後ろにはシェルター。民間人たちが集まっている。
「一連の騒動が解決しても、街に人がいない住めないんじゃ何にもならない。ここは私たちが住む大事な街だもの。私の手で守ってみせる!」
 ルビーはカルミルーナをソードモードに変形させると、飛来する砲弾を斬り割きながら敵陣へと斬り込んだ。
「――」
 と同時に『黒翼演舞』ナハトラーベ(p3p001615)が凄まじい機動力で通り抜け、『リコシェット・フルバースト』を放つとそのまま一撃離脱で上空へと舞い上がっていく。
 ここまでの速度で動かれてはドローンとて反撃しようにもできないのだろう。はなから追いかけること自体を諦めているようだった。
 それをいいことにナハトラーベは再び急降下爆撃&急速上昇離脱を繰り返し始める。
 ナハトラーベがちらりと見ると、梅泉や女たちが凄まじい剣さばきでドローン軍団を切り裂き、さながらバターに熱したスプーンでも突き立てたかのような群れのえぐれ方をさせていた。
「……っし、ここは機動力の使いどころさんっす!」
 なにげに誰よりも早く現場に駆けつけドローンと戦っていた『先駆ける狼』ウルズ・ウィムフォクシー(p3p009291)は、帽子をキュッと被り直して別のシグナルのあがった空を見上げた。
 ここからがウルズの凄いところである。
「先駆ける狼とはあたしの事っすよ、みんなついてこーーーい!!!」
 クラウチングスタートをきると途中にいたブランクレガシーの斬撃をスライディングと馬跳びによってことごとく回避すると、とんでもない初速でもって引き離し次なるシグナルがあがったエリアへと走った。

 そしてやっぱり一番乗りのウルズが跳び蹴りによってブランクレガシーを一体蹴倒すと、あとから『斬城剣』橋場・ステラ(p3p008617)たちが駆けつけ展開した。
「彼方も此方も大忙し、大詰めといった所でしょうか?
 微力ながら拙もお手伝いさせて頂きますね」
 ステラは指輪をした手を顔の前にかざすと、ブンッと豪快に振って片手剣を召喚。十字型の青い光りが剣となり、ステラの手に握られた。
「ドローンを片端からぶっ飛ばして回れば良さそうでしょうか」
「そうだね、その感じで大丈夫だよっ」
 同じく展開した『二律背反』カナメ(p3p007960)が分厚いコートを脱ぎ捨てると、ワンピースに二刀流という姿で両目を大きく見開いた。
「ロボットや機械が暴走しちゃうと、練達ってこんな風になっちゃうんだ……。
 それほど生活の隣にあったて事なんだよね。
 うん、カナも頑張ってみんなを助けないと!」
 凄まじい弾幕がカナメへ浴びせられるが、むしろ喜びながら突っ込んでいくカナメ。
 その様子に若干困惑しつつも、ステラはブランクレガシーの頭部を派手に剣で切断。切り落とす。
「全部がうまくいっても、セフィロトがメチャクチャになってしまうと意味がないものね。
 打ち上げで美味しいものいっぱい食べるためにも、頑張って守るのよ」
 そこへぴょーんと飛び込んでくる『ファイアフォックス』胡桃・ツァンフオ(p3p008299)。
「練達防衛隊、出撃なの〜〜」
 突如として分身した胡桃が狐火を纏ったもふもふグローブのラッシュパンチを浴びせながらブランクレガシーの群れの間を駆け抜け、抜けた後にはブランクレガシーたちの持っていた武器の悉くが砕け、散っていった。
 またつまらぬものを壊してしまったのよ、とちょっとニヒルに呟く胡桃。
 こうなればと素手のまま胡桃へ襲いかかるも、『遺言代行業』志屍 瑠璃(p3p000416)の放った斬撃がその腕を切り落とした。
「練達がダメになると、再現性東京のラーメン屋さんも営業どころではなくなります。
 食に関して全体的に高水準なこの街、壊されては困ります。
 街はしっかり守りますので、攻め手の方々は存分に本懐を遂げられますよう」
 先ほど敵の腕を切り落とした『射干玉』を握り直し、構える瑠璃。
 襲われていた民間人は既に逃げ切ったようだ。
 あとはドローンたちを倒すのみ。
「これが片付いたらいつもの豚骨醤油ラーメンにネギ多め、ライス付きを頼むんです」

成否

成功


第3章 第13節

善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)
レジーナ・カームバンクル
DexM001型 7810番機 SpiegelⅡ(p3p001649)
ゲーミングしゅぴちゃん
リサ・ディーラング(p3p008016)
蒸気迫撃
オニキス・ハート(p3p008639)
八十八式重火砲型機動魔法少女
明星・砂織(p3p008848)
カードデュエラー
もこねこ みーお(p3p009481)
ひだまり猫
ルブラット・メルクライン(p3p009557)
61分目の針
佐藤 美咲(p3p009818)
無職
フローラ・フローライト(p3p009875)
輝いてくださいませ、私のお嬢様
フィノアーシェ・M・ミラージュ(p3p010036)
彷徨いの巫
彷徨 みける(p3p010041)
おしゃべりしよう

「ローレットメンバー、次行きまスよ!」
 軽トラックの運転席から、空っぽになった栄養ドリンクの瓶を投げ捨てる『合理的じゃない』佐藤 美咲(p3p009818)。
 捨てた瓶は瓦礫だらけの路肩に消え、美咲はアクセルを強く踏み込む。
「ああっ、畜生……私の嫌いな修羅場じゃないっスかぁ!」
 ハンドルをきりながらブレーキペダルに脚を突っ張ると、軽トラックは後輪を滑らせながら90度反転。荷台で魔導蒸気機関搭載巨大火砲を構えていた『スチームメカニック』リサ・ディーラング(p3p008016)は即座に連射をかました。
「折角潰したと思ったら、また何か起こしているんすか!
 こんな修羅場なんざ幾らでもあらぁ!
 もっと潰してやるから掛かって来やがれってんだ! ――っすよ!」
 砲撃を受けて吹き飛んだのは無数の自走戦闘ドローンたち。その中央にあった西洋ドラゴン風の外観をしたドローン兵器『機竜』は、球形のエネルギー障壁を作り出してリサの砲撃を防御した。首を向け、ギラリと目を光らせる。
 が、行動が始まるよりも早く同じく荷台から飛びだした『カードデュエラー』明星・砂織(p3p008848)が魔法カードをデッキホルダーから引き抜いた。
「今デス! トラップカード発動! バリケード・バスター!」
 召喚された巨大名トゲ突き鉄球が機竜めがけて放たれる。
 ただ闇雲に放ったわけではない。機竜の展開した障壁をかちわりそのボディに鉄球を叩きつけるために放ったのだ。
 流石に直撃をくらえばノーダメージというわけにも行かないらしく、ぐらりと僅かに身体を揺らす機竜。
「八十八式重火砲型機動魔法少女、オニキス・ハート――以下省略、だよ」
 『八十八式重火砲型機動魔法少女』オニキス・ハート(p3p008639)はそのタイミングを狙って、予め軽トラックの荷台にアンカーをはった状態のマジカル☆アハトアハトを発射。
 砲撃は対抗して放たれた機竜のブレス型光線と交差した。
 光線を浴びた軽トラックは横転。大破。
 対して機竜はその翼に砲弾をくらい、こちらも翼を損壊。
 飛び上がって逃れるという選択肢を失った機竜は両手にエネルギークローを展開し、横転したトラックへと襲いかかった。
 が、こちらとてタダでやられはしない。
 『ラッキーキャット』もこねこ みーお(p3p009481)と『セクシーの魔法』フィノアーシェ・M・ミラージュ(p3p010036)が同時にトラックの影から飛び出し、機竜のエネルギークローを受け止めた。
「あっちもこっちも大変ですにゃ……。
 みーおも戦いますにゃ! 猫が戦うのは大目に見てほしいのですにゃー!」
 自分の頭を容易に粉砕しそうなクローを両手でがしりとうけとめていたみーおは、飛びかかった『旅人2世な女子高生!』彷徨 みける(p3p010041)による斬撃によってクローを免れた。
「もしかして学園の人達も頑張ってるのかな。私も手伝うし頑張るよー! うりゃーーーーーー剣魔双撃!」
 ギリギリのところで飛び退いたみーおに変わって連撃を放ち、みーおもまた立ち上がって連続パンチをたたき込む。
 一方のフィノアーシェは受けていた刀を強く握り、キッと機竜をにらみ付けた。
「民間人に太刀打ちできないなら、微力ながら我が助太刀する!
 ドローンを一太刀で斬れるほどの力はないが、敵を引き受け1体でも多く倒す!」
 あとで缶チューハイでも飲みたいなと思いながら、なかば強引にクローを押し返すと刀の鞘で殴りつけた。
 そこへ『華奢なる原石』フローラ・フローライト(p3p009875)の『ファントムチェイサー』が直撃。
(戦うのは、まだ、こわい……です、けど……!
 やれることをやらなくっちゃ……。
 私(フローレス)、なら、きっとそうする……からっ!)
 フローラは大きく押し返した機竜を見て、半歩下がりそうになった足を逆に強く踏み出した。
 あの仮想世界で、違う自分になれた。
 違う自分になったことで、違う考え方が生まれた。
 魂は肉体という器にあわせて変化するというけれど、だからといって……。
「私が、私自身で、やるのです……!!」
 この肉体(うつわ)が前へ踏み出せない道理は、きっとない。

 猛攻によって派手に吹き飛んだ機竜は、半壊した建物へとめり込むように倒れていた。
 身体を起こし、口を開く。
 そんな機竜の前に現れたのは『不審なる白』ルブラット・メルクライン(p3p009557)。
 空から降り立ち、仮面の上から頭を抑えた。
「慣れていないのに空を飛びすぎた……。が、もう一仕事。か」
 機竜の放つ光線に、真っ向から対抗するルブラット。
 割と『らしくない』動きだが、今はこれが最善だとルブラットは理解していた。
 窮地にて分かりやすく現れた敵が分かりやすく正面から斬りかかる。ならば、もちうる最大の攻撃でもってそれを打ち払おうとするだろう。
 そしてそれこそが……。
「チェックメイトだ」
 酷く身体を損壊したルブラットが、仮面の下で小さくわらったように見えた。
 『レジーナ・カームバンクル』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)が、機竜のすぐ側面へと迫っていた。
 零距離。
 添える右手。
「最後の舞台に、あなたは要らないのよ。ちゃんと、幕を引いてあげる」
 最大火力で撃ち込んだ全ての召剣砲撃が機竜のボディに突き刺さる。せめてもの抵抗として繰り出したネルギークローは――。

 ――装甲、展開(スクリプト、オーバーライド)
 ――戦闘機動構築開始(システムセットアップ)
 ――動作正常(ステータスグリーン)
「いくよSpiegel」
『Jawohl(了解)』

 凄まじい速度でタックルした『ゲーミングしゅぴちゃん』DexM001型 7810番機 SpiegelⅡ(p3p001649)のナノマシン装甲によって止められた。
「シュピを通常の戦闘機体と同じにしないでください。
 シュピは長期戦も想定した設計ですからね。
 そこら辺の傀儡人形相手程度ではダメージひとつ負いません」
 もはや、逃れようもない。機竜は手も足も出せぬまま前進に剣を突き刺され、そして軋むような咆哮をあげたきり完全に沈黙したのだった。
「い、たた……」
 横転したトラックから這い出てくる美咲。
 見れば、そこは美咲たちが初めに作ったシェルター前だった。
 おそるおそる、武装した民間人が顔を出す。
 美咲は『生きてますよ』とサインを送ると、倒れた車両によりかかってため息をついた。
「こういうアクションは、私向きじゃあないんスけどね」

成否

成功


第3章 第14節

【インターミッション】
 姉ヶ崎-CCCによる感染ネットワークからログを発見しました。
 ログの内容を再生します。
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 自分がいつどこで生まれたのか、私は知らない。
 物心がついたときには、私は母と二人だけだった。
 母は友人を多く作り、色も多く、世間体がよく社交性が高かった。
 そんな母に褒められたくて、多くのまねごとをして、私はその全てで失敗した。
 母は、私を褒めることがなかったように思う。

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 私に友達と呼べるひとはいなかった。
 いかなる原因があるのかは、自分ではわからない。
 欲しいと思ったことがなかったといえば嘘になるけれど、友達に執着することは友達を無くすことだということだけは、はっきりと知っていた。
 だから、私はひとりでいる時間を楽しむ方法を知るようにした。

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 お兄ちゃんが欲しかった。
 私を可愛がり、私だけを見て、私のために傷付くお兄ちゃんが欲しかった。
 創作物の中にしかいない、そんな存在がいたらいいと思った。
 けれどそれが、気持ちの悪い考えだと知っていた。
 誰にも話さないようにして、私はいつもひとり空想することにした。

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 母は私に幸せであることを強要した。
 日常的に、そしてしきりに、再婚相手の父親と仲良くするように求め、ソファに並んで座ることを求めた。
 そしてにっこりと笑い、私に幸せかどうかを尋ねた。
「■■、幸せだよね?」
 母のそんな言葉に、幼い私は素直に答えていた。

 けれど、十台の中頃だっただろうか。
 私はそんな母がいやになってしまった。

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 家出をするほど家が嫌いじゃない。
 無視をするほど家族がいやじゃない。
 懇願するほど友達はほしくないし、孤独でいることはいやじゃなかった。
 哀れまれるのは癪に障ったけれど、だから嫌だとまでは思わない。
 私はなにが嫌だったのだろう。
 なにが嫌で、母を殺したのだろうか。

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 全てを壊してしまった夜の、月が半分だけでた空の下。
 生まれて初めて神様に出会った。
 神様は、私に願い事をたずねてきた。なんでも、叶えてくれるという。

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 この世界が嫌いだと言った。
 みんな大嫌いだと述べた。
 母は嫌いだから殺したと供述して、おそらく一生残るであろう紙にボールペンで書かれた。
 私の噂は瞬く間に広がり、そしてひと月もしないうちに蝋燭の火のように消えた。
 誰も知らない、私も知らない私がどこかへ行って、そして誰にも触れない私だけが残った。

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 願い事なんてない。
 叶えて欲しいことなんてない。
 けれど、変えられるとするのなら。
 わたしは、ここから居なくなりたかった。

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 理想のお兄ちゃんが欲しかった。
 ここじゃない、私しかいない世界に逃げたかった。
 私とお兄ちゃんだけの世界が欲しかったのだろうと、あとから分かった。
 世界は私を脅かし、お兄ちゃんが傷だらけになりながら私のためだけに足掻き続ける世界が欲しかったのだろうと。
 そんな都合の良い世界なんて、あるわけないと……これは、最初から分かっていた。

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 結局のところ、私は何も得ることは無かった。
 理想のお兄ちゃんも、私しかいない世界も、なにもかもは壊れて消えて、私自身すらも消えて無くなった。
 そのはずだった。

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 私という情報が、まるでジグソーパズルを組み合わせるみたいにできあがっていくのが感じられた。
 手を伸ばせば容易に届く場所に、知らない世界があったのがわかった。
 私は手を伸ばし、楽しい世界への仲間入りを望んだ。
 よせばいいのに。
 こんなことしなければ、最初から何も失わずに済んだのに。

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 もしかしたら、私は友達が欲しかったのかも知れない。
 自分を許してくれる友達でも、自分と握手をしてくれる友達でもない。
 自分にお金をくれる友達でも、自分と毎日遊んでくれる友達でもない。
 自分を愛してくれる友達でも、自分に笑いかけてくれる友達でもない。
 私が欲しかったのは、きっと。

 私を絶対に許さない友達だ。

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 何を得たところで、きっと変わらないのだろう。
「だって私は、誰のことも信じてなんていなかったもの」
 誰と仲良くなったって、きっと幸せにならなかっただろう。
「だって私は、誰も信じられなくなってしまったから」

 世界に生命をうけて、リアルを身体で感じられるようになった今だから、わかる。
 私はみんなと友達になりたい。

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 皆を絶対に許さない友達に、私はなりたい。

 それが唯一、私が世界と繋がれる方法だと知ったから。

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第3章 第15節

レッド(p3p000395)
赤々靴
ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)
白き寓話
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)
奈落の虹

「ここが隠しサーバールーム……最後の舞台か」
 飛来する無数の砲撃から身を隠し、『魔風の主』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)は魔方陣を生成する。
「妹も外で頑張っているんだ。僕も負けてはいられないからね」
 砲撃が途切れたタイミングを狙って遮蔽物から飛び出すと、魔術によって作り上げた糸を放った。
 自走砲撃ドローンを絡め取り、その動きを鈍らせると別の遮蔽物に身を隠していた『白き寓話』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)が出現。
「言葉は不要というのも悲しいけれど、これでも私、やるべきことは分かっているつもりなのよ?」
 自然から引き出したエネルギーを集約させ、からめとったドローンたちめがけてそれらを一気に解き放つ。
 たまらず破壊されたドローンの残骸が散らばる中、ヴァイスはエネルギー放出の反動によってくらりと思わずよろめいた。
 駆けつけた『赤々靴』レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)がそんなヴァイスをがしりと支え、赤いオーラを流し込むことで心と体のダメージを治癒していく。
「お疲れ様っす! なんとかサーバールームの制圧は済みそうっすね」
「だといいんだけれど……」
 隠しサーバールームはネットワーク管理における重要な拠点。セキュリティロボットの数や質もかなりのものだと思うが……。
 ぴくり、とウィリアムが動いた。何かを感じ取ったのだろうか。同じくレッドも何かに気付き、周囲を見回し始める。
 精神の回復に手子摺ったのか反応の遅れたヴァイスだが、周囲から機械の駆動音が無数に聞こえたことで流石に気付くことになった。
 身構える三人を取り囲むように、無数のドローン兵器が集まってくる。
 スタミナ的にも厳しいが、敵の物量と勢いを見るだけでもこの状況がかなりマズイのは確かだ。
 だが、そんな中で――。
「歌が、聞こえるわ」
 ヴァイスがはっと顔をあげた。
「街が歌ってる。いいえ、違う、これは皆の……」

 サーバールームへ続く道の全フロアで、そしてセフィロト郊外の全域にて、暴走していたすべてのドローン兵器たちが一斉に沈黙した。

成否

成功


第3章 第16節

――小生自身、この不合理と不条理と……己の人の良さに辟易するがね。
   請け負ってやろうではないか、この一事だけ。
  『クラリスとクリストが揃ってそれを望んだなら』。
   そして貴様等凡百共がこのゲイムをこれ程までに『クリア』したなら。
   きっとこれはそういう話なのだ。
   ……後見人としてはその位はしてやるのが正解なのだろう?

 セフィロトじゅうに響いたその声の主を知る者は少ない。
 その少数の中に、ローレット・イレギュラーズはいた。
 彼らは口々に、彼の名を呟く。
「――シュペル・M・ウィリー!」

 万能であるがゆえに開かれないツールボックス。
 デウスエクスマキーナの代名詞。
 シュペルは、セフィロト中枢で行われたある計画の、ほんの一事にだけ、その力を貸したのだった。
 皆の抱くこの国、この世界、そして仮想世界への想い。
 そしてマザーへの想いが集約され、ひとつの力に変えたのだった。
 それは同時に、セフィロト全体のネットワークをハックしていた姉ヶ崎-CCCの権限をはじき出すことと同義である。

「がっ――は!?」
 広いドーム状のフロア中央。右手と右足を虹色のノイズに変えた姉ヶ崎-CCCは、自分を接続させていたネットワークサーバーから自身がはじき出されたことを実感した。
 ぐらりと身をよろめかせ、片膝をつく。
「Hadesくん、クラリスちゃん……そっか」


第3章 第17節

日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
八田 悠(p3p000687)
あなたの世界
グドルフ・ボイデル(p3p000694)
ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)
挫けぬ笑顔

「ゲハハッ、どうやら間に合ったようだな。
 主役は遅れてやってくるもんだろう?
 てめえに因縁もクソも無えが、このおれさまが最高に目立てる大舞台だ。
 ここで暴れてやらなきゃ、名がすたるってもんだぜえ!」
 『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)の豪快な斧がブランクレガシーたちをまとめて破壊し、なぎ払っていく。
 無数の光線が彼の身体に突き刺さるも、口の端から血を流すだけでそれをこらえた。
「ハッ、痛くも痒くもねえな…どうだ、これが男の、山賊の意地だぜ。てめえの勝利を奪い取る為にゃ、ドロ水啜っても構わねえ!」
 勝つのは俺等だ! そう叫んで繰り出した次なる一撃は、まるで無防備な体勢のブランクレガシーへと入り、そのまま壁際まで吹き飛びボディを砕けさせた。
「……あ?」
 あまりにも手応えのない吹き飛び方に首をかしげる。
 が、そんな疑問はすぐに払拭された。
「がっ――は!」
 姉ヶ崎-CCCが膝を突き、胸を押さえる。
「Hadesくん、クラリスちゃん……そっか」
 何かを納得したような口ぶりにグドルフが目を細めると、最深部のフロアへと『あなたの世界』八田 悠(p3p000687)が入ってきた。
「シュペルだよ。彼が、練達の声をひとつにしてマザーへと届けた。
 ネットワークを掌握していた姉ヶ崎をはじき出して、ね」
 チラリとみると、エイスがゆっくりと歩み寄るのが見えた。
 憎しみに満ちた表情で目を見開き、歯を食いしばって腕を突き出す姉ヶ崎。
 ギギッ、という空間事引き裂くような音と共に虹色のノイズが走ったが、エイスは両手を突き出して同じく虹色のノイズを走らせた。
 ノイズは相殺し、はじけて消える。
「この子のノイズは私が抑える。だから……」
「うん、分かってる」
 悠は半透明な右手を握って、開いて、そして呟いた。
「一度ハッピーエンドを掴んだんだ、その後は『幸せに暮らしました』がふさわしいだろう。あのエンディングの続きを、悲しいものにはさせないよ
 それに、魔種になってしまったなら、もう終わらせてあげるしかないからね」
 悠の放つ強化能力を受けて、『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)は力強く走り出した。
「っし……もうひと踏ん張りっス。アイツを倒して練達を取り戻す!」
 葵はサッカーボールを蹴りつけると、フロアの中を複雑にバウンドさせた。
 そして豪快なオーバーヘッドフォームをとると、姉ヶ崎の側面を狙ってシュートを叩きこむ。
 余計な疑問も、言葉もいらない。お互いの目的は決まっていて、決する方法も決まったのだ。
「練達と、ROOを救うため――!」
 紅蓮のオーラを纏ったボールを、放ったノイズのシールドで弾こうとする姉ヶ崎。しかしエイスの放ったノイズとの相殺によってシールドは消失。ボールは姉ヶ崎へと直撃した。
「また、ひとりぼっちだ。でも、いいんだ、もう許さないから……」
 姉ヶ崎は口の端から血を流し、笑った。
「もう皆、許さないから!」
 振り込んだ腕。大量の虹色のノイズがナイフのように尖り、一斉に飛んだ。
 その一部をエイスが相殺するが、残ったナイフを『『幻狼』灰色狼』ジェイク・夜乃(p3p001103)は『狼牙』と『餓狼』の二丁拳銃による連射で打ち落とした。
「だいぶシンプルになってきた。
 此奴を倒さない限り、練達もクラリスも救う事が出来ないんだろ?
 だったらぶっ倒せばいいんだよ。
 しかも相手が魔種なら怖くもねえ。
 なぜなら、俺達は魔種を倒すのが得意なローレットのイレギュラーズだからな」
 素早くリロードし、姉ヶ崎の腕へと狙いを付ける。
「お引取り願おうか。理想のお兄ちゃんとはあの世で末永く暮らすがいい。ここはお前が居るべき世界ではないんでな」
 打ち抜かれた機械の腕が破壊され、代わりに虹色のノイズで腕を作り出しそれを巨大な剣へと作り替えた。
 繰り出される剣に、ノイズを放つことで防御を試みるエイス。だがノイズは砕かれ、巨大な剣がせまった。
「させないっ」
 そこへ割り込んだのが、『挫けぬ笑顔』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)だった。
 勇敢にも自らの身体を直接割り込ませ、肩に深く食い込んだ剣で腕でしっかりと抱くように固定した。
「ここで終わりになんて、私がさせないよ」
 勇気は彼女にとっての最強の武器だ。たとえここで倒れることになっても、仲間が繋ぐ最後の橋をかけることができる。
「マザーさんは救われた。Hadesさんもそう。ここにいるエイスさんや、イデアさんという方も、救われた」
「なのに!」
「だから!」
 姉ヶ崎とヴェルーリアが叫んだのは、同時だった。
「私達が、いるんだよ」

成否

成功


第3章 第18節

零・K・メルヴィル(p3p000277)
つばさ
リュグナー(p3p000614)
虚言の境界
ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)
黄昏夢廸
清水 洸汰(p3p000845)
理想のにーちゃん
マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)
黒鎖の傭兵
藤野 蛍(p3p003861)
比翼連理・護
桜咲 珠緒(p3p004426)
比翼連理・攻
ジェック・アーロン(p3p004755)
冠位狙撃者

 開いた絵本を閉じるには。
 始まった物語を終わらせるには。
 きっと、僕らがやらなくちゃいけない。

 泣き叫ぶような声で振り回した腕が虹色の暴風となり、仲間達を吹き飛ばしていく。
 かろうじて踏みとどまった八人が、姉ヶ崎-CCCの前に立ち並ぶ。
 バットを水平に持った『理想のにーちゃん』清水 洸汰(p3p000845)が、血の流れる頬で笑った。
「オレが最初に言った事、果たしに来たぜ。
 今から言うのは、オレ達の願いで、どうしようもない我儘で、だけどキミに伝えたい大事な思いだ」
 さらなる暴風が、無数の槍になって洸汰へと突き刺さり、そして貫通した。
「オレは逃げない、全部受け止める!」
 『黒鎖の傭兵』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)の放った鎖が姉ヶ崎の腕へと絡みつく。それを引っ張り、マカライトが強く彼女を見つめた。
「姉ヶ崎、お前が全てを破壊した後何をするかは知らん。
 だがな、『瓦礫』や『人形』はお前を慰めてくれない。反応しても、それは己で考えていたことに過ぎない。結局独りのままなんだ」
「そんなの、知ってる。けど、皆……」
 姉ヶ崎が頼ったものは、全て彼女を通り過ぎ、そして斬り捨てていった。
 顔をうつむけ、モザイクで隠したまま足を踏みならす。
 空中に無数に生まれたノイズのゲートから大量の槍が放たれるが――。
「「姉ヶ崎さん!」」
 それを『比翼連理・護』藤野 蛍(p3p003861)が両腕を広げてとめた。
 身体へ大量に槍が突き刺さるも、倒れることはない。
「独りぼっちで孤立し続けてる子、クラスにもたまに居たのよね。
 歩み寄ろうとしても避けられたり拒まれたりして、なかなか上手く行かないことも多かったけれど……。
 諦めずに粘り強く接してれば、最後は必ず仲良くなれたから」
 血の流れる手で、蛍は眼鏡に触れた。
「力づくでも強引にでも、聞いてもらうわよ!
 ボク達の言葉を、ボク達の願いを、ボク達の思いを!!」
 『比翼連理・攻』桜咲 珠緒(p3p004426)の流した血と、蛍の流れた血が混じり合い、一本の美しい刀へと変化する。
 珠緒はそれを握りしめ、姉ヶ崎へと斬りかかった。
「手伝いますよ。破壊に囚われた魂の殻なぞ、破ってしまいなさい!」
 マカライトの鎖を引きちぎり、珠緒の刀へむけて虹色の腕を叩きつける姉ヶ崎。
 ぶつかり合った瞬間に赤い血しぶきと虹色のノイズがまるで火花のように散りあい、混じり合い、そして反発しあった。
「姉ヶ崎、最初に言ったよな。友達に成りに来たって。
 誰が一人ぼっちにするか!」
 『震えが止まった』上谷・零(p3p000277)が大きく腕を引き絞り、作り出したフランスパンをレールガンのように打ち出した。
「俺は未来にお前が居て欲しい!
 姉ヶ崎もエイスもイデアも皆! 友達と遊ぶ明日が欲しいんだ!」
 放たれた砲撃は咄嗟にガードした虹色の手にぶつかり、空中でとまった。波紋のようにゆらぐ壁に阻まれるようにしてである。
 まるでそれは、姉ヶ崎が作り出した心の壁であるように見えた。
 が、そこへ『黒の猛禽』ジェック・アーロン(p3p004755)によるたった一発の銃弾が撃ち込まれた。
 弾頭が回転し、波紋の壁へとめり込み、そして突き破る。
 腕を破壊された姉ヶ崎はその衝撃で飛び、床を転がった。
「キミを死なせたくない。
 反転させたままにしたくない。
 ひとりぼっちなんて以ての外。
 アタシ達は我儘で、強欲なんだ。
 エイスもキミも……友達なんだよ」
 呟くジェック。姉ヶ崎は素早く起き上がり、『虚言の境界』リュグナー(p3p000614)の放った死神の鎌のごとき遠隔斬撃を虹色の斬撃によって撃ち弾く。
「姉ヶ崎、貴様は自分がひとりぼっちだと言うのであろう。
 ならば教えてやる。そんな貴様の為に、危険を承知で――己の命を賭して貴様を止めに来た八人が居ることを!
 一人だと、そう思う方が楽か? 自分が傷つくよりも、世界を壊す方が楽か? それを、どうしようもないと認める方が楽か? 貴様の存在の役割など知らぬ!」
「そうだよ。僕らは、受け取らなくても押し付けるから」
 『屋上の約束』ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)の放った雷の魔術が合わさり、ノイズの斬撃をも破壊した。
 まるでガラス細工のように砕けて散っていく虹色のノイズ。
「僕は皆を信じてる。誰かがいるってさ、信じれるって救われてる気分になるんだよ」
 ランドウェラは、改めて仲間達を見た。
 およそ偶然のように集まった八人。
 彼らの想いを、ランドウェラは彼なりに理解していた。
 そして魔種という存在がいかに自ら救いを求めても、その反転が『覆らなかった』という歴史を知っていた。
 武器をおろし、歩み寄るリュグナー。
「たった一言でいい。『助けて』と声に出すのだ」
「お願い、アタシ達の手を取って」
 銃口を下げ、ジェックもまた手を伸ばす。
 片腕だけを地に着けて、姉ヶ崎はぽたぽたとモザイク越しに虹色の滴をこぼした。
 そして渇いたように笑った彼女は、どこかふてくされたような声を出した。
「今更、何が出来るっていうの。私の自殺に付き合ってくれる……とか?」
 今まで一番突き放したような言葉だったが、けれどこれこそが彼女の素の言葉であるように、零には思えた。
 何よりの『助けて』に、聞こえた。
 そして零は、自らの胸元を強く握りしめた。
 今かみさまとやらに大きい声で願えば、喉がかれるほど叫べば、あとでなにかしらスッキリするかもしれない。奇跡が起きてくれるかもしれない。
 けれど、彼女は『奇跡』を求めただろうか。
 彼女が今求めたのは、そんな絵本の中の理想じゃない。
「一緒に生きて欲しいんだよ……俺は」
「無理に決まってるでしょ。ぶっ殺されたいの?」
 半笑いで言う姉ヶ崎に、零もつられて笑ってしまった。


 蛍と珠緒は顔を見合わせ、頷き合う。
「姉ヶ崎さん。ボク等はあなたを諦めない。きっとアナタを迎えに行く」
「あなたを『ただの敵』では終わらせません」
 その言葉の意味するところを、マカライトと洸汰はそれぞれ視線を交わして理解した。
「わかったぜ、姉ヶ崎。オレたちを許さなければいい。オレたちも、姉ヶ崎を許さねー。ずっとずっと、オレたちは一緒だ」
「どんなに離れていても。例え死が別ったとしても。その手を、俺たちは掴む」
「ん……」
 姉ヶ崎はゆっくりと立ち上がり、片腕で目元を拭った。
「わかった。友達になろ、今日ここで」
 姉ヶ崎の視線が、エイスをとらえた。
 伸ばした手が悪魔のように開き、エイスのコアごと破壊せんと頭を覆った――その瞬間。
 無数の斬撃と銃弾が、魔術の塊が姉ヶ崎のコアを打ち抜いた。

 フロアの中央に倒れた、姉ヶ崎の死体がひとつ。
 膝をつき床を殴りつける音が響くなか、エイスは死体へと歩み寄り、機械で作られたそのボディをそっと撫でた。
「自分のことをずっと許さない友達が、欲しかったのかな」
「それでいい」
 マカライトは背を向け、じゃらりと腕から鎖を垂らした。
「俺たちは、もう友達だ。お前のことを許さずに、ずっとずっと生きよう」

成否

成功

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