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琥珀薫風
駆け抜ける空に芳しき
『琥珀薫風』
豊穣郷カムイグラ高天京。
兄の意思を継ぎ、直向きに前に進もうとする少年の物語。
ただ只管に、歩いて行く――
琥珀薫風シリーズ
- 『これまでのカムイグラ』と『天香家』
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『風土と帝』
絶望の青の先に発見された新天地が舞台となる『カムイグラ』です。
緑豊かな国土、大陸とは違う独特の文化圏が特徴です。
この豊穣郷は外界とは隔絶された島国で主に鬼人種と精霊種が住んでいます。
カムイグラでは精霊種『八百万(やおよろず)』が鬼人種を『獄人(ごくと)』と呼び、迫害しています。
随分前に此岸ノ辺へ召喚された旅人の『霞帝』はそれをよく思わず、種族差別の意識を無くそうと努力しました。
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『約束と決裂』
旅人の霞帝、八百万の天香長胤、獄人の建葉晴明が杯を交し、これからは平等な社会を作ろうと約束したのです。
しかし、事故に巻き込まれ天香長胤の妻である蛍が獄人に殺されてしまったのです。
三人の約束は決裂し、霞帝は眠らされてしまいました。
政治的な均衡が崩れ、その代わりに『巫女姫』と魔種『天香・長胤』がまた種族差別を始めたのです。
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『神逐と勝利』
イレギュラーズは魔種と肉腫による政治を止めるために奮闘します。
巫女姫はそれに憤慨し、『大呪』を発動させ、国の守護神である『黄泉津瑞神』にけがれを集めました。
このままではカムイグラが滅んでしまいます。
イレギュラーズは一丸となって黄泉津瑞神の穢れを祓い、魔種達を倒しました。
現在は眠りから覚めた霞帝が政治を取り仕切り、獄人迫害も緩和しています。
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『それからの天香家』
当主長胤が逆賊となった『天香家』の政治的権威は失墜し、一介の貴族と同等の扱いです。
本来ならば一族郎党打ち首でも不思議では無い状況です。
それを許したのは謀反を起こされた霞帝本人なので、誰も逆らえません。
しかし、よく思っていない貴族は居ます。
政治的権威は失墜したとはいえ、いつ力をつけて戻ってくるか分からないからです。
天香家が築き上げた功績を目の当たりにしているのは他貴族だからです。
このまま遮那を潰せば、天香家を滅ぼせると考える者も居るでしょう。
遮那は日々何者かに命を狙われている状況です。
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詳しいカムイグラの説明はこちらから。
豊穣郷『カムイグラ』
『天香家』
- 『天香家』
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カムイグラの貴族『天香家』はかつては栄華を極めました。
代々続く八百万(精霊種)の家系で、才能に溢れた者が多いです。
特に前当主である長胤は類い希なる政治能力がありました。
国の政治を司る八扇の頂点であり、要の存在。
天香家の権威は霞帝に次ぐものでした。
しかし、長胤は謀反を起こし天香家の権威は失墜しました。
現在の当主である遮那には天香の血は流れておらず、内外からの不満を聞く事があります。
登場人物紹介
- 天香・遮那(あまのか・しゃな)
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八百万の少年。天香家当主長胤の義弟。
元々は誰にでも友好的で、天真爛漫な楽天家だった。
義兄の意思と共に天香家を継ぎ、前に突き進んで行こうとしている。
姉の蛍が亡くなった悲しさは計りしれないものだった。
彼が背を追ったのは血の繋がらない長胤。
傍には楠忠継や姫菱安奈が寄り添い、貴族社会の中に在りながら真っ直ぐ育った。
人の悪意を知らず、疑わず。
純粋に育った遮那にとって、一連の出来事は青天の霹靂といっても良いほどに衝撃を与えた。
『幼い少年』ではいられなくなった遮那の未来はまだ始まったばかり。
成長期に差し掛かり、色々な変化に戸惑いつつも日々を過ごしている。
遮那が当主になった事をよく思わない輩から、命を狙われている。
- 鹿ノ子(かのこ)
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鹿ノ子(p3p007279)
ラサ出身のトナカイのブルーブラッド。
小さな角と可愛い尻尾が生えている。
遮那に初めて豊穣以外の国の様子を伝えた女の子。
幻想やラサの事を鹿ノ子から聞いて胸を躍らせた。
その夏の日は遮那にとって世界が広がった瞬間でもある。
話してくれた鹿ノ子の笑顔は太陽のように眩しくて忘れられないものとなった。
毎月必ず尋ねて来ては思い出を綴っている。
鹿ノ子自身は過去の記憶が欠落しており、何かの因果で涙が流せない。
けれど、最近夢を見るのだという。誰かが歌っている。懐かしい音色。
それが何を意味するのか、自分が変わってしまうようで眠れぬ日が続いているらしい。
- 夢見 ルル家(ゆめみ るるいえ)
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夢見 ルル家 (p3p000016)
宇宙政府の公職である宇宙警察忍者に勤めていた旅人。
遮那の側仕えとイレギュラーズの仕事を兼任しており多忙。
宇宙警察忍者の仕事はターゲットの命を終わらせる事も含まれる。
普通の少女だったルル家はそれに耐えきれず感情を殺す手術を受けた。
世界は晴れ晴れとして、負の感情は無くなり仕事も順調になった。
それが歪んで来たのが遮那や仲間と出会ってからだ。
不調の原因を取り除く為、本懐を遂げると遮那の元から去る。
感情を取り戻したルル家は今までの過去の記憶に苛まれ眠れぬ夜を過ごす。
そんなクマの出来た顔を遮那に見られたくないとバイザーや化粧をするように。
遮那はルル家の事を心配しているようだ。
- 隠岐奈 朝顔(おきな あさがお)
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隠岐奈 朝顔(p3p008750)
カムイグラ出身の獄人。
265cmの身長と気味が悪い割れ舌を持つ自分自身の姿が嫌い。
たった一つ天色の瞳だけは好きなところ。
最初は『オキナ』と呼んでいた。朝顔が自分の事をそう呼んでいたから。
まだ、何も知らない彼女からの告白を、遮那は一度断っている。
そして、『朝顔』と呼ぶようになった。
友として、これから知っていくために。
獄人としての目線でこの国がどう見えるのか知りたかったから。
共に歩んでいくために。
他人を演じていた少女は、有りの儘の『向日葵』として遮那の傍にいる。
――最愛という願いを得るために。
- 小金井・正純(こがねい・まさずみ)
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小金井・正純(p3p008000)
豊穣、高天原の郊外にある『星の社』に勤める巫女。
出身は鉄帝と天義の国境沿い。
右肩から先がないため義腕を付けている。
遮那との出会いは夏の日にかき氷を一緒に食べた時。
その時はまだ幼い少年だった遮那が、成長していく姿に胸を打たれた。
決戦の折、長胤を撃った責任として彼が想いを託した遮那を見守っている。
遮那にとっては、蛍を思わせる姉貴分。
裏切られたくないと予防線を張って、一歩引いて物事を見ている。
けれど、自身には無い強い魂の鼓動に期待をしてしまう自分が居るのも事実。
むず痒い想いを抱えている。
- タイム(たいむ)
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タイム(p3p007854)
異世界からやってきた長耳長寿種。
柔らかな表情と優しい声色の癒し系。
召還時に記憶を無くしているが、本人はあまり気にしていない様子だ。
肉腫との戦いで安堵から泣いてしまった遮那を優しく包み込んでくれた。
そこから度々天香を尋ねてくれるようになった。
癒し系だがしっかりしており、遮那の背中を押す事も。
正純と共に遮那の成長を喜んでいる反面、もう少し少年のままでいて欲しいとも思っている。
- 咲花・百合子(さっか・ゆりこ)
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咲花・百合子(p3p001385)
最強の美少女にして白百合清楚殺戮拳を極めし者。
元の世界では誰も百合子に挑戦する者が居ない程強く美しかった。
されど、この無辜なる混沌に召喚された際、『赤子』のような姿へ戻されてしまう。
美少女は強くなればなる程、美しく花のオーラを纏うのだ。
百合子は強くあらねばならなかった。
そう願われた。だから最強であった。
けれど、百合子の中には感情の川がきちんと流れていて。
安奈のお陰でそれにようやく気付く事が出来た。
何かが劇的に変わった訳ではないけれど、少しだけ他人の気持ちを考える事が出来るようになった。
- カナメ(かなめ)
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カナメ(p3p007960)
トナカイのブルーブラッドの少女。鹿ノ子の双子の妹。
角は短すぎて髪に隠れている。
鹿ノ子の事が大好きな、愛が重い系の妹。
痛みが欲しいが為にその身で攻撃を受け止めるタンク。
幼少期に姉の鹿ノ子とは生き別れとなり、孤児だった所を幻想の貴族に拾われている。
自分の腕にコンプレックスを抱えていて、絶対に見せようとしない。
妖刀に呪われて以降、何かに侵食されるように色が抜けている。
それはまるでカナメから彼女らしさがうしなわれたような――
- 黒影 鬼灯(くろかげ ほおずき)
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黒影 鬼灯(p3p007949)
忍集団『暦』の頭領をしている男。
常に口元を覆い隠している。
いつも傍に居る人形は『章姫』という名前で鬼灯の妻である。
章姫の自我は元の世界で鬼灯に合った瞬間にはもう存在していた。
彼女が動くようになったのは、自分自身を縛る無意識の拘束を解放したから。
豊穣での戦いの最中、不穏な視線を感じた。
不穏であるのに、何処か嫌いになれないそんな不思議な気配があったのだ。
この先の豊穣と遮那の未来を護る為に鬼灯は影に紛れて戦う。
関係者
- 遮那の周りに居る関係者たち
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『柊 吉野(ひいらぎよしの)』
初めて遮那が選んだ直属の臣下。獄人。
獄人である自分が遮那の傍に居れば在らぬ陰口を叩かれると伝令役を買って出る。
本来であれば自分が傍で守りたいが、八百万と獄人の確執は身に染みてるので外に出ている事が多い。
明将との出会いは最悪で喧嘩から始まったが、今では言い争いながらも仲良くしているらしい。
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『御狩明将(みかりあきまさ)』
天香長胤派の貴族御狩家の生き残り。
大戦の折、兄は戦死し、責任を感じた父母は家に火を付け、一人焼け出された。
空腹で倒れていた所を小金井正純に拾われ星の社に居候する事になる。
星の社に出入りする天香遮那に驚きつつも、父達の思想に染まること無く仲良くしているようだ。
元貴族だからこそ、遮那の立ち位置が理解出来る。
友人として守らねばと心に決めている。
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『浅香灯理(あさかとうり)』
天香の遠縁浅香家の少年。遮那の親友。
子供の居なかった長胤にもしもの事があった時の為の、天香家の次期当主候補の一人だった。
本人にはその気は無く、文武両道で遮那を支える役目を担う。
だが同時に、当主という重責を負っている遮那が可哀想だと思っている。
もし、代わってやることができたなら――
遮那の元へ出入りしているルル家の事が少し気になっているらしい。
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『望(ぼう)』
吉野の故郷『春日村』の近くの峠で暴れていた精霊。
紫屍呪という呪いに当てられ暴走していたのを鹿ノ子と遮那に鎮められた。
そこからは使い魔として遮那の傍で過ごしている。
たまに、伝令役として遠く離れた場所へ飛んでいくお役目もある。
大体庭で遊んだり、遮那の気分転換になったりしている。
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『喜代婆(きよばあ)』
天香家に古くから仕える女官。浅香家の姫。
妖怪の様な見た目の老婆。
「生き甲斐を取り上げるのは忍びないし、働けなるまでは……」と温かい目で見守っていれば、「あの婆、俺が新人の時からずっと婆なんだけど」「おばあちゃんがこの前若い頃は小町って呼ばれていた、って言ってたんだけど何百年前の話なの……?」と噂される妖怪婆になっていた。
いつも皆を優しく見守り、震える手でお茶を淹れてくれる。
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『姫菱・安奈(ひめびしあんな)』
『楠忠継(くすのきただつぐ)』
遮那の剣の師である楠忠継と姫菱・安奈は天香の忠実な臣下だ。
人知れず天香家に仇なす者を始末している。
二人は信頼しあった相棒であり、安奈にとって忠継は剣の師でもあっただろう。
――――全ては天香家の為に。
忠継は忠実な臣下たれと魔種と成り。
安奈自身がこれを斬った。
後悔は無い。
されど、背中を預ける先が無いのは少し寒いと感じるのだ。
物語は進んで行く
暗雲立籠める嵐の中。吹き荒ぶ風が黒衣をはためかせる。
『琥珀色の瞳と黒い翼』
手に滑るは蘇芳の色を映した赤。
死人に口無シ。
嵐に朱が流れ往く――
- 星の社にて
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「近頃、巷で噂されている殺人鬼を知っているかい。吉野」
「知ってるぜ。何でも黒い翼と琥珀の瞳を持ったヤツ何だろ?」
「俺も聞いた事があるな。商人を殺しまくってるんだろ」
浅香灯理、柊吉野、御狩明将の三人が顔を突き合せて、星の社の客間に集まっていた。
遮那は居ない。なぜなら。
「似すぎて無いか? その殺人鬼の容姿」
「明将もそう思うか……だってこの辺でその見た目って言ったら」
「待てよ! アイツはそんな事しねぇだろ!」
殺人鬼の容姿が友人である『天香遮那』に似ているからだ。